[新型コロナウイルスに関するM&A・事業再生の専門家の視点]

中小企業活性化パッケージが策定されました。

 

 

〈解説〉

公認会計士・中小企業診断士  氏家洋輔

 

 

▷関連記事:新型コロナ対策融資と特例リスケ ~事業再生の専門家の観点から~

▷関連記事:家賃支援給付金の詳細情報が公表(2020年7月7日)。制度内容は、給付額は、申請方法は。

▷関連記事:コロナ融資の返済が難しい場合の対応

 

 

 

経済産業省は3月4日、金融庁、財務省と連携して「中小企業活性化パッケージ」を策定しました。コロナ禍の資金繰り支援を継続しつつ、中小企業の収益力改善・事業再生・再チャレンジを促す総合的な支援策を展開します。新たな「中小企業の事業再生等のガイドライン」を策定・活用するほか、事業再構築補助金に補助率の高い「回復・再生応援枠」も創設します。

中小企業活性化パッケージでは、コロナ禍の資金繰り支援を継続しながら、中小企業の収益力改善・事業再生・再チャレンジを促す総合的な支援策が展開されています。

 

コロナ資金繰り支援の継続、年度末の資金需要への対応

①年度末の年度末の事業者の資金繰り支援等のための金融機関との 意見交換・要請

②セーフティネット保証4号の期限を2022年6月1日までに延長

 

来年度以降の資金需要への対応

①実質無利子・無担保融資、危機対応融資の期限を2022年6月1日までに延長

②日本政策金融公庫の資本性劣後ローンを来年度末までに延長

③納税や社会保険料支払いの猶予制度の積極活用・柔軟な運用の継続

 

中小企業の収益力改善・事業再生・再チャレンジの総合的支援

収益力改善フェーズ

①認定支援機関による伴走支援の強化

DD・計画策定支援費用およびモニタリング費用で補助上限200万円から300万円に増額

②中小企業活性化協議会(旧中小企業再生支援協議会)による収益力改善支援の強化

現行の特例リスケジュール支援が名称および内容を拡充して継続

 

事業再生フェーズ

①再生ファンドの拡充

コロナの影響が大きい業種(宿泊、飲食等)を重点支援するファンドの組成等

②事業再構築補助金に「回復・再生応援枠」を創設

通常よりも補助率を引き上げ(補助率3/4(中堅2/3))

③中小企業の事業再生ガイドラインの策定

私的整理を支援する支援制度で、専門家費用等の補助率2/3、補助上限は伴走支援費用を含む700万円

 

再チャレンジフェーズ

①経営者の個人破産回避のルール明確化

経営者保証ガイドラインに基づく保証債務整理に対して金融機関が誠実に対応するとの考え方を明確化

②再チャレンジに向けた支援の強化

中小機構の人材支援事業を廃業後の経営者まで拡大

 

 

 

[関連リンク]

中小企業活性化パッケージを策定しました (meti.go.jp)

中小企業の事業再生等に関するガイドライン(令和4年3月)

事業再構築支援のご案内|事業再構築補助金(meti.co.jp)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

[新型コロナウイルスに関するM&A・事業再生の専門家の視点]

大手企業の下請けを主な生業としていますが、どのようなことに気を付けたらよいでしょうか。

 

〈解説〉

公認会計士・中小企業診断士  氏家洋輔

 

 

▷関連記事:コロナ融資の返済が難しい場合の対応

▷関連記事:コロナ禍における飲食店の事業再生の現状

▷関連記事:法的整理と私的整理の比較

 

 

 

大手企業と古くから関係を築いてきた一次受け企業の場合、他の中小企業と比較するとある程度安定した高い報酬を得ているケースが多いです。これは、大手企業と中小企業の関係の歴史的な背景であったり、中小企業の技術力や品質等の強みがあったりする場合などの要因によるかと思います。

 

大手企業からの受注の拡大に併せて、中小企業も規模を拡大し対応することで、中小企業にとっての大手企業への取引依存度(全ての売上に対する大手企業への売上の割合)が高くなっている企業が多いように感じます。

 

大手企業への販売依存度が高い企業の場合、大手企業からの受注が減少すれば、中小企業の経営に与えるインパクトは大きくなります。さらに、あろうことか取引の打ち切りとなれば、中小企業は一気に経営が立ち行かなくなってしまいます。

 

特定の企業に対する取引依存度が高いことは、経営上の重大なリスクとなることは経営学の基本的な考え方ですが、大手企業と良い関係を続けてきた中小企業にとっては、リスクを考えて事前に行動に移すことが難しいことも事実です。

 

大手企業からの取引の縮小の申し出や、取引の打ち切りの話は、昔からよくあることですが、近年では新型コロナウイルスの影響による大手企業の業績の変化や、方針転換等により、このような事態となった企業が増加しているように思います。

 

大手企業から中小企業への取引の見直しにかかる通知は、突然行われ、しかも条件の見直しや、取引の停止は、数か月程度の猶予しか与えられないケースが多いです。数か月の猶予では中小企業はできることは限られるため、このような事態に備えて事前に対応策を検討・実行することがリスクの低減のためには必要です。

 

事前の対応策としては、自社の強みを生かして新規の企業や取引の少ない企業からの受注を獲得し、大手企業の取引依存度を減少させる取り組みを実施することや、固定費の割合を減少させ変動費の割合を高くする等が考えられます。事後的な対応としては、当該大手企業との交渉や、他の取引先、経営が一気に苦しくなる場合には金融機関も巻き込んだ交渉が必要になる場合があります。

 

このような場合には、信頼できる専門家に相談をするなどし、経営の危機を一緒に乗り越えていくことが必要となります。

 

 

 

 

 

 

 

 

[税理士のための税務事例解説]

事業承継やM&Aに関する税務事例について、国税OB税理士が解説する事例研究シリーズです。

今回は、「法人が解散した場合の欠損金の控除」についてです。

 

[関連解説]

■【Q&A】法人が解散・残余財産が確定した場合の事業年度

■【Q&A】解散に際して支払われる役員退職金の課税関係

 

 

 


[質問]

顧問先がコロナの影響を受けて売上が激減したため法人の解散を検討しております。当該法人は代表取締役(現在70歳)とその兄弟が100%出資の株式会社で同族会社であり青色申告法人です。

 

現在の貸借対照表の状況は、資産の部700万円(うち不動産は無し)、負債の部が3,000万円(負債はほぼ代表取締役からの役員借入金で第三者からの借入金は無し)、純資産の部が△2,300万円(うち資本金が1,000万円、別途積立金が500万円)という状況です。

 

なお、直前期の別表7(一)5の繰越欠損金は約200万円残っており、別表5(1)の差引翌期首現在利益積立金額は約3,400万円となっています。

 

この状況で期限切れ欠損金を損金算入できるか否かご教示頂きたく照会させて頂いております。

 

私見としては、資産を処分価格で算定したとしても「残余財産は無いと見込まれる」状況にあると考えるため法人税法59条3項より期限切れ欠損金(別表5(1)の3,400万円)は損金算入でき、債務免除益として出てくるであろう約2,300万円に法人税は課税されないと考えておりますが、私の考え方に間違い無いでしょうか。

 

[回答]

ご承知のように、平成22年度税制改正において、清算所得課税が廃止され、通常所得課税に移行したことに伴い、従来の清算所得課税においては残余財産がない場合には最終的な清算所得もゼロであったことを考慮して、通常所得課税においても残余財産がないと見込まれるときには、その所得の金額を限度として期限切れ欠損金を損金算入することにより、税額が生じないようにする仕組みが導入されたものです。

 

つまり、法人が解散した場合において、「残余財産がないと見込まれる」ときは、その清算中に終了する事業年度前の各事業年度において生じた欠損金額(期限切れ欠損金額)に相当する金額は、青色欠損金等の控除後の所得の金額を限度として、その事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入することとされています(法法59③)。

 

そして、この措置の適用上、残余財産がないと見込まれるかどうかの判定は、この措置を受けようとする清算中の各事業年度終了の時の現況により行うこととされ(法基通12-3-7)、その事業年度終了の時において債務超過の状態にあるときは「残余財産がないと見込まれる」ことが明らかにされています(法基通12-3-8)。また、一般には、実態貸借対照表(その法人の有する資産及び負債の時価ベースで作成された貸借対照表)により債務超過の状態にあるかどうかが確認できることとなります(法基通12-3-9)。

 

ご照会の事例の場合、「解散を検討」しているとのことで、まだ解散はしていないようですが、ご照会の事例の法人が解散し、清算中の事業年度に入ったという前提で考え、実態貸借対照表がご照会にあるとおりの数額であるとするならば、ご照会のとおりでおおむね差し支えないと考えます(別表5(1)の「約3,400万円」はマイナスの金額であると理解します)。

 

なお、言わずもがなですが、「期限切れ欠損金(別表5(1)の3,400万円)」の全額が損金算入されて所得金額がマイナスになるわけではありませんから、念のため申し添えます。

 

また、損金算入の対象となる期限切れ欠損金額は、この措置を受けようとする事業年度(適用年度)の前事業年度から繰り越された欠損金額の合計額から法人税法第57条第1項《青色申告書を提出した事業年度の欠損金の繰越し》又は第58条第1項《青色申告書を提出しなかった事業年度の災害による損失金の繰越し》により適用年度の所得の金額の計算上損金の額に算入される青色欠損金額又は災害欠損金額を控除した金額とされており(令118)、「前事業年度から繰り越された欠損金額の合計額」とは、適用年度の確定申告書に添付する申告書別表5(1)の「期首現在利益積立金額」の合計額として記載されるべき金額で、その金額がマイナスである場合のその金額(申告書別表7(1)の控除未済欠損金額に満たない場合にはその控除未済欠損金額)とされています(法基通12-3-2)。

 

ただし、適用年度終了の時における資本金等の額がマイナスである場合には、「繰り越された欠損金額の合計額」からそのマイナスの資本金等の額を減算することとされており、そのマイナスの資本金等の額を欠損金額と同じように損金算入の対象とすることとされています(法法59③、法令118①一)。

 

 

 

 

税理士懇話会事例データベースより

(2021年5月14日回答)

 

 

 

 

[ご注意]

掲載情報は、解説作成時点の情報です。また、例示された質問のみを前提とした解説となります。類似する全ての事案に当てはまるものではございません。個々の事案につきましては、ご自身の判断と責任のもとで適法性・有用性を考慮してご利用いただくようお願い申し上げます。

 

 

 

 


[新型コロナウイルスに関するM&A・事業再生の専門家の視点]

コロナ融資の返済が難しい場合の対応

 

〈解説〉

公認会計士・中小企業診断士  氏家洋輔

 

 

▷関連記事:コロナ禍における飲食店の事業再生の現状

▷関連記事:新型コロナ特例リスケジュールの実務について

▷関連記事:法的整理と私的整理の比較

 

 

 

 

