◇◆ 会計事務所M&Aの疑問(譲渡/入門編)◇◆

 

税務研究会では、会計事務所の事業引継ぎ(譲渡)を検討している税理士の方を対象に、全国各地で個別勉強会・相談会を開催しております。

個別勉強会・相談会の参加者から寄せられた質問の一部をご紹介いたします。

 


 67歳の税理士です。体力的な不安が出てきたため、できれば今年中に税理士事務所の譲渡を完了させたいと考えています。年内の譲渡は現実的に可能でしょうか。また、スムーズに進めるために注意すべき点があれば教えてください。

 

 

 

ご年齢や体力面を考慮され、「今年中に税理士事務所の譲渡を完了させたい」というご希望は、進め方を工夫すれば十分に可能です。ただし、通常業務を行いながら進めることになりますので、年内完了を前提とした明確なスケジュールを組み、早めに動き出すことが重要です。

 

具体的な流れとしては、4月~6月にかけて仲介契約を締結し、譲渡条件(引き継ぎ方法や譲渡価額など)や、顧問先や職員体制などの事務所情報を整理します。この初期準備を丁寧に行うことで、後工程がスムーズになります。7月~9月は譲渡先の探索と具体的な交渉を進める期間となり、条件面や引き継ぎ体制について双方の認識をすり合わせていきます。そして10月~12月には譲渡契約を締結し、実務的な引き継ぎへと移行する想定です。

 

体力的なご負担を減らすためにも、譲渡後にどの程度関与するのかを事前に決めておくことも重要です。

 

税務研究会では、年内完了を見据えたスケジュール管理から、無理のない引き継ぎ方法の検討まで丁寧にサポートいたしますので、安心してご相談ください。

 

 

 

 


◆会計事務所M&Aでお悩みの所長様におすすめ [秘密厳守で対応]

 

 

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税務研究会の「会計事務所M&Aサービス」

税務研究会では、全国の会計事務所とのネットワーク生かした、会計事務所の事業引継ぎをサポートするサービスをご用意しております。
創業75年を超え、長きにわたり税務会計業界・会計事務所と共に歩んできた税務研究会だからこそ、税理士先生の立場に寄り添った、安心感のある事業引継ぎのサポートを行うことができます。

 

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[解説ニュース]

療養のため転地したら、自宅に小規模宅地等の特例の適用が認められなくなった事例

 

〈解説〉

税理士法人タクトコンサルティング(遠藤 純一)

 

[関連解説]

■M&A直前の相続で取得した株式の相続税評価に係る裁判は納税者勝訴で確定

■一団の宅地に用途の異なる建物がある時の小規模宅地等の特例の利用上の注意

 

 

1.はじめに


療養のため転地したことが、相続税の合法的な節税の妨げになる事例が明らかになりました(国税不服審判所令和7年12月11日裁決、情報公開による)。
この事案は、納税者Aさんが病気の妹(被相続人)と母親を伴い、自宅から離れて治療に専念するため病院の近場にある場所に転地していたケースでした。
争点は、転地する前の自宅が「小規模宅地等の特例」の適用できる特定居住用宅地等に該当するかどうかというものでした(本稿で他の争点は割愛します)。
税務署が生活の本拠は転地先で、自宅ではないとして否認したため、正しいのはどちらか、最終的に国税不服審判所(以下、審判所という。)に判断を仰ぐことになったのです。

2. 小規模宅地等の特例


小規模宅地等の特例とは、被相続人の住んでいた宅地を相続した場合に、その宅地等のうち所定の要件を満たした宅地での相続税の課税対象額を減額する制度です。本件では居住用の宅地330㎡までについて、相続税の課税対象額を最大80%減額するものです。

3. 事案の概要


(1)妹(被相続人)が死亡し相続人は母親のみであった。
(2)亡き妹の相続財産には、住民登録のあった家屋と敷地(以下、自宅という。)があり、母親は、その家屋と土地の所有権を相続した。
(3)母親は、令和3年3月、公正証書によって、遺言の効力発生時に母親が有する一切の財産をAさんに相続させる旨の遺言をした。
(4)母親は、上記相続に係る相続税の申告書を提出することなく死亡し、相続が開始した。法定相続人は、Aさんのほかに、母親の長男、次男もいたが、公正証書遺言があったため、Aさんのみが母親から妹に係る相続税の申告及び納税義務を承継した。
(5)被相続人(妹)と母親が死亡した場所は、C市に所在する転地先のD居室であった。もっとも、請求人等の住民票上の住所は、昭和62年2月26日以降、自宅が存するEであり、亡き妹及び母親の住民票上の住所は、それぞれ死亡の日まで異動はなかった。
(6)Aさんは承継した相続税につき、自宅の土地に小規模宅地等の特例を適用して申告期限までに提出した。
(7)税務署は、亡き妹がその相続の開始の直前において、自宅に生活の拠点を置いていたとは認められないから、自宅の土地について小規模宅地等の特例を適用することはできないなどとして更正処分をした。
(8)Aさんはマイホームを譲渡した場合の特例の取扱いを定めた措置法通達31の3−2を引き合いに、次のように主張しました。
「被相続人(妹)は転地療養の場として一時的な使用目的で転地先の居室に入居し、病状が回復した暁には自宅において生活を再開することを家族の総意としていた。転地先居室は生活の拠点には当たらず、住民票のある家屋が生活の拠点である」

4. 審判所の判断


審判所は、「ある宅地等が、相続開始の直前において、この特例の適用対象となる被相続人等の「居住の用に供されていた宅地等」に当たるか否かは、生活の拠点を置いていたかどうかにより判断すべき」と基準を示しました。
もっとも「相続開始の直前において、被相続人等が当該宅地等を敷地とする建物において現実に起居していなかった場合であっても、それが一時的なものであって、被相続人等が当該建物に生活の拠点を置いていたといえるときには、当該宅地は、被相続人等の「居住の用に供されていた宅地等」に当たる」とも述べました。
上記を踏まえ、審判所は具体的な検討において、「被相続人が自宅で現実に起居することが極めて困難な状況にある一方で、転地先居室は被相続人の生活の拠点たり得る場所であったこと、以後、これらの客観的状況に格別の変化はみられず、被相続人は、2年余りという少なくない期間にわたって、転地先居室で現実に起居し続けていたこと」から、それが「一時的なものであったとはいえない」と判断しました。
Aさんは、必要に応じて自宅に帰っていたことや、家財・貴重品等を置いていたことなどを主張しました。
しかし審判所は上記の事情について「病状が回復すれば本件家屋に戻ることを決意していたことを推認させるものではあるが、Aさんが自宅を管理していたことを示すものではあっても、被相続人が本件家屋に生活の拠点を置いていたことを基礎付ける事情であるとはいえない。」として、税務署の処分を支持しました。

 

 

 

 

税理士法人タクトコンサルティング 「TACTニュース」(2026/05/12)より転載

 

Q-20  M&Aが進まない理由は何ですか? |3分でわかる!M&Aのこと【解説コラム】

 

 

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今後、ますます活用が進んでいくであろうM&Aについて、できるだけわかりやすくQ&A形式で解説するコラムを掲載することにしました。ぜひご一読ください!

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 Q-20 M&Aが進まない理由は何ですか?

A

M&Aを進めていても、イメージ通りに進まないことが多々発生します。M&Aは、大きく(1)事前検討・準備、(2)マッチング・交渉、(3)契約締結の3つの段階に分けることができます。それぞれの段階ごとに、M&Aが進まない要因について、詳しく触れていきたいと思います。

 

 

(1)事前検討・準備
この段階では主にM&Aを実施すべきかどうかを事前に検討するために、情報収集やM&Aの目的・条件等を設定し、どのような方法で進めていくかなどの戦略を策定します。また、多くの企業はこの段階でM&A仲介会社等とアドバザイリー契約を結び、相談しながらM&Aを進めることになります。

この点、信頼できるM&A仲介会社が見つからない場合や、M&Aについて十分な知識を有していない会社が自力でM&Aを進めようとする場合には、自社の分析や市場調査に必要以上に時間がかかることがあります。また、M&Aの目的設定が曖昧な状態だと、方向性がぶれてしまい、M&Aが進まない要因の一つとなります。

 

(2)マッチング・交渉
この段階では主に買収先および売却先の候補を選定した上で絞りこみ、売り手がノンネームシート(注)や企業概要書を作成し、売却先へ提示の上、お互いの希望条件にあった企業とのマッチングを行います。その後、マッチングした企業の経営者同士によるトップ面談や交渉を進めていき、基本合意書の締結まで行います。

この点、一般的にM&Aは売り手よりも買い手の方が多く存在しており、買い手の条件と適合する売り手がなかなか見つからずにマッチングに時間がかかるケースがあります。また、売り手が作成した企業概要書で会社の魅力が伝わりにくい場合や、(1)事前検討・準備段階における自社分析が不十分だったために譲渡希望価格を不当に高く設定してしまった場合などにも、双方の条件が適合せずにマッチングに時間を要し、M&Aが進まない要因となります。
注: 売り手の名前が分からない状態で会社概要、財務状況、譲渡価格などの希望条件等が記載された資料

 

(3)契約締結
この段階では、主に売り手企業に対してデューディリジェンスと呼ばれる企業調査を実施し、その調査結果を踏まえて最終条件の交渉を行った上で、最終契約の締結を進めます。デューディリジェンスには財務、税務、法務、労務、ITなど様々な種類の調査があり、基本的には買い手が選定した第三者の専門家によって行われ、潜在的なリスクや問題点を洗い出し、買い手の意思決定に資する情報を提供します。

この点、特に次のようなケースにおいてはデューディリジェンスの実施や契約締結が遅れることがあり、M&Aが進まない要因となります。

売り手から十分な情報が開示されないケース
売り手がM&Aに不慣れな場合には、買い手から要求される資料リストが不十分であったり、準備や確認に時間を要したりすることがあり、デューディリジェンスの実施が遅れる要因となります。

売り手が不適切な会計処理を行っているケース
売り手が架空の売上計上や資産の過大計上及び認識していない負債が多額にある場合などの不適切な会計を行っている場合には、その原因を究明して企業のあるべき財政状態、経営成績を把握する必要があるため、その修正に時間を要することがあり、デューディリジェンスの実施が遅れる要因となります。

デューディリジェンスの結果を踏まえた最終交渉が難航するケース
デューディリジェンスを実施した結果、予期せぬ潜在的なリスクが発見された場合には、最終交渉において譲渡金額や譲渡対象資産・負債の範囲、売り手の経営者の待遇などが当初の希望条件から大きく変わることもあり、なかなか双方の折り合いがつかずに契約の締結が遅れることになります。

 

 

 

 

(執筆:税理士・公認会計士 風間啓哉)

 

 

 

 

 


 

このコラムでは読者の方からのご質問も募集しています。M&Aに関することで疑問に思っていること、コラムの内容に関してもっと詳しく知りたいこと、○○について取り上げてほしい、などありましたら、こちらのアドレス(links@zeiken.co.jp)までお知らせください

 

(注意)回答・解説は原則このコラム内で行い、個別の回答はできません。個別事例についてのご相談には対応できませんのであらかじめご承知おきください。

 

 

 

風間啓哉(かざま けいや) 

税理士・公認会計士(風間会計事務所 代表)

2005年公認会計士登録、2010年税理士登録。

監査法人にて監査業務を経験後、上場会社オーナー及び富裕層向けの各種税務会計コンサル業務及びM&Aアドバイザリー業務等に従事。その後、事業会社㈱デジタルハーツ(現 ㈱デジタルハーツホールディングス:東証プライム)へ参画し、同社取締役CFOを経て、同社非常勤監査役(現任)を経験。2018年から会計事務所を本格的に立ち上げ、現在に至る。

(著書等)『PB・FPのための上場会社オーナーの資産管理実務(三訂版)』『資産家・事業家 税務コンサルティングマニュアル』(共著、税務研究会)、『ケーススタディ M&A会計・税務戦略』(共著、金融財政事情研究会)

 

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顧問先からのM&A相談対応Q&A(入門編)

本連載は、顧問先のM&Aの疑問に答える税理士の視点で解説してきます。

 

Vol.2 Q:M&Aのトラブルとはどのようなものか?

