[解説ニュース]

底地の相続税法上の評価 VS 不動産鑑定士による評価

 

〈解説〉

税理士法人タクトコンサルティング(亀山 孝之/税理士)

 

 

1 はじめに


相続財産の中に土地(宅地)があり、それが貸地、すなわち、借地権(普通借地権とします。)がある土地である場合、その土地のいわゆる底地としての相続税法上の評価額は、「通常の自用地(=借地権がない土地)としての価額からその借地権の価額を控除した金額」(借地権価額控除方式)であると規定されています(財産評価基本通達25(1))。上記「借地権の価額」については同27が「借地権の価額は、自用地としての価額に、借地権の売買実例価額、精通者意見価格などをもとに地域ごとに国税局長の定める割合を乗じて計算した金額によって評価する」と定めていて、地価の高い地域ほどその割合も高くなり、東京の中心的商業地では80%~90%(よって底地は20%~10%)、住宅地では60%~70%(同40%~30%)の割合の場合が多いようです。なお、借地権の割合は10%刻みで30%~90%(国税庁のホームページで公表)です。

 

2 底地の相続税法上の評価(借地権価額控除方式)VS不動産鑑定士による評価


借地権価額控除方式により算定される相続税法上の底地の評価額に対し、納税者が主張する不動産鑑定士による底地の評価額はケースバイケースですが、国土交通省が定める不動産鑑定評価基準に従いながらも、低廉な地代を基準とした収益還元価格を軸に主張されることが多く、借地権価額控除方式による評価額のせいぜい半分程度になる場合が少なくないようです。後者の評価額の方が低いので、それを相続税の評価額として採用すれば、相続税額は当然低くなります。

 

しかし、一般的に、後者の評価額による相続税の計算はほぼ認められません。評価通達に従う税務署が認めないのはもちろん、たとえ裁判で争っても、特別な事情がない限り認められない場合がほとんどです。

 

3 底地の相続税法上の評価で不動産鑑定士による評価が認められない理由


まず、納税者側の不動産鑑定士による底地の評価が、その顧客である納税者の希望に沿って評価の引き下げを追求するあまり(?)、その底地に係る鑑定評価上の要素につき、不合理なことを無理に採用して、そこを課税当局から突かれ、主張する鑑定価額の合理性に疑問を生じさせてしまう傾向があります。そのような恣意的な評価をしていないとしても、根本的には次の理由(不動産鑑定士による評価の当否が争われた平成29年3月3日東京地裁判決などの判示を整理したもの) から、収益還元法を軸とする底地の評価自体が相続税法の評価では認められ難い状況にあります。

 

すなわち、底地の市場性は、借地権のそれとは全く異なる状況にあり、底地のみが売買されることがあるとしても、それは、借地契約の当事者間=借地人と地主間での売買が通常です。第三者への底地のみの売買については市場が相当限定され、その土地の近隣において純粋な第三者による取引事例は把握できないことが通常です。そして、以上の状況から、底地については、第三者と売買を行うような一般的な市場、そこにおける相場を想定することは困難であり、売買があるとすれば将来的に借地契約の当事者間において行われることが通常であるという特性を持つ財産である、という基本的な認識が覆し難いものとしてあります。

 

このような特性をもつ財産としての底地の客観的交換価値(これが時価の一般的意義で、相続税法上の時価の意味もこれです。)の把握では、①底地の状態が当分継続することを前提に、その状態で地代収入が生じることにより得られる経済的利益と②将来、底地の取引形態として通常である借地契約の当事者間での売買(借地権者による底地の買取等)が行われるであろうことを前提に、その売買により制限のない完全所有権に復帰することになるという経済的利益の二つ(の現在価値)を考慮すべき、ということになります。この考え方は、実は、鑑定評価基準における底地の価格の考え方とも基本的に一致しています。

 

以上により、将来的にも完全所有権への復帰がおよそ考え難いような特別な事情がある場合はともかく、借地契約終了後に完全所有権に復帰することが予定される通常の借地契約に係る底地の時価は、同契約存続中の地代等の純収益に基づく収益還元法による価値のみで捉えるべきではなく、同契約の終了後の借地権の負担のない所有権に対応する価値をも含むものとして捉えるべきということになります。上記の地代等による収益還元法による価値のみでは、底地の客観的交換価値=時価の全てを適切に表すとはいえない一方、その時点の自用地としての価額から借地権の価額を控除した価額とする方法は、その時価に接近する方法として相応の合理性があるといえます。

