【業界別M&A動向】

IT業界のM&A動向と事例について

 

 

〈解説〉

ロングブラックパートナーズ株式会社(佐々木 翼)

 

 

〈目次〉

1.IT業界のM&A動向 ~ IT業界はその他業界と比べて、M&Aが活発に起きている業界 ~

2.IT業界のカテゴリ

3.カテゴリ別のM&A動向と事例

①インターネット・WEB業界のM&A動向と事例

②通信インフラ業界のM&A動向と事例

③ソフトウェア業界のM&A動向と事例

④ハードウェア業界のM&A動向と事例

⑤情報処理サービス(SI)業界のM&A動向と事例

4. 最後に

 

 

 

 

1.IT業界のM&A動向 ~ IT業界はその他業界と比べて、M&Aが活発に起きている業界 ~


M&A件数推移

※レコフデータより弊社作成

 

 

2011年~2021年の期間中、国内M&A件数の中でソフトウェア・情報業界のM&Aの件数が最多く、2021年度は全体の約35%を占めています。(図①)

また、IT業界では他の業界と比較し、譲渡時のオーナーの年齢が若いことが特徴として挙げられます。日本M&Aセンターの調査によるとIT企業のオーナーは他の業界のオーナーと比較して譲渡時の年齢が10歳若いというデータがあります。(図②)

 

 

成約時の譲渡オーナーの年齢

(出典)日本M&Aセンター2021年 IT業界のM&A 回顧と展望より弊社作成

 

 

40代以下のオーナーが1/3を占めており、事業承継の為にM&Aを検討するオーナーがいる一方で、
会社を売却しEXITを目指す若い起業家が多い業界でもあると想定されます。

また、同業同士でのM&Aも活発ですが、不動産×ITの様に他業種がIT企業を求めているケースもあります。

 

 

2.IT業界のカテゴリ


IT業界と一括りにしても、IT業界には様々なカテゴリがあります。IT業界を大きく分けると5つのカテゴリに分けることができます。

●インターネット・WEB業界
仕事内容:Webサービスの開発、インターネット広告等
代表企業:Google、Yahoo!、楽天等

 

●通信インフラ業界
仕事内容:ネット環境の整備、保守、運用等
代表企業:NTTドコモ、ソフトバンク、KDDI等

 

●ソフトウェア業界
仕事内容:ソフトウェア開発、プログラミング等
代表企業:Microsoft、サイボウズ、日本オラクル等

 

●ハードウェア業界
仕事内容:セールスマーケティング、商品デザイン等
代表企業:日立、SONY、Panasonic等

 

●情報処理サービス(SI)業界
仕事内容:システム設計、開発、ITコンサル、AIエンジニアリング等
代表企業:日本総研、野村総研、富士通等

 

 

3.カテゴリ別のM&A動向と事例


①インターネット・WEB業界のM&A動向と事例

インターネットWEB業界のM&Aは広告代理店と密接に関わっています。

 

従来の広告代理店はテレビ、ラジオ等のマスメディアを中心に事業を展開していました。

しかしながら、スマートフォンの普及により、インターネットの需要が急速に拡大。それに伴いインターネット広告の需要が増えてきました。(図③)
ITの技術は現在も進んでおり、新たな技術や広告手法を得る為にM&Aが活用されています。

 

 

インターネット広告市場の推移

(出典)矢野経済研究所より弊社作成

 

 

■直近事例2021年
譲り受け企業:フィードフォース
譲渡企業:アナグラム<買収目的>
フィードフォースはインターネット広告市場が着実に成長する一方で、通信環境やテクノロジーの発展に伴い広告形式が多様化し、専門的な知見がより一層必要になっていました。そこでアナグラムより経営統合の打診があり、両社が蓄積してきた専門的な知見を活かし、既存サービスだけでなくテクノロジーを活用したサービスラインの拡充を図ることを目的としてM&Aを実行しました。両社はフィードフォースのデータフィード広告とアナグラムのリスティング広告などそれぞれの得意領域でのノウハウを通じてインターネット広告事業の拡大を図ります。

 

 

②通信インフラ業界のM&A動向と事例

 

通信インフラ業界では新規参入を行う為のM&Aや、事業拡大のためのM&Aを目的として行われる傾向があります。
業者数は年々大幅に増加しているのがわかります。(図④)

 

 

図④通信業界の事業社数推移

(出典)情報通信白書より弊社作成

 

 

■直近事例2021年
譲り受け企業:ケイ・テクノス
譲渡企業:西日本電話工事<買収目的>
ケイ・テクノスは、通信インフラ事業を事業の核とし、土木・電気、環境施設工事等多数の事業を展開しています。一方で、西日本電話工事は電気通信工事事業において豊富な施工実績があり、施工技術と保守を高い技術力でワンストップのサービス対応をするなど、通信 インフラ構築技術とノウハウを有しています。今回の株式取得を通して、ケイ・テクノスと西日本電話工事の高い施工技術力を掛け合わせて、人材やノウハウの共有とリソースの最適化を図り、両社の事業を拡大することを目的とし、M&Aを実行しました。

 

③ソフトウェア業界のM&A動向と事例

 

ICT、Iot化が加速する中、企業のソフトウェア投資に対する考え方は年々上昇傾向にあります。
それに伴って、ソフトウェア開発業界では、買収、資本提携等により新しい技術や機能を補完し業容を拡大するケースが増えてきています。

 

 

令和2年度 ICTの経済分析に関する調査

(出典)総務省「令和2年度 ICTの経済分析に関する調査」より

 

 

■直近事例2021年
譲り受け企業:PKSHA Technology
譲渡企業:アシリレラ<買収目的>
PKSHA Technologyは自社で開発した機械学習領域のアルゴリズムを活用したアルゴリズムソリューション事業を展開する企業です。
アシリレラはRPA事業を通して情報技術を活用した業務自動化を実現し、顧客のビジネスをサポートしています。PKSHA Technologyはユーザー基盤を持ったプロダクトを保有するアシリレラをグループに入れて自社が持つアルゴリズム・ソフトウェアと強いシナジーを見込めると判断しM&Aを実行しました。

 

④ハードウェア業界のM&A動向と事例

 

ハードウェア業界ではソフトウェアの会社が経営基盤の構築を目的としてハードウェアの会社を買収する事例が多々見受けられます。
また、大手企業を中心とした買収が進んでいます。

 

IT技術やIotの技術が発展するに伴い、今後新たな需要が生まれることが期待されており、それに伴いM&Aも行われることが予測されます。

 

■直近事例2022年
譲り受け企業:SONY
譲渡企業:バンジー<買収目的>
バンジーは世界有数の独立系ゲーム会社でSONYとは長年取引のあるパートナーでした。この買収を通してSONYはバンジーが保有するライブゲームサービスへのアプローチと技術専門性へのアクセスが可能になり、SONYが抱える数十億人のプレイヤーに繋がるというビジョンへ近づき、SONYのエンタメ事業と技術を掛け合わせ事業の拡大を図ります。

 

 

⑤情報処理サービス(SI)業界のM&A動向と事例

 

SI業界でM&Aが行われる原因は大きく分けて2点あります。

 

1点目は技術者の不足です。
IT業界では人材不足が課題としてあり、SI業界でも技術者の不足が露呈しています。

 

2点目は業界構造にあります。

SI業界は多重下請け構造になっており、中小企業が多いことが特徴にあります。
最下層にいる企業は交渉力が弱く、自力での成長が厳しい企業がM&Aを検討しています。

 