 

A:

直近では、いわゆる“悪質な買手”による資金流出型のトラブルが問題視されました。
具体的な事例として現預金を有する債務超過企業が安価で買収され、買収後に資金だけを抜かれて放置されるケースがあります。
この場合、旧オーナーの個人保証が残り、最終的に倒産リスクを負うという深刻な被害につながります。

 

<解説>
■ 解説|実際に起きているスキーム

実際に、以下のような流れが確認されています。

 

・現預金を持つ会社(債務超過でも可)を低額で買収

・買収後、「貸付金」などの名目で現預金を買手先口座へ送金

・金融機関借入に対する旧オーナーの個人保証は解除されないまま放置

・一定期間後、買手が連絡不能となり会社は実質的に放置

・資金流出により資金繰りが破綻し倒産

・結果として旧オーナーに個人保証債務のみが残る

 

形式上は株式譲渡が成立していても、実態としては“資金の持ち逃げ”に近い事例です。価格がつく案件では発生しにくく、債務超過・赤字・後継者不在といった「早く手放したい」企業ほど狙われやすい傾向があります。

 

■ 税理士が確認すべき防止ポイント

この種のトラブルは、財務内容の確認だけでは防げません。買手の実在性と資金計画の妥当性をチェックすることが重要です。

 

・買収資金の出所と自己資金割合

・買収後の資金管理体制(資金移動権限・口座管理者)

・個人保証の解除スケジュールが金融機関と合意されているか

・買手の過去の買収実績と継続保有状況

 

特に個人保証の解除がクロージング条件に組み込まれているかどうかは、旧オーナーのリスクに直結する重要な論点です。

こうした点については、税理士だけで判断するのではなく、M&Aの実務に精通した仲介会社や専門家と連携しながら確認することが望ましいといえます。

なお、中小企業庁が策定している「中小M&Aガイドライン」においても、M&A実行後に旧オーナーの保証債務が不適切に残存することがないよう、金融機関との保証解除に向けた調整を適切に行うことの重要性が示されています。

譲渡を判断する際には同ガイドラインを順守し、クロージング条件を整理したうえで手続きを進めているかどうか、専門家を交えて進めていくことが重要となります。

 

■ 顧問先への伝え方

経営者には「赤字でも引き受けると言う相手ほど慎重に見る必要がある」ことを伝えるべきです。安価でも確実に保証解除まで完了する相手と、形式上の譲渡だけでリスクが残る相手では、最終的な安全性が大きく異なります。

 

買手の財務的裏付けと保証処理の進捗を管理することで、この種の被害は大幅に回避できます。価格ではなく“譲渡後に何が残るか”を基準に助言することが、顧問先を守る上で最も重要かつ実務的な対応です。

 

 

 

【著者】

株式会社たすきコンサルティング 代表取締役 森田 修

【プロフィール】

代表取締役 森田 修

1974年生まれ、大阪府出身。清風高等学校を卒業後、日本大学文理学部を経て、東洋大学大学院経済学研究科を修了。2004年に税理士登録。事業会社での実務経験を積んだ後、株式会社エスネットワークスにて株式公開コンサルティングなどに従事。

2005年に株式会社たすきコンサルティングを設立し、代表取締役に就任。以降、M&A・組織再編コンサルティングを中心に、税務・労務・株式公開支援など幅広い分野にわたりサービスを展開。グループ全体で約1,000社の企業と取引実績を持つ。

実務に裏打ちされた高い専門性と現場目線のアドバイスに定評があり、特に中小企業の経営支援において豊富な実績を誇る。剣道錬士六段の腕前も持ち、ビジネスと武道の両面で研鑽を重ねている。

 

 

 

 

[解説ニュース]

 

【Q&A】被相続人が保険料の全額を負担した生命保険契約に係る相続税・所得税の取扱い

 

〈解説〉

税理士法人タクトコンサルティング(山崎 信義/税理士)

 

 

[関連解説]

【Q&A】被相続人が保険料の全額を負担した生命保険契約に係る相続税の取扱い

 

インボイス(適格請求書)発行事業者が死亡し、相続財産が未分割の場合の消費税の手続

 

 

 

【問】

令和8年1月に亡くなった甲さんは、平成25年に配偶者の乙がX生命保険会社と契約し、被保険者乙、死亡保険金受取人A(甲の長男)との定めのある生命保険契約(満期・解約返戻金あり)の保険料を全て負担していました。この生命保険契約に係る税務上の取扱いついて、以下の通り質問します。

【問1】甲さんに係る相続税の計算上、この生命保険契約に関する権利はどのような取扱いになるのでしょうか。
【問2】甲さんの死亡後、生命保険契約の契約者である乙さんが、その契約を解約して返戻金を取得した場合、乙さんに所得税が課税されるそうですが、その場合に甲さんが負担した保険料はどのような取扱いになるのでしょうか。なお、この生命保険契約は、所得税の源泉分離課税の対象となる一時払養老保険等には該当しません。

 

 

【回答】

1.結論


(1)【問1】の場合、生命保険契約に係る権利は本来の相続財産ではありませんが、相続税の計算上は、契約者の乙が甲からこれを相続により取得したものとみなされ、課税対象とされます。

(2)【問2】の場合、乙が取得した解約返戻金は所得税の一時所得とされ、その返戻金の額から甲が負担した保険料の額と特別控除額を控除した額の2分の1相当額が所得税の課税対象とされます。

 

 

2.解説


(1) 被相続人以外の者が保険契約者の生命保険契約で、被相続人が保険料を負担した場合の生命保険契約に関する権利の相続税の取扱い(【問1】)

 

①みなし相続課税
相続開始の時において、まだ保険事故が発生していない生命保険契約のうち、被相続人以外の者が保険契約者である場合、その生命保険契約に関する権利は本来の相続財産には該当しません。ただし、被相続人以外の者が保険契約者で、かつ被相続人が保険料を負担した生命保険契約に関する権利のうち一定のものについては、その契約者が生命保険契約に関する権利を相続又は遺贈により取得したものとみなされ、相続税の課税対象とされます(相続税法3条1項3号)。この場合の生命保険契約に関する権利の価額は、相続開始時においてその契約を解約するとした場合に支払われる解約返戻金の額を基に計算されます(財産評価基本通達214)。

 

②本問へのあてはめ
本問の場合、生命保険契約に関する権利は、甲に係る相続税の計算上、契約者の乙が甲から相続により取得したものとみなされ、その権利の価額は、その生命保険契約に係る解約返戻金を基に計算されます。

 

 

(2)甲の死亡後、生命保険契約の契約者である乙が、その契約を解約して返戻金を取得した場合の所得税の計算(【問2】)

 

①所得税の取扱い
個人が生命保険契約の解約返戻金を取得した場合において、保険料負担者と保険金受取人が同一人のときは、源泉分離課税の対象となる一時払養老保険等に該当する場合を除き、返戻金から保険料と特別控除額(最大50万円)を控除後の金額が一時所得とされ、その2分の1相当額に対し所得税が課税されます(所得税法22条2項2号、34条、所得税基本通達34-1(4))。

 

②一時所得の金額の計算上控除する保険料
生命保険契約等に基づく解約返戻金が一時所得とされる場合に、その一時所得の金額の計算上控除される保険料等が、その返戻金を取得した者(乙)自身が負担したものに限られるのか、それとも返戻金の受給者以外の者(甲)が負担していたものも含まれるかについては法令上は明確にされておらず、疑問が生じます。
この点について、所得税基本通達34-4(2)及びその逐条解説では、解約返戻金等の一時金の支払を受けた者が負担しなかった保険料等がある場合でも、保険契約者や保険金受取人以外の者が保険料を負担したときは相続の際に相続税の課税等がされることから、原則として保険契約に係る保険料等の総額を一時所得の金額の計算上、控除する旨を定めています。

 

③本問へのあてはめ
乙が生命保険契約に基づき取得した解約返戻金は所得税の一時所得とされ、その金額の計算上、保険契約に係る保険料の総額(=甲が負担した保険料)を控除します。

 

 

 

 

税理士法人タクトコンサルティング 「TACTニュース」(2026/04/27)より転載

 

 

 

 

[解説ニュース]

被相続人が契約した修繕工事の着工が相続開始後になっても債務控除が認められた事例

 

〈解説〉

税理士法人タクトコンサルティング(遠藤 純一)

 

[関連解説]

■資産管理会社の株特外しを無効化する評価通達189なお書きが適用された事例

■不動産を買った時の土地建物の価額按分が不合理と指摘された場合

 

 

1.はじめに


被相続人が施主となって倉庫の修繕契約をしたものの、着工は相続後に行われた場合、その費用が相続税の計算上、債務控除できるかどうかで争われた裁判がありました。福井地裁は着工が遅れた事情を汲んで債務控除を認める判決を言い渡しました(令和7年11月5日判決、確定)。
相続税の債務控除は、相続人が負担する「被相続人が亡くなった時点で現に存する債務で確実と認められるもの」と「葬式費用」とされています(相続税法13条)。この確実性については、税務署と見解の相違が生じがちです。この事案のポイントを見ていきます。

 

2. 事案の概要


判決によると、事実関係は、次のとおりです。

①平成30年8月、貸付倉庫等のオーナー(被相続人)は、賃借人である卸売業者から、その倉庫等の土間が約10㎝地盤沈下しているため修繕の相談を受けた。

 

②平成31年4月、オーナーは、相続人(原告)がとってくれた工事見積を基に施工業者と修繕工事について工期を同年4月20日から同年7月30日までとする請負契約を締結した。しかし賃借人から物流が少なくなる10月に着工してほしいとの意向が示された。

 

③同年5月、オーナーは、工期を同年10月1日から同年11月30日とする請負契約の変更をした。

 

④同年9月末(オーナーの死後)、施工業者は、修繕工事に着手した。

 

⑤同年10月下旬、施工業者は、床面積の半分程度まで注入したところで予定していたコンクリート全量を注入し終え、相続人(原告)に対し、未施工の範囲をどうするか確認したところ、工事を終了してよいとの了解を得たため、工事を終了した。同年11月、相続人は施工業者に修繕費用を支払った。

