[M&Aニュース](2020年10月5日〜10月16日)

◇ナルミヤ・インターナショナル<9275>、子供向け写真スタジオ運営のLOVSTを子会社化、◇岡藤日産証券ホールディングス<8705>、金融商品仲介子会社の岡藤日産証券プランニングを個人に譲渡、◇ダイドーグループホールディングス<2590>、マレーシア飲料子会社DDMを現地社に譲渡、◇中部日本放送<9402>、テレビ番組制作のケイマックスを子会社化、◇アステラス製薬<4503>、体内埋め込み型医療機器開発の米iota Biosciencesを買収、◇文教堂グループHD、25人程度の希望退職者を募集、◇フェローテックホールディングス<6890>、超小型サーモモジュール製造のロシアRMTを子会社化、◇大和自動車交通<9082>、ゴルフ場など施設メンテナンスのトータルメンテナンスジャパンを子会社化 ほか

 

 

ナルミヤ・インターナショナル<9275>、子供向け写真スタジオ運営のLOVSTを子会社化

ナルミヤ・インターナショナルは、子供向け写真スタジオを都内で2店舗運営するLOVST(東京都中央区)の全株式を取得し、子会社化することを決めた。ナルミヤが主力とする子供服事業とのシナジー(相乗効果)を引き出し、グループ事業の拡大につなげる。取得価額は非公表。取得予定日は2020年12月1日。

ナルミヤはモノ(子供服)にとどまらず、コト・サービスへの展開を進るため、2018年にLOVSTと業務提携し、子供向け写真スタジオ事業をスタート。両社共同で現在、横浜店(横浜市)、吉祥寺店(東京都武蔵野市)、経堂店(東京都世田谷区)の3店舗を運営する。事業展開のスピードアップを目的に今回、子会社化に踏み切る。

岡藤日産証券ホールディングス<8705>、金融商品仲介子会社の岡藤日産証券プランニングを個人に譲渡

岡藤日産証券ホールディングスは、株式や債券、投資信託などの金融商品の仲介子会社である岡藤日産証券プランニング(東京都中央区。売上高8800万円、営業利益△2000万円、純資産2700万円)の全保有株式(所有割合89.8%)を譲渡した。譲渡先(個人)は非公表。譲渡価額は2100万円。譲渡日は2020年10月15日。

岡藤日産証券プランニングの前身は2011年に設立し、元々は日産証券の関連会社。2018年8月に日産証券と岡藤ホールディングスの資本提携(2020年10月に経営統合)に伴い、社名を現社名に変更した。今年5月には収益状況の厳しい商品先物取引仲介業から撤退し、金融商品仲介業を専念する方針を打ち出していた。

ダイドーグループホールディングス<2590>、マレーシア飲料子会社DDMを現地社に譲渡

ダイドーグループホールディングスは、チルド飲料・清涼飲料販売のマレーシア子会社DyDo DRINCO Malaysia Sdn.Bhd.(DDM。売上高12億3000万円、営業利益△5億5300万円、純資産1億900万円)の全株式(所有割合100%)を、M&Aコンサルティング会社のシンガポールLingua Franca Holdings Pte.Ltd.に譲渡することを決めた。譲渡価額は約255円(10リンギット)。譲渡予定日は2020年10月20日。

ダイドーグループは2015年に現地大手製菓メーカーの飲料事業部門に出資し、マレーシア市場に参入。2019年10月には合弁を解消し、100%子会社に切り替え、自社ブランドの拡販に乗り出した。しかし、新型コロナウイルス感染拡大の影響で販売が低迷し、業績改善の見通しが立たない状況となっていた。

中部日本放送<9402>、テレビ番組制作のケイマックスを子会社化

中部日本放送は、番組・動画コンテンツ制作のケイマックス(東京都港区。売上高31億2000万円、営業利益2400万円、純資産4億3700万円)の株式80%を取得し子会社化することを決めた。多様化する視聴者・聴取者ニーズを踏まえ、コンテンツ制作の体制強化につなげる。取得価額は非公表。取得予定日は2021年4月1日。

ケイマックスは1991年に設立し、人気バラエティー番組に強みを持つ。各放送局からの番組制作受託を中心に、近年は動画配信会社からの制作も受託するなど事業を広げている。

アステラス製薬<4503>、体内埋め込み型医療機器開発の米iota Biosciencesを買収

アステラス製薬は15日、体内埋め込み型医療機器の開発に取り組む米iota Biosciences,Inc.(カリフォルニア州)を買収すると発表した。iotaは電力供給と無線通信に超音波を用いる独自技術でバッテリーやケーブルの搭載を不要とする数ミリ以下の極小サイズを実現。これにより、手術時や手術後の患者の身体的負担の軽減が期待されている。買収金額は約134億円(約1億2750万ドル)。買収後、一定の業績目標を達成した場合、最大で総額185億円を追加支払いする。買収完了は2020年10~12月中を見込む。

iotaは2017年に設立したスタートアップ企業。アステラスは2019年8月にiotaと共同研究開発契約を結び、体内埋め込み型医療機器の詳細な仕様を検討してきた。iotaを傘下に収め、先端的な技術・人材を取り込む。

従来の体内埋め込み型医療機器は電力を供給するバッテリーや情報通信用のケーブルなどを搭載するため、サイズの小型化が難しく、多くの場合、その埋め込みに侵襲性の高い手術を要するという課題があったという。

文教堂グループHD、25人程度の希望退職者を募集

書店大手の文教堂グループホールディングス(HD)は14日、25人程度の希望退職者を募ると発表した。12月31日時点で45歳以上64歳未満の正社員を対象とし、募集期間は11月9日~30日。退職日は12月31日付。事業再生計画に基づく構造改革の一環で、事業規模に見合った人員体制とする。募集人員はグループの正社員の1割強にあたる。所定の退職金に割増加算金を上乗せ支給し、再就職支援サービスを提供する。

同社は2019年9月に事業再生ADR(裁判外紛争処理解決手続き)に基づく事業再生計画を策定。取引金融機関の支援による債務超過解消、20店舗超える不採算店舗の閉鎖などに取り組んできた。

再生計画の初年度にあたる2020年8月期予想は売上高14.8%減の207億8000万円、営業利益9300万円(前期は4億2000万円の赤字)、最終利益1億1300万円(同39億8000万円)。5年連続減収ながら、3年ぶりに黒字転換を見込む。

フェローテックホールディングス<6890>、超小型サーモモジュール製造のロシアRMTを子会社化

フェローテックホールディングスはドイツ子会社を通じて、超小型サーモモジュール製品メーカーのロシアRMT ltd.,(ニジロ・ノヴゴロド州)の出資持ち分78.96%(議決権割合60%)を取得し子会社化した。5G(次世代通信規格)などの通信基地局、光ケーブル、EV(電気自動車)用各種センサーなどに需要が見込まれるサーモモジュール製品の品ぞろえを強化するのが狙い。取得価額は2580万円。取得日は2020年10月13日。

サーモモジュール製品は2種類の金属の接合部に電流を流すと、片方から片方に熱が移動するペルチェ効果を利用した板状の半導体冷熱素子。フェローテックは中国とロシアの子会社で製造している。RMTはサーモモジュールの超小型化や多段化に関する技術や2000種を超える少量多品種に対応した生産ノウハウなどに強みを持つ。

フェローテックは今後、RMTの残る21.04%の持ち分も取得し、完全子会社化する予定。

大和自動車交通<9082>、ゴルフ場など施設メンテナンスのトータルメンテナンスジャパンを子会社化

大和自動車交通は、ゴルフ場など施設メンテナンスを手がけるトータルメンテナンスジャパン(東京都渋谷区。売上高25億8000万円、営業利益4200万円、純資産2億8800万円)の全株式を取得し、子会社化することを決めた。新事業への進出と事業領域拡大の一環。取得価額は非公表。取得予定日は2020年10月28日。

トータルメンテナンスジャパンは2006年設立で、ゴルフ場のクラブハウス、事務所ビルの清掃・メンテナンスを主力とする。

ジャパンエレベーターサービス<6544>、エレベーター保守管理の長野エレベーターを子会社化

ジャパンエレベーターサービスは、エレベーター保守管理の長野エレベーター(長野県松本市。売上高1億300万円、営業利益625万円、純資産5100万円)の全株式を取得し子会社化することを決めた。未展開だった長野県でのサービス提供が目的。取得価額は非公表。取得予定日は2020年11月2日。

長野エレベーターは1974年に設立し、松本、長野の両市を中心に約300台のエレベーター保守管理を担う。

ジャパンエレベーターサービス<6544>、関西エレベーターを子会社化

ジャパンエレベーターサービスは、エレベーター保守管理の関西エレベーター(大阪市。売上高4億500万円、営業利益3420万円、純資産6320万円)の全株式を取得し子会社化することを決めた。関西圏での事業基盤を強化する一環。取得価額は5億9490万円。2020年11月中に取得する予定。

関西エレベーターは1999年設立で、大阪・兵庫エリアで約1400台のエレベーターの保守管理を手がける。

メディアドゥ<3678>、電子書籍関連の米ファイアーブランド・グループ2社を子会社化へ

メディアドゥは、電子書籍関連事業を手がける米国ファイア―ブランド・グループ2社の全株式を取得し子会社化することで基本合意した。北米出版業界のDX(デジタルトランスフォーメーション)成功事例を国内出版業界に導入するとともに、ファイアーブランド・グループの顧客基盤を活用して国際事業拡大につなげる。

ファイアーブランド・グループは代表者のフランシス・トゥーラン氏が1987年に設立した。書誌情報管理や電子書籍配信を主力とするクオリティ・ソリューションズ・インク(マサチューセッツ州)と、書籍のWebマーケティングツールを提供するネットギャリー・エルエルシー(同)の2社からなり、グループ合計の売上高は約11億4800万円。2社の全株式を約15億円で取得する方向で交渉を始めるとしている。

メディアドゥ<3678>、マンガアプリ事業のNagisaを子会社化

メディアドゥは、スマートフォンアプリ事業を手がけるNagisa(東京都目黒区。売上高5億1000万円、営業利益△1億8000万円、純資産△900万円)の株式68.8%を取得し子会社化することを決めた。デジタルコンテンツ流通における新たなプラットフォーム提供やビジネス開発につなげるのが狙い。取得価額は非公表。取得予定日は2020年10月30日。

Nagisaは2010年に設立し、フリーミアム型マンガアプリの開発から運用・保守、2.5次元/声優に特化した動画配信サービスの展開を主力とする。

西華産業<8061>、プリント基板製造のタイ子会社Seika YKCを譲渡

西華産業はプリント基板製造のタイ子会社Seika YKC Circuit(プラチンブリ県。売上高4億2800万円、営業利益△5億6700万円、純資産△19億円)の全保有株式(所有割合99.9%)を第三者に譲渡することを決めた。事業再建は困難と判断した。譲渡先、譲渡額は非公表。譲渡予定日は2021年1月6日。

川辺、50人程度の希望退職者を募集

川辺は12日、50人程度の希望退職者を募集すると発表した。正社員(18~59歳)を対象に、11月30日~12月14日募集する。退職日は2021年3月15日付。同社はハンカチ、タオル、雑貨など身の回り品の卸売を主力とする。新型コロナウイルスの影響で主要販路である百貨店の休業などで販売が大幅に落ち込んだのを受け、構造改革の一環として打ち出した。会社都合扱いの退職金と特別加算金を支給し、再就職支援サービスを提供する。

川辺の2021年3月期第1四半期(4~6月)業績は前年同期比38%減の売上高21億6900万円、営業赤字2億8100万円(前年同期は1億4300万円の赤字)、最終赤字1億200万円(同5600万円の赤字)だった。

日本スキー場開発<6040>、白馬八方尾根スキー場を共同運営する八方尾根開発と経営統合へ協議入り

日本スキー場開発は、子会社でスキー場運営の白馬観光開発(長野県白馬村。売上高22億2000万円、経常利益66万8000万円、純資産21億4000万円)が同業の八方尾根開発(同。業績は非開示)と経営統合の協議に入ることで合意したと発表した。両社は白馬八方尾根スキー場(白馬村)を共同で運営している。2021年3月末の最終契約を目指す。統合方式は今後詰める。

京進<4735>、ニチイ学館傘下で語学学校運営の豪SELC Australiaを子会社化

京進はニチイ学館傘下で留学生を対象に語学学校・専門学校を運営する豪SELC Australia Pty Ltd(シドニー。売上高7億1500万円、税引き前利益△1億1700万円、純資産△12億300万円)の全株式を取得し子会社化することを決めた。京進は子会社を通じてシドニーで留学生向けの語学学校を持っており、両校のノウハウ・リソースを共有して事業拡大につなげる。取得価額は1000万円。取得予定日は2020年10月30日。

SELC Australiaの設立は1985年。ニチイ学館が2012年に100%子会社化した。SELC Australiaは経営悪化に伴い、2020年8月に豪会社法に基づき、裁判所の介入を必要としない会社更生手続きが行われた。

イー・ガーディアン<6050>、セキュリティー製品開発のジェイピー・セキュアを子会社化

イー・ガーディアンは、セキュリティー製品開発のジェイピー・セキュア(川崎市。売上高3億100万円、営業利益8270万円、純資産1億8700万円)の全株式を取得し、子会社化した。サイバーセキュリティー分野の品ぞろえを拡充する。取得価額は9億4600万円。取得日は2020年10月12日。

ジェイピーは2008年設立。ソフトウエア型WAF(ウェブ・アプリケーション・ファイアウォール)「SiteGuardシリーズ」の開発、販売・サポートを手がける。

アウトソーシング<2427>、海外人材サービスのアバンセホールディングスを子会社化

アウトソーシングは、海外人材サービスを展開するアバンセホールディングス(愛知県一宮市)の株式を追加取得し、子会社化することを決めた。現在8%の持ち株比率を51%に高める。アバンセホールディングスは持ち株会社で、傘下に日系ブラジル人を中心に人材派遣や業務請負を手がけるアバンセコーポレーション(同。売上高137億円、営業利益3億3700万円、純資産28億1000万円)など3社を抱える。取得価額は45億6200万円。取得予定日は2020年11月2日。

アウトソーシングは外国人材採用ネットワークの拡充を目的に、2018年8月にアバンセホールディングスに出資した。提携関係強化の意向が寄せられたのを受け、子会社化に踏み切る。

足元はコロナ禍で出入国規制などの影響を受けているが、中長期的には日本国内での外国人材活用は拡大の一途をたどると見込んでいる。

ワールド、希望退職に予定を5割上回る294人が応募

ワールドは9日、希望退職者募集に294人の応募があったと発表した。約200人の募集人数を5割近く上回った。40歳以上の社員(定年再雇用者を含む。店舗従事者は除く)を対象に9月14日から9月末に募集した。応募者が予定数を大幅に上回ったが、業務の再整理や配置転換の実施、システム化の推進などで対応するとしている。

退職日は11月20日または2021年3月31日までの会社が指定する日。所定の退職金に加え、特別加算金を支給し、再就職支援サービスを提供する。

ワールドは新型コロナウイルス感染の影響を踏まえ、女性・キッズ向け衣料「ハッシュアッシュ」「サンカンシオン」など5ブランドの廃止に伴う214店舗を含む合計358店舗を2021年3月期中に閉鎖する計画。

アジアゲートホールディングス<1783>、ゴルフ場運営のA.Cインターナショナルをサモアの投資会社に譲渡

アジアゲートホールディングスは、ゴルフ・リゾート事業を運営する子会社のA.Cインターナショナル(東京都港区。売上高12億2000万円、営業利益3080万円、純資産△9億1900万円)の全株式を、サモアの投資会社True Harmonic Group Limitedに譲渡することを決めた。新型コロナウイルスの影響による来場者の減少などで事業環境が悪化し、累積損失の解消に見通しが立たない状況に陥っていた。譲渡価額は未定。譲渡予定は2021年1月上旬。

A.Cインターナショナルはシェイクスピアカントリークラブ(北海道石狩市)、米山水源カントリークラブ(新潟県上越市)、姫路相生カントリークラブ(兵庫県相生市)、広島紅葉カントリークラブ(広島県廿日市市)の4施設を持つ。

譲渡相手のTrue Harmonic Groupとは過去に取引実績があるという。

岡三証券グループ<8609>、傘下の岡三にいがた証券を通じて日産証券の新潟県内3支店を取得

岡三証券グループは、子会社の岡三にいがた証券(新潟県長岡市)を通じて、日産証券の新潟県内の3支店(新潟、長岡、高田)を取得することを決めた。新潟県での事業基盤強化が狙い。岡三にいがた証券は1944年に設立し、現在、新潟県内に13店舗を構える。取得価額は2億5000万円。取得予定日は2021年1月1日。

日産証券は岡藤日産証券ホールディングスの傘下で、今回譲渡する新潟県内の3店舗を含めて首都圏や近畿などに13店舗を持つ。新潟県内の3店舗は競合他社との競争が激しく、収益力が低下していた。

