[わかりやすい‼ はじめて学ぶM&A  誌上セミナー] 

第4回:M&Aの流れ(計画段階)

~M&Aの流れ(全体像、戦略は明確に、ターゲット会社を見つけよう)~

 

〈解説〉

公認会計士・税理士 清水寛司

 

〈目次〉

全体像

計画段階

1.戦略は明確に

2.ターゲット会社を見つけよう

 

 

▷第1回:なぜ「会社を買う」のか~買う側の理由、売る側の理由~

▷第2回:どのようにM&Aを行うのか~株式の売買(相対取引、TOB、第三者割当増資)、合併、事業譲渡、会社分割、株式交換・株式移転~

▷第3回:M&A手法の選び方~必要資金、事務手続の煩雑さ、買収リスクを伴うか~

 

 

M&Aの流れ(全体像)

本稿では皆様に分かりやすいよう、M&Aを「計画段階」「実行段階」の大きく2段階に分けています。

M&Aは多くのステップを踏み、分かりにくい部分も多いです。一方、M&Aに限らずどんな仕事であっても計画して実行するという流れを踏みますね。そのため、大まかに「計画段階」と「実行段階」で分けています。

 

そして、計画段階を「M&Aの戦略決定」「ターゲット会社の選定」、実行段階を「ターゲット会社への接触」「相手会社の詳細調査」「詳細の合意」と全部で5ステップのみにしました。重要なセンテンスを抜粋して全体感をご説明しますので、M&Aの一連の流れについて少しでも具体的になっていただけると幸いです。

 

 

 

M&Aの流れ(計画段階)

1. 戦略は明確に

まずは計画段階から見ていきましょう。初めにM&Aの戦略を定めます。M&A成功のためには、この戦略策定が非常に重要となります。会社は経営課題を見直し、より成長するためのM&A戦略を立てます。第1回で書いたようにM&Aはあくまで「実現したいゴール」に辿り着く手法の1つであるため、会社が目指す理想と、M&A戦略がいかに一致しているかが成功の鍵となります。

 

<Step1は、M&Aの戦略を決めること>

 

 

 

家電が欲しいと思って八百屋に行くことはありませんよね。野菜や果物が欲しければ八百屋に行くし、家電が欲しければ家電量販店に行く、M&Aでも同じことが言えるわけです。会社の課題について「家電が必要」なのか「野菜が必要」なのかを見極め、適切な計画を立てないと、見当違いの会社を買ったり事業を売ったりしてしまいます。

 

 

買い手会社におけるM&Aの戦略は大きく2つに分かれます。

●経営戦略に合致した会社や事業の買収

●投資による対象会社価値の増大

 

 

前者は通常の一般事業会社が良く取る戦略です。自社の経営戦略に照らし合わせて、足りない部分はどこか、どのように補えば拡大していくことができるかを考え、M&Aの戦略を組み立てていきます。

 

一方後者は投資ファンドが良く取る戦略です。例えば経営が傾いている会社をどのように探し、どのように投資し、どのようの経営を立て直すかといった戦略です。

 

 

 

2. ターゲット会社を見つけよう

戦略が決まったら、次は戦略に合致する会社を見つけます。M&Aにおいては、まず広範囲の条件で会社をリストアップし、徐々に詳細な条件により絞り込んでいく選び方(スクリーニング)をすることが一般的です。

 

<Step2は、ターゲット会社を選ぶこと>

 

 

例えば相手会社の規模・収益性・成長性といった数値に表すことができる条件でまず会社を広範囲にリストアップします。その後相手会社の経営方針や経営者の意向、組織文化といった数値化が難しい条件で候補を絞っていくやり方があります。

 

文章を見ただけでも大変な作業であることが分かりますね。そのため複数の案件を抱えている専門の仲介会社に依頼をするケースや、仲介会社が案件を持ってくるケースもよく見られます。

 

 

 

 

[計画段階のPoint]

M&A成功のためには、自社の経営課題に沿った戦略策定が重要!

 

 

 

 

≪Column:投資ファンドとは??≫


「投資ファンド」という言葉に耳馴染みの無い方や、あってもハゲタカのようにあまり良いとは言えない印象を持つ方が多いと思います。しかし、多くの方から投資目的で資金を集め運用していく仕組みのことを「投資ファンド」と言うので、一口に投資ファンドと言っても多種多様なプレイヤーがいます。

 

余剰資金を活かして株式・社債等に投資することはよく行われていますし、皆様がよく投資をしている投資信託も広義には投資ファンドと言えるでしょう。

 

そして、投資対象が「会社」になると、M&Aに登場するような投資ファンドになります。このような投資ファンドは多くの場合経営に参画し、会社の業績を上げることで企業価値を高めていくことになります。

 


 

 

 

 

 

[税理士のための税務事例解説]

事業承継やM&Aに関する税務事例について、国税OB税理士が解説する事例研究シリーズです。

今回は、「事業を譲り受けた場合に営業権の計上について」についてです。

 

[関連解説]

■【Q&A】事業譲渡により移転を受けた資産等に係る調整勘定

■【Q&A】のれんの税務上の取扱い

 

 

 


[質問]

下記の場合の営業権の考え方についてご教示ください。

 

1. 前提
A社:株主Bが100%保有
C社:株主Bが100%保有

他にも株主Bが保有する会社が数社あります。
業種は小売業で多数店舗展開しています。
C社は毎期500万円前後の経常利益を計上しています。

 

2. 店舗の譲渡を検討
今回、C社の保有している店舗をすべて(2店舗)A社に譲渡することにしました。これはA社とC社は営業地域(関西)が同じ場所にあるからであり、譲渡後C社は清算する予定です。

 

3. 営業権の計上の可否
A社・C社は株主が同一のため計上は必要ないと考えています。

 

 

[回答]

【結論】
黒字の店舗の事業譲渡を受ける場合において、それが適格組織再編によるものでないときは、原則として営業権(創設営業権を含む)の計上が必要であると考えられます。

 

なお、その黒字店舗の譲受後の事業に係る見込み利益について黒字が見込めない等その営業権に価値がないとすることに合理的な理由がある場合には、その限りではありません。

 

仮に、有償性のある営業権を無償で譲り受けた場合には、C社において受贈益を計上する必要があることを申し添えます。

 

※ グループ税制の受贈益の益金不算入規定は、本件のような個人Bによる完全支配関係のような法人による完全支配関係に該当しない関係の場合には、適用されません(法人税法25条の2第1項)。

 

 

【理由】
事業を譲り受けた場合に関して、法人税法62条の8第1項において、事業譲受けに係る対価が、その譲り受けた事業に係る時価純資産(資産(営業権にあっては、一定のものに限る。)時価から負債の時価を控除した金額)の価額を超える場合には、その超える部分の金額は、原則として資産調整勘定の金額とする旨の規定が置かれています。

 

なお、ここでいう営業権は、他人間で取引する場合に有償で取引されるようなものをいう旨が法人税法施行令第123条の10第3項に規定されています。つまり、有償性のある営業権は、時価純資産に含まれること、換言すれば、資産として認識することが予定されていると解されます。

 

この規定は、取引当事者の株主が同一である(完全支配関係がある)場合にも適用されます。

 

さらに、取引当事者であるA社とC社との間には、株主Bを同一者とする完全支配関係があるとのことですので、参考に次の点も確認することとします。

 

 

1 グループ税制(法人税法第61条の13、法人税法施行令第122条の14第1項)
完全支配関係のある法人間で譲渡損益調整資産を譲渡した場合には、その譲渡による譲渡損益は繰延されることとされています。

 

ご照会の営業権は創設営業であると思料されるため、帳簿価額が0であると想定され、帳簿価額が1,000万円に満たないため、譲渡損益調整資産に該当しないこととなりますので、譲渡損益の計上が必要となります。

 

 

2 組織再編税制(適格合併)(法人税法第62条の2)
完全支配関係のある法人間で適格合併が行われた場合には、その合併により移転した資産及び負債は合併直前の被合併法人の帳簿価額で引継ぎをしたものとする旨が規定されています。

 

したがって、本件の事業譲渡が適格合併により行われたものとした場合には、被合併法人において営業権の帳簿価額が0であれば、引継ぎを受けた法人において営業権を計上する必要がないこととなります。

 

 

 

 

税理士懇話会事例データベースより

(2020年6月19日回答)

 

 

 

 

[ご注意]

掲載情報は、解説作成時点の情報です。また、例示された質問のみを前提とした解説となります。類似する全ての事案に当てはまるものではございません。個々の事案につきましては、ご自身の判断と責任のもとで適法性・有用性を考慮してご利用いただくようお願い申し上げます。

 

 

 

 


[M&A案件情報(譲渡案件)](2020年10月6日)

-以下のM&A案件(5件)を掲載しております-

 

●【SaaS】AI技術を取り入れたOCRサービスの事業譲渡【DX支援】

[業種:AI、SaaS関連事業/所在地:関東地方]

●社交ダンスドレス用品の製造・小売販売及びダンススタジオを経営

[業種:社交ダンス用品製造・販売]

●製造技術・品質管理力に強みのある電子部品組立業者。

[業種:電子部品製造/所在地:関東地方]

●【取引基盤】【財務内容】【組織体制】良好、三期連続増収増益

[業種:警備業/所在地:北海道地方]

●フィッテイングと整備を徹底するスポーツバイク専門店

[業種:自転車小売業/所在地:関東地方]

 

 

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案件No.SS006554
【SaaS】AI技術を取り入れたOCRサービスの事業譲渡【DX支援】

 

(業種分類)IT・ソフトウェア

(業種)AI、SaaS関連事業

(所在地)関東地方

(直近売上高)1億以下

(従業員数)10名以下

(譲渡スキーム)事業譲渡

(事業概要)AI技術を取り入れたOCR(光学文字認識)事業

 

 

〔特徴・強み〕

◇大量の手書き文字書類をデジタルテキスト化し、エクセル等への出力が可能
◇SaaS、オンプレミスどちらでも提供可能
◇読み取り精度高く価格競争力あり
◇レイアウトが決まっていない非定型証票の読み取りにも対応可能
◇RPAと連携可能
◇営業体制が整っておらず現状は単月赤字
◇国内5名(エンジニア、営業)、オフショアの海外エンジニア若干名の体制

 

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案件No.SS006351
社交ダンスドレス用品の製造・小売販売及びダンススタジオを経営

 

(業種分類)小売業

(業種)社交ダンス用品製造・販売

(直近売上高)1億以下

(従業員数)10~50名

(譲渡スキーム)株式譲渡

(事業概要)社交ダンスドレス用品の製造・小売販売ならびにダンススタジオを経営。

 

〔特徴・強み〕

◇社交ダンスドレス用品の製造・小売販売ならびにダンススタジオを経営。
◇業歴長く、富裕層の顧客を数多く抱えている。

 

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案件No.SS005609
製造技術・品質管理力に強みのある電子部品組立業者。

 

(業種分類)製造業

(業種)電子部品製造

(所在地)関東地方

(直近売上高)5~10億

(従業員数)100名超

(譲渡スキーム)株式譲渡

(事業概要)コネクター等の電子部品製造

 

〔特徴・強み〕

◇大手電子部品メーカーの下請として、電子部品組立を行う企業。
◇業歴長く、様々な分野の電子部品の試作から量産までの体制を整えることが可能。
◇大手下請けとして長らく営業しており、製造技術・品質管理技術に強み。

 

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案件No.SS005430
【取引基盤】【財務内容】【組織体制】良好、三期連続増収増益

 

(業種分類)人材派遣・アウトソーシング

(業種)警備業

(所在地)北海道地方

(直近売上高)1~5億

(従業員数)50~100名

(譲渡スキーム)株式譲渡

(事業概要)警備業 三期連続増収増益

 

〔特徴・強み〕

◇取引先との関係性良好
◇人材の定着

 

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案件No.SS004849
フィッテイングと整備を徹底するスポーツバイク専門店

 

(業種分類)小売業

(業種)自転車小売業

(所在地)関東地方

(直近売上高)1~5億

(従業員数)10名以下

(譲渡スキーム)株式譲渡

(事業概要)スポーツバイク専門店

 

〔特徴・強み〕

◇地域内でドミナント展開し、経営資源の効率的な活用が可能
◇フィッティングと整備を徹底し、顧客に最適なバイクの「サイズ」と「ポジション」を提案
◇従業員が販売に必要なスポーツバイクの知識とメカニック技術を持つ
◇高級輸入自転車の他、パーツ・ウェアなどの取り扱いアイテムも豊富
◇積極的なPR活動により地域内での知名度を高めている
◇実質無借金経営

 

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情報提供会社:株式会社ストライク

 

 

 

 

【免責事項】

・掲載情報は、内容及び正確さに細心の注意をはらい、万全を期しておりますが、人為的なミスや機械的なミス、調査過程におけるミスなどで誤りがある可能性があります。税務研究会及び情報提供会社は、当該情報に基づいて被ったいかなる損害についても一切の責任を負うものではありません。

・掲載情報は公開日時点の情報になります。既に案件が特定の対象会社と交渉に入っている場合や成約している場合もございます。

 

 

 

 

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[M&Aニュース](2020年9月23日〜10月2日)

◇DCMホールディングス<3050>、ホームセンター中堅の島忠<8184>をTOBで子会社化へ、◇安江工務店<1439>、リフォーム・リノベーション工事のMIMAを子会社化、◇アウトソーシング<2427>、人材サービスのキャリアグループ4社を子会社化、◇ひろぎんホールディングス、マイティネットが新設するIT関連新会社を子会社化、◇東洋テック<9686>、消防用設備・監視カメラなど電気工事の明成を子会社化、◇ユアサ商事<8074>、建機修理・メンテナンスの丸建サービスを子会社化、◇クックビズ、希望退職者募集に63人応募、◇ミツバ、希望退職者に549人が応募、◇ギガプライズ<3830>、不動産仲介子会社のフォーメンバーズを経営陣に譲渡、◇東京建物<8804>、介護事業子会社の東京建物シニアライフサポートをSOMPOケアに譲渡 ほか

 

DCMホールディングス<3050>、ホームセンター中堅の島忠<8184>をTOBで子会社化へ

ホームセンター大手のDCMホールディングスは2日、同業で首都圏を地盤とする中堅の島忠に対して完全子会社化を目的にTOB(株式公開買い付け)を実施すると発表した。買付金額は最大1636億円。両社合計の売上高は約5700億円となり、カインズを引き離して業界トップに立つ。人口減少などでホームセンター市場が縮小に向かう中、経営基盤を強化して競争力を高める。両社は店舗の重複が少ないことなどから、相乗効果の早期実現を見込む。島忠はTOBに賛同している。

島忠株の買付価格は1株につき4200円で、TOB公表前日の終値3555円に18.14%のプレミアムを加えた。買付予定数は3895万5287株で、下限は所有割合50%にあたる1947万7700株。上限は設けていない。買付期間は10月5日~11月16日(30営業日)。公開買付代理人はSMBC日興証券。決済の開始日は11月20日。

DCMホールディングスはカーマ、ダイキ、ホーマックの3社が2006年に経営統合して発足し、37都道府県に677店舗を展開。東証1部上場で、2020年2月期の売上高は4373億円。一方、島忠は1969年、家具の島忠(1979年に島忠に社名変更)として設立し、その後、ホームセンター事業に進出した。埼玉県、東京都、神奈川県を中心に60店舗を構える。東証1部上場で、2019年8月期の売上高は1463億円。

ホームセンター業界では現在、DCMとカインズが売上高で並び、業界トップを争う。DCMは島忠を傘下に取り込むことで、首位の座を確固とする。

安江工務店<1439>、リフォーム・リノベーション工事のMIMAを子会社化

安江工務店は、リフォーム・リノベーション工事を主力とするMIMA(大阪府八尾市。売上高8億6200万円、営業利益6300万円、純資産9300万円)の全株式を取得し子会社化することを決めた。MIMAは1965年創業で、年間1600件以上のリフォーム工事を手がけるほか、不動産売買・仲介にも力を入れている。取得価額は2億6500万円。取得予定日は2020年10月14日。

安江工務店は大手住宅メーカーとの競争が激しさを増す中、地域密着で事業展開する各地の地場工務店などとの連携を進めており、今回もその一環。

アウトソーシング<2427>、人材サービスのキャリアグループ4社を子会社化

アウトソーシングは、人材サービスを展開するキャリアエージェント(埼玉県熊谷市)などキャリアグループ4社の全株式を取得し、1日付で子会社化した。対象4社は製薬業界や食品業界を中心に製造派遣を主に手がけ、地場の優良企業を多数顧客に持つ。

傘下に収めたのは、キャリアエージェントのほか、キャリアコントラクト(茨城県土浦市)、キャリアファイル(福岡県行橋市)、キャリアインキュベーター(埼玉県坂戸市)。取得価額は非公表。

ひろぎんホールディングス、マイティネットが新設するIT関連新会社を子会社化

ひろぎんホールディングスは、IT関連事業を手がけるマイティネット(広島市。売上高39億7000万円、純資産22億1000万円)が会社分割によって設立する新会社「ひろぎんITソリューションズ」(広島市。資本金1億円を予定)の株式80%を取得し子会社化することを決めた。デジタルトランスフォーメーション(DX)が急速に進展する中、IT関連分野の顧客ニーズへの対応力を高める。マイティネットは1975年に設立。

取得価額は8000万円。取得予定日は2021年1月4日。

東洋テック<9686>、消防用設備・監視カメラなど電気工事の明成を子会社化

東洋テックは、消防用設備や監視カメラなどの電気工事、清掃事業を手がける明成(奈良県大和高田市。売上高3億7800万円、営業利益2500万円、純資産1億1400万円)の全株式を取得し、1日付で子会社化した。警備事業やビル管理事業との一体運営や人的資源の相互活用などを通じてシナジー(相乗効果)創出を見込む。取得価額は非公表。

ユアサ商事<8074>、建機修理・メンテナンスの丸建サービスを子会社化

ユアサ商事は、建設機械の修理・メンテナンスを手がける丸建サービス(名古屋市。売上高2億4800万円)の株式93.4%を取得し、10月1日付で子会社化した。メンテナンス・レンタル機能を取り込み、建設機械販売にかかる事業領域の拡大を見込む。取得価額は非公表。

丸建サービスは1965年に設立。舗装用・基礎工事用建設機械の修理、メンテナンスを主力とする。国内だけでなく、海外建設機械の指定サービス工場にもなっている。丸建サービスは傘下の丸建商事(名古屋市。売上高20億2000万円)を通じて建設機械の販売・レンタルも展開している。湯浅商事は両社と建設機械の仕入れなどを通じて48年に及ぶ取引関係がある。

クックビズ、希望退職者募集に63人応募

クックビズは30日、50人程度を募集した希望退職に63人の応募があったと発表した。同社は飲食業界向け求人サービスを主力とするが、新型コロナ感染の影響で飲食店からの求人が激減し、業績立て直しに向けた事業構造改革の一環。8月17日から9月16日まで募集した(退職日は9月30日付)。

