[税理士のための税務事例解説]

事業承継やM&Aに関する税務事例について、国税OB税理士が解説する事例研究シリーズです。

今回は、「事業譲渡に当たっての適正価額について」についてです。

 

[関連解説]

■【Q&A】事業を譲り受けた場合に営業権の計上について

■【Q&A】事業譲渡により移転を受けた資産等に係る調整勘定

 

 

 


[質問]

A社は事業縮小を図っており、物品販売の事業をB社に譲渡しようと考えています。譲渡にあたり、在庫を簿価でB社に売却する以外の金銭の授受は生じません。

 

1. 在庫の譲渡について利益を乗ぜず簿価で行いますが、損失が生じるわけではなく、両者の同意のもとで行われる取引であり問題がないと考えます。

2. 事業を引き継いでもらうことから、顧客データ等については無償で譲り渡すつもりです。金額の算定が難しく、有償では引き継いでもらえないことから無償譲渡で問題がないと考えます。

 

B社はA社の100%子会社ではありません。A社とB社の資本関係に影響されないと考えますがいかがでしょうか。

 

 

[回答]

法人税法上、資産の販売等に係る収益の額は、資産の販売等により受け取る対価ではなく、販売等をした資産の価額をもって認識すべきであるとされています(法22②④、22の2④)。そして、この「価額」、すなわち時価とは、一般的には第三者間で取引されたとした場合に通常付される価額のことをいいます。したがって、資産の低廉譲渡又は無償譲渡のように、時価と異なる価額を対価の額とする取引が行われた場合には「価額」に修正して益金の額を計算する必要があることとなります。具体的には、売手側には、寄附金課税等の問題が生じます。このことは、単体で商品等を販売することはもとより、事業譲渡のような形態であっても同様です。

 

ご質問についてですが、在庫を簿価で譲渡する場合や顧客データ等を無償で譲渡する場合でもそれが第三者で行われた事業譲渡であれば、利害が相反する当事者、すなわち売手(A社)と買手(B社)との交渉の結果合意された値段であると考えられますので、適正な価額で譲渡されたということについて特段問題は生じないと考えられます。

 

ご質問にある「B社はA社の100%子会社ではありません。A社とB社の資本関係に影響はされないと考えます」という趣旨が必ずしも判然としませんが、仮に、A社がB社の株式の70%を所有していたとすると、A社とB社とは親子関係となり価額決定に恣意性が入る余地が生じてしまいます。両社の同意のもと価額決定がされたとしても、そのことをもって恣意性が排除されているとは言い切れないと考えます。結果として時価譲渡に問題なしということになるかもしれませんが、適正な価額での取引であることを裏付けるためにも、例えば次のような点を検討しておく必要があるものと思われます。

 

① A社の事業縮小以外になぜ在庫品を簿価で譲渡しなければならなかったのか。在庫品を簿価で譲渡することで両社が合意するに至った経緯は何か。

② 一般的に、顧客データ等は、信用、ノウハウ、技術力等と同様に営業権(のれん)の構成要素となり得ると考えられますが、金額の算定の困難性以外になぜ有償では引き継いでもらえないのか。
など。

 

 

 

 

 

税理士懇話会事例データベースより

(2020年10月26日回答)

 

 

 

 

[ご注意]

掲載情報は、解説作成時点の情報です。また、例示された質問のみを前提とした解説となります。類似する全ての事案に当てはまるものではございません。個々の事案につきましては、ご自身の判断と責任のもとで適法性・有用性を考慮してご利用いただくようお願い申し上げます。

 

 

 

 


[税理士のための税務事例解説]

事業承継やM&Aに関する税務事例について、国税OB税理士が解説する事例研究シリーズです。

今回は、「事業を譲り受けた場合に営業権の計上について」についてです。

 

[関連解説]

■【Q&A】事業譲渡により移転を受けた資産等に係る調整勘定

■【Q&A】のれんの税務上の取扱い

 

 

 


[質問]

下記の場合の営業権の考え方についてご教示ください。

 

1. 前提
A社:株主Bが100%保有
C社:株主Bが100%保有

他にも株主Bが保有する会社が数社あります。
業種は小売業で多数店舗展開しています。
C社は毎期500万円前後の経常利益を計上しています。

 

2. 店舗の譲渡を検討
今回、C社の保有している店舗をすべて(2店舗)A社に譲渡することにしました。これはA社とC社は営業地域(関西)が同じ場所にあるからであり、譲渡後C社は清算する予定です。

 

