Q-24 M&Aで借金はどうなる?|3分でわかる!M&Aのこと【解説コラム】

 

 

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今後、ますます活用が進んでいくであろうM&Aについて、できるだけわかりやすくQ&A形式で解説するコラムを掲載することにしました。ぜひご一読ください!

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 Q-24 M&Aで借金はどうなる?

A

実際のM&Aでは譲渡価格条件もさることながら、「借金はどうなるのか」という点も重要な問題となります。借入が残ったままでも売れるのか、譲渡すれば連帯保証からも解放されるのか、オーナーにとっては重要なポイントです。これらは、一見すると同じ問題に見えますが、会社の借金とオーナー個人の保証は別々に考える必要があり、さらに、これらを引き受ける買い手の側から借金がどう見えるかもM&Aの成否に関わってきます。

 

今回は、(1)売り手企業の借金、(2)オーナー個人の連帯保証、(3)買い手から見た借金、の3つに分けて整理します。

 

(1)売り手企業の借金

株式譲渡では、株主だけが入れ替わりますので借入金は売り手企業に残ったままです。この場合、借入金は譲渡価格から差し引かれる形で売り手がその負担を引き受けることになります。一方、事業譲渡では借入金は原則として買い手に引き継がれないなど、スキームによって扱いは変わります(Q-21をご参照ください)。

 

なお、借入契約には支配権が変わると一定の対応が求められる条項(チェンジ・オブ・コントロール条項)が入っていることがあるため、契約の確認と金融機関への事前相談が必要です。

 

 

(2)オーナー個人の連帯保証

中小企業の借入では、オーナー個人が連帯保証をしているケースが少なくありませんが、株式を譲渡してもこの保証は自動的に外れません。保証契約は金融機関との契約であって、株式譲渡契約とは別物だからです。何もしなければ、会社を手放した後も保証だけが残ってしまいます。

 

もっとも、こちらについては国の後押しがあります。「経営者保証に関するガイドライン」とその事業承継時の特則(2019年12月)は、前経営者と後継者の双方から二重に保証を求めることを原則禁止とし、前経営者との保証契約の見直しを金融機関に求めています。また、中小企業庁の「中小M&Aガイドライン」(第3版・2024年8月)は、保証の扱いについてM&Aの成立前から金融機関へ相談することを基本とし、解除が成立後となる場合には、これを買い手の義務として最終契約に明記しておくことも求めています。単なる努力義務としないことが、後のトラブルを防ぐためにとても重要になります。

 

 

(3)買い手からみた借金

では、借金のある会社を買い手は敬遠するのでしょうか。必ずしもそうではありません。借入金は譲渡価格で調整できるため、買い手が警戒するのは、金額そのものよりも「中身の見えない借金」です。帳簿に載っていない保証債務や未払残業代といった簿外債務は価格に織り込めないため、DD(デューデリジェンス)での追加調査や、表明保証・補償条項の交渉に時間がかかる原因になります。また、(2)の保証を引き受けるには買い手自身の信用力が問われ、買収資金を借入で賄うなら金融機関の審査も必要です。借金は、買い手にとっても「整理されているかどうか」が問題になります。

 

 

最後に

冒頭の問いに戻ります。会社の借金は譲渡価格の調整という形で反映され、オーナー個人の連帯保証は金融機関との協議を通じて解除・差替えを進める必要があります。買い手にとっても重要なのは、借金の額だけではなく、その中身が説明できる状態にあるかどうかです。借入金、保証、担保、返済予定を日頃から整理しておくことが、M&Aを円滑に進めるための備えになります。

 

 

 

(執筆:税理士・公認会計士 風間啓哉)

 

 

 

 

 


 

このコラムでは読者の方からのご質問も募集しています。M&Aに関することで疑問に思っていること、コラムの内容に関してもっと詳しく知りたいこと、○○について取り上げてほしい、などありましたら、こちらのアドレス(links@zeiken.co.jp)までお知らせください

 

(注意)回答・解説は原則このコラム内で行い、個別の回答はできません。個別事例についてのご相談には対応できませんのであらかじめご承知おきください。

 

 

 

風間啓哉(かざま けいや) 

税理士・公認会計士(風間会計事務所 代表)

2005年公認会計士登録、2010年税理士登録。

監査法人にて監査業務を経験後、上場会社オーナー及び富裕層向けの各種税務会計コンサル業務及びM&Aアドバイザリー業務等に従事。その後、事業会社㈱デジタルハーツ(現 ㈱デジタルハーツホールディングス:東証プライム)へ参画し、同社取締役CFOを経て、同社非常勤監査役(現任)を経験。2018年から会計事務所を本格的に立ち上げ、現在に至る。

(著書等)『PB・FPのための上場会社オーナーの資産管理実務(三訂版)』『資産家・事業家 税務コンサルティングマニュアル』(共著、税務研究会)、『ケーススタディ M&A会計・税務戦略』(共著、金融財政事情研究会)

 

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◇◆ 会計事務所M&Aの疑問(譲渡/入門編)◇◆

 

税務研究会/税務研究会パートナーズでは、会計事務所の事業引継ぎ(譲渡)を検討している税理士の方を対象に、全国各地で個別勉強会・相談会を開催しております。

個別勉強会・相談会の参加者から寄せられた質問の一部をご紹介いたします。

 


 会計事務所のM&A では、譲渡対価は年間の顧問料と同程度が目安と聞きました。そのため、数年かけて売上を伸ばしてから譲渡したいと考えていますが、この進め方で問題はないでしょうか。

 

 

 

 

顧問料年商と同程度が目安という考え方は、一つの目安にはなりますが、それだけで判断するのは注意が必要です。確かに売上を伸ばすことで譲渡対価の引き上げが期待できる場合もありますが、買手側は、事業の継続性を踏まえ、収益の安定性、業務の効率性、引き継ぎのしやすさ、従業員の年齢構成なども重視します。とくに従業員の高齢化が進んでいる場合は、売上が増加しても将来の人員維持への懸念から評価が下がることや、買手が見つからない可能性もあります。そのため、業務の標準化や引き継ぎ体制の整備を並行して進め、全体のバランスを踏まえつつ、手遅れにならないよう譲渡のタイミングを見極めることが重要です。

 

 

個別勉強会では、「譲渡対価の目安」や「譲渡のタイミング」について、個別のご相談も受け付けております。お気軽にご相談ください。

 

 

 


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顧問先からのM&A相談対応Q&A(入門編)

本連載は、顧問先のM&Aの疑問に答える税理士の視点で解説してきます。

 

Vol.6 Q:顧問先から「譲渡後も顧問を継続してほしい」と事前に相談された時の対応は?

 

A:

まずは、顧問先がM&Aを検討するに至った背景や希望を確認したうえで、M&A後も顧問契約を継続することを希望している旨を仲介会社などの関係者に早い段階で共有してもらうことが重要です。

M&A後の顧問契約は、譲渡先となる買手企業の意向にも左右されるため、顧問先から希望された時点で継続が決まるわけではありません。
そのため、早い段階から顧問継続の希望を共有し、買手にとっても既存の顧問税理士が関与するメリットを理解してもらうことが大切です。

 

<解説>
① まずは「なぜM&Aを検討しているのか」を確認する

顧問先から「M&A後も顧問を続けてほしい」と相談された場合、いきなり顧問継続の方法を考えるのではなく、まずM&Aを検討している背景を確認することが重要です。
後継者がいない、経営から離れたい、会社をさらに成長させたいなど、M&Aを検討する理由はさまざまです。
また、M&Aの話がどこから来たのか、すでに仲介会社などに相談しているのかによっても、その後の対応は変わります。
税理士としては、顧問先の意向を確認したうえで、必要に応じてM&Aの専門家への相談を促すなど、初期段階から適切な関係者につなぐことが重要です。

 

② 「顧問契約を継続してほしい」ではなく「買手にとってのメリット」を整理する

M&A後の顧問継続を希望する場合、その希望をそのまま受け入れるのではなく、買手企業にとって既存の顧問税理士が関与するメリットを整理することが重要です。

既存の顧問税理士には、

・過年度の会計・税務処理を把握している
・会社固有の取引や経理処理を理解している
・経営者との長年の関係がある
・M&A前後の数値変化や経緯を説明できる

といった強みがあります。

こうした情報や経験は、買手企業にとってM&A後の会計・税務体制をスムーズに整えるうえで役立つ場合があります。
そのため、顧問先から相談を受けた際には、顧問契約を継続すること自体を目的とするのではなく、買手企業にとって既存の顧問税理士が関与するメリットを整理しておくことが重要です。

