[新型コロナウイルスに関するM&A・事業再生の専門家の視点]

中小企業活性化パッケージが策定されました。

 

 

〈解説〉

公認会計士・中小企業診断士  氏家洋輔

 

 

▷関連記事:新型コロナ対策融資と特例リスケ ~事業再生の専門家の観点から~

▷関連記事:家賃支援給付金の詳細情報が公表(2020年7月7日)。制度内容は、給付額は、申請方法は。

▷関連記事:コロナ融資の返済が難しい場合の対応

 

 

 

経済産業省は3月4日、金融庁、財務省と連携して「中小企業活性化パッケージ」を策定しました。コロナ禍の資金繰り支援を継続しつつ、中小企業の収益力改善・事業再生・再チャレンジを促す総合的な支援策を展開します。新たな「中小企業の事業再生等のガイドライン」を策定・活用するほか、事業再構築補助金に補助率の高い「回復・再生応援枠」も創設します。

中小企業活性化パッケージでは、コロナ禍の資金繰り支援を継続しながら、中小企業の収益力改善・事業再生・再チャレンジを促す総合的な支援策が展開されています。

 

コロナ資金繰り支援の継続、年度末の資金需要への対応

①年度末の年度末の事業者の資金繰り支援等のための金融機関との 意見交換・要請

②セーフティネット保証4号の期限を2022年6月1日までに延長

 

来年度以降の資金需要への対応

①実質無利子・無担保融資、危機対応融資の期限を2022年6月1日までに延長

②日本政策金融公庫の資本性劣後ローンを来年度末までに延長

③納税や社会保険料支払いの猶予制度の積極活用・柔軟な運用の継続

 

中小企業の収益力改善・事業再生・再チャレンジの総合的支援

収益力改善フェーズ

①認定支援機関による伴走支援の強化

DD・計画策定支援費用およびモニタリング費用で補助上限200万円から300万円に増額

②中小企業活性化協議会(旧中小企業再生支援協議会)による収益力改善支援の強化

現行の特例リスケジュール支援が名称および内容を拡充して継続

 

事業再生フェーズ

①再生ファンドの拡充

コロナの影響が大きい業種(宿泊、飲食等)を重点支援するファンドの組成等

②事業再構築補助金に「回復・再生応援枠」を創設

通常よりも補助率を引き上げ(補助率3/4(中堅2/3))

③中小企業の事業再生ガイドラインの策定

私的整理を支援する支援制度で、専門家費用等の補助率2/3、補助上限は伴走支援費用を含む700万円

 

再チャレンジフェーズ

①経営者の個人破産回避のルール明確化

経営者保証ガイドラインに基づく保証債務整理に対して金融機関が誠実に対応するとの考え方を明確化

②再チャレンジに向けた支援の強化

中小機構の人材支援事業を廃業後の経営者まで拡大

 

 

 

[関連リンク]

中小企業活性化パッケージを策定しました (meti.go.jp)

中小企業の事業再生等に関するガイドライン(令和4年3月)

事業再構築支援のご案内|事業再構築補助金(meti.co.jp)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

[新型コロナウイルスに関するM&A・事業再生の専門家の視点]

大手企業の下請けを主な生業としていますが、どのようなことに気を付けたらよいでしょうか。

 

〈解説〉

公認会計士・中小企業診断士  氏家洋輔

 

 

▷関連記事:コロナ融資の返済が難しい場合の対応

▷関連記事:コロナ禍における飲食店の事業再生の現状

▷関連記事:法的整理と私的整理の比較

 

 

 

大手企業と古くから関係を築いてきた一次受け企業の場合、他の中小企業と比較するとある程度安定した高い報酬を得ているケースが多いです。これは、大手企業と中小企業の関係の歴史的な背景であったり、中小企業の技術力や品質等の強みがあったりする場合などの要因によるかと思います。

 

大手企業からの受注の拡大に併せて、中小企業も規模を拡大し対応することで、中小企業にとっての大手企業への取引依存度(全ての売上に対する大手企業への売上の割合)が高くなっている企業が多いように感じます。

 

大手企業への販売依存度が高い企業の場合、大手企業からの受注が減少すれば、中小企業の経営に与えるインパクトは大きくなります。さらに、あろうことか取引の打ち切りとなれば、中小企業は一気に経営が立ち行かなくなってしまいます。

 

特定の企業に対する取引依存度が高いことは、経営上の重大なリスクとなることは経営学の基本的な考え方ですが、大手企業と良い関係を続けてきた中小企業にとっては、リスクを考えて事前に行動に移すことが難しいことも事実です。

 

大手企業からの取引の縮小の申し出や、取引の打ち切りの話は、昔からよくあることですが、近年では新型コロナウイルスの影響による大手企業の業績の変化や、方針転換等により、このような事態となった企業が増加しているように思います。

 

大手企業から中小企業への取引の見直しにかかる通知は、突然行われ、しかも条件の見直しや、取引の停止は、数か月程度の猶予しか与えられないケースが多いです。数か月の猶予では中小企業はできることは限られるため、このような事態に備えて事前に対応策を検討・実行することがリスクの低減のためには必要です。

 