IT業界の課題についてはコラム「IT業界の現状と課題について」をご覧ください。

 

■直近事例2021年
譲り受け企業:サンロフト
譲渡企業:S’PLANT<買収目的>
サンロフトは水産関連会社の販売・仕入・在庫管理を中心としたシステム開発業務を展開しています。S’PLANTは水産業・製造業向けに販売、生産管理システムの受託開発を展開しています。両社は経営統合を通してシステム開発事業の専門性と品質向上を図り、地方中小企業のサポートと事業の拡大を図ります。

 

 

4. 最後に


IT企業のM&Aは活況を呈しています。
需要が拡大するIT業界はこれからもM&Aが更に活発化することが予測されます。
IT企業のM&Aには専門知識が必要となる為、専門業者に相談することをおすすめします。

 

 

 

 

 

【業界別M&A動向】

IT業界の現状と課題について

 

 

〈解説〉

ロングブラックパートナーズ株式会社(佐々木 翼)

 

 

〈目次〉

1.IT業界の現状について

2.IT業界の課題

①IT人材の不足

②エンジニアの長時間労働

3.最後に

 

 

 

 

1.IT業界の現状について


IT業界は私たちの生活と密接に関わる業界です。

近年、日本ではデジタル化が進み、IT業界の市場規模は拡大し続けています。
最近よく耳にする話として、インターネットで情報を管理するサービスや、機械学習を通して情報を蓄積させるAI、5Gといった技術が開発されています。
こうした先端技術を駆使したサービスの実用化も増えており、IT業界はますます市場を拡大していくと予測されています。

 

特に、新型コロナウイルス感染拡大は、IT業界にも大きな影響を及ぼしました。
日本のみならず、世界中で人と人の接触が制限され、”おうち時間”という言葉が流行し、外出自粛を余儀なくされる中で、テレワークやオンライン通話アプリの普及が進み、これまで以上にオンラインでのやり取りをする機会が増えていきました。

 

その結果、企業と個人が活用するサービスも徐々にIT化が進んでいきました。

企業は積極的なクラウドを活用し、各業界ではDX化の流れが一気に加速しました。
個人においても、家で簡単に商品を購入できるeコマースを活用する機会が増え、長く続くコロナ禍は、ビジネス社会だけでなく、個人の消費行動までオンライン化している現状にあります。

日々加速するデジタル化の中で、IT業界は技術の進化が求められています。環境の変化が激しく、その中で生き残っていくためには社会のニーズや世界のトレンドを的確にとらえ、柔軟に対応していく能力が必要な業界と言えます。

 

 

2.IT業界の課題


昨今、各業界がIT化を進め、IT業界の将来性は明るいという意見が多く見受けられます。

そんなIT業界の課題はどのようなことが挙げられるのでしょうか。

 

①IT人材の不足

1点目の課題はIT人材の不足です。

 

IT業界は近年需要が急拡大しており、IT人材が不足しています。
前述の通り、IT市場の急成長により、多くの企業はクラウド等の新サービスを導入するようになりました。

 

その一方、日本企業は既存のシステムから脱却ができず、既存システムの保守・運用に貴重なIT人材が利用されている現状があります。
その結果、日本では、IT人材の不足という課題が顕著に表れています。

さらに、少子高齢化による労働人口の減少も重なり、深刻な人材不足に陥っています。
少子高齢化による人口減少とIT業界の拡大に伴う人材の不足が同時に起きる中、IT業界の人材不足は益々問題になると予測されます。

 

以下はIT人材の需給に関する推計結果の表になります。

 

 

 

(出典)経済産業省「IT分野について」:IT人材の需給に関する推計結果

 

 

人材不足はIT企業だけではなく、情報システム部門に配属する人材も不足していき、今後IT人材の不足は益々加速していくと経済産業省も予測しています。

最近ではプログラミングスクールを実施する企業やプログラミングに義務教育の開始等、IT人材を増やす流れは出来ていますが、効果が出ているとは言い切れない現状があります。

 

②エンジニアの長時間労働

2点目の課題はエンジニアの長時間労働です。

 

IT業界の需要が拡大する一方で人材不足が引き金となりエンジニアの長時間労働が業界として起きています。
また、人材不足の他にIT業界の構造がエンジニアの長時間労働を起こしている要因の一つにもなっています。

それはIT業界の多重下請け構造です。
大手から案件が下りてきて、その案件を受けた中堅企業が更に中小企業に振り分けるという構造です。

 

 

(出典):ITメディア

 

 

この多重下請け構造は自社では抱えきれない業務量を別の企業に振り、案件を受けた企業も大きい案件に携わることができるメリットがある一方で、デメリットも存在します。

下請け企業が大手から無茶な納期を強いられ、エンジニアが長時間労働を強いられるという点です。これがエンジニアの長時間労働が起きる要因の一つです。

また、ソフトウェア開発では、複数のエンジニアがチームで仕事を遂行する為、業務の進捗管理や製品の品質管理を把握することが難しく、個人の経験とノウハウにどうしても依存してしまいます。また、企画の構成が不十分な場合、その後の作業に影響が出て、時間外労働などが増えて長時間労働へと繋がります。

慢性的な長時間労働を解決する為に、働き方改革を推進することは一つの解決策となります。例として、在宅勤務を推奨することで、通勤時間を削減し、家族やプライベートな時間を確保しやすくすることが挙げられます。

 

 

3.最後に


今回はIT業界の課題について記事をまとめさせていただきました。
IT業界が抱える課題である、人材不足と長時間労働は深刻な問題であることがご理解いただけたかと思います。

IT業界は上記課題を解決する為にM&Aが活発です。

薄利な多重下請け構造からの脱却をしたい。大手傘下に入り経営の安定と人材不足、技術不足を解消したい。新しい技術を取り入れたいという理由が主な理由です。

IT企業のM&Aには専門知識が必要となる為、専門業者に相談することをおすすめします。

 

 

 

 

 

【業界別M&A動向】

技術者派遣業界の概況と、M&Aにおけるチェックポイント

 

 

〈解説〉

ロングブラックパートナーズ株式会社(堺 康行 )

 

 

〈目次〉

1.技術者派遣業界の概況

2.技術者派遣業界のM&A動向と事例考察

①株式会社Success Holdersによる株式会社P&Pの買収(2021年4月)

②三陽工業株式会社による株式会社極東ブレインの買収(2021年12月)

3.技術者派遣業のM&Aにおける売却側のチェックポイント

①採用コストの増加に伴う適切な売価転嫁の進捗

②派遣業務上の適法性

③完成責任を負う請負業務の適切な管理体制構築

④営業、現場対応等業務の権限委譲を進める

4.技術者派遣業のM&Aにおける買収側のチェックポイント

①所属技術者の契約単価、稼働率、技術分野(専門性、転用性)

②売上高・人件費マージンに関する調査

③既存取引先とのリレーション・キーマンの存在有無

5.最後に

 

 

 

 

1.技術者派遣業界の概況


技術者派遣業界は、少子高齢化による人手不足に加え、IT・建設業を中心とした需要高止まりを受け、業界主要企業を中心に業績拡大が続いています。

 

 

データ引用:各社IR資料より

 

 