ミツバ、希望退職者に549人が応募

ミツバは30日、約500人を募集した希望退職者に549人の応募があったと発表した。40~60歳の正社員を中心に8月24日~9月11日に募集した(退職日は10月31日付)。自動車業界を主要顧客とするが、新型コロナ感染の影響で需要が急減し、海外工場の稼働休止などで業績が悪化。国内2工場の閉鎖などの構造改革の一環として人員を適正化する狙い。

併せて、 ミツバの上場子会社で自動車用部品を手がけるタツミも同日、希望退職者募集の結果を発表。40歳以上の正規社員を対象に30人程度を募ったところ、応募は19人にとどまった。

ギガプライズ<3830>、不動産仲介子会社のフォーメンバーズを経営陣に譲渡

ギガプライズは、不動産仲介子会社のフォーメンバーズ(東京都中央区。売上高8億6000万円、営業利益△3億6400万円、純資産△14億2000万円)を、フォーメンバーズ社長の矢野晃教氏に譲渡した。9月30日付。ギガプライズは51%の保有株式のうち47.99%を譲渡する。この結果、矢野氏の持ち株比率は87%となる。譲渡価額は2056円。

フォーメンバーズはイオンモールが運営する不動産仲介「イオンハウジング」の加盟店舗事業を手がけ、ギガプライズが2015年に持ち分法適用関連会社とした。その後、2017年に保有比率を51%とし、子会社化していた。しかし、急速な直営店舗増加などで初期投資がかさみ、赤字体質が続いていた。

東京建物<8804>、介護事業子会社の東京建物シニアライフサポートをSOMPOケアに譲渡

東京建物は、介護事業子会社の東京建物シニアライフサポート(東京都中央区。売上高50億2000万円、営業利益1900万円、純資産△18億8000万円)の全株式を、有料老人ホームなど各種介護施設を運営するSOMPOケア(東京都品川区)に譲渡することを決めた。中期経営計画に掲げた「事業ポートフォリオの最適化」の一環。

東京建物は2014年に東京シニアライフサポートを全額出資で設立し、介護サービスや高齢者向け住宅を運営してきたが、業績が低迷し、近年は債務超過状態に陥っていた。譲渡価額は非公表。譲渡予定日は2020年12月1日。

エアトリ<6191>、製茶子会社のひかわを三栄源エフ・エフ・アイに譲渡

エアトリは製茶業の子会社、ひかわ(島根県出雲市。売上高28億1000万円、営業利益1億1600万円、純資産17億4000万円)の全株式を、食品添加物メーカーの三栄源エフ・エフ・アイ(大阪府豊中市)に9月30日付で譲渡した。新型コロナウイルス感染の影響で主力の旅行需要が大幅に落ち込んだのに伴うグループ事業再構築の一環。エアトリは2019年12月に、ひかわを傘下に収めていた。譲渡価額は非公表。

川金ホールディングス<5614>、MBOで株式を非公開化

川金ホールディングス(HD)は30日、MBO(経営陣が参加する買収)によって株式を非公開化すると発表した。同社社長の鈴木信吉氏が設立したSSホールディングス(東京都中央区)が川金HDの完全子会社化を目的にTOB(株式公開買い付け)を実施する。買付代金は最大76億8700万円。素形材事業、土木建築機材事業、産業機械事業を3本柱とするが、グローバル展開などを通じた中長期的な成長を実現するためには短期的な利益確保にとらわれず、機動的かつ柔軟な意思決定を実現することが重要と判断した。川金HDはTOBに賛同している。

買付価格は1株につき388円で、TOB公表前日の終値301円に28.9%のプレミアムを加えた。買付予定数は1981万2809株で、下限は所有割合66.7%にあたる1320万8600株。第3位の大株主である鈴木信吉川金HD社長は保有する4.83%についてTOBへの応募契約を結んでいる。買付期間は10月1日~11月12日(30営業日)。決済の開始日は11月19日。公開買付代理人はみずほ証券。

川金HDは鋳造品の製造を目的に1948年、埼玉県川口市に川口金属工業として設立。1961年に東証2部に上場した。2008年に持ち株会社制に移行した。

祖業の素形材事業では産業機械用部品や自動車部品などを主軸とするが、中国や東南アジアとの競争が激化。また、土木建築機材事業では橋梁用免震支承でトップシェアを持つが、国内公共工事の縮減で海外需要の取り込みが不可欠になっている。

小林製薬<4967>、一般用医薬品メーカーの米Alvaを子会社化

小林製薬は30日、一般用医薬品の製造・販売する米Alva-Amco Pharmacal Companies, Inc.(イリノイ州)を子会社化することで合意したと発表した。Alvaは1904年に創業し、水虫薬、利尿薬、吐き気止め、酒さ(しゅさ)改善薬、内服消炎鎮痛剤などの一般用医薬品を全米のドラッグストア、スーパーマーケットなどで販売している。小林製薬は同社のブランド力を取り込み、北米での事業拡大を目指す。

取得価額、取得割合は非公表。2020年10月中に子会社化を完了する予定。

小林製薬は米国、英国、中国、アジアの各地域に現地法人を設け、海外事業を展開中。米ではカイロ、冷却シート、メガネクリーナーなどの日用品に加え、2016年から「Zim’s MAX (ジムズ マックス)」 ブランドの外用消炎鎮痛剤を販売している。

カナモト<9678>、測量機開発・レンタルなどのソーキホールディングスを子会社化

カナモトは、測量機や計測機器の開発・レンタルを手がけるソーキホールディングス(大阪市)の全株式を取得し、9月30日付で子会社化した。ソーキホールディングスは持ち株会社で、傘下に中核事業子会社のソーキ(同、売上高46億5000万円、営業利益6億100万円)を持つ。計測機器事業領域の強化につなげる。取得価額は非公表。

ソーキは1989年に設立。

メディカル一光グループ<3353>、愛知県で住宅型有料老人ホーム14施設運営のライフケアを子会社化

メディカル一光グループは、介護事業のライフケア(愛知県一宮市。売上高14億8000万円、営業利益5830万円、純資産1億5600万円)の全株式を取得し、子会社化することを決めた。ヘルスケア事業の規模拡大の一環。ライフケアは2003年に設立し、愛知県に住宅型有料老人ホーム14施設、居室介護支援3拠点などを運営する。取得価額は非公表。取得予定日は2020年11月1日。

Jストリーム<4308>、製薬関連コンテンツ制作などのアズーリを子会社化

Jストリームは、製薬関連のコンテンツやWebサイトの制作を手がけるアズーリ(東京都文京区。売上高5億8400万円、営業利益2億400万円、純資産4億4100万円)の全株式を取得し、子会社化することを決めた。製薬業界におけるデジタルマーケティング支援能力の向上などにつなげる。取得価額は7億3100万円。取得予定日は2020年11月26日。

Jストリームは2018年に傘下に収めたビッグエムズワイ(東京都文京区)を通じて、医薬業界向けのライブ映像配信事業、CLM(クローズド・ループ・マーケティング)コンテンツの制作、CRM(顧客管理システム)データ活用によるコンサルティング業務などを展開している。今回子会社化するアズーリはビッグエムズワイの業務委託先で、これまで取引関係にあった。

21LADY<3346>、洋菓子のトリアノン洋菓子店を子会社化

21LADYは、洋菓子製造のトリアノン洋菓子店(東京都杉並区。売上高3億8900万円、営業利益△200万円、純資産1600万円)の全株式を取得し子会社化することを決めた。傘下の洋菓子のヒロタ(東京都千代田区)と生ケーキ、焼き菓子などで相乗効果が期待できると判断している。

取得価額は非公表。取得予定日は2020年10月14日。

21LADYは2020年3月期決算で1億6700万円の債務超過に陥り、名古屋証券取引所セントレックス市場の上場廃止基準にかかる猶予期間入り銘柄となっている。こうした状況を早期に解消するため、新型コロナの影響で遅延しているグループ事業拡大に向けたM&Aを推進し、新たな収益基盤の確立につなげるとしている。

トリアノン洋菓子店は1950年に創業し、生ケーキ、焼き菓子を主力商品として喫茶店を伴う3店舗を展開する。

オリジン、人数を定めず希望退職者を募集

オリジンは29日、希望退職者を募集すると発表した。45歳以上で勤続10年以上の社員・再雇用者を対象とするが、募集人数は定めない。募集期間は10月21日~30日。退職日は12月15日付とする。会社業績の早期改善に向けた措置。所定の退職金に加え、特別加算金を支給する。

オリジンは電源機器や半導体デバイス、精密機構部品などを主力とするが、新型コロナウイルス下、携帯端末向け無線基地局用電源の落ち込み、自動車メーカーの減産などのあおりを受け、業績が悪化している。2021年3月期第1四半期(4~6月)は売上高が前年同期比32%減の56億円、営業赤字5億4100万円(前年同期は3億7300万円の黒字)、最終赤字7億6400万円(同1億100万円の黒字)だった。

NTT<9432>、NTTドコモ<9437>をTOBで完全子会社化へ

NTTは、NTTドコモの完全子会社化を目的にTOB(株式公開買い付け)を実施すると発表した。NTTは現在ドコモ株66.21%を保有しており、TOBを通じて残りの33.79%の取得を目指す。買付代金は最大約4兆2544億円。全てを取得できなかった場合は、株式併合などの手続きにより完全子会社化する。ドコモはTOBに賛同を表明しており、TOB成立後に上場廃止となる見通し。

移動体通信事業者間の競争が激化するなか、NTTはドコモを完全子会社化し、経営の意思決定スピードを速める。グループ一体となって、次世代通信規格「5G」をベースにした新しいサービスの創出や料金・サービスの競争力強化を図るほか、次世代通信技術に関する研究開発も強化する。

買付価格は1株当たり3900円。TOB公表前営業日の終値2775円に対して40.54%のプレミアムを加えた。買付予定数は10億9089万6056株。下限は1468万6300株(0.45%)。買付期間は2020年9月30日から11月16日まで(33営業日)。買付代理人は三菱UFJモルガン・スタンレー証券。決済の開始日は11月24日。

NTTドコモは1991年にエヌ・ティ・ティ・移動通信企画として設立。1992年にNTTから移動通信事業を譲り受け営業を開始し、1998年に東証一部に上場した。

三菱マテリアル<5711>、ダイヤメットを投資ファンドのエンデバー・ユナイテッドに譲渡へ

三菱マテリアルは29日、焼結機械部品や含油軸受などを製造する100%子会社のダイヤメット(新潟市)を、投資ファンドのエンデバー・ユナイテッド(東京都千代田区)に譲渡することで基本合意したと発表した。ダイヤメットの業績悪化に対応して資金支援などを講じてきたが、収益改善の見通しが立たないことから、第三者への譲渡を検討していた。ダイヤメットは2005年に設立。

譲渡価額は非公表。譲渡予定は2020年12月中。

NECキャピタルソリューション<8793>、NEC傘下の米販売金融子会社を子会社化

NECキャピタルソリューションは、NEC傘下で米国で通信機器のリース・ファイナンス事業を展開するNEC Financial Services,LLC(NECFS、ニュージャージー州。売上高28億円、営業利益7億6100万円、純資産128億円、総資産609億円)の全持ち分を取得し、子会社化することを決めた。NECグループとの戦略的パートナーシップをさらに強化する狙いがある。取得価額は約26億3500万円。取得予定日は2020年11月30日。

NECFSは1986年に設立されたNECグループの米国での販売金融事業の中核企業。NECキャピタルソリューションはNECの持ち分法適用関連会社。

ハピネット<7552>、映画配給のファントム・フィルムを子会社化

ハピネットは、洋画・邦画の配給などを手がけるファントム・フィルム(東京都渋谷区。売上高9億6300万円、営業利益1700万円、純資産1億2500万円)の全株式を取得し子会社化することを決めた。映像作品の企画・製作から配給、国内外への権利・パッケージ販売まで一気通貫した事業体制を整えるのが狙い。

ハピネットは邦画・アニメ作品を中心に映像作品を手がけている。ファントム・フィルムは2003年設立で、洋画・邦画の両面でノウハウと実績を積んできた。

取得価額は非公表。取得予定日は2020年10月1日。

フランスベッドホールディングス<7840>、ロングライフホールディングス傘下で福祉用具販売・レンタルのカシダスを子会社化

フランスベッドホールディングスは、福祉用具の販売・レンタルを手がけるカシダス(東京都千代田区。売上高15億7000万円、営業利益△1210万円、純資産2億300万円)の全株式を取得し子会社化することを決めた。福祉用具貸与事業のシェア拡大につなげる。

取得価額は非公表。取得予定日は2020年10月30日。

カシダスは介護事業を展開するロングライフホールディングス(大阪市、ジャスダック上場)の傘下企業で、2011年に設立した。

アイティフォー<4743>、音楽分野SNS企画・運営子会社のスナッピー・コミュニケーションズを経営陣に譲渡

アイティフォーは、音楽分野のSNS(ソーシャル・ネットワーク・サービス)ソフトウエア企画・運営を手がける100%子会社スナッピー・コミュニケーションズ(東京都千代田区。純資産△3990万円)の全株式を、スナッピー社長の小林四一氏に譲渡することを決めた。経営資源の集中と選択による経営の効率を高める狙い。

譲渡価額は非公表。譲渡予定日は2020年9月30日。

アイティフォーは2005年にスナッピーを傘下に収め、eコーマース(電子商取引)やWeb関連ビジネスの拡大に取り組み、近年は音楽分野でSNSソフトの企画・運営にも乗り出していた。しかし、想定していた業績水準に達していないことなどから、小林社長の申し出に応じて株式を譲渡することにした。

シダックス<4837>、エステティック事業などを手がける傘下のシダックスビューティーケアマネジメントを新日本ライフデザインに譲渡

シダックスは、エステティック業やホテル運営などを手がける子会社のシダックスビューティーケアマネジメント(東京都調布市。売上高9億5900万円、営業利益△1億500万円、純資産△2億1600万円)の全株式を、清掃業の新日本ライフデザイン(仙台市)に譲渡することを決めた。事業の選択と集中によるグループ経営効率化の一環。

譲渡価額は200万円。取得予定日は2020年9月30日。

エムティジェネックス<9820>、電気設備システム保守・保全業務のチヨダMEサービスを子会社化

エムティジェネックスは、電気設備システムの保守・保全業務を展開するチヨダMEサービス(高松市。売上高7億3800万円、営業利益1000万円、純資産1億6100万円)の全株式を取得し子会社化することを決めた。新たな事業への進出と事業エリアの拡大が狙い。

エムティジェネックスは東京都心を中心にオフィスビルの内装工事、駐車場の管理・運営、衛生消耗品の供給、省エネ機器の販売など、オフィスビルの保全管理業務全般を手がける。チヨダMEサービスは1976年に設立し、40年を超える業歴を持つ。

取得価額は非公表。取得予定日は2020年10月1日。

澤田HDへのTOB、買付期間を16度目の延長

澤田ホールディングス(HD)に対してTOB(株式公開買い付け)を実施しているウプシロン投資事業有限責任組合(東京都港区)は25日、10月6日としていた買付期間を同9日まで3営業日延長した。16度目の延長で、買付期間は156営業日となる。澤田HDは9月23日、TOBに反対する意見表明(それまでは意見表明を留保)を発表し、敵対的買収が確定した。

モンゴルの有力銀行であるハーン銀行を傘下に持つ澤田HDのTOBを巡っては、現地のモンゴル中央銀行が事前承認を与えておらず、TOB自体が宙に浮く形となっている。

三栄建築設計<3228>、ホテル再建など各種コンサルティング業務の日本ベストサポートを子会社化

三栄建築設計は、ホテル再建に関する各種コンサルティング業務や市場調査を手がける日本ベストサポート(東京都千代田区)の株式68.8%を取得し、子会社化することを決めた。グループにおけるホテル事業の成長・拡大につなげるのが狙い。三栄建築は2018年に全額出資でメルディアホテルズ・マネジメント(東京都新宿区)を設立し、ホテル事業に参入した。

傘下に収める日本ベストサポートは2001年設立で、ホテル運営に関して20年に及ぶ経験やノウハウを持つ。取得価額は非公表。取得予定は2020年9月中。

ソラスト<6197>、介護サービス事業のファイブシーズヘルスケアを子会社化

ソラストは、介護サービス事業のファイブシーズヘルスケア(神戸市。売上高16億9000万円、営業利益△1億4400万円、純資産△8400万円)の全株式を取得し子会社化することを決めた。ファイブシーズヘルスケアは2003年設立で、神戸、大阪エリアでグループホームを中心に19事業所を運営する。

取得価額は非公表。取得予定日は2020年10月20日。

三菱UFJリース<8593>と日立キャピタル<8586>、2021年4月に合併

三菱UFJリースと日立キャピタルは24日、2021年4月に合併すると発表した。合併新会社の総資産は10兆円超となり、三井住友ファイナンス&リース(約6兆3000億円)を抜き、業界首位のオリックス(約13兆円)に迫る。両社は2016年に資本業務提携し、環境・エネルギーといった海外インフラ投資などで協業を進めてきたが、新型コロナウイルス感染拡大の影響でリース事業は厳しさを増しており、経営基盤強化に向けて合併による統合に踏み切る。

三菱UFJリースを存続会社とし、日立キャピタルを吸収する。合併比率は三菱UFJリース1:日立キャピタル5.1で、日立キャピタルの1株に三菱UFJリースの5.1株を割り当てる。両社は2021年2月下旬に臨時株主総会を開き、合併を諮る。日立キャピタルは同3月30日付で上場廃止となる。

三菱UFJリースは1971年に設立し、三菱商事が筆頭株主。総資産6兆2859億円、売上高9237億円、営業利益918億円(2020年3月期)で現在、業界3位。一方、日立キャピタルは1957年に設立し、日立製作所を筆頭株主とする。総資産3兆7194億円、売上高4640億円、営業利益398億円(同)の業界6位。

合併新会社の社長には三菱UFJリースの柳井隆博社長、会長には日立キャピタルの川部誠治社長兼CEOが就く予定。

白洋舎<9731>、傘下の信和実業の保険代理店事業をトータル保険サービスに譲渡

白洋舎は、不動産子会社の信和実業(東京都大田区)が手がける保険代理店事業をトータル保険サービス(東京都中央区)に譲渡することを決めた。譲渡価額は2億2000万円。譲渡予定日は2021年1月1日。白洋舎は事業譲渡に伴い、信和実業を吸収合併する。

キユーピー<2809>、中島董商店のシンガポール子会社を傘下に

キユーピーは、中島董商店(東京都渋谷区)傘下で、酒類・食料品の販売を手がけるシンガポールMINATO SINGAPORE.LTDの株式80%を第三者割当増資の引き受けによって取得し、10月1日付で子会社化することを決めた。シンガポールにおけるキユーピーグループのマヨネーズ、ドレッシングなどの輸入販売拠点となる。取得価額は非公表。

