[M&A事業承継の専門家によるコラム]

第5回:相手先の発掘や、手続きなどの支援を受けるため相談先

 

中小零細企業経営者や経営者をサポートする専門家の方が抱えるM&Aや事業承継に関するお悩みを、中小零細企業のM&A支援・事業計画支援を専門で行っている株式会社N総合会計コンサルティングの平野栄二氏にアドバイスいただきます。

 

〈解説〉

株式会社N総合会計コンサルティング

平野栄二

 

 

 

「私(K氏)は現在75歳です。従業員5人の製造業を経営しています。業績は現在芳しくなく、売上も減少傾向です。後継者候補は現在存在していません。そこで、ここ数年、検討することを躊躇していましたが、そろそろ後継者を選んで、経営の引き継ぎをしたいと考えいてます。第三者に承継(M&A)を行う場合、相手先の発掘や、手続きなどの支援を受けるためには、誰に相談すればよろしいでしょうか。」

 

 


 

平野:M&Aは、専門的な知識や経験が必要となる場合が多く、M&Aの専門家に相談を行うことが望ましいと考えます。どのような相談機関があるのかを、ご説明いたします。

 

 

 

1.誰に相談するか?


M&Aのアドバイスをする専門家・事業者は以下の通りに分類できます。それぞれの特徴を記載していますので、参考にしてください。(※参考:中小 M&A ガイドライン(中小企業庁)より)

 

①MA専門業者

専門業者は、譲り渡し側・譲り受け側に対するマッチング支援や、中小M&Aの手続進行に関する総合的な支援を専門に行う民間業者 M&Aを専門的に取り扱う独立系のM&Aブティックや監査法人、弁護士、会計事務所や経営コンサルティング会社を母体する事業者、不動産、リース会社などを母体とする事業者などがある。

 

[仲介者]

譲り渡し側・譲り受け側の双方と契約を締結する。譲り渡し側・譲り受け側の双方の事業内容が分かるため、両当事者の意思疎通が容易となり、中小M&Aの実行に向けて円滑な手続が期待できる。

●譲り渡し側が譲渡額の最大化だけを重視するのではなく、譲り受け側とのコミュニケーションを重視して円滑に手続を進めることを意図する場合などに適している。

●譲り渡し側の事業規模が小さく、支援機関に対して単独で手数料を支払うだけの余力が少ないが、できるだけ支援機関のフルサービスを受けたい場合に適している。

 

[FA(フィナンシャル・アドバイザー)]

譲り渡し側、譲り受け側の一方と契約を締結する。契約者の意向を踏まえ、契約者に対し踏み込んだ助言、指導等を行うことが多い。一方当事者のみと契約を締結しており、契約者の利益に忠実な助言・指導等を期待しやすい。

●譲り渡し側が譲渡額の最大化を特に重視し、厳格な入札方式(最も有利な条件を示した入札者を譲り受け側とする方式)による譲り渡しを希望する場合に適している。

 

[ブローカー]

自らの人脈やネットワークを活用し、マッチングを行い、譲り渡し側と譲り受け側の間、または、譲り渡し、譲り受け側と契約しているFAや仲介者の間に立ち、取引を成立させる事業者をいう。通常、事業者自らブローカーと名乗る事業者は少ない。FAや仲介者のように、直接、譲り渡し側、譲り受け側に対してM&Aの手続きに関する専門的なアドバイスなどの支援は行わないケースが多い。

 

②M&Aプラットフォーマー

M&Aプラットフォーマーとは、M&Aプラットフォームを運営する支援機関をいう。M&Aプラットフォームとは、インターネット上のシステムを活用し、オンラインで譲り渡し側・譲り受け側のマッチングの場を提供するウェブサイトをいう。譲り渡し側・譲り受け側がインターネット上のシステムに登録することで、主にマッチングをはじめとする中小 M&A の手続を低コストで行うことができる。

 

③士業専門家

士業等専門家とは、公認会計士、税理士、中小企業診断士 、弁護士等の資格を有する専門家をいう 。それぞれの専門家としての本来業務から得られた知見を活かす。これら士業等専門家の中には本来業務のほか 、マッチング支援等を行う者もいる。

 

④金融機関

金融機関は、貸付先(与信先)である 顧客の詳細な財務情報等を保有しており、 顧客にとって経営相談等も行う身近な支援機関であり、特に地方においては非常に重要なネットワークを有する存在である。顧客のマッチング候補先を外部に求めるだけでなく、自らの顧客基盤の中からマッチング候補先を抽出できる。

 

士業専門家とM&A事業者の比較

 

 

2.専門家を選択するポイント


●どの分類に属する専門家であったとしても、自らの利益が優先で、適切な支援を行わない悪徳事業者は、残念ながら存在します。

●著名な企業であっても、担当者によって経験不足や、相性が合わない場合もあります。その為、専門家に依頼をする場合は、単に料金や、知名度だけではなく、しっかりと、話し合いを行ったうえで、相性が合って、信頼できる事業者かどうかを、見極めたうえで、選定を行う必要があると思います。

●一度、専門家のオフィスに訪問し、社内の雰囲気や、上司や社長とも面会をして、M&Aに対する考え方などを確かめてみることも重要だと思います。

●基本合意を締結するまでは、一つの事業者と専任契約を締結せず、複数の事業者と提携を行う場合もあります。しかし、あまり過度に複数の事業者と提携しすぎると、専門業者から「出回り案件」として認識されたり、警戒されて、親身なアドバイスを得られない可能性もあります。

●専門家に依頼しない場合も増加していますが、M&Aの場合は、経営、税務、法務、財務、労務など専門的な知識や、交渉・提案のスキルが必要ですので、問題なく成約を進めるため、専門家に依頼することをお薦めします。

 

(良くない専門家の見分け方)

●いかにも自身が公的機関であるかのように振る舞い、DMや電話を行い、近づこうとうする

●候補先があるように見せかけるが、直接、その候補先とのつながりがない

●M&Aの意思を確認していない企業を、いかにも候補先であるように見せかける

●他の案件や、他のアドバイザーの案件を、べらべら話す。(守秘義務を守らない)

●手順を踏まずに成約を急がせる、良く説明もせずに契約書の署名捺印を急がせる

●話が大きい、プラス面しか語らない(自分なら、実際の価格よりも高い価格で譲渡できると煽る)

●言葉の使い方が粗い、やたらと専門用語を使う

 

 

 

3.公的支援機関でも相談を受けられる


[事業引継ぎ支援センター]

経済産業省の委託を受けた機関(都道府県商工会議所、県の財団等)が実施する事業である。具体的には、中小M&Aのマッチング及びマッチング後の支援、従業員承継等に係る支援に加え、事業承継に関連した幅広い相談対応を行っている。センターは、全国48か所(全都道府県に各1か所、ただし東京都は2か所)に設置されている。「事業引継ぎ支援センター」に登録された民間M&A仲介業者、金融機関等を紹介。紹介を受けた登録支援機関が、譲渡企業にマッチした譲受企業を紹介し、マッチング及び譲渡契約成約までを実施する。

 

※第三者による事業引継ぎを支援してきた「事業引継ぎ支援センター」は、おもに親族内承継を支援してきた「事業承継ネットワーク」の機能を統合し、令和3年4月より新たに『事業承継・引継ぎ支援センター』として発足した。

 

[商工団体]

商工会議所、商工会、中小企業団体中央会 、商店街振興組合連合会等といった商工団体 は、地域に根差し、地域における商工業の振興 に向けた取組を行う組織であり、地域の中小企業 における最も身近な相談窓口であり、かつ、中小企業に向けられた公的な支援制度の詳細を最も熟知した支援機関 の1つ である。

 

 

 

4.小規模な事業者が、M&A専門家に依頼するポイント


①引継ぎの方向性をしっかり示す事業者を探す

M&Aは、不動産や物品の売買ではなく、経営理念や、組織文化、技術やノウハウ、従業員や取引先の引き継ぎなど、いわば、会社という「生きもの」を承継します。そのため、単にモノの売買のように、お金だけで、相手先を選んでしまうと、引継ぎが失敗してしまう場合があります。事業の引継ぎの方向性をしっかり示し、自社の存続・成長・発展の提案ができる事業者を選定することが望ましいです。

 

負担できる料金で、支援を受けられる事業者を探す

小規模事業者や業績が厳しい企業など、株式評価額が低い企業は、M&A事業者の最低報酬額が500万円を超えるような場合、報酬額の負担が重く、依頼が困難なケースが多いです。その場合、比較的小規模な企業を専門に行っているM&A事業者を選定することが望ましいです。

 

じっくりと意思決定ができる事業者を探す

事業者の状況では、早急にM&Aを実行しなければないケースもあるが、事業者によっては、自社の利益を優先し、成約を急かす事業者も見受けられます。事業の引き継ぎが円滑に進めていける候補先を選定しないと、後でトラブルになる場合もあるので、納得ができる助言をもらえる事業者を選定することです。

 

 

 

5.成功事例 ~小規模事業者が専門家に依頼する場合~


学習塾の場合 個人事業 年商1千万円 従業員10名(ほとんどがアルバイト社員)

 

ある地方都市の駅前のビルの一室を借りて、単独で学習塾を経営していた経営者が、自ら講師として現場に入りながら、日々の資金繰りや人材の確保などの業務で多忙を極め、体調が悪化されました。そこで、いったん経営から離れ、療養するために、M&Aを行うことを決意されました。まずは、M&Aのプラットフォーマーに登録し、その後、そのプラットフォーマーからの紹介で、専門家に依頼をされました。

 

一般的なM&Aの事業者の報酬体系では、負担できない財務状況でしたので、支援する内容を絞り込み、かつ、月々報酬を支払うことで、費用負担の軽減を行いました。そして、依頼後6か月で、相手先の発掘ができなければ、解約するような契約を結び支援を受けることになりました。専門家は、譲り受け先の探索では、プラットフォームからの情報以外にも、近隣地域数十社にDMを発送したり、直接電話でアポをとって訪問するなどの探索活動を行いました。苦労の結果、晴れて地元の学習塾の譲受先が見つかり、交渉の末、無事成約を行うことができました。

 

(成功のポイント) 

1)依頼者の負担能力にあった報酬体系で支援を受けることができたこと。

→柔軟な料金体系で支援してもらえる、小規模事業者を専門とする支援者を探すこと。

 

2)依頼者の経営者が誠実な人柄で、支援者との協力関係が構築できたこと。

→支援する側(専門家)にとっては、依頼者が必要な資料の提供などの協力を得られない場合は、報酬が低価格なので支援ができない。また、M&Aを行う上でのリスクも、依頼者が負うことを了承してもらう必要がある。しかし、本事例では、相互の信頼関係のもと、依頼者と支援者が二人三脚で、進めていくことができた。

 

3)お金よりも、あくまでも経営の承継を行うという目的を最優先したこと。

→譲渡価額については、希望価格が高いと、交渉が進まないので、高くを望まなかったことも、早期のⅯ&Aが実現できた要因であった。

 

[M&A専門会社スペシャルインタビュー]

株式会社 Stand by C 代表取締役 松本久幸 氏

~「サービスクオリティの高さ」が最大の魅力 PPAをはじめとするM&Aサービスの専門ファーム~

 


 

大手会計系ファーム出身の公認会計士や税理士で構成された独立系ファーム。大手会計系ファームでの経験と、M&A専業で行っている豊富な実績をもとにした「クオリティの高さ」が同社最大の強み。また、顧客ニーズに合わせて依頼業務内容がオーバークオリティにならないよう配慮し、費用面においても大手会計系ファームとの差別化を打ち出している。今回は、同社代表の松本久幸氏に、同社の特徴やクライアントからのニーズ、また、近年ニーズが高まっているPPAの会計処理についてなど、お話を伺った。

 

株式会社Stand by C 代表取締役 松本久幸 氏

 

 

大手会計系ファームが報酬面やクオリティ面で手を出さない領域やニーズに対応した独立系の専門ファーム。


――:貴社(株式会社Stand by C)の創業からこれまでの経緯をお話いただけますでしょうか。

 

松本:弊社は、私が大手会計系ファームを辞めて独立した2010年1月に創業いたしました。当時は、あまり具体的な目的やポリシーを持って独立したわけではありませんでした。しかし、色々な方よりお仕事のお声掛けをいただく中で、M&Aを会計・税務・数字面から総合的にサポートできるファームは、大手会計系ファーム等の限られたところしかなく、また、その大手会計系ファームが報酬面やクオリティ面で手を出さない領域やニーズがあることを徐々に知り、そのニーズに合うような専門ファームとなっていったというのが、創業からこれまでの経緯です。

 

 

 

――:大手会計系ファームが手を出さない領域やニーズとは? 具体的に教えていただけますか。

 

松本:はい。私は元々、大手会計系ファームで修業を積ませていただきましたが、大手会計系ファームは大企業をクライアントとして、新聞に載るような大きな案件を高い報酬で引き受ける、というビジネスモデルでした。そのため、大手会計系ファーム在籍時は、中堅・中小企業やベンチャー企業とはあまり接点がありませんでした。ですが、独立後は、中堅・中小企業やベンチャー企業においてもM&Aが積極的になされる時代へと変遷していったこともあり、そこに大きなニーズがあるということを知りました。また、大企業においても、海外案件や大きな案件であれば高い報酬を支払ってでも大手会計系ファームに依頼しますが、M&Aが一般化するにつれて、国内の中小規模の案件にまで高い報酬を支払って、オーバークオリティな調査や評価を依頼することは必ずしも必要ない、という考え方に移っていき、大手会計系ファームから独立した弊社のような専門ファームへ依頼される方向へと変わってきたのでは、と感じています。

 

 

 

――:中堅・中小企業のM&Aが活発化されてきたこと、また、クライアントもM&Aの規模や内容など、そのM&A案件の実情に合わせた依頼をされ始めたということですね。

 

松本:はい。そうだと思います。そういうこともあって、弊社へのご依頼がどんどんと増えていったのだろうと思っています。

 

 

 

「サービスクオリティの高さ」が最大の魅力。オーバークオリティにならない配慮で、予算面でも大手会計系ファームとの違いを見出す。


――:貴社の特徴や強みについて教えていただけますでしょうか。

 

松本:弊社の特徴としましては、まず「サービスクオリティの高さ」です。業務に中心的に携わる人間はほぼ全員が公認会計士または税理士の資格を持っており、かつ、大手会計系ファームで働いていた経験があり、その経験が活かされているのだと思います。特にM&A関連のサポートサービスでは、大手を除くほとんどの会計系ファームは、税務顧問業務や監査業務をメインとし、その中からM&A関連のサポートが必要な場面において、非日常業務としてM&A関連のサービスを提供されていると拝察していますが、弊社はM&Aサポートサービスを専門として行っておりますので、その点で経験値や品質面において、差別化ができていると思っています。

