なぜ「会社を買う」のか~買う側の理由、売る側の理由~[わかりやすい‼ はじめて学ぶM&A  誌上セミナー] 

[わかりやすい‼ はじめて学ぶM&A 誌上セミナー]  

第1回:なぜ「会社を買う」のか

~買う側の理由、売る側の理由~

 

〈解説〉

公認会計士・税理士 清水寛司

 

 

皆さんにとって「会社を買う」ことは身近でしょうか。野菜や果物の購入と異なり、多くの方にとって身近ではない分野ですよね。M&Aという言葉だけが先行し、その中身について詳しく知っている方は決して多くはありません。そこで今回は「会社を買う」ことの第一歩として、「なぜ会社を買うのか」をざっくりと簡潔に見ていきましょう。

 

 

▷第2回:どのようにM&Aを行うのか~株式の売買(相対取引、TOB、第三者割当増資)、合併、事業譲渡、会社分割、株式交換・株式移転~

▷第3回:M&A手法の選び方~必要資金、事務手続の煩雑さ、買収リスクを伴うか~

▷第4回:M&Aの流れ①(計画段階)~M&Aの流れ(全体像、戦略は明確に、ターゲット会社を見つけよう)~

 

 

 

 なぜ「会社を買う」のか


実は、会社や事業の売買は盛んに行われており、多くの人が様々な思惑で会社を購入・売却します。代表的な理由を見てみましょう。

 

 

<買う側の理由>

海外進出を狙って、海外で知見を有する会社に投資する

●規模の拡大・効率化を目指して、同業他社を買収する

●新しい分野に進出するため、ノウハウを持つ別会社を買収する

●環境の変化に対応するため、新しい会社に投資する

 

 

<売る側の理由>

●不採算事業から撤退する

●事業のスリム化を行うことで、本業に集中する

●後継者不在のため、従業員の生活を保障するべく売却する

 

 

まず会社を買う側ですが、海外進出・規模拡大・新分野進出・環境変化対応と、どの理由にせよ長い時間をかければ自社で達成することができる(かもしれない)理由ですね。まず会社が目指す理想があって、その理想を求める1つの手段として「会社を買う」ことがあるのです。

 

会社が通常の営業活動の中で原材料や労働力を市場から調達するのと同様に、組織を市場から調達するイメージです。そう考えると、理想を達成するための手段は多いに越したことはないですし、経営の選択肢の1つとして「会社を買う」ことが出てくるのです。

 

 

そして、会社を売る側にも相応の理由があります。不採算事業であったり、採算事業であっても本業に集中するために切り離したり、後継者問題を抱えていたりです。よく「選択と集中」といわれますが、会社全体としてこのビジネスを持っている意義が薄いと判断する場合、「売却する」という判断になるのです。

 

 

会社の買収というとハゲタカのような敵対的買収を思い浮かべる方も多いですが、ほとんどの場合は友好的に買収が進みます。

 

ある企業にとっては「売りたい」でも、別の企業にとっては「買う価値のある」事業であることは往々にしてあります。野菜を買うときに八百屋さんの「売りたい」と私たちの「買いたい」がマッチするように、会社の買収においても「売りたい」と「買いたい」はマッチするのです。

 

 

 

 

[Point]

「会社を買う」ことは、会社が目指す理想を達成するための1つの手段でしかない!

 

 

 

 

≪Column:M&Aとは??≫


ここまで「会社を買う」という表現を使ってきましたが、専門的には企業や事業の「M&A(Mergers and Acquisitions:合併と買収)」と言います。Mergersは複数企業が1つになる合併、Acquisitionsは他の企業の買収を表しています。

 

M&Aの対象は「組織」ですので、企業だけでなく1つの「事業」も対象になります。例えばある会社が食品事業とペットフード事業を展開しており、ペットフード事業だけを売ることもあり得ます。ざっくりお伝えすると、M&Aは「ビジネスを行う組織を売買すること」と押さえておきましょう。