[解説ニュース]

相続税の家屋評価をめぐる最近の裁判例から

 

〈解説〉

税理士法人タクトコンサルティング(遠藤 純一)

 

 

[関連解説]

■不動産の売買契約中に買主に相続があった場合の評価

■最近の事例にみる「不動産所得で経費になるもの」

 

 

1.はじめに


今回は最近の相続税の財産評価をめぐり、家屋の評価で特別の事情が認められるかどうかが問われた裁判例を取り上げます。

 

2.相続税の家屋評価


相続税の計算をする場合には、不動産や株式などの現物の相続財産については、金銭的価値を見積もり評価する必要があります。この際に指針となるのが、国税庁の財産評価基本通達(以下、財基通という)です。

 

財基通の評価の原則1⑵では「財産の価額は、時価によるものとし、時価とは、課税時期(中略)において、それぞれの財産の現況に応じ、不特定多数の当事者間で自由な取引が行われる場合に通常成立すると認められる価額をいい、その価額は、この通達の定めによって評価した価額による」とされています。評価の際には「財産の評価に当たっては、その財産の価額に影響を及ぼすべきすべての事情を考慮する」(財基通1⑶)ことになっています。

 

さて、家屋の評価は「その家屋の固定資産税評価額(地方税法第381条(固定資産課税台帳の登録事項)の規定により家屋課税台帳若しくは家屋補充課税台帳に登録された基準年度の価格又は比準価格をいう。以下この章において同じ。)に別表1に定める倍率を乗じて計算した金額によって評価」します(財基通89からの引用)。

 

固定資産評価基準(以下、評価基準という)における家屋の評価方法は、建物の構造や設備などの所定の部分について評点数をつけ積算し、建築後の年数に応じた経年減点補正率と評価の年の評点1点当たりの金額を乗じて評価額を求めます。また必要に応じて損耗減点補正、需給事情による減点補正が出来ます(評価基準第2章)。

 

そして、①評価基準及び財基通が、評価方法として合理的であること、②評価基準・財基通の通りに家屋が評価されていること、③明らかに「時価」を超えていないこと、④評価基準・財基通により評価することが適切ではない特別の事情がないこと、この4つを満たす限り、評価基準及び財基通による評価が適正な評価額と推認されるという考え方になっています。

 

3.家屋評価で争いになった裁判例


ここで取り上げる家屋の評価の裁判例は、古い家屋のうち1戸の評価について、「特別の事情」があるため不動産鑑定評価額約300万円で相続税の当初申告、不動産鑑定評価額約400万円で修正申告等をしていた納税者が、税務署から財基通に基づく評価約1,800万円で更正され、争いになった事例です(札幌地裁平成31年3月8日判決、他の争点もありますがここでは割愛します)。

 

4.納税者の主張


納税者は概略「築後約20年から40年が経過したものであり、老朽化が見受けられるものであるから、その評価に際しては、必要な経年減価が行われるべきである。しかし、評価基準及び財基通においては、最低20%という高い補正率(経年減点補正率)が採用されており、減価が不十分なものとなっている」と指摘し、特別の事情があるとしました。

 

そのうえで納税者は「「時価」(中略)の算定方法は評価通達の定める評価方式に限られるものではなく、不動産鑑定評価によってその算出を行うことも可能」との考えで不動産鑑評価額が「客観的な交換価値を反映した評価である」と主張しました。

 

5.裁判所の判断


裁判所は「評価基準により算出された価額を基にして家屋の評価を行う評価通達の定めも、家屋の客観的な交換価値を算出する方法として一般的な合理性を有するもの」と認めました。

 

そのうえで、納税者が「経年減点補正率の下限が20 %と極めて高く、家屋の実際の取引価格との帯離が著しく大きい」ことから評価方法として、一般的な合理性がないと指摘した点について、裁判所は経年減点補正率だけでは適当と認められない場合に個別事情を踏まえた減点補正ができることから「評価基準の一般的な合理性を否定する事情にはならない」としました。

 

また鑑定評価額と財基通に基づく評価額に乖離があることについて裁判所は、「時価を評価する方法として客観的で、一義的なものがあるわけではなく、その評価額にも自ずと一定の幅が生じることは避けられない。(中略)相続財産について評価通達の定める評価方法によって算出した額が不動産鑑定評価基準に則って鑑定した額を上回る場合であっても、それはいずれも合理性を有する異なる評価(の)基準を用いて算出した結果が異なるものであることを意味しているにすぎず、評価通達の定める評価方式によって時価を適切に算定することができない特別の事情があることを推認させるものではない」として納税者の主張を退けています(判決文書からの引用、()括弧内・赤字は筆者加筆)。

 

 

 

 

 

 

 

税理士法人タクトコンサルティング 「TACTニュース」(2019/09/02)より転載

[初級者のための入門解説]

事業承継税制の概要~ゼロから学ぶ「事業承継 超入門」③~

 

事業承継の基本ポイントを、わかりやすく解説する「ゼロから学ぶ『事業承継 超入門』」シリーズです。

今回は、事業承継税制の制度の概要や利用の仕方について解説していきます。

 

〈解説〉

公認会計士・税理士 植木康彦(Ginza会計事務所)

 

 

税制の利用の仕方は

前回、解説したとおり事業承継には、親から子などへの「親族承継」、役員や従業員への「社内承継」、外部に譲渡する「M&A」の3つの類型がありますが、このうち、「親族承継」の場合には事業承継税制の利用を検討すべきです。

 

理由は、事業承継税制の利用によって、株式の相続や贈与に係る税金が無税にできるためですが、無償の取引でないと利用できないので、通常は親族への贈与や相続が対象になります。言い方を変えると、役員・従業員、M&Aでも「無償取引」であれば事業承継税制の対象になります。

 

 

 

 

事業承継税制は、「無償」の贈与か相続で利用できます。事業承継は、事業をスムーズに後継者にバトンタッチする一連の手続です。

 

当然税金だけの問題でなく、「経営者保証の問題」「他の事業用資産の有無」「議決権の支配状況」「後継者教育」「従業員や取引関係者・金融機関の協力取り付け」などの諸課題の検討を同時並行的に進めるため、計画できない相続でなく、計画的な贈与がマッチします。そこで、通常は「XDay(贈与日)」を決めた上で、承継計画を立案します。

 

 

 

 

 

事業承継税制の主な要件

2018年4月に新しく生まれ変わった事業承継税制(以下、「新税制」といいます)は対象株式に係る相続税又は贈与税が無税(あくまで猶予です)となる画期的な制度です。

 

「株式」が対象ですが、あらかじめ個人所有資産を会社に移管してしまえば、その資産も株式に包含される形で対象にすることができます(移管には制約があります)。

 

新税制の要件としては、適用を受ける際の「入口要件」と適用を受けた後、その税が免除されるまで(死亡等まで)の期間中順守しなければならない「事後要件」によって構成されます。

 

入口要件としては、「あげる人」、「もらう人」、「その対象会社」の3つの要件を満たす必要があります。

 

(1)入口要件

新税制の適用を受けるためには、適用を受ける際に3つの要件、すなわち、「先代経営者の要件」「後継者の要件」「対象会社の要件」のすべてを満たす必要があります。簡単に言うと、あげる人、もらう人、その対象となる会社、の3要件で、それぞれの主な要件を示すと下記図のとおりです。

 

 

(2)事後要件

事業承継税制は、税がいきなり免除されるわけでなく、税の猶予からスタートします。それではいつ免除されるかと言うと、「先代経営者(贈与者)が死亡した時等」に後継者が猶予されていた贈与税が免除されます。

 

あくまでも税の猶予制度ですから、猶予期間中、守らなければならない要件、すなわち”事後要件“があり、「申告期限から5年間」守らなければならない要件と、「5年経過後も」守らなければならない要件によって構成されます。

 

当然のことながら最初の5年間の方が厳しく、「代表者でありつづけること」「株式を継続保有(すべての承継株式)し続けること」などを守る必要があります。

 

5年経過後は、代表者を退任すること、株式を売却することも可能ですが、株式を売却した場合には売却分に応じた猶予税の納付をしなければなりません。なお、経営環境変化事由に該当する場合はその時点での税の再計算が認められております。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

[解説ニュース]

民法改正 ~特別の寄与~

 

〈解説〉

税理士法人タクトコンサルティング(宮田房枝/税理士)

 

1. はじめに


民法改正により創設された「特別の寄与」について解説します(2019年7月1日以後の相続から適用)。

 

2. 特別の寄与に関する民法規定(民法1050①②⑤)


特別寄与者(下記3.参照)は、相続開始後、相続人に対し、その寄与に応じた額の金銭(特別寄与料)の支払いを請求することができます。また、その支払いについて当事者間に協議が調わない場合等には、一定期間内に、家庭裁判所にそれに代わる処分を請求することができます。

 

相続人が複数いる場合には、各相続人は法定相続分又は指定相続分に応じて特別寄与料を負担します。

 

3. 特別寄与者の要件(民法1050①)


(1)被相続人の親族(相続人、相続放棄をした者、及び相続権を失った者を除く)であること
(2)被相続人に対して無償で療養看護その他の労務提供をしたこと
(3)上記(2)により、被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をしたこと

 

4. 相続税法における取扱い


(1)特別寄与料の支払確定前

特別寄与料は、当事者間で協議が調うまで、又は家庭裁判所の審判があるまでは、その支払いが確定しません。したがって、その支払確定前は、請求中であったとしても特別寄与料の支払いがないものとして相続税を計算します。

 

(2)特別寄与料の支払確定後 ※1
①特別寄与者

(a) 相続税の計算(相法4②)
特別寄与料の額が確定した場合には、特別寄与料相当額を被相続人から遺贈により取得したものとみなして、相続税を計算します。

 

(b) 相続税の申告期限等(相法29①、33)
上記(a)による計算の結果、納付すべき相続税額がある場合には、特別寄与料の額が確定したことを知った日の翌日から10か月以内に相続税の期限内申告書を提出し、相続税を納付しなければなりません。

 

②相続人

(a) 相続税の計算(相法13④)
特別寄与料の額が確定した場合には、「各相続人が相続又は遺贈により取得した財産の価額から特別寄与料の額のうちその相続人の負担に属する部分の金額を控除して、相続税を計算します。

 

(b) 相続税の申告期限等(相法27①、32①、33)

5.税務上の留意点等


(1)相続税額の2割加算(相法18)

特別寄与者となり得る者の多くは、相続税額の2割加算の適用対象者でもあるため、特別寄与料の支払いがあった場合には、基本的に、同一の被相続人に係る相続税の納税総額は増加する点に留意が必要です。

 

(2)特別寄与者が相続開始前3年以内に被相続人から贈与を受けた財産がある場合(相法19)

特別寄与者が被相続人から相続開始前3年以内に贈与を受けた財産があるときは、相続税の計算上、贈与財産の加算と贈与税額控除の適用があります。特別寄与料の額のみを申告すればよいわけではない点に留意が必要です。

 

(3)特別寄与料を金銭ではなく不動産や有価証券等の現物で支払った場合

特別寄与者が有する特別寄与料の支払請求権は、民法上、金銭債権とされています。したがって、相続人がその金銭債権に係る債務を履行するために、特別寄与者に対して不動産や有価証券等の現物を移転した場合には、その相続人が代物弁済をしたものとして取り扱われます(民法482)。

 

税務上、代物弁済があった場合には、その代物弁済により移転する資産の譲渡があったものとして取り扱われます。すなわち、代物弁済により譲渡所得の基因となる資産を移転する場合には、原則として代物弁済により消滅する債務の額(特別寄与料の額)を譲渡所得の総収入金額として譲渡所得を計算することになります。

 

(4)特別寄与料に相当する金額の贈与をする場合

上記(1)に記載のとおり、特別寄与料を加味して相続税申告をする場合には、基本的に納税総額は増加します。

 

また、期限内申告書の提出後に特別寄与料の額が確定したような場合には、あらためて相続税の申告書等を作成しなければならないという実務上の煩雑さもあります。

 

特別寄与料の額、追加で納付することとなる税額、専門家報酬の額等によっては、実務上は、民法の「特別の寄与」の制度によることなく(相続人から特別寄与者への特別寄与料の支払いではなく)、相続人と特別寄与者との合意により、「相続人から特別寄与者への特別寄与料相当額の金銭の贈与」をし、贈与税の申告・納付で解決することもあると考えます。

 

 

※1 特別寄与者は、特別寄与料以外の財産を被相続人からの遺贈により取得していないものとします。
※2 相続人は、相続税の期限内申告・納付をしている場合を前提とします。

 

 

 

 

 

 

 

法人タクトコンサルティング 「TACTニュース」(2019/08/26)より転載

[M&Aニュース](2019年8月13日〜8月23日)

◇アズーム<3496>、ライナフからWeb予約システム「スマート会議室」事業を取得、◇味の素<2802>、米の液体調味料メーカー「モア・ザン・グルメ」を子会社化、◇GA technologies<3491>、賃貸物件専門のリノベーション事業を手がけるイエスリノベーションを子会社化、◇FHTホールディングス<3777>、子会社エリアエナジーが千葉県で手がける太陽光発電所を東時証券投資顧問に譲渡、◇サンコーテクノ<3435>、プラスチック成形機など輸入販売の成光産業を子会社化 など

 

アズーム<3496>、ライナフからWeb予約システム「スマート会議室」事業を取得

◆アズームは、不動産管理向けシステム開発などを手がけるライナフ(東京都千代田区)からWeb予約システム「スマート会議室」運営事業を取得することを決議した。

「スマート会議室」は会議室の予約、決済、入金管理、鍵の自動付与などのサービスをワンストップで提供する。アズームは空き駐車スペースの活用サービスを主力事業の一つとする。「スマート会議室」事業を取り込み、オフィスビルや店舗の空きスペースを会議室として運営することをサポートし、遊休不動産活用に向けた事業拡大につなげる。