3. 営業権の計上の可否
A社・C社は株主が同一のため計上は必要ないと考えています。

 

 

[回答]

【結論】
黒字の店舗の事業譲渡を受ける場合において、それが適格組織再編によるものでないときは、原則として営業権(創設営業権を含む)の計上が必要であると考えられます。

 

なお、その黒字店舗の譲受後の事業に係る見込み利益について黒字が見込めない等その営業権に価値がないとすることに合理的な理由がある場合には、その限りではありません。

 

仮に、有償性のある営業権を無償で譲り受けた場合には、C社において受贈益を計上する必要があることを申し添えます。

 

※ グループ税制の受贈益の益金不算入規定は、本件のような個人Bによる完全支配関係のような法人による完全支配関係に該当しない関係の場合には、適用されません(法人税法25条の2第1項)。

 

 

【理由】
事業を譲り受けた場合に関して、法人税法62条の8第1項において、事業譲受けに係る対価が、その譲り受けた事業に係る時価純資産(資産(営業権にあっては、一定のものに限る。)時価から負債の時価を控除した金額)の価額を超える場合には、その超える部分の金額は、原則として資産調整勘定の金額とする旨の規定が置かれています。

 

なお、ここでいう営業権は、他人間で取引する場合に有償で取引されるようなものをいう旨が法人税法施行令第123条の10第3項に規定されています。つまり、有償性のある営業権は、時価純資産に含まれること、換言すれば、資産として認識することが予定されていると解されます。

 

この規定は、取引当事者の株主が同一である(完全支配関係がある)場合にも適用されます。

 

さらに、取引当事者であるA社とC社との間には、株主Bを同一者とする完全支配関係があるとのことですので、参考に次の点も確認することとします。

 

 

1 グループ税制(法人税法第61条の13、法人税法施行令第122条の14第1項)
完全支配関係のある法人間で譲渡損益調整資産を譲渡した場合には、その譲渡による譲渡損益は繰延されることとされています。

 

ご照会の営業権は創設営業であると思料されるため、帳簿価額が0であると想定され、帳簿価額が1,000万円に満たないため、譲渡損益調整資産に該当しないこととなりますので、譲渡損益の計上が必要となります。

 

 

2 組織再編税制(適格合併)(法人税法第62条の2)
完全支配関係のある法人間で適格合併が行われた場合には、その合併により移転した資産及び負債は合併直前の被合併法人の帳簿価額で引継ぎをしたものとする旨が規定されています。

 

したがって、本件の事業譲渡が適格合併により行われたものとした場合には、被合併法人において営業権の帳簿価額が0であれば、引継ぎを受けた法人において営業権を計上する必要がないこととなります。

 

 

 

 

税理士懇話会事例データベースより

(2020年6月19日回答)

 

 

 

 

[ご注意]

掲載情報は、解説作成時点の情報です。また、例示された質問のみを前提とした解説となります。類似する全ての事案に当てはまるものではございません。個々の事案につきましては、ご自身の判断と責任のもとで適法性・有用性を考慮してご利用いただくようお願い申し上げます。

 

 

 

 


[税理士のための税務事例解説]

事業承継やM&Aに関する税務事例について、国税OB税理士が解説する事例研究シリーズです。

今回は、「取得した株式の取得価額と時価純資産価額に乖離がある場合」についてです。

 

 

[関連解説]

■【Q&A】のれんの税務上の取扱い

■【Q&A】事業譲渡により移転を受けた資産等に係る調整勘定

 

 

 


[質問]

日本法人がM&Aで外国法人の株式を取得した場合における日本法人株式の財産評価基本通達に基づく純資産価額方式による評価上、当該外国法人の買収価額と時価純資産価額に乖離がある場合の差額(のれん)の相続税法上の評価について、どのように取り扱うべきでしょうか。

 

財産評価基本通達185のかっこ書きの評価会社が課税時期前3年以内に取得または新築した土地及び土地の上に存する権利(以下「土地等」という。)並びに家屋及びその附属設備又は構築物(以下「家屋等」という。)の価額は、課税時期における通常の取引価額に相当する金額によって評価するものとし、当該土地等又は当該家屋等に係る帳簿価額が課税時期における通常の取引価額に相当すると認められる場合には、当該帳簿価額に相当する金額によって評価することができるものとされることを準用し、買収後3年間は買収価額(=帳簿価額)による評価を実施し、3年経過後は当該外国法人の純資産価額方式による評価としても差し支えないでしょうか。

 

[回答]

