[解説ニュース]

店舗兼住宅を譲渡した場合の居住用財産の3,000万円控除と事業用資産の買換え特例の併用

 

〈解説〉

税理士法人タクトコンサルティング(山崎 信義/税理士)

 

【問】

甲さんは、令和2年1月に東京都大田区内に所有する店舗兼自宅の建物とその敷地(それぞれの所有期間は10年超)を、一括して上場会社の㈱乙に譲渡しました。甲さんは譲渡の直前までその建物と敷地を店舗及び自宅として使用していました。甲さんは、その譲渡代金により令和2年中に品川区に所有する土地上の上に貸家と自宅を建築する予定です。

 

甲さんは、譲渡した資産についてそれぞれの特例の適用要件を満たしていることから、自宅とその敷地部分の譲渡については居住用財産を譲渡した場合の譲渡所得の3,000万円控除の特例(租税特別措置法(措法)35条。以下「3,000万円控除」)の適用を受け,店舗とその敷地部分の譲渡については,事業用資産の買換え特例(措法37条)の適用を受けようと考えています。甲さんのように、一つの不動産の譲渡について事業用資産の買換え特例の適用を受ける場合に、3,000万円控除の適用を受けることが認められるのでしょうか。

 

 

【回答】

1.結論


一つの資産の譲渡について3,000万円控除と他の特例との重複適用はできませんが、甲さんの場合は店舗兼自宅と敷地の譲渡であり、店舗(事業用)部分の譲渡についてのみ事業用資産の買換え特例の適用を受けることから、買換え特例の適用を受ける場合であっても、自宅(居住用)部分の譲渡については、その適用要件を満たす限り、3,000万円控除の適用が認められます(措法通達35-1)。

 

2.解説


(1)3,000万円控除と他の特例との適用関係

個人が3,000万円控除の適用対象となる資産を譲渡した場合において、その譲渡が固定資産の交換の特例(所得税法58条)や事業用資産の買換え特例など特例(以下「他の特例」という。)の適用対象となり得るときがあります。その場合の特例の適用について、措法通達35-1の解説では次の通りの考え方が示されています。

 

①3,000万円控除の適用要件を満たしている資産の譲渡については、3,000万円控除と他の特例とを重複して適用することはできない。

 

②店舗兼自宅のように、3,000万円控除の適用対象となる部分(居住用部分)と適用対象とならない部分(非居住用部分)がある資産を譲渡する場合には、その資産を居住用部分と非居住用部分に区分し、非居住用部分の譲渡についてのみ「他の特例」の適用を受け、居住用部分の譲渡については3,000万円控除の適用を受けることができる。

 

③②の場合において、譲渡者が現に(つまり譲渡の直前まで)居住の用に供している資産を譲渡するときは、その譲渡時の現況により3,000万円控除の適用対象となる居住用部分と適用対象とならない非居住用部分とに区分する。

 

(2)3,000万円控除と事業用資産の買換え特例の適用

事業用資産の買換え特例は事業の用に供される資産の譲渡についてのみ適用され、3,000万円控除は、譲渡者が居住の用に供される資産についてのみ適用されることから、事業の用に供されている資産の譲渡について3,000万円控除は適用されません。このため、事業用資産の買換え特例と3,000万円控除とは競合せず、(1)①のような特例の重複適用が問題となることはありません。

 

また、店舗兼自宅である家屋とその敷地の譲渡において、事業用部分の譲渡につき事業用資産の買換え特例の適用を受け、居住用部分の譲渡につき3,000万円控除の適用を受ける場合は、(1)②の通り適用対象部分が異なる2つの資産([店舗とその敷地]と[自宅とその敷地])を、(1)③の通りに譲渡時の現況で事業用と居住用に区分の上、それぞれ譲渡して特例の適用を受けたとみることから、特例の重複適用には該当しません。

 

(3)本件へのあてはめ

ご質問の場合、譲渡者の甲さんは、店舗兼自宅として譲渡の直前まで事業の用及び居住の用に供されていた建物とその敷地を譲渡しています。この場合、①事業用資産の買換え特例は、店舗兼自宅のうち事業の用に供されていた部分とその敷地の譲渡についてのみ適用される一方、②3,000万円控除は、店舗兼自宅のうち譲渡者の甲さんが居住の用に供していた部分とその敷地の譲渡についてのみ適用されます(上記(2)参照)。よって3,000万円控除と事業用資産の買換え特例との間で競合関係が生じることがないので、甲さんが店舗併用住宅のうち事業用の部分について事業用資産の買換え特例の適用を受ける場合であっても、その居住用の部分については3,000万円控除の適用が認められます。

 

 

 

 

 

 

 

税理士法人タクトコンサルティング 「TACTニュース」(2020/05/08)より転載

新型コロナウイルス感染症に対する企業の意識調査(2020年4月公開分)

 

 

[関連情報]

■「M&Aの検討段階における新型コロナウイルス等による影響」とは?

■「新型コロナ対策融資と特例リスケ」 ~事業再生の専門家の観点から~

■「超速報!新型コロナウイルス対策税制」

■「コロナ対応としての中小企業経営の留意点」 ~コロナとその先へ~

 

 

 

◇栃木県「新型コロナウイルス感染症に対する企業の意識調査」(2020年3月)

県内企業の77.8%がマイナスの影響
~ 「運輸・倉庫」「製造」「小売」などで高水準 ~

※詳細はこちら

 

◇長崎県「新型コロナウイルス感染症に対する企業の意識調査」(2020年3月)

企業の77.7%で「業績にマイナス」
~1カ月間でさらに悪化~

※詳細はこちら

 

◇静岡県「新型コロナウイルス感染症に対する企業の意識調査」(2020年3月)

新型コロナウイルス、企業の81.1%で「業績でマイナスの影響」
~ 企業の1.8%で「業績でプラスの影響」 ~

※詳細はこちら

 

◇愛知県「新型コロナウイルス感染症に対する企業の意識調査」(2020年3月)

「マイナスの影響」82.3%、全国を2ポイント上回る
~ 前回調査から15.6ポイントの大幅な増加 ~

※詳細はこちら

 

◇山形県「新型コロナウイルス感染症に対する企業の意識調査」(2020年3月)

新型コロナウイルス、県内企業の83.5%で「業績にマイナス」
~ 幅広い業種で脅威となるも、一部業種では業績にプラスの影響 ~

※詳細はこちら

 

◇熊本県「新型コロナウイルス感染症に対する企業の意識調査」(2020年3月)

新型コロナウイルス、企業の77.5%で「業績にマイナス」
~ 幅広い業種・業態で脅威となり、「既にマイナス」が4割を超える ~

※詳細はこちら

 

◇長野県「新型コロナウイルス感染症に対する企業の意識調査」(2020年3月)

県内企業の8割以上が業績に「マイナスの影響」
~前月から15ポイント増加、「中小企業」の増加が目立つ~

※詳細はこちら

 

◇近畿地方「新型コロナウイルス感染症に対する企業の意識調査」(2020年3月)

新型コロナウイルス、企業の82.9%で「業績にマイナス」
~ 幅広い業種で脅威となるも、一部業種では業績にプラスの影響も ~

※詳細はこちら

 

◇茨城県「新型コロナウイルス感染症に対する企業の意識調査」(2020年3月)

県内企業の約8割で「業績にマイナスの影響」
~「マイナスの影響」は『サービス』が最も高く94.7%~

※詳細はこちら

 

◇北海道「新型コロナウイルス感染症に対する企業の意識調査」(2020年3月)

新型コロナウイルス、企業の78.1%で「業績にマイナス」
~ 前回調査の2月から19.9ポイント増加 ~

※詳細はこちら

 

◇四国地区「新型コロナウイルス感染症に対する企業の意識調査」(2020年3月)

新型コロナウイルス感染症、四国企業の業績への影響が拡大
~四国企業の約8割が業績にマイナスの影響を見込む~

※詳細はこちら

 

◇兵庫県「新型コロナウイルス感染症に対する企業の意識調査」(2020年3月)

企業の81.6%が業績に「マイナスの影響」
~ 全業界で「既にマイナスの影響」の割合が増加 ~

※詳細はこちら

 

◇神奈川県「新型コロナウイルス感染症に対する企業の意識調査」(2020年3月)

新型コロナ、県内企業の8割で「業績にマイナス」
~ 「マイナスの影響」、業種別では「運輸・倉庫」がトップ~

※詳細はこちら

 

◇山梨県「新型コロナウイルス感染症に対する企業の意識調査」(2020年3月)

新型コロナウイルス、企業の85.6%で「業績にマイナス」
~ 今後マイナス影響を見込む業界「製造」が5割超で最多 ~

※詳細はこちら

 

◇九州地方「新型コロナウイルス感染症に対する企業の意識調査」(2020年3月)

新型コロナウイルス、企業の78.1%で「業績にマイナス」
~幅広い業種で脅威となり、3月28・29日には88.2%を記録~

※詳細はこちら

 

◇大分県「新型コロナウイルス感染症に対する企業の意識調査」(2020年3月)

大分県企業の85.9%で「業績にマイナス」
~1カ月間でさらに悪化~

※詳細はこちら

 

 

 

 

 

 

情報提供元(出所):株式会社帝国データバンク

[M&A案件情報(譲渡案件)](2020年4月28日)

-以下のM&A案件(4件)を掲載しております-

 

●好立地で複数箇所運営する宿泊業者

[業種:宿泊業/所在地:関東地方]

●特定の国への送客に特化した旅行会社

[業種:旅行業、旅行業者代理業/所在地:関東地方]

●特定領域の損害保険を扱う保険会社

[業種:保険業/所在地:関東地方]

●一貫生産で量産を可能とする薄型・精密板金加工業

[業種:製缶板金業/所在地:関東地方]

 

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案件No.SS006059
好立地で複数箇所運営する宿泊業者

 

 

(業種分類)ホテル・旅館業

(業種)宿泊業

(所在地)関東地方

(直近売上高)1~5億

(従業員数)50~100名

(譲渡スキーム)株式譲渡

(事業概要国内にて複数の宿泊施設を運営

 

〔特徴・強み〕

◇好立地で複数箇所、所有直営方式で運営
◇無借金で財務内容健全、業績拡大中
◇インバウンドだけに頼らない顧客構成

 

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案件No.SS006054
特定の国への送客に特化した旅行会社

 

 

(業種分類)商社・卸・代理店

(業種)旅行業、旅行業者代理業

(所在地)関東地方

(直近売上高)1~5億

(従業員数)10名以下

(譲渡スキーム)株式譲渡

(事業概要)業務渡航専門の旅行会社。

 

〔特徴・強み〕

◇業歴が長く、現地ホテル等との関係良好
◇リピート顧客多数
◇有利子負債なく、財務内容は極めて健全

 

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案件No.SS006022
特定領域の損害保険を扱う保険会社

 

(業種分類)金融・リース

(業種)保険業

(所在地)関東地方

(直近売上高)10~50億

(従業員数)10~50名

(譲渡スキーム)株式譲渡

(事業概要)業界中堅の保険会社

 

〔特徴・強み〕

◇新商品導入により増収増益見込み
◇自社開発の保険商品に強みあり

 

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案件No.SS006009
一貫生産で量産を可能とする薄型・精密板金加工業

 

(業種分類)製造業

(業種)製缶板金業

(所在地)関東地方

(直近売上高)1億以下

(従業員数)10名以下

(譲渡スキーム)株式譲渡

(事業概要)板金加工業

 

〔特徴・強み〕

◇板金加工は熟練工により設計から組立、検査まで一貫生産に対応。
◇短納期・低コストで量産を実現できる。
◇ダクト製作に強みあり。豊富な製作実績を有する。
◇保有工場の敷地面積は約800㎡で大型板金にも対応できる。

 

-案件に関するお問合せ・ご相談は、このページ文末の「お問合せ・ご相談」ボタンより-


情報提供会社:株式会社ストライク

 

 

 

 

【免責事項】

・掲載情報は、内容及び正確さに細心の注意をはらい、万全を期しておりますが、人為的なミスや機械的なミス、調査過程におけるミスなどで誤りがある可能性があります。税務研究会及び情報提供会社は、当該情報に基づいて被ったいかなる損害についても一切の責任を負うものではありません。

・掲載情報は公開日時点の情報になります。既に案件が特定の対象会社と交渉に入っている場合や成約している場合もございます。

 

 

 

 

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[税理士のための中小企業M&Aコンサルティング実務]

第4回:M&A における株式評価方法と中小企業のM&A における株式評価方法

~中小企業M&Aで最も用いられている仲介会社方式とは?~

 

〈解説〉

公認会計士・税理士 宮口徹

 


Q、中小企業のM&A において用いられる株式評価方法を教えてください。

 

A、時価純資産価額に正常営業利益の何倍かの営業権(のれん)を加算する、いわゆる仲介会社方式が主流となっています。

 

 

 

図表は、非上場企業に限定せず、M&A における企業価値の算定手法を概観したものですが、事業からもたらされる利益ないしキャッシュフローから事業価値を算定するインカムアプローチ、事業が有するストックに着目するアセットアプローチ及び株式市場から事業の価値を推定計算するマーケットアプローチに大別されます。

 

中小企業の評価で現状、最も用いられている手法が時価純資産価額に、年買法により算定した「営業権」(「のれん」とも言います)の評価額を加算する方式ですが、上記図表の整理では①のインカムアプローチと②のアセットアプローチの折衷法という位置づけとなります。

 

M&A 専門の仲介会社が幅広く用いることにより普及したため、最近は「仲介会社方式」とも呼ぶようであり、企業の収益面と資産面をバランスよく評価に織り込める点が優れており、また投資額をおよそ何年で回収できるかという経営者の思考に非常にマッチする方式であるため広く普及したものと思われます。

 

ただし、年買法による営業権はあくまで過去の利益に基づき算定されるため、利益が安定しない会社や将来の黒字化に向けて赤字が継続しているような会社の評価には適さない点は押さえておく必要があります。

 

この点、企業の価値は事業運営から将来もたらされるキャッシュフローの総和であるべきであることから、理論的にはDCF 法(ディスカウント・キャッシュフロー法)が最も優れていますが、同手法を採用する前提として将来の事業計画が客観的な根拠に基づき策定されている必要があるため、事業承継目的の中小企業のM&A ではほとんど用いられていないのが実状です。

 

また、マーケットアプローチについては評価対象が上場企業であれば、自社の株価は最も尊重されるべき指標となりますが、非上場企業については業種や規模が類似する類似会社を選定することが通常は難しいため、こちらもまず用いられません。

 

よって、中小企業のM&A 実務においては仲介会社方式をマスターすればこと足りることになります。M&A におけるバリュエーションなどと言うとDCF法やEV/EBITDA 倍率などと専門的な用語が飛び交い、税理士にとっては縁遠い分野と思うかもしれませんが、それは上場企業や投資ファンドなどの世界の話であり、一般的な非上場企業のM&A の局面においては意外と簡便的な手法により対価が計算されています。

 

 

 

 

(「税理士のための中小企業M&Aコンサルティング実務」より)

 

[解説ニュース]

相続税法における養子の取扱い

 

〈解説〉

税理士法人タクトコンサルティング(宮田 房枝/税理士)

 

 

[関連解説]

■民法における養子の取扱い

■特別縁故者に対する相続財産の分与と相続税

 

1. はじめに


3月23日の記事では、「民法における養子の取扱い」をご紹介しました。民法上、養親が死亡した場合には、その養子縁組が普通養子縁組であったとしても特別養子縁組であったとしても、養子はその養親の相続人(子)として取り扱われ、その相続分は実子と変わりません。

 

一方、税務上は、むやみに養子の数を増やすことで公平性が損なわれること等があるため、普通養子縁組の場合には一定の制限規定が設けられています(下記2.参照)。また、被相続人の直系卑属(孫やひ孫)が養子である場合には、その者の相続税額については、原則として、相続税額が2割加算されます(下記3.参照)。本稿では、これらの取扱いをご紹介します。

 

 

