所得税の不動産所得に損失が生じた場合の損益通算の特例
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[解説ニュース]
所得税の不動産所得に損失が生じた場合の損益通算の特例
〈解説〉
税理士法人タクトコンサルティング(山崎 信義/税理士)
[関連解説]
1.不動産所得に係る損益通算の特例の概要
(1)損益通算とは
所得税の計算上、不動産所得、事業所得、譲渡所得又は山林所得の金額の計算上生じた損失の額のうち一定のものについて、一定の順序により総所得金額、退職所得金額または山林所得金額等を計算する際に給与所得など他の各種所得の金額から控除されます (所得税法69条)。
(2)不動産所得に係る損益通算の特例
不動産所得の金額の計算上生じた損失の金額がある場合に、その不動産所得の金額の計算上必要経費に算入した金額のうちに不動産所得を生ずべき業務の用に供する土地又は土地の上に存する権利(以下「土地等」)を取得するために要した負債の利子の額があるときは、(1)にかかわらず、その負債の利子に相当する部分の金額が生じなかったものとみなされ、他の各種所得の金額と損益通算できません(租税特別措置法(措法)41条の4)。
2.土地等を取得するために要した負債の利子の計算
(1)計算のあらまし
1(2)の対象となる「土地等を取得するために要した負債の利子の額に相当する部分の金額」は、次に掲げる区分に応じ、それぞれに掲げる金額とされます(措法施行令(措令)26条の6第1項)。
①その年分の不動産所得の金額の計算上必要経費に算入した、土地等を取得するために要した負債の利子の額が、その不動産所得の金額の計算上生じた損失の金額を超える場合
⇒その不動産所得の金額の計算上生じた損失の金額の全額
②その年分の不動産所得の金額の計算上必要経費に算入した、土地等を取得するために要した負債の利子の額が、その不動産所得の金額の計算上生じた損失の金額以下である場合
⇒その不動産所得の金額の計算上生じた損失の金額のうち、その不動産所得の金額の計算上必要経費に算入した、土地等を取得するために要した負債の利子の額に相当する部分の金額
(2)土地と建物を一括して借入金で取得した場合の借入金の利子の額の区分計算
一の契約により同一の者から土地等と建物を一括して借入金で取得した場合において、その借入金の額がこれらの資産ごとに区分されていないこと等により、土地等と建物の借入金の額を区分することが困難であるときは、これらの資産を取得するために要した借入金の額が、まず建物の取得の対価の額に充てられ、次に土地等の取得の対価の額に充てられたものとして、前述(1)の計算をすることができます(措令26条の6第2項)。
この場合における「土地等を取得するために要した借入金の利子の額に相当する部分の金額」は、次の算式により計算されます(措法通達41の4-3)。
(算式)
その年分の土地等を取得するために要した借入金の利子の額=その年分の建物と土地等を取得するために要した借入金の利子の額×土地等を取得するために要した借入金の額÷建物と土地等を取得するために要した借入金の額
3.土地等を取得するために要した負債利子の計算例
土地と建物の別に借入金の額を区分することが困難な場合における、土地等を取得するために要した負債利子の額の計算例を示すと、次の通りとなります。
(設例)
・土地の取得価額 :4,000万円(a)
・建物の取得価額 :2,000万円(b)
・借入金の額 :4,800万円(c)
・借入金の利子の額: 192万円(d)
①土地の取得に要した借入金の額 4,800万円c-2,000万円b=2,800万円e
②土地の取得に要した借入金の利子の額 192万円d×2,800万円e÷4,800万円c=112万円
③損益通算の対象とならない借入金の利子の額
イ.不動産所得の金額の計算上生じた損失の金額が70万円の場合 ⇒70万円<112万円 ∴70万円
ロ.不動産所得の金額の計算上生じた損失の金額が200万円の場合 ⇒200万円>112万円 ∴112万円
税理士法人タクトコンサルティング 「TACTニュース」(2020/04/13)より転載