他方、仕入側となる人材採用においては、厳しい状況が続いています。
コロナ禍により一時的に求人倍率は低下したものの、足下では以前の水準に戻りつつあります。
IT系(約10倍)、建築土木系(約5倍)を始め高い水準で推移しています。

 

また、昨今ではリファラル採用の浸透やフリーランス志向の高まりから、転職市場で経験者を獲得することは一段と難しくなり、採用コスト増(求人・待遇面)による採算性低下は業界内共通の課題となりつつあります。

 

こういった背景から、M&Aは人員確保の有力な手段として活用されており、企業規模を問わず事業承継や買収が活発に行われています。

 

 

データ引用:doda(デューダ)転職求人倍率レポートより

 

 

データ引用:Lancers フリーランス実態調査 2021より

 

 

 

2.技術者派遣業界のM&A動向と事例考察


コロナ禍の中でも、技術者派遣業界ではM&Aのニュースが報告され続けています。

 

業界全体のM&A動向としては、最大手級が海外人材派遣業の買収に取り組む一方、準大手・中堅クラス企業も多く国内M&Aの買い手となっていることが特徴として挙げられます。

 

 

最大手企業による近年の海外M&A事例

 

 

ここでは、最大手以外の企業による2件の国内M&A事例を取り上げ、動向を読み解きます。

 

 

①株式会社Success Holdersによる株式会社P&Pの買収(2021年4月)

 

株式会社Success Holders(JASDAQ上場、エンジニア派遣、メディア事業等)による株式会社P&P(システム開発・派遣等)の買収が2021年4月27日に発表されました。株式会社P&Pは直近期の売上高3.5億円であり、同社ホームページによると従業員数は22人規模とのことです。

 

Success Holderによるプレスリリースによると、「ポストコロナにおいて発展性のある事業・業種」と位置づけ今般のM&Aを決定しており、今後もIT技術者派遣事業の発展性を見込んでいることが推察されます。

 

 

②三陽工業株式会社による株式会社極東ブレインの買収(2021年12月)

 

三陽工業株式会社(非上場、製造業・製造派遣)による株式会社極東ブレイン(機械設計・電気設計の技術派遣等)の買収が2021年12月9日に発表されました。株式会社極東ブレインは1982年設立、従業員数は46人(2021年2月現在)とのことです。

 

三陽工業のプレスリリースによると、CADと設計に関する強みを持つ極東ブレインとの事業上の親和性を見込んでいると読み取れます。

 

この事例のように、設立後30~40年が経過し経営者の代替わりが進む中で、大手資本に参加しその後の発展を図るケースが多いのも、技術者派遣業界のM&Aで昨今増加している様態と言えます。

 

 

3.技術者派遣業のM&Aにおける売却側のチェックポイント


技術者派遣業の経営者様が株式売却を検討する場合のポイントを解説します。
ここで挙げる点で何らか不安点がある場合、事前に解消ができるかを検討することをお勧めします。

 

①採用コストの増加に伴う適切な売価転嫁の進捗

 

前述の通り、業界全体として人材確保難・待遇改善によるコスト増の動向が業界全般に見受けられます。

人材不足は当業界のみならず日本全体の課題と言えます。
顧客との価格交渉によりコスト増加を適切に転嫁し、持続可能な経営状態を保つ努力を行うことが、M&Aや事業承継を円滑に進めるポイントとなります。

 

②派遣業務上の適法性

 

人材派遣業は、2018年に許可制に完全統合されたことなど、法制面やコンプライアンス面の対応が進みつつあります。

その背景には、かつては多重派遣や偽装請負など、法令上問題がある慣習が業界内に横行した反省があり、現在は上場企業を中心に適法性は重視される状況にあります。

第三者監査を受けない中小企業においては図らずも旧来の問題がある体制が残存している場合があります。
M&Aの場になり法務面の不安がネックとならない様、業務フローや契約書などを現行制度に照らして事前整備する必要があります。

特に出向や準委任契約の運用は論点が生じやすいポイントです。あらかじめ労務・法務専門家の意見を受けながら早期に適法性を確認・是正していくことをお勧めします。

 

③完成責任を負う請負業務の適切な管理体制構築

 

技術者派遣業会社では、派遣契約を基本としつつも、一部業務を請負形態で契約している会社は少なくありません。

 

時間単価で稼働分の報酬を得る形態とは違い赤字化リスクを負う形態ですが、プロジェクトマネジメントを含め、適切に管理できる体制・人員が整っていれば、買い手にとっては魅力的なポイントにもなり得ます。

 

請負業務を行っている場合で、直近で見積工数オーバー等による損失が発生している場合、時間単価契約への移行や見積もり精緻化等、何らかの対策をしておいた方が好ましいと言えます。逆にそのような事象がなく少なくとも数年間に亘り安定的な案件運用ができていれば、アピールできるポイントと考えられます。

 

④営業、現場対応等業務の権限委譲を進める

 

売却後に引退を検討される場合は、ご自身がいなくても現在の取引が継続できるよう権限移譲を進める必要があります。

 

 

4.技術者派遣業のM&Aにおける買収側のチェックポイント


逆に技術者派遣業の会社を買収する会社様が検討するべき、業界特有のポイントを解説します。

 

①所属技術者の契約単価、稼働率、技術分野(専門性、転用性)

 

技術者派遣業はその事業の特性上、人員の特性が事業性の大半を占めています。
そのため、技術者ごとの採算性や技術分野、年齢などは細かく検査する必要があります。

 

専門性の高低は基本的には契約単価や稼働率に表れます。但し、特定取引先への依存度が高い場合や交渉を積極的に行っていない場合などでは、適正金額よりも低く評価されている場合があります。買収調査においては、技術者のスキルシートを入手して個別に調査(ヒューマン・デュー・ディリジェンス)を実施し、併せて商流に関する調査を行うのが好ましいと言えます。

 

②売上高・人件費マージンに関する調査

 

前述のように、技術者の採用コストは上昇しつつあります。マージン率が低下しつつある会社については、交渉状況など商流の確認を行う必要があります。

また、所属技術者の転用性が低い(いわゆる潰しが効かない)場合、仮に既存取引先が失注するとマージン率が急落する可能性がありますので、注意が必要です。

 

③既存取引先とのリレーション・キーマンの存在有無

 

技術者派遣業の多くの会社は、従業員の大部分が技術者で占められる組織であり、営業体制は最小限となっていることが少なくありません。
そのような中で既存取引先とのリレーション上、失ってはならないキーマンとなっている営業員や役員が存在する可能性があります。
事前に案件獲得フローなどを確認し、必要に応じてキーマン条項をSPA(株式譲渡契約)に盛り込むなど検討する必要があります。

 

 

 

5.最後に


技術者派遣業界はM&Aが活発な業界の一つです。
現経営者様としては多数の可能性を検討する余地があり、逆に買収を検討される企業様には競争が増す状況でもあります。

当社は技術者派遣業のM&Aについて多数の知見を有しており、業界特有の論点についてもサポートが可能です。
M&Aも一つの選択肢とされる場合、業界動向も含めてご案内させていただきますので、これを機にご検討されてみてはいかがでしょうか。

 

 

 

 

【業界別M&A動向】

食品製造業のM&A動向(第2回) ~直近の業界内のM&A動向について~

 

 

〈解説〉

ロングブラックパートナーズ株式会社(金川 明央)

 

 

〈目次〉

1.直近の業界内のM&A動向について

2.検討のポイント

➀異業種を買手とした事例

②ファンドを買手とした事例

③周辺領域を買手とした事例

3.最後に

 