 

 

 

 

 

 

 

税理士法人タクトコンサルティング「TACTニュース」(2019/05/13)より転載

[初級者のための入門講座]

個人版事業承継税制 超入門ガイド(その1)~簡単な仕組みと適用を受けるまで~

 

〈解説〉

税理士  村本政彦(税理士事務所クオリス)

 

 

 

「個人版事業承継税制」という制度ができました。

平成31年度税制改正の目玉の一つです。

個人事業主の方の中には、事業承継を考えられていて、どんな制度なのか?使った方がいいのか?興味関心がある方がいるのではないでしょうか。

そんな方のために、この制度をざっくり、やさしく、わかりやすく解説します。

どんな制度なんですか?

個人事業主が事業承継、例えば、息子さんや娘さんに継がせたいとき、事業で使っている土地や建物、機械などを、どこかの時点で渡さないといけません。

 

普通は、継がせるときにあげるか、自分が死んだときに相続させるか、ですよね。そのときに問題になるのが、贈与税や相続税です。

 

事業で使っている土地や建物や機械などが高額だと、多額の税金がかかってくることがあります。その負担が重いと事業に支障が出てくることもあるかもしれません。

 

この制度を使うと、後継者が事業を続けている限り、必要な手続きをしている限り、その納税が猶予されます。

最終的に、後継者が亡くなったときや、この制度を使って次の後継者に継がせたときに、免除になります。

 

 

 

 

相続税がかからないってこと?

まずは納税が猶予されます。事業をちゃんと続けられたら、最終的に後継者が亡くなったときや、この制度を使って次の後継者に継がせたときに、免除になります。

 

誰でも受けられるの?

青色申告をしている個人事業主(事業所得者)であれば、対象になります。

後継者の方は、すでにその事業に従事している必要があります(例外あり)。

それに加えて、贈与の場合には、3年以上従事していて、20歳以上であることも必要です。

 

どんな業種でもOK?

不動産賃貸業など一部の業種は受けられません。

 

 

事業に使っている資産なら、なんでもOK?

なんでもではないです。受けられる資産は決められています。

 

・土地(400㎡まで)

・建物(800㎡まで)

・構築物、機械装置、工具、器具備品、船舶など

・営業車(青ナンバーや黒ナンバー)、貨物運送用の一定の自動車

・乳牛、果樹、特許権など

 

適用までの手続きは?

まずは「個人事業承継計画」という計画書を作って、都道府県に提出します。

(令和6年3月31日まで)

 

実際に、贈与を受けたり、相続で受けたりしたときに、申告期限までの間に、都道府県にこの制度の適用を受けたい旨の認定申請書を提出します。

 

別途、税務署に、開業届や青色申告の承認申請も、それぞれの期限までにしておく必要があります。

 

都道府県から認定を受けたら、申告期限までに、その認定書などを申告書と一緒に税務署に提出します。別途、税務署へ担保の提供も必要です。

 

 

 

 

この制度は注意点が多い制度なので、必ず専門家の指導やサポートを受けてください。

[初級者のための入門解説]

社長の手取り額は?-M&Aにかかる費用-  ~ゼロから学ぶ「M&A超入門」②~

 

M&A実務の基本ポイントを、植木康彦先生(Ginza会計事務所/公認会計士・税理士)、本山純先生(Ginza会計事務所/公認会計士)にわかりやすく解説していただきます。今回は、譲渡企業の経営者にとって最大の関心事の一つである「社長の手取り額」を取り上げます。「M&Aで発生する費用は?」「M&Aの税金負担は?」など、皆さまの疑問にお答えます。

 

〈解説〉

公認会計士・税理士  植木康彦(Ginza会計事務所)

公認会計士  本山純(Ginza会計事務所)

 

 

 

M&Aで会社を売却した場合、社長(株主)の手元に残るキャッシュは売却代金からM&Aにかかる費用を差し引いた額となります。

 

売り手側で発生する代表的なM&Aにかかる費用は主に以下の2つがあげられます。

 

【代表的なM&A費用】

①専門家(仲介会社)に払う手数料

②税金

 

①専門家(仲介会社)に払う手数料
~M&A仲介会社は何をしてくれるの?~

M&Aで発生するコストの代表的なものにM&A仲介会社に支払う手数料があります。

M&A仲介会社は、M&A全体の取りまとめの役割を果たします。

 

具体的には、

・M&A全体のスケジュールと売却方針の検討

・売却先の選定、交渉

・契約のサポート 等々

 