2020年の4月頃から新型コロナウイルス感染症特別貸付等(以下、コロナ関連融資)を多くの企業が借り入れました。返済期間や返済猶予期間は企業によって様々ですが、借入後1年から3年の返済猶予となっているケースが多く、早い会社では2021年の4月頃より返済が始まっています。

 

コロナ関連融資は国の制度として多額の予算をもって行われたため、通常の融資よりも借りやすく、通常の融資であれば断られる企業であっても借りることができました。通常銀行は、借入をする企業の返済能力を総合的に判断して貸し付けますが、通常の融資の場合はこれ以上の借入は難しいと判断されるような企業にもコロナ融資であれば貸し付けています。

 

企業側から見ると、返済能力以上の借入をしたということになります。既往の借入金に加え、コロナ関連融資を加えた返済を行う必要があります。

 

コロナ融資を借りた時は、緊急事態宣言等もあり、借りなければ立ち行かなくなるような状況の企業が多かったと思います。そして、1年後の返済開始のタイミングとなって、業績がコロナ前と同等かそれ以上となっている企業はありますが、まだまだ多くないのが現状です。コロナ前では既存の借入金の返済で精いっぱいだった企業にとっては、業績がコロナ前よりもよくなっていないとコロナ融資の返済まで資金が回りません。

 

つまり、下記の企業はコロナ融資の返済ができないのです。

 

①コロナ前から業績が芳しくなく、コロナ融資を借りたが、業績はコロナ前と比べて改善していない。

②コロナで業績が厳しくなり、コロナ融資を借りたが、コロナが収束せず業績はコロナ前にまで戻っておらず、既往の借入の返済で手一杯。

 

 

返済ができない場合に、取ってほしくない行動は、社保や税金の延滞、仕入先への支払いの延滞、給料の未払等です。これらを行うと、このQ&Aでは詳細は割愛しますが、最悪の場合、会社の存続が難しくなる可能性があるためです。

 

返済ができなくなった場合は、身近なコンサル、金融機関、再生支援協議会等に相談しましょう。返済の猶予(リスケ)や、返済の免除、新たな借入などを行える場合があります。従来では、リスケを実施することも大変な労力が必要でしたが、コロナ禍の現状ではまだ特例リスケという制度が存在しており、特例リスケであれば通常のリスケと比較して、少ない労力、費用で返済の猶予が可能となるため、検討することをお勧めいたします。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

[新型コロナウイルスに関するM&A・事業再生の専門家の視点]

コロナ禍における飲食店の事業再生の現状

 

〈解説〉

公認会計士・中小企業診断士  氏家洋輔

 

 

 

▷関連記事:コロナ禍における飲食店の売上高や今後の考察。

▷関連記事:法的整理と私的整理の比較

▷関連記事:外食産業に関する実態調査(2021年1月公開分)

コロナ禍において、緊急事態宣言やまん延防止等重点措置の中での休業や時間短縮営業等、飲食店の経営環境は厳しい状況となっています。

 

営業時間短縮に係る感染拡大防止協力金等の支援が制度としてはあるものの、これらがスピーディに支払われるわけではありません。例えば、1月の協力金について、5月のこの本稿作成時点において、まだ支払われていない事業者があることも事実です。小規模店舗の多くの事業者は、1日6万円の協力金を受け取ることで「利益」では黒字となります。しかし、「利益」では黒字であっても、協力金が入金されるまでに家賃の支払いや経費の支払いなどが発生しているため、「資金繰り」の観点からは、入金がなく、支払いが先行することで資金残高はどんどん減少していく状況です。このような状況から、窮境に陥る飲食店は多く、既に閉店してしまった飲食店も少なくありません。

 

このような状況の飲食店が事業再生を行う場合は、施策を講じて赤字額を減少させ、コロナが落ち着くまで耐えるという方法を取らざるを得ないのが現状です。上で述べたように、時短要請等の最中は資金繰りが苦しくなるため、一定程度の資金を調達して資金残高が減少しないようにすることが非常に重要となります。筆者が関与した飲食店の場合も、資金繰りが苦しかったため億単位の資金を調達し、資金繰りを安定させたうえで施策を講じるということとなりました。ただし、この厳しい状況で新たな融資を受けることはハードルが高いことも事実です。金融機関には、誠実な態度で現状の共有と、今後の事業計画について丁寧に根気強く説明する必要があるでしょう。

 

現状の把握として、店舗別に損益を把握し、赤字店舗については撤退も含めてより詳細に分析を行う必要があります。しかし、赤字であるからと言っても、内装や設備について長期のリース契約を締結している場合があり、これらの多くは解約時に多額の違約金が必要となることから、違約金も含めたうえで検討する必要があります。

 

赤字額を減らすためには、売上を増加させるために、すでに多くの店舗で行われていますが、テイクアウトや宅配、ゴーストレストラン等を検討し、売上を確保しつつ、経費の削減によりコロナが落ち着くまで持ちこたえるということが必要です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

[解説ニュース]

住宅取得等資金の贈与の非課税制度 コロナ禍の影響で入居等が遅れた場合

 

〈解説〉

税理士法人タクトコンサルティング(遠藤 純一)

 

 

[関連解説]

■生前贈与がある場合の相続税申告の留意点

■令和3年度税制改正:住宅ローン控除の拡充

 

1、はじめに


緊急事態宣言に基づく外出の自粛要請など新型コロナウイルス感染防止策の影響により、住宅の新築竣工時期等の遅れが生じ、住宅税制の入居に関する適用要件を充たせなくなることが懸念されています。

 

このため政府は、住宅借入金等特別控除(住宅ローン控除)について昨年4月、「新型コロナウイルス感染症等の影響に対応するための国税関係法律の臨時特例に関する法律」を施行し、入居期限までに入居できないケースへの対応を行ったところです。

 

ここでは、「住宅取得等資金の贈与税の非課税の特例(措法70の2)」では、どのように対応されているのかについて確認します。

 

2、住宅取得等資金の贈与税の非課税の特例


住宅取得等資金に関する贈与税の非課税制度とは、父母・祖父母など直系尊属から満20歳以上で贈与の年の合計所得金額が2,000万円以下の子や孫が住宅取得等資金をもらう場合に、申告を条件に一定の限度額までは非課税となる制度です。

 

住宅用家屋の新築・取得・増改築(以下、取得等という)に係る契約の締結日が平成31年4月1日から令和2年3月31日の場合、非課税枠は以下の表のとおりです。

 

 

 

ただし贈与の翌年の3月15日までに住宅を取得等し、その年末までに居住すること等の要件があります。ここで着目すべきは、その贈与を受けた年の翌年3月15日までに住宅の取得等をしなければならない点です。従来から、両制度とも住宅の取得等の期限については、厳格に贈与を受けた年の翌年3月15日とされてきており、これを徒過すると、同制度の適用は認められませんでした。

 

ただし、同制度には納税者自身の責めに帰さない「災害に基因するやむを得ない事情」で住宅の引渡しや新築の時期・入居の時期が適用要件の期日に遅れた場合には、1年延長が認められる法律上の定め(宥恕規定)があります(措法70の2⑩⑪)。

 

それによると、災害に基因するやむを得ない事情により贈与により金銭の取得をした日の属する年の翌年3月15日までに取得等ができなかったとき又は取得等の年の12月31日までに入居できなかった場合であっても、特例の規定の適用を受けることができるとされており、たとえば住宅の取得等の期限が「翌々年3月15日」とされる仕組みです。

 

3、最新の国税庁のFAQ


国税に関し新型コロナウイルス感染症への対応を明らかにした「国税における新型コロナウイルス感染症拡大防止への対応と申告や納税などの当面の税務上の取扱いに関するFAQ」に、令和3年2月2日付で、「住宅取得等資金の贈与税の非課税の特例における取得期限等の延長について」が追加されました。

 

それによると、国税庁は「今般の新型コロナウイルス感染症に関しては、例えば、緊急事態宣言などによる感染拡大防止の取組に伴う工期の見直し、資機材等の調達が困難なことや感染者の発生などにより工事が施行できず工期が延長される場合など、新型コロナウイルス感染症の影響により生じた自己の責めに帰さない事由については、「災害に基因するやむを得ない事情」に該当するものと認められます」として上記宥恕規定の適用があることを明らかにしました。

 

同FAQでは、次のような事例を示しています。

 

①令和元年に贈与を受け、令和2年中に住宅の取得等をして年末までに住む予定だったケースで、コロナ禍で工期が遅れ年末までに住めなかった場合
→令和3年の年末までに居住すればOK
②令和2年に贈与を受け令和3年3月15日までに住宅の取得等をする予定がコロナ禍で遅れた場合
→令和4年3月15日までに取得し、その年末までに居住すればOK

 

 

なお、工務店等に住宅の新築工事をお依頼している場合には、資金の贈与の翌年3月15日までに棟上げしていれば、特例の適用のある住宅の取得等に含まれます(措法規23条の5の2①)。この点、新築マンションや建売住宅のケースでは、あくまで引渡し時点がポイントですので、注意が必要です。
申告にあたってはコロナ禍により取得時期や居住時期が遅れたことに関し工期が延期されたなど「やむを得ない事情」を証明する書面を用意する必要があります。

 

 

 

 

税理士法人タクトコンサルティング 「TACTニュース」(2021/02/16)より転載

[税理士のための税務事例解説]

事業承継やM&Aに関する税務事例について、国税OB税理士が解説する事例研究シリーズです。

今回は、「持続化給付金・家賃支援給付金の収益計上時期」についてです。

 

[関連解説]

■【Q&A】持続化給付金と家賃支援給付金の未収計上について

■【Q&A】経営状況が悪化した場合の定期同額給与 ~コロナウイルスの影響で大幅に売上高が落ち急激に業績が悪化、役員報酬の大幅な減額を検討~

 

 

 


[質問]

持続化給付金、家賃支援給付金の収益計上時期についてご教授ください。

 

今期申請を行い、決算をまたいで翌期に給付決定がなされ、入金がなされる場合、どちらの期で益金算入すべきでしょうか。

 

法人税基本通達2-1-42を準用してよいと判断したのですが、①事実があった(月売上が50%以上下がった)期に概算計上するべきものなのか、②支給決定があった日の属する事業年度で益金算入すべきなのか読み切れず、教えていただけると助かります。

 

持続化給付金は実際の経費の支出を前提としていないため②に該当し、家賃支援給付金の場合は家賃の支払いを前提としているので①に該当するのか①でよいのかと、考えている次第です。

 

[回答]

御質問の場合の給付金に係る収益の計上時期については、御指摘のとおり法基通2—1—42の取扱いの考え方を踏まえて判断することになります。この点、費用と収益の対応関係からすると御指摘のとおりの考え方があり得ます。しかし、持続化給付金及び家賃支援給付金については、法人がこれらの給付金を受けるための特別な行為を行ったというものではなく、法人の意思に関係のない業績の悪化という事実が後発的に生じたため給付されるものであるといえます。