 

⑥令和2年6月、相続人は、相続税の計算上、修繕費用を債務控除して相続税の申告を行い、令和4年4月までに修正したが、修繕費用の債務控除はしていた。

 

⑦令和4年4月、所轄税務署は、修繕費用の債務控除を否認して相続税の増額更正、過少申告加算税の賦課を行った。その主な理由は、請負代金債務が原則として仕事完成時に確定した債権債務として計上されること、相続開始日時点では、修繕工事はいまだ着工もされておらず、また、請負契約によれば相続開始時点において被相続人・相続人である原告による解除や工事内容の変更が可能な状況にあったこと

 

⑧令和5年12月、相続人は最終的に裁判に訴えた。
相続人は次のように主張しました。「賃借人は、高さ数メートルに達する棚・ラックを設置し、商品の保管・搬出作業などはフォークリフト等で行われていた。しかし地盤沈下の影響で商品の転落による破損、従業員の生命の危険などの問題が発生した。これは賃貸人に修繕義務がある。また、工期の変更は、修繕義務の履行を請求している賃借人からの繁忙期を避けたいとの要望に応えたもので被相統人の要望での変更という要素はない。」

 

3. 福井地裁の判断


争点は、「修繕費用にかかる債務が相続税法14条1項にいう確実と認められるものに当たるか」でした。
福井地裁はまず、債務控除の趣旨について「相続された債務の弁済に要する資金を課税対象外として相続人に留保させるため」と原則的な考え方を示す一方、「相続開始時点において債務が存在するか否かが不確実な場合や、債務が存在するとしても、履行されるか否かが不確実な場合は、相続人に弁済資金を留保する必要があるとはいえない」とも述べました。
そのうえで福井地裁は「債務の存在が確実であるとともにその履行が確実であることを要し、また、これらが確実であるかを判断するにあたっては、債務の形式のみならず、債務が生じるに至った経緯等についても考慮すべき」と判断の枠組みを明らかにしました。

 

そこで福井地裁は、次のような事実を指摘しました。

 

A賃貸目的物につき契約によって定められた使用収益ができない場合には、修繕義務があるといえる。

 

B地盤沈下により、商品保管上のリスクが生じており、安全な使用収益に支障を来す状態になっていたと認められ、被相続人は契約締結時、修繕義務を負っていた。

 

C被相続人は、当初の請負契約締結により同年5月には工事に着工できる状況にあった。

 

D施工時期が変更となったのは、賃借人の要望のためで、これがなければ修繕工事は、当初のとおり相続開始時前に施工を終えていたと考えられる。

 

以上から福井地裁は修繕工事が履行されることは、相続開始時点で確実であったとし、最終的に上記「債務は債務の存在及びその履行がいずれも確実であると認められる」から、税務署の追徴を取消す判決を言い渡したのです。

 

 

 

 

税理士法人タクトコンサルティング 「TACTニュース」(2026/04/13)より転載

 

Q-19 M&Aと退職金の活用について|3分でわかる!M&Aのこと【解説コラム】

 

 

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今後、ますます活用が進んでいくであろうM&Aについて、できるだけわかりやすくQ&A形式で解説するコラムを掲載することにしました。ぜひご一読ください!

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Q-19 M&Aと退職金の活用について

A

M&Aの実務においては、退職金の支給を組み込んだスキームが採用されるケースが少なくありません。

これは、単なる譲渡対価の調整にとどまらず、買い手・売り手双方にとって合理的なメリットが期待できるためです。

 

その背景として、主に次の二点が挙げられます。
第一に、買い手にとっては買収希望価格を増額することなく、売り手経営者の手取り額を増やすことが可能となる点です。

第二に、退職金に係る税務上の効果が、買い手・売り手双方にメリットをもたらす点です。

 

以下では、一般的なスキームとその効果について整理します。

(1)余剰現預金の退職金への振替

M&Aの対象会社において、貸借対照表上の現預金が運転資金として必要な水準を上回っている場合、その超過部分を売り手経営者に対する退職金として支給するスキームが検討されることがあります。

(2)譲渡対価を増やさずに手取り額を増加

上記の方法により、買い手は買収希望価格を引き上げることなく、売り手経営者の実質的な手取り額を増やすことが可能となります。
結果として、譲渡対価と退職金を組み合わせた形で、双方が納得しやすい条件設定が実現します。

(3)買い手側における税務上のメリット

退職金が税務上、損金算入可能な範囲内で支給される場合、その分の税効果は買収会社の財務諸表に寄与することとなります。
もっとも、役員退職金については、在籍期間や最終役員報酬との関係から算定される適正額を超えないよう、慎重な検討が必要です。

(4)売り手経営者の引退後の生活設計への寄与

売り手経営者にとっては、M&A完了後の引退を見据えた生活設計が立てやすくなる点も、大きなメリットといえます。
特に、退職金は税務上の優遇措置(【1】退職所得控除と【2】2分の1課税)があるため、資金計画の観点からも重要な意味を持ちます。

留意点

このような退職金スキームは、M&Aプロセスの中で一定の検討時間を要するものの、実務上は非常に有効な手法です。なお、M&A仲介会社の中には、退職金の支給を組み込んだスキームを重要視し、退職金を含めた金額を手数料算定の基礎とする会社も存在しますので、M&A仲介会社選定にあたっては、手数料に関する条件を十分に確認する必要があります。

 

 

(執筆:税理士 高井 寿)

 

 

 

 

 


 

このコラムでは読者の方からのご質問も募集しています。M&Aに関することで疑問に思っていること、コラムの内容に関してもっと詳しく知りたいこと、○○について取り上げてほしい、などありましたら、こちらのアドレス(links@zeiken.co.jp)までお知らせください

 

(注意)回答・解説は原則このコラム内で行い、個別の回答はできません。個別事例についてのご相談には対応できませんのであらかじめご承知おきください。

 

 

 

高井 寿(たかい ひさし) 

高井国際税務会計事務所 代表税理士 東京税理士会世田谷支部副支部長

2002年税理士登録、経営品質協議会認定アセッサー、CFPファイナンシャルプランナー、経営計画策定、国内及び国際タックスマネジメント、事業・資産承継、組織再編・連結納税、MAが専門。財団法人日本民事信託協会代表理事。

(著書等)「連結納税マニュアル(税務研究会)」「営業権の実務」(税務通信(税務研究会))、「経理システムと税務」「寄付金課税の問題点」(ともに税務弘報(中央経済社))、「資産家・事業家税務コンサルティングマニュアル」(税務研究会)

 

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顧問先からのM&A相談対応Q&A(入門編)

本連載は、顧問先のM&Aの疑問に答える税理士の視点で解説してきます。

 

Vol.1 Q:顧問先から「M&Aを検討している」と言われた時の初動対応は?

 

A:

まずは、相手の話をしっかり聴きましょう。
その場で判断せず、期待値を上げず、決めつけたりするような言動は控えてください。
税理士として最初の役割は、顧問先の意向や背景を正確に把握することです。
そのうえで、「一緒に考えていきましょう」という姿勢を明確にしてクライアント寄り添うことが大切です。

 

<解説>

では、顧問税理士として、クライアントのM&Aに関わるにはどのような点に注意すればよいのでしょうか?

 

①なぜ「判断しない」ことが重要なのか

M&Aの現場では、「税理士に最初に相談したが話が噛み合わなかった」という譲渡企業経営者の声を多く耳にします。

その原因の多くは、初回相談時に判断・評価・方向性まで踏み込んでしまうことにあります。

M&Aは、税務だけで完結するテーマではありません。

雇用、取引先、家族関係など、複数の要素が絡むため、初動での即断はミスマッチを生みやすくなります。

そのため初回は、「現時点では判断材料が不足している」というスタンスを明確にすることが重要です。

 

②なぜ「期待値を上げてはいけない」のか

「この規模なら〇億くらいでしょう」「最近この業界は高いですよ」

といった不用意な一言は、後にトラブルの火種になります。

M&Aの価格は相場ではなく、個別条件と交渉によって決まります。

初期段階での価格感提示は、経営者の期待値を不必要に引き上げ、結果として「話が違う」という不信感につながりかねません。

 

③「選択肢を閉ざさない」姿勢が信頼を生む

M&Aに対して否定的な意見を持つこと自体が問題なのではありません。

問題となるのは、代替案や整理を示さずに否定してしまうことです。

実際、M&Aを検討している経営者は多く、「理解してもらえなかった」と感じた瞬間に、別の相談先へ移ってしまいます。

結果として、成約後に初めて知らされ、顧問契約が解除されるケースも少なくありません。

 

実際のところ、売上数億円以上で一定の利益を確保している“優良顧客”ほど、金融機関、コンサル会社などから日常的にM&Aの提案を受けているのが実情です。

他にライバルが多数登場する中でも、信頼関係を崩すことなく顧問契約を継続してもらうためには、

常日頃からクライアントに対して真摯に向き合い、相談を受けた際には慎重に対応する必要があります。

 

 

【今回のポイント】

M&Aの現場からみた、初動対応のポイントは下記の通りです。

  • ・判断しない
  • ・期待値を上げない
  • ・ただし、選択肢は閉ざさない

 

 

この連載では、税理士の先生が実際に顧問先から受けるような相談に対する回答を連載体系的に解説していきます。

 

 

 

【著者】

株式会社たすきコンサルティング 代表取締役 森田 修

【プロフィール】

代表取締役 森田 修

1974年生まれ、大阪府出身。清風高等学校を卒業後、日本大学文理学部を経て、東洋大学大学院経済学研究科を修了。2004年に税理士登録。事業会社での実務経験を積んだ後、株式会社エスネットワークスにて株式公開コンサルティングなどに従事。

2005年に株式会社たすきコンサルティングを設立し、代表取締役に就任。以降、M&A・組織再編コンサルティングを中心に、税務・労務・株式公開支援など幅広い分野にわたりサービスを展開。グループ全体で約1,000社の企業と取引実績を持つ。

実務に裏打ちされた高い専門性と現場目線のアドバイスに定評があり、特に中小企業の経営支援において豊富な実績を誇る。剣道錬士六段の腕前も持ち、ビジネスと武道の両面で研鑽を重ねている。

 

 

 

 

[解説ニュース]

 

遺留分侵害額の支払請求を受けた場合の相続税の小規模宅地等の特例の適用

 

〈解説〉

税理士法人タクトコンサルティング(山崎 信義/税理士)

 

 

[関連解説]

【Q&A】特定贈与者の死亡前に相続時精算課税適用者である特例経営承継受贈者が死亡した際の税務

 

【Q&A】被相続人が保険料の全額を負担した生命保険契約に係る相続税の取扱い

 

 

 

【問】

被相続人甲は令和7年5月に死亡しました。
甲の相続人は長男と次男の2人です。甲は生前に全ての財産を長男に相続させる内容の公正証書遺言を作成しており、その遺言に基づいて長男は、相続税の小規模宅地等の特例(租税特別措置法(措法)69条の4。以下「本特例」)の対象となり得る複数の宅地を全て取得しました。しかし、遺言の内容に納得できない甲の次男は、令和8年2月に長男に対し遺留分侵害額の支払請求をしており、甲に係る相続税の申告時までに侵害額が確定しない見込みです。
上記の場合において、甲に係る相続税の計算上、次男の同意を得られないことを理由に、長男は本特例の適用を受けることができないのでしょうか。

