Q-6 M&Aで売りたい(譲渡したい)時はどんな準備が必要でしょうか?|3分でわかる!M&Aのこと【解説コラム】

 

 

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Q-6 M&Aで売りたい(譲渡したい)時はどんな準備が必要でしょうか?

A

M&Aにより会社を売りたいと思った時には事前の情報収集と整理が必要です。
それは、M&Aの売り手と買い手との間には経験の差が存在するためです。
一般的にM&Aによる売り手サイドは初めてのM&Aであることが多いのに対して、買い手サイドはこれまでに何度も企業を買収した経験があることも珍しくありません。
このように、経験に差がある中で、事前の準備ができていない場合には、安く買いたたかれたり、不利な条件による売却となってしまったりする可能性もあります。

 

そのため、具体的には以下のような情報を事前に整理し、集めておくことが重要です。

 

・会社を売りたい目的

まず、会社を売りたい目的を整理することが必要です。目的を整理していく中で、これだけは譲れない、などの諸条件を明確にすることで、そもそもM&Aが最善の方法なのかを再確認するとともに、M&Aによる売却を行う場合でもその後にしっかりとした交渉ができることにつながり、結果としてM&Aの成功につながることになります。

 

・M&Aについて相談する窓口

M&Aは会社の売却であり、会社にとってもオーナーにとっても大変重要なイベントです。そのため、事前に相談する窓口は信頼がおける相手であることが非常に重要になってきます。一般的には、M&A仲介会社や、公認会計士・税理士・弁護士といった専門家、さらに銀行等の金融機関、そして商工会議所、事業承継・引継ぎ支援センターなどの地域の自治体と密接な機関等が相談窓口として挙げられます。選択肢として複数あることを認識した上で、信頼のおける専門機関等と一体となって進めていくことが重要です。

 

・会社の数値に現れない価値

Q-3のコラムでも記載しているように、売り手サイドとしては、今まで築き上げた顧客基盤・ノウハウ・社員教育・ブランド価値を適正に評価してもらいたいと考えますが、これらは決算書などの財務諸表数値には反映されていないことが通常です。

これらの会社の強みとなるような企業価値をM&Aを検討する前から事前に時間をかけて整理しておくことで、M&Aの取引価額を適正に評価することが可能となり、最終的にM&Aの成功へとつながると考えます。

なお、このような情報は会社の代表者だけでは客観的な評価が難しいこともあるので、税務顧問先やM&A仲介の担当者等に事前に相談しておくことがとても重要です。

 

 

(執筆:税理士・公認会計士 風間啓哉)

 

 

 

 

 


 

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(注意)回答・解説は原則このコラム内で行い、個別の回答はできません。個別事例についてのご相談には対応できませんのであらかじめご承知おきください。

 

 

 

風間啓哉(かざま けいや) 

税理士・公認会計士(風間会計事務所 代表)

2005年公認会計士登録、2010年税理士登録。

監査法人にて監査業務を経験後、上場会社オーナー及び富裕層向けの各種税務会計コンサル業務及びM&Aアドバイザリー業務等に従事。その後、事業会社㈱デジタルハーツ(現 ㈱デジタルハーツホールディングス:東証プライム)へ参画し、同社取締役CFOを経て、同社非常勤監査役(現任)を経験。2018年から会計事務所を本格的に立ち上げ、現在に至る。

(著書等)『PB・FPのための上場会社オーナーの資産管理実務(三訂版)』『資産家・事業家 税務コンサルティングマニュアル』(共著、税務研究会)、『ケーススタディ M&A会計・税務戦略』(共著、金融財政事情研究会)

 

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Q-5 M&Aは誰に相談すればよいですか?|3分でわかる!M&Aのこと【解説コラム】

 

 

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Q-5 M&Aは誰に相談すればよいですか?