 

このことからすると、持続化給付金及び家賃支援給付金のいずれについても給付が決定した日を含む事業年度の収益に計上することになると考えます。

 

 

 

 

 

税理士懇話会事例データベースより

(2020年9月18日回答)

 

 

 

 

[ご注意]

掲載情報は、解説作成時点の情報です。また、例示された質問のみを前提とした解説となります。類似する全ての事案に当てはまるものではございません。個々の事案につきましては、ご自身の判断と責任のもとで適法性・有用性を考慮してご利用いただくようお願い申し上げます。

 

 

 

 


[税理士のための税務事例解説]

事業承継やM&Aに関する税務事例について、国税OB税理士が解説する事例研究シリーズです。

今回は、「持続化給付金と家賃支援給付金の未収計上について」についてです。

 

[関連解説]

■【Q&A】持続化給付金・家賃支援給付金の収益計上時期

■【Q&A】経営状況が悪化した場合の定期同額給与

 

 

 


[質問]

法人税基本通達2—1—42に基づいて決算までに給付決定がない又は申請手続はしていないが決算前の対象月で後日申請する場合には、いずれの場合も給付金は決算において未収計上すべきですか。

 

通達を読むかぎり、持続化給付金は未収計上不要、家賃支援給付金は未収計上必要と考えますがいかがでしょうか。

 

 

(法令に基づき交付を受ける給付金等の帰属の時期)
2—1—42 法人の支出する休業手当、賃金、職業訓練費等の経費をほてんするために雇用保険法、労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律、障害者の雇用の促進等に関する法律等の法令の規定等に基づき交付を受ける給付金等については、その給付の原因となった休業、就業、職業訓練等の事実があった日の属する事業年度終了の日においてその交付を受けるべき金額が具体的に確定していない場合であっても、その金額を見積り、当該事業年度の益金の額に算入するものとする。

 

[回答]

法令等に基づき交付を受ける給付金等の収益計上時期については、貴見のとおり、法基通2-1-42においてその取り扱いを明らかにしています。

 

この取り扱いにおいては、雇用保険の規定による雇用調整助成金等のように、あらかじめ給付金による補填を前提として所定の手続きを取り、その手続きのもとにこれらの経費の支出がなされるものについては、その給付の原因となった休業、就業、職業訓練等の事実があった時点であらかじめその支給を受けるべき給付金の額を見積計上することにより、収支の対応関係を持たせることとされています。これに対し、雇用保険法の規定高年者雇用継続基本給付金等のように、具体的な経費支出の補填という性格のものでなく、一定基準に基づいて支給される奨励金のようなものについては、あらかじめ収益の計上をする必要はなく、支給決定を受けた時点で収益計上すれば足りることとされています。

 

ところで、ご質問の持続化給付金とは、感染症拡大により、特に大きな影響を受けた事業者に対して事業の継続を下支えし再起の糧とするための給付金であり、また、家賃支援給付金とは、5月の緊急事態宣言の延長等により、売り上げの減少に直面する事業者の事業継続を下支えするため、地代・家賃の負担を軽減する給付金であると説明されています(経済産業省)。

 

また、給付金は、申請者からの申請で成立し、事務局の行う申請内容の適格性等を確認する審査を経て長官が給付額を決定する贈与契約であるとされています(持続化給付金給付規定9、家賃支援給付金給付規定10)。

 

持続化給付金及び家賃支援給付金のいずれも、「事業の継続を下支えする」という目的の給付であり、その給付は中小企業庁長官(国)が給付額を決定する贈与契約であることからすると、これを区分する必然性はないものと考えます。また、家賃支援給付金制度においては、支払い賃料の額を給付金の算定基準としていますが、これはあくまでも給付金の算定基準であって、その給付目的に鑑み、必ずしも具体的な経費支出(家賃等)の補填という性格を有しているものとは言い切れないと考えられます。

 

したがって、持続化給付金及び家賃支援給付金のいずれも、法基通2-1-42(注)の取り扱いを準用して、支給決定を受けた日の属する事業年度で収益計上するのが相当と考えます。

 

 

 

税理士懇話会事例データベースより

(2020年7月21日回答)

 

 

 

 

[ご注意]

掲載情報は、解説作成時点の情報です。また、例示された質問のみを前提とした解説となります。類似する全ての事案に当てはまるものではございません。個々の事案につきましては、ご自身の判断と責任のもとで適法性・有用性を考慮してご利用いただくようお願い申し上げます。

 

 

 

 


[Batonz research](Sep.2020 Vol.1 )

 

 

〈目次〉

●大型M&Aが激減する一方、中小M&Aは過去最高に

●第三者承継支援総合パッケージの発表と小規模M&A市場の拡大

●中小M&Aガイドラインで初めてM&Aプラットフォーマーの利用推進 を明記

●経営資源引継ぎ補助金制度の創設

●スモールM&A市場の出現と拡大

●M&Aニーズの変化に対応できるかが鍵に

 

 

 

大型M&Aが激減する一方、中小M&Aは過去最高に

世界的な新型コロナウイルス感染症の影響を受けて、クロスボーダーを中心とする大型M&Aが大幅に減少する一方、中小規模のM&Aは急激に増加している実態が各種調査会社の調査結果で明らかとなった。

 

調査会社によると日本の2020年上半期(1~6月期)のM&A総額は2兆9111億円にとどまり、これは半期ベースで実に16年半ぶりの低水準となった。また、金融データ・プロバイダーであるリフィニティブの調査でも同様に、日本関連M&A公表案件は5.1兆円と前年同期から42%もの減少となり、これは2013年以降最低の水準となっている。この記録的な減少はクロスボーダーや業界再編に絡む1,000億円超の大型M&A案件の大幅な減少がその主要因である。例えばリフィニティブの調査では大型M&A案件は件数ベースで前年比75%あまり減少し、僅か5件、取引金額ベースでも1.3兆円と実に72.7%の減少という記録的な減少となった。国際的な大型M&Aは新型コロナウイルス感染症の影響をもっとも大きく受けた分野であるといえ、ワクチンの開発等、劇的な状況改善が進まない限り、その回復には相当の時間を要するものと思われる。

 

しかし注目すべきは、大型案件が激減する一方、M&A全体の案件数は2,178件と過去最多を記録したことであろう。この背景としてここ十年来に渡って指摘されてきた日本の中小企業の深刻な事業承継問題が存在するが、中でも新型コロナウイルス感染症の拡大をきっかけに、中小企業経営者が一気に同族承継からM&Aに舵を切ったことが大きな要因であると推定される。バトンズでは新型コロナウイルス感染症の拡大がどのように中小企業経営者の意思決定に影響を及ぼしたのかについて、2020年6月に全国の中小企業経営者を対象とした調査を実施した。この調査は緊急事態宣言発令前の2020年2月以前と比べ経営者の買収意向と売却意向がどのように変化したのかを比較したもので、その結果買収意向については買収に前向きな経営者が64.8%に上り緊急事態宣言前より7.2ポイント増、売却意向については前向きに考えている経営者が60.3%の9ポイント増といずれも大幅に上昇したとの結果となった。

 

 

 

また、買い手のみの調査であるが、事業承継M&Aプラットフォームであるビズリーチ・サクシードが買い手とM&Aアドバイザー向けに行ったアンケートでも、今後M&Aが活性化するという回答が97%を占めるなど、新型コロナウイルス感染症の拡大が大型M&Aとは真逆に中小M&Aの急拡大を後押しする結果となっていることが窺える。

 

 

出典:「コロナ禍の影響下におけるM&Aに関するアンケート」(事業承継M&Aプラットフォーム「ビズリーチ・サクシード」調べ)https://br-succeed.jp/content/news/pr/post-1501

 

 

第三者承継支援総合パッケージの発表と小規模M&A市場の拡大

こうした中小M&A市場の急拡大を後押しした要因の一つに、国の事業承継政策の大転換があげられる。従来、国は数度にわたる事業承継税制の改定など主として親族内承継の推進に力を入れてきた。しかし近年親族外の第三者への承継(M&A)が急増し、中小企業におい ても事業承継の主流を占めつつあるのが実態だ。 例えば、全国の都道府県に設置された国の委託事業である事業引継ぎ支援センターに寄せられた事業承継に関する相談は過去最多の11,514 社となり始めて1万件を突破した。実際の成約件数は前年比27%増の1,176 件であったが、実にその3分の2以上を第三者承継 (M&A)が占める。また、成約件数の内訳を見ると譲渡側の61.1%が売上1億円以下の小規模企業となっており、我が国の企業の87%を占める小規模企業の存続を考えると、小規模事業者の第三者承継(スモールM&A)の推進が特に政策的に重要なテーマとなりつつあると考えられよう。

 

 

 

こうした状況を踏まえ2019年12月に経済産業省は10年間の集中実施政策として「第三者承継支援総合パッケージ」を発表した。これは年間6万者、10年で60万者の事業者に対し、第三者承継の実現を目指すというもので ある。全国の事業引継ぎ支援センターの成約数が親族承継も含めて年間1000件あまり、民間企業 のM&A成約数を併せても数千件と推定されている中、これは極めて野心的な計画であると言える。

 

 

 

 

中小M&Aガイドラインで初めてM&Aプラットフォーマーの利用推進を明記

こうした状況下、中小企業庁は2020年5月、2015年3月に策定された第三者承継推進の嚆矢とされるM&A「事業引継ぎガイドライン」を全面改訂し、新たに「中小M&Aガイドライ ン」を策定した。 同ガイドラインではM&Aのプロセスや手数料の考え方等を具体的に提示したのに加え、M&A専門業者に対しても行動指針を示すなど、中小M&Aマーケットの拡大という現状を反映した個別具体的な内容となっているが、その中で新たに付け加えられた大きな変更点の一つとして「M&Aプラットフォーマー」の利用が挙げられる。 M&Aプラットフォーマーとはバトンズに代表される売り手と買い手のマッチングサイトに、様々な専門家による仲介サービスを内包したインターネットを活用した新たな形態のM&Aサービスの総称である。 ここ数年で登場したこの新しいM&A支援機関の利用をガイドラインに織り込むため、事業引継ぎガイドライン改訂検討会委員には従来の学識者や民間大手M&A&仲介会社に加えて、バトンズCEOである大山 敬義をはじめとするM&Aプラットフォーマーも名を連ねて論 議が行われた。その結果特に小規模な事業者について、「M&Aプラットフォームの活用を積極的に検討す ることが望まれる」という文言が明記され、我が国の第三者承継推進政策の一翼を担うもの として大きく注目されるに至ったのである。

 

 

 

 