 

 

 

1.直近の業界内のM&A動向について


2021年6月1日から2022年5月末までの1年間で、売手を食品関連企業とするM&Aは公表ベースで47件となっています。
このうち同業種を買手とする割合は51%、異業種/周辺業種を買手とする割合は49%となりました(図A/※1)

 

 

 

 

 

また、上記円グラフに記載の異業種/周辺業種を買手とする23件の事例の内、買手業種別に見てみると、化学・医薬品、商社、外食をはじめとして幅広な業種により構成されています。(図B/※2)

 

 

 

 

これは買手が「川下から川上まで事業領域を拡大する」「新事業領域に進出する」といった目的を基にM&Aを実施していることが起因しています。
また、「事業承継」や「成長支援」をテーマに企業投資を行うファンドによる買収事例も一定数存在します。

前回のコラムでも記載しましたが、同業界は「販路の拡大」や「製造コストの削減による生産効率の改善」を含む様々な課題を抱えており、同業種だけでなく異業種や周辺領域の企業とタッグを組むことにより課題解決につながるケースもあります。

 

また、ビジネス面以外にも「後継者不在」「人材の採用」「人材の育成」など内部的な課題を持つ企業も存在しており、内部体制の強化を期待してファンドに投資を受ける事例もあります。
通常、M&Aの検討から成約まで、またM&A実行後のシナジー構築まで一定の時間を要するケースが大半であるため、課題解決のための一つの方法としてM&Aを検討される場合は想定しているよりも早いタイミングから着手されることを推奨します。
(※1)(※2)レコフデータより弊社作成

 

 

2.検討のポイント


実際に直近1年以内に実施された同業界内のM&Aの事例を基に、本項では同業界のM&Aのポイントについて触れていきたいと思います。

 

➀異業種を買手とした事例

 

 

 

ノフレ食品は、北海道を拠点にした食品の企画販売会社で、レトルト・缶詰・瓶詰を中心とする同社の商品は、様々な賞を受賞するなど商品の企画開発力・ブランド力が高く評価されており、ノフレコミュニケーションズは、ノフレ食品で培った商品企画力やECを中心としたコンサルティングノウハウを活用したサービスを展開しているとのことです。

ノフレ食品は、クロス・マーケティング・グループ社の食品EC部門におけるノウハウを活かしたサービス連携や顧客開拓による更なる会社の売上の拡大を企図していると考えられます。

 

本事例のポイントとしては、売手企業の「企画開発力」「ブランド力」が優れたものであったという点であると考えられます。

事業の根幹である商品力が確立されていることにより、買手企業とのシナジーの構想が描きやすくなります。

 

 

②ファンドを買手とした事例

 

 

 

 

ホソヤコーポレーションは、中華系チルド食品を製造する食品メーカーであり、同社の主力商品である贅沢シリーズ(焼売・餃子・春巻)は、関東圏の食品スーパーマーケットにおいて各カテゴリーのトップシェア商品となっているとのことです。

J-GIAは日本たばこ産業株式会社・株式会社博報堂をアライアンス・パートナーとしており、ファンドによる経営管理機能の強化に加え、2社による生産・品質管理の事業支援やマーケティング支援による更なる企業価値向上を企図しているものと考えられます。

 

本事例においても、売手であるホソヤコーポレーションが既に強固な商品力を有していた点がポイントであると考えられます。

 

 

③周辺領域を買手とした事例

 

 

 

道東ライスは1973年に設立し、道東地区で食品製造業に従事しています。福原は道東ライスの米穀の炊飯加工業、惣菜類の製造ノウハウを活かし、アークスグループの惣菜事業と連携させることにより、惣菜事業の拡大を企図していると考えられます。

 

本案件においては、「製造ノウハウ」「生産拠点」の獲得がポイントとして挙げられます。

食品製造業界においては、生産拠点の獲得を目的としたM&A事例も多く見受けられます。

 

 

3.最後に


食品製造業界のM&Aは、買手の経営戦略の多角化、また売手の抱える課題に応じて、同業種だけでなく、異業種/周辺業種を買手とした事例も増えてきています。

特に売手側がM&Aを検討する動機も「後継者不足」のような内部事情に起因したものだけでなく、「自社の更なる成長」を主眼に置いたケースも増えてきたように見受けられます。

自社の課題解決の一つの選択肢として、M&Aを検討されてみてはいかがでしょうか?

 

 

 

 

 

【業界別M&A動向】

物流業のM&A動向(第2回)~物流の2024年問題~

 

 

〈解説〉

ロングブラックパートナーズ株式会社(玉積 範将)

 

 

〈目次〉

1. 物流の2024年問題とは

2. 物流の2024年問題が物流業に与える影響

①ドライバー視点

②物流会社視点

③荷主視点

3. 対応策の方向性

4. 最後に

 

 

 

 

1. 物流の2024年問題とは


働き方改革関連法により、2024年4月より「自動車運転の業務」に対し、年間時間外労働上限が「年960時間」に制限されることにより発生する諸問題のこととされています。

2019年4月に施行された同法では、「時間外労働の上限は月45時間、年360時間に制限(原則)」されており、労使間で協定を結んだ場合においても「年720時間に制限(例外)」されますが、物流業界(自動車運転の業務)では実態との乖離が大きいことから、適用迄に「5年間」の猶予期間が設けられたことに加え、労使間で協定を結んだ場合の上限として「年960時間」と定められています。

 

しかし、この「年960時間」といういわゆる特例的な対応についても、同法において「将来的な一般則の適用について引続き検討する旨を附則に規定」とされていることから、今後も同上限時間の維持が担保されるとも限らないのです。

 

 

2. 物流の2024年問題が物流業に与える影響


では、物流の2024年問題がどのような影響を及ぼすのかについて、現時点で懸念されているポイントや可能性についてステークホルダー別の視点で見ていきたいと思います。

 

①ドライバー視点

 

前回(第1回)でも記載したように、一般的にドライバー職では、他の産業と比較して「低所得+長時間労働」であることが顕著です。

これは、言い換えると「労働(=長時間の時間外労働を含む)の対価として受け取る時間あたりの報酬(所得)が、全産業と比して低い」ということに他なりません。

そうした状況下、さらに時間外労働の上限が課されることにより、従来受け取ることができていた諸手当を受け取ることができなくなり、結果として収入が減少するドライバーが出てくる可能性は否定できません。

業界慣習として、長い荷待ち時間や手荷役の常態化が大きな要因とされることも多く、ドライバー個人/物流会社単独ではなかなか解決の糸口を探ることは難しい状況となっています。

 

②物流会社視点

 

物流会社における基本的な構図は、「ヒト(従業員)」が「モノ(荷物等)」を「運送」することにより売上を上げるビジネスモデルです。この運送するという行為において、ヒトの稼働時間に制限が掛けられることにより、業務量が減少した結果、売上が下がる可能性が考えられます。

また、業務量を維持するためにヒトの採用を拡大する場合、固定費の割合が増加(従来の時間外手当<新人員の基本給)となる可能性もあり、利益率が減少する可能性についても考えておく必要があります。加えて、人件費以外の固定費等(営業に必要なコスト:事業所やトラックに係る費用)を削減することは比較的難易度が高いことから、売上だけでなく利益そのものについても注視すべきだと考えられます。