A

M&Aの相談相手を選定する場合の基本的なポイントは、(1)売り手(買い手)候補者(会社)の(2)専門的なM&Aスキルはあるか(3)信頼性です。

 

 

昨今、数多くのM&Aプレイヤー(M&A仲介会社など)が名乗りを上げていますが、この「(1)売り手(買い手)候補者(会社)の」に関して、疑問視されるプレイヤーがかなり多いのも事実です。「業界№1の実績」、「業界最大級の売り手候補会社数を誇る!」等々を謳っているM&A会社が散見されますが、新興のM&A会社は、得てして現在、この「売り手候補会社」を集めているフェーズの会社も多数あるようです。

 

 

また、「(2)専門的なM&Aスキルはあるか」という点については、当然にどこのM&A会社も一定の専門的M&Aスキルは最低限あるかと思いますが、専門的なM&Aスキルの中でも重要なのは、「机上の知識」ではなく、どちらかと言うと「経験則」といった部分であり、ここがポイントとなります。この「経験則」は、例えば、(イ)売り手・買い手の希望価格が乖離している場合のいわゆる「落としどころ」はどのあたり辺りであるとか、(ロ)(イ)の場合の代替案(例えば、退職金の支給・従業員の処遇・ブランドの維持条項・取引先への橋渡し、社長の一定期間継続による業務引継ぎ、一定条件が整うまでのデポジットの差入れ等々)の提案力、(ハ)クロージング力(瑕疵不動産の洗浄力、金融機関交渉力、登記簿の修正、主要取引先の応諾力等々)が求められます。

 

 

(3)の「信頼性」ですが、これは一概には言えません。上記の(1)(2)に裏付けられた担当者の能力や明確な料金体系などが含まれます。得てして、(1)(2)が十分でないM&A会社ほど、返還不能な着手金を求めてくる場合があるので、これは要注意です。

 

 

最後に、主なプレイヤーとしては次のようなものが挙げられます。

 

(イ) 公的機関として、日本税理士連合会・商工会議所など
(ロ) 金融・証券関係

金融・証券関係のプレイヤーについては、借入金等の返済危険値が上がると、金融機関が自ら、より経営能力の高い買い手探しに動くことに端を発していることが多いです。

(ハ) 民間仲介会社

新興・老舗等々まさに今はM&A最盛期の様相を呈していますが、相当程度の実力と実績のある会社も複数存在します。

 

 

小職の私見ですが、一般的な相談相手としては、(ハ)のうち実績のある会社をお勧めしています。

 

 

 

(執筆:税理士 高井 寿)

 

 

 

 

 


 

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高井 寿(たかい ひさし) 

高井国際税務会計事務所 代表税理士 東京税理士会世田谷支部副支部長

2002年税理士登録、経営品質協議会認定アセッサー、CFPファイナンシャルプランナー、経営計画策定、国内及び国際タックスマネジメント、事業・資産承継、組織再編・連結納税、MAが専門。財団法人日本民事信託協会代表理事。

(著書等)「連結納税マニュアル(税務研究会)」「営業権の実務」(税務通信(税務研究会))、「経理システムと税務」「寄付金課税の問題点」(ともに税務弘報(中央経済社))、「資産家・事業家税務コンサルティングマニュアル」(税務研究会)

 

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Q-4 M&Aの主なメリット、デメリットを教えてください。|3分でわかる!M&Aのこと【解説コラム】

 

 

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Q-4 M&Aの主なメリット、デメリットを教えてください。

A

M&Aと聞くと、「会社が乗っ取られるイメージ」や「お金がかかりそうなイメージ」などの印象をもっていたり、「失敗すると財産を減らしてしまいそう」などの漠然とした不安を感じたりする方々がいらっしゃることも事実です。もちろん、M&Aは常に成功するわけではありません。それでもM&Aを行うことには、どのようなメリットがあるのか、またデメリットは何かを、買い手と売り手それぞれについて解説していきます。

 

 

メリット 

買い手のメリット

 

・短期間での事業成長手段

事業を立ち上げるにあたり、一からコツコツ積み上げていくことも考えられますが、時間がかかってしまうことがネックになります。そこで、M&Aにより既存のビジネスを展開している企業ごと取得することで、スピーディに事業を立ち上げることが可能となります。

また、既存の事業規模を短期間で拡大するうえでも、M&Aは有効です。M&Aにより事業規模のみならず、商圏の獲得も短期間で実施することが可能となります。

 

・シナジー効果

M&Aにより、異なるカルチャーの企業同士が統合することで思いがけない相乗効果が得られることがあります。営業が強い会社と企画開発力がある会社がM&Aによって統合されることにより、弱点が補完され、強みにさらに磨きがかかるなどの効果が得られる可能性があります。

 

 

売り手のメリット

 

