[税理士のための税務事例解説]

事業承継やM&Aに関する税務事例について、国税OB税理士が解説する事例研究シリーズです。

今回は、「父から相続した建物を父の事業に従事していた者に低額譲渡した事例に対するみなし贈与課税の適用について」についてです。

 

[関連解説]

■【Q&A】事業を譲り受けた場合に営業権の計上について

■【Q&A】事業譲渡により移転を受けた資産等に係る調整勘定

 

 

 


[質問]

個人で診療所を経営している甲医師(以下「甲」という)は、甲の叔父が所有している土地を賃貸借契約して賃借し、その土地に建物を建て、診療所を経営していました。土地の賃貸料は安く相当の地代に満たないそうです。

 

甲は2月に病気になり入院したため休診にしていましたが、病気が完全に治るという可能性がないこと、また甲の子も医師ですが、甲の診療所を利用して開業する意思がないため、甲は廃業して建物を解体する予定でした。しかし4月に病状が急変し死亡しました。

 

相続人になる甲の子(以下「乙」という)も、建物を解体しようと考えていましたが、甲の診療所に勤務している従業員の子で、他の病院に勤務している勤務医がおり、従業員と勤務医をしている子が乙に診療所を承継したい旨を話すと、乙も快諾しました。乙としても建物を解体しても費用がかかること、また廃業するためにはいろいろな面倒な手続きがあること、また承継を望んでいる従業員の子の開業の助けになればと考えたそうです。

 

診療所の建物は、診療所専用で鉄筋造りの2階建てで、総床面積は600㎡です。入院設備はありません。

 

建物の固定資産償却額は6,000万円ですが、乙は診療所を承継してもらえるならと500万円で譲る考えです。

 

乙に対しては建物の相続税評価額6,000万円に対して、また借地権に対して相続税が課税されますがその課税については了解しています。

 

500万円という値段については、甲が生前に入院中、他人からもし診療所を廃業して建物を売却する考えがあれば500万円で売ってほしいという話がもとになっているようです。

 

この建物を有効に活かせる人から見れば3,000万円あるいは4,000万円の値段がつくかもしれません。

 

乙と従業員は親族関係にはなく他人のため、固定資産税評価額6,000万円の建物と借地権を500万円で売却しても従業員に対してみなし贈与は発生しないと考えますが、いかがでしょうか。

 

また、みなし贈与以外に何か課税上問題が発生するでしょうか。

 

なお、建物の帳簿価額は6,400万円です。

 

[回答]

ご照会の事案は、相続人乙が被相続人甲から相続により取得する建物を低額譲渡した場合において譲受人に対してみなし贈与課税の適用があるかどうかを問題としております。

 

ご照会では、乙と譲受人との間に親族関係はなく他人であるところからみなし贈与課税の適用はないと結論しております。

 

事実関係について建物の価額など詳細に示されていますが、ご照会の事案の検討に当たっては次に挙げる事項について事実関係を明らかにする必要があるのではないかと思われます。

 

① 甲は診療所の建物(以下、「A建物」といいます。)の敷地として甲の叔父の土地(以下、「B土地」といいます。)を賃借しておりましたが、A建物に係るB土地の借地権はどのように取り扱われていたか。

 

② A建物を譲り受けるのは甲の診療事業に従事していた従業員(以下、「丙」といいます。)または丙の子(以下「戊」といいます。)の何れか。

 

ご意見では、A建物の価額について固定資産税評価額、相続税評価額などを取り上げたうえで500万円という価額に至った経緯などを基に、乙と丙との身分関係などに照らしてみなし贈与課税の要件を欠くのではないかと結論しておられます。

 

しかしながら、上記の「①」で取り上げたところにより譲渡資産として取引される資産がA建物に加えてB土地の借地権も含まれるとすると、取引される資産の価額と対価の開差は大きく異なる見解も考えられるのでにわかにご意見に頷けないものがあります。

 

上記の「②」はA建物が診療所専用であるということからすると、医師である戊が譲り受けることには理解できますが、医師の資格を有しない丙が譲り受けることには素直に理解できないものがあります。

 

ご照会のおたずねでは、乙と丙との間に親族関係が存しないことを大きな要素としておりますが、固定資産税評価額との比較において取引価額に大差が存する事実からするとご意見によることは難しいのではないかと考えます。

 

 

 

 

税理士懇話会事例データベースより

(2020年6月15日回答)

 

 

 

 

[ご注意]

掲載情報は、解説作成時点の情報です。また、例示された質問のみを前提とした解説となります。類似する全ての事案に当てはまるものではございません。個々の事案につきましては、ご自身の判断と責任のもとで適法性・有用性を考慮してご利用いただくようお願い申し上げます。

 

 

 

 


[業界別・業種別 M&Aのポイント]

第7回:「産業廃棄物処理業のM&Aの特徴や留意点」とは?

~収集運搬業者か処分業者か?許認可、設備、人材は?社内管理体制は?法改正は?~

 

〈解説〉

公認会計士・中小企業診断士  氏家洋輔

 

 

▷関連記事:「製造業のM&Aの特徴や留意点」とは?

▷関連記事:「小売業のM&Aの特徴や留意点」とは?

▷関連記事:「建設業のM&Aの特徴や留意点」とは?

 

Q、産業廃棄物処理業のM&Aを検討していますが、産業廃棄物処理業M&Aの特徴や留意点はありますか?


廃棄物は、産業廃棄物と一般廃棄物に分けられ、産業廃棄物は特別管理産業廃棄物等、一般廃棄物は事業系一般廃棄物、家庭廃棄物等それぞれ細分化されます。

 

 

 

 

 

 

産業廃棄物処理業は、大きく「収集運搬業」「中間処理業」「最終処分業」に分けられ、各業態でも例えば収集運搬業は、運搬する廃棄物の種類によって細かく細分化されます。一般家庭ゴミの収集運搬にしても、生ゴミ(可燃ゴミ)・プラスチック包装容器・缶瓶ペットボトル・紙・布・粗大ゴミと収集運搬業者はそれぞれ違います。

 

 

 

 

収集運搬業は排出元と処分場の両方の区域の許可を取得する必要があります。積替保管とは、排出元と処分場の間に廃棄物を一時的に保管する施設を設置し、そこを経由して処分場へ運ぶことを言います。積替保管なしの場合、排出元から処分場に直行する必要がありますが、積替保管ありの場合は一定量蓄積してから運搬するなど輸送効率の向上が可能となります。対象となる廃棄物の保管基準を満たす必要があり、許可取得難易度は積替保管なしと比較し高くなります。

 

中間処理では、埋立処分等の最終処分前に、生活環境保全上支障を生じないように、破砕、焼却、脱水、中和による減量・減容化、安定化、無害化を行います。

 

最終処分では、原則最終処分場への埋立処分により行われます。最終処分場は対象となる産業廃棄物により3タイプに分かれます。

 

●安定型最終処分場……処分対象:安定型産業廃棄物(廃プラスチック類、ゴムくず、がれき類、金属くず、ガラス・陶磁器くず、環境大臣が指定する産業廃棄物)

●遮断型最終処分場……処分対象:有害物質を含む特別管理廃棄物

●管理型最終処分場……処分対象:①、②以外の産業廃棄物

 

 

M&Aを検討している場合に、対象企業の産業廃棄物処理業が「収集運搬業」なのか、「中間処理業」なのか、「最終処分業」なのかを把握しましょう。一般的に「収集運搬業」よりも「中間処理」や「最終処分」業者の方が設備や埋め立てのための土地等を保有することから規模が大きく、参入障壁が高いことから利益率は高くなる傾向にあります。

 

また、産業廃棄物処理業特有の論点として、不法投棄の問題があります。不法投棄防止のために産業廃棄物管理表(マニフェスト制度)が導入されており、マニフェスト制度に沿った対応が必要となります。

 

 

産業廃棄物処理業のM&Aを検討する場合、収集運搬業者か処分業者か、また所有する許認可、設備、人材等について確認をする必要があります。どの業界向けの産業廃棄物を処理できるのか等の能力を確認しましょう。

 

また、社内管理体制の整備、マニフェスト(産業廃棄物管理表)の適切な処理ができているか、不法投棄を行ったり、近隣住民とトラブルを起こしたりしていないかを把握する必要があります。また、法改正の影響を受けやすい業界であるため、法改正の動向も確認しておく必要があります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

[ネットM&Aに対する意識調査]

急速に市場が拡がるネットM&A 「手軽」で「スピーディ」な一方で、肌で感じられない取引相手や、財務情報に不安の声79.0%

〜求められる「中小M&A向けデューデリジェンス」と「買収後のリスクヘッジ」〜

 

 

株式会社バトンズ(本社: 東京都千代田、代表取締役 兼 CEO:大山敬義)は、インターネット完結型M&Aサービスを利用したことがある人105名を対象に、ネットM&Aに対する意識調査を実施しましたのでお知らせいたします。

 

■調査概要

調査概要:ネットM&Aに対する意識調査

調査方法:インターネット調査

調査期間:2020年11月06日~2020年11月09日

有効回答:インターネット完結型M&Aサービスを利用したことがある人105名

 

 

Web以外の方法として「M&A支援専門家に依頼した」が45.7%、「士業事務所に依頼した」が36.2%

「Q1.Webで完結するM&Aマッチングサービス以外に、今までにM&Aを実施・検討した上で利用したサービスをすべて教えてください。(複数回答)」(n=105)と質問したところ、「M&A支援専門家に依頼した」が45.7%、「士業事務所に依頼した」が36.2%という回答となりました。

 

 

・M&A支援専門家に依頼した:45.7%

・士業事務所に依頼した:36.2%

・特にサービスは利用していない:35.2%

・その他:6.7%

 

 

Webで完結するM&Aマッチングサービスに、57.3%が「メリットを感じた」と回答

「Q2.Web上で完結するM&Aマッチングサービスを利用・検討した際に、メリットを感じましたか。」(n=105)と質問したところ、「かなり感じた」が23.0%、「感じた」が34.3%という回答となりました。

 

 

・かなり感じた:23.0%

・感じた:34.3%

・あまり感じなかった:35.2%

・全く感じなかった:7.5%

 

 

メリットを感じた点として「豊富な案件に接触できる」が75.0%、「スピーディさ」が56.7%

Q2で「かなり感じた」「感じた」と回答した方に、「Q3.メリットに感じたことを教えてください(複数回答)。」(n=60)と質問したところ、「豊富な案件に接触できる」が75.0%、「スピーディさ」が56.7%、「手軽さ」が51.7%という回答となりました。

 

 

・豊富な案件に接触できる:75.0%

・スピーディさ:56.7%

・手軽さ:51.7%

・好きなタイミングで進捗させられる:40.0%

・コストの安さ:38.3%

・その他:6.7%

 

 

「海外企業までも範囲が拡がり様々な選択肢が可能になったから。」や「空き時間に情報を収集出来る。」などの声

「Q3で「かなり感じた」「感じた」と回答した方に、「 Q4.Q3以外にメリットに感じたことを教えてください。」(n=71)と質問したところ、「国内だけではなく海外企業までもその範囲が拡がり様々な選択肢が可能になったから。」や「空き時間に情報を収集出来る。」など71の回答を得ることができました。

 

<自由回答・一部抜粋>

・60歳:国内だけではなく海外企業までもその範囲が拡がり様々な選択肢が可能になったから。

・52歳:気軽に相談できた。

・32歳:スピード感がある。

・53歳:24時間できる。

・50歳:空き時間に情報を収集できる。

 

 

ネットのみでM&Aを進めて行く上で「不安なことがある」と回答した人79.0%

「Q5.ネット上のみでM&Aを進めていく上で不安なことはありますか。」(n=105)と質問したところ、「かなりある」が41.9%、「ある」が37.1%という回答となりました。

 

 

・かなりある:41.9%

・ある:37.1%

・あまりない:16.2%

・全くない:4.8%

 

 

不安な点として「取引相手の信頼性」が83.1%、「M&A引継ぎ後のトラブル」が68.7%

Q5で「かなりある」「ある」と回答した方に、「Q6.不安なことを教えてください。(複数回答)」(n=83)と質問したところ、「取引相手の信頼性」が83.1%、「M&A引継ぎ後のトラブル」が68.7%、「財務情報の信頼性」が66.3%という回答となりました。

 

 

・取引相手の信頼性:83.1%

・M&A引継ぎ後のトラブル:68.7%

・財務情報の信頼性:66.3%

・サイトの信頼性:56.6%

・自身での専門的な対応:54.2%

・その他:9.6%

 

 

「こちらの真意が伝わらない。」や「買収する企業が持つ文化を肌で感じられない。」などの声

Q5で「かなりある」「ある」と回答した方に、「Q7.Q6以外で不安なことを教えてください(自由回答)」(n=71)と質問したところ、「こちらの真意が伝わらない。」や「買収する企業が持つ文化を肌で感じられない。」など71の回答を得ることができました。

 

<自由回答・一部抜粋>

・58歳:こちらの真意が伝わらない。

・60歳:海外企業との言語や慣習、規制、法体系まで配慮しなければならない事。

・52歳:責任の所在。

・44歳:買収する企業が持つ文化を肌で感じられない。

・42歳:操作や手続きが難しそう。

・77歳:相手との相性やスピード感が合うか心配だった。

・71歳:実際の状況確認が必要と考える。

・71歳:相手の信用情報と近隣の環境。

 

 

デューデリジェンスを行ったことがある人、わずか36.1%

「Q8.M&Aを実施した際にデューデリジェンスを行ったことがありますか」(n=105)と質問したところ、「行った」が36.1%、という回答となりました。

 

 

・行った:36.1%

・行っていない:41.0%

・M&Aを実施していない:22.9%

 

 

小規模M&A向けのデューデリジェンスを安価に行えるM&Aネットマッチングサービス「利用したい」の声70.5%

「Q9.小規模M&A向けのデューデリジェンスを安価に行えるM&Aネットマッチングサービスがあったら利用したいと思いますか。」(n=105)と質問したところ、「とても利用したい」が26.7%、「利用したい」が43.8%という回答となりました。

 

 

・とても利用したい:26.7%

・利用したい:43.8%

・あまり利用したくない:23.8%

・全く利用したくない:5.7%

 

 

小規模M&A向けの保険商品、「利用したい」が84.8%

「Q10.小規模M&A向けの保険商品(買収後に発覚したリスクを補償する保険)があったら利用したいと思いますか。」(n=105)と質問したところ、「とても利用したい」が33.4%、「利用したい」が51.4%という回答となりました。

 

 

・とても利用したい:33.4%

・利用したい:51.4%

・あまり利用したくない:11.4%

・全く利用したくない:3.8%

 

 

まとめ

本調査では、インターネット完結型M&Aサービスを利用したことがある人・検討したことがある人を対象に、ネットM&Aに対する意識調査を実施しました。

 

結果として、ネットのみで完結するM&Aに魅力は感じるが、ネットのみでM&Aを完結させるにはまだまだ不安があるという意見が大多数であることが明らかになりました。

 

まず、Webで完結するM&Aマッチングサービスに、「メリットを感じた」人は57.3%いることがわかり、メリットを感じた点としては「豊富な案件に接触できる」が75.0%、「スピーディさ」が56.7%という回答を得ることができました。その他にも「24時間できる」や「海外企業までも範囲が拡がり様々な選択肢が可能になったから。」「空き時間に情報を収集出来る。」など、ネットサービスならではのメリットが多く集まりました。

 

また、小規模M&A向けのデューデリジェンスを安価に行えるM&Aネットマッチングサービスを「利用したい」と答える人が70.5%いることや、小規模M&A向けの保険商品を「利用したい」と答える人が84.8%いることからわかるように、安全性を担保できるようなサービスを求めていることが明らかになりました。

 

ネットで完結することに対する不安要素として「取引相手の信頼性」や「M&A引継ぎ後のトラブル」が挙がったように、インターネット上でのM&Aには、まだまだ課題が残っています。特に、M&Aは取引金額も大きく、売り手企業の従業員や取引先など多くの人の人生に関わる領域になるので、前述の不安要素を解消することが、ネットM&A市場をさらに広げていくカギとなるでしょう。

 

 

 

 

情報提供元:株式会社バトンズ

[M&A案件情報(譲渡案件)](2020年11月17日)

-以下のM&A案件(5件)を掲載しております-

 

●優良取引先を有する建設業。分譲マンションの新築工事等、幅広く手掛けている。

[業種:建築業/所在地:関西地方]

●地元に根差し、ホテルやレストラン等の複合施設を運営

[業種:ホテル、飲食店 他/所在地:四国地方]

●【好立地/高収益】保険ショップ運営会社

[業種:保険代理店/所在地:中国地方]

●【好立地】新幹線停車駅から徒歩圏内。宴会、会合設備を有す老舗温泉旅館。

[業種:旅館、ホテル/所在地:中部地方]

●高収益体質の動画制作会社。財務内容良好。

[業種:動画制作業/所在地:関東地方]

 

 

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案件No.SS006376
優良取引先を有する建設業。分譲マンションの新築工事等、幅広く手掛けている。

 

(業種分類)建設・土木

(業種)建築業

(所在地)関西地方

(直近売上高)10~50億

(従業員数)10~50名

(譲渡スキーム)株式譲渡

(事業概要)分譲マンションの新築工事を主に手掛ける建築業者。

 

〔特徴・強み〕

◇優良な取引先を有しており、毎期安定した受注を確保。売上・利益共に堅調に推移。
◇経審は同地区でトップクラス。
◇一級建築士や一級施工管理技士など有資格者も多数在籍。

 

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案件No.SS006073
地元に根差し、ホテルやレストラン等の複合施設を運営

 

(業種分類)ホテル・旅館業

(業種)ホテル、飲食店 他

(所在地)四国地方

(直近売上高)5~10億

(従業員数)100名超

(譲渡スキーム)株式譲渡

(事業概要)ホテルやレストラン等の複合施設を運営

 

〔特徴・強み〕

◇好立地に所在しており、地元住民だけでなく県外からの観光客やビジネスパーソンにも数多く利用されている
◇複合施設を展開しており、子供からお年寄りまで幅広い客層に対応している
◇施設は随時改装を実施しており、リニューアル効果が期待できる

 

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案件No.SS005503
【好立地/高収益】保険ショップ運営会社

 

(業種分類)金融・リース

(業種)保険代理店

(所在地)中国地方

(直近売上高)1~5億

(従業員数)10~50名

(譲渡スキーム)株式譲渡

(事業概要)生命保険代理店業

 

〔特徴・強み〕

◇来店型保険代理店を3店舗運営する。
◇好立地の大型ショッピングモール内で運営し、今後も需要は底堅い。
◇毎期高収益を確保している。

 

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案件No.SS005275
【好立地】新幹線停車駅から徒歩圏内。宴会、会合設備を有す老舗温泉旅館。

 

(業種分類)ホテル・旅館業

(業種)旅館、ホテル

(所在地)中部地方

(直近売上高)1~5億

(従業員数)10~50名

(譲渡スキーム)株式譲渡

(事業概要)業歴60年超の老舗温泉旅館。

 

〔特徴・強み〕

◇新幹線駅徒歩圏内の好立地
◇観光客の他、長年地域の法人・個人の会合、宴会需要に対応
◇業態変更を含め幅広く検討可能

 

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案件No.SS003552
高収益体質の動画制作会社。財務内容良好。

 

(業種分類)娯楽・スポーツ

(業種)動画制作業

(所在地)関東地方

(直近売上高)5~10億

(従業員数)50~100名

(譲渡スキーム)株式譲渡

(事業概要)増収傾向にある動画制作会社。 実質営業利益は約1.8億円。 更なる成長のため譲渡を検討中。

 

〔特徴・強み〕

◇コロナウイルスによる業績の影響は受けていない。
◇高品質な映像を作ることに強みを保有。
◇実質無借金経営。

 

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情報提供会社:株式会社ストライク

 

 

 

 

【免責事項】

・掲載情報は、内容及び正確さに細心の注意をはらい、万全を期しておりますが、人為的なミスや機械的なミス、調査過程におけるミスなどで誤りがある可能性があります。税務研究会及び情報提供会社は、当該情報に基づいて被ったいかなる損害についても一切の責任を負うものではありません。

・掲載情報は公開日時点の情報になります。既に案件が特定の対象会社と交渉に入っている場合や成約している場合もございます。

 

 

 

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[中小企業経営者の悩みを解決!「M&A・事業承継 相談所」]

~M&Aで会社や事業を売却しようとご検討の中小企業経営者におすすめ~

 

第3回:自社の売却を検討していますが、家族や従業員には伝えづらいです。どのように伝えればよいのでしょうか?

 

 

〈解説〉

株式会社ストライク

 


M&A(合併・買収)仲介大手のストライク(東証一部上場)が、中小企業の経営者の方々の事業承継やM&Aの疑問や不安にお答えします。

 

 

▷関連記事:取引先に知られないように会社を譲渡することはできますか?