 

特に、財務報告目的で実施され監査対象となる「のれんの減損テスト」や「PPA」のサポートは、公認会計士等の資格がなくても行える業務ではあるものの、弊社では評価実務と監査実務の経験を兼ね備えた公認会計士が業務にあたりますので、監査法人とのコミュニケーションにおいて強みを発揮できると考えています。

 

 

 

――:大手会計系ファームでご経験を積んだ公認会計士や税理士のメンバーが、M&A業務を専業で携わっているということで、クライアントからすると非常に心強いですね。

 

松本:はい。そのように感じでもらえると嬉しいです。もちろん、かけるコストや人員数が違いますので、そこは大手会計系ファームには、敵わないのは当然ですが、M&Aの案件によっては、そこまで人や時間やコストをかけずにやりたい、というニーズも多くあります。大手会計系ファームに依頼した場合はオーバースペックかつ予算オーバーだが、弊社であれば「報酬も予算内に収まり、かつ、クオリティも求める水準」である、ということで、そこに大手会計系ファームとの違いを見出してお仕事をご依頼いただくことが多いのだと思います。

 

 

 

東京のほか、大阪、京都、福岡に拠点を設け、全国各地のクライアントをサポートする体制を確立。


――:貴社の組織体制はどのようになっていますか。

 

松本:今年からは大阪にある税理士事務所と弊社の税理士法人(税理士法人Stand by C)が経営統合して、関西でも腰を据えて業務を行っていく体制となりました。ちなみにですが、2021年4月1日からは、大阪の中の島にあるフェスティバルタワーへ大阪の拠点を移して、より一層関西方面での活動に力を入れていくことを考えております。

 

また、福岡にも拠点があり常駐の者が1名おりますし、京都にも拠点があります。各地域の様々な企業様のM&Aや数字面に関わるサポートをこれからも積極的にどんどん行っていきたいと思っています。

 

 

 

――:M&A全体のニーズの高まりに合わせて、貴社の拠点も拡大しているようですね。大阪、京都、福岡と拠点が広がり、全国各地のクライアントから業務を受け付ける体制が整いつつありますね。

 

松本:はい。そのようになっていると思います。コロナ禍以降はZoomやTeamsなどでお客様や対象会社などとやり取りすることも一般的になってきましたが、各地に拠点を設けて活動していくことは、地域のお客様とのつながりやコミュニケーションの上でプラスになるものと考えています。

 

 

 

 

企業側に求めれれる第三者評価。実務面からも事前の調査が求めれている。


――:それでは、どのようなクライアントが多いのでしょうか。

 

松本:クライアントは、M&Aのサポートサービスが必要な会社ということになりますので、その多くは上場企業様となります。また、PEファンド様も、会社買収の際は必ずデューデリジェンスを実施される、ということから、広くお付き合いがあります。

 

特に最近の傾向としては、繰り返しにもなりますが、大企業やPEファンドが、以前は大手会計系ファームに高額な報酬を支払ってハイスペックな調査や評価を依頼していましたが、一部の案件については、そこまでコストをかけなくても十分な調査や評価ができるのではないか、ということで、弊社のような独立系の専門ファームにご依頼いただくことが多くなっている印象があります。そのような流れもあって、弊社ではいわゆる大企業と呼ばれる会社様も多くクライアントとしていらっしゃいます。

 

 

 

――:クライアントである企業様はどのような課題を抱えていると感じていますでしょうか。

 

松本:最近のコーポレートガバナンスの厳格化やそれに伴う情報開示を充実させる、という流れの中で、特に上場会社様は、第三者による評価や調査を実施する必要性に迫られている、というところに大きな課題を抱えていらっしゃると思います。

 

 

 

――:具体的にお話していただけますか。

 

松本:自社内だけの調査や評価でM&Aを実行しようとした場合、例えば、社外役員から「第三者からの調査報告書や評価書は入手していないのか?」との意見が出たり、また、「適時開示規則の中で第三者評価の入手が必要」ということであったりするようです。

 

また、実質面からでも、M&Aが一般化してきたことから、M&Aを実行する際にはきちんと調査や評価を行って、買収によるメリットやデメリットをきちんと検討された上でM&Aを実行する、ということも一般的になってきたと感じます。

 

 

 

――︓ますます、貴社が提供するM&Aサポートサービスの重要性が増していきそうですね。

 

松本︓はい。そうなるといいですね。M&Aを進めていくうえで、先ほどお話したような課題やお悩みなどがございましたら、ぜひ、弊社にご相談いただければと思います。

 

 

 

PPAにかかる無形資産価値評価サービスへのニーズが急増。のれんやPPAの会計処理に注⽬が集まっている。


――︓それでは、貴社の具体的なサービスラインについて教えてください。

 

松本︓弊社のサービスラインは⼤きく分けると、「M&Aサポートサービス」「ベンチャー⽀援サービス」「決算/経理サポートサービス」「税務業務」「ファミリーオフィスサポートサービス(富裕層向けファミリーオフィスサポート)」の5つになります。

 

 

 

――︓M&Aサポートサービスとはどのようなサービス業務内容となりますか。

 

松本︓M&Aサポートサービスは、「株式価値算定」「財務/税務デューデリジェンス」「PPAにかかる無形資産価値評価」「財務モデリング」「税務ストラクチャリング」になります。いずれも、弊社の専⾨性を⽣かしたサービス内容となっています。

 

 

 

――︓貴社HPを拝⾒するとIPOやストックオプション評価も業務サービスとして展開されているようですが。

 

松本︓先ほどお話ししたとおり、弊社は、元々はM&Aを会計・税務・数字⾯からサポートするM&Aサポート業務、いわゆるFAS業務を専業でやっていたのですが、その中から、時には「買収後の会社の経理や会計⾯のサポートをお願いしたい」というご要望や、「IPOを⽬指すのでそのサポートをしてほしい」といった様々なお声がけを受けて徐々に業務領域を拡⼤していったということです。現在では、IPO⽀援サービス、決算経理サポートサービス、また、ストックオプション評価等の業務も⾏っております。

 

 

 

――︓クライアントである企業様からは、貴社サービスに関して、具体的にどのような業務へのご依頼が多いのでしょうか。

 

松本︓ここ数年は、PPAにかかる無形資産価値評価サービスへのニーズが急増しております。これは、2010年より⽇本の会計基準においても、M&A時に発⽣する「のれん」について、抽象的なのれんのままで終わらせるのではなく、具体的な資産、特にブランドや顧客や技術といった無形資産として区分してBSに計上することが求められたことから、特に近年ご依頼が多くなっております。

 

特に、数年前のいわゆるオリンパス事件や東芝事件において、のれんやPPAの会計処理にスポットがあたったことから、監査法⼈が厳しく監査をするようになったことに伴い、PPAにかかる無形資産価値評価の実績では⽇本有数の弊社へ、HPからであったり、ご紹介であったりでお問合せが増えました。

 

ZEIKEN LINKS様にも寄稿させて頂きましたが、セミナーや雑誌等への寄稿依頼も、PPAに関するご要望が⼀番多い状況となっております。

 

 

▷参考記事︓ZEIKEN LINKS 特集解説「経営企画部⾨、経理部⾨のためのPPA誌上セミナー」

 

 

 

 

――︓PPAを含めて、M&A全体の流れと貴社サービスの関係性を教えていただけますか。

 

松本︓M&Aにおいては、以下のようなプロセスに沿って、様々な検討がなされます。

 

弊社では、『事前調査』のプロセスのとろで⾊付けされている「株式価値算定」「事業計画策定」「財務デューデリジェンス」「税務デューデリジェンス」「ストラクチャリングアドバイス」に関する業務を主にご提供させていただいてております。

 

また、『クロージング後』のところでは、無形資産価値算定(PPA)業務をご提供させて頂いておりますが、PPAについては、事前の検討段階でも「Pre PPA」ということでご提供させて頂いております。

 

なお、これら以外でも、必要やご要望に応じて、様々な業務をクライアントの傍に⽴ってご提供させて頂いておりますので、何なりとお問合せ頂ければと思います。

 

 

 

 

 

 

PPAとは、M&Aにおける買収対価(買収価額)を、買収対象企業の資産及び負債の基準⽇時点における時価を基礎として、買収対象企業の資産及び負債に配分する⼿続きのこと。


――︓「PPA」について、わかりやすく教えて頂いてもよろしいでしょうか。

 

松本︓パーチェスプライスアロケーション(PPA)とは、M&A完了後に買い⼿企業が⾏う⼀連の会計処理であり、M&Aにおける買収対価(買収価額)を、買収対象企業の資産及び負債の基準⽇時点における時価を基礎として、買収対象企業の資産及び負債に配分する⼿続きのことです。

 

PPAの概念図を資料にまとめましたので、ご参考にして頂ければと思います。また、無形資産の例⽰として、マーケ―ティング関連、顧客関連、契約関連、技術関連に分けて図表にしましたので、こちらもあわせてご覧いただくと、PPAに関する基本的な理解が深まると思います。

 

⻑い間、多くの⽇本企業にとってなじみの薄い実務であったPPAですが、昨今のM&Aの増加や監査の厳格化等を背景に、いまやM&Aとセットで考えなければならない会計的イシューとなったと⾔っても過⾔ではありませんので、基本的な事項だけでも押さえておいた⽅がよろしいかと思います。

 

 

 

 

[PPAの概念図]

●パーチェスプライスアロケーション(以下、PPA)とは、M&Aにおける買収対価(買収価額)を、買収対象企業の資産及び負債の基準⽇時点における時価を基礎として、買収対象企業の資産及び負債に配分する⼿続であり、会計(財務報告)⽬的で⾏われる。
●PPAは、オフバランスとなってB/S計上されていない無形資産も併せて時価評価する必要があることから、PPA⼿続の⼀環として、買収対象企業に存在すると考えられる無形資産(商標権、顧客関連資産等)を識別・測定し、買収対価を当該無形資産に配分する⼿続が必要となる。
●買い⼿企業においては、会社買収後1年以内にPPAの処理が求められる。無形資産の識別・測定は会計上の⾒積項⽬であり、かつ、計算には⾼度な専⾨性が要求されること等から、外部第三者による評価が利⽤されることが多い。

 

 

[無形資産の例⽰(マーケティング関連)]

 

[無形資産の例⽰(顧客関連)]

 

[無形資産の例⽰(契約関連)]

 

[無形資産の例⽰(技術関連)]

 

 

 

 

どの程度の調査が必要なのか。事前の社内コンセンサスが、依頼会社の選定やコストにも影響する。


――︓事業会社のM&A担当者として気を付けておくべきことは、どのようなことがありますでしょうか。担当者の⽅へのアドバイスをお願いいたします。

 

松本︓M&Aのサポートをご依頼される際には、予算を先に決められて、そこからサポート会社を選んでいくというプロセスを取られることも多いと思いますが、M&Aにおいては、買収対象会社の規模や所在国、また、買い⼿企業においてどの程度広く深く検討を⾏うかによって、依頼すべきサポート会社も異なってきますので、まずはその案件において、どの程度の調査が必要かを社内でコンセンサスを取って頂ければと思います。

 

 

 

――︓どの程度調査が必要かについて、社内でしっかりとコンセンサスを取ることが⼤切なのですね。

 

松本︓はい、そうです。というのも、先程お話しました通り、海外企業や、⼤きい会社を買収する場合においては、専⾨性や⼈的リソースを相当かけてでもきちんと調査や評価を⾏って、事前検討を⾏う必要がありますが、⼀⽅で、よく知っている取引先を買収する場合や、国内の⼩規模事業者を買収する場合などは、そこまでリソースやコストを掛けて調査をする必要がない場合もあります。

 

リソースを掛けてでも調査をするべき場合は、コストを掛けて⼤⼿会計系ファームへ依頼した⽅が良いかと思います。そういった案件において、例えば、⽇頃は税務顧問業務や監査をメインとしているファームへM&Aの調査や評価の依頼をした場合においては、必要⼗分な調査がなされなかったり、少しずれたアドバイスを受ける、というようなことになりかねません。

 

⼀⽅で、あまりリソースを掛ける必要がないような案件において、⼤⼿会計系ファームに依頼した場合、必要ない⼿続や調査が時間をかけてなされて、売り⼿企業が怒ってしまったり、細かな検出事項に捉われてしまって交渉が前に進まない、というようなことになりかねません。

 

 

 

 

――︓対象案件により、どこまで調査が必要であるかと把握し、それに⾒合うファームに依頼すべきなんですね。そこを⾒誤ると、コストも時間も必要以上に発⽣したり、または、不⾜してしまったりするのですね。

 

松本︓はい、その通りです。M&Aの案件には、難易度等の⾼低があり、その⾼低によって依頼すべきファームが変わってくる、ということは、M&Aに慣れていらっしゃる会社であればよくご存知ですが、M&Aはそうちょくちょく実施されるものではありませんので、数年に⼀度のM&Aを検討する際にも、案件の重要度や難易度を⾒極めて、依頼するファームを決定するべきであると思います。

 

 

 

 

――︓これまで、M&Aのご経験がない企業の場合は、その判断も難しそうですね。

 

松本︓そうでね。M&Aが初めて、その辺りの感覚もわからない、ということであれば、まずは弊社へご相談頂ければ、ファーム選定についてもアドバイスさせて頂きますので、お気軽にご連絡をいただければと思います。

 

 

 

 

クライアントの⽴場に⼀緒に⽴って考えて、調査や評価やアドバイスを⾏うことが「Stand by C」のモットー。


――︓クライアントと接する際に、⼤切にしていることはありますでしょうか。ご経験談を含めてお答えください。

 

松本︓弊社は、社名が「Stand by Client」でStand by Cとなります。クライアントの近くで、クライアントの⽬線に⽴って、という意味の社名となります。その点からも、弊社において⼀番⼤切にしていることは、クライアントの⽴場に⽴った調査や評価、アドバイスを⾏う、ということとなります。

 

例えば、株式価値評価においては、もちろん、第三者評価機関ということでご依頼されておりますので、第三者性はしっかりと担保した上ではありますが、評価を⾏う際に、売り⼿側に⽴つか、買い⼿側に⽴つか、で評価の考え⽅や⽅針が180度異なります。

 

売り⼿であれば⾼く売りたいわけですし、買い⼿であれば出来る限り安く買いたいということは当たり前のことですが、あまり経験のないファームに依頼した場合は、第三者性ばかりを強調して、買い⼿についているのか、はたまた売り⼿についているのか、そこが明確にならないままに株式価値の算定がなされる、ということはよくあるケースです。