事前の対応策としては、自社の強みを生かして新規の企業や取引の少ない企業からの受注を獲得し、大手企業の取引依存度を減少させる取り組みを実施することや、固定費の割合を減少させ変動費の割合を高くする等が考えられます。事後的な対応としては、当該大手企業との交渉や、他の取引先、経営が一気に苦しくなる場合には金融機関も巻き込んだ交渉が必要になる場合があります。

 

このような場合には、信頼できる専門家に相談をするなどし、経営の危機を一緒に乗り越えていくことが必要となります。

 

 

 

 

 

 

 

 

[新型コロナウイルスに関するM&A・事業再生の専門家の視点]

コロナ融資の返済が難しい場合の対応

 

〈解説〉

公認会計士・中小企業診断士  氏家洋輔

 

 

▷関連記事:コロナ禍における飲食店の事業再生の現状

▷関連記事:新型コロナ特例リスケジュールの実務について

▷関連記事:法的整理と私的整理の比較

 

 

 

 

2020年の4月頃から新型コロナウイルス感染症特別貸付等(以下、コロナ関連融資)を多くの企業が借り入れました。返済期間や返済猶予期間は企業によって様々ですが、借入後1年から3年の返済猶予となっているケースが多く、早い会社では2021年の4月頃より返済が始まっています。

 

コロナ関連融資は国の制度として多額の予算をもって行われたため、通常の融資よりも借りやすく、通常の融資であれば断られる企業であっても借りることができました。通常銀行は、借入をする企業の返済能力を総合的に判断して貸し付けますが、通常の融資の場合はこれ以上の借入は難しいと判断されるような企業にもコロナ融資であれば貸し付けています。

 

企業側から見ると、返済能力以上の借入をしたということになります。既往の借入金に加え、コロナ関連融資を加えた返済を行う必要があります。

 

コロナ融資を借りた時は、緊急事態宣言等もあり、借りなければ立ち行かなくなるような状況の企業が多かったと思います。そして、1年後の返済開始のタイミングとなって、業績がコロナ前と同等かそれ以上となっている企業はありますが、まだまだ多くないのが現状です。コロナ前では既存の借入金の返済で精いっぱいだった企業にとっては、業績がコロナ前よりもよくなっていないとコロナ融資の返済まで資金が回りません。

 

つまり、下記の企業はコロナ融資の返済ができないのです。

 

①コロナ前から業績が芳しくなく、コロナ融資を借りたが、業績はコロナ前と比べて改善していない。

②コロナで業績が厳しくなり、コロナ融資を借りたが、コロナが収束せず業績はコロナ前にまで戻っておらず、既往の借入の返済で手一杯。

 

 

返済ができない場合に、取ってほしくない行動は、社保や税金の延滞、仕入先への支払いの延滞、給料の未払等です。これらを行うと、このQ&Aでは詳細は割愛しますが、最悪の場合、会社の存続が難しくなる可能性があるためです。

 

返済ができなくなった場合は、身近なコンサル、金融機関、再生支援協議会等に相談しましょう。返済の猶予(リスケ)や、返済の免除、新たな借入などを行える場合があります。従来では、リスケを実施することも大変な労力が必要でしたが、コロナ禍の現状ではまだ特例リスケという制度が存在しており、特例リスケであれば通常のリスケと比較して、少ない労力、費用で返済の猶予が可能となるため、検討することをお勧めいたします。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

[新型コロナウイルスに関するM&A・事業再生の専門家の視点]

コロナ禍における飲食店の事業再生の現状

 

〈解説〉

公認会計士・中小企業診断士  氏家洋輔

 

 

 

▷関連記事:コロナ禍における飲食店の売上高や今後の考察。

▷関連記事:法的整理と私的整理の比較

▷関連記事:外食産業に関する実態調査(2021年1月公開分)

コロナ禍において、緊急事態宣言やまん延防止等重点措置の中での休業や時間短縮営業等、飲食店の経営環境は厳しい状況となっています。

 

営業時間短縮に係る感染拡大防止協力金等の支援が制度としてはあるものの、これらがスピーディに支払われるわけではありません。例えば、1月の協力金について、5月のこの本稿作成時点において、まだ支払われていない事業者があることも事実です。小規模店舗の多くの事業者は、1日6万円の協力金を受け取ることで「利益」では黒字となります。しかし、「利益」では黒字であっても、協力金が入金されるまでに家賃の支払いや経費の支払いなどが発生しているため、「資金繰り」の観点からは、入金がなく、支払いが先行することで資金残高はどんどん減少していく状況です。このような状況から、窮境に陥る飲食店は多く、既に閉店してしまった飲食店も少なくありません。

 

このような状況の飲食店が事業再生を行う場合は、施策を講じて赤字額を減少させ、コロナが落ち着くまで耐えるという方法を取らざるを得ないのが現状です。上で述べたように、時短要請等の最中は資金繰りが苦しくなるため、一定程度の資金を調達して資金残高が減少しないようにすることが非常に重要となります。筆者が関与した飲食店の場合も、資金繰りが苦しかったため億単位の資金を調達し、資金繰りを安定させたうえで施策を講じるということとなりました。ただし、この厳しい状況で新たな融資を受けることはハードルが高いことも事実です。金融機関には、誠実な態度で現状の共有と、今後の事業計画について丁寧に根気強く説明する必要があるでしょう。

 

