[ゼロからわかる事業再生]

第7回:法的整理か私的整理かの選択

~法的整理とは、私的整理とは、私的整理と法的整理の選択基準~

 

[解説]

髙井章光(弁護士)

 

 

[質問(Q)]

事業再生を実施したいと思いますが、法的整理と私的整理のどちらの手続を取るのがよいのでしょうか。違いを教えてください。

 

 

[回答(A)]

事業再生の手続においては、法的整理(法的再生手続)と私的整理(私的再生手続)があります。法的整理においては、すべての債権者を対象として支払猶予(支払停止)をしてもらい、債権カットを要請することになりますので、買掛先などの取引先に対しても大きな影響が生じます。したがって、取引先に影響を与えないようにするためには、金融機関のみを対象とする私的整理をまず最初に検討することになります。

 

ただし、私的整理は全対象債権者(金融機関)から最終的に同意を得ないと成立しないため、全対象債権者から同意を得ることが難しい場合には、すべての債権者を対象とするものの、多数決によって成立する法的整理を実施することになります。

 

 

 

1.法的整理とは


法的整理(法的再生手続)とは、裁判所の監督下において、法律の規定に基づき手続が決められており、基本的に全債権者を対象として、債権者を平等に取り扱いながら、債権者の多数決によって再建策の成否が決まることになります。主に中小企業を対象とする民事再生手続や、比較的大規模な企業を対象とする会社更生手続があります。

 

メリットとしては、裁判所が監督しながら、法律によってしっかりとした手続の内容が決められているため、比較的手続自体は安定していると評価できることが挙げられます。手続が開始した時点におけるすべての債権者に対して支払が禁じられ、平等に取り扱わねばならないとされます。それらの債権者への弁済条件を内容とする再生計画案が裁判所に認可されるためには、債権者集会にて、対象債権者の多数決の投票による再生計画案への同意(賛成)で決まることになります。民事再生手続であれば、投票を行った債権者の過半数の賛成があり、かつ、その賛成者の債権額が総債権額の2 分の1 以上であることが可決要件とされています(民再法172 の3)。したがって、全対象債権者の同意が必要とされる私的整理よりは再建計画の認可要件は緩やかといえます。

 

2.私的整理とは


私的整理(私的再生手続)とは、裁判所による監督によって再建するのではなく、金融機関などの大口債権者(通常は、金融機関のみ)にて、協議によって債務者の再建を進める手続です。よって、メインバンクによる支援があると進めやすい手続といえます。

 

金融機関を対象とする私的整理においては、一定の手続ルールを決めて行う準則型私的整理を利用することが多く、大規模な企業においては事業再生ADR が利用され、中小企業においては中小企業再生支援協議会が利用されています。裁判所の調停手続を利用して債権者と債務者が協議によって再生を図る手続として、特定調停手続があり、こちらは協議を行う場所は裁判所となりますが、法的整理のようにすべての債権者を対象として、多数決にて再生計画を認可するのでなく、他の私的整理と同様に債権者全員の同意をもって再生計画を成立させるため、私的整理に分類されています。

 

3.私的整理と法的整理の選択基準


私的整理と法的整理の特徴をまとめると以下のようになります。

 

 

 

取引先に迷惑をかけることや取引に対する影響を考えると、私的整理をまず選択することになります。その上で、私的整理を進めることが困難であったり、法的整理の方が望ましい事情がある場合に法的整理を選択することになります。

 

私的整理は金融債権者を対象としてその全員から同意を得る必要があるため、これまでの経緯から感情的になっていたり、経営陣に不正があるなどにより、債務者の再生には同意できないことが明らかな場合には、私的整理を進めてもまとまらないことが明らかですので、法的整理を選択することになります。

さらに資金繰りが厳しく、金融機関への支払のみを止めても資金ショートが生じる危険がある場合には、すべての支払を止める必要がありますので、すべての債権者を対象とする法的手続を取ることになります。取引先等の債権が過大となってしまっていて、再生計画を作成するにおいて、金融機関の債権のみをカットするだけでは資金が足りず、取引先等の過大な債権もカット対象とする必要がある場合にも、法的手続を選択してすべての債権者を対象とすることになります。

 

逆に、法的整理となったことを理由として、取引が破綻したり、契約解除となる危険が高い場合(例えば、ブランドからライセンスを受けて取引を行っている場合には、往々にして、法的整理を行っている先にはライセンスを与えないという対応がなされることがあります)には、なんとしてでも私的整理ができないかという姿勢で検討することになります。

 

 

 

 

 

 

 

 

事業再生・企業再生の基本ポイント]

第8回:金融機関へのリスケのタイミングが金融機関ごとにずれてしまった場合はどのような取り扱いになりますか。

 

〈解説〉

公認会計士・中小企業診断士  氏家洋輔

 

 

▷関連記事:大手企業の下請けを主な生業としていますが、どのようなことに気を付けたらよいでしょうか。

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金融機関への返済が難しくなった場合に、返済を一定期間ストップすることをリスケジュール(以下「リスケ」という。)と言います。リスケをする場合に、金融機関へリスケの要請をしますが、金融機関ごとに手続きが必要となるので、必ずしも同時に返済ストップとなるわけではありません。

 

例えば3つの銀行から借入をしていて、3月にリスケの依頼をした場合に、A銀行とB銀行は3月の返済を最後にリスケとなり、C銀行は手続きが間に合わず4月の返済を最後にリスケとなる場合です。C銀行の方が1か月分多く返済しているため、A銀行とB銀行とは不公平になることになります。これは偏波(へんぱ)弁済と言い、解消が必要となります。

 

解消するにあたって、C銀行から1か月分多く返済した分を返してもらうことではなく、リスケが終了して次に返済が始まるタイミングで調整をすることになります。

リスケ後の返済が、リスケ前と同じ条件であれば、A銀行とB銀行だけに1か月分先行して返済をすることがあります。

 

リスケ後の返済が、リスケ前と異なる条件となる場合があります。詳細については割愛しますが、金融機関に事業計画を提出し、事業計画上のキャッシュ・フローを返済原資として、各金融機関にリスケ前の借入残高の割合に応じて返済する方法(残高プロラタ)を用いる場合などがあります。残高プロラタを用いる場合には、返済原資から各金融機関に残高に応じて返済額を決めますが、C銀行についてはその返済額から多く返済した1か月分の金額を除きます。そして、ケースバイケースとはなりますが、C銀行に返済しないことで余剰となった返済原資をさらにA銀行とB銀行の借入残高に応じて按分した金額を返済します。

 

このようにして、リスケの開始時期の相違などから生じる偏波弁済による各金融機関の不公平については、再び返済を開始するタイミングで調整し、不公平を解消することになります。

 

 

 

 

 

 

 

 

[ゼロからわかる事業再生]

第6回:自力再建かM&A かの選択

~自力再建とは、スポンサー支援型(M&A型)再建とは、自力再建を断念してスポンサー支援を求める場合~

 

[解説]

髙井章光(弁護士)

 

 

[質問(Q)]