キユーピーは東南アジアで現在、タイ、マレーシア、ベトナム、インドネシア、フィリピンに現地法人を置き、シンガポールが6カ国目となる。

中島董商店はキユーピー創始者の中島董一郎氏が1918年に設立した会社で、各種瓶缶詰食料品の販売、酒類の輸入などを手がける。現在はキユーピーの関連会社。

クロスキャット<2307>、情報処理サービスのアクティブを子会社化

クロスキャットは、情報処理サービス会社のアクティブ(東京都千代田区。売上高11億7000万円、営業利益1100万円、純資産1億1100万円)の全株式を取得し子会社化することを決めた。アクティブは1989年設立。取得価額は4億9000万円。取得予定日は2020年11月2日。

クロスキャットは独立系情報サービス会社として金融、クレジット、官公庁・公共企業、通信、製造、流通向けに事業展開している。

SAMURAI&PARTNERS<4764>、韓国「JT親愛貯蓄銀行」傘下に持つJトラストカードを子会社化

SAMURAI&PARTNERS(11月1日にNexus Bankに社名変更を予定)は、クレジットカード事業のJトラストカード(宮崎市。売上高3億900万円、営業利益1500万円、純資産161億円)を株式交換で11月1日付で子会社化することを決めた。フィンテック事業でのシナジー(相乗効果)創出などを見込む。Jトラストカードの韓国子会社で金融事業を手がけるJT親愛貯蓄銀行(ソウル。売上高191億円、営業利益36億1000万円、純資産181億円)は孫会社となる。

SAMURAIは総額216億円相当のA種優先株式を発行し、Jトラストカードの株式と交換する。株式交換比率はSAMURAI1:Jトラストカード普通株式1.26832、SAMURAI1:Jトラストカード第二種優先株式7.57156。

不動テトラ<1813>、地盤改良工事の愛知ベース工業グループを子会社化

不動テトラは、地盤改良工事を手がける愛知ベース工業(愛知県岡崎市。売上高19億円、純資産1億9800万円)を中核とするグループ3社の全株式を取得し、子会社化することを決めた。戸建住宅など中小規模の建築構造物基礎の地盤改良工事に参入し、収益基盤の多様化につなげる。

今回傘下に収めるのは持ち株会社として愛知ベース工業を傘下に置くABホールディングス(愛知県岡崎市)、地盤調査のBASE・ECO(同。売上高4700万円、純資産800万円)、土質試験の日本土質試験センター(名古屋市。売上高1000万円、純資産△200万円)の3社。

不動テトラはこれまで大規模な土木・建築構造物基礎の地盤改良工事を手がけてきた。愛知ベース工業グループを傘下に取り込むことで、戸建住宅の小規模物件から大規模土木・建築構造物基礎までの幅広い地盤改良工事に対応できる体制を整える。

取得価額は非公表。取得予定日は2020年10月1日。

MonotaRO<3064>、インドの工業用間接資材販売EmtexのEコマース事業を傘下に

MonotaROは、工具、部品など工業用間接資材販売のインドEmtex Engineering Private LimitedがEコマース(電子商取引)事業を移管した新会社IB MONOTARO Private Limited(ニューデリー)を子会社化することを決めた。IB MONOTAROが実施する第三者割当増資などを引き受け、50%超の株式を取得する。Emtexがすでに現地に構築したEコマースの事業基盤を活用し、成長が見込まれるインド市場で効率的な事業展開を目指す。

取得価額は約15億6500万円。取得予定日は2020年11月30日。

 

 

 

 

情報提供:株式会社ストライク

[業界別・業種別 M&Aのポイント]

第5回:「医療業界のM&Aの特徴や留意点」とは?

~特有の規制は?設備投資は?スキームは?バリュエーションは?~

 

〈解説〉

公認会計士・中小企業診断士  氏家洋輔

 

 

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Q、医療業界のM&Aを検討していますが、医療業界M&Aの特徴や留意点はありますか?


他業界と比較した医療業界の特徴は公益性が非常に高く、そのため規制が多いことです。

 

規制産業であることで、医業収益を制約する項目が存在します。例えば、病院の開設・増床をするためには、その開設地域における都道府県知事等の許可が必要となります。開設・増床しようとする地域の既存病床数が、医療計画が定める基準病床数を上回っている場合、都道府県知事等は新たな病院開設・増床を認めないことが可能です。つまり、病院側が増床を行いたくても、認められない可能性があります。

 

製造業であれば、会社の規模の拡大には工場の設備投資を行うことが一般的ですが、病院の場合、上述のように病床を増やすことは地域によっては難しい場合があります。そのため、病院の規模拡大を行う場合は、M&Aを活用して他の病院を買収し病床を増やすことが必要となる点が医業業界のM&Aの特徴となります。

 

 

また、保険診療に係る各診療行為には、その報酬金額算定のための点数(1点10円換算)が定められています。これによって、同じ条件で保険診療を行う限りは、どの医師が診療を行ったとしても、その医業収益は同じ金額となります。つまり、保険診療を行う限りは、医師1人当たりの医業収益の上限がある程度決まります。

 

さらに、病床数により、医師やコ・メディカル(看護師や薬剤師等)の必要な配置基準が定められています。例えば、一般病床であれば病床数に対して、医師は16:1、看護師は3:1等の基準です。一般企業では人員を削減して効率的な経営を行ったとしても特に問題とはなりませんが、医療業界では人員数を削減して配置基準を下回った場合には、医療法に反することとなり、診療点数が減算されるため医業収益が減少することとなります。そのため、有資格者の一定数の確保が必要となり、労働集約型である医療法人にとって人件費は最も大きい費用ですが、思うように下げられないという特徴があります。一方で、従前より看護師等の不足が医療業界の問題となっていますが、看護師を確保できない事により、配置基準を達成できないという問題を抱える医療法人も少なくありません。

 

 

他にも、医療業界の特徴として、診察室、手術室、処置室、病室、その他医療提供に必要となる各種設備・施設を設ける必要があります。これらの設備については、安全上、衛生上、防火上、療養環境上など様々な視点で規定が定められており、設備基準を満たすために設備投資の金額も多額になることが一般的です。

 

 

ところが、資金繰り等の理由で設備投資を後ろ倒しにしていることがあります。このような場合は、M&A実施後多額の設備投資が必要になる可能性があるため、M&Aを検討する場合には、設備投資を実施しておらず設備が老朽化していないかについて確認する必要があります。M&A実施後に設備投資が必要な場合は、設備投資に必要な金額を譲渡価格から減額する等の交渉をすることを検討しましょう。

 

 

医療法人は株式会社とは異なり、その多くは持ち分の定めのある社団法人であり、機関設計が異なります。株式会社では株主総会が最高意思決定機関となりますが、医療法人では社員総会、取締役会にあたる期間が理事会となります。また、医療法人の理事長は医師である必要があります(一部例外あり)。

 

M&Aの局面においても、医療法人は株式会社とは異なります。まず、スキームは事業譲渡、合併、出資持分の譲渡および理事長等の交代のどれかを選択することとなります。

 

第一に、事業譲渡は病院の新規開設と廃止手続きを同時に行う等、行政の許可が求められるため、手続期間は比較的長くなります。さらに、病床の引継ぎができないこともあり、実務上ではほとんど採用されていません。

 

第二に、合併は事業譲渡とは手続きは異なりますが、行政の許可が求められることは同様であるため、手続期間は比較的長くなります。事業譲渡と異なる部分として、病床を引き継ぐことが可能であるため、大手の医療法人等は合併を利用してM&Aを行うことがあります。

 

第三に、出資持分の譲渡及び理事長等の交代では、社員総会で議決権を有する社員の交代をし、さらに理事会のメンバー(理事長等)を交代することで経営権を取得します。この方法は、行政手続上の許可は不要で、届出で足りることから手続期間は比較的短くなります。M&A後も、売手側の医療法人格は存続し、病床の引継ぎも可能であることから実務上広く利用される方法です。

 

 

上述のように、医療法人は株式会社とは異なり様々な制約があるため、株式会社を設立して経営を柔軟に行う場合があります。その方法として、医療法人の関連事業をMS(メディカル・サービス)法人として株式会社を設立し、経営している場合があります。MS法人は医療法人と一体として経営されているため、売手側の医療法人がMS法人も経営している場合には、基本的にはMS法人も含めてM&Aを検討することとなります。

 

 

診療報酬は、健康保険が7割(後期高齢者の場合は9割)を負担するため、医療法人のメインの医療収益の回収先は当該7割の支払業務を行う審査支払機関となります。審査支払機関は国によって設立が定められた機関であり、一般企業と比較して貸倒れのリスクが低いため、ファクタリングを行うことが容易となります。ファクタリングとは、審査支払機関に対する債権を売却し早期に資金を回収することです。資金繰りの苦しい医療法人はファクタリングを行っていることが多く、M&Aを検討する場合に、対象の医療法人のファクタリングの利用の有無、利用している場合にどのような会計処理を行っているかを確認しましょう。

 

 

他産業と比べて規制が多い特性から、バリュエーション手法も一般的なDCF法や時価純資産法、年買法等だけでなく、病床数を基準とする方法等も取られることがあります。売手側の場合は買手側のバリュエーション手法を理解することで交渉がスムーズに進むことも多いため、把握できる場合は把握しましょう。

 

 

さらに、医療業界は規制産業であるため、異業種からの参入は難しく閉鎖的な産業となっています。また、医療法人は近年赤字の法人が多くなっていることもあり、財務内容を正確に把握する必要があります。規制産業であることから他業種と比較して事業や財務の内容や把握すべきポイントが異なることも多いため、医療法人のM&Aを検討する場合は、医療法人の事業をよく理解しているアドバイザーや、財務の専門家を利用することをお勧めします。

 

 

 

 

 

 

 

 

事業承継に関する企業の意識調査(2020年9月公開分)

 

 

 

◇事業承継に関する企業の意識調査(2020年9月公開分)

企業の67.0%が事業承継を経営上の問題と認識
~ 新型コロナを機に事業承継への関心が高まった企業は8.9%に ~

※詳細はこちら

 

 

 

 

 

 

 

 

情報提供元(出所):株式会社帝国データバンク

[M&A案件情報(譲渡案件)](2020年9月29日)

-以下のM&A案件(2件)を掲載しております-

 

●自動車部品や産業用装置部品を主力とし、金属切削加工を得意とする会社

[業種:自動車部分品・附属品製造業/所在地:関東地方]

●好立地・好アクセスなカプセルホテル事業

[業種:カプセルホテル/所在地:関西地方]

 

 

-案件に関するお問合せ・ご相談は、このページ文末の「お問合せ・ご相談」ボタンより-

(お問い合せ・ご相談は「無料会員登録」が必要です)

 


案件No.SS006416
自動車部品や産業用装置部品を主力とし、金属切削加工を得意とする会社

 

(業種分類)製造業

(業種)自動車部分品・附属品製造業

(所在地)関東地方

(直近売上高)5~10億

(従業員数)10~50名

(譲渡スキーム)株式譲渡

(事業概要)自動車部品や産業用装置部品を主力とする金属加工会社

 

〔特徴・強み〕

◇長年の業歴を誇る金属加工会社
◇得意先は大手メーカーなど優良先が多く、安定した受注基盤を形成
◇高品質・短納期の製品納入により得意先からの評価も高い

 

-案件に関するお問合せ・ご相談は、このページ文末の「お問合せ・ご相談」ボタンより-


案件No.SS006368
好立地・好アクセスなカプセルホテル事業

 

(業種分類)ホテル・旅館業

(業種)カプセルホテル

(所在地)関西地方

(直近売上高)1~5億

(譲渡スキーム)事業譲渡

(事業概要)好立地でのコンセプトカプセルホテル事業を展開。

 

〔特徴・強み〕

◇部屋数150部屋以上
◇質の高い設備を完備
◇高い口コミ評価を多数獲得
◇築年数5年以内

 

-案件に関するお問合せ・ご相談は、このページ文末の「お問合せ・ご相談」ボタンより-


情報提供会社:株式会社ストライク

 

 

 

 

【免責事項】

・掲載情報は、内容及び正確さに細心の注意をはらい、万全を期しておりますが、人為的なミスや機械的なミス、調査過程におけるミスなどで誤りがある可能性があります。税務研究会及び情報提供会社は、当該情報に基づいて被ったいかなる損害についても一切の責任を負うものではありません。

・掲載情報は公開日時点の情報になります。既に案件が特定の対象会社と交渉に入っている場合や成約している場合もございます。

 

 

 

 

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[会計事務所の事業承継・M&Aの実務]

第1回 :M&Aのメリット・デメリット

 

[解説]

辻・本郷税理士法人 辻・本郷ビジネスコンサルティング株式会社

黒仁田健 土橋道章

 

〈目次〉

⑴売主側におけるメリット

①顧問先や従業員の承継

②事務所の譲渡に伴う資金化

⑵買主側におけるメリット

①顧問先の獲得

②従業員の獲得

③規模拡大に伴うシナジー

⑶売主及び買主双方におけるデメリット

①顧問先の契約解除

②従業員の退職

 

 

 

 

▷関連記事:失敗例から学ぶM&A ~従業員の大半が退職したケース 、所長税理士と新所長の引継ぎがうまくいかなかったケース ~

▷関連記事:「会計事務所・税理士事務所のM&Aの特徴や留意点」とは?

 

⑴売主側におけるメリット


売主側におけるM&Aの主なメリットは、①顧問先や従業員の承継と②事務所の譲渡に伴う資金化です。

 

①顧問先や従業員の承継

会計事務所の担う業務は、顧問先における日常の会計・税務相談や経理業務、経営相談など多岐にわたります。社内に経理や総務、経営企画などの部門がある大手企業とは異なり、特に中小企業にとっては、会計事務所に依存している部分が多く、当然に信頼関係の下にこれらの業務が成立しています。

 

今後10年、20年と顧問先は成長を続け、従業員も家庭を持ち、年を重ねていく中で、会計事務所として長期間のサービスを提供し続けていかなければなりません。

 

顧問先と従業員を一緒に承継できるのがM&Aのメリットと考えられます。

 

個別に承継していく場合は、引継ぎ先の事務所を1件ずつ紹介していくこととなり、また、従業員についても転籍先をあっせんしていくことになります。この場合、従業員は、顧問先の担当者として長年、同じ顧問先の業務にあたっていることが一般的で、顧問先=担当従業員のセットとなっており、双方で信頼関係ができています。それぞれの承継先が同じ事務所でない場合は、注意が必要です。

 

②事務所の譲渡に伴う資金化

M&Aの手法による最も大きいメリットとなります。会計事務所の資産は、顧問先と従業員、所長税理士の信頼を表したものとなります。

 

これら無形の資産から生み出されるキャッシュフローを、譲渡時点に資金化できることがメリットとなります。もちろん、会計事務所業は誰でもできるわけではないので、流動性の観点からは低いこと、目に見えない顧問先・従業員・所長税理士の複合的な信頼関係を維持できるような承継先を見つけることが重要になります。

 

⑵買主側におけるメリット


買主側におけるM&Aのメリットは、①顧問先の獲得、②従業員の獲得、③規模拡大に伴うシナジーが考えられます。

 

①顧問先の獲得

顧問先の獲得は、売上の拡大が一時で図れる点がメリットとなります。つまり通常の顧問契約の獲得は、時間をかけて1件ずつ増やしていく形となりますが、それにかかる時間を短縮することができます。

 

通常、顧問契約を獲得するのに、次のような流れの中で、それぞれの段階で時間とコストをかけて獲得していきます。これら一連の流れを省略でき、また、複数の顧問先を一括で承継できることがメリットと考えられます。

 

 

 

 

②従業員の獲得

人が稼ぐ労働集約型の会計事務所業界において、人材の確保は非常に重要な要素です。特に事務所ごと承継する意味は、通常の採用と異なり、意思疎通がとれた人材の集まり(組織体)を取得することができ、またそれぞれの従業員が担当先を持っていることから、承継したその日から売上・スキル・組織コミュニケーション力を持っている点で大きなメリットがあります。

 

通常、従業員の採用は、下記のような流れがあり、それぞれの段階で時間とコストが発生します。顧問先との契約と同様に雇用契約においても、これら一連の流れを省略でき、また複数の雇用を一括で承継できることがメリットと考えられます。

 

 

③規模拡大に伴うシナジー

規模拡大に伴うシナジーは、事業所の統合により主に管理コスト等の圧縮と、知識やノウハウの共有により提供するサービスの質や従業員の教育面の充実が見込まれます。

 

管理コスト等の圧縮の例としては、利用会計システムの料金、地代家賃、給与計算や請求書の発行事務などが挙げられます。また、知識やノウハウの共有においては、各種事例の集積により事案を検討する時間の圧縮や、より専門性の高いサービスの追求が行えるとともに、従業員1 人1 人のスキルアップによる生産性の効率化がはかられます。したがって、事例研究や社内勉強会といった機会を設け、情報共有や人材交流が行いやすい環境を整えることが重要となります。

 

⑶売主及び買主双方におけるデメリット


一方、売主及び買主双方におけるM&Aのデメリットは、①顧問先の契約解除、②従業員の退職となります。

 

①顧問先の契約解除

顧問先から契約を解除されるのは、主に二つの理由によります。

 

一つ目は、売主である所長税理士や従業員の退職をきっかけに、顧問先から解約の申出がなされるケースです。特に所長税理士が退職される場合、古い顧問先であればあるほど人間関係が深いことから顧問契約が維持されていましたが、M&Aをきっかけに解約の申出を行いやすい状況になります。

 

また、もともと顧問先に、監査頻度が少ない、提案をしてくれない、ITサービスへの対応が遅れているなどの不満があったものの、所長税理士には設立からお世話になっていたり、親の世代からのつきあいで言いにくかったような場合は、M&Aを機に契約解除の可能性が高まりますので、そのような顧問先がないか、後任担当者の選定は適切か、事務所としてフォローアップできるかなど事前に検討しておくことが大事です。

 

二つ目は、新しい会計事務所や担当者によるサービスへの不満です。これは、特に所長税理士が直接担当している顧問先を新しい担当者が引き継いだ場合に起こりやすいのですが、当然、所長税理士と同等の経験やスキルをもった担当者をつけることは困難です。M&Aに際して、サービス内容、契約金額、担当者経歴などをもとに顧問先を分類し、M&Aの前後にサービスの低下が起こらないようにフォローできる体制を事前に検討しておくことが重要です。特に、大口の顧問先については、契約解除となった場合には対象事務所の損益に大きく影響するため慎重な対応が求められます。

 

 

②従業員の退職

M&Aによる譲渡時に従業員が転籍をしないケースとM&A後に退職をするケースがあります。

 

人手不足で売手市場の現在では、特に中堅どころの30~40代の社員は引く手あまたの状況です。事務所を売却する話が出た場合、売られた側の従業員にとっては身売りされたように感じたり、経営体制や環境が変わることについて自分自身の処遇がどのように変わるのか、不安を感じたりします。

 

従業員は、年齢や、家族構成、働き方に関するモチベーションなど状況が様々です。またこれらは、時の経過とともに変化をします。M&Aの前段階においては、本人との面談により、新しい体制になって、何が変わるのか、何が変わらないのかをきちんと明示し、本人のやりたいことや、やりたくないことをヒアリングするとともに、引き続き働いてほしい旨を伝える必要があります。

 