 

 

【回答】

1.結論


相続税の申告の時までに遺留分侵害額が未確定の場合、甲に係る相続税はその侵害額請求がなかったものとして課税価格を計算します。本問の長男は、遺言により相続財産の全てを取得しているため、本特例の適用対象宅地等の選択において、他の相続人(次男)の同意は不要であり、他の要件を満たすことにより、本特例の適用を受けることができます。

 

 

2.解説


(1)遺留分制度の概要

被相続人の財産は、基本的には被相続人の意思で自由に処分することができます。しかし、被相続人が相続人以外の第三者または一部の相続人に対して、全財産を贈与または遺贈したような場合には、他の相続人が全く財産を取得できないという事態も考えられます。そこで民法では、相続財産のうち一定割合については「遺留分」として、兄弟姉妹以外の相続人に権利を留保することとしています(民法1042条)。具体的には遺留分権利者(遺留分を主張する相続人)が、受遺者又は受贈者(以下「受遺者等」)に対し遺留分侵害額に相当する金銭の支払を請求することができ、受遺者等は遺留分権利者に対し遺留分侵害額に相当する金銭を支払うことになります(同1046条、1047条)。

(2)遺留分侵害額請求があった場合の相続税計算

遺留分権利者が遺留分侵害額の支払を請求し、金銭を取得することになった場合、遺留分権利者は、その金銭債権は相続により取得したものとして相続税の課税対象となり、その金銭を支払うこととなった受遺者等(遺留分義務者)については、その金銭債務はその者の相続税の課税価格から除かれます。
ただし、相続税の申告時に当事者間にその請求について争いがあり、遺留分侵害額が確定していないときは、不確定事実を基として課税することは事実上困難であることから、その請求がなかったものとして課税価格を計算することになります(相続税法基本通達11の2‐4、同逐条解説)。

(3)本特例の適用要件

本特例は、個人が相続又は遺贈により取得した宅地等のうち、被相続人等の事業用又は居住用に供されていた一定のものがある場合において、その個人が本特例の適用を受けるものとして選択した宅地等につき、被相続人等に係る相続税の計算上、一定面積までの部分について、その課税価格のうち一定額を減額できる税制です。個人が本特例の適用を受けるためには、対象となり得る宅地等を取得した人が1人のみである場合を除き、その宅地等を取得した人々の全員の同意を得る必要があります(措法施行令40条の2第5項3号)。

(4)本問へのあてはめ

本問の場合、相続税の申告時までに遺留分侵害額請求により次男に支払うべき金銭の額が未確定のため、上記(2)のただし書より、遺言に基づき長男が甲の相続財産を全て取得したものとして、相続税の課税価格を計算します。本特例の適用対象となり得る宅地等を取得したのが長男1人のみであることから、上記(3)の下線部より、その適用に際して他の相続人(次男)の同意は不要であり、他の要件を満たすことによって長男は本特例の適用を受けることができます。

 

 

 

 

税理士法人タクトコンサルティング 「TACTニュース」(2026/03/23)より転載

 

 

 

 

Q-18  相続対策としてM&Aは利用できますか? |3分でわかる!M&Aのこと【解説コラム】

 

 

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今後、ますます活用が進んでいくであろうM&Aについて、できるだけわかりやすくQ&A形式で解説するコラムを掲載することにしました。ぜひご一読ください!

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 Q-18  相続対策としてM&Aは利用できますか? 

A

M&Aは相続対策としても利用することが可能です。
買い手となる場合と、売り手となる場合とで相続対策としての内容が異なってくるため、それぞれに分けて解説します。

 

 

 

<買い手の場合>
実際の相続税計算は複雑であるため、詳細な説明はここでは省略しますが、簡略化すると相続税は「相続財産×税率」で計算されます。
ここでいう相続財産は、現金や預金であればその財産の金額は額面金額の通りとなります。しかし、非上場株式を保有していた場合の財産の金額については、実際の取得金額ではなく、会社規模等により一定の算定方法で相続財産としての金額を算定することが必要になります。
非上場会社の規模によっていくつか評価方法が分かれますが、その評価方法の一つである純資産価額方式を簡便的に説明すると、この計算方法では対象の会社の資産を相続税のルールで評価し、負債との差額を評価額とします。
例えば、合理的な取引価値が4億円である会社の株式100%を、4億円で取得したとします。
下図にある通り、ここでの各資産の相続税における評価方法で評価すると結果は3億円となるため、一般的には実際の取引価格よりも評価額が低くなることが多々あります。
このような評価になった場合に、相続が発生すると、現金で4億円を保有したままの場合は相続財産4億円に対して税率を乗じた相続税が発生しますが、M&Aにより株式を取得していた場合には相続財産3億円に対して税率を乗じた相続税が発生することになり、現金を保有するよりも非上場株式を保有していたほうが有利となります。

 

 

このようにM&Aにより相続財産の評価額が低くなる可能性があります。しかし、実際の会社を取り巻く経営環境や、将来的にその後の事業運営が適切にできるのか等含めクリアにすべきポイントは多くあるため留意が必要です。

 

 

<売り手の場合>
相続税の税率は最大で55%となっており、多額の資産を保有していた場合には相続税額も多額となります。その際に資産の大半が経営する会社の株式などの流動性の低い資産であった場合には、相続発生時に必要な納税資金が不足してしまうことになります。
また、相続人が会社経営に関与しない立場である場合には、その後の会社経営に大きな影響を及ぼしてしまう可能性があります。
納税資金の準備やその後の会社運営という意味でも、会社経営に関与している役員等が相続発生前にM&Aを行い、適切な価格で売却し現金化しておくということも、相続対策のひとつと言えます。

 

今回はかなり簡略化した説明となっていますが、実際には様々な要素やルールに基づき計算されます。また売却時にも利益がでていれば売却した本人に課税が発生する場合や、非上場株式の相続においては事業承継税制というM&Aとは違う形での相続税の対策方法の選択など、多面的に税務の専門的な知識が必要となるため、実行に際しては税務専門家への事前相談が必須といえます。

 

 

 

 

(執筆:税理士・公認会計士 風間啓哉)

 

 

 

 

 


 

このコラムでは読者の方からのご質問も募集しています。M&Aに関することで疑問に思っていること、コラムの内容に関してもっと詳しく知りたいこと、○○について取り上げてほしい、などありましたら、こちらのアドレス(links@zeiken.co.jp)までお知らせください

 

(注意)回答・解説は原則このコラム内で行い、個別の回答はできません。個別事例についてのご相談には対応できませんのであらかじめご承知おきください。

 

 

 

風間啓哉(かざま けいや) 

税理士・公認会計士(風間会計事務所 代表)

2005年公認会計士登録、2010年税理士登録。

監査法人にて監査業務を経験後、上場会社オーナー及び富裕層向けの各種税務会計コンサル業務及びM&Aアドバイザリー業務等に従事。その後、事業会社㈱デジタルハーツ(現 ㈱デジタルハーツホールディングス:東証プライム)へ参画し、同社取締役CFOを経て、同社非常勤監査役(現任)を経験。2018年から会計事務所を本格的に立ち上げ、現在に至る。

(著書等)『PB・FPのための上場会社オーナーの資産管理実務(三訂版)』『資産家・事業家 税務コンサルティングマニュアル』(共著、税務研究会)、『ケーススタディ M&A会計・税務戦略』(共著、金融財政事情研究会)

 

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[解説ニュース]

資産管理会社の株特外しを無効化する評価通達189なお書きが適用された事例

 

〈解説〉

税理士法人タクトコンサルティング(遠藤 純一)

 

[関連解説]

■相続時精算課税制度で受贈者が贈与者より先に亡くなってトラブルになった事例

■不動産を持たせた会社の株式の贈与で、株価が評価通達6項で再評価された事例

 

 

1.はじめに


取引相場のない株式は、相続や遺贈、贈与などがあったときに、その会社の保有する資産を国税庁の財産評価基本通達(以下、評価通達という。)に従って評価することを前提にしています。
株式等保有特定会社とは、その財産の評価額の合計額に占める株式や出資、新株予約権付社債(以下、株式等という。)の金額の割合が50%以上である場合の会社のことをいいます。相続税・贈与税の計算上、非公開の株式等保有特定会社の発行した株式の評価方法は、原則として純資産価額方式またはS1+S2方式により評価されるため、上場会社の株価を参考に評価する類似業種比準方式による評価額よりも高くなりがちです。
このため発行株式の相続等の際に節税しようと、発行会社が株式等保有特定会社にならないように資産構成を変える「株特外し」が行われがちです。
ところが最近、行き過ぎた「株特外し」に対し、税務当局が否認する事例が増えてきました。

 

2. 新たな事例が


このほど、明らかになったのは、資産管理会社A社の代表取締役を務める祖父が、令和2年9月、孫XにA社の株式30株を贈与したケースで、税務署から贈与税の増額更正を受け、Xが国税不服審判所(以下、審判所という。)に更正処分の取り消しを求めた裁決事例です(国税不服審判所令和 7年9月5日裁決:情報開示請求による)。
事案の概要は次のとおりです。

①A社は、孫Xの父が代表取締役を務める上場会社B 社の筆頭株主だった。
②A社は、同社株式の贈与の2日前に約15億円もの賃貸不動産をB社から購入し、「株特外し」を実行。
③不動産購入の際に、金融機関から13億円(令和32年9月までの359回返済)、父から2億8千万円(令和5年9月末に一括返済)の借入を行った。
④贈与税の計算では、A社株式を取引相場のない株式として、純資産価額方式と類似業種比準方式の併用方式で株価を評価して申告。
⑤所轄税務署は令和5年9月に税務調査に入り、翌年6月、評価通達189のなお書きにより、贈与直前に行われたA社によるB社からの不動産購入に合理性はなく資産構成に変動はなかったものとしてA社を株式等保有特定会社と認定、株式等保有特定会社の株式の相続税評価では、S1+S2方式を採用し贈与税を増額更正した。

 

3. 裁決のポイント


評価通達189のなお書きは、評価の対象となる会社が、株式等保有特定会社に該当する評価会社かどうかを判定する場合に、課税時期前において合理的な理由もなく評価会社の資産構成に変動があり、その変動が株式等保有特定会社に該当すると判定されることを免れるためのものと認められるときは、その変動はなかったものとして判定を行うという取扱いです。これがこの事案のポイントでした。

 

4. 審判所の判断


審判所は、不動産の取得・借入れにより、合理的な理由もなくA社の資産構成が変動し、その変動はA社が株式等保有特定会社と判定されることを免れるためかどうかを争点としました(ほかの争点は割愛します)。なお書きについては資産構成の変動操作で時価がゆがめられるようなケースにも対処する必要があると認めました。