窮境状況に至り、このままでは破産となってしまうため、事業再生を行いたいと思いますが、自力再生とスポンサー支援を受けたM&A を行う場合の違いについて教えてください。

 

 

[回答(A)]

事業再生をめざす場合、その経営陣において経営をあきらめてしまっているような場合以外においては、まずは当該会社が自助努力によって経営改善、事業収益力の改善を図ることになります。

 

しかし、収益力が自力ではなかなか上がらず、債権者から了解を得ることができる状況まで再建策を講じることが難しい場合には、第三者の支援を得て、その資金力、経営力、事業シナジーなどによって、債権者への返済を実施し、事業収益力を改善することをめざすことになります。この第三者から支援を受けるに当たり経営権を第三者に譲渡する場合をM&A といいます。

 

 

 

1.自力再建とは


自力再建とは、窮境状況にある会社において、事業再生の手続の中で、一定期間の支払猶予を得ながら、経営改革や事業収益力の改善策を構築し実践することで、事業を立て直すことです。事業収益力が回復したとしても、支払猶予となっている過大な負債の処理が問題として残りますが、事業再生の手続内にて、債務免除を得ることができれば、再生が可能となります。

 

債務免除後の適正規模となった負債に対する返済は、基本的に改善した事業による収益をもって長期間の分割弁済を実施することになります。

 

2.スポンサー支援型(M&A型)再建とは


自力再建が困難である場合に、スポンサー支援を受けることでより安定した再建を図ることを目的として、第三者の支援を受ける方法です。

 

第三者からの支援としては、業務提携など資本参加がない形で行う場合もありますが、窮境状況にある会社の再建においては、資本参加を必要とする場合が多く、出資を受けて共同経営となる方法のほか、株式譲渡や合併、既存株式の減資後に出資する形にて、経営権を譲り渡す場合も多くみられます。

 

そのほか、事業の一部を譲り渡す方法として事業譲渡や会社分割の手法がとられることもあります。資金支援を受ける形の場合には、通常、その資金をもって債務免除後の債務に対して一括にて弁済が行われます。

 

3.自力再建を断念してスポンサー支援を求める場合


自力再建ではなく、スポンサー支援を最初から求める場合もありますが、自力再建をまず検討することの方が多いと思います。自力再建を最初に検討し、自力再建がうまく行かない結果になったときにスポンサー支援を求めることになります。

 

自力再建がうまく行かない場合としては、①事業再生を実施するだけの資金的余裕がない場合、②負債が過大であり、自力再建による収益力では再建計画を立てることができない場合、③経営者に適任者がいない場合、④債権者において従前の経営陣による自力再建を拒絶した場合が考えられます。

 

事業再生を実施する場合には、通常は半年以上の時間がかかることになるため、この期間に資金ショートが生ずるほど資金不足が甚だしい場合には、即時にスポンサーを探して資金的支援を得る必要があります。工場などにおいて近い将来に高額の設備投資が必要不可欠であるような場合にも、その資金負担ができず、自力再建では事業継続は困難であり、スポンサー支援が必要となります。

 

 

 

 

また、自力再建によって、一定の収益を上げて返済原資を作ることができたとしても、例えば、優先債権である公租公課の滞納額が大きく、この返済が精一杯であって、支払猶予を受けている金融機関等への返済がまったくできないのであれば、足りない弁済資金をスポンサー支援によって賄う必要が生じます。

 

さらに、現社長が高齢であったり、経営責任をとって退任するような場合に、後継者となる者が不在であれば、そもそも会社経営が成り立たないため、第三者に経営を委ねることになります。

 

債権者によってスポンサー支援型とするよう求められることもあります。すなわち、現経営陣は経営を継続する意思があるものの、それまでの経営内容から、経営責任を問われ、金融機関から経営者交代を求められ、又は第三者のスポンサー支援による経営でないと再建策を支援しない旨の意向が示されることがあり、このような場合にもスポンサー支援を必要とすることになります。

 

スポンサー支援を意図しても、適切なスポンサーを探すことには大変な苦労が伴い、うまく行かない場合もあるため、適切なスポンサーを見つけられず、やむを得ず自主再建を継続する場合もあり得ます。

 

 

 

 

 

 

 

[事業再生・企業再生の基本ポイント]

第7回:事業再生における財務DDとは何ですか?-実態純資産

 

〈解説〉

公認会計士・中小企業診断士  氏家洋輔

 

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事業再生における財務DDでの実態純資産の分析は、最も重要な分析項目の1つです。簡便的に財務DDを行う場合でも、必ず行う分析となります。

 

監査法人の監査を受けていない中小企業は多くの場合、上場企業のような精緻な会計処理を行ってはいません。中小企業ごとに従っている会計処理がバラバラで、企業によっては貸倒処理をしていなかったり、固定資産を除却しても固定資産台帳上は消し忘れていたりと、企業ごとに様々な決算内容となっています。これらを一定の基準で分析し、本来あるべき純資産の金額を把握するための分析が実態純資産の分析です。

 

 

 

 

 

上記の表に分析内容、グラフに分析結果を示しています。

 

 

 

【実態純資産】

決算内容が実態純資産の分析は、調査対象期の帳簿純資産からスタートします。帳簿純資産から、調整項目を調整し、実態純資産を分析します。この実態純資産は事業用不動産は簿価であることから、事業継続を前提とした純資産ということになります。

 

調整内容の具体例を下記に説明します。

 

a.回収可能性に疑義のある売上債権

得意先が倒産してしまっている場合や、長年得意先やその代表者と連絡が取れなくなってしまっている場合などは、回収可能性が低く、売上債権の資産性が認められません。このような場合に、売上債権を回収可能な金額まで減額するなど、貸倒評価を行い、純資産の調整項目とします。

 

b.長期間滞留している棚卸資産の評価減

もう販売していない商品や、数年単位で滞留している商品は販売して収益化される見込みが低く、棚卸資産の資産性が認められません。このような場合に、一定の基準を置いて、棚卸資産の評価減を実施し、純資産の調整項目とします。

 

c.固定資産の減価償却不足額

中小企業は減価償却は、利益が出た時に償却し、赤字の場合は償却しないなどの会計処理をしている企業が少なくありません。減価償却を調整している企業は、毎期減価償却を実施してきた企業と比べて固定資産の簿価が高くなっています。毎期減価償却を実施している企業と同じ条件で評価するため、減価償却の再計算を実施し、適正な簿価を把握します。適正な簿価と現在の簿価との差額を純資産の調整項目とします。

 

 

【不動産含み損益調整後実態純資産】

実態純資産から、事業用不動産含み損益を調整し不動産含み損益調整後実態純資産を分析します。不動産含み損益調整後実態純資産は、事業用不動産についても時価評価していることから事業継続を前提としていない純資産の金額ということになります。

 

 

【中小企業特性考慮後実態純資産】

中小企業は、会社と代表取締役とを一体と見た方が実態と即している場合が多いため、代表取締役の資産を企業の純資産に加える調整を行います。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

[ゼロからわかる事業再生]

第5回:再生か廃業(破産、清算)かの選択

~再生と廃業の違い、再生と廃業の選択のポイント、再生の手法、廃業の手法~

 