・事業承継問題の解決

後継者不在により事業の継続が困難な状況に直面した場合には、第三者に事業を譲渡・売却することで、事業を継続させることが可能となります。

 

・雇用の維持

M&Aにより新たな経営者にバトンタッチすることで、従業員の雇用の継続を図ることが可能となります。

 

・売却による金銭的収入

M&Aにより法人等を売却することで、対価としての金銭を得ることができます。それにより、借入金の返済や引退後の生活資金等に充てることができ、いわゆるハッピーリタイアを実現することも可能となります。

 

・事業の成長

M&Aにより自社よりも規模の大きな企業グループの傘下に入るなどにより、自社の既存の成長力よりもはるかに大きな成長を遂げることが可能となります。

 

 

デメリット

買い手のデメリット

 

・当初期待を下回る可能性

当初M&Aによって得られると期待していた効果が得られない可能性があります。取引先が離れてしまう、従業員の退職が相次ぐなど、当初の想定と違うことは常に起こりえますが、時間との勝負でもあるため、ある程度はリスクとして許容することになります。

このような事態をできるだけ回避するためには、売り主との契約に「アーンアウト(注1)」を取り入れる、「表明保証(注2)」を明記するなどのリスク回避が重要です。

 

(注1)アーンアウト:買収対価の一部を買収後の目標達成と連動させて支払うことで、売り手と買い手の目線合わせを行う方法

(注2)表明保証:契約当事者及び対象会社が譲渡日等において、財務、法務、税務、業務内容等の一定の事項が真実かつ正確であることを表明し保証すること。

*表明保証についてはQ3でも触れています。

 

・簿外債務等を引き継ぐリスク

帳簿に記載されている負債以外にも、訴訟リスクや債務保証、そして従業員に対する未払残業等などがある場合で、M&A実施前に把握できていないケースでは、思いがけない損失や金銭的負担を強いられる可能性があります。

それらを事前に回避するためにも、最終合意契約に締結する前までに、「デューディリジェンス(注3)」をしっかり行うことや「表明保証」を明記することがとても重要となります。

 

(注3) デューディリジェンス:M&Aの実行前に対象会社についておこなわれる財務や法務などの調査のこと。

 

 

売り手のデメリット

 

・取引価額のミスマッチ

M&Aにより得られる金銭的収入をあてにしていたが、条件交渉の過程で期待通りの金額にはならない可能性があります。

 

 

 

(執筆:税理士・公認会計士 風間啓哉)

 

 

 

 

 


 

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風間啓哉(かざま けいや) 

税理士・公認会計士(風間会計事務所 代表)

2005年公認会計士登録、2010年税理士登録。

監査法人にて監査業務を経験後、上場会社オーナー及び富裕層向けの各種税務会計コンサル業務及びM&Aアドバイザリー業務等に従事。その後、事業会社㈱デジタルハーツ(現 ㈱デジタルハーツホールディングス:東証プライム)へ参画し、同社取締役CFOを経て、同社非常勤監査役(現任)を経験。2018年から会計事務所を本格的に立ち上げ、現在に至る。

(著書等)『PB・FPのための上場会社オーナーの資産管理実務(三訂版)』『資産家・事業家 税務コンサルティングマニュアル』(共著、税務研究会)、『ケーススタディ M&A会計・税務戦略』(共著、金融財政事情研究会)

 

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Q-3 M&Aにおける基本的な注意点はなんですか?|3分でわかる!M&Aのこと【解説コラム】

 

 

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Q-3 M&Aにおける基本的な注意点はなんですか?

A

M&Aでは、企業の合併であれ、企業の買収であれ、経営権や事業を差し出す立場(=売り手)と経営権や事業を買い取る立場(=買い手)の関係は、基本、対立する立場となります。当然に売り手はなるべく高く売りたい、買い手はなるべく安く買いたいというのが本音です。

 

中でもM&Aにおいては、企業・事業は“生き物”(=そこには、生ものである顧客の存在があり、顧客からの売上が上がり、原価や外注費など取引先に支払った残額の粗利益があり、そのためには今企業に勤めている従業員が一生懸命働いて…)ですので、これを適切に評価するのは容易ではありません。

 

買い手サイドとしては、合併・買収後のリスクを予め織り込んでおきたい、売り手サイドとしては、今まで築き上げた顧客基盤・ノウハウ・社員教育・ブランド価値を正しく評価してもらいたいというところです。