その上で、審判所は次のような事実を指摘しました。
(1)贈与者は、節税の提案を受けてA社による不動産の購入及びA社株式の贈与を決断、贈与の2日前に、不動産の取得・借入れが実際行われている
(2)A社が不動産の購入代金の全額を外部から資金調達したのは、 9億円を超える現金預金残高を減少させず、A社の総資産価額を増加させることで株式等保有割合を50%末満にするためであった
(3)不動産の購入代金の全額を外部から資金調達してA社の総資産価額を増加させた結果、A社の株式等保有割合が贈与日の直前に50%以上から50%未満に実際に変動した
(4)A社株式の贈与に不動産の取得・本件各借入れを近接させた一連の行為は、A社が株式等保有特定会社と判定されることを回避するための総資産価額の操作に当たる

上記などを踏まえ審判所は、A社につき株式等保有特定会社に該当すると判断しています。
Xは「不動産は、A社が賃貸事業の拡大を求めて購入したもの、取得原資を借入金としたのは、現金預金は不測の事態等の資金として留保するもので合理的理由がある」と主張しましたが、認められませんでした。

 

 

税理士法人タクトコンサルティング 「TACTニュース」(2026/03/09)より転載

 

[解説ニュース]

住宅譲渡の優遇税制では、「住まなくなって3年過ぎる年の年末」にご用心

 

〈解説〉

税理士法人タクトコンサルティング(遠藤 純一)

 

[関連解説]

■相続時精算課税制度で受贈者が贈与者より先に亡くなってトラブルになった事例

■不動産を持たせた会社の株式の贈与で、株価が評価通達6項で再評価された事例

 

 

1.はじめに


マイホームである住宅を譲渡した場合、税制上の特例を受けられる要件として、次のケースに応じ、以下の売却のタイムリミットをクリアする必要があります。

 

(1)住まなくなってから3年を経過する日の属する年の12月31日までに譲渡すること

 

(2)住んでいる住宅又は住んでいた住宅を取壊した場合、家屋を取り壊した日から1年以内に敷地の譲渡の契約をし、かつ、住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに譲渡すること。ただし、敷地をほかの用途に使っていないこと。

 

(3)住んでいる住宅が災害で滅失した場合、災害があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに敷地を譲渡すること

 

(4)住まなくなっていた住宅が災害で滅失した場合、住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに敷地を譲渡すること

 

このうち特に汎用性があるのが「住まなくなって3年を過ぎる年の年末」までに譲渡するという要件です。この要件は、自宅を譲渡した場合に適用可能な次の表の税制上の特例に共通するものとなっています。

①居住用財産を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例(軽減税率・措置法31条の3)
②居住用財産の譲渡所得の特別控除(3000万円特別控除・措置法35条)
③特定の居住用財産の買換えの場合の長期譲渡所得の課税の特例(居住用の買換え特例・措置法36条の2)
④居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除(措置法41条の5)
⑤特定居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除(措置法41条の5の2)

 

※③~⑤は政府の令和8年度税制改正大綱で適用期限が2年延長され令和9年12月31日までとされるほか、③と④については令和10年1月1日以後、買換え先の住宅に居住する場合、一定の住宅を除き、災害危険区域等に所在しないことが新たな要件とされています。

 

 

2.売却のタイムリミットのチェック方法


たとえば前記の3000万円特別控除の対象となる「居住用財産」とは、「個人がその居住の用に供している家屋で政令で定めるもののうち国内にあるもの」とされています。これには、家屋とその敷地の用に供されている土地等が含まれます。要するに、現在住んでいる住宅が原則的な「特例の対象」なのです。もっとも、現在住んでいなくても、住まなくなった日から同日以後3年を経過する日の属する年の12月31日までの間に譲渡されるものに限っては、「特例の対象」となるのです。この「住まなくなった日から同日以後3年を経過する日の属する年の12月31日までの間に譲渡」というのがタイムリミットです。

 

このタイムリミットを確認する場合に注意したいのが、国税に関する基本的なルールを定めた国税通則法です。それによると、①期間が月又は年をもって定められているときは暦に従って計算すること、②年の始めから期間を起算しないときは、翌年における起算日の応当する日の前日を期間の末日として計算することが決められています(国税通則法10条)。

 

仮に居住の用に供されなくなった日を令和5年1月1日だとすれば、この日に応答する日は令和8年1月1日です。この場合、令和5年1月1日の「同日以後 3年を経過する日」とは、期間満了する「期間の末日」となる令和8年1月1日の前日のこと、すなわち令和7年12月31日です。そして、この日の属する年の12月31日とは、令和7年12月31日となります。

 

応当日が令和8年1月1日だから、その年末の令和8年12月31日まで譲渡すれば大丈夫だと考えるのは、早計となるわけです。これを誤ると、3000万円控除など前記の特例が適用できなくなるのです。

 

 

3.住宅が実際に生活の拠点であったかどうかも重要


このほかに、もっと基本的な注意点もあります。それは、元の住まいが、「居住用財産」といえるかどうかという問題です。

 

たとえば、医療機関への通院のため、別に買ったマンションにたまにステイするようになった場合、邸宅(本宅)が本当に「短期間臨時にあるいは仮住まいと
して起居していたというのみでは足りず、真に居住の意思を持って客観的にもある程度の期間継続して生活の拠点としていたかどうか」が問われます。

 

この判定に当たっては、売った人やその配偶者などの家族の「日常生活の状況やその家屋の利用の実態、その家屋の入居目的、その家屋の構造及び設備の状況等の諸事情を総合的に考慮し、社会通念に従って判断」されることになります。税務当局は、郵便物や新聞の配達状況、本宅の電気使用量や水道代などから、チェックする例が散見されます。

 

実際に前記の「別に買ったマンションにたまにステイするようになった例」は、裁決事例(国税不服審判所・令和 6年2月21日裁決)として存在します。それによると①タイムリミットのチェック、②生活の拠点の事実チェックが段階を追って行われていることが確認できます。

 

 

税理士法人タクトコンサルティング 「TACTニュース」(2026/02/24)より転載

 

Q-17 M&Aの成約まで、どのくらいの時間がかかりますか?|3分でわかる!M&Aのこと【解説コラム】

 

 

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今後、ますます活用が進んでいくであろうM&Aについて、できるだけわかりやすくQ&A形式で解説するコラムを掲載することにしました。ぜひご一読ください!

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Q-17 M&Aの成約まで、どのくらいの時間がかかりますか?

A

M&Aの成約までに要する期間は、案件の規模や対象会社の事業内容、利害関係者の多寡などにより大きく異なりますが、一般的には最低でも3か月程度、大規模な案件においては3年程度を要する場合もあります。

 

この期間は、よく「知り合ってから結婚するまでの期間」に例えられます。

出会ってすぐに結婚するケースもあれば、時間をかけて相手を理解し、納得したうえで人生を共にする選択をするケースもあるように、M&Aも同様です。

 

以下では、一般的なM&Aのプロセスを、かかる時間がイメージしやすいように結婚に例えながら見てみましょう(交渉の流れについてはQ11も参照して下さい)。

 

 

(1)基本的な情報開示

事業内容、基礎的な財務諸表、主要取引先などの情報が開示されます。この段階は、当事者間の相互理解を深めるための初期フェーズであり、M&A検討の前提となる重要なプロセスです。
いわゆる「釣書」の交換にあたる段階です。お互いの基本情報を開示し、相手がどのような会社なのかを知るための最初のステップとなります。

 

(2) M&Aを進めるかどうかの意思確認(意向表明)

当該M&Aを進める意思が双方にあるかを確認する段階です。条件面や方向性を踏まえたうえで、次のフェーズへ進むか否かを判断します。
これは、知人の紹介を受けた後に「お見合いを進めるかどうか」を確認する段階に似ています。

 

(3)トップ面談

経営理念、事業方針、譲渡条件などについて、経営トップ同士で直接確認を行います。
財務条件のみならず、経営理念や将来像の一致が、M&A成功における重要な要素となります。
実際に顔を合わせ、お互いの考え方や価値観を確認する重要な場面です。結婚において人生観の一致が重要であるのと同様に、M&Aでも経営理念や将来像の共有は極めて重要です。

 

(4)基本合意

金額、時期、主要な条件について合意が形成されます。通常、法的拘束力を有するのは守秘義務契約や独占交渉権に限られますが、実務上は関係者への影響も大きく、慎重な判断が求められます。
この段階は「結納」に例えられます。基本合意に至った後に交渉が破談となると、当事者だけでなく、従業員や取引先、市場に与える影響も小さくありません。精神的・実務的な「しこり」が残る点は、結婚と非常によく似ています。

 

(5)デューディリジェンス

財務・税務・法務・ビジネス面などから、対象会社の詳細な調査が行われます。
買い手にとっては投資判断の根拠となる重要なプロセスであり、売り手にとっても自社のリスクや課題を整理する機会となります。買い手は「この会社に投資して、どれだけのリターンが見込めるのか」「どのようなリスクがあるのか」を確認します。一方で、売り手側が実施するセラーデューディリジェンスも重要です。
これは、実際に交際を重ね、相手の長所だけでなく短所も理解する期間、いわば婚前期間に相当します。近年、婚前同棲が一般化しているように、この確認期間はM&Aにおいても極めて重要です。

 

(6)最終譲渡契約の締結

金額、時期、表明保証条項、引渡条件等々法的拘束力を有する最終契約が締結されます。
従業員の雇用継続や取引先との関係承継は努力義務として条文化されるケースが多いですが、それ以外のものは原則としてすべてに法的権利義務が生じます。

 

(7) クロージング

株式または事業の引渡しおよび代金決済が行われ、M&Aが実行されます。
結婚式を挙げ、「めでたし、めでたし」となる瞬間です。

 

(8) 表明保証期間の終了

M&A完了後、3か月から2年程度の期間、財務諸表の虚偽や権利関係の瑕疵があった場合の保証責任が続きます。この期間が終了して、ようやくすべての権利義務が精算されます。こういった表明保証といった瑕疵担保責任のようなものは結婚にはありませんが、M&Aに関しては、限られた時間内で生きた事業体(経営戦略・資金・ノウハウ・顧客・従業員等々)の価値算定⇒合意に至たらなくてはなりませんので、こういった表明保証が行われるのが通常です。

 

 

おわりに

M&Aは、スピードが速ければ必ず成功するものではありません。
結婚と同じく、どれだけ時間をかけて相手を理解し、失敗を回避するための確認を行ったかが、その後の「幸せ」を左右します。成約までの期間は、決して無駄な時間ではなく、全てが成功のために必要不可欠なプロセスなのです。

 

 

(執筆:税理士 高井 寿)

 

 

 

 

 


 

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(注意)回答・解説は原則このコラム内で行い、個別の回答はできません。個別事例についてのご相談には対応できませんのであらかじめご承知おきください。

 

 

 

高井 寿(たかい ひさし) 

高井国際税務会計事務所 代表税理士 東京税理士会世田谷支部副支部長

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[解説ニュース]

 

所得税の特定の基準所得金額の課税の特例~適用判定時の基準所得金額の範囲

 

〈解説〉

税理士法人タクトコンサルティング(山崎 信義/税理士)

 

 

[関連解説]