▷関連記事:「M&Aの概要」「M&Aの流れと専門家の役割」を理解する

▷関連記事:事業が健全かそうでないかの判別~経営分析とは?非数値情報分析とは?健全性のチェック方法は?~

 

 

Q.自社の売却を検討していますが、家族や従業員には伝えづらいです。どのように伝えればよいのでしょうか

 

北海道で従業員20人の広告代理店を営んでおります。65歳を越えて体調の不安を感じるようになっていた折に、セミナーで事業承継型M&Aの話を聞きました。弊社も後継者がいませんので、会社の譲渡によって後継者問題を解決できないかと考えております。

 

心配なのは妻や従業員達の反応です。妻は私の引退により資金面での不安を感じるかもしれません。また、苦楽を共にしてきた従業員達からは、私が皆を裏切ったと受け止められてしまうかもしれません。反対が予想される中で、他の経営者の方々はどのように対応・解決されたのでしょうか。

 

(北海道 広告代理店 S.Aさん)

 

 

A.タイミングとポイントを押さえた説明をすれば理解を得られることは多いです。

 

日本の企業経営で「信頼関係」や「情」は重要な要素です。M&Aに際して、ご家族や従業員、そして取引先の反応を心配される経営者の方は多いですが、タイミングとポイントを押さえてきちんと説明すれば、周囲の理解は得られるものです。ケース・バイ・ケースですが、今回はよくお伝えする内容をご紹介します。

 

M&Aを進めるうえで最も重要なことは「契約を締結するまでは極秘で進める」ことです。従業員にも取引先にも最終契約締結後に知らせるのが基本です。事業承継型の友好的なM&Aであっても、詳しくない従業員はM&Aと聞くだけで「身売り」「リストラ」などを想起し、漠然とした不安を感じるものです。こうした不安が従業員から取引先に伝わり、場合によっては従業員の退職などによる企業価値の毀損を招きかねません。取引先との関係が悪くなることも企業価値を毀損することになりかねません。

 

ご家族、特に奥様の年齢が比較的若い場合、収入がなくなることによる老後の不安が生じてしまうことがあります。経営者の年齢や健康状態にもよりますが、M&Aに際しては、負債をご家族に相続させないようにしたり、それを正確に伝えたりすることが重要です。

 

 

 

 

 

 

 

[M&Aニュース](2020年11月2日〜11月13日)

◇阿波銀行<8388>、証券口座に関する権利義務、◇ディア・ライフ<3245>、NFCホールディングス<7169>傘下で人材派遣の新会社を子会社化、◇常磐開発<1782>、MBOで株式を非公開化、◇オープンハウス<3288>、投資用マンション事業のプレサンスコーポレーション<3254>をTOBで子会社化、エル・ティー・エス<6560>、システム開発のソフテックを子会社化、◇スプリックス<7030>、大学受験指導の湘南ゼミナールを子会社化、◇うるる<3979>、出張撮影マッチングサービスのOur Photoを子会社化、◇日本フェンオール<6870>、消防・防災機器メーカーのシバウラ防災製作所を子会社化、◇システムソフト<7527>、APAMAN傘下でレンタルオフィス事業のfabbitを吸収合併、◇三光合成<7888>、ヤマト・インダストリー傘下のHMヤマトから射出成形・加工事業を取得 ほか

 

 

 

 

阿波銀行<8388>、証券口座に関する権利義務を野村証券に譲渡

阿波銀行は、登録金融機関業務にかかる顧客の証券口座に関する権利義務を会社分割により野村証券に譲渡することを決めた。顧客口座の管理全般や営業に関する後方支援などを野村証券が担当し、勧誘・販売・フォローなどを阿波銀行が担当することで、役割分担を明確化し、効率的な運営体制を整える。分割する対象事業の直近売上高は8億6300万円。譲渡予定日は2021年6月21日。譲渡に伴う対価の交付はない。

ディア・ライフ<3245>、NFCホールディングス<7169>傘下で人材派遣の新会社を子会社化

ディア・ライフは、ジャスダック上場で保険サービス事業などを手がけるNFCホールディングスが全額出資で設立予定の新会社DLXホールディングス(東京都新宿区)の株式51.22%を第三者割当増資の引き受けを通じて取得し、子会社化することを決めた。コールセンターによる保険契約の取次業務を担う人材派遣事業を取り込むのが狙い。取得価額は非公表。取得予定日は2021年1月8日。

NFCホールディングスは子会社のN-STAFF(東京都豊島区。売上高7億1400万円、営業利益2900万円)を通じてコールセンターに特化した保険契約取次の専門派遣を展開している。ディア・ライフが今回子会社化するDLXホールディングスはN-STAFFを傘下に置くための持ち株会社として設立される。

ディア・ライフは主力の不動産事業とともに不動産業界向け人材派遣を手がけている。

常磐開発<1782>、MBOで株式を非公開化

常磐開発は13日、MBO(経営陣による買収)で株式を非公開化すると発表した。同社会長の佐川藤介氏が設立したエタニティ(福島県いわき市)がMBOを目的とするTOB(株式公開買い付け)を実施し、全株式の取得を目指す。常磐開発はTOBに賛同している。主力の建設事業を取り巻く経営環境が厳しくなる中、環境関連をはじめ新規分野への展開など抜本的な構造改革を進めるためには短期的な業績や株価動向にとらわれない体制づくりが必要と判断した。

常磐開発はジャスダック上場。エタニティによる買付価格は1株につき7800円で、TOB公表前日の終値5900円に32.2%のプレミアムを加えた。買付予定数(78万3966株)の下限は所有割合66.67%にあたる52万2700株に設定した。買付代金は61億1493万円。常磐開発の筆頭株主で株式12.76%を保有する常磐興産(東証1部)はTOBに応募する契約を結んだ。

買付期間は11月16日~12月28日。公開買付代理人はみずほ証券。決済の開始日は2021年1月6日。

常磐開発は1960年に常磐興産の前身である常磐炭礦の磐城砿業所から土建、開削、ボーリング部門などが分離・独立して発足した。

オープンハウス<3288>、投資用マンション事業のプレサンスコーポレーション<3254>をTOBで子会社化

オープンハウスは13日、投資用マンション事業を手がけるプレサンスコーポレーションに対してTOB(株式公開買い付け)を実施すると発表した。オープンハウスはプレサンス株式を31.82%保有する筆頭株主。TOBを通じて株式を追加取得し、持ち株比率を最大62.49%に引き上げを目指す。プレサンスはTOBに賛同している。同社の東証1部上場は維持される見通し。

買付価格は1株につき1850円で、TOB公表前日の終値1583円に16.87%のプレミアムを加えた。買付予定数の上限(1988万1500株、所有割合30.68%)を超える応募株式は買い付けを行わない。買付代金は最大367億8077万円。買付期間は11月16日~2021年1月14日。公開買付代理人はSMBC日興証券。決済の開始日は2021年1月20日。

プレサンスは1997年に大阪市で設立。関西圏を地盤に投資用マンションの開発分譲を展開し、ファミリーマンションも手がける。2007年に東証2部に上場し、2013年に東証1部に昇格した。

しかし、2019年12月にプレサンスの創業者で前社長の山岸忍氏が業務上横領の容疑で逮捕される事態が起きたことから、早期の信用回復の一環として、2020年4月にオープンハウスと資本業務提携した経緯がある。これに伴い、オープンハウスはプレサンスを持ち分適用関連会社とした。

新型コロナウイルス感染症の拡大で経営環境が厳しさを増す中、資本関係をさらに強化する必要があるとして子会社化に踏み込む。

エル・ティー・エス<6560>、システム開発のソフテックを子会社化

エル・ティー・エスは、コンピューターシステム開発のソフテック(静岡県長泉町。売上高6億8400万円、営業利益4050万円、純資産8690万円)の全株式を取得し子会社化することを決めた。静岡・東海エリアでの事業拡大とともに、新型コロナによって進展するリモートワークなどに必要なシステム整備・運用支援ニーズへの対応を強化する。取得価額は1億6800万円。取得予定日は2020年12月3日。

スプリックス<7030>、大学受験指導の湘南ゼミナールを子会社化

スプリックスは、学習塾運営の湘南ゼミナール(横浜市。売上高143億円、営業利益7090万円、純資産15億3000万円)の全株式を取得し子会社化することを決めた。湘南ゼミナールが持つ大学受験指導ノウハウを取り込み、小学生から大学受験に向かう高校生まで幅広い年代層に対応したサービス展開につなげる。取得価額は45億4500万円。取得予定日は2020年12月25日。

湘南ゼミナールは1979年に創業。2007年からはスプリックスが展開する個別指導「森塾」などのフランチャイズ運営にも乗り出した。現在、神奈川県を中心に1都8県で266教室を運営する。

うるる<3979>、出張撮影マッチングサービスのOur Photoを子会社化

うるるは、出張撮影マッチングサービスを展開するOur Photo(東京都千代田区。売上高1億2300万円、営業利益△800万円、純資産400万円)の全株式を取得し子会社化することを決めた。うるるが手がける幼稚園・保育園向け写真販売システム「えんフォト」との連携を進め、事業拡大を目指す。取得価額は2億3000万円。取得予定日は2020年12月中。

Our Photoは、写真を撮ってもらいたい依頼者と登録写真家をマッチングすることで、依頼者はニューボーン(新生児)フォト、お宮参り、七五三、成人式といった特別な日などの写真を気軽に残すことができるサービスを手がける。

日本フェンオール<6870>、消防・防災機器メーカーのシバウラ防災製作所を子会社化

日本フェンオールは、消防・防災機器メーカーのシバウラ防災製作所(長野県松本市。売上高32億円、営業利益3億5100万円、純資産16億1000万円)の全株式を取得し子会社化することを決めた。日本フェンオールが主力とするガス消火装置など既存事業との親和性が高く、相乗効果が見込めると判断した。取得価額は非公表。取得予定日は2021年1月5日。

日本フェンオールの長野

システムソフト<7527>、APAMAN傘下でレンタルオフィス事業のfabbitを吸収合併

システムソフトは、APAMAN傘下でコワーキングスペース・レンタルオフィス運営を手がけるfabbit(東京都千代田区。売上高13億1000万円、営業利益△1億1300万円、純資産1億6200万円)を吸収合併することを決めた。fabbitはIT分野の技術・アイデアの事業化支援を目的に、国内外46カ所に施設(提携先を含む)を展開し、デジタル関連企業を含めて1万人を超える会員を持つ。システムソフトは自社のシステム開発領域との相乗効果が期待できると判断した。合併予定日は2021年1月1日。

合併比率はシステムソフト1393:fabbit1で、fabbit1株に対してシステムソフト株1393株を割り当てる。

三光合成<7888>、ヤマト・インダストリー傘下のHMヤマトから射出成形・加工事業を取得

三光合成は、ヤマト・インダストリー傘下のHMトヤマ(群馬県伊勢崎市)から射出成形・加工事業を取得することを決めた。群馬県内での生産拠点確保の一環で、新たな商圏開拓を目指す。当該事業の直近業績は売上高13億1000万円、営業赤字6700万円。取得価額は非公表。取得予定日は2021年3月31日。

藍沢証券<8708>、あけぼの投資顧問を子会社化

藍沢証券は、あけぼの投資顧問(東京都千代田区)の株式73.75%を取得し、12月8日付で子会社化することを決めた。そのうえで、藍沢証券子会社のあすかアセットマネジメント(東京都千代田区)が2021年2月1日付で、あけぼの投資顧問を吸収合併する。運用体制を強化し、国内外の機関投資家をはじめ様々な投資家ニーズに対応する。

株式の取得価額は非公表。あすかアセットマネジメントとあけぼの投資顧問の合併比率は1:13.453。

ムーンバット、40人程度の希望退職者を募集

ムーンバットは12日、40人程度の希望退職者を募ると発表した。国内子会社を含めて45歳以上の社員・嘱託社員(販売職を除く)を対象とし、募集期間は12月14日~25日。募集人員は全社員の約15%にあたる。

洋傘を主力にスカーフや毛皮、宝飾品など服飾雑貨を取り扱うが、新型コロナウイルス感染拡大に伴う外出の抑制に個人消費が急激に冷え込み、主力販路の百貨店や直販店舗での休業などで業績が悪化。抜本的な固定費削減による収益改善に向け、営業拠点の集約を合わせ、人員体制を見直す。

退職日は2021年3月10日。所定の退職金に加え、特別割増退職金を支給し、再就職支援サービスを提供する。

サイネックス<2376>、システム開発のベックを子会社化

サイネックスは、システム開発のベック(大阪市)の全株式を取得し子会社化した。12日付。システム開発を内製化し、eコマース系など各種ICT(情報通信)サービスの価格競争力向上につなげる。取得価額は非公表。

ベックは1997年に設立。WindowsやLinuxなどオープン系の開発のほか、米ヒューレット・パッカードの無停止型サーバーの開発・保守を手がけている。

カクヤスグループ<7686>、業務用酒類販売のダンガミを子会社化

カクヤスグループは、業務用酒類販売のダンガミ(福岡市。売上高78億8000万円、営業利益2億1500万円、純資産15億1000万円)の全株式を取得し、子会社化することを決めた。「カクヤスモデル」と呼ばれる酒類販売モデルの地方展開の第二弾。カクヤスは今年5月に同じく福岡市にある酒類販売のサンノーを傘下に収めており、これに次ぐ。取得価額は21億4600万円。取得予定日は2020年12月1日。

ダンガミは1967年に設立し、福岡、長崎の両県で業務用酒販店を展開し、小売り直営店舗も福岡市内を中心に10店舗を手がける。カクヤスはダンガミを足がかりに、他の九州地方への展開を視野に入れる。

近鉄グループホールディングス<9041>、製造業向け作業台、ツールワゴン販売のサカエを子会社化

近鉄グループホールディングスは傘下企業を通じて、製造現場で使われる作業台やツールワゴンなどの工業用金属製品を販売するサカエ(大阪市。売上高169億円、純資産124億円)の全株式を取得し子会社化することを決めた。モノづくり分野の販売チャンネルを取り込み、B2B(事業者間)取引の事業拡大を目指す。サカエは1961年に設立。取得価額は非公表。取得予定日は2021年4月1日。

テレビ朝日ホールディングス<9409>、テレビ通販強化へ商品企画・開発のイッティを子会社化

テレビ朝日ホールディングスは、商品企画・開発のイッティ(東京都渋谷区。純資産10億5000万円)の全株式を取得し子会社化することを決めた。テレビ放送と連携した通販事業の拡大の一環。取得価額は非公表。取得予定日は2020年11月中。

TOKAIホールディングス<3167>、ビルメンテナンス事業のイノウエテクニカを子会社化

TOKAIホールディングスは、静岡県東部でビルメンテナンス事業を展開するイノウエテクニカ(静岡県沼津市)の全株式を取得し子会社化した。同県内でのビルメン事業の拡大が狙い。取得価額は非公表。取得日は2020年11月6日。

TOKAIはLPガス・宅配水事業を中心に、建築、設備工事、不動産を展開し、静岡県では消防設備点検・機械設備点検、清掃業務などのビルメンテナンス事業を手がけている。

歯愛メディカル<3540>、電力小売りの新潟県民電力を子会社化

歯愛メディカルは、電力小売り事業の新潟県民電力(新潟市。売上高3億1600万円、営業利益2400万円、純資産△500万円)の株式60%を取得し子会社化した。12日付。新潟県民電力は2017年に県内第一号の新電力供給事業者として設立。取得価額は非公表。

歯愛メディカルは歯科診療用品の通販大手。多角化の一環として2016年に電力・エネルギー分野に進出し、これまで四つ葉電力(大阪市)、石川電力(金沢市)、福井電力(福井市)を傘下に収めている。新潟県民電力をグループに迎え、地域密着型の新電力ビジネスモデルに基づく事業を推し進める。

ジーンテクノサイエンス<4584>、再生医療事業子会社「セルテクノロジー」の譲渡先をリバースに変更

ジーンテクノサイエンスは、再生医療事業に取り組む子会社のセルテクノロジー(東京都中央区。売上高8320万円、営業利益△2億2600万円、純資産4370万円)の全株式を、化粧品開発のリバース(札幌市)に12日付で譲渡した。当初(7月時点)は医薬品・医療機器を製造販売する同仁グループ(熊本市)に譲渡する予定だったが、譲渡先が変更となった。譲渡価額は0円。

セルテクノロジーは2008年に設立。同仁グループに代わって譲渡先となったリバースの篠原奈美子代表取締役はセルテクノロジーの共同創業者。

くふうカンパニー<4399>、知育アプリ事業のキッズスターを子会社化

くふうカンパニーは、こども向け知育アプリ事業を手がけるキッズスター(東京都渋谷区。売上高2億5100万円、営業利益5100万円、純資産1億1500万円)の株式50%を取得し子会社化することを決めた。こども関連事業に本格的に進出する。取得価額は4億円。取得予定日は2020年12月中。

キッズスターは2014年設立。370万のファミリーが利用する仕事体験アプリ「ごっこランド」を軸に、「キョロちゃん海の大冒険」「お弁当を作ろう!」など様々な知育アプリで知られる。

ココカラファイン<3098>、関西で調剤薬局・ドラッグストアを70店舗展開のフタツカホールディングスを子会社化

ココカラファインは、兵庫県を中心に関西で調剤薬局・ドラッグストアを70店舗展開するフタツカホールディングス(神戸市。売上高119億円、営業利益8億7900万円、純資産19億3000万円)の全株式を取得し子会社化した。12日付。フタツカは1983年に創業。地域におけるドミナント(集中出店)の一環。取得価額は非公表。

KNT-CTホールディングス、傘下の近畿日本ツーリストで希望退職を募集

旅行大手のKNT-CTホールディングスは11日、希望退職者を募集すると発表した。新型コロナウイルス感染症の影響で国内外の旅行需要が激減し、業績が大きく落ち込んでいるのを受けた措置。傘下の近畿日本ツーリスト各社の35歳以上の従業員を主な対象とし、募集期間は2021年1月4日~22日。募集人数は定めていない。特別退職金加算金を支給し、再就職支援サービスを提供する。

KNT-CTは新型コロナ後を見据え、会員組織による個人旅行のクラブツーリズム事業、首都圏エリアでの法人旅行事業を中核に据えるとともに、個人旅行・団体旅行事業では注力分野を特定し集約・縮小するなどの事業構造改革を推し進めている。

今回の希望退職の実施では募集人員を定めていないが、元々、2024年度末までに現在約7000人の在籍人員を採用抑制や定年退職による自然減、出向などで約3分の2に縮小する計画だった。

三菱製鋼、100人程度の希望退職者を募集

三菱製鋼は11日、100人程度の希望退職者を募ると発表した。40歳以上勤続3年以上の社員・再雇用者(工場などの生産現場勤務者を除く)を対象とし、募集期間は2021年1月5日~22日。新型コロナウイルス感染拡大に伴う事業環境の悪化を受けた業績の早期改善につなげる。特別退職金を支給し、再就職支援サービスを提供する。

同社は特殊鋼事業、バネ事業、素形材事業などを主力とするが、新型コロナ禍で建設機械、産業機械、自動車などユーザー業界の減産で、業績が大幅に落ち込んでいる。

2021年3月期業績予想は売上高21.5%減の920億円、営業赤字69億円(前年度は4億3600万円の黒字)、最終赤字62億円(同140億円の赤字)。最終赤字は2年連続となる見通し。

リケン、約150人の希望退職者を募集

リケンは11日、約150人の希望退職を実施すると発表した。正社員を対象に、募集期間は2021年1月7日~29日。新型コロナウイルス感染拡大の影響で、自動車や産業機械に使われる主力製品のピストンリングの需要が大きく落ち込み、先行きの不透明感が増す中、事業構造の抜本的な見直しに向け、人員バランスの早期是正が不可欠と判断した。

退職日は2021年2月28日。所定の退職金に加え、退職加算金を上乗せ支給し、再就職支援サービスを提供する。

2021年3月期業績予想は売上高が前年度比20.7%減の670億円、営業利益が同98.1%減の1億円、最終赤字6億円(前年度は35億1700万円の黒字)。

ファルテック<7215>、自動車用品製造の中国子会社FCCを合弁相手に譲渡

ファルテックは、自動車用品製造の中国合弁子会社「広東発爾特克汽車用品有限公司」 (FCC、広東省。売上高3億円8200万円、経常利益△3280万円、純資産4億8400万円)の全持ち分(所有割合70%)を、合弁相手の広東時利和汽車事業集団有限公司(広東省)に譲渡することを決めた。ファルテックはFCC株式の譲渡に先立ち、FCCの事業をファルテック中国子会社の佛山発爾特克汽車零部件有限公司(広東省)に移管する。

譲渡価額は約4億1000万円。譲渡予定日は未確定。

三越伊勢丹ホールディングス<3099>、不動産賃貸子会社の三越伊勢丹不動産を米ブラックストーンに譲渡

三越伊勢丹ホールディングスは、傘下の三越伊勢丹を通じて保有する三越伊勢丹不動産(東京都新宿区。売上高30億2000万円、営業利益4億900万円、純資産134億円)の全株式を、米大手投資ファンドのブラックストーン・グループに譲渡することを決めた。百貨店を取り巻く経営環境が厳しさを増すのを受けた事業の選択と集中の一環。譲渡価額は非公表。譲渡予定日は2021年1月4日。

三越伊勢丹不動産はマンション・事務所ビルなどの不動産賃貸事業を主力とし、不動産オーナー向けにサブリース(転貸)、賃貸管理、管理組合事業なども手がける。

TSIホールディングス<3608>、レディース用セレクトショップ展開の子会社「アナディス」をヒロタに譲渡

TSIホールディングスは、「アンシェヌマン」などのレディース用セレクトショップを展開する子会社のアナディス(東京都渋谷区)の全株式を、婦人服製造などのヒロタ(岐阜市)に譲渡することを決めた。事業構造の抜本的な見直しに向けて、国内事業子会社を1社に集約・統合する方針を打ち出しており、この一環。譲渡価額は非公表。譲渡予定日は2021年3月1日。

グレイステクノロジー<6541>、マニュアル制作のHOTARUを子会社化

グレイステクノロジーは、マニュアル制作を主力とするHOTARU(大阪市。売上高13億7000万円、営業利益1億3300万円、純資産25億2000万円)の全株式を取得し、子会社化することを決めた。グレイスは産業機械用マニュアル作成などの大手。取得価額は14億3400万円。取得予定日は2020年11月13日。