現状の把握として、店舗別に損益を把握し、赤字店舗については撤退も含めてより詳細に分析を行う必要があります。しかし、赤字であるからと言っても、内装や設備について長期のリース契約を締結している場合があり、これらの多くは解約時に多額の違約金が必要となることから、違約金も含めたうえで検討する必要があります。

 

赤字額を減らすためには、売上を増加させるために、すでに多くの店舗で行われていますが、テイクアウトや宅配、ゴーストレストラン等を検討し、売上を確保しつつ、経費の削減によりコロナが落ち着くまで持ちこたえるということが必要です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

[新型コロナウイルスに関するM&A・事業再生の専門家の視点]

東京都家賃等支援給付金 ~国の家賃支援給付金とは別に、東京都で独自の家賃支援等給付金の制度があります~

 

〈解説〉

公認会計士・中小企業診断士  氏家洋輔

 

 

▷関連記事:家賃支援給付金の詳細情報が公表(2020年7月7日)。制度内容は、給付額は、申請方法は。

▷関連記事:コロナ禍における飲食店の売上高や今後の考察。

▷関連記事:新型コロナ対策融資と特例リスケ ~事業再生の専門家の観点から~

 

 

 

国の家賃支援給付金とは別に、東京都で独自の家賃支援等給付金の制度があります。国の家賃支援給付金は受給したものの、東京都の家賃支援等給付金の存在を知らず、申し込んでいない事業者が多いため改めて制度の説明をさせていただきます。

 

■制度概要

事業者における家賃等の負担を軽減し、事業の継続を下支えするため、国の家賃支援給付金に東京都が独自の上乗せ給付(3 か月分)を実施します。ただし、都の給付金は都内の物件の家賃等を対象としており、都外の物件の家賃等は、対象となりません。

 

「東京都家賃等支援給付金」の申請には、国の「家賃支援給付金」の給付通知を受けていることが必要です。まずは、国へ「家賃支援給付金」を申請し、国から給付通知を受けた後に、「東京都家賃等支援給付金」を申請する必要があります。なお、「東京都家賃等支援給付金」は都内の物件の家賃等を対象となる点留意が必要です。

 

 

■支援対象者

東京都家賃等支援給付金の申請要件は、次の全ての要件を満たす事業者となります。

 

●国の家賃支援給付金の給付通知を受けていること

●都内に本店または支店等のある中小企業等又は個人事業主であること

●都内の土地又は建物において、自らの事業のために他人の所有する土地又は建物を直接占有し、使用及び収益をしていることの対価として、家賃等の支払いを行っていること。

 

 

■給付額

給付額 = 基準額 × 給付率 × 3か月分

 

基準額とは国の家賃支援給付金の対象となった都内物件の家賃等の総額(月額)を言います。給付率は以下の算定方法となります。

 

 

【中小企業等】

(75万円以下)

Ⓐ基準額×給付率(1/12)×3

※最大給付額は187,500円となります。

 

(75万円超)

Ⓐ+{(基準額-750,000)×給付率(1/24)}×3

※最大給付額は375,000円となります。

 

 

出所:東京都

 

 

 

【個人事業主】

(37万5千円以下)

Ⓐ基準額×給付率(1/12)×3

※最大給付額は93,750円となります。

 

(37万5千円以下)

Ⓐ+{(基準額-375,000)×給付率(1/24)}×3

※最大給付額は187,500円となります。

 

 

出所:東京都

 

 

 

なお、制度の詳細については以下の東京都のwebサイト等でご確認ください。

https://tokyoyachin.metro.tokyo.lg.jp/

 

 

 

 

 

 

 

 

 

[新型コロナウイルスに関するM&A・事業再生の専門家の視点]

コロナ禍における飲食店の売上高や今後の考察。

 

〈解説〉

公認会計士・中小企業診断士  氏家洋輔

 

 

▷関連記事:新型コロナ対策融資と特例リスケ ~事業再生の専門家の観点から~

▷関連記事:新型コロナウイルス対策として導入された制度のまとめと感じたこと

▷関連記事:外食産業に関する実態調査(2021年1月公開分)

 

 

 

新型コロナウイルス感染症に伴う緊急事態宣言による影響で様々な業界・業種で影響がでています。

中でもコロナの影響が甚大であった業界の1つが飲食店となります。飲食店をファーストフード、ファミリーレストラン、パブレストラン/居酒屋、ディナーレストラン、喫茶店に分類した場合の売上高の前年同月比は以下の推移となります。

 

 

出典:日本フードサービス協会

 

 

 

飲食店全体として、2020年3月より売上高の減少が始まり、4月の売上高は前年同月比の約60%となっています。最も低くなったのはパブレストラン/居酒屋で、前年同月比は約10%にまで落ち込みました。5月、6月ではやや回復はしているものの、4月と同様に前年同月比では大幅なマイナスとなっています。

 

上図を見ると、お酒の提供が比較的多くなるパブレストラン/居酒屋や、ディナーレストランの落ち込みが顕著であることに対して、お酒の提供が少なくコロナ以前よりテイクアウトが定着していたファーストフードでは落ち込みは限定的となりました。

 

ファーストフード以外でも、今後テイクアウトの拡充や、客数の回復等によりある程度の売上高回復は見込めるでしょう。テイクアウト需要の拡大により、従前よりむしろ売上高が拡大する飲食店も少なからずあるかもしれません。