できれば、スタート時点としては、「今までと何も変わらない+α」で新しい仕事にチャレンジできる環境(成長できる環境)を用意できると望ましいと考えられます。

 

M&A後に退職をするケースは、新しい環境に慣れないことが一番の要因です。新しい勤務地、出勤時間や給与等の待遇面の変更、新しい会計システムへの移行など、通常業務の負担に加えて、何かと従業員には負荷がかかります。

 

会計事務所のM&Aの場合、顧問先と従業員が揃って初めて事業として成り立ちます。つまり、極端な話、顧問契約をすべて承継できても従業員が1人も承継できなければ、顧問先へのサービスを買主側の従業員で行う必要が出てきますし、逆に従業員を全員承継できても顧問契約を一つも承継できなければ、従業員へ支払う給与を買主側の事務所の経費で賄う必要が出てきます。

 

すなわち、買主側では顧問契約と雇用契約の両面から、これらのリスクを認識し重要な顧問先や従業員の洗い出し、また、実際に離反が出た際の対処方法も併せて検討しておくことが重要となります。

 

 

 

 

▷参考URL:M&A各種契約書等のひな形(書籍『会計事務所の事業承継・M&Aの実務』掲載資料データ)

 

[解説ニュース]

個人が共有持分を分割した場合の所得税の取扱い

 

〈解説〉

税理士法人タクトコンサルティング(山崎 信義/税理士)

 

 

[関連解説]

■共有物の分割で不動産取得税がかかるとき

■不動産取得税の「相続による取得」を巡る最近のトラブル

 

 

 

 

【問】

甲と弟の乙は、昨年に父から相続した東京都内の土地(X土地)を持分2分の1で共有しています。甲と乙は、X土地を分割して共有を解消したいと考えていますが、この場合の税務上の取扱いについて次の通り質問します。

 

【問1】X土地を甲と乙が単独で所有する2筆の土地に分割した場合、甲が乙に、乙が甲に、それぞれのX土地の持分の譲渡があったものして、甲と乙に所得税が課税されるのでしょうか。なおX土地は遊休地であり、何ら使用されていません。

 

【問2】甲と乙は、X土地以外に、15年前に父から相続した神奈川県内の土地(Y土地)を持分2分の1で共有しています。X土地の価額とY土地の価額がほぼ同額であることから、甲のY土地の持分と乙のX土地の持分を交換し、X土地を甲の単独所有、Y土地を乙の単独所有にすることも検討していますが、この場合にはX土地の持分とY土地の持分の譲渡があったものとして、甲と乙に所得税が課税されるのでしょうか。

 

【回答】

1.【問1】について


(1)共有物の分割に係る所得税の譲渡所得の課税

二以上の者が一の土地を共有している場合において、その土地をそれぞれの共有持分にて現物分割し、それぞれ単独所有の土地としたときは、判例上、共有者相互問において、共有各部分につき、その有する持分の交換又は売買が行われることであって、各共有者が取得部分について単独所有権を原始的に取得するものではないといわれています(最判、昭42.8.25民集21巻 7号1729頁、平成29年版所得税基本通達逐条解説194頁)。

 

したがって、共有の土地を、それぞれの持分に従って現物分割した場合、①その法律的性格に着目すれば、その共有持分の交換(交換も「譲渡」の一種です。)があったことになるので、その譲渡による利益について所得税が課税されるのではないかという疑問が生じます。

 

しかし、共有関係にある一の資産を現物で分割するということは、②その資産の全体に及んでいた共有持分権が、その資産の一部(現物分割で取得した部分)に集約されただけにすぎず、資産の譲渡による収益の実現があったといえるだけの経済的実態は備わっていないということもできます。

 

そこで、国税庁は所得税基本通達(所基通)33-1の7により、個人が他の者と共有している土地について、その持分に応ずる現物分割があったときには、税務上は①の考え方によらず、②の考え方に基づき、その分割による土地の共有持分の譲渡はなかったものとして、所得税の譲渡所得の課税関係を生じさせないこととして取扱うこととしています。

 

なお、現物分割された土地の面積の比と共有持分との比が異なる場合がありえますが、そのような場合であっても、その分割後のそれぞれの土地の価額の比が共有持分の割合におおむね等しいときは、その分割はその共有持分に応ずる現物分割に該当することとされます(所基通33-1の7(注)2)

 

(2)結論

甲と乙が共有しているX土地を、それぞれの持分に従って現物分割した場合、前述(1)より、その分割による土地の共有持分の譲渡はなかったものとされ、所得税の課税関係は生じません。

 

 

 

2.【問2】について


ご質問のように、東京都所在のX土地の乙の持分と、神奈川県所在のY土地の甲の持分を交換し、X土地を甲の単独所有、Y土地を乙の単独所有とした場合には、交換する持分が別の土地の持分であるため、前述1(1)②で述べたような「その資産の全体に及んでいた共有持分権が、その資産の一部(現物分割で取得した部分)に集約されただけにすぎず、資産の譲渡による収益の実現があったといえるだけの経済的実態は備わっていない」とはいえません。したがって私法上の関係通り、甲と乙において、それぞれX土地の持分とY土地の持分の交換(譲渡)があったものと認められることから、甲と乙にそれぞれ所得税が課税されます。

 

ただし、X土地とY土地の持分の交換において、一定の要件を満たす場合には、固定資産の交換に係る所得税の特例(所得税法58条)の適用により”譲渡がなかったもの”とみなすことができます。

 

 

 

 

 

税理士法人タクトコンサルティング 「TACTニュース」(2020/09/28)より転載

[M&A担当者のための 実務活用型誌上セミナー『税務デューデリジェンス(税務DD)』]

第2回:M&A取引の税務ストラクチャリング

 

[解説]

税理士法人LINK 公認会計士・税理士 長野弘和

 

〈目次〉

1.M&Aのストラクチャー

2.オーナー企業を買収する場合

(1)株式買収(株式譲渡)と事業買収(事業譲渡)の比較

(2)役員退職慰労金の利用

3.他社の子会社を買収する場合

(1)株式買収(株式譲渡)と事業買収(事業譲渡)の比較

(2)配当金の利用

4.買収対象に多額の繰越欠損金がある場合

5.終わりに

 

 

▷第1回:M&Aにおける税務デューデリジェンスの目的、手順、調査範囲など

▷第3回:M&A取引に伴う税務リスクとその対応

 

1.M&Aのストラクチャー


M&Aに際しては、様々な観点から最適なストラクチャーを検討することになりますが、税務の観点からはストラクチャーの選定によって税務上の有利・不利が生じることも少なくありません。税務上、M&Aのストラクチャーとして、株式買収(株式譲渡)や事業買収(事業譲渡)、合併、株式分割、株式交換、株式移転等、様々な手法が紹介されています。実務上は、株式買収(株式譲渡)、あるいは事業買収(事業譲渡)の手法が採られることが多いので、これらについて解説します。

 

株式買収(株式譲渡)は、買収対象となる企業の株主(売手)から株式を取得する手法で、最もシンプルな手法と言えます。法人格をそのまま維持したい、既存の契約関係や許認可等をそのまま維持したい場合等に検討されます。

 

 

 

 

 

 

事業買収(事業譲渡)は、買収対象となる事業を行う売手から事業の全部又は重要な一部を取得する手法で、株式買収(株式譲渡)に比べて手続は煩雑になります。取得する資産・負債を選択したい、簿外債務を切り離したい場合等に検討されます。

 

 

 

 

 

 

ストラクチャーの検討では、誰が買収するのかという点が論点になることもあります。クロスボーダーの案件では特に論点となり、日本企業が買収するよりも、その海外子会社が買収する形を採る方が、租税条約の関係で源泉税率が軽減される等、税務上の有利・不利が生じることも少なくありません。

 

 

2.オーナー企業を買収する場合


(1)株式買収(株式譲渡)と事業買収(事業譲渡)の比較

よくあるケースとして、オーナー企業を買収する場合を例に、株式買収(株式譲渡)と事業買収(事業譲渡)で税負担にどの程度の差が生じるのか検討してみましょう。

 

 

 

 

(前提)

✓対象会社の株式(事業)の譲渡価額は2,000百万円

✓売手株主が保有する対象会社の株式の取得価額は100百万円

✓法人税率は30%、譲渡所得の税率は20%、配当所得の税率は50%

 

 

(売手サイドの税負担)

①株式買収(株式譲渡)の場合

✓対象会社:影響なし(株主が変わるのみ)

✓売手の株主:取得価額100百万円の株式を譲渡価額2,000百万円で譲渡した結果、譲渡所得は1,900百万円となり、税負担は380百万円(=1,900百万円×20%)となります。

 

②事業買収(事業譲渡)の場合

✓対象会社:純資産500百万円の事業を譲渡価額2,000百万円で譲渡した結果、譲渡益は1,500百万円となり、税負担は450百万円(=1,500百万円×30%)となります。

✓売手の株主:対象会社を清算して資金を回収した結果、配当所得は1,050百万円(=1,500百万円-450百万円)となり、税負担は525百万円(=1,050百万円×50%)となります(ここでは簡便的に計算しています)。

 

 

 

 

 

(買手サイドの税負担)

①株式買収(株式譲渡)の場合

✓対象会社:影響なし(株主が変わるのみ)

✓買手の株主:影響なし(株式を取得するだけで税負担は生じない)

 

②事業買収(事業譲渡)の場合

✓受皿会社:純資産500百万円の事業を譲渡価額2,000百万円で取得した結果、1,500百万円の資産調整勘定(いわゆる、税務上ののれん)が発生します。資産調整勘定はその後の償却を通じて450百万円(=1,500百万円×30%)の税負担を軽減することができます。

✓買手の株主:影響なし(事業を取得するだけで税負担は生じない)

 

 

 

 

 

上記は非常にシンプルな例ですが、売手側には株式買収(株式譲渡)の方が有利、買手側には事業買収(事業譲渡)の方が有利となり、売手・買手の合計で考えると株式買収(株式譲渡)の方が有利と言えます。オーナー企業を買収する場合には、オーナーの税負担の観点から株式買収(株式譲渡)が採用されることが多いです。ただし、売手の都合で事業買収(事業譲渡)の方が望ましい場合もある点には留意が必要です。

 

 

 

(2)役員退職慰労金の利用

上述のとおり、一般的には、オーナー企業を買収する場合には株式買収(株式譲渡)が採用されることが多いですが、単純に株式を売買するだけでなく、役員退職慰労金の支払いと組み合わせた手法が採られることが少なくありません。

 

例えば、上記のケースは対象会社の株式の譲渡価額は2,000百万円ですが、2,000百万円のうち400百万円を役員退職慰労金として支給し、株式の譲渡価額を1,600百万円に引き下げるという手法が考えられます。売手(オーナー)から見ると、総額2,000百万円を受領することに違いはなく、また譲渡所得と退職所得の税負担はそれほど大きくは変わりません。買手から見ると、総額2,000百万円を支払うことに違いはなく、また役員退職慰労金は対象会社において損金の額に算入されますので、400百万円×30%=120百万円の節税メリットが得られます。

 

なお、役員退職慰労金は、税務調査において不相当に高額と指摘された場合には、不相当に高額な部分について損金の額に算入することができません。過大な役員退職慰労金として否認されないように留意する必要があります。

 

 

3.他社の子会社を買収する場合


(1)株式買収(株式譲渡)と事業買収(事業譲渡)の比較

よくあるケースとして、他社の子会社を買収する場合(対象会社の株主が法人の場合)を例に、株式買収(株式譲渡)と事業買収(事業譲渡)で税負担にどの程度の差が生じるのか検討してみましょう。

 

 

 

(前提)

✓対象会社の株式(事業)の譲渡価額は2,000百万円

✓売手株主が保有する対象会社の株式の取得価額は100百万円

✓法人税率は30%

 

 

(売手サイドの税負担)

①株式買収(株式譲渡)の場合

✓対象会社:影響なし(株主が変わるのみ)

✓売手の株主:取得価額100百万円の株式を譲渡価額2,000百万円で譲渡した結果、譲渡益は1,900百万円となり、税負担は570百万円(=1,900百万円×30%)となります。

 

②事業買収(事業譲渡)の場合

✓対象会社:純資産500百万円の事業を譲渡価額2,000百万円で譲渡した結果、譲渡益は1,500百万円となり、税負担は450百万円(=1,500百万円×30%)となります。

✓売手の株主:影響なし(受取配当金の益金不算入により税負担は生じない)

 

 

 

 

 

(買手サイドの税負担)

①株式買収(株式譲渡)の場合

✓対象会社:影響なし(株主が変わるのみ)

✓買手の株主:影響なし(株式を取得するだけで税負担は生じない)

 

②事業買収(事業譲渡)の場合

✓受皿会社:純資産500百万円の事業を譲渡価額2,000百万円で取得した結果、1,500百万円の資産調整勘定(いわゆる、税務上ののれん)が発生します。資産調整勘定はその後の償却を通じて450百万円(=1,500百万円×30%)の税負担を軽減することができます。

✓買手の株主:影響なし(事業を取得するだけで税負担は生じない)

 

 

 

 

 

上記は非常にシンプルな例ですが、売手側には事業買収(事業譲渡)の方が有利、買手側には事業買収(事業譲渡)の方が有利となり、売手・買手の合計で考えても事業買収(事業譲渡)の方が有利と言えます。実務上は消費税や不動産取得税等、その他の税負担も考慮の上で検討する必要があります。

 

 

 

 

(2)配当金の利用

上述のとおり、他社の子会社を買収する場合(対象会社の株主が法人の場合)には、一般的に事業買収(事業譲渡)の方が税務上はメリットがあるとされていますが、株式買収(株式譲渡)の場合でも配当金の支払いと組み合わせることで、それに近いメリットを得るという手法が採られています。

 

例えば、上記のケースは対象会社の株式の譲渡価額は2,000百万円ですが、2,000百万円のうち400百万円を株式譲渡の前に配当金として対象会社から支給することで、株式の譲渡価額を1,600百万円に引き下げるという手法が考えられます。売手から見ると、総額2,000百万円を受領することに違いはなく、また受取配当金の益金不算入の適用を受けることで、配当金で受け取る分について税負担を軽減することが出来ます。買手から見ると、総額2,000百万円を支払うことに違いはなく、税負担も変わりません。

 

✓売手の株主:取得価額100百万円の株式を譲渡価額1,600百万円(=2,000百万円-400百万円)で譲渡した結果、譲渡益は1,500百万円となり、税負担は450百万円(=1,500百万円×30%)となります。配当金として受領した400百万円は、受取配当金の益金不算入の適用を受けることで、税負担は生じません。結果として、上記の例では事業買収(事業譲渡)の場合の税負担(450百万円)と変わらない結果となっています。

 

 

 

 

なお、配当金の支払いと組み合わせた手法について、連結納税制度に加入している連結子会社を買収する場合には有効な手法とならない点に留意する必要があります。また、連結納税制度に加入していない子会社を買収する場合であっても、令和2年度の税制改正により、その子会社(対象会社)が過去に買収した会社の場合等では同様の効果が得られない可能性がある点についても留意する必要があります。

 

 

4.買収対象に多額の繰越欠損金がある場合


買収対象に多額の繰越欠損金がある場合、株式買収(株式譲渡)の手法を採用すると、買手はその後その繰越欠損金を利用することができるというメリットがあります。繰越欠損金には使用期限(9年~10年)がありますので、その繰越欠損金が発生した時期や、その後の使用見込み等を勘案する必要はありますが、株式買収(株式譲渡)を採用する一つのメリットとなります。

 

 

5.終わりに


M&Aに際しては、最適なストラクチャーを検討することになりますが、そこでは税務の観点からだけでなく、事業の観点や法務の観点等、様々な観点から検討されることになります。事業の観点から検討した結果、株式買収(株式譲渡)の選択肢しか考えられない場合、あるいは、法務の観点から検討した結果、事業買収(事業譲渡)の選択肢しか考えられない場合等、その他の観点から検討した結果、採り得るストラクチャーが限られることもあります。税務上の有利・不利も確かに重要ですが、常にあらゆる選択肢を詳細に検討するというのも非効率と言えます。ストラクチャーの検討に際しては、考慮すべき事項を挙げて優先度を明確にしておくことで、効果的・効率的に検討を進めることができます。

[M&A案件情報(譲渡案件)](2020年9月24日)

-以下のM&A案件(3件)を掲載しております-

 

●店舗・公共施設・工場等の電気工事業者

[業種:電気工事業/所在地:中部地方]

●有資格者在籍、地元に根差した建築工事業者

[業種:建築工事業/所在地:中部地方]

●研究開発力、技術力に強みのある飲料メーカー

[業種:飲料製造業/所在地:中部地方]

 

 

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(お問い合せ・ご相談は「無料会員登録」が必要です)

 


案件No.SS006321
店舗・公共施設・工場等の電気工事業者

 

(業種分類)建設・土木

(業種)電気工事業

(所在地)中部地方

(直近売上高)1~5億

(従業員数)10~50名

(譲渡スキーム)株式譲渡

(事業概要)電気設備工事・電気土木工事に幅広く対応可能。

 

〔特徴・強み〕

◇大手企業との取引口座あり、業績堅調。
◇有資格者多数在籍。
◇公共工事入札参加資格「Aランク」を保有。

 

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案件No.SS005987
有資格者在籍、地元に根差した建築工事業者

 

(業種分類)建設・土木

(業種)建築工事業

(所在地)中部地方

(直近売上高)1~5億

(従業員数)10名以下

(譲渡スキーム)株式譲渡

(事業概要)建築・土木工事

 

〔特徴・強み〕

◇民間工事だけでなく、公共工事を数多く手掛けている。
◇一級建築士複数名在籍。
◇入札参加資格の格付けはAランクの評価。

 

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案件No.SS005182
研究開発力、技術力に強みのある飲料メーカー

 

(業種分類)製造業

(業種)飲料製造業

(所在地)中部地方

(直近売上高)10~50億

(従業員数)50~100名

(譲渡スキーム)株式譲渡

(事業概要)飲料メーカー

 

〔特徴・強み〕

◇高度な技術力で特殊な飲料製造を手掛けている。
◇商品の企画開発から製造、販売まで一貫した生産体制にて対応。
◇日本全国に優良取引先を有している。

 

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情報提供会社:株式会社ストライク

 

 

 

 

【免責事項】

・掲載情報は、内容及び正確さに細心の注意をはらい、万全を期しておりますが、人為的なミスや機械的なミス、調査過程におけるミスなどで誤りがある可能性があります。税務研究会及び情報提供会社は、当該情報に基づいて被ったいかなる損害についても一切の責任を負うものではありません。

・掲載情報は公開日時点の情報になります。既に案件が特定の対象会社と交渉に入っている場合や成約している場合もございます。

 

 

 

 

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[経営企画部門、経理部門のためのPPA誌上セミナー]

【第9回】PPAで使用する事業計画とは?

 

〈解説〉

株式会社Stand by C(大和田 寛行/公認会計士・税理士)

 

 

前回は無形資産の経済的耐用年数について詳しく解説します。第9回は,無形資産評価において用いられる事業計画について解説します。なお,以下の解説は,無形資産の測定においてインカム・アプローチを採用する場合を前提としています。

 

 

▷第7回:WACC、IRR、WARAと各資産の割引率の設定とは?