日本創発グループ<7814>、特殊印刷や応援グッズ制作のプロモを子会社化

日本創発グループは、特殊印刷の一つであるポッティング印刷やメガホンなど応援グッズ・ノベルティ制作のプロモ(東京都港区。売上高1億7200万円、営業利益200万円、純資産2000万円)の第三者割当増資を引き受け、株式90.91%を取得して子会社化することを決めた。印刷サービス拡充の一環。取得価額は8000万円。取得日は2020年10月8日。

ポールトゥウィン・ピットクルーホールディングス<3657>、グラフィック制作のカラフルを子会社化

ポールトゥウィン・ピットクルーホールディングスは、グラフィック制作やゲーム開発を手がけるカラフル(東京都品川区。売上高1億5800万円、営業利益△2360万円、純資産8250万円)の全株式を取得し子会社化することを決めた。従来のデバッグ・検証事業、ネットサポート事業に新たにグラフィック制作事業を加えることで、ゲーム、ネットビジネスのBPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)事業者として受注拡大を目指す。

取得価額は非公表。取得日は2020年10月8日。

アウトソーシング<2427>、エコシティグループを子会社化

アウトソーシングは、経営コンサルティング業のエコシティグループ(横浜市)の全株式を取得し子会社化した。公共系アウトソーシング事業拡大につなげる狙い。エコシティグループは子会社を通じて自治体や公営企業から上下水道料金の検針業務、料金徴収事務業務、納税催告コールセンター運営業務などを受託し、2003年の創業以来連続増収を達成しているという。取得価額は非公表。取得日は2020年10月8日。

アウトソーシングは製造系アウトソーシング事業のほかに、景気変動の影響を受けにくい公共系アウトソーシング分野での業容拡大を通じて業績の平準化を進めている。近年は英国でも中央政府や地方自治体向けの債権回収代行業務などに乗り出している。

クスリのアオキホールディングス<3549>、京都北部で食品スーパー8店舗運営のフクヤを子会社化

クスリのアオキホールディングスは、食品スーパーを8店舗運営するフクヤ(京都府宮津市。売上高58億2000万円)の株式94.8%を取得し、子会社化することを決めた。京都北部地区でのドミナント(出店)を強化する狙い。フクヤは1953年設立で、京都府舞鶴市、宮津市を地盤とする。取得価額は非公表。取得予定日は2020年10月21日。

クスリのアオキは北陸・信越、東海・近畿、関東・東北の20府県にドラッグストア636店舗(調剤薬局併設329店舗)、専門調剤薬局6店舗の合計642店舗を展開する。食品の販売も強化しており、大型店では生鮮3品(魚・肉・野菜)を取り扱う。

クリーク・アンド・リバー社<4763>、新商品・サービス企画開発のきづきアーキテクトを子会社化

クリーク・アンド・リバー社は、新商品・サービスの企画、開発などを手がけるきづきアーキテクト(京都市)が実施する第三者割当増資を引き受け、子会社化することを決めた。きづきのノウハウを活用し、VR(仮想現実)・AR(拡張現実)、大容量映像伝送システム、自動運転関連などのイノベーション創出や新ビジネスの確立につなげる。取得価額は1億2000円。取得日は2020年10月30日。

クリーク・アンド・リバー社は映像、ゲーム、Web、広告・出版など17分野で専門的人材の派遣や請負を手がける。きづきは2020年7月、ローランド・ベルガーの前グローバル共同代表兼日本代表を務めた長島聡氏が設立した。

ランサーズ<4484>、メンターサービス「MENTA」を提供するイリテクを子会社化

ランサーズは、オンラインメンターサービス「MENTA」を提供するイリテク(福岡市。売上高4400万円、営業利益0、純資産1500万円)の全株式を取得し子会社化した。フリーランス・副業者に対するスキル支援に役立てる狙い。取得価額は2億2600万円。取得日は2020年10月8日。

イリテクは「教えたい人」と「学びたい人」をオンラインでマッチングするメンターサービス「MENTA」を手がけ、現在約1万9000人のメンティー(教えてもらう人)が利用する。登録するメンターは約1500人。

ランサーズはフリーランスと仕事をマッチングするサービス「Lancers」(累計115万人が登録)を展開。スキル不足によって仕事が思うように獲得できないといった課題があり、年間を通じてコンスタントに仕事が得られる人材は一部にとどまる。イリテクを傘下に取り込むことで、スキルアップの機会を幅広く提供する。

ウイルテック<7087>、パートナーのIT技術者派遣事業を取得

ウイルテックは、パートナー(東京都中央区。売上高29億2000万円)のIT技術者派遣事業を取得することを決めた。パートナーがIT技術者派遣事業を分社して設立する同名の新会社の全株式を取得する。パートナーは1996年に設立し、システム構築分野の技術者派遣で実績を積んできた。取得価額は非公表。取得予定日は2020年12月1日。

ウイルテックは製造請負やメーカー・建設業向け技術者派遣などを主力とする。パートナーのIT技術者派遣事業を取り込み、既存顧客や新規開拓先に対するシステム開発提案などを通じて営業機会の創出につなげる。

ビジョン<9416>、台湾HORIZON WiFiから Wi-Fiレンタル事業とプレペイドSIM販売事業を取得

ビジョンは、台湾子会社のビジョン台湾(無限全球通移動通信股份有限公司、台北市)を通じて、現地HORIZON WiFi(赫徠森國際企業有限公司、台北市)の Wi-Fi レンタル事業、プレペイド SIM販売事業を取得した。取得価額、取得日は非公表。

ビジョンは2012年にビジョン台湾を設立し、台湾から日本に渡航する旅行者向けにモバイルWi-Fiルーターのレンタルサービスを始めた。HORIZON WiFiは2013年設立で、日本、韓国、欧米、東南アジア諸国のWi-Fiルーターのレンタル、SIMカードの販売を手がけ、台湾では販売実績で上位を占めるブランドという。

夢展望、希望退職者に19人応募

夢展望は5日、希望退職者の募集に19人の応募があったと発表した。9月14日から10月2日まで正社員を対象に15人程度を募った。退職日は10月31日付。新型コロナウイルス感染拡大の影響で主力の女性向けアパレル販売が落ち込んだのに伴う事業構造改革の一環。特別退職金を支給し、再就職支援サービスを提供する。同社はRIZAPグループの上場子会社の一つ。

コカ・コーラ ボトラーズジャパンHD、900人規模の早期退職を実施へ

コカ・コーラ ボトラーズジャパンホールディングスは5日、900人程度の早期退職を実施すると発表した。対象はグループ会社に在籍する勤続1年以上の正社員で、事業構造改革に伴う組織変更などにより異動となる者。退職日は12月末日まで。通常の退職金に加え、特別退職加算金を支給し、再就職支援サービスを提供する。

同社は2020年を事業構造改革の初年度と位置づけているが、新型コロナウイルスの影響が重なり、飲料販売が想定以上に落ち込んでいる。営業部門の組織改変、自動販売機ビジネスの運用変革、間接部門の効率化などの施策を講じており、その一環として早期退職に取り組む。

同日発表した2020年12月期の通期業績予想は売上高10%減の8197億円、営業赤字97億円(前期は553億円の赤字)、最終赤字70億円(同579億円の赤字)。

Abalance<3856>、太陽光パネル製造のベトナムVietnam Sunergyを子会社化

Abalanceは傘下企業を通じて、太陽光パネルを製造するベトナムVietnam Sunergy Joint Stock Company(VSUN、売上高112億円、営業利益4億2100万円、純資産17億1000万円)を子会社化することを決めた。Abalanceは自社保有発電所の建設・運営、モジュール・関連製品の販売、太陽光発電の工事請負など手がけている。VSUNをグループに迎え、再生可能エネルギー分野でのサプライチェーン体制の確立につなげる。

VSUNは2015年設立で、モジュールメーカーとして太陽光パネルを製造している。Abalanceは海外投資事業の一環として、持ち分法適用関連会社のFUJI SOLAR(東京都品川区)を介してVSUNに出資していたが、今回、FUJI SOLARを連結子会社化したうえでVSUNの株式を追加取得し、所有割合を34%から65.5%に引き上げ、経営権を掌握する。

取得価額は4億5000万円。取得予定日は2020年11月16日。

NEC<6701>、スイスの大手金融ソフト企業アバロックを約2360億円で買収

NECは5日、スイスの大手金融ソフトウエア企業のアバロック(Avaloq)・グループを買収すると発表した。同社を傘下に置く持ち株会社(所在地オランダ。売上高700億円、営業利益9100万円、純資産△158億円)の全株式を20億5000万スイス・フラン(約2360億円)で取得する。2021年4月までの買収完了を予定する。世界規模で進展する金融DX(トランスフォーメーション)領域の事業強化につなげる。

アバロックは金融機関向けソフトウエア事業を展開し、世界30カ国150社で顧客を抱え、なかでも金融資産管理向けソフトウエアでは欧州・アジア太平洋地域でトップクラスのシェアを持つという。金融業界では従来型サービスの成長鈍化、「オープンバンキング化」と呼ばれる規制改革の進展を受け、デジタル技術を活用した新たな金融サービスの創出を競っている。

アバロックのソフトウエアと、NECが強みとする生体認証、AI(人工知能)技術、ブロックチェーン(分散型台帳)技術などを組み合わせ、新たな金融サービスの開発を目指す。

 

 

 

 

情報提供:株式会社ストライク

[新型コロナウイルスに関するM&A・事業再生の専門家の視点]

東京都家賃等支援給付金 ~国の家賃支援給付金とは別に、東京都で独自の家賃支援等給付金の制度があります~

 

〈解説〉

公認会計士・中小企業診断士  氏家洋輔

 

 

▷関連記事:家賃支援給付金の詳細情報が公表(2020年7月7日)。制度内容は、給付額は、申請方法は。

▷関連記事:コロナ禍における飲食店の売上高や今後の考察。

▷関連記事:新型コロナ対策融資と特例リスケ ~事業再生の専門家の観点から~

 

 

 

国の家賃支援給付金とは別に、東京都で独自の家賃支援等給付金の制度があります。国の家賃支援給付金は受給したものの、東京都の家賃支援等給付金の存在を知らず、申し込んでいない事業者が多いため改めて制度の説明をさせていただきます。

 

■制度概要

事業者における家賃等の負担を軽減し、事業の継続を下支えするため、国の家賃支援給付金に東京都が独自の上乗せ給付(3 か月分)を実施します。ただし、都の給付金は都内の物件の家賃等を対象としており、都外の物件の家賃等は、対象となりません。

 

「東京都家賃等支援給付金」の申請には、国の「家賃支援給付金」の給付通知を受けていることが必要です。まずは、国へ「家賃支援給付金」を申請し、国から給付通知を受けた後に、「東京都家賃等支援給付金」を申請する必要があります。なお、「東京都家賃等支援給付金」は都内の物件の家賃等を対象となる点留意が必要です。

 

 

■支援対象者

東京都家賃等支援給付金の申請要件は、次の全ての要件を満たす事業者となります。

 

●国の家賃支援給付金の給付通知を受けていること

●都内に本店または支店等のある中小企業等又は個人事業主であること

●都内の土地又は建物において、自らの事業のために他人の所有する土地又は建物を直接占有し、使用及び収益をしていることの対価として、家賃等の支払いを行っていること。

 

 

■給付額

給付額 = 基準額 × 給付率 × 3か月分

 

基準額とは国の家賃支援給付金の対象となった都内物件の家賃等の総額(月額)を言います。給付率は以下の算定方法となります。

 

 

【中小企業等】

(75万円以下)

Ⓐ基準額×給付率(1/12)×3

※最大給付額は187,500円となります。

 

(75万円超)

Ⓐ+{(基準額-750,000)×給付率(1/24)}×3

※最大給付額は375,000円となります。

 

 

出所:東京都

 

 

 

【個人事業主】

(37万5千円以下)

Ⓐ基準額×給付率(1/12)×3

※最大給付額は93,750円となります。

 

(37万5千円以下)

Ⓐ+{(基準額-375,000)×給付率(1/24)}×3

※最大給付額は187,500円となります。

 

 

出所:東京都

 

 

 

なお、制度の詳細については以下の東京都のwebサイト等でご確認ください。

https://tokyoyachin.metro.tokyo.lg.jp/

 

 

 

 

 

 

 

 

 

[失敗しないM&Aのための「財務デューデリジェンス」]

第5回:財務デューデリジェンス「貸借対照表項目の分析」を理解する【前編】

~運転資本の分析、固定資産・設備投資の分析~

 

〈解説〉

公認会計士・中小企業診断士  氏家洋輔

 

 

▷第2回:「バリュエーション手法」と「財務デューデリジェンス」の関係を理解する

▷第3回:財務デューデリジェンス「損益項目の分析」を理解する【前編】

▷第4回:財務デューデリジェンス「損益項目の分析」を理解する【後編】

 

 

財務デューデリジェンス「貸借対照表項目の分析」を理解する【前編】


1、運転資本の分析

運転資本分析の主な目的は、対象会社の①短期的な資金的側面を把握すること、および、②事業計画上の必要な運転資本を把握することです。

 

運転資本は一般的に、売上債権、棚卸資産、仕入債務、前払金、未払費用、その他流動資産、その他流動負債等が含められますが、ネットデットの調整項目としていない貸借対照表の勘定科目を運転資本に含めるかどうかは慎重に検討する必要があります。

 

運転資本の増減がキャッシュフローに与える影響は重要であることが多いため、少なくとも数期間の分析を行うことが有用です。運転資本の増減は、売上高や売上原価(仕入)がドライバーとなることが一般的ですが、それ以外のドライバーの有無を理解することも必要となります。

 

 

①短期的な資金的側面の把握

対象会社の運転資本の金額および運転資本回転期間の水準を把握します。例えば、運転資本がプラスである場合は売上が増加する局面では運転資本が増加するため追加の資金が必要となります。

 

また、下図のように月次で運転資本の増減があるような場合には、年間の変動トレンドや必要額を把握することで対象会社の運営上必要な資金水準を把握することができます。

 

 

 

さらに、月次での運転資本の変動が大きい場合、評価対象時点とM&Aのクロージング時点がどの水準なのかを正確に把握する必要があります。一般的にバリュエーションは評価対象時点の運転資本の水準で行うため、評価対象時点とクロージング時点の運転資本が大きく異なる場合、追加の資金が必要となる場合があります。

 

例えば、評価対象時点がx4/3月末でクロージング予定がx4/11月とします。X4/3月の運転資本は500百万円ですが、11月の運転資本は毎年小さくなることが過去のトレンドから把握可能ですので、x4/11月の運転資本も小さくなることが想定されます。X3/11月の水準であれば250百万円であり、x4/3月と比較して250百万円少なくなります。クロージング予定のx4/11月の翌月は12月であり、毎期運転資本が大きく1,200百万円程度となることが想定され、クロージング後すぐに250百万円との差額の950百万円の追加の運転資本が必要となることが想定されます。

 

そのため、対象会社の基準運転資本残高について、売手と買手の間で協議し、株式譲渡契約書に記載することが考えられます。

 

 

②事業計画上の必要な運転資本

事業計画上の必要運転資本残高を把握するために、過年度の運転資本を分析します。

 

 

 

運転資本項目を特定した上で、過年度の正常運転資本としての調整後運転資本を把握します。事業計画上の運転資本残高は売上高等に対する回転期間で見積もられることが一般的ですが、滞留等の異常な残高が含まれた運転資本の回転期間で将来の残高を見積もると誤った運転資本の金額となります。

 

売上債権では、滞留債権の内容を確認して、長期滞留している残高の有無、回収可能性、回転期間分析による異常値、それらの会計処理等を分析し、異常な残高があれば除外します。また、手形の割引やファクタリング等をしている場合もそれらによる影響を除外する必要があります。さらに、月末が休日等の年度があれば、入金のタイミングがずれることで残高が通常よりも少なくなることがあるため、それらの異常値も除外して検討する必要があります。

 

棚卸資産では、滞留在庫の内容を確認して、長期滞留している残高の有無、販売可能性、回転期間分析による異常値、それらの会計処理等を分析し、評価替えの必要性等を検討します。筆者の経験上、棚卸資産は利益操作のため過大計上による不適切会計が行われやすい勘定科目であるため、棚卸資産の金額水準については特に慎重に検討を行う必要があります。

 

仕入債務では、売上債権と同様に滞留債務の有無を確認し、長期滞留している残高の有無、支払可能性、回転期間分析による異常値、それらの会計処理等を分析し、異常な残高があれば理由を確認の上、除外する調整を行います。また、売上債権と同様に月末が休日等の年度があれば、支払いのタイミングがずれることで残高が通常よりも多くなることがあるため、それらの異常値も除外して検討する必要があります。

 

その他の残高では、他の分析と同様に、推移分析、滞留分析、会計処理の確認等を行い、異常な残高があればそれらを除外する調整を行います。

 

また、各運転資本残高の項目について、合計額だけではなく明細を把握し、少なくとも主要な残高については個別に締め日、支払日等のリードタイムを把握しておく必要があります。M&A成立後に、特定の得意先への販売、特定の仕入先からの仕入、特定の商品の販売等を増加、減少させる計画である場合、それらの運転資本の回転期間が他の運転資本と異なる場合は、全体としての運転資本の回転期間に影響を及ぼす場合があるためです。