そのためにM&Aにおいては、

 

a 将来獲得する収益の総和はいくらか?(事業価値)

b 負債やリスクを勘案するといくらか?(負債評価)

c  a-b=企業価値

 

という方程式を基本として価値算定をしますので、売り手としては、aをなるべく大きく(bをなるべく少なく)、買い手としては、bをなるべく大きく(aをなるべく少なく)評価したくなるのも必定です。そして、M&Aにおいては、このaとbについて、それぞれが合理的にその評価を納得しあえるよう、「表明保証(representations & warranties)」という制度、例えば、売上であれば、「提示された顧客名簿は○月×日時点でアクティブである」とか「この債権の回収可能性は○%以上である」、などを取り決めていくのです。

M&Aにおける基本的注意事項は、a(事業価値)とb(負債評価)を適切に、そして、aとbについて双方が納得のいく「表明保証(注)」を行っていく、ということです。

 

 

(注)表明保証(representations & warranties)…表明保証とは、契約の一方当事者が、契約の前提となる事実の存在を相手方に表明し、保証することです。表明保証は、M&Aなどの契約書に表明保証条項として記載されます1。表明保証に違反した場合は、損害賠償請求が可能になります。

 

M&Aにおける企業価値計算の基本ロジック

 

(執筆:税理士 高井 寿)

 

 

 

 

 


 

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高井 寿(たかい ひさし) 

高井国際税務会計事務所 代表税理士 東京税理士会世田谷支部副支部長

2002年税理士登録、経営品質協議会認定アセッサー、CFPファイナンシャルプランナー、経営計画策定、国内及び国際タックスマネジメント、事業・資産承継、組織再編・連結納税、MAが専門。財団法人日本民事信託協会代表理事。

(著書等)「連結納税マニュアル(税務研究会)」「営業権の実務」(税務通信(税務研究会))、「経理システムと税務」「寄付金課税の問題点」(ともに税務弘報(中央経済社))、「資産家・事業家税務コンサルティングマニュアル」(税務研究会)

 

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Q-2 M&Aは日本でどのくらい利用されているのでしょうか?|3分でわかる!M&Aのこと【解説コラム】

 

 

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Q-2 M&Aは日本でどのくらい利用されているのでしょうか?

A

M&Aの件数は年々増加する傾向となっており、2019年には4,000件を超えています(参照:2021年版『中小企業白書』「M&A件数の推移」)

 

直近は新型コロナの影響を受けてやや減少傾向がみられたものの、中長期的には増加していく傾向は変わらないものと考えます。

このようにM&Aが増加している背景には次のような要因が挙げられます。

 

 

業界再編の活性化

成熟した業界内では自然と企業淘汰が進むことが多く、そのような業界再編が行われる手法としてM&Aが利用されることがあります。日本国内では、IT業界、建設業界、ドラッグストアなど競合ひしめく業界においては、大手企業グループなどによる資金力を武器に、事業規模並びにマーケットシェア拡大等を目的とするM&Aが多く利用されるようになっています。

 

 

中小企業の事業承継ニーズの高まり

少子高齢化が進む日本国内では中小企業の後継者不在の課題が年々高まりを見せています。また、近年の新型コロナウイルス蔓延に伴う事業環境の変化から、経営にはこれまでとは違うかじ取りを必要とする状況となってきました。そのような中、親族を中心に代々後継者を選出することが多かった中小企業においては、後継者が思うように見つけられない、いわゆる後継者不在の課題が重くのしかかっています。そのため、企業の存続をかけ、M&Aを利用して第三者へ事業承継を行う手法が増加傾向にあるといえます。

 

 

スタートアップ企業の経営資源の獲得目的

消費者の多様性に対応するため、大手企業を中心として、最新のIT等のテクノロジー技術を利用した商品開発やサービス展開にニーズが年々高まりを見せています。M&Aを活用することにより、最先端のテクノロジーを保有するスタートアップ企業をグループに取り込むことでその開発期間の短縮を狙う傾向が高まっています。

 

 

 

また、買い手側と売り手側のそれぞれのM&Aニーズとしては次のようなことが挙げられます。

 

買い手が増加している理由

 

「企業成長や事業規模拡大の効率性が高い」

 