 

そういったことからも、弊社は、特にM&Aサポートにおいては、クライアントの⽴場に⼀緒に⽴って考えて、調査や評価やアドバイスを⾏うことをモットーとしています。

 

 

 

 

――︓最後に、事業会社の担当者の⽅々へメッセージをお願いします。

 

松本︓⽇本でもここ数年、M&Aは企業の成⻑戦略として⼀般的なものとなってきました。⾼齢化社会となる⽇本においては、経営者の⾼齢化の問題から後継者問題によるM&Aも益々増えていくことでしょう。そのような中でもしM&Aを検討されることになった際は、専⾨性の⾼いM&Aサポートの会社へまずはご相談されることをお勧めします。

 

M&Aを考えるに当たっては、⾝近な顧問税理⼠や銀⾏担当者へ相談されるというケースも多いと聞きますが、M&Aは⼤きな⾦額が動く取引でもありますし、やはり専⾨性の⾼いファームへまずはご相談された⽅が、報酬が⾼い、というケースもあるとは思いますが、結果としてはよかった、ということになることが多いと思いますので、その点も考慮されてご検討頂ければと思います。

 

 

 

――︓ありがとうございました。

 

 

 

 

 

[事務所概要]
会社名︓株式会社Stand by C
本社︓東京都千代⽥区霞が関3-2-5 霞が関ビルディング 17階

大阪営業所:大阪府大阪市北区中之島2-3-18 中之島フェスティバルタワー16階
設⽴︓2010年1⽉
代表取締役︓松本久幸
主な事業内容︓PPAサポート(無形資産価値算定)、ストック・オプション評価、IPO⽀援、デューデリジェンス、株式価値算定、フィナンシャル・アドバイザー(FA)、財務モデリング策定⽀援
対応エリア︓全国(⽇本国内)
URL︓https://standbyc.com/

 

 

 

 

 


[掲載希望募集中]
ZEIKEN LINKSでは、本連載に掲載を希望するM&A専⾨会社(M&A仲介会社、M&Aアドバイサリー会社、M&Aマッチングサイト、税理⼠法⼈、弁護⼠法⼈、⾦融機関など)を募集しております。
ご希望の会社様は下記アドレスまで、お気軽にお問合せください。
お問合せ先︓links@zeiken.co.jp

 


 

[中小企業のM&A・事業承継 Q&A解説]

第6回:M&Aの仲介契約とFA契約の違い

~仲介契約とアドバイザリー契約の違いとは?報酬体系は?~

 

[解説]

宇野俊英(M&Aコンサルタント)

 

 

 

 

 

 


 

[質問(Q)]

後継者を探しましたが、親族内、役員・従業員にも適任者が見当たりません。ついてはM&Aで事業継続を図りたいと思いますが、現在候補先にあてがない状態です。候補先を探索する場合、誰に相談したらよいですか。

 

 

[回答(A)]

一般的には決まった相手先がいない場合には仲介者若しくはアドバイザーからの支援を受けることが一般的です。仲介者・アドバイザー(以下、「仲介者等」といいます)の選択は、業務範囲や業務内容、活動提供期間、報酬体系、ディール実績、利用者の声等をホームページや担当者から、確認した上で複数の仲介者等に打診、比較検討して決定することが望ましいです。また、公的相談窓口として事業引継ぎ支援センターにご相談いただいても、信頼できる仲介者等を紹介してもらうことができます。

 

 

 

1.信頼できる仲介者等の選任


信頼できる仲介者等を選任することが重要です。仲介者等はM&Aを支援する機関で、候補先は民間のM&A事業者、金融機関、税理士を含む士業専門家等です。身近な相談先として顧問税理士や取引金融機関も挙げられます。主な契約は2 種類でそれぞれの機関ごとの指針や取引状況により契約体系が大きく異なる仲介契約とアドバイザリー契約があります。選定の際には仲介者等の担当者との相性や信頼関係の構築ができそうかという点も重要なポイントになります。

 

また、契約を締結する際は調印前に充分な説明を納得がいくまで受けることも重要です。特に契約内容や報酬等については後程問題になるケースもあることから確認が必須となります。もし、契約内容等に疑義がある場合には、必要に応じセカンドオピニオンを受けることが有効です。

 

 

 

2.仲介契約とアドバイザリー契約の違い


仲介契約仲介者と譲渡企業、譲受企業との間の契約です。双方の間になって中立・公平の立場から助言を行うため、交渉が円滑に進みやすいという特徴を持っています。

 

アドバイザリー契約アドバイザーが譲渡企業又は譲受企業の一方との間で締結する契約です。契約者の意向が交渉に全面的に反映されるという特徴があります。

 

中小企業のM&Aでは仲介契約が一般的であることが多いと推察されますが、契約者に対する利益相反の観点からアドバイザリー契約のみに限定している支援者もいます。また、弁護士は弁護士法で双方代理は認められていないため、自動的にアドバイザリー契約となります。

 

 

3.仲介者等の役割


一般的には以下のような支援をすることが多いです。

 

また、以下の一部のみサービスを提供している仲介者等もいます。

 

①事業評価
②候補先選定サポート
③交渉サポート
④基本合意締結サポート
⑤デューデリジェンスサポート
⑥最終契約締結・クロージングサポート

 

 

4.報酬体系


一般的な報酬は以下のとおりです。別途交通費等の実費やデューデリジェンスの費用が必要な場合があります。また、着手金やリテーナーフィー、基本合意時の報酬は不要として成功報酬のみとしている仲介者等もいます。

 

● 対応開始時:着手金
● 対応中:リテーナーフィー(月額報酬)
● 基本合意締結時:中間的な報酬で、成功報酬の一定割合としている仲介者等もいます。
● 成約時(決済時):成功報酬、レーマン方式といわれるM&Aで一般的に使用される方式を採用しています。一方、最低報酬額を別途定めている仲介者等も多く存在します。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

[中小企業経営者の悩みを解決!「M&A・事業承継 相談所」]

~M&Aで会社や事業を売却しようとご検討の中小企業経営者におすすめ~

 

第1回:取引先に知られないように会社を譲渡することはできますか?

 

 

〈解説〉

株式会社ストライク

 

 


M&A(合併・買収)仲介大手のストライク(東証一部上場)が、中小企業の経営者の方々の事業承継やM&Aの疑問や不安にお答えします。

 

 

▷関連記事:非公開の同族会社で経営に参加しない者が保有する株式を現金化できますか?

▷関連記事:企業価値を向上させ売却金額を増大させるためには?

▷関連記事:M&Aとは?M&Aの流れと専門家の役割とは?

 

 

Q.取引先に知られないように会社を譲渡することはできますか?

光学機器関連の製造業を営んでいます。私どもの業種は専門性が高く、市場が狭い技術分野ですので、信頼できる従業員達や取引先の仲間としっかりと協力し合って成長してきました。ただ、私も高齢になり、健康に不安を感じるようになってきました。妻や子どもからも「いつまで経営を続けるのか」「健康を害したり、事故にあったりするなど、何かが起こってからでは遅い」などと言われ、事業承継を考えるようになりました。親族に後継者の候補がいないので、良い経営者に会社を譲渡できればと思っています。

 

しかし、一つ難点があります。我々の業界は、狭い市場で複数社がしのぎを削っている状況です。私自身が弊社の信用になっているところがあり、取引先も「Tさんがいるので」と言って委託してくれています。考えすぎかもしれませんが、私が急に経営から降りると業績悪化要因になりかねません。取引先に知られないように、スムーズに会社を譲渡することはできないでしょうか。

 

(埼玉県 光学機器部品製造業代表取締役 Tさん)

 

 

A.可能ですが、いずれ取引先に告知する必要があります。

Tさんが希望されるように、取引先に知られないようにM&Aを進めること自体は可能です。また、M&Aで最も多く活用されている株式譲渡という手法は、株主が変わるだけですので、対外的には目立った変化がないように見えます。

 

ただし、実際のM&Aでは取引先を引き継げるかどうかが、事業を続けるうえで重要なポイントとなります。このため重要な取引先には、契約締結前や契約締結後、すぐに説明に行くケースが多いです(※)。また、会社を譲渡した経営者が代表権のない会長や顧問に就任する場合もあります。例えば1年間というふうに一定期間、会社に残って経営に関与する条件で、M&Aをするというやり方です。その間に取引先への告知、新社長への引き継ぎなどを、一定の時間をかけながら行うこともできます。いずれにしても、いつかは取引先に会社を譲渡することについて告知しなくてはなりません。もちろん取引先への告知のタイミングや方法等には細心の注意を払い、トラブル等を避ける必要があります。まずはM&Aの専門家にご相談されることをお勧めします。

 

※取引先との契約で、株主が変更する場合に事前に了承を得る条項(チェンジ・オブ・コントロール条項)が付されている場合には、例外的に事前に了承を得る必要があります。

 

 

 

 

 

 

 

 

[M&A専門会社スペシャルインタビュー]

U&FAS 代表 氏家洋輔 氏

~赤字や債務超過もサポートするM&A・事業承継と事業再生専門の事務所~

 


 

大手会計ファーム出身の公認会計士で構成されたM&Aアドバイザリー。品質、スピード、誠実性に拘りを持つとともに「M&A・事業承継と事業再生」のプロフェッショナルとして赤字や債務超過の企業をも支援しているのが同事務所の最大の特徴。今回は、同事務所代表の氏家洋輔氏に、同事務所の特徴やクライアント先のニーズ、事業再生を絡めた赤字や債務超過のM&Aなどについてお話を伺いました。

 

 

U&FAS 代表 氏家洋輔 氏

 

 

赤字、債務超過に積極的に取り組んでいる!M&A・事業承継と事業再生専門の事務所


――:まずは、貴所(U&FAS)のご紹介をしていただけますでしょうか。

 

氏家:当事務所は、M&A・事業承継と事業再生の支援を行う会計・財務アドバイザリーの事務所です。2019年の設立以来、M&A・事業承継支援と事業再生支援の2軸でサービスを展開しております。

 

 

 

――:貴所の特徴や強みを教えていただけますでしょうか。

 

氏家:当事務所の特徴は、「赤字・債務超過」積極的に取り組んでいることです。また、M&Aを専門としている同業者は多いですが、事業再生を専門としている同業者はあまりいないと思います。さらに、M&Aと事業再生のどちらも専門としているとなるとかなり限られると思います。この「赤字・債務超過に積極的に取り組んでいる」「M&A・事業承継と事業再生を専門にしている」というのが当事務所の最大の特徴だと思います。

 

 

 

――:たしかに、「赤字・債務超過に積極的に取り組んでいる」「M&A・事業承継と事業再生を専門にしている」というのはあまり聞かないですね。

 

氏家:はい、そうだと思います。この分野を専門にするには数多くの経験が必要ですからね。私は、公認会計士として、大手の監査法人で東証一部上場企業、売上高数兆円規模の大企業や銀行の監査を経験し、その後M&Aや事業再生の部署で計10年の修行を積みました。1つの部署でM&Aと事業再生のどちらも提供しており、どちらの業務も経験できたのが良かったのだと思います。しかも、運よく有名な先生の下で修行させて頂いたのですが、それが自分の財産になっていると思います。その先生は品質とスピードに非常に拘りのある方で、今の私の基礎となり強みになっているのだと思います。また、数多くのM&Aや事業再生のサポートをしてきましたが、製造業、小売業、建設業、卸売業、IT、サービス業、医療福祉、運送業など多種多様の案件に携わったことも現在の業務に活かされているだと思います。

 

 

 

――:どのようなクライアント先からのご相談が多いのですか。

 

氏家:よく見聞きすることですが、事業承継やM&Aを検討したいと依頼があって、中身を見てみると、実は業績が厳しい状況であるということは少なくありません。赤字や債務超過であった場合に、買手を探すのが難しいとのことで専門家から断られる場合や、アドバイザー契約を結ぶものの、あまり進捗しないことも多いようです。我々の事務所には、そんな業績の厳しい会社と直面したM&Aの専門家から相談されるケースが多いですね。上場しているコンサル企業や、外資系の大手コンサル企業から相談を頂いた時はびっくりしました。

 

 

 

――:専門家からの依頼が多いということは、やはり、赤字や債務超過の企業のM&Aは専門性が高く、業務対象としている税理士や公認会計士は少ないということなのでしょうか。

 

氏家:はい、そうだと思います。しかし。このような専門家からお話を頂く一方で、U&FASは開業2年目で広告も出しておらず、まだまだ認知度が低いため直接企業様からご連絡を頂くことはあまり多くないのが現状です。当事者である企業様もどこに相談するのがよいのか悩まれていることもあるかと思いますので、ぜひ、「赤字、債務超過ならU&FAS」と覚えて頂けると有難いですね(笑)。

 

 

 

 

赤字や債務超過の会社でも事業再生の視点を加えることでM&Aできるケースも


――:事業承継やM&Aで事業再生が活用されるケースが少ないとのことですが、それはなぜでしょうか。

 

氏家:事業承継やM&Aの局面で、売りに出ている企業は様々あるものの、買手側のニーズとしては業績の良い企業が好まれているのが現状です。理由は大きく2つあると思っていて、1つ目は買手側にとって計算がしやすいことだと思います。例えば営業利益が安定して毎年5千万円出て、今後もそれが続くことが想定される。簡便化して考えると1億5千万円での譲渡であれば3年で投資が回収できるということが計算できます。一方、営業利益が△1千万円の会社を買収しようとした場合、現状のままでは赤字ですので、これを改善して利益が出るようになる、又はしなければいけない。どの程度の利益が出せるかという見積は、経験や専門性が必要となるので、赤字企業を立て直すことを前提としたM&Aはやはり買手側からは計算が難しく、敬遠されやすいように思います。

 

もう1つは、仲介企業や専門家の問題だと思います。売手と買手をマッチングさせる業者は、譲渡金額×数パーセントを成功報酬として得ることが一般的です。赤字企業よりも黒字企業の方が譲渡金額が大きくなるので、結果として報酬額も大きくなり好まれやすいですね。

 

他にも、赤字や債務超過企業のM&Aでは、銀行を巻き込んだり、スキームも特有のものになるため、専門能力が必要となりますが、それらの専門能力を持ち合わせた専門家が少ないことも要因だと思います。

 

 

 

――:そうすると、赤字や債務超過の会社はM&Aを選択肢に入れることはやはり難しいのでしょうか。

 

氏家:業績の良い企業と比較して、赤字や債務超過の企業の買手を探すのが難しいということは事実です。先ほど申し上げたように、買手企業からも、仲介企業からも黒字企業の方が好まれますので。では、赤字や債務超過の企業はM&Aをできないかと言われると、そんなことはなく、可能性は十分にあります。ただ、そこには事業再生という観点を加えることが必要になってきます。