[解説]

髙井章光(弁護士)

 

 

[質問(Q)]

不況のため毎年赤字が続き、債務超過となってしまっていますが、再生が可能な状態でしょうか。それとも、早期に廃業手続を実施した方がよいのでしょうか。

 

 

[回答(A)]

再生が可能か否かを判断するポイントは、その事業に価値があるか否か、事業価値を維持し続けることができるか否かによって決まります。さらに、その事業を再生するための経営陣の意欲も必要です。

 

 

 

1.再生と廃業の違い


赤字が続き、債務超過に至ってしまった場合に、会社を建て直して事業活動を継続することが再生であり、会社の事業活動を終了させる場合が廃業です。負債を多く抱えてしまったままで廃業する場合には、その負債をきちんと処理しないと廃業手続を終了することができませんので、破産手続や特別清算手続などの清算手続(負債整理手続)を実施することになります。負債をすべて支払ってなくすことができれば、円満な廃業(通常清算)となります。

 

そうすると、過大な負債があって、解消できないほど大幅な債務超過の場合には、事業の再生は不可能であり、破産等の清算手続しか選択の余地がないように思われるかもしれません。しかしながら、その事業に価値があり、一定条件下において事業継続が可能な状態であれば、例えば、負債を適正な状態まで債権カットしてもらったり、又は第三者に事業を譲渡することで、事業を存続させる方法を取ることができます。

 

2.再生と廃業の選択のポイント


窮境状況の会社の事業を再生させるか、それとも再生をあきらめて廃業するかの判断のポイントはどこにあるかといいますと、対象となる「事業」に価値があるか否か、また、一定の環境において事業継続することができるか否かという点になります。

 

例えば、窮境状況になく、営業利益を出すことができる事業であったとしても、経営環境の変化によって、5 年もすれば売上高が激減することが予想できるのであれば、早期に廃業することを選択することになります。したがって、事業に価値があるか否か、また、現時点では営業利益が出ていなくても、一定の条件が整う環境においては営業利益を出して事業継続が可能であるか否かが、大きな判断ポイントになります。

 

そして、窮境状況にある場合には、様々な問題を解決しながら事業再生を図ることになるため、経営陣において事業をなんとかして再生させるという強い意欲が必要となります。

 

3.再生の手法


窮境状況によって再生の手法が異なります。再生の手法としては以下のような手法があり、さらにこれらの手法を実施するために、法的再生手続や私的再生手続を利用することになります。

 

 

4.廃業の手法


窮境状況によって再生をあきらめ廃業とする場合や、窮境状況に至る前に廃業を行う場合として、以下の手法があります。

 

 

 

 

 

 

 

 

[ゼロからわかる事業再生]

第4回:事業再生手続に舵を切るタイミング

~事業再生とは、事業再生の手続の種類、事業再生手続実施のタイミング~

 

[解説]

髙井章光(弁護士)

 

 

[質問(Q)]

当社は創業40 年となり20 店舗を有する中堅小売り店ですが、近年の不況のため毎年赤字が続き、3 年前から債務超過となってしまっています。「事業再生」の手続はどの時点で行うのがよいのでしょうか。

 

 

[回答(A)]

赤字が続き、債務超過に至ってしまえば、破産の危機に陥ってしまいます。今後2 ~ 3 年での黒字転換が難しい状況であれば、早期に「事業再生」を実施すべきと考えられます。赤字から黒字転換できたとしても、資金不足が解消せず、資金ショートの危険が生じている場合には、早期に「事業再生」を実施する必要があります。

 

 

 

1.事業再生とは


事業を営む者や企業が、赤字が続き、債務超過に至ってしまった場合には、資金不足となり、事業活動を継続することができなくなる危険が生じます。このような窮境状況にある場合に、事業を廃止・清算するのではなく、事業をなんとか継続するための手法が「事業再生」手続です。

 

「事業再生」手続のポイントは、①資金繰りの建て直し、②事業収益力の見直し、③過大負債の削減を行うことにあります。窮境状態に至ってしまった場合、資金不足となり資金ショートのおそれが高まりますので、一定範囲の支払を一時期留保してもらって、資金繰りを建て直しながら、支払留保の期間中に事業収益力の見直しを実施し、それでも負債を適正に返済することが難しい状態の場合には、過大な負債の削減を実施することになります。

 

2.事業再生の手続の種類


「事業再生」手続には、大きく分けて法的再生手続と私的再生手続があります。

 

法的再生手続は、法律の規定によって裁判所が手続を監督しながら進める手続であり、手続開始時におけるすべての債権者に対して支払猶予してもらいながら手続を進めます。民事再生手続や会社更生手続がこれに当たります。

 

私的再生手続は、必ずしもすべての債権者に支払猶予を依頼するのではなく、主に大口債権者たる金融機関のみに支払猶予を依頼しながら、金融機関と協議の上で再建策を構築する手続になります。事業再生ADR、中小企業再生支援協議会、特定調停手続がこれに当たります。なお、これらの手続には一定の手続ルール(準則)があり、そのルールに則って私的再生手続を進めていきますが(準則型私的整理手続)、特にルールが決まっている訳ではなく、弁護士が前面に立って債権者との協議を進めて行く方法もあり、「純粋私的再生手続」と呼ばれています。純粋私的再生手続において、会社の事業を他の会社に事業譲渡し、従前の会社は特別清算手続にて過大負債とともに清算する手法(いわゆる第二会社方式)も多く行われています。

 

3.事業再生手続実施のタイミング


「事業再生」手続を経ずに再建できれば、債権者に迷惑をかけることも少なくて済みますので、これに越したことはありません。しかし、再建できると思って、「事業再生」手続実施のタイミングを見誤り遅れてしまった場合には、「事業再生」手続を実施しても解消できないほど負債は過大となり、また、事業収益力の毀損が著しくなってしまい、「事業再生」を実施する期間中に必要となる資金が枯渇してしまうことなどによって、破産しか選ぶ途がなくなってしまいます。

 

通常、「事業再生」手続の実施が早ければ早いほど、その効果は大きくなります。資金が多く残っていれば、時間をかけて再建策を講じることができますし、事業収益力の毀損が大きくなければ、大手術でなく軽い手術にて改善することができます。

 

 

「事業再生」手続を実施するタイミング、判断ポイントをまとめると以下のとおりです。

 

 

 

 

すなわち、資金がショートしてしまえば事業活動を継続できませんので、早期に「事業再生」手続を実施する必要があります。また、資金繰りが一定期間において継続できるとしても、経常赤字が継続して解消の目途が立たなければ、早晩に資金繰りにも影響が生じる危険があります。経常利益を出していてもその利益の額は大きくないため、大幅な債務超過を解消する目途が立たない場合には、同様に過大負債の返済負担に耐えられなくなってしまいます。

 

「事業再生」の必要性を感じた場合には、早期に事業再生を専門とする弁護士に相談し、「事業再生」を実施する必要があるか見極めてもらうのがよいと思います。

 

 

 

 

 

 

[事業再生・企業再生の基本ポイント]

第6回:事業再生における財務DDとは何ですか?-フリーキャッシュフロー

 

〈解説〉

公認会計士・中小企業診断士  氏家洋輔

 

▷関連記事:事業再生における財務DDとは何ですか?