取得価額は非公表。取得予定日は2019年9月30日。

 

味の素<2802>、米の液体調味料メーカー「モア・ザン・グルメ」を子会社化

◆味の素は、液体調味料メーカーの米モア・ザン・グルメ・ホールディングス(MTG、オハイオ州。売上高26億3000万円、営業利益3000万円、純資産21億円)の株式50.1%を取得し子会社化することを決めた。

MTGは1993年に創業し、ブロスやソースなどの液体調味料を製造・販売する。独自の製造技術を持ち、米国の外食・加工食品企業と緊密な関係を築いている。ブロスとは肉や魚、野菜などを煮込んだだし汁。

米の中食・外食向けBtoB市場は183億ドル(約2兆円)規模とされ、世界全体の約4割を占める。米の外食市場では粉末調味料よりも液体調味料が好まれる傾向にあるという。

取得価額は約38億円。取得予定日は2019年8月22日。

 

GA technologies<3491>、賃貸物件専門のリノベーション事業を手がけるイエスリノベーションを子会社化

◆GA technologiesは、賃貸マンション・アパート専門のリノベーション(改修)を手がけるイエスリノベーション(東京都中央区)の全株式を取得し子会社化することを決議した。

イエスリノベーションは2012年に設立し、賃貸物件の空室対策に強みを持つ。一般的に賃貸物件は築年数が古くなると好立地の物件以外は競争力が低下し、空室リスクが高まる。同社は既設設備の再利用やデザインの標準化などの合理化で、従来のリノベーション費用の約4分の1の単価2万5000円(1平方メートル当たり)を実現している。

GA technologiesは自社の不動産投資、賃貸管理、不動産売却事業とのシナジー(相乗効果)が見込めると判断した。

取得価額は非公表。取得予定日は2019年9月11日。

 

FHTホールディングス<3777>、子会社エリアエナジーが千葉県で手がける太陽光発電所を東時証券投資顧問に譲渡

◆FHTホールディングスは、子会社のエリアエナジー(東京都台東区)を通じて保有する香取低圧15区画太陽光発電所(千葉県香取市。総発電出力742.5キロワット)を、東時証券投資顧問(東京都品川区)に譲渡することを決議した。譲渡価額は約3億円。譲渡予定日は2019年10月31日。

 

サンコーテクノ<3435>、プラスチック成形機など輸入販売の成光産業を子会社化

◆サンコーテクノは、機械の輸入を手がける成光産業(東京都杉並区。売上高14億9000万円、営業利益8300万円、純資産5億5500万円)の全株式を取得し子会社化した。取得価額は5億5100万円。取得日は2019年4月10日。成光産業の資本金(8000万円)がサンコーテクノの資本金の10分の1以上であるにもかかわらず、事後での開示となった。

成光産業は1964年に設立。主に欧州からプラスチック成形機やシュリンク包装機を輸入販売している。

 

トーホー<8142>、シンガポールの業務用水産品卸会社GOSを子会社化

◆トーホーは、業務用水産品卸売事業を営むシンガポールGolden Ocean Seafood (S) Pte Ltd(GOS、売上高3億5900万円、当期純利益2400万円、純資産1億3200万円)の全株式を取得し、子会社化することを決議した。

トーホーは現在、シンガポールで現地外食産業向けに日本食材の食品・青果卸売りを手がける。ホテルやレストランに活き水産品(活きロブスター、活きオイスターなど)を取り扱うGOSを傘下に収め、グループの取り扱い商品の充実や販路拡大につなげる。

取得価額は非公表。取得予定日は2019年8月22日。

 

ソネット・メディア・ネットワークス<6185>、デジタルコンテンツ制作・開発のASAを子会社化

◆ソネット・メディア・ネットワークスは、WebサイトやWebアプリなどデジタルコンテンツ制作・開発のASA(仙台市。売上高9億500万円、営業利益△3500万円、純資産△6800万円)の株式68.6%を取得し子会社化することを決議した。

ASAは2001年に設立。デジタルコンテンツの検証を包括的に行う品質保証(QA)事業などの関連サービスも提供している。ソネットはASAが保有するサービスや顧客基盤を取り込み、事業拡大につなげる。

取得価額は非公表。取得予定日は2019年8月21日。

 

ソニー<6758>、米ゲーム開発会社インソムニアックを買収

◆ソニーは20日、子会社のソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE、東京都港区)を通じて、プレイステーション(PS)向け「スパイダーマン」などの人気ゲームソフトを制作した米インソムニアック・ゲームズを買収すると発表した。買収金額や買収完了時期については非公表。

インソムニアックはカリフォルニア州バーバンクとノースカロライナ州ダーラムに本拠を置く。「スパイロ・ザ・ドラゴン」「ラチェット&クランク」「RESISTANCE」などPS向け人気シリーズを手がけてきた。なかでも昨年9月に発売した「スパイダーマン」は累計販売1320万本を超える世界的ヒットとなった。

 

ヤマシンフィルタ<6240>、エアフィルター製造のアクシーを子会社化

◆ヤマシンフィルタは、エアフィルター製造のアクシー(大阪市。売上高27億5000万円、営業利益1億8800万円、純資産31億8000万円)の全株式を取得し子会社化することを決議した。ヤマシンフィルタは建設機械用油圧フィルターを主力とするが、隣接市場であるエアフィルター分野を新たな事業分野として取り込むのが狙い。アクシーは1968年に設立し、50年を超える業歴を持つ。取得価額は非公表。取得予定日は2019年8月23日。

 

ブイ・テクノロジー<7717>、半導体製造装置関連のナノシステムソリューションズを子会社化

◆ブイ・テクノロジーは、半導体製造装置・検査メーカーのナノシステムソリューションズ(沖縄県うるま市。売上高17億9000万円、営業利益1億3200万円、純資産1億7100万円)の全株式を取得し子会社化することを決議した。

ナノシステムソリューションズは2004年に産業技術総合研究所の支援を得て創業したベンチャー企業。ウエハー内部や外部に発生する欠陥を高精度に素早く検査する半導体ウエハー外観検査装置、半導体製品の試作やフォトマスク製造に使われるマスクレス露光装置を主力としている。ブイ・テクノロジーは同社を傘下に取り込み、新たな柱として育成中の半導体製造関連装置事業の成長加速につなげる。

取得価額は非公表。取得予定日は2019年8月22日。

 

北川精機<6327>、合板プレス機械製造の特定子会社キタガワエンジニアリングを譲渡

◆北川精機は、合板プレス機械を製造する特定子会社のキタガワエンジニアリング(広島県府中市。売上高13億2000万円、営業利益2億1800万円、純資産8億2100万円)の全保有株式(48%)を、キタガワエンジニアリングに譲渡(キタガワが自己株式として取得)することを決議した。合板プレス製造を中心とする建材機械事業は北川精機の祖業で、1999年に分社した。しかし、グループ内の事業内容を見直した結果、両社間の事業シナジー(相乗効果)を見いだせないと判断した。

譲渡価額は4億円。譲渡予定日は2019年8月30日。譲渡代金はCFRP(炭素繊維)関連事業などの成長分野に充当する。

 

マツキヨHDとココカラ、統合協議開始で覚書

◆ドラッグストア業界5位のマツモトキヨシホールディングス(HD)と同7位のココカラファインは16日、経営統合に向けた協議開始に関する覚書を締結したと発表した。ココカラはマツキヨHDと同6位のスギホールディングスの両社から統合提案の打診を受け、特別委員会での検討を踏まえ、14日に、マツキヨHDに独占交渉権を付与することを決めていた。独占交渉権の期間は2020年1月末までだが、双方の協議・交渉が継続している場合には延長されるとしている。

マツキヨHDとココカラの統合が実現すれば、売上高は1兆円規模となり、現在業界首位を争うツルハホールディングス、ウエルシアホールディングスの両社を抜き、トップに立つ見通し。

 

キリン堂ホールディングス<3194>、京都府内で調剤薬局1店舗を取得

◆キリン堂ホールディングスは京都府内で調剤薬局事業(対象1店舗)を取得することを決めた。相手企業名、当該事業の直近業績、取得価額のいずれも非公表。取得予定日は2019年10月1日。

 

ケイアイスター不動産<3465>、不動産売買・仲介のハウスラインを子会社化

◆ケイアイスター不動産は、不動産の売買・仲介、リフォーム事業などを手がけるハウスライン(埼玉県朝霞市。2019年4月に設立)の株式80%を取得し子会社化することを決議した。取得価額は非公表。取得予定日は2019年8月30日。

ケイアイスター不動産は埼玉県本庄市に本社を置き、北関東を営業基盤とする。

 

米フォートレス、ユニゾに対抗TOB 1368億円で完全子会社化へ

◆米投資会社フォートレス・インベストメント・グループ傘下のサッポロ合同会社(東京都港区)は16日、不動産・ホテル事業を手がけるユニゾホールディングスに対して完全子会社化を目的にTOB(株式公開買い付け)を実施すると発表した。ユニゾはTOBに賛同している。ユニゾをめぐっては旅行大手エイチ・アイ・エス(HIS)の敵対的TOBが進行中だが、これに対抗する第三者による友好的TOBとなる。いわゆる「ホワイトナイト(白馬の騎士)」が登場する構図となった。買付代金は最大1368億円8118万円。

米フォートレスは世界的な不動産投資ファンドを運営し、日本を含めて世界14カ国に拠点を置く。2017年に買収によってソフトバンクグループの傘下となった。不動産・ホテル業界の競争が激化する中、ユニゾの成長を加速するためには、完全子会社化による非上場化の必要があると判断した。フォートレスは不動産運用のノウハウや人材、世界的なネットワークなどの経営資源を投入する。

TOB価格はユニゾ1株につき4000円。HISが設定したTOB価格3100円を3割近く上回る。HISによるTOB公表前日(7月9日)のユニゾ株の終値1990円に対して101.01%とほぼ倍のプレミアムを上乗せした。TOB価格の4000円は提示のあった複数候補者のうち最高値だったという。

買付予定数の下限は発行済み株式の3分の2に相当する2281万3500株。フォートレス側は全株式の買い付けを目指している。買付期間は8月19日~10月1日までの30営業日。決済の開始日は10月8日(代理人は大和証券)。

16日のユニゾ株の終値は前日比565円高の4165円に急騰し、今回のフォートレスのTOB価格をも上回る。

HISはTOBで現在4.79%のユニゾ株の所有割合を45%に高める計画(買付代金は約426億円)。TOB期間は23日までだが、TOB開始直後から市場価格がTOB価格を超える高値圏が続き、予定数の買い付けが困難な状況となっている。

ただ、「ホワイトナイト」として名乗りを上げたフォートレスとしてもTOB価格の4000円を超える高値がこのまま続くようであれば、TOB成立が厳しくなる可能性が出てくる。

ユニゾはお盆前の3連休中の11日に、HISの敵対的TOBに対抗し、複数の候補者からより良い条件の買収提案を受ける可能性があると発表していた。

 

テラ<2191>、 医薬品・医療機器の治験支援を手がける子会社タイタンを元社長の小塚祥吾氏に譲渡

◆テラは、医薬品・医療機器の治験支援を主力とする子会社のタイタン(東京都港区。売上高8000万円、営業利益△1400万円、純資産△200万円)の全株式を、タイタンの元社長の小塚祥吾氏に譲渡することを決議した。

テラは中核である細胞医療事業の早期業績回復を最重要課題と位置づけ、グループ事業の見直しを進めていた。これに伴い、旧経営陣である小塚氏に今後のタイタンの経営を託すことにした。タイタンは2013年に設立し、医薬品・医療機器の治験支援などを手がけてきた。

譲渡価額は非公表。譲渡予定日は2019年8月20日。株式譲渡に伴い、2019年12月期決算に約2000万円の損失を計上する。

テラは2004年に樹状細胞ワクチン療法の研究開発を目的に設立した東大発ベンチャー。樹状細胞ワクチンは日本初の膵臓がんに対する再生医療製品として期待されており、今後、その承認取得に向けた開発に経営資源を集中する。

 

芙蓉総合リース<8424>、経理・人事業務代行のNOCアウトソーシング&コンサルティングを子会社化

◆芙蓉総合リースは、経理や人事・給与業務などを代行するNOCアウトソーシング&コンサルティング(東京都江東区。売上高97億4000万円)を15日付で子会社化した。NOCを傘下に置く持ち株会社の全株式を取得した。新規分野として取り組んでいるBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)関連事業の強化策の一環。取得価額は非公表。

 

ロゼッタ<6182>、定型的事務作業の自動化コンサルティングを手がけるRPAコンサルティングを子会社化

◆ロゼッタは、AI(人工知能)を活用して定型的事務作業を効率化・自動化するRPA(ロボット・プロセス・オートメーション)に関するコンサルティング業務を手がけるRPAコンサルティング(東京都渋谷区。2019年3月に設立)の全持分を取得し、子会社化することを決議した。

ロゼッタはAI(人工知能)を活用した自動翻訳サービスを主力とする。機械翻訳の精度について目標水準を概ね超えたことから、新たな開発目標としてRPAにAIを組み合わせた「AI RPA」を据えている。その一環としてRPA社が持つRPAのノウハウを取り込む。

まずは第一歩として、ロゼット自体の社内の単純作業を一掃し1年以内に社内の事務要員ゼロの状態を実現するという。子会社化に伴い、RPA社の武井琢治代表はロゼッタのCRO(ロボット最高責任者)に就任する予定。

取得価額は非公表。取得予定日は2019年9月1日。

 