 

 

 

――:事業再生の視点を加える必要があるとのことですが、赤字や債務超過の会社のM&Aについてもう少し詳しく教えて頂けますか。

 

氏家:赤字や債務超過の会社とのM&Aを成約させるために考えられるケースは3つあると思います。

 

1つ目は、赤字や債務超過のまま買収するケースです。これは、買手企業にとって、相当なシナジー効果を期待できる場合等が想定されます。赤字や債務超過のままM&Aを行うため、譲渡金額は比較的小さくなります。

 

2つ目は、時間的に余裕がある場合に限られますが、自力での事業再生を行い、企業価値を高めた上でM&Aを行うケースです。事業再生により黒字化や債務超過の解消が達成されていれば、業績の良い企業としてのM&Aが可能となります。債務超過が解消されていなかったとしても、見栄えはよくなりM&Aの可能性は上がることになります。

 

3つ目は、第二会社方式というスキームがあります。恐らく聞きなれない単語だと思いますが、簡単に申し上げると既存借入金の債権放棄と、身軽になった会社の売却を同時に行うスキームです。もう少し詳細に申し上げると、新たにB会社を設立し、そこへ残す事業を会社分割や事業譲渡で移転させ、既存のA会社を借入金を含めて特別清算する、そしてB会社はM&Aにて売却するということを同時に行います。これによって金融機関からの借入金を大幅に縮小して、優良な事業のみを第三者に売却することが可能になります。このスキームによって、残したい優良な事業と従業員等を残すことができるようになります。ただし、金融機関に債権放棄をお願いするため、必要な分析、債権放棄の合理性、買手企業の適切性等を金融機関に対して行う必要があります。

 

 

 

――:特に、3つ目のケースでは非常に複雑なスキームと、分析が必要になるのが想像できますね。

 

氏家:はい。ここまでくると高度な専門性が要求されてしまいますので、やはり事業再生に強い専門家へ依頼する必要がでてくると思います。

 

 

 

 

同業からも頼られる赤字や債務超過の要素が含まれる「財務デューデリジェンス」


――:貴所の具体的なサービスラインについて教えてください。

 

氏家:当事務所のサービスラインは「M&A支援と事業再生支援」、それにプラスして「CFO支援」があります。

 

 

 

――:M&A支援と事業再生支援のサービスについて詳しく教えていただけますか。また、クライアントからはどのような依頼が多いですか。

 

氏家:「M&A支援」では、スキーム検討、デューデリジェンス、バリュエーション等を売手側、買手側に対して支援します。M&A関連で依頼が多いのはやはりデューデリジェンスですね。買手側の依頼を受けて売手に対して財務DDをする場合も、売手側の依頼を受けてDD対応の支援を行う場合もあります。最近増えているのは、M&Aで入って蓋を開けると赤字や債務超過の要素が含まれている場合ですね。それらが絡むと一気に頼りにして頂ける感覚がありますね。クライアントからも、他の専門家や同業者からも。

 

「事業再生支援」では、金融機関からの支援であるリスケやDDS(※1)や債権放棄などを得るために、財務DD、事業DD、事業計画、アクションプランの策定がサービスラインとなっています。基本的には全部任せて頂ける依頼がほとんどですね。我々も期待に応えるために精一杯やらせて頂きます。財務面のみならずビジネス面でも社長と深くディスカッションを行って事業計画を策定していきますので、良い信頼関係が築けます。金融機関からの支援が決まった時は、良い事業は残せて、雇用も守れて、本当に感謝して頂けます。これが私の大きな原動力の1つですね。

 

※1 DDS(デット・デット・スワップ):既存の借入金を劣後ローンとして借り換える手法。会社の借入金額はDDSの前後で変更はないが、金融機関の中では劣後ローンは資本とみなすことができるため、金融機関の査定上有利に働く。

 

 

最近では新型コロナの影響で、特例リスケ(※2)の相談が増えています。特例リスケは、従来のリスケとは比べ物にならないぐらい簡単に金融機関からの支援が受けられる制度です。コロナの影響を受けて資金繰りが苦しい企業で、まだ特例リスケをされていない方は是非ご検討頂くのが良いと思います。

 

※2 特例リスケ:正式名称は「新型コロナウイルス感染症特例リスケジュール」。新型コロナウイルス感染症の影響を受けて一定以上の業況悪化を来たした会社に対して、中小企業再生支援協議会の支援の下、1年間のリスケを実施するもの。

 

 

 

▷参考URL:新型コロナ対策融資と特例リスケ

▷参考URL:新型コロナ特例リスケジュールの実務について

 

 

 

――:CFO支援とはどのようなサービスですか?

 

氏家:「CFO支援」は、お客様によって様々な支援を行っています。事業計画の策定や、月次の経営会議資料の作成、原価計算の導入や、部門別損益の精緻化などです。私が主動する場合もあれば、これらの助言や問題が発生した場合の支援など、顧問のような支援を行う場合もあります。品質にはもちろん満足して頂いているようですが、それにプラスアルファで事業再生の専門家がすぐ近くにいることで、安心されている経営者が多いように思います。

 

 

 

 

経営者の想いを大切に、大手同様の高い品質を中小の値段で提供


――:M&A業務をされる上で、大切にしていることはありますでしょうか。ご経験談を含めてお答えください。

 

氏家:M&Aで最も大切にしているのは株主や経営者の想いですね。事業や製品、雇用などに対する想いを実現するために業務に取り組むことが最も重要であり、成功の近道だと思います。高い品質、迅速性、誠実性について特に拘りをもって取り組んでいます。品質面では、大手の高い品質を中小の値段で提供することを心がけていますね。M&Aは買手にとっても売り手にとっても、企業経営の中でもかなり重要な意思決定が必要となる局面だと思います。個人で言えば、結婚する時や家を買う時のような大きな決断をする時と似ていると思います。そのような重要な局面での情報は、ポイントが明確でわかりやすく、正確である必要があると思います。品質を高めることがM&Aを成功させることにとって重要であると考えています。

 

また、偏見かもしれませんが、良い経営者はせっかちであることが多く、とにかく早く情報を提供することを望んでおられることが多いように思います。過去にDDレポートを2週間ほどで仕上げて報告した時には、こんなにしっかりしたレポートをこんなに早く仕上げてもらったのは初めてだと仰ってくださり、それ以降もことあるごとにご連絡を頂けるようになりました。

 

 

 

――:税理士の方々と一緒にM&A業務を進めることも多いかと思いますが、M&A業務における税理士の役割をどのように感じておられますか。

 

氏家:税理士の先生はM&A業務を進めていくうえで非常に重要なパートナーだと思っています。会社のことをとても理解されていますし、DDに必要な資料を税理士の先生がお持ちになっていることも多いですね。ヒアリングする時も社長に伺うよりも、税理士の先生に伺ったほうが正確に理解できるようなことがしばしばあり、円滑にDDを進めるためには、税理士の先生の協力は大変ありがたく、不可欠だと思います。

 

また、税理士の先生は、会社のことをよく理解されているため、M&Aや事業承継を検討している場合に会社の相談相手となることが多いようですね。ただ、顧問税理士の先生にとってM&Aや事業承継は専門外であることが多いため、我々のところにお話を頂けることがあります。その場合に、ご紹介或いは、協業という形で会社をサポートさせて頂いています。

 

 

 

――:最後に、事業会社の担当者の方や事業会社をサポートする税理士等の専門家の方々へメッセージをお願いします。

 

氏家:事業承継やM&Aというのは、専門でやっていなければそう何度も経験できるものではないと思います。これらは株主や経営者の想いが非常に重要ですので、その想いを汲み取り業務に当たられると良いのでないでしょうか。また、事業承継やM&Aを成功させるには、適切な専門家が不可欠ですので、良い専門家と連係をとって進めることが重要だと思います。事業承継やM&Aを成功させることで、事業会社のご担当者や税理士の先生の業務の幅が広がるのではないでしょうか。

 

 

 

――:ありがとうございました。

 

 

 

 

 

[事務所概要]

事務所名:U&FAS

所在地:東京都千代田区丸の内2-2-1 岸本ビルヂング6階

設立:2019年1月

代表者:氏家洋輔

主な事業内容:M&A・資金調達支援、事業再生・経営改善支援、株式価値算定、CFO支援

対応エリア:全国(日本国内)

URL:https://www.u-fas.com/

 

 

 

 

 

 


[掲載希望募集中]

ZEIKEN LINKSでは、本連載に掲載を希望するM&A専門会社(M&A仲介会社、M&Aアドバイサリー会社、M&Aマッチングサイト、税理士法人、弁護士法人、金融機関など)を募集しております。

ご希望の会社様は下記アドレスまで、お気軽にお問合せください。

お問合せ先:links@zeiken.co.jp

 


 

[中小企業のM&A・事業承継 Q&A解説]

第4回:公的機関の活用(事業引継ぎ支援センター)

~事業引継ぎ支援センターとは?どのような相談ができる?~

 

[解説]

宇野俊英(M&Aコンサルタント)

 

 

 

 

 


[質問(Q)]

M&Aを検討するにあたり、相手先探しを支援してくれる公的機関として事業引継ぎ支援センター(以下、「センター」という)があると聞きましたが、よくわかりません。概要とどのような支援をしてくれるのか教えてください。また、センターに相談すると費用はいくらぐらいかかりますか。

 

 

[回答(A)]

センターは、後継者不在の中小企業・小規模事業承継をM&A等を活用して支援する目的である国の事業です。現在47 都道府県に設置されています。センターは、親族・従業員承継、再生、創業、廃業等事業承継に関連した相談やトラブルについても幅広く相談に乗り、対応しています。また、後継者不在の企業に対するマッチング支援を実施しています(相談料は無料です)。

 

 

 

1.センターの概要


センターは産業競争力強化法に基づき実施されている国の事業です。2011年から東京、大阪に開設されて以降、後継者問題に課題等を抱える中小企業経営者・小規模事業者に対して事業承継全般のご相談を受け、事業引継ぎ支援(M&A、役員・従業員承継)を実施しています。

 

また、地元の金融機関、士業と連携して、マッチングについて進捗支援を行うほか、登録機関等(※)にはノンネームデータベース(以下、「NNDB」という)を通じて案件情報を提供して相手先探しを促進しています。また、M&Aの経験が少ない士業の育成も実施しているセンターがあります。2018年度には全国で相談者数11,677 者、成約923 組の支援をしました。

 

 

(※) 登録機関は登録民間支援機関とマッチングコーディネーター(以下「MC」という)の総称。それぞれ各センターに登録した支援者を言います。

 

「登録民間支援機関」: 金融機関や民間仲介会社等がM&Aをフルサポートできる支援者
「MC」:士業法人等小規模マッチングに取り組む支援者

 

 

2.特徴


①立ち位置
公的機関ですので、公平、中立、秘密厳守で相談を受けています。

 

②受けられる相談
以下のようなご相談も幅広く受け付けています。
・ 事業承継について悩んでいる経営者が何から考えてよいのかわからない
・ 役員・従業員に事業承継したいがどのようにしたらよいかわからない
・ M&Aで相手先を探したい(譲渡、譲受両方)
・ 事業を成長させるために会社を引き継ぎたい(譲受)
・ 相手先と基本的な合意があるがどのように進めてよいかわからない
・ 後継者が不在なので廃業したい
等々です。

 

③ 主たる支援対象
・ 支援企業規模は小規模企業が中心

図1 にあるとおり、成約している譲渡側事業者の約60%が売上高1億円以下の事業者です。従業規模で見ても45%が従業員数1~5名以下の事業者となっています。

 

 

 

3.支援方法


支援方法は主に3 つの段階に分かれています。

 

①一次対応(相談)~方針決定まで
面談を通じて相談者の現状やご要望の相談を受け、方針決定まで助言をします。

 

②二次対応(登録機関に橋渡し)
M&A 方針の決定した候補先探索が必要な譲渡希望事業者、譲受希望事業者をセンターに登録している登録機関に橋渡しして支援する方法です(センターの相談は無料ですが、登録機関との契約は民間の契約となり、登録機関の費用は有料です)。

 

③三次対応(センター自ら引継ぎ支援)
相手が既に決定している相談者や、二次対応で相手先が見つからなかった相談者、後継者人材バンク(廃業予定の事業者と創業希望者をマッチングする支援手法)でセンターがお手伝いする方法です。主に、マッチングコーディネーターとして士業の皆様と連携支援しています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

[M&A担当者のための 実務活用型誌上セミナー『税務デューデリジェンス(税務DD)』]

第1回:M&Aにおける税務デューデリジェンスの目的、手順、調査範囲など

 

[解説]

税理士法人LINK 公認会計士・税理士 長野弘和

 

〈目次〉

1.税務デューデリジェンスの意義

2.M&Aにおける税務専門家の関与

(1)売手・買手の接触~基本合意書の締結

(2)基本合意書の締結後~売買契約書の締結

(3)売買契約書の締結後~クロージング

3.税務DDの調査範囲

(1)調査対象とする法人

(2)調査対象とする期間

(3)調査対象とする税目

4.終わりに

 

 

▷第2回:M&A取引の税務ストラクチャリング

▷第3回:M&A取引に伴う税務リスクとその対応

 

1.税務デューデリジェンスの意義


デューデリジェンス(Due Diligence:DD)とは、M&Aなどに際して、買収対象となる企業や事業などを対象として行う調査をいいます。このDDの主な目的は、買収対象となる企業や事業の実態を調査し、その企業や事業の様々なリスクを把握することにあります。

 

税務DDは文字どおり、買収対象となる企業や事業の税務に関する調査をいいます。この税務DDの主な目的は、①買収対象となる企業や事業の税務リスクを分析するとともに、②ストラクチャーの検討に有用な情報を収集することにあります。ここで言う税務リスクとは、買収対象となる企業や事業の過去の税務処理の内容(税務申告書の内容等)に誤りがあり、それが買収後の税務調査等によって顕在化することと言えます。税務DDではこの税務リスクを分析するために行いますが、そこで得られる情報はストラクチャーの検討にも役立てられます。ストラクチャーの選択によって税負担が変わり、節税メリットを享受することができる場合も少なくありません。

 

 

2.M&Aにおける税務専門家の関与


税務DDは多くの場合、何らかの形で外部の税務専門家(税理士・税理士法人など)のサポートを受けています。大きな事案や複雑な事案では、税務専門家が税務DDを主導する場合が多いです。そのような中、事業会社のM&A担当者にとっては、M&Aの各プロセスにおいて、税務専門家をどのように関与させるべきか、税務専門家の使い方やその目的等について押さえておくことが重要と言えます。