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▷関連記事:経営状態の把握と事業再生

 

 

事業再生における財務DDでのフリーキャッシュフロー(営業キャッシュフロー+投資キャッシュフロー、以下FCFという。)の分析は、再生企業の過年度の営業、投資、財務でのキャッシュフロー(以下CFという。)を把握することで、どのようにして資金繰りに窮してしまったのかを検討するうえで重要な分析となります。

 

損益の分析は直近から過年度の3年間の分析を行うことが一般的ですが、FCFの分析は3年間ではなく、10年間の分析をする場合があります。これは、多くの再生企業は、直近の業績不振のみならず、過年度からの慢性的な業績不振や、過剰な投資を行っているケースが多く、窮境となった原因の全体を把握するためには概ね10期程度の分析が必要となるからです。

 

 

 

 

上のグラフはFCFの分析結果です。ほとんどの期で、FCFの金額はマイナスとなっています。これは、本業で獲得したCFである営業CFの金額を、設備等の投資で使用した投資CFの金額が上回っているからです。上記の再生企業の場合は、x9期を除いて営業キャッシュフローはプラスで推移しているため、本業でCFを獲得はできていたのです。しかし、それを上回る投資を毎期行っていたことでFCFがマイナスとなり資金繰りに窮してしまったと考えられます。

 

FCFがマイナスとなっている場合は、通常不足した資金は財務CFで補います。そのため、下表のように借入残高が大きくなることが一般的です。借入残高が大きくなると、借入金の返済負担が重くなり、返済できるだけのFCFを獲得できていないと資金繰りに窮するという流れとなります。

 

 

 

このように、FCFの分析は、会社の資金の流れを掴むのにとても重要な分析ですので、必ず分析を実施し、可能な限り10期程度の長期間での分析とすることをお勧めします。

 

なお、FCFの算出方法は様々な方法がありますが、10期分の貸借対照表と損益計算書からキャッシュフロー計算書を作成した上で、営業CFと投資CFを把握する方法が正確で納得感のある分析となるでしょう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

[ゼロからわかる事業再生]

第3回:チェックリストによる磨き上げ

~チェックリストによる健全性チェック~

 

[解説]

植木康彦(公認会計士・税理士)

 

 

[質問(Q)]

“会社の財務状態を磨き上げた方がよい” と言われますが、正直何をしたらよいのか、よくわかりません。何から手をつけたらよいか、教えてください。

 

 

[回答(A)]

“磨き上げ” とは、会社の財務状態や経営状況をより良くすることで、決まった方法があるわけではありません。しかしながら、何をしたらよいかわからないという声もよく耳にします。一例としては、「健全性チェックリスト」を用いて×となった項目につき、〇になるように対策を立て実施する方法があります。

 

 

 

1.チェックリストによる健全性チェック


チェックリストの例を以下に示したので、まずは会社の現在の状況をチェックしてみてください。20 項目のうち過半の10 項目以上が〇であれば、健全の範疇に入ると言えます。また、チェックリストの実施によって、対象会社の強みと弱みが明確になります。強みは伸ばし、弱みは“ 磨き上げの課題” として位置づけ、〇又は×の理由を分析し、経営にフィードバックすることも有用です。

 

 

2.主な磨き上げ項目


(1)営業キャッシュフローや営業利益が赤字

(対策)
一過性の赤字の場合には、黒字化の事業計画を立て、計画と実績を月次で管理しながら営業黒字化に導きましょう。恒常的な赤字の場合、事業構造の見直しが必要となる場合が多いと思います。ビジネスモデルの見直し、費用構造の見直し等によって、営業黒字化を図りましょう。

(2)総資産経常利益率が低い場合

(意味)
総資産経常利益率(ROA)は、総資産(投資)に対するリターン(利益)の割合を意味します。この数値が低いということは、投資額が大きすぎるか、売上の回転が悪いか、利益率が低いかによります。会社全体の状態を見る上で、最も重要な指標です。

 

(対策)
総資産の圧縮、売上回転率の増加、収益拡大、費用の見直しによって、ROA 向上を図りましょう。

 

(3)流動比率が低い場合

(意味)
流動比率は、流動資産(短期資産)と流動負債(短期債務)の比較によって、短期的な支払能力を見る指標です。この数値が低いということは、短期債務の支払のための短期資産の貯えが十分でないことを意味します。また、固定資産投資を短期債務で資金調達した場合も数値が低くなります。

 

(対策)
継続的な利益の計上や短期債務の長期債務化、又は増資による流動資産の増加、流動負債の減少を図ります。

 

(4)在庫が大きい場合

(意味)
在庫金額が大きいということは、通常備えるべき量を超えて在庫が不良化、滞留化している場合があります。また、資金がその分寝ている状態にあるため、負債も大きくなっている場合があります。

 

(対策)
決算セールや処分による在庫の圧縮、それでも売れないデッドストックは廃棄します。

 

(5)管理会計面が弱い

(意味)
中小零細企業では、せっかく決算書を作成しても経営に生かされず、税務申告くらいにしか利用されていない場合が多いようです。

 

(対策)
せっかく時間と費用をかけて作成した決算書類を、税務申告だけにしか利用しない手はありません。簡単な利用法としては、下図のとおり、①事業計画を作成し、②事業計画を数値に落とし込んだ月次予算を作成し、③月次試算表の実績と予算を比較し、④予算と実績の差異につき、原因を分析、判明した原因は関係部署内で共有し、必要に応じて事業計画を修正するなどして、経営に役立てましょう。この一連の流れをPDCA サイクル(Plan 計画・Do 実行・Check 評価・Action 改善)により繰り返すことで、継続的な改善活動となり、決算情報がより有効活用できます。

 

 

 

 

 

チェックリストの項目ごとに、B/S の磨き上げ、P/L の磨き上げの区別、目標例を示してみましたので、参考にしてください。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

[ゼロからわかる事業再生]

第2回:事業の磨き上げ

~貸借対照表B/S はスリム化し、損益計算書P/Lは事業の見直しや固定費の削減を~

 

[解説]

植木康彦(公認会計士・税理士)

 

 

[質問(Q)]

当社の貸借対照表では過去に取得した遊休資産の金額などが大きく、総資産に対する利益率が低いので磨き上げが必要、と会計事務所の担当者に言われました。この場合の磨き上げ方法を教えてください。

 

 

[回答(A)]

会社の業績の良し悪しは、総合的には総資産に対する利益の割合(ROA(注1))によって評価されます。そこで、貸借対照表B/S はスリム化し、損益計算書P/Lは事業の見直しや固定費の削減によって磨き上げます。

 

 

 

 

磨き上げに定型的な方法はありませんが、決算書の磨き上げの観点から言うと、貸借対照表(以下、「B/S」といいます。)の磨き上げと損益計算書(以下、「P/L」といいます。)の磨き上げが必要です。B/S とP/L の磨き上げによって、会社の財務状況を健全な状態に誘導します。

 