 

③ 仲介会社と早い段階から共有する

M&Aの検討が進み、買手候補との交渉が始まってから顧問継続を相談するのではなく、顧問先から希望を聞いた段階で、M&Aを担当する仲介会社などにその意向を共有しておくことが重要です。

買手候補を探す段階から既存顧問税理士の存在や役割を理解してもらうことで、M&A後の関与についても話し合いやすくなります。

また、買手企業の経理体制や会計方針によっては、従来と同じ業務内容・条件での継続が難しい場合もあります。その場合は、税務顧問に限らず、会計・税務面で必要な部分を継続して支援するなど、買手のニーズに応じて関与方法を検討することも選択肢です。

M&A後の顧問継続は、売手企業の希望だけで決まるものではありません。顧問先から事前に相談を受けた場合には、その希望を早期に共有し、買手にとっても既存顧問税理士が関与するメリットを整理しておくことが、M&A後の継続的な関与につながります。

 

【今回のポイント】

・顧問先から事前に相談された場合は、まずM&Aを検討する背景や希望を確認する。
・顧問契約を継続すること自体を目的とせず、買手にとって既存顧問税理士が関与するメリットを整理する。
・顧問継続の希望は早い段階から仲介会社などの関係者と共有し、M&A後の関与方法を検討する。

 

【著者】

株式会社たすきコンサルティング 代表取締役 森田 修

【プロフィール】

代表取締役 森田 修

1974年生まれ、大阪府出身。清風高等学校を卒業後、日本大学文理学部を経て、東洋大学大学院経済学研究科を修了。2004年に税理士登録。事業会社での実務経験を積んだ後、株式会社エスネットワークスにて株式公開コンサルティングなどに従事。

2005年に株式会社たすきコンサルティングを設立し、代表取締役に就任。以降、M&A・組織再編コンサルティングを中心に、税務・労務・株式公開支援など幅広い分野にわたりサービスを展開。グループ全体で約1,000社の企業と取引実績を持つ。

実務に裏打ちされた高い専門性と現場目線のアドバイスに定評があり、特に中小企業の経営支援において豊富な実績を誇る。剣道錬士六段の腕前も持ち、ビジネスと武道の両面で研鑽を重ねている。

 

Q-23 M&Aのタイミングはいつがベストですか?|3分でわかる!M&Aのこと【解説コラム】

 

 

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Q-23  M&Aのタイミングはいつがベストですか?

A

 

M&Aを検討される経営者の方から、「M&Aを行うタイミングはいつがベストですか? 」というご質問をいただくことがあります。

 

このご質問の背景には、「自分はいつまで社長としてがんばれるだろうか」「後継者がいないため、家族に借入金などの負担を残したくない」「できるだけ高い価格で会社を譲渡したい 」といった様々な想いがあります。

 

一方で、買い手企業にも事情があります。買い手は、顧客基盤や技術・ノウハウなどの競争力が残っており、今後さらに成長が期待できる会社を、適正な価格で取得したいと考えています。

 

一見すると、売り手と買い手では希望するタイミングが異なるようにも思えます。しかし、実際には、両者にとって望ましいタイミングは大きく変わりません。

 

なぜなら、事業は「生き物」であり、適切なタイミングで新たな経営資源や資本、人材が加わることで、さらに成長できる可能性があるからです。

 

反対に、そのタイミングを逃してしまうと、顧客離れや競争力の低下、主要社員の退職などが進み、企業価値が下がってしまう可能性があります。

 

その結果、売り手は希望していた価格で譲渡できなかったり、借入金などの負担が残ったりすることがあります。また、買い手にとっても成長余地の少ない事業を取得することになり、期待した投資効果を得られない場合があります。

 

つまり、M&Aは「売れる時に売る」「買える時に買う」という考え方ではなく、事業を次の成長ステージへ進めるタイミングで実施することが、売り手・買い手双方にとって最も望ましいといえるでしょう。

具体的に「〇〇したとき」のように明言するのは難しいのですが、売り手と買い手、それぞれの視点を整理すると以下のようになります。

 

M&Aのタイミングを見極めるための視点(売り手・買い手比較)

売り手 買い手
後継者へ円滑に事業承継したい 売り手オーナーの経営力を引き継ぎ、さらに事業を成長させたい
できるだけ高く譲渡したい できるだけ適正な価格で取得したいが、成長余地がある企業を求めている
借入金を整理・承継したい 成長性があれば借入金も含めて承継できる
社員や顧客を守りたい 社員・顧客基盤を含めて価値ある事業を取得したい
老後資金・退職金を確保したい 退職金をM&Aのスキームに組み入れ売買価格を圧縮したい

 

 

(執筆:税理士 高井 寿)

 

 

 

 

 


 

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高井 寿(たかい ひさし) 

高井国際税務会計事務所 代表税理士 東京税理士会世田谷支部副支部長

2002年税理士登録、経営品質協議会認定アセッサー、CFPファイナンシャルプランナー、経営計画策定、国内及び国際タックスマネジメント、事業・資産承継、組織再編・連結納税、MAが専門。財団法人日本民事信託協会代表理事。

(著書等)「連結納税マニュアル(税務研究会)」「営業権の実務」(税務通信(税務研究会))、「経理システムと税務」「寄付金課税の問題点」(ともに税務弘報(中央経済社))、「資産家・事業家税務コンサルティングマニュアル」(税務研究会)

 

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◇◆ 会計事務所M&Aの疑問(譲渡/入門編)◇◆

 

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個別勉強会・相談会の参加者から寄せられた質問の一部をご紹介いたします。

 


 後継者として、現在の事務所に入ってくれる若手税理士へ譲渡した事例はありますでしょうか。

 

 

 

 

弊社が支援した会計事務所M&A においても、若手税理士に譲渡した事例は数多くあります。 若手税理士にとっては、一から顧問先を開拓したり従業員を採用したりするよりも、既存の顧問先・従業員・事務所基盤を引き継げることが大きな魅力であり、このような承継を希望する若手税理士は少なくありません。

 

また、若手税理士が現事務所へ入所し、一定期間にわたり売主税理士とともに業務を行いつつ承継するケースもあります。その場合、顧問先や従業員との信頼関係を段階的に築くことができるため、比較的スムーズな引き継ぎにつながりやすい傾向があります。

 

事務所の運営方針や従業員体制をできるだけ維持しながら承継できる可能性があるため、「現在の事務所らしさを残したまま引き継いでほしい」とお考えの場合には、有力な選択肢の一つといえるでしょう。

 

なお、若手税理士への譲渡では、買手が開業間もなく十分な資金を確保できていない場合もあるため、円滑な承継に向けて、譲渡対価の金額や支払方法を柔軟に調整することもあります。

 

実際の進め方は事務所ごとの状況によって異なるため、希望される承継の形を踏まえ、専門家に相談しながら検討されることをおすすめします。

 

 


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顧問先からのM&A相談対応Q&A(入門編)

本連載は、顧問先のM&Aの疑問に答える税理士の視点で解説してきます。

 

Vol.5 Q:M&Aで「売却が難しい会社」とはどのような会社でしょうか?

