「会計事務所・税理士事務所のM&Aの特徴や留意点」とは? ~代表先生の影響度は?従業員(キーマン)の退職の可能性は?M&Aスキームは?~

[業界別・業種別 M&Aのポイント]

第6回:「会計事務所・税理士事務所のM&Aの特徴や留意点」とは?

~代表先生の影響度は?従業員(キーマン)の退職の可能性は?M&Aスキームは?~

 

〈解説〉

公認会計士・中小企業診断士  氏家洋輔

 

 

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Q、会計事務所・税理士事務所のM&Aを検討していますが、会計事務所・税理士事務所M&Aの特徴や留意点はありますか?


会計事務所は他業界と比較して、個人の公認会計士・税理士の影響力が大きい業界であるという特徴があります。大手や中堅の会計事務所であれば、ある程度事務所の名前で仕事の依頼が入ることもありますが、それでも〇〇先生にお願いしたいというような依頼も少なくありません。個人の会計事務所であれば、なおさら代表の先生の影響度は大きいです。そのため、会計事務所のM&Aを検討する場合、代表の先生の影響度について把握する必要があります。

 

 

M&Aの成立後、代表の先生による業務の継続の有無は、今後の業績に重要な影響を与えることが多いです。そのため、代表の先生の業務の継続の意思を確認し、継続しない場合は引継ぎを十分にしてもらう等の対策が必要となります。

 

代表の先生の影響度を把握するには、対顧客の観点と対業務の観点で検討しましょう。

 

対顧客では、代表の先生がどの程度の頻度で顧客を訪問していたか、どのような顧客満足につながる業務を提供していたかを確認しましょう。訪問頻度が高ければ、代表の先生の影響度は大きい可能性が高く、また税務申告等の定型業務のみならず、コンサルティング業務を行っている場合にも、影響度が高いと言えるでしょう。

 

対業務では、代表の先生でしか行うことのできない業務の有無を確認する必要があります。通常は上述したようなコンサルティング業務がそれにあたると思います。

 

 

また、従業員の習熟度についても確認しましょう。人手不足の会計業界ですので、人手不足解消のため従業員が多い事務所を前提にM&Aを検討することがあると思いますが、従業員が多くても習熟度が低ければ、M&A実施後に教育や指導に時間がとられて本来想定していた売上・利益を確保することが難しくなります。そのため、習熟度は事前に確認しておきましょう。

 

さらに、従業員の作成した申告書等をチェック・指導ができる人物や1人で業務をこなせる人物(キーマン)を把握しましょう。キーマンがM&Aにより退職する可能性を確認し、退職しないように検討することが必要となります。

 

 

会計事務所の特徴として、他の業界と比較した場合に粉飾等の会計操作が少ないことが挙げられます。公認会計士や税理士は会計の専門家として高い倫理観をもって業務を行っているため、事務所の決算についても会計操作をすることは少ないでしょう。

 

 

組織の特徴として会計事務所や税理士法人は株式会社ではないため、M&Aのスキームが株式会社とは異なります。

 

会計事務所の場合、株式会社のように株の譲渡ではなく、個人事業主からの経営権の取得となります。スキームは事業譲渡によって行われます。売手側の会計事務所では所長は譲渡所得となります。

 

税理士法人の場合は、持分譲渡、合併、事業譲渡のスキームによりM&Aを行います。

 

持分譲渡の場合は、個人同士の譲渡となり、かつ税理士同士でしか譲渡を行うことができません。そのため、買手側の税理士に持分を譲り受けるための十分な資力が必要となります。

 

合併の場合は、売手側の税理士法人を吸収合併し、その対価として現金を支払います。税理士法人によるM&Aでは最も一般的な手法と言えます。

 

事業譲渡は、必要な事業(税理士法人のM&Aの場合は通常は全ての事業)のみを切り出して譲渡する方法です。税理士法人になると、契約関係も多くなり事業譲渡は手続きが煩雑になることが多いこともあり、合併を選択する事が一般的となっています。

 

 

会計事務所のM&Aを検討する場合は、売手側事務所の代表の先生による業務の継続の有無、影響度を把握しましょう。また、株式会社ではないことから一般的に行われる株式譲渡以外でのスキームとなります。公認会計士や税理士の先生とは言え、M&Aには不慣れな場合もありますので、M&Aを検討する場合は、M&Aの経験豊富な専門家に相談することをお勧めします。