 

今後、コロナ騒動がある程度収束に向かっても、アルコール消毒や店内の換気、アクリル板や席数の減少等によるソーシャルディスタンス対応はしばらく継続するものと思われます。

 

その中でも、席数の減少のインパクトが非常に大きいと考えています。アクリル板等での対応は初期的に投資をすれば追加で費用は発生せず、アルコール消毒の経費の影響は軽微であり、また国の制度等の活用も可能です。ところが、密集した店内であった場合等、ソーシャルディスタンスを保つための席数の減少は、潜在的な客数が戻ったとしても、売上客数の減少は免れません。

 

従前の客配置等にもよりますが、客席が従前の70%となった場合は、単純計算すると売上も70%としか見込めないことになります。一方で、人件費も70%とできれば良いですが現実的には難しく、家賃は従前と同じとなります。これに対して、テイクアウトにより売上減少分を補填する考え方もありますが、お酒を提供する飲食店にとっての利益の柱は飲み物代であるため、テイクアウトである程度売上高を獲得できたとしても、利益面ではやはり減少となります。

 

これに対して、席数を減らした分(客数が減少する分)客単価を増加させるため、値上げを行うという方法もあります。客数が減り空間が広くなるため、その空間に価値を感じられる人は値上げをしても問題ないかもしれませんが、一般的に消費者は値上げには敏感であるため値上げを行うのは最後の手段かもしれません。

 

コロナ禍において、時間の経過とともに外食需要はある程度回復するものの、席数の減少を余儀なくされる飲食店の利益は、コロナ前と同程度にまで回復することは厳しいと言わざるを得ません。新しい形でのサービスの提供等、試行錯誤することが今後の生き残りには必要であり、厳しい局面に立っていることは確かであり、飲食店の今後のビジネスを今一度見直す必要があると思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

[新型コロナウイルスに関するM&A・事業再生の専門家の視点]

新型コロナ特例リスケジュールの実務について

 

〈解説〉

公認会計士・中小企業診断士  氏家洋輔

 

 

▷関連記事:新型コロナ対策融資と特例リスケ ~事業再生の専門家の観点から~

▷関連記事:新型コロナウイルス対策として導入された制度のまとめと感じたこと

▷関連記事:家賃支援給付金の詳細情報が公表(2020年7月7日)。制度内容は、給付額は、申請方法は。

 

制度概要


新たに新型コロナウイルス感染症の影響を受けた中小企業者に対して、中小企業再生支援協議会が窓口相談や金融機関との調整を含めた、新型コロナウイルス感染症特例リスケジュール計画策定支援を行います。

 

 

●一括して既存債務の元金返済猶予要請

中小企業再生支援協議会が中小企業者に代わり、主要債権者の支援姿勢を確認の上で、一括して1年間の元金返済猶予の要請を実施します。

 

 

●資金繰り計画策定における金融機関調整

中小企業再生支援協議会が中小企業者と主要債権者が作成する資金繰り計画の策定を支援します。複数の既往債権者が存在する場合、新規融資を含めた金融機関調整を行った上で、既往債権者の合意形成をサポートします。

 

 

●資金繰りの継続サポート

中小企業再生支援協議会が、特例リスケジュール計画成立後も毎月資金繰りを継続的にチェックし、適宜助言します。

 

 

実務


中小企業者は、まず各都道府県の中小企業再生支援協議会に相談に行き、中小企業再生支援協議会の担当者に対して事業の説明や現状の説明を行います。財務諸表や資金繰り表も併せて提出した上で、中小企業再生支援協議会からの支援決定の連絡を待ちます。

 

支援決定となった場合、特例リスケの予定期間(この先1年2か月程度)の損益計画と資金繰り予定表を作成し、これを中小企業再生支援協議会の担当者に提出します。しかし、損益計画や資金繰り予定表は簡単に作れるものではないため、場合によっては専門家を紹介され、専門家の支援の下で作成します。

 

損益計画と資金繰り予定表を中小企業再生支援協議会の担当者にチェックをしてもらい、大丈夫であれば、中小企業者の債権者(銀行等)に対して、中小企業再生支援協議会から、特例リスケジュールの要請がなされます。各債権者から同意を得ることで特例リスケジュールの成立となります。

 

特例リスケジュールの成立後は、資金繰り表を毎月更新し、中小企業再生支援協議会の確認の上、各債権者に提出します。特例リスケジュールの期限となる1年後に、基本的には再度中小企業再生支援協議会により事業再生の支援に入ることとなります。

 

 

 

 

 

 

 

 

[新型コロナウイルスに関するM&A・事業再生の専門家の視点]

家賃支援給付金の詳細情報が公表(2020年7月7日)。制度内容は、給付額は、申請方法は。

 

〈解説〉

公認会計士・中小企業診断士  氏家洋輔

 

 

▷関連記事:新型コロナ対策融資と特例リスケ ~事業再生の専門家の観点から~

▷関連記事:新型コロナウイルス対策として導入された制度のまとめと感じたこと

▷関連記事:東京都家賃等支援給付金 ~国の家賃支援給付金とは別に、東京都で独自の家賃支援等給付金の制度があります~

 