日新製糖<2117>、王子製糖の砂糖事業を取得

◆日新製糖は、王子製糖(東京都文京区。売上高12億4000万円、営業利益4900万円、純資産7億4300万円)の砂糖事業を会社分割により取得することを決議した。王子製糖は1952年に設立し、日新製糖傘下の新東日本製糖(千葉市)に委託加工する関係にある。取得価額は6億9100万円。取得予定日は2019年10月1日。

 

エア・ウォーター<4088>、産業ガス大手の独リンデからインド事業を204億円で取得

◆エア・ウォーターは14日、産業ガス大手の独リンデからインド事業の一部を取得すると発表した。対象はリンデがインド南部で手がける酸素、窒素、アルゴンの製造・販売・供給に関する事業(直近売上高約57億円)。独リンデと同業大手の米プラクスエアが2017年に合併した際、インド当局が独占禁止政策上の理由からリンデにインド事業の一部を第三者に譲渡するよう求めていた。取得価額は204億円(138億インドルピー)。2019年9月中に取得完了を見込む。

エア・ウォーターはこれに先駆け、7月に米プラクスエアからインド東部で手がける事業の一部を約238億円で取得したばかり。

 

トライステージ<2178>、シンガポールのテレビ通販子会社JMLを現地社に譲渡

◆トライステージは、シンガポール子会社でTV通販を手がけるJML Singapore Pte. Ltd.(JML、売上高5億7300万円、営業利益△1億8500万円、純資産△7550万円)の全株式(所有割合75%)を、TVショッピング向け卸事業の現地Responze TV International Limitedに譲渡することを決議した。JMLへの債権約3億1700万円も放棄する。

トライステージは成長著しいASEAN(東南アジア諸国連合)で拠点を確保するため、2016年9月にJMLを傘下に収めた。シンガポールでのテレビ通販事業、リテール卸事業、同社を経由した日本商品の卸売に取り組んできた。しかし、事業環境の変化や取扱商品の陳腐化などにより、業績が取得時の計画を下回り、2019年2月期第2四半期には同社に係るのれんの減損損失を計上した。業績改善への見通しが立たないことから、経営権を手放す。

譲渡価額は2シンガポールドル(約152円)。譲渡予定日は2019年8月30日。

 

ブイキューブ<3681>、コミュニケーションサービス関連のインドネシア子会社PT.V-CUBEを合弁先に譲渡

◆ブイキューブは、コミュニケーションサービスを提供するインドネシア子会社PT.V-CUBE INDONESIA(ジャカルタ。売上高2600万円、営業利益△1400万円、純資産△1億1400万円)の株式90%を、現地投資会社のPT.ALTAVINDO INDONESIA(ジャカルタ) に譲渡することを決めた。

ブイキューブは2012年に現地法人PT.V-CUBEを設立し、インドネシアでWeb会議システムなどのビジュアルコミュニケーションサービスの提供に乗り出した。しかし、約7年が経過しながら、いまだに黒字化を実現できず、現在は債務超過に陥っている。このため、保有株式の大部分を合弁パートナー(5%出資)の投資会社PT.ALTAVINDO INDONESIA に譲渡することを決めた。

株式の譲渡価額は1ドル(約106円)。併せて貸付債権1億2700万円も譲渡。譲渡日は2019年8月14日。

 

リミックスポイント<3825>、第一種金融商品取引業を登録申請中のスマートフィナンシャルをMBOで原田勉社長に譲渡

◆リミックスポイントは、第一種金融商品取引業の登録申請を手続き中のスマートフィナンシャル(東京都港区。純資産4000万円)の全株式を、スマートフィナンシャル社長の原田勉氏に譲渡することを決議した。

リミックスポイントは仮想通貨交換業を営む子会社のビットポイントジャパン(東京都港区)を中心に金融関連事業を手がけるが、証券事業への参入を目的に今年1月にスマートフィナンシャルを設立し、第一種金融商品取引業の登録申請の手続きを進めてきた。その後、戦略を変更し、経営資源を仮想通貨関連に集中する方針を打ち出していた。そうした過程で、原田氏からMBO(経営陣による買収)の申し出があったという。

譲渡価額は非公表。譲渡日は2019年8月14日。

 

スカラ<4845>、コンサルティング事業のジェイ・フェニックス・リサーチを子会社化

◆スカラは、コンサルティング事業とファンド事業を手がけるジェイ・フェニックス・リサーチ(東京都中央区。売上高6600万円、営業利益△200万円、純資産4100万円)を株式交換により完全子会社化することを決議した。

ジェイ・フェニックスは2003年に設立し、上場企業の中期経営計画策定、統合報告書や証券アナリストレポートの作成などを手がけている。近年は企業価値分析体系へのAI(人工知能)の応用に力を入れている。スカラ社長の梛野憲克氏はAIの博士号を持つ。ジェイ・フェニックスを傘下に取り込むことで、AIの分析と価値創造経営コンサルティングの融合が可能になると判断した。

株式交換比率は1:298.4165652。株式交換実行日は2019年9月下旬を予定。

 

関門海<3372>、シンガポールの「玄品」運営会社VLSGを子会社化

◆関門海は、シンガポールでとらふぐ料理店「玄品」を運営する現地VLSG PTE.LTD.(売上高4610万円、営業利益△3880万円、純資産163万円)の全株式を取得し子会社化した。取得日は2019年6月1日。取得価額は非公表。

関門海はとらふぐ料理店「玄品」を中心に飲食店事業を展開する。2017年4月に海外進出のフランチャイズ1号店としてシンガポールに開店した。しかし、フランチャイズ展開が思うように進まず、現地運営会社から株式買い取りの依頼があったという。

 

 

くふうカンパニー<4399>、フジトミ傘下のふくろう少額短期保険を子会社化

◆くふうカンパニーは、フジトミ傘下のふくろう少額短期保険(東京都中央区。売上高8300万円、経常利益△3700万円、純資産1900万円)の全株式を取得し子会社化することを決議した。

くふうカンパニーは保険販売子会社の保険のくふう(東京都港区)を通じて、結婚式キャンセル保険などの保険商品を取り扱っている。ふくろう少額短期保険を傘下に取り込むことで、生活シーンに潜む身近なリスクを保証する新たな商品の開発につなげる。

取得価額は非公表。取得予定日は2019年9月中。

 

フレアス<7062>、群馬県高崎市でマッサージ業を営む大平幸彦氏から事業を取得

◆フレアスは、群馬県高崎市でマッサージ業を営む大平幸彦氏から事業を取得することを決議した。群馬県内でのあん摩マッサージ指圧師による在宅訪問サービス事業の充実が狙い。当該事業の売上高は3200万円。取得価額は未定。取得予定日は2019年9月1日。

 

イー・ガーディアン<6050>、クラウド型セキュリティー対策製品のグレスアベイルを子会社化

◆イー・ガーディアンはクラウド型セキュリティー対策製品を提供するグレスアベイル(東京都中央区)の第三者割当増資を引き受けて子会社化(所有割合64.3%)することを決議した。

イー・ガーディアン子会社で情報セキュリティー分野の監査・コンサルティング業務を手がけるEGセキュアソリューションズ(東京都港区)の徳丸浩社長がグレスアベイルの取締役を務め、グレスアベイルは同氏の監修でセキュリティー対策製品を開発するなどの関係にあった。

取得価額は非公表。取得予定日は2019年8月20日。

 

 

情報提供:株式会社ストライク

[税理士のための税務事例解説]

事業承継やM&Aに関する税務事例について、国税OB税理士が解説する事例研究シリーズです。

今回は、「子会社等を整理する場合の損失負担等」についてです。

 

[関連解説]

■【Q&A】子会社株式の譲渡に係る収益計上時期

■【Q&A】子が事業を引き継いだ場合の引き継いだ資産に係る減価償却

 

 

 


[質問]

業績不振の子会社の株式譲渡を考えており、その譲渡前に債権放棄の実行も計画しています。
その債権放棄が寄附金と認定された場合、グループ法人税制を踏まえた申告書の表し方にわからない点があります。

 

1. 持株関係

1826030①.jpg

 

 

2. 動き
①B社は、子会社であるC社が業績不良であるため、全くのグループ外部であるD社に株式譲渡を考えている。

②B社はC社に対し、多額の貸付金を有し、C社は債務超過であるため、譲渡前に債権放棄を計画している。

 

3. 質問
B社の債権放棄が寄附金となった場合

 

グループ法人税制により、B社は寄附金の損金不算入、別表五で子会社の簿価修正③増となり、C社は受贈益の益金不算入、B社は寄附金修正認容を立て、別表五減で子会社簿価修正を消し、改めて寄附金限度額計算を行うのか。

 

それとも期末申告時にはグループ法人ではないので、ごく普通の外部への寄附としてB社C社ともに申告書を作成すればよいのか。

 

 

1826030②.jpg

 

 

[回答]

 

1、 営業不振の子会社を解散させずに他の企業に経営権を譲渡する場合があります。例えば、経営不振で再建に自信のない子会社の経営権を他の企業に移譲するため株式を譲渡した場合でも、譲り受ける側の企業としては、その譲受け後における子会社経営上の責任を考えて、赤字をできるだけ圧縮した上でなければ株式の譲受けには応じられないとの要求が十分に考えられます。このため、やむを得ず子会社に対する貸付金等の一部(又は全部)を切捨てをしてある程度子会社の財政面を改善した上で株式の譲渡をするという事例があります。

 

このような債権の切捨てについても、親会社として今後発生するであろうより大きな損失を回避するためにやむを得ず行う損失の負担であると認められる場合が少なくないとの考え方から、法人がその子会社の解散、経営権の譲渡等に伴い、債務の引受、債権の放棄その他の損失の負担をした場合であっても、それが今後より大きな損失の生ずることを回避するためにやむを得ず行われたものであり、かつ、そのことが社会通念上も妥当なものとして是認されるような事情があるときは、税務上もこれを寄附金として取り扱わないこととされています(法基通9-4-2)。

 

ご照会事例については、C社の債務超過の状態、債権放棄の規模等が明らかでありませんので確答はできかねますが、一般論としては、法基通9-4-1の取扱いの適用の可能性は高いものと考えます。

 

(参考)

損失負担等をする相当な判断基準については、国税庁タックスアンサーホームページ「子会社等を整理・再建する場合の損失負担等に係る質疑応答事例(コード№5280)」を参考にしてください。

 

 

2、 法人税法37条2項において「内国法人が各事業年度において当該法人との間に完全支配関係がある他の内国法人に対して支出した寄附金の額は~」と規定していることから、寄附金を支出した時点で完全支配関係があるかどうかを判断することになると思われます。したがって、ご照会事例については、債権放棄した時点ではB社とC社との間に完全支配関係がありますのでグループ法人税制の適用があると考えます。

 

したがって、本件については、寄附金修正事由が生じているため、A社及びB社についてそれぞれ次のような処理を行うことになると思われます。

 

まず、A社はB社株式について寄附金の額に持分割合100%を乗じた金額を利益積立金から減算するとともに、同額を寄附金修正事由が生じた時の直前のB社株式から減算し、減算後の帳簿価額を株式の数で除した金額を1株当たりの帳簿価額とします(例9①七、令119の3⑥)。

 

また、B社は寄附金の額に持分割合100%を乗じた金額を利益積立金額に加算するとともに、同額を寄附金修正事由が生じた時の直前の帳簿価額に加算し、加算後の帳簿価額を株式の数で除した金額を1株当たり帳簿価額とします。

 

したがって、B社がC社株式を譲渡した場合の譲渡原価の額は、修正後の金額になると考えます。

 

なお、C社においては、完全支配関係の判定時点は、受贈時点と考えられますので、B社がC社株式を譲渡した場合であっても受贈益の修正処理(益金算入)はないものと考えます。

 

(参考)

寄附金修正事由が生じた場合の株主の処理については、平成22年8月10日付「平成22年度税制改正に係る法人税質疑応答事例(グループ法人税制関係)(情報)」の問7を参考としてください。

 

 

 

税理士懇話会事例データベースより

(2018年11月28日回答)

 

 

 

 

[ご注意]

掲載情報は、解説作成時点の情報です。また、例示された質問のみを前提とした解説となります。類似する全ての事案に当てはまるものではございません。個々の事案につきましては、ご自身の判断と責任のもとで適法性・有用性を考慮してご利用いただくようお願い申し上げます。

 

 

 

 


[解説ニュース]

会社の特別清算に伴う法人の金銭債権の貸倒処理(参考:東京地裁平29年1月19日判決)

 

〈解説〉

税理士法人タクトコンサルティング(亀山 孝之/税理士)

 

 

1. はじめに


特別清算とは、会社法上の制度で、解散後・清算中の株式会社について債務超過の疑いがある場合等に裁判所の命令により開始され、その監督のもとで行われる(特別の)清算手続であり(会社法510条~574条外)、協定型と個別和解型があります。

 

2. 特別清算の2類型と特別清算に伴う貸倒処理に係る法人税基本通達9-6-1(2)とその他の通達


表題の通達9-6-1 (2)は、法人の有する清算会社に対する金銭債権の額のうち、「特別清算に係る協定の認可の決定があった場合において、この決定により切り捨てられることとなった部分の金額」は、その事実の発生した日の属する事業年度において貸倒れとして損金の額に算入する」旨を定めています。

 

ここでいう「協定」とは、会社法563条以下の定めに従って行われる手続きで、清算会社と協定債権者(一般債権者のこと)との間で、清算会社が協定債権者に弁済をすること及び協定債権者は弁済を受けられなかった部分を免除することを取り決めることで、清算会社が債権者集会に対して協定の申し出をして、債権者集会において法定の要件を満たす同意を得て可決し、さらに、裁判所の認可の決定を得て成立し効力を生じます。協定が成立するとそれに同意しなかった債権者も拘束されます。

 