2. 法定相続人の数


(1) 法定相続人の数が影響する計算項目

相続税の計算上、次の項目については、法定相続人の数を基に行います。

 

(2) 普通養子縁組による養子がいる場合の数の制限

 

上記(1)の法定相続人の数を民法どおりにカウントすると、むやみに養子の数を増やすことで、相続税回避が可能となってしまいます。
そこで、普通養子縁組の場合には、上記(1)の計算をするときの法定相続人の数に含める被相続人の養子の数は、次のとおり、一定数に制限されています。

 

・ 実子あり→1人まで
・ 実子なし→2人まで 
ただし、養子の数を法定相続人の数に含めることで相続税の負担を不当に減少させる結果となると認められる場合、その原因となる養子の数は、上記の養子の数に含めることはできません。

(3) 実子として扱われる者

次のいずれかの者は、実子として取り扱われます(すなわち、上記(2)の数の制限は受けず、すべて法定相続人の数に含まれます)。

 

①特別養子縁組により被相続人の養子となった者
②被相続人の配偶者の実子で被相続人の養子となった者
③被相続人と配偶者との婚姻前に特別養子縁組によりその配偶者の養子となった者で、その婚姻後にその被相続人の養子となったもの
④被相続人の実子、養子又はその直系卑属が相続開始以前に死亡し、又は相続権を失ったため相続人となったその者の直系卑属

 

3. 相続税額の2割加算


(1) 相続税額の2割加算とは

相続、遺贈又は相続時精算課税贈与により財産を取得した者がその被相続人の一親等の血族(代襲相続人となったその被相続人の直系卑属を含む)及び配偶者以外の者である場合には、その者の相続税額にその相続税額の2割に相当する金額が加算されます(これを相続税額の2割加算といいます)。

(2) 養子の取扱い

被相続人の養子は、一親等の法定血族であることから、相続税額の2割加算の対象とはなりません。ただし、被相続人の養子となっている被相続人の直系卑属(孫やひ孫)は、その者が代襲相続人となっている場合を除き、相続税額の2割加算の対象になります。

(3) まとめ

相続税額の2割加算の適用対象者をまとめると、次表のとおりです。

 

 

 

 

 

 

 

税理士法人タクトコンサルティング 「TACTニュース」(2020/04/27)より転載

[M&Aニュース](2020年4月13日〜4月24日)

◇INEST<3390>、予約サービスのEPARKライフスタイルなど子会社2社を譲渡、◇アミタホールディングス<2195>、産業廃棄物リサイクルの台湾子会社「台灣阿米達」を現地社に譲渡、◇ヤマノホールディングス<7571>、和装品リサイクルショップ運営「東京山喜」の事業取得へ、◇ミズノ<8022>、スポーツ記念品・観戦グッズ製造のシャープ産業を子会社化、◇パスコ<9232>、航空測量のベルギー子会社Aerodata International Surveyを譲渡、◇APAMAN<8889>、茨城県で不動産仲介・賃貸管理のマイハウスを子会社化、◇INEST<3390>、法人向け携帯販売のアイ・ステーションを株式交換で子会社化 ほか
 
 
 
 

INEST<3390>、予約サービスのEPARKライフスタイルなど子会社2社を譲渡

2020-04-24

INESTは、旅行代理店などに対する予約サービスを手がけるEPARKライフスタイル(東京都豊島区。売上高6450万円、営業利益△5500万円、純資産△5510万円)、EPARKモール(東京都豊島区。売上高9610万円、営業利益△3億4800万円、純資産△10億円)の子会社2社の全保有株式(保有割合は90%)を、EPARKグルメ(東京都豊島区)に譲渡することを決めた。両社はいずれも先行投資がかさんで赤字となっていた。譲渡価額は非公表。譲渡予定日は2020年5月1日。

 

アミタホールディングス<2195>、産業廃棄物リサイクルの台湾子会社「台灣阿米達」を現地社に譲渡

2020-04-24

アミタホールディングスは、産業廃棄物リサイクル事業を手がける台湾子会社の台灣阿米達股份有限公司(売上高6700万円、営業利益△3700万円、純資産△5億5300万円)の全株式を、現地同業の眾保股份有限公司(Zhong Bao Co., Ltd.)に譲渡することを決めた。業績不振に伴い、台灣阿米達の設備の一部を日本国内に移設するなど事業撤退を段階的に進めてきたが、今回の全株式譲渡で一連の撤退を完了する。

台灣阿米達は2011年設立で、アミタホールディングス子会社のアミタ(東京都千代田区)が全額出資する。

譲渡価額は500万台湾ドル(約1700万円)。譲渡予定日は2020年5月。

 

ヤマノホールディングス<7571>、和装品リサイクルショップ運営「東京山喜」の事業取得へ

2020-04-24

ヤマノホールディングスは24日、東京地裁に民事再生法の適用を申請(4月20日付)した和装品リサイクルショップ運営の東京山喜(東京都江戸川区。売上高38億6000万円)の事業取得に関して検討に入ると発表した。民事再生スポンサーに関する基本合意書に締結した。今後、最終合意に向けて再生支援の方法などについて協議を進める。

東京山喜は1961年に設立し、一般家庭のたんすに埋もれた着物や帯の活用を目的とする和装品リサイクルショップの運営を主力とする。現在、直営36店舗、FC(フランチャイズ)64店舗、その他店舗12店舗の計112店舗を展開するが、近年の出店計画の失敗や競争激化で収益が悪化していたのに加え、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う臨時休業、営業時間短縮や催事中止などで、売り上げが大幅に減少し、自力再建を断念した。

ヤマノホールディングスは和装用品事業を主力事業の一つとし、全国に104店舗を展開するほか、「前楽結び着方教室」「きものクリニック」といった取り組みに力を入れている。

ヤマノは経営管理や店舗管理のノウハウを東京山喜の既存事業に導入して、事業の立て直しを進める考え。また、和装小売事業における新規顧客の獲得や販路拡大につながるとみている。

 

ミズノ<8022>、スポーツ記念品・観戦グッズ製造のシャープ産業を子会社化

2020-04-24

ミズノは、スポーツ大会やスポーツチームの記念品・観戦グッズの製造を手がけるシャープ産業(神戸市。売上高22億1000万円、営業利益1億5500万円、純資産1600万円)の全株式を取得し子会社化することを決めた。取得価額は1億3000万円。取得予定日は2020年5月29日。

シャープ産業は1965年に設立し、50年以上の業歴を持つ。ミズノは同社を傘下に取り込み、各種スポーツ競技の応援・記念グッズの販売強化のほか、記念品事業のスポーツ以外の分野への応用などを推し進める。

 

パスコ<9232>、航空測量のベルギー子会社Aerodata International Surveyを譲渡

2020-04-24

パスコは、ベルギー子会社で航空機による測量・計測業務を手がけるAerodata International Survey BV(売上高200万円、営業利益△2億4000万円、純資産100万円)の全株式を譲渡することを決めた。異業種からの参入増による業界再編や競争激化など欧州市場の環境変化を踏まえた措置。譲渡先と譲渡金額は非公表。譲渡予定日は2020年5月30日。

Aerodataは1992年に設立。パスコは2010年に同社に70%出資し、子会社化(2014年に完全子会社化)した。しかし、Aerodataの業績は低迷し、 2017年12月期には10億円を超える債務超過に陥った。

 

APAMAN<8889>、茨城県で不動産仲介・賃貸管理のマイハウスを子会社化

2020-04-24

APAMANは、不動産仲介・賃貸管理のマイハウス(茨城県守谷市)を24日付で子会社化した。マイハウスは1993年設立で、2013年に賃貸情報物件「アパマンショップ」にFC(フランチャイズ)加盟した。賃貸仲介店舗を3店舗、約2600戸の賃貸管理を手がける。取得割合、取得価額は非公表。

 

INEST<3390>、法人向け携帯販売のアイ・ステーションを株式交換で子会社化

2020-04-24

INESTは、法人向け携帯電話販売のアイ・ステーション(東京都文京区。売上高42億5000万円、営業利益8400万円、純資産3億600万円)を株式交換により完全子会社化することを決めた。INESTはスマートフォンを中心とする携帯電話やモバイル通信端末などのWeb販売(直販事業)を主力の一つとするが、携帯電話の市場成熟化が進展している。同業を傘下に取り込むことで直販事業の強化につなげる。INEST、アイ・ステーションはいずれも光通信が筆頭株主。

株式交換比率はINEST1:アイ・ステーション375で、アイ・ステーションの1株に対してINESTの375株を割り当てる。株式交換予定日は2020年8月1日。

 

INEST<3390>、ウォーターサーバーや新電力小売りのPatchを子会社化

2020-04-24

INESTは、訪問販売やテレマーケティングを手がけるPatch(東京都新宿区。売上高6億6000万円、営業利益△9700万円、純資産△2億4400万円)の全株式を取得し子会社化することを決めた。収益機会の拡充や人員の効率的な活用などが狙いという。取得価額は5億3400万円。取得予定日は2020年8月1日。

Patchは2017年に設立し、訪問販売やテレマーケティングを通じてウォーターサーバーや新電力の営業活動を法人、個人向けに行っている。INESTは光通信の持ち分法適用関連会社(持ち株比率約38%)。今回傘下に収めるPatchには光通信が37.49%を出資している。

 

タケエイ<2151>、バイオマス発電事業の市原グリーン電力を子会社化

2020-04-23

タケエイは、木質バイオマス発電事業の市原グリーン電力(千葉県市原市。売上高40億9000万円、営業利益1億6600万円、純資産29億5000万円)の株式85.1%を取得し、子会社化することを決めた。タケエイは建設廃棄物の処理や資源化を主力とす一方、近年、グループとして木質バイオマス発電を中心に再生可能エネルギー事業に力を入れている。

市原グリーン電力は2004年設立で、株主構成は三井E&Sエンジニアリング(千葉市)70.2%、三井物産14.9%、鹿島14.9%。タケエイは今回、三井E&Sエンジ、三井物産両社の保有株式を取得する。これに合わせ、木屑チップ、廃棄物固形燃料(RPF)などバイオマス発電燃料の貯蔵・販売を手がける循環資源(東京都北区。売上高9億2100万円、営業利益△2300万円、純資産8300万円)について、株式30%を三井E&Sエンジから取得し、持ち分法適用関連会社とすることにした。

三井E&Sエンジは三井E&Sホールディングス(旧三井造船)の子会社。三井E&Sホールディングスは経営再建の一環としてグループ企業の資産売却を進めている。

取得価額は市原グリーン電力、循環資源の両社合計で約53億円。この内訳は非公表。取得予定日は2020年4月30日。

 

アイスタディ<2345>、介護事業者向けASPシステム提供のケア・ダイナミクスを子会社化

2020-04-23

アイスタディは傘下企業を通じて、介護事業者向けICT(情報通信技術)の導入支援を手がけるケア・ダイナミクス(東京都港区。売上高9000万円、営業利益50万円、純資産6900万円)の全株式を取得し、子会社化することを決めた。介護事業領域に進出する足がかりとする狙い。

ケア・ダイナミクスはネクスグループの全額出資子会社。介護事業者向けASP(アプリケーションサービスプロバイダー)システム「Care Online」の提供を主力とし、400以上の導入実績を持つほか、各種介護ロボットの導入支援・販売を行っている。

アイスタディは東京大学と介護施設向けに転倒事故防止や危険行動をAI(人工知能)技術で検知するシステムの共同研究を進めている。その製品化に際し、ケア・ダイナミクスが持つ介護関連の顧客資産を有効活用できるとみている。

取得価額は7300万円。取得予定日は2020年5月1日。

 

香港投資会社のUP CAPITAL ASSET MANAGEMENT、証券業のリーディング証券をTOBで子会社化

2020-04-22

香港の機関投資家の匯升資産管理有限公司(UP CAPITAL ASSET MANAGEMENT LIMITED)は、証券業のリーディング証券(東京都中央区。営業収益13億2000万円、純資産8億8600万円)をTOB(株式公開買い付け)により子会社化すると発表した。株式の3分の2以上の取得を目指す。リーディング証券はTOBに賛同を表明している。

現在リーディング証券の株式81.66%を所有する中国系投資会社のランキャピタルマネジメント(東京都中央区)はTOBに応募する意向を示している。TOBを実施するのは、UP CAPITAL ASSET MANAGEMENTが今回の買収を目的に設立したMAJOR TREASURE HOLDINGS LIMITED(英領バージン諸島)。

UP CAPITAL ASSET MANAGEMENTは日本をアジア市場戦略の重要拠点と位置づけており、今後は香港の証券子会社のCRIC証券とリーディング証券の連携により、独自性のある金融商品の開発・提供を図る。また、プライベートバンキング部門を強化し、富裕層の顧客獲得を目指す。

TOBの買付価格は1株あたり40円。買付予定数は599万7547株で、買付予定額は2億4640万円。買付期間は2020年4月22日から5月25日。公開買い付け代理人は日本クラウド証券。決済開始日は5月28日。

 

アンドール<4640>、クボタシステムズから製造業向けパッケージソフト事業を取得

2020-04-22

アンドールは、クボタ全額出資のシステム開発会社であるクボタシステムズ(大阪市)が手がける製造業向けパッケージソフトの製品開発・販売事業を取得することを決めた。アンドールが得意とするCAD/CAM(コンピューター支援設計・製造)システムやメカトロニクス技術との親和性が高く、相乗効果を期待している。当該事業の直近売上高は2400万円。取得価額は無償。取得予定日は2020年7月1日。

 

アステラス製薬<4503>、英国創薬ベンチャーのナンナ・セラピューティクスを買収

2020-04-21

アステラス製薬は21日、英国子会社を通じて、創薬研究ベンチャーの現地ナンナ・セラピューティクス(ケンブリッジ)を買収したと発表した。19日付で全株式を1200万ポンド(約15億8000万円)で取得した。さらに今後、開発の進捗に応じて最大5750万ポンド(約75億円)を追加で旧株主に支払う取り決め(アーンアウト条項)で、買収代金は合計で約90億円となる見通し。ナンナは2012年設立で、ミトコンドリア関連疾患や加齢、免疫代謝などの分野での創薬研究を推し進めている。

アステラス製薬はナンナが持つ新規のDNAエンコード化合物ライブラリー(DELs)技術、最先端のスクリーニングプラットフォームなどを獲得することで、早期創薬研究が大幅に強化されるとしている。

 

ジェイック<7073>、キャリアアカデミーの「秋冬採用ナビ」を取得

2020-04-21

ジェイックは、学生向け就職・キャリア支援を手がけるキャリアアカデミー(東京都豊島区)が運営する就職情報サイト「秋冬採用ナビ」を取得することを決めた。「秋冬採用ナビ」はその名称の通り、大学生の就職後半期となる秋から冬の就職活動に特化。ジェイックは就職支援サービス「新卒カレッジ」を運営している。

取得価額は非公表。取得予定日は2020年4月28日。

 

大幸薬品<4574>、台湾Fortune River Biotech から「クレベリン」販売事業を取得

2020-04-20

大幸薬品は台湾子会社を通じて、感染管理事業を手がける現地Fortune River Biotech Inc.(台北市)からクレベリン販売事業(直近売上高は約1億9000万円)を取得することを決めた。「クレベリン」は大幸薬品のウイルス除去・除菌製品のブランド。台湾で同製品のWeb販売が急成長しているという。対象事業の取得価額は約5000万円。取得予定日は2020年4月末。

 

グルメ杵屋<9850>、茨城県でラーメン・中華料理など35店舗展開の雪村を子会社化

2020-04-20

グルメ杵屋は、ラーメン・中華料理店など経営の雪村(茨城県土浦市。売上高13億2500万円)とセントラルキッチン運営のゆきむら亭エフシー本部(同)の両社の全株式を取得し、20日付で子会社化した。グルメ杵屋は2018年10月に茨城県北部を中心にラーメン店などを展開する壱番亭本部(茨城県筑西市)を子会社化しており、今回の雪村のグループ入りにより関東東部地域での地盤強化につなげる。取得価額は非公表。

