顧問先からのM&A相談対応Q&A(入門編)

本連載は、顧問先のM&Aの疑問に答える税理士の視点で解説してきます。

 

Vol.4 Q:顧問先からM&Aを進める際に「どこに相談すればいいか」と聞かれました。どうアドバイスをすればいいですか?

 

A:

「まずはM&Aの支援実績がある専門家に相談することをお勧めします。具体的にはM&A仲介会社やFA(ファイナンシャル・アドバイザー)が代表的な相談先です。ただし、仲介会社によって得意とする業種や規模、担当者の経験に差があるため、どこに依頼するかが重要になります」と伝えてください。
相談先を選ぶ際のポイントを事前に整理しておくことで、顧問先が安心して最初の一歩を踏み出せるようサポートできます。

 

 

<解説>

では、仲介会社を選ぶ際のポイントは何を基準にしたらよいのでしょか?

① 大手仲介会社と中小仲介会社、何が違うのか

大手M&A仲介会社は、豊富な買手候補データベースや全国規模のネットワークを有している点が強みです。多くの候補先へアプローチできるため、マッチング機会の広さが期待できます。
一方で、多数の案件を同時に取り扱うケースもあるため、案件によっては担当者との接触頻度やサポート体制に差が生じることがあります。
中小の仲介会社は、特定の業種や地域に特化している場合が多く、担当者が案件に深く関与しながら進められることが特徴です。オーナーとの距離が近く、柔軟な対応が期待できる一方で、買手ネットワークの規模や得意領域には違いがあるため、自社との相性を見極めることが重要です。

 

② 相談先だけではなく「担当者」も重要

M&Aでは、実際に案件を担当する担当者の経験や知識、提案力が結果に大きく影響します。
初回面談では、
・同業種の支援実績があるか
・どのような買手候補を想定しているか
・自社の強みや魅力をどのように評価しているか
・サポート体制はどのようになっているか
といった点を確認するとよいでしょう。
会社の知名度だけで判断するのではなく、「自社の事業をどれだけ理解しようとしているか」という視点も大切です。

 

③ 担当者との「相性」が結果を左右することもある

実際に、売上3億円規模の製造業者が仲介会社と契約したものの、担当者が業界特性を十分に理解しておらず、買手候補への提案内容が的確でなかったため長期間進展しなかったケースがありました。

その後、業界知識のある担当者が在籍する別の仲介会社へ相談したところ、買手候補の選定や提案内容が改善され、成約に至りました。

もちろん全てのケースに当てはまるわけではありませんが、仲介会社の規模や知名度だけでなく、自社の業種や課題を理解してくれる担当者かどうかも重要な判断材料になります。

 

④ 報酬体系の違いも必ず確認しておく

M&A仲介会社の報酬体系は大きく2種類に分かれます。成約時のみ報酬が発生する「完全成功報酬型」と、着手金や月額報酬が発生する「着手金あり型」です。
報酬体系の種類よりも、まず確認すべきは「どの段階でいくらかかるのか」が明確かどうかです。着手金・月額報酬・成功報酬の有無と金額が事前に明示されているか、成約に至らなかった場合の費用負担はどうなるのか、これらが曖昧な仲介会社は避けた方が無難です。
成約報酬の相場はレーマン法※を用いる会社が多く、譲渡対価に対して5〜10%程度が目安となりますが、会社によって料率の設定や最低報酬額が異なります。複数の仲介会社に見積もりを求め、報酬体系と具体的なサポート内容を比較したうえで判断することをお勧めします。

※レーマン法:譲渡対価の金額に応じて料率を段階的に変動させる成功報酬の算定方式。取引金額が大きくなるほど料率が低下する逓減方式が一般的で、国内のM&A仲介会社の多くが採用している。

 

【今回のポイント】

・大手はネットワークの広さ、中小は専門性や密な支援が強み。
・仲介会社だけではなく担当者の経験や提案力も確認する。
・初回面談では業界理解や具体的な経験、提案力も確認する。
・担当者変更があった場合の引継ぎ体制も事前に確認しておく。
・報酬体系(完全成功報酬 or 着手金あり)は複数社を比較したうえで選ぶ。

 

【著者】

株式会社たすきコンサルティング 代表取締役 森田 修

【プロフィール】

代表取締役 森田 修

1974年生まれ、大阪府出身。清風高等学校を卒業後、日本大学文理学部を経て、東洋大学大学院経済学研究科を修了。2004年に税理士登録。事業会社での実務経験を積んだ後、株式会社エスネットワークスにて株式公開コンサルティングなどに従事。

2005年に株式会社たすきコンサルティングを設立し、代表取締役に就任。以降、M&A・組織再編コンサルティングを中心に、税務・労務・株式公開支援など幅広い分野にわたりサービスを展開。グループ全体で約1,000社の企業と取引実績を持つ。

実務に裏打ちされた高い専門性と現場目線のアドバイスに定評があり、特に中小企業の経営支援において豊富な実績を誇る。剣道錬士六段の腕前も持ち、ビジネスと武道の両面で研鑽を重ねている。

 

[解説ニュース]

 

【Q&A】教育資金贈与の特例に係る贈与者が、教育資金管理契約の期間中に死亡した場合の相続税

 

 

〈解説〉

税理士法人タクトコンサルティング(山崎 信義/税理士)

 

 

[関連解説]

所得税の特定の基準所得金額の課税の特例~適用判定時の基準所得金額の範囲

 

【Q&A】複数代表者のうちの一人から非上場株式を相続した場合の相続税の納税猶予の特例の適用

 

 

 

【問】

甲は、令和4年4月に孫のA(長男乙の子。当時18歳。令和3年の合計所得金額0円)に対し、贈与契約書を交わして現金1,000万円を贈与しました。Aはその現金について、教育資金管理契約(以下「契約」)に基づきB銀行へ預け入れ、教育資金非課税申告書を提出して、租税特別措置法(措法)70条の2の2第1項の「直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税」(以下「本特例」)の適用を受けています。その契約中かつ乙が存命中に甲が死亡した場合に、甲がAに贈与した1,000万円のうち、Aの教育資金として支出されていない残額があるときは、甲に係る相続税の計算上、その残額はどのように取扱われますか。

 

 

【回答】

1.結論


本問の場合、贈与者である甲の相続開始時に受贈者Aが23歳未満である場合等(後記2(2)②参照)には、教育資金として支出されていない残額(後記2(2)①の「管理残額」)について相続税は課税されません。一方、23歳未満である場合等に該当しない場合には、Aがその残額を甲から遺贈により取得したものとみなされ、相続税が課税されます。

 

2.解説


(1)本特例の概要

本特例は、30歳未満の個人(前年分の所得税の合計所得金額が1,000万円超の者を除く。以下「受贈者」)が、教育資金に充てるため金融機関等の一定の契約に基づき、受贈者の祖父母等の直系尊属(以下「贈与者」)から書面による贈与により取得した金銭を銀行に預け入れる等の一定の行為をした場合、その金銭等の額のうち1,500万円までの金額に相当する部分の価額については、受贈者が金融機関等の営業所等に教育資金非課税申告書の提出等をすることにより、贈与税が非課税とされる税制です(措法70条の2の2第1項、第3項)。

(2)契約期間中に贈与者が死亡した場合の相続税

①原則

 

契約期間中に贈与者が死亡した場合は、原則、その死亡日における【非課税拠出額*1-教育資金支出額*2】のうち一定の計算をした金額(以下「管理残額」)を、受贈者が贈与者から相続または遺贈(以下「相続等」)により取得したものとみなされ、相続税の課税価格に加算されます(措法70条の2の2第12項2号)。

*1「非課税拠出額」は、教育資金非課税申告書等に本特例の適用を受けるものとして記載された金額の合計額(1,500万円を限度)をいいます。
*2「教育資金支出額」は、金融機関等の営業所等で、領収書等により教育資金の支払の事実が確認され、かつ記録された金額の合計額をいいます。

 

②相続税が課税されない場合

 

受贈者が令和3年4月1日から5年3月31日までの間にその贈与者から金銭等の取得をし、本特例の適用を受けた後に契約期間中に贈与者が死亡したときにおいて、受贈者が贈与者の死亡日において23歳未満である場合等(注)に該当するときには、①にかかわらず、管理残額を相続等により取得したものとはみなされず、相続税が課税されません(措法70条の2の2第13項、措法通達70の2の2-9、同逐条解説(表)参照)。

(注)「23歳未満である場合等」とは、次に掲げる場合(ロ又はハに掲げる場合には贈与者死亡の届出と併せて一定の書類を提出等した場合に限る。) をいいます。

 

イ.23歳未満である場合
ロ.学校等に在学している場合
ハ.雇用保険法第60条の2第1項に規定する教育訓練を受けている場合

 

(3)本問へのあてはめ


受贈者のAが令和4年4月に贈与者の甲から金銭等を取得し、本特例の適用を受けた後、契約期間中に甲が死亡したときにおいて、Aが甲の死亡日に前記(2)②(注)の「23歳未満である場合等」に該当するときは、前記(2)②より、管理残額を甲から遺贈により取得したものとはみなされず、相続税は課税されません(措法70条の2の2第13項)。

 

一方、「23歳未満である場合等」に該当しないとき、つまり甲の死亡時においてAが23歳以上であること等の場合には、管理残額を甲から遺贈により取得したものとみなされ、Aに相続税が課税されます。この場合において、甲の長男乙(=甲の相続人)が存命中のときは、Aの相続税の計算上、「相続税額の2割加算」(相続税法18条第1項)が適用されます。

 

 

 

税理士法人タクトコンサルティング 「TACTニュース」(2026/06/22)より転載

 

 

 

 

Q-21  M&Aにおける事業譲渡(営業譲渡)のメリット・デメリットは?株式譲渡との違いは?|3分でわかる!M&Aのこと【解説コラム】

 

 

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今後、ますます活用が進んでいくであろうM&Aについて、できるだけわかりやすくQ&A形式で解説するコラムを掲載することにしました。ぜひご一読ください!

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Q-21  M&Aにおける事業譲渡(営業譲渡)のメリット・デメリットは?株式譲渡との違いは?