▷第8回:PPAにおいて認識される無形資産の経済的対応年数とは?

▷第10回:PPAの特殊論点とは?ー節税効果と人的資産ー

 

 

 

1.使用される事業計画について

PPAにおける無形資産評価は,端的に言えば,事業計画上の将来キャッシュ・フローからもたらされる経済的価値を,無形資産の価値とのれんの価値に配分する手続です。

 

第5回でも解説したように,無形資産の評価は,公正価値アプローチに基づき行われます。

繰り返しになりますが,公正価値とは「測定日時点で,市場参加者間の秩序ある取引において,資産を売却するために受け取るであろう価格又は負債を移転するために支払うであろう価格」であり,無形資産の評価は,一般的な市場参加者の見地に立って行わなければならないことを意味しています。

事業計画についても,上述のような公正価値アプローチに基づき策定されたものを使用することが求められます。

 

それでは,公正価値アプローチに基づき一般的な市場参加者の見地に立った事業計画とはどのようなものでしょうか。

 

M&Aのプロセスにおいて,企業価値や株式価値の算定にあたっては,複数の事業計画を用いて検討されることが一般的です。これは,将来のビジネスの予測にはリスクや不確実性が伴うためであり,競合状況や市場の成長性といった外部環境,新製品開発の成否やシナジーの発現等,企業内外のさまざま要素を考慮して複数のシナリオを想定することが通常です。

 

M&Aにおいては,当然のことながら,売り手は高く売却したいと考え,買い手は安く譲り受けたいと考えます。買収金額は,買い手と売り手が合意した価格ですが,買い手と売り手の交渉力等に左右されるものの,多くの場合,概ねスタンドアロン価格をベースに一定程度買い手のシナジーを加味した金額で合意されるものと考えられます。

 

 

【図表1】買収価格とシナジーのイメージ

 

 

無形資産評価の一般的な実務においては買い手「固有」のシナジーを除いた事業計画が使用されます。

「固有」とは,買い手のみがコントロールし実現できることを意味します。買い手固有のシナジーは,それを実現できる買い手にとってのみ価値を有するものの,一般的な市場参加者からみた場合その価値を実現できるものではないため無形資産の価値を構成しない,という考え方が基礎となっています。

買い手固有のシナジーによりもたらされるキャッシュ・フローは,無形資産ではなくのれんを構成することとなります。

 

一方で,買い手が実現可能なシナジーのうち客観的に見て誰が買い手となる場合であっても実現可能と考えられるシナジーは,事業計画上考慮しなければならない点には留意が必要です。

 

それらに該当するものとしては,例えば,事業規模拡大に伴うスケールメリットや,管理体制一元化によるコスト削減といったシナジーが考えられます。

 

 

【図表2】WACC,IRR,WARAの関係図

 

 

 

2.実務上の対応

一般的な無形資産評価の実務では,買い手企業と外部評価者の間で,どの事業計画を無形資産評価において使用すべきかについてディスカッションが行われます。

 

その結果,実際の買収価額と整合的な事業計画が使用される場合が多いです。そのような事業計画は,案件によってベースケースであったり,コンサバティブケースであったりとさまざまですが,買い手固有のシナジーを含まない点において共通しています。

 

使用される事業計画を決定したら,当該事業計画数値をもとに無形資産の測定を行います。中でも重要なプロセスは下記の2点です。

 

 

(1)IRRの算定

買収価格と事業計画上の将来キャッシュ・フローをもとにプロジェクトのIRRを算出します。

第7回で解説したとおり,IRRの算定は無形資産の測定に用いるWACCが合理的な水準かどうかを確認するために行われます。IRRは,買収価格及び投資実行時期と,事業計画上の将来キャッシュ・フロー金額及びその発生時期を設定の上,エクセルのXIRR関数を用いれば容易に計算が可能です。

 

公正価値アプローチの考え方に立つと,ここで用いられる買収価格は一般的な市場参加者が想定する金額であり,買い手が支払ったプレミアムを除いた金額となります。

 

同時に,事業計画上の将来キャッシュ・フローについても,買い手固有のシナジー効果による影響を除外した金額となります。このような前提の下,算出されたIRRが,設定されたWACCに近似しているかどうかが判断のポイントとなります。

 

ここで留意すべきは,設定されたWACCの水準が無形資産価値に重大な影響を与えるという点です。WACCの合理性がIRRによって確かめられた後,当該WACCとWARAが一致するように無形資産を含む各資産の期待収益率が設定されることとなりますが,その水準によって,最終的に算定される無形資産の金額が大きく異なることはお分かり頂けるかと思います。

 

 

【図表3】キャッシュ・フロー配分の概念図

 

 

算出されるIRRは,買収金額とそれに整合する事業計画が入手可能な場合,当然のことながらWACCに近似する値となります。しかし,実務では,入手可能な事業計画が買収金額と整合しないケースもあり,その場合算出されたIRRと想定されるWACCに差異が生じることがあります。そのような場合,以下のような要因が考えられます。

 

 

① IRR<WACCとなるケース

一般投資家の想定よりも高い価格で買収が行われている,あるいは,買収価格に買い手が支払ったプレミアムが含まれてしまっている場合が考えられます。

 

また,事業計画が過度に弱気である可能性があります。例えば,事業計画に一般的な市場参加者からみて当然に享受できると考えられるシナジーが織り込まれていないような場合が考えられます。

 

 

② IRR>WACCとなるケース

一般投資家の想定よりも低い価格で買収が行われている,または,事業計画が過度に楽観的または強気である可能性があります。また,買い手固有のシナジー等がキャッシュ・フローに含まれてしまっているような場合も考えられます。

 

実務上は,上記要因による影響を勘案して,事業計画を一般的な市場参加者が想定する水準へ可能な限り調整し,WACCの合理性を判断することになります。

 

 

(2)価値測定におけるキャッシュ・フローの検討

 

続いて,ロイヤリティ免除法や超過収益法といった評価技法を用いて,無形資産の測定に使用する事業計画を基礎として,どのように無形資産の測定を行うかを検討することとなります。

 

事業計画上の将来キャッシュ・フローに基づき無形資産を評価することは,将来キャッシュ・フローの価値を,無形資産とのれんの価値に配分することです。

 

また,無形資産は,評価基準日時点に存在する顧客・契約・技術・製品等から生じるキャッシュ・フローに基づき測定・評価されます。よって,対象企業が将来獲得する顧客や契約,技術等からもたらされるキャッシュ・フローは,無形資産ではなくのれんの価値を構成することとなる点に留意が必要です。

 

 

① 商標権の場合

測定される無形資産が商標権の場合,評価手法は多くのケースでロイヤリティ免除法が採用されます。ロイヤリティ免除法は将来の売上高に一定のロイヤリティレートを乗じたロイヤリティ収入をもとに無形資産価値を算定する評価技法ですが,将来売上高は,使用される事業計画における商標関連事業の想定売上をそのまま採用することが一般的といえます。

 

 

② 顧客資産の場合

一方,顧客資産の場合は商標権と少々取扱いが異なる点に留意を要します。顧客資産の測定においては超過収益法を採用することが一般的ですが,前述のように,測定対象となるのは評価基準日時点に既に存在する顧客であることから,その価値を測定する際には事業計画上の数値に調整を加える必要があります。

 

当該調整は,主に新規顧客からもたらされる価値を除外することと,測定対象となる既存顧客の減少率を考慮することの2点です。

 

通常,事業計画上のキャッシュ・フローには将来獲得が期待される新規顧客からもたらされる価値が含まれるため,当該価値について顧客資産の価値を構成するキャッシュ・フローから除く必要があります。

 

また,前回も述べたように,長い期間でみると顧客は入れ替わりが生じると考えることが合理的であることから,有限の経済的耐用年数を設定し,当該年数に即した減少率を考慮することとなります。

 

 

3.まとめ

無形資産価値の測定に使用する事業計画については,一般的な市場参加者が想定するであろう事業計画を使用するという点が最も基本的かつ重要であると考えます。買い手企業においては,PPAにおいてこのような要請があることを理解して,予め事業計画上のキャッシュ・フローの構成について整理・把握しておくことが必要です。

 

次回は,人的資産と節税効果について解説します。

 

 

 

 

—本連載(全12回)—

第1回 PPA(Purchase Price Allocation)の基本的な考え方とは?

第2回 PPAのプロセスと関係者の役割とは?

第3回 PPAにおける無形資産として何を認識すべきか?
第4回 PPAにおける無形資産の認識プロセスとは?
第5回 PPAにおける無形資産の測定プロセスとは?
第6回 PPAにおける無形資産の評価手法とは?-超過収益法、ロイヤルティ免除法ー
第7回 WACC、IRR、WARAと各資産の割引率の設定とは?
第8回 PPAにおいて認識される無形資産の経済的対応年数とは?
第9回 PPAで使用する事業計画とは?
第10回 PPAの特殊論点とは?ー節税効果と人的資産ー
第11回 PPAプロセスの具体例とは?-設例を交えて解説ー
第12回 PPAを実施しても無形資産が計上されないケースとは?

 

 

 

 

 

 

 

[解説ニュース]

特定生産緑地制度の税務上の留意点について

 

〈解説〉

税理士法人タクトコンサルティング(猪狩 祐介/税理士)

 

 

 

【問】

私は東京都A市に農地を所有し、農業を営んでいます。私の父は所有していた農地の全部について、A市より平成4年(1992年)11月に生産緑地の指定を受けており、私は父から平成10年にその生産緑地の全部を相続し、農業相続人として農地等に係る相続税の納税猶予(措法70の6)の適用を受けています。

 

生産緑地の指定を継続する場合には、その指定の告示から30年経過する前に、A市による「特定生産緑地(生緑法10の2)の指定(10年継続)」を受ける必要があると聞きました。生産緑地の指定から30年を経過する2022年において、特定生産緑地の指定を受ける場合と受けない場合とで、私の相続税の納税猶予や固定資産税の課税にどのような影響がありますか。

 

【回答】

1.特定生産緑地制度の概要


①特定生産緑地制度とは

特定生産緑地制度とは、市町村が、生産緑地指定から30年を経過する日(申出基準日)が近く到来することとなる生産緑地のうち、その周辺の地域における公園、緑地整備の状況など勘案して、申出基準日以後もその保全を確実に行うことが良好な都市環境の形成を図る上で特に有効であると認められるものを、特定生産緑地として指定することをいいます(生緑法10の2)。いわば再指定され た生産緑地を特定生産緑地といいます。

 

②特定生産緑地の指定を受ける場合

特定生産緑地の指定を受けると、10年間の営農義務が課されますが、固定資産税は、従来通り農地課税(低い金額)になります。相続税の納税猶予も営農している限り継続されることになります(措法70の6)。また、特定生産緑地の指定を受けた後でも、生産緑地の所有者である主たる従事者が死亡した等の場合は、相続人が相続税の納税猶予の適用を受けることや、買取りの申出をして生産緑地の指定の解除をすることができます(生緑法10)。

 

③特定生産緑地の指定を受けない場合

特定生産緑地の指定を受けない場合、農地に対する固定資産税は5年をかけて段階的に宅地並み課税になります。現在受けている相続税の納税猶予については、当代に限り継続されますが、次の世代では、生産緑地の指定を受けていないことから、新たに相続税の納税猶予を受けることができません。

 

 

 

 

2.農業相続人の有無別の特定生産緑地の指定と税務上の留意点


特定生産緑地の指定をめぐる税務上の取扱いは、あなたの相続時に相続人となる人のなかに、農業の後継者(農業相続人)がいるかどうかにより、次の通りに区分されます。

 

①農業相続人がいる場合
相続税の納税猶予の適用を受けている場合には、猶予を継続するため、終身営農が必要となります。特定生産緑地の指定を受けなかった場合でも、営農している限り、あなたの納税猶予は打ち切りになりませんが、あなたの親族に農業の後継者がいる場合であっても、あなたの相続において相続税の納税猶予の適用を受けることができず、固定資産税も宅地並み課税となるため、特定生産緑地の指定を受けておくことが望ましいと考えられます。

 

②農業相続人がいない場合
次の世代に農業相続人となる人がいない場合

 

(イ)特定生産緑地の指定を受け10年間営農を継続する(10年毎に継続の可否を判断)
(ロ)30年経過前に買取りの申出を行い、生産緑地の指定を解除し、土地の有効活用を行う。
(ハ)特定生産緑地の指定を受けず、買取りの申出も行わず、いつでも買取りの申出ができる状態で営農を継続する。

 

の3つから選択することになります。

 

引き続き税制上のメリット(固定資産税の農地課税、相続税の納税猶予)を受けるためには、上記(イ)を選択することとなります。対して、宅地に転用して活用するのであれば(ロ)(ハ)を選択することになります。ただし、買取りの申出を行うと、納税猶予が打ち切りとなり、あなたは相続税額と利子税を一括で納付することになります。

 

 

将来農地をどのように維持するかは、税制面からも重要な問題です。特定生産緑地の指定を受けるかどうかについては、農地税制に詳しい税理士に相談しながら検討してください。

 

 

 

 

 

 

税理士法人タクトコンサルティング 「TACTニュース」(2020/09/23)より転載

[M&Aニュース](2020年9月7日〜9月18日)

◇日本ケミファ、希望退職者に42人応募、◇極東産機<6233>、エイチアンドエフ傘下のROSECCを子会社化、◇じげん<3679>、介護・保育関連人材サービスのPCHホールディングスを子会社化、◇ケアサービス<2425>、広域社会福祉会の訪問介護事業を取得、◇Cominix<3173>、切削工具卸売の澤永商会を子会社化、◇ビーグリー<3981>、ぶんか社・海王社など5出版社を傘下に持つNSSK-CCを子会社化、◇テイクアンドギヴ・ニーズ<4331>、海外・リゾート挙式子会社のグットラック・コーポレーションをケン不動産リースに譲渡、◇ソフトバンクグループ<9984>、携帯端末卸販売の米ブライトスターを投資ファンドに譲渡、◇バンダイナムコホールディングス<7832>、家庭用ゲームコンテンツ制作のカナダReflector Entertainmentを子会社化、◇フリービット<3843>、薬局ソリューション子会社のフリービットEPARKヘルスケアを日本事業承継アントレプレナーズに譲渡、◇TSIホールディングス、300人規模の希望退職者を募集 ほか

 

 

 

日本ケミファ、希望退職者に42人応募

日本ケミファは18日、希望退職者募集に42人の応募があったと発表した。グループ構造改革実施の一環として支店・営業所の医薬営業部門社員を対象に、8月7日~11日(当初の28日から締め切り日を短縮)に30人規模で募った。退職日は9月30日。割増退職金を支給し、再就職支援サービスを提供する。

極東産機<6233>、エイチアンドエフ傘下のROSECCを子会社化

極東産機は、FA関連の自動化システムを開発・製造するROSECC(名古屋市。売上高6億3000万円、営業利益700万円、純資産5億6300万円)の全株式を取得し、子会社化することを決めた。ROSECCはプレス機械メーカーのエイチアンドエフ(福井県あわら市)の傘下企業。

取得価額は非公表。取得予定日は2020年10月1日。

じげん<3679>、介護・保育関連人材サービスのPCHホールディングスを子会社化

じげんは、介護・保育関連の人材サービスを手がけるPCHホールディングス(東京都港区)の全株式を取得し子会社化することを決めた。人材領域での事業加速が狙い。PCHは持ち株会社で、傘下にHITOWAキャリアサポート(東京都港区。売上高22億円、経常利益1億1400万円、純資産6億300万円)を持つ。

HITOWAキャリアサポートは2008年に設立。「スマイルサポート介護」「スマイルサポート保育」などの人材紹介・派遣事業を展開し、法人数にして約2200の顧客基盤を持つ。

取得価額は1億8800万円。取得予定日は2020年9月30日。

ケアサービス<2425>、広域社会福祉会の訪問介護事業を取得

ケアサービスは、広域社会福祉会(東京都大田区)の訪問介護事業(売上高2760万円、営業利益36万円)を取得することを決めた。ドミナント(集中出店)戦略のかなめである東京23区内での事業基盤強化の一環。ケアサービスは大田区内で展開している訪問介護、訪問入浴、居室介護支援、デイサービスなどとの相乗効果を見込む。

取得価額は500万円。取得予定日は2020年11月1日。

Cominix<3173>、切削工具卸売の澤永商会を子会社化

Cominixは、切削工具卸売の澤永商会(福岡市。売上高3億4300万円、営業利益1000万円、純資産1億4700万円)の全株式を取得し子会社化することを決めた。澤永商会は1951年に設立し、70年の業歴を持つ。Cominixは、優良顧客を持ちながら後継者不在などの経営上の課題のある同業の地場企業との戦略的提携を推し進めており、この一環。

取得価額は非公表。取得予定日は2020年9月25日。

ビーグリー<3981>、ぶんか社・海王社など5出版社を傘下に持つNSSK-CCを子会社化

ビーグリーは、女性向け漫画を中心に出版社5社を傘下に持つNSSK-CC(東京都港区)の全株式を取得し子会社化することを決めた。ビーグリーはコミック配信サービス「まんが王国」を中核事業とする。コンテンツ販売に加え、成長が続く電子書籍市場での事業拡大につなげる。取得価額は約53億円。取得予定日は2020年10月8日。

NSSK-CCが傘下に置く出版社は、連続ドラマ化作品の「義母と娘のブルース」をはじめ優良作品を多数持つという。近年はデジタル出版にも力を入れている。傘下の5社は次のとおり。

①ぶんか社(東京都千代田区。売上高44億8000万円、営業利益8億6900万円、純資産50億4000万円)、②海王社(同。売上高7730万円、営業利益2790万円、純資産8980万円)、③新アポロ出版(同。売上高6000万円、営業利益1500万円、純資産4910万円)、④文友舎(同。売上高5億9300万円、営業利益220万円、純資産2510万円)、⑤楽楽出版(同。売上高4億5800万円、営業利益△741万円、純資産234万円)。

テイクアンドギヴ・ニーズ<4331>、海外・リゾート挙式子会社のグットラック・コーポレーションをケン不動産リースに譲渡

テイクアンドギヴ・ニーズは、海外・リゾートウエディング子会社のグッドラック・コーポレーション(東京都品川区。売上高111億円、営業利益△2億4500万円、純資産21億6000万円)の全保有株式(所有割合91.8%)を、ケン不動産リース(東京都港区)に譲渡することを決めた。

海外・リゾートウエディング事業を巡ってはかねて競争激化に伴い収益性が課題となっていたが、新型コロナウイルスの影響が加わり、経営環境が厳しさを増していた。テイクアンドギヴはケン不動産リースがグアムで運営するホテルで海外挙式を展開し、取引関係があった。