グルメ杵屋はうどん、そば、洋食、和食のジャンルで多様なブランドを展開している。傘下に収めた雪村は1979年に創業し、主に茨城県南部でラーメン店「ゆきむら亭」、つけ麺「吉右衛門」、中華料理「ゆきむら」、から揚げ専門店「鶏一番」などを35店舗展開する。セントラルキッチン方式による地域集中出店戦略を強みとしている。

 

TRUCK ONE<3047>、東南ア向け中古トラック販売のSUN AUTOを子会社化

2020-04-17

TRUCK-ONEは、東南アジア向けに中古トラックを販売するSUN AUTO(北九州市。売上高3億5600万円、営業利益△3100万円、純資産4億500万円)の全株式を取得し子会社化することを決めた。TRUCK-ONEが強みとする輸出用車両の仕入れとSUN AUTOが持つ東南アジアの販売網を組み合わせ、中古トラック販売の事業拡大を推し進める。取得価額は非公表。取得予定日は2020年7月3日。

TRUCK ONEは中古トラックの買取・販売を主力とする。以前はロシアやニュージーランド向けに輸出を手がけていたものの、近年は国内販売に特化していた。しかし、国内需要が縮小に向かう中、改めて海外市場開拓の機会を模索していた。傘下に収めるSUN AUTOは2004年に設立し、東南アジアに独自の販売ルートを築いている。

 

ジャパンエレベーターサービスHD<6544>、エレベーター保守管理のセイコーエレベーターを子会社化

2020-04-17

ジャパンエレベーターサービスホールディングスは、エレベーターの保守管理業務を手がけるセイコーエレベーター(東京都千代田区。売上高2億9000万円、営業利益35万3000円、純資産4680万円)の株式を追加取得し子会社化した。17日付。12.2%の持ち株比率を68.09%に引き上げた。首都圏での事業基盤強化が目的。セイコーエレベーターは1999年に設立し、首都圏を中心に800台以上を保守管理している。

取得価額は非公表。

 

INCLUSIVE<7078>、地域生活情報サイト「枚方つーしん」運営のmorondoを子会社化

2020-04-17

INCLUSIVEは、地域生活情報サイト「枚方つーしん」を運営するmorondo(大阪府枚方市)の全株式を取得し子会社化した。17日付。地域メディアネットワーク構築の一環。INCLUSIVEは同様の地域メディアに関して2016年の東海エリア「CUCURU」を手始めに、関西で「anna」、福岡で「ARNE」を、今年3月には北海道で「北海道 Likers」を傘下に取り込んでいる。

取得価額は非公表。

「枚方つーしん」は2008年にサービスを開始し、枚方市内の生活情報をインターネットを通じて発信している。INCLUSIVEは中長期的に、地域の店舗を支援するクラウドファンディングサービスや地域通貨の展開などを視野に入れている。

 

高島屋<8233>、発酵惣菜など食品子会社のフードアンドパートナーズを貝印に譲渡

2020-04-17

高島屋は、食品や食関連商品の製造・販売子会社のフードアンドパートナーズ(東京都港区。売上高4億7700万円、営業利益△1億3100万円、純資産1億6100万円)の全保有株式66.3%を共同出資相手である貝印(東京都千代田区)に譲渡することを決めた。2015年に設立以来、発酵惣菜の店舗展開のほか、おせちや中元・歳暮商材などの卸売事業に取り組んできたが、小売事業の不調が響き、赤字が続いていた。譲渡価額は4000万円。譲渡予定日は2020年5月29日。

高島屋は事業改善に向けて売場の絞り込みなどを進めてきたが、卸売主体の事業転換になお時間を要すると判断、合弁先の貝印に経営を委ねることにした。貝印は刃物(包丁、はさみなど)で知られるほか、キッチンウエア(料理道具)、ビューティーケア用品、製菓用品などの製造・販売を手がける。

 

BuySell Technologies<7685>、バンクからリユース品即時買い取りアプリ「CASH」事業を取得

2020-04-16

BuySell Technologiesは、インターネットビジネス開発・運営のバンク(東京都渋谷区)から財布、バッグ、スマートフォンなどリユース品の即時買い取りアプリ「CASH」に関する事業を取得した。BuySellは出張買い取りを中心に事業展開しているが、新たにリユース品買い取りのアプリ市場に参入する。対象事業の直近業績、取得価額などは非公表。「CASH」のサービス開始は2017年6月。

BuySellは月間2万件を超える出張訪問の査定依頼に応じている。50代以上のシニア富裕層が約75%を占め、その多くが自宅整理や遺品整理、生前整理に関するという。アプリを通じた即時買い取りをサービスメニューに加えることで、シニア層以外の顧客獲得や取り扱い商材の拡大につなげる。

 

アキレス<5142>、シューズ輸出入の香港子会社「崇徳有限公司」を譲渡

2020-04-15

アキレスは、香港子会社の崇徳有限公司(売上高6900万円、営業利益△5300万円、純資産1億5400万円)の全株式を第三者に譲渡することを決めた。崇徳は1991年設立で、中国にある傘下の広州崇徳鞋業有限公司(広東州広州市)が生産するシューズ製品の輸出入を手がけてきた。しかし、広州崇徳鞋業は労務費の高騰などで業績が低迷し、2016 年にシューズ製品の生産を終了。新規事業への転換を模索してきたが、事業継続が困難と判断した。譲渡先、譲渡価額は非公表。譲渡予定日は2020年4月下旬。

 

前田道路、535億円の特別配当を可決|都内で臨時株主総会

2020-04-14

前田道路は14日、都内で臨時株主総会を開き、総額535億円(1株あたり650円)の特別配当を実施する議案を可決した。今回の特別配当は前田建設工業によるTOB(株式公開買い付け)への対抗措置と位置づけていたが、TOBはすでに3月12日に成立し、前田建設が持ち株比率を従来の25%から51%に引き上げて前田道路を子会社化。前田建設は多額の資金流出につながる特別配当に反対の立場だったが、過半数の賛成を得た。

特別配当を受け取れる株主の基準日は3月6日。配当総額は535億7308万8400円。前田建設のTOB成立は基準日の後(決済開始日は3月19日)であるため、配当総額の4分の3にあたる約400億円が連結ベースで社外に流出することになる。

前田建設は1月21日に、持ち分法適用関連会社の前田道路に対してTOBを開始した。買付価格は1株3950円。これに対し、前田道路は対抗策として2月20日に総額535億円の特別配当を臨時株主総会に諮る計画を、さらに同27日に同業最大手のNIPPOとの資本業務提携に向けた協議開始を発表するなどTOBへの対抗姿勢を鮮明にしていた。

 

ありがとうサービス<3177>、今治デパート傘下で飲食店経営のエージーワイを子会社化

2020-04-13

ありがとうサービスは13日、今治デパート傘下で香川県、福岡県、大分県で喫茶店、レストランを経営するエージーワイ(愛媛県今治市。売上高5億9300万円、営業利益△1260万円、純資産△1830万円)の全株式を取得し子会社化したと発表した。2020年2月1日付。フードサービス事業拡大の一環。

ありがとうサービスは四国、九州でブックオフやモスバーガーなどのフランチャイジー(加盟店)事業を展開している。取得価額は非公表。

 

 
 
 

情報提供:株式会社ストライク

[税理士のための税務事例解説]

事業承継やM&Aに関する税務事例について、国税OB税理士が解説する事例研究シリーズです。

今回は、「適格合併の適否及び被合併法人の未処理欠損金の引継ぎ制限」についてです。

 

[関連解説]

■【Q&A】合併における税制適格要件について

■【Q&A】無対価合併における適格要件について

 

 

 


[質問]

A社(平成28年設立)
主たる事業:有価証券の売買・保有及び運用
株主:甲100% 平成29年に保有株式を売却して休眠中

 

B社(平成31年設立)
主たる事業:有価証券の売買・保有及び運用の他コンサルティング
株主:甲50%、甲の長男乙:25%、甲の長女丙:25%
なお、議決権はすべて甲が保有している。

 

A社の株式のうち25%ずつを甲から乙と丙に譲渡し、A社の株主構成をB社と同じにしたうえで、B社がA社を吸収合併します。

 

この場合、適格合併に該当し被合併法人A社のもつ繰越欠損金は合併法人B社に引き継ぐことができるものと考えていますがよいでしょうか。この場合、A社が休眠中であることは適格合併の判定に影響を与えますか。

 

[回答]

1. 被合併法人と合併法人との間に同一の者(個人株主である場合には、親族を含むによる完全支配関係があり、かつ、合併後もその同一の者による完全支配関係が継続することが見込まれている場合の合併は、適格合併に該当することとされています(法2十二の八イ、令4の3②)。

 

ご照会事例については、親族間の株式の移動があったとしても、同一の者における完全支配関係に影響を及ぼすものではありません。したがって、A社及びB社のいずれも同一の者(甲一族)による完全支配関係がありますので、適格合併に該当することになります。

 

なお、被合併法人(A社)が休眠中であることのみをもって適格合併を否定するものではないと考えますが、その合併に経済的合理性がみいだせず、かつ、何らかの租税回避のみを目的としたものであるとの事実認定がなされた場合には、組織再編成に係る行為計算否認規定(法132の2)の適用を受ける可能性は否定できないと思われます。

 

 

2. 適格合併が行われた場合において、被合併法人に未処理欠損金があるときは、その未処理欠損金は、合併法人の合併事業年度前の各事業年度に生じた欠損金額とみなして合併事業年度以後の各事業年度において繰越控除することができることとされています(法57①②)。

 

ただし、被合併法人の未処理欠損金額には、被合併法人と合併法人との間に、その合併法人の適格合併の日属する事業年度開始の日の5年前又は被合併法人の設立の日若しくは合併法人の設立の日のうち最も遅い日から継続して支配関係がある場合のいずれにも該当しない場合には、引継ぎについての制限がなされています(法57③)。

 

ご照会事例については、合併法人(B社)の設立の日(H31)から継続して同一の者による完全支配関係がありますので、未処分欠損金の引継ぎ制限規定に該当しないことになりますので、本件合併が適格合併に該当する限りにおいて、貴見のとおり、A社の繰越欠損金の額の引継ぎは認められることになります。

 

 

 

 

税理士懇話会事例データベースより

(2020年2月12日回答)

 

 

 

 

[ご注意]

掲載情報は、解説作成時点の情報です。また、例示された質問のみを前提とした解説となります。類似する全ての事案に当てはまるものではございません。個々の事案につきましては、ご自身の判断と責任のもとで適法性・有用性を考慮してご利用いただくようお願い申し上げます。

 

 

 

 


「休廃業・解散」動向調査(2020年3月公開分)

 

 

 

◇福井県「休廃業・解散」動向調査(2019年)

「休廃業・解散」は327件で2年ぶりに増加
~「倒産」と「休廃業・解散」がともに増加したのは2012年以来、7年ぶり~

※詳細はこちら

 

◇宮崎県「休廃業・解散」動向調査(2019年)

「休廃業・解散」 件数は「倒産」 件数の12.6倍
~「休廃業・解散」事業者の売上高合計は約139億円~

※詳細はこちら

 

◇熊本県「休廃業・解散」動向調査(2019年)

「休廃業・解散」 3年ぶりに増加へ転じる、前年比21.8%増の347件
~ 「休廃業」は252件、過去10年間で3番目の水準 ~

※詳細はこちら

 

◇滋賀県「休廃業・解散」動向調査(2019年)

「休廃業・解散」は183件で5年ぶりに増加
~業歴50年以上の企業が4割、地区では大津が最多~

※詳細はこちら

 

◇奈良県「休廃業・解散」動向調査(2019年)

「休廃業・解散」は233件、2年連続で減少
~ 2009年以降で「休廃業」は最少、「解散」は最多となる ~

※詳細はこちら

 

◇富山県「休廃業・解散」動向調査(2019年)

「休廃業・解散」の発生倍率は全国5位の高水準
~ 「倒産」と「休廃業・解散」ともに前年比増加 ~

※詳細はこちら

 

◇新潟県「休廃業・解散」動向調査(2019年)

「休廃業」 「解散」ともに前年比減少
~「休廃業・解散」の合計は632件、3年連続の減少~

※詳細はこちら

 

◇兵庫県「休廃業・解散」動向調査(2019年)

2019年の休廃業・解散は880件
~ 企業倒産件数の1.8倍 ~

※詳細はこちら

 

 

 

 

 

 

情報提供元(出所):株式会社帝国データバンク

[伊藤俊一先生が伝授する!税理士のための中小企業M&Aの実践スキームのポイント]

⑤M&A関連費用の取扱い

 

〈解説〉

税理士  伊藤俊一

 


[関連解説]

■【Q&A】非上場株式の譲渡に当たり交渉支援、契約内容の検討等を依頼した弁護士費用等について

■【Q&A】M&Aに伴う手数料の処理

 

 

 

中小零細企業M&A関連費用の取扱いについて基本的な考え方・裁決については下記の通り考えられます。

 

 

コンサルティング費用は株式取得価額に算入します。損金算入できたものに関しては売主側が費用を負担していた場合、当該負担金額を譲渡所得の計算上、取得費に含めることが可能です。

 

 

買主側の原則的な処理は下記のとおりです。

 

〇着手金

・・・損金算入

〇基本合意報酬及びDD等報酬

・・・案件が成約:取得価額に加算

・・・案件不成約:損金算入

〇仲介手数料(仲介会社に支払う成功報酬等)

・・・取得価額に加算

 

 

根拠条文等は、法人税法施行令第119条と法人税基本通達2-3-5となります[注1]。

 


(法人税法施行令第119条第1項)

(有価証券の取得価額)

第百十九条 内国法人が有価証券の取得をした場合には、その取得価額は、次の各号に掲げる有価証券の区分に応じ当該各号に定める金額とする。

一 購入した有価証券(法第六十一条の四第三項(有価証券の空売り等に係る利益相当額又は損失相当額の益金又は損金算入等)又は第六十一条の五第三項(デリバティブ取引に係る利益相当額又は損失相当額の益金又は損金算入等)の規定の適用があるものを除く。) その購入の代価(購入手数料その他その有価証券の購入のために要した費用がある場合には、その費用の額を加算した金額)

 

(法人税基本通達2-3-5)

(有価証券の購入のための付随費用)

2-3-5 令第119条第1項第1号《購入した有価証券の取得価額》に規定する「その他その有価証券の購入のために要した費用」には、有価証券を取得するために要した通信費、名義書換料の額を含めないことができる。

 外国有価証券の取得に際して徴収される有価証券取得税その他これに類する税についても、同様とする。(平12年課法2-7「四」により追加、平15年課法2-7「八」により改正

 


 

 

当該事案に係る裁決です。

 


 

【株式交換契約を含む経営統合に関するアドバイザリー業務につき取得価額に含まれるとした事例】

 

 

(有価証券の取得価額/経営統合に際し支出した法律業務、財務調査業務等の手数料)

本件各支払手数料は、株式交換完全子法人の株式を取得する目的の下でその取得に関連して生じたものであり、「株式の取得をするために要した費用」に該当すると判断された事例(平成26年4月4日裁決)

 

〔裁決要旨〕

1 本件は、審査請求人が、証券会社等に対する業務委託等に係る手数料及び調査用のパチンコ器等の製造費用を損金の額に算入したことについて、原処分庁が、当該手数料は同業他社の株式を株式交換により取得するために要した費用であるから当該株式の取得価額に加算すべきであり、製造費用はその耐用年数で減価償却費を計算すべきであるなどとして、法人税の更正処分等を行ったのに対し、請求人が、当該手数料及び製造費用はいずれも損金の額に算入されるものであり、また、損金の額に算入していなかった特許権実施料(売上原価)があるから、その特許権実施料は所得金額から減算されるべきであるとして、同処分等の一部の取消しを求めた事案である。

 