A

 

M&Aの代表的な手法として、実務上は「事業譲渡(旧商法上の営業譲渡)」又は「株式譲渡」が選択されます。なお、「営業譲渡」と「事業譲渡」は基本的には同義です。2006年(平成18年)の会社法施行に伴い、旧商法で用いられていた「営業譲渡」という呼称が、「事業譲渡」に改められたもので、現在の実務では「事業譲渡」という表現が一般的に用いられています。

 

一方、M&Aにおいて最も一般的な手法は株式譲渡であり、会社そのものの支配権を移転する方法となります。

 

今回は事業譲渡を中心に、そのメリット・デメリットや株式譲渡との違いをみていきましょう。

 

1.事業譲渡(営業譲渡)とは

事業譲渡とは、会社が営む事業の全部または一部を、他社へ譲渡する取引をいいます。

株式譲渡が「会社そのもの」を引き継ぐのに対し、事業譲渡では、譲渡対象となる資産・負債・契約等を個別に選択することが可能です。

そのため、譲受側にとっては、必要な事業のみを取得しやすいという特徴があります。

 

2.営業権(のれん)の考え方

事業譲渡においては、「営業権(のれん)」の評価が重要な論点となります。

営業権とは、社会的信用、顧客との継続的取引関係、技術力・ノウハウ、ブランド力、立地条件など、企業が有する無形の財産的価値を指します。一般的に、事業譲渡価格は以下の考え方により算定されます。

事業譲渡価格 = 時価純資産額 + のれん価値

ここでいう「時価純資産額」とは、現預金、売掛金、固定資産、棚卸資産等を時価評価したうえで、負債を差し引いた純資産額をいいます。

また、「のれん価値」の評価方法としては、実務上、利益年倍法が用いられるケースが多く、概ね以下のように算定されます。

のれん価値 = 平均純利益 ×年数

年数については、業種特性や顧客継続性等を踏まえ、一般的には1年~5年程度の範囲で交渉されるケースが多く見られます。

 

3.譲渡側の主なメリット

(1)不採算事業からの撤退

譲渡企業が事業譲渡を検討する理由の一つとして、業績不振事業による経営圧迫があります。経営悪化が深刻化する前に事業を売却することで、資金確保、本業への経営資源集中、多角化事業の整理、人員整理、事業承継などを図ることが可能となります。

(2) 減損リスクの回避

上場企業等では、不採算事業について減損会計の適用が問題となる場合があります。事業譲渡を行うことで、含み損資産の整理、バランスシートの健全化、損失計上による税効果などを期待できるケースがあります。

 

4.譲受側の主なメリット

(1)既存事業の拡大

同業種またはシナジー効果が期待できる事業を取得することで、既存事業の拡大を加速させることが可能となります。

(2)新規事業への迅速な参入

ゼロから新規事業を立ち上げるよりも、既存事業を取得することで、顧客基盤、人材、ノウハウ、設備などを一括して取得でき、短期間で市場参入できるメリットがあります。

(3)税務上のメリット

事業譲渡により発生した「のれん」は、税務上「資産調整勘定」として取り扱われ、5年間で均等償却することが認められています。そのため、譲受企業においては、将来的な節税効果が期待できる場合があります。

 

5.事業譲渡(営業譲渡)のデメリット

(1) 譲渡益に対する課税

譲渡側には、譲渡益に対して法人税等が課税されます。実質的には、「時価純資産額」と「簿価純資産額」の差額、および「のれん相当額」に対して課税関係が生じることになります。

また、事業譲渡では一定の資産について消費税の課税対象となります。主な対象は、建物・機械装置等の有形固定資産、営業権・商標権等の無形固定資産、棚卸資産などです。なお、売掛金・買掛金等の債権債務は、原則として消費税の課税対象外となります。

(2)契約・雇用関係の再構築

事業譲渡では、契約や従業員について個別承継が必要となります。そのため、取引先との契約再締結、従業員の転籍同意、雇用契約の再締結、関係者への説明など、多くの実務負担が発生します。

小職も、営業権譲渡において売り手サイドの実務に携わった経験がありますが、取引先や関係者、従業員に対する事業売却の説明、異動の可否、退職勧奨、さらには継続雇用を希望する従業員の転籍同意など、多くの調整が必要となりました。

これらは最終的に「営業権譲渡価格」にも影響する重要な要素であり、実務上、精神的負担の大きい業務であったことを記憶しています。

 

6.事業譲渡と株式譲渡の比較

事業譲渡と株式譲渡の特徴を対比的にまとめますと以下の通りとなります。

項目 事業譲渡(営業譲渡) 株式譲渡
譲渡対象 事業の全部または一部 会社そのもの
契約関係 個別承継が必要 原則そのまま継続
従業員 転籍同意が必要 原則継続雇用
簿外債務リスク 限定しやすい 引き継ぐ可能性あり
消費税 課税対象となる場合あり 原則非課税
手続負担 多い 比較的簡便
のれん償却 可能 原則不可
適したケース 一部事業のみ取得したい場合 会社全体を承継する場合

 

 

(執筆:税理士 高井 寿)

 

 

 

 

 


 

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(注意)回答・解説は原則このコラム内で行い、個別の回答はできません。個別事例についてのご相談には対応できませんのであらかじめご承知おきください。

 

 

 

高井 寿(たかい ひさし) 

高井国際税務会計事務所 代表税理士 東京税理士会世田谷支部副支部長

2002年税理士登録、経営品質協議会認定アセッサー、CFPファイナンシャルプランナー、経営計画策定、国内及び国際タックスマネジメント、事業・資産承継、組織再編・連結納税、MAが専門。財団法人日本民事信託協会代表理事。

(著書等)「連結納税マニュアル(税務研究会)」「営業権の実務」(税務通信(税務研究会))、「経理システムと税務」「寄付金課税の問題点」(ともに税務弘報(中央経済社))、「資産家・事業家税務コンサルティングマニュアル」(税務研究会)

 

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[解説ニュース]

 いわゆる事故物件の相続税評価で10%評価減の適用が認められるか?

 

〈解説〉

税理士法人タクトコンサルティング(遠藤 純一)

 

[関連解説]

■療養のため転地したら、自宅に小規模宅地等の特例の適用が認められなくなった事例

■被相続人が契約した修繕工事の着工が相続開始後になっても債務控除が認められた事例

 

 

1. はじめに


古い賃貸住宅で人が死亡し長期間放置されていた物件、いわゆる事故物件を相続した人が、その物件の相続税評価額の減額を求めて、国税不服審判所(以下、審判所という。)に審査請求をした事案が情報公開により、明らかになりました(令和7年12月1日裁決、他の争点は割愛します。)。

 

2. 事故物件とは?


事故物件は不動産取引でしばしば問題となるものです。公式の定義ではないようですが、およそ過去に事故などにより人が死亡し長期間放置されるなどして特殊清掃が必要になった物件で、忌避されるような心理的瑕疵があり取引に影響を及ぼすものとされています。

 

国土交通省が令和3年10月にまとめた「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」では、住宅において、人の死が発生した事案で取引の当事者が契約するかどうかの判断に大きな影響を及ぼす可能性がある点に配慮。

 

特に宅地建物取引業者が住宅の売買・賃貸借においてその事実について告知すべきかどうかといったケースを整理しています。この意味合いでは、取引に影響する可能性がある点、不動産の相続税評価額への波及も想定されるでしょう。

 

3. 10%減の取扱いとは?


仮に、土地の取引に影響するとした場合、考えられるのが相続税の評価上の「10%評価減」の取扱いです。これは、土地の相続税評価の取扱い上、付近の土地の利用状況と比較して著しく利用価値が低下している土地に適用できるとされています。国税庁のホームページでは次のような記載があります。

 

(1) 道路より高い位置にある宅地又は低い位置にある宅地で、その付近にある宅地に比べて著しく高低差のあるもの
(2) 地盤に甚だしい凹凸のある宅地
(3) 震動の甚だしい宅地
(4) (1)から(3)までの宅地以外の宅地で、騒音、日照阻害(建築基準法第56条の2に定める日影時間を超える時間の日照阻害のあるものとします。)、臭気、忌み等により、その取引金額に影響を受けると認められるもの

 

ただし適用が認められるのは、①こうした減価要因が路線価または固定資産評価額・倍率に反映されていないこと、②現に減価要因が生じていること、③この減価要因により実際に取引金額に影響が出ていることの3つを満たすのがポイントとされています(国税不服審判所令和2年6月2日裁決)。

 

4. 問題の土地に関する事情等


相続人が相続した問題の土地は、相続の開始日において、賃貸共同住宅の敷地として使用されていましたが、賃借人はいませんでした。

 

相続人によると、平成30年7月から8月頃、この土地の建物の賃借人が、居室内で死亡していたことが近隣住民からの異臭を原因とする通報により発覚。相続人は前記ガイドラインを引き合いに、この建物では特殊清掃は行われなかったが、異臭が近隣住民の記憶に残っていることから、この土地は取引の際、こうした事情の告知が必要な事故物件に該当すると考え、「忌み等により、その取引金額に影響を受けると認められるもの」に該当し、利用価値が著しく低下しているものとして相続税の減額を求めて令和6年7月、更正の請求をしました。

 

しかし、税務署が減額を認めなかったことから審判所に判断を仰ぐことになったものです。

 

5. 審判所の判断


審判所はまず、更正の請求においては「更正の請求を基礎付ける理由の立証責任は請求人にある」との見地に立って、10%評価減の取扱いについて、本件の場合「忌み等を理由とする減額評価が認められるためには、忌み施設が存すること等の事情による当該宅地の取引金額への影響が、当該宅地の減額評価を正当化する程度に具体的なものであり、この影響が当該宅地の評価に用いる路線価において考慮されていないことを要するというべき」と立証の方向性を示しました。

 

これを踏まえ審判所は、更正の請求時、建物内で賃借人の死亡により問題の土地の利用価値が著しく低下していることを示す客観的な証拠を提出しなかったことを指摘。

 

次いで審判所は、前記ガイドラインは宅地建物取引業者が取るべき対応を取りまとめたものであり、ガイドラインの定めに当てはまるからといって直ちに10%評価減の取扱いが認められるものではないとしたうえで、相続人が、具体的に問題の土地の価額にどのような影響を及ぼすのか、合理的な理由を示していないと指摘しました。

 

最終的に「建物の賃借人が居室内で死亡したことが近隣住民からの通報により発覚したという事実をもって、問題の土地の取引金額への影響が、減額評価を正当化する程度に具体的なものであるとは認められない」として、10%評価減の適用は認めませんでした。

 

 

 

 

税理士法人タクトコンサルティング 「TACTニュース」(2026/06/08)より転載

 

 

◇◆ 会計事務所M&Aの疑問(譲渡/入門編)◇◆

 

税務研究会では、会計事務所の事業引継ぎ(譲渡)を検討している税理士の方を対象に、全国各地で個別勉強会・相談会を開催しております。

個別勉強会・相談会の参加者から寄せられた質問の一部をご紹介いたします。

 


 若手の税理士に事務所を譲渡し、時間をかけてソフトランディングでの引き継ぎを行いたいのですが、そのような相手先は見つかるのでしょうか。

 

 

 

 

当社がこれまで携わってきた事例においても、若手税理士へ円滑に承継されたケースは数多くあります。

 

近年では、「顧問先の新規開拓」「職員採用や組織づくり」に悩みを持つ若手税理士が増加しているようです。そのため、一定規模の顧問先と安定した職員体制を有する事務所のM&Aによる承継は、魅力的な選択肢として捉えられています。

 

また、譲渡先となる若手税理士からは、顧問先との関係性の引き継ぎや業務のフォローアップを目的として、数年間のサポートを希望されるケースも少なくありません。一定の引き継ぎ期間を設けることで、職員の退職リスクの低減や顧問先の離脱防止、新代表へのスムーズな信頼移行が可能となり、双方にとって安心感の高い承継につながります。そのため、「譲渡後は業務量を徐々に減らしながら、段階的に引退したい」とお考えの先生にとっても、相性の良い選択肢といえるでしょう。

 

なお、若手税理士への譲渡の場合、引き継ぎ期間が比較的長期に及ぶ傾向があります。少しでも余裕を持ったスケジュールで準備を進めることが、成功の鍵となります。

 

 

 

 


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顧問先からのM&A相談対応Q&A(入門編)

本連載は、顧問先のM&Aの疑問に答える税理士の視点で解説してきます。

 

Vol.3 Q:顧問先の会社が「同業者が〇億で売れたと聞いたのですがうちも同じくらいで売れますか?」などと聞いてきた場合、どう答えるべきか?