経営資源引継ぎ補助金制度の創設

2月より本格的に拡大を始めた新型コロナウイルス感染症が中小企業に与える影響を憂慮 し、迅速な第三者承継を後押しすべく、中小企業庁は2020年7月に「経営資源引継ぎ補助 金」の受付を開始した。これは新型コロナウイルス感染症の影響で廃業が懸念される中小企 業の事業再編・事業統合等に伴う経費の一部を補助する新設の補助金であるが、特筆すべき は新型コロナウイルス感染症等の影響により対面での交渉が難しいという判断から、新たなにM&Aプラットフォームのシステム利用料についても補助金の対象となったことが挙げられる。 従前、事業承継関係の補助金としては「事業承継補助金」が存在したが、その採択件数は1 18件、採択率は6割程度に過ぎなかった。 しかし経営資源引継ぎ補助金は36億円の予算から950件の採択を目指しているとされる。こうした政府による第三者承継推進政策は、コロナ禍での中小企業経営者のM&A検討意欲の高まりとともに、中小、小規模企業M&Aの拡大の大きな後押しとなると考えられる。

 

 

スモールM&A市場の出現と拡大

こうしたM&Aプラットフォームの利用拡大によって、もう一つ大きく注目されるのが、従来の起業の代替手段として、サラリーマンなどの個人がM&Aで会社を買って経営していく事例が数多く生まれたことである。 バトンズでも前身である「@net(アットネット)」において、早くも2013年3月に東京都 内の歯科医院を個人の勤務医が承継した事例が生まれているが、この数年は個人を買い手と したスモールM&Aが多数成約している。この全く新しい市場は従来の仲介会社のクローズドな市場では到底起こり得なかったものであり、まさにインターネットによるM&Aプラットフォームの普及によって新たに誕生した 市場であるといえよう。新たに生まれた膨大な買い手の出現は127万者とも言われる後継者難によって廃業が懸念される事業者の第三者承継に大きな光明をもたらすものと期待される所以である。もちろんM&Aプラットフォームの利用価値はこうしたスモールM&Aに留まらず、今後更に 拡大していくことが考えられる。他の産業分野で見られた人的なリソースに依存したローカ ルモデルがI T化されることで生産性が高まり、同時に飛躍的な量的拡大を果たしたことと 同様の出来事がM&A業界において繰り返されることは十分考えられることである。

 

米国などのI T先進国では既に小規模企業のM&Aの大半はネット取引となり、最大手のプラ ットフォームでは常時7万件以上の案件が閲覧可能なほどであるが、同様に我が国においても将来的には年商5億円以下の市場で行われるM&Aの大部分が、人の力のみで仲介を行うモ デルからインターネット上でのマッチングに切り替わる可能性がある。今後M&Aプラットフォームの普及により、米国と同様の量の経済が動く状況となれば、経 済産業省が目指す年間6万者の第三者承継の実現も現実的なものとなってくるだろう。

 

 

M&Aニーズの変化に対応できるかが鍵に

先に触れたバトンズの調査において、会社・事業の売却を実施、検討した理由のトップ3は 経営不振が53.7%、将来不安が46.3%、事業再編が46.3%であった。 それに次ぐ形で後継者不在が31.3%となっており、従来中小M&Aの主要因と考えられてきた事業承継問題より、現実的な経営不安が売却の主要素として挙げられるようになったことは 注目に値する出来事である。つまり既にM&Aは将来の関心事ではなく、直近に差し迫った経営課題である、ということ なのである。一方会社・事業の買収を実施、検討した理由として挙げられたのは市場変化への対応のためが70.8%、自社のウィークポイントの補強のためが62.5%で、従来不動のトップであった事業拡大のためが54.2%で第3位に後退するなど、まさにコロナという突然の状況の変化に対 する対応策としてM&Aが検討されているという状況がわかる。

 

このことはM&Aサービスを提供する専門家、事業者に対して重要視する点は何かという質問の結果にも現れている。これによれば、手数料が安いことが45.0%、専門家によるサポートが受けられることが43.2%とあり、ここまでは以前とそう大きく変わらないものの、新たに成約までのスピードが 早いことをあげたのが33.3%と3位につける結果となっている。

 

コロナ以前のM&A業界の主要テーマは俗に2025年問題と呼ばれる中小企業の事業承継問題の解決にあった。しかし現在では売り手買い手ともに、コロナによって激変したマーケットに、迅速に適応するための手段としてM&Aを検討しており、各種M&Aの専門家、仲介会社 は大きく変化した顧客のニーズに的確に対応することが望まれている。

 

M&Aプラットフォームの普及はこうしたニーズに合致するもので、今後更に幅広い層に活用されることになると考えられるが、一方で専門知識を持たない素人の相対交渉によるトラブルの多発や、ネットに精通した専門家、特に地方における担い手の少なさなど課題も多い。今後多種多様な選択肢の中から迅速にマッチングが可能であるというネットの特性を生かしつつも、M&A専門家の介在により、いかにトラブルなく安全なM&Aを可能にできるかが、 日本においてもIT先進国の米国などと同様にM&Aプラットフォームが本格的な普及に至るかどうかの試金石となるだろう。

 

 

 

 

情報提供元:株式会社バトンズ

新型コロナウイルス感染症に対する企業の意識調査(2020年8月公開分)

 

 

 

◇近畿地区「新型コロナウイルス感染症に対する企業の意識調査」(2020年7月)

企業の85.4%が「業績にマイナス」も、3カ月連続で減少
~ 2020年7月の売り上げ見込みは、前年同月比で平均85.3% ~

※詳細はこちら

 

◇神奈川県「新型コロナウイルス感染症に対する企業の意識調査」(2020年7月)

約7割の企業で、既に業績にマイナスの影響
~ 外出自粛の影響が色濃い業種で、売り上げ確保が厳しい状態続く ~

※詳細はこちら

 

◇四国地区「新型コロナウイルス感染症に対する企業の意識調査」(2020年7月)

業績への影響、四国企業の6割強で既にマイナスの影響
~7月の売り上げ、四国企業の約6割が前年同月比減収を見込む~

※詳細はこちら

 

◇熊本県「新型コロナウイルス感染症に対する企業の意識調査」(2020年7月)

企業の83.8%が「業績にマイナス」、4カ月連続で8割を超える
~ 外出自粛の影響が色濃い業種で売り上げ確保が厳しい状態続く ~

※詳細はこちら

 

◇沖縄県「新型コロナウイルス感染症に対する企業の意識調査」(2020年7月)

企業の70.2%が「減収」、先行き不透明感ぬぐえず
~従業員の健康や感染症予防対策を優先しながら企業活動の再開を目指す~

※詳細はこちら

 

 

 

 

 

 

情報提供元(出所):株式会社帝国データバンク

[新型コロナウイルスに関するM&A・事業再生の専門家の視点]

コロナ禍における飲食店の売上高や今後の考察。

 

〈解説〉

公認会計士・中小企業診断士  氏家洋輔

 

 

▷関連記事:新型コロナ対策融資と特例リスケ ~事業再生の専門家の観点から~

▷関連記事:新型コロナウイルス対策として導入された制度のまとめと感じたこと

▷関連記事:外食産業に関する実態調査(2021年1月公開分)

 

 

 

新型コロナウイルス感染症に伴う緊急事態宣言による影響で様々な業界・業種で影響がでています。

中でもコロナの影響が甚大であった業界の1つが飲食店となります。飲食店をファーストフード、ファミリーレストラン、パブレストラン/居酒屋、ディナーレストラン、喫茶店に分類した場合の売上高の前年同月比は以下の推移となります。

 

 

出典:日本フードサービス協会

 

 

 

飲食店全体として、2020年3月より売上高の減少が始まり、4月の売上高は前年同月比の約60%となっています。最も低くなったのはパブレストラン/居酒屋で、前年同月比は約10%にまで落ち込みました。5月、6月ではやや回復はしているものの、4月と同様に前年同月比では大幅なマイナスとなっています。

 

上図を見ると、お酒の提供が比較的多くなるパブレストラン/居酒屋や、ディナーレストランの落ち込みが顕著であることに対して、お酒の提供が少なくコロナ以前よりテイクアウトが定着していたファーストフードでは落ち込みは限定的となりました。

 

ファーストフード以外でも、今後テイクアウトの拡充や、客数の回復等によりある程度の売上高回復は見込めるでしょう。テイクアウト需要の拡大により、従前よりむしろ売上高が拡大する飲食店も少なからずあるかもしれません。

 

今後、コロナ騒動がある程度収束に向かっても、アルコール消毒や店内の換気、アクリル板や席数の減少等によるソーシャルディスタンス対応はしばらく継続するものと思われます。

 

その中でも、席数の減少のインパクトが非常に大きいと考えています。アクリル板等での対応は初期的に投資をすれば追加で費用は発生せず、アルコール消毒の経費の影響は軽微であり、また国の制度等の活用も可能です。ところが、密集した店内であった場合等、ソーシャルディスタンスを保つための席数の減少は、潜在的な客数が戻ったとしても、売上客数の減少は免れません。

 

従前の客配置等にもよりますが、客席が従前の70%となった場合は、単純計算すると売上も70%としか見込めないことになります。一方で、人件費も70%とできれば良いですが現実的には難しく、家賃は従前と同じとなります。これに対して、テイクアウトにより売上減少分を補填する考え方もありますが、お酒を提供する飲食店にとっての利益の柱は飲み物代であるため、テイクアウトである程度売上高を獲得できたとしても、利益面ではやはり減少となります。

 

これに対して、席数を減らした分(客数が減少する分)客単価を増加させるため、値上げを行うという方法もあります。客数が減り空間が広くなるため、その空間に価値を感じられる人は値上げをしても問題ないかもしれませんが、一般的に消費者は値上げには敏感であるため値上げを行うのは最後の手段かもしれません。

 

コロナ禍において、時間の経過とともに外食需要はある程度回復するものの、席数の減少を余儀なくされる飲食店の利益は、コロナ前と同程度にまで回復することは厳しいと言わざるを得ません。新しい形でのサービスの提供等、試行錯誤することが今後の生き残りには必要であり、厳しい局面に立っていることは確かであり、飲食店の今後のビジネスを今一度見直す必要があると思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

[新型コロナウイルスに関するM&A・事業再生の専門家の視点]

新型コロナ特例リスケジュールの実務について

 

〈解説〉

公認会計士・中小企業診断士  氏家洋輔

 

 

▷関連記事:新型コロナ対策融資と特例リスケ ~事業再生の専門家の観点から~

▷関連記事:新型コロナウイルス対策として導入された制度のまとめと感じたこと

▷関連記事:家賃支援給付金の詳細情報が公表(2020年7月7日)。制度内容は、給付額は、申請方法は。

 

制度概要


新たに新型コロナウイルス感染症の影響を受けた中小企業者に対して、中小企業再生支援協議会が窓口相談や金融機関との調整を含めた、新型コロナウイルス感染症特例リスケジュール計画策定支援を行います。

 

 

●一括して既存債務の元金返済猶予要請

中小企業再生支援協議会が中小企業者に代わり、主要債権者の支援姿勢を確認の上で、一括して1年間の元金返済猶予の要請を実施します。

 