これに対し、債権者が少数の場合(特に、清算会社の親会社などその関係者のみが債権者である場合)、協定に代え、協定よりコストや迅速性で勝る「個別和解」により清算が行われる場合があります。個別和解は、一部弁済と引き換えに残債免除とする場合が一般的で、裁判所の許可により効力が生じます(同法535条①4)。

 

ここで留意すべきは、特別清算により切り捨てられた金銭債権につき、9-6-1がその(2)該当の貸倒損失として損金の額に算入することを認めるのは、あくまで協定により免除される(切り捨てられる)場合のその免除額に限っており、個別和解による免除(切り捨て)額はこの(2)に当たらないということです。それは、まず、同通達(2)の文言上、そこに個別和解も含むことは読みとれないことから明らかであるといえますが、それを措いても、個別和解は、協定の裁判所による認可とは別個の手続で、当事者間の公平を担保する、又は通常の合理性のない馴れ合い的な和解を修正するための規定もないため、たとえば、親会社と子会社のみが当事者の場合、いかようにも和解(債務免除)の合意ができます。よって、個別和解による債務免除を協定によるそれと同等に扱うことは不合理です。

 

以上の通り、協定型ではなく個別和解型の特別清算手続が多く利用されているとしても、特別清算手続でありさえすれば、子会社の整理に関する親会社の負担(債務免除)額を無条件に損金の額に算入できるわけではありません。基本通達が、特別清算による債権の切り捨てについて協定によるものであることを要件に貸倒損失として損金算入を認めようとしていることには合理性があり、それを満たすことが必要です。

 

以上の通り、個別和解による免除額は上記通達の(2)に当たりませんが、個別和解による債務免除は、同通達が貸倒損失として損金算入を認める4つ目の類型として挙げる「(4)債務者の債務超過の状態が相当期間継続し、その金銭債権の弁済を受けることができないと認められる場合において、その債務者に対し書面により明らかにされた債務免除額」に当たる余地は残ります。この(4)の「場合」に該当するかどうかの判断は、金銭債権の弁済の可能性の判断につき「債務者の資産状況、支払能力等の債務者側の事情だけでなく、債権回収に必要な労力、債権額と取立費用との比較衡量、債権回収を強行することによって生ずる他の債権者とのあつれき等による経営的損失等といった債権者側の事情、経済的環境等も踏まえ、 社会通念に従って総合的に判断されるべき」と判示した平成16年12月24日の最高裁判決に沿って行うべきと考えられます。

 

この(4)にも当たらない場合は、別の法人税基本通達9-4-1により、法人税法37条の寄附金に該当するか否かの判断をすることになります。つまり、同通達が寄附金に当たらない要件として示す「その損失負担等をしなければ今後より大きな損失を蒙ることになることが社会通念上明らかであると認められるためやむを得ずその損失負担等をするに至った等そのことについて相当な理由があると認められる」か否かを検討することになりますが、この(4)に当たらない場合は、9-4-1が示す要件も満たさないことが多い、すなわち寄附金となる場合が多いと考えられます。

 

 

 

 

 

 

 

税理士法人タクトコンサルティング 「TACTニュース」(2019/08/19)より転載

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[事業承継・M&A専門家によるコラム]

ICTを活用しM&A後の経理体制を合理的に作る【体験記】 ~事業承継に活用したい手法~

 

畑中孝介先生(ビジネス・ブレイン税理士事務所/税理士)に、「M&A後の経理体制」についてご解説いただきます。ぜひご参考にしてみてください。

 

〈解説〉

ビジネス・ブレイン税理士事務所(畑中孝介/税理士)

 


シリーズ事業承継の活用手法として、中小企業の事業承継や財産の分散防止に効果的な信託などを解説していますが、今回は「M&A後の経理体制を作る」【体験記】をお送りします。

 

 

今年3月にお客様の依頼で、M&Aのデューデリジェンスを行い5月に買収実施しました。

売上10億円の製造業の会社です。

 

その会社は社長と経理の奥様が一緒にご引退されることになりましたので、経理の後釜を探す予定でした。

 

当社に相談が来たのですが

 

(1)経理人材はなかなか募集しても来ない
(2)会社の営業事務や総務がしっかりされているので、基本的な資料はそろっている。

 

上記の2点から当社で経理事務を一括で請け負うことにしました。

結果下記の体制ができました。

 

 

(1)売上・原価は販売管理システムから仕訳を読み込み

(2)預金はFintech機能で自動計上

(3)現金は現金出納帳のエクセルから読み込み

(4)給与は勤怠データと修正事項だけお伝えいただき当社で計算し、振込データ作成→社長に確認承認いただく 会計データは給与計算システムから自動連動

(5)様々な証憑請求書はチャットワークに会社の人に貼っていただき当社で確認読込

(6)2クリックで会計データからデータを切り出し、会社のお好みの形式の経営管理データを一瞬にして作ることができる。

 

結果一部の仕訳以外99%が仕訳読込で 手入力はほぼなくなりました。

会計データも翌月8日程度には完成しています。

 

会社様も経理人材を雇用することなく
大幅なコストカット&属人的な業務に陥っていた体制が改善され
試算表も早く出ることになりました。

 

また、同時に売上データからセグメントデータも読み込んでいるため
セグメント管理も実現することができました。

 

その結果、社長、常務と業績等について話を聞く時間を十分に確保することができ、意思決定も早くなり、

 

会社の社長常務のお好みのセグメントデータも2クリックでリアルタイムに見ることができ経営陣のコミュニケーションも活発化し、大変喜ばれています。

 

ICTの活用で経理は1社一人もいらない時代になったんですね!

 

 

 

 

「ビジネスブレイン月間メルマガ(2018/11/20号)」より一部修正のうえ掲載

[解説ニュース]

配偶者居住権等と相続税の小規模宅地等の特例・物納の取扱い

 

〈解説〉

税理士法人タクトコンサルティング(山崎信義/税理士)

 

 

[関連解説]

■配偶者居住権が消滅した場合の相続税・贈与税の取扱い

■配偶者居住権等の評価

 

 

1.配偶者居住権の意義


被相続人の死亡時にその被相続人の財産であった建物に居住していた配偶者は、遺産分割または遺言により、その居住していた建物(以下「居住建物」)の全部につき無償で居住したり賃貸したりする権利(=「配偶者居住権」)を取得することができます(民法1028条第1項)。

 

2.配偶者居住権等と相続税の小規模宅地等の特例


(1)小規模宅地等の特例の概要

小規模宅地等の特例とは、個人が相続等により取得した宅地(土地又は土地の上に存する権利をいう。以下「宅地等」。)のうち被相続人又は被相続人と生計をーにしていた被相続人の親族(被相続人等)の事業の用又は居住の用に供されていた一定の宅地等(下図の4区分)について、相続税の申告期限までその宅地等を保有し、事業や居住の用に供するなど一定の要件を満たす場合は、被相続人等に係る相続税の計算上、一定の面積(限度面積)までの部分について、その相続税の課税価格を次のとおり減額する特例をいいます(租税特別措置法69条の4)。

 

 

(2)配偶者居住権等と小規模宅地等の特例の適用

配偶者居住権自体は、建物に関する権利であることから、宅地等に係る特例である、小規模宅地等の特例の適用を受けることはできません。
配偶者が配偶者居住権を取得した場合における、居住建物の敷地の利用権は、前述(1)の「土地の上に存する権利」に該当することから、上図④の特定居住用宅地等として小規模宅地等の特例の適用を受けることができます。
居住建物の敷地の所有権についても、その取得者が居住建物に被相続人と同居していた等の要件を満たすことにより、特定居住用宅地等として小規模宅地等の特例の適用を受けることができます(租税特別措置法69条の4第1項、第3項2号・財務省「平成31(令和元)年度税制改正の解説」539頁)。

 

3.配偶者居住権等と相続税の物納


(1)相続税の物納の概要

相続税法は、納税義務者が延納によっても金銭で納付することを困難とする事由がある場合に、税務署長の許可を受けることにより、その納付を困難とする金額を限度として金銭以外の一定の財産による納税(物納)が認められています(同41条第1項)。
相続税の物納に充てることができる財産(物納財産)とは、原則、納税義務者の相続税の課税価格計算の基礎となった相続財産(相続時精算課税の適用を受ける財産を除く。)で、日本国内に所在するもののうち一定のものをいい、譲渡制限が付されている株式など一定の財産は、管理処分に不適格な財産(「管理処分不適格財産」)として物納財産から除外されています(相続税法41条第2項、同施行令18条)。また物納財産が複数ある場合には、相続税法上、物納に充てることができる財産の順位が定められています(相続税法41条第2項、第5項)。

(2)配偶者居住権等と物納の適用

配偶者居住権自体は譲渡が禁止(民法1032条第2項)されていることから、上記3(1)の「管理処分不適格財産」に該当し、物納に充てることができません(相続税法41条第2項)。
配偶者居住権が設定された建物およびその敷地の所有権は、他の財産に比べて物納の順位が後れる「物納劣後財産」とされ、他に物納に充てるべき適当な財産がない場合に限り、物納に充てることができます(同法第4項)。

 

4.適用時期


上記2(2)と3(2)の取扱いは、配偶者居住権に関する民法の施行日である、令和2年4月1日以後に開始する相続により取得する財産に係る相続税について適用されます(改正法附則1条7号ロ)。

 

 

 

 

 

 

 

税理士法人タクトコンサルティング 「TACTニュース」(2019/08/13)より転載

[M&Aニュース](2019年7月29日〜8月9日)

◇ 昭文社<9475>、グアムのマリンスポーツ会社APRA DIVE & MARINE SPORTSの全事業を取得、◇アイビーシー<3920>、ナビプラスからセキュリティー事業を取得、◇第一交通産業<9035>、戸畑タクシーの事業を取得、◇アイモバイル<6535>、「パズルde懸賞」シリーズなどスマホゲームアプリのオーテを子会社化、◇サーラコーポレーション<2734>、イワキ傘下の動物医薬品卸2社を子会社化、◇伊藤忠テクノソリューションズ<4739>、インドネシアのIT企業Nusantara Compnet Integratorなど2社を子会社化  ほか

 

米投資会社エリオットがユニゾ株をさらに買い増し、所有割合7.71%に

◆米投資会社エリオット・マネジメントがホテル事業とオフィス賃貸事業を手がけるユニゾホールディングス株式の買い増しを続けている。エリオットが9日、前日に続き関東財務局に提出した大量保有の変更報告書によると、ユニゾ株の所有割合は1.09%高まり、7.71%となった。ユニゾは旅行大手のエイチ・アイ・エス(HIS)から敵対的TОB(株式公開買い付け)を仕掛けられているが、ユニゾ株価はTOB価格の3100円を上回る高値圏で推移している。

9日のユニゾ株の終値は2日続落し、前日比285円安の3400円。7月30日(3430円)以来の安値となったが、TOB価格よりもなお1割程度高い水準にある。エリオットによるユニゾ株の新規保有(5.51%)が判明したのは6日。

HISは7月11日にTOBを開始し、現在4.79%の所有割合を45%まで高める計画。TOB期間は23日まで。ユニゾ株価がTOB価格を上回る状態が続けば、株主の多くにとって市場売却した方が有利で、予定数の株式を買い付けることが困難とみられる。

TOB価格の3100円はTOB公表前日の終値1990円に55.78%のプレミアム(上乗せ)を加えた額。

 

ズーム<6694>、音楽用電子機器の米国合弁販社Zoom North Americaを子会社化

◆ズームは、持分法適用関連会社で音楽用電子機器の販売を手がける米Zoom North America,LLC(ニューヨーク州。売上高33億7000万円、営業利益4億2800万円、純資産10億3000万円)の株式17.3%を追加取得し、子会社化(所有割合50.6%)することを決議した。

ズームは2013年に北米の販売拠点として合弁でZoom North Americaを設立した。米国の音楽用電子機器市場は世界最大で、ズームの連結売上高の35%を占め、北米販売拠点の重要性が増している。過半数の株式を取得し、経営権を掌握することで北米市場を深耕し、「ズーム」のブランド価値向上につなげる。

取得価額は非公表。取得予定日は2020年1月30日。

 

エコモット<3987>、暖房設備機器・空調設備の保守管理を主力とするストークを子会社化

◆エコモットは、暖房設備機器・空調設備の製造や保守管理を主力とするストーク(札幌市。売上高8700万円、営業利益△1200万円)の全株式を取得し子会社化することを決議した。

ストークは2013年設立で、北海道を地盤に商業施設をはじめ公共施設、学校、医療・福祉施設向けに暖房設備機器などの導入実績を積んでいる。

エコモットは融雪システム遠隔監視システム「ゆりもっと」を手がけるが、これまで集合住宅向けが中心で、商業施設などへの展開を今後の課題としている。ストークを傘下に取り込むことで、商業施設を中心とした新たな需要を開拓する。

取得価額は非公表。取得予定日は2019年8月30日。

 

アイカ工業<4206>、無水マレイン酸メーカーの中国・南京鐘騰化工を子会社化

◆アイカ工業は、無水マレイン酸メーカーの中国・南京鐘騰化工有限公司(南京市。純資産約7500万円)の全株式を取得し子会社化することを決議した。取得価額は約13億2900万円。取得予定日は2019年8月下旬。

アイカ工業は中国子会社のダイネア南京社(南京市)を通じて南京鐘騰化工を子会社化する。ダイネア南京社は中国で建築用と産業用の接着剤・樹脂事業を手がけているが、販売量の拡大に伴い製造能力の増強が必要になっていた。

傘下に収める南京鐘騰化工は約6万3000平方メートルの土地使用権と化学品製造設備を持つが、現在、生産活動を停止中。ダイネア南京社と隣接する立地関係にある。

 

NJS<2325>、非破壊検査を手がける日本X線検査を子会社化

◆NJSは、鋼構造物やコンクリート構造物の非破壊検査を手がける日本X線検査(東京都大田区。売上高2億200万円)の全株式を取得し子会社化することを決めた。日本X検査が持つX線透過検査や超音波探傷検査などの技術を取り込み、サービス拡大につなげる。日本X線検査は1967年設立。