M&Aにあたり何から着手すべきか、どのように進めるべきか、M&Aがスムーズに成立するよう、スタートからクローズまでの各段階でのサポート及びアドバイスを提供してくれます。

 

M&A全体のスケジュールや売却方針があやふやなままでは、いくら魅力的な企業であってもスムーズに商談が進まず、労力ばかりがかかってしまうことも。

 

そんな状況では、本業にも悪影響を及ぼし兼ねず、結果的に事業価値を低下させてしまう恐れもあります。

 

売却先についても、売りたい企業とも買いたい企業ともネットワークを持つ仲介会社を使うことで、自分のネットワークだけでは繋がることのできない相手先への売却アプローチも可能となります。

 

M&Aでは、各段階で留意すべきポイントやタスクが多岐にわたるため、不慣れが原因で生じるトラブルを回避し、スムーズに進めるためにも、経験豊富な仲介会社が全体を取りまとめることがM&Aを成功させるカギとなります。

 

~M&A仲介会社の費用はどれくらい?~

このように、M&Aを成功させるためにM&A仲介会社の存在はとても大きなものとなりますが、その分、手厚いサポートを受ける場合には費用も多額となってしまうことが一般的です。

 

仲介会社の費用相場は、取引金額や提供を受けるサービスの範囲で大きく変動することから、一概にいくらと言えるものではありません。

 

そのため、どのような仲介会社を利用するかを検討する上で、仲介会社の一般的な費目と料金形態を把握しましょう。

着手金と中間金は、M&Aが成立しなかった場合でも返金されない費用となります。

 

 

「着手金+成功報酬」「中間金+成功報酬」「成功報酬のみ」等、仲介会社によって料金形態及び提供サービスの範囲は様々です。

 

手厚いサービスを受ける場合には、仲介会社でも公認会計士等の専門家に対する報酬が発生する為、着手金や中間金が必要となるケースもありますし、これらのサービスをオプションとして追加できる仲介会社もあります。

 

また、どの仲介会社でも生じることが一般的な成功報酬の割合は、売買代金に応じて変動するため一概には言えませんが、多くの仲介会社が採用するレーマン方式では5億円以下の場合、売買金額の5%となります。

 

 

 

仲介会社によって得意とする業種や対応している地域、提供業務のタイプ(仲介型orアドバイザリー型)が異なりますので、受けたいサービスの費用対効果を考慮し、自社に合ったM&A仲介会社を選ぶことが重要です。

 

②税金
~どんな税金がかかる?~

無事M&Aが成立し、売却後に生じる支出が、売却により生じた利益に対して課される税金です。

それでは、M&Aで生じる税金にはどのようなものがあるのでしょうか。

ここでは、M&Aでよく使用される株式譲渡について検討していきたいと思います。

 

(注:M&Aのスキームには、株式譲渡・事業譲渡・会社分割・株式交換・合併等があり、採用するスキームによって課される税金が異なります。)

 

株式譲渡により会社を売却した場合には、売却代金から株式の取得費譲渡費用(仲介会社への手数料等)を控除した譲渡益(株式譲渡所得)に対して20%(所得税15%、住民税10%)の税金がかかります。(復興税は省略)

 

これは売却した翌年の確定申告で申告・納付することとなります。

 

 

 

~手取り額を最大限にする方法は?~

上記の通り、株式の譲渡益に対しては20%の税金が発生しますが、退職金を利用することで、税負担を軽減し、手取り額を増やすことができる可能性があります。

 

退職金は、これまでの勤労に対するものであり、退職後の生活を支える資金となるため、退職所得控除や課税対象額が1/2になる等、税務上非常に優遇されています。

 

そのため、譲渡代金の一部を退職金で受け取ることで、税負担の軽減分だけ手取り額を増やせる可能性があるのです。

 

それでは、具体的な設例を使って、確認しましょう。

 

 

 

①全額株式の譲渡代金として受け取った場合(税負担額:20百万円)

 

株式(非上場株式)を譲渡した場合、譲渡益部分が課税対象となり、税額は以下の算式で算定されます。なお、本来は譲渡代金から取得費等を控除して譲渡益を算定しますが、計算を簡略化するため得費用等は省略し、譲渡代金=譲渡益(譲渡所得)と仮定しています。

 

 

 

 

②譲渡代金の一部(60百万円)を退職金として受け取り、40百万円を株式の譲渡代金として受け取った場合(税負担額:16.45百万円)