2 適格株式交換により取得した株式交換完全子法人の株式の取得価額に加算すべき「株式の取得をするために要した費用」とは、実際に取得した株式について、原則として、当該株式の取得を目的としてその取得に関連して支出する一切の費用が含まれると解されるところ、この判断に当たっては、取得しようとする株式の候補が複数ある時点において、いずれの株式を取得すべきかを決定するために行う調査等に係る費用は、通常、当該取得を目的とする株式が特定されていないことから、実際に取得した株式の取得との関連性は希薄であるといえるものの、少なくとも、特定の法人の株式を取得する前提で行う調査等に係る費用は、その特定の法人の株式の取得を断念した場合を除き、当該株式の取得を目的としてその取得に関連して支出する費用というべきである。

 

3 請求人は、○○に本件法律業務を委任し、その後、○○からA社及びその子会社等に対する法的監査の結果報告及び経営統合の経営判断に対する取締役の善管注意義務等に関する意見を受けているところ、請求人は、本件法律業務を○○に委任した時点において、本件株式交換によりA社株式を取得することを目的としていたことが認められる。そして、A社及びその子会社等に対する法的監査は、経営統合に関する取引に際して重要な影響を与え得る法的問題の調査のために行われたものであることに加え、その結果が記載された法的監査報告書は、株式交換に係る株式交換比率の算定の基礎資料としても使用されている。そうすると、本件法律業務は、いずれも経営統合、すなわち、株式交換によるA社株式の取得に関連した業務であった(下線筆者)と認められる。

 

4 本件各支払手数料は、A社株式を取得する目的の下でその取得に関連して生じたものであり、その後、実際にA社株式を株式交換により取得しているのであるから、各支払手数料は、「株式の取得をするために要した費用」に当たる(下線筆者)ものである。

 

 

出典:TAINS

(TAINSコード F0-2-697)

 


 

取得価額に算入すべき金額の時期ついても問題になります。

 

 

調査課所管法人用の申告書確認表において(TAINS収録)、「別表五(一)に記載された株式の取得価額に算入すべきデューデリジェンス費用等の金額についても調整を行う必要があります。」との記載があります。

取得価額に含めるのは、M&A対象株式を購入することを意思決定した後の費用です。この前後によって取扱いが明確に変わるため、M&A対象株式購入の意思決定はいつ決裁されたかを明確に示す、エビデンスの保存が必要になってきます。最終決裁者によっても変わりますが、通常の中小企業・零細企業では取締役会議事録や役員同士での社内稟議書により、購入決定した「意思時点」を明確にしなければなりません。

 

 

では、事業譲渡スキームにおけるM&A費用等の取扱いはどうなるのでしょうか。本稿脱稿時点においては、上記に係る法文がありません。

 

事業譲渡は組織再編成の一手法のため、他の手法と比較して検証します。

 

○適格合併・適格分割型分割

・・・明文規定なし(法法62の2、法令123の3③)

○非適格再編成・事業譲受

・・・明文規定なし(法法62の8①・③)

○適格分社型分割・適格現物出資[注2]

・・・取得価額に加算(法令123の4・123の5)

 

適格分社型分割、適格現物出資において株式譲渡と同様の取扱いをされているのは当該組織再編成行為が株式譲渡に経済的実態が近似しているから、とも考えられなくもありません。それ以外に関しては上記のとおり、法文(や法令解釈通達)がないため、諸費用は損金計上できると考えられます[注3]。

 

 

なお、下記の質疑応答事例は参考になります。

 


 

【合併に伴うデューディリジェンス費用の取扱い】

 

【照会要旨】

当社は、A社を吸収合併(以下「本件合併」といいます。)することを計画しています。本件合併の実施に当たり、当社は、専門家に対して、A社の事業内容や権利義務関係の把握、企業価値の評価、合併の実行に必要な手続の把握等を内容とするいわゆるデューディリジェンスを委託しました。

このデューディリジェンスに要する費用は、本件合併により移転を受ける減価償却資産の取得価額に含めるなど資産として計上せずに、一時の損金として処理して差し支えありませんか。

また、本件合併が適格合併に該当する場合と非適格合併に該当する場合とで、取扱いに違いはありますか。

 

【回答要旨】

ご照会のデューディリジェンス費用は、一時の損金として処理することになります。また、本件合併が適格合併に該当するか否かで取扱いに違いはありません。

 

(理由)

法人税の所得金額の計算上、販売費、一般管理費その他の費用(償却費以外の費用で債務の確定していないものを除きます。)の額は損金の額に算入することとされています(法22③二)。

 

また、減価償却資産の取得価額については、資産の区分に応じて取得価額とすべき金額が法人税法施行令第54条に定められています。

 

適格合併により被合併法人から資産の移転を受けた場合には、その資産の帳簿価額を引き継ぐこととされていますが(法令123の3③)、その資産が減価償却資産である場合の償却費の計算の基礎となるその減価償却資産の取得価額については、①被合併法人がその適格合併の日の前日の属する事業年度においてその資産の償却限度額の計算の基礎とすべき取得価額と、②合併法人がその資産を事業の用に供するために直接要した費用の額の合計額とされています(法令54①五)。

 

非適格合併により移転を受けるなど同条第1項第1号から第5号までに規定する方法以外の方法により取得した減価償却資産の取得価額については、①取得の時におけるその資産の取得のために通常要する価額と、②その資産を事業の用に供するために直接要した費用の額の合計額とされています(法令54①六)。

 

ご照会のデューディリジェンス費用は、被合併法人の事業内容や権利義務関係の把握などを内容とする業務委託に要する費用であり、本件合併により移転を受ける個々の減価償却資産を事業の用に供するために直接要した費用には該当しないと考えられますので、本件合併が適格合併に該当するか否かにかかわらず、本件合併により移転を受ける減価償却資産の取得価額には含まれないこととなります。

 

なお、本件合併により移転を受ける棚卸資産がある場合も、上記と同様に、その取得価額には含まれないこととなります(法令28③、32①三)。

 

 

【関係法令通達】

法人税法第22条第3項第2号

法人税法施行令第28条第3項、第32条第1項第3号、第54条第1項第5号、第6号、第123条の3第3項

 

出典:国税庁ホームページ(https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/hojin/33/46.htm)

 


【注釈】

[1]「例えば購入に当たって支出したあっせん手数料,謝礼金等があれば,そのあっせん手数料,謝礼金等は取得価額に算入される」佐藤友一郎 (編著)「法人税基本通達逐条解説」305頁(九訂版 税務研究会出版局 2019)とあります。

[2] 現物出資は会社法上の組織再編成に該当しませんが、租税法上では組織再編成の一類型として整理されているため、上記のような分類をしています。

[3] 森・濱田松本法律事務所(編)「税務・法務を統合したM&A戦略」66頁~67頁(中央経済社 第2版 2015)、成松洋一「M&Aによる株式等の取得に要する費用の損金性」週刊税務通信3352号P40以下参照のこと。

 

 

 

 

 

[経営企画部門、経理部門のためのPPA誌上セミナー]

【第4回】PPAにおける無形資産の認識プロセスとは?

 

〈解説〉

株式会社Stand by C(角野 崇雄/公認会計士・税理士)

 

 

▷第3回:PPAにおける無形資産の認識プロセスとは?

▷第5回:PPAにおける無形資産の測定プロセスとは?

▷第6回:PPAにおける無形資産の評価手法とは?

 

 

 

1.無形資産の認識プロセス

前回は無形資産の認識基準について解説し,認識される無形資産の例示(例えば,商標,特許権など)を紹介しました。

今回は無形資産をどういったプロセス・手続で認識するのか,について解説します。

 

 

 

【図表1】はPPA全体の一般的なプロセスを示していますが,その中でも「(1)無形資産の認識」に焦点を当てます。「無形資産の認識プロセス」は【図表2】に示すとおりであり,そのプロセス(1)~(4)のそれぞれについて解説します。

 

 

 

 

 

 

(1)初期依頼資料リストの送付

【図表3】はPPAプロジェクトを始めるに際して,一番初めに買い手企業へ依頼する資料の例示です。

依頼する資料は案件ごとに異なり,これが必要な資料のすべてを網羅している訳ではない点に留意ください。

 

 

【図表3】初期依頼資料リスト例示

 

 

(2)受領資料の分析

初期依頼資料リストに基づき依頼した資料を受領し,そこから分析・検討が始まります。無形資産の認識は,対象会社の業種やビジネスの概要,商流等を把握しつつ,買い手企業がどういった目的で対象会社を買収したかが大きく関わってくるため,資料依頼リスト№1にあり,買収の概要や買収目的等が分かる資料が重要となります。

 

例えば,ある会社の技術力を評価し,その技術の取得を目的として対象会社を買収した場合には,技術関連資産が無形資産として認識される可能性が高いと考えられます。

 

また,一般的に認知されているファッションブランドを有している会社を,そのブランドを得る目的で買収した場合にはマーケティング関連資産が認識される可能性が高くなります。財務デューデリジェンス(以下,「DD」と言う)レポートを分析・検討し,対象会社の財務状況や収益構造等を把握することによって,対象会社の収益の源泉,価値の源泉がどこにあるかを把握することも重要です。

 

これは,無形資産を認識する際には,認識する無形資産が対象会社の収益獲得の源泉になっているか否かに関連づけて検討する必要があるからです。

 

更に,法務DDレポートや株式譲渡契約書等を分析して,被買収企業がどのような知的財産権(例えば,商標権,特許権など)や契約を有しているかを把握することも必要です。法律や契約で保護されているか,または,分離して譲渡可能かどうか,無形資産の認識基準に照らして検討する必要があります(【図表4】)。

 

このように入手した資料の分析を通じて,認識する無形資産にあたりをつけ,「(3)買い手企業へのインタビュー」に臨むこととなります。

 

なお,入手した資料の分析を進める中で,追加で必要となる資料は随時依頼しておく方が望ましいでしょう。

 

 

 

 

 

 

(3)買い手企業へのインタビュー

入手した資料等の分析により,対象会社のビジネスモデル,商流,強み,買収目的や買収によるシナジーを把握した上で認識する無形資産を想定し,買い手企業へのインタビューに臨みます。事前にインタビュー時に聞きたい質問等をリスト化して送付しておくことで,買い手企業は回答を準備することができ,インタビューがより有意義なものとなります。

 

【図表5】は,質問事項の一部になりますが,買収の目的や対象会社のビジネスについてクライアントの担当者から直接確認し,資料の分析段階での理解と齟齬がないか確認することを意図しています。

【図表5】は,対象会社が特許権を保有していることを前提とした質問事項でありますが,特許権以外にも法的権利を有するようなものを保有しているような場合は,その権利内容,法的有効期限などを確認することとなります。

 

それ以外にも,一般的な市場条件と比べて有利な契約の有無や連載第3回で記載した無形資産の例示を利用して,認識すべき無形資産の網羅性について確認する必要があります。認識する無形資産の認識根拠を把握することは当然ですが,認識しない無形資産についても,認識しない理由・根拠を把握して整理しておくことが必要となります。無形資産の網羅性については,会計監査においても重要なポイントの一つであることから,認識しなかった理由や根拠を会計監査時に示すことが求められます。

 

 

 

【図表5】クライアントインタビュー 質問事項例示

 

 

 

質問リストを事前に送付しておくことによって,買い手企業においても,当該質問について誰が回答することが最適かを把握できます。一般的には,経理担当者だけでなく,経営企画部や事業部のM&A実行担当者にもインタビューの場へ出席して頂き,案件に直接携わった方から対象会社のビジネスや買収目的等を説明して頂くことが多いのではないでしょうか。更に,対象会社が特許権などの知的財産権を保有しているケースでは,知的財産部の方にも出席して頂くこともあります。

 

 

 

 

 

 

(4)認識する無形資産の特定

依頼資料の分析や買い手企業へのインタビューを通じて,認識する無形資産が特定され,次のプロセスである無形資産の評価へ進むこととなります。

次の事例は,無形資産の認識プロセスの具体例です。ただし,この段階で認識対象となった無形資産であっても,測定の結果として価値が出ない(算定結果がマイナス)場合は,無形資産が計上されないこともある点に注意が必要です。

 

 

2.無形資産の認識プロセスの具体例

簡単な例を用いて,無形資産の認識プロセスについて解説します。

 

 

 

【図表7】具体例概要

 

 

 

X社は革新的な技術力を持つY社を買収した。受領した買収検討資料から,買収目的はY社が持つ技術力の取得であり,その技術をX社の技術と組み合わせることで,成長が見込まれる市場で優位なポジションを得ることを狙っていることが把握できた。また,Y社は設立後3年程度しか経過していないいわゆるベンチャー企業であり,買収時点においては売上も僅少であり,営業赤字が続いている状況であった。更に,株式譲渡契約書や法務DDレポートから,Y社は製品名を商標登録し,保有する技術に関する特許権を有していることも知ることができた。

 

以上の状況を踏まえて,評価会社としては下記の想定で買い手企業へのインタビューに臨むこととなりました。ただし,商標権はY社がベンチャー企業で売上も僅少であることから,ブランドの認知度は高くなく,無形資産として認識するほどの重要性はないものと想定しています。当該想定の適否についても,インタビューにて買い手企業の見解を把握した上で最終的な判断を下すことを考えています。

 

買い手企業へのインタビューでは,経理担当者に加えて事業部のM&A担当者も出席し,見解を聞くこととなりました。改めて,買収目的を確認したところ,入手資料から読み取れた通り,買収の主な目的はY社の技術力であり,X社はこの技術を非常に高く評価していました。

 

このことから,Y社が有する技術を無形資産として認識し,評価対象とすることとしました。他方,商標権に関しては,Y社製品の市場における認知度が高くないことから,X社のブランド名をつけてY社製品を販売する計画となっているとのことです。X社はY社の商標権に価値があると考えていなかったことになります。

更に,Y社は製品を販売するチャネルを確立できていないため,X社の販売網を利用して,Y社の製品を販売することが予定されていました。

 

このことからも,商標権には重要な価値がないものと判断できることから,無形資産として認識しないこととしました。更に,技術や商標権以外にも認識すべき無形資産の有無を網羅的に確認しましたが,無形資産として認識すべき重要なものはないと判断できました。結果,認識の対象となる無形資産は技術のみとなりました。

 

なお,この例のようなアーリーステージのベンチャー企業では,売上が十分に計上されておらず,赤字が継続している場合も多いことから,一般的には,認識対象となる無形資産はかなり限定される傾向にあると言えます。

 

また,上記の無形資産の認識ロジックは,あくまでも筆者の私見であり,読者の方々がPPAプロジェクトを始める際は会計監査人と協議して認識する無形資産を決めてください。

 

 

3.最後に

今回は無形資産の認識プロセスを解説しましたが,どのように無形資産を認識するかについてご理解頂けたでしょうか。無形資産は,形式的な認識基準に合致しているかどうかだけでなく,買収目的やビジネスなどの関連性までを考慮し,実質面を重視して分析・検討する必要があると筆者は考えます。

 

次回は,無形資産の測定について解説していきます。

 

 

 

 

—本連載(全12回)—

第1回 PPA(Purchase Price Allocation)の基本的な考え方とは?

第2回 PPAのプロセスと関係者の役割とは?

第3回 PPAにおける無形資産として何を認識すべきか?
第4回 PPAにおける無形資産の認識プロセスとは?
第5回 PPAにおける無形資産の測定プロセスとは?
第6回 PPAにおける無形資産の評価手法とは?-超過収益法、ロイヤルティ免除法ー
第7回 WACC、IRR、WARAと各資産の割引率の設定とは?
第8回 PPAにおいて認識される無形資産の経済的対応年数とは?
第9回 PPAで使用する事業計画とは?
第10回 PPAの特殊論点とは?ー節税効果と人的資産ー
第11回 PPAプロセスの具体例とは?-設例を交えて解説ー
第12回 PPAを実施しても無形資産が計上されないケースとは?