 

そこで、一般的なM&Aのプロセスに沿って、各プロセスにおいて税務専門家がどのように関わってくるのかについて解説します。

 

 

 

 

 

(1)売手・買手の接触~基本合意書の締結

基本合意書の締結に向けたプロセスでは、売手と買手との間で秘密保持契約書が締結され、初期的な検討に必要な情報が記載された案件概要書(Information Memorandum:IM)が買手に開示されます。この段階では、IMに記載された情報や初期的なDDから得られる情報等の限られた情報に基づき、買収対象となる企業や事業を評価することになります。初期的な検討が行われ、売手と買手との間で基本的な条件について合意に達した段階で、基本合意書が締結されることになります。

 

①買手サイド

買手サイドの税務専門家は、一般的にこの段階から関与させることが多く、税務専門家は税務DDやストラクチャーの検討を行います。

 

税務DDについては、この時点で得られる情報は限定的であることも多く、調査内容も限られたものになることが多いです。とはいえ、この時点で得られる情報でも、その後に行われる詳細な税務DDにおいて重点的に調査すべきポイントの特定や調査のスコープについて検討することができますので、その後の税務DDを効果的かつ効率的に進められるように、この段階で税務専門家と検討・協議しておくことは有用です。一般的にDDは非常に限られた時間の中で行うことも多く、特に複雑な案件やクロスボーダーの案件等では、重点的に調査すべきポイントの特定や調査のスコープについて、なるべく早く税務専門家と検討・協議しておくことがポイントとなります。

 

ストラクチャーの検討については、この段階では(詳細な税務DDを行う前の)暫定的なストラクチャーの検討を行います。ストラクチャーの選択によって税負担が変わり、節税メリットを享受することができる場合も少なくありません。買収価格の提示に加えて、買収ストラクチャーの提示を求められることも多いので、なるべく早い段階で税務専門家を関与させることが有用です。売手サイドからストラクチャーを提案されることもありますので、その検討を行うこともあります。

 

②売手サイド

一方、売手サイドの税務専門家には、必要に応じて買手サイドによる初期的な税務DDへの対応をサポートしてもらうことがあります。

 

 

 

(2)基本合意書の締結後~売買契約書の締結

売買契約書の締結に向けたプロセスでは、より詳細なDDが行われることになります。買手は詳細なDDを経て、買収価格やストラクチャーを決定するとともに、売手と買手との間で交渉が行われます。これらの過程を経て、売買契約書が締結されることになります。

 

①買手サイド

買手サイドの税務専門家は、この段階において詳細な税務DDを行います。詳細な税務DDで得られる税務リスクに関する情報は、買収価格の決定や、表明保証の内容等の検討に活用され、売買契約書に織り込むこととなります。また、詳細な税務DDを通じて暫定的なストラクチャーに問題がないか、実行可能性を検証し、ストラクチャーを決定します。売手が想定しているストラクチャーと異なるストラクチャーを提示する場合は交渉が難航することも少なくありません。売手が納得しやすいように売手・買手双方の税務上の取扱いを明示する等の対応が求められます。

 

②売手サイド

一方、売手サイドの税務専門家には、必要に応じて買手サイドによる詳細な税務DDへの対応をサポートしてもらうことがあります。また、買手が提示してきた税務リスクに関する内容やストラクチャーについて、税務専門家に意見を求めることもあります。

 

 

 

(3)売買契約書の締結後~クロージング

クロージングに向けたプロセスでは、売買価格等を検討する際に基準とした日(基準日)と実際に株式や資産・負債が移転する日(移転日)との間の期間に関する調査(クロージング監査)が実施され、必要に応じて売買価格が調整されることがあります。

 

①買手サイド

買手サイドの税務専門家は、この段階においてクロージング監査を実施することがあります。この段階では税務申告書の内容を確認することができない場合が多いため、税務上の取扱いに留意する必要がある取引・事象等でもない限り、税務専門家の役割は限定的と言えます。

 

②売手サイド

一方、売手サイドの税務専門家には、これまで同様に買手からの依頼に対して、必要に応じてサポートしてもらうことがあります。

 

 

 

3.税務DDの調査範囲


税務DDの調査範囲はストラクチャーによって異なります。一般的には、ストラクチャーが株式売買の場合、税務リスクを買手がそのまま引き継ぐことになりますので、網羅的な税務DDが求められます。とはいえ、DDは限られた時間の中で行うことも多く、網羅的かつ詳細な調査を税務専門家へ依頼するとコストも多額になります。効果的かつ効率的な税務DDを行うためには、調査範囲の検討が特にポイントになります。

 

 

(1)調査対象とする法人

税務DDを行うにあたっては、調査の対象とする法人を検討します。このとき、買収対象となる企業が挙げられるのは当然ですが、買収対象となる企業が子会社を有している場合、子会社まで調査の対象とするかを検討する必要があります。

 

全ての子会社を対象とするのであれば検討する必要はありませんが、その場合は当然ながら時間・コストがかかります。M&Aが検討されていることを知らされていない子会社については、その子会社に関する情報提供や質問対応等が制限されます。海外に子会社がある場合は、物理的な距離や言語、税制の違い等もあり、現地の税務専門家の利用も必要になります。このように、実務的には様々な制約の中で税務DDが行われることが一般的ですので、各子会社の事業規模や事業内容等を踏まえて調査範囲を検討する必要があります。

 

 

(2)調査対象とする期間

税務DDの対象期間は、基準日から直近3年~5年を対象とすることが一般的です。この調査期間は、買収後に税務調査が行われる可能性のある期間を前提に検討します。既に税務調査が行われた期間がある場合、次回の税務調査ではそれ以降の期間が税務調査の対象となることから、その期間に焦点を当てた税務DDを行うことが一般的です。その場合でも、税務DDの中で特に重要な税務リスクが発見され、それが既に税務調査が終了した事業年度にまで影響が及ぶ可能性があるときは、更正決定が可能な期間まで遡って調査すべきです。

 

 

(3)調査対象とする税目

法人の支払う税金には、法人税や住民税、事業税、消費税、印紙税、不動産取得税、固定資産税、事業所税、関税等、多岐にわたります。

 

税務DDにおいては、金額的な影響度が最も大きい法人税を中心に調査が行われることが一般的です。法人税以外の税目については、事業内容や過去の税務調査の状況等から、必要に応じて調査の範囲や深度を検討することになります。クロスボーダーの案件では、国によって重要な税目が異なる可能性も考えられますので、現地の税務専門家と連携して調査対象とする税目を検討する必要があります。

 

 

4.終わりに


税務という分野は専門性が高いため、M&Aにおいても税務専門家のサポートを受ける場合が多く、税務DDを依頼、あるいは協力して行うことが一般的です。

 

税務DDの範囲や深度を広げるほど、より詳細に税務リスクを把握できるかもしれませんが、調査に要する時間やコストの負担も大きくなります。一方で、十分な調査が行われず、M&A後に想定外の税務リスクが顕在化することは極力避ける必要もあります。案件の規模や内容等に応じて、効果的かつ効率的な税務DDを行えるように、早い段階で税務専門家と協議しながら検討することがポイントです。

[M&A専門会社スペシャルインタビュー]

株式会社MJS M&Aパートナーズ 代表取締役社長 中俣和久  氏

~中小企業と会計事務所の視点に立ったM&A支援業務を展開~

 


 

財務・会計システムや経営情報サービスを提供するミロク情報サービスの子会社として中小企業の事業承継やM&Aを支援するM&Aアドバイザリー会社。これまで培ってきた会計事務所とのネットワークを生かしたサービス展開と、会計事務所と中小企業の視点に立ったサービスが同社の最大の強み。今回は、同社の代表取締役社長の中俣氏に、同社の特徴やクライアント先のニーズなどについてお話しを伺いました。

 

 

株式会社MJS M&Aパートナーズ代表取締役社長 中俣和久 氏

 

 

中小企業と会計事務所に寄り添ったM&Aアドバイザリー会社


――:貴社(株式会社MJS M&Aパートナーズ、以下mmap)のご紹介をしていただけますでしょうか。

 

中俣 :当社は、財務・会計システムや経営情報サービスを提供するミロク情報サービス(以下、MJS)の子会社として、2014年9月に設立されたM&Aアドバイザリー会社です。日本経済を支える中小企業経営者の高齢化が進行し、後継者の確保が難しく事業承継問題が深刻化しております。当社はこのような状況下において、中小企業の事業活動の継続、雇用の維持等に資するために、M&Aの手法を用いた事業承継・事業再生等の支援サービスを提供しております。

 

 

――:貴社(mmap)の特徴や強みを教えていただけますでしょうか。

 

中俣:親会社であるMJSのお客様である全国8,400件の会計事務所とのネットワークを活用して中小企業に特化した案件ソーシング(※1)を行っていることが当社の強みだと思ます。M&A専門会社は数多くございますが、当社のように全国の税理士とこのようにネットワークを築いている会社はあまりないのではないでしょうか。

 

※1 案件ソーシング:要望に合った相手先の企業を見つけること

 

 

 

――:会計事務所と長年お付き合いのある貴社(mmap)であるからこそ、そのネットワークを生かして相手先を見つけることができるのですね。

 

中俣:はい。長年にわたり培ってきた全国8,400件の会計事務所とのネットワークは当社の大きな強みだと思っております。さらに言うと、会計事務所には、それぞれ多くの中小企業を関与先として抱えておりますから、そのネットワークは案件ソーシングにはとてもメリットがあることだと思います。

 

 

 

――:たしかに、会計事務所は多くの関与先がありますから、会計事務所と連携するメリットは大きいですね。

 

中俣:はい、非常に大きいメリットだと思います。しかし、メリットは案件ソーシングに関することだけではありません。例えば、企業価値算定で必要になる決算書等の資料を速やかに共有していただくこともできますし、また、M&Aではオーナー様の気持ちが不安定になる場合もございますが、そのような際にも、オーナー様のフォローを会計事務所とともに行うことができますので、オーナー様にとっても安心感があるように感じます。結果として、案件着手から成約まで短期間で実現できています。そのようなことも当社の特徴かもしれませんね。

 

 

 

 

譲渡企業オーナーを考えたM&A支援サービスの最低成功報酬


――:貴社(mmap)のサービスラインについて教えてください。

 

中俣:主なサービスは、「M&A支援」、「MBO支援」、「事業再生支援」の3つになります。その中でも中心的なサービスは、「M&A支援」です。M&A戦略の助言から、相手先の選定、企業価値評価(バリュエーション)、条件交渉、基本合意・トップ面談、デューデリジェンスの立ち合い、契約締結の助言と、M&Aの一連の流れを一気通貫でサポートしております。

 

 

 

 

 

――:M&A支援サービスの報酬体系はどのようになっていますか。

 

中俣:当社では、他社に比べ最低成功報酬を低く設定しております。具体的には、成功報酬算定方式として、いわゆるレーマン方式を採用し、最低成功報酬として、譲渡企業側で300万円(税別)、譲受企業側で700万円(税別)を頂いております。

 

 

 

――:最低成功報酬額は、一般的なものよりも抑えられているようですが。

 

中俣:できるだけ譲渡企業オーナー様の手残りを多く残すことを考えてサービスを提供するようにしております。中小企業の事業承継型M&Aの案件が多いということもあり、中小企業が事業承継をしやすいような最低報酬を設定しております。

 

 

 

――:中小企業のM&Aオーナーにとっては、M&Aによる費用も気になるところですよね。

 

中俣:はい、M&A会社に支払う報酬額が高額であるということは、特に案件規模の小さなM&Aでは大きな懸念材料の一つとなっていると思います。「中小企業の事業承継がしやすい環境をつくりたい」という当社の思いもございまして、できるだけ譲渡企業のオーナー様の手残りを多く残せるような最低成功報酬額を設定しております。

 

 

 

 

実務経験豊富なメンバーで会計事務所をサポート


――:では、M&A業務を担当している貴社(mmap)のメンバーは何名くらいいるのでしょうか。

 

中俣:計15名のメンバーがおります。M&A実務経験で職責を分けておりまして、シニアアドバイザーが4名、アドバイザーが6名、エリア担当アドバイザーが5名となっております。

 

 

 

――:シニアアドバイザー、アドバイザー、エリア担当アドバイザーについて詳しく教えていただけますか。

 

中俣:「シニアアドバイザー」は、10年以上のM&A実務経験と20件以上の案件を本人が主体でM&Aを成立させた実績を持つ者です。アドバイザーが担当する案件をフォローし、OJTを行う役割も兼務しております。主に金融機関やM&Aブティックの経験者で構成しております。

 

「アドバイザー」とは、10年未満の実務経験者で、主に案件のメイン担当としてフロント業務にあたっています。数多くの相談案件を担当し、専任契約案件を通じて実務経験も豊富にあるメンバーです。主に、MJSでの営業経験者や金融機関経験者で構成しております。

 

そして、「エリア担当アドバイザー」とは、大宮、名古屋、京都、岡山、福岡のミロク情報サービス各支社に席を設けて長年お付き合いのある会計事務所を巡回しているメンバーのことです。案件が発生した場合は、本人がフロント業務を行い、会計事務所と連携をとったM&Aを実行しております。主にMJSで20年以上の営業経験者で、会計業界のことを知り尽くしたメンバーが担当しております。

 

 

 

――:経験豊富なM&A実務のプロフェッショナルと、中小企業や会計業界のことを知り尽くしたプロフェッショナルにサポートしてもらえるとなると、非常に心強く感じますね。

 

中俣:そう言っていただけるとありがたいですね。このようなメンバーが揃っておりますので、中小企業M&Aのことなら何でも当社(mmap)に相談してもらえるとありがたいと思っております。

 

 

 

 

不安や課題を解消するためのヒアリングを重視


――:それでは、どのようなクライアントが多いでしょうか。

 

中俣:譲渡希望企業様については、会計事務所経由でご紹介されることが多いので、特に決まった業種や規模のお客様ということはありません。ただ、譲渡理由としては、後継者のいらっしゃらない、または後継者育成に上手くいかなかったクライアントが圧倒的に多いように感じます。

 

 

 

――:クライアントである企業様からはどのようなニーズが多いと感じていらっしゃいますでしょうか。

 

中俣:クライアント先からは、自社の意向を最大限に実現してくれることを常に期待されていると感じます。また疑問に思うこと、不安に思うことに対して速やかな対応をしてくれることも期待されています。ですので、当社としても、できる限り直接お会いしてお話をしてその不安や疑問の解消に努めております。

 

 

 

――:譲受企業のクライアントはいかがですか。

 