 

 

2、固定資産・設備投資の分析

固定資産・設備投資の分析の主な目的は、対象会社の過去の設備投資実績および維持費用の水準の把握および事業計画上の必要な設備投資水準の把握です。

 

 

 

 

過年度に行われた投資実績および設備の維持費用の金額を把握して、必要以上に設備投資が抑制されていないかを把握します。M&Aに先立って設備投資を抑制し見た目のフリーキャッシュフローを高く見せることが行われる可能性があるためです。また、過去に作成した設備投資計画や設備予算等があればそれを入手し、計画と実績の比較を行い、必要以上の設備投資の抑制が行われていないかを検討します。

 

過年度の設備投資の金額と売上高とを比較することで、売上計画を実現するためにどの程度の設備投資が必要なのかの参考値として有用です。また、過年度の設備投資の金額と減価償却費とを比較することで、設備を維持するのに十分であったかを検討する参考値として有用です。

 

また、設備投資を維持更新投資と新規投資とに区分して把握することが有用です。維持管理に必要な設備投資は、現状の生産能力を維持するために必要な支出額で、新規投資による設備投資は、生産能力の拡大や効率化等にかかる支出額です。これらを区分して把握することで、将来において生産能力の維持を目的とした必要最低限の投資額の参考値が理解でき、買手側での新たな設備投資の検討にも有用となります。

 

固定資産の残高の分析は、主にネットデット項目の有無の把握、バリュエーションで純資産法を採用する場合は純資産に影響を与える項目の把握が目的となります。固定資産を事業用資産と非事業用資産とを区分して把握する必要があります。遊休資産を含む非事業用資産はM&Aの成立後売却が想定されるため、金額が重要な場合は買手とディスカッションの上、不動産鑑定評価書を取得する等して時価を把握する必要があります。また、所有不動産を店舗等で使用しており、当該店舗が赤字の場合には減損の検討が必要となる場合もあるため留意が必要です。

 

固定資産をリースしている場合には、それらがファイナンス・リースかオペレーティングリースかを把握し、ファイナンス・リースの場合は、貸借対照表にオンバランスされているかを確認します。オンバランスされていない場合は、リース債務を把握する必要があり、ネットデットでの調整項目とするかを検討します。オペレーティングリースの場合であってもリース債務残高を把握し、ネットデットの調整項目とするかを検討します。

 

無形固定資産に計上される資産は権利関係やソフトウェア等で、経済的価値は契約内容や事実関係により大きく変化し、売手企業にとっては価値を有していた無形固定資産も買手企業にとっては無価値となることもあります。そのため、無形固定資産が買手企業にとって有用であるのか、不要である場合に売却は可能であるか等検討をする必要があります。

 

 

 

 

 

 

 

[中小企業経営者の悩みを解決!「M&A・事業承継 相談所」]

~M&Aで会社や事業を売却しようとご検討の中小企業経営者におすすめ~

 

第1回:取引先に知られないように会社を譲渡することはできますか?

 

 

〈解説〉

株式会社ストライク

 

 


M&A(合併・買収)仲介大手のストライク(東証一部上場)が、中小企業の経営者の方々の事業承継やM&Aの疑問や不安にお答えします。

 

 

▷関連記事:非公開の同族会社で経営に参加しない者が保有する株式を現金化できますか?

▷関連記事:企業価値を向上させ売却金額を増大させるためには?

▷関連記事:M&Aとは?M&Aの流れと専門家の役割とは?

 

 

Q.取引先に知られないように会社を譲渡することはできますか?

光学機器関連の製造業を営んでいます。私どもの業種は専門性が高く、市場が狭い技術分野ですので、信頼できる従業員達や取引先の仲間としっかりと協力し合って成長してきました。ただ、私も高齢になり、健康に不安を感じるようになってきました。妻や子どもからも「いつまで経営を続けるのか」「健康を害したり、事故にあったりするなど、何かが起こってからでは遅い」などと言われ、事業承継を考えるようになりました。親族に後継者の候補がいないので、良い経営者に会社を譲渡できればと思っています。

 

しかし、一つ難点があります。我々の業界は、狭い市場で複数社がしのぎを削っている状況です。私自身が弊社の信用になっているところがあり、取引先も「Tさんがいるので」と言って委託してくれています。考えすぎかもしれませんが、私が急に経営から降りると業績悪化要因になりかねません。取引先に知られないように、スムーズに会社を譲渡することはできないでしょうか。

 

(埼玉県 光学機器部品製造業代表取締役 Tさん)

 

 

A.可能ですが、いずれ取引先に告知する必要があります。

Tさんが希望されるように、取引先に知られないようにM&Aを進めること自体は可能です。また、M&Aで最も多く活用されている株式譲渡という手法は、株主が変わるだけですので、対外的には目立った変化がないように見えます。

 

ただし、実際のM&Aでは取引先を引き継げるかどうかが、事業を続けるうえで重要なポイントとなります。このため重要な取引先には、契約締結前や契約締結後、すぐに説明に行くケースが多いです(※)。また、会社を譲渡した経営者が代表権のない会長や顧問に就任する場合もあります。例えば1年間というふうに一定期間、会社に残って経営に関与する条件で、M&Aをするというやり方です。その間に取引先への告知、新社長への引き継ぎなどを、一定の時間をかけながら行うこともできます。いずれにしても、いつかは取引先に会社を譲渡することについて告知しなくてはなりません。もちろん取引先への告知のタイミングや方法等には細心の注意を払い、トラブル等を避ける必要があります。まずはM&Aの専門家にご相談されることをお勧めします。

 

※取引先との契約で、株主が変更する場合に事前に了承を得る条項(チェンジ・オブ・コントロール条項)が付されている場合には、例外的に事前に了承を得る必要があります。

 

 

 

 

 

 

 

 

[M&A案件情報(譲渡案件)](2020年10月13日)

-以下のM&A案件(3件)を掲載しております-

 

●首都圏にて生活雑貨の小売業をチェーン展開。コロナ禍においても堅調に売上推移。

[業種:その他小売/所在地:関東地方]

●省力化装置に欠かせない空圧機器製造メーカー

[業種:空圧機器製造業/所在地:中部地方]

●塗装・鍍金工場排水等のろ過機械設計・製造・販売会社。無借金かつ高収益体質。

[業種:機械設計業/所在地:関東地方]

 

 

 

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案件No.SS006505
首都圏にて生活雑貨の小売業をチェーン展開。コロナ禍においても堅調に売上推移。

 

 

(業種分類)小売業

(業種)その他小売

(所在地)関東地方

(直近売上高)10~50億

(従業員数)100名超

(譲渡スキーム)株式譲渡

(事業概要)生活雑貨小売チェーン

 

〔特徴・強み〕

◇高い信用力を背景に首都圏の好立地エリアに店舗展開し、幅広い価格帯の生活雑貨を販売する老舗企業。
◇増収基調を維持し、コロナ禍においても好調な業績推移をたどる。

 

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案件No.SS006471
省力化装置に欠かせない空圧機器製造メーカー

 

(業種分類)製造業

(業種)空圧機器製造業

(所在地)中部地方

(直近売上高)1~5億

(従業員数)10~50名

(譲渡スキーム)株式譲渡

(事業概要)FA機器に用いられる空圧機器及び空圧制御装置の設計・製造

 

〔特徴・強み〕

◇省力化機械の空圧機器の制御システムの設計・製造を行う
◇長年培ってきた技術やノウハウが蓄積されている
◇大手企業を主要顧客としている
◇営業面の強化により拡大の余地が大きい

 

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案件No.SS006394
塗装・鍍金工場排水等のろ過機械設計・製造・販売会社。無借金かつ高収益体質。

 

(業種分類)製造業

(業種)機械設計業

(所在地)関東地方

(直近売上高)1~5億

(従業員数)10名以下

(譲渡スキーム)株式譲渡

(事業概要)工場排水等のろ過機械の設計・製造・販売を手掛けており、全国の塗装設備会社、表面処理加工会社、塗料商社等を主要販売先としている。

 

〔特徴・強み〕

◇得意先は上場企業など優良先も多く、製品への定評は高い
◇高い収益性を誇る
◇無借金経営
◇営業力強化にて今後さらなる業績伸長の可能性あり

 

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情報提供会社:株式会社ストライク

 

 

 

 

【免責事項】

・掲載情報は、内容及び正確さに細心の注意をはらい、万全を期しておりますが、人為的なミスや機械的なミス、調査過程におけるミスなどで誤りがある可能性があります。税務研究会及び情報提供会社は、当該情報に基づいて被ったいかなる損害についても一切の責任を負うものではありません。

・掲載情報は公開日時点の情報になります。既に案件が特定の対象会社と交渉に入っている場合や成約している場合もございます。

 

 

 

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[解説ニュース]

小規模宅地等の評価減『特定事業用宅地等』

 

〈解説〉

税理士法人タクトコンサルティング(廣瀬 理佐/税理士)

 

 

[関連解説]

■小規模宅地等の特例における特定事業用宅地等の規制強化

■介護施設で亡くなった場合の相続税の小規模宅地等の特例

 

 

1.特定事業用宅地等


小規模宅地等の評価減の特例の対象となる宅地等のうち「特定事業用宅地等」とは、被相続人等の事業(不動産貸付業等を除く。以下同じ。)の用に供されていた宅地等で、相続又は遺贈によりその宅地等を取得した親族がその事業を引き継ぎ、申告期限まで引き続き保有し、事業を継続していた場合が該当します。
では、相続税の申告期限までの間に転業した場合はどうなるでしょうか。

 

2.被相続人の事業の用に供されていた宅地の場合


<ケース1>

被相続人甲が相続開始前の15年間にわたって飲食業を営んでいた宅地を相続人Aが相続し事業を引き継ぎましたが、相続税の申告期限前に飲食業を全部廃業して小売業に転業しました。

 

被相続人の事業の用に供されていた宅地等である場合の特定事業用宅地等の要件は、宅地等を相続又は遺贈で取得した親族が、①相続開始時から相続税の申告期限までの間にその宅地等の上で営まれていた「被相続人の事業」を引き継ぎ、かつ、相続税の申告期限まで引き続き「その事業」を営んでいること、②相続税の申告期限まで引き続きその宅地等を有していること、です。

 

<ケース1>では甲の営んでいた事業(飲食業)は継続されておらず①の要件を満たさないので、特定事業用宅地等には該当しません。

 

 

3.生計一親族の事業の用に供されていた宅地の場合


<ケース2>

被相続人甲の所有する宅地で、甲と生計を一にする相続人Bが相続開始前の15年間にわたって飲食業を営んでいました。この宅地をBが相続しましたが、相続税の申告期限前に飲食業を全部廃業して小売業に転業しました。

 

被相続人と生計を一にしていた親族の事業の用に供されていた宅地等である場合の特定事業用宅地等の要件は、宅地等を相続又は遺贈で取得したその親族が、①相続開始前から相続税の申告期限まで引き続きその宅地等を「自己の事業」の用に供していること、②相続税の申告期限まで引き続きその宅地等を有していること、です。

 

<ケース2>では生計一親族であるBは、甲の生前中から営んでいた事業(飲食業)は廃業しましたが、その後自己の新たな事業として小売業を営んでいます。「自己の事業」の用に供している、という上記①の要件(及び②の要件)は転業後も満たしているので特定事業用宅地等に該当します。

 

4.「事業継続要件」


<ケース1>のように被相続人が事業を営んでいた宅地等の場合は、被相続人の事業を全部廃業又は全部転業してしまうと「被相続人の事業」を引き続き営んでいないことから特定事業用宅地等に該当しないことになります。なお、被相続人が営んでいた複数の事業のうちの一部の事業を廃業した場合であれば、廃業しなかった事業に係る敷地部分については特定事業用宅地等に該当します。また、転業が事業の一部であり、被相続人の事業と転業後の事業の双方を相続税の申告期限まで営んでいる場合には転業部分に係る敷地を含めて全体を特定事業用宅地等と扱います。

 

一方、<ケース2>のように被相続人と生計を一にする親族が事業を営んでいた宅地等の場合は、申告期限まで引き続きその親族の「自己の事業」の用に供していればよく、相続開始前に行なっていた事業と同一の事業であることは要件とされていません。

 

5.不動産貸付業に転業した場合


ただし、転業後の「事業」に不動産貸付業等は含まれません。飲食業を営んでいた生計一親族が相続税の申告期限までの間に店をやめ、そこを貸店舗としてテナントに賃貸した場合は、その不動産貸付業に該当する部分については事業継続要件を満たさなくなり、特定事業用宅地等に該当しないことになります。

 

〇飲食業➡小売業 事業継続要件を満たす
×飲食業➡不動産貸付業 事業継続要件を満たさない

 

同様に、被相続人の事業の用に供されていた宅地等の場合における事業の一部転業が不動産貸付業への転業であった場合にはその部分については特定事業用宅地等に該当しません。

 

この不動産貸付業に係る部分については、被相続人が相続開始前に営んでいた不動産貸付業をその親族が引き継いだものではないので、貸付事業用宅地等として小規模宅地等の評価減の適用が受けられることになるわけでもありません。(租税特別措置法69条の4第3項1号、4号、租税特別措置法通達69の4-16)

 

 

 

 

 

 

 

税理士法人タクトコンサルティング 「TACTニュース」(2020/10/12)より転載

[わかりやすい‼ はじめて学ぶM&A  誌上セミナー] 

第4回:M&Aの流れ(計画段階)

~M&Aの流れ(全体像、戦略は明確に、ターゲット会社を見つけよう)~

 

〈解説〉

公認会計士・税理士 清水寛司

 

〈目次〉

全体像

計画段階

1.戦略は明確に

2.ターゲット会社を見つけよう

 

 

▷第1回:なぜ「会社を買う」のか~買う側の理由、売る側の理由~

▷第2回:どのようにM&Aを行うのか~株式の売買(相対取引、TOB、第三者割当増資)、合併、事業譲渡、会社分割、株式交換・株式移転~

▷第3回:M&A手法の選び方~必要資金、事務手続の煩雑さ、買収リスクを伴うか~

 

 

M&Aの流れ(全体像)

本稿では皆様に分かりやすいよう、M&Aを「計画段階」「実行段階」の大きく2段階に分けています。

M&Aは多くのステップを踏み、分かりにくい部分も多いです。一方、M&Aに限らずどんな仕事であっても計画して実行するという流れを踏みますね。そのため、大まかに「計画段階」と「実行段階」で分けています。

 

そして、計画段階を「M&Aの戦略決定」「ターゲット会社の選定」、実行段階を「ターゲット会社への接触」「相手会社の詳細調査」「詳細の合意」と全部で5ステップのみにしました。重要なセンテンスを抜粋して全体感をご説明しますので、M&Aの一連の流れについて少しでも具体的になっていただけると幸いです。

 

 

 

M&Aの流れ(計画段階)

1. 戦略は明確に

まずは計画段階から見ていきましょう。初めにM&Aの戦略を定めます。M&A成功のためには、この戦略策定が非常に重要となります。会社は経営課題を見直し、より成長するためのM&A戦略を立てます。第1回で書いたようにM&Aはあくまで「実現したいゴール」に辿り着く手法の1つであるため、会社が目指す理想と、M&A戦略がいかに一致しているかが成功の鍵となります。

 

<Step1は、M&Aの戦略を決めること>

 

 

 

家電が欲しいと思って八百屋に行くことはありませんよね。野菜や果物が欲しければ八百屋に行くし、家電が欲しければ家電量販店に行く、M&Aでも同じことが言えるわけです。会社の課題について「家電が必要」なのか「野菜が必要」なのかを見極め、適切な計画を立てないと、見当違いの会社を買ったり事業を売ったりしてしまいます。

 

 

買い手会社におけるM&Aの戦略は大きく2つに分かれます。

●経営戦略に合致した会社や事業の買収

●投資による対象会社価値の増大

 

 

前者は通常の一般事業会社が良く取る戦略です。自社の経営戦略に照らし合わせて、足りない部分はどこか、どのように補えば拡大していくことができるかを考え、M&Aの戦略を組み立てていきます。

 

一方後者は投資ファンドが良く取る戦略です。例えば経営が傾いている会社をどのように探し、どのように投資し、どのようの経営を立て直すかといった戦略です。

 

 

 

2. ターゲット会社を見つけよう

戦略が決まったら、次は戦略に合致する会社を見つけます。M&Aにおいては、まず広範囲の条件で会社をリストアップし、徐々に詳細な条件により絞り込んでいく選び方(スクリーニング)をすることが一般的です。

 

<Step2は、ターゲット会社を選ぶこと>

 

 

例えば相手会社の規模・収益性・成長性といった数値に表すことができる条件でまず会社を広範囲にリストアップします。その後相手会社の経営方針や経営者の意向、組織文化といった数値化が難しい条件で候補を絞っていくやり方があります。

 

文章を見ただけでも大変な作業であることが分かりますね。そのため複数の案件を抱えている専門の仲介会社に依頼をするケースや、仲介会社が案件を持ってくるケースもよく見られます。

 

 

 

 

[計画段階のPoint]

M&A成功のためには、自社の経営課題に沿った戦略策定が重要!