 

 

 

 

 

 

 

 

[事業承継・M&A専門家によるコラム]

超速報!新型コロナウイルス対策税制

 

〈解説〉

ビジネス・ブレイン税理士事務所(畑中孝介/税理士)

 


(本コラムの内容は法律案であり、また4/16現在の情報で記載しています。)

 

 

[関連解説]

■「コロナ対応としての中小企業経営の留意点 」~コロナとその先へ~

■「M&Aの検討段階における新型コロナウイルス等による影響」とは?

■「新型コロナ対策融資と特例リスケ」 ~事業再生の専門家の観点から~

■「新型コロナウイルス感染症に対する企業の意識調査」

 

 

コロナ対策の一環として4月中に成立予定のコロナ対策税制の解説をします。

 

納税猶予・申請期限延長に加え新規設備投資としてテレワーク設備減税や固定資産税の軽減措置が建物構築物にも拡大しています。

 

また、既存の事業用建物の固定資産税償却資産税の減免措置もできています。固定資産税なので赤字企業でも恩恵が受けられます。

 

また、消費税の課税事業者選択届出書の提出期限が申請で申告期限までに延長されますので、事業活動の急変で計算の結果還付してもらえばよかったというケースでも還付を受けることができるようになりました。(2月決算4月申告企業は特に期限に注意)

 


1.納税猶予…納期限までのどこか1か月の売り上げが20%以下の場合
国税・地方税・社会保険料が1年間納税猶予
延滞税免除・申請書の提出が困難な場合は口頭でも可

 

2.申告期限延長…所得税だけでなく法人税・相続税等も延長可
申告書余白に「新型コロナウイルスによる申告・納付期限延長申請」旨を付記でOK

 

3.中小企業経営強化税制の拡充…テレワークのための設備が新たに対象に(現状:機械・工具器具備品・建物付属設備・ソフトウェア)

 

4.新規取得固定資産税の減免措置の拡充…認定先端設備等導入計画に関する固定資産税の3年間減免措置(1/2~全額免除)の対象に建物と構築物が追加 建物の固定資産税が免除となるとかなり大きなものになります。(現状:機械・工具器具備品・建物付属設備)

 

5.既存固定資産税の減免制度…2月~10月までの3か月間の売上が30%以上減少した場合、翌年の事業用家屋の固定資産税と償却資産税が半額(50%以上減少で全額免除)※今年分は納税猶予対象

 

6.法人の繰戻還付…資本金1億円以下が対象だが 10億円までが2年間対象に追加

 

7.消費税課税事業者選択届の提出期限特例…通常は事業年度開始前までに課税事業者の選択届を提出、これが申告期限までに申請書を提出すればOKに
通常課される継続適用義務(2年・3年)もなし

 

8.印紙税免除…コロナ対策融資の印紙税は非課税に(すでに貼ったものは還付)

 

9.チケット払戻し税額控除…コンサートイベントの代金を払いもどさなかった場合放棄金額の40%を税金還付

 

10.住宅ローン控除・耐震改修不動産取得税の要件緩和…入居の遅れなどに対応

 

11.自動車税・軽自動車税の軽減延長…6か月軽減期間を延長

 

 

(参考)

https://www.mof.go.jp/tax_policy/keizaitaisaku.html

 


 

 

「ビジネスブレイン月間メルマガ(2020/04/20号)」より一部修正のうえ掲載

[解説ニュース]

不動産の売買契約中に買主に相続があった場合の評価

 

〈解説〉

税理士法人タクトコンサルティング(髙木 駿/公認会計士・税理士)

 

 

[関連解説]

■介護施設等に入所後、相続が発生した場合の居住用財産の譲渡所得と相続税の取扱い

■介護施設で亡くなった場合の相続税の小規模宅地等の特例

 

1.相続税計算における評価上の問題点


土地や建物の売買契約締結後、その契約に係る引渡しが未了の状態で買主に相続が開始した場合、相続税の計算上、相続人が取得することとなる相続財産の種類が何であるのか(不動産か債権(不動産の引渡請求権)か)、さらにはその評価額はどのように算定するのかが問題になります。

 

相続税法あるいは財産評価基本通達では、土地や建物の売買契約締結後引渡前に買主に相続が発生した場合の取扱いについて特段の明文規定等はありません。

 

 

2.現行の実務の取扱い


現行の実務は、平成3年1月11日付国税庁資産税課情報第1号(以下「情報」という。)の取扱いに基づき、被相続人である買主に係る相続税の計算上、被相続人から取得した財産及び承継した債務の種類の判定、そしてその財産及び債務の評価を行っています。今回は「情報」の取扱いについて、設例を用いて解説します。

 

(1)原則的な取扱い

買主に相続が開始した場合に相続人が取得した財産は、売買契約に係る土地や建物の引渡請求権とし、その評価額は売買契約に基づく土地や建物の取得価額(売買代金)の金額となります。また、その一方で相続人が承継した債務は、相続開始時における残代金支払債務とし、その額は売買契約に基づき、被相続人たる買主が負担することとなっている売買代金や仲介手数料その他経費で、相続開始の時における未払相当額となります。

 

設例の場合のように、買主である被相続人が6,000万円で土地を購入する売買契約を締結し、手付金600万円を支払った後、引渡前に相続が発生した場合は、6,000万円の土地の引渡請求権を課税財産として計上する一方で、未払となっている残代金5,400万円を債務控除の対象とします。

 

(2)特例的な取扱い-その1

売買契約日から相続開始日までの期間が通常の売買の例に比較して長期間であるなど、上記(1)の取得価額の金額が相続開始日における土地や建物の引渡請求権の価額として適当でない場合には、別途個別に評価した価額によります。

 

(3)特例的な取扱い-その2

買主に相続が開始した場合において、上記(1)にかかわらず、売買契約により取得する土地や建物を相続財産とする申告をすることも認められます。なお、この場合における土地や建物の価額は、財産評価基本通達により評価した金額となります。

 

この特例的な取扱いにより、設例の場合には、取得する財産を「土地」として、その評価額を4,000万円として申告することも認められます。一般的には、土地については売買代金よりも路線価等で評価した相続税評価額の方が低くなるケースの方が多いため、特例的な取扱いの場合の方が相続税上は有利になることが多いと思われます。

 

ただし、「情報」の(注)4では、「当該特例的な取扱いによる課税処分が訴訟事件となり、その審理の段階で引渡し前の相続財産が「土地等」であるとして争われる場合には、相続財産が「土地等」であるとしてもその価額が当該売買価額で評価すべきである旨を主張する事例もあることに留意する。」との記載がありますので注意が必要です。

 

 

3.小規模宅地等の特例の適用の可否


「情報」においては、上記2.(3)のとおり、土地の売買契約締結中に買主の相続が発生した場合における買主の相続財産を「土地」として申告することも認められています。この場合にその土地につき、小規模宅地等の特例の適用が受けられるかどうかについて「情報」では特に言及していません。私見では、被相続人である買主は相続開始直前において土地を所有しているものとして取り扱われることになるため、その土地が小規模宅地等の特例の適用要件を充足した場合は特例を適用することが可能であると考えますが、相続開始直前における被相続人等の居住の用及び事業の用に供していたのかという判定等には慎重な判断が必要となります。

 

 

 

 

 

 

 

税理士法人タクトコンサルティング 「TACTニュース」(2020/04/20)より転載

[M&A担当者がまず押さえておきたい10のポイント]

第8回:デューデリジェンスとは?-各種DDと中小企業特有の論点―

 

[解説]

松本久幸 公認会計士・税理士(株式会社Stand by C)

大和田寛行 公認会計士・税理士(株式会社Stand by C)

 

 

▷第7回:M&Aのプロジェクトチームはどうする?-社内メンバーと社外専門家の活用-

▷第9回:M&A時の会計処理は?-企業業績へのインパクトは!?-

▷第10回:PMIって何?-M&Aの成功はPMIで決まる!-

 


M&Aの買い手に必須の手続として、デューデリジェンス(DD)があります。今日では、企業の成長戦略としてM&Aが一般的になってきた背景もあり、デューデリジェンスという用語を耳にすることも多くなったのではないでしょうか。

 

デューデリジェンスはM&Aのプロセスにおいて最も重要な手続のひとつであり、その目的は対象会社から提供される情報に基づいて対象会社の実態を把握し、問題点を洗い出すことにあります。

 

デューデリジェンスには、財務・税務、法務、人事、ビジネス、環境等、いくつもの領域がありますが、実際のM&Aの現場では、対象会社の規模や事業の複雑性等を考慮して、どの領域について調査を実施するかを判断し、決定することになります。以下、主要なDDの概要を説明します。

 

 

財務・税務DDは、対象会社の収益性や財務状況の把握を目的として行われ、公認会計士・税理士等の専門家が実施します。過去の業績データに基づく正常収益力(対象会社が本来有している収益力)の分析や、貸借対照表上の資産の内容把握、評価額の妥当性に関する検討、潜在的なリスクに伴う簿外債務の有無、税務上のリスクの分析・把握等が行われます。財務・税務DDの結果は、事業計画や株式価値評価に反映されることとなります。

 

法務DDは弁護士によって実施され、対象会社が有している各種契約の内容の把握、訴訟や係争案件の有無、特許や商標権等の知的財産権の内容、人事労務関連の法令順守状況等の調査が対象となります。

 

ビジネスDDは、対象会社の事業内容、強み・弱み、市場環境、競合他社分析等、事業全般に関する調査・分析が行われます。通常は、対象会社の既存事業のみならず買い手が実現可能なシナジーの分析等も行われます。また、事業会社が同業他社を買収するようなケースでは、ビジネスDDを買い手企業自ら行うこともあります。ビジネスDDの結果も、財務・税務DD同様、事業計画や株式価値評価に影響を与えます。

 

 

それでは、売り手が非上場の中小企業、買い手が上場企業となるM&AにおけるDDではどのような論点が考えられるでしょうか。

 

一般的に、上場企業と比較して中小企業はコーポレートガバナンスやリスク管理の点で体制整備が十分でないことが多いと考えられます。例えばオーナー企業を例にとると、株主が経営者でもあることから意思決定のスピードや強いリーダーシップの発揮といった点で特有の強みもありますが、所有と経営が分離された上場企業で構築されているような株主による経営監視の仕組みが有効でないことが多く、強力な権限を持つ経営者自身により会社が私物化されるリスクが高いともいえます。

 

このような会社を買収しようとする場合、買い手企業は、オーナー経営者が会社との間で利益相反となるような取引を行っていないか、オーナー個人の利益のために会社に過度のリスクを負わせていないか、といった観点から関連当事者取引の詳細を重点的に調査すること等が必要となります。

 

その他にも、中小企業特有の論点として、上場企業との会計方針・会計処理の違いやリスク管理体制等の不備等に起因する会計的、法的問題が検出されるケースがみられます。

 

 

DDで検出された問題は、各DDの実施者から買い手企業に報告されます。DDで検出される問題には大小さまざまなものがありますが、重大な粉飾決算や法的な瑕疵等、問題が深刻で修復が不可能と判断されるような場合には買収交渉が中止されることもあります。

 

また、深刻ではないものの対処が必要な問題が発見された場合には、買い手企業において、検出された問題がもたらすリスクや損失を評価した上で、売り手に対して表明保証を求める、あるいは買収価格の引き下げを求めるといった対応が取られることが一般的です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

[解説ニュース]

所得税の不動産所得に損失が生じた場合の損益通算の特例

 

〈解説〉

税理士法人タクトコンサルティング(山崎 信義/税理士)

 

 

[関連解説]

■最近の事例にみる「不動産所得で経費になるもの」

■不動産取得税の「相続による取得」を巡る最近のトラブル

 

1.不動産所得に係る損益通算の特例の概要


(1)損益通算とは

所得税の計算上、不動産所得、事業所得、譲渡所得又は山林所得の金額の計算上生じた損失の額のうち一定のものについて、一定の順序により総所得金額、退職所得金額または山林所得金額等を計算する際に給与所得など他の各種所得の金額から控除されます (所得税法69条)。

 

(2)不動産所得に係る損益通算の特例

不動産所得の金額の計算上生じた損失の金額がある場合に、その不動産所得の金額の計算上必要経費に算入した金額のうちに不動産所得を生ずべき業務の用に供する土地又は土地の上に存する権利(以下「土地等」)を取得するために要した負債の利子の額があるときは、(1)にかかわらず、その負債の利子に相当する部分の金額が生じなかったものとみなされ、他の各種所得の金額と損益通算できません(租税特別措置法(措法)41条の4)。

 

 

2.土地等を取得するために要した負債の利子の計算


(1)計算のあらまし

1(2)の対象となる「土地等を取得するために要した負債の利子の額に相当する部分の金額」は、次に掲げる区分に応じ、それぞれに掲げる金額とされます(措法施行令(措令)26条の6第1項)。

 

①その年分の不動産所得の金額の計算上必要経費に算入した、土地等を取得するために要した負債の利子の額が、その不動産所得の金額の計算上生じた損失の金額を超える場合
⇒その不動産所得の金額の計算上生じた損失の金額の全額

 

②その年分の不動産所得の金額の計算上必要経費に算入した、土地等を取得するために要した負債の利子の額が、その不動産所得の金額の計算上生じた損失の金額以下である場合
⇒その不動産所得の金額の計算上生じた損失の金額のうち、その不動産所得の金額の計算上必要経費に算入した、土地等を取得するために要した負債の利子の額に相当する部分の金額

 

(2)土地と建物を一括して借入金で取得した場合の借入金の利子の額の区分計算

一の契約により同一の者から土地等と建物を一括して借入金で取得した場合において、その借入金の額がこれらの資産ごとに区分されていないこと等により、土地等と建物の借入金の額を区分することが困難であるときは、これらの資産を取得するために要した借入金の額が、まず建物の取得の対価の額に充てられ、次に土地等の取得の対価の額に充てられたものとして、前述(1)の計算をすることができます(措令26条の6第2項)。

 

この場合における「土地等を取得するために要した借入金の利子の額に相当する部分の金額」は、次の算式により計算されます(措法通達41の4-3)。

 

(算式)
その年分の土地等を取得するために要した借入金の利子の額=その年分の建物と土地等を取得するために要した借入金の利子の額×土地等を取得するために要した借入金の額÷建物と土地等を取得するために要した借入金の額

 

 

3.土地等を取得するために要した負債利子の計算例


土地と建物の別に借入金の額を区分することが困難な場合における、土地等を取得するために要した負債利子の額の計算例を示すと、次の通りとなります。

 

(設例)
・土地の取得価額 :4,000万円(a)
・建物の取得価額 :2,000万円(b)
・借入金の額   :4,800万円(c)
・借入金の利子の額: 192万円(d)

 

①土地の取得に要した借入金の額 4,800万円c-2,000万円b=2,800万円e
②土地の取得に要した借入金の利子の額 192万円d×2,800万円e÷4,800万円c=112万円
③損益通算の対象とならない借入金の利子の額
イ.不動産所得の金額の計算上生じた損失の金額が70万円の場合 ⇒70万円<112万円  ∴70万円
ロ.不動産所得の金額の計算上生じた損失の金額が200万円の場合 ⇒200万円>112万円 ∴112万円

 

 

 

 

 

 

 

税理士法人タクトコンサルティング 「TACTニュース」(2020/04/13)より転載

[M&Aニュース](2020年3月30日〜4月10日)

◇東海カーボン<5301>、フランスの炭素黒鉛製品メーカーCarbone Savoieを買収、◇エコノス<3136>、カーボン・オフセット関連子会社のブルードットグリーンをエスプール<2471>に譲渡、◇アジアゲートホールディングス<1783>、不動産コンサル事業のNSアセットマネジメントなどNSグループの事業を取得、◇YE DIGITAL<2354>、工場自動化に関する事業を安川電機に譲渡、◇SHIFT<3697>、パソコンリユース事業などのエスエヌシーを子会社化、◇ウエルシアホールディングス<3141>、群馬県でドラッグストア・調剤58店舗展開の「クスリのマルエ」を子会社化、◇ALSOK<2331>、介護事業・食品検査事業の「らいふホールディングス」を子会社化 ほか

 

 

 

 