 

A:

初期段階では具体的な金額を提示しないように注意しましょう。
「価格を考えるうえでの目安はありますが、最終的な価格は会社の個別条件と、買手との交渉によって決まります」と伝えてください。
そのうえで、「決算書上の利益がそのままM&A価格に使われるわけではない」という点を補足しておくことが重要です。

 

<解説>
① 買手は決算書の利益を「そのまま」では使わない

買手側は、決算書の利益をそのまま評価に使うことはありません。たとえばオーナーの役員報酬が市場水準より高い場合や、実態を伴わない経費が含まれている場合は、それらを除いた「正常化利益」を算出したうえで価格を検討します。役員報酬を市場水準ベースで調整するだけで、評価上の利益が数百万単位で変わることも珍しくありません。顧問税理士が把握している利益と、買手が評価する利益は、同じ決算書を見ていても一致しないケースは多くあります。

「うちの利益はこれだけある」という経営者の前提と、買手側が算出する利益が最初から食い違っていると、交渉が進むにつれて期待値のギャップが表面化します。

 

② 噂は参考にならない

「知り合いの会社が〇億で売れた」といった噂をもとに相談されるケースもありますが、他社の成約価格はM&A業界では非公開が原則です。聞こえてくる数字の裏に、買手の戦略的な意図があったか、不動産の含み益があったのか、借入金の処理がどうだったのかは、実際の当事者以外には知る術がありません。同じ業種・同じ規模に見えても、成約価格の構成はまったく異なります。価格は「誰が、どのような戦略目的(シナジー)で買うか」で決まります。

 

③ ある経営者の実例

ある経営者が「同じ業界内で規模が近い企業が5億円で売れたから、うちも同じくらいの価格で売れるだろう」と言っていました。しかし、その5億円で売却された会社は、自社ビルを保有しており、その不動産価値だけで2億円以上あったのです。つまり、事業の収益力だけを見れば、その会社とこの経営者の会社では実際の価値が大きく異なる可能性が高いということです。

M&Aでの売却価格は、単純に同業他社の価格を参考にするだけでは不十分で、個別の事情が必ず影響します。

 

【今回のポイント】

・「〇億で売れた」といった発言にうっかり同調をしない
・決算書の利益は「正常化」されてから評価に使われる
・他社の成約事例は背景が異なるため単純比較にならない
・価格は「誰が、どのような戦略目的(シナジー)で買うか」によって決まる

M&Aの譲渡価格は、単純に利益を何倍かした数字で決まるわけではありません。実際には、資産や負債の調整項目や、買い手企業との相性など、多くの要素が関係して価格が変動します。
早い段階で自社の価値や条件を整理しておくことで、経営者が考える価格と実際の売却価格のギャップを防ぎやすくなります。

 

【著者】

株式会社たすきコンサルティング 代表取締役 森田 修

【プロフィール】

代表取締役 森田 修

1974年生まれ、大阪府出身。清風高等学校を卒業後、日本大学文理学部を経て、東洋大学大学院経済学研究科を修了。2004年に税理士登録。事業会社での実務経験を積んだ後、株式会社エスネットワークスにて株式公開コンサルティングなどに従事。

2005年に株式会社たすきコンサルティングを設立し、代表取締役に就任。以降、M&A・組織再編コンサルティングを中心に、税務・労務・株式公開支援など幅広い分野にわたりサービスを展開。グループ全体で約1,000社の企業と取引実績を持つ。

実務に裏打ちされた高い専門性と現場目線のアドバイスに定評があり、特に中小企業の経営支援において豊富な実績を誇る。剣道錬士六段の腕前も持ち、ビジネスと武道の両面で研鑽を重ねている。

 

[解説ニュース]

 

【Q&A】相続空き家の敷地に係る譲渡所得の3,000万円控除(被相続人が老人ホーム退所後に子の自宅で死亡した場合)

 

〈解説〉

税理士法人タクトコンサルティング(山崎 信義/税理士)

 

 

[関連解説]

【Q&A】法人が100%子会社の株式を譲渡する場合における法人税基本通達による株式時価の評価

 

法人が土地と建物を一括取得した場合の法人税・消費税における適正な取得価額の区分

 

 

 

【問】

Aさんは、令和7年6月に父親のBさんからC家屋とその敷地を相続し、C家屋を取壊し後、その敷地を令和8年5月に上場会社D㈱に譲渡(以下「本件譲渡」)しました。C家屋はBさんが昭和55年に新築し、妻との死別後は一人で居住していましたが、令和6年3月にBさんが老人ホームに入所した後は、その死亡の時まで空き家になっていました。Bさんは令和6年9月にその老人ホームを退所し、以後は死亡の時までAさんの自宅(Aさん所有)で同居していました。C家屋は築46年の古家で、地震に対する安全基準等に適合している家屋ではありません。
上記の場合に、Aさんの本所得税の計算上、租税特別措置法(措法)35条3項2号の「相続空き家の敷地の譲渡に係る譲渡所得の3,000万円控除」(以下「本特例」)の適用を受けることができますか。

【回答】

1.結論


被相続人のBさんは相続開始の直前においてC家屋に居住しておらず、その敷地は相続の開始の直前において被相続人の居住の用に供されていた家屋(「被相続人居住用家屋」)の敷地に該当しないことから、その敷地の譲渡について本特例の適用を受けることはできません。

2.解説


(1)被相続人居住用家屋の意義

本特例の適用対象となる「被相続人居住用家屋」の敷地は、相続開始の直前に被相続人の居住の用に供されていた家屋の敷地であることが要件とされています(措法35条3項2号)。老人ホームに入所中に相続が開始した場合、被相続人が入所前に住んでいた自宅は相続開始の直前に被相続人の居住の用に供されていないことから、本来は被相続人居住用家屋には該当しません。しかし、被相続人が相続開始の直前において老人ホームに入所していて元の自宅に居住していない場合であっても、下記(2)の要件を満たすときには、元の自宅とその敷地が被相続人居住用家屋およびその敷地に該当するものとされ、その譲渡について本特例の適用が認められます。

(2)被相続人が老人ホームに入所していた場合の被相続人居住用家屋の範囲

本特例の適用対象となる被相続人居住用家屋には、『”「対象従前居住の用」に供されていた”被相続人居住用家屋』が含まれます(措法35条5項3号)。「対象従前居住の用」とは、①次のイ~ハの要件を満たし、かつ、②特定事由(注)により相続の開始直前において家屋が被相続人の居住の用に供されていなかった場合における、その特定事由により居住の用に供されなくなる直前のその被相続人の居住の用をいいます(措法35条5項、同施行令23条9項、10項、11項)。

イ.特定事由により、被相続人居住用家屋が被相続人の居住の用に供されなくなった時から相続の開始の直前まで、引き続き被相続人居住用家屋がその被相続人の物品の保管その他の用に供されていたこと。

ロ.特定事由により、被相続人居住用家屋が被相続人の居住の用に供されなくなった時から相続の開始の直前まで、被相続人居住用家屋が事業の用、貸付の用または被相続人以外の者の居住の用に供されていたことがないこと。

ハ.被相続人が有料老人ホーム等に入所等をした時から、相続開始の直前までの間において、被相続人の居住の用に供する家屋が2以上ある場合には、これらの家屋のうち、その施設等が被相続人の主としてその居住の用に供していた一の家屋に該当するものであること。
(注)「特定事由」とは、介護保険法に規定する要介護認定等を受けていた被相続人等が、養護老人ホーム、特別養護老人ホーム、有料老人ホーム、介護老人保健施設等に入所等をしていたことをいいます(措法35条5項、同施行令23条8項)。

(3)本問へのあてはめ


被相続人のBさんは、相続開始の直前においてC家屋を居住の用に供していないことから、前記(1)下線部の要件を満たしません。また、Bさんが相続開始の直前においてC家屋を居住の用に供さず、C家屋が空き家になった理由が、(2)(注)の特定事由(=老人ホーム等への入所等)によるものでなく、Aさんの自宅での居住によるものであることから、上記(2)下線部の要件も満たしません。
以上によりC家屋は被相続人居住用家屋に該当せず、その敷地の譲渡について本特例の適用を受けることはできません。

 

 

 

税理士法人タクトコンサルティング 「TACTニュース」(2026/05/25)より転載

 

 

 

 

 

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税務研究会では、会計事務所の事業引継ぎ(譲渡)を検討している税理士の方を対象に、全国各地で個別勉強会・相談会を開催しております。

個別勉強会・相談会の参加者から寄せられた質問の一部をご紹介いたします。

 


 67歳の税理士です。体力的な不安が出てきたため、できれば今年中に税理士事務所の譲渡を完了させたいと考えています。年内の譲渡は現実的に可能でしょうか。また、スムーズに進めるために注意すべき点があれば教えてください。

 

 

 

ご年齢や体力面を考慮され、「今年中に税理士事務所の譲渡を完了させたい」というご希望は、進め方を工夫すれば十分に可能です。ただし、通常業務を行いながら進めることになりますので、年内完了を前提とした明確なスケジュールを組み、早めに動き出すことが重要です。

 