 

 

 

 

≪Column:投資ファンドとは??≫


「投資ファンド」という言葉に耳馴染みの無い方や、あってもハゲタカのようにあまり良いとは言えない印象を持つ方が多いと思います。しかし、多くの方から投資目的で資金を集め運用していく仕組みのことを「投資ファンド」と言うので、一口に投資ファンドと言っても多種多様なプレイヤーがいます。

 

余剰資金を活かして株式・社債等に投資することはよく行われていますし、皆様がよく投資をしている投資信託も広義には投資ファンドと言えるでしょう。

 

そして、投資対象が「会社」になると、M&Aに登場するような投資ファンドになります。このような投資ファンドは多くの場合経営に参画し、会社の業績を上げることで企業価値を高めていくことになります。

 


 

 

 

 

 

[税理士のための税務事例解説]

事業承継やM&Aに関する税務事例について、国税OB税理士が解説する事例研究シリーズです。

今回は、「事業を譲り受けた場合に営業権の計上について」についてです。

 

[関連解説]

■【Q&A】事業譲渡により移転を受けた資産等に係る調整勘定

■【Q&A】のれんの税務上の取扱い

 

 

 


[質問]

下記の場合の営業権の考え方についてご教示ください。

 

1. 前提
A社:株主Bが100%保有
C社:株主Bが100%保有

他にも株主Bが保有する会社が数社あります。
業種は小売業で多数店舗展開しています。
C社は毎期500万円前後の経常利益を計上しています。

 

2. 店舗の譲渡を検討
今回、C社の保有している店舗をすべて(2店舗)A社に譲渡することにしました。これはA社とC社は営業地域(関西)が同じ場所にあるからであり、譲渡後C社は清算する予定です。

 

3. 営業権の計上の可否
A社・C社は株主が同一のため計上は必要ないと考えています。

 

 

[回答]

【結論】
黒字の店舗の事業譲渡を受ける場合において、それが適格組織再編によるものでないときは、原則として営業権(創設営業権を含む)の計上が必要であると考えられます。

 

なお、その黒字店舗の譲受後の事業に係る見込み利益について黒字が見込めない等その営業権に価値がないとすることに合理的な理由がある場合には、その限りではありません。

 

仮に、有償性のある営業権を無償で譲り受けた場合には、C社において受贈益を計上する必要があることを申し添えます。

 

※ グループ税制の受贈益の益金不算入規定は、本件のような個人Bによる完全支配関係のような法人による完全支配関係に該当しない関係の場合には、適用されません(法人税法25条の2第1項)。

 

 

【理由】
事業を譲り受けた場合に関して、法人税法62条の8第1項において、事業譲受けに係る対価が、その譲り受けた事業に係る時価純資産(資産(営業権にあっては、一定のものに限る。)時価から負債の時価を控除した金額)の価額を超える場合には、その超える部分の金額は、原則として資産調整勘定の金額とする旨の規定が置かれています。

 

なお、ここでいう営業権は、他人間で取引する場合に有償で取引されるようなものをいう旨が法人税法施行令第123条の10第3項に規定されています。つまり、有償性のある営業権は、時価純資産に含まれること、換言すれば、資産として認識することが予定されていると解されます。

 

この規定は、取引当事者の株主が同一である(完全支配関係がある)場合にも適用されます。

 

さらに、取引当事者であるA社とC社との間には、株主Bを同一者とする完全支配関係があるとのことですので、参考に次の点も確認することとします。

 

 

1 グループ税制(法人税法第61条の13、法人税法施行令第122条の14第1項)
完全支配関係のある法人間で譲渡損益調整資産を譲渡した場合には、その譲渡による譲渡損益は繰延されることとされています。

 

ご照会の営業権は創設営業であると思料されるため、帳簿価額が0であると想定され、帳簿価額が1,000万円に満たないため、譲渡損益調整資産に該当しないこととなりますので、譲渡損益の計上が必要となります。

 

 

2 組織再編税制(適格合併)(法人税法第62条の2)
完全支配関係のある法人間で適格合併が行われた場合には、その合併により移転した資産及び負債は合併直前の被合併法人の帳簿価額で引継ぎをしたものとする旨が規定されています。

 

したがって、本件の事業譲渡が適格合併により行われたものとした場合には、被合併法人において営業権の帳簿価額が0であれば、引継ぎを受けた法人において営業権を計上する必要がないこととなります。

 

 

 

 

税理士懇話会事例データベースより

(2020年6月19日回答)

 

 

 

 

[ご注意]

掲載情報は、解説作成時点の情報です。また、例示された質問のみを前提とした解説となります。類似する全ての事案に当てはまるものではございません。個々の事案につきましては、ご自身の判断と責任のもとで適法性・有用性を考慮してご利用いただくようお願い申し上げます。

 

 

 

 


[M&A案件情報(譲渡案件)](2020年10月6日)

-以下のM&A案件(5件)を掲載しております-

 

●【SaaS】AI技術を取り入れたOCRサービスの事業譲渡【DX支援】

[業種:AI、SaaS関連事業/所在地:関東地方]

●社交ダンスドレス用品の製造・小売販売及びダンススタジオを経営

[業種:社交ダンス用品製造・販売]

●製造技術・品質管理力に強みのある電子部品組立業者。

[業種:電子部品製造/所在地:関東地方]

●【取引基盤】【財務内容】【組織体制】良好、三期連続増収増益

[業種:警備業/所在地:北海道地方]

●フィッテイングと整備を徹底するスポーツバイク専門店

[業種:自転車小売業/所在地:関東地方]

 

 

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案件No.SS006554
【SaaS】AI技術を取り入れたOCRサービスの事業譲渡【DX支援】

 

(業種分類)IT・ソフトウェア

(業種)AI、SaaS関連事業

(所在地)関東地方

(直近売上高)1億以下

(従業員数)10名以下

(譲渡スキーム)事業譲渡

(事業概要)AI技術を取り入れたOCR(光学文字認識)事業

 

 

〔特徴・強み〕

◇大量の手書き文字書類をデジタルテキスト化し、エクセル等への出力が可能
◇SaaS、オンプレミスどちらでも提供可能
◇読み取り精度高く価格競争力あり
◇レイアウトが決まっていない非定型証票の読み取りにも対応可能
◇RPAと連携可能
◇営業体制が整っておらず現状は単月赤字
◇国内5名(エンジニア、営業)、オフショアの海外エンジニア若干名の体制

 

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案件No.SS006351
社交ダンスドレス用品の製造・小売販売及びダンススタジオを経営

 

(業種分類)小売業

(業種)社交ダンス用品製造・販売

(直近売上高)1億以下

(従業員数)10~50名

(譲渡スキーム)株式譲渡

(事業概要)社交ダンスドレス用品の製造・小売販売ならびにダンススタジオを経営。

 

〔特徴・強み〕

◇社交ダンスドレス用品の製造・小売販売ならびにダンススタジオを経営。
◇業歴長く、富裕層の顧客を数多く抱えている。

 

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案件No.SS005609
製造技術・品質管理力に強みのある電子部品組立業者。

 

(業種分類)製造業

(業種)電子部品製造

(所在地)関東地方

(直近売上高)5~10億

(従業員数)100名超

(譲渡スキーム)株式譲渡

(事業概要)コネクター等の電子部品製造

 

〔特徴・強み〕

◇大手電子部品メーカーの下請として、電子部品組立を行う企業。
◇業歴長く、様々な分野の電子部品の試作から量産までの体制を整えることが可能。
◇大手下請けとして長らく営業しており、製造技術・品質管理技術に強み。

 

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案件No.SS005430
【取引基盤】【財務内容】【組織体制】良好、三期連続増収増益

 

(業種分類)人材派遣・アウトソーシング

(業種)警備業

(所在地)北海道地方

(直近売上高)1~5億

(従業員数)50~100名

(譲渡スキーム)株式譲渡

(事業概要)警備業 三期連続増収増益

 

〔特徴・強み〕

◇取引先との関係性良好
◇人材の定着

 

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案件No.SS004849
フィッテイングと整備を徹底するスポーツバイク専門店

 

(業種分類)小売業

(業種)自転車小売業

(所在地)関東地方

(直近売上高)1~5億

(従業員数)10名以下

(譲渡スキーム)株式譲渡

(事業概要)スポーツバイク専門店

 

〔特徴・強み〕

◇地域内でドミナント展開し、経営資源の効率的な活用が可能
◇フィッティングと整備を徹底し、顧客に最適なバイクの「サイズ」と「ポジション」を提案
◇従業員が販売に必要なスポーツバイクの知識とメカニック技術を持つ
◇高級輸入自転車の他、パーツ・ウェアなどの取り扱いアイテムも豊富
◇積極的なPR活動により地域内での知名度を高めている
◇実質無借金経営

 

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情報提供会社:株式会社ストライク

 

 

 

 

【免責事項】

・掲載情報は、内容及び正確さに細心の注意をはらい、万全を期しておりますが、人為的なミスや機械的なミス、調査過程におけるミスなどで誤りがある可能性があります。税務研究会及び情報提供会社は、当該情報に基づいて被ったいかなる損害についても一切の責任を負うものではありません。

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[M&Aニュース](2020年9月23日〜10月2日)

◇DCMホールディングス<3050>、ホームセンター中堅の島忠<8184>をTOBで子会社化へ、◇安江工務店<1439>、リフォーム・リノベーション工事のMIMAを子会社化、◇アウトソーシング<2427>、人材サービスのキャリアグループ4社を子会社化、◇ひろぎんホールディングス、マイティネットが新設するIT関連新会社を子会社化、◇東洋テック<9686>、消防用設備・監視カメラなど電気工事の明成を子会社化、◇ユアサ商事<8074>、建機修理・メンテナンスの丸建サービスを子会社化、◇クックビズ、希望退職者募集に63人応募、◇ミツバ、希望退職者に549人が応募、◇ギガプライズ<3830>、不動産仲介子会社のフォーメンバーズを経営陣に譲渡、◇東京建物<8804>、介護事業子会社の東京建物シニアライフサポートをSOMPOケアに譲渡 ほか

 

DCMホールディングス<3050>、ホームセンター中堅の島忠<8184>をTOBで子会社化へ

ホームセンター大手のDCMホールディングスは2日、同業で首都圏を地盤とする中堅の島忠に対して完全子会社化を目的にTOB(株式公開買い付け)を実施すると発表した。買付金額は最大1636億円。両社合計の売上高は約5700億円となり、カインズを引き離して業界トップに立つ。人口減少などでホームセンター市場が縮小に向かう中、経営基盤を強化して競争力を高める。両社は店舗の重複が少ないことなどから、相乗効果の早期実現を見込む。島忠はTOBに賛同している。

島忠株の買付価格は1株につき4200円で、TOB公表前日の終値3555円に18.14%のプレミアムを加えた。買付予定数は3895万5287株で、下限は所有割合50%にあたる1947万7700株。上限は設けていない。買付期間は10月5日~11月16日(30営業日)。公開買付代理人はSMBC日興証券。決済の開始日は11月20日。

DCMホールディングスはカーマ、ダイキ、ホーマックの3社が2006年に経営統合して発足し、37都道府県に677店舗を展開。東証1部上場で、2020年2月期の売上高は4373億円。一方、島忠は1969年、家具の島忠(1979年に島忠に社名変更)として設立し、その後、ホームセンター事業に進出した。埼玉県、東京都、神奈川県を中心に60店舗を構える。東証1部上場で、2019年8月期の売上高は1463億円。

ホームセンター業界では現在、DCMとカインズが売上高で並び、業界トップを争う。DCMは島忠を傘下に取り込むことで、首位の座を確固とする。

安江工務店<1439>、リフォーム・リノベーション工事のMIMAを子会社化

安江工務店は、リフォーム・リノベーション工事を主力とするMIMA(大阪府八尾市。売上高8億6200万円、営業利益6300万円、純資産9300万円)の全株式を取得し子会社化することを決めた。MIMAは1965年創業で、年間1600件以上のリフォーム工事を手がけるほか、不動産売買・仲介にも力を入れている。取得価額は2億6500万円。取得予定日は2020年10月14日。

安江工務店は大手住宅メーカーとの競争が激しさを増す中、地域密着で事業展開する各地の地場工務店などとの連携を進めており、今回もその一環。

アウトソーシング<2427>、人材サービスのキャリアグループ4社を子会社化

アウトソーシングは、人材サービスを展開するキャリアエージェント(埼玉県熊谷市)などキャリアグループ4社の全株式を取得し、1日付で子会社化した。対象4社は製薬業界や食品業界を中心に製造派遣を主に手がけ、地場の優良企業を多数顧客に持つ。

傘下に収めたのは、キャリアエージェントのほか、キャリアコントラクト(茨城県土浦市)、キャリアファイル(福岡県行橋市)、キャリアインキュベーター(埼玉県坂戸市)。取得価額は非公表。

ひろぎんホールディングス、マイティネットが新設するIT関連新会社を子会社化

ひろぎんホールディングスは、IT関連事業を手がけるマイティネット(広島市。売上高39億7000万円、純資産22億1000万円)が会社分割によって設立する新会社「ひろぎんITソリューションズ」(広島市。資本金1億円を予定)の株式80%を取得し子会社化することを決めた。デジタルトランスフォーメーション(DX)が急速に進展する中、IT関連分野の顧客ニーズへの対応力を高める。マイティネットは1975年に設立。

取得価額は8000万円。取得予定日は2021年1月4日。

東洋テック<9686>、消防用設備・監視カメラなど電気工事の明成を子会社化

東洋テックは、消防用設備や監視カメラなどの電気工事、清掃事業を手がける明成(奈良県大和高田市。売上高3億7800万円、営業利益2500万円、純資産1億1400万円)の全株式を取得し、1日付で子会社化した。警備事業やビル管理事業との一体運営や人的資源の相互活用などを通じてシナジー(相乗効果)創出を見込む。取得価額は非公表。

ユアサ商事<8074>、建機修理・メンテナンスの丸建サービスを子会社化

ユアサ商事は、建設機械の修理・メンテナンスを手がける丸建サービス(名古屋市。売上高2億4800万円)の株式93.4%を取得し、10月1日付で子会社化した。メンテナンス・レンタル機能を取り込み、建設機械販売にかかる事業領域の拡大を見込む。取得価額は非公表。

丸建サービスは1965年に設立。舗装用・基礎工事用建設機械の修理、メンテナンスを主力とする。国内だけでなく、海外建設機械の指定サービス工場にもなっている。丸建サービスは傘下の丸建商事(名古屋市。売上高20億2000万円)を通じて建設機械の販売・レンタルも展開している。湯浅商事は両社と建設機械の仕入れなどを通じて48年に及ぶ取引関係がある。

クックビズ、希望退職者募集に63人応募

クックビズは30日、50人程度を募集した希望退職に63人の応募があったと発表した。同社は飲食業界向け求人サービスを主力とするが、新型コロナ感染の影響で飲食店からの求人が激減し、業績立て直しに向けた事業構造改革の一環。8月17日から9月16日まで募集した(退職日は9月30日付)。

ミツバ、希望退職者に549人が応募

ミツバは30日、約500人を募集した希望退職者に549人の応募があったと発表した。40~60歳の正社員を中心に8月24日~9月11日に募集した(退職日は10月31日付)。自動車業界を主要顧客とするが、新型コロナ感染の影響で需要が急減し、海外工場の稼働休止などで業績が悪化。国内2工場の閉鎖などの構造改革の一環として人員を適正化する狙い。

併せて、 ミツバの上場子会社で自動車用部品を手がけるタツミも同日、希望退職者募集の結果を発表。40歳以上の正規社員を対象に30人程度を募ったところ、応募は19人にとどまった。

ギガプライズ<3830>、不動産仲介子会社のフォーメンバーズを経営陣に譲渡

ギガプライズは、不動産仲介子会社のフォーメンバーズ(東京都中央区。売上高8億6000万円、営業利益△3億6400万円、純資産△14億2000万円)を、フォーメンバーズ社長の矢野晃教氏に譲渡した。9月30日付。ギガプライズは51%の保有株式のうち47.99%を譲渡する。この結果、矢野氏の持ち株比率は87%となる。譲渡価額は2056円。

フォーメンバーズはイオンモールが運営する不動産仲介「イオンハウジング」の加盟店舗事業を手がけ、ギガプライズが2015年に持ち分法適用関連会社とした。その後、2017年に保有比率を51%とし、子会社化していた。しかし、急速な直営店舗増加などで初期投資がかさみ、赤字体質が続いていた。

東京建物<8804>、介護事業子会社の東京建物シニアライフサポートをSOMPOケアに譲渡

東京建物は、介護事業子会社の東京建物シニアライフサポート(東京都中央区。売上高50億2000万円、営業利益1900万円、純資産△18億8000万円)の全株式を、有料老人ホームなど各種介護施設を運営するSOMPOケア(東京都品川区)に譲渡することを決めた。中期経営計画に掲げた「事業ポートフォリオの最適化」の一環。