傘下に収めるHOTARUは1959年に設立し、老舗マニュアル会社として知られる。このほかにウエブ制作、映像、印刷などの事業を手がける。

三井化学<4183>、本州化学工業<4115>をTOBで子会社化

三井化学と三井物産は11日、中堅化学メーカーの本州化学工業(東証2部)にTOB(株式公開買い付け)を実施すると発表した。三井化学と三井物産は本州化学の株式を各26.99%保有する。両社はTOBを通じて全株式を取得し、最終的に三井化学51%、三井物産49%の持ち株比率とする予定。買付開始は2021年5月ごろをめどとしている。買付代金は最大96億6394万円。

三井化学は本州化学をこれまで持ち分法適用関連会社としてきたが、連結子会社化として取り込むことで、研究開発や生産技術など経営資源を積極的に投入し、中長期的な成長を促す。本州化学はTOBに賛同を表明している。

買付価格は1株につき1830円で、TOB公表前日の終値1290円に41.86%のプレミアムを加えた。買付予定数は528万846株。買付予定数の下限は所有割合12.68%にあたる145万5200株で、三井化学、三井物産の両社の既保有分と合わせて所有割合が3分の2超となる水準。

本州化学は1949年に設立。液晶ポリマー、特殊ポリカーボネート樹脂、特殊エポキシ樹脂などの高機能樹脂の原料、電子材料、医薬品、農薬などの原料となる化学品を製造する。

青山商事、400人程度の希望退職を募集

青山商事は10日、400人程度の希望退職者を募ると発表した。40歳以上63歳未満で勤続5年以上(2021年3月末時点)の正社員・無期契約社員を対象とし、募集期間は12月14日~2021年2月19日。新型コロナウイルス感染拡大に伴う臨時休業の影響やスーツ需要の一段の落ち込みなどで業績が急速に悪化しており、人員の適正化と年齢構成の調整を目的とする。

退職日は2021年5月31日。割増退職金を支給し、再就職支援サービスを提供する。割増退職金などにかかる特別損失として40億円程度を2021年3月期決算に計上する予定。

希望退職者募集の実施を受け、経営責任を明確にするため、今年7月から実施している役員報酬の減額をさらに拡大する。

アークランドサカモト傘下のLIXILビバ、「ビバホーム」に社名変更

アークランドサカモトは10日、同業のホームセンターで1000億円以上を投じて買収したLIXILビバについて、同日付で「ビバホーム」に社名変更したと発表した。前日(9日)にLIXILビバの子会社化が完了したのに伴う。

ビバホームはLIXILビバの前身企業が1977年にトーヨーサッシ(現LIXILグループ、12月にLIXILに社名変更予定)の子会社として設立され、ホームセンター事業に乗り出した当時の社名。その後、社名はトステムビバなどを経て、2011年からLIXILビバとなっていた。

アークランドサカモトは新潟県を中心にホームセンターを展開しているが、首都圏での事業拡大を目的にLIXILビバをTOB(株式公開買い付け)などを通じて傘下に取り込んだ。一方、親会社だったLIXILグループは主力の建材・住宅設備機器事業に経営資源を集中するため、非中核のホームセンター事業を切り離した。

オリジン、希望退職に14人応募

オリジンは10日、希望退職者に14人の応募があったと発表した。45歳以上で勤続10年以上の社員・再雇用者を対象とし、人数を定めず、10月21日~30日に募集した(退職日は12月15日)。所定の退職金に加え、特別加算金を支給する。

オリジンは電源機器や半導体デバイス、精密機構部品などの製造を主力とする。しかし、新型コロナウイルス感染症の影響で、携帯端末向け無線基地局用電源が落ち込んだほか、自動車メーカーの減産などで関連部品の需要が減退し、業績が悪化している。

りそなHD<8308>、子会社の関西みらいFG<7321>をTOBで完全子会社化

りそなホールディングスは10日、51.15%の株式を保有する連結子会社の関西みらいフィナンシャルグループ(FG)に対して完全子会社を目的にTOB(株式公開買い付け)を実施すると発表した。銀行を取り巻く経営環境が厳しくなり、一体化による相乗効果で収益力を向上するのが狙い。少数株主へ流れていた配当を内部に取り込むことで資本の増強にもつなげる。

買付価格は1株につき500円で、TOB公表前日の終値405円に23.46%のプレミアムを加えた。買付予定数は1億3229万4503株。買付代金は約661億円。買付期間は11月11日から12月9日まで。買付代理人は大和証券が務める。

TOBに応じない株主には、株式交換でりそな株を割り当てる。関西みらいFG株式1株に対し、りそなの普通株式1.42株を交付。株式交換による1株利益の希薄化が生じた場合、りそなは2021年4月以降に自社株買いに乗り出す構えだ。

関西みらいFGは2018年4月に三井住友銀行傘下の関西アーバン銀行とみなと銀行、りそなの完全子会社だった近畿大阪銀行が経営統合して発足した。一方の大株主である三井住友フィナンシャルグループはTOBに応じる。

木曽路<8160>、焼肉店を首都圏で展開する大将軍を子会社

木曽路は、焼肉店を首都圏で展開する大将軍(千葉市。売上高47億4000万円、営業利益△1億6800万円、純資産7億3700万円)の全株式を取得し、子会社化することを決めた。木曽路はしゃぶしゃぶの最大手として知られるが、居酒屋や焼肉などの業態も手がけている。取得価額は非公表。取得予定日は2021年1月27日。

大将軍は1974年に創業。「特選和牛 大将軍」「国産牛焼肉 くいどん」ブランドの焼肉店を千葉県を中心に東京都、神奈川県で30数店舗展開している。

タムロン、200人の希望退職者を募集

タムロンは9日、200人の希望退職者を募ると発表した。弘前工場(青森県弘前市)、浪岡工場(青森市)の正社員(45歳以上)と準社員らを対象とし、募集期間は11月10日~20日。主力商品の一眼レフ用交換レンズ市場が縮小に向かう中、現行の生産能力を前提とした事業計画では収益構造がさらに悪化するとみられることを受け、主力工場の人員体制を再構築する。

退職日は12月31日付。所定の退職金に特別加算金を上乗せ支給し、再就職支援サービスを提供する。

東芝テック、早期退職に465人が応募

東芝テックは9日、早期退職優遇制度に465人の応募があったと発表した。事業構造改革の一環として子会社を含めて国内従業員を対象に7月1日から9月30日まで募集した。募集人数は未定としていた。

同社はPOS(販売時点情報管理)システムや複合機を主力とするが、新型コロナウイルス感染症の影響で大幅な需要減に直面。2020年4~9月期業績は売上高が前年同期比23%減の1917億円、営業赤字9億3000万円(前年同期は101億円の黒字)、最終赤字69億円(同78億円の黒字)と赤字に陥った。2021年3月期(通期)は黒字確保を目指している。

アンジェス<4563>、ゲノム編集技術ベンチャーの米エメンドバイオを子会社化

アンジェスは9日、先端的なゲノム編集技術を持つ米エメンドバイオ(ニューヨーク州。売上高―、営業利益△5億6700万円、純資産△6億5300万円)を2億5000万ドル(262億5000万円)で買収すると発表した。議決権ベースで現在40%の株式を保有しているが、追加取得して12月15日付で完全子会社化する。

買収にかかるエメンドバイオ株主に対する対価は主にアンジェスが発行する新株で充当される。エメンドバイオは2015年に設立されたゲノム編集技術のベンチャー企業で、主要な研究開発拠点をイスラエルに置く。アンジェスは段階的に出資し現在、同社を持ち分法適用関連会社としている。完全子会社化により経営権を掌握し、次世代ゲノム編集技術を活用した遺伝子治療用製品の開発を進展させたい考えだ。

ダイドーリミテッド<3205>、衣料品販売合弁のブルックスブラザーズジャパンを子会社化

ダイドーリミテッドは、持ち分法適用関連会社で米国発の著名衣料品ブランド「Brooks Brothers」を取り扱うブルックスブラザーズジャパン(東京都品川区。売上高106億円、営業利益△4100万円、純資産42億9000万円)を子会社化することを決めた。合弁相手の米ブルックスブラザーズ・グループが保有する株式を追加取得し、現在40%の持ち株比率を80.5%に高める。取得価額、取得日は未定。

米ブルックスブラザーズは7月に米連邦破産法11条(日本の民事再生法に相当)を適用申請し、行き詰まった。日本法人のブルックスブラザーズジャパンは1979年に設立し、米本社が60%、ダイドーリミテッドが40%を出資。ダイドーは持ち株比率を高め、日本法人の安定的運営や全体的なシナジー(相乗効果)創出につなげる。

テイ・エス テック<7313>、今仙電機製作所<7266>をTOBと第三者割当増資引受で持分法適用関連会社化

テイ・エス テックは9日、今仙電機製作所(東証1部・名証1部上場)に対してTOB(株式公開買い付け)を実施すると発表した。本TOBにより現在3.06%の所有割合を25.00%に引き上げて、持分法適用関連会社とする。併せて今仙電機が実施する第三者割当増資を引き受け、経営を実効支配できる34.00%へ引き上げる方針だ。

買付価格は1株当たり930円で、TOB公表前日の東証1部における終値634円に46.68%のプレミアムを加えた。買付予定数の上限は520万9500株と設定。今仙電機の上場は維持する予定。買付代金は約48億4483万円。買付期間は11月10日から12月8日まで。買付代理人は野村證券が務める。

公開買付期間の終了後の 12月16日から 2021年1月29日までを払込期間とする第三者割当増資に応じる。TOB買付価格と同じ930円で、普通株式520万7300株を引き受ける。取得価格は総額で約48億4300万円。

テイ・エス テックはホンダ系自動車シートメーカーで、今仙電機はシートアジャスター(調整機構)を主力製品とする独立系自動車部品メーカー。資本関係を強化することで日本国内だけでなく世界中の両社の拠点でのシート事業の強化を図り、両社の売上拡大や付加価値の高いサービスの提供を狙う。

麻生グループ、東都水産<8038>にTOB、3分の1超の取得を目指すが連結子会社化も想定

東都水産は9日、九州を本拠にセメントや建築・土木、医療関連など広範な事業を手がける麻生(福岡県飯塚市)が同社に対してTOB(株式公開買い付け)を実施すると発表した。麻生は3分の1超の株式取得を目指す。買付予定数の上限は設けておらず、50%超を取得し、連結子会社化することも想定している。ただ、東都水産の東証1部上場は維持される見通し。麻生グループは「食」という新たな事業領域への展開に弾みをつける。

東都水産は1935年の築地市場開設とともに創設された東京魚市場を前身とする。現在、豊洲市場における水産物取扱高で19%のシェアを持ち、同市場内卸売業者7社中2位の大手。主力の水産物卸売をはじめ、冷蔵倉庫、不動産を経営の3本柱とする。今回のTOBには賛同している。

買付主体は麻生が全額出資で設立したASTSホールディングス(東京都千代田区)。東都水産株の買付価格は1株4550円で、TOB公表の前営業日の終値4045円に12.48%のプレミアムを加えた。買付予定数は397万9580株で、下限は所有割合33.4%にあたる132万9180株。買付代金は最大約181億円。

買付期間は11月10日~12月22日。決済の開始日は12月29日。公開買付代理人は三菱UFJモルガン・スタンレー証券とauカブコム証券。

TOBへの結果次第では上場廃止基準に抵触する可能性があるが、この場合は上場廃止までの猶予期間として定められている1年以内に立会外分売や売り出しなどの上場維持の方策を両社で検討するとしている。

ユーザベース<3966>、米国でのオンライン経済メディア「Quartz」事業を譲渡

ユーザベースは9日、米国で展開するオンライン経済情報メディア「Quartz」事業から撤退すると発表した。現地持ち株会社Quartz Intermediate Holdings(デラウエア州。売上高5億4400万円、営業利益△16億2000万円、純資産92億5000万円)の全株式を、中核事業子会社のQuartz Media(ニューヨーク市)のザッカリー・スワードCEO(最高経営責任者)が設立した新会社に9日付で譲渡した。

ユーザベースは2018年7月にメディア事業のグローバル展開を目的に約83億円を投じてQuartzを傘下に収めた。Quartzは2012年に設立され、北米を中心に読者を持つ。足元では年初来、新型コロナウイルス感染症の影響で米国を中心に広告出稿が減退するなど苦戦。買収当初の掲げた3年間で黒字化という目標の達成が困難になったことから、事業撤退を決断した。

譲渡価額は非公表。ユーザベースは2020年12月期決算に事業撤退による特別損失88億5000万円を計上する。

ユーザベースは経営の両輪である企業・業界情報プラットフォーム「SPEEDA」、経済メディア「NewsPicks」に経営資源を集中する。

IDホールディングス<4709>、ソフト開発のウィズ・ホールディングスを子会社化

IDホールディングスは、ソフト開発を手がけるウィズ・ホールディングス(東京都江東区。売上高27億9000万円、営業利益1億7600万円、純資産7億700万円)を子会社化することを決めた。ウィズ・ホールディングスは持ち株会社で、1981年に設立したシステムデザイン(茨城県日立市)を中核子会社として交通、製造、医薬、公共、エネルギーなど幅広い分野でソフト開発の実績を積んできた。顧客基盤や技術力の強化が狙い。株式78.4%を10億9800万円で取得したうえで、その後に株式交換により完全子会社化する。

株式の取得予定日は2021年1月4日。株式交換日は2021年1月27日。

サノヤスホールディングス<7022>、造船事業を新来島どっくに譲渡

サノヤスホールディングスは9日、造船事業から撤退すると発表した。100%子会社のサノヤス造船(大阪市。売上高283億円、営業利益△29億3000万円、純資産80億9000万円)の全株式を、新来島どっく(東京都千代田区)に譲渡する。譲渡予定日は2021年2月28日。世界的に新造船需要の縮小と設備過剰が続く中、単独での生き残りは困難と判断した。赤字事業を切り離し、産業用・建設用機械装置の製造や遊園地施設の建設などに経営資源を集中する。

サノヤスは1911(明治44)年、佐野安造船所として大阪で創業。戦後開設した水島製造所(岡山県倉敷市)を造船事業の拠点とし、主力のばら積み船とともに、作業船やフェリーなどの建造、舶用ガスタンク製造、船舶修繕にも力を注いできた。しかし、水島製造所の操業確保のため製造原価を下回る船価での新造船受注が続き、ここ数年、大幅な赤字決算を余儀なくされていた。

譲渡先の新来島どっくは1980年代の造船不況で行き詰った旧・来島どっくを母体に1987年に再出発した造船メーカー。自動車運搬船やケミカルタンカーなどを手がけ、愛媛県今治市を本拠とする。

セガサミーホールディングス、650人の希望退職者を募集

セガサミーホールディングスは6日、グループの正社員、契約社員を対象に650人の希望退職者を募ると発表した。約9000人のグループ従業員の7%強にあたり、募集期間は11月16日~12月25日(退職日は2021年2月28日)。新型コロナウイルス感染症の影響で、業績が急速に悪化したのを受け、構造改革の一環として取り組む。特別退職加算金を支給し、再就職支援サービスを提供する。

新型コロナを受けた巣ごもり需要でゲームソフト関連が伸びたものの、パチンコ・パチスロなどの遊技機関連が落ち込み、アミューズメント機器・施設関連も奮わない。6日発表した2021年3月期業績予想は売上高が前年度比22.8%%減の2830億円、営業赤字15億円(前期は276億円の黒字)、最終赤字245億円(同137億円の黒字)。希望退職者募集に伴い、約100億円の特別損失を計上する。

経営責任を明確にするため、セガサミーホールディングスとグループ各社の社長をはじめ取締役、執行役員の報酬を11月から2021年3月まで5カ月間減額する。

三洋貿易<3176>、健康食品原料・化粧品原料輸出販売のグローバル・トレーディングを子会社化

三洋貿易は、健康食料原料や化粧品原料、工業薬品の輸出販売を手がけるグローバル・トレーディング(東京都千代田区。売上高4億2600万円、純資産1億2000万円)の全株式を取得し子会社化することを決めた。ライフサイエンス分野の事業補完や海外拠点活用を通じた事業拡大を見込む。取得価額は非公表。取得予定日は2020年11月27日。

読売新聞グループ本社、よみうりランド<9671>をTOBで子会社化

読売新聞グループ本社は6日、よみうりランド(東証1部上場)に対して完全子会社化を目的にTOB(株式公開買い付け)を実施すると発表した。読売新聞グループはよみうりランドの株式16.27%を直接保有する筆頭株主。よみうりランドは遊園地「よみうりランド」や競馬場、ゴルフ場などを運営するが、新型コロナウイルス感染症の影響で足元の業績が悪化している。読売新聞グループの総合力を活用して事業基盤を強化する。

読売新聞グループは日本テレビホールディングスなど系列各社の保有分を加えると、よみうりランド株の約34%を保有する。買付価格は1株につき6050円。TOB公表前日の終値4910円に23.22%のプレミアムを加えた。買付予定数は643万5075株で、買付代金は最大約389億円。買付予定数の下限は所割合50.39%にあたる387万3097株で、既保有分と合わせて所有割合が3分の2超となる。

買付期間は11月9日~12月21日。決済の開始日は12月28日。公開買付代理人は野村証券。

コンドーテック<7438>、土木建築用足場など架払工事業のフコクを子会社化

コンドーテックは、土木建築用足場など架払工事業のフコク(仙台市。売上高12億8000万円、営業利益1700万円、純資産2億3200万円)の全株式を取得し、子会社化することを決めた。社会インフラの老朽化に伴う維持修繕分野の事業基盤強化につなげる。取得価額は非公表。取得予定日は2021年1月18日。

エイベックス、約100人の希望退職者を募集

エイベックスは5日、100人程度の希望退職者を募ると発表した。音楽事業の一部と全社の間接部門に在籍する40歳以上の社員を対象とし、募集期間は12月10日~21日。該当者は443人(10月末時点)で、全社員のおよそ3割にあたる。音楽ソフト市場が縮小する中、新型コロナウイルス感染症の影響が重なり、ライブ・イベントの開催自粛を余儀なくされるなど業績が急速に悪化しており、企業体質の強化と将来を見据えて人員体制を再構築する。

退職日は2021年3月31日付。特別退職加算金を支給するほか、再就職支援サービスを提供する。

エイベックスの2020年3月期業績は売上高15%減の1354億円、営業利益43%減の40億3300万円、最終赤字11億200万円(その前の期は23億5400万円の黒字)。足元の2020年4~9月期は売上高が前年同期比44%減の342億円、営業赤字22億2900万円(前年同期は6億8800万円の赤字)、最終赤字32億8900万円(同17億6200万円の赤字)だった。

放電精密加工研究所、約60人の希望退職者を募集

放電精密加工研究所は4日、約60人の希望退職者を募集すると発表した。40歳以上の正社員を対象とし、募集期間は11月23日~12月11日(退職日は2021年1月31日)。主力の放電加工・表面処理事業が新型コロナウイルスによる航空業界の低迷で大幅な需要減に見舞われるなど厳しい経営環境にあり、人員体制を再構築する。特別退職加算金を支給し、再就職支援サービスを提供する。

同社の2021年2月期業績予想は売上高が前年度比3.4%増の115億円、営業赤字7億4200万円(前期は1億9000万円の赤字)、最終赤字8億9400万円(同1億8900万円の赤字)。営業・最終赤字は2期連続を見込む。

日本郵政<6178>、豪物流子会社トールのエクスプレス事業を売却へ

日本郵政は5日、豪物流子会社トール・ホールディングスが豪、ニュージーランドで手がける宅配便などの荷物輸送(エクスプレス)事業について、売却を検討することを決定したと発表した。日本郵政は2015年に約6500億円を投じてトールを買収したが、業績が低迷している。世界を結ぶ国際物流事業は継続する。

2020年3月期のエクスプレス事業の業績は約75億円(1億豪ドル)の営業赤字を計上。2020年4~9月期も半期でほぼ同額の赤字に陥っている。日本郵政は事業売却のファイナンシャルアドバイザーとしてJPモルガン証券と野村証券の2社を選んだ。

投資ファンドのストラテジックキャピタル、京阪神ビルディング<8818>にTOB

投資ファンドのストラテジックキャピタル(東京都渋谷区)は、京阪神ビルディングに対してTOB(株式公開買い付け)を実施すると発表した。ストラテジックキャピタルは20年9月末時点で、共同保有者の分を含め9.7%の株式を保有している。今回、約20%の株式を追加取得し、経営に対する発言力を高めることが狙い。ストラテジックキャピタルは旧村上ファンド出身者が代表を務めている。

TOBは、投資会社で共同保有者のUGSアセットマネジメント(東京都港区)と組成したサンシャインH号投資事業組合が実施する。京阪神ビルディングはまだ意見を表明していないが、今回のTOBは事前通知や連絡が無く一方的なもの、とのコメントを出した。

買付価格は1株当たり1900円。TOB公表前営業日の終値1873円に対して1.44%のプレミアムを加えた。買付予定数は1020万6100株で、下限・上限も同じ。応募株式数が下限に満たない場合は買い付けを実施しない。上限を超えた場合は、その超えた部分の全部または一部の買い付けを行わない。

買付予定額は約193億円。買付期間は11月5日から12月17日まで。決済の開始日は12月24日。公開買付代理人は三田証券とマネックス証券。

日本アジアグループ<3751>、米カーライルと組んでMBOで非公開化

日本アジアグループは5日、MBO(経営陣による買収)を通じて株式を非公開化すると発表した。山下哲生会長兼社長の依頼に基づき、米投資ファンド、カーライル・グループがTOB(株式公開買い付け)を実施し、日本アジアグループを完全子会社する。買付代金は最大164億円。