1、制度概要


新型コロナウイルス感染症を契機とした5月の緊急事態宣言の延長等により、売上の急減に直⾯する事業者の事業継続を下支えするため、地代・家賃(賃 料)の負担を軽減することを目的として、テナント事業者に対して「家賃支援給付金」を支給されます。

 

2、支給対象者


(1)2020年4月1日時点で、次のいずれかにあてはまる法人であること

●資本金の額または出資の総額が、10億円未満であること

●資本金の額または出資の総額が定められていない場合は、常時使用する従業員の数が2,000人以下であること。

 

(2) 2019年12月31日以前から事業収入を得ており、今後も事業を継続する意思があること。(持続化給付金と同様に創業特例等があります)

 

(3) 2020年5月から2020年12月までの間で、新型コロナウイルス感染症の影響など により、以下のいずれかにあてはまること。

①いずれか1カ月の売上高が前年同月比で50%以上減少

②連続する3ヶ月の売上高が前年同期比で30%以上減少

 

(4)他人の土地・建物をご自身で営む事業のために直接占有し、使用・収益(物を直接 に利活用して利益・利便を得ること)をしていることの対価として、賃料の支払いをおこなっていること。

 

 

3、給付額の算定の基礎となる契約・費用


以下の契約・費用が給付額算定の基礎となります。

 

※1)賃貸借契約以外の形式での契約の場合は確認に時間が必要となるようです。

※2)地代家賃として税務申告しているなど、申告者自らの事業のために使用・収益する部分についてのみ対象

※3)共益費、管理費が賃料について規定された契約書と別の契約書に規定されている場合は給付額算定の対象外となります。

※4)契約書において、賃料と、これら以外の費用が項目ごとに区分されておらず、賃料として一括計上されている場合には、給付額の算定の基礎に含むことがあります。

※5)賃料及び共益費管理費には消費税を含みます。

上記の※4に記載されている内容によって、シェアオフィス等の水道光熱費やオフィスの受付の人件費等が賃料に含まれている契約も対象になるものと思われます。

 

4、給付額の算定根拠となる契約期間


給付の対象となるのは以下の全てに当てはまることが条件となります。

 

①2020年3月31日時点で有効な賃貸借契約があること。

②申請日時点で有効な賃貸借契約があること。

③申請日より直前3ヵ月間の賃料の支払い実績があること。

 

※1)2020年3月31日から申請日までの間に、引越し、再契約、契約更新等がある場合はそれらの内容を証明する資料が必要となります。

※2)又貸しを目的とした取引、自己取引(会社と代表取締役等)、親族間(一親等以内)取引については対象外となります。

 

5、給付額


申請時の直近の支払賃料(月額)に基づいて算出される給付額(月額)を基に、6カ月分の給付額に相当する額が支給されます。

 

6、算出方法


①法人の場合

1カ月分の給付の上限額は100万円となります。

 

支払家賃(月額)75万円までの部分が2/3給付で、支払家賃(月額)75万円の場合は給付額(月額)50万円となります。家賃の支払額が75万円を超える場合は、75万円を超える部分が1/3給付となります。支払家賃(月額)225万円で上限の給付額(月額)100万円になります。6カ月分では600万円が給付の上限額となります。

 

出典:経済産業省「令和2年度第2次補正予算の事業概要」

 

 

 

②個人事業主の場合

1カ月分の給付の上限額は50万円となります。

 

支払家賃(月額)37.5万円までの部分が2/3給付で、支払家賃(月額)37.5万円の場合は給付額(月額)25万円となります。家賃の支払額が37.5万円を超える場合は、37.5万円を超える部分が1/3給付になるため、支払家賃(月額)112.5万円で上限の給付額(月額)50万円になります。6カ月分では300万円が給付の上限額となります。

 

出典:経済産業省「令和2年度第2次補正予算の事業概要」

 

 

※1)複数月数の賃料をまとめて支払っている場合には、申請日の直前の支払いを1ヵ月分に平均した金額が算定の基礎となります。

※2)2020年4月1日以降に賃料に変更があった場合、2020年3月31日時点で有効か賃貸借契約書に記載されている1か月分の金額と比較し、低い金額を給付額の算定の基礎とします。つまり、20203月の賃料申請月の前月の賃料の、いずれか低い家賃が給付額の算定の基礎となります。

※3)家賃が月ごとに変動する場合、20203月の賃料申請月の前月の賃料の、いずれか低い金額が給付額の算定の基礎となります。

 

 

7、申請書類


申請書類は持続化給付金の申込時に必要な書類(③④)に①②の書類が追加されます。

 

①賃貸借契約の存在を証明する書類(賃貸借契約書等)

②申請時の直近3か月分の賃料支払実績を証明する書類(銀行通帳の写し、振込明細書等)

③本人確認書類(運転免許証等)

④売上減少を証明する書類(確定申告書、売上台帳等)

 

8、申請期間


2020年7月14日から2021年1月15日までの間

(なお、給付額は申請時の直近1ヵ月における支払家賃等に基づき算定されます。)

 

 