 

 

 

 

ⅰ.譲渡所得部分

株式の譲渡益に対する税金は①の算式の譲渡所得が40百万円となり、以下の通り算定されます。

 

 

ⅱ.退職所得部分

退職金は、税務上優遇された取扱いがあり、税額は以下の算式で算定されます。

 

(注①)

退職所得控除は勤続年数に応じて20年以下は年間0.4百万円、20年超部分は年間0.7百万円で算定されます。

(0.4百万円×20年+0.7百万円×(30年-20年))=15百万円

(注②)

退職所得の所得税率は超過累進税率のため、退職所得金額に応じて変動します。本設例では以下の区分の税率が適用されます。なお、設例に記載の税率は下記税率40%に住民税10%を足した50%として算定しています。

 

 

 

上記の設例では、譲渡代金100百万円に対して約3.5百万円の税負担の軽減が図られたこと確認できます。この分、売却による手取り額が増加することになります。

 

また、退職金は会社の費用(損金)にもなることから、法人実行税率を30%と仮定すると、18百万円(60百万円×30%)会社に節税効果が生まれ、譲渡対価の交渉材料の一つにもなります。(「不当に高額な部分の金額」となる退職金は損金とならないため、退職金の金額設定には留意が必要です。)

 

 

 

 

 

[中小企業経営者のためのワンポイント解説]

「承継対策はヒト、モノ、カネの視点で」~コンサルティングという観点からの『事業承継』とは?③~

 

コンサルティングという観点からみた「事業承継」と題した3回目として、事業承継対策における具体的な検討事項について、田中新也先生(公認会計士/税理士法人髙野総合会計事務所)に解説していただきます。なお、次回以降は事業承継においてコンサルティングが活躍する場面を、会社のタイプ別に(健全性の高低、後継者の有無の観点からの分類)ご紹介いたします。

 

〈解説〉

税理士法人髙野総合会計事務所 田中新也/公認会計士

 


【承継対策はヒト、モノ、カネの視点で総合的な検討が必要!】
事業承継対策という言葉はよく耳にするものの、具体的に何を対策・検討すればいいのかわからないという方も多いのではないでしょうか。事業承継対策には、大きく分けて人的対策(ヒト)と物的対策(モノ・カネ)と呼ばれる2本の柱があります。どちらかに偏った対策では満足いく事業承継が達成されず、事業承継成功のためには2本の柱のバランスが非常に重要となってきます。
【人的対策(ヒト)とは?】
人的対策で第一に重要となるのが、後継者の選出・育成です。オーナー型企業の場合、現経営者のカリスマ性に依存している場合が多々あります。偉大な経営者の威厳とオーラに、従業員ばかりか社外の関係者(取引先、金融機関等)も圧倒され、支持されている場合には、後継者への経営権の承継時期の見極めも重要となるでしょう。また、事業承継においては、親族間でのトラブル(財産承継をめぐっての「争族」)もつきものです。親族や、関係者が納得できる承継を実現することも、人的対策における欠かせないポイントとなります。
【物的対策(モノ・カネ)とは?】
物的対策における代表的な「モノ」として、自社株が挙げられます。自社株を後継者に承継するにあたり、相続税・贈与税の問題は避けられず、自社株の評価額の引き下げや、納税資金の確保等が事業承継対策のメインテーマと言えます。しかし、自社株の評価額引き下げを目的に対策を講じた結果、会社の財務状況や収益力が低下してしまっては、本末転倒です。税務面の対策ももちろん重要ですが、中長期的な観点から言えば、会社の事業に磨きをかけ、健全な財務体質で後継者へ引き継ぐことも重要なポイントと言えます。

 

 

 

税理士法人髙野総合会計事務所「TSKニュース&トピックス」(2018年12月21日)より再編集のうえ掲載

[新事業承継税制を理解する!]