中俣:譲受希望企業様についても、数多くの要望と情報を頂戴していますが、買収戦略が明確ではないニーズも多いように感じます。なぜM&Aを手段として選択するかということが明確ではないと、たとえM&Aを実行できたとしても、最終的には事業が上手くいかない場合があります。ですから、詳細なヒアリングと決裁権者との直接面談によって、より具体的なイメージを共有させていただくことを心がけています。また、経営環境が不安定な時こそチャンスと捉えている企業経営者も多いため、アドバイザーとしてタイミングを逃さない情報提供が重要と認識して日々活動を行っております。

 

 

 

――:クライアント先へのお気持ちに沿ったサポートを心がけているということですね。

 

中俣:はい。譲渡希望企業様では事業承継に関するお悩み、譲受希望企業様では買収戦略に関する課題などといろいとあるかと思います。それぞれの課題やお悩みについて、クライアント先としっかりとしたヒアリングを実施しながらその解決策を探っていきます。やはり、その不安や課題をお聞きすることが重要だと思います。

 

 

――:その他に、M&A業務をされる上で、大切にしていることはありますでしょうか。ご経験談を含めてお答えください。

 

中俣:まず第一に「譲渡希望オーナー様の立場を尊重して取り組む一方、ビジネスに徹すること」です。中小企業のオーナー様にとって『会社=自分の人生』であり、『企業価値評価=自分の人生価値評価』と捉える方が多いと感じています。一方『企業価値評価=市場価値評価』であり、決して人生の評価ではありません。このことをオーナー様が信頼できる人を通じてご理解して頂くことが第一だと考えています。その役割をアドバイザーは担っていると考えております。このようなアドバイザーの役割を果たすためにも、オーナー様の感情を敏感に察知すること、不要な誤解や不安を与えるような進め方・言葉使い・メール文面・言動を一切とらないよう日々肝に銘じて活動を行っています。

 

 

 

――:なるほど、オーナー様の心の内側にある感情を捉えて、誤解や不安感を与えないようにM&A業務を進めておられるのですね。その他に気をつけていることはありますか。

 

中俣:初期段階で、譲渡したい理由、スキーム、譲渡金額、時期、従業員に関することなど、企業希望オーナー様のご要望をすべて洗い出してもらうことと、株主の総意が取れていることを確認します。また、何が出てきても驚かないことです。中小企業の経営内容は事実と異なることも多いのが普通だと捉えています。どんなことが出てきても驚かず、冷静に対応することを心がけています。

 

 

 

――:初期段階の確認作業も重要ということですね。また冷静に対処する、ということですね。

 

中俣:はいそうです。それと当然ではありますが、M&Aで適切な価格で譲渡できるよう企業価値向上のお手伝いの下準備は徹底して行います。個人資産、会社資産を明確にしたり、事業の強み弱みを再確認したり、業務フローや決裁権限など組織体制のアドバイスも合わせて行える知見を蓄積しています。

 

 

 

――:最後に、事業承継やM&Aに関する業務に取り組もうと考えている税理士の方々へメッセージをお願いします。

 

中俣:クライアントの後継者問題に積極的に関与して、まずは向き合って頂くことを強くお勧めしたいです。第三者承継(M&A)の有効性が認められた場合、個人資産、会社資産を明確にしたり、事業の強み弱みを再確認したり、業務フローや決裁権限など組織体制のアドバイスなどの事前準備のお手伝いをして頂くことをお願いしたいと思います。また、「譲渡先が出る」=「クライアントの減少」とは必ずしもならないケースも発生しています。ですので、後継者不在のクライアントについては、積極的に第三者承継(M&A)のご案内を行っていただきたいと考えています。今一度先生ご自身でクライアントの後継者問題について一件ずつ向き合っていただけるとありがたいです。

 

 

 

――:ありがとうございました。

 

 

 

 

 

[会社概要]

会社名:株式会社MJS M&Aパートナーズ

所在地:東京都新宿区西新宿1-25-1 新宿センタービル48階

設立:2014年9月22日

代表者:代表取締役社長 中俣和久

主な事業内容:中小企業の事業承継・事業再生等に関するサポートおよび教育・研修事業

対応エリア:全国(日本国内)

URL:https://www.mmap.co.jp/

 

 

 

 

 

 

 

 


[掲載希望募集中]

ZEIKEN LINKSでは、本連載に掲載を希望するM&A専門会社(M&A仲介会社、M&Aアドバイサリー会社、M&Aマッチングサイト、税理士法人、弁護士法人、金融機関など)を募集しております。

ご希望の会社様は下記アドレスまで、お気軽にお問合せください。

お問合せ先:links@zeiken.co.jp

 


 

[氏家洋輔先生が解説する!M&Aの基本ポイント]

第6回:財務デューデリジェンス(財務DD)の費用の相場とは?

 

〈解説〉

公認会計士・中小企業診断士  氏家洋輔

 

 

▷関連記事:「財務デューデリジェンスの目的」を理解する

▷関連記事:「事業デューデリジェンス(事業DD)」とは?

▷関連記事:「財務デューデリジェンス実施における『事前資料依頼一覧』」サンプル

 

財務デューデリジェンス(財務DD)の費用の相場はどれぐらいですか?また、どのような要素で決まりますか?


①コンサル企業の規模

財務デューデリジェンスの費用を検討するには、まず、どれぐらいの規模のコンサルディングファーム、会計事務所に依頼するかによって相場感が異なります。

 

当然の事ですが、大手のコンサルティングファームや、監査法人等に依頼すると費用は高くなり、中小のコンサルティングファームや会計事務所に依頼すると費用は安くなります。必ずしも大手であるから品質が高いとは限りませんが、一般的に大手は品質が高く、海外に提携事務所があるため海外案件等に強みを持っています。

 

一方、中小のコンサルティングファームや会計事務所は、大手と比べると品質にばらつきがありますが、小回りや融通が利き、費用は安くなります。

 

大手であれば最低500万円以上、中小であれば最低100万円以上が相場となります。(戦略的に安く請け負っている場合や、調査範囲を限定している場合等はこの限りではありません。)

 

 

②プロフェッショナル度

同規模のコンサルティングファームや会計事務所であっても、それぞれに特徴があります。M&Aのマッチングに強みを持っている場合や、財務デューデリジェンスを得意としている場合、税務顧問をメイン業務としているが財務デューデリジェンスも行う場合等、財務デューデリジェンスに対するプロフェッショナル度が大きく異なります。プロフェッショナル度が高い事務所に依頼するほど、費用は高くなることが一般的です。

 

 

③対象企業の規模

財務デューデリジェンスを行いたい対象企業の規模によっても費用は異なります。規模の大小により、調査項目の大枠はあまり影響しませんが、一般的に規模が大きくなると子会社を保有していたり、事業を複数行っている場合、海外展開している場合等がありこれらの調査が必要であれば費用も高くなることが一般的です。売上3億円の会社と売上30億円の会社の財務デューデリジェンス費用は2倍程度、売上3億円の会社と売上300億円の会社は3~5倍程度の差となることが多いでしょう。

 

 

④調査範囲

財務デューデリジェンスと言っても、M&Aスキーム、バリュエーション方法や調査の目的等により、当然調査項目は異なります。これらの調査項目を取捨選択し絞ることで、多少の費用削減にはなるでしょう。しかし、会計は様々な項目と連動していることが多く、あまり調査項目を絞りすぎると、会社全体としての動きを見誤ったり、見落としてしまうことがあるため注意が必要です。

 

財務デューデリジェンスの費用は、コンサルティング企業の規模、コンサルティング企業のプロフェッショナル度、対象企業の規模、調査範囲等で異なります。検討している企業の財務デューデリジェンスの費用を想定した上で、どのコンサルディング企業に、どの調査項目を依頼するかを検討しましょう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

[税理士のための中小企業M&Aコンサルティング実務]

第4回:M&A における株式評価方法と中小企業のM&A における株式評価方法

~中小企業M&Aで最も用いられている仲介会社方式とは?~

 

〈解説〉

公認会計士・税理士 宮口徹

 


Q、中小企業のM&A において用いられる株式評価方法を教えてください。

 

A、時価純資産価額に正常営業利益の何倍かの営業権(のれん)を加算する、いわゆる仲介会社方式が主流となっています。

 

 

 

図表は、非上場企業に限定せず、M&A における企業価値の算定手法を概観したものですが、事業からもたらされる利益ないしキャッシュフローから事業価値を算定するインカムアプローチ、事業が有するストックに着目するアセットアプローチ及び株式市場から事業の価値を推定計算するマーケットアプローチに大別されます。

 

中小企業の評価で現状、最も用いられている手法が時価純資産価額に、年買法により算定した「営業権」(「のれん」とも言います)の評価額を加算する方式ですが、上記図表の整理では①のインカムアプローチと②のアセットアプローチの折衷法という位置づけとなります。

 

M&A 専門の仲介会社が幅広く用いることにより普及したため、最近は「仲介会社方式」とも呼ぶようであり、企業の収益面と資産面をバランスよく評価に織り込める点が優れており、また投資額をおよそ何年で回収できるかという経営者の思考に非常にマッチする方式であるため広く普及したものと思われます。

 

ただし、年買法による営業権はあくまで過去の利益に基づき算定されるため、利益が安定しない会社や将来の黒字化に向けて赤字が継続しているような会社の評価には適さない点は押さえておく必要があります。

 

この点、企業の価値は事業運営から将来もたらされるキャッシュフローの総和であるべきであることから、理論的にはDCF 法(ディスカウント・キャッシュフロー法)が最も優れていますが、同手法を採用する前提として将来の事業計画が客観的な根拠に基づき策定されている必要があるため、事業承継目的の中小企業のM&A ではほとんど用いられていないのが実状です。

 

また、マーケットアプローチについては評価対象が上場企業であれば、自社の株価は最も尊重されるべき指標となりますが、非上場企業については業種や規模が類似する類似会社を選定することが通常は難しいため、こちらもまず用いられません。

 

よって、中小企業のM&A 実務においては仲介会社方式をマスターすればこと足りることになります。M&A におけるバリュエーションなどと言うとDCF法やEV/EBITDA 倍率などと専門的な用語が飛び交い、税理士にとっては縁遠い分野と思うかもしれませんが、それは上場企業や投資ファンドなどの世界の話であり、一般的な非上場企業のM&A の局面においては意外と簡便的な手法により対価が計算されています。

 

 

 

 

(「税理士のための中小企業M&Aコンサルティング実務」より)

 

[M&A担当者がまず押さえておきたい10のポイント]

第7回:M&Aのプロジェクトチームはどうする?-社内メンバーと社外専門家の活用-

 

[解説]

松本久幸 公認会計士・税理士(株式会社Stand by C)

大和田寛行 公認会計士・税理士(株式会社Stand by C)

 

 

▷第6回:売買価格の決め方は?-価値評価の考え方と評価方法の違い-

▷第8回:デューデリジェンスとは?-各種DDと中小企業特有の論点―

▷第9回:M&A時の会計処理は?-企業業績へのインパクトは!?-

 


M&Aは売り手・買い手双方にとって重要な取引です。特に買い手側ではM&Aのプロセス推進を担うプロジェクトチームが組成されます。

 

プロジェクトチームは経営企画部門、事業部門、財務部門、経理部門等から部門横断的にメンバーを選任する必要があります。M&Aでは、的確な理解力、分析力、判断力といったスキルが求められますので、上記部門において相応の経験や知見をもった社員から構成することが望ましいと考えます。

 

経営企画部門はM&A全体の取り纏め、推進を担います。他部門の意見を取りまとめ、調整し、経営陣とコミュニケーションを取り、案件全体の舵取りを行います。また、後述するフィナンシャル・アドバイザーとの窓口を務め、平時においては案件のソーシングを行うのも経営企画部門の役割であることが多いです。

 

事業部門は、買い手企業と同業の企業を買収する場合等で、特にその知見を発揮することが期待され、そうした場合、ビジネスDDを事業部門が行うケースもあります。

 

財務部門は資金全般を担当します。M&Aでは多額の資金が必要となるケースが多く、財務部門の役割も重要といえます。

 

経理部門はプロジェクトチームの中では後方部隊に位置付けられます。M&Aに伴う業績や財務状況へのインパクトを分析・把握し、事業計画や財務報告に反映させるという非常に重要な役割を担います。一般的な投資家にとって企業のM&Aは将来の業績や株価に影響を与える重要なイベントです。上場企業には、投資家に対してM&Aの目的や狙いを的確に説明するとともに、将来業績への貢献度合いを高い精度を持って予測し開示することが求められています。

 

ここまでは買い手企業の社内におけるプロジェクトチームについてみてきましたが、M&Aを成功に導く上では社内リソースだけでなく社外専門家を活用することも不可欠といえます。多くのM&Aで社外の専門家が起用されます。社外専門家には、案件全般にわたってサポートを行うフィナンシャル・アドバイザー(FA)、デューデリジェンスを行う公認会計士や弁護士等の各種専門家などが挙げられます。通常、一定規模以上のM&Aでは、売り手と買い手それぞれにFAが付き、DD対応や交渉全体の取りまとめを行うことが一般的です。FAには、M&A仲介会社、証券会社の投資銀行部門などが起用されます。

 

M&Aの買い手企業においては、社内のプロジェクトチーム間のみならず、社外専門家ともうまく連携していくことが、プロジェクトを円滑に進める上で大変重要となります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

[税理士のための中小企業M&Aコンサルティング実務]

第2回:M&A 手続きの全体像

~中小企業のM&Aの売手の流れ、買手の流れとは?~

 

〈解説〉

公認会計士・税理士 宮口徹

 


Q、M&A 手続き全体の流れを教えてください。

 

A、事前準備、探索業務(ソーシング)、実行業務(エグゼキューション)の流れとなります。大企業のM&A では、会計士や税理士の業務はほぼ実行段階に限定されていますが、中小企業のM&A では案件全体のコントロールをする役割が求められるケースも増加するものと思われます。

 

 

 

図表は相対取引におけるM&A 業務の流れの全体像を示したものです。大きく分けて事前準備、探索業務(「ソーシング」とも言います。)、実行業務(「エグゼキューション」とも言います。)に区分されます。

 

 

まず、事前準備では①売手からの事前相談に基づき、アドバイザーが②秘密保持契約書やアドバイザリー契約書を締結した上で、③案件の概要把握を行い、買手候補に提示する案件概要書を作成します。

 

また、④売却の基本方針、買手候補や譲渡株価の目線について売手と議論を重ねます。次に探索業務の段階では、買手候補に対して⑤匿名情報を開示して興味の有無を確認し、興味を示した候補に対しては⑥秘密保持契約書を締結した上で、⑦案件概要書他、決算書や人事情報などの詳細情報を開示します。

 

 

買手はこうした情報を検討し、株式取得を希望する場合には、株式の取得価格や取得スキーム、その他諸条件を記載した⑧意向表明書を提出します(相対取引の場合は口頭での調整を経て直接基本合意書を締結するケースもあります。)。

 

売手が意向表明書の内容を受け入れることができる場合、⑨基本合意書を締結しますが、基本合意書は法的拘束力を持たせないケースが一般的です。

 

合意書締結後、⑩デュー・ディリジェンスにより対象会社の詳細を調査した上で、株価交渉やその他の条件交渉を経て⑪株式譲渡契約書の締結を行い、売買代金を決済して⑫クロージングとなります。

 

 

大企業のM&A では全体のコントロールは投資銀行や専門のアドバイザリー会社が行うことが一般的ですので、税理士や会計士の業務は実行段階の業務に限定されます。これに対して中小企業のM&A では税理士や会計士が案件全体のコントロールをする役割が求められるケースも増加するものと思われます。

 

前述したとおり、顧問税理士は対象会社の社長と長年にわたる関係を築いていますのでアドバイザーに適任の存在であり、専門業者に任せきりにせず、積極的に関与したいところです。

 

 

 

(「税理士のための中小企業M&Aコンサルティング実務」より)

 

 

[氏家洋輔先生が解説する!M&Aの基本ポイント]

第1回:「M&Aの概要」「M&Aの流れと専門家の役割」を理解する

~M&Aとは?M&Aの流れと専門家の役割とは?~

 

〈目次〉

1、M&Aとは?