【Q&A】土地賃貸借に際し無償返還届出を提出した場合の非上場株式の相続税評価(土地と株式の所有者が別の場合)

 

【Q&A】被相続人が相続開始12年前に取得した不動産を相続人が相続税の申告期限前に譲渡した場合の相続税評価

 

 

 

【問】

不動産賃貸業を営むAさんは、令和7年3月に平成15年から東京都品川区に所有していた貸ビルとその敷地を譲渡し、長期譲渡所得の金額9.9億円が生じました。Aさんの令和7年分の所得税の確定申告が必要な所得には、他に不動産所得の金額1,200万円、所得控除額200万円があります。また、B証券会社の特定口座(源泉徴収あり)内で取得した上場株式等に係る配当所得の金額4,000万円については、申告不要制度を適用し、確定申告しないつもりです。
令和7年分の所得税の計算上、租税特別措置法(措法)41条の19の「特定の基準所得金額の課税の特例」(以下「本特例」)により、追加課税がされる場合があると聞きました。本特例の適用を判定する際、Aさんが確定申告から除外するつもりの配当所得の金額4,000万円は、どのように取扱われますか。

 

 

【回答】

1.結論


Aさんの場合、本特例の対象となる「基準所得金額」(下記2(2)参照)」には、申告不要制度を適用して確定申告から除外できる上場株式等に係る配当所得の金額が含まれるので、注意が必要です。

 

 

2.解説


(1)本特例の概要

令和7年分の所得税について、基準所得金額(下記(2)参照)が3.3億円を超える場合、①の算式で計算した金額から②の基準所得税額(下記(3)参照)を控除した金額に相当する所得税が追加で課されます(租税特別措置法(措法)41条の19第1項)。
①(その年分の基準所得金額-3.3億円)×22.5%
②その年分の基準所得税額

(2)基準所得金額の意義

「基準所得金額」は、措法41条の19第2項に定める所得となりますが、具体的にはその年分の所得税につき申告不要制度を適用しないで計算した所得金額(源泉分離課税の対象となる利子所得の金額や、一定の非課税金額を除く。)の合計額をいいます。
この場合の「申告不要制度」とは、源泉徴収あり特定口座内で上場株式等の配当(配当所得)を取得した場合や上場株式等の譲渡による所得が生じた場合に、確定申告を不要とすることができる特例(措法8条の5、37条の11の5)をいい、これらの申告不要とできる所得についても基準所得金額に含まれます。

(3)基準所得税額の意義

「基準所得税額」は、本特例や外国税額控除等の適用がないものとして計算した所得税及び復興特別所得税の額(源泉分離課税に係るものを除く。)をいいます(措法41条の19第3項等)。申告不要制度の適用を受けようとする上場株式等に係る配当所得や譲渡所得の金額に対し、源泉徴収された所得税額や復興特別所得税額も、基準所得税額に含まれます。

(4)本特例の適用判定の例

Aさんの令和7年分の不動産所得の金額1,200万円、所得控除額200万円、土地の譲渡に係る長期譲渡所得の金額9.9億円、申告不要にできる上場株式等に係る配当所得の金額が4,000万円の場合、本特例の適用の有無を判定すると次の通りとなります。
①(1,200万円+9.9億円+4,000万円-3.3億円)×22.5%=160,200,000円
②不動産所得の金額1,200万円、所得控除の合計額200万円の場合の課税総所得金額に対する所得税額
(1,200万円-200万円)×33%-153.6万円= 1,764,000円
③土地・建物に係る長期譲渡所得の金額9.9億円に対する所得税額(税率15%) 148,500,000円
④②と③の合計額に係る復興特別所得税額
(②+③)×2.1%=3,155,544円
⑤申告不要制度の適用を受けようとする上場株式等に係る配当所得の金額4,000万円に対し、源泉徴収された所得税額(税率15%)  6,000,000円
⑥⑤に係る復興特別所得税額
⑤×2.1%=126,000円
⑦基準所得税額
②+③+④+⑤+⑥=159,545,544円
⑧①-⑦=654,456円  ∴本特例の適用あり。
この場合、654,456円が本特例の適用により追加で課される所得税額となります。

 

 

 

 

税理士法人タクトコンサルティング 「TACTニュース」(2026/02/09)より転載

 

 

 

 

[解説ニュース]

評価通達では斟酌できない「特別の事情」による土地評価額の減額のポイント

 

〈解説〉

税理士法人タクトコンサルティング(遠藤 純一)

 

[関連解説]

■相続時精算課税制度で受贈者が贈与者より先に亡くなってトラブルになった事例

■不動産を持たせた会社の株式の贈与で、株価が評価通達6項で再評価された事例

 

 

1.はじめに


相続で取得した不動産の中には、道路付けの良くない土地や、形状のよくない土地等で、がけ地を含む土地などがみられることもあります。売りに出して売れたとしても、かなり安値になることが不可避な場合、その売却価額でもって相続税評価額として相続税の減額を求めて更正の請求(相続税の申告の減額修正)を税務署長に行う人もいます。しかし、路線価等による評価額よりも売却価額が適正な時価だと認められるのは難しいようです。今回は令和3年5月11日の裁決事例を紹介します。

 

 

2.事案の概要


裁決書によると、売却したのは、用途地域が第一種住居地域(建蔽率60%、容積率200 %)と近隣商業地域(建蔽率80%、容積率300%)にまたがっていた借地権で、その形は路地状部分のある旗竿型でした。その借地には貸家が建っておりました。
相続人は相続税の申告において約7,300万円と評価、
した後、この借地権を5,500万円で売却し、すぐに税務署長に対し相続税の申告を直す減額更正の請求をしました。これに対し税務署長は、容積率の異なる2つの地域にまたがっていた点が反映されていなかったことを修正、評価額を約6,780万円に減額しましたが、売却価額を時価とは認めませんでした。そこで、相続人が国税不服審判所(以下、審判所という。)に対して審査請求したものです。

 

 

3.審判所の判断


審判所は路線価などに基づく不動産等の評価方法を定めた財産評価基本通達(以下、評価通達という。)について「適正な時価を算定する方法としてー般的な合理性を有するものであり、かつ、当該財産の相続税の課税価格がその評価方法に従って決定された場合には、(中略)評価通達に定める評価方法によって評価するのが相当であり、評価通達に定める評価方法によって評価した価額が当該財産の客観的な交換価値としての適正な時価を上回るものではないと事実上推認することができる」との考え方を示しました。
また、この考え方は「評価通達に定める評価方法を画一的に適用することによって、当該財産の「時価」を超えて適正な時価を求めることができない結果となる場合など評価通達に定める評価方法によるべきではない特別の事情がない」ことが前提ということも示し
ました。
そこで審判所は、次のように「特別の事情」があるかどうかを検討しました。

 

①形状に起因する減価要因が評価通達の定める評価方法では本件借地権の評価に反映されずこれが上記特別の事情に該当するか

 

評価通達では「土地の形状に起因する減価要因についても、評価する宅地が路線に接している状況、形状等に応ずる評価が行えるよう各種画地調整のための定めを設けることによって考慮している。」ことから本件借地権については、その不整形の程度、位置及び地積の大小に応じ定められた補正率を乗じて評価することにより、適切に反映されている

 

②借地権上の建物の建替えに伴う建築承諾料支払要請や地主からの地代増額要請があることが、評価通達に反映されておらず特別の事情に該当するか

 

評価通達27の《借地権の評価》では建築承諾料や地代の額も踏まえて決定される借地権の売買実例価額等を基として、一定の地域ごとに適用可能な借地権割合を定めた上、その借地権割合を用いて借地権の価額を算定するとしているため、そのような事情は、評価において考慮されている。

 

③売却価額が通達評価額を下回ることが特別の事情に該当するか

 

現実の売却価額は、譲渡時における譲渡当事者間の諸事情を反映して決められるため、そもそも何らの事情補正等を行うことなく、直ちに客観的交換価値を表しているとみることはできない。売却価額が通達評価額を下回っているというのみでは、通達評価額が時価を超えるものということはできない。
上記を踏まえ審判所は、特別の事情はあるとはいえないと判断しています。

 

4.まとめ

国税当局では、不動産鑑定評価額や売却価額を相続した土地の相続税評価額として申告等するケースを「路線価等によらない事案」と呼んでいます。その場合、前記のとおり路線価など評価通達によって斟酌できない、すなわち適正な時価を算定することができない「特別の事情」があれば、路線価等による評価額以外の価額が認められるとされています。ただ、そうした証拠をそろえることは簡単ではありません。専門家の力を借りることをお勧めします。

 

 

税理士法人タクトコンサルティング 「TACTニュース」(2026/01/26)より転載

 

[解説ニュース]

 

【Q&A】特定贈与者の死亡前に相続時精算課税適用者である特例経営承継受贈者が死亡した際の税務

 

〈解説〉

税理士法人タクトコンサルティング(山崎 信義/税理士)

 

 

[関連解説]

【Q&A】法人が100%子会社に土地を譲渡した場合の土地譲渡益に係る法人税の取扱い

 

【Q&A】被相続人が保険料の全額を負担した生命保険契約に係る相続税の取扱い

 

 

 

【問】

(株)X(X社)の代表取締役甲は、令和7年10月に死亡しました。相続人は子Bのみです。甲は令和2年に、X社の前代表取締役で同社の発行済株式の全部を有していた父の乙から保有するX社株式の全部の贈与を受け、相続時精算課税を選択するとともに、租税特別措置法(措法)70条の7の5の非上場株式に係る贈与税の納税猶予の特例措置(以下「贈与税の特例措置」)の適用を受けていました。甲の死亡時において、父の乙は健在です。
上記の場合において、甲の死亡後に乙が死亡したときは、乙に係る相続税の計算上、令和2年に乙が甲に対して贈与したX社株式は、どのような取扱いになりますか。

 

 

【回答】

1.結論


特定贈与者乙の死亡前に受贈者(相続時精算課税適用者)の甲が死亡した場合、甲の相続人Bは原則として甲の乙に係る相続税の納税義務を承継します。しかし甲が贈与税の特例措置の適用を受け、その死亡により納税猶予税額の全部が免除された場合は、Bに甲の納税義務は承継されず、贈与を受けたX社株式の贈与時の価額は乙に係る相続税の計算上、課税価格に算入されません(後記2(5)参照)。

 

 

2.解説


(1)贈与税の特例措置の概要

贈与税の特例措置は、都道府県知事の認定を受けた一定の会社の株式を令和9年12月31日までに、その会社の代表権を有していた贈与者(先代経営者)から贈与により取得した個人が、その先代経営者の後継者として一定の要件を満たす者(以下「特例経営承継受贈者」)である場合、その者が納付すべき当該株式(一定の部分に限る。以下「特例対象受贈非上場株式等」)に対応する贈与税額の納税が、贈与者の死亡の日まで猶予されるという税制です(措法70条の7の5第1項)。贈与税の特例措置の適用により納税が猶予された贈与税額は、特例経営承継受贈者の死亡により、その全部が免除されます(措法70条の7の5第11項、70条の7第15項)。