 

●資金繰り計画策定における金融機関調整

中小企業再生支援協議会が中小企業者と主要債権者が作成する資金繰り計画の策定を支援します。複数の既往債権者が存在する場合、新規融資を含めた金融機関調整を行った上で、既往債権者の合意形成をサポートします。

 

 

●資金繰りの継続サポート

中小企業再生支援協議会が、特例リスケジュール計画成立後も毎月資金繰りを継続的にチェックし、適宜助言します。

 

 

実務


中小企業者は、まず各都道府県の中小企業再生支援協議会に相談に行き、中小企業再生支援協議会の担当者に対して事業の説明や現状の説明を行います。財務諸表や資金繰り表も併せて提出した上で、中小企業再生支援協議会からの支援決定の連絡を待ちます。

 

支援決定となった場合、特例リスケの予定期間(この先1年2か月程度)の損益計画と資金繰り予定表を作成し、これを中小企業再生支援協議会の担当者に提出します。しかし、損益計画や資金繰り予定表は簡単に作れるものではないため、場合によっては専門家を紹介され、専門家の支援の下で作成します。

 

損益計画と資金繰り予定表を中小企業再生支援協議会の担当者にチェックをしてもらい、大丈夫であれば、中小企業者の債権者(銀行等)に対して、中小企業再生支援協議会から、特例リスケジュールの要請がなされます。各債権者から同意を得ることで特例リスケジュールの成立となります。

 

特例リスケジュールの成立後は、資金繰り表を毎月更新し、中小企業再生支援協議会の確認の上、各債権者に提出します。特例リスケジュールの期限となる1年後に、基本的には再度中小企業再生支援協議会により事業再生の支援に入ることとなります。

 

 

 

 

 

 

 

 

[事業承継・M&A専門家によるコラム]

新型コロナウイルス対策の制度

~特別定額給付金、持続化給付金、家賃支援給付金、緊急雇用安定助成金、雇用調整助成金、新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金、都道府県による協力金、各市区町村による支援給付金、小規模持続化補助金コロナ特別対応型、任意団体による支援事業・サポート事業~

 

〈解説〉

ビジネス・ブレイン税理士事務所(畑中孝介/税理士)

 


[関連解説]

■家賃支援給付金の詳細情報が公表(2020年7月7日)。制度内容は、給付額は、申請方法は。

■新型コロナ対策融資と特例リスケ ~事業再生の専門家の観点から~

 

 

 

今回は、コロナ対策として導入された制度のまとめと申請書類を作成して感じたところを書こうと思います。

 

持続化給付金や家賃支援給付金は申請が行われやすいように、要件に該当すれば、用意する書類は簡便です。ですが、普段見慣れていないや聞きなれていない単語による難しさはあるかと思います。申請フォーマットは段々とアップロードされて、当初よりはやりやすくなったかな?と感じます。それでも、特例要件や書類の不備による部分で給付がなかなかされないところかと思います。

 

家賃支援給付金は賃貸借契約書の印が面倒だったりするところかと思います。サンプルとされているひな形通りに契約書が作成されている訳ではありませんので、分からない場合には給付金事務局などにご相談するのも一つかと思います。

 

次に、雇用調整助成金は元々の申請書類に比べるとかなり簡便化されています。しかし、これも普段やられていない方にとっては大変な作業かと思います。簡便化されているとはいえ、不備があると差し戻されるので、意外と手間なところは変わらないのでは?と感じます。また、直接持参する場合には、待ち時間も長いようで・・・3密になっているのでは?と思うところです。

 

東京都の事業継続緊急対策(テレワーク)助成金も申請書類の準備が整えば、比較的申請しやすいものでしたが、件数が多いので交付決定まで結構待たされるようです。当事務所では申請から交付まで約3ヶ月かかりました。

 

小規模持続化補助金新型コロナ特別対応型は申請用紙数が減っているため、要件に合う内容を要約して作成することが必要ですので、申請書の作成には工夫が必要なところです。

 

最後に、新型コロナウイルスによって、多くの給付金、助成金、補助金、協力金、支援金などが創設されました。国や都道府県などの公共団体以外にも任意団体、企業なども独自に支援金を創設していたりします。経済を壊さないための施策を出している部分かと思います。とはいっても、企業努力に任せているところの方が大きいのではと個人的に思います。

 

まだまだ新型コロナウイルスの影響は続くかと思います。既存の事業の在り方では、乗り切れるのか?と疑うところもあるかと思います。この疑いを新たな在り方に転換して、新たなビジネスモデルの仕組みに変えて行くことが求められてきているのではないでしょうか?

 

そのための支援金など活用できるものは十分にあるかと思います。様々なものを活用し、企業を永続させていくこと!!経営者に求められているのでは?と思うところです。

 

 

 

新型コロナウイルス対策の制度


(1)特別定額給付金
1名あたり10万円の給付。
期限が郵送方式の申請受付開始日から3ヶ月以内のため、7月中に申請終了となるのではないでしょうか?

 

(2)持続化給付金
個人事業主は最大100万円、法人は最大200万円。
2020年1~12月の各月で売上高が前年同月比50%減少している場合。
さらに、要件が緩和され、2020年3月までに開業・設立で4月中の届出日であれば、給付金の対象となっています。

 

(3)家賃支援給付金
7月14日から申請開始。
個人事業主は最大300万円、法人は最大600万円。
2020年5~12月の各月で売上高が前年同月比50%減少している場合。
持続化給付金と同様に緩和要件があるようです。

 

(4)雇用調整助成金
雇用保険の被保険者の従業員を対象。
特例措置期間が2020年4月1日から9月30日まで延長されました。
助成額は1人1日15,000円を上限として、休業手当等の10/10を助成。
申請期限は、6月末日支給分まで8月31日が期限です。
7月以降は2ヶ月以内とされています。

 

(5)緊急雇用安定助成金
雇用保険の被保険者以外の従業員を対象としています。
要件は(4)雇用調整助成金と同様。

 

(6)新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金
7月10日より申請が開始。
新型コロナウイルスの影響で休業したものの、休業手当金を事業主から受け取れなかった従業員の方が対象。
平均賃金の80%で上限が1日あたり11,000円となっています。

 

(7)都道府県による協力金、各市区町村による支援給付金
それぞれの地方公共団体により任意で用意されています。
申請期限が過ぎていないものや終わってしまっているものもあります。

 

(8)小規模持続化補助金コロナ特別対応型
通常の小規模持続化補助金とは別に新たに設けられています。
要件が異なるため、確認は必要です。

 

(9)任意団体による支援事業・サポート事業
新型コロナウイルスの影響を受けて、影響を受けた業界や所属している方に向けて、独自に行われています。
例えば、公益財団法人日本スポーツ協会は『スポーツ活動継続サポート事業』を行っています。

 


 

「ビジネスブレイン月間メルマガ(2020/07/27号)」より一部修正のうえ掲載

[新型コロナウイルスを背景としたM&A需要調査](2020年7月公表)

コロナ禍、「生き残り」のためのM&A!

64.8%の経営者が新型コロナの影響で会社や事業の買収を実施・検討の事実
〜株式会社バトンズ、新型コロナウイルスを背景としたM&A需要調査を実施〜

 

 

M&A総合支援プラットフォームを運営する株式会社バトンズ(本社:東京都千代田区丸の内1-8-2 鉃鋼ビルディング24階、代表:大山敬義)が、新型コロナウイルスを背景としたM&A需要の調査を目的に、会社・事業の売却もしくは買収について検討したことがある経営者111名を対象に、インターネットによるアンケート調査を実施しましたのでお知らせいたします。

 

 

■アンケート調査結果の詳細を見る

 

 

 

[まとめ(アンケート調査結果より)]

今回、 新型コロナウイルスを背景としたM&A需要の調査を実施しましたところ、約9割の経営者がコロナを受け会社経営に変化があったと回答しました。また、コロナ発生後の現在、会社や事業の買収もしくは売却を実施・検討した経営者は約6割にのぼることが明らかとなりました。売却理由では「撤退」のため売るという選択肢も見受けられましたが、買収理由としては「市場の変化への対応」や「自社のウィークポイントの補強のため」が多く選択されました。コロナ禍における緊急事態宣言をきっかけに、都心から離れた地方にある営業拠点の増設や取引先の確保をしていく動きが増えていたり、ひとつの業種にこだわらず事業の多角化戦略を図っていく、といったトレンドが反映されています。

 

今後ますます市場の変化が激しくなっていく中、企業の生き残り戦略としてのM&Aには成約までのスピードが早いことが求められていきます。加えて、コロナ禍を受けて突発的に財務状況が厳しくなったことを理由とする売却が増えており、正しい企業価値を見極められ、トラブルなくM&Aの交渉や実務を行える専門家のニーズは今後さらに高まっていくでしょう。

 

 

 

情報提供元:株式会社バトンズ

[新型コロナウイルスに関するM&A・事業再生の専門家の視点]

家賃支援給付金の詳細情報が公表(2020年7月7日)。制度内容は、給付額は、申請方法は。

 

〈解説〉

公認会計士・中小企業診断士  氏家洋輔

 

 

▷関連記事:新型コロナ対策融資と特例リスケ ~事業再生の専門家の観点から~

▷関連記事:新型コロナウイルス対策として導入された制度のまとめと感じたこと

▷関連記事:東京都家賃等支援給付金 ~国の家賃支援給付金とは別に、東京都で独自の家賃支援等給付金の制度があります~

 

1、制度概要


新型コロナウイルス感染症を契機とした5月の緊急事態宣言の延長等により、売上の急減に直⾯する事業者の事業継続を下支えするため、地代・家賃(賃 料)の負担を軽減することを目的として、テナント事業者に対して「家賃支援給付金」を支給されます。

 

2、支給対象者


(1)2020年4月1日時点で、次のいずれかにあてはまる法人であること

●資本金の額または出資の総額が、10億円未満であること

●資本金の額または出資の総額が定められていない場合は、常時使用する従業員の数が2,000人以下であること。

 

(2) 2019年12月31日以前から事業収入を得ており、今後も事業を継続する意思があること。(持続化給付金と同様に創業特例等があります)

 

(3) 2020年5月から2020年12月までの間で、新型コロナウイルス感染症の影響など により、以下のいずれかにあてはまること。

①いずれか1カ月の売上高が前年同月比で50%以上減少

②連続する3ヶ月の売上高が前年同期比で30%以上減少

 

(4)他人の土地・建物をご自身で営む事業のために直接占有し、使用・収益(物を直接 に利活用して利益・利便を得ること)をしていることの対価として、賃料の支払いをおこなっていること。

 

 

3、給付額の算定の基礎となる契約・費用


以下の契約・費用が給付額算定の基礎となります。

 