「株式等の一括贈与要件の注意点」~新事業承継税制 ポイント解説④~

 

北澤淳先生(税理士法人山田&パートナーズ/税理士)に、新事業承継税制の実務上の留意点を、Q&A形式にてわかりやすく解説していただきます。今回のテーマは「株式等の一括贈与要件の注意点」です。

 

〈解説〉

 北澤淳(税理士法人山田&パートナーズ/税理士)

 

 

 

Q.株式等の一括贈与要件の注意点について教えてください。

 

A. 事業承継税制(特例)の適用を受ける贈与を行う場合、後継者の数に応じ、それぞれに定められた数以上の株式等を一括して贈与する必要があります。端数処理の誤り等により、要件を充足していないケースが見受けられましたので贈与する株式等の数には十分注意する必要があります。

 

 

1. 後継者が一人の場合

(1) 贈与者と後継者の保有議決権数が合わせてその会社の総議決権数の2/3以上である場合
⇒贈与後の後継者の議決権数が2/3以上となるように贈与

(2) 贈与者と後継者の保有議決権数が合わせてその会社の総議決権数の2/3未満である場合
⇒贈与者が保有する議決権株式等のすべてを贈与

 

【注意点】
発行済み株式総数の3分の2に端数がある場合には、その端数は切り上げて計算することに注意が必要です。
(例)
発行済株式総数が100株の場合、その3分の2は66株ではなく67株です。

 

 

2. 後継者が二人又は三人の場合

贈与後に、それぞれの後継者の議決権数が10%以上であり、かつ、贈与者よりも多くの議決権数を有するように贈与

 

【注意点】
贈与者よりも後継者が多くの議決権数を有するように贈与する必要があるため、贈与者と後継者の議決権数が同数の場合には要件を充足しません。

 

一方、同族内筆頭要件の判定にあたっては、後継者と議決権数が同数の者がいてもそれぞれ筆頭として取り扱うこととされており、一括贈与要件と取り扱いが異なりますので注意が必要です。

 

<一括贈与要件>
後継者の議決権数 > 贈与者の議決権数
<同族内筆頭要件>
後継者の議決権数 ≧ 贈与者の議決権数

[解説ニュース]

不動産の財産分与があった場合の不動産取得税

 

〈解説〉

税理士法人タクトコンサルティング(宮田房枝/税理士)

 

 

[関連解説]

■離婚に伴い自宅を財産分与する場合の税務上の取扱い等-1/2 ~財産分与をする側~

■特別縁故者に対する相続財産の分与と相続税

 

1.財産分与とは


財産分与とは、相手方の請求に基づき、離婚した者の一方から相手方に財産を渡すことをいいます(民法768)。

 

2.不動産の財産分与があった場合の不動産取得税


離婚に伴う財産分与が以下の2要件を満たす場合には、「形式的に財産権の移転が行われることはあっても、当然の所有権の帰属を確認する趣旨にすぎず、これによって実質的に財産権の移転が生じるものではない」ため不動産取得税は課税されません。

 

しかし、これ以外の財産分与の場合には、「これによって実質的にその不動産所有権の移転が生じる」として不動産取得税が課税されます(東京地裁昭和45年9月22日判決、大阪高裁昭和51年1月27日判決、東京都「不動産取得税課税事務提要(平成30年3月30日改正)」)。

 

◆要件1  その財産分与が、実質的に夫婦の共有財産の分割と認められるものであること(下記3. (3)参照)

◆要件2  その財産分与が、婚姻中の財産関係を清算する趣旨のものであること(下記4. (1)参照)

3.夫婦の財産関係の分類


夫婦の財産関係は、次の3つに分類されます。
このうち、上記2.の要件1を満たすのは 下記(3)の実質的共有財産を財産分与の対象とした場合です。したがって、下記(1)のように夫婦の一方が相続や贈与によって取得した不動産や、婚姻前から所有していた不動産等を財産分与の対象とした場合、又は下記(2)のように夫婦の共有名義で登記されている不動産を財産分与の対象とした場合には、特段の事情がない限り、不動産取得税が課税されます(東京都「不動産取得税課税事務提要(平成30年3月30日改正)」第2章第3節1(3)エ、東京都「不動産取得税質疑応答集(平成28年4月1日改正)」6-⑩)。

 

 

4.財産分与の分類


財産分与は、次の3つに分類されます。
このうち、上記2.の要件2を満たすのは財産分与が下記(1)の清算的財産分与と認められる場合です。したがって、財産分与が慰謝料や離婚後の扶養料に相当する不動産の取得と認められる場合(下記(2)や(3)の場合)は、不動産取得税が課税されます。

 

5.具体例


(1) 婚姻期間中に夫婦で取得した不動産(登記名義:夫100%)を、財産分与により妻が取得した。
→ 上記4.(1)の清算的財産分与に該当すれば、不動産取得税は課税されない。

 