ご照会の趣旨は、評価会社の株式の価額を評価する際、評価会社がM&Aにより取得した本件外国法人の株式の取得価額と同法人の株式の時価純資産価額に乖離があることから、その乖離している差額部分(のれん)をどのように取り扱えばよいのか、を問うものです。

 

以下の1又は2のいずれにより取扱っても差し支えないと考えます。

 

 

1 取得した株式の価額のままで取扱う場合
本件事例の評価会社がM&Aにより取得した本件外国法人の株式の取得価額と同法人の株式の時価純資産価額に乖離がある場合で、その時価純資産価額が取得価額を下回っている場合には、評価会社の株式を評価する純資産価額(相続税評価)が過大に評価されることがないと考えますので、その乖離している部分の金額(以下「本件乖離差額の金額」といいます。)を特に考慮しないでも差し支えないと考えます。

 

評価会社の株式の価額を1株当たりの純資産価額(相続税評価額によって計算した金額)を評価する際、その評価会社の保有資産に本件外国法人の株式が含まれていますので、本件外国法人の株式の価額は、財産評価基本通達(以下「評基通」といいます。)186-3《評価会社が有する株式等の純資産価額の計算》の定めにしたがって計算します。

 

その計算により算出された本件外国法人の株式の価額は、評価会社の株式を評価する際の「取引相場のない株式の評価明細書」の第5表の資産の部の有価証券(外国法人に係る株式)の科目の相続税評価額欄に記載され、その有価証券の帳簿価額欄の金額は本件外国法人に係る株式の帳簿価額(取得価額)を記載します。

結果的に、評価会社が有する有価証券(本件外国法人に係る株式)を含む各資産の価額の合計額が相続税評価額及び帳簿価額のそれぞれの純資産価額(第5表の⑤及び⑥)の計算の基に含まれているので、同表の⑤-⑥による⑦欄に評価差額に相当する金額(マイナスの場合は0)では本件乖離差額の金額が整理、吸収された後の金額が算出されます。

 

そうすると、評価会社が取得した本件外国法人の株式の取得価額と同株式の相続税評価額に乖離があったとしても、本件乖離差額の金額は評価会社の株式評価における純資産の評価差額の計算において整理、吸収されてしまうことになります。
評価差額に相当する金額は、株式の課税時期における純資産価額(相続税評価額)を計算する際に控除する法人税額等相当額(同表の⑨)の計算の基になる価額です。

 

したがって、本件乖離差額の金額は、評価会社の株式の純資産価額(相続税評価額)を算出する際の控除項目の中で整理、吸収されてしまいますので、評価会社の株価が過大に評価されることがないと考えます。

 

 

2 営業権として取扱う場合
評価会社の決算において、M&Aにより本件外国法人を買収した際の営業権を新たに貸借対照表に資産として計上がある場合には、評価会社の株式の評価における純資産価額(相続税評価額)の計算において営業権の科目を計上して評価することになります。

 

そのM&Aにより本件外国法人を買収した際、評価会社が本件外国法人の有する営業権(のれん)の価値を認め、その価値を評価してM&Aの買収価額を決定している場合は、その認定した営業権の価値に相当する金額を営業権の取得価額として取扱い、評価会社の資産に本件外国法人に係る営業権の価額を計上すべきと考えます。

 

なお、M&Aの契約書に本件外国法人に係る営業権が取引対象として掲記されていない場合には、簿外の営業権を含めて本件のM&Aが行われたと考えられます。

 

ところで、営業権とは、「企業が有する好評、愛顧、信認、顧客関係その他の諸要件によって期待される将来の超過収益力を資本化した価値」であると説明されています。

 

財産評価においては、営業権は、他からの有償取得のものであるか、自家創設のものであるかを問いませんが、本件においては他から取得した営業権になります。
相続税財産の評価上、営業権の価額は、企業の超過収益力を基に計算することで取扱われています(評基通165、166)。本件外国法人に係る営業権の価額は、評基通165、166の定めにより評価するのが相当です。

 

 

 

 

税理士懇話会事例データベースより

(2018年10月15日回答)

 

 

 

 

[ご注意]

掲載情報は、解説作成時点の情報です。また、例示された質問のみを前提とした解説となります。類似する全ての事案に当てはまるものではございません。個々の事案につきましては、ご自身の判断と責任のもとで適法性・有用性を考慮してご利用いただくようお願い申し上げます。

 

 

 

 


[税理士のための税務事例解説]