かつてはネガティブな印象を持たれることが多かったM&Aですが、加速的な企業成長や事業規模拡大を求める企業においてはM&Aは重要な経営戦略の一つとなっています。一から成長させていくよりも、ある適度の規模の企業をM&Aにより取得する方が資金的にも時間的にも効率が良いと判断される状況があるといえます。

 

 

 

「多角化やシナジー効果の期待」

 

上記とも関連しますが、これまでの事業展開にはなかった新しい領域の業界などに進出する際には、M&Aによりそのノウハウも含めて取得することにより多角的経営にスムーズに乗り出すことが可能となります。また、M&Aにより得られた人材等の経営資源と、これまでの既存事業の経営資源とが融合されることにより、M&Aを行う前に比べて高い成果や効果が得られることも期待されることが挙げられます。

 

 

 

売り手が増加している理由

 

「経営者の高齢化に伴う後継者不足」

 

要因別の増加理由でも触れましたが、少子高齢化が進む日本国内の中小企業においては後継者不在の課題に直面しています。本来は親族内から後継者を選出して事業承継を行っていた企業も、親族内から適切な経営者が選出できない状況では第三者に経営者候補を求めざるをえません。そのような背景からM&Aを通じて企業を売却している傾向が見て取れます。

 

 

 

「資金需要」

 

M&Aにより、対価として得られる資金を借入金の返済や他の事業投資資金あるいは、経営者のハッピーリタイアに利用したい、というニーズがあります。

 

このように、様々な理由から増加傾向にあるM&Aですが、今後のコラムでもいろいろな角度から、できるだけわかりやすく取り上げていきたいと思います。

 

 

(執筆:税理士・公認会計士 風間啓哉)

 

 

 

 

 


 

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2005年公認会計士登録、2010年税理士登録。

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今や事業承継対策の選択肢の一つとして外せないものになりつつあるM&A。
もちろん、すべてがうまくいくわけではありませんが、廃業するしかないと思っていた事業がM&Aによって再生した、というケースも珍しくありません。
その一方で、いまだに「難しくてわからない」「なんとなく胡散臭い感じがする」「騙されているのでは?」として、敬遠されてしまうこともよくあります。
そこで、今後、ますます活用が進んでいくであろうM&Aについて、時には日本における導入の経緯などにも触れながら、できるだけわかりやすくQ&A形式で解説するコラムを掲載することにしました。
M&Aに少しでも興味のある方はぜひご一読ください!

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Q-1 M&Aってそもそもなんですか?

A

M&A(エムアンドエー)とは、英語の「Mergers and Acquisitions」(合併と買収)の頭文字を取った略語で、「企業の合併・買収」を指します。

 

企業の合併とは、複数の企業を一つに統合することを言い、企業の買収とは、一定以上の株式を買い取り、経営権を取得することを言います。

 

日本では、このM&Aという言葉の響きに、「怖い」「騙される」「M&Aをされた~=かわいそう…」「M&A業者だけが儲かっている!」といったネガティブ・イメージを持たれることが多いのも事実です。それは、資本と経営が渾然一体(株主=社長)となって行われている日本の中小企業にとってはなおさらかもしれません。

 

本来のM&Aの目的は買い手・売り手が共に(平等に)メリットを享受することであるはずです(下図参照)。

 

にもかかわらず、この平等原理が大きく歪められてきた歴史・経緯等があり、M&Aに対するネガティブな印象につながってしまっていると考えられます。その詳細については、後日、各テーマごとに触れていきたいと思います。

 

 

 

(執筆:税理士 高井 寿)

 

 

 

 

 


 

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高井 寿(たかい ひさし) 

高井国際税務会計事務所 代表税理士 東京税理士会世田谷支部副支部長

2002年税理士登録、経営品質協議会認定アセッサー、CFPファイナンシャルプランナー、経営計画策定、国内及び国際タックスマネジメント、事業・資産承継、組織再編・連結納税、MAが専門。財団法人日本民事信託協会代表理事。

(著書等)「連結納税マニュアル(税務研究会)」「営業権の実務」(税務通信(税務研究会))、「経理システムと税務」「寄付金課税の問題点」(ともに税務弘報(中央経済社))、「資産家・事業家税務コンサルティングマニュアル」(税務研究会)

 

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