(2)相続時精算課税の特定贈与者に係る相続税の計算

相続時精算課税に係る贈与者(「特定贈与者」)が死亡した場合、相続時精算課税の適用を受けた受贈者(「相続時精算課税適用者」)の相続税は、その死亡の時までに特定贈与者から贈与を受けた相続時精算課税の適用を受ける財産の贈与時の価額と、相続等により取得した財産の相続時の価額の合計を基に計算します(相続税法21条の15、21条の16)。

(3)特定贈与者の死亡前に、相続時精算課税適用者が死亡した場合の特定贈与者に係る相続税計算

特定贈与者の死亡以前に、その特定贈与者に係る相続時精算課税適用者が死亡した場合、その相続時精算課税適用者(「死亡相続時精算課税適用者」)の相続人は、前記(2)により死亡相続時精算課税適用者が有していた特定贈与者に係る相続税の納税の権利義務を承継します(相続税法21条の17第1項)。

(4)特例経営承継受贈者の相続人に係る(3)の不適用

前記(1)より、贈与税の特例措置の適用を受ける特例経営承継受贈者かつ相続時精算課税適用者である個人が死亡したことにより、納税が猶予された贈与税額の全部が免除され、その後にその贈与税の特例措置に係る特例対象受贈非上場株式等の贈与者が死亡した場合、その対象受贈非上場株式等のうち、その免除を受けた贈与税額に対応する部分については、前記(2)の適用がされず(措法70の7の5第10項、70条の7第13項9号)、このため前記(3)の相続税の納税の権利義務の承継は行われません。

(5)本問へのあてはめ

前記(1)より、甲が贈与税の特例措置により納税が猶予されていた税額は、甲の死亡によりその全額が免除されます。
甲は死亡相続時精算課税適用者に該当し、甲の相続人Bは、前記(3)により原則として、甲が有していた乙に係る相続税の納税義務を承継します。この承継がされると、乙に係る相続税の計算上、①甲が乙から贈与を受けた相続時精算課税の適用を受けるX社株式の贈与時の価額と、②Bが甲の代襲相続人として乙から相続等により取得した財産の相続時の価額の合計がBの課税価格となります。しかし甲は、乙から贈与により取得したX社株式につき特例承継受贈者として贈与税の特例措置の適用を受け、その死亡により猶予税額の全部が免除されることから、前記(4)により甲の納税義務は子のBに承継されません。以上により、①のX社株式の贈与時の価額は、乙に係る相続税の計算上、課税価格に算入されません。

 

 

 

 

 

税理士法人タクトコンサルティング 「TACTニュース」(2026/01/13)より転載

 

 

 

 

Q-16 M&Aにはどの程度の費用が掛かるのでしょう?  |3分でわかる!M&Aのこと【解説コラム】

 

 

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今後、ますます活用が進んでいくであろうM&Aについて、できるだけわかりやすくQ&A形式で解説するコラムを掲載することにしました。ぜひご一読ください!

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 Q-16 M&Aにはどの程度の費用が掛かるのでしょう? 

A

M&Aの実施に掛かる費用として、対象となる会社の取得価格以外にも、様々な費用が発生することになります。実際に、買い手側、売り手側で発生するM&A費用は異なり、対象となる会社の事業規模などによっても大きく変わってきます。

 

 

 

買い手側で発生する主な費用

・仲介手数料、アドバイザリー費用

仲介手数料はM&A仲介会社に対して支払う手数料です。M&A仲介会社が売り手と買い手の間に入り、双方の要望や意見を聞きながら調整を行い、円滑にM&Aを進めるための費用となります。

他方、アドバイザリー費用は仲介とは異なり、買い手または売り手のどちらか一方とのみ契約するFA(ファイナンシャル・アドバイザー)に対して支払う費用です。FAがアドバイザリー契約した会社の利益最大化を目指してM&Aの実施をサポートするための費用となります。仲介手数料、アドバイザリー費用の主な内容としては次のようなものがあります。

▷相談料
M&Aを実施するかどうかに関わらず初回の相談時に発生する費用。
一般的な費用相場としては無料~数万円程度。

▷着手金
M&A仲介会社やFAへ業務を委託した際に発生する費用。
一般的な費用相場としては無料~数百万円程度。

▷中間報酬
買い手と売り手がマッチングし、基本合意に至った際などに発生する費用。
一般的な費用相場としては成功報酬の10%~20%程度(数十万円~数百万円程
度)。

▷月額報酬
M&Aが成立するまで毎月定額で発生するコンサルティング費用。
一般的な費用相場としては無料~数十万円程度。

▷デューデリジェンス費用
売り手企業の財務、税務、法務、労務等に関する調査に係る専門家への依頼費
用。基本的には買い手が実施するため、買い手が負担するケースが多い。
一般的な費用相場としては数十万円~数百万円程度。

▷成功報酬
M&A成立時に発生する費用。一般的にはレーマン方式と呼ばれる「取引金額」
に一定の手数料率を乗じる計算方法で算定されることが多い。なお、算定の基
礎となる「取引金額」には、譲渡の対象となる株式価額、移動する総資産額、
企業価値の金額などが用いられることとなる。
一般的な費用相場としては数十万円~数百万円程度。

 

・買収費用

M&Aの対象会社を買収するための費用であり、買収金額は対象会社の規模、業種、経営環境等により様々です。なお、株式や事業の譲り受け対価が現金の場合には現金の支出が発生しますが、買い手の株式と売り手の株式を交換する株式交換などの組織再編手法を利用した場合には現金の支出が伴わないことがあります。

 

・税金費用

事業を譲り受けた場合に、譲渡の対象となる課税資産については消費税等の支払いが発生します。また、譲り受けた資産に不動産が含まれている場合には、不動産取得時に不動産取得税、不動産登記時に登録免許税などの税金が発生します。

 

 

 

売り手側で発生する費用

・仲介手数料、アドバイザリー費用

基本的にはデューデリジェンス費用を除いて買い手側と同様に発生します。

 

・税金費用

M&A実施の結果、生じた譲渡益に応じて、売り手が会社の場合には法人税や法人住民税、個人の場合には所得税等(譲渡所得)の税金の支払いが発生します。また、買い手から受領した消費税等については、申告・納付の対象となりますので留意が必要です。

 

買い手および売り手において発生する費用をまとめると次の表になります。

買い手 売り手
相談料 無料~数万円程度 無料~数万円程度
着手金 無料~数百万円程度 無料~数百万円程度
中間報酬 成功報酬の10%~20%程度
(数十万円~数百万円程度)
成功報酬の10%~20%程度
(数十万円~数百万円程度)
月額報酬 無料~数十万円程度 無料~数十万円程度
デューデリジェンス費用 数十万円~数百万円程度 基本的には負担なし
成功報酬 数十万円~数百万円程度 数十万円~数百万円程度
買収費用 対象会社の価格により変動
税金費用 課税資産に係る消費税等
不動産取得税や登録免許税等
譲渡益に係る法人税及び
法人住民税または所得税等
(譲渡所得)

 

 

(執筆:税理士・公認会計士 風間啓哉)

 

 

 

 

 


 

このコラムでは読者の方からのご質問も募集しています。M&Aに関することで疑問に思っていること、コラムの内容に関してもっと詳しく知りたいこと、○○について取り上げてほしい、などありましたら、こちらのアドレス(links@zeiken.co.jp)までお知らせください

 

(注意)回答・解説は原則このコラム内で行い、個別の回答はできません。個別事例についてのご相談には対応できませんのであらかじめご承知おきください。

 

 

 

風間啓哉(かざま けいや) 

税理士・公認会計士(風間会計事務所 代表)

2005年公認会計士登録、2010年税理士登録。

監査法人にて監査業務を経験後、上場会社オーナー及び富裕層向けの各種税務会計コンサル業務及びM&Aアドバイザリー業務等に従事。その後、事業会社㈱デジタルハーツ(現 ㈱デジタルハーツホールディングス:東証プライム)へ参画し、同社取締役CFOを経て、同社非常勤監査役(現任)を経験。2018年から会計事務所を本格的に立ち上げ、現在に至る。

(著書等)『PB・FPのための上場会社オーナーの資産管理実務(三訂版)』『資産家・事業家 税務コンサルティングマニュアル』(共著、税務研究会)、『ケーススタディ M&A会計・税務戦略』(共著、金融財政事情研究会)

 

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[解説ニュース]

相続時精算課税制度で受贈者が贈与者より先に亡くなってトラブルになった事例

 

〈解説〉

税理士法人タクトコンサルティング(遠藤 純一)

 

[関連解説]

■不動産を買った時の土地建物の価額按分が不合理と指摘された場合

■使い勝手アップの相続時精算課税制度では、みなし贈与にご用心

 

 

1.はじめに


相続時精算課税制度は現行制度上、その年の1月1日現在で60歳以上の父母・祖父母である直系尊属から、18歳以上の子・孫へ贈与がある場合に、贈与した人と財産をもらった人の組み合わせごとに選択できる制度です。贈与税と相続税を通じた税金の計算をするのが特徴です。

 

具体的には、財産の贈与時には受贈者が相続時精算課税に係る贈与税を納付します。その計算は法定された手続きを踏むことを要件に、贈与財産の価額の合計額から基礎控除110万円と最大2500万円(特別控除)を控除し、残額に20%の税率を乗じて求めます。つまり一定の金額までは贈与税はかからないのです。

 

ただしその後、その贈与をした親や祖父母の相続開始時には、相続時精算課税で贈与を受けた財産を、相続又は遺贈により取得した財産に加算をし、その合計額を基に相続税額を計算します。その際、既に支払った相続時精算課税に係る贈与税額を控除した金額を納付する(贈与税額が相続税額を上回る場合には還付を受ける)仕組みです。

 

この制度の狙いは、より課税を適正化しつつ生前贈与を円滑化すること。このことを踏まえると、同制度は、親や祖父母などから子や孫へ生前に財産を受け継ぐ姿が、典型的なあり方として考えられえているといえそうです。

 

 

2.受贈者が先に亡くなって戸惑うことも


ところが、相続時精算課税制度を適用して財産をもらった人が、贈与した人よりも先に亡くなってしまうことがあります。その場合、相続時精算課税制度で財産をもらっていた人が負っていた贈与者の死亡にともなう相続税の計算において、追加して相続税を納付することになるか。それとも支払っていた贈与税の還付となるか。その権利・義務については、亡くなった人の相続人に承継されることになるとされています。

 

こうしたケースで、戸惑う人もいるようです。たとえばA夫妻の妻の方から、娘が相続時精算課税制度で高額の財産をもらっていたケースで、先にこの娘が亡くなり、ついで財産を生前贈与していた妻が亡くなった場合(国税不服審判所令和 7年6月25日裁決)。本来、亡娘が負うべき上記の権利・義務が、どのように相続人に承継されるか、事例を見ることにします。

 

裁決書によると、この事案はAさん(請求人)は妻
の相続に係る相続税について、亡娘が有していた相続時精算課税に係る相続税の納税義務を全て承継したとして申告していました。しかし後で、納税義務は亡娘に係る共同相続人(A夫妻)がまず各2分の1ずつ承継すべきとして更正の請求をした事案です。税務署は、更正をすべき理由がないとして通知してきたため、Aさんは国税不服審判所(以下、審判所という。)に判断を仰ぐことにしたというものです。