1.貸借対照表= B/S の磨き上げ


御社の場合、過去に取得した遊休資産があるとのことですので、まずはその処分が課題となります。固定資産は、総資産に占めるウエイトが大きいので、遊休資産のように収益を生まない場合には総資産経常利益率(ROA(注1))の計算式の分母のみが大きくなって、ROA は著しく悪化します。資産処分によってROA は改善しますが、将来的な資産の利用計画がある場合は、「タイムズ」のような臨時駐車場にする方法でも改善できます。

 

また、やや裏技的になりますが、リース会計基準の適用によって、オフバランスが難しい場合を除き、中小企業ではリース取引を利用することで、総資産を増やさず利益を獲得する方法もあります。

 

売掛金の適正化としては、不良債権については回収促進と回収不能な場合は損失処理、正常債権であっても回収サイト(回収期間)が長期化している取引先について取引条件の見直しによる回収サイトの短縮化を検討します。

 

在庫については、取引ロットや流通経路を見直すことによって圧縮できないかを検討しますが、保管場所を圧縮(例えば、2箇所を1箇所に集約)するだけで在庫が減少することもままあります。

 

さらに、大規模な磨き上げの方法としては、不採算事業の整理・撤退があります。複数の事業を営み、一部事業が赤字で他の事業とのシナジーが期待できない場合などです。不採算事業の整理・撤退によって得た資金は、優良事業の拡大、事業ポートフォリオの見直し、有利子負債の削減に利用します。

 

また、純資産が債務超過であったり、自己資本比率(注2)が低い場合、増資により純資産を厚くする方法もあります。

 

上記のような総資産のスリム化や純資産の増強によって企業体質は強化されますが、通常は一連の対応により固定費も削減されるため、P/L 改善も伴うことが多いと思います。

 

 

 

 

(注1) 総資産経常利益率(ROA)
総資産経常利益率(ROA)は、総資産(投資)に対するリターン(利益)の割合を意味します。この数値が低いということは、投資額が大きすぎるか、売上の回転が悪いか、利益率が低いかによります。会社全体の総合的な状態を見る上で、最も重要な指標です。

 

(注2) 自己資本比率
総資産に対する自己資本(純資産)の占める割合をいいます。この割合が高いほど財務の安定性が高いと評価されます。

 

 

2.損益計算書= P/L の磨き上げ


B/S の磨き上げに比べてP/L の磨き上げは難しいと言われます。

 

通常、無駄な経費(主には変動費)の削減は恒常的に実施しているでしょうから、主たる磨き上げの対象となるのは固定費の削減です。固定費の代表格は人件費と家賃ですが、これらの固定費を削減する意味は、事業の見直しです。不採算の事業や収益率が低い事業について、廃業や売却、ビジネスモデルの見直しを行い、経営体質の強化を図ります。

 

 

 

 

しかしながら、得意先ごとの粗利益率分析(粗利益率ABC 分析)をするだけで、高い利益率になっている得意先(ランクA B の得意先)と低い利益率の得意先(ランクC の得意先)を明確にし、又は発見し、粗利益率改善のための対応(値上げや取引縮小など)をするだけで、利益率や利益額が改善できるケースもあります。まずは、利益率が上位50% より低いランクCの得意先について、見直し対象にしてみるのもよいと思います。なお、ABC格付けはあくまで一例ですので、対象会社の実情に応じて格付け(例えばA~ D など)してみてください。

 

 

 

 

磨き上げによって、事業をより良い健康状態に仕上げることが可能となります。他方、自力で磨き上げができない場合には、B/S 面であれば法的手続等による債務カット、P/L 面であればスポンサーによる経営支援や譲渡を検討することになります。

 

 

 

 

 

 

[事業再生・企業再生の基本ポイント]

第4回:事業再生業務の全体像を教えてください

~事前簡易調査、現状の把握を行うためのDD実施、事業再生計画の策定、事業再生計画で策定した施策を実行~

 

〈解説〉

公認会計士・中小企業診断士  氏家洋輔

 

▷関連記事:民事再生と会社更生の比較

▷関連記事:事業再生の概要を教えてください

▷関連記事:法的整理と私的整理の比較

 

 

事業再生のProcessは四段階あります。まずは事前簡易調査を行います。会社の概要や財務の内容、事業の内容、資金繰りをレビューして、初期的な再生スキームや事業再生計画における事業戦略のイメージを把握します。特に。事業再生プロセスは3か月から6か月程度を要するため、その間の資金繰りが大丈夫かどうかは非常に重要です。

 

次に、Process2として現状の把握を行うためのDDを実施します。現状の把握プロセスでは、財務DDと事業DDが実施されることが一般的です。期間は、1か月から2か月程度かけて、会社の過去から現在までの実態を財務・事業の両面から把握します。その後、債権者である金融機関に対して、会社の実態を説明するバンクミーティングを開催し、調査内容が報告され、会社の事業再生計画の方向性が議論されることとなります。

 

そして、Process3として、事業再生計画の策定を行います。Process2は専門家による調査であったことに対して、Process3は会社と専門家が一体となって作り上げます。会社の事業再生計画の骨子を策定し、それに向けたアクションプランを策定し、それらを数字に落とし込んだ計数計画や返済計画を策定します。計画の策定についても1か月から2か月程度で実施します。そして、事業再生計画を策定すると、事業再生計画の説明をするバンクミーティングを開催します。事業再生計画の内容を説明し、金融機関からの質疑応答を経て、全金融機関からの同意を得ることで、当該事業再生計画が実行されることとなります。バンクミーティングからすべての銀行から同意を得るまで2週間から1か月程度の期間となることが一般的です。

 

Process3までが、専門家が強く関与をして進めていくプロセスで、Process4からは会社が主体となって進めていくことになります。Process4では、事業再生計画で策定した施策を実行していくことになります。また、金融機関としても、事業再生計画の進捗状況を把握する必要があるため、計画と実績を比較した説明資料を作成し金融機関に提出する必要があります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

[ゼロからわかる事業再生]

第1回:経営状態の把握と事業再生

~貸借対照表と損益計算書が示す財務の状態によって、会社の方向性を考える~

 

[解説]

植木康彦(公認会計士・税理士)

 

 

[質問(Q)]

祖父の代から承継してきた事業ですが、ここ数年間は営業赤字が続いています。事業再生をした方がよいと言われますが、どのように進めたらよいか、助言をください。

 

 

[回答(A)]

会社の現状の財務状態をよく把握し、B/S 面が弱い(悪い)のか、P/L 面が弱い(悪い)のかによって対応が相違します。症状が軽度の場合はB/S 面・P/L 面ともに自助努力での対応が中心となりますが、症状が重い(悪い)場合のB/S 面・P/L 面での対応は金融機関や債権者の協力を得て再生手続を進める方法があります。

 

 

1.経営状態の把握


会社の行く末を検討するに当たって、定期的に会社の現在の状態を分析してみることは重要です。そうはいっても複雑な経営分析をするまでもなく、貸借対照表(以下、「B/S」といいます。)と損益計算書(以下、「P/L」といいます。)の2 つの計算書類が示す財務の状態によって、ある程度、会社の方向性を考えることができます。