譲渡価額は非公表。譲渡予定日は2020年9月30日。

ソフトバンクグループ<9984>、携帯端末卸販売の米ブライトスターを投資ファンドに譲渡

ソフトバンクグループ(SBG)は18日、100%子会社で携帯端末卸販売の米ブライトスター(デラウェア州。売上高9550億円、営業利益△53億2000万円、税引き前利益△144億円)を、米投資ファンドのブライトスター・キャピタル・パートナーズ(ニューヨーク州)が設立する新会社に譲渡すると発表した。ブライトスターを傘下に置く持ち株会社の全株式を譲渡し、対価として現金と新会社の株式25%を受け取る。譲渡価額は非公表としている。譲渡完了は2021年3月中を見込む。

SBGは2014年にブライトスターを約1100億円で買収した。譲渡先のブライトスター・キャピタル・パートナーズはブライトスターの元幹部らが設立した投資ファンド。

バンダイナムコホールディングス<7832>、家庭用ゲームコンテンツ制作のカナダReflector Entertainmentを子会社化

バンダイナムコホールディングスは、家庭用ゲームコンテンツ企画・開発のカナダReflector Entertainment Ltd.(モントリオール)の全株式を取得し子会社化することを決めた。バンダイの欧州子会社はReflectorと連携して家庭用ゲームの新作タイトル「Unknown 9: Awakening」の開発に取り組んでいる。重要パートナーの同社を傘下に取り込むことで、欧米の家庭用ゲームで日本発タイトルと現地発タイトルのバランスのとれた商品構成を目指す。

取得価額は18億6400万円。2020年12月末に取得完了の予定。

フリービット<3843>、薬局ソリューション子会社のフリービットEPARKヘルスケアを日本事業承継アントレプレナーズに譲渡

フリービットは、薬局向ソリューションを提供する子会社のフリービットEPARKヘルスケア(東京都渋谷区。売上高32億1000万円、営業利益2億4400万円、純資産△1億7300万円)の株式47.53%を、日本事業承継アントレプレナーズ(東京都渋谷区)に譲渡することを決めた。モバイル事業、アドテクノロジー事業といったコア(中核)領域に経営資源を集中し、新型コロナウイルス感染拡大を発端とする社会の新常態(ニューノーマル)に対応した収益基盤確立につなげる。

譲渡価額は18億1100万円。譲渡予定日は2020年10月30日。

フリービット<3843>、通信教育用教材・語学系出版物子会社のアルクを日本事業承継アントレプレナーズに譲渡

フリービットは、通信教育用教材や語学系出版物の制作などを手がける100%子会社のアルク(東京都千代田区。売上高58億円、営業利益△2億5600万円、純資産11億1000万円)の全株式を、日本事業承継アントレプレナーズ(東京都渋谷区)に譲渡することを決めた。事業の選択と集中の一環。譲渡価額は9億9900万円。譲渡予定日は2020年11月30日。

TSIホールディングス、300人規模の希望退職者を募集

TSIホールディングスは16日、グループ全体の本部部門で300人規模の希望退職者を募集すると発表した。本部のスリム化と機能重複の解消が狙い。40歳以上のグループ各社の直接雇用者(正社員、契約社員、パート・アルバイト)が対象者で、募集期間は10月1日~2021年2月28日。転進支援金を別途支給するほか、再就職支援サービスを提供する。

グループ全体の生産管理・物流管理を担うTSI・プロダクション・ネットワーク(東京都港区)、衣料品の通販・電子商取引を手がけるTSI ECストラテジー(同)など3機能子会社を含め、国内事業子会社を1社に統合する組織再編の一環。

TSIホールディングスは2020年3~8月(上期)に88店舗を閉店。下期(9月~2021年2月)はさらに122店舗の閉店を予定。これにより、2021年2月末の出店を含めた店舗数は951店舗(2020年2月末は1074店舗)となる見込み。

チムニー、希望退職に予定を5割上回る152人が応募

チムニーは15日、希望退職者に152人の応募があったと発表した。正社員(7月末、971人)を対象に100人程度を募ったところ、予定数を5割上回った。退職日は9月30日。同社は居酒屋「はなの舞」を中心に外食事業を展開するが、新型コロナウイルスによる業績悪化などで72店舗の閉鎖を決定したのに伴い、人員体制を見直す。特別退職加算金を支給し、再就職支援サービスを提供する。

菊池製作所<3444>、ハルバッハモーター開発のマグネイチャーを子会社化

菊池製作所は、ハルバッハモーター開発のマグネイチャー(東京都八王子市。売上高10万円、営業利益△3710万円、純資産693万円)の株式を追加取得し子会社化することを決めた。1億円の増資を引き受け、現在21.23%の持ち株比率を51.01%に引き上げる。マグネイチャーは2019年3月に工学院大学の森下明平教授と横山修一名誉教授がハルバッハモーターの実用化を目指して発足した会社で、菊池製作所が持ち分法適用関連会社としていた。

Link-U<4446>、遺品整理などのマッチングサービスを提供するリベラルマーケティングを子会社化

Link-Uは、遺品整理や害虫駆除に関するやマッチングサービスを提供するリベラルマーケティング(岡山市。売上高2億6900万円、営業利益2770万円、純資産1億2600万円)の株式72%を取得し、子会社化することを決めた。Link-Uはマンガを中心としたコンテンツ配信サービスを主力とする。リベラルマーケティングを傘下に取り込み、サービス領域を広げる。取得価額は5億700万円。2020年9月30日に株式52%、2021年9月30日に20%を追加取得する。

リベラルマーケティングはマッチングサイトとして「片付け110番」、「クジョカツ!」「ソウテラス(葬テラス)」「骨董品買取りセンター」を運営する。

サトーホールディングス<6287>、印刷技術開発・販売の英国子会社DataLaseを経営陣に譲渡

サトーホールディングスは、印刷技術の開発・販売に関する英国子会社DataLase Ltd.(DL。売上高3億4600万円、営業利益△6億4100万円、純資産5億9300万円)の全株式を、DL社の取締役ら経営幹部3氏が設立した新会社に15日付で譲渡した。MBO(経営陣による買収)の一環。サトーは2016年にDL社を子会社化したが、業績見通しが想定を大幅に下回る状況が続いていた。譲渡価額は非公表。

DL社は1987年設立。ラベルを使わずに、マルチカラー技術の感光顔料を用いて対象物に直接印刷する「インライン・デジタル・プリンティング」と呼ばれる技術を保有する。しかし、技術的課題が残り、事業化時期が遅れていた。

フェローテックホールディングス<6890>、半導体ウエハーの中国子会社の株式60%を地方政府などに譲渡

フェローテックホールディングスは、中国で半導体ウエハー(基板)を製造する全額出資子会社の杭州中欣晶圓半導体股份有限公司(FTHW、杭州市。売上高1200万円、純資産294億円)の株式60%を、現地の地方政府、民間の投資基金などに譲渡することを決めた。FTHWの中国株式市場への上場を目指すため、外部資本を導入する。譲渡価額は296億円。譲渡予定日は2020年10月15日。

フェローテックは中国でインゴット(結晶)からウエハーまでを一貫生産している。このうち、ウエハー製造を担うFTHWは2019年に立ち上げ、現在月間88万枚の生産体制を整えた。ただ、半導体ウエハー事業は巨額の設備投資を要するため、事業拡大には外部資本の導入を含めた資金調達の多様化が経営課題となっていた。上場にあたっては上海証券取引所、深圳証券取引所を想定している。

米中貿易摩擦の激化で中国では半導体の国産化の流れが従来以上に加速している。こうした状況下、中国政府は税制優遇や補助金などの各種支援を強化しているという。

ウィルズ<4482>、共通ポイント事業などをグループ展開するINMホールディングスを子会社化

ウィルズは、共通ポイント事業「ネットマイル」などをグループで展開するINMホールディングス(東京都千代田区。売上高8900万円、営業利益900万円、純資産3億5700万円)の全株式を取得し、子会社化することを決めた。ウィルズは株主優待商品交換サイト「プレミアム優待倶楽部」を主力とする。共通ポイント事業との連携のほか、ソーシャルメディアを活用した優待商品の販促などにつなげる。株式の取得価額は1円(ほかにアドバイザリー費用300万円)。取得予定日は2020年10月1日。

INMは持ち株会社で、傘下にネットマイル(同。売上高15億2000万円、営業利益△7200万円、純資産△1億7300万円)、ビットマイル(同。売上高0、営業利益△6700万円、純資産△1億2100万円)を持つ。INMは10月1日付でネットマイル、ビットマイルの2社を吸収合併したうえで、ウィルズがINMを子会社化する。

ネットマイルは2001年に日本初としてインターネット上の共通ポイントプログラムを事業化し、会員数は300万人超。

リグア<7090>、Webコンサルティングや通販事業のヒゴワンを子会社化

リグアは、Webコンサルティングや通信販売を手がけるヒゴワン(熊本市)の全株式を取得し子会社化することを決めた。接骨院向けの集客支援などソリューション事業を拡充するのが狙い。リグアは2649院の接骨院と取引実績を持つ。

取得価額は非公表。取得予定日は2020年9月25日。

JSR、50人程度の早期退職者を募る特別転進支援施策を実施

JSRは14日、50人程度の早期退職者を募る特別転進支援施策を実施すると発表した。対象は50歳以上58歳未満で勤続15年以上の上級職社員。募集期間は10月1日~15日。所定の退職金に特別加算金を上乗せして支給し、再就職支援サービスを提供する。事業変革の一環としてマネジメント体制の転換を推し進める。

2021年3月期業績予想は売上高10%減の4230億円、営業利益39%減の200億円、最終利益44%減の125億円。

マルシェ、20人程度の希望退職者を募集

マルシェは14日、20人程度の希望退職者を募ると発表した。内訳は関西地区の店舗に勤務する40歳以上の正社員で10人程度、本社勤務の正社員・契約社員で10人程度。募集期間は9月14日~25日。退職日は10月31日とする。マルシェは居酒屋「酔虎伝」「八剣伝」「居心伝」などを関西、東海地区を地盤に展開する。

新型コロナウイルスの影響による業績悪化を受け、2020年度(2021年3月期)中に関西地区の大型店舗を中心に直営店舗(129店舗、6月末)の1割以上にあたる約17店舗を閉店する。これに伴い、事業規模に見合った人員体制構築の一環として希望退職者を募る。特別退職加算金を支給し、再就職支援サービスを提供する。

同社の2021年3月期第1四半期(4~6月)業績は売上高が前年同期比67.9%減の6億9800万円、営業赤字2億8000万円(前年同期は4700万円の赤字)、最終赤字4億2700万円(同5700万円の赤字)だった。

ジャパンエレベーターサービスホールディングス<6544>、香川県の三好エレベータを子会社化

ジャパンエレベーターサービスホールディングスは、エレベーター保守管理の三好エレベータ(高松市。売上高6億3400万円、営業利益81万4000円、純資産4億6900万円)の株式51%を取得し子会社化することを決めた。これまで未展開だった中国・四国地区でのサービス提供が狙い。三好エレベータは1981年設立で、香川、岡山、高知を営業地盤とし、1800台を保守管理する。

取得価額は非公表。取得予定日は2020年10月1日。

ジャパンエレベーターサービスホールディングス<6544>、エレベーター保守管理のコスモジャパンを子会社化

ジャパンエレベーターサービスホールディングスは、エレベーター保守点検のコスモジャパン(青森県八戸市。売上高8340万円、営業利益△488万円、純資産△480万円)の全株式を取得し子会社化することを決めた。未展開だった東北地区でのサービス体制を整えるのが狙い。コスモジャパンは1988年設立で、青森、盛岡、仙台、鶴岡(山形県)エリアを中心に約400台の保守管理を手がける。

取得価額は非公表。取得予定日は2020年10月2日。

ソフトバンクグループ<9984>、傘下の英アームを米エヌビディアに4.2兆円で売却へ

ソフトバンクグループ(SBG)は14日、傘下の英半導体設計大手アーム(ケンブリッジシャー州。売上高2066億円、営業利益47億円、純資産4790億円)の全株式を、米半導体大手のエヌビディア(カリフォルニア州)に売却すると発表した。売却額は最大400億ドル(約4兆2000億円)。エヌビディアは自社の普通株式を買収対価の一部に充当するのに伴い、SBGはエヌビディア株式の約6.7~8.1%を保有し、主要株主となる。

英国、中国、EU(欧州連合)、米国などの規制当局の承認を前提に売却完了まで約18カ月、時期として2022年3月ごろを見込む。

SBGとエヌビディアは13日(米国時間)に最終契約を締結した。取引金額400億ドルのうち、エヌビディアは契約時にアームに20億ドルを現金で支払う。買収完了時にSBG側に現金100億ドルとエヌビディア株215億ドル相当が支払われる。さらにエヌビディアは買収後の業績に応じて最大50億ドルを同社株か現金のいずれかで支払うほか、アーム従業員に15億ドル相当の株式報酬を付与する。

SBGは2016年9月に、アームを約3兆3000億円で買収し、100%子会社化した。今回、4兆2000億円で売却することにより、9000億円規模の差益を得る形となる。SBGはアームについて、株式の再上場とエヌビディアへの売却の双方を検討していたが、後者を選択した。

アームはスマートフォンやタブレットなど携帯端末の頭脳部分にあたる半導体技術のトップ企業。一方、エヌビディアはAI(人工知能)処理やグラフィック関連の半導体開発で市場をリードする。

リズム時計工業、希望退職者に92人応募

リズム時計工業は11日、希望退職者募集に92人の応募があったと発表した。勤続3年以上で満40歳以上の正社員を対象とし、8月3日~7日に募った。募集人員は非公表。退職日は9月30日。主力の時計事業の市場縮小が続いているうえ、接続端子事業や車載部品事業も業績悪化に陥っており、事業規模に見合った人員体制とするのが目的。希望退職者には所定の額に特別退職金を加算して支給し、再就職支援サービスを提供する。

同社の2021年3月期第1四半期(4~6月)は売上高が前年同期比21.7%減の54億4400万円、営業赤字2億8600万円(前年同期は1500万円の黒字)、最終赤字17億6100万円(同7100万円の黒字)だった。

PR TIMES<3922>、Webメディア制作・企業PR支援のismを子会社化

PR TIMESはWebメディア制作や企業PR支援を手がけるism(東京都渋谷区)の全株式を取得し子会社化することを決めた。PR TIMESとismは今年2月に共同プロジェクトとしてPRナレッジメディア「PR TIMES MAGAZINE」を開設するなど、かねて協力関係にあった。

取得価額は非公表。取得予定日は2020年10月1日。

IsmはPR TIMESの傘下入りに伴い、女性向けライフスタイルマガジン「ism magazine」の運営に注力するという。

太平洋セメント<5233>、セメント・骨材の中国子会社を現地社に譲渡

太平洋セメントは、セメント・骨材を製造販売する中国子会社の秦皇浅野水泥有限公司(河北省。売上高57億円、営業利益4億円、純資産106億円)の出資持ち分(71.99%)のすべてを、コンクリート・原材料製造の秦皇島長陽混凝土有限公司(河北省)に譲渡することを決めた。今後成長が期待できる投資案件や投資地域への投資原資とする。譲渡価額は非公表。9月中に譲渡する予定。

秦皇浅野は1995年に設立し、生コンクリートメーカーやコンクリートパイル製造業者向けにセメント・骨材を納入してきた。業績は現地の旺盛な建設投資や原価低減などで安定的な利益を出してきたが、出資者の1人から太平洋セメントの持ち分について取得の打診があったという。

キリン堂ホールディングス<3194>、ベインキャピタルと組んでMBOで非公開化

キリン堂ホールディングス(HD)は10日、MBO(経営陣が参加する買収)によって株式を非公開化すると発表した。寺西忠幸会長ら現経営陣と協力して米投資ファンドのベインキャピタルがキリン堂HDにTOB(株式公開買い付け)を行う。買付代金は最大約338億円。ドラッグストア業界の成長が鈍化する中、短期的な業績変動にとらわれず、事業構造改革に向けて機動的かつ柔軟な意思決定を実現するのが狙い。

MBOを目的とするTOBの実施主体はベインキャピタルが設立した特別目的会社のBCJ-48(東京都千代田区)。キリン堂HD株の買付価格は1株につき3500円で、TOB公表前日の終値2512円に39.33%のプレミアムを加えた。買付予定数は所有割合85.26%にあたる966万879株。下限は588万4000株(所有割合51.93%)で、創業家の保有株式と合わせて所有割合が3分の2超になるように設定した。

買付期間は9月11日~10月26日。買付代理人は野村証券。決済の開始日は11月2日。

TOB成立を受けて三角合併などを実施。キリン堂HDの寺西忠幸会長、寺西豊彦社長ら創業家は非公開化後の新生・キリン堂HD株式の40%を保有する。

キリン堂HDは近畿地区を中心に約370店舗を展開する中堅ドラッグストア。1958年に寺西忠幸会長が創業した。2004年に東証1部に上場。2014年に持ち株会社制に移行した。

ローソン<2651>、ポプラ<7601>からコンビニ事業の一部を取得

ローソンは、ポプラの山陰地区におけるコンビニエンス事業の一部を取得することを決めた。「ポプラ」「生活彩家」「スリーエイト」ブランドで営業している店舗のうち140店舗を順次、「ローソン・ポプラ」「ローソン」ブランド店舗に転換する共同事業契約に基づき、対象店舗にかかる店舗資産と権利義務(賃貸借契約など)を承継する。取得価額は7億3100万円。取得予定日は2021年3月1日。

ローソンは2014年にポプラと資本業務提携し、現在、18%強の株式を持つ。原材料、商品の共同仕入れ、物流網の相互活用などに取り組み、2016年には山陰地区での「ローソン・ポプラ」ダブルブランド店舗の本格展開に向けて共同運営契約を結んだ。こうした取り組みをさらに推し進める。

コロワイド、大戸屋に経営陣刷新を目的に臨時株主総会開催を請求

コロワイドは9日、定食チェーンを展開する大戸屋ホールディングスに対するTOB(株式公開買い付け)の成立を受けて、臨時株主総会の開催を請求したと発表した。大戸屋の現取締役11人全員の解任とコロワイドが推薦する取締役候補者7人の選任が目的。また、大戸屋の経営再建を円滑に進めるため、大戸屋の既存取締役数人の留任を含めて取締役人事案を打診中としている。

コロワイドは7月10日から9月8日まで実施したTOBで、既存保有分(約19%)と合わせた大戸屋株の所有割合を46.77%を高めた。この結果、買付予定数の下限としていた40%を超えたことから、TOBが成立した。大戸屋はTOBに反対し、敵対的買収の構図となっていた。

ビューティガレージ<3180>、まつげエクステンション製品の松風グループを子会社化

ビューティガレージは子会社を通じて、プロ用まつげエクステンション関連製品を手がける松風(大阪市。売上高6億5800万円、営業利益3300万円、純資産5900万円)を中心とする松風グループを傘下に収めた。8月31日付。松風グループの企画・販売部門だけでなく、製造部門を取り込むことでOEM(相手先ブランド生産)受託事業の展開を強化するなど、美容商社として業容拡大を目指す。