東京建物は2014年に東京シニアライフサポートを全額出資で設立し、介護サービスや高齢者向け住宅を運営してきたが、業績が低迷し、近年は債務超過状態に陥っていた。譲渡価額は非公表。譲渡予定日は2020年12月1日。

エアトリ<6191>、製茶子会社のひかわを三栄源エフ・エフ・アイに譲渡

エアトリは製茶業の子会社、ひかわ(島根県出雲市。売上高28億1000万円、営業利益1億1600万円、純資産17億4000万円)の全株式を、食品添加物メーカーの三栄源エフ・エフ・アイ(大阪府豊中市)に9月30日付で譲渡した。新型コロナウイルス感染の影響で主力の旅行需要が大幅に落ち込んだのに伴うグループ事業再構築の一環。エアトリは2019年12月に、ひかわを傘下に収めていた。譲渡価額は非公表。

川金ホールディングス<5614>、MBOで株式を非公開化

川金ホールディングス(HD)は30日、MBO(経営陣が参加する買収)によって株式を非公開化すると発表した。同社社長の鈴木信吉氏が設立したSSホールディングス(東京都中央区)が川金HDの完全子会社化を目的にTOB(株式公開買い付け)を実施する。買付代金は最大76億8700万円。素形材事業、土木建築機材事業、産業機械事業を3本柱とするが、グローバル展開などを通じた中長期的な成長を実現するためには短期的な利益確保にとらわれず、機動的かつ柔軟な意思決定を実現することが重要と判断した。川金HDはTOBに賛同している。

買付価格は1株につき388円で、TOB公表前日の終値301円に28.9%のプレミアムを加えた。買付予定数は1981万2809株で、下限は所有割合66.7%にあたる1320万8600株。第3位の大株主である鈴木信吉川金HD社長は保有する4.83%についてTOBへの応募契約を結んでいる。買付期間は10月1日~11月12日(30営業日)。決済の開始日は11月19日。公開買付代理人はみずほ証券。

川金HDは鋳造品の製造を目的に1948年、埼玉県川口市に川口金属工業として設立。1961年に東証2部に上場した。2008年に持ち株会社制に移行した。

祖業の素形材事業では産業機械用部品や自動車部品などを主軸とするが、中国や東南アジアとの競争が激化。また、土木建築機材事業では橋梁用免震支承でトップシェアを持つが、国内公共工事の縮減で海外需要の取り込みが不可欠になっている。

小林製薬<4967>、一般用医薬品メーカーの米Alvaを子会社化

小林製薬は30日、一般用医薬品の製造・販売する米Alva-Amco Pharmacal Companies, Inc.(イリノイ州)を子会社化することで合意したと発表した。Alvaは1904年に創業し、水虫薬、利尿薬、吐き気止め、酒さ(しゅさ)改善薬、内服消炎鎮痛剤などの一般用医薬品を全米のドラッグストア、スーパーマーケットなどで販売している。小林製薬は同社のブランド力を取り込み、北米での事業拡大を目指す。

取得価額、取得割合は非公表。2020年10月中に子会社化を完了する予定。

小林製薬は米国、英国、中国、アジアの各地域に現地法人を設け、海外事業を展開中。米ではカイロ、冷却シート、メガネクリーナーなどの日用品に加え、2016年から「Zim’s MAX (ジムズ マックス)」 ブランドの外用消炎鎮痛剤を販売している。

カナモト<9678>、測量機開発・レンタルなどのソーキホールディングスを子会社化

カナモトは、測量機や計測機器の開発・レンタルを手がけるソーキホールディングス(大阪市)の全株式を取得し、9月30日付で子会社化した。ソーキホールディングスは持ち株会社で、傘下に中核事業子会社のソーキ(同、売上高46億5000万円、営業利益6億100万円)を持つ。計測機器事業領域の強化につなげる。取得価額は非公表。

ソーキは1989年に設立。

メディカル一光グループ<3353>、愛知県で住宅型有料老人ホーム14施設運営のライフケアを子会社化

メディカル一光グループは、介護事業のライフケア(愛知県一宮市。売上高14億8000万円、営業利益5830万円、純資産1億5600万円)の全株式を取得し、子会社化することを決めた。ヘルスケア事業の規模拡大の一環。ライフケアは2003年に設立し、愛知県に住宅型有料老人ホーム14施設、居室介護支援3拠点などを運営する。取得価額は非公表。取得予定日は2020年11月1日。

Jストリーム<4308>、製薬関連コンテンツ制作などのアズーリを子会社化

Jストリームは、製薬関連のコンテンツやWebサイトの制作を手がけるアズーリ(東京都文京区。売上高5億8400万円、営業利益2億400万円、純資産4億4100万円)の全株式を取得し、子会社化することを決めた。製薬業界におけるデジタルマーケティング支援能力の向上などにつなげる。取得価額は7億3100万円。取得予定日は2020年11月26日。

Jストリームは2018年に傘下に収めたビッグエムズワイ(東京都文京区)を通じて、医薬業界向けのライブ映像配信事業、CLM(クローズド・ループ・マーケティング)コンテンツの制作、CRM(顧客管理システム)データ活用によるコンサルティング業務などを展開している。今回子会社化するアズーリはビッグエムズワイの業務委託先で、これまで取引関係にあった。

21LADY<3346>、洋菓子のトリアノン洋菓子店を子会社化

21LADYは、洋菓子製造のトリアノン洋菓子店(東京都杉並区。売上高3億8900万円、営業利益△200万円、純資産1600万円)の全株式を取得し子会社化することを決めた。傘下の洋菓子のヒロタ(東京都千代田区)と生ケーキ、焼き菓子などで相乗効果が期待できると判断している。

取得価額は非公表。取得予定日は2020年10月14日。

21LADYは2020年3月期決算で1億6700万円の債務超過に陥り、名古屋証券取引所セントレックス市場の上場廃止基準にかかる猶予期間入り銘柄となっている。こうした状況を早期に解消するため、新型コロナの影響で遅延しているグループ事業拡大に向けたM&Aを推進し、新たな収益基盤の確立につなげるとしている。

トリアノン洋菓子店は1950年に創業し、生ケーキ、焼き菓子を主力商品として喫茶店を伴う3店舗を展開する。

オリジン、人数を定めず希望退職者を募集

オリジンは29日、希望退職者を募集すると発表した。45歳以上で勤続10年以上の社員・再雇用者を対象とするが、募集人数は定めない。募集期間は10月21日~30日。退職日は12月15日付とする。会社業績の早期改善に向けた措置。所定の退職金に加え、特別加算金を支給する。

オリジンは電源機器や半導体デバイス、精密機構部品などを主力とするが、新型コロナウイルス下、携帯端末向け無線基地局用電源の落ち込み、自動車メーカーの減産などのあおりを受け、業績が悪化している。2021年3月期第1四半期(4~6月)は売上高が前年同期比32%減の56億円、営業赤字5億4100万円(前年同期は3億7300万円の黒字)、最終赤字7億6400万円(同1億100万円の黒字)だった。

NTT<9432>、NTTドコモ<9437>をTOBで完全子会社化へ

NTTは、NTTドコモの完全子会社化を目的にTOB(株式公開買い付け)を実施すると発表した。NTTは現在ドコモ株66.21%を保有しており、TOBを通じて残りの33.79%の取得を目指す。買付代金は最大約4兆2544億円。全てを取得できなかった場合は、株式併合などの手続きにより完全子会社化する。ドコモはTOBに賛同を表明しており、TOB成立後に上場廃止となる見通し。

移動体通信事業者間の競争が激化するなか、NTTはドコモを完全子会社化し、経営の意思決定スピードを速める。グループ一体となって、次世代通信規格「5G」をベースにした新しいサービスの創出や料金・サービスの競争力強化を図るほか、次世代通信技術に関する研究開発も強化する。

買付価格は1株当たり3900円。TOB公表前営業日の終値2775円に対して40.54%のプレミアムを加えた。買付予定数は10億9089万6056株。下限は1468万6300株(0.45%)。買付期間は2020年9月30日から11月16日まで(33営業日)。買付代理人は三菱UFJモルガン・スタンレー証券。決済の開始日は11月24日。

NTTドコモは1991年にエヌ・ティ・ティ・移動通信企画として設立。1992年にNTTから移動通信事業を譲り受け営業を開始し、1998年に東証一部に上場した。

三菱マテリアル<5711>、ダイヤメットを投資ファンドのエンデバー・ユナイテッドに譲渡へ

三菱マテリアルは29日、焼結機械部品や含油軸受などを製造する100%子会社のダイヤメット(新潟市)を、投資ファンドのエンデバー・ユナイテッド(東京都千代田区)に譲渡することで基本合意したと発表した。ダイヤメットの業績悪化に対応して資金支援などを講じてきたが、収益改善の見通しが立たないことから、第三者への譲渡を検討していた。ダイヤメットは2005年に設立。

譲渡価額は非公表。譲渡予定は2020年12月中。

NECキャピタルソリューション<8793>、NEC傘下の米販売金融子会社を子会社化

NECキャピタルソリューションは、NEC傘下で米国で通信機器のリース・ファイナンス事業を展開するNEC Financial Services,LLC(NECFS、ニュージャージー州。売上高28億円、営業利益7億6100万円、純資産128億円、総資産609億円)の全持ち分を取得し、子会社化することを決めた。NECグループとの戦略的パートナーシップをさらに強化する狙いがある。取得価額は約26億3500万円。取得予定日は2020年11月30日。

NECFSは1986年に設立されたNECグループの米国での販売金融事業の中核企業。NECキャピタルソリューションはNECの持ち分法適用関連会社。

ハピネット<7552>、映画配給のファントム・フィルムを子会社化

ハピネットは、洋画・邦画の配給などを手がけるファントム・フィルム(東京都渋谷区。売上高9億6300万円、営業利益1700万円、純資産1億2500万円)の全株式を取得し子会社化することを決めた。映像作品の企画・製作から配給、国内外への権利・パッケージ販売まで一気通貫した事業体制を整えるのが狙い。

ハピネットは邦画・アニメ作品を中心に映像作品を手がけている。ファントム・フィルムは2003年設立で、洋画・邦画の両面でノウハウと実績を積んできた。

取得価額は非公表。取得予定日は2020年10月1日。

フランスベッドホールディングス<7840>、ロングライフホールディングス傘下で福祉用具販売・レンタルのカシダスを子会社化

フランスベッドホールディングスは、福祉用具の販売・レンタルを手がけるカシダス(東京都千代田区。売上高15億7000万円、営業利益△1210万円、純資産2億300万円)の全株式を取得し子会社化することを決めた。福祉用具貸与事業のシェア拡大につなげる。

取得価額は非公表。取得予定日は2020年10月30日。

カシダスは介護事業を展開するロングライフホールディングス(大阪市、ジャスダック上場)の傘下企業で、2011年に設立した。

アイティフォー<4743>、音楽分野SNS企画・運営子会社のスナッピー・コミュニケーションズを経営陣に譲渡

アイティフォーは、音楽分野のSNS(ソーシャル・ネットワーク・サービス)ソフトウエア企画・運営を手がける100%子会社スナッピー・コミュニケーションズ(東京都千代田区。純資産△3990万円)の全株式を、スナッピー社長の小林四一氏に譲渡することを決めた。経営資源の集中と選択による経営の効率を高める狙い。

譲渡価額は非公表。譲渡予定日は2020年9月30日。

アイティフォーは2005年にスナッピーを傘下に収め、eコーマース(電子商取引)やWeb関連ビジネスの拡大に取り組み、近年は音楽分野でSNSソフトの企画・運営にも乗り出していた。しかし、想定していた業績水準に達していないことなどから、小林社長の申し出に応じて株式を譲渡することにした。

シダックス<4837>、エステティック事業などを手がける傘下のシダックスビューティーケアマネジメントを新日本ライフデザインに譲渡

シダックスは、エステティック業やホテル運営などを手がける子会社のシダックスビューティーケアマネジメント(東京都調布市。売上高9億5900万円、営業利益△1億500万円、純資産△2億1600万円)の全株式を、清掃業の新日本ライフデザイン(仙台市)に譲渡することを決めた。事業の選択と集中によるグループ経営効率化の一環。

譲渡価額は200万円。取得予定日は2020年9月30日。

エムティジェネックス<9820>、電気設備システム保守・保全業務のチヨダMEサービスを子会社化

エムティジェネックスは、電気設備システムの保守・保全業務を展開するチヨダMEサービス(高松市。売上高7億3800万円、営業利益1000万円、純資産1億6100万円)の全株式を取得し子会社化することを決めた。新たな事業への進出と事業エリアの拡大が狙い。

エムティジェネックスは東京都心を中心にオフィスビルの内装工事、駐車場の管理・運営、衛生消耗品の供給、省エネ機器の販売など、オフィスビルの保全管理業務全般を手がける。チヨダMEサービスは1976年に設立し、40年を超える業歴を持つ。

取得価額は非公表。取得予定日は2020年10月1日。

澤田HDへのTOB、買付期間を16度目の延長

澤田ホールディングス(HD)に対してTOB(株式公開買い付け)を実施しているウプシロン投資事業有限責任組合(東京都港区)は25日、10月6日としていた買付期間を同9日まで3営業日延長した。16度目の延長で、買付期間は156営業日となる。澤田HDは9月23日、TOBに反対する意見表明(それまでは意見表明を留保)を発表し、敵対的買収が確定した。

モンゴルの有力銀行であるハーン銀行を傘下に持つ澤田HDのTOBを巡っては、現地のモンゴル中央銀行が事前承認を与えておらず、TOB自体が宙に浮く形となっている。

三栄建築設計<3228>、ホテル再建など各種コンサルティング業務の日本ベストサポートを子会社化

三栄建築設計は、ホテル再建に関する各種コンサルティング業務や市場調査を手がける日本ベストサポート(東京都千代田区)の株式68.8%を取得し、子会社化することを決めた。グループにおけるホテル事業の成長・拡大につなげるのが狙い。三栄建築は2018年に全額出資でメルディアホテルズ・マネジメント(東京都新宿区)を設立し、ホテル事業に参入した。

傘下に収める日本ベストサポートは2001年設立で、ホテル運営に関して20年に及ぶ経験やノウハウを持つ。取得価額は非公表。取得予定は2020年9月中。

ソラスト<6197>、介護サービス事業のファイブシーズヘルスケアを子会社化

ソラストは、介護サービス事業のファイブシーズヘルスケア(神戸市。売上高16億9000万円、営業利益△1億4400万円、純資産△8400万円)の全株式を取得し子会社化することを決めた。ファイブシーズヘルスケアは2003年設立で、神戸、大阪エリアでグループホームを中心に19事業所を運営する。

取得価額は非公表。取得予定日は2020年10月20日。

三菱UFJリース<8593>と日立キャピタル<8586>、2021年4月に合併

三菱UFJリースと日立キャピタルは24日、2021年4月に合併すると発表した。合併新会社の総資産は10兆円超となり、三井住友ファイナンス&リース(約6兆3000億円)を抜き、業界首位のオリックス(約13兆円)に迫る。両社は2016年に資本業務提携し、環境・エネルギーといった海外インフラ投資などで協業を進めてきたが、新型コロナウイルス感染拡大の影響でリース事業は厳しさを増しており、経営基盤強化に向けて合併による統合に踏み切る。

三菱UFJリースを存続会社とし、日立キャピタルを吸収する。合併比率は三菱UFJリース1:日立キャピタル5.1で、日立キャピタルの1株に三菱UFJリースの5.1株を割り当てる。両社は2021年2月下旬に臨時株主総会を開き、合併を諮る。日立キャピタルは同3月30日付で上場廃止となる。

三菱UFJリースは1971年に設立し、三菱商事が筆頭株主。総資産6兆2859億円、売上高9237億円、営業利益918億円(2020年3月期)で現在、業界3位。一方、日立キャピタルは1957年に設立し、日立製作所を筆頭株主とする。総資産3兆7194億円、売上高4640億円、営業利益398億円(同)の業界6位。

合併新会社の社長には三菱UFJリースの柳井隆博社長、会長には日立キャピタルの川部誠治社長兼CEOが就く予定。

白洋舎<9731>、傘下の信和実業の保険代理店事業をトータル保険サービスに譲渡

白洋舎は、不動産子会社の信和実業(東京都大田区)が手がける保険代理店事業をトータル保険サービス(東京都中央区)に譲渡することを決めた。譲渡価額は2億2000万円。譲渡予定日は2021年1月1日。白洋舎は事業譲渡に伴い、信和実業を吸収合併する。

キユーピー<2809>、中島董商店のシンガポール子会社を傘下に

キユーピーは、中島董商店(東京都渋谷区)傘下で、酒類・食料品の販売を手がけるシンガポールMINATO SINGAPORE.LTDの株式80%を第三者割当増資の引き受けによって取得し、10月1日付で子会社化することを決めた。シンガポールにおけるキユーピーグループのマヨネーズ、ドレッシングなどの輸入販売拠点となる。取得価額は非公表。