 

B/S が資産超過でP/L が営業黒字のケース(図右上のセル)は、健全な状態を意味するセルであり、良い状態をキープすることが望まれます。

 

B/S が資産超過でP/L が営業赤字のケース(図右下のセル)は、事業(P/L)の磨き上げによる営業黒字化を検討し、無理な場合には資産超過のうちに廃業も視野に入れます。

 

B/S が債務超過でP/L が営業黒字のケース(図左上のセル)は、財務内容(B/S)の磨き上げによる資産超過を検討し、無理な場合には廃業するか、不健全な部分を切り捨てて、健全部分の継続かM&A を検討します。

 

B/S が債務超過でP/L が営業赤字のケース(図左下のセル)は、営業赤字の拡大を予防するために早急な廃業を検討します。

 

もちろん、実際にはこれほど単純な例は少なく、例えば、B/S が債務超過でP/L が営業赤字のケースでも、従業員の高いモチベーションと経営改善策によって営業黒字が見込めるときは、すぐに廃業しないで経営改善をチャレンジしてみることも可能です。

 

以上はあくまでも、原則的な指針としての位置づけですが、方向性に迷ったときには参考にしてほしいと思います。

 

 

 

2.事業再生の方法


事業再生は、弱い点や悪い点を改善し修復する手続ということができます。

 

B/S 面が弱い(悪い)ならB/S を磨き上げ、P/L 面が弱い(悪い)ならP/L を磨き上げます。

 

B/S の磨き上げは、会社の意思決定でできる低利用(低稼働)資産や不要資産の処分、不採算事業の整理・撤退のほか、金融機関や債権者の協力を得て債務の削減までしてもらう場合もあります。

 

P/L の磨き上げは、不採算事業や収益率が低い事業の廃業や売却、事業内容の見直しが中心テーマとなります。B/S の見直しと違い、会社の自助努力が中心となります。

 

 

 

 

 

 

[事業再生・企業再生の基本ポイント]

第3回:事業再生の概要を教えてください

~事業再生の概要、法的整理と私的整理のメリットとデメリット、財務面と事業面の検討~

 

〈解説〉

公認会計士・中小企業診断士  氏家洋輔

 

▷関連記事:法的整理と私的整理の比較

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▷関連記事:事業再生業務の全体像を教えてください

 

 

【事業再生の概要】

営業不振や過剰な設備投資等により営業活動に支障をきたす程資金繰りに窮してしまった会社・事業を、財務面や事業面で正常な営業活動を行える状態に再生していくことを、事業再生と言います。

 

事業再生には、法的整理と私的整理があります。

 

 

 

【法的整理と私的整理】

法的整理は、その名の通り法的な事業再生となるため、裁判所が関与し法律に則り事業再生をすすめていくことになります。一方で、私的整理は、法律に縛られることなく事業再生を進めていくことになります。

 

法的整理と私的整理の違いについての詳細な説明は本章では割愛しますが、主な特徴として、法的整理を行った場合は倒産企業として外部に周知されるという点があります。この点、私的整理では再生企業と事業再生に参加している債権者等以外に情報が洩れることはないため、事業や取引関係をこれまで通り行えるというメリットがあります。一方で、私的整理では事業再生に参加した債権者の全ての同意が必要となります。この点、法的整理は債権者の多数決や債権金額の多数決により決定されるため、債権者が多い場合や一部反対している債権者がいる場合には私的整理ではなく法的整理で事業再生を進めていくことになります。

 

事業再生をする場合に、まずは私的整理を検討して、様々な要因により私的整理が難しい場合には法的整理となるケースが多いです。件数としては、法的整理と私的整理では圧倒的に私的整理の件数の方が多く、私的整理であれば情報が外部に漏れることはないため、実は取引先が私的整理を行っていたということも決して少なくないでしょう。

 

【財務面と事業面の検討】

事業再生は、財務面と事業面の2面から検討する必要があります。

 

 

 

事業再生はリストラ、業務の効率化、採算管理の徹底などのイメージが先行すると思いますが、これらはどちらかというと事業面の施策となります。事業面での施策を実施するためにも、事業面での施策を実施している間の資金繰りを担保するための金融支援が必須となります。金融支援とは、金融機関への返済を一時的に止めたり、返済を免除してもらう等の方法があります。これらの金融支援の検討・獲得が事業再生を進めていくために必須であり、事業面の施策と両輪で進めていくことが重要となります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

[新型コロナウイルスに関するM&A・事業再生の専門家の視点]

コロナ禍における飲食店の事業再生の現状

 

〈解説〉

公認会計士・中小企業診断士  氏家洋輔

 

 

 

▷関連記事:コロナ禍における飲食店の売上高や今後の考察。

▷関連記事:法的整理と私的整理の比較

▷関連記事:外食産業に関する実態調査(2021年1月公開分)

コロナ禍において、緊急事態宣言やまん延防止等重点措置の中での休業や時間短縮営業等、飲食店の経営環境は厳しい状況となっています。

 

営業時間短縮に係る感染拡大防止協力金等の支援が制度としてはあるものの、これらがスピーディに支払われるわけではありません。例えば、1月の協力金について、5月のこの本稿作成時点において、まだ支払われていない事業者があることも事実です。小規模店舗の多くの事業者は、1日6万円の協力金を受け取ることで「利益」では黒字となります。しかし、「利益」では黒字であっても、協力金が入金されるまでに家賃の支払いや経費の支払いなどが発生しているため、「資金繰り」の観点からは、入金がなく、支払いが先行することで資金残高はどんどん減少していく状況です。このような状況から、窮境に陥る飲食店は多く、既に閉店してしまった飲食店も少なくありません。

 

このような状況の飲食店が事業再生を行う場合は、施策を講じて赤字額を減少させ、コロナが落ち着くまで耐えるという方法を取らざるを得ないのが現状です。上で述べたように、時短要請等の最中は資金繰りが苦しくなるため、一定程度の資金を調達して資金残高が減少しないようにすることが非常に重要となります。筆者が関与した飲食店の場合も、資金繰りが苦しかったため億単位の資金を調達し、資金繰りを安定させたうえで施策を講じるということとなりました。ただし、この厳しい状況で新たな融資を受けることはハードルが高いことも事実です。金融機関には、誠実な態度で現状の共有と、今後の事業計画について丁寧に根気強く説明する必要があるでしょう。

 

現状の把握として、店舗別に損益を把握し、赤字店舗については撤退も含めてより詳細に分析を行う必要があります。しかし、赤字であるからと言っても、内装や設備について長期のリース契約を締結している場合があり、これらの多くは解約時に多額の違約金が必要となることから、違約金も含めたうえで検討する必要があります。

 

赤字額を減らすためには、売上を増加させるために、すでに多くの店舗で行われていますが、テイクアウトや宅配、ゴーストレストラン等を検討し、売上を確保しつつ、経費の削減によりコロナが落ち着くまで持ちこたえるということが必要です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

[事業再生・企業再生の基本ポイント]

