[解説ニュース]
土地区画整理事業の施行区域内にある宅地の相続税評価額
〈解説〉
税理士法人タクトコンサルティング(芦沢 亮介/公認会計士・税理士)
[関連解説]
1.土地区画整理事業とは
土地区画整理事業とは、都市計画区域内の土地について、公共施設(道路、公園等)を整備改善し、土地の区画を整え宅地の利用の増進を図るため、都道府県・市町村・土地区画整理組合などが、土地区画整理法に従って施行する事業をいいます。その事業では地権者からその権利に応じて少しずつ土地を提供してもらい、この土地を道路等の公共用地に充てる他、その一部を売却して事業資金の一部に充てることになります。地権者においては、その事業後の宅地地積は従前に比べて小さくなりますが、道路や公園等の公共施設が整備され、土地の区画が整うことにより、利用価値の高い宅地を得ることができます。そして、事業の施工期間は10数年~と長期間に渡ることが多く、進捗状況に応じて宅地の評価方法が異なります。
2.土地区画整理事業の大まかな流れ
3.土地区画整理事業の施行区域内にある宅地の評価
【2.①の段階の相続税評価の方法】
土地区画整理事業の計画を策定し、換地設計(当事業前の土地(従前の宅地)に対して、どのような換地を定めたらよいかの計算をして図面に割込み、換地の案(換地図)を作成すること)が行われる段階では、宅地は「従前の宅地」の価額により評価します。
【2.②の段階の相続税評価の方法】
施行区域内の地権者が新しく割り当てられる土地を「換地」と言います。工事完了後に地区内のすべての換地を、その位置形状に基づいて登記する行政処分を「換地処分」といいます(2.③④の段階)。しかし、施行区域の土地は広いため場所によって工事の完了時期は大きく異なります。よって、先に工事が終わった土地の使用を目的として、換地処分を行う前に「仮に」換地を指定することを「仮換地の指定」と言います。仮換地の指定により、換地設計に基づいて新しく使える仮換地の位置・形状・地積が指定されます。
仮換地の指定が行われた宅地は、状況によって相続税評価の方法が異なります。❶仮換地の使用収益が開始されている場合は、「仮換地」の価額で評価します。❷仮換地の造成工事が施行中であり使用収益が開始されていない場合は、課税時期から工事が完了するまでの期間が1年以内であれば上記の「仮換地」の価額で評価しますが、その期間が1年を超えると見込まれる場合には、仮換地の評価額の100分の95相当額により評価します。❸造成工事が未着手であり、かつ、土地区画整理法第99条第2項の規定により仮換地について使用又は収益を開始する日を別に定めるとされているため、その仮換地について使用又は収益を開始することができない場合には、「従前の宅地」の価額で評価することになります(財基通24-2)。
【2.③の段階の相続税評価の方法】
全体の工事が終わったら確定測量を行い、換地計画(事業の施行者が換地処分を行う場合に、従前の宅地が整理後どのような換地になるのかを定める計画をいう。)を定めて換地の権利関係を確定し、従前の宅地と換地の価格差を調整するための清算金の額を定めます。換地処分により徴収又は交付されることとなる清算金のうち、課税時期において確実と見込まれるものがあるときには、その金額を評価上考慮して、徴収されるものは「仮換地の価額」から減算し、交付されるものは加算して評価します(国税庁質疑応答事例「土地区画整理事業施行中の宅地の評価」)。
【2.④の段階の相続税評価の方法】
知事が換地処分の公告を行うことで土地区画整理事業に係る債権債務関係が確定し、仮換地に対する権利関係は換地へ移ります。この段階では宅地は「換地」の価額で評価することになります。
【その他の評価方法】
上記の評価方法を一律に適用することが適当ではない状況がある場合には、税務署に対して個別評価申請を行って評価するものとされており、評価対象地の財産評価基準書(路線価図等)に、個別評価である旨が記載されています。但し、個別評価の申請先は個別評価を行う評定担当税務署であり、納税地を所轄する税務署ではない場合もあります。
税理士法人タクトコンサルティング 「TACTニュース」(2020/06/11)より転載