 

A:

売却が難しい会社とは、買手がリスクを感じやすい会社を指します。たとえ現在の業績が良くても、引継ぎ後の収益性が不透明であれば、交渉が進まなくなる可能性があります。
売却が困難になる要因はいくつかありますが、それらが複数重なるほど条件が厳しくなります。

 

 

<解説>

売却が難しくなる代表的なケースの一例を紹介します

① オーナー依存が強い会社

仲介会社が買手候補に案件を提案した際、最も多く返ってくる懸念が「社長がいなくなった後、売上は本当に維持できるのか」という点です。主要顧客との関係がオーナーの個人的な信頼関係に依拠していたり、現場の判断がすべてオーナーに集中していたりする会社は、候補に挙がっても優先順位が下がりやすくなります。幹部に一定の権限が委譲され、オーナー不在でも業務が回る体制が整っている会社は、それだけで買手の安心感が高まります。

 

② 希望価格の高い会社

希望売却価格が収益力から算定される相場と大きくかけ離れている場合、交渉が進みません。「この価格では合わない」と判断した買手は、最初の提案段階で撤退します。経営者が「他社が〇億で売れたから」という情報をもとに根拠のない希望価格を持っている場合は特に注意が必要です。成約価格の背景には純資産の構成や買手の事情など様々な要素が絡んでおり、表面上の数字だけでは比較になりません。希望価格の根拠を整理しておくことが、スムーズなM&Aへの第一歩です。

 

③ 財務・労務リスクのある会社

業績・体制に問題がなくても、デューデリジェンス(DD)の段階で破談になるケースがあります。現場でよく見られるのは、長年放置された役員貸付金、実態のない在庫計上、未払残業代等の潜在リスクです。これらは決算書の表面には現れにくく、買手側の調査で初めて判明することが多いものとなります。発覚した時点で価格の大幅な引き下げを求められるか、交渉そのものが進まなくなるケースがあります。「もう少し前に整理しておけば」という案件を、仲介の現場では繰り返し経験しています。

 

④ その他、売却を難しくする要因

上記以外にも、以下のような要因が重なると買手がつきにくくなります。
・ 斜陽産業・市場縮小が明確な業界(成長が見込みにくいと買手が判断)
・ 売上の大部分が特定の1〜2社に集中している(取引先離脱リスク)
・ 許認可や資格がオーナー個人に紐づいており、承継が困難
・ 係争中の訴訟や保証債務など、簿外の偶発債務が存在する
こうした要因の多くは、M&Aを検討し始めてからでは対処が難しいものです。顧問税理士として、日頃の関与を通じて状況を把握し、必要な整理を進めておくことが、顧問先が円滑にM&Aを進められる体制を整えることにつながります。

 

【今回のポイント】

・オーナー依存・希望価格の乖離・財務労務リスクが主な要因
・斜陽産業・売上集中・許認可・偶発債務なども買手離れの原因になる
・こうした要因の多くは、日頃の関与を通じて現状を把握・整理しておく

 

【著者】

株式会社たすきコンサルティング 代表取締役 森田 修

【プロフィール】

代表取締役 森田 修

1974年生まれ、大阪府出身。清風高等学校を卒業後、日本大学文理学部を経て、東洋大学大学院経済学研究科を修了。2004年に税理士登録。事業会社での実務経験を積んだ後、株式会社エスネットワークスにて株式公開コンサルティングなどに従事。

2005年に株式会社たすきコンサルティングを設立し、代表取締役に就任。以降、M&A・組織再編コンサルティングを中心に、税務・労務・株式公開支援など幅広い分野にわたりサービスを展開。グループ全体で約1,000社の企業と取引実績を持つ。

実務に裏打ちされた高い専門性と現場目線のアドバイスに定評があり、特に中小企業の経営支援において豊富な実績を誇る。剣道錬士六段の腕前も持ち、ビジネスと武道の両面で研鑽を重ねている。

 

 

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 会計事務所M&A の買収監査(デューデリジェンス)とはどのようなことをするのでしょうか?

 

 

 

 

会計事務所M&A におけるデューデリジェンスは、買手側が中心となって行い、事務所を安心して引き継げるかを確認するための大切な手続きです。

 

財務だけでなく、顧問料収入が安定しているか、顧客が特定の取引先に偏っていないか、所長や担当者の業務内容まで幅広く確認されます。一般企業のM&A と違い、外部の専門家を入れるケースは少なく、買手自身が実施することが多い点も特徴です。

 

売手としては、数字の説明だけでなく、「従業員の働きぶり」と「顧客との関係」を分かりやすく伝えることが重要になります。特に、従業員が安定して働いているか、顧客の関係がしっかりしているか、キーパーソンが誰かといった点は必ず見られます。これらに不安があると、顧客が離れるリスクがあると判断されてしまいます。また、面談などを通じて、実際にスムーズな引継ぎができるかどうかも確認されます。

 

譲渡後のトラブルを防ぐためにも、隠し事をせず、実態を正しく伝えることが大切です。デューデリジェンスは単なる調査ではなく、事務所の状況を正確に理解してもらうための機会と考えることが重要です。

 

 


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Q-22  M&Aにかかる期間として目安はありますか? |3分でわかる!M&Aのこと【解説コラム】

 

 

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 Q-22 M&Aにかかる期間として目安はありますか?

A

M&Aは、買い手が見つかればすぐに終わる、というものではありません。相手が決まったのに、そこからなかなか前に進まない、ということも実際にはよくあります。ではなぜ時間がかかるのでしょうか。上場しているM&A仲介会社の開示を見ると、平均成約期間は6〜7か月程度とされています。ただこれは成約まで至った案件の平均で、実際の期間は規模や業種、スキームによって、数か月のこともあれば1年を超えることもあります。

 

そのため、質問に対する回答としては、数か月から1年を超えることもある、ということになりますが、M&Aにかかる期間を左右しているのは、相手が見つかるかどうかよりも、もう少し別の部分にあるようです。そのため、まずはM&Aの流れを簡単に振り返りながら、時間を要する理由を探っていきたいと思います。

 

 

1.M&Aの全体の流れ

M&Aは、大きく、(1)事前検討・準備、(2)マッチング・交渉、(3)契約締結の3つの段階に分けられます。(1)では、売り手が方針を固めて資料を整え、買い手は買収の方針やシナジーを検討します。(2)では、買い手候補との間で秘密保持契約(NDA)を結び、トップ面談を経て基本合意に進みます。(3)では、買い手によるデューデリジェンス(DD=詳細な調査)を受けて、最終契約を結び、クロージングに至ります。こうして並べてみると、「相手を探す」のは(2)の一部にすぎないことがわかります。実際のスケジュールはその前後で売り手・買い手の双方が進める作業の積み重ねで決まってきます。

 

 

2.時間がかかるのは、売り手・買い手それぞれの準備

時間が延びやすい場面は、売り手側と買い手側の両方にあります。売り手側でポイントになるのは、(3)のDDに耐えられる組織体制になっているかどうかです。DDは、買い手が会社の中身を細かく調べる、いわば身体測定のようなものです。月次決算が遅かったり、借入金や経営者保証、主要な契約や事業に必要な許認可等がきちんと管理されていなかったりすると、買い手は正しい収益力も実質的な純資産も十分に判断できません。その結果、追加の資料依頼や価格の再交渉が必要となり、結果として交渉に時間がかかります。

 

一方、買い手側にも事情があります。DDひとつとっても、依頼する専門家(公認会計士や弁護士など)の選定や契約、調査項目の検討等、着手するまでに意外と日数がかかります。資金面では、自己資金で賄えるなら比較的早く進みますが、借入による場合は金融機関の審査に時間を要します。買収についての社内の承認手続きにも、それなりの日数が必要です。また、DDでは財務面だけでなく、契約や許認可、係争の有無といった法務面の確認も行われ、規模の大きい案件では、これに加えて独占禁止法などの対応が必要になることもあります。

 

 

3.ただし、早ければよいというわけでもない

とはいえ、とにかく早いほうがよいかというと、そうとも言い切れません。売り手の立場からすると、買い手が同業他社の場合には、DDを通じて顧客別の売上や粗利、価格条件、技術情報といった、本来は社外に出したくない内部情報まで見られてしまう心配があります。経済産業省の「企業買収における行動指針」でも、目的の正当性が疑われる例として、競合他社が情報収集を目的に買収を持ちかけるケースが挙げられています。

 

一方で、買い手の立場からも急いで雑なDDをするのは禁物です。簿外債務や偶発債務を見落とすと、買収した後に思わぬ負担を抱えることになりかねません。

 

売り手は機微な情報を段階的に開示し、買い手は資金の裏付けや社内の承認状況を適時に示す。こうしたやりとりを丁寧に進めるほうが、結果として早く進みます。

 

 

最後に

結局のところ相手が決まっても話が進まないのは、売り手・買い手それぞれの準備がどこまで整っているか、によるところが大きいのだと思います。売り手は、いつ見られても問題のない数字を、買い手は、資金と社内の合意の段取りを。M&Aにかかる時間は、相手が見つかるまでの時間というよりも、双方が実際に動ける状態になるまでの時間だと考えると、わかりやすいのではないでしょうか。そこを早めに整えておくことが、結果的には近道になるはずです。

 

 

 

(執筆:税理士・公認会計士 風間啓哉)

 

 

 

 

 


 

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風間啓哉(かざま けいや) 

税理士・公認会計士(風間会計事務所 代表)

2005年公認会計士登録、2010年税理士登録。

監査法人にて監査業務を経験後、上場会社オーナー及び富裕層向けの各種税務会計コンサル業務及びM&Aアドバイザリー業務等に従事。その後、事業会社㈱デジタルハーツ(現 ㈱デジタルハーツホールディングス:東証プライム)へ参画し、同社取締役CFOを経て、同社非常勤監査役(現任)を経験。2018年から会計事務所を本格的に立ち上げ、現在に至る。

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顧問先からのM&A相談対応Q&A(入門編)

本連載は、顧問先のM&Aの疑問に答える税理士の視点で解説してきます。

 

Vol.4 Q:顧問先からM&Aを進める際に「どこに相談すればいいか」と聞かれました。どうアドバイスをすればいいですか?

