[M&A動向レポート](2022年2月)

■IT・ソフトウエア業界の2022年1月のM&A件数は過去最多も金額は3番目に

 

IT・ソフトウエア業界の2022年1月のM&A発表件数は20件で、1月としては2013年以降の10年間では、2020年(13件)を上回り過去最多となった。IT人材の不足や企業の合従連衡などを背景に、M&A市場が活発だった。

 

 

取引金額は137億7300万円で、こちらは1月としては2013年以降の10年間では、2019年(1229億2500万円)、2020年(439億1100万円)に次ぐ3番目となった。100億円を超える案件がなく、金額を公表した10件中8件が10億円未満だったため、件数ほどには金額が伸びなかった。

 

全上場企業に義務づけられた東証適時開示情報のうち、経営権の移転を伴うM&A(グループ内再編は除く)について、M&A仲介のストライク(M&A Online)が集計した。

 

金額トップはGMOインターネットの92億円

 

取引金額のトップは、ネット事業を手がけるGMOインターネットが、サイバーセキュリティー事業のイエラエセキュリティ(東京都渋谷区)の株式50%を取得し、子会社化することを決めた案件で、取得価格は92億6200万円。既存の電子認証、印鑑事業に加え、新たにサイバーセキュリティー事業に本格参入するのが狙い。

 

金額の2番目は、ネット事業のスカラが、システム開発のエッグ(鳥取県米子市)などグループ4社の全株式を取得し、子会社化することを決めた案件で、取得価格は10億600万円。グループの中核会社のエッグは、ふるさと納税制度に関する自治体側の基幹システムを初めて開発した企業で、導入自治体数は全国の3分の1にあたる約680に達するという。同社の子会社化で、地方創生、高齢者の健康といった社会課題を解決する取り組みを推進する。

 

金額の3番目は、電子書籍取り次ぎのメディアドゥが英現地法人を通じ、出版社向けWebサイト構築やEC(電子商取引)サービスの提供を手がける英国Supadü Limited(ロンドン)の全株式を取得し子会社化した案件で、取得価格は8億7400万円。出版、コンテンツ関連の海外ビジネスを強化するのが狙い。

 

このほかに8億円台、6億円台、3億円台がそれぞれ1件ずつと、2億円台、1億円台がそれぞれ2件ずつあった。金額非公表などは10件だった。

 

 

 

【IT・ソフトウエア業界の2022年1月のM&A】

 

 

 

 

 

 

 

情報提供元:株式会社ストライク

[M&A動向レポート](2022年2月)

■1月M&A、前年比10件増の64件 過去2番目の高水準

 

2022年1月のM&A件数(適時開示ベース)は前年同月比10件増の64件だった。1月として過去10年で2020年(74件)に次ぐ2番目の高水準。前年1月は新型コロナウイルス感染拡大を受けた2回目の緊急事態宣言と重なり、20件の大幅減となったが、2022年は好調な出足となった。一方、取引金額は2317億円(公表分を集計)で、前年(4374億円)のほぼ半分にとどまった。

 

 

上場企業の適時開示情報のうち経営権の移転を伴うM&A(グループ内再編は除く)について、M&A仲介のストライク(M&A Online)が集計した。
金額首位は日本製鉄が最大880億円を投じて、タイの電炉メーカー大手のGスチール、GJスチールの2社を子会社化する案件。これまで半製品を輸出して現地で加工していたが、今回の買収で東南アジアにおける一貫生産体制が整う。鉄スクラップを原料とする電炉は鉄鉱石から鉄を取り出す高炉に比べてCO2(二酸化炭素)の排出が抑えられ、脱炭素化を推し進める狙いもある。

 

金額2位は通信工事大手のミライト・ホールディングス(HD)。西武ホールディングス傘下で西武鉄道の直系子会社の西武建設(東京都豊島区)の株式95%を620億円で取得し、子会社化する。西武HDは経営改革としてアセットライト(資産圧縮)な事業運営を推進中で、グループで保有するホテルも売却を進め、運営に特化する姿勢を明確にしている。
ドラッグストア業界は今年も年初からM&Aが活発化している。最大手のウエルシアホールディングスが関西を地盤に約190店舗を展開するコクミン(大阪市)を子会社化すると発表した(金額は未確定)。また、クスリのアオキホールディングスは生鮮品の取り扱い強化を目的に、岩手県の地場食品スーパーの吸収合併を決めた。買付代金が最大714億円に上る片倉工業のMBO(経営陣による買収)は1月上旬、不成立に終わった。投資ファンドが関与しない過去最大規模のMBOとして注目されていたが、予定数まで株式を取得できず、株式の非公開化を断念し、一転、上場を維持することになった。