9、対象範囲の例示


①自己保有の土地・建物について、ローン支払いについては対象外となります。

②個人事業主の「自宅」兼「事務所」の家賃は、確定申告書における損金計上額等、自らの事業に要する部分について対象となります。

③駐車場や資材置き場等として、事業に用している土地の賃料等の借地の賃料は対象となります。

④管理費は共益費については、賃貸借契約において賃料と一体的に取り扱われている等一定の場合に対象となります。

⑤地方自治体から賃料支援を受けている場合は、対象ではあるものの、給付額の算定に際して考慮 される場合があります。

 

10、申請方法


PCやスマートフォンで家賃支援給付金ホームページにアクセスし、WEB上で申請します。WEB上での申請が困難な場合は、申請サポート会場での申請が可能となっています。

 

新型コロナウイルスの影響で売上高が減少している事業者にとって、固定費である家賃の支援となる家賃支援給付金は非常に重要です。これらの制度を正確に理解して、自社にとって最も良いタイミングで申請を行いましょう。

 

また、上記では家賃支援給付金の概要を記載しておりますが、詳細な情報や最新の情報は経済産業省等のWEBサイトにて確認頂くようにお願いいたします。

 

 

 

 

 

 

 

 

[新型コロナウイルスに関するM&A・事業再生の専門家の視点]

新型コロナ対策融資と特例リスケ ~事業再生の専門家の観点から~

 

〈解説〉

公認会計士・中小企業診断士  氏家洋輔

 

 

 

 

新型コロナの影響で、経験したことがないような売上減少で、何をすればよいか悩んでいる企業も多いと思います。そんな中での新型コロナ対策融資および特例リスケは、企業にとって助けになるでしょう。しかし、その後の経営や金融機関との付き合い方についても不安になっている企業経営者も多いと思います。そこで、事業再生の専門家の観点から、コロナ対策融資と特例リスケについて下記に記載いたしました。

 

 

▷関連記事:「M&Aの検討段階における新型コロナウイルス等による影響」とは?

▷関連記事:新型コロナ特例リスケジュールの実務について

▷関連記事:東京都家賃等支援給付金 ~国の家賃支援給付金とは別に、東京都で独自の家賃支援等給付金の制度があります~

1. 概要

新型コロナの影響で、売上が減少している場合、まずは自社の資金繰りを把握しましょう。経営で利益を獲得することはとても重要なことですが、会社が危機の状況に陥った時は、利益よりも第一に資金繰りを検討するようにします。

 

資金繰りを把握し、対策が必要な場合、まずは情報収集を行いましょう。新型コロナ関連で、企業の資金繰りにとって助けになるものとして、「新型コロナ対策融資等で新たな借入」と「現状の借入金の返済猶予(リスケ)」の大きく2つあります。 新型コロナ対策融資および特例は、インターネット上で情報の収集が可能です。しかし、初めてのことなので難しいと感じる場合には専門家等に相談してみましょう。特に特例リスケについては、借入とは違いほとんどの企業が初めての行うことなので、事業再生の専門家等に相談してみましょう。

 

資金の手当てができたら、損益改善を検討します。現状の自社の状態を正確に把握して、改善点を把握の上、施策を検討します。

 

 

2. 資金繰り表の作成

まずは現在および将来の資金繰りを把握しましょう。当たり前ですが、会社はお金がなくなったら事業を続けることができません。このような非常事態には、利益よりも現金を意識しましょう。まずは会社が生き延びることが重要です。

 

資金繰り表を作成していない会社は、まずは資金繰り表を作成する必要があります。普段から資金繰り表を作成している企業であっても、コロナの影響を受けている、又は受ける可能性が高い場合は、それらを織り込んだ資金繰り表に修正しましょう。作成方法が分からない場合は、専門家に相談してみましょう

 

3. 資金繰りの把握

資金繰り表が完成したら、現状の経営状態で、資金はいつごろまで持ちそうなのか(いつの支払いが厳しくなりそうか)を確認します。もし今月や来月等、数か月以内での支払いが厳しいことが想定される場合には、資金繰り表を日次で作成し、具体的に何日の支払いが厳しいのかを把握します。

 

4. 資金繰り対応

資金繰りの把握ができたら、対策を検討します。いつ、どのくらいの資金が不足しそうなのかを前提として、経費の削減で賄えそうか、借入を行うのか、返済猶予(リスケ)を行うのか等を検討します。

 

経費の削減を行う場合には、経営の軸を持ったうえでどの経費を削減できるかを検討しましょう。誤った削減をすると、今後の事業運営に支障をきたす場合があるため注意が必要です。

 

借入を行う場合、通常時は資金繰りが苦しい会社は、新たな借り入れを行えない(銀行がこれ以上融資できない)場合が多いですが、新型コロナの影響を受けている場合には、新たな借入を行える可能性があります。

 

返済猶予(リスケ)とは、既存の借入の返済を一定期間行わないことです。2020年4月6日に「新型コロナウイルス感染症特例リスケジュール」(特例リスケ)が公表されました。こちらは、既存の借入額を1年間返済を行わないことが可能な施策となります。既存の借入額が大きい場合や、短期借入金が多く、1年以内の返済が多額となる場合には、資金繰りにとって非常に効果的な手法となります。しかし、返済猶予(リスケ)を行うことは、金融機関にとっても重要な事項となるため、可能な限り専門家を巻き込んで行うようにしましょう。

 

 