事業承継やM&Aに関する税務事例について、国税OB税理士が解説する事例研究シリーズです。

今回は、「税理士事務所の事業承継と一時払金の処理」についてです。

 

[関連解説]

■【Q&A】M&Aに伴う手数料の処理

■【Q&A】非上場株式の譲渡に当たり交渉支援、契約内容の検討等を依頼した弁護士費用等について

 

 

 

 

 


[質問]

この度、先代の税理士より事務所の承継を行いましたが、顧問先をそのまま譲るための費用として、一定の金額を支払いました。

 

この費用は、いわゆる暖簾(営業権)となるのでしょうか。

また、暖簾となる場合は、下記の処理で宜しいのでしょうか。

 

① 無形固定資産  定額法  残存価額 ゼロ
② 償却年数5年 (税制改正により月割り計算を行うこととされた。)

 

 

[回答]

現行所得税法の判断を行う各審級(地裁・高裁・最高裁)における裁判例では、税理士事務所の事業主変更に伴い授受される金員の所得区分については雑所得に該当するとしています。

 

 

これらの裁判所の判断は、課税庁側の主張を全面的に採用したものとなっているわけですが、課税庁側の主張の源流は、昭和42年7月27日付直審(所)47「税務及び経理に関する業務の譲渡に伴う所得の種類の判定について(個別通達)」にあります。

 

 

すなわち、当該通達において、上申局である広島国税局長に対し、国税庁長官から「税理士が、その業務を他の税理士等に引き継いだ対価として受ける金銭等は(企業権とか営業権の譲渡とは考えられず)、あっせんの対価と認められる」ので、雑所得として取り扱うよう指示したところに拠っているものと認められます。

 

 

それでは、対価を支出した「他の税理士側の会計処理」はどうかというと、現時点まで具体的な取扱い例を示しているものはないものと考えていますが、東京高裁(平成25年10月10日判決)平成25年(行コ)第236号所得税更正処分等取消請求控訴事件の 判決の傍論部分で「承継法人(回答者(注)本件の税務・会計業務を引き継いだ者は、税理士法人です。)は、業務譲渡の対価を顧問先紹介に係る『市場開発費』として経理処理している」と判示している箇所があります。当該判決はその経理処理の是非を直接判断しているわけではありませんが、判決文の趨勢からすると、この会計処理を容認しているかのように窺知し得るものと考えられます。

 

 

だとすると、税務上は、当該金銭の支出は、営業権の譲受けによるその取得対価に該当するものとは解さず、顧問先の紹介という開発費(市場の開拓のために特別に支出する費用)に該当するものとして処理することが相当ではないかと考えられます(所得税法施行令第7条第1項第2号参照)。

 

 

従って、当該繰延資産の償却は、同令第137条第1項第1号に規定するところに従い計算した金額(=支出額÷60×各年の月数)を各年分(5年~6年間)の必要経費に算入することが相当であろうと考えられ、結果的にはご照会の算定額と同様の額になるものと考えます。

 

 

 

 

税理士懇話会事例データベースより

(2020年02月04日回答)

 

 

 

 

[ご注意]

掲載情報は、解説作成時点の情報です。また、例示された質問のみを前提とした解説となります。類似する全ての事案に当てはまるものではございません。個々の事案につきましては、ご自身の判断と責任のもとで適法性・有用性を考慮してご利用いただくようお願い申し上げます。

 

 

 

 


[税理士のための税務事例解説]

事業承継やM&Aに関する税務事例について、国税OB税理士が解説する事例研究シリーズです。

今回は、「のれんの税務上の取扱い」についてです。

 

[関連解説]

■【Q&A】事業譲渡により移転を受けた資産等に係る調整勘定

■【Q&A】取得した株式の取得価額と時価純資産価額に乖離がある場合

 

 

 


[質問]

事業譲渡におけるグループ法人税制の適用についてお尋ねします。

 

A社はB社の株式を100%所有しています。この度、A社の事業をB社に売却するのですが、事業譲渡の価格算定においてA社の事業の純資産価値のみではなく、利益3年分も加算されることとなっております。

 

この場合、利益3年分は、いわばのれんとしての価値だと考えますが、こののれんの価値部分については、グループ法人税制の対象となるのでしょうか。

 

 

[回答]

1 「のれん」とは、取得原価が受け入れた資産及び引き受けた負債に配分された純額を上回る場合の、その超過額をいうものとされています(企業結合会計基準㉛)。したがって、企業を買収する場合の買収価額(取得原価)が識別可能な資産・負債の時価とイコールの場合には、基本的に「のれん」は生じないことになります。