東海カーボン<5301>、フランスの炭素黒鉛製品メーカーCarbone Savoieを買収

東海カーボンは10日、フランスの炭素黒鉛製品メーカーCarbone Savoie SAS(CS)を買収すると発表した。約197億円を投じて、同社持ち株会社のCarbone Savoie International SAS(パリ。売上高157億円、当期純利益27億円、純資産167億円)の全株式を取得する。買収完了は2020年7月上旬を予定。

傘下に収めるCSは1897年に設立し、120年の歴史を持つ。アルミ精錬用カソード(電極)、特殊炭素製品、カーボン・黒鉛パウダーの製造を手がける。なかでも主力の精錬用カソードは自動車や航空機など輸送機器分野における軽量化ニーズ、建材分野でのアルミ使用量増加、飲料容器のアルミ化、エレクトロニクス分野での銅の代替需要などを背景に、安定した成長が見込まれている。

株式取得にあたっては東海カーボンが70%、欧州子会社の独Tokai COBEX GmbHが30%を保有する形とする。

エコノス<3136>、カーボン・オフセット関連子会社のブルードットグリーンをエスプール<2471>に譲渡

エコノスは、温室効果ガスの排出権の売買の仲介や排出権の創出に関するコンサルティング事業を手がける全額出資子会社のブルードットグリーン(東京都千代田区)を、ビジネスソリューション事業のエスプール(東京都千代田区)に譲渡する方向で協議に入ることを決めた。ブルードットグリーンは2011年に設立。カーボン・オフセット市場の確立に努めてきたが、グループ内の経営資源だけでは人材、資金力などに限界があると判断した。

アジアゲートホールディングス<1783>、不動産コンサル事業のNSアセットマネジメントなどNSグループの事業を取得

アジアゲートホールディングスは、不動産コンサルティングのNSアセットマネジメント(東京都港区。売上高4億3000万円、営業利益2320万円)などNSグループが運営する事業を取得することを決めた。

傘下に収めるのはNSアセットマネジメントが手がける不動産コンサルティング事業(不動産投資向け学習サイト「Re:Camp」「不動産投資の学校.com」の運営など)のほか、同社子会社のNSリアルエステート(東京都港区。売上高1億4400万円、営業利益256万円)の不動産売買仲介事業、NSインシュアランス(東京都港区。売上高5760万円、営業利益3190万円)の保険代理店事業。アジアゲートは5月中旬に受け皿となる新会社AGNSアセットマネジメント(東京都港区)を設立する。

取得価額は未定。取得予定日は2020年5月31日。

YE DIGITAL<2354>、工場自動化に関する事業を安川電機に譲渡

YE DIGITALは、工場自動化に関する事業を安川電機に譲渡することを決めた。対象事業を会社分割により今後新設するアイキューブデジタル(北九州市)に承継させたうえで、新会社の株式60%を安川電機に7月1日付で譲渡する形とする。工場内で使われるサーボモーターやロボットなどの自動化製品で高いシェアを持つ安川電機との共同運営を通じて、製造業向けIoT(モノのインターネット)製品の売上拡大を目指す。YE DIGITALは安川電機の持ち分法適用関連会社(旧安川情報システム)。譲渡価額は9000万円。

分割譲渡する事業の直近売上高は6億6000万円。

SHIFT<3697>、パソコンリユース事業などのエスエヌシーを子会社化

SHIFTは、パソコンのリユース事業などを手がけるエスエヌシー(大阪市。売上高13億1000万円、営業利益6900万円、純資産4億5000万円)の全株式を取得し子会社化することを決めた。ソフトウエア製品のリリースサイクルに対応した各種サービスや、製品リリース後の顧客サポートなど、上流工程から下流工程までの包括的な品質保証サービス構築の一環。

エスエヌシーは1997年に設立。リユース事業(パソコン買い取り、パソコンデータ消去、中古パソコン販売・レンタルなど)、Web事業(システム受託開発など)、ITマネジメント事業(インフラ構築、ヘルプデスク、人材派遣など)を3本柱とする。

取得価額は約9億800万円。取得予定日は2020年4月30日。

ウエルシアホールディングス<3141>、群馬県でドラッグストア・調剤58店舗展開の「クスリのマルエ」を子会社化

ウエルシアホールディングスは、ドラッグストア・調剤薬局経営のクスリのマルエ(前橋市。売上高127億円、営業利益2億6700万円、純資産14億5000万円)の株式31%を追加取得し、子会社化(保有割合51%)することを決めた。クスリのマルエは1973年設立で、群馬県を中心にドラッグストア54店舗(うち調剤併設9店舗)と調剤専門4店舗の計58店舗を持つ。

ウエルシアは関東をはじめ、東北から中国四国まで全国2005店舗(2月末)を展開するドラッグストア大手。マルエ株式を20%保有しているが、傘下に取り込むことで、グループとして群馬県内の店舗網を拡充する。

取得価額は非公表。取得予定日は2020年6月1日。

ALSOK<2331>、介護事業・食品検査事業の「らいふホールディングス」を子会社化

ALSOKは、らいふホールディングス(東京都品川区)の全株式を取得し子会社化することを決めた。らいふHDは持ち株会社で、傘下に介護事業のらいふ(東京都港区)と食品検査事業のエムビックらいふ(同)を持つ。らいふHDと傘下2社の単純合算業績は売上高126億円、営業利益9億1800万円、純資産47億8000万円。警備事業を起点とする周辺分野への事業拡大の一環。

らいふは高齢者施設・住宅事業を主力とし、「ホームステーションらいふ」のブランド名で東京、神奈川など首都圏に47施設、2000室超を運営する。ALSOKは2012年に介護事業に参入しており、今回、らいふを傘下に取り込むことでグループ全体で6500室規模の介護施設を保有することになるという。

一方、エムビックらいふは腸内細菌検査や食品安全検査、食中毒の汚染検査などを手がける。

取得価額は非公表。取得予定日は2020年4月30日。

TSIホールディングス<3608>、アクションスポーツ専門ECサイト運営の米Efuegoを子会社化

TSIホールディングスは、米国でスケートボード、スノーボードを中心とするアクションスポーツ専門のEC(電子商取引)サイトを運営するEfuego Corp(オレゴン州)の株式88%を取得し、子会社化した。3月31日付。Efuegoは1999年設立で、ECサイト「Tactics.Com」のほか、オレゴン州内に3店舗を持つ。取得価額は非公表。

カクヤス<7686>、業務用酒類販売のサンノーを子会社化

カクヤスは、業務用酒類販売のサンノー(福岡市。売上高21億7000万円、営業利益5400万円、純資産2億6200万円)の全株式を取得し子会社化することを決めた。九州地方への展開の足掛かりとする狙い。

サンノーは2005年設立で、福岡市内を中心に業務用の酒類販売のほか、繁華街型業務用酒類小売りの「リカーズABC」を運営する。カクヤスは業務用センターを首都圏と大阪府で11カ所設置し、料飲店に酒類を配達する一方、店舗と小型倉庫などの173カ所で小商圏でのピストン配達、店頭販売を手がける。

取得価額は非公表。取得予定日は2020年5月1日。

ユニゾ従業員TOBが成立、86%を買い付け

不動産・ホテル業のユニゾホールディングスは3日、同社従業員が買収を目的に設立したチトセア投資(東京都中央区)によるTOB(株式公開買い付け)が成立したと発表した。チトセア投資は議決権ベースで86.55%にあたる2961万8824株を買い付けた。買付代金は1777億円。今後、株式の非公開化に伴う上場廃止の手続きに入る。

TOB成立に伴い、小崎哲資ユニゾ社長はじめ、グループ会社のすべての取締役、監査役、執行役員の総勢43人は6月末に開かれる各社の定時株主総会をもって退任する。

ユニゾは昨年12月末、従業員による買収を受け入れて非公開化することを発表。従業員と米投資ファンドのローンスターが共同出資で設立したチトセア投資がTOBを開始し、4月2日までユニゾ株を買い付けた。買付価格は1株6000円(2度引き上げ)。買付期間は5度延長した。

チトセア投資は今後、全株式を取得することとしており、最終的な買収金額は2000億円を超える。

ユニゾをめぐっては昨年7月に旅行大手、エイチ・アイ・エスがTOBを開始し、その後、米投資会社フォートレス・インベストメント・グループがTOBに参戦し、買収合戦に発展した。いずれもユニゾ側が反対する敵対的TOBだった。

フォートレスによるTOBは昨年8月から今年3月半ばまで異例の7カ月に及んだ末に不成立となった。このフォートレスのTOBに対抗する形で、従業員によるTOBが進行していた。

旧村上系投資会社、「芝浦機械」(旧東芝機械)へのTOBを撤回

旧村上ファンド系投資会社のシティインデックスイレブンス(東京都渋谷区)は2日、芝浦機械(4月1日に東芝機械から社名変更)に対して4月16日を期限に実施していたTOB(株式公開買い付け)を撤回した。撤回届出書を同日付で関東財務局に提出した。芝浦機械が3月27日に開いた臨時株主総会で買収防衛策の発動に関する議案が承認可決されたことから、TOB撤回が避けられない状況にあった。

旧村上系投資会社は1月21日、約259億円を投じて芝浦機械株の約44%の取得を目指してTOBを開始した。買付価格は1株3456円。当時、芝浦機械の株価は3300円台だったが、新型コロナウイルスの感染拡大の影響などから2000円前後まで下落。市場価格と買付価格との乖離が大きく開き、高値づかみの構図となっていたこともTOB撤回の判断に作用したものとみられる。

芝浦機械は旧村上系投資会社がTOBを撤回すれば、買収防衛策の発動を中止するとの考えを示していた。

旧村上系側は芝浦機械に内部留保の還元などを求めてきた。これに対し、芝浦機械は「当社の経営方針や事業に興味を持っていないようだ」などとしてTOBに反対していた。

ケイアイスター不動産<3465>、不動産売買の東京ビッグハウスを子会社化

ケイアイスター不動産は、不動産売買や建築請け負う東京ビッグハウス(東京都新宿区。売上高45億1000万円、営業利益1億5700万円、純資産4億3500万円)の株式50.0%を取得し子会社化することを決めた。戸建住宅の分譲事業の拡充やコストダウンにつなげる狙い。

取得価額は非公表。取得予定日は2020年4月2日。

エアトリ<6191>、Wi-Hi端末レンタルのグローバルモバイルを子会社化

エアトリは傘下のインバウンドプラットフォーム(東京都港区)を通じて、Wi-Hi端末レンタルを手がけるグローバルモバイル(東京都千代田区)を子会社化することを決めた。インバウンドプラットフォームは訪日観光客向けにWi-Hi端末レンタルを取り扱っており、主に日本人を対象とするグローバルモバイルとの商圏の重複がなく、ノウハウの共有化や仕入れコストの削減などが期待できると判断した。

グローバルモバイルは2006年設立。取得価額、取得予定日は非公表。

グッドスピード<7676>、沖縄県でレンタカー事業を取得

グッドスピードは、エンジョイレンタカー(那覇市)からレンタカー事業を1日付で取得した。グッドスピードは東海地区を地盤とし、中古車販売を展開し、2015年にレンタカー事業にも進出した。今回、東海地区以外に沖縄県でレンタカー事業に乗り出す。

エンジョイレンタカーは2013年に設立。レンタカーの受付店舗は那覇空港から車で5分のアクセスで送迎対応も行っている。取得価額は非公表。

電算システム<3630>、データ分析業務子会社のゴーガ解析コンサルティングを経営陣に譲渡

電産システムは、傘下企業でデータ分析業務を手がけるゴーガ解析コンサルティング(東京都千代田区。売上高9500万円、営業利益884万円、純資産2640万円)の全株式を、ゴーガ解析の中村仁也社長に1日付で譲渡した。データ分析事業が軌道に乗ってきたことなどから、中村氏の意向を踏まえ、独立資本の下で運営する。譲渡価額は非公表。

菱洋エレクトロ<8068>、情報システム開発のスタイルズを子会社化

菱洋エレクトロは、情報システム開発のスタイルズ(東京都千代田区。売上高15億9000万円、営業利益6200万円、純資産3億4400万円)の全株式を取得し子会社化することを決めた。ソリューションビジネス展開に向けた体制と機能の強化が狙い。

スタイルズは2003年に設立し、ITシステムの開発・運用やシステムの受託開発、技術者派遣などを手がける。

取得価額は非公表。取得予定日は2020年5月1日。

東洋テック<9686>、建物総合管理の新栄ビルサービスを子会社化

東洋テックは、建物総合管理業の新栄ビルサービス(兵庫県姫路市。売上高10億7300万円、営業利益1290万円、純資産1億6300万円)の全株式を取得し子会社化した。1日付。東洋テックが主力とする警備業務、ビル管理業務との一体運営や人的資源の相互活用を通じた相乗効果を期待している。

取得価額は非公表。

SBIホールディングス<8473>、投資運用会社のレオス・キャピタルワークスを子会社化

SBIホールディングスは、投資運用会社のレオス・キャピタルワークス(東京都千代田区。売上高61億5000万円、営業利益17億9000万円、純資産27億2000万円)の株式51.28%を取得し子会社化することを決めた。レオスは「ひふみ投信」「ひふみプラス」「ひふみワールド」など「ひふみ」ブランドで投資信託を設定・運用する。SBIは提携強化を推し進めている地域金融機関へレオス商品を展開する。

取得価額は非公表。取得予定日は2020年4月30日。

岡本硝子<7746>、光学部品メーカーの二光光学を子会社化

岡本硝子は、光学部品メーカーの二光光学(相模原市。売上高3億3500万円、営業利益3320万円、純資産1億円)の全株式を取得し子会社化することを決めた。二光光学は1972年設立で、コックピット用液晶ディスプレーの表面ガラスに反射防止膜と導電膜を蒸着する加工を主力とする。

岡本硝子は多層薄膜技術を生かし、乗用車ナイトビジョンシステム向け赤外線透過フィルター、高反射銀ミラーなどの製品分野を拡大中。二光光学を傘下に取り込むことで、機能性薄膜事業との相乗効果が期待できるみている。

取得価額は非公表。取得予定日は2020年4月1日。

ケイティケイ<3035>、OA・ネットワーク機器販売のエス・アンド・エスを子会社化

ケイティケイは傘下の青雲クラウン(名古屋市)を通じて、OA機器やパソコン、ネットワーク機器の販売・サポートを手がけるエス・アンド・エス(愛知県瀬戸市。売上高2億3300万円、経常利益2020万円、純資産1億6800万円)の全株式を取得し子会社化した。31日付。青雲クラウンは東海地区で文具・事務用品の卸売事業と複合機などOA機器、オフィス家具の取り扱いを主力とし、エス・アンド・エスとの連携で中小企業向けITサポートを強化する。

取得価額は非公表。

FIG<4392>、テレマティクス事業のシンガポールInfotrack Telematicsを子会社化

FIGは、テレマティクス事業を展開するシンガポールInfotrack Telematics Pte. Ltd(売上高3200万円、当期純利益△755万円、純資産8200万円)の株式67.91%を取得し子会社化した。31日付。Infotrackは動態管理など企業向け位置情報サービスに強みを持ち、インドを中心にアジア、中東で事業展開している。FIGは同社を傘下に取り込み、グループにおけるオフショア(海外)の中核的な開発拠点とする。

FIGは子会社のモバイルクリエイト(大分市)が保有するInfotrackの転換社債型新株予約権付社債を同社株式に転換すると同時に、同社筆頭株主のゼンリンデータコム(東京都港区)から一部株式を取得する。

株式の転換価額は2億3000万円。ゼンリンデータコムからの株式取得価額は非公表。

第一カッター興業<1716>、洗浄工事のユニペックを子会社化

第一カッター興業は、プラント内配管や熱交換器などの洗浄工事を手がけるユニペック(神戸市。売上高2億3800万円、営業利益2000万円、純資産1億8100万円)の全株式を取得し子会社化することを決めた。産業インフラ部門の強化が狙い。ユニペックは1976年に設立し、プラント関連の洗浄工事に強みを持つ。

