「法務デューデリジェンス(法務DD)」とは?~目的は?調査分析項目とは?~

[氏家洋輔先生が解説する!M&Aの基本ポイント]

④「法務デューデリジェンス(法務DD)」とは?

~目的は?調査分析項目とは?~

 

〈解説〉

公認会計士・中小企業診断士  氏家洋輔

 

 

[関連解説]

■デューデリジェンスとは?-各種DDと中小企業特有の論点―

■「事業デューデリジェンス(事業DD)」とは?

 

法務デューデリジェンス(法務DD)とは?


1、法務デューデリジェンスの目的

デューデリジェンスを行う際に、買手企業がある程度の規模を有している場合には、財務デューデリジェンスと同様に法務デューデリジェンスを行うことは一般的です。

 

法務デューデリジェンスの目的は対象企業の法務リスクを洗い出すことですが、それらを細分化すると下記の4点に分類されます。

 

 

①事業継続の障害となりうる項目の確認

対象企業について法的な観点から、「その事業が中断されるリスクがある、もしくは当該事業について競争力の源泉が毀損される恐れのある事業が存在するか」を確認します。

 

 

②ディールブレイクとなる項目の確認

ディールにおいて法制度や法規制が阻害要因にならないかを確認します。

 

 

③対象会社の価値を減少させる項目の確認

事業継続そのものや法的問題の解決によって対象企業の収益性が危ぶまれることはないものの、法的問題の解決によって対象企業の収益性が減少する、もしくは資産が毀損するなどにより、企業価値を減少させることとなるような事項を確認します。

 

 

④当該ディールの法的スキームの検討

M&Aを実施することにおいて株式の取得のほか、会社分割や株式移転、事業譲渡など、様々なスキームが発生します。これらのスキームについて、想定通りに実行できるかを検証します。

 

 

 

 

2、法務デューデリジェンスにおける調査分析項目

調査項目は、①会社の基本的事項の確認、②資産・債務の調査、③リース、④契約関係の調査、⑤人事労務関係の調査、⑥訴訟等、⑦知的財産権、⑧環境等多岐にわたります。

 

 

①会社の基本的事項の確認

沿革、法人格と商業登記、株主の概要と大株主の状況、株式の種類と株式数(発行数、授権株式数)、定款、ガバナンス(取締役、監査役会・その他機関)、組織・会議体、許認可の状況、過去の事業買収・合併・事業譲渡・営業譲受等を確認することで、会社の基盤を確認すると同時に、ガバナンスのスタイル等を理解します。

 

 

②資産資産・債務の調査

資産や負債の金額的な分析は財務デューデリジェンスが行うため、法務デューデリジェンスではこれらの法的な評価を行います。

 

 

③リース

リース物件の所有権、契約期間、契約期間中の解約、解約金、瑕疵担保責任、危険負担などの調査を行います。

 

 

④計画関係の調査

会社は一般的に、取引(基本)契約、外注契約、ライセンス契約、共同事業(ジョイントベンチャー)契約等、営業に直接かかわる業務契約以外にも、賃貸借契約、消費貸借契約、債務保証契約、保険契約等、通常、様々な契約を締結しています。契約の承継はスキームによって異なるため、慎重に調査する必要があります。

 

 

⑤人事労務関係の調査

雇用契約の実態や契約の履行状況を把握します。また、労働関連法の遵守状況や、現状の労使関係と今までの経緯、労働紛争の有無等過去の労働争議や従業員との間に法的トラブルがなかったかについて調査します。

さらに、従業員について、属性や雇用契約を把握・調査します。

 

 

⑥訴訟等

訴訟係属中の紛争があれば、その背景や結審の見通し、訴訟にかかる費用、事業に与える影響等について調査します。法務デューデリジェンスで粗相係属中の紛争および予期し得る紛争の存在が明らかとなった場合はその他のデューデリジェンスとの連係が重要になります。

 

 

⑦知的財産権

対象会社の名称や事業名、事業内容が他人の権利を侵害しているリスクの有無を調査します。

 

 

⑧環境

対象会社の関連法令の遵守状況、過去に当局から受けた調査や是正勧告の履歴、当局への報告書類や対応実績等について調査を行います。