 

 

 


①日本製鉄

タイの電炉メーカー大手のGスチールとGJスチールを子会社化 (880億円)

 

②ミライト・ホールディングス

西武ホールディングス傘下の西武建設(東京都豊島区)を子会社化(620億円)

 

③ミニストップ

コンビニ事業の韓国子会社をロッテに譲渡(304億円)

 

④愛三工業

デンソーからフューエルポンプモジュール事業を取得(190億円)

 

⑤GMOインターネット

サイバーセキュリティー事業のイエラエセキュリティ(東京都渋谷区)を子会社化(92.6億円)

 

⑥リンテック

米Spinnakerからラベル用粘着紙・粘着フィルム事業を取得(46.6億円)

 

⑦ワールドホールディングス

J.フロントリテイリング傘下で人材サービス事業のディンプル(大阪市)を子会社化(37.8億円)

 

⑧ソラスト

都内で認可保育所を運営する「こころケアプラン」(東京都千代田区)を子会社化(33.4億円)

 

⑨ワールド

子供服大手のナルミヤ・インターナショナルをTOBで子会社化(33億円)

 

⑩トランコム

シンガポール物流会社Starlink Resourcesなど2社を子会社化(11.4億円)

 

 

 

 

 

 


情報提供元:株式会社ストライク

[M&A動向レポート]

■2021年TOB、3年連続で増加

 

 

2021年のTOB(株式公開買い付け)件数は前年比10件増の70件と、3年連続で増加した。リーマン・ショック後では2009年の79件、2008年の78件に次いで3番目に多かった。新型コロナウイルス感染症の影響が長引き、先行き不透明な中でTOBによる経営規模の拡大や新規事業への進出を狙う企業が増加。日銀の金融緩和などを背景に企業がTOBの費用を調達しやすい環境が続き、件数増を後押しした。

 

一方、取引金額は同73.3%減の1兆7100億円にとどまった。これは前年に3兆円を超えるNTTのNTTドコモに対する超大型TOBがあった反動減。前年は10件あった1000億円を超える大型TOBが3件と少なかったこともあり、金額は伸びなかった。敵対的TOBは過去最高だった前年と同じ5件となっている。

 

MBO(経営陣による企業買収)は前年比8件増の19件と、3年連続の増加となった。10件を超えたのは2年連続で、2008年以降では過去最高の2011年(21件)に次ぐ高水準。経営陣が株主の意向や短期的な株価の動向に左右されない成長戦略を採用したり、TOBによる敵対的買収を回避したりするため、MBOによる上場廃止を目指す動きが出ている。

 

TOBの総プレミアム平均は同3.46ポイント減の37.31%と、2年連続の減少に終わった。一方、ポジティブプレミアム平均は同3.39ポイント増の46.08%と4年連続で増加している。最もプレミアムが高かったのはTCSホールディングス(旧東京コンピュータサービス、東京都中央区)が11月15日に露出計の大手メーカーであるセコニックの非公開化を目的にTOBを実施すると発表した228.19%だった。

 

 

 

 

 


情報提供元:株式会社ストライク

[M&A動向レポート](2021年)

■IT・ソフトウエア業界の2021年のM&A件数は4年連続で過去最多を更新 金額も過去最高に

 

2021年のIT・ソフトウエア業界のM&A発表件数は163件で、2012年以降の10年間では、4年連続で過去最多を更新し、2021年の全業種のM&A件数877件の20%近くに達した。取引金額も大きく膨らみ、2012年以降の10年間で最高だった2016年の1兆2200億円強を大きく上回る2兆2400億円ほどに達し、過去最高を更新した。IT人材の不足に加えて、企業の選択と集中の動きが強まったことが背景にある。

 

全上場企業に義務づけられた東証適時開示情報のうち、経営権の移転を伴うM&A(グループ内再編は除く)について、M&A仲介のストライク(M&A Online)が集計した。

 

 

金額トップは日立の1兆422億円

 

2021年のIT・ソフトウエア業界の取引金額のトップは、日立製作所が米IT企業のグローバルロジック(カリフォルニア州)を子会社化するのに投じた1兆422億円で、全業種でも取引金額のトップになった。

 

グローバルロジックは、顧客企業の競争力強化のためのソフトウエアの設計や開発などを手がけており、世界14カ国に約2万人の従業員を抱える。日立は同社の子会社化で、ITやエネルギー、鉄道、モビリティー(移動手段)、ヘルスケアなどの先進的な社会インフラのDXを世界規模で加速するという。

 