 

A:

「まずはM&Aの支援実績がある専門家に相談することをお勧めします。具体的にはM&A仲介会社やFA(ファイナンシャル・アドバイザー)が代表的な相談先です。ただし、仲介会社によって得意とする業種や規模、担当者の経験に差があるため、どこに依頼するかが重要になります」と伝えてください。
相談先を選ぶ際のポイントを事前に整理しておくことで、顧問先が安心して最初の一歩を踏み出せるようサポートできます。

 

 

<解説>

では、仲介会社を選ぶ際のポイントは何を基準にしたらよいのでしょか?

① 大手仲介会社と中小仲介会社、何が違うのか

大手M&A仲介会社は、豊富な買手候補データベースや全国規模のネットワークを有している点が強みです。多くの候補先へアプローチできるため、マッチング機会の広さが期待できます。
一方で、多数の案件を同時に取り扱うケースもあるため、案件によっては担当者との接触頻度やサポート体制に差が生じることがあります。
中小の仲介会社は、特定の業種や地域に特化している場合が多く、担当者が案件に深く関与しながら進められることが特徴です。オーナーとの距離が近く、柔軟な対応が期待できる一方で、買手ネットワークの規模や得意領域には違いがあるため、自社との相性を見極めることが重要です。

 

② 相談先だけではなく「担当者」も重要

M&Aでは、実際に案件を担当する担当者の経験や知識、提案力が結果に大きく影響します。
初回面談では、
・同業種の支援実績があるか
・どのような買手候補を想定しているか
・自社の強みや魅力をどのように評価しているか
・サポート体制はどのようになっているか
といった点を確認するとよいでしょう。
会社の知名度だけで判断するのではなく、「自社の事業をどれだけ理解しようとしているか」という視点も大切です。

 

③ 担当者との「相性」が結果を左右することもある

実際に、売上3億円規模の製造業者が仲介会社と契約したものの、担当者が業界特性を十分に理解しておらず、買手候補への提案内容が的確でなかったため長期間進展しなかったケースがありました。

その後、業界知識のある担当者が在籍する別の仲介会社へ相談したところ、買手候補の選定や提案内容が改善され、成約に至りました。

もちろん全てのケースに当てはまるわけではありませんが、仲介会社の規模や知名度だけでなく、自社の業種や課題を理解してくれる担当者かどうかも重要な判断材料になります。

 

④ 報酬体系の違いも必ず確認しておく

M&A仲介会社の報酬体系は大きく2種類に分かれます。成約時のみ報酬が発生する「完全成功報酬型」と、着手金や月額報酬が発生する「着手金あり型」です。
報酬体系の種類よりも、まず確認すべきは「どの段階でいくらかかるのか」が明確かどうかです。着手金・月額報酬・成功報酬の有無と金額が事前に明示されているか、成約に至らなかった場合の費用負担はどうなるのか、これらが曖昧な仲介会社は避けた方が無難です。
成約報酬の相場はレーマン法※を用いる会社が多く、譲渡対価に対して5〜10%程度が目安となりますが、会社によって料率の設定や最低報酬額が異なります。複数の仲介会社に見積もりを求め、報酬体系と具体的なサポート内容を比較したうえで判断することをお勧めします。

※レーマン法:譲渡対価の金額に応じて料率を段階的に変動させる成功報酬の算定方式。取引金額が大きくなるほど料率が低下する逓減方式が一般的で、国内のM&A仲介会社の多くが採用している。

 

【今回のポイント】

・大手はネットワークの広さ、中小は専門性や密な支援が強み。
・仲介会社だけではなく担当者の経験や提案力も確認する。
・初回面談では業界理解や具体的な経験、提案力も確認する。
・担当者変更があった場合の引継ぎ体制も事前に確認しておく。
・報酬体系(完全成功報酬 or 着手金あり)は複数社を比較したうえで選ぶ。

 

【著者】

株式会社たすきコンサルティング 代表取締役 森田 修

【プロフィール】

代表取締役 森田 修

1974年生まれ、大阪府出身。清風高等学校を卒業後、日本大学文理学部を経て、東洋大学大学院経済学研究科を修了。2004年に税理士登録。事業会社での実務経験を積んだ後、株式会社エスネットワークスにて株式公開コンサルティングなどに従事。

2005年に株式会社たすきコンサルティングを設立し、代表取締役に就任。以降、M&A・組織再編コンサルティングを中心に、税務・労務・株式公開支援など幅広い分野にわたりサービスを展開。グループ全体で約1,000社の企業と取引実績を持つ。

実務に裏打ちされた高い専門性と現場目線のアドバイスに定評があり、特に中小企業の経営支援において豊富な実績を誇る。剣道錬士六段の腕前も持ち、ビジネスと武道の両面で研鑽を重ねている。

 

Q-21  M&Aにおける事業譲渡(営業譲渡)のメリット・デメリットは?株式譲渡との違いは?|3分でわかる!M&Aのこと【解説コラム】

 

 

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今後、ますます活用が進んでいくであろうM&Aについて、できるだけわかりやすくQ&A形式で解説するコラムを掲載することにしました。ぜひご一読ください!

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Q-21  M&Aにおける事業譲渡(営業譲渡)のメリット・デメリットは?株式譲渡との違いは?

A

 

M&Aの代表的な手法として、実務上は「事業譲渡(旧商法上の営業譲渡)」又は「株式譲渡」が選択されます。なお、「営業譲渡」と「事業譲渡」は基本的には同義です。2006年(平成18年)の会社法施行に伴い、旧商法で用いられていた「営業譲渡」という呼称が、「事業譲渡」に改められたもので、現在の実務では「事業譲渡」という表現が一般的に用いられています。

 

一方、M&Aにおいて最も一般的な手法は株式譲渡であり、会社そのものの支配権を移転する方法となります。

 

今回は事業譲渡を中心に、そのメリット・デメリットや株式譲渡との違いをみていきましょう。

 

1.事業譲渡(営業譲渡)とは

事業譲渡とは、会社が営む事業の全部または一部を、他社へ譲渡する取引をいいます。

株式譲渡が「会社そのもの」を引き継ぐのに対し、事業譲渡では、譲渡対象となる資産・負債・契約等を個別に選択することが可能です。

そのため、譲受側にとっては、必要な事業のみを取得しやすいという特徴があります。

 

2.営業権(のれん)の考え方

事業譲渡においては、「営業権(のれん)」の評価が重要な論点となります。

営業権とは、社会的信用、顧客との継続的取引関係、技術力・ノウハウ、ブランド力、立地条件など、企業が有する無形の財産的価値を指します。一般的に、事業譲渡価格は以下の考え方により算定されます。

事業譲渡価格 = 時価純資産額 + のれん価値

ここでいう「時価純資産額」とは、現預金、売掛金、固定資産、棚卸資産等を時価評価したうえで、負債を差し引いた純資産額をいいます。

また、「のれん価値」の評価方法としては、実務上、利益年倍法が用いられるケースが多く、概ね以下のように算定されます。

のれん価値 = 平均純利益 ×年数

年数については、業種特性や顧客継続性等を踏まえ、一般的には1年~5年程度の範囲で交渉されるケースが多く見られます。

 