取得価額は2億4550万円。取得予定日は2020年4月14日。

ミンカブ・ジ・インフォノイド<4436>、投信業務のRPAサービスを提供するロボット投信を子会社化

ミンカブ・ジ・インフォノイドは、投資信託業務のRPA(ロボットによる業務自動化)サービスを提供するロボット投信(東京都中央区。売上高9270万円、営業利益△2億8500万円、純資産1億7400万円)の第三者割当増資を引き受け、株式50.14%を取得し子会社化することを決めた。

ロボット投信は2016年設立で、RPAを通じて投資信託の運用会社や販売会社の業務効率化を目的とするスタートアップ企業。すでに複数の金融機関に導入実績があるが、事業基盤は脆弱な状態にあり、黒字化がほど遠かった。ミンカブは同社をグループに迎え、初年度から黒字化を目指す。

取得価額は2億5800万円。取得予定日は2020年6月30日。

テクノホライゾン・ホールディングス<6629>、経営管理用ソフト開発のアイ・ティ・エルを子会社化

テクノホライゾン・ホールディングスは、経営管理用ソフト開発のアイ・ティ・エル(東京都中央区)の全株式を取得し子会社化することを決めた。主力事業の一つであるBI(ビジネスインテリジェンス)事業で相乗効果が期待できると判断した。アイ・ティ・エルは2001年に設立。取得価額、取得日は非公表。

国際紙パルプ商事<9274>、紙・板紙卸のフランスAntalisを子会社化

国際紙パルプ商事は、紙・板紙の卸売事業を手がけるフランスAntalis S.A.(パリ。売上高2490億円、営業利益△29億1000万円)の株式83.6%を取得し子会社化することを決めた。取得価額は12億9800万円。取得予定日は2020年6月下旬。

Antalisはユーロネクスト証券取引市場に上場する欧州最大手の紙商社で、欧州を中心に南米、アジア・太平洋地域を含めて世界41カ国で紙・紙関連製品の卸売事業を展開する。パッケージング事業やビジュアルコミュニケーション事業(サイン・ディスプレーなど)に強みがある。

国際紙パルプ商事はアジア・太平洋地域を地盤とする。欧州諸国に事業基盤を持つAntalisとの組み合わせは地域的な補完関係にあるほか、製品開発やブランド力の育成などで相乗効果が見込めると判断した。

たけびし<7510>、基板受託開発などの梅沢無線電機を子会社化

たけびしは、電子基板の受託開発や電子部品の販売を手がける梅沢無線電機(東京都千代田区。売上高19億6000万円)の全株式を取得し子会社化することを決めた。半導体・デバイス事業で基板受託開発といった共通の強みを持つことに加え、営業エリアや得意先に重複が少ないことから、相乗効果が高いと判断した。梅沢無線電機は1947年に創業。

取得価額は非公表。取得予定日は2020年4月1日。

コロプラ<3668>、ゲームソフト開発のMAGES.を子会社化

コロプラは、ゲームソフトウエア開発や楽曲制作のMAGES.(東京都港区。売上高65億2000万円、営業利益△9800万円、純資産13億3000万円)の全株式を取得し子会社化することを決めた。MAGES.は人気ゲームソフト「STEINS;GATE」「B-PROJECT」などを生み出している。コロプラはこうした高いIP(知的財産権)創出力を持つ同社を傘下に取り込み、モバイルサービス事業の競争力向上を目指す。取得価額は16億1200万円。取得予定日は2020年4月3日。

宝ホールディングス<2531>、食料品卸の東京共同貿易を子会社化

宝ホールディングスは傘下の宝酒造インターナショナル(京都市)を通じて、食料品や酒類、雑貨品の輸出入を手がける東京共同貿易(東京都台東区。売上高106億円、営業利益6億8400万円、純資産17億7000万円)の株式51%を取得し、30日付で子会社化した。米国を中心とする海外向け日本食材の卸事業拡大の一環。取得価額は13億2600万円。

宝ホールディングスは日本食の市場規模が大きい米国での事業拡大に向け、2016年に日本食材卸大手の米ミューチャルトレーディング(ロサンゼルス)を子会社化。このミューチャルが日本から商品を調達する際、最大の取引先となっているのが東京共同貿易。今回、同社を傘下に収めることで、仕入れ先との関係強化や商品開発・供給機能の拡充を実現するとしている。

コロワイド<7616>、アスラポートから「牛角」のエリアFC事業と直営6店舗を取得

コロワイドは、飲食店運営の大手であるJFLAホールディングス傘下のアスラポート(東京都中央区)が手がける炭火焼肉酒家「牛角」のエリアフランチャイズ(FC)事業と直営店舗を31日付で取得する。FC店舗は200店舗、直営は6店舗。コロワイドはフランチャイザー(総本部)として、「牛角」をグループの基幹事業の一つとする。アスラポートが展開してきた広範なフランチャイジー(加盟店)網を取り込むことで、牛角事業の運営の一体性・機動性を高め、強固な収益構造を目指す。

アスラポートは1998年に牛角のFC加盟店となり、1999年12月にはエリアフランチャイズ本部の権利を獲得し、東北、北関東、東海、北陸、関西、九州(一部地域を除く)で店舗展開してきた。対象事業の2019年4~12月期業績は売上高14億7800万円、営業利益5億5200万円。

コロワイドは傘下企業が「牛角」のほか、居酒屋「甘太郎」「北海道」、回転寿司「かっぱ寿司」、地酒とそば「三間堂」など様々な業態の飲食店を運営する。牛角事業を展開する子会社はレインズインターナショナル(横浜市)。同社を通じてアスラポートからFC・直営店舗を取得する。

取得価額は非公表。

マルハニチロ<1333>、子会社の大都魚類<8044>をTOBにより完全子会社化へ

マルハニチロは子会社の大都魚類に対してTOB(株式公開買い付け)を実施し同社を完全子会社化すると発表した。マルハニチロは現在同社の株式50.32%を保有している。大都魚類は賛同の意見を表明しており、マルハニチロの完全子会社となれば上場廃止となる。買付総額は25億9000万円。

大都魚類は1947年10月設立で、マルハニチロの漁獲物や水産商品の販売を受託している。1962年12月に上場し、マルハニチロは1978年1月期に同社を子会社化した。しかし、国内の漁業生産量の減少や魚介類消費量の低下などにより経営が圧迫。そのため、マルハニチロは同社を完全子会社化することで、グループの水産物サプライチェーンを再構築するほか、上場維持コストの削減により経営の効率化を図ることにした。

買付価格は1225円で、公表前営業日の終値825円に対して48.48%のプレミアムを加えた。買付予定数は211万9018株で、下限は106万9632株。買付期間は2020年3月31日から5月21日まで。決済の開始日は5月28日。

 

 

 

 

 

情報提供:株式会社ストライク

[氏家洋輔先生が解説する!M&Aの基本ポイント]

第5回:「財務デューデリジェンス(財務DD)」とは?

~目的は?調査分析項目とは?~

 

〈解説〉

公認会計士・中小企業診断士  氏家洋輔

 

 

▷関連記事:財務デューデリジェンス(財務DD)の費用の相場とは?

▷関連記事:デューデリジェンスとは?-各種DDと中小企業特有の論点―

▷関連記事:財務デューデリジェンス「損益項目の分析」を理解する【前編】

 

 

財務デューデリジェンス(財務DD)とは?


1、財務デューデリジェンスの目的

財務デューデリジェンスの目的は大きく4つの事項を把握することにあります。

 

①ディールブレイク要因の有無

②価値算定に影響を与える事項

③契約書の表明保証に記載すべき事

④買収後の統合に向けた事項

 

 

2、財務デューデリジェンスにおける調査分析項目

財務デューデリジェンスでは主に、次の事項の分析を行います。

 

①EBTDA(正常収益力)

②運転資本

③設備投資

④ネットデット

 

①EBITDA(正常収益力)

正常収益力の分析は、将来計画の発射台となる正常な収益力を把握し、計画利益との連続性を検討することを目的としております。正常化調整およびプロフォーマ調整を行い、案件成立後において予想されるEBITDA水準を検討します。

 

(ア)正常化調

ⅰ.イレギュラー、非継続的な取引に関わる損益

ⅱ.過去、進行期、計画上の損益、BS、CFの整合性

ⅲ.その他(会計処理の誤謬、海外通貨等)

 

(イ)プロフォーマ調整

ⅰ.案件成立後、事業構造や損益が変化することが明らかな項

 

 

②運転資本

(ア)運転資本の分析は、正常な運転資本水準を把握し、変動要因(ドライバー)を理解し、クロージング時点での想定運転資本の試算や予測キャッシュフローの作成、季節変動等に伴う価格調整の必要性の検討を目的としています

 

(イ)運転資本には、売上債権、棚卸資産、未収入金、前払金、仕入債務、未払費用、その他流動資産、その他流動負債等が含められることが一般的です

 

(ウ)正常運転資本の分析にあたっては、臨時的・非経常的な項目(滞留債権、ファクタリング、滞留在庫、供給業者への支払遅延、工場閉鎖など)を調整するとともに、正常収益力における調整項目が運転資本にあたえる影響についても検討します。

 

 

③設備投資

設備投資の分析の目的は主に下記の2点です。

 

(ア)過去の設備投資実績および維持費用の水準が適正であったか(ディールに先立ち、必要以上に設備投資が抑制されていないか)。

 

(イ)事業計画を達成するために必要な設備投資水準が適正に事業計画に織り込まれているか。

 

維持更新投資および新規投資の分類を行ったうえで、その投資額を決定づけるようなキードライバー(販売数量、物流網、顧客数、利用可能年数等)を把握し、分析することが有用です。

 

 

 

④ネットデット

(ア)ネットデットの分析は、バリュエーションモデルにおいて算定された事業価値からネットデット項目を減額すべき項目及びその金額を検出することを目的としています。

 

(イ)しかし、バリュエーションモデルは一律に決まった形式のものが存在するわけではなく、ディールごとに異なるため、それに伴いネットデットに含めるべき項目も異なります。

 

(ウ)必要手元資金の分析を行うことも有用です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

[新型コロナウイルスに関するM&A・事業再生の専門家の視点]

新型コロナ対策融資と特例リスケ ~事業再生の専門家の観点から~

 

〈解説〉

公認会計士・中小企業診断士  氏家洋輔

 

 

 

 

新型コロナの影響で、経験したことがないような売上減少で、何をすればよいか悩んでいる企業も多いと思います。そんな中での新型コロナ対策融資および特例リスケは、企業にとって助けになるでしょう。しかし、その後の経営や金融機関との付き合い方についても不安になっている企業経営者も多いと思います。そこで、事業再生の専門家の観点から、コロナ対策融資と特例リスケについて下記に記載いたしました。

 

 

▷関連記事:「M&Aの検討段階における新型コロナウイルス等による影響」とは?

▷関連記事:新型コロナ特例リスケジュールの実務について

▷関連記事:東京都家賃等支援給付金 ~国の家賃支援給付金とは別に、東京都で独自の家賃支援等給付金の制度があります~

1. 概要

新型コロナの影響で、売上が減少している場合、まずは自社の資金繰りを把握しましょう。経営で利益を獲得することはとても重要なことですが、会社が危機の状況に陥った時は、利益よりも第一に資金繰りを検討するようにします。

 

資金繰りを把握し、対策が必要な場合、まずは情報収集を行いましょう。新型コロナ関連で、企業の資金繰りにとって助けになるものとして、「新型コロナ対策融資等で新たな借入」と「現状の借入金の返済猶予(リスケ)」の大きく2つあります。 新型コロナ対策融資および特例は、インターネット上で情報の収集が可能です。しかし、初めてのことなので難しいと感じる場合には専門家等に相談してみましょう。特に特例リスケについては、借入とは違いほとんどの企業が初めての行うことなので、事業再生の専門家等に相談してみましょう。

 

資金の手当てができたら、損益改善を検討します。現状の自社の状態を正確に把握して、改善点を把握の上、施策を検討します。

 

 

2. 資金繰り表の作成

まずは現在および将来の資金繰りを把握しましょう。当たり前ですが、会社はお金がなくなったら事業を続けることができません。このような非常事態には、利益よりも現金を意識しましょう。まずは会社が生き延びることが重要です。

 

資金繰り表を作成していない会社は、まずは資金繰り表を作成する必要があります。普段から資金繰り表を作成している企業であっても、コロナの影響を受けている、又は受ける可能性が高い場合は、それらを織り込んだ資金繰り表に修正しましょう。作成方法が分からない場合は、専門家に相談してみましょう

 

3. 資金繰りの把握

資金繰り表が完成したら、現状の経営状態で、資金はいつごろまで持ちそうなのか(いつの支払いが厳しくなりそうか)を確認します。もし今月や来月等、数か月以内での支払いが厳しいことが想定される場合には、資金繰り表を日次で作成し、具体的に何日の支払いが厳しいのかを把握します。

 

4. 資金繰り対応

資金繰りの把握ができたら、対策を検討します。いつ、どのくらいの資金が不足しそうなのかを前提として、経費の削減で賄えそうか、借入を行うのか、返済猶予(リスケ)を行うのか等を検討します。

 

経費の削減を行う場合には、経営の軸を持ったうえでどの経費を削減できるかを検討しましょう。誤った削減をすると、今後の事業運営に支障をきたす場合があるため注意が必要です。

 

借入を行う場合、通常時は資金繰りが苦しい会社は、新たな借り入れを行えない(銀行がこれ以上融資できない)場合が多いですが、新型コロナの影響を受けている場合には、新たな借入を行える可能性があります。

 

返済猶予(リスケ)とは、既存の借入の返済を一定期間行わないことです。2020年4月6日に「新型コロナウイルス感染症特例リスケジュール」(特例リスケ)が公表されました。こちらは、既存の借入額を1年間返済を行わないことが可能な施策となります。既存の借入額が大きい場合や、短期借入金が多く、1年以内の返済が多額となる場合には、資金繰りにとって非常に効果的な手法となります。しかし、返済猶予(リスケ)を行うことは、金融機関にとっても重要な事項となるため、可能な限り専門家を巻き込んで行うようにしましょう。

 

 

(ア)コロナ対策融資

コロナ対策融資はいくつか種類があり、要件も若干異なります。とは言え、公庫等の金融機関は現在非常時モードになっており、新型コロナの影響を被っている企業を迅速に救済すべく、平時に比べて積極的に融資を行っています。誤解を恐れずに申し上げると、「コロナの影響がある企業に対しては通常時の融資とは別枠」との捉え方でよいと思います。そのため、コロナの影響がある前に融資を断られた場合でも、コロナ対策融資は受けられる可能性があります。

 

また、一定の条件を満たした場合には実質無利息で借りられるため、現時点で資金繰りに困っていなくても、安全資金として借入する事も選択肢として検討した方がよいでしょう。新型コロナの状況は先行き不透明であり、さらなる業績悪化の可能性も否定できない状況です。事業再生の専門家の立場からは、手元に資金をどの程度保有しているかが会社の存続のために重要です。コロナの影響がある場合には、安全資金を確保する目的で、この機会に借入を検討し手元資金を厚くすることをお勧めします。

 

 

(イ)コロナ対策融資の内容

コロナ対策融資は情報がたくさんありすぎて混乱してしまう方も多いと思いますが、経済産業省の説明ページが分かりやすくまとまっていると思います。

https://www.meti.go.jp/covid-19/pdf/pamphlet.pdf

 

出典:経済産業省ウェブサイト(https://www.meti.go.jp/covid-19/pdf/pamphlet.pdf

 

■新型コロナウイルス感染症特別貸付(日本政策金融公庫)

https://www.jfc.go.jp/n/finance/saftynet/covid_19.html

■商工中金による危機対応融資(商工組合中央金庫)

https://www.shokochukin.co.jp/disaster/corona.html

 

 

【支援対象者】

新型コロナウイルス感染症の影響を受けて一時的な業況悪化を来たし、次の①または②のいずれかに該当する方

 