具体的な流れとしては、4月~6月にかけて仲介契約を締結し、譲渡条件(引き継ぎ方法や譲渡価額など)や、顧問先や職員体制などの事務所情報を整理します。この初期準備を丁寧に行うことで、後工程がスムーズになります。7月~9月は譲渡先の探索と具体的な交渉を進める期間となり、条件面や引き継ぎ体制について双方の認識をすり合わせていきます。そして10月~12月には譲渡契約を締結し、実務的な引き継ぎへと移行する想定です。

 

体力的なご負担を減らすためにも、譲渡後にどの程度関与するのかを事前に決めておくことも重要です。

 

税務研究会では、年内完了を見据えたスケジュール管理から、無理のない引き継ぎ方法の検討まで丁寧にサポートいたしますので、安心してご相談ください。

 

 

 

 


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[解説ニュース]

療養のため転地したら、自宅に小規模宅地等の特例の適用が認められなくなった事例

 

〈解説〉

税理士法人タクトコンサルティング(遠藤 純一)

 

[関連解説]

■M&A直前の相続で取得した株式の相続税評価に係る裁判は納税者勝訴で確定

■一団の宅地に用途の異なる建物がある時の小規模宅地等の特例の利用上の注意

 

 

1.はじめに


療養のため転地したことが、相続税の合法的な節税の妨げになる事例が明らかになりました(国税不服審判所令和7年12月11日裁決、情報公開による)。
この事案は、納税者Aさんが病気の妹(被相続人)と母親を伴い、自宅から離れて治療に専念するため病院の近場にある場所に転地していたケースでした。
争点は、転地する前の自宅が「小規模宅地等の特例」の適用できる特定居住用宅地等に該当するかどうかというものでした(本稿で他の争点は割愛します)。
税務署が生活の本拠は転地先で、自宅ではないとして否認したため、正しいのはどちらか、最終的に国税不服審判所(以下、審判所という。)に判断を仰ぐことになったのです。

2. 小規模宅地等の特例


小規模宅地等の特例とは、被相続人の住んでいた宅地を相続した場合に、その宅地等のうち所定の要件を満たした宅地での相続税の課税対象額を減額する制度です。本件では居住用の宅地330㎡までについて、相続税の課税対象額を最大80%減額するものです。

3. 事案の概要


(1)妹(被相続人)が死亡し相続人は母親のみであった。
(2)亡き妹の相続財産には、住民登録のあった家屋と敷地(以下、自宅という。)があり、母親は、その家屋と土地の所有権を相続した。
(3)母親は、令和3年3月、公正証書によって、遺言の効力発生時に母親が有する一切の財産をAさんに相続させる旨の遺言をした。
(4)母親は、上記相続に係る相続税の申告書を提出することなく死亡し、相続が開始した。法定相続人は、Aさんのほかに、母親の長男、次男もいたが、公正証書遺言があったため、Aさんのみが母親から妹に係る相続税の申告及び納税義務を承継した。
(5)被相続人(妹)と母親が死亡した場所は、C市に所在する転地先のD居室であった。もっとも、請求人等の住民票上の住所は、昭和62年2月26日以降、自宅が存するEであり、亡き妹及び母親の住民票上の住所は、それぞれ死亡の日まで異動はなかった。
(6)Aさんは承継した相続税につき、自宅の土地に小規模宅地等の特例を適用して申告期限までに提出した。
(7)税務署は、亡き妹がその相続の開始の直前において、自宅に生活の拠点を置いていたとは認められないから、自宅の土地について小規模宅地等の特例を適用することはできないなどとして更正処分をした。
(8)Aさんはマイホームを譲渡した場合の特例の取扱いを定めた措置法通達31の3−2を引き合いに、次のように主張しました。
「被相続人(妹)は転地療養の場として一時的な使用目的で転地先の居室に入居し、病状が回復した暁には自宅において生活を再開することを家族の総意としていた。転地先居室は生活の拠点には当たらず、住民票のある家屋が生活の拠点である」

4. 審判所の判断


審判所は、「ある宅地等が、相続開始の直前において、この特例の適用対象となる被相続人等の「居住の用に供されていた宅地等」に当たるか否かは、生活の拠点を置いていたかどうかにより判断すべき」と基準を示しました。
もっとも「相続開始の直前において、被相続人等が当該宅地等を敷地とする建物において現実に起居していなかった場合であっても、それが一時的なものであって、被相続人等が当該建物に生活の拠点を置いていたといえるときには、当該宅地は、被相続人等の「居住の用に供されていた宅地等」に当たる」とも述べました。
上記を踏まえ、審判所は具体的な検討において、「被相続人が自宅で現実に起居することが極めて困難な状況にある一方で、転地先居室は被相続人の生活の拠点たり得る場所であったこと、以後、これらの客観的状況に格別の変化はみられず、被相続人は、2年余りという少なくない期間にわたって、転地先居室で現実に起居し続けていたこと」から、それが「一時的なものであったとはいえない」と判断しました。
Aさんは、必要に応じて自宅に帰っていたことや、家財・貴重品等を置いていたことなどを主張しました。
しかし審判所は上記の事情について「病状が回復すれば本件家屋に戻ることを決意していたことを推認させるものではあるが、Aさんが自宅を管理していたことを示すものではあっても、被相続人が本件家屋に生活の拠点を置いていたことを基礎付ける事情であるとはいえない。」として、税務署の処分を支持しました。

 

 

 

 

税理士法人タクトコンサルティング 「TACTニュース」(2026/05/12)より転載

 

Q-20  M&Aが進まない理由は何ですか? |3分でわかる!M&Aのこと【解説コラム】

 

 

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今後、ますます活用が進んでいくであろうM&Aについて、できるだけわかりやすくQ&A形式で解説するコラムを掲載することにしました。ぜひご一読ください!

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 Q-20 M&Aが進まない理由は何ですか?

A

M&Aを進めていても、イメージ通りに進まないことが多々発生します。M&Aは、大きく(1)事前検討・準備、(2)マッチング・交渉、(3)契約締結の3つの段階に分けることができます。それぞれの段階ごとに、M&Aが進まない要因について、詳しく触れていきたいと思います。

 

 

(1)事前検討・準備
この段階では主にM&Aを実施すべきかどうかを事前に検討するために、情報収集やM&Aの目的・条件等を設定し、どのような方法で進めていくかなどの戦略を策定します。また、多くの企業はこの段階でM&A仲介会社等とアドバザイリー契約を結び、相談しながらM&Aを進めることになります。

この点、信頼できるM&A仲介会社が見つからない場合や、M&Aについて十分な知識を有していない会社が自力でM&Aを進めようとする場合には、自社の分析や市場調査に必要以上に時間がかかることがあります。また、M&Aの目的設定が曖昧な状態だと、方向性がぶれてしまい、M&Aが進まない要因の一つとなります。

 

(2)マッチング・交渉
この段階では主に買収先および売却先の候補を選定した上で絞りこみ、売り手がノンネームシート(注)や企業概要書を作成し、売却先へ提示の上、お互いの希望条件にあった企業とのマッチングを行います。その後、マッチングした企業の経営者同士によるトップ面談や交渉を進めていき、基本合意書の締結まで行います。

この点、一般的にM&Aは売り手よりも買い手の方が多く存在しており、買い手の条件と適合する売り手がなかなか見つからずにマッチングに時間がかかるケースがあります。また、売り手が作成した企業概要書で会社の魅力が伝わりにくい場合や、(1)事前検討・準備段階における自社分析が不十分だったために譲渡希望価格を不当に高く設定してしまった場合などにも、双方の条件が適合せずにマッチングに時間を要し、M&Aが進まない要因となります。
注: 売り手の名前が分からない状態で会社概要、財務状況、譲渡価格などの希望条件等が記載された資料

 

(3)契約締結
この段階では、主に売り手企業に対してデューディリジェンスと呼ばれる企業調査を実施し、その調査結果を踏まえて最終条件の交渉を行った上で、最終契約の締結を進めます。デューディリジェンスには財務、税務、法務、労務、ITなど様々な種類の調査があり、基本的には買い手が選定した第三者の専門家によって行われ、潜在的なリスクや問題点を洗い出し、買い手の意思決定に資する情報を提供します。

この点、特に次のようなケースにおいてはデューディリジェンスの実施や契約締結が遅れることがあり、M&Aが進まない要因となります。

売り手から十分な情報が開示されないケース
売り手がM&Aに不慣れな場合には、買い手から要求される資料リストが不十分であったり、準備や確認に時間を要したりすることがあり、デューディリジェンスの実施が遅れる要因となります。

売り手が不適切な会計処理を行っているケース
売り手が架空の売上計上や資産の過大計上及び認識していない負債が多額にある場合などの不適切な会計を行っている場合には、その原因を究明して企業のあるべき財政状態、経営成績を把握する必要があるため、その修正に時間を要することがあり、デューディリジェンスの実施が遅れる要因となります。

デューディリジェンスの結果を踏まえた最終交渉が難航するケース
デューディリジェンスを実施した結果、予期せぬ潜在的なリスクが発見された場合には、最終交渉において譲渡金額や譲渡対象資産・負債の範囲、売り手の経営者の待遇などが当初の希望条件から大きく変わることもあり、なかなか双方の折り合いがつかずに契約の締結が遅れることになります。

 

 

 

 

(執筆:税理士・公認会計士 風間啓哉)

 

 

 

 

 


 

このコラムでは読者の方からのご質問も募集しています。M&Aに関することで疑問に思っていること、コラムの内容に関してもっと詳しく知りたいこと、○○について取り上げてほしい、などありましたら、こちらのアドレス(links@zeiken.co.jp)までお知らせください

 

(注意)回答・解説は原則このコラム内で行い、個別の回答はできません。個別事例についてのご相談には対応できませんのであらかじめご承知おきください。

 

 

 

風間啓哉(かざま けいや) 

税理士・公認会計士(風間会計事務所 代表)

2005年公認会計士登録、2010年税理士登録。

監査法人にて監査業務を経験後、上場会社オーナー及び富裕層向けの各種税務会計コンサル業務及びM&Aアドバイザリー業務等に従事。その後、事業会社㈱デジタルハーツ(現 ㈱デジタルハーツホールディングス:東証プライム)へ参画し、同社取締役CFOを経て、同社非常勤監査役(現任)を経験。2018年から会計事務所を本格的に立ち上げ、現在に至る。

(著書等)『PB・FPのための上場会社オーナーの資産管理実務(三訂版)』『資産家・事業家 税務コンサルティングマニュアル』(共著、税務研究会)、『ケーススタディ M&A会計・税務戦略』(共著、金融財政事情研究会)

 

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顧問先からのM&A相談対応Q&A(入門編)

本連載は、顧問先のM&Aの疑問に答える税理士の視点で解説してきます。

 

Vol.2 Q:M&Aのトラブルとはどのようなものか?