金額の2位はパナソニックが、サプライチェーン・ソフトウエア企業の米ブルーヨンダー(アリゾナ州)の子会社化に投じた7830億円で、こちらは全業種の4位に入った。

 

ブルーヨンダーは3000社を超える顧客基盤を持ち、AI(人工知能)やML(機械学習)をベースとしたサプライチェーンマネジメント(SCM)サービスを提供している。パナソニックは、ブルーヨンダーの子会社化で、顧客企業の生産性向上などに向けたSCMサービスを強化し、世界規模で事業拡大につなげる計画だ。

 

 

MBO3件が金額上位10位内に

 

株式の非公開化を目的にしたMBO(経営陣による買収)は、4件(1件は不成立、2020年のMBOは1件)あり、このうち3件が取引金額上位10位までに入った。

 

最も取引金額が高かったのは、マッチングアプリ運営のイグニスが米投資会社のベインキャピタルと組んで実施するTOB(株式公開買い付け)に投じた262億円。

 

イグニスが主力とするスマートフォン向けアプリの開発や運営を巡る競争環境は目まぐるしく変化するため、非公開化して、機動的で柔軟な意思決定を可能にすることにした。MBOは成立し、同社は6月に上場廃止になった。

 

 

 


①日立製作所

米IT企業のグローバルロジックを子会社化 (1兆422億円)

 

②パナソニック

サプライチェーン・ソフトウエア企業の米ブルーヨンダーを子会社化 (7830億円)

 

③ソニーグループ

米国子会社のゲーム部門「GSN Games」を米スコープリーに売却 (1100億円)

 

④野村総合研究所

DXサービス大手の米Core BTSを子会社化 (523億円)

 

⑤ブリヂストン

車両運行管理サービスの米アズーガ・ホールディングスを子会社化 (428億円)

 

⑥楽天グループ

通信ネットワーク用ソフトウエア企業の米アルティオスター・ネットワークスを子会社化 (400億円)

 

⑦電通グループ

ネット広告大手のセプテーニ・ホールディングスを子会社化 (326億円)

 

⑧イグニス

米ベインキャピタルと組みMBOで株式を非公開化 (262億円)

 

⑨AOI TYO Holdings

米カーライル・グループと組んでMBOで株式を非公開化 (213億円)

 

⑩[不成立]パイプドHD

MBOで株式を非公開化 (143億円)

 

 


情報提供元:株式会社ストライク

[M&A動向レポート](2021年12月)

■12月M&A74件、飯田グループが600億円買収

 

021年12月のM&A件数(適時開示ベース)は前年同月比4件減の74件となり、2カ月連続で前年を下回った。前月(11月)比では3件減った。1~12月累計では877件と前年比28件の大幅増で、2年ぶりのプラスに転じるとともに、2008年のリーマン・ショック(870件)後の最多となった。

 

12月の取引金額は1416億円。100億円を超える大型案件が3件にとどまったことから、7月(488億円)に次ぐ低水準に。年間金額は8兆7121億円と前年を約2兆4500億円下回った。

 

上場企業に義務づけられている適時開示情報のうち、経営権の異動を伴うM&Aについて、M&A仲介のストライク(M&A Online編集部)が集計した。

 

 

12月の金額首位は約600億円を投じて、ロシア最大級の林産企業を傘下に置く持ち株会社ロシア・フォレスト・プロダクツ(RFP、英領バージン諸島)を買収する飯田グループホールディングスの案件。株式譲渡と第三者割当増資引き受けで株式75%を取得する。木材の安定的な調達体制を確立し、戸建分譲住宅事業の競争力を高めるのが狙いだ。

 

飯田グループは戸建分譲住宅で約3割の国内販売シェアを持つ業界最大手で、年間に4万6000戸以上を供給する。RFPはロシア極東のハバロフスク地方に約400万ヘクタール(九州の1.08倍)の林区を持つ。

 

12月は金額非公表ながら、注目される売却案件が少なくなかった。その一つは東急不動産ホールディングスによる傘下の生活雑貨大手、東急ハンズ(東京都新宿区)の売却発表。売却先はホームセンター最大手のカインズ(埼玉県本庄市)。カインズは地方の大型店を主力とし、都市型店舗の東急ハンズとの補完性を見込んでいる。

 

オリックスはクラウド会計ソフト「弥生シリーズ」で知られる弥生(東京都千代田区)を米投資ファンドのコールバーグ・クラビス・ロバーツ(KKR)に売却することを決めた。売却額は2500億円程度とみられる。オリックスが投資事業の一環として弥生を買収したのは2014年。投資資金を回収するイグジット(出口)の段階と判断したようだ。

 