もっとも、利益水準が低下した場合、ドライバーに十分な水準の給与を支払うことが可能であるか否かという問題も顕在化することとなり、物流会社における売上の源泉である「ヒト(従業員)」の確保が難しくなり、負のスパイラルに陥る可能性も懸念されています。

 

③荷主視点

 

上述した物流会社(およびドライバー)視点では、売上や収入面においてマイナスの影響が想定されています。この課題を解決する方策の一つとして物流会社では「荷主からの受注額(=運送単価)の増加でカバーする必要性」が生じます。

しかしながら、2012年以降、既に物流コストは上昇基調を辿っています(図A/※1)。

 

 

 

 

また、国内企業の多くは、物流やロジスティクスについて「コスト削減の対象」としての認識が依然として高い傾向があり、戦略的な取り組みが浸透していないことが挙げられます(図B/※1)。

 

 

 

 

このような状況において、「受注額(=運送単価)の増加」という交渉はやはり難易度が高いと言わざるを得ないと考えます。

(※1)経済産業省「物流危機とフィジカルインターネット(令和3年10月)」より

 

 

3. 対応策の方向性


ここまで、「物流の2024年問題」が各ステークホルダーに及ぼす影響・可能性について触れてきました。当然ながら、物流会社の規模やドライバーの現在の労働環境、荷主との関係性において、各社が置かれている状況は様々だと考えられます。

 

この問題に対して、「労働環境や処遇の改善によるドライバーの採用強化」や「荷主に対する受注額(=運送単価)の増額交渉」といった対応策も、短期的に効果を得られるかもしれません。しかしながら、物流業界の構造的な問題が依然根深い状態であることを考えると、2024年という短期的な問題と捉えることには無理が生じます。

 

前回(第1回)でも触れたように、物流業界の展望として「データの利活用によるDX/効率化」や「同業種・異業種を含めた連携」が必要となると考えられます。

 

このように未来を見据えた変革/変容と、2024年問題で挙げられるような課題について、M&Aによる会社売却や事業売却(=大手グループの傘下となること)が有効な手段とされています。

 

2021年の1年間において、売手を物流関連企業とするM&Aは公表ベースで51件(注1)となっており、うち約8割は同業者を買手とする買収事例となっています(図C/※2)。

 

「既存領域の強化」に加え、「効率化・相互補完」や「新事業の創出」という観点でのM&Aは今後も増加していくと考えられています。

 

 

(注1)国内企業同士の買収事例のみ。事業譲渡や資本参加事例は除く。
(※2)レコフデータより弊社作成 

4. 最後に


「経済・産業の血液」と評される物流業界は、我が国がさらに発展するための非常に重要なファクターとされています。

 

しかしながら、現状では労働環境や人材不足、後継者問題等の様々な課題に直面しており、2024年問題に代表されるような「直ぐに対応が求められる」課題に加え、「将来を見据えた変革」さえも求められています。

 

こうした状況に対応する前向きな解決策のひとつとして、M&Aをご検討されてみてはいかがでしょうか?

 

 

 

【業界別M&A動向】

食品製造業のM&A動向~食品製造業の現状と課題、食品製造業のM&A事例~

 

 

〈解説〉

ロングブラックパートナーズ株式会社(玉積 範将)

 

 

〈目次〉

1. 食品製造業の現状と課題

課題①:人口の減少

課題②:製造コストの高騰

2. 食品製造業の展望

3. 食品製造業のM&A事例

4. 最後に

 

 

 

 

1. 食品製造業の現状と課題


食品製造業界の2019年度における市場規模は、前年度比+0.25%の約29兆8,571億円とされています(※1)

 

 

 

課題①:人口の減少

 

日本の人口は減少傾向にあり、将来的な食料支出総額は減少することが想定されます(図A※2、図B※3)

そのため、食品製造業においては海外に販路を拡大する動きも見受けられます。しかしながら、海外現地の法律や商習慣情報の不足、海外展開を任せられる人材の確保が困難であることを課題に感じている企業も多いのが現状です。

 

 

 

 

 

課題②:製造コストの高騰

 

食品業界は仕入価格の変動、人件費・物流費の高騰などに起因する製造コスト上昇により利益を圧迫されるリスクがあります。また、競合他社との価格競争により、製造コストの上昇を販売価格に転嫁し難いという現状もございます。

そのため、仕入から販売に至るまでの適切な業務管理や、機械導入などの省人化による生産性の向上が必要となりますが、それらに必要なリソースを鑑みると、改善への着手が困難な中小企業も一定数存在します。

現状は、他の製造業種と比較しても、食品製造業は労働生産性が低い状況にあります。(図C/※4)

 

 

(※1)経済産業省「産業別統計表」より当社作成
(※2)総務省統計局「人口の推移と将来人口」より当社作成
(※3)農林水産政策研究所「人口減少局面における食料推移の将来推計」より当社作成
(※4)経済産業省「産業別統計表」より当社作成

 

 

2. 食品製造業の展望


前述の課題でも言及しておりますが、販路拡大の方策は、今後縮小が予測される国内市場で競合他社とパイを奪い合うか、海外事業を拡大するかに大別されます。

一方で、生産力向上によるコストの削減も並行して求められますが、多くの中小企業においては人材や資金のリソースが不足しており、自社単体での成長戦略に限界を感じている企業も少なくありません。

また、大企業においてもより顧客のニーズを満たすための商品開発や自社商品の更なるブランド力向上を企図しており、選択と集中のためにノンコア事業のカーブアウトを検討するケースもあります。

上記に挙げた、業界内の大企業・中小企業の課題解決策の一つとしてM&Aという選択肢があり、同業種・異業種同士を問わず、今後も食品製造業界のM&Aは活発化していく可能性が高いと考えられます。

 

3. 食品製造業のM&A事例


1件目は同事業を展開している企業によるM&Aの事例です。

東海漬物は浅漬分野の更なる拡大を企図しており、販路や製造ノウハウの共有によるシナジーが見込まれます。食品業界においては、本件のようなエリアの異なる企業同士のM&Aも珍しくありません。

 

 

 

 

2件目は商品力の強化を目的としたM&Aの事例です。

丸大食品は双方の商品力や研究開発力を融合することで、顧客のニーズをより満たせるような商品展開を企図しています。

 

 

 

 

3件目は異業種同士の企業によるM&Aの事例です。

オーイズミは成長戦略の一環で食品事業の強化を企図しており、商品力のみならず、下仁田物産の取得している食品安全システム認証の国際規格にも関心を示しました。

また、食品業界のM&Aにおいては、M&A実行後も自社のカラーを色濃く存続したいとの理由から異業種の買手を希望される経営者様も多くいらっしゃいます。

 

 

 

 

 

4. 最後に


食品製造業界は現状様々な課題に直面しており、各社課題解決に向けた取り組みが求められています。また昨今の新型コロナウイルスの流行を受け、将来の見通しに不確定要素が加わったことから、スピード感を持った経営の舵取りや事業の見直しが必要と考えられています。

こうした状況に対応する前向きな解決策のひとつとして、M&Aを検討されてみてはいかがでしょうか?