 

A:

直近では、いわゆる“悪質な買手”による資金流出型のトラブルが問題視されました。
具体的な事例として現預金を有する債務超過企業が安価で買収され、買収後に資金だけを抜かれて放置されるケースがあります。
この場合、旧オーナーの個人保証が残り、最終的に倒産リスクを負うという深刻な被害につながります。

 

<解説>
■ 解説|実際に起きているスキーム

実際に、以下のような流れが確認されています。

 

・現預金を持つ会社(債務超過でも可)を低額で買収

・買収後、「貸付金」などの名目で現預金を買手先口座へ送金

・金融機関借入に対する旧オーナーの個人保証は解除されないまま放置

・一定期間後、買手が連絡不能となり会社は実質的に放置

・資金流出により資金繰りが破綻し倒産

・結果として旧オーナーに個人保証債務のみが残る

 

形式上は株式譲渡が成立していても、実態としては“資金の持ち逃げ”に近い事例です。価格がつく案件では発生しにくく、債務超過・赤字・後継者不在といった「早く手放したい」企業ほど狙われやすい傾向があります。

 

■ 税理士が確認すべき防止ポイント

この種のトラブルは、財務内容の確認だけでは防げません。買手の実在性と資金計画の妥当性をチェックすることが重要です。

 

・買収資金の出所と自己資金割合

・買収後の資金管理体制(資金移動権限・口座管理者)

・個人保証の解除スケジュールが金融機関と合意されているか

・買手の過去の買収実績と継続保有状況

 

特に個人保証の解除がクロージング条件に組み込まれているかどうかは、旧オーナーのリスクに直結する重要な論点です。

こうした点については、税理士だけで判断するのではなく、M&Aの実務に精通した仲介会社や専門家と連携しながら確認することが望ましいといえます。

なお、中小企業庁が策定している「中小M&Aガイドライン」においても、M&A実行後に旧オーナーの保証債務が不適切に残存することがないよう、金融機関との保証解除に向けた調整を適切に行うことの重要性が示されています。

譲渡を判断する際には同ガイドラインを順守し、クロージング条件を整理したうえで手続きを進めているかどうか、専門家を交えて進めていくことが重要となります。

 

■ 顧問先への伝え方

経営者には「赤字でも引き受けると言う相手ほど慎重に見る必要がある」ことを伝えるべきです。安価でも確実に保証解除まで完了する相手と、形式上の譲渡だけでリスクが残る相手では、最終的な安全性が大きく異なります。

 

買手の財務的裏付けと保証処理の進捗を管理することで、この種の被害は大幅に回避できます。価格ではなく“譲渡後に何が残るか”を基準に助言することが、顧問先を守る上で最も重要かつ実務的な対応です。

 

 

 

【著者】

株式会社たすきコンサルティング 代表取締役 森田 修

【プロフィール】

代表取締役 森田 修

1974年生まれ、大阪府出身。清風高等学校を卒業後、日本大学文理学部を経て、東洋大学大学院経済学研究科を修了。2004年に税理士登録。事業会社での実務経験を積んだ後、株式会社エスネットワークスにて株式公開コンサルティングなどに従事。

2005年に株式会社たすきコンサルティングを設立し、代表取締役に就任。以降、M&A・組織再編コンサルティングを中心に、税務・労務・株式公開支援など幅広い分野にわたりサービスを展開。グループ全体で約1,000社の企業と取引実績を持つ。

実務に裏打ちされた高い専門性と現場目線のアドバイスに定評があり、特に中小企業の経営支援において豊富な実績を誇る。剣道錬士六段の腕前も持ち、ビジネスと武道の両面で研鑽を重ねている。

 

 

 

 

[解説ニュース]

 

【Q&A】被相続人が保険料の全額を負担した生命保険契約に係る相続税・所得税の取扱い

 

〈解説〉

税理士法人タクトコンサルティング(山崎 信義/税理士)

 

 

[関連解説]

【Q&A】被相続人が保険料の全額を負担した生命保険契約に係る相続税の取扱い

 

インボイス(適格請求書)発行事業者が死亡し、相続財産が未分割の場合の消費税の手続

 

 

 

【問】

令和8年1月に亡くなった甲さんは、平成25年に配偶者の乙がX生命保険会社と契約し、被保険者乙、死亡保険金受取人A(甲の長男)との定めのある生命保険契約(満期・解約返戻金あり)の保険料を全て負担していました。この生命保険契約に係る税務上の取扱いついて、以下の通り質問します。

【問1】甲さんに係る相続税の計算上、この生命保険契約に関する権利はどのような取扱いになるのでしょうか。
【問2】甲さんの死亡後、生命保険契約の契約者である乙さんが、その契約を解約して返戻金を取得した場合、乙さんに所得税が課税されるそうですが、その場合に甲さんが負担した保険料はどのような取扱いになるのでしょうか。なお、この生命保険契約は、所得税の源泉分離課税の対象となる一時払養老保険等には該当しません。

 

 

【回答】

1.結論


(1)【問1】の場合、生命保険契約に係る権利は本来の相続財産ではありませんが、相続税の計算上は、契約者の乙が甲からこれを相続により取得したものとみなされ、課税対象とされます。

(2)【問2】の場合、乙が取得した解約返戻金は所得税の一時所得とされ、その返戻金の額から甲が負担した保険料の額と特別控除額を控除した額の2分の1相当額が所得税の課税対象とされます。

 

 

2.解説


(1) 被相続人以外の者が保険契約者の生命保険契約で、被相続人が保険料を負担した場合の生命保険契約に関する権利の相続税の取扱い(【問1】)

 

①みなし相続課税
相続開始の時において、まだ保険事故が発生していない生命保険契約のうち、被相続人以外の者が保険契約者である場合、その生命保険契約に関する権利は本来の相続財産には該当しません。ただし、被相続人以外の者が保険契約者で、かつ被相続人が保険料を負担した生命保険契約に関する権利のうち一定のものについては、その契約者が生命保険契約に関する権利を相続又は遺贈により取得したものとみなされ、相続税の課税対象とされます(相続税法3条1項3号)。この場合の生命保険契約に関する権利の価額は、相続開始時においてその契約を解約するとした場合に支払われる解約返戻金の額を基に計算されます(財産評価基本通達214)。

 

②本問へのあてはめ
本問の場合、生命保険契約に関する権利は、甲に係る相続税の計算上、契約者の乙が甲から相続により取得したものとみなされ、その権利の価額は、その生命保険契約に係る解約返戻金を基に計算されます。

 

 

(2)甲の死亡後、生命保険契約の契約者である乙が、その契約を解約して返戻金を取得した場合の所得税の計算(【問2】)

 

①所得税の取扱い
個人が生命保険契約の解約返戻金を取得した場合において、保険料負担者と保険金受取人が同一人のときは、源泉分離課税の対象となる一時払養老保険等に該当する場合を除き、返戻金から保険料と特別控除額(最大50万円)を控除後の金額が一時所得とされ、その2分の1相当額に対し所得税が課税されます(所得税法22条2項2号、34条、所得税基本通達34-1(4))。

 

②一時所得の金額の計算上控除する保険料
生命保険契約等に基づく解約返戻金が一時所得とされる場合に、その一時所得の金額の計算上控除される保険料等が、その返戻金を取得した者(乙)自身が負担したものに限られるのか、それとも返戻金の受給者以外の者(甲)が負担していたものも含まれるかについては法令上は明確にされておらず、疑問が生じます。
この点について、所得税基本通達34-4(2)及びその逐条解説では、解約返戻金等の一時金の支払を受けた者が負担しなかった保険料等がある場合でも、保険契約者や保険金受取人以外の者が保険料を負担したときは相続の際に相続税の課税等がされることから、原則として保険契約に係る保険料等の総額を一時所得の金額の計算上、控除する旨を定めています。

 

③本問へのあてはめ
乙が生命保険契約に基づき取得した解約返戻金は所得税の一時所得とされ、その金額の計算上、保険契約に係る保険料の総額(=甲が負担した保険料)を控除します。

 

 

 

 

税理士法人タクトコンサルティング 「TACTニュース」(2026/04/27)より転載

 

 

 

 

[解説ニュース]

被相続人が契約した修繕工事の着工が相続開始後になっても債務控除が認められた事例

 

〈解説〉

税理士法人タクトコンサルティング(遠藤 純一)

 

[関連解説]

■資産管理会社の株特外しを無効化する評価通達189なお書きが適用された事例

■不動産を買った時の土地建物の価額按分が不合理と指摘された場合

 

 

1.はじめに


被相続人が施主となって倉庫の修繕契約をしたものの、着工は相続後に行われた場合、その費用が相続税の計算上、債務控除できるかどうかで争われた裁判がありました。福井地裁は着工が遅れた事情を汲んで債務控除を認める判決を言い渡しました(令和7年11月5日判決、確定)。
相続税の債務控除は、相続人が負担する「被相続人が亡くなった時点で現に存する債務で確実と認められるもの」と「葬式費用」とされています(相続税法13条)。この確実性については、税務署と見解の相違が生じがちです。この事案のポイントを見ていきます。

 

2. 事案の概要


判決によると、事実関係は、次のとおりです。

①平成30年8月、貸付倉庫等のオーナー(被相続人)は、賃借人である卸売業者から、その倉庫等の土間が約10㎝地盤沈下しているため修繕の相談を受けた。

 

②平成31年4月、オーナーは、相続人(原告)がとってくれた工事見積を基に施工業者と修繕工事について工期を同年4月20日から同年7月30日までとする請負契約を締結した。しかし賃借人から物流が少なくなる10月に着工してほしいとの意向が示された。

 

③同年5月、オーナーは、工期を同年10月1日から同年11月30日とする請負契約の変更をした。

 

④同年9月末(オーナーの死後)、施工業者は、修繕工事に着手した。

 

⑤同年10月下旬、施工業者は、床面積の半分程度まで注入したところで予定していたコンクリート全量を注入し終え、相続人(原告)に対し、未施工の範囲をどうするか確認したところ、工事を終了してよいとの了解を得たため、工事を終了した。同年11月、相続人は施工業者に修繕費用を支払った。

 

⑥令和2年6月、相続人は、相続税の計算上、修繕費用を債務控除して相続税の申告を行い、令和4年4月までに修正したが、修繕費用の債務控除はしていた。

 

⑦令和4年4月、所轄税務署は、修繕費用の債務控除を否認して相続税の増額更正、過少申告加算税の賦課を行った。その主な理由は、請負代金債務が原則として仕事完成時に確定した債権債務として計上されること、相続開始日時点では、修繕工事はいまだ着工もされておらず、また、請負契約によれば相続開始時点において被相続人・相続人である原告による解除や工事内容の変更が可能な状況にあったこと