※1)賃貸借契約以外の形式での契約の場合は確認に時間が必要となるようです。

※2)地代家賃として税務申告しているなど、申告者自らの事業のために使用・収益する部分についてのみ対象

※3)共益費、管理費が賃料について規定された契約書と別の契約書に規定されている場合は給付額算定の対象外となります。

※4)契約書において、賃料と、これら以外の費用が項目ごとに区分されておらず、賃料として一括計上されている場合には、給付額の算定の基礎に含むことがあります。

※5)賃料及び共益費管理費には消費税を含みます。

上記の※4に記載されている内容によって、シェアオフィス等の水道光熱費やオフィスの受付の人件費等が賃料に含まれている契約も対象になるものと思われます。

 

4、給付額の算定根拠となる契約期間


給付の対象となるのは以下の全てに当てはまることが条件となります。

 

①2020年3月31日時点で有効な賃貸借契約があること。

②申請日時点で有効な賃貸借契約があること。

③申請日より直前3ヵ月間の賃料の支払い実績があること。

 

※1)2020年3月31日から申請日までの間に、引越し、再契約、契約更新等がある場合はそれらの内容を証明する資料が必要となります。

※2)又貸しを目的とした取引、自己取引(会社と代表取締役等)、親族間(一親等以内)取引については対象外となります。

 

5、給付額


申請時の直近の支払賃料(月額)に基づいて算出される給付額(月額)を基に、6カ月分の給付額に相当する額が支給されます。

 

6、算出方法


①法人の場合

1カ月分の給付の上限額は100万円となります。

 

支払家賃(月額)75万円までの部分が2/3給付で、支払家賃(月額)75万円の場合は給付額(月額)50万円となります。家賃の支払額が75万円を超える場合は、75万円を超える部分が1/3給付となります。支払家賃(月額)225万円で上限の給付額(月額)100万円になります。6カ月分では600万円が給付の上限額となります。

 

出典:経済産業省「令和2年度第2次補正予算の事業概要」

 

 

 

②個人事業主の場合

1カ月分の給付の上限額は50万円となります。

 

支払家賃(月額)37.5万円までの部分が2/3給付で、支払家賃(月額)37.5万円の場合は給付額(月額)25万円となります。家賃の支払額が37.5万円を超える場合は、37.5万円を超える部分が1/3給付になるため、支払家賃(月額)112.5万円で上限の給付額(月額)50万円になります。6カ月分では300万円が給付の上限額となります。

 

出典:経済産業省「令和2年度第2次補正予算の事業概要」

 

 

※1)複数月数の賃料をまとめて支払っている場合には、申請日の直前の支払いを1ヵ月分に平均した金額が算定の基礎となります。

※2)2020年4月1日以降に賃料に変更があった場合、2020年3月31日時点で有効か賃貸借契約書に記載されている1か月分の金額と比較し、低い金額を給付額の算定の基礎とします。つまり、20203月の賃料申請月の前月の賃料の、いずれか低い家賃が給付額の算定の基礎となります。

※3)家賃が月ごとに変動する場合、20203月の賃料申請月の前月の賃料の、いずれか低い金額が給付額の算定の基礎となります。

 

 

7、申請書類


申請書類は持続化給付金の申込時に必要な書類(③④)に①②の書類が追加されます。

 

①賃貸借契約の存在を証明する書類(賃貸借契約書等)

②申請時の直近3か月分の賃料支払実績を証明する書類(銀行通帳の写し、振込明細書等)

③本人確認書類(運転免許証等)

④売上減少を証明する書類(確定申告書、売上台帳等)

 

8、申請期間


2020年7月14日から2021年1月15日までの間

(なお、給付額は申請時の直近1ヵ月における支払家賃等に基づき算定されます。)

 

 

9、対象範囲の例示


①自己保有の土地・建物について、ローン支払いについては対象外となります。

②個人事業主の「自宅」兼「事務所」の家賃は、確定申告書における損金計上額等、自らの事業に要する部分について対象となります。

③駐車場や資材置き場等として、事業に用している土地の賃料等の借地の賃料は対象となります。

④管理費は共益費については、賃貸借契約において賃料と一体的に取り扱われている等一定の場合に対象となります。

⑤地方自治体から賃料支援を受けている場合は、対象ではあるものの、給付額の算定に際して考慮 される場合があります。

 

10、申請方法


PCやスマートフォンで家賃支援給付金ホームページにアクセスし、WEB上で申請します。WEB上での申請が困難な場合は、申請サポート会場での申請が可能となっています。

 

新型コロナウイルスの影響で売上高が減少している事業者にとって、固定費である家賃の支援となる家賃支援給付金は非常に重要です。これらの制度を正確に理解して、自社にとって最も良いタイミングで申請を行いましょう。

 

また、上記では家賃支援給付金の概要を記載しておりますが、詳細な情報や最新の情報は経済産業省等のWEBサイトにて確認頂くようにお願いいたします。

 

 

 

 

 

 

 

 

人手不足に対する企業の意識調査(2020年6月公開分)

 

 

 

◇栃木県「人手不足に対する企業の意識調査」(2020年4月)

正社員不足29.4%、急速に低下
~ 「過剰」とする企業、製造・小売などで増加 ~

※詳細はこちら

 

◇長野県「人手不足に対する企業の意識調査」(2020年4月)

正社員が「不足」は28.5%、「過剰」と同水準に低下
~企業の人手不足感が大きく変化、30%未満は6年9カ月ぶり~

※詳細はこちら

 

◇埼玉県「人手不足に対する企業の意識調査」(2020年4月)

正社員・非正社員とも人手「不足」が大幅に減少
~ 正社員・非正社員とも「過剰」が大幅に増加 ~

※詳細はこちら

 

◇愛知県「人手不足に対する企業の意識調査」(2020年4月)

正社員「過剰」が2.6倍増、人手不足感は急速に後退
~ 「製造」「卸売」は過剰が不足を上回る ~

※詳細はこちら

 

◇九州地方「人手不足に対する企業の意識調査」(2020年4月)

企業の人手不足感は急激に低下
~新型コロナウイルスの影響などで人手が過剰とする企業は前年同月比11.9ポイント増加~

※詳細はこちら

 

◇山梨県「人手不足に対する企業の意識調査」(2020年4月)

企業の人手不足感は急激に低下
~ 人手が過剰とする割合は増加 ~

※詳細はこちら

 

◇東北地方「人手不足に対する企業の意識調査」(2020年4月)

企業の人手不足感は急激に低下
~ 人手が過剰とする企業、5社に1社の割合へ急増 ~

※詳細はこちら

 

◇神奈川県「人手不足に対する企業の意識調査」(2020年4月)

企業の人手不足感、コロナ禍で急速に低下
~ 人手が「過剰」とする割合は急増、「飲食店」で顕著 ~

※詳細はこちら

 

◇茨城県「人手不足に対する企業の意識調査」(2020年4月)

新型コロナウイルスの影響で人手不足感は急激に低下
~正社員、非正社員ともにリーマン・ショック後に次ぐ落ち込み幅~

※詳細はこちら

 

◇近畿地方「人手不足に対する企業の意識調査」(2020年4月)

人手不足感は急激に低下、減少幅はリーマン越え
~ 人手が「過剰」とする割合は増加、特に「旅館・ホテル」で顕著 ~

※詳細はこちら

 

 

 

 

 

 

情報提供元(出所):株式会社帝国データバンク

[税理士のための税務事例解説]

事業承継やM&Aに関する税務事例について、国税OB税理士が解説する事例研究シリーズです。

今回は、「経営状況が悪化した場合の定期同額給与」についてです。

 

[関連解説]

■【Q&A】解散をした場合の役員退職金の支給について

■【Q&A】解散に際して支払われる役員退職金の課税関係

 

 

 


[質問]

「役員報酬の臨時改定事由」に該当するか否かご教示ください。

 

 <概要>
・5月決算の法人です。(飲食店を営んでいます)
・従業員は代表取締役である社長ほか多数です。
・銀行等第三者からの借入はありません。
・株主は社長のみです。

 

 <質問>
昨今のコロナウイルスの影響で、大幅に売上高が落ち急激に業績が悪化しています。そのため役員報酬の大幅な減額を検討しています。その場合は法人税基本通達9-2-13《経営の状況の著しい悪化に類する理由》に該当しますか。

 

また業績が回復した後に通常改定以外で役員報酬を増額した場合は、増額分が損金不算入でよろしいでしょうか。

 

 

[回答]

1 法人税法上、役員給与のうち損金算入ができるものとして挙げられている定期同額給与は、次に掲げるものとされています(法34①一、令69①一)

 

(1) その支給時期が1月以下の一定の期間ごとである給与(定期給与)で、当該事業年度の各支給時期における支給額が同額であるもの

 

(2) 定期給与で次の改定がされた場合における当該事業年度開始の日又は給与改定前の最後の支給時期の翌日から給与改定後の最初の支給時期の前日又は当該事業年度終了の日までの支給額が同額であるもの

 

① その事業年度開始の日から3月を経過する日までにされた定期給与の額の改定(通常改定)
② 臨時改定事由によりされた定期給与の額の改定
③ 業績悪化改定事由によりされた定期給与の額の改定

 

 

2 上記の業績悪化改定事由とは、経営状況が著しく悪化したことなどやむを得ず役員給与を減額せざるを得ない事情があることをいい、一時的な資金繰りの都合や業績目標に達しなかったことなどは含まれないとされています(基通9-2-13)。

 

 

3 そこで、お尋ねの場合は、「昨今のコロナウイルスの影響で、大幅に売上高が落ち急激に業績が悪化」したということですが、単に業績目標が達成しなかったというわけではなさそうですし、その業績悪化の原因はコロナウイルスの影響であることが明らかなようですので、上記の業績悪化改定事由に該当するものと認められます。

 

 

4 また、上記の業績悪化事由による改定により減額した後に、業績が回復したからといって通常改定以外で増額改定した場合には、臨時改定事由にも該当しませんので、その増額改定分(回復部分)は定期同額給与として取り扱われない、すなわち損金不算入になると考えます。したがって、損金不算入を避けるのであれば、通常の給与改定時期で増額改定(回復)するのが望ましいと考えます。

 

 

 

税理士懇話会事例データベースより

(2020年3月6日回答)

 

 

 

 

[ご注意]

掲載情報は、解説作成時点の情報です。また、例示された質問のみを前提とした解説となります。類似する全ての事案に当てはまるものではございません。個々の事案につきましては、ご自身の判断と責任のもとで適法性・有用性を考慮してご利用いただくようお願い申し上げます。

 

 

 

 


[伊藤俊一先生が伝授する!税理士のための中小企業M&Aの実践スキームのポイント]

⑦(特別編)新型コロナウイルス等による業績不振に関連する税務上の注意点

 

〈解説〉

税理士  伊藤俊一

 

[目次]

1)はじめに

2)関連法人の評価損計上要件

3)評価損金額

4)清算手続き中の消費税に係る論点

 


[関連解説]