取得価額は非公表。取得予定日は2019年9月。

 

綿半ホールディングス<3199>、戸建木造住宅フランチャイズ事業のサイエンスホームを子会社化

◆綿半ホールディングスは、戸建木造住宅のフランチャイズ事業を手がけるサイエンスホーム(浜松市。売上高23億9000万円、営業利益1億7900万円、純資産4億2600万円)の全株式を取得し子会社化することを決議した。

サイエンスホームがフランチャイズ事業として展開する「真壁づくりの家」は柱や梁など家の構造材を見せる日本の伝統工法に基づく。国産の天然ひのきや加盟店の各地域で採材・加工した自然素材を利用し、国内の協力工場で加工した高品質な建材を供給している。

取得価額は非公表。取得予定日は2019年8月27日。

 

TKC<9746>、会計事務所向けに出版事業を手がけるTKC出版を株式交換で子会社化

◆TKCは、関連会社のTKC出版(東京都千代田区。売上高15億4000万円、営業利益8100万円、純資産6億1900万円)を株式交換により、完全子会社化することを決議した。

TKC出版は1972年に、TKCと会員の会計事務所(TKC会員)などが共同で出資して設立し、会員向け出版活動などを手がける。TKCの出資比率は現在、31.1%。株式交換で100%子会社化することで広報、出版活動の一層の充実を目指す。

株式交換比率はTKC1:TKC出版5。TKC出版の1株に対し、TKCの5株を割り当てる。株式交換予定日は2019年9月24日。

 

データセクション<3905>、小売り向け画像ソリューション事業のチリJach Technologyを子会社化

◆データセクションは、店舗内カメラの画像解析ソリューションを提供するチリJach Technology SpA(サンティアゴ)の株式の過半数を取得し、子会社化することを決めた。数年後に100%子会社化する見通し。

Jachは2010年に設立し、「FollowUP(フォローアップ)」と名づけた小売店向けの画像ソリューションを中南米や南アジアなど17カ国で展開している。データセクションは「FollowUP」に関して日本国内での営業・販売権を保有しているが、Jachを傘下に取り込むことで、成長著しい新興市場国に積極進出する。

取得価額は非公表。取得予定日は2019年10月。

 

ティーケーピー<3479>、レンタルオフィスの台湾リージャス社を買収

◆ティーケーピーは、レンタルオフィスの世界的大手スイスIWG傘下で、台湾で事業を運営する現地子会社13社(台湾リージャス社)の全持分を取得し、子会社化することを決議した。台湾リージャス社は「Regus」「SPACES」「HQ」のブラントを通じて3都市に計14拠点を展開する現地最大手のレンタルオフィス会社。取得価額は13社合算で約29億2700万円。取得予定日は台湾当局の承認後。

ティーケーピーは今後の海外戦略について、貸会議室単独での出店でなく、レンタルオフィスなど他事業と組み合わせた出店を進める方向。台湾進出にあたっては台湾リージャス社を買収し、貸会議室事業とともに出店することが最適と判断した。

スイスIWGは世界110カ国、1000都市・3300拠点以上、会員約250万人(2019年5月末)を持ち、「Regus」を多様なブラントでレンタルオフィス事業を展開する。ティーケーピーは今年6月、500億円近くを投じて、IWG傘下の日本リージャスホールディングス(東京都新宿区。売上高132億円)を買収している。

 

韓国マジェスティゴルフ、ゴルフ用品メーカーのマジェスティゴルフ(旧マルマン)<7834>をTOBで子会社化

◆韓国のマジェスティゴルフコリア(MAJESTY GOLF KOREA、ソウル)は9日、ジャスダック上場でゴルフ用品メーカーのマジェスティゴルフ(旧マルマン)の完全子会社化を目的にTOB(株式公開買い付け)を実施すると発表した。コリア社は現在、マジェスティゴルフ株式の37.68%を所有する筆頭株主。マジェスティゴルフの金在昱社長、金錫根取締役の両氏がコリア社の代表理事(代表取締役)を兼務していることから、今回のTOBはMBO(経営陣による買収)に該当する。

買付価格1株195円で、TOB公表前日の終値136円に43.38%のプレミアムを加えた。買付予定数は1073万5576株。買付代金は最大20億9343万円。買付予定数の下限は総議決権の3分の2に相当する499万3000株に設定。買付期間は8月13日~9月25日。決済開始日は9月30日。三田証券が代理人。

TOBを実施するコリア社は韓国投資会社モーツァルトアドバイザーズコリア(ソウル)の傘下企業。モーツァルトはマジェスティゴルフの株式13.32%を直接所有し、コリア社を通じた間接所有分を合わせてマジェスティゴルフ株式の51%を持つ親会社の地位にある。

マジェスティゴルフは1950年に創業したマルマンを前身とする。ゴルフクラブ、キャディーバッグなどのゴルフ用品を主力に、禁煙関連商品(禁煙パイポなど)、健康食品(各種サプリメント)を製造・販売している。2005年にジャスダックに上場。2018年10月にマルマンから現社名に変更した。コリア社は韓国の代理店としてゴルフ用品を独占的に販売している。

 

米投資会社エリオット、HISが敵対的TOBのユニゾ株を買い増し保有割合6.62%に

◆米投資会社エリオット・マネジメントは、旅行大手のエイチ・アイ・エス(HIS)から敵対的TОB(株式公開買い付け)を仕掛けられているホテル・不動産業のユニゾホールディングの株式を1.1%買い増し、所有割合を6.62%に高めた。8日、関東財務局に提出された大量保有の変更報告書で判明した。6日にエリオットによるユニゾ株の新規保有(5.51%)が明らかになったばかりだが、継続取得の投資スタンスが浮き彫りになった形だ。

8日のユニゾ株の終値は前日比25円安の3685円で、TOB価格の1株3100円を500円以上上回る高値圏にある。HISは7月11日にTOBを開始し、現在4.79%の所有割合を45%まで高める計画。だが、ユニゾ株価がTOB価格を上回ったまま推移すれば、予定数の株式を買い付けることが困難視される。

今後、エリオットが買い増しを継続すれば、TOB価格の引き上げを誘う思惑買いが広がり、ユニゾ株価が上伸する可能性もある。

ユニゾ株価はTOB公表時点から、1700円近く上昇している。

 

朝日印刷<3951>、マレーシアの印刷会社 Harleighなど2社を子会社化

◆朝日印刷は、マレーシアの印刷会社 Harleigh(ジョホールバル)、Shin-Nippon Industries(同) の2社の株式65%をそれぞれ取得し、子会社化することを決めた。

朝日印刷は医薬品・化粧品包材(パッケージ、添付文書、ラベルなど)の製造・販売を中核事業とする。今回傘下に収める両社は兄弟関係にある。いずれも1980年代後半に設立し、マレーシアにおける医薬品の包装資材分野で長年実績を積み、朝日印刷とも取引関係を持つ。現地に強力な足場を築き、ASEAN(東南アジア諸国連合)での事業拡大を目指す。

取得価額は約3億8000万円。取得予定日は2019年9月末日。

 

日本アンテナ<6930>、NTT-MEの「TVまるごとサポートサービス」を取得

◆日本アンテナは、エヌ・ティ・ティ エムイー(NTT-ME、東京都豊島区)の「TVまるごとサポートサービス」事業を取得することを決議した。人口減や新築住宅着工戸数の減少を背景に、日本アンテナが主力とするテレビ受像関連機器市場は変革期を迎えている。こうした中、集合住宅向けテレビ保守サービスを取り込むことで、競争力向上につなげる。

取得価額は非公表。取得予定日は2020年1月1日。

 

プラッツ<7813>、医療介護用電動ベッド組み立てのベトナム子会社を現地社に譲渡

◆プラッツは、医療介護用電動ベッドなどの品質検査や組み立てを行うベトナムの100%出資子会社 PLATZ VIETNAM(ドンナイ省)の全持分を、持分法適用関連会社の現地 SHENGBANG METAL(ドンナイ省)に譲渡することを決議した。

譲渡先のSHENGBANG METALはプレス加工や溶接加工を手がけ、プラッツが48%を出資する。PLATZ VIETNAMはこれまで医療介護用電動ベッドに使われるスチール部品について、SHENGBANG METALに生産を委託していた。主要部品の生産から品質検査、組み立てまでの工程を1社に集約することで、効率的な運営体制の構築を目指す。

譲渡価額は非公表。譲渡予定日は2019年9月中旬。

 

高島<8007>、トイレブース製作・施工のレストを子会社化

◆高島は、トイレブース製作・施工のレスト(静岡市。売上高18億2000万円、営業利益4000万円、純資産4億6300万円)の全株式を取得し子会社化することを決議した。

レストは1980年に設立し、オフィスビルなど非住宅分野の新築やリニューアル案件でトイレブースを主体とするパーティションの製作・施工で実績を積んできた。高島は同社を傘下に取り込み、建材ソリューション事業のサービス体制拡充につなげる。

取得価額は非公表。取得予定日は2019年10月1日。

 

クオールホールディングス<3034>、薬局のセラ・メディックを子会社化

◆クオールホールディングスは、薬局運営のセラ・メディック(大阪府堺市。売上高30億4000万円)の全株式を取得し、8日付で子会社化した。セラは1991年設立で、「プラザ薬局」「まりん薬局」「日の丸薬局」「わかば薬局」の屋号で保険薬局を大阪府に9店舗、奈良県に1店舗運営する。今回の子会社化でクオールグループの薬局数は803店舗となる。取得価額は非公表。

 

東海エレクトロニクス<8071>、藤田電機工業から半導体製品の販売事業を取得で合意

◆東海エレクトロニクスは、藤田電機工業(名古屋市)から半導体製品に関する販売事業を取得することで合意した。取得価額など詳細は未定だが、2020年以降に新体制をスタートする予定。取得する当該事業の業績は東海エレクトロニクスの2019年3月期連結売上高(約415億円)の10%を超える規模という。

藤田電機工業は1944年に設立し、電気・機械設備工事のほか、半導体など電子部品の販売を手がける。

 

レンゴー<3941>、産業用重量物包装メーカーの独トライコーなど2社を323億円で子会社化

◆レンゴーはドイツ子会社を通じて、産業用重量物包装メーカーのTRICOR Packaging&Logistics AG(トライコー社。売上高217億円、当期利益5億1300万円、純資産122億円)、機械製造のGutmann Anlagentechnik GmbH(グットマン社。売上高7億3600万円、当期利益3200万円、純資産8800万円)の現地2社を買収すると発表した。トライコー社の全株式、グットマン社の全出資持分を取得する。取得金額は合計約323億円。取得予定日は2019年8月20日。

トライコー社はドイツ国内に4工場があり、重量物包装の分野で欧州3位、ドイツ国内2位のシェアを持つ。レンゴーは同社を取り込むことで、重量物包装事業にとって重要な顧客である自動車産業のウエートが大きいドイツをはじめ欧州域内での事業拡大を目指す。

トライコー社ともう一方のグットマン社は支配株主が共通しグループ関係にある。

 

じげん<3679>、日本在住の外国人向け少額短期保険販売のビバビーダメディカルライフを子会社化

◆じげんは、日本在住の外国人向け少額短期保険販売のビバビーダメディカルライフ(神奈川県大和市。売上高1億6100万円、経常利益1300万円、純資産3300万円)の株式97.78%を取得し、子会社化することを決議した。

ビバビーダメディカルライフは2009年に少額短期保険業に登録し、主に外国人留学生、外国人技能実習生向けに医療保険、生命保険を提供している。2018年度末の契約保有件数は1万6000件に達し、200以上の学校や監理団体と取引する。

じげんは、グループの営業基盤や法人顧客、外国人ユーザー向けの販路を活用し、ビバビーダの業績向上を目指す。将来的には人材、不動産、自動車、旅行といった各既存領域で少額短期保険を活用した新規商材の開発、販売も視野に入れている。

外国人留学生、外国人実習生の日本国内総数は近年増加傾向が続いている。法務省によると、2018年末で留学生は33万人(前年比8%増)、実習生は32万人(同19%増)。

取得価額は非公表。取得予定日は未定。

 

サンデンHD<6444>、流通システム事業子会社のサンデン・リテールシステムを500億円でインテグラル傘下企業に譲渡

◆サンデンホールディングス(HD)は7日、業務用冷凍・冷蔵ショーケース、飲料用自動販売機を製造・販売する子会社のサンデン・リテールシステム(SDRS、群馬県伊勢崎市。売上高537億円、営業利益7億6400万円、純資産30億2000万円)の全株式を、投資会社インテグラル(東京都千代田区)の傘下企業に10月1日付で譲渡すると発表した。譲渡価額は500億円(株式譲渡398億円、ほかに貸付債権、有利子負債などを含む)。電気自動車の普及加速などに対応して成長領域の自動車機器事業に経営資源を集中するのが狙い。

事業譲渡先はインテグラルが100%出資して7月末に設立したSDRSホールディングス(東京都千代田区)。

サンデンHDは自動車機器事業と流通システム事業を経営の両輪とする。自動車業界は電気自動車や自動運転車に代表される100年に一度の大変革期に突入し、業界構造が大きく変化する中、自動車機器事業は競争力向上が急務になっている。一方、流通システム事業も顧客ニーズの変化や労働人口の減少を背景に、コンビニの24時間営業や物流業界の再配達などに関わる社会問題の解決が求められている。しかし、自動車機器、流通システムの両事業に対して、成長加速のために十分な経営資源を投入することは難しいと判断し、流通システム事業の譲渡を決断した。

自動車機器事業では電動コンプレッサーやヒートポンプ、水加熱電気ヒーターなどの空調領域の強化に加え、バッテリーやモーターなどの機器の温度管理領域への展開に力を入れている。

