「M&Aの検討段階における新型コロナウイルス等による影響」とは?

[新型コロナウイルスに関するM&A・事業再生の専門家の視点]

「M&Aの検討段階における新型コロナウイルス等による影響」とは?

 

〈解説〉

公認会計士・中小企業診断士  氏家洋輔

 

 

[関連解説]

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M&Aを検討していますが、新型コロナウイルス等による影響はありますか?

新型コロナウイルスは、執筆時点(2020年3月末)において未だ収束の目途が立たず、世界的な混乱に陥っている状況です。このような状況下で、M&Aを検討あるいは既に進めている企業にとっては、どのような影響があるのか、どのように進めるのがよいか悩まれていることと思います。そこで、新型コロナウイルスによる影響を特にM&Aを行う観点からまとめました。

 

 

[関連解説]

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①M&Aの見送り・延期

売手企業よりも、特に買手企業の方に影響がありますが、経営環境の先行き不透明感や株式市場の乱高下による混乱した社会情勢の中、M&Aを行うことに対して慎重な意見があります。このような意見が採用されて、M&Aを見送るあるいは混乱が落ち着くまで延期するといった経営判断をする会社が少なくない状況です。そのため、まずは会社の風土や経営判断を確認して、このような状況下でのM&Aに対する姿勢を把握する必要があります。

 

②輸出入等取引上の影響

新型コロナウイルスの影響で、売手企業の得意先や仕入先が直接的・間接的に海外(特に中国等)に依存している場合に、得意先や仕入先との取引が一時的に停止していることが考えられます。これらの事象の有無を正確に把握して、事象がある場合には、経営に対する影響を把握する必要があります。

 

飲食店や宿泊業等であれば、業績が悪化していることは容易に想像されます。それら以外の業種では、例えば仕入先からの仕入ができない状況であるならば、現状の在庫での販売は何か月可能か、仕入先の代替先はあるか、その他の手段はあるか等を確認の上、業績に与えるインパクトを把握する必要があります。

 

このように、既に業績悪化している。あるいは今後業績悪化の可能性がある場合には、譲渡金額へ反映する必要があります。

 

③従業員の在宅勤務等による稼働率の影響

新型コロナウイルスの影響で、従業員にどのような影響があるのかを把握します。現状の勤務状況等を把握して、今後在宅勤務となるような場合に、在宅勤務が可能な体制となっているかどうか等を確認します。在宅勤務等、通常とは異なった勤務形態をとった場合の、稼働率や効率性等を勘案し、業績への影響を検討する必要があります。

 

④株式市場の株価下落による価値評価への影響

新型コロナウイルスの混乱により日経平均株価は大きく下落している状況が続いています。譲渡金額の算定に、上場企業の株価を用いている場合には、どの時点の株価を用いているのかを確認する必要があります。評価の基準日(対象会社の直近の期末日又は試算表等の数値が把握可能な直近月末等)の株価を用いることが一般的であり、新型コロナウイルスの影響による下落前の株価を用いていることが想定されます。この株価の下落の影響を譲渡金額に織り込むかどうかを、買手企業と売手企業で交渉する必要があります。

 

 

 

 

新型コロナウイルスにより、様々な形で多くの企業の事業運営に影響があり、現在または将来の業績に影響を及ぼす可能性が非常に高くなっています。そのため、先行きが見通せない状況を嫌い、M&Aをそもそも見送る場合や延期する場合もあります。M&Aを行わない場合にも様々な影響がありますので、M&A担当者は、どのような影響があるのかを事前に把握した上で、交渉に臨む必要があります。