[税理士のための税務事例解説]

事業承継やM&Aに関する税務事例について、国税OB税理士が解説する事例研究シリーズです。

今回は、「持続化給付金・家賃支援給付金の収益計上時期」についてです。

 

[関連解説]

■【Q&A】持続化給付金と家賃支援給付金の未収計上について

■【Q&A】経営状況が悪化した場合の定期同額給与 ~コロナウイルスの影響で大幅に売上高が落ち急激に業績が悪化、役員報酬の大幅な減額を検討~

 

 

 


[質問]

持続化給付金、家賃支援給付金の収益計上時期についてご教授ください。

 

今期申請を行い、決算をまたいで翌期に給付決定がなされ、入金がなされる場合、どちらの期で益金算入すべきでしょうか。

 

法人税基本通達2-1-42を準用してよいと判断したのですが、①事実があった(月売上が50%以上下がった)期に概算計上するべきものなのか、②支給決定があった日の属する事業年度で益金算入すべきなのか読み切れず、教えていただけると助かります。

 

持続化給付金は実際の経費の支出を前提としていないため②に該当し、家賃支援給付金の場合は家賃の支払いを前提としているので①に該当するのか①でよいのかと、考えている次第です。

 

[回答]

御質問の場合の給付金に係る収益の計上時期については、御指摘のとおり法基通2—1—42の取扱いの考え方を踏まえて判断することになります。この点、費用と収益の対応関係からすると御指摘のとおりの考え方があり得ます。しかし、持続化給付金及び家賃支援給付金については、法人がこれらの給付金を受けるための特別な行為を行ったというものではなく、法人の意思に関係のない業績の悪化という事実が後発的に生じたため給付されるものであるといえます。

 

このことからすると、持続化給付金及び家賃支援給付金のいずれについても給付が決定した日を含む事業年度の収益に計上することになると考えます。

 

 

 

 

 

税理士懇話会事例データベースより

(2020年9月18日回答)

 

 

 

 

[ご注意]

掲載情報は、解説作成時点の情報です。また、例示された質問のみを前提とした解説となります。類似する全ての事案に当てはまるものではございません。個々の事案につきましては、ご自身の判断と責任のもとで適法性・有用性を考慮してご利用いただくようお願い申し上げます。

 

 

 

 


[税理士のための税務事例解説]

事業承継やM&Aに関する税務事例について、国税OB税理士が解説する事例研究シリーズです。

今回は、「持続化給付金と家賃支援給付金の未収計上について」についてです。

 

[関連解説]

■【Q&A】持続化給付金・家賃支援給付金の収益計上時期

■【Q&A】経営状況が悪化した場合の定期同額給与

 

 

 


[質問]

法人税基本通達2—1—42に基づいて決算までに給付決定がない又は申請手続はしていないが決算前の対象月で後日申請する場合には、いずれの場合も給付金は決算において未収計上すべきですか。

 

通達を読むかぎり、持続化給付金は未収計上不要、家賃支援給付金は未収計上必要と考えますがいかがでしょうか。

 

 

(法令に基づき交付を受ける給付金等の帰属の時期)
2—1—42 法人の支出する休業手当、賃金、職業訓練費等の経費をほてんするために雇用保険法、労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律、障害者の雇用の促進等に関する法律等の法令の規定等に基づき交付を受ける給付金等については、その給付の原因となった休業、就業、職業訓練等の事実があった日の属する事業年度終了の日においてその交付を受けるべき金額が具体的に確定していない場合であっても、その金額を見積り、当該事業年度の益金の額に算入するものとする。

 

[回答]

法令等に基づき交付を受ける給付金等の収益計上時期については、貴見のとおり、法基通2-1-42においてその取り扱いを明らかにしています。

 

この取り扱いにおいては、雇用保険の規定による雇用調整助成金等のように、あらかじめ給付金による補填を前提として所定の手続きを取り、その手続きのもとにこれらの経費の支出がなされるものについては、その給付の原因となった休業、就業、職業訓練等の事実があった時点であらかじめその支給を受けるべき給付金の額を見積計上することにより、収支の対応関係を持たせることとされています。これに対し、雇用保険法の規定高年者雇用継続基本給付金等のように、具体的な経費支出の補填という性格のものでなく、一定基準に基づいて支給される奨励金のようなものについては、あらかじめ収益の計上をする必要はなく、支給決定を受けた時点で収益計上すれば足りることとされています。

 

ところで、ご質問の持続化給付金とは、感染症拡大により、特に大きな影響を受けた事業者に対して事業の継続を下支えし再起の糧とするための給付金であり、また、家賃支援給付金とは、5月の緊急事態宣言の延長等により、売り上げの減少に直面する事業者の事業継続を下支えするため、地代・家賃の負担を軽減する給付金であると説明されています(経済産業省)。

 

また、給付金は、申請者からの申請で成立し、事務局の行う申請内容の適格性等を確認する審査を経て長官が給付額を決定する贈与契約であるとされています(持続化給付金給付規定9、家賃支援給付金給付規定10)。

 

持続化給付金及び家賃支援給付金のいずれも、「事業の継続を下支えする」という目的の給付であり、その給付は中小企業庁長官(国)が給付額を決定する贈与契約であることからすると、これを区分する必然性はないものと考えます。また、家賃支援給付金制度においては、支払い賃料の額を給付金の算定基準としていますが、これはあくまでも給付金の算定基準であって、その給付目的に鑑み、必ずしも具体的な経費支出(家賃等)の補填という性格を有しているものとは言い切れないと考えられます。

 

したがって、持続化給付金及び家賃支援給付金のいずれも、法基通2-1-42(注)の取り扱いを準用して、支給決定を受けた日の属する事業年度で収益計上するのが相当と考えます。