 

⑧令和5年12月、相続人は最終的に裁判に訴えた。
相続人は次のように主張しました。「賃借人は、高さ数メートルに達する棚・ラックを設置し、商品の保管・搬出作業などはフォークリフト等で行われていた。しかし地盤沈下の影響で商品の転落による破損、従業員の生命の危険などの問題が発生した。これは賃貸人に修繕義務がある。また、工期の変更は、修繕義務の履行を請求している賃借人からの繁忙期を避けたいとの要望に応えたもので被相統人の要望での変更という要素はない。」

 

3. 福井地裁の判断


争点は、「修繕費用にかかる債務が相続税法14条1項にいう確実と認められるものに当たるか」でした。
福井地裁はまず、債務控除の趣旨について「相続された債務の弁済に要する資金を課税対象外として相続人に留保させるため」と原則的な考え方を示す一方、「相続開始時点において債務が存在するか否かが不確実な場合や、債務が存在するとしても、履行されるか否かが不確実な場合は、相続人に弁済資金を留保する必要があるとはいえない」とも述べました。
そのうえで福井地裁は「債務の存在が確実であるとともにその履行が確実であることを要し、また、これらが確実であるかを判断するにあたっては、債務の形式のみならず、債務が生じるに至った経緯等についても考慮すべき」と判断の枠組みを明らかにしました。

 

そこで福井地裁は、次のような事実を指摘しました。

 

A賃貸目的物につき契約によって定められた使用収益ができない場合には、修繕義務があるといえる。

 

B地盤沈下により、商品保管上のリスクが生じており、安全な使用収益に支障を来す状態になっていたと認められ、被相続人は契約締結時、修繕義務を負っていた。

 

C被相続人は、当初の請負契約締結により同年5月には工事に着工できる状況にあった。

 

D施工時期が変更となったのは、賃借人の要望のためで、これがなければ修繕工事は、当初のとおり相続開始時前に施工を終えていたと考えられる。

 

以上から福井地裁は修繕工事が履行されることは、相続開始時点で確実であったとし、最終的に上記「債務は債務の存在及びその履行がいずれも確実であると認められる」から、税務署の追徴を取消す判決を言い渡したのです。

 

 

 

 

税理士法人タクトコンサルティング 「TACTニュース」(2026/04/13)より転載

 

Q-19 M&Aと退職金の活用について|3分でわかる!M&Aのこと【解説コラム】

 

 

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今後、ますます活用が進んでいくであろうM&Aについて、できるだけわかりやすくQ&A形式で解説するコラムを掲載することにしました。ぜひご一読ください!

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Q-19 M&Aと退職金の活用について

A

M&Aの実務においては、退職金の支給を組み込んだスキームが採用されるケースが少なくありません。

これは、単なる譲渡対価の調整にとどまらず、買い手・売り手双方にとって合理的なメリットが期待できるためです。

 

その背景として、主に次の二点が挙げられます。
第一に、買い手にとっては買収希望価格を増額することなく、売り手経営者の手取り額を増やすことが可能となる点です。

第二に、退職金に係る税務上の効果が、買い手・売り手双方にメリットをもたらす点です。

 

以下では、一般的なスキームとその効果について整理します。

(1)余剰現預金の退職金への振替

M&Aの対象会社において、貸借対照表上の現預金が運転資金として必要な水準を上回っている場合、その超過部分を売り手経営者に対する退職金として支給するスキームが検討されることがあります。

(2)譲渡対価を増やさずに手取り額を増加

上記の方法により、買い手は買収希望価格を引き上げることなく、売り手経営者の実質的な手取り額を増やすことが可能となります。
結果として、譲渡対価と退職金を組み合わせた形で、双方が納得しやすい条件設定が実現します。

(3)買い手側における税務上のメリット

退職金が税務上、損金算入可能な範囲内で支給される場合、その分の税効果は買収会社の財務諸表に寄与することとなります。
もっとも、役員退職金については、在籍期間や最終役員報酬との関係から算定される適正額を超えないよう、慎重な検討が必要です。

(4)売り手経営者の引退後の生活設計への寄与

売り手経営者にとっては、M&A完了後の引退を見据えた生活設計が立てやすくなる点も、大きなメリットといえます。
特に、退職金は税務上の優遇措置(【1】退職所得控除と【2】2分の1課税)があるため、資金計画の観点からも重要な意味を持ちます。

留意点

このような退職金スキームは、M&Aプロセスの中で一定の検討時間を要するものの、実務上は非常に有効な手法です。なお、M&A仲介会社の中には、退職金の支給を組み込んだスキームを重要視し、退職金を含めた金額を手数料算定の基礎とする会社も存在しますので、M&A仲介会社選定にあたっては、手数料に関する条件を十分に確認する必要があります。

 

 

(執筆:税理士 高井 寿)

 

 

 

 

 


 

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(注意)回答・解説は原則このコラム内で行い、個別の回答はできません。個別事例についてのご相談には対応できませんのであらかじめご承知おきください。

 

 

 

高井 寿(たかい ひさし) 

高井国際税務会計事務所 代表税理士 東京税理士会世田谷支部副支部長

2002年税理士登録、経営品質協議会認定アセッサー、CFPファイナンシャルプランナー、経営計画策定、国内及び国際タックスマネジメント、事業・資産承継、組織再編・連結納税、MAが専門。財団法人日本民事信託協会代表理事。

(著書等)「連結納税マニュアル(税務研究会)」「営業権の実務」(税務通信(税務研究会))、「経理システムと税務」「寄付金課税の問題点」(ともに税務弘報(中央経済社))、「資産家・事業家税務コンサルティングマニュアル」(税務研究会)

 

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顧問先からのM&A相談対応Q&A(入門編)

本連載は、顧問先のM&Aの疑問に答える税理士の視点で解説してきます。

 

Vol.1 Q:顧問先から「M&Aを検討している」と言われた時の初動対応は?

 

A:

まずは、相手の話をしっかり聴きましょう。
その場で判断せず、期待値を上げず、決めつけたりするような言動は控えてください。
税理士として最初の役割は、顧問先の意向や背景を正確に把握することです。
そのうえで、「一緒に考えていきましょう」という姿勢を明確にしてクライアント寄り添うことが大切です。

 

<解説>

では、顧問税理士として、クライアントのM&Aに関わるにはどのような点に注意すればよいのでしょうか?

 

①なぜ「判断しない」ことが重要なのか

M&Aの現場では、「税理士に最初に相談したが話が噛み合わなかった」という譲渡企業経営者の声を多く耳にします。

その原因の多くは、初回相談時に判断・評価・方向性まで踏み込んでしまうことにあります。

M&Aは、税務だけで完結するテーマではありません。

雇用、取引先、家族関係など、複数の要素が絡むため、初動での即断はミスマッチを生みやすくなります。

そのため初回は、「現時点では判断材料が不足している」というスタンスを明確にすることが重要です。

 

②なぜ「期待値を上げてはいけない」のか

「この規模なら〇億くらいでしょう」「最近この業界は高いですよ」

といった不用意な一言は、後にトラブルの火種になります。

M&Aの価格は相場ではなく、個別条件と交渉によって決まります。

初期段階での価格感提示は、経営者の期待値を不必要に引き上げ、結果として「話が違う」という不信感につながりかねません。

 

③「選択肢を閉ざさない」姿勢が信頼を生む

M&Aに対して否定的な意見を持つこと自体が問題なのではありません。

問題となるのは、代替案や整理を示さずに否定してしまうことです。

実際、M&Aを検討している経営者は多く、「理解してもらえなかった」と感じた瞬間に、別の相談先へ移ってしまいます。

結果として、成約後に初めて知らされ、顧問契約が解除されるケースも少なくありません。

 

実際のところ、売上数億円以上で一定の利益を確保している“優良顧客”ほど、金融機関、コンサル会社などから日常的にM&Aの提案を受けているのが実情です。

他にライバルが多数登場する中でも、信頼関係を崩すことなく顧問契約を継続してもらうためには、

常日頃からクライアントに対して真摯に向き合い、相談を受けた際には慎重に対応する必要があります。

 

 

【今回のポイント】

M&Aの現場からみた、初動対応のポイントは下記の通りです。

  • ・判断しない
  • ・期待値を上げない
  • ・ただし、選択肢は閉ざさない

 

 

この連載では、税理士の先生が実際に顧問先から受けるような相談に対する回答を連載体系的に解説していきます。

 

 

 

【著者】

株式会社たすきコンサルティング 代表取締役 森田 修

【プロフィール】

代表取締役 森田 修

1974年生まれ、大阪府出身。清風高等学校を卒業後、日本大学文理学部を経て、東洋大学大学院経済学研究科を修了。2004年に税理士登録。事業会社での実務経験を積んだ後、株式会社エスネットワークスにて株式公開コンサルティングなどに従事。

2005年に株式会社たすきコンサルティングを設立し、代表取締役に就任。以降、M&A・組織再編コンサルティングを中心に、税務・労務・株式公開支援など幅広い分野にわたりサービスを展開。グループ全体で約1,000社の企業と取引実績を持つ。

実務に裏打ちされた高い専門性と現場目線のアドバイスに定評があり、特に中小企業の経営支援において豊富な実績を誇る。剣道錬士六段の腕前も持ち、ビジネスと武道の両面で研鑽を重ねている。

 

 

 

 

[解説ニュース]

 

遺留分侵害額の支払請求を受けた場合の相続税の小規模宅地等の特例の適用

 

〈解説〉

税理士法人タクトコンサルティング(山崎 信義/税理士)

 

 

[関連解説]

【Q&A】特定贈与者の死亡前に相続時精算課税適用者である特例経営承継受贈者が死亡した際の税務

 

【Q&A】被相続人が保険料の全額を負担した生命保険契約に係る相続税の取扱い

 

 

 

【問】

被相続人甲は令和7年5月に死亡しました。
甲の相続人は長男と次男の2人です。甲は生前に全ての財産を長男に相続させる内容の公正証書遺言を作成しており、その遺言に基づいて長男は、相続税の小規模宅地等の特例(租税特別措置法(措法)69条の4。以下「本特例」)の対象となり得る複数の宅地を全て取得しました。しかし、遺言の内容に納得できない甲の次男は、令和8年2月に長男に対し遺留分侵害額の支払請求をしており、甲に係る相続税の申告時までに侵害額が確定しない見込みです。
上記の場合において、甲に係る相続税の計算上、次男の同意を得られないことを理由に、長男は本特例の適用を受けることができないのでしょうか。