 

 

 

 

【業界別M&A動向】

電気工事業のM&A動向(第2回)

~2021年度の電気工事業のM&A動向の振り返り、M&A(会社 売却)検討時のポイント~

 

 

〈解説〉

ロングブラックパートナーズ株式会社(玉積 範将)

 

目次

1. 2021年度の電気工事業のM&A動向の振り返り

2.M&A(会社 売却)検討時のポイント

①従業員の年齢構成/資格保有者数/勤続年数

②労働基準法の遵守状況

③取引先との関係性

3. 最後に

 

 

 

 

 

1. 2021年度の電気工事業のM&A動向の振り返り


2021年の1年間で、売手を建設関連企業(注1)とするM&Aは公表ベースで78件となっています。

このうち同業種を買手とする割合は49%、異業種/周辺業種合を買手とする割合は51%となりました(図A/※1)。

 

 

 

 

また、異業種/周辺業種を買手とするM&Aのうち、買手業種別に見てみると、サービス業(14%)/その他金融・ファンド(10%)/不動産・ホテル(8%)となっています。

 

これは、買手が「既存事業とのシナジーを極大化する」もしくは「新事業領域に進出する」といった目的で買収を行うケースが増えていることに加え、「事業承継」や「更なる成長」を実現するための引き受け手として投資ファンドも活用されているためと想定されます。

 

前回のコラムでも採り上げたように、同業界は「景気変動の影響が大きい」ことに加え、「人材不足」や「技術の継承」、「後継者不足」など、構造的に多くの問題を抱えています。

新型コロナウイルスの収束が見通せない状況下において、これらの問題の先送りは更なる悪循環(あきらめ型休廃業や解散)を生む可能性もあり、早急な対応が急務だとされています。

 

(注1)同業界は「建設業>設備工事業>電気工事業」と区分されるものの、各工程を併営する企業が多いことから建設関連企業のM&A動向としている
(※1)レコフデータより弊社作成

 

 

2.M&A(会社 売却)検討時のポイント


本項では、会社売却を検討する場合に検討、整理しておくべき点について、買手候補からどのような観点で会社を見られるのかという点から考えていきたいと思います。

 

 

①従業員の年齢構成/資格保有者数/勤続年数

 

電気工事業の大きな課題のひとつとして、「従業員」に関する問題が挙げられることは既述の通りです。当然にして有資格者しか携わることができない業務もあり、「教育や資格取得に時間を要する」ことに加え、「技術承継をするにしても、既存社員の高齢化や若手社員の採用難・定着率難」といった問題を中小企業の多くは抱えています。

 

この問題を買手目線で見た場合、「近い将来、人材不足(退職)や技術不足(ノウハウが引き継がれない)が発生する可能性が高いか否か」を確認する必要が出てきます。つまり、買収後、追加的にどの程度金銭的・時間的なコスト(採用強化や技術者教育等)が発生するかについての検証が必須となります。

 

②労働基準法の遵守状況

 

電気工事業において一般的に問題となり得る事項は、「残業代・給与の未払い」や「労働時間」に関する違反とされています。

中小企業の多くは勤怠管理など未だアナログな管理をしているケースもあれば、突発的な工事対応等が起こり得る業界です。「法律が実態を反映していない」という経営者の声も良く聞かれる項目ではありますが、買手目線に立ってみた場合、仮に違反があったとされた場合にそのリスクを負うことは避けたいと考えることが通常です。

M&Aの実務として、例えば「未払残業代」が発生する可能性が高いと買手が判断した場合、株式譲渡契約の「表明保証」という条項において、売手にも一定の負担が発生するという項目が付されることが一般的です。

つまり、「会社を売却したから問題ない」というわけではなく、「リスクを負う可能性」を予め排除しておく必要があるということです。

 

③取引先との関係性

 

買手側からすると、売手の収益の源泉となっている取引先との関係性は非常に重要な事項となります。

特に、「直請/下請の比率」はどうなのか、「安定取引のある得意先はあるのか」といった点が挙げられます。もちろん買手のM&A戦略にもよりますが、基本的には買収後も「既存取引先から安定した売上・利益が確保できる」ことを前提として株価を算定するからです。

一方、「安定した取引先」が「複数社に分散しているか、一社偏重か」という点は買手の判断次第となる点も否めません。「卵は一つのカゴに盛るな」と同じ考え方ではありますが、一般的に、事業継続性を担保するには複数社への分散がより良いとされており、特定企業への依存度について、将来的な取引剥落についてのリスク評価も買手の重要な判断軸となります。

 

 

3. 最後に


電気工事業界のM&Aは、買手の経営戦略の多様化を背景に、同業種だけでなく異業種/周辺業種も主要プレイヤーとして活発に行われています。

また、様々な課題を抱える同業界においては、自社単独で解決できる課題ばかりではないと考えられています。

こうした状況に対応する前向きな解決策のひとつとして、M&Aを検討されてみてはいかがでしょうか?

 

 

 

 

 

【業界別M&A動向】

電気工事業のM&A動向(第1回)~電気工事業の現状と課題~

 

 

〈解説〉

ロングブラックパートナーズ株式会社(玉積 範将)

 

 

〈目次〉

1. 電気工事業界の現状と課題

課題①:景気変動の影響が大きい

課題②:人材不足と高齢化

2. 電気工事業界の展望

3. 電気工事業のM&A動向

4. 最後に

 

 

 

 

 

 

1. 電気工事業界の現状と課題


電気工事業界の2019年度における市場規模は、前年度比+0.9%の約8兆9029億円とされています(※1)。

 

課題①:景気変動の影響が大きい

 

同業界は「建設業>設備工事業>電気工事業」と区分されることから、基本的に工事案件(受注状況)は建設需要に連動しています(景気変動→案件予算→受発注予算)。特に、公共工事分野においては各々の地域における景況感が与える影響は少なくありません。

 

加えて、2019年度の電気工事業の完成工事高のうち、約48%程度はゼネコン等の下請けとして工事を受注(図A/※1)しており、建設業界特有のピラミッド型構造であることを考えると、景気後退局面等において価格交渉力が低下するなどの弊害が生じる可能性が高いとされています。

 

 

 

 

また、電気工事業界の景況感を測る一つの指標に建設投資額があります。

 

近年では東京五輪効果を背景に堅調な推移となっており(2020年度:約63兆1600億円の予想)、今後も大規模インフラ(橋やトンネル等)の改修に加え、民間の大型開発プロジェクト等も見通されていることから、同業界における需要自体は底堅く推移することが想定されています(2025年度:約63兆円の予想)(図B/※2,3)。

 

しかし一方、民間工事案件においては、新型コロナウイルスによる顧客企業の設備投資抑制の可能性や、計画の延期/見直しについては不透明感が残ることから、必ずしも業界全体としての見通しが明るいとは言い切れない状況と言えます。

 

 

 

 

課題②:人材不足と高齢化

 

電気工事業界におけるもう一つの大きな課題は、従事者数の減少と高齢化が挙げられます。前述の通り同業界が属する建設業界では、約378万人(2021年7月時点)が従事していますが、10年前と比較すると約34万人も減少しており(※4)、2011年以降(東日本大震災の復興需要や東京五輪特需等)、人材の不足感が高まっていることが見受けられます(図C/※5)。

 

 

 

 

加えて、従事者の年齢別割合を見てみると、55歳以上が約34%(全産業比+5%)、29歳以下が約11%(全産業比▲5%)となっており、次世代への技術承継も大きな課題となっています(※6)。

 

また、国土交通省の調査によると、電気工事業界における「ヒト」に関する課題認識は非常に高く、上述の「①人材不足」に留まらず、「⑤後継者問題(=事業承継)」についても大きな関心事となっていることが分かります。
後継者問題については小~中規模事業者のうち3割超が課題を抱えているという結果も出ています(図D、E/※7/注1)。