 

 

 

税理士懇話会事例データベースより

(2020年7月21日回答)

 

 

 

 

[ご注意]

掲載情報は、解説作成時点の情報です。また、例示された質問のみを前提とした解説となります。類似する全ての事案に当てはまるものではございません。個々の事案につきましては、ご自身の判断と責任のもとで適法性・有用性を考慮してご利用いただくようお願い申し上げます。

 

 

 

 


[事業承継・M&A専門家によるコラム]

新型コロナウイルス対策の制度

~特別定額給付金、持続化給付金、家賃支援給付金、緊急雇用安定助成金、雇用調整助成金、新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金、都道府県による協力金、各市区町村による支援給付金、小規模持続化補助金コロナ特別対応型、任意団体による支援事業・サポート事業~

 

〈解説〉

ビジネス・ブレイン税理士事務所(畑中孝介/税理士)

 


[関連解説]

■家賃支援給付金の詳細情報が公表(2020年7月7日)。制度内容は、給付額は、申請方法は。

■新型コロナ対策融資と特例リスケ ~事業再生の専門家の観点から~

 

 

 

今回は、コロナ対策として導入された制度のまとめと申請書類を作成して感じたところを書こうと思います。

 

持続化給付金や家賃支援給付金は申請が行われやすいように、要件に該当すれば、用意する書類は簡便です。ですが、普段見慣れていないや聞きなれていない単語による難しさはあるかと思います。申請フォーマットは段々とアップロードされて、当初よりはやりやすくなったかな?と感じます。それでも、特例要件や書類の不備による部分で給付がなかなかされないところかと思います。

 

家賃支援給付金は賃貸借契約書の印が面倒だったりするところかと思います。サンプルとされているひな形通りに契約書が作成されている訳ではありませんので、分からない場合には給付金事務局などにご相談するのも一つかと思います。

 

次に、雇用調整助成金は元々の申請書類に比べるとかなり簡便化されています。しかし、これも普段やられていない方にとっては大変な作業かと思います。簡便化されているとはいえ、不備があると差し戻されるので、意外と手間なところは変わらないのでは?と感じます。また、直接持参する場合には、待ち時間も長いようで・・・3密になっているのでは?と思うところです。

 

東京都の事業継続緊急対策(テレワーク)助成金も申請書類の準備が整えば、比較的申請しやすいものでしたが、件数が多いので交付決定まで結構待たされるようです。当事務所では申請から交付まで約3ヶ月かかりました。

 

小規模持続化補助金新型コロナ特別対応型は申請用紙数が減っているため、要件に合う内容を要約して作成することが必要ですので、申請書の作成には工夫が必要なところです。

 

最後に、新型コロナウイルスによって、多くの給付金、助成金、補助金、協力金、支援金などが創設されました。国や都道府県などの公共団体以外にも任意団体、企業なども独自に支援金を創設していたりします。経済を壊さないための施策を出している部分かと思います。とはいっても、企業努力に任せているところの方が大きいのではと個人的に思います。

 

まだまだ新型コロナウイルスの影響は続くかと思います。既存の事業の在り方では、乗り切れるのか?と疑うところもあるかと思います。この疑いを新たな在り方に転換して、新たなビジネスモデルの仕組みに変えて行くことが求められてきているのではないでしょうか?

 

そのための支援金など活用できるものは十分にあるかと思います。様々なものを活用し、企業を永続させていくこと!!経営者に求められているのでは?と思うところです。

 

 

 

新型コロナウイルス対策の制度


(1)特別定額給付金
1名あたり10万円の給付。
期限が郵送方式の申請受付開始日から3ヶ月以内のため、7月中に申請終了となるのではないでしょうか?

 

(2)持続化給付金
個人事業主は最大100万円、法人は最大200万円。
2020年1~12月の各月で売上高が前年同月比50%減少している場合。
さらに、要件が緩和され、2020年3月までに開業・設立で4月中の届出日であれば、給付金の対象となっています。

 

(3)家賃支援給付金
7月14日から申請開始。
個人事業主は最大300万円、法人は最大600万円。
2020年5~12月の各月で売上高が前年同月比50%減少している場合。
持続化給付金と同様に緩和要件があるようです。

 

(4)雇用調整助成金
雇用保険の被保険者の従業員を対象。
特例措置期間が2020年4月1日から9月30日まで延長されました。
助成額は1人1日15,000円を上限として、休業手当等の10/10を助成。
申請期限は、6月末日支給分まで8月31日が期限です。
7月以降は2ヶ月以内とされています。

 

(5)緊急雇用安定助成金
雇用保険の被保険者以外の従業員を対象としています。
要件は(4)雇用調整助成金と同様。

 

(6)新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金
7月10日より申請が開始。
新型コロナウイルスの影響で休業したものの、休業手当金を事業主から受け取れなかった従業員の方が対象。
平均賃金の80%で上限が1日あたり11,000円となっています。

 

(7)都道府県による協力金、各市区町村による支援給付金
それぞれの地方公共団体により任意で用意されています。
申請期限が過ぎていないものや終わってしまっているものもあります。

 

(8)小規模持続化補助金コロナ特別対応型
通常の小規模持続化補助金とは別に新たに設けられています。
要件が異なるため、確認は必要です。

 

(9)任意団体による支援事業・サポート事業
新型コロナウイルスの影響を受けて、影響を受けた業界や所属している方に向けて、独自に行われています。
例えば、公益財団法人日本スポーツ協会は『スポーツ活動継続サポート事業』を行っています。

 


 

「ビジネスブレイン月間メルマガ(2020/07/27号)」より一部修正のうえ掲載