(ア)コロナ対策融資

コロナ対策融資はいくつか種類があり、要件も若干異なります。とは言え、公庫等の金融機関は現在非常時モードになっており、新型コロナの影響を被っている企業を迅速に救済すべく、平時に比べて積極的に融資を行っています。誤解を恐れずに申し上げると、「コロナの影響がある企業に対しては通常時の融資とは別枠」との捉え方でよいと思います。そのため、コロナの影響がある前に融資を断られた場合でも、コロナ対策融資は受けられる可能性があります。

 

また、一定の条件を満たした場合には実質無利息で借りられるため、現時点で資金繰りに困っていなくても、安全資金として借入する事も選択肢として検討した方がよいでしょう。新型コロナの状況は先行き不透明であり、さらなる業績悪化の可能性も否定できない状況です。事業再生の専門家の立場からは、手元に資金をどの程度保有しているかが会社の存続のために重要です。コロナの影響がある場合には、安全資金を確保する目的で、この機会に借入を検討し手元資金を厚くすることをお勧めします。

 

 

(イ)コロナ対策融資の内容

コロナ対策融資は情報がたくさんありすぎて混乱してしまう方も多いと思いますが、経済産業省の説明ページが分かりやすくまとまっていると思います。

https://www.meti.go.jp/covid-19/pdf/pamphlet.pdf

 

出典:経済産業省ウェブサイト(https://www.meti.go.jp/covid-19/pdf/pamphlet.pdf

 

■新型コロナウイルス感染症特別貸付(日本政策金融公庫)

https://www.jfc.go.jp/n/finance/saftynet/covid_19.html

■商工中金による危機対応融資(商工組合中央金庫)

https://www.shokochukin.co.jp/disaster/corona.html

 

 

【支援対象者】

新型コロナウイルス感染症の影響を受けて一時的な業況悪化を来たし、次の①または②のいずれかに該当する方

 

①最近1ヶ月の売上高が前年、又は前々年の同期と比較して5%以上減少した方

②業歴3ヶ月以上1年1ヶ月未満の場合等は、最近1ヶ月の売上高が、 次のいずれかと比較して5%以上減少している方

a 過去3ヶ月(最近1ヶ月を含む。)の平均売上高

b 令和元年12月の売上高

c 令和元年10月~12月の売上高平均額

 

※個人事業主(事業性のあるフリーランスを含み、小規模に限る)は、影響に対する定性的な説明でも柔軟に対応してもらえるようです。

 

 

 

■特別利子補給制度

https://www.jfc.go.jp/n/finance/saftynet/pdf/covid_19_faq_jisshitsumurishika_chusho.pdf

 

特別利子補給制度は、日本政策金融公庫等の「新型コロナウイルス感染症特別貸付」若し くは商工中金による「危機対応融資」により借入を行った中小企業者等のうち、特に影響の大きい事業性のあるフリーランスを含む個人事業主、また売上高が急減した事業者などに対して、利子の全部又は一部を給付するものです。

 

【支援対象者】

日本政策金融公庫等の「新型コロナウイルス感染症特別貸付」若しくは商工中金による「危機対応融資」により借入を行った中小企業者のうち、以下の要件を満たす方

 

①個人事業主(事業性のあるフリーランス含み、小規模に限る):要件なし

②小規模事業者(法人事業者) :売上高▲15%減少

③中小企業者(上記➀➁を除く事業者):売上高▲20%減少

※小規模要件 ・製造業、建設業、運輸業、その他業種は従業員20名以下 ・卸売業、小売業、サービス業は従業員5名以下

 

 

 

 

出典:経済産業省ウェブサイト(https://www.meti.go.jp/covid-19/pdf/pamphlet.pdf

 

・セーフティネット保証4号・5号

https://www.chusho.meti.go.jp/kinyu/sefu_net_gaiyou.htm

・危機関連保証

https://www.chusho.meti.go.jp/kinyu/sefu_net_crisis.htm

 

 

(ウ)特例リスケ

コロナの対策においては新たな融資に焦点が当たっているように見えますが、2020年4月6に公表された特例リスケも非常に効果があります。こちらは、新型コロナの影響で業績が悪化している企業に対して、1年間の返済猶予を行うものです。

 

特例リスケは、コロナ対策融資と比較して、支援対象者がやや複雑となっておりますが、既存借入の返済猶予を受け、さらに新たに金融機関から融資を受けられる可能性があるため、企業にとっては非常にありがたい施策となります。窓口は、各都道府県において事業再生の支援を行っている中小企業再生支援協議会となります。

 

【支援対象者】

新型コロナウイルス感染症の影響を受けて一時的な業況悪化を来たし、次の①または②のいずれかに該当する方

 

①最近1ヶ月の売上高が前年、又は前々年の同期と比較して5%以上減少した方

②業歴3ヶ月以上1年1ヶ月未満の場合等は、最近1ヶ月の売上高が、 次のいずれかと比較して5%以上減少している方

a 過去3ヶ月(最近1ヶ月を含む。)の平均売上高

b 令和元年12月の売上高

c 令和元年10月~12月の売上高平均額

 

上記の要件を満たし、かつ下記の条件を満たす必要があります。

a 今後6か月間の資金繰りの見通しが認められること

b 金融機関又は政策金融機関から融資を受けることができれば、 今後6か月間の資金繰りの見通しが認められること

c 統括責任者又は統括責任者補佐が、相談企業の業種・ 業界の性質に応じ、相談企業の元金返済猶予の要請を行うことが 事業改善に向けて有用であると判断した場合

 