キユーピーは東南アジアで現在、タイ、マレーシア、ベトナム、インドネシア、フィリピンに現地法人を置き、シンガポールが6カ国目となる。

中島董商店はキユーピー創始者の中島董一郎氏が1918年に設立した会社で、各種瓶缶詰食料品の販売、酒類の輸入などを手がける。現在はキユーピーの関連会社。

クロスキャット<2307>、情報処理サービスのアクティブを子会社化

クロスキャットは、情報処理サービス会社のアクティブ(東京都千代田区。売上高11億7000万円、営業利益1100万円、純資産1億1100万円)の全株式を取得し子会社化することを決めた。アクティブは1989年設立。取得価額は4億9000万円。取得予定日は2020年11月2日。

クロスキャットは独立系情報サービス会社として金融、クレジット、官公庁・公共企業、通信、製造、流通向けに事業展開している。

SAMURAI&PARTNERS<4764>、韓国「JT親愛貯蓄銀行」傘下に持つJトラストカードを子会社化

SAMURAI&PARTNERS(11月1日にNexus Bankに社名変更を予定)は、クレジットカード事業のJトラストカード(宮崎市。売上高3億900万円、営業利益1500万円、純資産161億円)を株式交換で11月1日付で子会社化することを決めた。フィンテック事業でのシナジー(相乗効果)創出などを見込む。Jトラストカードの韓国子会社で金融事業を手がけるJT親愛貯蓄銀行(ソウル。売上高191億円、営業利益36億1000万円、純資産181億円)は孫会社となる。

SAMURAIは総額216億円相当のA種優先株式を発行し、Jトラストカードの株式と交換する。株式交換比率はSAMURAI1:Jトラストカード普通株式1.26832、SAMURAI1:Jトラストカード第二種優先株式7.57156。

不動テトラ<1813>、地盤改良工事の愛知ベース工業グループを子会社化

不動テトラは、地盤改良工事を手がける愛知ベース工業(愛知県岡崎市。売上高19億円、純資産1億9800万円)を中核とするグループ3社の全株式を取得し、子会社化することを決めた。戸建住宅など中小規模の建築構造物基礎の地盤改良工事に参入し、収益基盤の多様化につなげる。

今回傘下に収めるのは持ち株会社として愛知ベース工業を傘下に置くABホールディングス(愛知県岡崎市)、地盤調査のBASE・ECO(同。売上高4700万円、純資産800万円)、土質試験の日本土質試験センター(名古屋市。売上高1000万円、純資産△200万円)の3社。

不動テトラはこれまで大規模な土木・建築構造物基礎の地盤改良工事を手がけてきた。愛知ベース工業グループを傘下に取り込むことで、戸建住宅の小規模物件から大規模土木・建築構造物基礎までの幅広い地盤改良工事に対応できる体制を整える。

取得価額は非公表。取得予定日は2020年10月1日。

MonotaRO<3064>、インドの工業用間接資材販売EmtexのEコマース事業を傘下に

MonotaROは、工具、部品など工業用間接資材販売のインドEmtex Engineering Private LimitedがEコマース(電子商取引)事業を移管した新会社IB MONOTARO Private Limited(ニューデリー)を子会社化することを決めた。IB MONOTAROが実施する第三者割当増資などを引き受け、50%超の株式を取得する。Emtexがすでに現地に構築したEコマースの事業基盤を活用し、成長が見込まれるインド市場で効率的な事業展開を目指す。

取得価額は約15億6500万円。取得予定日は2020年11月30日。

 

 

 

 

情報提供:株式会社ストライク

[業界別・業種別 M&Aのポイント]

第5回:「医療業界のM&Aの特徴や留意点」とは?

~特有の規制は?設備投資は?スキームは?バリュエーションは?~

 

〈解説〉

公認会計士・中小企業診断士  氏家洋輔

 

 

▷関連記事:「情報通信(IT)業のM&Aの特徴や留意点」とは?

▷関連記事:「小売業のM&Aの特徴や留意点」とは?

▷関連記事:「建設業のM&Aの特徴や留意点」とは?

 

Q、医療業界のM&Aを検討していますが、医療業界M&Aの特徴や留意点はありますか?


他業界と比較した医療業界の特徴は公益性が非常に高く、そのため規制が多いことです。

 

規制産業であることで、医業収益を制約する項目が存在します。例えば、病院の開設・増床をするためには、その開設地域における都道府県知事等の許可が必要となります。開設・増床しようとする地域の既存病床数が、医療計画が定める基準病床数を上回っている場合、都道府県知事等は新たな病院開設・増床を認めないことが可能です。つまり、病院側が増床を行いたくても、認められない可能性があります。

 

製造業であれば、会社の規模の拡大には工場の設備投資を行うことが一般的ですが、病院の場合、上述のように病床を増やすことは地域によっては難しい場合があります。そのため、病院の規模拡大を行う場合は、M&Aを活用して他の病院を買収し病床を増やすことが必要となる点が医業業界のM&Aの特徴となります。

 

 

また、保険診療に係る各診療行為には、その報酬金額算定のための点数(1点10円換算)が定められています。これによって、同じ条件で保険診療を行う限りは、どの医師が診療を行ったとしても、その医業収益は同じ金額となります。つまり、保険診療を行う限りは、医師1人当たりの医業収益の上限がある程度決まります。

 

さらに、病床数により、医師やコ・メディカル(看護師や薬剤師等)の必要な配置基準が定められています。例えば、一般病床であれば病床数に対して、医師は16:1、看護師は3:1等の基準です。一般企業では人員を削減して効率的な経営を行ったとしても特に問題とはなりませんが、医療業界では人員数を削減して配置基準を下回った場合には、医療法に反することとなり、診療点数が減算されるため医業収益が減少することとなります。そのため、有資格者の一定数の確保が必要となり、労働集約型である医療法人にとって人件費は最も大きい費用ですが、思うように下げられないという特徴があります。一方で、従前より看護師等の不足が医療業界の問題となっていますが、看護師を確保できない事により、配置基準を達成できないという問題を抱える医療法人も少なくありません。

 

 

他にも、医療業界の特徴として、診察室、手術室、処置室、病室、その他医療提供に必要となる各種設備・施設を設ける必要があります。これらの設備については、安全上、衛生上、防火上、療養環境上など様々な視点で規定が定められており、設備基準を満たすために設備投資の金額も多額になることが一般的です。

 

 

ところが、資金繰り等の理由で設備投資を後ろ倒しにしていることがあります。このような場合は、M&A実施後多額の設備投資が必要になる可能性があるため、M&Aを検討する場合には、設備投資を実施しておらず設備が老朽化していないかについて確認する必要があります。M&A実施後に設備投資が必要な場合は、設備投資に必要な金額を譲渡価格から減額する等の交渉をすることを検討しましょう。

 

 

医療法人は株式会社とは異なり、その多くは持ち分の定めのある社団法人であり、機関設計が異なります。株式会社では株主総会が最高意思決定機関となりますが、医療法人では社員総会、取締役会にあたる期間が理事会となります。また、医療法人の理事長は医師である必要があります(一部例外あり)。

 

M&Aの局面においても、医療法人は株式会社とは異なります。まず、スキームは事業譲渡、合併、出資持分の譲渡および理事長等の交代のどれかを選択することとなります。

 

第一に、事業譲渡は病院の新規開設と廃止手続きを同時に行う等、行政の許可が求められるため、手続期間は比較的長くなります。さらに、病床の引継ぎができないこともあり、実務上ではほとんど採用されていません。

 

第二に、合併は事業譲渡とは手続きは異なりますが、行政の許可が求められることは同様であるため、手続期間は比較的長くなります。事業譲渡と異なる部分として、病床を引き継ぐことが可能であるため、大手の医療法人等は合併を利用してM&Aを行うことがあります。

 

第三に、出資持分の譲渡及び理事長等の交代では、社員総会で議決権を有する社員の交代をし、さらに理事会のメンバー(理事長等)を交代することで経営権を取得します。この方法は、行政手続上の許可は不要で、届出で足りることから手続期間は比較的短くなります。M&A後も、売手側の医療法人格は存続し、病床の引継ぎも可能であることから実務上広く利用される方法です。

 

 

上述のように、医療法人は株式会社とは異なり様々な制約があるため、株式会社を設立して経営を柔軟に行う場合があります。その方法として、医療法人の関連事業をMS(メディカル・サービス)法人として株式会社を設立し、経営している場合があります。MS法人は医療法人と一体として経営されているため、売手側の医療法人がMS法人も経営している場合には、基本的にはMS法人も含めてM&Aを検討することとなります。

 

 

診療報酬は、健康保険が7割(後期高齢者の場合は9割)を負担するため、医療法人のメインの医療収益の回収先は当該7割の支払業務を行う審査支払機関となります。審査支払機関は国によって設立が定められた機関であり、一般企業と比較して貸倒れのリスクが低いため、ファクタリングを行うことが容易となります。ファクタリングとは、審査支払機関に対する債権を売却し早期に資金を回収することです。資金繰りの苦しい医療法人はファクタリングを行っていることが多く、M&Aを検討する場合に、対象の医療法人のファクタリングの利用の有無、利用している場合にどのような会計処理を行っているかを確認しましょう。

 

 

他産業と比べて規制が多い特性から、バリュエーション手法も一般的なDCF法や時価純資産法、年買法等だけでなく、病床数を基準とする方法等も取られることがあります。売手側の場合は買手側のバリュエーション手法を理解することで交渉がスムーズに進むことも多いため、把握できる場合は把握しましょう。

 

 

さらに、医療業界は規制産業であるため、異業種からの参入は難しく閉鎖的な産業となっています。また、医療法人は近年赤字の法人が多くなっていることもあり、財務内容を正確に把握する必要があります。規制産業であることから他業種と比較して事業や財務の内容や把握すべきポイントが異なることも多いため、医療法人のM&Aを検討する場合は、医療法人の事業をよく理解しているアドバイザーや、財務の専門家を利用することをお勧めします。

 

 

 

 

 

 

 

 

事業承継に関する企業の意識調査(2020年9月公開分)

 

 

 

◇事業承継に関する企業の意識調査(2020年9月公開分)

企業の67.0%が事業承継を経営上の問題と認識
~ 新型コロナを機に事業承継への関心が高まった企業は8.9%に ~

※詳細はこちら

 

 

 

 

 

 

 

 

情報提供元(出所):株式会社帝国データバンク

[M&A案件情報(譲渡案件)](2020年9月29日)

-以下のM&A案件(2件)を掲載しております-

 

●自動車部品や産業用装置部品を主力とし、金属切削加工を得意とする会社

[業種:自動車部分品・附属品製造業/所在地:関東地方]

●好立地・好アクセスなカプセルホテル事業

[業種:カプセルホテル/所在地:関西地方]

 

 

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案件No.SS006416
自動車部品や産業用装置部品を主力とし、金属切削加工を得意とする会社

 

(業種分類)製造業

(業種)自動車部分品・附属品製造業

(所在地)関東地方

(直近売上高)5~10億

(従業員数)10~50名

(譲渡スキーム)株式譲渡

(事業概要)自動車部品や産業用装置部品を主力とする金属加工会社

 

〔特徴・強み〕

◇長年の業歴を誇る金属加工会社
◇得意先は大手メーカーなど優良先が多く、安定した受注基盤を形成
◇高品質・短納期の製品納入により得意先からの評価も高い

 

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案件No.SS006368
好立地・好アクセスなカプセルホテル事業

 

(業種分類)ホテル・旅館業

(業種)カプセルホテル

(所在地)関西地方

(直近売上高)1~5億

(譲渡スキーム)事業譲渡

(事業概要)好立地でのコンセプトカプセルホテル事業を展開。

 

〔特徴・強み〕

◇部屋数150部屋以上
◇質の高い設備を完備
◇高い口コミ評価を多数獲得
◇築年数5年以内

 

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情報提供会社:株式会社ストライク

 

 

 

 

【免責事項】

・掲載情報は、内容及び正確さに細心の注意をはらい、万全を期しておりますが、人為的なミスや機械的なミス、調査過程におけるミスなどで誤りがある可能性があります。税務研究会及び情報提供会社は、当該情報に基づいて被ったいかなる損害についても一切の責任を負うものではありません。

・掲載情報は公開日時点の情報になります。既に案件が特定の対象会社と交渉に入っている場合や成約している場合もございます。

 

 

 

 

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[会計事務所の事業承継・M&Aの実務]

第1回 :M&Aのメリット・デメリット

 

[解説]

辻・本郷税理士法人 辻・本郷ビジネスコンサルティング株式会社

黒仁田健 土橋道章

 

〈目次〉

⑴売主側におけるメリット

①顧問先や従業員の承継

②事務所の譲渡に伴う資金化

⑵買主側におけるメリット

①顧問先の獲得

②従業員の獲得

③規模拡大に伴うシナジー

⑶売主及び買主双方におけるデメリット

①顧問先の契約解除

②従業員の退職

 

 

 

 

▷関連記事:失敗例から学ぶM&A ~従業員の大半が退職したケース 、所長税理士と新所長の引継ぎがうまくいかなかったケース ~

▷関連記事:「会計事務所・税理士事務所のM&Aの特徴や留意点」とは?

 

⑴売主側におけるメリット


売主側におけるM&Aの主なメリットは、①顧問先や従業員の承継と②事務所の譲渡に伴う資金化です。

 

①顧問先や従業員の承継

会計事務所の担う業務は、顧問先における日常の会計・税務相談や経理業務、経営相談など多岐にわたります。社内に経理や総務、経営企画などの部門がある大手企業とは異なり、特に中小企業にとっては、会計事務所に依存している部分が多く、当然に信頼関係の下にこれらの業務が成立しています。

 

今後10年、20年と顧問先は成長を続け、従業員も家庭を持ち、年を重ねていく中で、会計事務所として長期間のサービスを提供し続けていかなければなりません。

 

顧問先と従業員を一緒に承継できるのがM&Aのメリットと考えられます。

 

個別に承継していく場合は、引継ぎ先の事務所を1件ずつ紹介していくこととなり、また、従業員についても転籍先をあっせんしていくことになります。この場合、従業員は、顧問先の担当者として長年、同じ顧問先の業務にあたっていることが一般的で、顧問先=担当従業員のセットとなっており、双方で信頼関係ができています。それぞれの承継先が同じ事務所でない場合は、注意が必要です。

 

②事務所の譲渡に伴う資金化

M&Aの手法による最も大きいメリットとなります。会計事務所の資産は、顧問先と従業員、所長税理士の信頼を表したものとなります。

 

これら無形の資産から生み出されるキャッシュフローを、譲渡時点に資金化できることがメリットとなります。もちろん、会計事務所業は誰でもできるわけではないので、流動性の観点からは低いこと、目に見えない顧問先・従業員・所長税理士の複合的な信頼関係を維持できるような承継先を見つけることが重要になります。

 

⑵買主側におけるメリット


買主側におけるM&Aのメリットは、①顧問先の獲得、②従業員の獲得、③規模拡大に伴うシナジーが考えられます。

 

①顧問先の獲得

顧問先の獲得は、売上の拡大が一時で図れる点がメリットとなります。つまり通常の顧問契約の獲得は、時間をかけて1件ずつ増やしていく形となりますが、それにかかる時間を短縮することができます。

 

通常、顧問契約を獲得するのに、次のような流れの中で、それぞれの段階で時間とコストをかけて獲得していきます。これら一連の流れを省略でき、また、複数の顧問先を一括で承継できることがメリットと考えられます。

 

 

 

 

②従業員の獲得

人が稼ぐ労働集約型の会計事務所業界において、人材の確保は非常に重要な要素です。特に事務所ごと承継する意味は、通常の採用と異なり、意思疎通がとれた人材の集まり(組織体)を取得することができ、またそれぞれの従業員が担当先を持っていることから、承継したその日から売上・スキル・組織コミュニケーション力を持っている点で大きなメリットがあります。

 

通常、従業員の採用は、下記のような流れがあり、それぞれの段階で時間とコストが発生します。顧問先との契約と同様に雇用契約においても、これら一連の流れを省略でき、また複数の雇用を一括で承継できることがメリットと考えられます。

 

 

③規模拡大に伴うシナジー

規模拡大に伴うシナジーは、事業所の統合により主に管理コスト等の圧縮と、知識やノウハウの共有により提供するサービスの質や従業員の教育面の充実が見込まれます。

 

管理コスト等の圧縮の例としては、利用会計システムの料金、地代家賃、給与計算や請求書の発行事務などが挙げられます。また、知識やノウハウの共有においては、各種事例の集積により事案を検討する時間の圧縮や、より専門性の高いサービスの追求が行えるとともに、従業員1 人1 人のスキルアップによる生産性の効率化がはかられます。したがって、事例研究や社内勉強会といった機会を設け、情報共有や人材交流が行いやすい環境を整えることが重要となります。

 

⑶売主及び買主双方におけるデメリット


一方、売主及び買主双方におけるM&Aのデメリットは、①顧問先の契約解除、②従業員の退職となります。

 

①顧問先の契約解除

顧問先から契約を解除されるのは、主に二つの理由によります。

 