①最近1ヶ月の売上高が前年、又は前々年の同期と比較して5%以上減少した方

②業歴3ヶ月以上1年1ヶ月未満の場合等は、最近1ヶ月の売上高が、 次のいずれかと比較して5%以上減少している方

a 過去3ヶ月(最近1ヶ月を含む。)の平均売上高

b 令和元年12月の売上高

c 令和元年10月~12月の売上高平均額

 

※個人事業主(事業性のあるフリーランスを含み、小規模に限る)は、影響に対する定性的な説明でも柔軟に対応してもらえるようです。

 

 

 

■特別利子補給制度

https://www.jfc.go.jp/n/finance/saftynet/pdf/covid_19_faq_jisshitsumurishika_chusho.pdf

 

特別利子補給制度は、日本政策金融公庫等の「新型コロナウイルス感染症特別貸付」若し くは商工中金による「危機対応融資」により借入を行った中小企業者等のうち、特に影響の大きい事業性のあるフリーランスを含む個人事業主、また売上高が急減した事業者などに対して、利子の全部又は一部を給付するものです。

 

【支援対象者】

日本政策金融公庫等の「新型コロナウイルス感染症特別貸付」若しくは商工中金による「危機対応融資」により借入を行った中小企業者のうち、以下の要件を満たす方

 

①個人事業主(事業性のあるフリーランス含み、小規模に限る):要件なし

②小規模事業者(法人事業者) :売上高▲15%減少

③中小企業者(上記➀➁を除く事業者):売上高▲20%減少

※小規模要件 ・製造業、建設業、運輸業、その他業種は従業員20名以下 ・卸売業、小売業、サービス業は従業員5名以下

 

 

 

 

出典:経済産業省ウェブサイト(https://www.meti.go.jp/covid-19/pdf/pamphlet.pdf

 

・セーフティネット保証4号・5号

https://www.chusho.meti.go.jp/kinyu/sefu_net_gaiyou.htm

・危機関連保証

https://www.chusho.meti.go.jp/kinyu/sefu_net_crisis.htm

 

 

(ウ)特例リスケ

コロナの対策においては新たな融資に焦点が当たっているように見えますが、2020年4月6に公表された特例リスケも非常に効果があります。こちらは、新型コロナの影響で業績が悪化している企業に対して、1年間の返済猶予を行うものです。

 

特例リスケは、コロナ対策融資と比較して、支援対象者がやや複雑となっておりますが、既存借入の返済猶予を受け、さらに新たに金融機関から融資を受けられる可能性があるため、企業にとっては非常にありがたい施策となります。窓口は、各都道府県において事業再生の支援を行っている中小企業再生支援協議会となります。

 

【支援対象者】

新型コロナウイルス感染症の影響を受けて一時的な業況悪化を来たし、次の①または②のいずれかに該当する方

 

①最近1ヶ月の売上高が前年、又は前々年の同期と比較して5%以上減少した方

②業歴3ヶ月以上1年1ヶ月未満の場合等は、最近1ヶ月の売上高が、 次のいずれかと比較して5%以上減少している方

a 過去3ヶ月(最近1ヶ月を含む。)の平均売上高

b 令和元年12月の売上高

c 令和元年10月~12月の売上高平均額

 

上記の要件を満たし、かつ下記の条件を満たす必要があります。

a 今後6か月間の資金繰りの見通しが認められること

b 金融機関又は政策金融機関から融資を受けることができれば、 今後6か月間の資金繰りの見通しが認められること

c 統括責任者又は統括責任者補佐が、相談企業の業種・ 業界の性質に応じ、相談企業の元金返済猶予の要請を行うことが 事業改善に向けて有用であると判断した場合

 

5. 資金繰り対応の後

借入等を行って、当面の資金繰りが確保できた場合、又は資金繰り確保と並行して損益改善を検討しましょう。まずは、自社の状況を正確に把握する必要があります。正確に把握することで、改善点が見つかることが多いです。改善施策を検討するにあたっては、何が会社にとって重要であるのかを軸として、優先度の高いもの、効果が大きいものから順に取り組んでいくことで、損益改善を目指します。これらを事業計画に織り込んで、損益だけでなくキャッシュフローも含めてシミュレーションすることが重要です。

 

資金繰りが苦しい時に、コロナ対策融資・特例リスケの相談はもちろんですが、業績の下降時における金融機関との付き合い方や経営改善まで総合的に相談できる事業再生の専門家に活用してみてはいかがでしょうか。

 

 

 

※最新の詳細情報は各HP等にて必ずご確認ください。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

[税理士のための税務事例解説]

事業承継やM&Aに関する税務事例について、国税OB税理士が解説する事例研究シリーズです。

今回は、「清算結了した法人の帳簿保存義務について」についてです。

 

[関連解説]

■【Q&A】解散をした場合の役員退職金の支給について

■【Q&A】子会社等を整理する場合の損失負担等について

 

 

 


[質問]

当社は設立以来35年にわたり業務を続けてまいりましたが、代表者に健康問題が生じ事業継続に不安があることから今期を最後の事業年度として解散することになりました。

 

今期中に従業員や代表者の退職手続きや資産の処分などを行って解散登記し、その後3~4月以内に清算結了が可能と踏んでいます。

 

青色申告法人の帳簿書類の整理保存については法人税法施行規則第59条に規定があり当社はこれを順守してきましたが、解散し清算結了した法人に対して当該規定はどの様な効果を持つのでしょうか。

 

清算結了により法人格は消滅しその時点で帳簿書類の整理保存義務も消滅する事になりますか。あるいは解散法人の元株主若しくは元取締役が二次的に帳簿書類の整理保存義務を負う事となりますか。

 

[回答]

ご照会の件について、法人税法施行規則59条は青色申告法人の帳簿書類の保存義務を課しており、具体的には、起算日から7年間(又は同規則26の3により10年間)、保存しなければならないこととされています。この場合の「起算日」については、同規則59条2項において、清算中の法人の残余財産が確定した場合も規定されております。

 

法人税法施行規則59条1項は、「青色申告法人は、・・・」と規定されておりますので、解釈上、疑義がないわけではありませんが、上記のとおり、同条の規定は清算結了後も及ぶことが前提とされています。この点については、会社法508条において、清算人に対して清算結了の登記の日から10年間、清算株式会社の帳簿及び事業・清算に関する重要な資料〔帳簿資料〕の保存義務を課しており、法人税法においては、こうした会社法上の規定を前提として、法人税法上、特に、保存すべき具体的な帳簿書類の範囲を示して保存義務を課すと整理しているものと解されます。

 

 

〇法人税法施行規則(抄)
(帳簿書類の整理保存)
第五十九条 青色申告法人は、次に掲げる帳簿書類を整理し、起算日から七年間、これを納税地(第三号に掲げる書類にあつては、当該納税地又は同号の取引に係る国内の事務所、事業所その他これらに準ずるものの所在地)に保存しなければならない。
一 第五十四条(取引に関する帳簿及び記載事項)に規定する帳簿並びに当該青色申告法人の資産、負債及び資本に影響を及ぼす一切の取引に関して作成されたその他の帳簿
二 棚卸表、貸借対照表及び損益計算書並びに決算に関して作成されたその他の書類
三 取引に関して、相手方から受け取つた注文書、契約書、送り状、領収書、見積書その他これらに準ずる書類及び自己の作成したこれらの書類でその写しのあるものはその写し
2 前項に規定する起算日とは、帳簿についてはその閉鎖の日の属する事業年度終了の日の翌日から二月(法第七十五条の二(確定申告書の提出期限の延長の特例)の規定の適用を受けている場合には二月にその延長に係る月数を加えた月数とし、清算中の内国法人について残余財産が確定した場合には一月とする。以下この項において同じ。)を経過した日をいい、書類についてはその作成又は受領の日の属する事業年度終了の日の翌日から二月を経過した日をいう。
3~6 省略

 

〇会社法(抄)
第五百八条 清算人(清算人会設置会社にあっては、第四百八十九条第七項各号に掲げる清算人)は、清算株式会社の本店の所在地における清算結了の登記の時から十年間、清算株式会社の帳簿並びにその事業及び清算に関する重要な資料(以下この条において「帳簿資料」という。)を保存しなければならない。
2 裁判所は、利害関係人の申立てにより、前項の清算人に代わって帳簿資料を保存する者を選任することができる。この場合においては、同項の規定は、適用しない。
3 前項の規定により選任された者は、清算株式会社の本店の所在地における清算結了の登記の時から十年間、帳簿資料を保存しなければならない。
4 第二項の規定による選任の手続に関する費用は、清算株式会社の負担とする。

 

 

 

 

税理士懇話会事例データベースより

(2020年3月9日回答)

 

 

 

 

[ご注意]

掲載情報は、解説作成時点の情報です。また、例示された質問のみを前提とした解説となります。類似する全ての事案に当てはまるものではございません。個々の事案につきましては、ご自身の判断と責任のもとで適法性・有用性を考慮してご利用いただくようお願い申し上げます。

 

 

 

 


[M&A案件情報(譲渡案件)](2020年4月7日)

-以下のM&A案件(2件)を掲載しております-

 

●【財務内容良好】オリジナル商品・ライセンス商品の企画販売メーカー

[業種:玩具・日用雑貨の製造/所在地:関東地方]

●海上コンテナに特化した運送会社

[業種:運送業/所在地:関東地方]

 

 

-案件に関するお問合せ・ご相談は、このページ文末の「お問合せ・ご相談」ボタンより-

(お問い合せ・ご相談は「無料会員登録」が必要です)

 


案件No.SS005992
【財務内容良好】オリジナル商品・ライセンス商品の企画販売メーカー

 

(業種分類)製造業

(業種)玩具・日用雑貨の製造

(所在地)関東地方

(直近売上高)5~10億

(従業員数)10~50名

(譲渡スキーム)株式譲渡

(事業概要)雑貨製品メーカー 販路は大手雑貨専門店、動物園などの公共施設、土産物店など

 

〔特徴・強み〕

◇製品に特徴あり「棚」を作ることが可能
◇オリジナル商品に一部「意匠登録」あり
◇利益率良好

 

-案件に関するお問合せ・ご相談は、このページ文末の「お問合せ・ご相談」ボタンより-


案件No.SS005578
海上コンテナに特化した運送会社

 

(業種分類)物流・運送

(業種)運送業

(所在地)関東地方

(直近売上高)1~5億

(従業員数)10~50名

(譲渡スキーム)株式譲渡

(事業概要)海上コンテナ輸送業

 

〔特徴・強み〕

◇海上コンテナ輸送を行っている。
◇立地良好、業歴長く、優良取引先を有している。
◇トラック約20台保有している。

 

-案件に関するお問合せ・ご相談は、このページ文末の「お問合せ・ご相談」ボタンより-


情報提供会社:株式会社ストライク

 

 

 

 

【免責事項】

・掲載情報は、内容及び正確さに細心の注意をはらい、万全を期しておりますが、人為的なミスや機械的なミス、調査過程におけるミスなどで誤りがある可能性があります。税務研究会及び情報提供会社は、当該情報に基づいて被ったいかなる損害についても一切の責任を負うものではありません。

・掲載情報は公開日時点の情報になります。既に案件が特定の対象会社と交渉に入っている場合や成約している場合もございます。

 

 

 

 

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[解説ニュース]

不動産取得税の「相続による取得」を巡る最近のトラブル

 

〈解説〉

税理士法人タクトコンサルティング(遠藤 純一)

 

 

[関連解説]

■共有物の分割で不動産取得税がかかるとき

■最近の事例にみる「不動産所得で経費になるもの」

 

1. はじめに


不動産取得税は、土地や家屋の「取得」に課税される都道府県税です(地法73の2①)。ただし、形式的に不動産の所有権を移転したものとされる所定の「取得」は非課税とされます(地法73の7)。このうち、相続(包括遺贈及び被相続人から相続人に対してなされた遺贈を含む。)により不動産を取得した場合も、形式的な所有権の移転等として非課税とされます(同法1号)。この相続により不動産を取得したとされる場合については、実務上、含みがあるようで、時々トラブルになることがあります。

 

今回は、遺言により複数の相続人のうちの一人が不動産を全部取得したことに対し、別の相続人が民法改正前の遺留分減殺請求をして不動産の持ち分を取得後、共有物の分割で相続財産である不動産を取得したことが、「相続による取得」に該当するかどうかが争点となった裁判例(東京地裁令和2年1月23日)を見ていくことにします。なお、同裁判のもう1つの争点である非課税となる「共有物の分割」に該当するかどうかについては紙面の都合上、割愛します。

 

2. 事案の概要


被相続人Aさんは長女に不動産を相続させる旨の自筆証書遺言を残して平成18年に死去しました。このため残る相続人Bさんら4人は、長女に対する遺留分減殺請求をしました。その結果、Bさんら4人は不動産につき10分の1ずつ取得することを得ました。その後平成27年になって、長女は、共有物となった不動産につき、共有物分割を求める裁判を起こしました。裁判所は、相続人Bさんが遺留分減殺請求で得た不動産(10分の1)について残りの持ち分である不動産持分10分の9を取得して単独所有とする代わりに、代償金を支払うとする内容の共有物分割の判決を下し、同年9月に確定しました。

 

これを受け、課税庁である東京都は平成30年に、相続人Bさんが不動産の持分10分の9を取得したものとして、200万円弱の不動産取得税を賦課したところ、Bさんが「この不動産の持ち分の取得は相続によるもので、共有物分割による取得は再度の遺産分割と考えるのが自然」と主張し、課税の取消しを求めて争いとなったものです。

 

3. 背景にある取扱い


民法改正前の遺留分減殺請求に基づき不動産を取得した場合の不動産取得税の取扱いは、東京都の場合、「遺留分権利者が一部の相続人に限定されていること及び遺産分割のやり直しによる取得を非課税と認めていること等の事情から、実質的には相続を原因とした取得と同様であるものと解し、非課税と認定して差し支えない」としています(「不動産取得税質疑応答集」の改正について(通知)平成28年4月1日)。

 

ここでいう遺産分割のやり直しによる取得については、相続人全員で遺産分割協議を合意解除し「改めて遺産分割協議を行った場合についても「相続による不動産の取得」に該当するものであり(最高裁昭和62年1月22日判決)、再度非課税の取扱いをして差し支えない」(同上)としています。この場合の登記は大方、錯誤により登記を抹消し、新たな相続登記が行われる形式になるとされます。Bさんの主張は、こうした取扱いを背景にしたものといえそうです。

 

4.裁判所の判断


裁判所は、特定の相続人に遺産全部を相続させる旨の遺言に基づく財産の相続について、単独で相続させる遺産分割の方法が指定されたものと解すべきで、「遺留分減殺請求権の行使により、承継の効力は遺留分を侵害する限度で失効し、相続人に承継された権利は遺留分を侵害する限度で当然に減殺請求をした遺留分権利者に帰属するが、遺産全部を特定の相続人に相続させる旨の遺言があった場合には、遺産は遺産分割の対象となることはない」と説示し、この場合に「遺留分権利者に帰属する権利は、遺産分割の対象となる遺産としての性質を有しないものと解すべき」としました。

 

あてはめでは、上記の事実関係に基づきBさんらの「遺留分減殺請求後の不動産は、いずれも遺産としての性質を有するものではなく、遺産分割の対象となるものではないから」、相続による取得には該当するということはできないと判断しています。

 

5.補足


なお、遺言に基づき不動産の登記が適法に行われた場合、あとで錯誤により抹消することはできないようです。となると、遺言により登記された場合には、遺産分割をやり直しするといった形式を整えることはできません。このケースで、民法改正後の遺留分侵害額請求により、相続不動産の一部を代物弁済という形で不動産を請求した相続人に渡すと、遺産分割のやり直しといった形はとれず、登記原因は代物弁済となって、不動産取得税の課税が及ぶということになりそうです。

 

 

 

 

 

 

 

税理士法人タクトコンサルティング 「TACTニュース」(2020/04/06)より転載