第2回:法的整理と私的整理の比較

~法的整理のメリット、私的整理のメリット、法的整理と私的整理の選択視点~

 

〈解説〉

公認会計士・中小企業診断士  氏家洋輔

 

▷関連記事:民事再生と会社更生の比較

▷関連記事:事業再生の概要を教えてください

▷関連記事:事業再生業務の全体像を教えてください

 

 

法的整理とは、債権者または債務者が裁判所に対して、一定の法的手続きを申請し、裁判所の関与・監督の下、法律に則って債務者の再建、または清算手続きが進められます。

 

一方で私的整理とは、法的整理によらず、債権者と債務者との協議により倒産処理を図る手続きです。法的整理、私的整理ともに清算型と再建型がありますが、ここでは再建型について記述します。

 

法的整理のメリットは、以下の通りです。

①裁判所の関与の下で法的手順に従って進められるため、柔軟性に欠けるものの、債権者の利益を公平に調整でき、債務者の詐害行為を防止することができます。

 

②法的整理は、再生案や更生案が裁判所に認可されると、その内容が全債権者に及ぶため次の場合に適しています。

Ⓐ利害関係が複雑で債権者の協力を得られない場合

Ⓑ公的な融資等特殊な債権者が存在する場合

Ⓒ債権者が多く、個別の交渉を行うことが時間・コストの制約上困難である場合

 

③法的整理において、債権者が再建放棄を行う場合、「貸倒損失」として処理されます。

 

 

私的整理のメリットは以下の通りです

①法的整理と比較して、弁護士費用などの直接倒産費用および法的整理の長引きによる資産劣化などの間接倒産費用を回避できる可能性が高いです。

 

②私的整理では、法的整理のように広告により倒産状態であることが周知されません。よって、私的整理案に対して銀行債権者全員の合意が可能であれば、一般事業債権者からの信用低下を防ぐことが可能です。

 

③私的整理は債権者ごとに柔軟に弁済条件を設定でき、メイン銀行などの主要債権者のみに金融支援要請をすることができます。

 

 

法的整理と私的整理の選択視点

法的整理に比べ私的整理の方が迅速に進められることや債権者の回収額が多くなる場合が多いため、まずは私的整理の可能性を検討することが一般的です。法的整理と私的整理のどちらを選ぶかの検討ポイントとしては、債権者の数、大口債権者や特殊な債権者の状況、時間的猶予、経営陣の処遇などがあります。

 

一般的には、規模が大きく、多数の債権者を抱えている場合や、権利関係等複雑に絡み合っている場合には私的整理で決着させることが難しく法的整理を選ぶことが多くなります。

 

事業再生のスキームの選択は専門性が高いため、経験豊富な事業再生の専門家と協議する必要があります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

[事業再生・企業再生の基本ポイント]

第1回:民事再生と会社更生の比較

~経営者の交代は? 担保権行使の制限は? 手続きや費用負担は?~

 

〈解説〉

公認会計士・中小企業診断士  氏家洋輔

 

▷関連記事:法的整理と私的整理の比較

▷関連記事:事業再生の概要を教えてください

▷関連記事:事業再生業務の全体像を教えてください

 

 

民事再生は民事再生法に基づいた手続きで、会社更生は会社更生法に基づいた手続きです。

 

下記のように様々な相違点がありますが、特に重要であると考えるのは、民事再生は経営者が原則続投しますが、会社更生では経営者は原則交代する点、民事再生では原則担保権の行使が制約されないが、会社更生では担保権の行使が制限される点、会社更生では手続きが厳格で費用が高くなる点です。個別の事情で一概には言えませんが、法的整理をする場合は、上場企業のように規模の大きい会社は会社更生を利用し、中小企業は民事再生での事業再生を図ることが一般的です。

 

 

[新型コロナウイルスに関するM&A・事業再生の専門家の視点]

新型コロナ対策融資と特例リスケ ~事業再生の専門家の観点から~

 

〈解説〉

公認会計士・中小企業診断士  氏家洋輔

 

 

 

 

新型コロナの影響で、経験したことがないような売上減少で、何をすればよいか悩んでいる企業も多いと思います。そんな中での新型コロナ対策融資および特例リスケは、企業にとって助けになるでしょう。しかし、その後の経営や金融機関との付き合い方についても不安になっている企業経営者も多いと思います。そこで、事業再生の専門家の観点から、コロナ対策融資と特例リスケについて下記に記載いたしました。

 

 

▷関連記事:「M&Aの検討段階における新型コロナウイルス等による影響」とは?

▷関連記事:新型コロナ特例リスケジュールの実務について

▷関連記事:東京都家賃等支援給付金 ~国の家賃支援給付金とは別に、東京都で独自の家賃支援等給付金の制度があります~

1. 概要

新型コロナの影響で、売上が減少している場合、まずは自社の資金繰りを把握しましょう。経営で利益を獲得することはとても重要なことですが、会社が危機の状況に陥った時は、利益よりも第一に資金繰りを検討するようにします。

 

資金繰りを把握し、対策が必要な場合、まずは情報収集を行いましょう。新型コロナ関連で、企業の資金繰りにとって助けになるものとして、「新型コロナ対策融資等で新たな借入」と「現状の借入金の返済猶予(リスケ)」の大きく2つあります。 新型コロナ対策融資および特例は、インターネット上で情報の収集が可能です。しかし、初めてのことなので難しいと感じる場合には専門家等に相談してみましょう。特に特例リスケについては、借入とは違いほとんどの企業が初めての行うことなので、事業再生の専門家等に相談してみましょう。

 

資金の手当てができたら、損益改善を検討します。現状の自社の状態を正確に把握して、改善点を把握の上、施策を検討します。

 

 

2. 資金繰り表の作成

まずは現在および将来の資金繰りを把握しましょう。当たり前ですが、会社はお金がなくなったら事業を続けることができません。このような非常事態には、利益よりも現金を意識しましょう。まずは会社が生き延びることが重要です。

 

資金繰り表を作成していない会社は、まずは資金繰り表を作成する必要があります。普段から資金繰り表を作成している企業であっても、コロナの影響を受けている、又は受ける可能性が高い場合は、それらを織り込んだ資金繰り表に修正しましょう。作成方法が分からない場合は、専門家に相談してみましょう

 

3. 資金繰りの把握

資金繰り表が完成したら、現状の経営状態で、資金はいつごろまで持ちそうなのか(いつの支払いが厳しくなりそうか)を確認します。もし今月や来月等、数か月以内での支払いが厳しいことが想定される場合には、資金繰り表を日次で作成し、具体的に何日の支払いが厳しいのかを把握します。

 

4. 資金繰り対応

資金繰りの把握ができたら、対策を検討します。いつ、どのくらいの資金が不足しそうなのかを前提として、経費の削減で賄えそうか、借入を行うのか、返済猶予(リスケ)を行うのか等を検討します。

 

経費の削減を行う場合には、経営の軸を持ったうえでどの経費を削減できるかを検討しましょう。誤った削減をすると、今後の事業運営に支障をきたす場合があるため注意が必要です。

 