 

 

【回答】

1.結論


相続税の申告の時までに遺留分侵害額が未確定の場合、甲に係る相続税はその侵害額請求がなかったものとして課税価格を計算します。本問の長男は、遺言により相続財産の全てを取得しているため、本特例の適用対象宅地等の選択において、他の相続人(次男)の同意は不要であり、他の要件を満たすことにより、本特例の適用を受けることができます。

 

 

2.解説


(1)遺留分制度の概要

被相続人の財産は、基本的には被相続人の意思で自由に処分することができます。しかし、被相続人が相続人以外の第三者または一部の相続人に対して、全財産を贈与または遺贈したような場合には、他の相続人が全く財産を取得できないという事態も考えられます。そこで民法では、相続財産のうち一定割合については「遺留分」として、兄弟姉妹以外の相続人に権利を留保することとしています(民法1042条)。具体的には遺留分権利者(遺留分を主張する相続人)が、受遺者又は受贈者(以下「受遺者等」)に対し遺留分侵害額に相当する金銭の支払を請求することができ、受遺者等は遺留分権利者に対し遺留分侵害額に相当する金銭を支払うことになります(同1046条、1047条)。

(2)遺留分侵害額請求があった場合の相続税計算

遺留分権利者が遺留分侵害額の支払を請求し、金銭を取得することになった場合、遺留分権利者は、その金銭債権は相続により取得したものとして相続税の課税対象となり、その金銭を支払うこととなった受遺者等(遺留分義務者)については、その金銭債務はその者の相続税の課税価格から除かれます。
ただし、相続税の申告時に当事者間にその請求について争いがあり、遺留分侵害額が確定していないときは、不確定事実を基として課税することは事実上困難であることから、その請求がなかったものとして課税価格を計算することになります(相続税法基本通達11の2‐4、同逐条解説)。

(3)本特例の適用要件

本特例は、個人が相続又は遺贈により取得した宅地等のうち、被相続人等の事業用又は居住用に供されていた一定のものがある場合において、その個人が本特例の適用を受けるものとして選択した宅地等につき、被相続人等に係る相続税の計算上、一定面積までの部分について、その課税価格のうち一定額を減額できる税制です。個人が本特例の適用を受けるためには、対象となり得る宅地等を取得した人が1人のみである場合を除き、その宅地等を取得した人々の全員の同意を得る必要があります(措法施行令40条の2第5項3号)。

(4)本問へのあてはめ

本問の場合、相続税の申告時までに遺留分侵害額請求により次男に支払うべき金銭の額が未確定のため、上記(2)のただし書より、遺言に基づき長男が甲の相続財産を全て取得したものとして、相続税の課税価格を計算します。本特例の適用対象となり得る宅地等を取得したのが長男1人のみであることから、上記(3)の下線部より、その適用に際して他の相続人(次男)の同意は不要であり、他の要件を満たすことによって長男は本特例の適用を受けることができます。

 

 

 

 

税理士法人タクトコンサルティング 「TACTニュース」(2026/03/23)より転載

 

 

 

 

Q-18  相続対策としてM&Aは利用できますか? |3分でわかる!M&Aのこと【解説コラム】

 

 

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 Q-18  相続対策としてM&Aは利用できますか? 

A

M&Aは相続対策としても利用することが可能です。
買い手となる場合と、売り手となる場合とで相続対策としての内容が異なってくるため、それぞれに分けて解説します。

 

 

 

<買い手の場合>
実際の相続税計算は複雑であるため、詳細な説明はここでは省略しますが、簡略化すると相続税は「相続財産×税率」で計算されます。
ここでいう相続財産は、現金や預金であればその財産の金額は額面金額の通りとなります。しかし、非上場株式を保有していた場合の財産の金額については、実際の取得金額ではなく、会社規模等により一定の算定方法で相続財産としての金額を算定することが必要になります。
非上場会社の規模によっていくつか評価方法が分かれますが、その評価方法の一つである純資産価額方式を簡便的に説明すると、この計算方法では対象の会社の資産を相続税のルールで評価し、負債との差額を評価額とします。
例えば、合理的な取引価値が4億円である会社の株式100%を、4億円で取得したとします。
下図にある通り、ここでの各資産の相続税における評価方法で評価すると結果は3億円となるため、一般的には実際の取引価格よりも評価額が低くなることが多々あります。
このような評価になった場合に、相続が発生すると、現金で4億円を保有したままの場合は相続財産4億円に対して税率を乗じた相続税が発生しますが、M&Aにより株式を取得していた場合には相続財産3億円に対して税率を乗じた相続税が発生することになり、現金を保有するよりも非上場株式を保有していたほうが有利となります。

 

 

このようにM&Aにより相続財産の評価額が低くなる可能性があります。しかし、実際の会社を取り巻く経営環境や、将来的にその後の事業運営が適切にできるのか等含めクリアにすべきポイントは多くあるため留意が必要です。

 

 

<売り手の場合>
相続税の税率は最大で55%となっており、多額の資産を保有していた場合には相続税額も多額となります。その際に資産の大半が経営する会社の株式などの流動性の低い資産であった場合には、相続発生時に必要な納税資金が不足してしまうことになります。
また、相続人が会社経営に関与しない立場である場合には、その後の会社経営に大きな影響を及ぼしてしまう可能性があります。
納税資金の準備やその後の会社運営という意味でも、会社経営に関与している役員等が相続発生前にM&Aを行い、適切な価格で売却し現金化しておくということも、相続対策のひとつと言えます。

 

今回はかなり簡略化した説明となっていますが、実際には様々な要素やルールに基づき計算されます。また売却時にも利益がでていれば売却した本人に課税が発生する場合や、非上場株式の相続においては事業承継税制というM&Aとは違う形での相続税の対策方法の選択など、多面的に税務の専門的な知識が必要となるため、実行に際しては税務専門家への事前相談が必須といえます。

 

 

 

 

(執筆:税理士・公認会計士 風間啓哉)

 

 

 

 

 


 

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風間啓哉(かざま けいや) 

税理士・公認会計士(風間会計事務所 代表)

2005年公認会計士登録、2010年税理士登録。

監査法人にて監査業務を経験後、上場会社オーナー及び富裕層向けの各種税務会計コンサル業務及びM&Aアドバイザリー業務等に従事。その後、事業会社㈱デジタルハーツ(現 ㈱デジタルハーツホールディングス:東証プライム)へ参画し、同社取締役CFOを経て、同社非常勤監査役(現任)を経験。2018年から会計事務所を本格的に立ち上げ、現在に至る。

(著書等)『PB・FPのための上場会社オーナーの資産管理実務(三訂版)』『資産家・事業家 税務コンサルティングマニュアル』(共著、税務研究会)、『ケーススタディ M&A会計・税務戦略』(共著、金融財政事情研究会)

 

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[解説ニュース]

資産管理会社の株特外しを無効化する評価通達189なお書きが適用された事例

 

〈解説〉

税理士法人タクトコンサルティング(遠藤 純一)

 

[関連解説]

■相続時精算課税制度で受贈者が贈与者より先に亡くなってトラブルになった事例

■不動産を持たせた会社の株式の贈与で、株価が評価通達6項で再評価された事例

 

 

1.はじめに


取引相場のない株式は、相続や遺贈、贈与などがあったときに、その会社の保有する資産を国税庁の財産評価基本通達(以下、評価通達という。)に従って評価することを前提にしています。
株式等保有特定会社とは、その財産の評価額の合計額に占める株式や出資、新株予約権付社債(以下、株式等という。)の金額の割合が50%以上である場合の会社のことをいいます。相続税・贈与税の計算上、非公開の株式等保有特定会社の発行した株式の評価方法は、原則として純資産価額方式またはS1+S2方式により評価されるため、上場会社の株価を参考に評価する類似業種比準方式による評価額よりも高くなりがちです。
このため発行株式の相続等の際に節税しようと、発行会社が株式等保有特定会社にならないように資産構成を変える「株特外し」が行われがちです。
ところが最近、行き過ぎた「株特外し」に対し、税務当局が否認する事例が増えてきました。

 

2. 新たな事例が


このほど、明らかになったのは、資産管理会社A社の代表取締役を務める祖父が、令和2年9月、孫XにA社の株式30株を贈与したケースで、税務署から贈与税の増額更正を受け、Xが国税不服審判所(以下、審判所という。)に更正処分の取り消しを求めた裁決事例です(国税不服審判所令和 7年9月5日裁決:情報開示請求による)。
事案の概要は次のとおりです。

①A社は、孫Xの父が代表取締役を務める上場会社B 社の筆頭株主だった。
②A社は、同社株式の贈与の2日前に約15億円もの賃貸不動産をB社から購入し、「株特外し」を実行。
③不動産購入の際に、金融機関から13億円(令和32年9月までの359回返済)、父から2億8千万円(令和5年9月末に一括返済)の借入を行った。
④贈与税の計算では、A社株式を取引相場のない株式として、純資産価額方式と類似業種比準方式の併用方式で株価を評価して申告。
⑤所轄税務署は令和5年9月に税務調査に入り、翌年6月、評価通達189のなお書きにより、贈与直前に行われたA社によるB社からの不動産購入に合理性はなく資産構成に変動はなかったものとしてA社を株式等保有特定会社と認定、株式等保有特定会社の株式の相続税評価では、S1+S2方式を採用し贈与税を増額更正した。

 

3. 裁決のポイント


評価通達189のなお書きは、評価の対象となる会社が、株式等保有特定会社に該当する評価会社かどうかを判定する場合に、課税時期前において合理的な理由もなく評価会社の資産構成に変動があり、その変動が株式等保有特定会社に該当すると判定されることを免れるためのものと認められるときは、その変動はなかったものとして判定を行うという取扱いです。これがこの事案のポイントでした。

 

4. 審判所の判断


審判所は、不動産の取得・借入れにより、合理的な理由もなくA社の資産構成が変動し、その変動はA社が株式等保有特定会社と判定されることを免れるためかどうかを争点としました(ほかの争点は割愛します)。なお書きについては資産構成の変動操作で時価がゆがめられるようなケースにも対処する必要があると認めました。

その上で、審判所は次のような事実を指摘しました。
(1)贈与者は、節税の提案を受けてA社による不動産の購入及びA社株式の贈与を決断、贈与の2日前に、不動産の取得・借入れが実際行われている
(2)A社が不動産の購入代金の全額を外部から資金調達したのは、 9億円を超える現金預金残高を減少させず、A社の総資産価額を増加させることで株式等保有割合を50%末満にするためであった
(3)不動産の購入代金の全額を外部から資金調達してA社の総資産価額を増加させた結果、A社の株式等保有割合が贈与日の直前に50%以上から50%未満に実際に変動した
(4)A社株式の贈与に不動産の取得・本件各借入れを近接させた一連の行為は、A社が株式等保有特定会社と判定されることを回避するための総資産価額の操作に当たる