3.譲渡側の主なメリット

(1)不採算事業からの撤退

譲渡企業が事業譲渡を検討する理由の一つとして、業績不振事業による経営圧迫があります。経営悪化が深刻化する前に事業を売却することで、資金確保、本業への経営資源集中、多角化事業の整理、人員整理、事業承継などを図ることが可能となります。

(2) 減損リスクの回避

上場企業等では、不採算事業について減損会計の適用が問題となる場合があります。事業譲渡を行うことで、含み損資産の整理、バランスシートの健全化、損失計上による税効果などを期待できるケースがあります。

 

4.譲受側の主なメリット

(1)既存事業の拡大

同業種またはシナジー効果が期待できる事業を取得することで、既存事業の拡大を加速させることが可能となります。

(2)新規事業への迅速な参入

ゼロから新規事業を立ち上げるよりも、既存事業を取得することで、顧客基盤、人材、ノウハウ、設備などを一括して取得でき、短期間で市場参入できるメリットがあります。

(3)税務上のメリット

事業譲渡により発生した「のれん」は、税務上「資産調整勘定」として取り扱われ、5年間で均等償却することが認められています。そのため、譲受企業においては、将来的な節税効果が期待できる場合があります。

 

5.事業譲渡(営業譲渡)のデメリット

(1) 譲渡益に対する課税

譲渡側には、譲渡益に対して法人税等が課税されます。実質的には、「時価純資産額」と「簿価純資産額」の差額、および「のれん相当額」に対して課税関係が生じることになります。

また、事業譲渡では一定の資産について消費税の課税対象となります。主な対象は、建物・機械装置等の有形固定資産、営業権・商標権等の無形固定資産、棚卸資産などです。なお、売掛金・買掛金等の債権債務は、原則として消費税の課税対象外となります。

(2)契約・雇用関係の再構築

事業譲渡では、契約や従業員について個別承継が必要となります。そのため、取引先との契約再締結、従業員の転籍同意、雇用契約の再締結、関係者への説明など、多くの実務負担が発生します。

小職も、営業権譲渡において売り手サイドの実務に携わった経験がありますが、取引先や関係者、従業員に対する事業売却の説明、異動の可否、退職勧奨、さらには継続雇用を希望する従業員の転籍同意など、多くの調整が必要となりました。

これらは最終的に「営業権譲渡価格」にも影響する重要な要素であり、実務上、精神的負担の大きい業務であったことを記憶しています。

 

6.事業譲渡と株式譲渡の比較

事業譲渡と株式譲渡の特徴を対比的にまとめますと以下の通りとなります。

項目 事業譲渡(営業譲渡) 株式譲渡
譲渡対象 事業の全部または一部 会社そのもの
契約関係 個別承継が必要 原則そのまま継続
従業員 転籍同意が必要 原則継続雇用
簿外債務リスク 限定しやすい 引き継ぐ可能性あり
消費税 課税対象となる場合あり 原則非課税
手続負担 多い 比較的簡便
のれん償却 可能 原則不可
適したケース 一部事業のみ取得したい場合 会社全体を承継する場合

 

 

(執筆:税理士 高井 寿)

 

 

 

 

 


 

このコラムでは読者の方からのご質問も募集しています。M&Aに関することで疑問に思っていること、コラムの内容に関してもっと詳しく知りたいこと、○○について取り上げてほしい、などありましたら、こちらのアドレス(links@zeiken.co.jp)までお知らせください

 

(注意)回答・解説は原則このコラム内で行い、個別の回答はできません。個別事例についてのご相談には対応できませんのであらかじめご承知おきください。

 

 

 

高井 寿(たかい ひさし) 

高井国際税務会計事務所 代表税理士 東京税理士会世田谷支部副支部長

2002年税理士登録、経営品質協議会認定アセッサー、CFPファイナンシャルプランナー、経営計画策定、国内及び国際タックスマネジメント、事業・資産承継、組織再編・連結納税、MAが専門。財団法人日本民事信託協会代表理事。

(著書等)「連結納税マニュアル(税務研究会)」「営業権の実務」(税務通信(税務研究会))、「経理システムと税務」「寄付金課税の問題点」(ともに税務弘報(中央経済社))、「資産家・事業家税務コンサルティングマニュアル」(税務研究会)

 

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 若手の税理士に事務所を譲渡し、時間をかけてソフトランディングでの引き継ぎを行いたいのですが、そのような相手先は見つかるのでしょうか。

 

 

 

 

当社がこれまで携わってきた事例においても、若手税理士へ円滑に承継されたケースは数多くあります。

 

近年では、「顧問先の新規開拓」「職員採用や組織づくり」に悩みを持つ若手税理士が増加しているようです。そのため、一定規模の顧問先と安定した職員体制を有する事務所のM&Aによる承継は、魅力的な選択肢として捉えられています。

 

また、譲渡先となる若手税理士からは、顧問先との関係性の引き継ぎや業務のフォローアップを目的として、数年間のサポートを希望されるケースも少なくありません。一定の引き継ぎ期間を設けることで、職員の退職リスクの低減や顧問先の離脱防止、新代表へのスムーズな信頼移行が可能となり、双方にとって安心感の高い承継につながります。そのため、「譲渡後は業務量を徐々に減らしながら、段階的に引退したい」とお考えの先生にとっても、相性の良い選択肢といえるでしょう。

 

なお、若手税理士への譲渡の場合、引き継ぎ期間が比較的長期に及ぶ傾向があります。少しでも余裕を持ったスケジュールで準備を進めることが、成功の鍵となります。

 

 

 

 


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顧問先からのM&A相談対応Q&A(入門編)

本連載は、顧問先のM&Aの疑問に答える税理士の視点で解説してきます。

 

Vol.3 Q:顧問先の会社が「同業者が〇億で売れたと聞いたのですがうちも同じくらいで売れますか?」などと聞いてきた場合、どう答えるべきか?

 

A:

初期段階では具体的な金額を提示しないように注意しましょう。
「価格を考えるうえでの目安はありますが、最終的な価格は会社の個別条件と、買手との交渉によって決まります」と伝えてください。
そのうえで、「決算書上の利益がそのままM&A価格に使われるわけではない」という点を補足しておくことが重要です。

 

<解説>
① 買手は決算書の利益を「そのまま」では使わない

買手側は、決算書の利益をそのまま評価に使うことはありません。たとえばオーナーの役員報酬が市場水準より高い場合や、実態を伴わない経費が含まれている場合は、それらを除いた「正常化利益」を算出したうえで価格を検討します。役員報酬を市場水準ベースで調整するだけで、評価上の利益が数百万単位で変わることも珍しくありません。顧問税理士が把握している利益と、買手が評価する利益は、同じ決算書を見ていても一致しないケースは多くあります。

「うちの利益はこれだけある」という経営者の前提と、買手側が算出する利益が最初から食い違っていると、交渉が進むにつれて期待値のギャップが表面化します。

 

② 噂は参考にならない

「知り合いの会社が〇億で売れた」といった噂をもとに相談されるケースもありますが、他社の成約価格はM&A業界では非公開が原則です。聞こえてくる数字の裏に、買手の戦略的な意図があったか、不動産の含み益があったのか、借入金の処理がどうだったのかは、実際の当事者以外には知る術がありません。同じ業種・同じ規模に見えても、成約価格の構成はまったく異なります。価格は「誰が、どのような戦略目的(シナジー)で買うか」で決まります。

 

③ ある経営者の実例

ある経営者が「同じ業界内で規模が近い企業が5億円で売れたから、うちも同じくらいの価格で売れるだろう」と言っていました。しかし、その5億円で売却された会社は、自社ビルを保有しており、その不動産価値だけで2億円以上あったのです。つまり、事業の収益力だけを見れば、その会社とこの経営者の会社では実際の価値が大きく異なる可能性が高いということです。

M&Aでの売却価格は、単純に同業他社の価格を参考にするだけでは不十分で、個別の事情が必ず影響します。

 

【今回のポイント】

・「〇億で売れた」といった発言にうっかり同調をしない
・決算書の利益は「正常化」されてから評価に使われる
・他社の成約事例は背景が異なるため単純比較にならない
・価格は「誰が、どのような戦略目的(シナジー)で買うか」によって決まる

