【Q&A】清算結了した法人の帳簿保存義務について[税理士のための税務事例解説]

[税理士のための税務事例解説]

事業承継やM&Aに関する税務事例について、国税OB税理士が解説する事例研究シリーズです。

今回は、「清算結了した法人の帳簿保存義務について」についてです。

 

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[質問]

当社は設立以来35年にわたり業務を続けてまいりましたが、代表者に健康問題が生じ事業継続に不安があることから今期を最後の事業年度として解散することになりました。

 

今期中に従業員や代表者の退職手続きや資産の処分などを行って解散登記し、その後3~4月以内に清算結了が可能と踏んでいます。

 

青色申告法人の帳簿書類の整理保存については法人税法施行規則第59条に規定があり当社はこれを順守してきましたが、解散し清算結了した法人に対して当該規定はどの様な効果を持つのでしょうか。

 

清算結了により法人格は消滅しその時点で帳簿書類の整理保存義務も消滅する事になりますか。あるいは解散法人の元株主若しくは元取締役が二次的に帳簿書類の整理保存義務を負う事となりますか。

 

[回答]

ご照会の件について、法人税法施行規則59条は青色申告法人の帳簿書類の保存義務を課しており、具体的には、起算日から7年間(又は同規則26の3により10年間)、保存しなければならないこととされています。この場合の「起算日」については、同規則59条2項において、清算中の法人の残余財産が確定した場合も規定されております。

 

法人税法施行規則59条1項は、「青色申告法人は、・・・」と規定されておりますので、解釈上、疑義がないわけではありませんが、上記のとおり、同条の規定は清算結了後も及ぶことが前提とされています。この点については、会社法508条において、清算人に対して清算結了の登記の日から10年間、清算株式会社の帳簿及び事業・清算に関する重要な資料〔帳簿資料〕の保存義務を課しており、法人税法においては、こうした会社法上の規定を前提として、法人税法上、特に、保存すべき具体的な帳簿書類の範囲を示して保存義務を課すと整理しているものと解されます。

 

 

〇法人税法施行規則(抄)
(帳簿書類の整理保存)
第五十九条 青色申告法人は、次に掲げる帳簿書類を整理し、起算日から七年間、これを納税地(第三号に掲げる書類にあつては、当該納税地又は同号の取引に係る国内の事務所、事業所その他これらに準ずるものの所在地)に保存しなければならない。
一 第五十四条(取引に関する帳簿及び記載事項)に規定する帳簿並びに当該青色申告法人の資産、負債及び資本に影響を及ぼす一切の取引に関して作成されたその他の帳簿
二 棚卸表、貸借対照表及び損益計算書並びに決算に関して作成されたその他の書類
三 取引に関して、相手方から受け取つた注文書、契約書、送り状、領収書、見積書その他これらに準ずる書類及び自己の作成したこれらの書類でその写しのあるものはその写し
2 前項に規定する起算日とは、帳簿についてはその閉鎖の日の属する事業年度終了の日の翌日から二月(法第七十五条の二(確定申告書の提出期限の延長の特例)の規定の適用を受けている場合には二月にその延長に係る月数を加えた月数とし、清算中の内国法人について残余財産が確定した場合には一月とする。以下この項において同じ。)を経過した日をいい、書類についてはその作成又は受領の日の属する事業年度終了の日の翌日から二月を経過した日をいう。
3~6 省略

 

〇会社法(抄)
第五百八条 清算人(清算人会設置会社にあっては、第四百八十九条第七項各号に掲げる清算人)は、清算株式会社の本店の所在地における清算結了の登記の時から十年間、清算株式会社の帳簿並びにその事業及び清算に関する重要な資料(以下この条において「帳簿資料」という。)を保存しなければならない。
2 裁判所は、利害関係人の申立てにより、前項の清算人に代わって帳簿資料を保存する者を選任することができる。この場合においては、同項の規定は、適用しない。
3 前項の規定により選任された者は、清算株式会社の本店の所在地における清算結了の登記の時から十年間、帳簿資料を保存しなければならない。
4 第二項の規定による選任の手続に関する費用は、清算株式会社の負担とする。

 

 

 

 

税理士懇話会事例データベースより

(2020年3月9日回答)

 

 

 

 

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