■新型コロナウイルス等による業績悪化を理由とした M&A ・事業売却

■【Q&A】経営状況が悪化した場合の定期同額給与 ~コロナウイルスの影響で大幅に売上高が落ち急激に業績が悪化、役員報酬の大幅な減額を検討~

 

1)はじめに

本稿脱稿時点、COVID-19(新型コロナウイルス感染症)の影響から、業績不振に陥っている法人が多いと思われます。

 

本稿では、法人が存続している前提で業績不振になった場合に、課税実務上の手法として考え得る論点(国税庁公表のコロナ関連税制FAQや定期同額給与等の業績悪化事由など、典型論点を除く)を中心に解説します。

 

 

〔災害損失欠損金に該当する例〕

・ 飲食業者等の食材(棚卸資産)の廃棄損

・ 感染者が確認されたことにより廃棄処分した器具備品等の除却損

・ 施設や備品などを消毒するために支出した費用

・ 感染発生の防止のため、配備するマスク、消毒液、空気清浄機等の購入費用

・ イベント等の中止により、廃棄せざるを得なくなった商品等の廃棄損

※ 繰戻し還付の対象となる災害損失とは、棚卸資産や固定資産に生じた被害(損失)に加え、その被害の拡大・発生を防止するために緊急に必要な措置を講ずるための費用が該当します。

 

〔災害損失欠損金に該当しない例〕

・ 客足が減少したことによる売上げ減少額

・ 休業期間中に支払う人件費

・ イベント等の中止により支払うキャンセル料、会場借上料、備品レンタル料

※ 上記のように、棚卸資産や固定資産の被害の拡大・発生を防止するために直接要した費用とは言えないものについては、災害損失欠損金に該当しません。

 

 

なお、本稿では詳細は触れませんが、令和2年3月期が本稿脱稿時点ではコロナショックにより日経平均株価が最も激減した月となります。令和2年3月期基準日ベースでの株式譲渡、贈与、事業承継税制(特例、贈与税の納税猶予)をお勧めします。

 

 

 

2)関連法人の評価損計上要件

関連法人評価損が租税法でも認容されるための基本的な考え方については平成7年4月14日裁決から整理することができます。

 

業績不振法人(閉鎖会社を前提とします)を子会社等関連会社として所有していた場合の評価損計上を整理していきます。法人税基本通達9-1-9(2)の要件を満たした場合、関連法人株式につき評価損が計上できます。

 

 


【下記抜粋】

(上場有価証券等以外の有価証券の発行法人の資産状態の判定)

9-1-9 令第68条第1項第2号ロ《上場有価証券等以外の有価証券の評価損の計上ができる事実》に規定する「有価証券を発行する法人の資産状態が著しく悪化したこと」には、次に掲げる事実がこれに該当する。

(2) 当該事業年度終了の日における当該有価証券の発行法人の1株又は1口当たりの純資産価額が当該有価証券を取得した時の当該発行法人の1株又は1口当たりの純資産価額に比しておおむね50%以上下回ることとなったこと。

(注) (2)の場合においては、次のことに留意する。

1 (筆者省略)

2 当該発行法人が債務超過の状態にあるため1株又は1口当たりの純資産価額が負(マイナス)であるときは、当該負の金額を基礎としてその比較を行う。

 

同通達9-1-12によると、発行法人の増資を引き受け、増資後でも債務超過が解消できない場合、増資後の株式評価損は計上できません。

 

 

(増資払込み後における株式の評価損)

9-1-12 株式を有している法人が当該株式の発行法人の増資に係る新株を引き受けて払込みをした場合には、仮に当該発行法人が増資の直前において債務超過の状態にあり、かつ、その増資後においてなお債務超過の状態が解消していないとしても、その増資後における当該発行法人の株式については令第68条第1項第2号ロ《上場有価証券等以外の有価証券の評価損の計上ができる事実》に掲げる事実はないものとする。ただし、その増資から相当の期間を経過した後において改めて当該事実が生じたと認められる場合には、この限りでない。

 


 

このように,増資後においては評価損は計上できません。

 

 

平成7年4月14日裁決では、納税者が期末日直後に増資(DES)をしています。当該増資の直前期末に評価損を計上しており,上記通達と整合していたわけです。

 

 

一方で,当局は増資前である期末日での評価損を否認しています。

 

簡単な時系列は4月20日決算法人において、同月10日、18日時点(期末日直前、ここで評価損を計上しています)では増資決議等社内稟議を行っただけ(増資前)であり、同月23日(翌事業年度)にDES実行(増資後)です。

 

なお、審判所の判断として「親会社が欠損の子会社を存続させるためにその子会社に対して増資払込みをすることは,その事情においてやむを得ないものがある場合があることもあり,請求人の場合には,(…筆者中略…)関連会社が同じ経済圏で営業している等の事情を併せ考慮すれば,単に増資払込みの事実をもって業況の回復が見込まれると解するのは相当でない。」は昨今のコロナによる業績不振下における子会社支援策等として、括目すべきです。

 

このように、納税者は期末日前後で増資に係る一連の手続を実行しており,当局は利益操作の意図があるとして,同通達9-1-12につき事実上の拡大解釈をした節が見受けられます。

 

 

これにつき、最判令和2年3月24日判決で宮崎裕子先生が述べられた下記の補足意見が参考になります。

 

「税務訴訟においても,通達の文言がどのような意味内容を有するかが問題とされることはあるが,これは,通達が租税法の法規命令と同様の拘束力を有するからではなく,その通達が関連法令の趣旨目的及びその解釈によって導かれる当該法令の内容に合致しているか否かを判断するために問題とされているからにすぎない。

 

そのような問題が生じた場合に,最も重要なことは,当該通達が法令の内容に合致しているか否かを明らかにすることである。通達の文言をいかに文理解釈したとしても,その通達が法令の内容に合致しないとなれば,通達の文理解釈に従った取扱いであることを理由としてその取扱いを適法と認めることはできない。(下線筆者)」

 

 

講学(学術)上はさておき、課税実務は通達課税です。すなわち通達の文理解釈で実務は回っています。

これにつき、通達が争点となった場合、宮崎先生は、通達は原則として文理解釈ではないとして、もととなる法令の趣旨や解釈に合致しているかにつきジャッジすると述べておられます。

法令に合致しているかどうかを課税実務の現場レベルで判断するのは様々な制約から不可能です。

 

しかし、現場レベルで簡単にチェックできる方法が1つあります。社会通念です。通達を逆手にとったタックスプランニングも見受けられますが、それが社会通念上、行き過ぎた、と判断できるなら、それはすでにリスキーなスキームと想定することが可能です。

 

また完全に私見ですが、上記宮崎先生のご指摘する「通達」とは国税庁が示した質疑応答事例等、見解(敷衍すればホームページで入手できる情報のこと)も射程内と考えます。当該通達等を本来的な利用をしなかった、という点「のみ」でリスキーとまでは考えませんが、そこに経済的合理性がなければ、本来的目的が存在しないと「みなされる」おそれは多分にあります。

 

これを踏まえて平成7年4月14日裁決につき事実関係を読み直していただけたらと思います。

 

 

 

3)評価損金額

債務超過法人に出資した場合,評価損計上要件は法人税基本通達9-1-9(注)2となります。これにつき、逐条解説においては「取得時における1株当たりの純資産価額がプラス100の場合には、これに比して50%以上下回るというのは、プラス50以下となることであるが、マイナス100が50%以上下回るというのはマイナス150以下となること」[注1]とあります。この差額が評価損金額となります。

 

 

4)清算手続き中の消費税に係る論点

ここでは時期尚早ではありますが、仮に法人が清算手続きに入った場合の消費税に係る論点を列挙していきます。

 

①本則課税と簡易課税の有利・不利判定

平時においては本則課税が有利であっても、清算中は、新たな仕入等、仕入税額控除の対象となる取引が激減することが往々にしてあります。この場合、簡易課税を選択した方が有利になることがあります。

なお、清算期間中に、法人の資金繰りの関係等で法人が不動産を売却するケースもあります。土地を売却した場合のいわゆる「準ずる割合」は、制度趣旨から、清算期間では適用できません。

また、関連法人等が既にある、もしくは第二会社方式などで、清算法人の所有する資産を売却した場合、買手側の関連法人等では消費税還付を受けることができる可能性があります。これについて、実務では金額として非常にインパクトのあった、居住用賃貸不動産の売却による消費税還付という重要な考慮要素が従来はありましたが、令和2年度税制改正により、令和2年10月1日以降契約締結当該取引については、当該売却は考慮外となってしまいました。

 

②免税事業者になってから資産の換価を実行

清算するということは売上は大きく減少している場合が多いです。競売、代物弁済など資産の換価手続きは消費税課税対象取引に該当するため、課税事業者期間にそれらを実行するより、上記のとおり、売上が大きく減少し、免税事業者になってから、換価を実行します。

 

 


【注釈】

[注1] 出典:法人税基本通達逐条解説(税務研究会出版局705頁)

 

 

 

 

 

[伊藤俊一先生が伝授する!税理士のための中小企業M&Aの実践スキームのポイント]

⑥(特別編)新型コロナウイルス等による業績悪化を理由とした M&A ・事業売却

 

〈解説〉

税理士  伊藤俊一

 

[目次]

1)  はじめに

2)(買主視点)M&AにおけるFAの初動ポイント

3)(買主視点)買主側で簡易的な投資レンジ(投資の許容幅)の決定方法

4)(売主・買主双方)のれんの考え方

5)(売主・買主双方)経営資源引継ぎ補助金

6)(売主・買主双方)事業承継税制(特例)と業績悪化

 


[関連解説]

■新型コロナウイルス等による業績不振に関連する税務上の注意点

■【Q&A】経営状況が悪化した場合の定期同額給与 ~コロナウイルスの影響で大幅に売上高が落ち急激に業績が悪化、役員報酬の大幅な減額を検討~

 

1)はじめに

本稿脱稿時点、COVID-19(新型コロナウイルス感染症)の影響から、業績不振に陥っている法人が多いと思われます。このような状態下では、キャッシュリッチな会社にとってはM&Aによる買収の機会ともいえます。これまで、売主主導であった中小零細企業のM&Aにおいて、対象会社の業績不振から、いわゆる「買いたたき」が起きる可能性があります(これは不動産や、普段プレミアムがついている趣味嗜好品(骨董品、高級車など)でも全く同様のことがいえます)。

 

リーマンショック以降の不況時もそうでしたが、いわゆる本格的なコロナ不況に仮に陥ったとしても、M&Aの件数自体にはさほど影響を与えないと思われます。しかし、上記の買いたたきの結果、スモールなディールが多くなっていくことが予想されます。

 

 

2)(買主視点)M&AにおけるFAの初動ポイント

①初動ヒアリング

FAはオーナー(買主株主)に対してM&A 意向の確認のため、初動で下記のヒアリングを実施します。

 

(初動ヒアリングのポイント)