(2) 婚姻期間中に夫婦で取得した不動産(登記名義:夫1/2、妻1/2)の夫の持分1/2を、財産分与により妻が取得した。
→ 夫婦の共有持分割合が登記上明示されており、民法の規定により共有と推定される「夫婦のいずれに属するか明らかでない財産」(上記3.※印参照)ではないため、不動産取得税が課税される(ただし、納税者からの申し立て等により登記上の持分が実態と異なると推定される場合は、別途認定が行われる可能性がある)。

 

(3) 婚姻期間中に夫婦及び妻の父で取得した不動産(登記名義:夫6/10、妻の父4/10)の夫の持分6/10を、財産分与により妻が取得した。
→ 上記4.(1)の清算的財産分与に該当すれば、不動産取得税は課税されない。

6.最後に


財産分与が上記2.に記載する2要件を満たさない場合には、その財産分与により取得した不動産については、原則として、「固定資産税評価額(宅地は、固定資産税評価額×1/2)×3%」の不動産取得税が課税されます(地法73の15、73の21①、地法附11の2①、11の5①)。

 

ただし、財産分与の対象となった不動産に、その不動産を取得した者が居住する場合には、一定要件を満たせば、中古住宅を取得した場合の不動産取得税の軽減措置の適用を受けることができます。

 

離婚に伴い財産分与を受ける場合には、将来の税負担も考慮してどのような財産で分与を受けるか等、事前に検討し交渉する必要があると思われます。税負担の詳細については、税理士にご相談ください。

 

 

 

 

 

 

 

税理士法人タクトコンサルティング 「TACTニュース」(2019/04/22)より転載

[中小企業経営者のためのワンポイント解説]

「承継対策は入り口が重要」~コンサルティングという観点からの『事業承継』とは?②~

 

コンサルティングという観点からみた「事業承継」と題した2回目として、今回は事業承継への取り組みの入り口について、髙木融先生(公認会計士/税理士法人髙野総合会計事務所)にご紹介いただきます。

 

〈解説〉

税理士法人髙野総合会計事務所 髙木融/公認会計士


【承継対策は入り口が重要!】

事業承継対策というと、ともすれば納税対策やスキームの検討といったテクニカルな議論になりやすい側面がありますが、本来の実務的な事業承継対策というのはかなり広い概念を含んでいます。文字どおり、適切に「事業を承継」することが最終目的であり、その課題の一つが納税対策という位置づけになります。そして、この事業を承継するというミッションに取り組む初期段階において、事業承継にあたって整理・クリアすべき課題を明確にすることが極めて重要です。

 

承継対策の良くない例としては、納税負担の最小化など定量的な部分を重視してスキームを組み立てたものの、実行するにあたって関係者の合意が得られなかったり、中長期的な事業の継続に不安が残るような承継スキームになってしまうことがあります。あくまで、「事業の承継」という大きな目的を念頭に置きながら、広い視野と幅広い選択肢を持つことが入り口段階としては重要になってきます。

 

このような大きな視点による初期の具体的な取り組みが「タイプの識別」です。前回ご紹介したとおり、事業承継に直面した会社には様々なタイプ(A~D)が存在しており、ご自身の会社がどのタイプに当てはまるのかという識別を行う必要があります。「会社の健全性が高く後継者もいる会社(タイプA)」「健全性は高いものの後継者がいない会社(タイプB)」「後継者はいるものの健全性が低い会社(タイプC)」「健全性も低く後継者もいない会社(タイプD)」といった識別です。

 

このようなタイプ識別を適切に行うためには、承継しようとする事業が現在置かれている状況を正確に把握・評価する必要があります。そのためには事前の財務的な分析も必要ですし、現在の経営の担い手の特徴、従業員の特徴、取引先との関係性、外部環境の見通しなど、検討すべきテーマが多岐にわたります。しかし、これらの初期分析を丁寧に行わなければ、タイプの識別を誤ってしまい、結果として承継した事業の継続が危ぶまれてしまうこともあり得ます。

 

コンサルティングという視点でみると、事業承継対策というものは、非常に総合力が求められるテーマであり、単なる相続税対策の延長とは異なる趣があるものと言えるでしょう。

 

 

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税理士法人髙野総合会計事務所 「TSKニュース&トピックス」(2018年11月21日)より再編集のうえ掲載

[解説ニュース]

相続税法64条1項の同族会社等の行為又は計算の否認規定の適用要件

 

〈解説〉

税理士法人タクトコンサルティング(亀山 孝之/税理士)