買付主体はカーライル傘下のグリーンホールディングス(ケイマン諸島)。日本アジア株の買付価格は1株600円で、TOB公表前日の終値342円に75.44%のプレミアムを加えた。買付予定数は2745万4480株、下限は所有割合66.67%に相当する1830万3000株に設定。12.56%を所有する筆頭株主の藍沢証券はTOB応募する契約を交わした。買付期間は11月6日~12月21日。決済開始日は12月28日。公開買付代理人は野村証券。

カーライルはTOBが成立した場合、取得した日本アジア株のすべて(164億円相当)と現金205億円と引き換えに、日本アジア傘下で航空測量大手の国際航業(東京都千代田区)の株式80%、再生可能エネルギー事業を手がけるJAG国際エナジー(同)の株式70%をそれぞれ取得する予定。

日本アジアは現会長兼社長の山下氏など2者を引受先とする第三者割当増資を行うことで、山下氏など2者が日本アジアの全株式を所有する。

日本アジアの前身は1988年に不動産売買・仲介会社として設立した日星地所。2004年に東証マザーズに上場し、2015年には東証1部に上場した。2012年に国際航業ホールディングス(現国際航業)を子会社化した。

フロイント産業<6312>、イタリアの医薬品製造機械メーカーCos. Mecを子会社化

フロイント産業は、イタリアの医薬品製造機械メーカーCos. Mec S.r.l.(売上高12億2000万円、営業利益7700万円、純資産2億3600万円)の全株式を取得し、5日付で子会社化した。日本、米国、欧州の3極体制で、新興国を含む世界市場への展開を加速する。取得価額は約12億円。

Cos. Mecは1991年に設立し、中間原料の搬送・プロセス装置を得意とする。フロイント産業は造粒・コーティング装置に強みを持つ。両社の取り扱い製品に重複が少なく、相互補完が期待できるなどのメリットが大きいと判断した。

UTグループ<2146>、製造業向け人材派遣のシーケルホールディングスを子会社化

UTグループは、製造業を中心に人材派遣・請負事業を展開するシーケルホールディングス(水戸市)の全株式を取得し子会社化することを決めた。シーケルホールディングスは持ち株会社で、傘下に事業子会社のシーケル(同。売上高30億2000万円、営業利益1億4400万円、純資産4億6800万円)を持つ。日立製作所グループを中心に製造業が集積する茨城県での事業基盤を拡充する。取得価額は17億800万円。取得予定日は2020年11月30日。

シーケルは1991年設立。茨城県内を中心に6拠点を構え、住宅設備や半導体、家電・オフィス機器、自動車などの製造業向け人材サービスで実績を積んできた。

INCLUSIVE<7078>、カヤックから注文住宅マッチングサイト「SuMiKa」事業を取得

INCLUSIVEは、コンテンツ事業のカヤック(神奈川県鎌倉市)から注文住宅マッチングサイト「SuMiKa」事業を取得した。5日付。各種のサイト改善策を実施し、「SuMiKa」のプラットフォーム収益と広告収益を拡大させる。取得価額は非公表。

「SuMiKa」は建築家などの登録専門家数が約1770。新築や建て替え、リフォームや店舗増改築などを検討中の施工主に向けて、専門家とのマッチング機会を提供している。

アイ・ピー・エス<4390>、在留フィリピン人向け人材紹介・派遣事業をグローバルトラストネットワークスに譲渡

アイ・ピー・エスは、在留フィリピン人向け人材紹介・派遣事業を、外国人専門の賃貸住宅保証事業などを手がけるグローバルトラストネットワークス(東京都豊島区)に譲渡することを決めた。在留フィリピン人関連事業は2019年3月期以降、2期連続でセグメント営業損失に陥っているが、新型コロナウイルス感染症の影響が重なり、収益改善が困難となっていた。今後、アイ・ピー・エスは主力通信事業に経営資源を集中する。当該事業の直近業績は1億6400万円。

譲渡価額は非公表。譲渡予定日は2021年1月1日。

セガサミーホールディングス<6460>、アミューズメント施設運営子会社のセガエンタテインメントをGENDAに譲渡

セガサミーホールディングスは、アミューズメント施設企画・運営子会社のセガエンタテインメント(東京都大田区。売上高406億円、営業利益1億7800万円、純資産188億円)の株式85.1%を、遊戯機器レンタル事業のGENDA(東京都千代田区)に譲渡することを決めた。新型コロナウイルスの影響でアミューズメント施設分野では稼働率が大幅に低下するなど厳しい環境に置かれ、収益改善に向けて様々な選択肢を検討してきた。譲渡価額は非公表。譲渡予定日は2020年12月30日。

アウトソーシング<2427>、アイルランド最大の人材会社Cpl Resourcesを買収

アウトソーシングは4日、アイルランド最大の人材派遣・紹介会社Cpl Resources plc(ダブリン。売上高697億円、営業利益30億5000万円、純資産154億円)を買収すると発表した。約389億円(別にアドバイザリー費用7億6000万円)を投じて、全株式を取得する。Cplは1990年設立で、ユーロネクスト・グロース・ダブリンとロンドン証券取引所AIMに上場する。Cplの広範な顧客基盤を取り込み、欧州をはじめグローバル市場での事業拡大を目指す。買収完了は2021年1~3月を見込む。

Cplは世界45のオフィスに約1万3000人の従業員を抱え、技術、金融、法務、ヘルスケア、製薬、販売、エンジニアリング、オフィス管理などの分野で、それぞれ異なる専門ブランドを通じて事業を展開。正社員、契約社員、臨時社員の採用から、マネージド(業務の一括受託)サービスや人材戦略に関するアドバイザリーサービスまで幅広い人材サービスを手がけている。

綿半ホールディングス<3199>、長野県で調剤薬局3店経営のほしまんを子会社化

綿半ホールディングスは、調剤薬局経営のほしまん(長野県佐久市)の全株式を取得し子会社化した。2日付。ほしまんは1945(昭和20)年に創業し、長野県の佐久市に2店舗、小諸市に1店舗を経営する。綿半は同社を傘下に取り込み、仕入れ機能の共有化による取扱品の拡充や、スーパーセンター(食品スーパーとディスカウントショップの一体型店舗)への出店拡大につなげる。取得価額は非公表。

加賀電子<8154>、民事再生支援契約に基づき「旭東電気」を子会社化

加賀電子は、民事再生支援に関するスポンサー契約に基づき、11月2日付で新設分割された新「旭東電気」(大阪市。資本金9900万円)の全株式を取得し、子会社化した。旭東電気は安全ブレーカー、漏電遮断器製造や電子機器受託製造(EMS)事業などを手がけるが、2020年4月に大阪地裁に民事再生手続きを申し立て、事実上行き詰まり、同8月末に加賀電子がスポンサー契約を結んでいた。

マルハニチロ<1333>、米子会社のアラスカ産鮭鱒事業を現地社に譲渡

マルハニチロは、アラスカ産水産物の加工販売を手がける米子会社Peter Pan Seafoods Inc.(ワシントン州)の事業を、現地同業の米Northwest Fish Company LLC(同)に譲渡することを決めた。主力とするアラスカ産紅鮭・カラフト鱒事業は近年、新規生産者の参入に伴う原料魚価の高騰、集魚不足によるコスト高・生産減などで営業損失が続き、収支改善が見込めず、事業撤退することにした。譲渡価額は非公表。譲渡予定日は2020年12月31日。

リアルワールド<3691>、プルチーノから電子書籍紹介サイト「漫画大陸」を取得

リアルワールドは、Webメディア事業のプルチーノ(札幌市)から電子書籍紹介サイト「漫画大陸」を取得した。漫画・電子書籍などオンラインコンテンツ市場が急速に拡大する中、自社メディア事業とのシナジー(相乗効果)を見込む。対象事業の直近業績は売上高1億1500万円、営業利益1億300万円。取得価額は2億2000万円。取得日は2020年11月1日。

「漫画大陸」は読者に公式の漫画アプリ・電子書籍サイトを紹介(送客)するもので、月間約600万円ページビュー、毎月約240万人のアクセスを持つ。

 

 

 

情報提供:株式会社ストライク

[M&A担当者のための実務活用型誌上セミナー『価値評価(バリュエーション)』」

第4回:支配権プレミアム&流動性ディスカウントについて

 

 

〈解説〉

公認会計士・税理士  中田博文

 

〈目次〉

1、株式価値の調整項目

2、支配権プレミアム

3、支配権プレミアムの適用

4、非流動性ディスカウント

5、評価方法との関係

6、適用順序

7、実務上の検討

 

 

▷第1回:M&Aにおける価値評価(バリュエーション)の手法とは?

▷第2回:倍率法における価値評価(バリュエーション)のポイントとは?

▷第3回:DCF法における価値評価(バリュエーション)のポイントとは?

 

▷関連記事:M&A取引の税務ストラクチャリング

▷関連記事:売買価格の決め方は?-価値評価の考え方と評価方法の違い-

▷関連記事:「バリュエーション手法」と「財務デューデリジェンス」の関係を理解する

 

1、株式価値の調整項目


実務では、DCF法及び倍率法で計算した株式価値からさらに調整を行います。具体的には、支配権プレミアム、非流動性ディスカウントを反映させます。支配権プレミアム及び非流動性ディスカウントは、充分なマーケットデーターが整備されておらず、案件の内容に応じた数値が用いられます。

 

 

2、支配権プレミアム


支配権を取得した株主は、対象企業のキャッシュ・フローを実質的に支配できるため、少数株主の一株当たりの株価と比較した場合、支配権株主の一株当たりの株価の方が高いと言われています。これは、議決権比率が高まるにつれて、支配株主は少数株主よりも重要な権利を享受できるためです。支配権の獲得を目的とするTOB案件では、マーケットの株価よりも高値でTOB価格が設定されるケースが多く、その差額の一部には支配権プレミアムが含まれています。このように、経営権の移動を伴うM&A取引では、評価の際に、支配権プレミアムを考慮して株式価値を算定します。支配権プレミアムは、支配株主である売り手にとっては、高値で売却できることになるため、売却のインセンティブとして機能します。

 

 

 

 

 

なお、支配権の内容は、配当額の決定の他、経営方針の決定からガバナンス構築まで幅広い範囲が含まれます。

 

 

 

 

 

3、支配権プレミアムの適用


実務上、株式譲渡時に支配権(50%超)の移転を伴うか否かで、支配権プレミアムの適否を決定します。そして、支配権プレミアムは、20%~40%の範囲内で設定するケースが多いです。ただし、買収には様々なケースがあり、支配の程度に応じたプレミアムの検討が必要です。例えば、以下のような事例は、社内ルールで決められた支配権プレミアム20%程度を杓子定規に適用すべきではなく、個別検討を要します。

 

 

●50%超⇒7%⇒100%と買増しをする場合のぞれぞれのプレミアム

●50%ずつ保有する合弁会社(2社)への参画時のプレミアム

●33.3%ずつ保有する合弁会社(3社)への参画時のプレミアム

●過半数を保有する株式保有者がいない株主構成の中で、最大の株式数を保有する場合のプレミアム

●過半数を保有していないが、取締選任権を付与された株式を保有する場合のプレミアム

●過半数を保有していないが、重要事項の拒否権を付与された株式を保有する場合のプレミアム

 

 

4、非流動性ディスカウント


流動性のない株式(マーケットのない株式)を売却する際には、買い手候補を探す時間と手間、交渉に費やす時間と手間、アドバイザリー手数料等の取引コストが発生するため、取得時に高い利回りを要求します。この利回りの増し分(株式価値の減額)を非流動性ディスカウントといいます。実務上は、20%~30%のディスカウントを適用するケースが多く見られますが、前述の支配権プレミアムと同様、個別具体的なケースごとにディスカウントの数値検討が必要です。

 

<検討項目>

 

 

少数の株式を売却するよりもボリュームの大きい株式の方が、売却は容易と考えられます。そのため、支配持分の非流動性ディスカウントは、少数持分の非流動性ディスカウントと比べて、低いと言われます。米国の事例では、支配持分の非流動性ディスカウントは10~25%、少数持分の非流動性ディスカウントは30~50%とされています。

 

なお、支配持分の場合は、会社の売却、配当金の決定等を通じて、現金化の手段を有していることから、対象会社のキャッシュ・フローを実質的に支配しています。そのため、支配持分を有している場合は、非流動性ディスカウントを適用しないという考え方もあります。

 

 

 

5、評価方法との関係


DCF法の将来CFの前提となる事業計画には、経営者(支配株主)の意思が反映されています。そのため、DCF法によって算定された株式価値は、支配権プレミアムを含んでいると言われています。支配権を取得しない買収案件の場合、DCF法の計算結果にマイノリティーディスカウントを考慮して株式価値を算定する必要があります。

 

倍率法は、基礎数値(EBITDA等)×倍率で計算され、基礎数値は実績又は達成見込みを使用し、倍率はマーケットデーター(支配権のない株価)から引用します。そのため、倍率法の計算結果は、少数株主の価値を表しています。支配権を取得する買収案件の場合、倍率法の計算結果に支配権プレミアムを考慮して株式価値を算定する必要があります。

 

 

 

 

 

6、適用順序


前述のとおり、支配持分の非流動性ディスカウントは10~25%、少数持分の非流動性ディスカウントは30~50%というように、非流動性ディスカウントは、支配権の有無の影響を受けます。

 

そのため、DCF法で非公開会社の少数株主の価値を算定する場合又は倍率法で非公開会社の支配株主の価値を算定する場合、まず、①マイノリティーディスカウント/支配権プレミアムを反映した後、②非流動性ディスカウントを適用します。

 

 

 

7、実務上の検討


1、次のような場合、DCF法又は倍率法によって算定された株式価値は、支配株主の価値又は少数株主の価値のどちらを表しているか?

 

(1)持分法の範囲内で株式を取得

●対象会社の策定した事業計画に対して買い手(30%取得予定)がストレスをかけた修正事業計画をもとに、DCF法によって株式価値を算定した場合

●対象会社の策定した事業計画に対して買い手(30%取得予定)がシナジー効果を反映した修正事業計画をもとに、DCF法によって株式価値を算定した場合

 

(回答)

事業計画を修正できるのは支配株主だけであるという前提に立つと、少数株主が事業計画を修正していますが、あたかも自分が支配株主であると考えています。そのため、その事業計画を用いてDCF法で算定された株式価値は、支配株主の価値を表します。本件は、持分法の範囲内の株式取得のため、DCF法で算定された株式価値にマイノリティーディスカウントを反映して少数持分の株式価値を算定します。

 

なお、ストレスをかけた場合は、①フリー・キャッシュ・フローの減額、②ディスカウントによる減額と2重に減額調整が入るため、売り手サイドの認識する株式価値との乖離が非常に大きくなりますので、①②の内容を丁寧に売り手に説明する必要があります。

 

 

(2)支配権を取得

●対象会社の策定した着地見込みに対して買い手(100%取得予定)がストレスをかけた修正予算をもとに、倍率法によって株式価値を算定した場合

●対象会社の策定した着地見込みに対して買い手(100%取得予定)がシナジー効果を反映した修正予算をもとに、倍率法によって株式価値を算定した場合

 

(回答)

原則、どちらも修正予算を使用しているため、支配株主の価値を表していると考えられます。本件は、持分法の範囲内の株式取得のため、倍率法によって算定された株式価値にマイノリティーディスカウントを反映して少数持分の株式価値を算定します。

 

なお、ストレスをかけた場合は、①財務数値の減額、②ディスカウントと2重に減額調整が入るため、対象会社の認識する株式価値との乖離が非常に大きくなりますので、①②を売り手に丁寧に説明しないと交渉が決裂する可能性があります。

 

 

2、プレミアム/ディスカウントは株式価値と事業価値のどちらに適用するべきか?

 

(回答)

事業価値又は企業価値(事業価値に非営業資産を加算したもの)に対して、支配権プレミアム、非流動性ディスカウント等を適用して、事業価値及び企業価値を減額することも考えられますが、実務上は、株式価値に対してプレミアム/ディスカウントを適用しています。

 

 

[税理士のための税務事例解説]

事業承継やM&Aに関する税務事例について、国税OB税理士が解説する事例研究シリーズです。

今回は、「持続化給付金と家賃支援給付金の未収計上について」についてです。

 

[関連解説]

■【Q&A】持続化給付金・家賃支援給付金の収益計上時期

■【Q&A】経営状況が悪化した場合の定期同額給与

 

 

 


[質問]

法人税基本通達2—1—42に基づいて決算までに給付決定がない又は申請手続はしていないが決算前の対象月で後日申請する場合には、いずれの場合も給付金は決算において未収計上すべきですか。

 

通達を読むかぎり、持続化給付金は未収計上不要、家賃支援給付金は未収計上必要と考えますがいかがでしょうか。

 

 

(法令に基づき交付を受ける給付金等の帰属の時期)
2—1—42 法人の支出する休業手当、賃金、職業訓練費等の経費をほてんするために雇用保険法、労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律、障害者の雇用の促進等に関する法律等の法令の規定等に基づき交付を受ける給付金等については、その給付の原因となった休業、就業、職業訓練等の事実があった日の属する事業年度終了の日においてその交付を受けるべき金額が具体的に確定していない場合であっても、その金額を見積り、当該事業年度の益金の額に算入するものとする。

 

[回答]

法令等に基づき交付を受ける給付金等の収益計上時期については、貴見のとおり、法基通2-1-42においてその取り扱いを明らかにしています。

 

この取り扱いにおいては、雇用保険の規定による雇用調整助成金等のように、あらかじめ給付金による補填を前提として所定の手続きを取り、その手続きのもとにこれらの経費の支出がなされるものについては、その給付の原因となった休業、就業、職業訓練等の事実があった時点であらかじめその支給を受けるべき給付金の額を見積計上することにより、収支の対応関係を持たせることとされています。これに対し、雇用保険法の規定高年者雇用継続基本給付金等のように、具体的な経費支出の補填という性格のものでなく、一定基準に基づいて支給される奨励金のようなものについては、あらかじめ収益の計上をする必要はなく、支給決定を受けた時点で収益計上すれば足りることとされています。

 

ところで、ご質問の持続化給付金とは、感染症拡大により、特に大きな影響を受けた事業者に対して事業の継続を下支えし再起の糧とするための給付金であり、また、家賃支援給付金とは、5月の緊急事態宣言の延長等により、売り上げの減少に直面する事業者の事業継続を下支えするため、地代・家賃の負担を軽減する給付金であると説明されています(経済産業省)。

 

また、給付金は、申請者からの申請で成立し、事務局の行う申請内容の適格性等を確認する審査を経て長官が給付額を決定する贈与契約であるとされています(持続化給付金給付規定9、家賃支援給付金給付規定10)。

 

持続化給付金及び家賃支援給付金のいずれも、「事業の継続を下支えする」という目的の給付であり、その給付は中小企業庁長官(国)が給付額を決定する贈与契約であることからすると、これを区分する必然性はないものと考えます。また、家賃支援給付金制度においては、支払い賃料の額を給付金の算定基準としていますが、これはあくまでも給付金の算定基準であって、その給付目的に鑑み、必ずしも具体的な経費支出(家賃等)の補填という性格を有しているものとは言い切れないと考えられます。

 

したがって、持続化給付金及び家賃支援給付金のいずれも、法基通2-1-42(注)の取り扱いを準用して、支給決定を受けた日の属する事業年度で収益計上するのが相当と考えます。

 

 

 

税理士懇話会事例データベースより

(2020年7月21日回答)

 

 

 

 

[ご注意]

掲載情報は、解説作成時点の情報です。また、例示された質問のみを前提とした解説となります。類似する全ての事案に当てはまるものではございません。個々の事案につきましては、ご自身の判断と責任のもとで適法性・有用性を考慮してご利用いただくようお願い申し上げます。

 

 

 

 


[M&A案件情報(譲渡案件)](2020年11月10日)

-以下のM&A案件(1件)を掲載しております-

 

●【財務良好】業歴50年超の鋼材商社

[業種:その他の外衣・シャツ製造業、男子服卸売業、婦人服卸売業/所在地:関東地方]

 

 

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案件No.SS006454
創業50年超。定期的な入替需要のあるアパレル製造、卸売業。

 

 

(業種分類)商社・卸・代理店

(業種)その他の外衣・シャツ製造業、男子服卸売業、婦人服卸売業

(所在地)関東地方

(直近売上高)10~50億

(従業員数)10~50名

(譲渡スキーム)株式譲渡

(事業概要)定期的な入替需要のあるアパレルの製造および販売を手掛ける。

 

〔特徴・強み〕

◇顧客ニーズに合わせた企画、デザインを行う。
◇国内外での縫製体制によりデザイン性、品質とコストパフォーマンスを両立した商品の展開を行う。

 

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情報提供会社:株式会社ストライク

 

 

 

 

【免責事項】

・掲載情報は、内容及び正確さに細心の注意をはらい、万全を期しておりますが、人為的なミスや機械的なミス、調査過程におけるミスなどで誤りがある可能性があります。税務研究会及び情報提供会社は、当該情報に基づいて被ったいかなる損害についても一切の責任を負うものではありません。

・掲載情報は公開日時点の情報になります。既に案件が特定の対象会社と交渉に入っている場合や成約している場合もございます。

 

 

 

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[解説ニュース]

事業承継税制:「みなし相続の特例措置」の概要と留意点

 

〈解説〉

税理士法人タクトコンサルティング(山崎 信義/税理士)

