[氏家洋輔先生が解説する!M&Aの基本ポイント]
第8回:赤字企業で事業承継・M&Aは可能なのでしょうか。
〈解説〉
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結論から申し上げると赤字企業でも事業承継・M&Aは可能です。
ただし、赤字企業の事業承継やM&Aは黒字企業と比べて割合が少ないことは事実です。
要因としては、まず、オーナーが自分の会社に価値がないと思っている場合があげられます。自社が赤字の場合に、こんな会社を誰がほしいのかと感じるオーナーも少なくないですが、価値は買手が判断するもので、シナジー効果を発揮して実はとても価値を感じている買手や、赤字を立て直す力を持っている買手や、事業の一部を切り出したら欲しいと感じる買手等様々です。そのため、赤字だからと言って売れないと判断するのは少し早いかもしれません。
次に、仲介企業の問題があげられます。これは、赤字の会社と黒字の会社を比較すると黒字の会社の方が企業価値が高くなることが一般的で、譲渡価格が高い方が仲介企業の報酬も高くなりますが、赤字の会社で企業価値が低いと仲介企業が取り合ってもらいにくいとうことも事実です。
さらに、買手企業側の問題もあります。赤字会社というだけで敬遠する買手企業も少なくありません。これは、事業会社のM&Aの目的とも関係しますが、例えば目的がM&Aによる売上や利益の増加である場合には利益が出ている企業が好まれる傾向があります。
また、赤字・債務超過・倒産・事業再生というテーマについて正確に理解できていないことからの苦手意識という部分もあろうかと思います。
一方で買手企業に能力がある場合は、赤字企業を安く購入し、事業を立て直すことで投資のリターンを大きくすることができますが、このような戦略をとる企業が多くないことも事実です。
上記のように赤字企業でのM&Aが進まない理由はあるのですが、赤字であるからと言って会社の価値がないとは限りません。会社の価値は複合的に決まるため、専門家に相談してみるのもよいでしょう。
経営が厳しい場合は、借入の大幅なカットなどの金融機関の支援を受けて事業承継・M&Aを実行するという選択肢や、自力再生、経営改善して企業価値を高めてから事業承継・M&Aを実行するという選択肢もあるため、専門家に相談する等して検討してみてください。