 

 

3.審判所の判断


争点は、当初の申告に、「更正の請求」が認められるのに必要な法律上の誤りがあったといえるかどうかという点です。この場合に即していえば、亡娘の相続時精算課税制度に係る上記権利・義務は亡妻とともにAさんが2分の1ずつ承継することが正しいことなのかどうかです。

 

ポイントは、特定贈与者の死亡以前にその特定贈与者に係る相続時精算課税適用者が死亡した場合には、その相続時精算課税適用者の相続人は、その相続時精算課税適用者が有していた相続時精算課税の適用を受けていたことに伴う納税に係る権利又は義務を承継する旨、また続人のうちに特定贈与者がある場合には、特定贈与者は、納税に係る権利又は義務については、これを承継しない(相続税法第21条の17第1項)旨の法律があることです。特定贈与者とは相続時精算課税制度で財産を贈与した人、相続時精算課税適用者とは、財産をもらった人のことです。

 

審判所は、上記法律に基づき、相続時精算課税適用者である娘が死亡し、その相続人であるAさん及び亡妻のうち、亡妻は特定贈与者であるから、納税義務は特定贈与者である亡妻には承継されず、Aさんにのみ承継されると判断しています。

 

Aさんとしては、亡妻が上記権利・義務を承継すればその2分の1は、妻の死亡で消滅するのではないかと考えたようですが、審判所は、亡妻が「「第1項の権利又は義務を承継した者」には含まれないことは明らか」だとしてAさんの請求を退けています。

 

なお、上記のようなケースで受贈者に子供などがいた場合、子が上記権利・義務を承継する場合が出てきます。しかし、その内容がわからないといったケースもあるでしょう。その場合は、所定の税務署に相続時精算課税等に係る贈与税の申告内容の開示等を求めることができます(相続税法49条)

 

 

 

税理士法人タクトコンサルティング 「TACTニュース」(2025/12/11)より転載

 

Q-15 M&Aのアドバイザーを入れる場合、報酬の相場はあるのでしょうか?|3分でわかる!M&Aのこと【解説コラム】

 

 

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今後、ますます活用が進んでいくであろうM&Aについて、できるだけわかりやすくQ&A形式で解説するコラムを掲載することにしました。ぜひご一読ください!

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Q-15 M&Aのアドバイザーを入れる場合、報酬の相場はあるのでしょうか?

A

M&Aアドバイザー報酬の相場はあります。上場M&A仲介4社の料金表を見比べてみると、主に、(1)着手金、(2)中間金、(3)成功報酬にわかれます。それぞれ買い手・売り手の報酬は、どの会社においても買い手・売り手ごとに価格体系が設定されています。まとめると、下記のようになります。大くくりで見ていくと、ほとんど違いはないイメージをお持ちになられたのではないでしょうか?

【料金比較表】

それぞれの内容については以下の通りです。

(1)着手金…概要提案・NDA(守秘義務契約)締結後にトップ面談が設定される場合に、そのトップ面談前に着手金が発生する仲介会社と発生しない仲介会社があります。これについては、婚活サイトなどでも有料なものと無料なものがあるように、ほぼそれと同じ原理が働きます。無料の仲介会社の場合、「ちょっと試しに相談してみる」というケースもないわけではありません。無料の仲介会社をご利用される場合は、売買の動機・背景など売り手・買い手双方の意思の確認を入念にされることをお勧めいたします。

 

(2)中間報酬…基本合意書が締結される時点で買い手側に発生するのが通常です。売り手には基本発生しませんが、発生する仲介会社もあります。発生する仲介会社は、売り手にとっての基本合意書を重視しているからと推察されます。基本合意書は、(イ)買収価額、(ロ)諸条件(退職金・借入金引継ぎ・従業員の承継・ブランド使用等々)、(ハ)株式等の譲渡時期について最低限記載されるわけですので、M&Aにとっての重要な枠組みが設定されることになります。そのため買い手に中間金が発生するのが通常です。特に、基本合意書における法的拘束力を持たせる重要事項としては、守秘義務条項と排他的独占交渉権がありますので、売り手・買い手双方の本気度が上がった時点の支払いということで、金額の多少の多寡はありますが、いずれも妥当なものと思われます。

 

(3)成功報酬…これについては、買収価格帯やレンジの刻みなど多少の差異はあるものの大きな違いはないようにみえます。仲介会社によっては、退職金を報酬算定の基礎に入れている「オーナー受取額基準」を採用している場合(のれん交渉・退職金交渉は、売り手の立場での努力表明の意味もあるかと思います。)や、「株価」を基準としている場合(基準額としては最も小さい数値となります。)、総資産額(株式価額に有利子負債・買掛金・未払金などを加算した金額)を基準としている場合などがあります。

 

これらの価格体系を見ていくと、それぞれの仲介会社が何を大切に考えているかが透けて見えてきます。例えば、売り手側の視点から言えば、企業の大切なノウハウの買い手への開示について慎重な仲介会社、買い手の本気度を確認している仲介会社、買い手側の視点から言えば、売却後のオーナーの生活設計について、売り手の立場になって考えていくことを重要視している仲介会社、等々です。

 

そして、何よりも大切なのは、着手してから譲渡に至るまでの成功確率です。なぜなら着手後にM&Aディール(取引)が失敗すると、様々な不幸が生じるからです。会社の重要なノウハウも含めて見られてしまった、また、従業員・お取引先に知られてしまった等の風評リスクなど、何もなかった元の状態に戻すことはもはや不可能です。会社によってはこの成功確率が10%前半のところもあれば、50%近い成功確率のところもあります。この成功確率は前述の料金体系にも関係することですが、M&Aにおける各アクションにおける入念さ・専門性・担当者のコミュニケーション能力に大きく左右されることはいうまでもありません。

 

 

(執筆:税理士 高井 寿)

 

 

 

 

 


 

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高井 寿(たかい ひさし) 

高井国際税務会計事務所 代表税理士 東京税理士会世田谷支部副支部長

2002年税理士登録、経営品質協議会認定アセッサー、CFPファイナンシャルプランナー、経営計画策定、国内及び国際タックスマネジメント、事業・資産承継、組織再編・連結納税、MAが専門。財団法人日本民事信託協会代表理事。

(著書等)「連結納税マニュアル(税務研究会)」「営業権の実務」(税務通信(税務研究会))、「経理システムと税務」「寄付金課税の問題点」(ともに税務弘報(中央経済社))、「資産家・事業家税務コンサルティングマニュアル」(税務研究会)

 

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[解説ニュース]

 

【Q&A】教育資金贈与に係る贈与税の非課税特例の贈与者が、その贈与の年に死亡した場合の相続税

 

〈解説〉

税理士法人タクトコンサルティング(山崎 信義/税理士)

 

 

[関連解説]

■相続税の小規模宅地等の特例における修正申告時の特例対象宅地等の選択変更

 

■【Q&A】生命保険金を目的とした代償分割を行う場合の課税関係

 

 

 

【問】

令和7年10月に交通事故で急死した甲は、同年9月に子のA(19歳。令和6年の合計所得金額0円)に対し、書面により現金1,000万円を贈与していました。Aはその現金について、租税特別措置法(措法)70条の2の2第1項の「直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税の特例」(以下「本特例」)の適用を受けるため、教育資金管理契約(以下「契約」)に基づきB銀行へ預け入れ、教育資金非課税申告書を提出しました。甲の死亡日時点で1,000万円のうちAの教育資金として支出された金額はありません。甲に係る相続税の計算上、現金1,000万円はどのように取扱われますか。

 

 

【回答】

1.結論


甲に係る相続税の課税価格の合計額が、その相続税につき税務署長等による更正決定等ができないこととなる日(原則、相続税の申告期限から5年を経過する日)前までに5億円を超える場合、現金1,000万円をその相続税の課税価格に加算する必要があります。

 

 

2.解説


(1)本特例の概要

本特例は、30歳未満の個人(前年分の所得税の合計所得金額が1,000万円超の者を除く。以下「受贈者」)が、教育資金に充てるため金融機関等の一定の契約に基づき、受贈者の祖父母等の直系尊属(以下「贈与者」)から書面による贈与により取得した金銭を銀行に預け入れる等の一定の行為をした場合、その金銭等の額のうち1,500万円までの金額に相当する部分の価額については、受贈者が金融機関等の営業所等に教育資金非課税申告書の提出等をすることにより、贈与税が非課税とされる税制です(措法70条の2の2第1項)。

(2)契約期間中に贈与者が死亡した場合の相続税

 

①原則
契約期間中に贈与者が死亡した場合は、原則、 その死亡日における【非課税拠出額*1-教育資金支出額*2】のうち一定の計算をした金額(以下「管理残額」)を、受贈者が贈与者から相続等により取得したものとみなされ、相続税の課税価格に加算されます(措法70条の2の2第12項2号)。
*1「非課税拠出額」は、教育資金非課税申告書  等に本特例の適用を受けるものとして記載された金額の合計額(1,500万円を限度)をいいます。
*2「教育資金支出額」は、金融機関等の営業所等で、領収書等により教育資金の支払の事実が確認され、かつ記録された金額の合計額をいいます。

 

②相続税が課税されない場合
受贈者が令和3年4月1日以後にその贈与者から金銭等の取得をし、本特例の適用を受けた後に契約期間中に贈与者が死亡した場合において、受贈者が贈与者の死亡日において23歳未満又は学校等に在学している等のときには、①にかかわらず管理残額を相続等により取得したものとはみなされません(措法70条の2の2第13項)。

ただし、受贈者が令和5年4月1日以後に非課税拠出額を取得して本特例の適用を受け、同日以後に贈与者が死亡したときにおいて、その贈与者に係る相続税の課税価格の合計額が5億円を超えるとき(上記①の適用がないものとして計算した相続税の課税価格の合計額で判定)は、上記にかかわらず、その管理残額を相続等により取得したものとみなされ、相続税が課税されます(同ただし書)。この場合の「贈与者に係る相続税の課税価格の合計額」は、その贈与者に係る相続税につき税務署長等による更正決定等ができないこととなる日(原則として、相続税の申告書の提出期限から5年を経過する日)前までに、相続税額の計算の基礎となった財産の価額及び債務の金額を基準として計算されます(措法70条の2の2第14項)。

(3)本問へのあてはめ

本特例の適用を受けてAの贈与税の課税価格に算入されなかった現金1,000万円(=管理残額)は、甲に係る相続税につき税務署長等が更正決定等をすることができなくなる日前までに、甲の相続税の課税価格の合計額が5億円を超える場合、甲から相続により取得したものとみなされ相続税が課税されます。例えば、相続税の当初申告では課税価格の合計額が5億円以下であるため管理残額を相続税の課税価格に加算しなかったが、その申告期限から5年以内に行われた税務調査で財産の申告漏れが発覚し、その後の修正申告において相続税の課税価格の合計額が5億円超となった場合は、管理残額をその修正申告に係る相続税の課税価格に加算する必要があります。

 

 

 

 

 

税理士法人タクトコンサルティング 「TACTニュース」(2025/11/25)より転載