 

 

[関連解説]

■事業承継税制を複数の後継者に適用する場合の留意点

■贈与税の納税猶予の適用を受ける贈与により非上場株式を取得した者のみなし配当課税の特例

 

 

1.贈与税の特例措置の概要


中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律に規定する「中小企業者」に該当し、かつ、都道府県知事の認定を受けた会社の株式を、令和9年12月31日までに、その会社の代表権を有していた贈与者(先代経営者)から贈与により取得した個人が、その先代経営者の後継者(特例経営承継受贈者)として一定の要件を満たす者(以下「後継者」)に当たる場合、その者が納付すべき贈与税額の納税が、贈与者の死亡の日まで猶予されます(措法70条の7の5第1項)。これを「贈与税の特例措置」といいます。

 

納税猶予税額は、その贈与者の死亡等の事由が生じた場合には、後継者が一定の手続をすることによりその全部又は一部が免除されます(同第11項、措法70条の7第15項)。

 

贈与税の納税猶予税額が免除される時までに一定の事由が生じた場合は、原則、納税猶予が打切りとなり、後継者はその事由に応じた各期限までに、納税猶予税額の全部又は一部を利子税と併せて納付する必要があります(措法70条の7の5第3項等)。

 

 

2.贈与税の特例措置の贈与者が死亡した場合


後継者が上記の贈与税の特例措置の適用を受けていた場合に、その納税猶予の打切りの日またはその後継者の死亡の日以前にその贈与者が死亡したときは、上記1のとおり納税猶予とされていた贈与税が免除となります。その一方で、贈与税の特例措置の適用を受けたその株式は、後継者が贈与者から相続または遺贈により取得したものとみなされ(措法70条の7の7第1項)、相続税が課税されます。

 

ただし、この取扱いにより贈与税の特例措置の適用を受けた非上場株式につき、相続または遺贈により取得をしたものとみなされた後継者は、一定の要件を満たす場合、その贈与者の死亡に係る相続税の申告書の提出により納付すべき相続税の額のうち、その非上場株式に係る納税猶予分の相続税額に相当する相続税については、その後継者の死亡の日まで納税が猶予されます(措法70条の7の8第1項)。これを「みなし相続の特例措置」といいます。

 

みなし相続の特例措置の適用について定める法令等において、贈与税の特例措置に係る贈与者の死亡時期の制限規定はありません。したがって、後継者が贈与税の特例措置の適用を受けている場合、特例措置の贈与者の相続開始が(相続税の特例措置の期限切れの)令和10年1月1日以降であっても、みなし相続の特例措置の適用を受けることができます。

 

 

3.みなし相続の特例措置の適用時の留意点


みなし相続の特例措置の適用にあたっては、後継者に関する要件について注意する必要があります。

 

例えば、先代経営者から後継者(1人)が贈与により株式を取得する場合、その後継者がみなし相続の特例措置の適用の前提となる贈与税の特例措置の適用を受けるためには、贈与時に次の三要件を満たす必要があります(措法70条の7の5第2項6号)。

 

①個人が、その贈与の時において対象となる会社の代表者であること。
②その贈与の時において、その個人およびその者と一定の特別の関係のある個人や法人(以下「特別関係者」)の有する、その会社の株式の議決権の数の合計が、その会社の総議決権の数の50%超であること。
③その贈与が行われた時において、その個人が有する会社の株式に係る議決権の数が、その個人の特別関係者のいずれの者(その時点で、贈与税又は相続税の特例措置の適用を受ける個人がいる場合はその人を除く。) の有する議決権の数以上であること。

 

 

後継者は、特例経営贈与承継期間*中に、納税猶予 が打切りとならず継続されるためには、上記①~③の要件を満たす必要があります(措法70条の7の5第3項、70条の7第3項)。

 

*原則、その非上場株式の贈与に係る贈与税の申告書の提出期限の翌日から同日以後5年を経過する日までの期間をいいます(措法70条の7の5第2項7号)。

 

 

特例経営贈与承継期間の経過後は、上記①~③の要件は撤廃され、後継者がこの三要件を満たさない場合であっても、贈与税の納税猶予は継続します(措法70条の7の5第3項、70条の7第5項)。

 

ただし贈与税の特例措置に係る贈与者が死亡し、その贈与者に係る相続税について、みなし相続の特例措置の適用を受けるためには、贈与者の相続開始時点において、後継者は前述①~③の要件をすべて満たす必要があります(措法70条の7の8第2項1号)。つまり贈与税の特例措置の適用を受けるための後継者の要件は、特例経営贈与承継期間を経過後に緩和され、①~③の要件がなくなりますが、みなし相続の特例措置の適用を受けるためには、贈与者の相続開始の時(瞬間)において、この三要件を満たす必要があるので注意が必要です。

 

 

税理士法人タクトコンサルティング 「TACTニュース」(2020/11/09)より転載

[失敗しないM&Aのための「財務デューデリジェンス」]

第6回:財務デューデリジェンス「貸借対照表項目の分析」を理解する【後編】

~ネットデットの分析、純資産の分析~

 

〈解説〉

公認会計士・中小企業診断士  氏家洋輔

 

 

▷第3回:財務デューデリジェンス「損益項目の分析」を理解する【前編】

▷第4回:財務デューデリジェンス「損益項目の分析」を理解する【後編】

▷第5回:財務デューデリジェンス「貸借対照表項目の分析」を理解する【前編】

 

 

財務デューデリジェンス「貸借対照表項目の分析」を理解する【後編】


3、ネットデットの分析

ネットデットの分析に先だって、ネットデットは考え方が1つに定まっておらず、どの項目をネットデットに含めてどの項目を含めないのかは、バリュエーションを行う人や考え方によって左右されるということをお断りしておきます。その上で、筆者の実務上の経験等により、ネットデットに含める項目および含めない項目を記載しますが、筆者の考え方であるということをご留意ください。

 

ネットデットは、貸借対照表上の有利子負債から現金及び現金同等物を控除した金額として設定し、そこから調整項目を検討します。ネットデットの調整項目を検討するうえで重要な観点は、検討している債務の金額が事業計画上、EBITDA、運転資本および設備投資で既に事業価値の算定に取り込まれていないかを検討することです。既にネットデット以外の項目で事業価値に織り込まれている場合は、ネットデットでも計上すると二重で事業価値に織り込まれることになるため注意が必要です。

 

 

 

 

①必要手元資金

必要手元資金は、小売業におけるレジに必要な現金など事業運営に最低限必要な現金や引き出しに制約のある現金については運転資本としての性格があると考えられるため、ネットデットの現金および現金同等物から控除する調整が必要となります。

 

②未払法人税

未払法人税は、対象企業の売上ではなく利益によって左右されるものであるため、運転資本とは考えずにネットデットの調整項目とします。一方、未払消費税は課税売上と課税仕入により左右され、売上の規模にある程度連動することが見込まれるため、ネットデットではなく運転資本と考えます。

 

③ファイナンス・リース債務

ファイナンス・リース債務は、今後リース債務の支払いが行われ、リース資産から減価償却費が計上されます。事業計画上、EBITDAでは当該支払いは反映されず、設備投資上でリース債務の支払いが反映されていればネットデットではなく設備投資のキャッシュアウトとしてバリュエーションに織り込まれます。設備投資上でリース債務の返済を織り込んでいなければ当該リース債務はネットデットとしてバリュエーションを行うことになります。しかし、事業計画上で、設備投資でリース債務の支払いが折り込まれている場合であっても、M&Aの成立後、買手企業がリース取引を行わない方針等で全てのリース債務を買取る等する場合には評価基準日時点のリース債務残高は有用となりますので、ネットデットの調整項目として記載しておくのが有用です。

 

④退職給付引当金

対象会社の退職金規程において退職金を支給することとなっている場合には、確定給付なのか確定拠出なのかを確認します。確定給付制度を採用している場合には、退職給付引当金の計上が必要となります。退職給付引当金が未計上である会社の多くは従業員300人未満の会社であると想定されますので、その場合は簡便法にて退職給付引当金を計算します。簡便法では多くの場合、期末自己都合要支給額の金額を退職給付債務とする方法がとられることが多いように思います。そして計算された退職給付引当金をネットデットの調整項目とするかを検討します。

 

また、例えば退職一時金制度を採用しており、従業員が300人未満であるため簡便法で期末時点の自己都合退職金の金額を調整しているとします。退職給付引当金を対象会社が計上しておらず、財務デューデリジェンスの中で調整項目としてネットデットに含めた場合は、当該引当金がバリュエーション上二重で控除される可能性があるため留意が必要です。対象会社が、退職給付引当金を計上していないということは、退職金の支払い時に費用処理を行っているため、EBITDAの中で退職金の支払いが反映されます。EBITDAで退職金を支払った上で、ネットデットでも基準日時点の退職給付引当金を事業価値から控除すると、基準日時点に発生している退職給付債務を二重で控除することになります。そのため、EBITDAの中で退職金の支払いが行われているかどうかを確認の上、ネットデットの調整項目とするかを検討します。また、退職給付引当金を他の人件費と同様に運転資本とする考え方もあるため留意が必要です。

 

⑤資産除去債務

資産除去債務は、税法基準で会計処理をしている中小企業の場合、計上していないことが通常です。資産除去債務は、工場を賃借している場合や、店舗等を賃借しており、内装を大幅に変更している場合や店舗数が多い場合に金額が大きくなる傾向があります。

 

工場であれば、有害物質や土壌汚染の問題が発生すると、億単位の費用となる場合があるため注意が必要です。工場の土壌汚染等の問題が重要な場合は、環境デューデリジェンス等により詳細な調査および見積もりを行うことも必要となります。

 

店舗の賃借であれば、内装を大幅に変更していると原状回復費用が多額になる傾向にありますし、それらの店舗が多ければ多いほど合計額は大きくなります。既に撤退を予定している店舗であれば、業者による正式な見積が可能であれば、見積を依頼することもあります。撤退を予定していない店舗であれば、過去の原状回復費用の実績から、平米数等を基準として見積を行います。但し、差入保証金・敷金からの充当により、追加のキャッシュアウトが生じない場合もあるため、差入保証金・敷金の取り扱いとの整合性を加味した上でネットデットの調整項目の可否を検討します。

 

⑥投資有価証券

投資有価証券は、非事業用資産で売却が可能であるものについて時価で評価をしてネットデットの調整項目とします。事業関連性があるものについては、今後も投資を継続することが想定されますので、ネットデットの調整項目とはしないことが多いですが、対象会社の株主が変更されることにより投資価値が変わる場合がありますので、投資先との取引関係、役員の兼任や株主の投資状況などの人的・資本的な関係についても確認する必要があります。

 

⑦保険積立金

保険積立金は、非事業用資産でありM&Aの成立後に解約される場合が想定されます。そのため、基準日時点での時価(一般的には解約返戻金の金額)で評価を行い、ネットデットの調整項目とします。

 

⑧遊休資産

遊休資産は、事業計画上も活用されない場合は非事業用資産であり、売却が検討されます。金額が重要な場合は買手とディスカッションの上、不動産鑑定評価書を取得し、金額的重要性が低い場合は固定資産税評価額等から時価を把握して、ネットデットの調整項目とします。

 

潜在的調整項目は、分析の結果ネットデットの調整項目とはしないものの、M&Aの買手企業のシナリオやその他の要因により今後発生する可能性がある事項について記載します。

 

⑨オフバランスのオペレーティングリース債務

オペレーティングリース債務は、現状の日本の会計基準ではオンバランスする必要はありませんが、IFRS(国際財務報告基準)ではオンバランスが求められています。そのため、買手企業の採用している会計基準がIFRSであれば、ネットデットの調整項目とすることが望ましいでしょう。また、買手企業のシナリオにより、当該資産のリースを行わないことも想定されるため、参考情報としてオペレーティングリース債務を記載しておく必要があります。さらに、中小企業の場合は支払リース料がEBITDAに含まれているため、参考情報として債務額を記載するケースもあります。

 

⑩オフバランスの保証債務

オフバランスの保証債務は、主要な関連会社や取引先等に対して、対象会社が債務保証を行っている場合に当該保証額を記載します。債務保証を行っている場合は、保証先が倒産等で債務を履行できなくなった場合に、対象会社が当該債務を支払う必要があるため、潜在的な債務として認識します。また、M&Aの成立により、債務保証の契約を外す交渉をすることや、保証債務の履行が請求された場合は対象会社の現在の株主が支払う等の条項を表明保証に織り込むことが想定されますが、備忘のため保証債務の金額を記載しておく必要があります。

 

⑪未払残業代

未払残業代は、対象会社が支払う必要がある費用ですが、未払残業代が発生した要因は対象会社の現株主の経営によるものです。そのため、未払残業代については、買収価格の調整にて精算するケースや、現在の株主が未払残業代を支払ってから譲渡するケース、経営判断で過去の分については支払わず、表明保証に記載するというケースもあるため、備忘のため未払残業代の金額を記載しておく必要があります。

 

 

4、純資産の分析

バリュエーションで、DCF法を採用している場合は純資産の分析がバリュエーションに影響することはないため、バリュエーション手法でDCFを採用している場合の財務デューデリジェンスで純資産の分析を行うことは実務的にはあまり多くありませんが、純資産法を採用している場合は、純資産の分析が重要となります。

 

ここで説明する純資産の分析は、純資産法でバリュエーションを行うための修正時価純資産を分析することを目的とした説明とします。

 

 

 

 

①回収可能性に疑義のある売上債権

長期滞留している等で、回収可能性に疑義のある売上債権については回収可能性を加味した金額まで減額します。回収可能性を加味した金額とは、対象会社で滞留期間等による貸倒設定基準を設けていれば当該基準を検討の上、売上債権の減額(貸倒引当金の設定)を行います。貸倒設定基準を設けていない場合は、税法基準や、ヒアリング等による実態を加味した金額を売上債権から減額(貸倒引当金の設定)を行います。

 

②長期間滞留している棚卸資産の評価減

棚卸資産では、滞留在庫の内容を確認して、長期滞留している残高の有無、販売可能性、回転期間分析による異常値、それらの会計処理等を分析し、評価替えの必要性等を検討します。筆者の経験上、棚卸資産は利益操作のため過大計上による不適切会計が行われやすい勘定科目であるため、棚卸資産の金額水準については特に慎重に検討を行う必要があります。対象会社が、棚卸資産の評価減の基準を設けていない場合には、販売可能期間、過去の処分実績、値引販売の実績、滞留期間と販売実績割合の分析等を行い、評価減の金額の算出を行います。

 

③固定資産の除却漏れ金額

中小企業の場合、固定資産を処分しても、会計上除却を行っていないことは少なくありません。そのため、調査基準日時点の固定資産の簿価の中には、過年度に処分をしており調査日時点では実在しない固定資産が含まれていることがあります。そのため、財務デューデリジェンスでは、固定資産台帳の閲覧やヒアリングにより除却漏れの固定資産がないかを確認します。除却漏れの固定資産があった場合は、調査日時点の簿価を調整額とします。

 

④固定資産の減価償却不足額

中小企業の場合は税法基準により会計処理を行っていることが多く、税法基準によっている場合、減価償却は強制されません。そのため、業績が芳しくない年度で減価償却費を計上しないことも少なくありません。よって、調査基準日に計上されている固定資産の簿価は、取得以降減価償却を行っていた場合と比較して、大きい残高となっていることが想定されます。財務デューデリジェンスでは、固定資産台帳より固定資産の事業供用日、取得価額、償却方法、耐用年数、基準日の簿価等より、当初から減価償却を行っていた場合の簿価を算出し、対象会社にて計上されている簿価との比較を行い、償却不足がある場合は純資産の調整項目とします。

 

⑤遊休不動産の時価評価

遊休資産は、事業計画上も活用されない場合は非事業用資産であり、売却が検討されます。また、会計上も減損の検討が必要となります。当該遊休資産の金額が重要な場合は買手とディスカッションの上、不動産鑑定評価書を取得し、金額的重要性が低い場合は固定資産税評価額等から時価を把握して、純資産の調整項目とします。

 

⑥投資有価証券の時価評価

投資有価証券は、保有目的を把握し、基本的にはそれぞれの保有目的に即した会計処理を行います。対象会社は売買目的で保有していなかったとしても、買手企業のシナリオ上当該有価証券は不要であり売却を予定している場合等には、時価評価を行う等、今後のシナリオも考慮の上評価を行う必要があります。上場有価証券であれば時価を把握するのは容易ですが、非上場であれば投資先の決算書を取り寄せて時価を検討します。

 

⑦保険積立金の時価評価

実務上の煩雑性から、保険契約は金融商品会計基準の対象外とされています。(実務指針13項、224項)それは、保険料の中の保険部分と積立部分の区分計算が困難であること等が理由と考えられます。一方で、対象会社は中小企業であり、税法基準で会計処理をしている場合は支払額の半分を資産計上している場合、それに対応する年ベースの解約返戻金は容易に把握可能となります。また、M&Aの成立後、生命保険を解約することも少なくないため、生命保険の解約返戻金の額を把握することは有用です。そのため、純資産の調整項目で生命保険の解約返戻金と簿価との差額を調整することを検討します。

 

⑧未計上の資産除去債務

税法基準で会計処理をしている中小企業の場合、資産除去債務を計上していないことが通常です。資産除去債務は、工場を賃借している場合や、店舗等を賃借しており、内装を大幅に変更している場合や店舗数が多い場合に金額が大きくなる傾向があります。

 

工場であれば、有害物質や土壌汚染の問題が発生すると、億単位の費用となる場合があるため注意が必要です。工場の土壌汚染等の問題が重要な場合は、環境デューデリジェンス等により詳細な調査および見積もりを行うことも必要となります。

 

店舗の賃借であれば、内装を大幅に変更していると原状回復費用が多額になる傾向になりますし、それらの店舗が多ければ多いほど合計額は大きくなります。既に撤退を予定している店舗であれば、業者による正式な見積が可能であれば、見積を依頼することもあります。撤退を予定していない店舗であれば、過去の原状回復費用の実績から、平米数等を基準として見積を行います。

 

⑨未計上の期末月未払人件費

中小企業では、人件費の支払を発生主義ではなく現金主義を採用しており、発生したタイミングではなく支払ったタイミングで費用処理をしている会社が少なくありません。例えば、対象会社が人件費の支払いは月末締め翌月25日払いであったとします。3月決算の場合、現金主義であれば3月末締めで4月25日払いの給料は費用処理されていません。発生主義で計上すると、3月末締めの給料は費用処理され、貸方に未払金が計上されます。当該未払金を純資産の調整項目とするかを検討します。また給料だけでなく、会社負担の未払社会保険料も同様の処理を行います。

 

⑩未計上の退職給付引当金

対象会社の退職金規定において退職金を支給することとなっている場合には、確定給付なのか確定拠出なのかを確認します。確定給付制度を採用している場合には、退職給付引当金の計上が必要となります。退職給付引当金が未計上である会社の多くは従業員300人未満の会社であると想定されますので、その場合は簡便法にて退職給付引当金を計算します。簡便法では多くの場合、期末自己都合要支給額の金額を退職給付債務とする方法がとられることが多いように思います。そして計算された退職給付引当金を純資産の調整項目とします。

 

⑪撤退予定店舗の資産負債差額

M&Aの成立後撤退することが予定されている店舗は、買手企業に引き継がれない、或いは引き継がれたのちに撤退することになります。どちらの場合であっても撤退店舗にかかる資産および負債は精算(撤退店舗の資産および負債を別店舗等で引き継ぐ場合は調整不要となります)されることになります。他の項目で時価調整、減価償却不足等の調整を行っている場合にはそれらを考慮の上、資産負債差額を純資産調整額として調整します。

 

⑪オフバランスの保証債務

オフバランスの保証債務は、主要な関連会社や取引先等に対して、対象会社が債務保証を行っている場合に当該保証額を記載します。債務保証を行っている場合は、保証先が倒産等で債務を履行できなくなった場合に、対象会社が当該債務を支払う必要があるため、潜在的な債務として認識します。また、M&Aの成立により、債務保証の契約を外す交渉をすることや、保証債務の履行が請求された場合は対象会社の現在の株主が支払う等の条項を表明保証に織り込むことが想定されますが、備忘のため保証債務の金額を記載しておく必要があります。

 

⑫未払残業代

未払残業代は、対象会社が支払う必要がある費用ですが、未払残業代が発生した要因は対象会社の現株主の経営によるものです。そのため、未払残業代については、買収価格の調整にて精算するケースや、現在の株主が未払残業代を支払ってから譲渡するケース、経営判断で過去の分については支払わず、表明保証に記載するというケースもあるため、備忘のため未払残業代の金額を記載しておく必要があります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

[M&A案件情報(譲渡案件)](2020年11月5日)

-以下のM&A案件(4件)を掲載しております-

 

●【財務良好】業歴50年超の鋼材商社

[業種:鉄鋼一次製品卸売業/所在地:九州・沖縄地方]

●1点1点フルオーダー、木製の建具・家具製造業

[業種:木製品製造業/所在地:中部地方]

●業歴50年超、老舗の和菓子製造会社

[業種:食品製造業/所在地:中部地方]

●財務内容良好、地域で相応の知名度ある地域密着型のタクシー会社

[業種:タクシー事業/所在地:東日本]

 

 

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案件No.SS006430
【財務良好】業歴50年超の鋼材商社

 

(業種分類)商社・卸・代理店

(業種)鉄鋼一次製品卸売業

(所在地)九州・沖縄地方

(直近売上高)1~5億

(従業員数)10~50名

(譲渡スキーム)株式譲渡

(事業概要)鋼材、鋼管、特殊鋼卸

 