 

しかし、買収時の価格決定には企業結合に当たって期待されるシナジー効果や、ノウハウ・ブランド等の超過収益力が含まれていることから、買収価額が識別可能な資産負債の時価を超過するケースが少なくありません。これらの時価を超えるシナジーや超過収益力等のプレミアムを総称して「のれん」ということになります。

 

 

 

2 現行の日本の会計基準上、原則として、「のれん」は資産に計上し、20年以内のその効果の及ぶ期間にわたって、定額法その他の合理的な方法により規則的に償却し、その償却額は販売費および一般管理費の区分に表示することとされており、「のれん」の金額に重要性が乏しい場合には、「のれん」が生じた事業年度の費用として処理することができることとされています(企業結合会計基準㉜、㊼)。

 

一方で、負の「のれん」が発生した場合には、その発生した事業年度の利益として認識し、特別利益の区分に表示することになります(企業結合会計基準㉝、㊽)。

 

 

 

3 税務上、「のれん」という資産分類は存在しませんが、それに類似する概念として平成18年度税制改正で創設された「資産調整勘定」、「差額負債調整勘定」というものがあります。

 

これは、企業結合会計基準の導入により組織再編時の「のれん」の取扱いが明確化されたことから、企業会計との調和を図り、また実務上の不明確さを解消する目的で、会計上の「のれん」に類似する概念が税法においても導入されることとなったものです。

 

具体的には、法人が非適格合併等により交付した金銭等の価額が移転資産負債の時価純資産価額を超えるときは、その超える部分の金額を「資産調整勘定」として認識し(法人税法62の8①)、交付金銭等の額が移転資産負債の時価純資産価額に満たないときは、その満たない金額を「差額負債調整勘定」として認識するものとされています(法人税法62の8③)。

 

ここで非適格合併等とは、非適格合併のほか、非適格分割、非適格現物出資又は事業の譲受けで、事業及び事業に係る主要な資産負債のおおむね全部が移転するものとされており(法人税法62の8①、法人税法施行令123の10①)、事業の移転が前提とされています。事業の意義については旧商法・会社法の概念と基本的に同じと考えられており、「一定の営業目的のために組織化され、有機的一体として機能する財産」を言うことになります。

 

この「資産調整勘定」・「差額負債調整勘定」は、個別資産負債に配分できない残余価値であり、それぞれ会計上の正の「のれん」・負の「のれん」に相当するものです。

 

なお、「資産調整勘定」・「差額負債調整勘定」はあくまで差額概念であるため、承継資産の中に独立した資産として取引される慣習のある営業権が含まれる場合は、営業権(無形固定資産)として認識する必要があります。

 

このようにして計算された「資産調整勘定」・「差額負債調整勘定」は、会社の会計処理にかかわらず、計上後5年間にわたって減額し、損金又は益金の額に算入することになりますが、非適格合併等が期中に行われた場合であっても、計上初年度は1年分の減額を行うこととされています(法人税法62の8④⑦⑪)。

 

 

 

4 お尋ねによれば、「A社はB社の株式を100%所有」しており、「A社の事業をB社に売却する」、この際、「A社の事業の純資産価額に、3年分の利益相当額を加算した譲渡価額とする」とのことです。

 

事業譲渡の規模等の詳細が明らかではありませんが、グループ法人税制に関するお尋ねですので、事業及び事業に係る主要な資産負債のおおむね全部が移転することを前提に、一般論として回答させていただきます。

 

事業及び事業に係る主要な資産負債のおおむね全部が移転する事業譲受については、買収対価と移転資産・負債の時価との差額を「資産調整勘定」として認識することになります。

 

仮に、①A社は100%子会社であるB社に事業を200で譲渡し、②事業に含まれる資産及び負債の時価は170であったとすると、

 

① 会計上、資産及び負債を帳簿価額で引き継いだ場合であっても、事業譲渡の場合は、税務上の時価によって認識し、

② 交付した対価の金額(200)が移転を受けた資産及び負債の時価純資産価額(170)を超えた部分は、資産調整勘定として申告調整される

 

 

ことになると思われます。

 

 

なお、上記のような処理によって生ずる、一般に「のれん」と呼ばれる資産調整勘定は、税務上、5年間の均等償却を行うことで各事業年度の損金の額に算入することになると思われます(法人税法62条の8④⑤)。

 

 

 

 

税理士懇話会事例データベースより

(2018年1月24日回答)

 

 

 

 

[ご注意]

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