松風グループは、人工まつげを自まつげに装着するエクステンション関連製品の企画・販売から製造までトータルに手がける。

松風はグループの中核会社で、企画・販売部門を担う。ビューティガレージは同社株式の53.8%を取得して子会社化した。併せて、製造部門である、まつげエクステンション研究所(大阪市。売上高2億2300万円、営業利益2700万円、純資産5700万円)については全株を取得。まつげエクステンション研究所はベトナムに製造子会社(ホーチミン)を持つ。一連の取得価額は非公表。

ビューティガレージは子会社のアイラッシュガレージ(東京都世田谷区)がまつげエクステンションサロン向けに各種製品を販売している。今回、松風ブランドが加わり、取り扱い製品が充実したのに加え、顧客からのOEMの要望にも対応できる体制づくりを推し進める。

コロワイド、大戸屋TOBが成立

コロワイドは8日、定食チェーンの大戸屋ホールディングスに対して8日まで実施したTOB(株式公開買い付け)が成立する見通しになったと発表した。すでに保有していた約19%と合わせて所有割合が47%程度になる見込みだとしている。

コロワイドは7月10日にTOBを開始。当初は所有割合45%~51%を目指していたが、8月末にTOB成立の確度を高めるため、買付予定数の下限を5%引き下げて40%(上限は51%のまま)とし、買付期間も延長していた。大戸屋の反対で敵対的TOBに発展していたが、延長の末、コロワイド側が勝利した。大戸屋の上場(ジャスダック)は維持される。

コロワイドは大戸屋の連結子会社化を目指している。株式の所有割合は40%以上50%以下で、過半に達しないものの、今後、取締役派遣などを通じて実質的に支配を進めることで連結子会社として取り扱いたい意向。

ダイヤモンドエレクトリックHD、希望退職に165人が応募

ダイヤモンドエレクトリックホールディングス(HD)は8日、中核子会社のダイヤモンド電機(大阪市)で150人程度を募集した希望退職者に165人の応募があったと発表した。内訳は鳥取工場(鳥取市)133人、本社など32人。45歳以上の正社員、嘱託・契約社員と再雇用社員を対象としたもので、退職日は9月30日および会社が指定する日。通常の退職金に加え、特別退職一時金を支給し、再就職支援サービスを提供する。

希望退職者募集は国内電子機器事業とこれに関連する鳥取工場の抜本的改革の一環。新型コロナウイルス感染拡大の影響で海外向けエアコン用部品の販売が減少したことなどを受け、他の国内生産拠点との集約や合理化を進めている。

イエローハット<9882>、自動車整備・修理の溝ノ口自動車を子会社化

イエローハットは、自動車整備・修理業の溝ノ口自動車(神奈川県川崎市)の全株式を取得し子会社化することを決めた。車検・板金、整備などピットサービスの収益拡大につなげる。溝ノ口自動車は1961年設立。取得価額は非公表。取得予定日は2020年10月1日。

ヤマダ電機<9831>、ヒノキヤグループ<1413>をTOBで子会社化へ

ヤマダ電機(10月1日にヤマダホールディングスに社名変更)は8日、注文住宅を主力とするヒノキヤグループに対して子会社化を目的にTOB(株式公開買い付け)を実施すると発表した。50.1%の株式取得を目指す。このうちの45.71%分については創業家株主などがTOBに応募することで合意。ヒノキヤはTOBに賛同している。買付代金は最大126億5520万円。ヤマダ電機は家電販売にとどまらず、「暮らしまるごと」をコンセプトとし、住宅やリフォーム、インテリアなどに事業領域を広げており、その一環。ヒノキヤの上場(東証1部)は維持する。

ヒノキヤ株の買付価格は1株につき2000円。TOB公表前日の終値1749円に14.35%のプレミアムを加えた。買付予定数の上限は所有割合50.1%にあたる632万7600株で、下限は577万2700株。下限は創業家株主を中心とする応募予定株主が保有する45.71%に相当する。筆頭株主は黒須新治郎会長の二女(近藤昭社長の妻)が代表を務める資産管理会社で18.09%を保有し、長女の資産管理会社が16.55%で続く。

買付期間は9月9日~10月22日までの30営業日。買付代理人は野村証券。決済の開始日は10月29日。

ヒノキヤは1988年に東日本ニューハウスとして設立。2008年に名証2部に上場し、2017年に東証2部(2018年東証1部昇格)。この間、2003年に桧家住宅、2011年に桧家ホールディングス、2018年にヒノキヤグループにそれぞれ社名を変更した。

同社は注文住宅を主力に、不動産、断熱材事業などを展開する。独自の冷暖房システム「Z空調」を搭載した住宅に力を入れている。しかし、住宅着工戸数の減少で企業間競争を激しさを増しており、家電量販店トップで住宅事業を育成中のヤマダ電機の傘下で新たな成長を模索する。

SHIFT<3697>、ERPシステム導入・保守業務のホープスを子会社化

SHIFTは、ERP(統合基幹業務)システムの導入・保守業務を手がけるホープス(東京都中央区。売上高50億6000万円、営業利益6億400万円、純資産9億7400万円)の全株式を取得し子会社化することを決めた。IT市場を取り巻くデジタルトランスフォーメーション(DX)化の流れの中、需要が高まっているERP関連のサービス体制を強化する。ホープスは1991年設立。

取得価額は30億5800万円。取得予定日は2020年9月30日。

ウエルシアホールディングス<3141>、上新電機が近畿地区で展開するドラッグストア「マザーピア」6店舗を取得

ウエルシアホールディングスは子会社のウエルシア薬局(東京都千代田区)を通じて、上新電機が近畿地区で展開するドラッグストア「マザーピア」6店舗を取得することを決めた。近畿地区での出店拡充が狙い。取得価額は非公表。取得予定日は2020年11月2日。

上新電機から取得するのは「マザーピア」の和泉府中店(大阪府泉大津市)、津久野店(堺市)、深井店(同)、寝屋川店(大阪府寝屋川市)、西岩田店(大阪府東大阪市)、新大宮店(奈良市)の6店舗。

エプコ<2311>、小売電気事業者向け顧客・需給管理システム事業をSBパワーに譲渡

エプコは、小売電気事業者向けにサービス提供しているクラウド型顧客・需給管理システム「ENESAP」事業を、SBパワー(東京都港区)に譲渡することを決めた。エプコは主力である住宅向け給排水設備設計・コンサルティング事業に経営資源を集中するのに伴い、事業領域や対象顧客が異なるENESAP事業を切り離す。

譲渡価額は3億2000万円。譲渡予定日は2020年10月1日。

譲渡先のSBパワーはソフトバンク全額出資子会社。「ENESAP」事業の直近業績は2億3600万円、営業利益400万円。

 

 

 

 

情報提供:株式会社ストライク

[M&A案件情報(譲渡案件)](2020年9月15日)

-以下のM&A案件(3件)を掲載しております-

 

●物流に特化した運行支援システムの販売

[業種:パッケージソフトウェア販売/所在地:関東地方]

●安定した取引先を持つ、蓄電池の中間流通業

[業種:電気機械器具卸売業/所在地:関東地方]

●【高い収益性を確保】建築設備を対象とした設備工事業を行う

[業種:設備工事業/所在地:関東地方]

 

 

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案件No.SS006438
物流に特化した運行支援システムの販売

 

(業種分類)IT・ソフトウェア

(業種)パッケージソフトウェア販売

(所在地)関東地方

(直近売上高)1~5億

(従業員数)10名以下

(譲渡スキーム)株式譲渡

(事業概要)物流に特化したパッケージソフトの販売

 

〔特徴・強み〕

◇物流業界に特化したノウハウを蓄積。様々な顧客の悩みを熟知し、顧客の課題解決が可能。
◇顧客ニーズに合わせ、一部カスタムメイドにも対応。
◇物流に精通した営業担当によるシステム導入、更には導入後のメンテナンスまでの手厚いサポートも強み。

 

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案件No.SS006437
安定した取引先を持つ、蓄電池の中間流通業

 

(業種分類)商社・卸・代理店

(業種)電気機械器具卸売業

(所在地)関東地方

(直近売上高)50~100億

(従業員数)10名以下

(譲渡スキーム)株式譲渡

(事業概要)蓄電池の卸売業

 

〔特徴・強み〕

◇強固な販路を持ち業績を拡大させている。
◇昨今の自然災害の増加と、今後の需要の拡大を背景に、増収基調が続く。

 

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案件No.SS006196
【高い収益性を確保】建築設備を対象とした設備工事業を行う

 

(業種分類)建設・土木

(業種)設備工事業

(所在地)関東地方

(直近売上高)5~10億

(従業員数)10~50名

(譲渡スキーム)株式譲渡

(事業概要)建築設備を対象とした設備工事業を行う

 

〔特徴・強み〕

◇主に学校、商業施設、オフィスビル等の建築設備を対象としている
◇全国各地の工事に対応している
◇健全な財務内容(高い収益性、実質無借金経営)

 

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情報提供会社:株式会社ストライク

 

 

 

 

【免責事項】

・掲載情報は、内容及び正確さに細心の注意をはらい、万全を期しておりますが、人為的なミスや機械的なミス、調査過程におけるミスなどで誤りがある可能性があります。税務研究会及び情報提供会社は、当該情報に基づいて被ったいかなる損害についても一切の責任を負うものではありません。

・掲載情報は公開日時点の情報になります。既に案件が特定の対象会社と交渉に入っている場合や成約している場合もございます。

 

 

 

 

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[解説ニュース]

法人が匿名組合契約により営業者に金銭出資している場合の出資金の相続税評価

 

〈解説〉

税理士法人タクトコンサルティング(山崎 信義/税理士)

 

 

 

1.匿名組合契約の概要


(1)匿名組合契約とは

匿名組合契約とは、当事者の一方(匿名組合員)が相手方(営業者)の営業に対して出資し、営業者はその営業から生ずる利益を匿名組合員に分配することを約する契約をいいます(商法535条)。

 

 

(2)匿名組合員の出資した財産の帰属

匿名組合員の出資は営業者の財産に属し(商法536条1項)、匿名組合員は営業者の行為につき第三者に対して権利義務を有しません(同4項)。
匿名組合員の出資した財産はすべて営業者に帰属し、匿名組合員は営業者が匿名組合員の出資により取得した財産に対して、何らの持分も有しません。

 

(3)契約期間中の利益と損失の分担

営業者はその各営業年度末において、匿名組合員に対し、匿名組合の営業により生じた利益を分配すべき義務を負い、匿名組合員は営業者に対し、匿名組合の営業から生ずる利益の分配を受ける権利を持ちます。匿名組合員による損失の分担は匿名組合契約に必要な要素ではありませんが、匿名組合契約に係る事業は匿名組合員と営業者による事実上の共同事業であることから、その契約に損失を分担しない旨の定めがない限り、匿名組合員は損失の分担をするものと解されています。

 

(4)匿名組合契約終了時の出資の返還

匿名組合契約が終了した場合には、営業者は匿名組合員にその出資の価額を返還しなければなりません。ただし、出資額が損失の分担により減少している場合には、その残額を返還すればよいとされています(同542条)。

 

 

 

2.【Q&A】法人が保有する匿名組合契約に係る出資の相続税法上の評価の解説


【問】

非上場会社の㈱Aは、B㈱との間で、自社を匿名組合員、B社を営業者とする匿名組合契約を締結し、B社の行う航空機リース事業に対して金銭出資をしています。A社の株主甲の死亡に伴い、甲に係る相続税の計算上、A社株式の1株当たりの純資産価額を評価する場合、A社の有する匿名組合契約に係る出資の評価はどのように行うべきでしょうか。なお匿名組合契約上、A社はその匿名組合の事業により生じた損失を分担しない旨の定めはありません。

 

【回答】

(1)匿名組合出資の評価の考え方

匿名組合契約に係る組合員の権利(以下「匿名組合出資」)の相続税法上の評価方法について、法令及び通達による特段の定めがありません。実務上は、平成20年7月25日東京国税不服審判所の裁決例等により、次のように取扱われています。

 

まず匿名組合出資の内容は、1(3)と(4)より、【営業者に対する利益配当請求権+匿名組合契約終了時における出資金返還請求権】と認められます。

 

匿名組合契約が終了した場合、上記1(4)より営業者は匿名組合員に匿名組合出資の価額を返還する必要があり、営業者はその財産状態を計算して、匿名組合員に対しその出資の価額を返還することになります。その出資の価額の返還における計算は、営業者と匿名組合員の間で実質上共同により事業を行っているといえるため、民法上の組合の規定(民法681条)を類推適用することが妥当であり、民法681条では組合員が脱退した場合の持分の払戻しにつき、脱退時における組合財産の状況に従って行うべきと定められているところです。

 

以上により匿名組合出資の価額は、出資金を含めた匿名組合契約に基づく営業者の全ての財産及び債務を対象とし、課税時期(本問では相続により財産を取得した日)において、その匿名組合契約が終了したものとした場合に、匿名組合員が分配を受けることができる清算金の額に相当する金額とするべきと解されます。また清算金の額は、財産評価基本通達(財基通)185(純資産価額)を準用し、課税時期における営業者のその匿名組合事業に係る全ての財産の相続税法上の評価額から、同事業に係る全ての負債の金額を差引いて計算すべきといえます。この場合、匿名組合自体には法人税が課税されないので、法人税等相当額の控除(37%控除)は行いません。

 

(2)匿名組合の事業に属する航空機の評価方法

(1)の匿名組合出資の相続税法上の評価においては、匿名組合の事業に属する航空機を評価する必要がありますが、財基通にその定めがありません。実務上は、財基通5より、航空機と同様に中古市場がある船舶の評価方法を定めた同136を準用し、原則、売買実例価額、精通者意見価格等を参酌して評価するものと考えられます。

 

 

 

 

 

 

税理士法人タクトコンサルティング 「TACTニュース」(2020/09/14)より転載

[失敗しないM&Aのための「財務デューデリジェンス」]

第4回:財務デューデリジェンス「損益項目の分析」を理解する【後編】

~原価計算の分析、販管費の分析、営業外・特別損益の分析~

 

〈目次〉

4、原価計算の分析

5、販管費の分析(①人件費の内容の把握、②1人あたり人件費水準の把握、③人員の過不足状況、退職率の把握、④残業の有無、支払いの有無の把握、⑤未払、引当等有無の確認、⑥退任役員の報酬水準の把握)

6、営業外・特別損益の分析

 

 

〈解説〉

公認会計士・中小企業診断士  氏家洋輔

 

 

▷第2回:「バリュエーション手法」と「財務デューデリジェンス」の関係を理解する

▷第3回:財務デューデリジェンス「損益項目の分析」を理解する【前編】

▷第5回:財務デューデリジェンス「貸借対照表項目の分析」を理解する【前編】

 

 

財務デューデリジェンス「損益項目の分析」を理解する【後編】


4、原価計算の分析

原価計算の分析を行う場合、原価計算の前提内容を把握します。作成方法の理解を進めながら、その作成方法が最もよい基準で作成されているかの検証を行います。

 

原価計算が行われていない場合は、財務デューデリジェンスの中で原価計算を行います。まず、製造原価に計上されている勘定科目、その内容、金額を把握します。その上で、それぞれの費用について原価計算を行う単位(製品等)に対して直課するのか配賦するのかの検討を行います。次に直課あるいは配賦を行う時のキードライバーを把握します。配賦を行う場合、実務的には売上高基準で行うことも多いですが、配賦を行う費用の金額が大きく、その配賦が原価計算の中で重要な場合等は、正確にキードライバーを把握し、そのドライバーで配賦を行うことで原価計算の精度を高めます。

 

しかし、中小企業の場合、これらの分析に必要な基礎情報が記録されておらず、精度の高い原価計算を行うことが難しい場合があります。原材料費であれば、仕入先別に金額は把握しているものの、1つの仕入先から複数の商品を購入している場合、原材料ごとの仕入金額を把握していないケースがあります。また、原材料ごとの仕入金額が把握できる場合であっても、原価計算を行う単位(製品等)ごとに原料の投入量が把握されていないケースもあります。そうすると、原料の正確な投入量がわからないため、原価計算単位ごとの製品1つあたり標準原料投入量および製品製造数量から原料投入量を推定する等行う場合もありますが、標準原料投入量を設定していない場合もあり、短期間のデューデリジェンスの期間の分析では精度の高い分析が難しい場合があります。このような場合、どこまで原価計算を行うかは買手企業との相談をした上で、分析を行います。

 

また、原価計算をデューデリジェンスで作成する場合には、特に慎重な検討が必要となります。期間や物理的なアクセス、ヒアリングの可否等の制約が多い状況下で、対象会社の損益の核となる部分を専門家と言えども外部の人間が作成する場合には、必ずしも正確な金額が示せるとは限らず、むしろ精緻なものの作成は難しいと考えます。そのため、分析の前提条件や作成方法を正確に記して、レポートの読み手に誤解を与えないようにすることが必要となります。また、前提条件や作成方法を正確に記述することで、デューデリジェンスを実施しているチーム内での検証も行いやすくなります。

 

5、販管費の分析

販管費の分析の主な目的は、EBITDA、ネットデットでの調整項目の把握、事業計画の前提条件である過去数値(1人あたり人件費や人員の過不足の状況等)の把握となります。

 

製造原価内容は人件費と経費に分けて分析を行うことが一般的です。

 

製造原価に計上すべき費用が販管費に計上されている場合や、年度によって製造原価の計上となっていたり、販管費の計上となっていたり継続的に同じ計上区分となっていない場合があるため、販管費の分析を行う場合には、併せて製造原価の分析を行うことが望ましいです。

 

 

人件費の分析は、主に下記の観点から行います。

 

①人件費の内容の把握

②1人あたり人件費水準の把握

③人員の過不足状況、退職率の把握

④残業の有無、支払いの有無の把握

⑤未払、引当等有無の確認

⑥退任役員の報酬水準の把握

 

①人件費の内容の把握

まず人件費の内容をレビューし、役員報酬の金額感、社員やパートのバランス、出向者の有無、退職金の支払いの有無、法定福利費の計上等の内容を把握します。

 

②1人あたり人件費水準の把握

対象会社が作成した、事業計画上の人員採用計画で、人員の採用数と採用に伴い増加する人件費が折り込まれます。その計画上の人件費の金額が適切であるかどうかは過年度の人件費の分析により確認を行います。

 

1人あたり人件費を分析する場合、部門ごとに人件費の金額水準が異なる場合には部門別に人件費を分析するのが有用です。今後、どの部門の人員を採用するのかで増加する人件費が異なるからです。上表では全体の人件費分析を行います。

 

上表のように月次平均人員数を賃金台帳等から算出します。月次で人員数を把握するのが困難な場合は、期初と期末の人員数の平均として分析することもありますが、人員の出入りが多い会社では、1人あたり人件費の水準の精度が下がってしまいますので、可能なかぎり月次で把握するのが望ましいでしょう。

 

また、社員、パートの別で賃金水準は大きく異なるため、それらを区分して把握します。給料手当が社員の給与、雑給がパートの給与であることを確認した上で、それぞれ平均人員数で除することで1人あたり給料手当・雑給を算出します。

 