 

〔特徴・強み〕

◇幅広い商材の取り扱いを強みに、地場鉄骨関連会社、機械製造業者を中心に販路を構築。
◇長年にわたり堅実な経営に徹し、相応の財務基盤を構築しており無借金。

 

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案件No.SS006427
1点1点フルオーダー、木製の建具・家具製造業

 

(業種分類)製造業

(業種)木製品製造業

(所在地)中部地方

(直近売上高)1~5億

(従業員数)10名以下

(譲渡スキーム)株式譲渡

(事業概要)家具・建具製造業

 

〔特徴・強み〕

◇大型から小型のものまで、幅広い木製品の製造が可能。
◇近隣エリアだけでなく、関東の取引先からの受注も多い。

 

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案件No.SS006198
業歴50年超、老舗の和菓子製造会社

 

(業種分類)製造業

(業種)食品製造業

(所在地)中部地方

(直近売上高)1~5億

(従業員数)10~50名

(譲渡スキーム)株式譲渡

(事業概要)和菓子製造業

 

〔特徴・強み〕

◇勤続年数の長い従業員が多く、高い技術力を有した職人が在籍している。
◇PB商品を中心に、自社ブランド商品も手掛けている。

 

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案件No.SS006450
財務内容良好、地域で相応の知名度ある地域密着型のタクシー会社

 

(業種分類)物流・運送

(業種)タクシー事業

(所在地)東日本

(直近売上高)1~5億

(従業員数)10~50名

(譲渡スキーム)株式譲渡

(事業概要)地元密着でタクシー事業を運営

 

〔特徴・強み〕

◇無借金経営で財務内容良好のタクシー会社。
◇業歴長く、地元密着でエリア内で相応の知名度あり。
◇タクシー台数は約20台。

 

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情報提供会社:株式会社ストライク

 

 

 

 

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・掲載情報は公開日時点の情報になります。既に案件が特定の対象会社と交渉に入っている場合や成約している場合もございます。

 

 

 

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[中小企業のM&A・事業承継 Q&A解説]

第5回:M&Aの主なスキーム (株式譲渡、事業譲渡、会社分割)

~メリットとデメリット?留意点は?~

 

[解説]

上原久和(公認会計士)

 

 

 

 

 


[質問(Q)]

M&Aの主なスキームにはどのようなものがありますか。
それぞれの概要とメリット・デメリット・留意点を教えてください。

 

 

[回答(A)]

M&Aのスキームは様々な手法があります。どの手法を選択するかは譲渡側・譲受側の会社ごとの事情によって異なります。譲渡代金の受領先や財務内容、業績、許認可、技術の有無、取引口座の重要性等によっても留意が必要です。一般的には比較的手続が簡易な株式譲渡や事業譲渡を選択されるケースが多いです。

 

 

 

 

M&Aで主に利用されるスキームには、株式譲渡・事業譲渡・会社分割の手法があります。その中でも株式譲渡と事業譲渡が中小企業のM&Aでは多く利用されています。

 

1.株式譲渡


株式譲渡とは、譲渡企業の株主であるオーナー(経営者)が保有する株式を他の会社(第三者)に売却することで譲渡企業の所有権(経営権)を移転させる取引を言います。株式譲渡は譲渡企業のオーナーと譲受側が譲渡企業の株式を譲渡・売買するだけで成立するため、M&Aの実務手続としては事業譲渡に比べ簡便であるという特徴があります。

 

その一方で株式譲渡は譲渡企業を包括的に譲り受けてしまうことから、帳簿外の債務も含めて譲り受けてしまうデメリットが譲受企業側に生じることがあります。なお、株式譲渡取引は譲渡企業のオーナーと譲受企業との間で行われる取引になるため、譲渡対価は譲渡企業のオーナー(株主)が受け取ることに留意が必要です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2.事業譲渡


事業譲渡は、会社の事業の全部又は一部を他の会社に売却する取引を言います。事業譲渡の対象となる「事業」とは、一定の目的のために組織化された有形、無形の財産・債務、人材、事業組織、ノウハウ、ブランド、取引先との関係などを含むあらゆる財産と言われています。また、事業譲渡は契約によって個別の財産・負債・権利関係等を移転させる手続のため、事業譲渡契約書には譲渡対象となる財産を明示して契約が行われます。

 

このため、譲受側(買い手)にとっては必要な事業や財産のみを取得したり、また契約の範囲を定めることで、帳簿外の債務(簿外債務、偶発債務など)を遮断することができる点が大きなメリットと言われます。

 

一方で個々の財産・負債の移転手続であるため権利関係等を移転させる手続が煩雑で、譲渡側が保有している許認可や取引口座が移転できない等のデメリットがあります。なお、事業譲渡における取引は譲渡企業と譲受企業との間で行われる取引であるため、譲渡対価は譲渡企業が受け取ることに留意する必要があります。

 

 

 

 

 

 

3.会社分割


会社分割とは、複数の事業部門を持つ会社(譲渡企業)がその一部門を分割して切り出し、他の会社(譲受企業)に承継させる手法のことを言います。事業譲渡と異なり、会社がその事業に関して有する権利義務の全部又は一部を他の会社に包括的に承継させることができます。ただし、ケースによっては許認可等を承継できないケースもあるため事前の確認が必要です。

 

会社分割は譲受側が譲渡対価として金銭を交付することも、譲受会社の株式を交付することも可能であるため、譲受側に資金的余裕がない場合には譲受企業の株式を対価にすることもできます。また、その対価も譲渡企業自身が受け取ることも譲渡企業の株主(オーナー)が受け取ることも可能です。ただし、他の手法と比較すると実務的な手続が煩雑になる点には留意が必要です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

事業承継に関する企業の意識調査(2020年10月公開分)

 

 

 

◇近畿地区「事業承継に関する企業の意識調査」(2020年10月公開分)

事業承継、企業の約7割が「経営上の問題」と認識
~約4割は事業承継の手法にM&Aの可能性ありと認識~

※詳細はこちら

 

◇新潟県「事業承継に関する企業の意識調査」(2020年10月公開分)

企業の68.4%が事業承継を経営上の問題と認識
~ 新型コロナを機に事業承継への関心が高まった企業は8.4%に ~

※詳細はこちら

 

◇長野県「事業承継に関する企業の意識調査」(2020年10月公開分)

7割以上の企業が事業承継を経営上の問題と認識
~ 「M&Aに関わる可能性がある」は4割を超える ~

※詳細はこちら

 

◇茨城県「事業承継に関する企業の意識調査」(2020年10月公開分)

県内企業の70.4%が事業承継を「経営上の問題」と認識
~ 4割の県内企業で事業承継の計画がありながらも、約半数は未着手 ~

※詳細はこちら

 

◇千葉県「事業承継に関する企業の意識調査」(2020年10月公開分)

企業の66.6%が事業承継を経営上の問題と認識
~ 新型コロナを機に事業承継への関心が高まった企業は7.9% ~

※詳細はこちら

 

◇九州地区「事業承継に関する企業の意識調査」(2020年10月公開分)

事業承継を経営上の問題と認識している企業は68.2%
~ 新型コロナを契機に事業承継に対する関心が高くなった企業は11.4% ~

※詳細はこちら

 

◇栃木県「事業承継に関する企業の意識調査」(2020年10月公開分)

事業承継、69.3%が「経営上の問題」と認識
~ 38.7%の企業がM&Aに関わる可能性を指摘 ~

※詳細はこちら

 

 

 

 

 

 

 

情報提供元(出所):株式会社帝国データバンク

[M&Aニュース](2020年10月19日〜10月30日)

◇アツギ、約130人の希望退職者を募集、◇LIXILグループ、1200人規模の希望退職を実施へ、◇三ツ知<3439>、精密機械金型の創世エンジニアリングを子会社化、◇平和<6412>、アコーディア傘下の4ゴルフ場を取得、◇ビューティガレージ<3180>、美容業務用品器具販売の和楽を子会社化、◇ピクスタ<3416>、デジタル素材販売サイト「PIXTA」運営の韓国子会社を譲渡、◇テノ.ホールディングス<7037>、名古屋市で保育園運営のオフィス・パレットを子会社化、◇オウケイウェイヴ<3808>、暗号資産交換業子会社のLastRootsをエクシアに譲渡、◇AKIBAホールディングス<6840>、基地局設計のトランテンエンジニアリングを子会社化、◇マクセルホールディングス、人数を定めず早期退職を実施 ほか

 

 

 

 

アツギ、約130人の希望退職者を募集

アツギは30日、約130人の希望退職者を募ると発表した。内訳は正社員・契約社員60人程度、パートタイマー70人程度で、正社員については40歳以上を対象とする。新型コロナウイルス感染拡大の影響で主力のストッキングの販売が低迷するなど業績が悪化しており、収益改善に向けて構造改革の取り組みと合わせ効率的な人員体制を目指す。募集期間は12月14日~24日。退職日は2021年3月20日。特別退職金を加算し、再就職支援サービスを提供する。

LIXILグループ、1200人規模の希望退職を実施へ

建材・住宅設備機器最大手のLIXILグループは30日、1200人を募集する希望退職プログラム「ニューライフ」を実施すると発表した。同社は今年2月にも希望退職者を募集(計画発表は2019年11月。人数を定めず、応募497人)しており、大がかりな人員削減が連続する。国内の新築住宅市場が急速に縮小する中、実力主義を徹底し、事業構造転換を加速させる。

対象は中核事業会社であるLIXIL(12月1日付でLIXILグループに吸収合併)に在籍する40歳以上勤続10年以上の正社員で、工場の人事総務・経理部門や物流センター、デジタル部門は除く。募集期間は2021年1月12日~22日。退職日は2021年3月25日。

通常の退職金に特別退職金を加算して支給するほか、再就職支援サービスを提供する。

三ツ知<3439>、精密機械金型の創世エンジニアリングを子会社化

三ツ知は、精密機械金型設計・製作の創世エンジニアリング(福岡県久留米市。売上高9億2800万円、営業利益1億2600万円、純資産4億1400万円)の全株式を取得し、子会社化することを決めた。創世エンジニアリングは1989年設立で、通信、医療、自動車道、半導体を主要ユーザーとする。同社の顧客基盤を取り込み、事業拡大につなげる。取得価額は非公表。取得予定日は2020年12月1日。

三ツ知は冷間鍛造技術を活用した自動車部品メーカー。

平和<6412>、アコーディア傘下の4ゴルフ場を取得

平和は、ゴルフ場運営大手のアコーディア・ゴルフ(東京都品川区)から同社傘下のゴルフ場4カ所を取得することを決めた。平和は子会社のパシフィックゴルフマネージメント(PGM、東京都台東区)を通じて、ゴルフ場の買収を積極的に進めており、その一環。

取得するのはアコーディアAH02(東京都品川区)が所有する石岡ゴルフ倶楽部(茨城県小美玉市、18ホール)、南市原ゴルフクラブ(千葉県市原市、18ホール)と、ネクスト・ゴルフ・マネジメント(東京都品川区)が所有する武蔵ゴルフクラブ(埼玉県鳩山町、18ホール)、きみさらずゴルフリンクス(千葉県木更津市、18ホール)。

これら4ゴルフ場の事業を会社分割して設立される新会社2社の全株式を、PGMが取得する形となる。取得価額は非公表。取得予定日は2020年12月1日。

ビューティガレージ<3180>、美容業務用品器具販売の和楽を子会社化

ビューティガレージは、美容業務用品器具販売の和楽(東京都東村山市。売上高8億1500万円、営業利益2000万円、純資産5800万円)の株式67.3%を取得し、子会社化することを決めた。和楽は1995年設立で、北関東を主力地盤とする中堅美容ディーラー。取得価額は非公表。取得日は2020年10月8日付。

ピクスタ<3416>、デジタル素材販売サイト「PIXTA」運営の韓国子会社を譲渡

ピクスタはデジタル素材販売サイト「PIXTA」韓国語版を運営する韓国子会社Topic Images Inc.(ソウル。売上高1億2200万円、営業利益△6900万円、純資産△2億200万円)の全保有株式(所有割合80%)を、Jinman Kim氏に譲渡することを決めた。投資効率の観点を踏まえ、日本国内からPIXTA韓国語版についての運営継続が可能と判断した。譲渡価額は0円。譲渡予定日は2020年11月30日。

テノ.ホールディングス<7037>、名古屋市で保育園運営のオフィス・パレットを子会社化

テノ.ホールディングスは、保育園運営やベビーシッター事業を展開するオフィス・パレット(名古屋市。売上高5億6600万円、営業利益6800万円、純資産3億3100万円)の全株式を取得することを決めた。テノは保育事業を主力の一つとする。名古屋市内で認可保育所3施設、小規模認可保育所5施設を持つオフィス・パレットを傘下に取り込み、中部エリアへの進出を本格化する。取得価額は8億500万円。取得予定日は2020年12月1日。

オウケイウェイヴ<3808>、暗号資産交換業子会社のLastRootsをエクシアに譲渡

オウケイウェイヴは、子会社で暗号資産交換業のLastRoots(東京都港区。売上高8420万円、経常利益△4億2300万円、純資産401万円)の全保有株式(所有割合91.46%)を、貸金業のエクシア合同会社(東京都千代田区)に譲渡することを決めた。暗号資産をめぐる市場環境が不透明感を増す中、LastRootsへの資金注入を続けるのは財務負担が大きいと判断した。譲渡価額は2億2600万円。譲渡予定日は2020年10月30日。

AKIBAホールディングス<6840>、基地局設計のトランテンエンジニアリングを子会社化

AKIBAホールディングスは、基地局の設計やコンサルティング業務を手がけるトランテンエンジニアリング(東京都渋谷区。売上高5140万円、営業利益△1790万円、純資産3150万円)の全株式を取得し子会社化することを決めた。成長が期待されるIoT(モノのインターネット)、5G(次世代通信規格)向け各種通信建設工事の事業拡大につなげるのが狙い。取得価額は非公表。取得は2020年10月30日。

AKIBAは子会社のバディネット(東京都中央区)を通じて通信建設工事を展開している。無線基地局の建設工事は折衝・コンサルティング、設計、施工、保守メンテナンスの4つの事業領域に大別されるが、トランテンエンジニアリングを傘下に取り込み、これまで自社で対応が困難だった設計領域を内製化する。

トランテンエンジニアリングは2006年に設立し、無線基地局工事で折衝・コンサルティングや図面設計、構造確認などを専門とする。

マクセルホールディングス、人数を定めず早期退職を実施

マクセルホールディングスは29日、40歳以上の国内グループ社員を対象に早期退職支援制度を実施すると発表した。低収益化した事業構造からの脱却を推し進めており、その一環。募集人数はとくに定めていない。募集期間は11月中旬~12月25日で、退職日は2021年2月28日付。規定の退職金に加え、退職加算一時金を支給する。

同社は自動車、半導体関連の部品や一般消費者向け健康・理美容機器などを手がけるが、足元では新型コロナウイルスの影響で自動車関連などが落ち込んでいる。

2021年3月期業績予想は売上高8.3%減の1330億円、営業利益15億円(前期は1億3700万円の赤字)、最終赤字34億円(同104億円の赤字)と、2年連続の減収・最終赤字を見込む。

ニトリホールディングス<9843>、島忠<8184>の子会社化へ対抗TOBを1株5500円で開始予定

家具・インテリア用品首位のニトリホールディングスは29日、ホームセンター中堅の島忠に対して完全子会社化を目的にTOB(株式公開買い付け)を11月中旬をめどに開始する予定だと発表した。島忠を巡ってはホームセンター最大手のDCMホールディングスによるTOBが進行中だが、買付価格としてDCMを1300円上回る5500円を提示した。買付代金は最大2142億円。ニトリが対抗TOBに名乗りを上げたことで、島忠の争奪戦に発展することが必至となった。

DCMは島忠の完全子会社を目指して10月5日~11月16日を期間としてTOBを実施中。ニトリはDCMによるTOBが成立する事態を回避するために、事前にTOBを開始予定であることを公表したとしている。

ニトリは2017年以降、M&Aを通じてホームセンター業界への新規参入を検討。家具・インテリア用品を主力とするニトリと、家具販売からホームセンター事業に進出した島忠との親和性は高いとの判断だ。

ニトリによる買付価格は1株5500円。前日28日の島忠株の終値4890円に12.47%のプレミアムを加えた。島忠株価は現在、DCMによる買付価格4200円を600円程度上回る水準にあるが、ニトリがDCMを大幅に上回る買付価格を提示したことで、島忠株価がさらに高値に向かうと見られ、その場合、DCMとしては不利な状態となる。

ニトリの買付予定数は3895万5187株で、下限は所有割合50%にあたる1947万7600株に設定。上限は設けていない。11月中旬にTOBを開始し、買付期間は30営業日を予定。公開買付代理人は大和証券。

マクセルホールディングス<6810>、健康家電事業の一部をフジ医療器に譲渡

マクセルホールディングスは健康家電事業の一部を会社分割により、マッサージチェア最大手のフジ医療器(大阪市)に譲渡することを決めた。収益改善に向けた事業構造改革の一環。具体的にはフジ医療器に供給しているマッサージチェア用ユニットやアルカリイオン整水器の製造販売事業が対象で、譲渡予定日は2021年2月1日。会社分割の対価は非公表。

アスコット<3264>、マンション分譲のTHEグローバル社<3271>を子会社化

アスコットは、東証1部上場で不動産事業のTHEグローバル社が実施する第三者割当増資を引き受け、子会社化(所有割合51.96%)することを決めた。分譲マンションの販売強化などが狙い。取得価額は30億円。取得予定日は2020年12月21日。

アスコットはマンション事業、ホテル事業、戸建て事業を3本柱とし、中国平安保険(集団)股份有限公司の傘下。

ロイヤルホールディングス、200人程度の早期退職者を募集へ

外食大手のロイヤルホールディングス(HD)は27日、200人程度の早期退職者を募ると発表した。同社と国内連結子会社に在籍する50歳以上64歳以下の社員が対象で、募集期間は12月1日~18日。新型コロナウイルス感染拡大の影響で業績が急速に悪化しており、一連の事業構造改革の追加施策として人員の適正化を図る。 退職日は2021年1月31日。特別退職金を支給し、再就職支援サービスを提供する。

ロイヤルHDはこれまで賃料削減による経費圧縮をはじめ、役員報酬の減額、不採算拠点の閉鎖、雇用調整助成金の活用、本部組織のスリムなどを進めてきた。外食需要減退の長期化に対応するため、もう一段踏み込んで早期退職者を募ることにした。

8月に発表した2020年12月期第2四半期累計(1~6月)の業績は売上高が前年同期比40%減の405億円、営業赤字116億円(前年同期は16億9200万円の黒字)、最終赤字131億円(同7億5400万円の黒字)だった。

JSR<4185>、医学生物学研究所<4557>をTOBで完全子会社化

JSRは、連結子会社の医学生物学研究所に対し、完全子会社化を目的にTOB(株式公開買い付け)を実施すると発表した。JSRは現在、医学生物学研究所の株式50.8%を所有しており、TOBを通じて残りの株式の取得を目指す。医学生物学研究所はTOBに賛同を表明している。TOB成立後、医学生物学研究所は上場廃止となる見通し。

JSRは2015年に医学生物学研究所を子会社化し、汎用診断薬分野などでの協業を進めてきた。今回の完全子会社化は、創薬支援分野や、医薬品の効果を投薬前に予測する「コンパニオン診断薬」開発での競争力強化に加え、グループとして経営効率の一層の向上を図ることが狙い。

買付価格は1株当たり4400円。TOB公表前営業日の対象株式の終値3440円に対して27.91%のプレミアムを加えた。買付予定数は254万2960株で、下限は81万9419株(所有割合15.9%)。買付予定額は最大111億8900万円。

買付期間は2020年10月28日から12月10日まで。決済の開始日は12月17日。公開買付代理人は野村証券。

インターライフホールディングス<1418>、広告代理業のアーク・フロントなど3子会社をピーアークホールディングスに譲渡

インターライフホールディングスは、広告代理業のアーク・フロント(東京都足立区。売上高6億1800万円、営業利益2500万円、純資産1億2600万円)など子会社3社の全株式を、パチンコ・スロット店を展開するピーアークホールディングス(東京都中央区)に譲渡することを決めた。

譲渡するのはアーク・フロントのほか、教育研修・人材派遣業のデライト・コミュニケーションズ(東京都北区。売上高1億4500万円、営業利益2300万円、純資産8200万円)、遊技機販売のベストアンサー(埼玉県川口市。売上高10億1000万円、営業利益2900万円、純資産1億1600万円)。

主要取引先であるピーアークホールディングスから内製化の一環として、対象3社が手がける広告代理業や店舗スタッフの研修、中古遊技機の販売について取り込みたいとの要請があったという。

譲渡価額はアーク・フロント1億2200万円、デライト・コミュニケーションズ8800万円、ベストアンサー1億4000万円で、合計3億5000万円。譲渡予定日は2020年11月30日。

古河電池<6937>、マクセルから積層ラミネート型リチウムイオン電池事業を取得

古河電池は、マクセルから積層ラミネート型リチウムイオン電池事業を会社分割により取得することを決めた。市場拡大が見込まれるリチウムイオン電池の技術展開・用途拡大を推し進めると同時に、両社の技術力の融合による競争力強化を目指す。取得する対象事業の直近売上高は1億3700万円。

取得価額は非公表。取得予定日は2021年4月1日。

出光興産<5019>、ENEOS知多製造所のパラキシレン製造設備を取得

出光興産は27日、ENEOSとの間で同社知多製造所(愛知県知多市)の石油化学製品(パラキシレン)製造設備を取得する方向で検討を進めることで合意したと発表した。ENEOSは2021年10月をめどに知多製造所の操業を停止することにしている。出光興産は対象製造設備を譲り受けることが新規設備を建設するよりも効率的だと判断した。