一つ目は、売主である所長税理士や従業員の退職をきっかけに、顧問先から解約の申出がなされるケースです。特に所長税理士が退職される場合、古い顧問先であればあるほど人間関係が深いことから顧問契約が維持されていましたが、M&Aをきっかけに解約の申出を行いやすい状況になります。

 

また、もともと顧問先に、監査頻度が少ない、提案をしてくれない、ITサービスへの対応が遅れているなどの不満があったものの、所長税理士には設立からお世話になっていたり、親の世代からのつきあいで言いにくかったような場合は、M&Aを機に契約解除の可能性が高まりますので、そのような顧問先がないか、後任担当者の選定は適切か、事務所としてフォローアップできるかなど事前に検討しておくことが大事です。

 

二つ目は、新しい会計事務所や担当者によるサービスへの不満です。これは、特に所長税理士が直接担当している顧問先を新しい担当者が引き継いだ場合に起こりやすいのですが、当然、所長税理士と同等の経験やスキルをもった担当者をつけることは困難です。M&Aに際して、サービス内容、契約金額、担当者経歴などをもとに顧問先を分類し、M&Aの前後にサービスの低下が起こらないようにフォローできる体制を事前に検討しておくことが重要です。特に、大口の顧問先については、契約解除となった場合には対象事務所の損益に大きく影響するため慎重な対応が求められます。

 

 

②従業員の退職

M&Aによる譲渡時に従業員が転籍をしないケースとM&A後に退職をするケースがあります。

 

人手不足で売手市場の現在では、特に中堅どころの30~40代の社員は引く手あまたの状況です。事務所を売却する話が出た場合、売られた側の従業員にとっては身売りされたように感じたり、経営体制や環境が変わることについて自分自身の処遇がどのように変わるのか、不安を感じたりします。

 

従業員は、年齢や、家族構成、働き方に関するモチベーションなど状況が様々です。またこれらは、時の経過とともに変化をします。M&Aの前段階においては、本人との面談により、新しい体制になって、何が変わるのか、何が変わらないのかをきちんと明示し、本人のやりたいことや、やりたくないことをヒアリングするとともに、引き続き働いてほしい旨を伝える必要があります。

 

できれば、スタート時点としては、「今までと何も変わらない+α」で新しい仕事にチャレンジできる環境(成長できる環境)を用意できると望ましいと考えられます。

 

M&A後に退職をするケースは、新しい環境に慣れないことが一番の要因です。新しい勤務地、出勤時間や給与等の待遇面の変更、新しい会計システムへの移行など、通常業務の負担に加えて、何かと従業員には負荷がかかります。

 

会計事務所のM&Aの場合、顧問先と従業員が揃って初めて事業として成り立ちます。つまり、極端な話、顧問契約をすべて承継できても従業員が1人も承継できなければ、顧問先へのサービスを買主側の従業員で行う必要が出てきますし、逆に従業員を全員承継できても顧問契約を一つも承継できなければ、従業員へ支払う給与を買主側の事務所の経費で賄う必要が出てきます。

 

すなわち、買主側では顧問契約と雇用契約の両面から、これらのリスクを認識し重要な顧問先や従業員の洗い出し、また、実際に離反が出た際の対処方法も併せて検討しておくことが重要となります。

 

 

 

 

▷参考URL:M&A各種契約書等のひな形(書籍『会計事務所の事業承継・M&Aの実務』掲載資料データ)

 

[解説ニュース]

個人が共有持分を分割した場合の所得税の取扱い

 

〈解説〉

税理士法人タクトコンサルティング(山崎 信義/税理士)

 

 

[関連解説]

■共有物の分割で不動産取得税がかかるとき

■不動産取得税の「相続による取得」を巡る最近のトラブル

 

 

 

 

【問】

甲と弟の乙は、昨年に父から相続した東京都内の土地(X土地)を持分2分の1で共有しています。甲と乙は、X土地を分割して共有を解消したいと考えていますが、この場合の税務上の取扱いについて次の通り質問します。

 

【問1】X土地を甲と乙が単独で所有する2筆の土地に分割した場合、甲が乙に、乙が甲に、それぞれのX土地の持分の譲渡があったものして、甲と乙に所得税が課税されるのでしょうか。なおX土地は遊休地であり、何ら使用されていません。

 

【問2】甲と乙は、X土地以外に、15年前に父から相続した神奈川県内の土地(Y土地)を持分2分の1で共有しています。X土地の価額とY土地の価額がほぼ同額であることから、甲のY土地の持分と乙のX土地の持分を交換し、X土地を甲の単独所有、Y土地を乙の単独所有にすることも検討していますが、この場合にはX土地の持分とY土地の持分の譲渡があったものとして、甲と乙に所得税が課税されるのでしょうか。

 

【回答】

1.【問1】について


(1)共有物の分割に係る所得税の譲渡所得の課税

二以上の者が一の土地を共有している場合において、その土地をそれぞれの共有持分にて現物分割し、それぞれ単独所有の土地としたときは、判例上、共有者相互問において、共有各部分につき、その有する持分の交換又は売買が行われることであって、各共有者が取得部分について単独所有権を原始的に取得するものではないといわれています(最判、昭42.8.25民集21巻 7号1729頁、平成29年版所得税基本通達逐条解説194頁)。

 

したがって、共有の土地を、それぞれの持分に従って現物分割した場合、①その法律的性格に着目すれば、その共有持分の交換(交換も「譲渡」の一種です。)があったことになるので、その譲渡による利益について所得税が課税されるのではないかという疑問が生じます。

 

しかし、共有関係にある一の資産を現物で分割するということは、②その資産の全体に及んでいた共有持分権が、その資産の一部(現物分割で取得した部分)に集約されただけにすぎず、資産の譲渡による収益の実現があったといえるだけの経済的実態は備わっていないということもできます。

 

そこで、国税庁は所得税基本通達(所基通)33-1の7により、個人が他の者と共有している土地について、その持分に応ずる現物分割があったときには、税務上は①の考え方によらず、②の考え方に基づき、その分割による土地の共有持分の譲渡はなかったものとして、所得税の譲渡所得の課税関係を生じさせないこととして取扱うこととしています。

 

なお、現物分割された土地の面積の比と共有持分との比が異なる場合がありえますが、そのような場合であっても、その分割後のそれぞれの土地の価額の比が共有持分の割合におおむね等しいときは、その分割はその共有持分に応ずる現物分割に該当することとされます(所基通33-1の7(注)2)

 

(2)結論

甲と乙が共有しているX土地を、それぞれの持分に従って現物分割した場合、前述(1)より、その分割による土地の共有持分の譲渡はなかったものとされ、所得税の課税関係は生じません。

 

 

 

2.【問2】について


ご質問のように、東京都所在のX土地の乙の持分と、神奈川県所在のY土地の甲の持分を交換し、X土地を甲の単独所有、Y土地を乙の単独所有とした場合には、交換する持分が別の土地の持分であるため、前述1(1)②で述べたような「その資産の全体に及んでいた共有持分権が、その資産の一部(現物分割で取得した部分)に集約されただけにすぎず、資産の譲渡による収益の実現があったといえるだけの経済的実態は備わっていない」とはいえません。したがって私法上の関係通り、甲と乙において、それぞれX土地の持分とY土地の持分の交換(譲渡)があったものと認められることから、甲と乙にそれぞれ所得税が課税されます。

 

ただし、X土地とY土地の持分の交換において、一定の要件を満たす場合には、固定資産の交換に係る所得税の特例(所得税法58条)の適用により”譲渡がなかったもの”とみなすことができます。

 

 

 

 

 

税理士法人タクトコンサルティング 「TACTニュース」(2020/09/28)より転載

[M&A担当者のための 実務活用型誌上セミナー『税務デューデリジェンス(税務DD)』]

第2回:M&A取引の税務ストラクチャリング

 

[解説]

税理士法人LINK 公認会計士・税理士 長野弘和

 

〈目次〉

1.M&Aのストラクチャー

2.オーナー企業を買収する場合

(1)株式買収(株式譲渡)と事業買収(事業譲渡)の比較

(2)役員退職慰労金の利用

3.他社の子会社を買収する場合

(1)株式買収(株式譲渡)と事業買収(事業譲渡)の比較

(2)配当金の利用

4.買収対象に多額の繰越欠損金がある場合

5.終わりに

 

 

▷第1回:M&Aにおける税務デューデリジェンスの目的、手順、調査範囲など

▷第3回:M&A取引に伴う税務リスクとその対応

 

1.M&Aのストラクチャー


M&Aに際しては、様々な観点から最適なストラクチャーを検討することになりますが、税務の観点からはストラクチャーの選定によって税務上の有利・不利が生じることも少なくありません。税務上、M&Aのストラクチャーとして、株式買収(株式譲渡)や事業買収(事業譲渡)、合併、株式分割、株式交換、株式移転等、様々な手法が紹介されています。実務上は、株式買収(株式譲渡)、あるいは事業買収(事業譲渡)の手法が採られることが多いので、これらについて解説します。

 

株式買収(株式譲渡)は、買収対象となる企業の株主(売手)から株式を取得する手法で、最もシンプルな手法と言えます。法人格をそのまま維持したい、既存の契約関係や許認可等をそのまま維持したい場合等に検討されます。

 

 

 

 

 

 

事業買収(事業譲渡)は、買収対象となる事業を行う売手から事業の全部又は重要な一部を取得する手法で、株式買収(株式譲渡)に比べて手続は煩雑になります。取得する資産・負債を選択したい、簿外債務を切り離したい場合等に検討されます。

 

 

 

 

 

 

ストラクチャーの検討では、誰が買収するのかという点が論点になることもあります。クロスボーダーの案件では特に論点となり、日本企業が買収するよりも、その海外子会社が買収する形を採る方が、租税条約の関係で源泉税率が軽減される等、税務上の有利・不利が生じることも少なくありません。

 

 

2.オーナー企業を買収する場合


(1)株式買収(株式譲渡)と事業買収(事業譲渡)の比較

よくあるケースとして、オーナー企業を買収する場合を例に、株式買収(株式譲渡)と事業買収(事業譲渡)で税負担にどの程度の差が生じるのか検討してみましょう。

 

 

 

 

(前提)

✓対象会社の株式(事業)の譲渡価額は2,000百万円

✓売手株主が保有する対象会社の株式の取得価額は100百万円

✓法人税率は30%、譲渡所得の税率は20%、配当所得の税率は50%

 

 

(売手サイドの税負担)

①株式買収(株式譲渡)の場合

✓対象会社:影響なし(株主が変わるのみ)

✓売手の株主:取得価額100百万円の株式を譲渡価額2,000百万円で譲渡した結果、譲渡所得は1,900百万円となり、税負担は380百万円(=1,900百万円×20%)となります。

 

②事業買収(事業譲渡)の場合

✓対象会社:純資産500百万円の事業を譲渡価額2,000百万円で譲渡した結果、譲渡益は1,500百万円となり、税負担は450百万円(=1,500百万円×30%)となります。

✓売手の株主:対象会社を清算して資金を回収した結果、配当所得は1,050百万円(=1,500百万円-450百万円)となり、税負担は525百万円(=1,050百万円×50%)となります(ここでは簡便的に計算しています)。

 

 

 

 

 

(買手サイドの税負担)

①株式買収(株式譲渡)の場合

✓対象会社:影響なし(株主が変わるのみ)

✓買手の株主:影響なし(株式を取得するだけで税負担は生じない)

 

②事業買収(事業譲渡)の場合

✓受皿会社:純資産500百万円の事業を譲渡価額2,000百万円で取得した結果、1,500百万円の資産調整勘定(いわゆる、税務上ののれん)が発生します。資産調整勘定はその後の償却を通じて450百万円(=1,500百万円×30%)の税負担を軽減することができます。

✓買手の株主:影響なし(事業を取得するだけで税負担は生じない)

 

 

 

 

 

上記は非常にシンプルな例ですが、売手側には株式買収(株式譲渡)の方が有利、買手側には事業買収(事業譲渡)の方が有利となり、売手・買手の合計で考えると株式買収(株式譲渡)の方が有利と言えます。オーナー企業を買収する場合には、オーナーの税負担の観点から株式買収(株式譲渡)が採用されることが多いです。ただし、売手の都合で事業買収(事業譲渡)の方が望ましい場合もある点には留意が必要です。

 

 

 

(2)役員退職慰労金の利用

上述のとおり、一般的には、オーナー企業を買収する場合には株式買収(株式譲渡)が採用されることが多いですが、単純に株式を売買するだけでなく、役員退職慰労金の支払いと組み合わせた手法が採られることが少なくありません。

 

例えば、上記のケースは対象会社の株式の譲渡価額は2,000百万円ですが、2,000百万円のうち400百万円を役員退職慰労金として支給し、株式の譲渡価額を1,600百万円に引き下げるという手法が考えられます。売手(オーナー)から見ると、総額2,000百万円を受領することに違いはなく、また譲渡所得と退職所得の税負担はそれほど大きくは変わりません。買手から見ると、総額2,000百万円を支払うことに違いはなく、また役員退職慰労金は対象会社において損金の額に算入されますので、400百万円×30%=120百万円の節税メリットが得られます。

 

なお、役員退職慰労金は、税務調査において不相当に高額と指摘された場合には、不相当に高額な部分について損金の額に算入することができません。過大な役員退職慰労金として否認されないように留意する必要があります。

 

 

3.他社の子会社を買収する場合


(1)株式買収(株式譲渡)と事業買収(事業譲渡)の比較

よくあるケースとして、他社の子会社を買収する場合(対象会社の株主が法人の場合)を例に、株式買収(株式譲渡)と事業買収(事業譲渡)で税負担にどの程度の差が生じるのか検討してみましょう。

 

 

 

(前提)

✓対象会社の株式(事業)の譲渡価額は2,000百万円

✓売手株主が保有する対象会社の株式の取得価額は100百万円

✓法人税率は30%

 

 

(売手サイドの税負担)

①株式買収(株式譲渡)の場合

✓対象会社:影響なし(株主が変わるのみ)

✓売手の株主:取得価額100百万円の株式を譲渡価額2,000百万円で譲渡した結果、譲渡益は1,900百万円となり、税負担は570百万円(=1,900百万円×30%)となります。

 

②事業買収(事業譲渡)の場合

✓対象会社:純資産500百万円の事業を譲渡価額2,000百万円で譲渡した結果、譲渡益は1,500百万円となり、税負担は450百万円(=1,500百万円×30%)となります。

✓売手の株主:影響なし(受取配当金の益金不算入により税負担は生じない)

 

 

 

 

 

(買手サイドの税負担)

①株式買収(株式譲渡)の場合

✓対象会社:影響なし(株主が変わるのみ)

✓買手の株主:影響なし(株式を取得するだけで税負担は生じない)

 

②事業買収(事業譲渡)の場合

✓受皿会社:純資産500百万円の事業を譲渡価額2,000百万円で取得した結果、1,500百万円の資産調整勘定(いわゆる、税務上ののれん)が発生します。資産調整勘定はその後の償却を通じて450百万円(=1,500百万円×30%)の税負担を軽減することができます。

✓買手の株主:影響なし(事業を取得するだけで税負担は生じない)

 

 

 

 

 

上記は非常にシンプルな例ですが、売手側には事業買収(事業譲渡)の方が有利、買手側には事業買収(事業譲渡)の方が有利となり、売手・買手の合計で考えても事業買収(事業譲渡)の方が有利と言えます。実務上は消費税や不動産取得税等、その他の税負担も考慮の上で検討する必要があります。

 

 

 

 

(2)配当金の利用

上述のとおり、他社の子会社を買収する場合(対象会社の株主が法人の場合)には、一般的に事業買収(事業譲渡)の方が税務上はメリットがあるとされていますが、株式買収(株式譲渡)の場合でも配当金の支払いと組み合わせることで、それに近いメリットを得るという手法が採られています。

 

例えば、上記のケースは対象会社の株式の譲渡価額は2,000百万円ですが、2,000百万円のうち400百万円を株式譲渡の前に配当金として対象会社から支給することで、株式の譲渡価額を1,600百万円に引き下げるという手法が考えられます。売手から見ると、総額2,000百万円を受領することに違いはなく、また受取配当金の益金不算入の適用を受けることで、配当金で受け取る分について税負担を軽減することが出来ます。買手から見ると、総額2,000百万円を支払うことに違いはなく、税負担も変わりません。

 

✓売手の株主:取得価額100百万円の株式を譲渡価額1,600百万円(=2,000百万円-400百万円)で譲渡した結果、譲渡益は1,500百万円となり、税負担は450百万円(=1,500百万円×30%)となります。配当金として受領した400百万円は、受取配当金の益金不算入の適用を受けることで、税負担は生じません。結果として、上記の例では事業買収(事業譲渡)の場合の税負担(450百万円)と変わらない結果となっています。

 

 

 

 

なお、配当金の支払いと組み合わせた手法について、連結納税制度に加入している連結子会社を買収する場合には有効な手法とならない点に留意する必要があります。また、連結納税制度に加入していない子会社を買収する場合であっても、令和2年度の税制改正により、その子会社(対象会社)が過去に買収した会社の場合等では同様の効果が得られない可能性がある点についても留意する必要があります。