上記などを踏まえ審判所は、A社につき株式等保有特定会社に該当すると判断しています。
Xは「不動産は、A社が賃貸事業の拡大を求めて購入したもの、取得原資を借入金としたのは、現金預金は不測の事態等の資金として留保するもので合理的理由がある」と主張しましたが、認められませんでした。

 

 

税理士法人タクトコンサルティング 「TACTニュース」(2026/03/09)より転載

 

[解説ニュース]

住宅譲渡の優遇税制では、「住まなくなって3年過ぎる年の年末」にご用心

 

〈解説〉

税理士法人タクトコンサルティング(遠藤 純一)

 

[関連解説]

■相続時精算課税制度で受贈者が贈与者より先に亡くなってトラブルになった事例

■不動産を持たせた会社の株式の贈与で、株価が評価通達6項で再評価された事例

 

 

1.はじめに


マイホームである住宅を譲渡した場合、税制上の特例を受けられる要件として、次のケースに応じ、以下の売却のタイムリミットをクリアする必要があります。

 

(1)住まなくなってから3年を経過する日の属する年の12月31日までに譲渡すること

 

(2)住んでいる住宅又は住んでいた住宅を取壊した場合、家屋を取り壊した日から1年以内に敷地の譲渡の契約をし、かつ、住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに譲渡すること。ただし、敷地をほかの用途に使っていないこと。

 

(3)住んでいる住宅が災害で滅失した場合、災害があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに敷地を譲渡すること

 

(4)住まなくなっていた住宅が災害で滅失した場合、住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに敷地を譲渡すること

 

このうち特に汎用性があるのが「住まなくなって3年を過ぎる年の年末」までに譲渡するという要件です。この要件は、自宅を譲渡した場合に適用可能な次の表の税制上の特例に共通するものとなっています。

①居住用財産を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例(軽減税率・措置法31条の3)
②居住用財産の譲渡所得の特別控除(3000万円特別控除・措置法35条)
③特定の居住用財産の買換えの場合の長期譲渡所得の課税の特例(居住用の買換え特例・措置法36条の2)
④居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除(措置法41条の5)
⑤特定居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除(措置法41条の5の2)

 

※③~⑤は政府の令和8年度税制改正大綱で適用期限が2年延長され令和9年12月31日までとされるほか、③と④については令和10年1月1日以後、買換え先の住宅に居住する場合、一定の住宅を除き、災害危険区域等に所在しないことが新たな要件とされています。

 

 

2.売却のタイムリミットのチェック方法


たとえば前記の3000万円特別控除の対象となる「居住用財産」とは、「個人がその居住の用に供している家屋で政令で定めるもののうち国内にあるもの」とされています。これには、家屋とその敷地の用に供されている土地等が含まれます。要するに、現在住んでいる住宅が原則的な「特例の対象」なのです。もっとも、現在住んでいなくても、住まなくなった日から同日以後3年を経過する日の属する年の12月31日までの間に譲渡されるものに限っては、「特例の対象」となるのです。この「住まなくなった日から同日以後3年を経過する日の属する年の12月31日までの間に譲渡」というのがタイムリミットです。

 

このタイムリミットを確認する場合に注意したいのが、国税に関する基本的なルールを定めた国税通則法です。それによると、①期間が月又は年をもって定められているときは暦に従って計算すること、②年の始めから期間を起算しないときは、翌年における起算日の応当する日の前日を期間の末日として計算することが決められています(国税通則法10条)。

 

仮に居住の用に供されなくなった日を令和5年1月1日だとすれば、この日に応答する日は令和8年1月1日です。この場合、令和5年1月1日の「同日以後 3年を経過する日」とは、期間満了する「期間の末日」となる令和8年1月1日の前日のこと、すなわち令和7年12月31日です。そして、この日の属する年の12月31日とは、令和7年12月31日となります。

 

応当日が令和8年1月1日だから、その年末の令和8年12月31日まで譲渡すれば大丈夫だと考えるのは、早計となるわけです。これを誤ると、3000万円控除など前記の特例が適用できなくなるのです。

 

 

3.住宅が実際に生活の拠点であったかどうかも重要


このほかに、もっと基本的な注意点もあります。それは、元の住まいが、「居住用財産」といえるかどうかという問題です。

 

たとえば、医療機関への通院のため、別に買ったマンションにたまにステイするようになった場合、邸宅(本宅)が本当に「短期間臨時にあるいは仮住まいと
して起居していたというのみでは足りず、真に居住の意思を持って客観的にもある程度の期間継続して生活の拠点としていたかどうか」が問われます。

 

この判定に当たっては、売った人やその配偶者などの家族の「日常生活の状況やその家屋の利用の実態、その家屋の入居目的、その家屋の構造及び設備の状況等の諸事情を総合的に考慮し、社会通念に従って判断」されることになります。税務当局は、郵便物や新聞の配達状況、本宅の電気使用量や水道代などから、チェックする例が散見されます。

 

実際に前記の「別に買ったマンションにたまにステイするようになった例」は、裁決事例(国税不服審判所・令和 6年2月21日裁決)として存在します。それによると①タイムリミットのチェック、②生活の拠点の事実チェックが段階を追って行われていることが確認できます。

 

 

税理士法人タクトコンサルティング 「TACTニュース」(2026/02/24)より転載

 

Q-17 M&Aの成約まで、どのくらいの時間がかかりますか?|3分でわかる!M&Aのこと【解説コラム】

 

 

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Q-17 M&Aの成約まで、どのくらいの時間がかかりますか?

A

M&Aの成約までに要する期間は、案件の規模や対象会社の事業内容、利害関係者の多寡などにより大きく異なりますが、一般的には最低でも3か月程度、大規模な案件においては3年程度を要する場合もあります。

 

この期間は、よく「知り合ってから結婚するまでの期間」に例えられます。

出会ってすぐに結婚するケースもあれば、時間をかけて相手を理解し、納得したうえで人生を共にする選択をするケースもあるように、M&Aも同様です。

 

以下では、一般的なM&Aのプロセスを、かかる時間がイメージしやすいように結婚に例えながら見てみましょう(交渉の流れについてはQ11も参照して下さい)。

 

 

(1)基本的な情報開示

事業内容、基礎的な財務諸表、主要取引先などの情報が開示されます。この段階は、当事者間の相互理解を深めるための初期フェーズであり、M&A検討の前提となる重要なプロセスです。
いわゆる「釣書」の交換にあたる段階です。お互いの基本情報を開示し、相手がどのような会社なのかを知るための最初のステップとなります。

 

(2) M&Aを進めるかどうかの意思確認(意向表明)

当該M&Aを進める意思が双方にあるかを確認する段階です。条件面や方向性を踏まえたうえで、次のフェーズへ進むか否かを判断します。
これは、知人の紹介を受けた後に「お見合いを進めるかどうか」を確認する段階に似ています。

 

(3)トップ面談

経営理念、事業方針、譲渡条件などについて、経営トップ同士で直接確認を行います。
財務条件のみならず、経営理念や将来像の一致が、M&A成功における重要な要素となります。
実際に顔を合わせ、お互いの考え方や価値観を確認する重要な場面です。結婚において人生観の一致が重要であるのと同様に、M&Aでも経営理念や将来像の共有は極めて重要です。

 

(4)基本合意

金額、時期、主要な条件について合意が形成されます。通常、法的拘束力を有するのは守秘義務契約や独占交渉権に限られますが、実務上は関係者への影響も大きく、慎重な判断が求められます。
この段階は「結納」に例えられます。基本合意に至った後に交渉が破談となると、当事者だけでなく、従業員や取引先、市場に与える影響も小さくありません。精神的・実務的な「しこり」が残る点は、結婚と非常によく似ています。

 

(5)デューディリジェンス

財務・税務・法務・ビジネス面などから、対象会社の詳細な調査が行われます。
買い手にとっては投資判断の根拠となる重要なプロセスであり、売り手にとっても自社のリスクや課題を整理する機会となります。買い手は「この会社に投資して、どれだけのリターンが見込めるのか」「どのようなリスクがあるのか」を確認します。一方で、売り手側が実施するセラーデューディリジェンスも重要です。
これは、実際に交際を重ね、相手の長所だけでなく短所も理解する期間、いわば婚前期間に相当します。近年、婚前同棲が一般化しているように、この確認期間はM&Aにおいても極めて重要です。

 

(6)最終譲渡契約の締結

金額、時期、表明保証条項、引渡条件等々法的拘束力を有する最終契約が締結されます。
従業員の雇用継続や取引先との関係承継は努力義務として条文化されるケースが多いですが、それ以外のものは原則としてすべてに法的権利義務が生じます。

 

(7) クロージング

株式または事業の引渡しおよび代金決済が行われ、M&Aが実行されます。
結婚式を挙げ、「めでたし、めでたし」となる瞬間です。

 

(8) 表明保証期間の終了

M&A完了後、3か月から2年程度の期間、財務諸表の虚偽や権利関係の瑕疵があった場合の保証責任が続きます。この期間が終了して、ようやくすべての権利義務が精算されます。こういった表明保証といった瑕疵担保責任のようなものは結婚にはありませんが、M&Aに関しては、限られた時間内で生きた事業体(経営戦略・資金・ノウハウ・顧客・従業員等々)の価値算定⇒合意に至たらなくてはなりませんので、こういった表明保証が行われるのが通常です。

 

 

おわりに

M&Aは、スピードが速ければ必ず成功するものではありません。
結婚と同じく、どれだけ時間をかけて相手を理解し、失敗を回避するための確認を行ったかが、その後の「幸せ」を左右します。成約までの期間は、決して無駄な時間ではなく、全てが成功のために必要不可欠なプロセスなのです。

 

 

(執筆:税理士 高井 寿)

 

 

 

 

 


 

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高井 寿(たかい ひさし) 

高井国際税務会計事務所 代表税理士 東京税理士会世田谷支部副支部長

2002年税理士登録、経営品質協議会認定アセッサー、CFPファイナンシャルプランナー、経営計画策定、国内及び国際タックスマネジメント、事業・資産承継、組織再編・連結納税、MAが専門。財団法人日本民事信託協会代表理事。

(著書等)「連結納税マニュアル(税務研究会)」「営業権の実務」(税務通信(税務研究会))、「経理システムと税務」「寄付金課税の問題点」(ともに税務弘報(中央経済社))、「資産家・事業家税務コンサルティングマニュアル」(税務研究会)

 

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