パラキシレンはポリエステル(繊維、PET樹脂)の中間原料であるテレフタル酸の原料として使われる。出光興産はパラキシレンについて、国内で年産47万9000トンの製造設備を持つ。ENEOSから取得する予定の製造設備は年産40万トンの規模。

穴吹興産<8928>、セコム傘下でマンション開発・分譲のセコムホームライフを子会社化

穴吹興産は、セコム傘下でマンション開発・分譲事業を手がけるセコムホームライフ(東京都渋谷区。売上高210億円、営業利益7億6800万円、純資産△9億円)の全株式を取得し子会社化することを決めた。重点戦略である首都圏を含む東日本地区での事業拡大の一環。取得価額は非公表。取得予定日は2020年12月22日。

セコムホームライフは1997年にセコムグループ入りし、セキュリティーマンション「グローリオシリーズ」の開発・分譲を主体に事業を展開してきた。穴吹興産の子会社化に伴い、「あなぶきホームライフ」に社名変更する予定。

大阪ガス<9532>、パプアニューギニアにおける石油・天然ガス開発子会社の豪Osaka Gas Niugini を現地社に譲渡

大阪ガスは、パプアニューギニアにおける石油・天然ガス開発子会社の豪Osaka Gas Niugini Pty Ltd(西オーストラリア州。売上高-、営業利益△52万円、純資産2億800万円)の全株式を、豪Arran Energy Investments Pty Ltd(サウスウェールズ州)に譲渡することを決めた。Osaka Gas Niugini(資本金158億円)は2013年設立で、大阪ガスが子会社を通じて全額出資する。譲渡価額は非公表。譲渡予定は2021年1月。

マーチャント・バンカーズ<3121>、フィンテック関連のバルティック・フィンテック・ホールディングスを子会社化

マーチャント・バンカーズは、フィンテック事業のバルティック・フィンテック・ホールディングス(BFH、東京都千代田区。売上高-、営業利益△0円、純資産9800万円)を子会社化することを決めた。35.1%の株式を追加取得し、持ち株比率を50%に引き上げる。これに伴い、マーチャント・バンカーズはエストニアで運営する暗号資産(仮想通貨)交換所「ANGOO Fintech」業務をBFHに移管し、BFHを同国での事業統括会社と位置づける。取得価額は3510万円。取得予定日は2020年10月31日。

マーチャント・バンカーズはエストニアで法定通貨(円、ドル、ユーロなど)から仮想通貨への交換、仮想通貨から法定通貨への交換、送金サービスなどを手がけている。BFH株の持ち株比率を50%を高めるのに合わせ、BFHに経営陣を派遣する。

ピー・シー・エー<9629>、メンタルヘルス関連のドリームホップを子会社化

ピー・シー・エーは、メンタルヘルス関連事業のドリームホップ(東京都新宿区。売上高1億2900万円、営業利益△3860万円、純資産△2040万円)の全株式を取得し、子会社化することを決めた。メンタルヘルス、健康経営を中心としたHR(人的資源)領域のサービス強化を目指す。取得価額は1億810万円。取得日は2020年10月26日。

ドリームホップは2005年に設立。50人以上の事業所で実施が義務化されているストレスチェックサービスを主力とする。

ジーニー<6562>、検索関連ソフト開発のビジネスサーチテクノロジを子会社化

ジーニーは、全文検索エンジンやクローラなどに関するソフトウエアの研究開発を主力とするビジネスサーチテクノロジ(東京都渋谷区。売上高4億5000万円、営業利益1億1800万円、純資産2億5700万円)の全株式を取得し、子会社化することを決めた。サイト内検索サービスとその周辺領域での事業展開に乗り出す。取得価額は11億2800万円。取得予定日は2020年11月30日。

ビジネスサーチテクノロジは2004年に設立し、検索エンジンサービス市場で15年を超える事業実績を持つ。企業のWebサイトやEC(電子商取引)サイト向けにSaaS(サービスとしてのソフトウェア)型でサービスを提供し、累計導入数は800社超という。ジーニーは同社を傘下に取り組むことで、国内外での顧客獲得など事業拡大につなげる。

ゴルフ・ドゥ<3032>、ゴルフ・ドゥ九州から6店舗を取得

ゴルフ・ドゥは、中古ゴルフクラブ買い取り・販売専門店「ゴルフ・ドゥ!」のフランチャイズ店を運営するゴルフ・ドゥ九州(熊本市)から6店舗を取得することを決めた。九州での直営事業強化につなげる。取得価額は1億6000万円。取得予定日は2020年11月1日。

取得する6店舗は福岡有田店(福岡市)、春日店(福岡県春日市)、佐賀北店(佐賀市)、熊本南店(熊本市)、菊陽バイパス店(熊本県菊陽町)、東大分店(大分市)で、いずれも黒字店舗という。対象6店舗の直近業績は売上高5億2800万円、経常利益2200万円。

タメニー<6181>、婚活サービスの運営受託事業をエン婚活エージェントに譲渡

タメニーは持ち分法適用関連会社のエン婚活エージェント(東京都渋谷区)に、婚活サービスの運営支援事業を譲渡することを決めた。

タメニーはエン婚活エージェントが婚活支援サービスを立ち上げる際に、システムを含めたソリューションを提供するとともに、サービス開始以降も運営の支援を行っていた。

エン婚活エージェントから、タメニーが手がける婚活サービスの運営支援事業を譲り受けたいとの申し出があり、事業の効率が上がると判断し事業譲受を決めた。

譲渡価格は1億円。譲渡日は2020年11月1日。

ケーヒン<7251>、自動車空調用熱交換器製品などを製造販売するケーヒン・サーマル・テクノロジーを売却

ケーヒンは自動車空調用熱交換器製品などを製造販売するケーヒン・サーマル・テクノロジー(栃木県小山市。売上高110億5000万円、営業損失2億9500万円、純資産87億7600万円)の全株式をドイツのMAHLE Behr GmbH & Co. KGの関連会社であるマーレベーアジャパン(東京都豊島区)に譲渡することを決めた。

ケーヒン、日立オートモティブシステムズ、ショーワ、日信工業の4社の経営統合に伴い、空調事業の競争力強化を目的に売却することにした。

譲渡価額は100円で、このほかにケーヒンはケーヒン・サーマル・テクノロジーの事業運営のための65億4000万円の出資と、事業再編費用約48億円の拠出を予定している。

譲渡日は2021年2月1日の予定。

テノックス<1905>、杭工事、地盤改良工事などの広島組などを子会社化

テノックスは杭工事、地盤改良工事、土留工事を手がける広島組(大阪府豊中市。売上高4億4178万円、純資産4億4818万円)と同社の子会社で土木建築用機械や工具の販売、修理、リースなどを手がける亀竹産業(大阪市。売上高6734万円、純資産3717万円)の全株式を取得し、子会社化することを決めた。

新規に杭抜工事事業に参入するとともに、今後インフラ整備などの需要増が見込まれる関西地区での施工体制、営業力の強化が狙い。

取得価額は非公表。取得予定日は10月30日。

テノックスは土木や建築構造物の基礎工事の分野で、技術の革新や工法の開発、普及に取り組んできた。

メディカルネット<3645>、タイの歯科医院運営事業者Pacific Dental Careを子会社化

メディカルネットはタイの子会社Medical Net Thailand(バンコク)を通じて、歯科医院運営事業を手がけるPacific Dental Care Co., Ltd.(バンコク。売上高5098万円、営業利益188万円、純資産354万円)の全株式を取得し、子会社化することを決議した。

Medical Net Thailandは2017年から、タイで歯科医院の運営を行っており、Pacific Dental Careの子会社化で新規の歯科事業を推進するのが狙い。

取得価額は5371万円。取得日は10月中の予定。

日本調剤<3341>、産業医業務提供事業のWORKERS DOCTORSを子会社化

日本調剤は子会社のメディカルリソース(東京都千代田区)を通じて、首都圏を中心に産業医業務提供事業を展開しているWORKERS DOCTORS(東京都杉並区。売上高2億100万円、営業利益900万円、純資産3100万円)の全株式を取得し、子会社化することを決議した。

メディカルリソースは薬剤師や医師、看護師などの医療従事者の紹介、派遣事業を手がけており、同社の医師紹介実績や全国規模の営業体制とWORKERS DOCTORSの産業医に関するノウハウやネットワークを活用することで、産業医業務提供事業の全国展開を目指す。

日本調剤グループは全国で666店舗(2020年10月1日現在)の調剤薬局を運営している。

取得価額は非公表。株式取得日は11月1日。

じげん<3679>、外壁塗装比較メディア事業を譲受

じげんはブランディングテクノロジー<7067>から、外壁塗装比較メディア「外壁塗装コンシェルジュ」を運営する外壁コンシェルジュ事業(事業規模などは非公表)を譲り受ける契約を結んだ。

じげんの外壁塗装比較メディア「プロヌリ」の顧客基盤に「外壁塗装コンシェルジュ」の顧客基盤を加えることで、外壁塗装領域でのシェアアップと事業展開の加速を目指す。

じげんは2006年6月設立で、2013年に東京証券取引所マザーズ市場に上場して以来、これまでに16件のM&Aを実施している。

譲受価額は1億円。事業譲受日は11月4日。

オートバックスセブン<9832>、タイ販売子会社を現地燃料販売会社へ譲渡

オートバックスセブンはタイの連結子会社である SIAM AUTOBACS CO.,LTD.(SAB社、バンコク。売上高・営業利益・純資産非公開)株の一部を、資本・業務提携しているという PTG Energy Public Company Limited(PTG社。同)へ20日に譲渡したと発表した。これによりオートバックスセブンによるSAB社の持株比率(議決権ベース)は52.44%から12.29%に下がり、連結対象から外れる。

オートバックスセブンが進めている「5カ年ローリングプラン」に基づき、不採算の海外小売事業を縮小して収益性の高い卸売事業を拡大する施策の一環。タイでのオートバックスブランドの店舗運営は PTG社主導で継続する。PTG社はタイ2位のガスステーションを展開し、SAB社の主要株主でもある。

譲渡価額は非公表。

ドリームインキュベータ<4310>、リクルートからペッツオーライ事業を譲受

ドリームインキュベータは子会社のアイペットホールディングス<7339>を通じて、リクルート(東京都中央区)から、ペットの健康相談やペット関連情報プラットフォームの企画・開発・運営を手がけるペッツオーライ事業(売上高3億6800万円)を譲受すると発表した。9月に新設した孫会社のペッツオーライ(東京都千代田区)で同事業を展開する。

アイペットはペットショップチャネルとインターネットによるダイレクトチャネルを軸に、2020年8月には保有契約件数が55万件を突破し、市場シェアは25%を超えているという。

リクルートから譲受するペッツオーライ事業は、オンラインでのペットの健康・しつけ相談プラットフォームを展開しており、コロナ時代にも対応したサービスで高い成長が見込まれるだけでなく、投資先であるアイペットとのシナジー(相乗効果)を見込めると期待している。

譲受価額は非公表。譲受予定日は12月1日。

プロスペクト<3528>、太陽光発電資産運用子会社をJトラスト<8508>へ譲渡

プロスペクトは連結子会社で太陽光発電アセットマネジメント(資産運用)を手がけるプロスペクト・エナジー・マネジメント(PEM、東京都渋谷区。売上高5529万4000円、営業利益5056万6000円、純資産8662万9000円)の全株式をJトラストへ譲渡すると発表した。

プロスペクトはグループのスリム化を進めており、その一環としてPEMの太陽光発電アセットマネジメント業務を子会社のプロスペクトバイオマスに事業集約する。これに伴いPEMで新たな投資家の募集を実施する予定がないため、Jトラストへ譲渡することにした。両社に資本関係や取引はないが、プロスペクトの藤澤信義会長はJトラスト会長を兼任している。

譲渡価額は1億2400万円。譲渡予定日は12月1日。

ベルーナ<9997>、アパレル通販のマキシムを完全子会社化

ベルーナはアパレル通販を手がけるマキシム(神戸市。売上高56億7041万円、営業利益1億2070万円、純資産3億6119万円)の全株式を取得し、子会社化すると発表した。ベルーナはSNSやインフルエンサーマーケティングの活用、若年層市場への取り組みを強化しており、マキシムとの商品開発やマーケティングのノウハウ共有、顧客基盤の相互活用など通じて自社ネット販売の強化を図る。

マキシムは自社ブランド「KOBE LETTUCE/神戸レタス」などのブランドを持ち、自社サイトやECモールで一般消費者向けの通信販売を展開している。主要ECモールで多数の受賞歴を持ち、口コミでも高評価を獲得するなど、若年女性からの認知度が高い。近年ではインフルエンサー戦略を活用した自社サイトへの集客にも注力しており、EC市場での存在感を高めている。

取得価額は16億5000万円。取得予定日は11月24日。

アレンザHD<3546>、グロップから岡山県内のペットショップ1店舗を譲受

アレンザホールディングスは子会社のアミーゴ(東京都千代田区)を通じてグロップ(岡山市中区)が岡山市内で展開するペットショップ1店舗を譲受すると発表した。店舗名はchouchou(売上高・営業利益・純資産非公表)で、動物の里親探しのノウハウを持つという。

アレンザHDは同店の買収によりグループの犬猫愛護の取り組みを強化する。取得価格は非公表。取得予定日は2020年11月19日。

大東建託<1878>、 資産運用型マンションのインヴァランスを子会社化

大東建託は東京23区内で資産運用型マンションを供給するインヴァランス(東京都渋谷区。売上高210億4500万円、営業利益15億6400万円、純資産54億500万円)の発行済株式の97.1%を取得し、連結子会社化すると発表した。区分所有型の資産運用型マンション市場へ進出するのが狙い。

インヴァランスは2004年に創業し、資産運用型マンション開発デベロッパーとして業容を拡大しており、直近の管理戸数は約4800戸、入居率は98%を超えるなど、安定した業績を確保している。大東建託は2019年に策定した新5ヵ年計画でコアビジネスの強化を目指しており、インヴァランスとの協業に高いシナジー(相乗)効果があると判断した。

取得価額は非公表。取得予定日は 2020年11月2日。

トレジャー・ファクトリー<3093>、リユースショップのピックアップジャパンを買収

トレジャー・ファクトリーは、リユースショップや質店などを展開するピックアップジャパン(静岡県磐田市。売上高19億55万円、営業利益207万7000円、純資産5億7942万1000円)を19日に完全子会社化したと発表した。

トレジャー・ファクトリーの主力であるリユース事業の成長を図る。静岡県内で12店舗の直営店を展開し、知名度が高い同業のピックアップジャパンを子会社化することで事業シナジー(相乗効果)を発揮できると判断した。

ピックアップジャパンの持つ強みを伸ばしながら、トレジャー・ファクトリーの経営ノウハウの提供や出張買取などの仕入チャネルでの連携、POS システムや EC といった IT面の支援などを進め、同社の経営基盤の強化を図り、静岡県下での事業拡大を目指す。

取引価額は非公表。

タカラトミー<7867>、現地子会社を通じて米玩具メーカーFat Brain Holdingsを買収

タカラトミーは同社子会社の米TOMY International, Inc.(トミー・インターナショナル。アイオワ州)を通じて、米Fat Brain Holdings, LLC(ファット・ブレイン、ネブラスカ州。連結売上高4100万ドル、連結営業利益△10万ドル、連結純資産1980万ドル)を16日に買収したと発表した。

ファット・ブレインが持つ玩具商品群と同社のD2C(Direct to Consumer=メーカーが自社で企画・生産した商品を自社ECサイトで直接消費者に販売する)プラットフォームを活用すると同時に、玩具市場規模が大きい北米でタカラトミーの存在感を引き上げるのが狙い。

ファット・ブレインは玩具・ゲーム小売業のFat Brain Toys, LLCと玩具製造・卸売業の Fat Brain Toy Co., LLCの2社を傘下に持つ持ち株会社。取得価額は4100万ドル(43億3700万円)。

 

 

 

 

情報提供:株式会社ストライク

[わかりやすい‼ はじめて学ぶM&A  誌上セミナー] 

第5回:M&Aの流れ(実行段階)

~ターゲット会社に接触しよう、相手会社をしっかりと知ろう、価格や詳細条件について合意しよう~

 

〈解説〉

公認会計士・税理士 清水寛司

 

〈目次〉

実行段階

1.ターゲット会社に接触しよう

2.相手会社をしっかりと知ろう

3.価格や詳細条件について合意しよう

 

 

▷第1回:なぜ「会社を買う」のか~買う側の理由、売る側の理由~

▷第2回:どのようにM&Aを行うのか~株式の売買(相対取引、TOB、第三者割当増資)、合併、事業譲渡、会社分割、株式交換・株式移転~

▷第3回:M&A手法の選び方~必要資金、事務手続の煩雑さ、買収リスクを伴うか~

▷第4回:M&Aの流れ(計画段階)~M&Aの流れ(全体像、戦略は明確に、ターゲット会社を見つけよう)~

 

 

M&Aの流れ:実行段階

1. ターゲット会社に接触しよう

実行段階で最初にやることは、リストアップしたターゲット会社に優先順位をつけ、実際に接触することです。M&Aの提案に応じてくれるかは相手の状況次第ですし、最も交渉力が発揮される場面となります。相手会社が経営難であったり、創業者が引退を考えているタイミングだと交渉が成立しやすいですね。なお、M&Aは経営の最重要トピックであり、非常に機密性の高い情報となりますので、接触のタイミングで「秘密保持契約書」を締結します。

 

 

<Step3は、ターゲット会社に接触すること>

 

 

ここで買収や統合の方向である程度合意ができた場合、「基本合意書」を締結します。LOI:Letter of IntentやMOU:Memorandum of Understandingと略されることがある、重要な契約書です。

 

 

多くの場合、以下のような事項を基本合意書に纏めます。

 

●M&A取引の基本的な合意内容

●価格に関する事項

●M&Aの方法や条件

●買収資金の調達方法

●M&Aを行うことによる相乗効果(シナジー効果とよく言われます)

●役員や従業員の雇用条件

●スケジュール

●有効期間、訴訟時の対応等その他の事項

 

基本合意書の段階である程度決めておくことになります。この際、優先交渉権や独占交渉権等を盛り込むこともあります。自社と相手会社の状況に合わせて、交渉した内容を盛り込んでいきます。

 

 

2. 相手会社をしっかりと知ろう

基本合意書を締結したら、詳細について詰めていく段階になります。ここでポイントになるのが、相手会社を「しっかりと」知ることです。計画段階でスクリーニングを行い接触する上で「ある程度」は相手会社のことを把握しています。しかし、実際にM&Aを行うに当たっては「より詳細に」相手会社を把握する必要があるのです。

 

調理方法が分からない野菜や、使い方が分からない家電は買いませんよね。買う側の気持ちになってみると、「ある程度」の情報だけで会社の命運を左右するかもしれないM&Aを行うのはかなり怖い部分があります。

 

 

<Step4は、相手会社について知ること>

 

 

例えば、こんな怖さがあるでしょう。

●思わぬ訴訟を抱えている

●全く知らない簿外負債を抱えている

●相乗効果を見込んで買収したのに、実は自社と全く相乗効果が発揮されない分野だった

●組織風土が自社と大きく異なる

●税務署から指摘される可能性のある処理をしている

●環境問題を抱えている

●残業代を巡って労働者と対立している

●保有する技術に重大な瑕疵がある

●優良顧客がM&A後に離れてしまう可能性がある

●自社と全く合わないシステムを使用しており、統合に際し多大な労力がかかる

 

 

これらを買う前に知ることができたのと、買った後で知ったのとでは大違いです。

 

事前に知っておくことで費用の発生をある程度予見することができますし、社会的信用が失墜する可能性を検討することもできます。それらは全て価格に織り込むことができますし、致命的な事項が見つかった場合はM&Aを破談にすることもできます。

 

一方、買った後に知ったのでは後の祭りです。当初見込んでいた相乗効果を上回る程の費用が発生してしまい、最悪の場合は自社の信用が失墜してしまいます。

 

 

この「怖さ」を減らし、相手会社を「しっかりと」知る行為が「デューデリジェンス」(DD:Due diligence)です。ビジネス、財務、税務、法務、労務、人事、環境、システムの観点から相手会社を詳細に調査していきます。

 

ただ、調査には手間もコストも時間もかかり、対応する相手会社の負担もかかります。そのため必要な部分に絞って行うことになります。

 

 

よく行われるのは「ビジネスDD」「財務税務DD」「法務DD」で、ビジネスDDはコンサルティング会社、財務税務DDは公認会計士・税理士、法務DDは弁護士に依頼するのが一般的です。

 

 

 

3. 価格や詳細条件について合意しよう

デューデリジェンス完了後、その結果を踏まえて最終的な価格やその他詳細条件について詰めていきます。

 

一番重要なことは、M&Aを「進めるか」「断念するか」を決定することです。デューデリジェンスの結果によってはM&Aを断念せざるを得ない程の重要事項が見つかることもあります。改めて事実関係を確認の上、進退の決断をまずは行うべきでしょう。

 

進む決断をした場合、価格・条件を交渉し、表明保証、特別補償条項や価格修正条項を合意の上契約を締結します。様々なリスクを予防し、万が一の事態に備えるためにも、この買収契約書はとても重要な契約書となりますので、弁護士と詳細に詰めていくことになります。

 

 

<Step5で、最終合意し、M&A実行>

 

 

さて、M&Aの価格はどのように決まるのでしょうか。基本は交渉事の世界ですが、人参1袋で150円~200円だろうと考えるように、ある程度の目安が存在します。

 

相手会社の価値を評価し、M&A価格の参考とする情報を出すことをバリュエーション(Valuation)と言います。バリュエーションによって企業価値を評価しておくことで、相手会社の適正な価格を頭に入れた上で交渉事に臨むことができます。また、多くの人に買収価格を説明する上でとても役立つ情報になるため、M&Aにおいてバリュエーションを行うことは欠かせません。自社で簡便的に行う場合もあれば、証券会社や公認会計士・税理士に依頼することもあります。

 

こうして詳細な条件が決定し、M&Aが実行されることになるのです。

 

 

 

 

[実行段階のPoint]

M&A成功のためには、相手会社のことをしっかり知った上で交渉することが必須。

 

 

 

 

 

前回と今回とで、M&Aの第一歩として「M&Aの一連の流れ」を見ていきました。大きく計画・実行段階に分けて、全5ステップがありましたね。

 

漠然としたM&Aに対するイメージが、少しでも具体的になっていただけると嬉しいです。次回から複数回に分けて「相手会社をしっかりと知る」ためのデューデリジェンスについて細かく見ていきましょう。

 

 

 

 

 

[会計事務所の事業承継・M&Aの実務]

第2回:失敗例から学ぶM&A

 

[解説]

辻・本郷税理士法人 辻・本郷ビジネスコンサルティング株式会社

黒仁田健 土橋道章

 

〈目次〉

●従業員の大半が退職したケース

●所長税理士と新所長の引継ぎがうまくいかなかったケース

所長税理士退職時の従業員の退職、顧問先の解約

 

 

 

▷関連記事:M&Aのメリット・デメリット ~顧問先は?従業員は?~

▷関連記事:「会計事務所・税理士事務所のM&Aの特徴や留意点」とは?