 

この2つの「ヒト」に関する課題は、事業の成長性や継続性という観点から早急に手を打つ必要性が高いと考えられます。

 

 

 

(※1)国土交通省「建設工事施工統計調査」より
(※2)国土交通省「建設投資見通し」より
(※3)みずほ銀行「日本産業の中期見通し」(建設)」より
(※4)総務省「労働力調査」より
(※5)国土交通省「建設労働需給調査」より
(※6)国土交通省「建設業及び建設工事従事者の現状」より
(※7)国土交通省「建設業構造実態調査」より

 

 

2. 電気工事業界の展望


近年、大手電気設備工事各社はメガソーラーなどの新(再生)エネルギー発電事業の分野に力を入れてきました。しかしながら、2020年6月に改正再エネ特措法が成立したことを受け、今後、同事業の競争が激化するなどの懸念から伸び率は急落するなど、以前のような勢いは無くなってきています(図F/※8)。

 

 

(※8)日本電設工業協会「電気工事業の受注調査」より

 

 

また、同業大手各社は「事業エリアの拡大」に積極的に取り組む一方、異業種/周辺業種の大手各社は「事業領域の拡大(=総合設備工事業)」や「既存事業領域とのシナジー(内製化含む)」という目的で電気工事業界への進出を進めており、今後より一層業界再編(=企業買収・統合)の波が押し寄せる可能性が高くなっています。

 

 

3. 電気工事業のM&A動向


2015年初以降、売手を建設関連企業とするM&Aは公表ベースで327件(注2)となっており、うち約6割が異業種(商社/ビルメンテナンス事業者等)や周辺業種(電気通信工事業者/管工事業者等)を買手とする事例となっています(図G/※9)。

 

 

(注2)国内企業同士の買収事例のみ。事業譲渡や資本参加事例は除く。
(※9)レコフデータより弊社作成

 

同業種同士のM&Aについては比較的イメージがしやすいと考えられることから、下記では異業種/周辺業種を買手とした事例についてご紹介をします。

 

 

 

 

 

このように、異業種/周辺業種との間においても様々な観点でのM&Aが行われるケースが一定数存在しています。

 

 

4. 最後に


電気工事業界は従来から様々な課題に直面しており、事業構造上の問題点も少なくありません。また昨今の新型コロナウイルスの流行を受け、将来の見通しに不確定要素が加わったことから、スピード感を持った経営の舵取りや事業の見直しが必要です。

 

こうした状況に対応する前向きな解決策のひとつとして、M&Aを検討されてみてはいかがでしょうか?

 

 

 

 

【業界別M&A動向】

物流業のM&A動向(第1回)~物流業の現状と課題~

 

 

〈解説〉

ロングブラックパートナーズ株式会社(玉積 範将)

 

 

〈目次〉

1. 物流業界の現状と課題課題

課題①:労働環境

課題②:配送の小口化、輸送効率の悪化

2. 物流業界の展望

3. 物流業のM&A

4. 最後に

 

 

 

 

1. 物流業界の現状と課題


物流業界の市場規模は約24兆円、就業者数は約258万人とされています。その内、トラック運送業が占める割合が最も多く、市場規模は約16兆円(全体の約70%)、就業者数は約193万人(同75%)となっており、その内中小企業の占める割合は99.9%とされています(※1)。

 

 

課題①:労働環境

 

トラック運送業において顕在化している大きな課題のひとつとして、ドライバー職における「低所得+長時間労働」が挙げられます(図A/図B)(※2)。

 

こうした労働環境から、「労働力不足+高齢化」といった問題が過去より取り沙汰されてきた一方、大きな改善が見られていないのが現状です(図C/図D)(※3 , 1)。

 

 

 

 

 

 

課題②:配送の小口化、輸送効率の悪化

 

近年、EC市場(とりわけB to C領域)の拡大により、従前の物流の根幹であった「定時性・定期性・大量配送」に加え、「適時性(即時性)・適切性・小口配送」といった役割が付加されてきました(図E)(※4)。

 

また、営業用トラックの積載率も近年約40%以下で推移しており、消費者(サービス購入者)のニーズの高まりと併せ、輸送効率の悪さが業界全体としての生産性の低下を招いていると推測されます(図F)(※5)。

 

 

 

(※1)国土交通省「物流を取り巻く動向について(令和2年7月)」より
(※2)厚生労働省「賃金構造基本統計調査」より
(※3)全日本トラック協会「トラック運送業界の景況感」より
(※4)経済産業省「電子商取引に関する市場調査」より
(※5)国土交通省「自動車輸送統計年報」より

 

 

2. 物流業界の展望


これらの課題解決策として、自社における働き方改革だけでは不十分と考えられており、特に業界慣習(長い荷待ち時間や手荷役などの常態化)の見直しや物流効率化に向け、業界の垣根を超えた様々なステークホルダーとの密接な連携により解決策を講じる必要性が高まってきています。

 

また物流業界はデータの利活用による変革が最も期待される産業のひとつとされており、最先端技術の導入(例:AI・IoT、自動運転、RFID、AGV等)や、他社/異業種連携によるアライアンス(例:シェアリング、共同物流、ラストワンマイル等)による物流ネットワークの再構築が求められています(図G)(※6)。

 

 

(※6)日本経済団体連合会「Society5.0時代の物流(2018年10月)」より

 

 

このような動きは現状大手企業同士の連携として多くみられる一方、中小企業においてもその影響は少なくありません。

 

事業/資本規模の小さい中小企業においては、先に触れた課題が比較的経営環境の悪化に直結しやすいことに加え、効率的な物流ネットワークの構築/整備が進むほどに、自社単独での課題解決の難易度が上がっていく可能性も想定されます。

 

こうした状況を踏まえ、中小企業の「更なる成長+生き残り戦略」のひとつとして、M&Aによる企業の売却(=大手グループの傘下となること)が有効な手段とされています。

 

 

3. 物流業のM&A


2015年初以降、売手を物流関連企業とするM&Aは公表ベースで126件(注1)となっており、うち約8割は同業者を買手とする事例となっています(図H)(※7)。

 

 

(注1)国内企業同士の買収事例のみ。事業譲渡や資本参加事例は除く。
(※7)レコフデータより弊社作成

 

 

同業種同士のM&Aについては比較的イメージがしやすいと考えられることから、下記では、残り2割の異業種/周辺業種を買手とした事例についてご紹介をします。

 

 

 

 

 

 

このように、異業種/周辺業種との間においても、「エリア・既存事業の強化」や「効率化・相互補完」、「新事業の創出」といった観点でのM&Aが行われるケースが一定数存在しています。

 

 

4. 最後に


当業界は従来から様々な課題に直面しており、現在においても大きな変革が求められています。また昨今の新型コロナウイルスの流行を受け、将来の見通しに不確定要素が加わったことから、スピード感を持った経営の舵取りや事業の見直しが必要です。

 

こうした状況に対応する前向きな解決策のひとつとして、M&Aを検討されてみてはいかがでしょうか?