オリンパスは生物顕微鏡、工業用顕微鏡など祖業の「科学事業」の売却を検討すると発表した。科学事業の直近売上高は958億円とそれなりの規模。同社は内視鏡と治療機器を中心とする医療分野に経営資源を集中させる方針に基づき、2020年にはデジタルカメラなどの映像事業を手放した。

 

 


①飯田グループホールディングス

ロシア最大級の林業グループを傘下に置く持ち株会社Russia Forest Products(英領バージン諸島)を子会社化 (600億円)

 

②東和薬品

米カーライル・グループ傘下で健康食品・医薬品受託製造の三生医薬(静岡県富士市)を子会社化 (476億円)

 

③三井住友建設

海上・水上杭工事のシンガポールAntara Kohを子会社化 (76億円)

 

④トランスジェニック

検査・解析事業子会社のジェネティックラボ(札幌市)をEurofinsの傘下企業に譲渡 (32.1億円)

 

⑤アダストリア

外食のゼットンを第三者割当増資とTOBで子会社化 (28.7億円)

 

⑥ラクスル

ダンボール・梱包材の受発注サイト運営のダンボールワン(金沢市)を子会社化 (20億円)

 

⑦鴨川グランドホテル

MBOで株式を非公開化 (17億円)

 

⑧オウケイウェイヴ

音楽・映像制作のアップライツ(東京都港区)を子会社化 (9.9億円)

 

⑨ヨシムラ・フード・ホールディングス

ソフトふりかけ「梅の実ひじき」製造の十二堂(福岡県太宰府市)を子会社化 (7.5億円)

 

⑩フィードフォースグループ

ブランディング戦略策定などのフラクタ(東京都渋谷区)を子会社化 (6.1億円)

 


情報提供元:株式会社ストライク

[M&A動向レポート](2021年12月)

■IT・ソフトウエア業界の2021年12月のM&A件数、過去2番目の高水準

 

IT・ソフトウエア業界の2021年12月のM&A発表件数は13件で、12月としては2012年以降の10年間では、2018年(15件)に次ぐ2番目(2013年と同数)となった。IT人材の不足や企業の選択と集中の動きなどがM&A件数を押し上げた。

 

一方、取引金額は7億500万円で、こちらは12月としては2012年以降の10年間では、2015年(12億3000万円)を下回る過去最低となった。10億円を超える案件がなく、13件中10件が金額非公表や未確定だったため、金額が伸びなかった。

 

全上場企業に義務づけられた東証適時開示情報のうち、経営権の移転を伴うM&A(グループ内再編は除く)について、M&A仲介のストライク(M&A Online)が集計した。

 

 

金額トップはみらいワークスの3億7000万円

 

取引金額のトップは、みらいワークスが人材分野のリード(見込客)獲得を支援するプラットフォーム「FIND CAREERS」を運営するAnd Technologies(東京都港区)の全株式を取得し子会社化することを決めた案件で、取得価格は3億7000万円。主力事業のビジネスマッチングサービスにおける新規登録者の獲得拡大を見込む。

 

金額の2番目は、エムティーアイがAI(人工知能)関連サービスのAI Infinity(東京都港区)の持ち株比率を17.55%から51.56%に引き上げ、子会社化することを決めた案件で、取得価格は2億円。AI事業の強化が狙いだ。

 

金額の3番目は、アピリッツがWebシステムやスマートフォンアプリを開発するムービングクルー(東京都千代田区)の全株式を取得し子会社化することを決めた案件で、取得価格は1億3500万円。ムービングクルーが得意とするエンターテインメント領域の開発ノウハウやデジタル人材を迎え入れ、デジタル事業の拡大につなげる。

 

 

 

 

 

 

情報提供元:株式会社ストライク

[M&A動向レポート](2022年1月)

■コロナ禍の「M&Aへの悪影響ある」がやや増加~ストライクが経営者アンケート

                           オミクロン株が影響か

 

 

M&A(合併・買収)仲介を手掛けるストライクが2022年1月に実施した経営者アンケートによると、新型コロナウイルスの感染拡大が「M&A市場にマイナスの影響を及ぼしている」と回答した中小企業経営者の比率が全体の36%となり、前回調査(21年7月、32%)からやや上昇していることが明らかになった。新型コロナウイルスの一種で、感染力の強い「オミクロン株」の感染が広がりつつあることが背景にあるとみられる。

 

調査はストライクが22年1月5~7日に実施し、329件の回答を得た。回答した経営者の業種は、建設業、卸売・小売業、運輸業、製造業、情報通信業、不動産業、サービス業などが多い。

 