 

VTホールディングス<7593>、独VW・アウディの自動車ディーラーを子会社化

◆VTホールディングスは、外国車ディーラーの光洋自動車(北海道北見市。売上高31億円、営業利益1億5600万円、13億9000万円)の全株式を取得し子会社化することを決めた。

光洋自動車は1976年に設立し、北見市、旭川市、札幌市で独フォルクスワーゲン(VW)と独アウディの正規ディーラーとして、VW3店舗、アウディ2店舗を運営する。

取得価額は非公表。取得日は2019年8月6日。

 

SANKYO<6417>、毒島会長の資産管理会社マーフコーポレーションにゴルフ場運営・不動産事業を譲渡

◆SANKYOは子会社の三共クリエイト(東京都渋谷区)からゴルフ場運営事業と不動産賃貸事業の一部を承継するために設立する新会社2社の全株式を、マーフコーポレーション(東京都港区)に譲渡することを決議した。マーフコーポレーションはSANKYO会長の毒島秀行氏の資産管理会社で、SANKYO株式の34.92%を保有する筆頭株主。経営資源をパチンコ・パチスロの遊技機関連事業に集中する一環。

三共クリエイトは群馬県高崎市内にゴルフ場「吉井カントリークラブ」を保有するほか、SANKYO本社ビルなどグループ内使用の不動産(群馬県高崎市)を保有・管理運営する。吉井カントリークラブと、不動産事業を会社分割によりそれぞれ10月1日付で新会社に移管したうえで、両社の全株式をマーフコーポレーションに譲渡する。

譲渡価額は非公表。譲渡予定日は2019年10月1日。

 

ティーライフ<3172>、日本ヘルスケアアドバイザーズから一般漢方製剤の通販事業を取得

◆ティーライフは、日本ヘルスケアアドバイザーズ(東京都港区)から一般用漢方製剤の通信販売事業を取得することを決議した。ティーライフは健康茶や化粧品などを中心に通販事業を手がけるが、今回の事業取得を通じて、伸び代のある医薬品の販売拡大が期待できるとしている。当該事業の業績は売上高3億7200万円、営業利益△2億7100万円。取得価額は非公表。取得日は2019年9月1日。

 

エボラブルアジア<6191>、ディスカウントチケットのナショナル流通産業を子会社化

◆エボラブルアジアは、各種商品券などディスカウントチケット事業を手がけるナショナル流通産業(大阪市。売上高137億円、営業利益7290万円、純資産977万円)を株式交換により、子会社化することを決めた。

ナショナル流通産業の前身の旧ナショナル流通産業は2017年4月に民事再生を申し立てて、同名の新会社を設立したうえで事業を譲渡した。

株式交換比率は未確定。株式交換予定日は2019年8月30日。

 

九州フィナンシャルグループ<7180>、総合リース業のJR九州フィナンシャルマネジメントを子会社化

◆九州フィナンシャルグループは傘下の肥後銀行を通じて、JR九州傘下で金融サービス会社のJR九州フィナンシャルマネジメント(JFM、福岡市。売上高53億2000万円、営業利益1億8600万円、純資産18億8000万円)の株式90%を取得し、子会社化することを決めた。取得価額は非公表。取得予定日は2019年10月2日。

JFMは1988年に設立し、総合リース事業のほか、JR九州向けにキャッシュマネジメントサービス事業と財務シェアードサービス事業を手がけている。このうち、総合リース以外の2事業は10月1日付でJR九州のグループ子会社に移管したうえで、総合リース事業に専念することになっている。九州フィナンシャルグループはJR九州グループから総合リース事業を取り込み、地域総合金融機能の向上を目指す。

 

アクセル<6730>、ソニーネットワークコミュニケーションズ傘下で画像処理技術のモーションポートレートを子会社化

◆アクセルは、ソニーネットワークコミュニケーションズの全額出資子会社で画像認識に関する技術開発を手がけるモーションポートレート(東京都渋谷区)の全株式を取得し子会社化することを決議した。人工知能の一つである機械学習領域の事業を加速するのが狙い。

モーションポートレートはソニー木原研究所の出身者を中心に設立し、画像認識や画像処理の技術開発力を強みに、静止画から自動的にアニメーションを生成する「MotionPortrait」技術によるIP(知的財産権)ライセンスや開発支援サービスを提供している。

取得価額、取得予定日は非公表。

 

デファクトスタンダード<3545>、wajaの電子商取引事業を取得

◆デファクトスタンダードは、EC(電子商取引)運営のwaja(東京都港区)から主要事業を取得することを決議した。取得するのは、バイヤーが現地で仕入れた商品を販売する「WORLDROBE」、ブランド公式出店のマーケット「REASONアウトレット」、ファッションアイテムの寄付と買い物で社会貢献できる通販サイト「FASHION CHARITY PROJECT」、マーケットモール「waja」の運営。当該事業の売上規模は5億1500万円。

取得価額は非公表。取得予定日は2019年9月1日。

 

昭文社<9475>、グアムのマリンスポーツ会社APRA DIVE & MARINE SPORTSの全事業を取得

◆昭文社はグアム子会社を通じて、現地のマリンスポーツ会社APRA DIVE & MARINE SPORTS, INC.の全事業を取得することを決めた。昭文社は今年5月、グアムにジェットスキー、パラセーリングなどアクティビティー事業やリゾート施設からなる「グアムオーシャンパーク(GOP)」を全面開業した。2001年に設立以来、マリンスポーツ分野で実績を積んできたAPRAの事業を取り込み、現地でのサービス体制を充実させる。取得価額は非公表。取得日は2019年8月2日。

GOPの運営にあたり、これまでAPRAと外注関係にあった。GOPのビーチは遠浅のため、引き潮時はジェットスキーやバナナボートなどが実施できないことから、その場合はAPRAへ送客していた。また、APRAはGOPのあるアガニャ湾では実施できないパラセーリング可能な場所を保有する。APRA の事業取得により、各種アクティビティーについて内製化・ 自社催行化が可能となり、収支の向上に寄与すると判断した。

 

アイビーシー<3920>、ナビプラスからセキュリティー事業を取得

◆アイビーシーは、IT関連のナビプラス(東京都渋谷区)からセキュリティー事業を取得した。対象事業は脆弱性診断サービス、Webサイトの身元証明などに必要となるSSL証明書クーポン販売など。サイバーセキュリティー脅威の高まりに対応してサービス体制を拡充する狙い。取得価額、取得日は非公表。

 

第一交通産業<9035>、戸畑タクシーの事業を取得

◆第一交通産業は戸畑タクシー(北九州市)のタクシー事業(タクシー26台を保有)を7月23日付で取得した。これにより、北九州市内では既存のグループ8社608台と合わせて保有634台となる。

 

アイモバイル<6535>、「パズルde懸賞」シリーズなどスマホゲームアプリのオーテを子会社化

◆アイモバイルは、スマートフォン向けアプリの企画・開発などのオーテ(東京都北区。売上高1億4800万円、営業利益7500万円、純資産1億300万円)の全株式を取得し子会社化することを決議した。

オーテは2014年に設立。「パズルde懸賞」シリーズを中心に「ナンプレde懸賞」「クロスワードde懸賞」などのスマホ用ゲームアプリを提供している。アイモバイルは自社のインターネット広告事業のノウハウを生かし、オーテの保有するアプリ内での広告収入の収益性向上などにつなげる。

取得価額は5億円。取得予定日は2019年8月9日。

 

サーラコーポレーション<2734>、イワキ傘下の動物医薬品卸2社を子会社化

◆サーラコーポレーションは、イワキ子会社で動物用医薬品の卸売りを手がけるホクヤク(札幌市。売上高8億1400万円、営業利益700万円、純資産△1000万円)、エイ・エム・アイ(千葉県山武市。売上高12億5000万円、営業利益2100万円、純資産1億5200万円)の2社の全株式を取得し、子会社化することを決議した。北海道への進出の足掛かりとする一方、関東地区での事業強化が狙い。取得価額は非公表。取得予定日は2019年9月2日。

 

伊藤忠テクノソリューションズ<4739>、インドネシアのIT企業Nusantara Compnet Integratorなど2社を子会社化

◆伊藤忠テクノソリューションズは、インドネシアのIT企業PT. Nusantara Compnet Integrator(ジャカルタ。売上高72億7000万円、純資産17億6000万円)など現地2社の株式それぞれ70%を取得し子会社化することを決めた。取得価額は未確定。取得予定日は2019年9月。

今回子会社化するのはNusantara Compnet のほか、PT. Pro Sistimatika Automasi(ジャカルタ。売上高3億3000万円、純資産8700万円)。両社ともシステム構築とアプリケーション開発を主軸とする。なかでもNusantara Compnetはインドネシア全土に33拠点からなる保守ネットワークを持つ。

伊藤忠テクノは現地有力2社を傘下に取り込み、ASEAN(東南アジア諸国連合)地域でも市場規模の大きいインドネシアでの事業拡大につなげる。

伊藤忠テクノは現在、ASEANでマレーシア、シンガポール、タイ、インドネシアの4子会社を通じて、金融、政府・公共機関を中心に現地企業や日系企業にITサービスを提供している。

 

クオールホールディングス<3034>、医薬品製造販売の藤永製薬を子会社化

◆クオールホールディングスは、医療用医薬品を製造販売する藤永製薬(東京都千代田区。売上高17億6000万円)の全株式を取得し子会社化することを決議した。医薬品の製造販売事業へ本格参入するのが狙い。藤永製薬は1941年に設立。取得価額は非公表。取得予定日は2019年8月8日。

 

ジェイ・エス・ビー<3480>、学生向け賃貸マンション事業の東京学生ライフなど3社を傘下に

◆ジェイ・エス・ビーは、学生向けに賃貸マンションの管理・運営を手がける東京学生ライフ(東京都渋谷区。売上高2億2300万円、営業利益500万円、純資産6000万円)など3社を買収することを決議した。3社は大株主が共通し兄弟関係にある。それぞれの全株式を取得し、8月30日付で子会社化する。取得価額は非公表。

買収するのは東京学生ライフのほか、学生向け賃貸マンション管理の湘南学生ライフ(神奈川県藤沢市。売上高4700万円、営業利益200万円、純資産600万円)、広告制作のケイエルディ(東京都杉並区。売上高4800万円、営業利益300万円、純資産1600万円)。

ジェイ・エス・ビーは関西を地盤に学生マンション事業の運営を主力とする。今回3社を傘下に取り込むことで、未出店エリアでの事業拡大、未提携の教育機関との関係構築などの相乗効果を期待している。

 

京成電鉄<9009>、茨城県内を地盤とする関東鉄道をTOBで子会社化

◆京成電鉄は31日、茨城県内を中心に鉄道事業やバス事業を手がける関東鉄道(茨城県土浦市)に対し、子会社化を目的にTOB(株式公開買い付け)を実施すると発表した。買付価格は1株あたり500円。買付予定数は709万5544株で、予定通り買い付けられれば、出資比率は現在の30.09%(間接所有を含む)から約99%に高まる。買付代金は最大35億4700万円。買付期間は8月1日から10月1日まで。

関東鉄道は茨城県内と千葉県の一部を事業エリアとする。同社は1922年に鹿島参宮鉄道として設立され、1965年に常総筑波鉄道と合併し、現在の社名となった。京成鉄道は旧鹿島参宮鉄道、旧常総筑波鉄道とそれぞれ資本関係があり、1992年以降、関東鉄道を持分法適用関連会社としている。

京成電鉄は関東鉄道とこれまで、営業・安全施策で情報交換、資材の共同購入、大規模自然災害時の復旧支援、高速バスの共同運行などの緩やかな連携を行ってきた。グループの経営体制を強化するためには子会社化を通じた強固な協力関係の構築が必要と判断した。

決済日は10月8日。買付の決済は、みずほ証券。

 

日本産業パートナーズ、防衛装備品などの日本アビオニクス<6946>をTOBで子会社化へ

◆事業再生型ファンドの日本産業パートナーズ(東京都千代田区)は、NEC傘下で防衛装備品などを手がける日本アビオニクス(東証2部)に対してTOB(株式公開買い付け)を実施し、子会社化すると発表した。親会社のNECは保有する全株式(所有割合50.11%)についてTOBに応募する。日本アビオニクスはTOBに賛同している。買付期間は20営業日とし、12月中旬からのTOB開始を目指している。日本アビオニクスの上場は維持する。

買付主体は日本産業パートナーズ傘下のNAJホールディングス。買付価格は1株につき1100円。TOB公表前日の終値1223円に対して10.06%のディスカウント。買付予定数の上限は155万6500株(所有割合55.12%)で、NECが保有する株式数を下限とする。買付代金は最大17億1200万円。

日本アビオニクスは1960年、防衛用や一般産業用電子機器に使われる部品などの製造販売を目的に、米ヒューズ・エアクラフト・カンパニーとの合弁で日本アビオトロニクスとして発足。1980年に日本アビオニクスに社名変更した。1988年に東証2部に上場した。

近年、宇宙・防衛市場では防衛省が防衛装備品の調達は国内メーカーから海外メーカーへシフトを進めており、国内メーカーの劣勢が今後も予想される。日本アビオニクスの業績も2019年3月期まで2年連続で営業赤字に陥っている。NECは日本産業パートナーズをパートナーとして迎え入れ、日本アビオニクスの事業立て直しを期待している。

 

ワコールホールディングス<3591>、米の女性用インナーウエア企画販売会社「Intimates Online」を子会社化

◆ワコールホールディングスは、米国の女性用インナーウエア企画販売会社Intimates Online, Inc.(IO、ニューヨーク。売上高12億4000万円、営業利益△3億9800万円、純資産8億2200万円)の全株式を取得し子会社化することを決議した。