2、M&Aの流れと専門家の役割とは?

① 売手企業と買手企業のマッチング

② IM(Information Memorandum)の作成

③ 売手企業に対するデューデリジェンス、バリュエーショ

④ 株式譲渡契約の締結

3、まとめ

 

〈解説〉

公認会計士・中小企業診断士 氏家洋輔

 

 

▷関連記事:財務デューデリジェンス(財務DD)の費用の相場とは?

▷関連記事:中小企業のM&Aの売手の流れ、買手の流れとは?

▷関連記事:事業引継ぎ支援センターとは?どのような相談ができる?

 

1、M&Aとは?


M&A(Mergers and Acquisitions)にはいくつかの種類がありますが、大きくは「会社の全部を譲渡する方法」と「会社の一部だけを譲渡する方法」の2つの方法に分けることができます。

 

前者の会社の全部を譲渡するスキームには「株式譲渡」「株式交換・株式移転」「合併」があり、後者の会社の一部を譲渡するスキームには「会社分割」「事業譲渡」があります。

 

それぞれのスキームには特徴があり、M&Aの目的や事業遂行上の問題、それぞれの企業の置かれている状況等により最適なスキームは異なってくるため、スキームの検討は専門家を交えて慎重に行う必要があります。

 

最も一般的なスキームである株式譲渡のイメージを下記に示します。

 

 

 

 

 

株式譲渡の場合、一般的には買手企業の方が規模が大きいことが多いため、上図では売手企業よりも買手企業を大きく描いています。

 

買手企業が売手企業の株主へ現金等を支払い、売手企業の株主から売手企業の株式全てを取得します。その結果、売手企業は買手企業の100%子会社となり、売手企業の株主は現金等の対価を手にすることになります。

 

2、M&Aの流れと専門家の役割とは?


①売手企業と買手企業のマッチング

一般的にM&AはFA(フィナンシャルアドバイザー)と呼ばれる専門家が関与します。

 

FAは、M&Aのマッチングからクロージングまで、売手企業又は買手企業(場合によっては双方)に対して、進め方のサポートや価格や条件面での交渉のアドバイス等を行う役割を担います。FAは様々な企業が行っており、M&Aの仲介会社はもとより、証券会社、投資銀行、銀行、コンサルティング会社、弁護士、公認会計士等が行います。

 

 

 

 

上図は、売手企業と買手企業の双方にFAがついている場合のイメージ図です。昨今では、投資先を探している企業が多く、売手企業に比べ買手企業が多いため、上図でも買手企業を3社としています。

 

FA(買手側)は買手企業A、買手企業B、買手企業Cとそれぞれアドバイザリー契約を結んでいて(結んでいない場合もあります)、FA(売手側)は売手企業の株主とアドバイザリー契約を結んでいることが一般的です。価格等を含む様々な条件により、買手企業と売手企業がマッチングしたら、基本合意契約を結びます。

 

 

②IM(Information Memorandum)の作成

売手企業と買手企業をマッチングさせ、プロセスをスムーズに進めるためにはIM(Information Memorandum)が必要になります。

 

売手企業がIMを作成することで、IMがない場合と比べて、買手企業は売手企業のことを短期間で深く理解することが可能となります。このIMの作成をサポートするのが、FAまたは財務等の専門家です。

 

財務等の専門家は、売手企業とアドバイザリー契約を結び、IMの作成支援を行います。財務等の専門家はIMの作成のみにとどまらず、売手企業の事業計画の策定支援や、株価上昇等のアドバイスを実施することもあります。

 

 

 

 

 

③売手企業に対するデューデリジェンス、バリュエーション

基本合意書を結んだ後、買手企業は売手企業を ①買うか買わないか、②買う場合、いくらで買うのか、③金額以外の条件はどうするか、④買収後の統合に向けた情報の整理等を検討します。

 

これらの検討は専門スキルが必要となるため、公認会計士、税理士および弁護士等が外部アドバイザーとして調査することが一般的です。

 

 

 

 

 

 

買手企業の財務等の専門家は買手企業と財務等アドバイザリー契約を結び、売手企業のデューデリジェンス、バリュエーション等を実施します。

 

買手企業の場合、M&Aが初めての会社もあれば毎月のようにM&Aを実施する会社もありますが、売手企業にとっては、財務デューデリジェンスの対象会社となることは、初めてのケースが多いです。

 

財務デューデリジェンスは専門的な調査を短期間で行うことが多く、売手企業にとっては大きな負担となります。そこで、売手企業の財務等の専門家がデューデリジェンスのサポートを行うことで、売手企業の負担を軽減することが可能となります。

 

さらに、M&Aの専門家である財務等の専門家がサポートを行うことで、買手企業の財務等の専門家とのコミュニケーションが円滑化され、買手売手双方にとってストレスを軽減し、スムーズにデューデリジェンスを完了することが可能となります。

 

 

④株式譲渡契約の締結

デューデリジェンスとバリュエーションの結果を受けて、買手企業と売手企業は最終の条件交渉を行い、双方合意すれば株式譲渡契約を締結します。

 

法務の専門家は契約書の作成や法律面でのアドバイスを、財務の専門家は金額等の財務面にかかる契約条件等のアドバイスを行います。

 

 

3、まとめ


以上のように、M&AではFAや財務の専門家、法律の専門家等様々な専門家が関与して多面的なサポートを行います。

 

特に中小零細企業では、M&A自体初めてのことも多く、たとえ案件規模がそれほど大きくなかった場合であっても、専門家の幅広いサポートが必要となることが多いです。また一定規模以上の会社では、専門家が社内にいる場合もありますが、M&Aをより成功に導くために、多くの社外専門家と上手く連携しM&Aをすすめてくことが重要となります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

[税理士のための中小企業M&Aコンサルティング実務]

第1回:実行段階におけるM&A 支援業務の相互関連性

~デューデリジェンス・スキーム策定・バリュエーションの関連性~

 

〈解説〉

公認会計士・税理士 宮口徹

 


Q、税理士が行うM&A 支援業務の相互の関連性を教えてください。

 

A、DD により検出されたリスク要因をスキームの工夫によって遮断・軽減できる場合があります。また、リスク要因はバリュエーションにマイナスの影響を及ぼしますが、これもスキームの工夫で軽減させることが可能な場合があるなど各業務は密接に関連しています

 

 

 

 

 

図表はM&A の実行段階における支援業務の全体像と関連性を示したものです。DD、バリュエーション及びスキーム策定は独立したものではなく相互に関連していることを理解することが重要です。

 

 

まず、DD ですが、図に列挙したとおり、各種観点から対象会社をM&A で取得する際のリスク要因を洗い出す手続きとなります。税理士や会計士が行う財務・税務DD は必須の手続きと言えます。

 

 

弁護士が行う法務DD も大多数の案件で行われますが、図表 のDD の欄内の④以降のDD については必要に応じて行われます。めっき工場の売買で土地の環境汚染が心配であれば専門家に依頼し環境DD を行いますし、多様な形態で人員を雇用し、未払残業代や名ばかり管理職など労働法規上の問題が懸念されるのであれば社会保険労務士に依頼して人事面の調査を行うといった感じです。こうしたDD を行う場合、案件全体をコントロールする税理士としては常にリスクを定量化する思考を持つことが大切です。金額に換算できるリスクであれば売買金額の調整などでクリアできるためです。

 

 

次にスキーム策定ですが、DD において検出されたリスクについてスキームを工夫することで遮断したり軽減したりできることがあります。株式取得では対象会社の潜在リスクが全て引き継がれますが、スキームを事業譲渡に切り替えることによりリスクを遮断するといった対応が可能です。また、スキームを工夫することで税金コストの削減が可能になるのであれば、利益やキャッシュフローが増加しますので株価評価にもプラスの影響が生じます。

 

 

最後にバリュエーション(価値算定)ですが、DD においてリスクが検出された場合、当然に評価額に対してマイナスの影響を与えます。中小企業のM&A では仲介会社方式と呼ばれる方法が一般的です。

 

 

以上、M&A の実行段階における支援業務の相互関連について説明しました。

 

 

 

(「税理士のための中小企業M&Aコンサルティング実務」より)

 

 

 

[M&A担当者がまず押さえておきたい10のポイント]

第2回:売却したいけれどどうしたらいい?  -会社を売却すると決めたら-

 

[解説]

松本久幸 公認会計士・税理士(株式会社Stand by C)

大和田寛行 公認会計士・税理士(株式会社Stand by C)

 

 

▷第1回:何のためのM&A? ーM&Aの目的を考えるー

▷第3回:売却するならどこがいい? -同業他社?大企業?ファンド?-

▷第4回:「事業譲渡と株式譲渡」どっちがいいの?-M&Aのスキーム-

 


それでは、会社を売却したいと思った場合は、どうすればいいでしょうか?

 

売却したいというからには、この場合は売り手の立場でのお話となります。

 

会社を売却したいと考える場合は、前章でも述べた通り、会社を将来に向けて継続させることを前提に、株式を売却して経営を他の人に任せる、ということを目指します。その場合、まずは株式を買ってくれて、会社を自身に変わって経営してくれる人を探すことになります。

 

 

では、そのような人をどうやって探せばよいのでしょうか?

 

よくあるケースとしては、懇意にしている取引先に相談して、その取引先に資金力や経営能力等があれば、その取引先に買ってもらう、ということが考えられます。また、日頃から経営相談をしている税理士の先生や取引銀行に相談して、買い手候補を探してもらう、ということもよくあるケースです。

 

最近では、M&A専門の仲介会社がたくさん出てきていますので、インターネットなどでそういった仲介会社を探して、そこに相談して買い手候補を探してもらう、ということも多くなっています。

 

 

このように、買い手候補を探す場合は、自身で探すには限界があることから、誰かしらに相談して買い手候補を探していく、ということが現実的な方法になっています。

 

 

その場合に、留意すべき点は、会社を売却したいと思って買い手候補先を探しているということを、可能な限り秘密にして動くということです。

 

会社を売却しようとしていることが、例えば従業員や取引先の耳に入ってしまうと、従業員が不安になって会社を辞めたり、また、取引先がいらぬ勘繰りをして取引を絞り込んだりする可能性がないとは言えません。そういう事態を招かないためにも、買い手候補を探す段階においては、社内の信頼できるごく一部の人間にだけ相談して秘密裏に進める慎重さが必要となります。

 

会社を売却すると決めたら、まずは信頼できる人に相談して、買い手候補を探しましょう。そのためにも、普段からM&Aに関する情報収集や、信頼できる・相談できる相手を作っておく、という準備は行っておくべきだと思います。

 

 

 

 

 

 

また、会社の経営管理体制をしっかりと整備しておくことも、会社を売却する際の買い手からの評価にはプラスとなり、より売り易くなることから、日頃から意識しておくべきと考えます。

 

特に、会計処理の適正化や、契約書等の法的書類の整備、労務管理のあたりは、いざM&Aを実行する際にここができていないと、後々追加的な負担が生じるため買い手からの評価を下げることになり、M&Aを進める上で大きなボトルネックとなったりしますので、日頃から意識して整備しておくことをお薦めします。

 

 

次章では、買い手探しの際のポイントについて解説したいと思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

[初級者のための入門解説]

M&Aの相談先 ~ゼロから学ぶ「M&A超入門」⑧~

 

M&A実務の基礎ポイントを、わかりやすく解説する「ゼロから学ぶ『M&A超入門』」シリーズ。今回は、「M&Aの相談先」について解説いたします。

 

〈解説〉

公認会計士・税理士  植木康彦(Ginza会計事務所)

公認会計士・本山純(Ginza会計事務所)

 

 

 

M&Aにより会社や事業の売却を行う場合の、課題や検討すべき事項は多岐にわたり、また専門的な知識が必要となる局面が多数あります。そのため、迅速にM&Aを進めるためには、状況に応じて適切な相談先を選定することが重要となります。

 

ここでは、M&Aの主要な相談先である会計事務所とM&A仲介会社について、具体的なケースで一般的にどちらが適していると考えられるか、それぞれの特徴と主な依頼可能業務をご紹介いたします。

 

 

会計事務所に相談するケース

会計事務所は、顧問契約等により既に関係があるケースが多いことから、経営者にとって気軽に相談できる相手先と言えるでしょう。

 

M&Aにおける会計事務所の特徴は、会計や税務の専門知識を有していることから、財務・税務デューデリジェンスやタックスプランニングを得意とする場合が多いと言えます。他方、M&A仲介会社と比較するとM&Aマーケットでのネットワークはさほど持っていないことが一般的です。

 

そのため、比較的規模が小さい案件(事業価値1億円未満)や、すでに買い手候補がある場合、また、税理士経由でのみ利用可能な日本税理士協会連合会の運営するマッチングサイト「担い手探しナビ」を利用したい場合の相談先として適切と言えるでしょう。

 

会計事務所に依頼可能な主な業務は、初期相談、バリエーション、デューデリジェンス、スキーム構築、タックスプランニング等が挙げられます。

 

 

M&A仲介会社に相談するケース

M&Aに際しては、M&A仲介会社を利用するのは一般的な方法です。

 