借入を行う場合、通常時は資金繰りが苦しい会社は、新たな借り入れを行えない(銀行がこれ以上融資できない)場合が多いですが、新型コロナの影響を受けている場合には、新たな借入を行える可能性があります。

 

返済猶予(リスケ)とは、既存の借入の返済を一定期間行わないことです。2020年4月6日に「新型コロナウイルス感染症特例リスケジュール」(特例リスケ)が公表されました。こちらは、既存の借入額を1年間返済を行わないことが可能な施策となります。既存の借入額が大きい場合や、短期借入金が多く、1年以内の返済が多額となる場合には、資金繰りにとって非常に効果的な手法となります。しかし、返済猶予(リスケ)を行うことは、金融機関にとっても重要な事項となるため、可能な限り専門家を巻き込んで行うようにしましょう。

 

 

(ア)コロナ対策融資

コロナ対策融資はいくつか種類があり、要件も若干異なります。とは言え、公庫等の金融機関は現在非常時モードになっており、新型コロナの影響を被っている企業を迅速に救済すべく、平時に比べて積極的に融資を行っています。誤解を恐れずに申し上げると、「コロナの影響がある企業に対しては通常時の融資とは別枠」との捉え方でよいと思います。そのため、コロナの影響がある前に融資を断られた場合でも、コロナ対策融資は受けられる可能性があります。

 

また、一定の条件を満たした場合には実質無利息で借りられるため、現時点で資金繰りに困っていなくても、安全資金として借入する事も選択肢として検討した方がよいでしょう。新型コロナの状況は先行き不透明であり、さらなる業績悪化の可能性も否定できない状況です。事業再生の専門家の立場からは、手元に資金をどの程度保有しているかが会社の存続のために重要です。コロナの影響がある場合には、安全資金を確保する目的で、この機会に借入を検討し手元資金を厚くすることをお勧めします。

 

 

(イ)コロナ対策融資の内容

コロナ対策融資は情報がたくさんありすぎて混乱してしまう方も多いと思いますが、経済産業省の説明ページが分かりやすくまとまっていると思います。

https://www.meti.go.jp/covid-19/pdf/pamphlet.pdf

 

出典:経済産業省ウェブサイト(https://www.meti.go.jp/covid-19/pdf/pamphlet.pdf

 

■新型コロナウイルス感染症特別貸付(日本政策金融公庫)

https://www.jfc.go.jp/n/finance/saftynet/covid_19.html

■商工中金による危機対応融資(商工組合中央金庫)

https://www.shokochukin.co.jp/disaster/corona.html

 

 

【支援対象者】

新型コロナウイルス感染症の影響を受けて一時的な業況悪化を来たし、次の①または②のいずれかに該当する方

 

①最近1ヶ月の売上高が前年、又は前々年の同期と比較して5%以上減少した方

②業歴3ヶ月以上1年1ヶ月未満の場合等は、最近1ヶ月の売上高が、 次のいずれかと比較して5%以上減少している方

a 過去3ヶ月(最近1ヶ月を含む。)の平均売上高

b 令和元年12月の売上高

c 令和元年10月~12月の売上高平均額

 

※個人事業主(事業性のあるフリーランスを含み、小規模に限る)は、影響に対する定性的な説明でも柔軟に対応してもらえるようです。

 

 

 

■特別利子補給制度

https://www.jfc.go.jp/n/finance/saftynet/pdf/covid_19_faq_jisshitsumurishika_chusho.pdf

 

特別利子補給制度は、日本政策金融公庫等の「新型コロナウイルス感染症特別貸付」若し くは商工中金による「危機対応融資」により借入を行った中小企業者等のうち、特に影響の大きい事業性のあるフリーランスを含む個人事業主、また売上高が急減した事業者などに対して、利子の全部又は一部を給付するものです。

 

【支援対象者】

日本政策金融公庫等の「新型コロナウイルス感染症特別貸付」若しくは商工中金による「危機対応融資」により借入を行った中小企業者のうち、以下の要件を満たす方

 

①個人事業主(事業性のあるフリーランス含み、小規模に限る):要件なし

②小規模事業者(法人事業者) :売上高▲15%減少

③中小企業者(上記➀➁を除く事業者):売上高▲20%減少

※小規模要件 ・製造業、建設業、運輸業、その他業種は従業員20名以下 ・卸売業、小売業、サービス業は従業員5名以下

 

 

 

 

出典:経済産業省ウェブサイト(https://www.meti.go.jp/covid-19/pdf/pamphlet.pdf

 

・セーフティネット保証4号・5号

https://www.chusho.meti.go.jp/kinyu/sefu_net_gaiyou.htm

・危機関連保証

https://www.chusho.meti.go.jp/kinyu/sefu_net_crisis.htm

 

 

(ウ)特例リスケ

コロナの対策においては新たな融資に焦点が当たっているように見えますが、2020年4月6に公表された特例リスケも非常に効果があります。こちらは、新型コロナの影響で業績が悪化している企業に対して、1年間の返済猶予を行うものです。

 

特例リスケは、コロナ対策融資と比較して、支援対象者がやや複雑となっておりますが、既存借入の返済猶予を受け、さらに新たに金融機関から融資を受けられる可能性があるため、企業にとっては非常にありがたい施策となります。窓口は、各都道府県において事業再生の支援を行っている中小企業再生支援協議会となります。

 

【支援対象者】

新型コロナウイルス感染症の影響を受けて一時的な業況悪化を来たし、次の①または②のいずれかに該当する方

 

①最近1ヶ月の売上高が前年、又は前々年の同期と比較して5%以上減少した方

②業歴3ヶ月以上1年1ヶ月未満の場合等は、最近1ヶ月の売上高が、 次のいずれかと比較して5%以上減少している方

a 過去3ヶ月(最近1ヶ月を含む。)の平均売上高

b 令和元年12月の売上高

c 令和元年10月~12月の売上高平均額

 

上記の要件を満たし、かつ下記の条件を満たす必要があります。

a 今後6か月間の資金繰りの見通しが認められること

b 金融機関又は政策金融機関から融資を受けることができれば、 今後6か月間の資金繰りの見通しが認められること

c 統括責任者又は統括責任者補佐が、相談企業の業種・ 業界の性質に応じ、相談企業の元金返済猶予の要請を行うことが 事業改善に向けて有用であると判断した場合

 

5. 資金繰り対応の後

借入等を行って、当面の資金繰りが確保できた場合、又は資金繰り確保と並行して損益改善を検討しましょう。まずは、自社の状況を正確に把握する必要があります。正確に把握することで、改善点が見つかることが多いです。改善施策を検討するにあたっては、何が会社にとって重要であるのかを軸として、優先度の高いもの、効果が大きいものから順に取り組んでいくことで、損益改善を目指します。これらを事業計画に織り込んで、損益だけでなくキャッシュフローも含めてシミュレーションすることが重要です。

 

資金繰りが苦しい時に、コロナ対策融資・特例リスケの相談はもちろんですが、業績の下降時における金融機関との付き合い方や経営改善まで総合的に相談できる事業再生の専門家に活用してみてはいかがでしょうか。

 

 

 

※最新の詳細情報は各HP等にて必ずご確認ください。