IO 社は2015 年に設立。「LIVELY(ライブリー)」ブランドを主軸に自社Eコマース(電子商取引)を主要販路としつつ、ニューヨーク・シカゴ市内には直営店舗も持つ。SNS(会員制交流サイト) をはじめ新しいデジタルメディアを顧客とのコミュニケーションツールとして活用する DNVB(デジタル・ネイティブ・ヴァーティカル・ブランド)と呼ばれる新興企業の一つ。

ワコールは同社をグループに迎え、ミレニアル世代の顧客を獲得し、Eコマース売上やデジタルマーケティング手法を通して将来の成長を取り込む考え。行く行くはワコールのネットワークを活用して、米国以外の地域への展開も視野に入れる。

取得価額は約91億8000万円。これに加え、業績の達成度に応じて条件付き取得対価(アーンアウト対価)をIO 社の現株式所有者に支払う条項を盛り込む予定。取得予定日は2019年8月2日。

 

アートネイチャー<7823>、女性用ウィッグ製造・販売のNAO-ARTを子会社化

◆アートネイチャーは、女性用ウィッグ(つけ毛)の製造・販売を手がけるNAO-ART(東京都千代田区。売上高9億600万円、営業利益1億5700万円、純資産2億8200万円)の全株式を取得し子会社化することを決議した。多様化する女性用市場のニーズに対応するため、新たな商品ブランドを獲得する。取得価額は非公表。取得予定日は2019年10月1日。

 

Jストリーム<4308>、医薬系のインターネット関連事業を手がけるビッグエムズワイを子会社化

◆Jストリームは、医薬系のインターネット関連事業を手がけるビッグエムズワイ(東京都文京区。売上高13億2000万円、営業利益1億2100万円、純資産2億1000万円)の株式61%を追加取得し、完全子会社化することを決議した。

ビッグエムズワイは1994年に設立し、インターネットを活用して医師に医薬情報を提供するディテーリングの草創期から、関連するデジタルコンテンツの制作で実績を積んできた。近年はМR(医薬情報担当者)向けのCLМ(クローズド・ループ・マーケティング)のコンテンツ制作に力を入れている。

Jストリームは2018年7月に同社に出資した。自社の主力事業である医薬業界向けライブ映像配信事業とビッグエムズワイが提供するCLМコンテンツ制作などの事業との協業体制を築いてきた。今回の子会社化で事業の深化と業容拡大を推し進める。

取得価額は3億5400万円。取得予定日は2019年8月30日。

 

メルカリ<4385>、プロサッカーチーム「鹿島アントラーズ」を子会社化

◆メルカリは、プロサッカーチーム「鹿島アントラーズ」を運営する鹿島アントラーズ・エフ・シー(茨城県鹿嶋市。売上高73億3000万円、営業利益5億8300万円、純資産21億6000万円)の株式61.6%を取得することを決議し、日本製鉄と株式譲渡契約を締結した。メルカリは2017年からスポンサーとして鹿島アントラーズにかかわってきたが、関係をより強固にするため、子会社化によって経営に参画する。取得価額は15億9700万円。取得予定日は2019年8月30日。

鹿島アントラーズは1991年10月、日本プロサッカーリーグ(Jリーグ)参加球団の一つとして、住友金属サッカー団を母体に発足した。国内3大タイトル(J1リーグ、Jリーグカップ、天皇杯全日本サッカー選手権大会)で最多優勝回数を誇る。2018年にはアジアでのナンバー1クラブを決めるAFCチャンピオンズリーグで優勝するなど、日本だけでなくアジアを代表するサッカークラブとして知られる。

 

日本M&Aセンター<2127>、OKINAWA J-Adviser(沖縄県名護市)から「J-Adviser」事業を取得

◆日本M&Aセンターは、地域振興支援サービスや株式上場支援サービスを手がけるOKINAWA J-Adviser(沖縄県名護市)から「J-Adviser」事業を取得することを決めた。日本M&Aセンターは7月半ば、TOKYO PRO Market(TPM)で上場審査や上場維持のための助言・指導を行うJ-Adviser資格を取得した。TPMの創成期からJ-Adviserとして実績とノウハウを持つ OKINAWAから当該事業(売上高は約1億円)を譲り受けることによって、新たに開始したJ-Adviser 事業の早期立ち上げと収益基盤の構築につなげる。取得価額は非公表。取得予定日は2019年7月31日。

 

大阪ガス<9532>、米シェールガス開発「サビン」を約650億円で買収

◆大阪ガスは29日、シェールガス開発会社の米サビン オイル&ガス コーポレーション(テキサス州)を買収すると発表した。米子会社を通じて全株式を取得する契約を締結した。米のシェールガス開発会社を傘下に収めるのは日本企業として初めて。取得価額は約650億円。年内に買収完了を見込む。大阪ガスは米国でフリーポートLNG(液化天然ガス)事業、発電事業に続く3本目の柱として育成する。

サビンは米テキサス州東部に琵琶湖の1.5倍に相当する約1000平方キロメートルの鉱区を保有し、現在約1200本の井戸からLNG換算で年間約170万トン相当のガスを生産している。大阪ガスは2018年7月にサビンが保有する鉱区の約半分にあたる東側のガス田権益35%を取得しているが、今回の買収で西側も含めてサビンが持つ全鉱区を所有することになる。

 

デジタルハーツホールディングス<3676>、ソフトウエアテスト事業の米LOGIGEAR CORPORATIONを子会社化

◆デジタルハーツホールディングスは、ソフトウエアテスト事業やテスト自動化支援を手がける米LOGIGEAR CORPORATION(カリフォルニア州。売上高12億9000万円、当期純利益1100万円、純資産2900万円)の株式51%を第三者割当増資などで取得し、子会社化することを決議した。

LOGIGEARはソフトウエアテスト業界の権威とされるHung Q. Nguyen氏が1996年に設立したテスト自動化の有力企業。同社はシリコンバレーの最先端技術を結集した独自のテスト自動化ツール「TestArchitect」を展開し、ベトナムのオフショア拠点(ホーチミン)では約 500人のテスト自動化エンジニアを抱える。

デジタルハーツはシステムテストサービス事業を経営の柱の一つに育成中。LOGIGEARを傘下に取り込むことで、電子商取引や自動車など自動化と親和性の高い大規模かつ継続的なテスト案件の獲得に注力する。

取得価額は8億6700万円。取得予定日は2019年8月1日。

 

 

 

情報提供:株式会社ストライク

[事業承継・M&A専門家によるコラム]

個人版事業承継税制の創設 ~事業承継に活用したい手法~

 

〈解説〉

ビジネス・ブレイン税理士事務所(畑中孝介/税理士)

 


日本の中小企業では事業承継が喫緊の課題となっています。

 

社長の平均年齢は68歳となり、このまま何もしないと127万社もの
中小企業が消滅するかもしれないということで平成30年度税制改正で
特例事業承継税制が創設されました。

 

この特例事業承継税制は、相続税贈与税の全額猶予や雇用確保要件の緩和、
倒産廃業時の価格の引き下げなど懸案事項を大幅に改善され、
事業承継計画の申請件数は例年の約10倍と一気に事業承継税制の適用が増加しています。

 

また、特例事業承継税制の創設が契機となりM&Aなどの事業承継も
一気に加速した感じがあります。
(私の肌感覚では以前の2-3倍の案件が進捗し始めたイメージです)

 

一方で上記の対策は法人に限定されており個人事業者は置き去りにされていました。

法人と異なり事業資産と家計資産が明確に分離されていないなどの懸念点があったためです。

 

しかし、個人事業者209万人のうち150万人(73%)が
70歳以上と高齢化は法人事業者より深刻でして、それに対し平成31年税制改正では
個人版事業承継税制が創設されることになりました。

 

基本的には法人版の事業承継税制と同様のフレームワークとなっています。

 

 

・承継計画は5年間で提出

 

・贈与相続開始期間は約10年間

 

・事業用資産は、土地建物は一定面積まで、その他の減価償却資産は
 青色申告書に添付されているBSに計上されたもの

 

・中小企業経営承継円滑化法の認定が必要

 

・計画には認定支援機関の認定が必要

 

・特定事業用宅地等との併用不可

 

・法人版と異なり事業制限なし(法人版は医療法人税理士法人等は適用不可)

 

・その他全額納税猶予・減免措置などは法人版事業承継税制とほぼ同じです。

 

 

相続後の取り扱いや個人事業との線引きの難しさなどもありますし、
特定事業用宅地の特例との選択などもありますので、
法人版事業承継より若干使いにくい感じがします。

 

法人税率は30%弱まで下がっていますので、将来的な問題まで考えると
個人的には法人化のメリットがあるのではないかなと思っています。

 

 

「ビジネスブレイン月間メルマガ(2019/07/09号)」より一部修正のうえ掲載

[初級者のための入門解説]

中小企業におけるM&Aの利用方法は?  ~ゼロから学ぶ「M&A超入門」⑤~

 

M&A実務の基礎ポイントを、わかりやすく解説する「ゼロから学ぶ『M&A超入門』」シリーズ。

今回は、「中小企業におけるM&Aの利用方法は?」について解説いたします。

 

〈解説〉

公認会計士・税理士  植木康彦(Ginza会計事務所)

 

 

売り手サイド

M&Aによる売り手の目的としては、選択と集中によるノンコア事業の売却、事業再編、事業売却による資金調達、事業の売却によるリタイヤなどがありますが、最近は事業承継がらみのケースが多く発生しております。

 

事業承継でM&Aを選択するのは、親族や役員・従業員の中に後継者がいない場合に、事業自体をM&Aで売却するときに利用されます。

 

我が国経営者の平均引退年齢は70歳超と言われていますが、その中小企業経営者は245万人(全中小企業者の60%)で、その半数の127万人が廃業を予定していると言われています。廃業予定の理由としては、そもそも後継者がいない、あるいは後継者がいても継いでくれない、が多数を占め、更に残念なことは廃業予定者のうち30%程度は健全な会社が存在することです。

 

いわずもがな我が国経済は中小零細企業によって支えられていると言っても過言でなく、中小零細企業の減少はやがて日本株式会社の終焉を意味する大問題です。

 

他方、いつの時代にもやる気のある起業家や元気な企業が存在することも事実であり、かれらとうまくマッチングできれば廃業を免れることも可能となるのです。

 

 

 

買い手サイド

M&Aの買い手は、一昔前はファンドが多かったようですが、今日では事業会社や個人起業家など、プレーヤーが多様化しています。それでは買い手の目的は、何でしょうか。一般的には以下のように言われております。

 

 

①新規の事業目的

既存の企業が事業を多角化しようとする場合、あるいは、事業ポートフォリオの組み換えをする場合、ゼロから事業を始めるよりも既に得意先やスタッフを抱えた事業を取得する方が容易です。特に、参入障壁が高い事業領域ではM&Aでないと参入できないケースがあります。

 

例)ソフトバンクによるボーダフォンジャパン買収による携帯電話事業への参入

 

 

②関連事業の拡大目的

川上又は川下への参入(アパレルによる小売事業への参入)、商品やサービスの拡充を目的としたM&Aがあります。

 

例)家電量販店ビックカメラによるコジマの買収による広い地域での店舗展開

 

 

③ブランド、許認可目的

ブランドや許認可の取得は容易ではないので、保有する企業自体を取得するM&Aがあります。

 

例)コンビニエンスストアのローソンによる成城石井の買収により、成城石井ブランドにより富裕層地域への出店

 

 

④人員目的

ますます雇用の確保が難しくなってきており、優秀な人員の確保を目的としてM&Aをする例が多くなっています。

 

例)IT技術者の雇用確保を目的としたM&A

 

 

M&A仲介会社とマッチングサイトの使い分け

M&Aをする場合、検討すべき項目として費用と手間があります。

 

M&A仲介会社に依頼すると500万円~2000万円以上の費用がかかるので、費用の捻出が難しい場合や売り手企業の事業規模が小さい場合には、日本税理士会連合会の運営する「担い手探しナビ」、国が営む「事業引継ぎ支援センター」、トランビ等の民間のマッチングサイトの利用が検討されます。

 

しかしながら、M&Aに際して、M&A仲介会社を利用するのは一般的な方法です。M&A仲介会社は、M&Aマーケットに広いネットワークを有しているので、売り手、買い手共に短時間のうちに相手先を探してもらうことができ、売買交渉やデューデリジェンス、バリエーション、売買契約までフルパッケージでしっかりと支援してもらえる場合が多いと言えます。他方で、専門家をフルに活用するのでそれなりの費用がかかり、今日まで中小企業のM&Aが活性化してこなかった理由が費用面にあると言っても過言ではありません。

 

マッチングサイトとは、主にインターネット上で、売り手と買い手がそれぞれM&A情報を掲載し、手軽に、かつ安価なコストで、自分自身で相手先を探せる場所(サイト)です。端的に言うと、売り手は、まずノンネームといわれる情報(対象会社が特定できないように、業種、地域、おおよその年商のみ)を掲載して買い手からの応募を待ち、買い手は、業種や地域を絞った上で希望するM&A候補を探すことができます。売り手と買い手がうまく出会えた場合は、次のステップとして更に詳細な情報を交換して、お互いの希望がマッチすれば売買条件を詰め、最終的に売買契約(M&A)に至りますが、専門家の関与が少なければ少ないほどコストは安価ですむので、中小企業のM&Aに適していると言えます。そうはいっても、多くの中小企業者はM&Aの経験が無く知見が足りない場合が多いので、マッチングサイトを提供する会社や組織は、公認会計士・税理士やM&Aアドバイザリー等、各種専門家と提携していて、マッチングの場の提供だけでなく、売買交渉やデューデリジェンス、バリエーション業務を支援するケースもあります。

 