1. はじめに


相続税法64条1項は、「同族会社等の行為又は計算で、これを容認した場合においてはその株主若しくは社員又はその親族その他これらの者と政令で定める特別の関係がある者の相続税又は贈与税の負担を不当に減少させる結果となると認められるものがあるときは、税務署長は、相続税又は贈与税についての更正又は決定に際し、その行為又は計算にかかわらず、その認めるところにより、課税価格を計算することができる。」と規定しています(赤字は筆者)。

 

この規定が適用されると、私法上は有効に行われた同族会社の行為等を税務上は否認した状態(なかったものとしたり、別の行為等に置き換えたりすること)に基づき評価通達によって相続財産の相続時の時価=課税価格を(申告より高く)評価することになります。

2. 上記1の否認規定の適用要件


表題の適用要件は次の通りです。

 

①対象となる法人は同族会社等(法人税法上の同族会社の外、特殊な要件を満たす法人も含みますが、後者の法人は稀です。)であること

②対象となる行為・計算は、同族会社等の行為・計算であること

③容認した場合(←そのまま否認しない場合、ということです。)、同族会社等の株主等の相続税等の負担を減少させる結果となること

④その税負担の減少が不当と認められること

 

このうち、①から③の判定は難しくありませんが、④の「税負担の減少が不当」か否かの判断は何をもって「不当」とするのか明確ではありません。

3. 裁判例が示す「不当」性の判断基準


以下では、相続税法64条1項の適用による否認の当否が争われた事件(同族会社のオーナー経営者(被相続人)が、癌によって死去する一月前に、時価をはるかに上回る価額でその同族会社の所有する土地・建物を買い取った行為が同項により否認、つまり、税務上なかったことにできるかが争われたもの)の裁判の大阪高裁平成19年4月17日判決で示された、同項の「不当」性の判断基準を示します。

 

同判決では、「確かに、…、相続税法 64条1項の同族会社の行為又は計算が相続税又は贈与税の負担を不当に減少させる結果となると認められるかどうかは、経済的、実質的見地において、当該行為又は計算が純粋経済人の行為として不自然、不合理なものと認められるか否かを基準として判断すべきもの」であるが、同項が、「同族会社が同族会社の株主等の租税負担回避行為に利用されやすく、これを放置すれば税負担の実質的な公平を図ることができないから、実質的な税負担の公平を図るために設けられた規定であり、この趣旨、目的に照らすと、ここでいう純粋経済人の行為として不自然、不合理なものかどうかは、同族会社の利益を図るという同族会社の株主ないし経営者としての立場に重きを置くのではなく、個人としての合理性を中心に考えるべきものである」と判示しました(赤字は筆者)。

 

そして、本件の時価をはるかに上回る価額で同族会社の所有物件を購入する行為については、「同族会社にとっては利益をもたらすもの(筆者注:株主ないし経営者としての立場に重きを置くと同族会社の利益が図られており、その意味で合理的)であるとしても、個人としては極めて不合理なものといわざるを得ない」と判示しました。つまり、「純粋経済人の行為として不自然、不合理なものと認められるか否か」についての判断は、この否認規定の趣旨に照らし、同族会社と取引行為を行った被相続人が、その同族会社と特殊な・親密な関係のない(と仮定した)一個人とした場合で判断するべきだ、ということです。換言すると、「独立当事者間」であるとした場合に通常行われうる取引といえるか、ということです。この判断基準は、この否認規定の制定趣旨に整合し妥当なものと思われます。

 

「不当」性につきこのように判断するということは、上記の経済的合理性を見る対象を、株主やその親族等を相手に上記のような取引を行った同族会社に限定しないということです。つまり、同族会社には経済的利益をもたらすものであっても、それだけではこの規定の適用を免れる理由にはならず、その取引自体の経済合理性、その相手にとっても不自然・不合理ではないかという点もチェックする、ということです。

4. 終わりに


この否認規定の適用の当否に係る裁判例はあまり多くないようですが、裁判例の数は否認例の数とイコールではありませんから、否認されない節税を考える際は、上記の不当性の判断基準に注意を払うことが必要です。

 

 

 

 

 

 

 

税理士法人タクトコンサルティング「TACTニュース」(2019/04/15)より転載

[事業承継・M&A専門家によるコラム]

無議決権株式と属人株式の活用(その2) ~事業承継に活用したい手法~

 

畑中孝介先生(ビジネス・ブレイン税理士事務所/税理士)に、前回のコラムで取り上げました「属人株の活用事例」についてご解説いただきます。事業承継や株主対策にぜひご参考にしてみてください。

 

〈解説〉

ビジネス・ブレイン税理士事務所(畑中孝介/税理士)

 

 


 

属人株とは会社法109条に規定されているもので(詳しくは前回のコラムを参照下さい)なんと、株主ごとに異なる取り決めを定款変更でできちゃうんですね!
さらに登記事項にもなっていないため登記も必要ありません!!