M&Aの譲渡価格は、単純に利益を何倍かした数字で決まるわけではありません。実際には、資産や負債の調整項目や、買い手企業との相性など、多くの要素が関係して価格が変動します。
早い段階で自社の価値や条件を整理しておくことで、経営者が考える価格と実際の売却価格のギャップを防ぎやすくなります。

 

【著者】

株式会社たすきコンサルティング 代表取締役 森田 修

【プロフィール】

代表取締役 森田 修

1974年生まれ、大阪府出身。清風高等学校を卒業後、日本大学文理学部を経て、東洋大学大学院経済学研究科を修了。2004年に税理士登録。事業会社での実務経験を積んだ後、株式会社エスネットワークスにて株式公開コンサルティングなどに従事。

2005年に株式会社たすきコンサルティングを設立し、代表取締役に就任。以降、M&A・組織再編コンサルティングを中心に、税務・労務・株式公開支援など幅広い分野にわたりサービスを展開。グループ全体で約1,000社の企業と取引実績を持つ。

実務に裏打ちされた高い専門性と現場目線のアドバイスに定評があり、特に中小企業の経営支援において豊富な実績を誇る。剣道錬士六段の腕前も持ち、ビジネスと武道の両面で研鑽を重ねている。

 

 

◇◆ 会計事務所M&Aの疑問(譲渡/入門編)◇◆

 

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 67歳の税理士です。体力的な不安が出てきたため、できれば今年中に税理士事務所の譲渡を完了させたいと考えています。年内の譲渡は現実的に可能でしょうか。また、スムーズに進めるために注意すべき点があれば教えてください。

 

 

 

ご年齢や体力面を考慮され、「今年中に税理士事務所の譲渡を完了させたい」というご希望は、進め方を工夫すれば十分に可能です。ただし、通常業務を行いながら進めることになりますので、年内完了を前提とした明確なスケジュールを組み、早めに動き出すことが重要です。

 

具体的な流れとしては、4月~6月にかけて仲介契約を締結し、譲渡条件(引き継ぎ方法や譲渡価額など)や、顧問先や職員体制などの事務所情報を整理します。この初期準備を丁寧に行うことで、後工程がスムーズになります。7月~9月は譲渡先の探索と具体的な交渉を進める期間となり、条件面や引き継ぎ体制について双方の認識をすり合わせていきます。そして10月~12月には譲渡契約を締結し、実務的な引き継ぎへと移行する想定です。

 

体力的なご負担を減らすためにも、譲渡後にどの程度関与するのかを事前に決めておくことも重要です。

 

税務研究会では、年内完了を見据えたスケジュール管理から、無理のない引き継ぎ方法の検討まで丁寧にサポートいたしますので、安心してご相談ください。

 

 

 

 


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Q-20  M&Aが進まない理由は何ですか? |3分でわかる!M&Aのこと【解説コラム】

 

 

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 Q-20 M&Aが進まない理由は何ですか?

A

M&Aを進めていても、イメージ通りに進まないことが多々発生します。M&Aは、大きく(1)事前検討・準備、(2)マッチング・交渉、(3)契約締結の3つの段階に分けることができます。それぞれの段階ごとに、M&Aが進まない要因について、詳しく触れていきたいと思います。

 

 

(1)事前検討・準備
この段階では主にM&Aを実施すべきかどうかを事前に検討するために、情報収集やM&Aの目的・条件等を設定し、どのような方法で進めていくかなどの戦略を策定します。また、多くの企業はこの段階でM&A仲介会社等とアドバザイリー契約を結び、相談しながらM&Aを進めることになります。

この点、信頼できるM&A仲介会社が見つからない場合や、M&Aについて十分な知識を有していない会社が自力でM&Aを進めようとする場合には、自社の分析や市場調査に必要以上に時間がかかることがあります。また、M&Aの目的設定が曖昧な状態だと、方向性がぶれてしまい、M&Aが進まない要因の一つとなります。

 

(2)マッチング・交渉
この段階では主に買収先および売却先の候補を選定した上で絞りこみ、売り手がノンネームシート(注)や企業概要書を作成し、売却先へ提示の上、お互いの希望条件にあった企業とのマッチングを行います。その後、マッチングした企業の経営者同士によるトップ面談や交渉を進めていき、基本合意書の締結まで行います。

この点、一般的にM&Aは売り手よりも買い手の方が多く存在しており、買い手の条件と適合する売り手がなかなか見つからずにマッチングに時間がかかるケースがあります。また、売り手が作成した企業概要書で会社の魅力が伝わりにくい場合や、(1)事前検討・準備段階における自社分析が不十分だったために譲渡希望価格を不当に高く設定してしまった場合などにも、双方の条件が適合せずにマッチングに時間を要し、M&Aが進まない要因となります。
注: 売り手の名前が分からない状態で会社概要、財務状況、譲渡価格などの希望条件等が記載された資料

 

(3)契約締結
この段階では、主に売り手企業に対してデューディリジェンスと呼ばれる企業調査を実施し、その調査結果を踏まえて最終条件の交渉を行った上で、最終契約の締結を進めます。デューディリジェンスには財務、税務、法務、労務、ITなど様々な種類の調査があり、基本的には買い手が選定した第三者の専門家によって行われ、潜在的なリスクや問題点を洗い出し、買い手の意思決定に資する情報を提供します。

この点、特に次のようなケースにおいてはデューディリジェンスの実施や契約締結が遅れることがあり、M&Aが進まない要因となります。

売り手から十分な情報が開示されないケース
売り手がM&Aに不慣れな場合には、買い手から要求される資料リストが不十分であったり、準備や確認に時間を要したりすることがあり、デューディリジェンスの実施が遅れる要因となります。

売り手が不適切な会計処理を行っているケース
売り手が架空の売上計上や資産の過大計上及び認識していない負債が多額にある場合などの不適切な会計を行っている場合には、その原因を究明して企業のあるべき財政状態、経営成績を把握する必要があるため、その修正に時間を要することがあり、デューディリジェンスの実施が遅れる要因となります。

デューディリジェンスの結果を踏まえた最終交渉が難航するケース
デューディリジェンスを実施した結果、予期せぬ潜在的なリスクが発見された場合には、最終交渉において譲渡金額や譲渡対象資産・負債の範囲、売り手の経営者の待遇などが当初の希望条件から大きく変わることもあり、なかなか双方の折り合いがつかずに契約の締結が遅れることになります。

 

 

 

 

(執筆:税理士・公認会計士 風間啓哉)

 

 

 

 

 


 

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(注意)回答・解説は原則このコラム内で行い、個別の回答はできません。個別事例についてのご相談には対応できませんのであらかじめご承知おきください。

 

 

 

風間啓哉(かざま けいや) 

税理士・公認会計士(風間会計事務所 代表)

2005年公認会計士登録、2010年税理士登録。

監査法人にて監査業務を経験後、上場会社オーナー及び富裕層向けの各種税務会計コンサル業務及びM&Aアドバイザリー業務等に従事。その後、事業会社㈱デジタルハーツ(現 ㈱デジタルハーツホールディングス:東証プライム)へ参画し、同社取締役CFOを経て、同社非常勤監査役(現任)を経験。2018年から会計事務所を本格的に立ち上げ、現在に至る。

(著書等)『PB・FPのための上場会社オーナーの資産管理実務(三訂版)』『資産家・事業家 税務コンサルティングマニュアル』(共著、税務研究会)、『ケーススタディ M&A会計・税務戦略』(共著、金融財政事情研究会)

 

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顧問先からのM&A相談対応Q&A(入門編)

本連載は、顧問先のM&Aの疑問に答える税理士の視点で解説してきます。

 

Vol.2 Q:M&Aのトラブルとはどのようなものか?