日本税理士会連合会の運営する「担い手探しナビ」は、マッチングサイトの一種ですが、誰でも参加できるわけでなく、税理士を通して行う点に特徴があります。もともとは北陸税理士会が行っていたサービスを好評につき全国版に拡大し2018年10月から運用を開始したもので、システム利用料も無料のため、利用の拡大が期待されています。「担い手探しナビ」は、クライアントを良く知る税理士が関与することで安心感が得られ社会的にも大きな意義があります。また、日本M&AセンターはM&A仲介会社として知名度の高い会社ですが、中小企業向けのマッチングサービスとして「Batonz」を始めており、注目を集めています。

 

M&Aアドバイザリー(仲介会社やマッチングサイト)のそれぞれの特徴と費用のイメージは以下のとおりです。

 

 

 

M&Aはだらだら時間をかけてするものではありません。

期限を設けて迅速に行う必要があるので、上記の複数の方法によってM&Aを行う場合もあります。

 

 

 

 

 

[税理士のための税務事例解説]

事業承継やM&Aに関する税務事例について、国税OB税理士が解説する事例研究シリーズです。

今回は、「適格合併における従業員引継要件」についてです。

 

[関連解説]

■【Q&A】適格合併の適否及び被合併法人の未処理欠損金の引継ぎ制限

■【Q&A】合併における税制適格要件について

 

 

 


[質問]

「A社」は「B社」を吸収合併する予定です。株式保有は50%超(100%ではない)で、適格要因として「金銭不交付要件」「支配関係継続要件」「事業継続要件」は満たしています。しかし、「従業者引継要件」を満たすかどうかの判断で悩んでいます。「A社」と「B社」の雇用形態が異なるので「B社」の従業者は合併までに一度退職金を支払って退職してもらい「A社」で再雇用をしたいと思います。何か良い方法(適格要件を満たす)はあるのでしょうか。

 

[回答]
1 適格合併

(1) 適格合併の要件

法人税法上、次のいずれかに該当する合併で被合併法人の株主等に合併法人株式又は合併親法人株式のいずれか一方の株式又は出資以外の資産が交付されないものは適格合併に該当します(法人税法2十二の八)。

 

イ その合併に係る被合併法人と合併法人との間に完全支配関係がある場合の当該合併(法人税法2十二の八イ、法人税法施行令4の3②)。

ロ その合併に係る被合併法人と合併法人との間に支配関係がある場合の当該合併のうち、「所定の要件」を満たすもの(法人税法2十二の八ロ、法人税法施行令4の3③)。

ハ その合併に係る被合併法人と合併法人とが共同で事業を行うための合併として法人税法施行令第4条の3第4項に掲げる要件(共同事業要件)の全てに該当するもの(法人税法2十二の八ハ、法人税法施行令4の3④)。

 

(2) 従業者引継要件

上記(1)ロの「所定の要件」及びハの共同事業要件の一つに、いわゆる「従業者引継要件」があります。

 

具体的には、合併に係る被合併法人の当該合併の直前の「従業者」のうち、その総数の概ね80%以上に相当する数の者が当該合併後に当該合併に係る合併法人の業務に従事することが見込まれていることを、その要件としています(法人税法2十二の八ロ(1)、法人税法施行令4の3④三)。

 

ここで、「従業者」とは、役員、使用人その他の者で、合併の直前において被合併法人の合併前に行う事業に現に従事する者をいうものとされています(法人税基本通達1-4-4)。

 

2 合併契約

会社は、他の会社と合併をすることができる。この場合においては、合併をする会社は、合併契約を締結しなければならない(会社法748①)。

吸収合併存続株式会社は、効力発生日に、吸収合併消滅会社の権利義務を承継するものとされています(会社法750)。

 

3 お尋ねについて

お尋ねによれば「被合併法人であるB社と合併法人であるA社との間には支配関係があり」、「金銭不交付要件、支配関係継続要件及び事業継続要件を満たしている」とのことですので、お尋ねの合併が適格合併に該当するためには、従業者引継要件を満たす必要があります。以下、適格合併における「従業者引継要件」の考え方をお示しします。

 

(1) 会社法においては、吸収合併が行われた場合、その合併により消滅する法人(被合併法人)の権利義務の全部は、合併の効力発生日において、合併後存続する法人(合併法人)に承継されますので(会社法750)、当該合併に際し特段の合意がない限り、被合併法人の従業者の地位も合併法人に承継されることになります。

 

お尋ねの合併においては、合併の日の前日に被合併法人B社の全従業者は、B社を退職して雇用契約を終了し、雇用契約は合併法人A社に承継されないことから、形式的にはA社はB社の従業者を引き継いでいないことになります。

 

 

(2) 法人税法における従業者引継要件においては、「合併に係る被合併法人の当該合併の直前の従業者のうち、その総数のおおむね80%以上に相当する数の者が当該合併後に当該合併に係る合併法人の業務に従事することが見込まれていること」と規定している(法人税法施行令4の3④三)ことから、文理上、当該被合併法人の従業者の地位、具体的には被合併法人の従業者の権利義務や当該被合併法人の従業者と被合併法人との間の雇用契約等が必ずしも合併法人に承継されることまでをその要件とはしていないものと考えられます。

 

また、従業者引継要件における「従業者」とは、「役員、使用人その他の者で、合併の直前において被合併法人の合併前に行う事業に現に従事する者」とされている(法人税基本通達1-4-4)ことから、その従業者がその合併の直前の従業者に該当するか否かを判断するに当たって、雇用契約の有無といった契約形態は直接には関係がないものと考えられます。

 

 

(3) (1)及び(2)のことから、被合併法人の従業者の雇用契約等が合併法人に承継されるか否かということとは関係なく、被合併法人の合併の直前の従業者の総数のおおむね80%以上に相当する者が合併後に合併法人の業務に従事することが見込まれているのであれば、従業者引継要件を満たすと考えられます。

 

したがって、お尋ねの場合、「B社の従業者は合併までに一度退職金を支払って退職してもらい、A社で再雇用する予定」とのことですので、合併の前日までに被合併法人であるB社とその従業者との間の雇用契約等は終了(退職)するものの、合併後において、被合併法人の合併の直前の従業者が引き続き合併法人であるA社の業務に従事することが見込まれていますので、従業者引継要件を満たすものと考えて差し支えないものと思われます。

 

 

税理士懇話会事例データベースより

(2019年6月12日回答)

 

 

 

 

[ご注意]

掲載情報は、解説作成時点の情報です。また、例示された質問のみを前提とした解説となります。類似する全ての事案に当てはまるものではございません。個々の事案につきましては、ご自身の判断と責任のもとで適法性・有用性を考慮してご利用いただくようお願い申し上げます。

 

 

 

 


[中小企業経営者のためのワンポイント解説]

「親族外承継における課題」~コンサルティングという観点からの『事業承継』とは?⑤~

 

コンサルティングという観点からみた「事業承継」と題した5回目として、第1回でご紹介したタイプB(健全性は高いものの親族内後継者がいない会社)に着目します。タイプBは、親族外の役員・従業員へ承継するケースと、第三者へ売却するケースに分けられますが、今回は、親族外の役員・従業員へ承継するケースをご紹介いただきます。

 

〈解説〉

税理士法人髙野総合会計事務所 関場靖人/公認会計士

 


【親族外の役員・従業員への承継】

親族の中に適切な後継者がいない場合、役員又は従業員の中から後継候補者を選んで承継させることが考えられます。親族外の役員に経営を委任し、所有権(自社株式)は引き続き保有し続ける場合(所有と経営の分離)も考えられますが、機動性の低下、経営者のモチベーションや将来オーナーに生じる相続等の問題から、所有と経営の一致を維持するのが望ましいと言われています。所有と経営を一致させることは、会社の支配権を移転することを意味するため、その手法として株式譲渡が典型です。親族外の役員へ株式譲渡する手法(自社株式の買取)を「MBO(ManagementBuyout)」、従業員へ株式譲渡する手法を「EBO(EmployeeBuyout)」などといいます。

【親族外承継における課題】

親族外承継において最も課題として以下の2つがあります。
①自社株式の買取資金に関する課題
健全性の高い会社においては、自社株式が高く評価されるため、後継者が当該自社株式を買い取るだけの資金力を有さず、自社株式の買取ができない場合があります。この場合、「経営承継円滑化法の金融支援(融資・保証制度)」「贈与税の納税猶予制度」などの解決方法があります。

 

例えば、上記で挙げたMBO、EBOでは、役員又は従業員が新会社を設立し、その会社がオーナー経営者から株式を買い取るという手法が用いられます。この際、新会社には資金力がないことから、金融機関等の資金面での協力が必要となり、この点において、経営承継円滑化法の金融支援制度が活用されています。

 

なお、上記贈与税の納税猶予について、平成30年度税制改正により「事業承継税制の特例措置」が創設されており、当該特例措置については、以前に解説した「事業承継税制の特例~『特例承継計画』について解説」もあわせてご参照ください。

 

②借入金の経営者個人保証の引継ぎに関する課題
 経営者の個人保証額は、当該個人が保有する資産額を上回っているケースが多く、経営者は無限責任とも言える重い責任を負担しています。この個人保証を引き継ぐことが、後継者の事業承継意欲を阻害する一因といわれます。親族内承継の場合、先代経営者から親族へ一定の資産が相続されることから、親族外承継の方が不安に感じる傾向があります。

 

この点について、平成26年2月1日より、中小企業の融資における合理的な保証契約の在り方を示した自主的なルールとして、「経営者保証ガイドライン」が適用されています。そもそも経営者が個人保証を求められる背景は、資金調達の際に信用を補完することにありますが、中小企業では経営者と所有者が一致している場合が多く、法人と個人間における資産保有の区分が曖昧なケースが散見されることから、個人保証により経営規律を担保する意味合いも持っています。

 

そのため、経営者保証ガイドラインにおいては、「法人と経営者との関係の明確な区分・分離」、「財務基盤の強化」、「財務状況の正確な把握、適時適切な情報開示等による経営の透明性確保」がされた経営状態の会社が、保証契約の解除の申入れを行った場合に、債権者へ経営者保証を求めない可能性又は代替的な融資手法を活用する可能性を検討するように求めています。

 

税理士法人髙野総合会計事務所 「TSKニュース&トピックス」(2019年2月21日)より再編集のうえ掲載

[解説ニュース]

令和元年分の路線価公表・地価上昇による相続税への影響

 

〈解説〉

税理士法人タクトコンサルティング(厚地満里 /税理士)

 

1.路線価4年連続上昇


国税庁は7月1日、令和元年分の路線価を記載した路線価図を同庁のホームページで公表しました。

http://www.rosenka.nta.go.jp/

 

全国の平均路線価は4年連続で上昇傾向にあり、その上昇率は前年対比で平成30年分の「+0.7%」を上回る「+1.3%」となりました。現在国税庁のホームぺージでは、平成25年分以降の路線価を確認することができます。

 

都道府県別の路線価では、19都道府県で前年より上昇しました。上昇率の上位を見ると、観光客数が増えている沖縄が8.3%と2年連続で全国トップ、2位は東京が4.9%、都市部の再開発が進む宮城が4.4%で3位と続いています。一方、路線価が前年より下落したのは27県で、内22県は下落幅が縮小しているものの、大都市圏や集客力のある観光地と、それ以外の地域との二極化の傾向が続いています。

 

2020年にオリンピック・パラリンピックの開催を控えた東京は、平均路線価が6年連続の上昇中で、訪日外国人の増加に加えて、再開発やホテルの建設が着々と進み、都心部で地価のバブル傾向が続いています。路線価の変動率を見ると、外国人観光客で賑わう浅草・雷門通りの上昇は前年対比で35%上昇と都内最高でした。大学キャンパスの進出が相次ぐ北千住駅前も大きく上昇、複数の路線が乗り入れる利便性の高さから、マンションの建設も続いています。

 

2. 土地の相続税評価額への影響


相続税・贈与税の宅地の評価額は、固定資産税評価額に評価倍率を乗じて算出する地域を除き、基本的には一平方メートル当たりの土地の評価額である路線価に地積を乗じて算出します。つまり路線価の上昇がそのまま相続財産の総額、そして相続税の納税に影響してきます。

 

ここ数年は商業地だけでなく、立地の良い住宅地でも毎年数万円単位で路線価が上昇してきました。現状の路線価ベースで相続税額を試算してみると、何年か前に試算した時より納税額が驚くほど増えていたというケースをよく見かけます。これまで手持ちの金融資産で何とか納税ができそうと考えていた方は、今改めて現状把握をしていただきたいと思います。

 

3.地価の上昇と小規模宅地の評価減の関係


小規模宅地の評価減の特例とは、相続人がその生活を維持するために欠くことのできない被相続人の自宅や事業用の土地を相続した場合に、土地の価額を一定の面積まで50%もしくは80%減額して評価することができる制度です。

 

例えば自宅の宅地の価額が1億円ですと、この制度の適用により価額の80%が減額されますので、相続税の課税対象となる宅地の評価額は2千万円になります。その効果は絶大である上に、現在のように路線価が高い時程、大きな効果を表します。小規模宅地の評価減の適用要件は事前に確認しておきたいところです。

 

4.最後に


空家や空地、その他子供や孫が今後引き継いでいくことが難しい物件があり、いずれは売却をと考えているようでしたら、地価が高騰して市場が動いている時は売却の好機です。相続税の納期限は相続開始から10か月しかありません。相続発生後に、納税のために物件を売却しようとしても、相続人間で話を取りまとめて換金に至るには余りに時間が短く、何よりその時市場が動いていなければ売却の目途が立ちません。問題を先送りしてタイミングを逸してしまわないように、家族でよく話し合い準備しておきましょう。

 

 

 

 

 

 

 

税理士法人タクトコンサルティング 「TACTニュース」(2019/08/05)より転載