アンケート(複数回答)によると、M&Aの買い手は18%(前回は16%)、売り手は31%(前回は39%)が「コロナ禍はM&Aにマイナスの影響を及ぼしている」と回答した。事業承継を検討している経営者が「コロナ禍がM&Aにマイナスの影響を及ぼしている」と答えた比率は44%に達した。前回調査は35%だった。具体的な影響については「計画を延期した」が31%でトップ。「内容を再検討することになった」が30%で続いた。

 

「コロナ禍による影響はない」との回答は39%と前回(48%)と比べると低下した。ただ、「マイナスの影響がある」との回答をなお3%ポイント程度上回っており、経営者の間で、コロナ禍への悪影響への懸念が和らいできていることに変わりはなさそうだ。「影響はない」との回答の理由を聞いたところ、「コロナが経営環境にそれほど影響を及ぼしていない」との答えが72%に達した。

 

 

 

情報提供元:株式会社ストライク

[M&A動向レポート](2021年11月)

■11月M&A77件、ENEOSは2カ月連続で金額首位

 

2021年11月のM&A件数(適時開示ベース)は前年同月比4件減の77件だった。前年同月を下回るのは3カ月ぶりだが、11月として過去10年で2019年(86件)、20年(81件)に続く高水準をキープしている。前月比では7件増えた。1~11月累計は12月を残して800件を突破しており、2021年の年間件数は2008年の870件を超え、リーマンショック後の最多となる可能性が出てきた。

 

全上場企業に義務づけられた適時開示情報から経営権の移転を伴うM&A(グループ内再編は除く)について、M&A仲介のストライク(M&A Online)が集計した。

 

 

11月の取引金額は5628億円。1000億円超の大型案件は2件あり、クボタがインドのトラクターメーカーを1406億円で買収する一方、ENEOSホールディングスは英国の資源開発子会社を1900億円規模で売却すると発表した。

 

このうち、ENEOSは10月に太陽光発電など再生可能エネルギー企業のジャパン・リニューアブル・エナジー(東京都港区)を2000億円で子会社化することを発表済みで、2カ月連続で金額トップに立つ。大型M&Aを買収・売却の両面から積極的に進める背景には脱炭素化の取り組みを加速する狙いがあるとみられる。

 

英国の北海油田での石油・天然ガス開発事業をめぐってはENEOSと同様に、丸紅も撤退を決め、11月初めに英国子会社Marubeni Oil&Gasの売却を発表した(売却金額は非公表)。

 

片倉工業がMBO(経営陣による買収)で非公開化する案件は買付代金が最大714億円に上り、投資ファンドが関与しないMBOとして過去最大級。同社は祖業の製糸事業の縮小に伴い、不動産や医薬品、機械関連などへの事業展開を進めてきた。非公開化を通じて一連の構造改革を促進する。

 

11月は中国事業を整理する動きが比較的目立った。日立金属は熱間圧延用ロール製造、東海カーボンはカーボンブラック製造、清鋼材は建機用などの鋼材部品製造、ASIAN STARはワンルームマンション賃貸事業を手がける現地子会社をそれぞれ売却することを決めた。

 

11月の金額上位案件は次のとおり。

 

 


① ENEOSホールディングス

英資源子会社JX Nippon Exploration and Productionを現地社に譲渡 (1900億円)

 

②クボタ

インドのトラクターメーカー

大手「エスコーツ」を子会社化 (1406億円)

 

③片倉工業

MBOで株式を非公開化(714億円)

 

④野村総合研究所

DXサービス大手の米Core BTSを子会社化(522億円)

 

⑤ポラリス・キャピタル・グループ

プレハブ建築・立体駐車場のスペースバリューホールディングスをTOBで子会社化 (386億円)

 

⑥グローリー

通貨処理機メーカーの米Revolution Retail Systemsを子会社化 (210億円)

 

⑦日本航空

双日と組んで空港店舗・免税店運営のJALUXをTOBで子会社化 (156億円)

 

⑧科研製薬

バイオ創薬ベンチャーのARTham Therapeutics(横浜市)を子会社化 (55億円)

 

⑨日本電産

工作機械メーカーのOKKを子会社化 (54.7億円)

 

⑩TCSホールディングス

露出計メーカー大手のセコニックをTOBで子会社化 (45.5億円)

 


情報提供元:株式会社ストライク

[M&A動向レポート](2021年11月)

■IT・ソフトウエア業界の2021年11月のM&A  件数3位も金額は過去最高に

 

 

