デューデリジェンスとは?-各種DDと中小企業特有の論点-[M&A担当者がまず押さえておきたい10のポイント]

[M&A担当者がまず押さえておきたい10のポイント]

第8回:デューデリジェンスとは?-各種DDと中小企業特有の論点―

 

[解説]

松本久幸 公認会計士・税理士(株式会社Stand by C)

大和田寛行 公認会計士・税理士(株式会社Stand by C)

 

 

▷第7回:M&Aのプロジェクトチームはどうする?-社内メンバーと社外専門家の活用-

▷第9回:M&A時の会計処理は?-企業業績へのインパクトは!?-

▷第10回:PMIって何?-M&Aの成功はPMIで決まる!-

 


M&Aの買い手に必須の手続として、デューデリジェンス(DD)があります。今日では、企業の成長戦略としてM&Aが一般的になってきた背景もあり、デューデリジェンスという用語を耳にすることも多くなったのではないでしょうか。

 

デューデリジェンスはM&Aのプロセスにおいて最も重要な手続のひとつであり、その目的は対象会社から提供される情報に基づいて対象会社の実態を把握し、問題点を洗い出すことにあります。

 

デューデリジェンスには、財務・税務、法務、人事、ビジネス、環境等、いくつもの領域がありますが、実際のM&Aの現場では、対象会社の規模や事業の複雑性等を考慮して、どの領域について調査を実施するかを判断し、決定することになります。以下、主要なDDの概要を説明します。

 

 

財務・税務DDは、対象会社の収益性や財務状況の把握を目的として行われ、公認会計士・税理士等の専門家が実施します。過去の業績データに基づく正常収益力(対象会社が本来有している収益力)の分析や、貸借対照表上の資産の内容把握、評価額の妥当性に関する検討、潜在的なリスクに伴う簿外債務の有無、税務上のリスクの分析・把握等が行われます。財務・税務DDの結果は、事業計画や株式価値評価に反映されることとなります。

 

法務DDは弁護士によって実施され、対象会社が有している各種契約の内容の把握、訴訟や係争案件の有無、特許や商標権等の知的財産権の内容、人事労務関連の法令順守状況等の調査が対象となります。

 

ビジネスDDは、対象会社の事業内容、強み・弱み、市場環境、競合他社分析等、事業全般に関する調査・分析が行われます。通常は、対象会社の既存事業のみならず買い手が実現可能なシナジーの分析等も行われます。また、事業会社が同業他社を買収するようなケースでは、ビジネスDDを買い手企業自ら行うこともあります。ビジネスDDの結果も、財務・税務DD同様、事業計画や株式価値評価に影響を与えます。

 

 

それでは、売り手が非上場の中小企業、買い手が上場企業となるM&AにおけるDDではどのような論点が考えられるでしょうか。

 

一般的に、上場企業と比較して中小企業はコーポレートガバナンスやリスク管理の点で体制整備が十分でないことが多いと考えられます。例えばオーナー企業を例にとると、株主が経営者でもあることから意思決定のスピードや強いリーダーシップの発揮といった点で特有の強みもありますが、所有と経営が分離された上場企業で構築されているような株主による経営監視の仕組みが有効でないことが多く、強力な権限を持つ経営者自身により会社が私物化されるリスクが高いともいえます。

 

このような会社を買収しようとする場合、買い手企業は、オーナー経営者が会社との間で利益相反となるような取引を行っていないか、オーナー個人の利益のために会社に過度のリスクを負わせていないか、といった観点から関連当事者取引の詳細を重点的に調査すること等が必要となります。

 

その他にも、中小企業特有の論点として、上場企業との会計方針・会計処理の違いやリスク管理体制等の不備等に起因する会計的、法的問題が検出されるケースがみられます。

 

 

DDで検出された問題は、各DDの実施者から買い手企業に報告されます。DDで検出される問題には大小さまざまなものがありますが、重大な粉飾決算や法的な瑕疵等、問題が深刻で修復が不可能と判断されるような場合には買収交渉が中止されることもあります。

 

また、深刻ではないものの対処が必要な問題が発見された場合には、買い手企業において、検出された問題がもたらすリスクや損失を評価した上で、売り手に対して表明保証を求める、あるいは買収価格の引き下げを求めるといった対応が取られることが一般的です。