この場合、1人あたり人件費ではなく、給与・雑給としているのは、法定福利費等を除いた純粋な給料の水準を把握する目的があります。法定福利費等には役員の法定福利費も含まれた金額となっているため、それを含めて人員数で除した金額は本来の社員1人あたりの人件費よりも高くなってしまいます。役員にかかる金額を除いて分析することも考えられますが、デューデリジェンスの短い期間での分析であるため、他の分析の重要度と勘案して行いますが、筆者の経験および見聞きした限りではここまでは分析していないものばかりでした。

 

役員報酬の金額が人件費の中で占める割合があまり多くない場合は、法定福利費等も含んだ社員1人あたり人件費は本来の金額とは大きく変わらないため、算出することが有用となります。

 

③人員の過不足状況、退職率の把握

現状の会社運営において、人員の過不足の状況を把握し、事業計画上の人員採用計画の妥当性を検証するための情報を入手します。人員が不足している状況下で、売上が増加する計画を作成しているものの、人員の補充が足りていない場合等が考えられ、このような場合は事業計画を修正する必要があります。また、事業計画上人員の採用を行っており十分な補充となっているように見えても、退職による人員減の影響を加味しておらず、計画上の採用人員では不足するケース等も考えられるため、人員の退職率等も把握するのが望ましいでしょう。

 

残業の有無、支払いの有無の把握

こちらの項目は未払残業代の金額を把握することが目的で、法務デューデリジェンスの労務部分との連係が必要となります。中小企業では残業代を支払っていない会社も少なくありません。また、残業代を支払っている場合でも、管理職には支払っておらず、法務デューデリジェンスの結果によっては当該管理職にも残業代の支払義務が生じていたことがわかるケースがあります。そのような場合は、ネットデットにて未払残業代を計上します。

 

⑤未払、引当等有無の確認

中小企業では、人件費の支払を発生主義ではなく現金主義を採用しており、発生したタイミングではなく、支払ったタイミングで費用処理をしている会社が少なくありません。例えば、対象会社が人件費の支払いは月末締め翌月25日払いであったとします。3月決算の場合、現金主義であれば3月末締めで4月25日払いの給料は費用処理されていません。発生主義で計上すると、3月末締めの給料は費用処理され、貸方に未払金が計上されます。当該未払金をネットデットの調整項目とするかを検討します。また給料だけでなく、会社負担の未払社会保険料も同様の処理を行います。

 

また、賞与を支給している場合であれば、賞与引当金の有無を確認します。賞与引当金が計上されていない場合は、対象会社の賞与規程を閲覧し賞与の支給対象期間を確認した上で、賞与引当金を計算します。当該賞与引当金をネットデットに計上するかを検討します。

 

さらに、対象会社の退職金規程において退職金を支給することとなっている場合には、確定給付制度なのか確定拠出制度なのかを確認します。確定給付制度を採用している場合には、退職給付引当金の計上が必要となります。退職給付引当金が未計上である会社の多くは従業員300人未満の会社であると想定されますので、その場合は簡便法にて退職給付引当金を計算します。簡便法では多くの場合、期末自己都合要支給額の金額を退職給付債務とする方法がとられることが多いように思います。そして計算された退職給付引当金をネットデットの調整項目とするかを検討します。

 

⑥退任役員の報酬水準の把握

M&Aの成立によって退任役員が決まっている場合には、EBITDAのプロフォーマ調整項目となりますので、退任役員の役員報酬の金額を把握します。

 

 

6、営業外・特別損益の分析

営業外損益の分析の主な目的は、EBITDAに調整すべき項目の有無の把握および利息や売上割引、仕入割引等の金融費用を把握することです。

 

事業関連性が高く、経常的に発生する項目があればEBITDAの調整項目となります。例えば借上社宅の賃料支払いは販管費にて計上しており、従業員負担分を営業外収益としている場合には、それらは表裏一体と考えるのが自然ですので、EBITDA調整項目とします。また、持分法適用会社を所有している場合、持分法適用会社から生じる持分法投資損益が今後も発生が見込まれる場合には、EBITDA調整項目とします。

 

また、金融費用については、M&Aが成立した場合は負債構成が変更され、金融費用は従前と同様には発生しないと考えられます。事業計画上は、従前の金融費用を除外して新たな金融費用を組み込みます。

 

特別損益の分析の主な目的は、過年度における会社の主な動きの把握、EBITDA調整項目の有無の把握をすることです。

 

特別損益は、「特別」な項目ですので、会社として特別な事象が発生した場合に計上されます。固定資産の売却や店舗の撤退、補助金の取得等が計上され、過年度の会社の動きを特別損益項目からも確認します。

 

特別損益に計上されている項目であっても、事業関連性が強く経常的に発生する項目があればEBITDA調整項目とすることがあります。例えば、助成金収入を特別利益に計上している場合、助成金が継続的に得られ、今後も継続的に得られる見込みがある場合等は、EBITDA調整項目とすることを検討します。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

[M&A担当者のための実務活用型誌上セミナー『価値評価(バリュエーション)』」

第3回:DCF法における価値評価(バリュエーション)のポイントとは?

 

 

〈解説〉

公認会計士・税理士  中田博文

 

〈目次〉

◆DCF法とは?

1、FCF(フリー・キャッシュ・フロー)の算定

2、WACC(割引率)の計算

(WACC、負債コスト、株主資本コスト、リスクフリーレート、株式リスクプレミアム(ERP)、ベータ、サイズプレミアム

3、継続価値の算定

(継続価値、FCFに基づく成長モデル(ゴードンモデル)、倍率法モデル)

4、事業価値の算定

5、株式価値の算定

 

 

▷第1回:M&Aにおける価値評価(バリュエーション)の手法とは?

▷第2回:倍率法における価値評価(バリュエーション)のポイントとは?

▷第4回:支配権プレミアム&流動性ディスカウントについて

 

▷関連記事:M&Aにおける税務デューデリジェンスの目的、手順、調査範囲など

▷関連記事:M&A取引の税務ストラクチャリング

▷関連記事:「バリュエーション手法」と「財務デューデリジェンス」の関係を理解する

 

DCF法とは?


DCF法は、対象事業の営業活動から生じる評価基準日以降の「FCF(フリー・キャッシュ・フロー)」を「WACC (当該キャッシュ・フローのリスクを反映した割引率)」を用いて現在価値に割り引き、事業価値を算定する方法です。

 

将来の事業価値を買うという買収実態に適合する評価方法ですが、将来キャッシュ・フロー(見積もり)への依存が大きいため、評価の客観性に欠ける面もあります。そのため、倍率法等の結果を用いたクロスチェックが必要です。

 

 

◇DCF法の株式価値は、以下の手順で計算します。

(1)FCF(フリー・キャッシュ・フロー)の算定

(2)WACC(割引率)の計算

(3)継続価値の算定

(4)事業価値の算定

(5)株式価値の算定

 

 

 

 

 

1、FCF(フリー・キャッシュ・フロー)の算定


FCFとは、営業活動によって獲得したキャッシュ・フローのことです。このキャッシュは、投資家(債権者と株主)に自由に分配することができるため、フリーという文字が付いています。

具体的には、以下の式によって計算されます。

 

FCF=A)営業利益+B)減価償却費-D)税金-E)設備投資±F)運転資本の増減

 

 

 

FCF算定の基礎となる事業計画は、対象会社から提供された事業計画をベースとします。売り手の事業計画の前提条件が買い手の想定と異なる場合は、売り手にする前提条件のヒアリング、両者の相違要因の検討、根拠資料の裏取り、外部コンサルタントからのアドバイスの入手等の作業を通じて、買い手の修正事業計画を作成します。

 

さらに、買い手のシナジー効果の金額効果を把握できるように、シナジー効果の有無を分けた事業計画を作成すると、価格交渉時にシナジー効果を売り手にどの程度与えるかという実践的な検討が可能となります。

 

 

 

2、WACC(割引率)の計算


【WACC】

WACCとはFCFのリスク(運用サイド)を反映した割引率のことです。投資家が要求する利回り(調達サイド)と説明されることもあります。割引率は、負債コストと株主資本コストの加重平均で算定されます。

割引率=(負債コスト/ 負債+資本)+(株主資本コスト/負債+資本)

 

負債は純有利子負債の残高、資本は株式時価総額(自己株式調整後)を用います。(厳密には、非支配持分等も考慮します)なお、以下で述べるβの観測期間中(2年~5年)に資本構成が大きく変動している場合、直近四半期末の負債及び時価総額ではなく、期間中の平均とすることを検討します。

 

 

 

【負債コスト】

負債コストとは、借入(借入金、社債等)による資金調達コストのことです。例えば、資金調達金利が3.0%の場合、税率30%と仮定すると、負債コストは2.1%(=3.0%×(1-30%)となります。支払利息は税務上損金算入できるので、負債コストは節税効果を考慮します。

 

実務では、対象会社が社債発行会社と社債未発行会社の場合に区分して、社債発行会社の場合は、当該社債の金利、社債未発行会社の場合は、対象会社と同等の格付けの社債金利を使用します。格付け別の社債金利情報は、日本証券業協会のHPに開示されています。

 

なお、借入金の金利を使用する場合、①借入時期が価値評価基準日の数年前の場合、その間に市場金利の水準や会社の信用リスクが変動している可能性があり、また、②対象会社が子会社である場合、親会社の信用補完が借入コストに反映されている可能性があります。そのため、価値評価基準日時点の社債市場等の公表利回りデータを参考にして、クロスチェックをすることをお勧めします。

 

 

 

【株主資本コスト】

株主資本コストは、対象会社の事業に対して、株主が要求する投資収益率のことをいいます。実務上は資本資産評価モデル(CAPM: Capital Asset Pricing Model)の公式を用いて、株主資本コストを推計します。

Ke = Rf +β×ERP

 

Ke:株主資本コスト

Rf:リスクフリーレート

β:株式市場全体に対する個別株式の感応度

ERP :株式リスクプレミアム(Equity Risk Premium)

 

投資家の合理的な行動を前提とする場合、リスクを最も低減しつつ、リターンを最も高めるポートフォリオは、株式市場全体の構成比率に分散させたポートフォリオであり、その場合の株主資本コストはRf+ERPとなります。

 

βは、株式市場全体の期待収益率の変化に対する個別株式の変化の度合いをいいます。βが1の場合は、株式市場全体が1変動すると、個別株式も1変動します。βが1.5の場合は、株式市場全体が1変動すると、個別銘柄は1.5変動します。このβをERPに乗じてRfを加算することによって、個別株式のリターンを算定しています。上場企業のβは、Bloomberg、日経会社情報等の市場データーベースから入手できます。

 

 

 

【リスクフリーレート】

取得の容易性、流動性を考慮して、直近日の日本国債(10年物)の流通利回りを用いるのが一般的です。Bloomberg、財務省HP等の市場データーベースから入手します。

 

 

 

【株式リスクプレミアム (ERP)】

株式リスクプレミアム(ERP)とは、株式市場全体(TOPIX等)に投資しようとする場合、投資家がリスクフリーレートに対して追加的に要求する期待リターンのことをいいます。

 

過去の東京証券取引所の上場株式に対する平均投資利回りと日本国債の投資利回りの差に関する実証分析から、実務では、5.5%~6.0%の範囲内で設定するケースが多いです。

 

 

 

【ベータ】

βとは、対象会社への株式投資が、株式式市場全体への投資と比較して、どれだけリスク(ボラティリティ)があるかを表す指標です。実務では、過去2年間の週次又は過去5年間の月次データを用いるのが一般的です。

 

 

 

 

対象会社が非上場会社の場合、類似会社数社のベータの中央値(異常値を除いた平均値)を使用します。なお、マーケットから入手した類似会社のベータ―は、財務リスク(資本構成の影響)を取り除く作業が必要なのですが、紙面の都合上、ここでは割愛します。

 

 

 

【サイズプレミアム】

サイズプレミアム(SCP)は、株式時価総額が小さな企業に対して適用するプレミアムのことをいいます。βが同じである場合、大企業よりも規模の小さな企業の方がリターンが高いという実証研究に基づくものであり、資本資産評価モデルでは捉えきれないリスクです。実務では、 ダフ・アンド・フェルプス株式会社が毎年公表している資料を参考にして、対象会社の株式時価総額の規模に応じたサイズプレミアム( 3.5%~5.3% )を決定します。

 

<計算例>

・社債金利: 3.0%

・税率: 30%

・リスクフリーレート:-0.05%

・β:18

・株式リスクプレミアム(ERP): 6.0%

・サイズプレミアム(SCP): 5.37%

・負債:資本=60:40

 

⇒負債コスト:2.1% = 3.0%×(1-30%)

⇒株主資本コスト:12.4%= -0.05% + 1.18 ×6.0% + 5.37%

⇒WACC:6.22% = 2.1%×60/(60+40)+12.4%×40/(60+40)

 

 

 

3、継続価値の算定


【継続価値】

DCF法による事業価値は、事業計画期間のFCFの現在価値と計画期間以降のFCFの現在価値(継続価値)から構成されます。継続価値は事業価値の過半以上を占めるケースが多く、慎重に算定する必要があります。実務では、案件の状況に応じて、以下の2つの方法がよく使用されます。

 

 

 

【FCFに基づく成長モデル(ゴードンモデル)】

 

 

計画期間以降の期間を通じて成長率が一定であること及び永久成長率がWACCを上回らないことを前提とします。実務上、永久成長率は、予想インフレ率・GDP成長率等を考慮して設定します。最近の国内案件では0%とすることが多いです。

 

 

 

【倍率法モデル】

 

EBITDA倍率は、事業計画期間終了時の会社の成長率・投資利回り・資本コスト等を総合的に考慮して設定します。なお、投資ファンド等の投資家は、将来の株式売却(EXIT)がほぼ確定しているため、現時点のEBITDA倍率を用いることがあります。

 

 

 

4、事業価値の算定


事業価値は、各期のFCF及び継続価値の現在割引価値の合計額となります。実務上、割引計算は、期央主義(各期のFCFは各期の中間時点で発生)を採用します。継続価値は、事業計画の最終年度と同じディスカウントファクターを用いて現在価値に割り引きます。

 

 

 

5、株式価値の算定


事業価値から非営業用資産の時価を加算し、純有利子負債を控除して株式価値を算定します。

 

 

 

 

 

 

□■本連載の今後の掲載予定□■

—連載(全5回)—

第1回:M&Aにおける価値評価(バリュエーション)の手法とは?

第2回:倍率法における価値評価(バリュエーション)のポイントとは?

第3回:DCF法における価値評価(バリュエーション)のポイントとは?

第4回:支配権プレミアム&流動性ディスカウントについて

第5回:財務デューデリジェンスの発見事項の取扱い

※掲載タイトル、内容は予定のものを含みます。

 

 

[解説ニュース]

借地人の建物を地主が取壊した際の費用をめぐる税金トラブル

 

〈解説〉

税理士法人タクトコンサルティング(遠藤 純一)

 

 

[関連解説]

■最近の事例にみる「不動産所得で経費になるもの」

■不動産取得税の「相続による取得」を巡る最近のトラブル

 

1.はじめに


最近、借地人側で相続が開始し、借地契約の解約、借地人の建物収去の問題が発生、それが地主の税金トラブルになるケースが散見されます。問題なのは、借地人の相続人に財力が期待できない場合です。というのも、地主側で建物を取壊す場合には、借地人名義の建物の収去費用について税金トラブルになることがあるからです。

 

借地人名義の建物の取壊しは本来、借地人が行うべきものです。建物を収去して更地にして返す契約となっているためです。この建物収去費用が地主の不動産所得の計算上必要経費と認められるかどうかをめぐって、昨年2つの裁決事例が出ています。1つは、必要経費と認められたもの(国税不服審判所、令和元年9月20日)、もう1つは必要経費として認められなかったもの(国税不服審判所、令和元年9月3日)です。その違いはどこにあったのか、見ていくことにします。

 

 

2.必要経費と認められた場合


事案の成り行きは次の通りです。

 

1、未払地代もあった借地人の相続(平成24年10月)に伴い、その相続人全員が相続放棄をした。

 

2、亡くなった借地人の財産は、相続財産法人に移行(民法951条)。

 

3、地主は平成25年8月、管轄の家庭裁判所に借地人の相続財産管理人の選任の申立てを行い(民法952条)、費用約100万円を予納した。同年9月管理人が選任。

 

4、地主は、平成25年10月、未払賃料の1週間以内の支払い催告とともに、支払いなきときは土地の賃貸借契約解除の意思表示の書面を相続財産管理人に送る。同月、土地の賃貸借契約は解除。

 

5、地主は相続財産法人を相手に、管轄の裁判所に対し賃貸住宅である建物の収去、損害金支払い等を求め提訴。

 

6、地主は、平成27年4月、建物の借家人の立退き、建物収去などにつき相続財産法人と和解が成立。

 

7、地主は和解条項通りに建物が収去されなかったので、同年12月までに裁判所の建物収去の代執行、土地明け渡しの強制執行を申立て、翌年3月までに執行を完了。収去費用は約650万円。

 

 

国税不服審判所は、前記事実関係などから「請求人らが本件土地を賃貸業務以外の用途に転用したことをうかがわせる事情も認められないことからすれば、請求人らの土地の貸付けに係る業務、すなわち、不動産所得を生ずべき業務は、土地賃貸借契約の解除後本件各建物の収去に至るまで継続していたものと認められる」と認定。

 

そのうえで「土地から収益を得る業務を遂行するためには、(借地人の)建物を収去する必要があり、その収去に係る費用については、当初から自らが負担することを想定して建物の収去までの手続を遂行し、建物収去費を支出したところ、実際にも、相続財産法人は無資力であり、支出の時点において、請求又は事後的に求償しても、およそ回収が見込めない状況にあったのであり、客観的にみても、建物収去費は、請求人らにおいて、自ら負担するほかなかったものと認められる」として「建物収取壊費用の支出は、客観的にみて、不動産所得を生ずべき業務と直接関係し、かつ、業務の遂行上必要なものであった」としています。

 

 

3.必要経費と認められなかった場合


次の事案も、借地人側で相続が開始し、借地人の相続人が地代滞納したため、平成25年に地主が賃料債務不履行を理由に契約解除の意思表示をし、契約解除、建物収去明け渡しに関し裁判沙汰になったものです。ただ、平成26年に裁判外で「借家人の退去や建物解体手続きに協力すること、それが実現したときはその費用等を免除する」といった和解をしていました。

 

建物の収去は平成26年6月あら8月末までの間に行い、地主は、取壊しに係る費用3,656,880円を支払ったというものです。

 

国税不服審判所は、地主が「借地人が経済的に困窮しているため、建物の収去義務を確実かつ迅速に履行する保証がない旨判断し、和解契約を締結した上で、自己の負担で本件建物を取り壊した」としているが「各借地人の資産状況及び支払資力などを裏付ける客観的な資料をいずれも確認しておらず、また、各借地人のうち少なくとも1名にはその当時一定の所得があったことが認められることからすれば、請求人が取壊費用を負担せざるを得ない事情があったとは認められない」として、収去費用を必要経費と認めませんでした。

 

 

 

 

税理士法人タクトコンサルティング 「TACTニュース」(2020/09/07)より転載