IT・ソフトウエア業界の2021年11月のM&A発表件数は11件で、11月としては2012年以降の10年間では、2019年(14件)、2018年(12件)に次ぐ3番目(2017年は同数)となった。取引金額は575億円で、こちらは11月としては2012年以降の10年間では、2019年(68億円)を上回る過去最高となった。500億円を超える案件があったため一気にそれまでトップだった2019年の8倍強に膨らんだ。IT人材の不足に加えて、企業の選択と集中の動きが強まっており、IT関連業界のM&A市場が活発となっている。

 

全上場企業に義務づけられた東証適時開示情報のうち、経営権の移転を伴うM&A(グループ内再編は除く)について、M&A仲介のストライク(M&A Online)が集計した。

 

取引金額のトップは野村総合研究所の522億円

 

取引金額のトップは、野村総合研究所が米国統括会社を通じて、デジタル技術で企業の業務変革を支援するDX(デジタルトランスフォーメーション)サービス大手の米国Core BTS, Inc.(インディアナ州)を子会社化することを決めた案件で、取得価格は522億9200万円。

 

グローバル事業の拡大の一環で、Core BTSを傘下に置く、持ち株会社のConvergence Technologies, Inc.の全株式を取得する。

 

Core BTSはクラウド、デジタル開発、ネットワーク、セキュリティーの各事業領域でコンサルティングからシステム開発、導入、運用までのサービスをトータルに提供している。

 

金額の2番目は、ポートが新電力への切り替えに際して見積もりや取次業務を代行するマッチングメディア「エネチョイス」などを運営するINE(東京都豊島区)の株式50.91%を取得し子会社化することを決めた案件で、取得価格は約20億6800万円。

 

ポートが強みとする就職領域の会員基盤と組み合わせ、相互の販路活用による収益機会の最大化につなげる。

 

INEは政府の電力自由化が始まった2014年に設立。新電力への切り替え取次件数では業界トップ級で、2022年3月期は10万件を突破する見込みという。

 

金額の3番目は、マネーフォワードが人事労務関連のチャットボット「HiTTO(ヒット)」を展開するHiTTO(東京都千代田区)の全株式を取得し子会社化することを決めた案件で、取得価格は19億9900万円(新株予約権を含む)。顧客企業におけるバックオフィスの業務効率化を推進するのが狙い。

 

「HiTTO」は勤怠管理、年末調整、経費精算、福利厚生など人事労務に関する社内からの問い合わせにチャット形式で対応し、AI(人工知能)が自動で即時に回答する。中規模以上の企業を中心に採用が進んでいる。

 

このほかに10億円未満が4件、金額非公表などが4件あった。

 

 

 

 

 

情報提供元:株式会社ストライク

[M&A動向レポート](2021年10月)

■10月のMA&は70件、1000億円超は月間4件で今年最多

 

2021年10月のM&A件数(適時開示ベース)は前年同月と同数の70件だった。10月として過去10年で2018年(81件)、2019年(74件)に続く高い水準。前月比では13件減。1~10月累計は前年同期を37件上回る727件に達している。年間件数が2008年の870件を超え、リーマン・ショック後の最多となる可能性も出てきた。

 

全上場企業に義務づけられた適時開示情報のうち、経営権の異動を伴うM&A(グループ内再編は除く)について、M&A仲介のストライク(M&A Online)が集計した。

 

 

10月の取引金額は8012億円。100億円を超えるM&Aは海外案件を中心に9件あった。なかでも1000億円超の大型M&Aは国内の再生可能エネルギー企業を約2000億円で買収するENEOSホールディングスの案件を筆頭に4件に上り、今年最高だった。

 

また100億円超の案件の1~10月累計は64件を数え、前年同期(46件)を4割上回るハイペースで推移。M&Aをテコに事業ポートフォリオの見直しを積極的に進めている様子が浮き彫りになっている。

 

 

ENEOSが買収するのは米ゴールドマン・サックス(GS)傘下のジャパン・リニューアブル・エナジー(JRE、東京都港区)。JREは2012年に設立し、全国40数カ所で太陽光を中心に陸上風力、バイオマスの再エネ事業を展開している。2022年1月末までに買収完了の見通し。

 

ENEOSは2022年度末までに国内外での再エネ事業の発電容量を現在の10万キロワット台から100万キロワット超に拡大する計画を進めており、脱炭素化の取り組みを加速する狙いだ。

 

ENEOSは9月初め、GSと組んで上場子会社で道路舗装最大手NIPPOをTOB(株式公開買い付け)で非公開化する計画を発表した。親子上場の解消で得られる約1900億円の資金をJREの買収に充当する。(金額上位は一覧表を参照)
10月は再エネ関連で他にも動きが目立った。Abalanceは太陽光発電事業を手がける2社の買収を発表。エンビプロ・ホールディングスはバイオマス燃料の製造・販売会社を傘下に収めることにした。