 

では、どんなことが規定できるかというと
株主の権利のうち“剰余金配当請求権” “残余財産請求権” “議決権”が会社法105条に規定されています。

 

つまり、配当とか議決権とかが決められるんですね!

 

当社でも属人株を使った事業承継や株主対策を行っています!

 

 

例えば

 

(1)XXさんの持っている株式を優先配当にしてしまうとか、配当はXX円と決めてしまうということができてしまいます。

 

(2)議決権もですので、XXさんの持っている株式は配当高いけど、議決権は無し

 

それを応用すると

 

「代表者が持っている株式の議決権は5倍とする」
「畑中さんが持っている株式の議決権は10倍にします」

 

ということができます。

 

 

GOOGLEさんとか日本ではサイバーダイン社が使っている
ような特定の株式の議決権を増やすということが可能です。

 

「株式数は15%しか持ってなくても議決権は2/3を抑えている!!」

 

といった事業承継対策にも使えますね!

 

そのまま15%しか持っていないと、重要な決定ができなく会社の運営ができない!
でも株式を増やそうとすると多額の金銭が必要といった場合にも活用できますね!!

 

また、「持株会の配当は多めにする代わりに無議決権とする」といったように、
議決権をなくす代わりにインセンティブを多めにするということも可能になります!

 

「属人株はわかると大変活用できる優れものです!!」
AIに負けないよう知恵を使っていきたいものです!

 

 

 

 

「ビジネスブレイン月間メルマガ(2018/03/10号)」より一部修正のうえ掲載

[新事業承継税制を理解する!]

「議決権数の考え方の留意点」~新事業承継税制 ポイント解説③~

 

 

北澤淳先生(税理士法人山田&パートナーズ/税理士)に、新事業承継税制の実務上の留意点を、Q&A形式にてわかりやすく解説していただきます。今回のテーマは「議決権数の考え方と留意点」です。

 

〈解説〉

税理士 北澤淳(税理士法人山田&パートナーズ)

 

 

 

 

Q.事業承継税制(特例措置)には、「同族過半数要件」「同族内筆頭要件」といった「議決権数」に着目している要件があります。これらの考え方の留意点を教えてください。

 

 

A、同族過半数要件、同族内筆頭要件といった要件は、保有している株式数ではなく、行使できる議決権の数を基準に要件を充足しているかどうかを判定しております。下記のようなケースに当てはまる会社は、発行済み株式総数=議決権総数とはならない会社ですので、要件を充足しているかどうかを判断する際に慎重に検討する必要があります。

 

1、自己株式を有している会社

自己株式は、議決権を有しないこととされています(会社法308②)。したがって、発行済み株式総数から自己株式数を除いた数が議決権総数となります。下記のケースにおいては、議決権総数は1,200個(1,600個-400個)であるとして、要件の判定を行います。

 

 

2、株式の持ち合いをしている会社

事業承継税制の適用を受けようとする会社(A社)が他社(B社)の議決権総数の25%以上を有する場合、B社はA社について議決権行使することができません(会社法308①)。この場合、A社の発行済み株式総数からB社が保有する数を除いた数が議決権総数となります。下記のケースにおいては、議決権総数は1,100個(1,300個-200個)であるとして、要件の判定を行います。

 

 

3、単元株制度を導入している会社

定款で定めた一単元ごとに議決権を有することとされていますので、単元未満株式については議決権を有しないものとして取り扱います。下記のケース(10株を一単元としている。)においては、議決権総数は497個であるとして、要件の判定を行います。

 

 

4、種類株式を発行している会社

種類株式のうち、議決権の一部に制限がある株式なのか、議決権の全部に制限のある株式なのかによって、下記の表のとおりに取り扱います。たとえば、一部制限株式を贈与・相続により取得した場合であっても事業承継税制の適用を受けることは出来ませんが、同族過半数要件や同族内筆頭要件の判定にあたっては総議決権数に含めて要件の判定を行うこととなります。なお、いわゆる黄金株は議決権に制限のない株式ですので、完全議決権株式等に含まれることになります。