[解説レポート]
組織再編税制における適格要件の緩和
〈解説〉
税理士法人山田&パートナーズ(南里 征興)
~~スピンオフ税制の概要と税制改正の影響~~
免許や許認可等が必要な事業についても
円滑なスピンオフの実施が可能になりました。
税制改正の趣旨
平成29年度税制改正により創設された「スピンオフ税制」により、株主への配当や法人の譲渡損益について課税が繰り延べられることになりました。また、スピンオフによる効果として、以下のような経営の独立、資本の独立、上場の独立の効果による企業価値の向上が期待されていました。
[経営の独立]
元の会社の経営者が中核事業に専念することが可能になる。
スピンオフされた会社が迅速、柔軟な意思決定が可能になる。
[資本の独立]
スピンオフされた会社の独自の資金調達により、従来は埋没していた部分への投資が可能になる。
[上場の独立]
それぞれの事業のみに関心のある投資家を引き付けることが可能になる。
ただし、スピンオフの準備のための組織再編において適格再編に該当するのは、単独新設分社型分割と単独新設現物出資に限定されていたため、実務として分離が困難な事業もありました。平成30年度税制改正によりこの部分が改善されたことにより、企業が事業環境の変化に合わせ、限られた経営資源を適切に配分し、より効率的な事業形態を選択できるような環境が整っています。
制度の概要
スピンオフとは株主に対し子会社の株式を交付(適格株式分配)することにより、「特定事業」又は「子会社」を切り離し独立させる組織再編です。完全支配関係がある法人間で組織再編(会社分割・現物出資・株式交換・株式移転)を行った後に、適格株式分配を行うことが見込まれている場合には、組織再編の適格要件(完全支配関係の継続要件)が緩和され、適格株式分配の直前までの関係により判定することになりました。これによって、免許や許認可等が必要になる事業であっても、100%子会社を設立し、そちらで事業に必要な免許等を準備し、吸収分割を行った上で適格株式分配を行うという手順を踏むことで円滑なスピンオフの実施が可能になりました。
税理士法人山田&パートナーズ 情報誌「Message 2018年秋号」より転載