 

 

一方、ウインテストは太陽光発電の運転管理・保守点検(O&M)サービス子会社を売却した。とくに太陽光発電を巡ってはFIT(再生エネルギーの固定価格買取制度)売電単価の下落や発電所の新設件数の減少などで事業環境が不透明感を増しており、事業の「選択と集中」を急ぐ動きが強まっている。

 

 

 


①ENEOSホールディングス

再エネ新興企業のジャパン・リニューアブル・エナジーを子会社化(2000億円)

 

②日本ペイントホールディングス

フランスの建築用塗料メーカー、クロモロジーを子会社化(1509億円)

 

③住友金属鉱山

チリ「シエラゴルダ銅鉱山」の権益持ち分を豪資源大手South32に譲渡(1349億円)

 

④ソニーグループ

米ゲーム事業を米ゲーム会社のスコープリーに譲渡(1100億円)

 

⑤住友商事

チリ「シエラゴルダ銅鉱山」の権益持ち分を豪資源大手South32に譲渡(578億円)

 

⑥ルネサスエレクトロニクス

イスラエルのアナログ半導体企業セレノを子会社化(359億円)

 

⑦電通グループ

ネット広告大手のセプテーニ・ホールディングスを子会社化(326億円)

 

⑧日本ペイントホールディングス

スロベニアの塗料メーカー JUBを子会社化(254億円)

 

⑨イオン

100円ショップ大手のキャンドゥをTOBなどで子会社化(211億円)

 

⑩日本郵政

「かんぽの宿」32施設を米投資会社フォートレスなど4者に譲渡(88億円)

 


情報提供元:株式会社ストライク

[M&A動向レポート](2021年7~9月)

■7~9月M&A,11件増の210件、3年ぶり増加

 

2021年7~9月のM&A件数(適時開示ベース)は前年同期を11件上回る210件で、3四半期連続で増加した。7~9月としては3年ぶりの増加。一方、取引金額は1兆8215億円。100億円以上の大型案件は前年同期(12件)の倍近い22件となり、金額面でも高水準だった。新型コロナウイルスの感染拡大がM&Aの交渉などに影を落としたものの、企業の事業売却などによる「選択と集中」の動きは根強く、M&A市場の活況を後押しした。

 

上場企業に義務づけられた適時開示情報のうち、経営権の異動を伴うM&A(グループ内再編は除く)について、M&A仲介のストライク(M&A Online編集部)が集計した。

 

 

月別に件数をみると、5月から8月まで4カ月連続で前年を下回り、1~4月の“貯金”が10数件まで目減りしていたが、9月は一転してひと月で20件以上を積み増した。この結果、1~9月累計は657件と前年同期を37件上回る高水準にある。現行のペースでいけば、2021年の年間件数は2008年のリーマンショック以降、最多となる見通しだ。

 

7~9月の金額上位は表の通り。首位は三菱UFJフィナンシャル・グループが傘下の米地銀MUFGユニオンバンクの全株式を米地銀最大手のUSバンコープに約8800億円で売却すると発表した案件。

 

第2位も金融関連で、インターネット金融大手のSBIホールディングスは新生銀行にTOB(株式公開買い付け)を行い、子会社化する。買付代金は最大1164億円。ただ、一方的なTOBに反発する新生銀行は買収防衛策で対抗する構えだ。

 

三菱UFJ、SBIの案件はいずれも9月の発表分。1000億円を超える大型案件は昨年8月から今年6月まで11カ月連続で毎月1~3件あったが、7月、8月はゼロだった。

 

一方、100億円超でみた場合、7~9月の案件数は22件。1~9月累計だと55件を数え、すでに2020年の年間51件を上回っている。

 

 


【2021年7~9月 金額上位案件】

 

① 三菱UFJフィナンシャル・グループ

傘下の米地銀MUFGユニオンバンクを米地銀最大手USバンコープに譲渡( 8800億円/ 9月)

 

② SBIホールディングス

新生銀行をTOBで子会社化 (1164億円/ 9月)

 

③ 三菱ケミカルホールディングス

傘下の三菱ケミカルが手がける結晶質アルミナ繊維事業を米アポロ・グローバル・マネジメントに譲渡 (850億円/ 9月)

 

④ 資生堂

米国で展開する化粧品「ベアミネラル」など3ブランドを米投資ファンドAdventに譲渡 (770億円 /8月)

 

⑤ 第一生命ホールディングス

オーストラリア生保のウエストパック・ライフを子会社化 (740億円 /8月)

 