 

A:

直近では、いわゆる“悪質な買手”による資金流出型のトラブルが問題視されました。
具体的な事例として現預金を有する債務超過企業が安価で買収され、買収後に資金だけを抜かれて放置されるケースがあります。
この場合、旧オーナーの個人保証が残り、最終的に倒産リスクを負うという深刻な被害につながります。

 

<解説>
■ 解説|実際に起きているスキーム

実際に、以下のような流れが確認されています。

 

・現預金を持つ会社(債務超過でも可)を低額で買収

・買収後、「貸付金」などの名目で現預金を買手先口座へ送金

・金融機関借入に対する旧オーナーの個人保証は解除されないまま放置

・一定期間後、買手が連絡不能となり会社は実質的に放置

・資金流出により資金繰りが破綻し倒産

・結果として旧オーナーに個人保証債務のみが残る

 

形式上は株式譲渡が成立していても、実態としては“資金の持ち逃げ”に近い事例です。価格がつく案件では発生しにくく、債務超過・赤字・後継者不在といった「早く手放したい」企業ほど狙われやすい傾向があります。

 

■ 税理士が確認すべき防止ポイント

この種のトラブルは、財務内容の確認だけでは防げません。買手の実在性と資金計画の妥当性をチェックすることが重要です。

 

・買収資金の出所と自己資金割合

・買収後の資金管理体制(資金移動権限・口座管理者)

・個人保証の解除スケジュールが金融機関と合意されているか

・買手の過去の買収実績と継続保有状況

 

特に個人保証の解除がクロージング条件に組み込まれているかどうかは、旧オーナーのリスクに直結する重要な論点です。

こうした点については、税理士だけで判断するのではなく、M&Aの実務に精通した仲介会社や専門家と連携しながら確認することが望ましいといえます。

なお、中小企業庁が策定している「中小M&Aガイドライン」においても、M&A実行後に旧オーナーの保証債務が不適切に残存することがないよう、金融機関との保証解除に向けた調整を適切に行うことの重要性が示されています。

譲渡を判断する際には同ガイドラインを順守し、クロージング条件を整理したうえで手続きを進めているかどうか、専門家を交えて進めていくことが重要となります。

 

■ 顧問先への伝え方

経営者には「赤字でも引き受けると言う相手ほど慎重に見る必要がある」ことを伝えるべきです。安価でも確実に保証解除まで完了する相手と、形式上の譲渡だけでリスクが残る相手では、最終的な安全性が大きく異なります。

 

買手の財務的裏付けと保証処理の進捗を管理することで、この種の被害は大幅に回避できます。価格ではなく“譲渡後に何が残るか”を基準に助言することが、顧問先を守る上で最も重要かつ実務的な対応です。

 

 

 

【著者】

株式会社たすきコンサルティング 代表取締役 森田 修

【プロフィール】

代表取締役 森田 修

1974年生まれ、大阪府出身。清風高等学校を卒業後、日本大学文理学部を経て、東洋大学大学院経済学研究科を修了。2004年に税理士登録。事業会社での実務経験を積んだ後、株式会社エスネットワークスにて株式公開コンサルティングなどに従事。

2005年に株式会社たすきコンサルティングを設立し、代表取締役に就任。以降、M&A・組織再編コンサルティングを中心に、税務・労務・株式公開支援など幅広い分野にわたりサービスを展開。グループ全体で約1,000社の企業と取引実績を持つ。

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Q-19 M&Aと退職金の活用について|3分でわかる!M&Aのこと【解説コラム】

 

 

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Q-19 M&Aと退職金の活用について

A

M&Aの実務においては、退職金の支給を組み込んだスキームが採用されるケースが少なくありません。

これは、単なる譲渡対価の調整にとどまらず、買い手・売り手双方にとって合理的なメリットが期待できるためです。

 

その背景として、主に次の二点が挙げられます。
第一に、買い手にとっては買収希望価格を増額することなく、売り手経営者の手取り額を増やすことが可能となる点です。

第二に、退職金に係る税務上の効果が、買い手・売り手双方にメリットをもたらす点です。

 

以下では、一般的なスキームとその効果について整理します。

(1)余剰現預金の退職金への振替

M&Aの対象会社において、貸借対照表上の現預金が運転資金として必要な水準を上回っている場合、その超過部分を売り手経営者に対する退職金として支給するスキームが検討されることがあります。

(2)譲渡対価を増やさずに手取り額を増加

上記の方法により、買い手は買収希望価格を引き上げることなく、売り手経営者の実質的な手取り額を増やすことが可能となります。
結果として、譲渡対価と退職金を組み合わせた形で、双方が納得しやすい条件設定が実現します。

(3)買い手側における税務上のメリット

退職金が税務上、損金算入可能な範囲内で支給される場合、その分の税効果は買収会社の財務諸表に寄与することとなります。
もっとも、役員退職金については、在籍期間や最終役員報酬との関係から算定される適正額を超えないよう、慎重な検討が必要です。

(4)売り手経営者の引退後の生活設計への寄与

売り手経営者にとっては、M&A完了後の引退を見据えた生活設計が立てやすくなる点も、大きなメリットといえます。
特に、退職金は税務上の優遇措置(【1】退職所得控除と【2】2分の1課税)があるため、資金計画の観点からも重要な意味を持ちます。

留意点

このような退職金スキームは、M&Aプロセスの中で一定の検討時間を要するものの、実務上は非常に有効な手法です。なお、M&A仲介会社の中には、退職金の支給を組み込んだスキームを重要視し、退職金を含めた金額を手数料算定の基礎とする会社も存在しますので、M&A仲介会社選定にあたっては、手数料に関する条件を十分に確認する必要があります。

 

 

(執筆:税理士 高井 寿)

 

 

 

 

 


 

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(注意)回答・解説は原則このコラム内で行い、個別の回答はできません。個別事例についてのご相談には対応できませんのであらかじめご承知おきください。

 

 

 

高井 寿(たかい ひさし) 

高井国際税務会計事務所 代表税理士 東京税理士会世田谷支部副支部長

2002年税理士登録、経営品質協議会認定アセッサー、CFPファイナンシャルプランナー、経営計画策定、国内及び国際タックスマネジメント、事業・資産承継、組織再編・連結納税、MAが専門。財団法人日本民事信託協会代表理事。

(著書等)「連結納税マニュアル(税務研究会)」「営業権の実務」(税務通信(税務研究会))、「経理システムと税務」「寄付金課税の問題点」(ともに税務弘報(中央経済社))、「資産家・事業家税務コンサルティングマニュアル」(税務研究会)

 

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◇◆ 会計事務所M&Aの疑問(譲渡/入門編)◇◆

 

税務研究会では、会計事務所の事業引継ぎ(譲渡)を検討している税理士の方を対象に、全国各地で個別勉強会・相談会を開催しております。

個別勉強会・相談会の参加者から寄せられた質問の一部をご紹介いたします。

 


 従業員2名の小規模事務所です。従業員のうち1名は20年以上の付き合いがあります。M&Aによる事務所の売却を予定しており、従業員にも伝えたうえで進めようと思っていますが、そのような進め方で問題ないでしょうか。

 

 

 

従業員への情報共有については慎重な対応が必要です。

M&Aは交渉の過程で条件変更や中止となる可能性があるため、一般的には従業員の不安や混乱を避ける目的で、譲渡契約(最終契約)締結後に知らせるケースが多いです。一方で、長年にわたり信頼関係を築いてきた従業員がいる場合は、基本合意が成立し方向性が固まった段階で、適切な範囲で共有するケースもあります。

その際は、雇用や待遇など、従業員が懸念しやすい点を丁寧に説明し、安心してもらえるよう配慮することが重要です。また、情報漏洩防止のため取り扱いに注意してもらうとともに、これまでの貢献への感謝や今後のサポート姿勢を伝えることで、移行を円滑に進めやすくなります。

進め方に不安がある場合は、会計事務所M&Aの経験が豊富な専門アドバイザーに相談しながら進行することをお勧めします。

 

 

 

 


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顧問先からのM&A相談対応Q&A(入門編)

本連載は、顧問先のM&Aの疑問に答える税理士の視点で解説してきます。

 

Vol.1 Q:顧問先から「M&Aを検討している」と言われた時の初動対応は?

 

A:

まずは、相手の話をしっかり聴きましょう。
その場で判断せず、期待値を上げず、決めつけたりするような言動は控えてください。
税理士として最初の役割は、顧問先の意向や背景を正確に把握することです。
そのうえで、「一緒に考えていきましょう」という姿勢を明確にしてクライアント寄り添うことが大切です。

 

<解説>

では、顧問税理士として、クライアントのM&Aに関わるにはどのような点に注意すればよいのでしょうか?