M&A仲介会社は、M&Aマーケットに広いネットワークを有しているので、売り手、買い手共に短時間のうちに相手先を探してもらうことができ、売買交渉やデューデリジェンス、バリエーション、売買契約までフルパッケージでしっかりと支援してもらえる場合が多いと言えます。他方で、専門家をフルに活用するのでそれなりの費用がかかることが一般的です。

 

そのため、比較的規模が大きい案件(事業価値1億円以上)や広く買い手を探す場合、仲介や価格交渉等の専門業務を任せたい場合の相談先として適切と言えるでしょう。

 

M&A仲介会社に依頼可能な主な業務は、初期相談、バリエーション、仲介、交渉、契約等、M&Aに係る全般的な事項を依頼することが可能です。

 

 

 

会計事務所に相談した方が良いケース

上記表の通り、M&A仲介会社へ相談すればM&Aに係る業務をフルパッケージでサポートしてもらうことが可能なため、大規模な案件ではM&A仲介会社が介入することが一般的です。これに対し、会計事務所では、M&Aに係る業務の中で、バリエーション、デューデリジェンス、スキーム構築、タックスプランニングを得意としており、M&A仲介会社で行われるこれらの業務も会計士や税理士等の専門家が行っているケースが大半です。

 

そのため、これらの業務をメインに依頼したい場合には、会計事務所へ相談した方がコストを抑えることが可能なケースもあります。

 

特に、スキームやタックスプランニング次第で、M&Aに係る税務コストが大きく変動するため、小規模なM&A案件であってもこれらの検討は行うべきと言えるでしょう。

 

例えば、退職金支給スキームでは、譲渡代金の一部を税率の低い退職金として受け取ることで、総額の手取り額を増加させることができる可能性があります。また、平成29年度税制改正により、会社分割を行った場合の支配関係継続要件の「支配株主と分割法人との関係継続」が不要となったことから、譲渡事業の含み益課税を受けずにM&Aを実施するスキームを構築することも可能となりました。(詳細は「M&Aにおけるタックスプランニング ~ゼロから学ぶ「M&A超入門」⑦~」をご参照ください。)

 

 

 

 

 

[初級者のための入門解説]

会社を半年で売却できる?-M&Aのスケジュール- ~ゼロから学ぶ「M&A超入門」③~

 

M&A実務の基本ポイントを、わかりやすく解説する「ゼロから学ぶ『M&A超入門』」シリーズ。

今回は、「全体スケジュール」「従業員や関係者への伝え方」について考えてみたいと思います。「M&Aで相談先は?」「M&Aではどれくらいの期間で売却できる?」「従業員にはいつ伝える?」など、皆さまの疑問にお答えます。

 

〈解説〉

公認会計士・税理士  植木康彦(Ginza会計事務所)

 

 

 

M&Aをすると決めたら


①M&Aの動機

M&Aによる事業売却の動機としては、従前は選択と集中によるノンコア事業の売却、事業再編、資金調達、リタイヤによる事業の売却ケースなどがありましたが、最近は事業承継がらみのケースが多いように感じます。事業承継でM&Aを選択するのは後継者がいないケースが多数です。つまり、親族や役員・従業員の中に後継者がいない場合、事業自体をM&Aで売却する方法が選択されております。

 

 

②M&Aの相談先

M&Aをしようとする場合、先ずはどこに相談したらよいか悩むところです。M&Aの相談先としてまず思い浮かぶのは、顧問の「公認会計士や税理士」です。日本税理士会連合会は、「担い手探しナビ」を運営していて、税理士経由で「担い手探しナビ」に登録することで、売り手であれば買い手を、買い手であれば売り手を探すことができます。しかし、一般的な会計事務所はM&Aの知見が乏しい場合が多いので、この「ZEIKEN LINKS(ゼイケンリンクス)」を使ってM&Aに詳しい会計事務所を探すのも一法です。

 

③M&A仲介会社の利用

また、「M&A仲介会社」を利用するのは一般的な方法です。M&A仲介会社は、M&Aマーケットに広いネットワークを有しているので、売り手、買い手共に短期間のうちに「相手先を探し」てもらうことができ、「売買交渉」「デューデリジェンス」「バリエーション(価値評価)」「売買契約書の作成」までフルパッケージでしっかりと支援してもらえます。他方で、専門家をフルに活用するので最低でも数百万円の費用がかかります。

 

④M&Aマッチングサイトの利用

「マッチングサイト」を使って、基本的なことは自分で対応する方法も、最近は流行っております。マッチングサイトとは、主にインターネット上で、売り手と買い手がそれぞれ「M&A情報」を掲載し、手軽に、かつ安価なコストで、自分自身で「相手先を探せる場所(サイト)」です。

 

端的に言うと、売り手は、まず「ノンネーム」といわれる情報(対象会社が特定できないように、業種、地域、おおよその年商のみ)を掲載して買い手からの応募を待ち、買い手は、業種や地域を絞った上で希望する「M&A候補を探す」ことができます。売り手と買い手がうまく出会えた場合は、次のステップとして、さらに「詳細な情報を交換」して、お互いの希望がマッチすれば「売買条件」を詰め、最終的に「売買契約(M&A)」に至ります。

 

専門家の関与が少なければ少ないほどコストは安価ですむので、中小企業のM&Aに適していると言えます。そうはいっても、多くの中小企業者はM&Aの経験と知見が不足している場合が多いので、マッチングサイトを提供する会社や組織は、公認会計士・税理士やM&Aアドバイザリー等、各種専門家と提携していて、マッチングの場の提供だけでなく、売買交渉やデューデリジェンス、バリエーション業務を支援するケースもあります。

 

⑤M&Aアドバイザリーの特徴と費用感

「M&Aアドバイザリー(仲介会社やマッチングサイト)」のそれぞれの特徴と費用のイメージは以下のとおりです。

 

 

M&Aの全体スケジュール


M&Aの一般的な流れは、以下のとおりです。まずは「相手先探し」から始まり、相手先の候補が見つかると「秘密保持契約」を交わして相手先を調査します。興味があって双方が先に進みたいと思う場合は「トップ面談」し条件面を調整し「基本合意書」を締結します。その後、「買手によるデュ―デリジェンス」と交渉を経て最終的に合意した場合、「売買契約書」を締結します。

 

M&Aに要する時間は、売却理由や売却条件等にも左右されますが、順調に進むケースでは「2、3ケ月」で完結することもありますが、長いケースだと「年単位」でかかることもあります。

 

 

従業員や関係者への伝え方


①従業員への説明のタイミング

M&Aは極めてセンシティブな事柄ですから、M&Aに関与する者は経営者・経営企画担当等に限定し、秘密裏に進めるのが基本です。なぜなら売り情報が漏れた場合の信用不安の拡大、うまくいかなかった時のダメージが大きいためです。そこで、幹部従業員への説明は、「基本合意書の締結」のタイミングが、一般の従業員への説明は売買契約を締結する直前あるいは契約締結日」に説明するのが一般的です。

 

②従業員説明の方法

説明の仕方としては、幹部従業員はキーマンとなる人が多いので経営者が個別に面談し退職されないように留意します。その他の従業員一同を集めた説明会を開催する方法が一般的かと思います。

従業員はM&Aによって、引き続き働けるのか給与条件等の待遇はどうなるのかなど不安を持つのが普通なので、買手側と十分に協議した上で、従業員への説明を行うべきです。

 

③関係者への説明

金融機関や主要な取引先には、経営者が直接訪問して説明した方がよいですし、特に重要な取引先には売買契約締結前に説明をしておいた方がよいと思います。それ以外の取引先や関係者にはクロージング後に送付する挨拶書面で連絡するのが一般的です。

 

 

 

 

 

[初級者のための入門解説]

社長の手取り額は?-M&Aにかかる費用-  ~ゼロから学ぶ「M&A超入門」②~

 

M&A実務の基本ポイントを、植木康彦先生(Ginza会計事務所/公認会計士・税理士)、本山純先生(Ginza会計事務所/公認会計士)にわかりやすく解説していただきます。今回は、譲渡企業の経営者にとって最大の関心事の一つである「社長の手取り額」を取り上げます。「M&Aで発生する費用は?」「M&Aの税金負担は?」など、皆さまの疑問にお答えます。

 

〈解説〉

公認会計士・税理士  植木康彦(Ginza会計事務所)

公認会計士  本山純(Ginza会計事務所)

 

 

 

M&Aで会社を売却した場合、社長(株主)の手元に残るキャッシュは売却代金からM&Aにかかる費用を差し引いた額となります。

 

売り手側で発生する代表的なM&Aにかかる費用は主に以下の2つがあげられます。

 

【代表的なM&A費用】

①専門家(仲介会社)に払う手数料

②税金

 

①専門家(仲介会社)に払う手数料
~M&A仲介会社は何をしてくれるの?~

M&Aで発生するコストの代表的なものにM&A仲介会社に支払う手数料があります。

M&A仲介会社は、M&A全体の取りまとめの役割を果たします。

 

具体的には、

・M&A全体のスケジュールと売却方針の検討

・売却先の選定、交渉

・契約のサポート 等々

 

M&Aにあたり何から着手すべきか、どのように進めるべきか、M&Aがスムーズに成立するよう、スタートからクローズまでの各段階でのサポート及びアドバイスを提供してくれます。

 

M&A全体のスケジュールや売却方針があやふやなままでは、いくら魅力的な企業であってもスムーズに商談が進まず、労力ばかりがかかってしまうことも。

 

そんな状況では、本業にも悪影響を及ぼし兼ねず、結果的に事業価値を低下させてしまう恐れもあります。

 

売却先についても、売りたい企業とも買いたい企業ともネットワークを持つ仲介会社を使うことで、自分のネットワークだけでは繋がることのできない相手先への売却アプローチも可能となります。

 

M&Aでは、各段階で留意すべきポイントやタスクが多岐にわたるため、不慣れが原因で生じるトラブルを回避し、スムーズに進めるためにも、経験豊富な仲介会社が全体を取りまとめることがM&Aを成功させるカギとなります。

 

~M&A仲介会社の費用はどれくらい?~

このように、M&Aを成功させるためにM&A仲介会社の存在はとても大きなものとなりますが、その分、手厚いサポートを受ける場合には費用も多額となってしまうことが一般的です。

 

仲介会社の費用相場は、取引金額や提供を受けるサービスの範囲で大きく変動することから、一概にいくらと言えるものではありません。

 

そのため、どのような仲介会社を利用するかを検討する上で、仲介会社の一般的な費目と料金形態を把握しましょう。

着手金と中間金は、M&Aが成立しなかった場合でも返金されない費用となります。

 

 

「着手金+成功報酬」「中間金+成功報酬」「成功報酬のみ」等、仲介会社によって料金形態及び提供サービスの範囲は様々です。

 

手厚いサービスを受ける場合には、仲介会社でも公認会計士等の専門家に対する報酬が発生する為、着手金や中間金が必要となるケースもありますし、これらのサービスをオプションとして追加できる仲介会社もあります。

 

また、どの仲介会社でも生じることが一般的な成功報酬の割合は、売買代金に応じて変動するため一概には言えませんが、多くの仲介会社が採用するレーマン方式では5億円以下の場合、売買金額の5%となります。

 

 

 

仲介会社によって得意とする業種や対応している地域、提供業務のタイプ(仲介型orアドバイザリー型)が異なりますので、受けたいサービスの費用対効果を考慮し、自社に合ったM&A仲介会社を選ぶことが重要です。

 

②税金
~どんな税金がかかる?~

無事M&Aが成立し、売却後に生じる支出が、売却により生じた利益に対して課される税金です。

それでは、M&Aで生じる税金にはどのようなものがあるのでしょうか。

ここでは、M&Aでよく使用される株式譲渡について検討していきたいと思います。

 

(注:M&Aのスキームには、株式譲渡・事業譲渡・会社分割・株式交換・合併等があり、採用するスキームによって課される税金が異なります。)

 

株式譲渡により会社を売却した場合には、売却代金から株式の取得費譲渡費用(仲介会社への手数料等)を控除した譲渡益(株式譲渡所得)に対して20%(所得税15%、住民税10%)の税金がかかります。(復興税は省略)

 

これは売却した翌年の確定申告で申告・納付することとなります。

 

 

 

~手取り額を最大限にする方法は?~

上記の通り、株式の譲渡益に対しては20%の税金が発生しますが、退職金を利用することで、税負担を軽減し、手取り額を増やすことができる可能性があります。

 

退職金は、これまでの勤労に対するものであり、退職後の生活を支える資金となるため、退職所得控除や課税対象額が1/2になる等、税務上非常に優遇されています。

 

そのため、譲渡代金の一部を退職金で受け取ることで、税負担の軽減分だけ手取り額を増やせる可能性があるのです。

 

それでは、具体的な設例を使って、確認しましょう。

 

 

 

①全額株式の譲渡代金として受け取った場合(税負担額:20百万円)

 

株式(非上場株式)を譲渡した場合、譲渡益部分が課税対象となり、税額は以下の算式で算定されます。なお、本来は譲渡代金から取得費等を控除して譲渡益を算定しますが、計算を簡略化するため得費用等は省略し、譲渡代金=譲渡益(譲渡所得)と仮定しています。

 

 

 

 

②譲渡代金の一部(60百万円)を退職金として受け取り、40百万円を株式の譲渡代金として受け取った場合(税負担額:16.45百万円)

 

 

 

 

ⅰ.譲渡所得部分

株式の譲渡益に対する税金は①の算式の譲渡所得が40百万円となり、以下の通り算定されます。

 

 

ⅱ.退職所得部分

退職金は、税務上優遇された取扱いがあり、税額は以下の算式で算定されます。

 

(注①)

退職所得控除は勤続年数に応じて20年以下は年間0.4百万円、20年超部分は年間0.7百万円で算定されます。

(0.4百万円×20年+0.7百万円×(30年-20年))=15百万円

(注②)

退職所得の所得税率は超過累進税率のため、退職所得金額に応じて変動します。本設例では以下の区分の税率が適用されます。なお、設例に記載の税率は下記税率40%に住民税10%を足した50%として算定しています。

 

 

 

上記の設例では、譲渡代金100百万円に対して約3.5百万円の税負担の軽減が図られたこと確認できます。この分、売却による手取り額が増加することになります。

 

また、退職金は会社の費用(損金)にもなることから、法人実行税率を30%と仮定すると、18百万円(60百万円×30%)会社に節税効果が生まれ、譲渡対価の交渉材料の一つにもなります。(「不当に高額な部分の金額」となる退職金は損金とならないため、退職金の金額設定には留意が必要です。)