⑥ 米フーリハン・ローキー

M&A助言国内最大手のGCAをTOBで子会社化 (681億円 /8月)

 

⑦ 日本アジアグループ

傘下の国際航業(東京都千代田区)とJAG国際エナジー(同)を米カーライル・グループに譲渡 (585億円/ 8月)

 

⑧ JSR

EUV(極端紫外線)用メタルレジストメーカーの米Inpriaを子会社化(565億円/ 9月)

 

⑨ 明治ホールディングス

医療用医薬品子会社のMeiji Seikaファルマの農薬事業を三井化学アグロに譲渡 (467億円 /9月)

 

⑩ 大和ハウス工業

戸建住宅・宅地分譲の米CastleRockを子会社化 (448億円/ 8月)

 


情報提供元:株式会社ストライク

[M&A動向レポート](2021年9月)

■9月M&A件数、5カ月ぶりに前年比プラスの83件 金融関連で大型案件

 

2021年9月のM&A件数(適時開示ベース)は83件で、前年同月を22件上回る大幅増加となった。5カ月ぶりに前年比プラスに転じ、9月として2017年(84件)以来の高水準。一方、月間の取引金額は1兆2626億円。金融分野で三菱UFJフィナンシャル・グループ、新生銀行を巡る大型案件があったことから、4月(1兆9300億円)に次ぐ今年2番目の規模に膨らんだ。

 

上場企業に義務づけられた適時開示情報のうち、経営権の異動を伴うM&A(グループ内再編は除く)について、M&A仲介のストライク(M&A Online編集部)が集計した。

 

 

 

件数は5月から8月まで4カ月連続で前年に届かず、1~4月の“貯金”が10数件まで目減りしていたが、9月は一転してひと月で20件以上を積み増した。この結果、9月までの累計は前年同期比37件増の657件と、2008年(689件)以来13年ぶりのハイペースを堅持している。

 

月間の取引金額が1兆円を超えるのは2月、3月、4月に続いて9月で今年4度目。7月、8月とゼロだった1000億円を超える大型案件が復活して9月は2件あった。

 

金額トップは三菱UFJフィナンシャル・グループが傘下の米地銀MUFGユニオンバンク(カリフォルニア州)の全株式を、米地銀最大手のUSバンコープ(ミネソタ州)に約8800億円で売却すると発表した案件。売却対象は個人・中小企業向け部門で、大企業向け部門は三菱UFJ側に移管する。

 

三菱UFJは2008年にユニオンバンクに追加出資して完全子会社化したが、今後、米市場で法人取引と投資銀行業務に集中する体制とし、経営効率を高めるのが狙いだ。2022年1~6月中の売却完了を見込む。

 

金額2位も同じく金融だ。SBIホールディングスは新生銀行に対してTOB(株式公開買い付け)を開始。SBIは最大1164億円を投じて、現在20%余りの持ち株比率を48%に高め、子会社化する計画。ただ、一方的なTOBに対し、新生銀行は反発しており、買収防衛策で対応する構え。

 

金融関連の2案件を含めて、9月として取引金額が100億円超えるのは8件(一覧表参照)。1~9月累計でみると、100億円超の案件は55件を数え、3カ月を残して2020年の年間51件を上回った。

 

 


①三菱UFJフィナンシャル・グループ

傘下の地銀MUFGユニオンバンクを米地銀最大手USバンコープに譲渡(8800億円)

 

②SBIホールディングス

新生銀行をTOBで子会社化(1164億円)

 

③三菱ケミカルホールディングス

傘下の三菱ケミカルが手がける結晶質アルミナ繊維事業を米アポロ・グローバル・マネジメントに譲渡(850億円)

 

④JSR

EUV(極端紫外線)用メタルレジストメーカーの米Inpriaを子会社化(565億円)

 

⑤明治ホールディングス

医療用医薬品子会社Meiji Seikaファルマの農薬事業を三井化学アグロに譲渡(467億円)

 

⑥ペプチドリーム

富士フイルム富山化学から放射性医薬品事業を取得(305億円)

 

⑦韓国NAVER

Zホールディングス傘下のイーブックイニシアティブジャパンをTOBで子会社化(159億円)

 

⑧パイプドHD

アドバテッジパートナーズと組んでMBOで株式を非公開化(143億円)

 

⑨チャーム・ケア・コーポレーション

大阪府内4カ所で有料老人ホーム運営のライク(大阪府八尾市)を子会社化(44.9億円)

 

⑩ユニデンホールディングス

レーダー・レーザー探知機メーカーの韓国ATTOWAVEを子会社化(21.3億円)

 


 

 

 

情報提供元:株式会社ストライク