5. 資金繰り対応の後

借入等を行って、当面の資金繰りが確保できた場合、又は資金繰り確保と並行して損益改善を検討しましょう。まずは、自社の状況を正確に把握する必要があります。正確に把握することで、改善点が見つかることが多いです。改善施策を検討するにあたっては、何が会社にとって重要であるのかを軸として、優先度の高いもの、効果が大きいものから順に取り組んでいくことで、損益改善を目指します。これらを事業計画に織り込んで、損益だけでなくキャッシュフローも含めてシミュレーションすることが重要です。

 

資金繰りが苦しい時に、コロナ対策融資・特例リスケの相談はもちろんですが、業績の下降時における金融機関との付き合い方や経営改善まで総合的に相談できる事業再生の専門家に活用してみてはいかがでしょうか。

 

 

 

※最新の詳細情報は各HP等にて必ずご確認ください。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

[新型コロナウイルスに関するM&A・事業再生の専門家の視点]

「M&Aの検討段階における新型コロナウイルス等による影響」とは?

 

〈解説〉

公認会計士・中小企業診断士  氏家洋輔

 

 

▷関連記事:新型コロナウイルス等による業績悪化を理由とした M&A ・事業売却

▷関連記事:家賃支援給付金の詳細情報が公表(2020年7月7日)。制度内容は、給付額は、申請方法は。

▷関連記事:【Q&A】経営状況が悪化した場合の定期同額給与 ~コロナウイルスの影響で大幅に売上高が落ち急激に業績が悪化、役員報酬の大幅な減額を検討~

 

 

M&Aを検討していますが、新型コロナウイルス等による影響はありますか?

新型コロナウイルスは、執筆時点(2020年3月末)において未だ収束の目途が立たず、世界的な混乱に陥っている状況です。このような状況下で、M&Aを検討あるいは既に進めている企業にとっては、どのような影響があるのか、どのように進めるのがよいか悩まれていることと思います。そこで、新型コロナウイルスによる影響を特にM&Aを行う観点からまとめました。

 

 

[関連解説]

■「新型コロナ対策融資と特例リスケ」 ~事業再生の専門家の観点から~

■「超速報!新型コロナウイルス対策税制」

■「新型コロナウイルス感染症に対する企業の意識調査」

■「コロナ対応としての中小企業経営の留意点」~コロナとその先へ~

 

①M&Aの見送り・延期

売手企業よりも、特に買手企業の方に影響がありますが、経営環境の先行き不透明感や株式市場の乱高下による混乱した社会情勢の中、M&Aを行うことに対して慎重な意見があります。このような意見が採用されて、M&Aを見送るあるいは混乱が落ち着くまで延期するといった経営判断をする会社が少なくない状況です。そのため、まずは会社の風土や経営判断を確認して、このような状況下でのM&Aに対する姿勢を把握する必要があります。

 

②輸出入等取引上の影響

新型コロナウイルスの影響で、売手企業の得意先や仕入先が直接的・間接的に海外(特に中国等)に依存している場合に、得意先や仕入先との取引が一時的に停止していることが考えられます。これらの事象の有無を正確に把握して、事象がある場合には、経営に対する影響を把握する必要があります。

 

飲食店や宿泊業等であれば、業績が悪化していることは容易に想像されます。それら以外の業種では、例えば仕入先からの仕入ができない状況であるならば、現状の在庫での販売は何か月可能か、仕入先の代替先はあるか、その他の手段はあるか等を確認の上、業績に与えるインパクトを把握する必要があります。

 

このように、既に業績悪化している。あるいは今後業績悪化の可能性がある場合には、譲渡金額へ反映する必要があります。

 

③従業員の在宅勤務等による稼働率の影響

新型コロナウイルスの影響で、従業員にどのような影響があるのかを把握します。現状の勤務状況等を把握して、今後在宅勤務となるような場合に、在宅勤務が可能な体制となっているかどうか等を確認します。在宅勤務等、通常とは異なった勤務形態をとった場合の、稼働率や効率性等を勘案し、業績への影響を検討する必要があります。

 

④株式市場の株価下落による価値評価への影響

新型コロナウイルスの混乱により日経平均株価は大きく下落している状況が続いています。譲渡金額の算定に、上場企業の株価を用いている場合には、どの時点の株価を用いているのかを確認する必要があります。評価の基準日(対象会社の直近の期末日又は試算表等の数値が把握可能な直近月末等)の株価を用いることが一般的であり、新型コロナウイルスの影響による下落前の株価を用いていることが想定されます。この株価の下落の影響を譲渡金額に織り込むかどうかを、買手企業と売手企業で交渉する必要があります。

 

 

 

 

新型コロナウイルスにより、様々な形で多くの企業の事業運営に影響があり、現在または将来の業績に影響を及ぼす可能性が非常に高くなっています。そのため、先行きが見通せない状況を嫌い、M&Aをそもそも見送る場合や延期する場合もあります。M&Aを行わない場合にも様々な影響がありますので、M&A担当者は、どのような影響があるのかを事前に把握した上で、交渉に臨む必要があります。