 

①なぜ「判断しない」ことが重要なのか

M&Aの現場では、「税理士に最初に相談したが話が噛み合わなかった」という譲渡企業経営者の声を多く耳にします。

その原因の多くは、初回相談時に判断・評価・方向性まで踏み込んでしまうことにあります。

M&Aは、税務だけで完結するテーマではありません。

雇用、取引先、家族関係など、複数の要素が絡むため、初動での即断はミスマッチを生みやすくなります。

そのため初回は、「現時点では判断材料が不足している」というスタンスを明確にすることが重要です。

 

②なぜ「期待値を上げてはいけない」のか

「この規模なら〇億くらいでしょう」「最近この業界は高いですよ」

といった不用意な一言は、後にトラブルの火種になります。

M&Aの価格は相場ではなく、個別条件と交渉によって決まります。

初期段階での価格感提示は、経営者の期待値を不必要に引き上げ、結果として「話が違う」という不信感につながりかねません。

 

③「選択肢を閉ざさない」姿勢が信頼を生む

M&Aに対して否定的な意見を持つこと自体が問題なのではありません。

問題となるのは、代替案や整理を示さずに否定してしまうことです。

実際、M&Aを検討している経営者は多く、「理解してもらえなかった」と感じた瞬間に、別の相談先へ移ってしまいます。

結果として、成約後に初めて知らされ、顧問契約が解除されるケースも少なくありません。

 

実際のところ、売上数億円以上で一定の利益を確保している“優良顧客”ほど、金融機関、コンサル会社などから日常的にM&Aの提案を受けているのが実情です。

他にライバルが多数登場する中でも、信頼関係を崩すことなく顧問契約を継続してもらうためには、

常日頃からクライアントに対して真摯に向き合い、相談を受けた際には慎重に対応する必要があります。

 

 

【今回のポイント】

M&Aの現場からみた、初動対応のポイントは下記の通りです。

  • ・判断しない
  • ・期待値を上げない
  • ・ただし、選択肢は閉ざさない

 

 

この連載では、税理士の先生が実際に顧問先から受けるような相談に対する回答を連載体系的に解説していきます。

 

 

 

【著者】

株式会社たすきコンサルティング 代表取締役 森田 修

【プロフィール】

代表取締役 森田 修

1974年生まれ、大阪府出身。清風高等学校を卒業後、日本大学文理学部を経て、東洋大学大学院経済学研究科を修了。2004年に税理士登録。事業会社での実務経験を積んだ後、株式会社エスネットワークスにて株式公開コンサルティングなどに従事。

2005年に株式会社たすきコンサルティングを設立し、代表取締役に就任。以降、M&A・組織再編コンサルティングを中心に、税務・労務・株式公開支援など幅広い分野にわたりサービスを展開。グループ全体で約1,000社の企業と取引実績を持つ。

実務に裏打ちされた高い専門性と現場目線のアドバイスに定評があり、特に中小企業の経営支援において豊富な実績を誇る。剣道錬士六段の腕前も持ち、ビジネスと武道の両面で研鑽を重ねている。

 

 

 

 

Q-18  相続対策としてM&Aは利用できますか? |3分でわかる!M&Aのこと【解説コラム】

 

 

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今後、ますます活用が進んでいくであろうM&Aについて、できるだけわかりやすくQ&A形式で解説するコラムを掲載することにしました。ぜひご一読ください!

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 Q-18  相続対策としてM&Aは利用できますか? 

A

M&Aは相続対策としても利用することが可能です。
買い手となる場合と、売り手となる場合とで相続対策としての内容が異なってくるため、それぞれに分けて解説します。

 

 

 

<買い手の場合>
実際の相続税計算は複雑であるため、詳細な説明はここでは省略しますが、簡略化すると相続税は「相続財産×税率」で計算されます。
ここでいう相続財産は、現金や預金であればその財産の金額は額面金額の通りとなります。しかし、非上場株式を保有していた場合の財産の金額については、実際の取得金額ではなく、会社規模等により一定の算定方法で相続財産としての金額を算定することが必要になります。
非上場会社の規模によっていくつか評価方法が分かれますが、その評価方法の一つである純資産価額方式を簡便的に説明すると、この計算方法では対象の会社の資産を相続税のルールで評価し、負債との差額を評価額とします。
例えば、合理的な取引価値が4億円である会社の株式100%を、4億円で取得したとします。
下図にある通り、ここでの各資産の相続税における評価方法で評価すると結果は3億円となるため、一般的には実際の取引価格よりも評価額が低くなることが多々あります。
このような評価になった場合に、相続が発生すると、現金で4億円を保有したままの場合は相続財産4億円に対して税率を乗じた相続税が発生しますが、M&Aにより株式を取得していた場合には相続財産3億円に対して税率を乗じた相続税が発生することになり、現金を保有するよりも非上場株式を保有していたほうが有利となります。

 

 

このようにM&Aにより相続財産の評価額が低くなる可能性があります。しかし、実際の会社を取り巻く経営環境や、将来的にその後の事業運営が適切にできるのか等含めクリアにすべきポイントは多くあるため留意が必要です。

 

 

<売り手の場合>
相続税の税率は最大で55%となっており、多額の資産を保有していた場合には相続税額も多額となります。その際に資産の大半が経営する会社の株式などの流動性の低い資産であった場合には、相続発生時に必要な納税資金が不足してしまうことになります。
また、相続人が会社経営に関与しない立場である場合には、その後の会社経営に大きな影響を及ぼしてしまう可能性があります。
納税資金の準備やその後の会社運営という意味でも、会社経営に関与している役員等が相続発生前にM&Aを行い、適切な価格で売却し現金化しておくということも、相続対策のひとつと言えます。

 

今回はかなり簡略化した説明となっていますが、実際には様々な要素やルールに基づき計算されます。また売却時にも利益がでていれば売却した本人に課税が発生する場合や、非上場株式の相続においては事業承継税制というM&Aとは違う形での相続税の対策方法の選択など、多面的に税務の専門的な知識が必要となるため、実行に際しては税務専門家への事前相談が必須といえます。

 

 

 

 

(執筆:税理士・公認会計士 風間啓哉)

 

 

 

 

 


 

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風間啓哉(かざま けいや) 

税理士・公認会計士(風間会計事務所 代表)

2005年公認会計士登録、2010年税理士登録。

監査法人にて監査業務を経験後、上場会社オーナー及び富裕層向けの各種税務会計コンサル業務及びM&Aアドバイザリー業務等に従事。その後、事業会社㈱デジタルハーツ(現 ㈱デジタルハーツホールディングス:東証プライム)へ参画し、同社取締役CFOを経て、同社非常勤監査役(現任)を経験。2018年から会計事務所を本格的に立ち上げ、現在に至る。

(著書等)『PB・FPのための上場会社オーナーの資産管理実務(三訂版)』『資産家・事業家 税務コンサルティングマニュアル』(共著、税務研究会)、『ケーススタディ M&A会計・税務戦略』(共著、金融財政事情研究会)

 

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税務研究会では、会計事務所の事業引継ぎ(譲渡)を検討している税理士の方を対象に、全国各地で個別勉強会・相談会を開催しております。

個別勉強会・相談会の参加者から寄せられた質問の一部をご紹介いたします。

 


 税理士事務所をM&Aで譲渡する際、「顧問先をうまく引き継げなかった」という事態だけは避けたいです。円滑に引き継ぎを進めるために、気を付けるべきポイントはありますか?

 

 

 

税理士事務所のM&A において、顧問先の離脱を最小限に抑えるためには、計画的で丁寧な引き継ぎが不可欠です。特に小規模事務所の場合、旧所長が一定期間(目安として約1 年)業務に関与し、「これまでと同じ体制でサポートを受けられる」という安心感を顧問先に提供することが重要です。この“継続性の担保” が、信頼維持の鍵となります。

 

また、顧問先にとっては“担当者が変わらないこと” も大きな安心材料となり、契約継続率の向上に直結します。そのため、従業員の雇用を安定的に維持するための配慮も欠かせません。これらのことを含めて、譲渡後の体制について、譲渡先とともに、顧問先に丁寧に説明し、「新体制でも安心して任せられる」 と感じてもらうことが重要です。

 

税務研究会では、ご依頼者様の個別事業にあわせた、「顧問先の離脱を最小限に抑えるための対応策」についても、必要なタイミングで情報提供を行いながら、しっかりとサポートいたします。どうぞ安心してご相談ください。

 

 

 

 


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