 

 

 

【業界別M&A動向】

第1回:電子部品業のM&A動向~電子部品業の現状と課題~

 

 

〈解説〉

ロングブラックパートナーズ株式会社(大川 恭史/アドバイザー)

 

 

〈目次〉

1.電子部品業界の現状

2.電子部品業界の課題

. 課題① サプライチェーン

. 課題② DXの推進

3.電子部品業界の展望

4.電子部品業のM&A動向

5.最後に

 

 

 

 

 

 

1.電子部品業界の現状


日本の電子部品産業は、IT・エレクトロニクス産業や自動車産業、各種インフラ産業などの発展を支える基盤産業として、国内外で高く評価されております。

 

また、電子部品業界は、技術革新が早く、製品のライフサイクルは非常に短い上、部品産業であるため、製品機器市場の影響を受けやすいのが特徴となります。
サイクルの上昇期と下降期があるため、半導体の生産に大きな変動をもたらし、約4年周期のシリコンサイクルという循環があると言われております。

 

近年では、CASEをキーワードとする自動車の進化や5G通信の本格化等による市場の革新は、電子部品技術の高度化を促進させ、電子部品需要を大きく成長させていると言われております。中でも昨今のEVシフト加速の動きは、車載用電子部品ビジネスの好機とされております。

 

そのような中で、2021年度における電子部品の出荷額は、約4.3兆円、対前年比で約116%の伸長となっており、過去7年で最高額となっております。

 

2022年は新型コロナの感染再拡大の懸念から不透明感は残りますが、カーボンニュートラルの観点からITリモートや5Gなどデジタルインフラ整備への投資が進み、ソリューションサービスや通信機器の需要拡大と伸長が期待できることから、今後も堅調な市場拡大が期待されております。

 

 

 

(出所)JEITA グローバル出荷統計より

 

 

 

また、技術革新のスピードが速い電子部品業界では、研究開発及び設備に対する投資が積極的に行われております。

 

製造業における電子部品関連(電子部品・電気機械・情報通信機械)の研究開発費ウェイト(2020年)は39%で、製造業全体でトップとなっており、設備投資額ウェイト(2020年)においても22%で、輸送機械を次ぐ割合を占めております。

 

 

 

(出所)総務省 科学技術研究調査

 

 

(出所)財務省 法人企業統計調査

 

 

 

2.電子部品業界の課題


[課題①] サプライチェーン

電子部品は汎用部品もありますが、スペックの違いや顧客のニーズに合わせて製造するものが多く、種類も多岐に渡ります。そのため素材調達から製造、供給までのサプライチェーンは国内外に渡り、複雑化しております。

 

新型コロナ禍において、グローバルに構築されたサプライチェーンが脆弱であることが明らかとなりました。
特に日本においては、中国の占める割合が非常に高いものとなっており、新型コロナによる工場閉鎖等によりサプライチェーンが寸断される結果となりました。

 

現在においてもリモートワークによるデータセンターを強化する動き等様々なニーズが高まり、各領域で半導体不足に繋がっております。
その影響により、納期遅れが常態化している状況になっており、大手、中小企業含めて対応に追われております。

 

2022年第二四半期以降は半導体の供給は回復してくるとの見込みですが、米中貿易摩擦やウクライナ侵攻による希ガスの高騰などカントリーリスクの影響も大きい業界となりますので、今後の事態に備えて、サプライチェーンの更なる強化は必要だと考えます。

 

サプライチェーンの強化に関しては、PwCが2013年8月に公表した「サプライチェーンとリスクマネジメント」というレポートが参考になります。

こちらにはサプライチェーンの脆弱性を克服するための7つの要素がまとめられておりますが、”効率性”を重視していたサプライチェーンから柔軟性(生産拠点、調達先)も考慮に入れたサプライチェーンの再構築が必要ではないでしょうか。

 

 

[課題② ]DXの推進

ドイツの “インダストリー 4.0”、中国の “中国製造 2025” など、世界の主要各国が、第四次産業革命への対応を進めている中、日本もまた、目指すべき社会の姿として “Society 5.0” を掲げております。

 

DX化することにより製造現場のデータを収集し”見える化”をすることによってもたらされる効果は非常に多く、親和性が非常に高い業態であると言えます。

 

そもそも製造工程には、大まかに言って、研究開発-製品設計-工程設計―生産などの連鎖である「エンジニアリングチェーン」と、受発注-生産管理-生産-流通・販売-アフターサービスなどの連鎖である「サプライチェーン」があり、IoT を始めとする最新のデジタル技術は、双方のチェーンの各所において、データの利活用を進める優れたソリューションを提供し、製造業に画期的な革新をもたらすと言われております。

 

製造業におけるDXの取り組み状況については、「全体」でも半数以上がDX取り組んでいないと回答しております。特に300名以下の規模の企業では、70%以上がDXの導入が出来ていないのが現状となります。

 

 

 

(出所)IT人材白書2020

 

 

 

DXの導入が出来ていない背景として、既存のシステムの改修に莫大なコストが掛かることもあるかと思いますが、大きな要因として、適正な”人材”を獲得することが難しいことが上げられると思います。

 

日銀短観における製造業の従業員不足感は、2014 年以降「過剰」と答える割合を「不足」と答える割合が上回り、マイナスが続いておりました。

 

2020年6月以降新型コロナ等の影響により大企業、中小企業共に人材が過剰と判断したため上昇しておりますが、少しずつマイナス傾向になっております。

 

 

 

(出所)日本銀行短観

 

 

 

その中でもDXを推進するためのデジタル人材の供給は十分に進んでいないと言われております。

 

「IT 人材白書 2020」の中で IT 企業やユーザー企業に対して行われたアンケートによれば、特にIT人材の「量」・「質」不足感が強まっている状況が確認出来ます。 IT企業においてもデジタル人材が不足している中で、製造業としてそれらの人材を採用するためには、相応のハードルがあるかと思います。

 

デジタル技術を理解しているIT人材の「量」・「質」両面での供給不足は、DX化推進に向けた課題の一つと考えます。

 

 

 

(出所)IT人材白書2020

 

 

(出所)IT人材白書2020

 

 

 

3.電子部品業界の展望


既に上述しているように電子部品業界は、技術革新が早く、今後はCASEをキーワードとする自動車の進化や5G通信拡大等による拡大が期待出来ます。

 

一方で、技術革新に対応するために研究開発や設備投資を継続的に行っていく必要があり、多くの中小企業においては人材や資金のリソースが不足しており、自社単体での成長戦略に限界を感じている企業もございます。

 

また、大手企業については、業界の動向に合わせて、買収や選択と集中のためにノンコア事業のカーブアウト(売却)を検討するケースもあります。

 

上記に挙げた、業界内の大企業・中小企業の課題解決策の一つとしてM&Aという選択肢があり、同業種・異業種同士を問わず、今後も電子部品業界のM&Aは活発化していく可能性が高いと考えられます。

 

 

4.電子部品業のM&A動向


2015年1月以降、半導体・電子部品業界でのM&Aは公表ベースで50件(注)となっております。

 

 

 

(注)国内における買収事例のみ。事業譲渡、資本参加等は除く。
(出所)日経バリューサーチ

 

 

 

【事例①】

【事例②】

 

 

 

このように、異業種/周辺業種との間においても、「既存事業の強化」、「効率化・相互補完」といった観点でのM&Aが行われるケースがございます。

 

 

 

 

5.最後に


昨今の新型コロナウイルスの流行を受け、将来の見通しに不確定要素が加わったことから、スピード感を持った経営の舵取りや事業の見直しが必要と考えられています。

 

こうした状況に対応する前向きな解決策のひとつとして、M&Aを検討されてみてはいかがでしょうか?