 

 

4.買収対象に多額の繰越欠損金がある場合


買収対象に多額の繰越欠損金がある場合、株式買収(株式譲渡)の手法を採用すると、買手はその後その繰越欠損金を利用することができるというメリットがあります。繰越欠損金には使用期限(9年~10年)がありますので、その繰越欠損金が発生した時期や、その後の使用見込み等を勘案する必要はありますが、株式買収(株式譲渡)を採用する一つのメリットとなります。

 

 

5.終わりに


M&Aに際しては、最適なストラクチャーを検討することになりますが、そこでは税務の観点からだけでなく、事業の観点や法務の観点等、様々な観点から検討されることになります。事業の観点から検討した結果、株式買収(株式譲渡)の選択肢しか考えられない場合、あるいは、法務の観点から検討した結果、事業買収(事業譲渡)の選択肢しか考えられない場合等、その他の観点から検討した結果、採り得るストラクチャーが限られることもあります。税務上の有利・不利も確かに重要ですが、常にあらゆる選択肢を詳細に検討するというのも非効率と言えます。ストラクチャーの検討に際しては、考慮すべき事項を挙げて優先度を明確にしておくことで、効果的・効率的に検討を進めることができます。

[M&A案件情報(譲渡案件)](2020年9月24日)

-以下のM&A案件(3件)を掲載しております-

 

●店舗・公共施設・工場等の電気工事業者

[業種:電気工事業/所在地:中部地方]

●有資格者在籍、地元に根差した建築工事業者

[業種:建築工事業/所在地:中部地方]

●研究開発力、技術力に強みのある飲料メーカー

[業種:飲料製造業/所在地:中部地方]

 

 

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案件No.SS006321
店舗・公共施設・工場等の電気工事業者

 

(業種分類)建設・土木

(業種)電気工事業

(所在地)中部地方

(直近売上高)1~5億

(従業員数)10~50名

(譲渡スキーム)株式譲渡

(事業概要)電気設備工事・電気土木工事に幅広く対応可能。

 

〔特徴・強み〕

◇大手企業との取引口座あり、業績堅調。
◇有資格者多数在籍。
◇公共工事入札参加資格「Aランク」を保有。

 

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案件No.SS005987
有資格者在籍、地元に根差した建築工事業者

 

(業種分類)建設・土木

(業種)建築工事業

(所在地)中部地方

(直近売上高)1~5億

(従業員数)10名以下

(譲渡スキーム)株式譲渡

(事業概要)建築・土木工事

 

〔特徴・強み〕

◇民間工事だけでなく、公共工事を数多く手掛けている。
◇一級建築士複数名在籍。
◇入札参加資格の格付けはAランクの評価。

 

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案件No.SS005182
研究開発力、技術力に強みのある飲料メーカー

 

(業種分類)製造業

(業種)飲料製造業

(所在地)中部地方

(直近売上高)10~50億

(従業員数)50~100名

(譲渡スキーム)株式譲渡

(事業概要)飲料メーカー

 

〔特徴・強み〕

◇高度な技術力で特殊な飲料製造を手掛けている。
◇商品の企画開発から製造、販売まで一貫した生産体制にて対応。
◇日本全国に優良取引先を有している。

 

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情報提供会社:株式会社ストライク

 

 

 

 

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・掲載情報は公開日時点の情報になります。既に案件が特定の対象会社と交渉に入っている場合や成約している場合もございます。

 

 

 

 

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[経営企画部門、経理部門のためのPPA誌上セミナー]

【第9回】PPAで使用する事業計画とは?

 

〈解説〉

株式会社Stand by C(大和田 寛行/公認会計士・税理士)

 

 

前回は無形資産の経済的耐用年数について詳しく解説します。第9回は,無形資産評価において用いられる事業計画について解説します。なお,以下の解説は,無形資産の測定においてインカム・アプローチを採用する場合を前提としています。

 

 

▷第7回:WACC、IRR、WARAと各資産の割引率の設定とは?

▷第8回:PPAにおいて認識される無形資産の経済的対応年数とは?

▷第10回:PPAの特殊論点とは?ー節税効果と人的資産ー

 

 

 

1.使用される事業計画について

PPAにおける無形資産評価は,端的に言えば,事業計画上の将来キャッシュ・フローからもたらされる経済的価値を,無形資産の価値とのれんの価値に配分する手続です。

 

第5回でも解説したように,無形資産の評価は,公正価値アプローチに基づき行われます。

繰り返しになりますが,公正価値とは「測定日時点で,市場参加者間の秩序ある取引において,資産を売却するために受け取るであろう価格又は負債を移転するために支払うであろう価格」であり,無形資産の評価は,一般的な市場参加者の見地に立って行わなければならないことを意味しています。

事業計画についても,上述のような公正価値アプローチに基づき策定されたものを使用することが求められます。

 

それでは,公正価値アプローチに基づき一般的な市場参加者の見地に立った事業計画とはどのようなものでしょうか。

 

M&Aのプロセスにおいて,企業価値や株式価値の算定にあたっては,複数の事業計画を用いて検討されることが一般的です。これは,将来のビジネスの予測にはリスクや不確実性が伴うためであり,競合状況や市場の成長性といった外部環境,新製品開発の成否やシナジーの発現等,企業内外のさまざま要素を考慮して複数のシナリオを想定することが通常です。

 

M&Aにおいては,当然のことながら,売り手は高く売却したいと考え,買い手は安く譲り受けたいと考えます。買収金額は,買い手と売り手が合意した価格ですが,買い手と売り手の交渉力等に左右されるものの,多くの場合,概ねスタンドアロン価格をベースに一定程度買い手のシナジーを加味した金額で合意されるものと考えられます。

 

 

【図表1】買収価格とシナジーのイメージ

 

 

無形資産評価の一般的な実務においては買い手「固有」のシナジーを除いた事業計画が使用されます。

「固有」とは,買い手のみがコントロールし実現できることを意味します。買い手固有のシナジーは,それを実現できる買い手にとってのみ価値を有するものの,一般的な市場参加者からみた場合その価値を実現できるものではないため無形資産の価値を構成しない,という考え方が基礎となっています。

買い手固有のシナジーによりもたらされるキャッシュ・フローは,無形資産ではなくのれんを構成することとなります。

 

一方で,買い手が実現可能なシナジーのうち客観的に見て誰が買い手となる場合であっても実現可能と考えられるシナジーは,事業計画上考慮しなければならない点には留意が必要です。

 

それらに該当するものとしては,例えば,事業規模拡大に伴うスケールメリットや,管理体制一元化によるコスト削減といったシナジーが考えられます。

 

 

【図表2】WACC,IRR,WARAの関係図

 

 

 

2.実務上の対応

一般的な無形資産評価の実務では,買い手企業と外部評価者の間で,どの事業計画を無形資産評価において使用すべきかについてディスカッションが行われます。

 

その結果,実際の買収価額と整合的な事業計画が使用される場合が多いです。そのような事業計画は,案件によってベースケースであったり,コンサバティブケースであったりとさまざまですが,買い手固有のシナジーを含まない点において共通しています。

 

使用される事業計画を決定したら,当該事業計画数値をもとに無形資産の測定を行います。中でも重要なプロセスは下記の2点です。

 

 

(1)IRRの算定

買収価格と事業計画上の将来キャッシュ・フローをもとにプロジェクトのIRRを算出します。

第7回で解説したとおり,IRRの算定は無形資産の測定に用いるWACCが合理的な水準かどうかを確認するために行われます。IRRは,買収価格及び投資実行時期と,事業計画上の将来キャッシュ・フロー金額及びその発生時期を設定の上,エクセルのXIRR関数を用いれば容易に計算が可能です。

 

公正価値アプローチの考え方に立つと,ここで用いられる買収価格は一般的な市場参加者が想定する金額であり,買い手が支払ったプレミアムを除いた金額となります。

 

同時に,事業計画上の将来キャッシュ・フローについても,買い手固有のシナジー効果による影響を除外した金額となります。このような前提の下,算出されたIRRが,設定されたWACCに近似しているかどうかが判断のポイントとなります。

 

ここで留意すべきは,設定されたWACCの水準が無形資産価値に重大な影響を与えるという点です。WACCの合理性がIRRによって確かめられた後,当該WACCとWARAが一致するように無形資産を含む各資産の期待収益率が設定されることとなりますが,その水準によって,最終的に算定される無形資産の金額が大きく異なることはお分かり頂けるかと思います。

 

 

【図表3】キャッシュ・フロー配分の概念図

 

 

算出されるIRRは,買収金額とそれに整合する事業計画が入手可能な場合,当然のことながらWACCに近似する値となります。しかし,実務では,入手可能な事業計画が買収金額と整合しないケースもあり,その場合算出されたIRRと想定されるWACCに差異が生じることがあります。そのような場合,以下のような要因が考えられます。

 

 

① IRR<WACCとなるケース

一般投資家の想定よりも高い価格で買収が行われている,あるいは,買収価格に買い手が支払ったプレミアムが含まれてしまっている場合が考えられます。

 

また,事業計画が過度に弱気である可能性があります。例えば,事業計画に一般的な市場参加者からみて当然に享受できると考えられるシナジーが織り込まれていないような場合が考えられます。

 

 

② IRR>WACCとなるケース

一般投資家の想定よりも低い価格で買収が行われている,または,事業計画が過度に楽観的または強気である可能性があります。また,買い手固有のシナジー等がキャッシュ・フローに含まれてしまっているような場合も考えられます。

 

実務上は,上記要因による影響を勘案して,事業計画を一般的な市場参加者が想定する水準へ可能な限り調整し,WACCの合理性を判断することになります。

 

 

(2)価値測定におけるキャッシュ・フローの検討

 

続いて,ロイヤリティ免除法や超過収益法といった評価技法を用いて,無形資産の測定に使用する事業計画を基礎として,どのように無形資産の測定を行うかを検討することとなります。

 

事業計画上の将来キャッシュ・フローに基づき無形資産を評価することは,将来キャッシュ・フローの価値を,無形資産とのれんの価値に配分することです。

 

また,無形資産は,評価基準日時点に存在する顧客・契約・技術・製品等から生じるキャッシュ・フローに基づき測定・評価されます。よって,対象企業が将来獲得する顧客や契約,技術等からもたらされるキャッシュ・フローは,無形資産ではなくのれんの価値を構成することとなる点に留意が必要です。

 

 

① 商標権の場合

測定される無形資産が商標権の場合,評価手法は多くのケースでロイヤリティ免除法が採用されます。ロイヤリティ免除法は将来の売上高に一定のロイヤリティレートを乗じたロイヤリティ収入をもとに無形資産価値を算定する評価技法ですが,将来売上高は,使用される事業計画における商標関連事業の想定売上をそのまま採用することが一般的といえます。

 

 

② 顧客資産の場合

一方,顧客資産の場合は商標権と少々取扱いが異なる点に留意を要します。顧客資産の測定においては超過収益法を採用することが一般的ですが,前述のように,測定対象となるのは評価基準日時点に既に存在する顧客であることから,その価値を測定する際には事業計画上の数値に調整を加える必要があります。

 

当該調整は,主に新規顧客からもたらされる価値を除外することと,測定対象となる既存顧客の減少率を考慮することの2点です。

 

通常,事業計画上のキャッシュ・フローには将来獲得が期待される新規顧客からもたらされる価値が含まれるため,当該価値について顧客資産の価値を構成するキャッシュ・フローから除く必要があります。

 

また,前回も述べたように,長い期間でみると顧客は入れ替わりが生じると考えることが合理的であることから,有限の経済的耐用年数を設定し,当該年数に即した減少率を考慮することとなります。

 

 

3.まとめ

無形資産価値の測定に使用する事業計画については,一般的な市場参加者が想定するであろう事業計画を使用するという点が最も基本的かつ重要であると考えます。買い手企業においては,PPAにおいてこのような要請があることを理解して,予め事業計画上のキャッシュ・フローの構成について整理・把握しておくことが必要です。

 

次回は,人的資産と節税効果について解説します。

 

 

 

 

—本連載(全12回)—

第1回 PPA(Purchase Price Allocation)の基本的な考え方とは?

第2回 PPAのプロセスと関係者の役割とは?

第3回 PPAにおける無形資産として何を認識すべきか?
第4回 PPAにおける無形資産の認識プロセスとは?
第5回 PPAにおける無形資産の測定プロセスとは?
第6回 PPAにおける無形資産の評価手法とは?-超過収益法、ロイヤルティ免除法ー
第7回 WACC、IRR、WARAと各資産の割引率の設定とは?
第8回 PPAにおいて認識される無形資産の経済的対応年数とは?
第9回 PPAで使用する事業計画とは?
第10回 PPAの特殊論点とは?ー節税効果と人的資産ー
第11回 PPAプロセスの具体例とは?-設例を交えて解説ー
第12回 PPAを実施しても無形資産が計上されないケースとは?

 

 

 

 

 

 

 

[解説ニュース]

特定生産緑地制度の税務上の留意点について

 

〈解説〉

税理士法人タクトコンサルティング(猪狩 祐介/税理士)

 

 

 

【問】

私は東京都A市に農地を所有し、農業を営んでいます。私の父は所有していた農地の全部について、A市より平成4年(1992年)11月に生産緑地の指定を受けており、私は父から平成10年にその生産緑地の全部を相続し、農業相続人として農地等に係る相続税の納税猶予(措法70の6)の適用を受けています。

 

生産緑地の指定を継続する場合には、その指定の告示から30年経過する前に、A市による「特定生産緑地(生緑法10の2)の指定(10年継続)」を受ける必要があると聞きました。生産緑地の指定から30年を経過する2022年において、特定生産緑地の指定を受ける場合と受けない場合とで、私の相続税の納税猶予や固定資産税の課税にどのような影響がありますか。

 

【回答】

1.特定生産緑地制度の概要


①特定生産緑地制度とは

特定生産緑地制度とは、市町村が、生産緑地指定から30年を経過する日(申出基準日)が近く到来することとなる生産緑地のうち、その周辺の地域における公園、緑地整備の状況など勘案して、申出基準日以後もその保全を確実に行うことが良好な都市環境の形成を図る上で特に有効であると認められるものを、特定生産緑地として指定することをいいます(生緑法10の2)。いわば再指定され た生産緑地を特定生産緑地といいます。

 

②特定生産緑地の指定を受ける場合

特定生産緑地の指定を受けると、10年間の営農義務が課されますが、固定資産税は、従来通り農地課税(低い金額)になります。相続税の納税猶予も営農している限り継続されることになります(措法70の6)。また、特定生産緑地の指定を受けた後でも、生産緑地の所有者である主たる従事者が死亡した等の場合は、相続人が相続税の納税猶予の適用を受けることや、買取りの申出をして生産緑地の指定の解除をすることができます(生緑法10)。

 

③特定生産緑地の指定を受けない場合

特定生産緑地の指定を受けない場合、農地に対する固定資産税は5年をかけて段階的に宅地並み課税になります。現在受けている相続税の納税猶予については、当代に限り継続されますが、次の世代では、生産緑地の指定を受けていないことから、新たに相続税の納税猶予を受けることができません。

 

 

 

 

2.農業相続人の有無別の特定生産緑地の指定と税務上の留意点


特定生産緑地の指定をめぐる税務上の取扱いは、あなたの相続時に相続人となる人のなかに、農業の後継者(農業相続人)がいるかどうかにより、次の通りに区分されます。

 

①農業相続人がいる場合
相続税の納税猶予の適用を受けている場合には、猶予を継続するため、終身営農が必要となります。特定生産緑地の指定を受けなかった場合でも、営農している限り、あなたの納税猶予は打ち切りになりませんが、あなたの親族に農業の後継者がいる場合であっても、あなたの相続において相続税の納税猶予の適用を受けることができず、固定資産税も宅地並み課税となるため、特定生産緑地の指定を受けておくことが望ましいと考えられます。

 

②農業相続人がいない場合
次の世代に農業相続人となる人がいない場合

 

(イ)特定生産緑地の指定を受け10年間営農を継続する(10年毎に継続の可否を判断)
(ロ)30年経過前に買取りの申出を行い、生産緑地の指定を解除し、土地の有効活用を行う。
(ハ)特定生産緑地の指定を受けず、買取りの申出も行わず、いつでも買取りの申出ができる状態で営農を継続する。

 

の3つから選択することになります。

 

引き続き税制上のメリット(固定資産税の農地課税、相続税の納税猶予)を受けるためには、上記(イ)を選択することとなります。対して、宅地に転用して活用するのであれば(ロ)(ハ)を選択することになります。ただし、買取りの申出を行うと、納税猶予が打ち切りとなり、あなたは相続税額と利子税を一括で納付することになります。

 

 

将来農地をどのように維持するかは、税制面からも重要な問題です。特定生産緑地の指定を受けるかどうかについては、農地税制に詳しい税理士に相談しながら検討してください。

 

 

 

 

 

 

税理士法人タクトコンサルティング 「TACTニュース」(2020/09/23)より転載