⇒「明確な」買収の目的

⇒対象会社の事業内容

⇒対象会社の事業規模・地域

⇒買収予算(※不況時には、まさに「買いたたき」による買収価格の引下げが起きる可能性があります)

 

上記のうち、買収目的が最大のポイントです。これが不明確な場合、M&A を実行すべきではありません。単に買収価格が安いからといって、シナジー等、将来的な経営目的、経営戦略なくして、購入すべきではありません。

 

 

3)(買主視点)買主側で簡易的な投資レンジ(投資の許容幅)の決定方法

 

 

上記表に具体的な数値を当てはめていくだけです。

 

通常、ベスト、ニュートラル、ワーストの三種のシナリオを用意します。

 

なお、上記表はファイナンスの観点からすると全く正しくありません。

ファイナンスの考え方でいうと、× 1 年~× 5 年のCF はDCF 法の考え方に沿って、現在価値に割り引いて計算されるべきです。

 

しかし、中小零細企業のM&A実務においてはそこまでは必要がないと考えます。DCF法にて買収価格を算出するよりも、上記表の数値で投資額を割り引いた方が中小零細企業オーナーには直感的で分かりやすいからです。また、この方法であれば、税理士単独でも株価算定ができます。

 

そもそも、中小零細企業では買主自身も将来FCF の予測がつかないのに、対象会社が買収後、そのまま存続するかもわかりません(デフォルトリスク(倒産リスク))。そこで現時点での静的価値が譲渡対価の最低限の担保である、という買主側のニーズを捉えているということが言えます。

 

 

 

4)(売主・買主双方)のれんの考え方

業績悪化による買いたたきにより事業譲渡の場合、のれんを考慮する機会が増加すると思われます。

 

「同族特殊関係法人間のM&A」については下記のように見解が分かれます。

 

 

(1)一切不要と考える説

●もともと、売主で営業権の帳簿価額が存在していないのなら、それを敢えて認識することは事実上、評価益の認識計上となる。法人税法の原則は法令に定めのあるものを除き、評価損益は不計上(損金又は益金に計上しない)である。

●当事者間で有償、無償を問わず、営業権の譲渡があったとした会計処理について、当局が営業権の存在を否認する処分等は実際にある。しかし、当事者間でそもそも認識していないものを、当局が営業権の存在をあるものとみなして認定課税をすることは上記「・」の理由からあり得ない。

●この説を採用する論者は、第三者間M&A 等により取得した営業権につき、これを無償譲渡した場合には、当該無償譲渡に係る営業権相当額分だけ寄附・受贈があったものではないかと指摘するむきがある。

●営業権の定義は、「法人税法上、営業権とは、当該企業の長年にわたる伝統と社会的信用、立地条件、特殊の製造技術及び特殊の取引関係の存在並びにそれらの独占性等を統合した、他の企業を上回る企業収益を獲得することのできる無形の財産的価値を有する事実関係であると解する。」(昭和57年6 月24日鳥取地裁判決ほか)等とある。

仮に現時点で無形である財産的価値があったものとしても、当事者間がそれをそもそも認識していない自己創設のれんについて計上余地は一切ない。

●中小零細企業実務における事業譲渡に係るのれんは差額概念である。厳密には、当該営業権として評価、計上された金額が、売主会社の将来の収益性、採算性等(つまりDCF)から妥当と認められる場合には課税上の問題は生じない。

●この点、この説を支持する論者は、上記の収益性等を総合勘案しての営業権評価、計上額と実際計上額に差がある場合、当該差額相当額を、高額譲受に認定し、寄附金課税等が発動する見解もある。

●現実には、両社間の利益調整等によって、営業権相当の恩恵(税メリット)は両者が受けるはず。同族法人間での利益調整が過度に行われる場合、寄附金課税等が行われる可能性がある(ただしグループ法人税制の適用がある場合、実害は生じない)。

●まとめると、営業権の評価、計上自体が論点になるのではなく、差額概念が税務上適正額と差異があれば、寄附・受贈の論点に集約される。したがって、営業権の創設自体が不要である。

 

 

(2)自己創設のれんも計上すべきとする説

●上記のように「計上しない場合」寄附金認定の論点が登場する。したがって、当初から自己創設のれんを計上しておけば、そもそも寄附金認定課税の論点が生じない。

●営業権はどのように評価するのかということについては、諸説あり。

当該評価方法については、法令上の明確な定めなし。実務では、

○時価総額/事業価値と時価純資産価額(個別資産の時価の合計)との差額をもって営業権の時価を求める方法

○収益還元法等により営業権の時価を求める方法

○財産評価基本通達165項準用

等々が考えられる。なお、法文に根拠がないため、当該算定に合理性があれば租税法でも認容されると考えられる。

●非適格合併等(法法62の8 )における資産調整勘定(法令123の10④)の計算においては、当該非適格合併等により移転を受けた事業の価値は、当該事業により見込まれる収益の額を基礎とし、合理的に見積もられる金額を時価純資産価額とすることが容認されている(法規27の16①)。

明文化されていないが、黙示できるものとして、税制非適格再編成における資産調整勘定について、対価資産の交付時価額-移転事業の収益額を基礎として合理的な見積額における事業価値はDCF 法とある(法令123の10、法規27の16)。

●DCF 法-純資産価額=営業権とする考え方も許容される。法人税法上、DCF 法の許容を明示しているのは「適正評価手続に基づいて算定される債権及び不良債権担保不動産の価額の税務の取扱いについて(法令解釈通達課法2 -14、査調4 -20、平成10年12月4 日)」。ここでは、各手法で計算の基礎とした収支予測額及び割引率が適正であれば租税法においても許容されると読みとれる。

●非上場株式評価は法人税基本通達9 – 1 -14で行うが、これは財産評価基本通達178から189- 7 を準用するため、その際、営業権についても財産評価基本通達165項、166項(営業権の評価明細書のこと)で評価して良いかという論点もある。これはもともと個人の財産評価基準であって法人同士で類推するのは不適切との見解も多々あり、理論的にはそれは正しいと思われる。しかし、課税実務上、便宜のため、これを使うことも往々にしてある。

●各同族法人の株主構成が異なっていた場合、営業権を計上しなかった分だけ株主間贈与の認定があり得るのかという論点もあり。計上しなかった場合、または低かった場合、その差額が法人間での寄附の問題になりうる可能性があり。

前者の株主間贈与は、会社に対して時価より著しく低い価額の対価で財産を譲渡した場合、財産を譲り受けた会社の株式の価額が増加した場合には、当該増加部分を、譲渡した者から贈与により取得したものとみなすという、相続税第9 条の論点。

●まとめると、別途のれんを評価しなければ、寄附・受贈(株主間贈与)の論点に帰結するため、それならば、予め評価、計上しておいたほうがよい、ということ。

 

 

なお、上記と異なり、純然たる第三者間における当事者間合意価格には、租税法が介入する余地は一切ありません。第三者M&Aにおける租税法の適正な時価は当事者間合意価格です。

 

 

5)経営資源引継ぎ補助金

経済産業省支援策パンフレットによると、「第三者承継時に負担となる、士業専門家の活用に係る費用(仲介手数料・デューデリジェンス費用、企業概要書作成費用等)および、経営資源の一部を引き継ぐ際の譲渡側の廃業費用を補助」する施策が打ち出されています。

 

出典:経済産業省ウエブサイト(https://www.meti.go.jp/covid-19/pdf/pamphlet.pdf

 

 

廃業、清算を検討する場合には、M&Aにおける売主としてのポジションもとりえる、そして、それに係る専門家等への報酬は上記施策により一定程度、負担軽減されること、についてクライアントに周知すべきです。

 

 

6)(売主・買主双方)事業承継税制(特例)と業績悪化

売主法人が事業承継税制特例適用対象会社の場合、将来、中小零細企業M&A 実務において、下記のような価格交渉手法が定着するかもしれません。

 

業績悪化事由において株式譲渡の場合は、一定の要件のもと、当該株式譲渡時に一部免除、さらに2年後に上乗せで一部免除が期待できます(措法70の7の5 ⑭等)。この一定要件は下記です。

 

 

M&A における買主側で当初譲渡後、当該2年を経過する日において、次の要件全てを満たす場合になります(措令40の85㉛等、措規23の12の2 ㉗等)。

 

⑴ 一定の業務を行っている。

⑵ (当初)譲渡等の事由に該当することとなった時の直前における特例認定贈与承継会社の常時使用従業員のうちその総数の2分の1以上に相当する数の者が、当該該当することとなった時から当該2年を経過する日まで引き続きその会社の常時使用従業員である。

⑶ 事務所、店舗、工場その他を所有し、又は賃借している。

 

価格交渉で利用できるのは⑵でしょう。当初M&A において売主会社の従業員を解雇した場合、上記の特典(2 年後の税メリット)の恩恵を授かることはできません。売主会社従業員継続雇用コスト(その他の雇用リスクも同時に考慮する必要があります)と2年後の一部免除額との有利・不利判定をし、売主、買主双方は最終価額を調整することになります。

 

 

 

 

 

[事業承継・M&A専門家によるコラム]

コロナ対応としての中小企業経営の留意点~コロナとその先へ~

 

〈解説〉

ビジネス・ブレイン税理士事務所(畑中孝介/税理士)

 


[関連解説]

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コロナ対応としての新しい税制、補助金、セーフティーネット融資など4/30の国会での補正予算の成立を受け続々と新しい制度が始まりました。

 

各地ではテレワーク助成金や休業補償金など続々といろいろな給付金の支給も始まっています。いずれにせよ給付金や助成金は自ら取得しにいかないといけないものですので情報集をしましょう。今のところ、経済産業省のページとJ-NET21のページがとてもよくまとまっています。両方とも公的機関の運営する1次情報ですので活用しましょう。

 

その際のポイントは、助成金や融資申請はするものの一定期間がかかることから、
まずは納税猶予等の制度を使い支出を抑えることですね。

 

1 資金流出を抑える

納税猶予制度、社会保険料の猶予、各種共済や保険等の掛け金の減額や支払い猶予制度の活用、家賃の減額や猶予の交渉

 

2 資金の確保をする

セーフティーネット・日本政策公庫・商工中金・各種自治体等の融資制度(補正予算が通ったので公庫さんよりメインバンクのほうが早いかもしれません)、保険会社や中小機構等の契約者貸付制度、各種補助金(持続化助成金・雇用調整助成金等)の活用

 

3 そしてその申請が終わったら次はコロナ後の新しいビジネスモデルを考える(次に資金不足による倒産の増加→与信管理の徹底)
新しいビジネスモデルを付け加えたら、今までよりもビジネスの幅が広がるとかビジネスチャンスも増えるでしょう。飲食店ではテイクアウトや冷凍食品の宅配事業など。それ以外の業種でも意外な強みが発見され、会社の再定義ができるかもしれません。

 

 


 

 

「ビジネスブレイン月間メルマガ(2020/05/11号)」より一部修正のうえ掲載