 

 

当社では、今まで50以上のM&A を実践してきましたが、そのM&A の大半が事業承継を中心としており、従業員と顧問先の承継が一番の目的となります。M&A について、全て同じケースはなく、それぞれ事情が異なり、引継ぎ方も異なります。その中で、何が成功で、何が失敗かを考えた際に、「従業員と顧問先を承継し、経営を継続できる」ことが最も重要なポイントになります。

 

M&A を失敗した三つのケースを下記でみていきます。失敗したと思っても、その後のフォローで立て直しができますので、参考にしてください。

 

<従業員の大半が退職したケース>

所長税理士と譲渡契約書を締結し、所長税理士から経営統合の話を従業員に説明したところ、半数以上の従業員が統合までに退職をし、やめた従業員が担当していた顧問先からは、担当者が退職なら解約するということになってしまったというケースがありました。

 

経営統合の話を初めて聞いた際には、従業員に経営統合により今までと環境が大きく変わるのではないかという不安が生じることは当然ですので、事前に変わること・変わらないことを丁寧に説明し、納得してもらうことが必要です。

 

説明したにもかかわらず従業員が退職するケースには、大きい税理士法人だとサラリーマンと変わらない働き方となるので嫌だという方や、本人が所長税理士の承継者となるものと考えていたのにM&A をすることに納得がいかないという方などがいます。

 

ただし、話をすることすら拒まれるケースもあり、所長税理士と従業員との関係がコミュニケーション不足のためうまくいっていなかったのかと感じる瞬間があります。そもそも、会計事務所内の人間関係に所長税理士が悩まれていてM&A を実施する場合もあります。

 

 

<所長税理士と新所長の引継ぎがうまくいかなかったケース>

契約は無事終了し、従業員や顧問先にも納得してもらい、経営統合までできたのですが、引継ぎをしている中で、所長税理士と新所長との間での業務の進め方について意見が対立し、経営統合を解除することになってしまったケースがありました。

 

まず、もめた原因は業務の進め方について、所長税理士が何十年もかけて築いてきたやり方を、新所長が一気に変えようとしたからでした。顧問先に毎月出していた報告書を廃止したり、資料収集の方法を変更したのです。そして、新所長の従業員に対することば遣いや上から目線と感じられる発言などからも不信感が募っていきました。

 

M&A を成功させるのに一番大切なことは、所長税理士と新所長の信頼関係に他なりません。信頼関係を築くにはコミュニケーションが重要です。理解しているだろうと思っていても、双方の認識はズレているものです。同じ言葉を使っていても、言葉の定義が異なっている可能性があると思って話した方が良いでしょう。

 

また、M&A といえども、簡単に環境への変化に対応できないので、一定期間は、業務の進め方を変えることは最低限に控え、慣れてきてから徐々に必要なことを変えていけばよいのです。焦りは禁物です。

 

会計ソフトの変更も、いずれは着手するべきかもしれませんが、M&A で変化することが多いときにやるべきではありません。会計ソフトを変更する際に、事務所内で切替はできたとしても、顧問先に導入している会計ソフトを変更するのは容易ではありません。顧問先の会計ソフトを変更できないケースでは、当初のソフトを残しておかなければならず、コストが二重になることもあるので、自計化している先の会計ソフトの状況も把握しておいた方が、結局は効率的です。

 

まずは、今までの業務の進め方を把握し、所長税理士との新所長が二人三脚でM&A を進めて、従業員にも顧問先にも安心してもらうことを最優先とすべきです。承継元である所長税理士は、あまり細かいことを気にしないことが重要です。

 

 

<所長税理士退職時の従業員の退職、顧問先の解約>

引継ぎも順調に終わってホッとしたとしても、一定期間が経ち、所長税理士が当初の契約により退任した後に、従業員が退職したい、顧問先が解約したいという話が出てきたケースがあります。お世話になった所長税理士が退職するのをきっかけに、従業員が退職を申し出たり、顧問契約を解除したいという話があります。

 

経営統合時には、ひとまず解約せず、また統合後の事務所に残った所長税理士も面倒を見てくれるので契約を継続する場合でも、所長税理士が退職してしまうと、相談もできなくなってしまうので、契約を変更してしまう可能性が出てきてしまいます。それまでに新所長は顧問先との関係を築いておく必要があります。

 

逆に比較的うまくいくケースの場合は、下記①~③をクリアしている場合に多いです。

 

①引継ぎ期間を設けているケース
②新所長を明確にし、常駐者として設置しているケース(番頭を新所長する場合も含む)
③顧問先の重要な事項(主に税務調査、相続、事業承継など)を一緒に対応したケース

 

 

 

 

 

▷参考URL:M&A各種契約書等のひな形(書籍『会計事務所の事業承継・M&Aの実務』掲載資料データ)

 

[解説ニュース]

遺産分割による配偶者居住権の設定と相続税の小規模宅地等の特例の適用

 

〈解説〉

税理士法人タクトコンサルティング(山崎 信義/税理士)

 

 

[関連解説]

■配偶者居住権等と相続税の小規模宅地等の特例・物納の取扱い

■配偶者居住権等の評価

 

 

1.配偶者居住権の設定と相続税


被相続人の死亡時にその被相続人の財産であった建物に居住していた配偶者は、遺産分割又は遺言により、その建物(以下「居住建物」)の全部につき無償で居住・賃貸できる権利(「配偶者居住権」)を取得することができます(民法1028条第1項)。

 

配偶者居住権は遺産分割等により設定され、配偶者の具体的相続分を構成することから、相続財産として相続税の課税対象になります。

 

 

2.配偶者居住権等と小規模宅地等の特例の適用


配偶者居住権自体は建物に関する権利であるため、相続税の小規模宅地等の特例(租税特別措置法(措法)69条の4)の適用対象にはなりません。

 

配偶者が配偶者居住権を取得した場合における、居住建物の敷地の利用権(以下「敷地利用権」)は、土地の上に存する権利に該当するので、特定居住用宅地等として小規模宅地等の特例の適用対象となります。また、居住建物の敷地の所有権(以下「敷地所有権」)も、その取得者が居住建物に被相続人と同居等の要件を満たすことにより、特定居住用宅地等として小規模宅地等の特例の適用対象となりますます(措法69条の4第1項、第3項2号)。

 

小規模宅地等の特例の適用を受けることができる宅地等は、被相続人等の事業の用または居住の用に供されていた宅地等のうち一定の面積(限度面積)までの部分とされており、特定居住用宅地等に係る限度面積は330㎡とされています。特定居住用宅地等に係る小規模宅地等の特例の適用を選択しようとする宅地等が、配偶者居住権の目的となっている居住建物の敷地の用に供される宅地等または敷地利用権である場合には、その面積に、それぞれその敷地の用に供される宅地等の価額またはその権利の価額が、これらの価額の合計額のうちに占める割合を乗じて得た面積であるものとみなして、限度面積の要件を判定します(措法施行令40条の2第6項)。

 

3.事例に基づく、遺産分割により配偶者居住権が設定された場合の小規模宅地等の特例の適用の検討

【問】

被相続人甲(令和2年5月死亡)は、生前、所有する土地X(面積240㎡)上に建物Yを建築し、自宅として妻乙と長男Aの3人で同居していました。甲の相続人の乙、A及び次男B(甲の相続開始直前において、甲と別生計かつ自己所有の建物に居住)による遺産分割協議の結果、乙は配偶者居住権とその敷地利用権を、Aは建物Y及び土地Xの所有権の共有持分2分の1を、Bは土地Xの所有権の共有持分2分の1を取得しました。この場合に甲に係る相続税の計算上、小規模宅地等の特例の適用対象となるのはどの部分ですか。なお、甲の相続財産中に土地X以外に宅地等はなく、配偶者居住権が設定されてない場合の土地Xの自用地としての相続税評価額は7,200万円であり、敷地利用権の相続税評価額は2,400万円、敷地所有権の相続税評価額は4,800万円です。

 

【回答】

2の下線部の取扱いを踏まえ、さらに国税庁が令和2年7月に公表した「相続税及び贈与税等に関する質疑応答事例(民法(相続法)改正関係)について(情報)」の(事例1-1)で示した取扱いに基づき、甲に係る相続税の小規模宅地等の特例の適用について検討すると、次の通りになります。

 

(1)相続人が取得した宅地等の面積

①乙が取得した敷地利用権の面積:240㎡(土地Xの面積)×2,400万円(敷地利用権の相続税評価額)÷7,200万円(土地Xの自用地としての相続税評価額)=80㎡

 

②AとBが取得した敷地所有権の面積:240㎡×4,800万円(敷地所有権の相続税評価額)÷7,200万円(土地Xの相続税評価額)=160㎡

 

(2)相続人ごとの特例対象宅地等の区分

①乙が取得した敷地利用権(特定居住用宅地等)相続税評価額:2,400万円、面積:80㎡((1)①)

 

②Aが取得した敷地所有権(特定居住用宅地等)相続税評価額:4,800万円(敷地所有権全体の評価額)×1/2(Aの持分)=2,400万円、
面積:160㎡((1)②の面積)×1/2(Aの持分)=80㎡

 

③Bが取得した敷地所有権(注)の相続税評価額:4,800万円×1/2(Bの持分)=2,400万円

 

(注)Bは甲の相続開始直前に甲と別生計かつ自己所有の建物に居住しており、Bが取得した敷地所有権は特定居住用宅地等の要件を満たさないことから、特例の適用を受けることができません。

 

(3)限度面積要件の判定等

80㎡((2)①)+80㎡((2)②)=160㎡≦330㎡

 

よって乙は敷地利用権80㎡、Aは敷地所有権80㎡につき、他の要件を満たす限り小規模宅地等の特例の適用を受けることができます。

 

 

税理士法人タクトコンサルティング 「TACTニュース」(2020/10/26)より転載

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第2回:非公開の同族会社で経営に参加しない者が保有する株式を現金化できますか?

 

 

〈解説〉

株式会社ストライク

 


M&A(合併・買収)仲介大手のストライク(東証一部上場)が、中小企業の経営者の方々の事業承継やM&Aの疑問や不安にお答えします。

 

 

▷関連記事:取引先に知られないように会社を譲渡することはできますか?

▷関連記事:事業引継ぎ支援センターとは?どのような相談ができる?

▷関連記事:売るために準備しておく、財務上、労務上、法務上のポイントとは?

 

 

Q.非公開の同族会社で経営に参加しない者が保有する株式を現金化できますか

 

父が20 年前に創業した樹脂加工関連の製造業を営む非公開企業の株主です。昨年父が他界し、経営は長男が継ぐことになりました。現在の株主構成は、長男30%、私(次男)20%、妹10%、母40%で、長男以外は経営にいっさい関わっておりません。

 

私は今年で65歳を迎えたこともあり、将来的な相続問題も考えた上で長男に株式の買い取りを打診しましたが、1株あたりの純資産額の10分の1という、信じられないような低い価格を提示されました。もっと高い金額で第三者に売却することは可能でしょうか?

 

  (兵庫県 K・S さん)

 

 

 

A.第三者に高い価格で売却できる可能性はありますが、いくつか条件をそろえる必要があります。

 

非公開企業の経営に参画しない少数株主が株の売却を成立させるためには、大きく2つのハードルがあります。一つは、株式譲渡制限です。もう一つは、マイノリティの株式(相談者様のケースだと20%)でも譲り受けたいという意向がある第三者を見つけることです。

 

前者は、代表取締役や取締役会の承認が必要とされているケースが多いため、事前に長男との交渉が必要になります。後者は事業会社が株式の買い取りを検討する場合、経営権を保持できない比率では、ガバナンスが弱くなるため、十分なシナジー効果を発揮できないと判断されてしまうことが多いです。そのため、相談者様は、他の親族などと協力し、過半数の株式(50%超)を確保した上でマジョリティの地位を確保することが必要です。

 

株式を譲渡する際には長男の同意が必要となる可能性が高く、同族会社の場合は、他の親族からも第三者への株式譲渡を慎重にしたいとの声が出ることが考えられます。親族だけの話し合いは、非常にまとまりづらく、感情的にもなりやすいため、相続・税務・M&A等の総合的な知識やノウハウを持つ専門家に一度ご相談されることをお勧めします。専門家を通じて、各当事者の意向を確認しつつ、親族承継とM&Aの違いやリスク、メリット・デメリットなどを洗い出した上で、しっかりと話し合っていただくことが重要だと思います。

 

 

 

 

 

 

 

[経営企画部門、経理部門のためのPPA誌上セミナー]

【第10回】PPAの特殊論点とは?ー節税効果と人的資産ー

 

 

〈解説〉

株式会社Stand by C(松本 久幸/公認会計士・税理士)

 

 

▷第7回:WACC、IRR、WARAと各資産の割引率の設定とは?

▷第8回:PPAにおいて認識される無形資産の経済的対応年数とは?

▷第9回:PPAで使用する事業計画とは?

 

 

 

1.PPAにかかる無形資産評価の特殊論点

第6回にてロイヤリティ免除法と超過収益法を解説した際,計算例を掲記しましたが,その中に「償却による節税効果の計算」が含まれていました(図表1の①参照)。

 

これは,インカム・アプローチ(ロイヤリティ免除法や超過収益法)を用いる場合に採用されている考え方で,PPA実務における特徴的な論点です。

 

また,超過収益法の計算例においては人的資産という概念(図表1の②参照)が出てきましたが,こちらは更に,超過収益法を用いるときにのみ使われる考え方となります。

 

今回は,節税効果と人的資産という,PPAに関する特殊論点について解説します。

 

 

【図表1】超過収益法の計算例(償却による節税効果の計算と人的資産)

 

 

2.無形資産の償却による節税効果について

(1)節税効果を考慮する意味

PPAにかかる無形資産評価においてインカム・アプローチを採用する場合,無形資産の償却による節税効果を無形資産の価値へ考慮することが求められます。

 

これは,図表2をご覧頂ければ分かる通り,株式を取得して連結子会社とした場合と,無形資産そのものを購入した場合において,両スキームとも無形資産を取得するということにおいて経済的効果は同様ですが,償却による節税効果が得られるかどうかについてはスキームによって異なります。

 

その場合,実態を捉えて,一方のスキームについては償却による節税効果を考慮し,他方のスキームについては考慮しない,とすると,買収スキームによって無形資産の評価結果が異なることとなります。

 

無形資産評価の実務においては,市場参加者の観点からの公正価値を測定することが求められるため,買収スキームによって無形資産の価値は変わらない,という考え方のもと,償却による節税効果については無形資産の価値へ考慮することが求められます。(ただし,節税効果のあるスキームの場合のみ節税効果が評価に考慮されるべき,という考え方も否定されるべきものではない,という考え方もあります(日本公認会計士協会 経営研究調査会研究報告第57号)。)

 

 

【図表2】スキームによって節税効果の有無が変わる

 

 

それでは,節税効果を無形資産評価に考慮するとは,どのようなものでしょうか。

 

その考え方は,図表3に記載しています。償却による節税効果は無形資産評価額から計算されるものである一方,無形資産評価額は償却による節税効果が確定しなければ求められません。そのため,図表3に記載の通り,償却による節税効果を無形資産の価値へ上乗せするという計算を永久に繰り返していきます(循環計算)。その計算を数字に表したものが図表1の①の計算となります。

 

なお,この計算は考え方の理解が難しいものですから,実務上は概念を理解しておけば十分です。

 

 

【図表3】節税効果の計算概念

 

 

(2)節税効果計算のポイント

節税効果計算の際の償却期間について

 

買収対象会社が日本国内の会社の場合,税務上の償却は,法人税法上の耐用年数によることから,節税効果の計算においても税務上の耐用年数を用いることとなります。

 

ただし,商標権や特許権のように,税務上耐用年数が定められている資産については当該耐用年数を用いればよいのですが,顧客資産や技術資産のような税務上の耐用年数が定められていないものについては,それら無形資産は税務上の資産調整勘定に含められて償却されることから,資産調整勘定の耐用年数を用いることとなります。

 

日本におけるPPAにて認識される無形資産と節税効果を計算する際に用いる耐用年数の関係については,図表4の通りです。

 

一方,海外の会社を買収した場合はどうなるのでしょうか?買手が日本国内の会社の場合,買手が得ると想定される償却による節税効果を考慮すると上述と同様となります。

 

また,買収対象会社が得ると想定される節税効果を考慮すると,買収対象会社が税金を納める国における税務上の耐用年数となります。

 

結論としては,市場参加者の観点から,一番経済的合理性が高いと考えられる国における耐用年数を選択することになりますが,実務上は,買収対象会社の本社のある国の税務上の耐用年数を用いることが多いと考えられます。

 

節税効果計算の際の税率について

税率は,上記耐用年数の論点と全く同じでリンクします。税率は国によって差異があり,無形資産の価値に重要な影響を及ぼすケースも少なくありません。一方で,海外の税制や税率を精緻に把握することは難しい場合も多く,実務上のハードル・負担となっていると思われます。

 

以上のように,償却による節税効果については,計算に用いる耐用年数と税率さえ決定すれば難しくないものと考えられますが,上述のように,海外の会社を買収した場合においては,海外の税制や税率,耐用年数を把握することが難しいケースもあって,実務上留意が必要と考えられます。

 

 

【図表4】 日本における無形資産と税務上の耐用年数の関係

 

 

*3で説明した人的資産については,超過収益法の計算上の概念ですが,実務上,人的資産の計算においても償却による節税効果を考慮する必要があるものと考えられます。

 

 

 

3.人的資産について

人的資産は,インカム・アプローチにおける超過収益法を採用する場合にのみ出て来る概念です。超過収益法においては,「対象無形資産を活用している事業より生み出される利益から,事業活動において使用する資産が通常獲得すると想定される利益を差し引く(キャピタルチャージ)計算」が必要となりますが,その際の事業活動において使用する資産の一つとして人的資産が必要となります。

 

その概念はコスト・アプローチ的なものであり,買収時点における対象会社に所属する人員を,再度採用して教育研修した場合にかかるコストから求めることが多いです。

 

図表5は実務上使われている簡便的な計算例ですが,人員の採用費と,採用後の教育研修コストを大まかに見積もって人的資産を概算して,これをキャピタルチャージの計算に使用します。

 

なお,当該人的資産は,キャピタルチャージに用いるためだけに算出されるものであり,無形資産として認識されるものではありません。当該人的資産は,PPA上は残余としてののれん(狭義)の中に含まれることとなります。

 

 

【図表5】人的資産の計算例

 

 

4.最後に

今回は,PPAにかかる無形資産評価の特殊論点である,償却による節税効果と人的資産についての解説を行いました。これらの考え方は机上の理論であり,ビジネスの実務においてはなじみが薄いと感じる方も多いでしょう。PPAにかかる無形資産評価はこういった考え方をするものである,と捉えて,概念を理解して頂ければよいのではないでしょうか。

 

次回は,PPAプロセスの具体例を,買収からPPAまで数値を入れて解説します。

 

 

 

—本連載(全12回)—

第1回 PPA(Purchase Price Allocation)の基本的な考え方とは?

第2回 PPAのプロセスと関係者の役割とは?

第3回 PPAにおける無形資産として何を認識すべきか?
第4回 PPAにおける無形資産の認識プロセスとは?
第5回 PPAにおける無形資産の測定プロセスとは?
第6回 PPAにおける無形資産の評価手法とは?-超過収益法、ロイヤルティ免除法ー
第7回 WACC、IRR、WARAと各資産の割引率の設定とは?
第8回 PPAにおいて認識される無形資産の経済的対応年数とは?
第9回 PPAで使用する事業計画とは?
第10回 PPAの特殊論点とは?ー節税効果と人的資産ー
第11回 PPAプロセスの具体例とは?-設例を交えて解説ー
第12回 PPAを実施しても無形資産が計上されないケースとは?