【Q&A】のれんの税務上の取扱い[税理士のための税務事例解説]

[税理士のための税務事例解説]

事業承継やM&Aに関する税務事例について、国税OB税理士が解説する事例研究シリーズです。

今回は、「のれんの税務上の取扱い」についてです。

 

 


[質問]

事業譲渡におけるグループ法人税制の適用についてお尋ねします。

 

A社はB社の株式を100%所有しています。この度、A社の事業をB社に売却するのですが、事業譲渡の価格算定においてA社の事業の純資産価値のみではなく、利益3年分も加算されることとなっております。

 

この場合、利益3年分は、いわばのれんとしての価値だと考えますが、こののれんの価値部分については、グループ法人税制の対象となるのでしょうか。

 

 

[回答]

1 「のれん」とは、取得原価が受け入れた資産及び引き受けた負債に配分された純額を上回る場合の、その超過額をいうものとされています(企業結合会計基準㉛)。したがって、企業を買収する場合の買収価額(取得原価)が識別可能な資産・負債の時価とイコールの場合には、基本的に「のれん」は生じないことになります。

 

しかし、買収時の価格決定には企業結合に当たって期待されるシナジー効果や、ノウハウ・ブランド等の超過収益力が含まれていることから、買収価額が識別可能な資産負債の時価を超過するケースが少なくありません。これらの時価を超えるシナジーや超過収益力等のプレミアムを総称して「のれん」ということになります。

 

 

 

2 現行の日本の会計基準上、原則として、「のれん」は資産に計上し、20年以内のその効果の及ぶ期間にわたって、定額法その他の合理的な方法により規則的に償却し、その償却額は販売費および一般管理費の区分に表示することとされており、「のれん」の金額に重要性が乏しい場合には、「のれん」が生じた事業年度の費用として処理することができることとされています(企業結合会計基準㉜、㊼)。

 

一方で、負の「のれん」が発生した場合には、その発生した事業年度の利益として認識し、特別利益の区分に表示することになります(企業結合会計基準㉝、㊽)。

 

 

 

3 税務上、「のれん」という資産分類は存在しませんが、それに類似する概念として平成18年度税制改正で創設された「資産調整勘定」、「差額負債調整勘定」というものがあります。

 

これは、企業結合会計基準の導入により組織再編時の「のれん」の取扱いが明確化されたことから、企業会計との調和を図り、また実務上の不明確さを解消する目的で、会計上の「のれん」に類似する概念が税法においても導入されることとなったものです。

 

具体的には、法人が非適格合併等により交付した金銭等の価額が移転資産負債の時価純資産価額を超えるときは、その超える部分の金額を「資産調整勘定」として認識し(法人税法62の8①)、交付金銭等の額が移転資産負債の時価純資産価額に満たないときは、その満たない金額を「差額負債調整勘定」として認識するものとされています(法人税法62の8③)。

 

ここで非適格合併等とは、非適格合併のほか、非適格分割、非適格現物出資又は事業の譲受けで、事業及び事業に係る主要な資産負債のおおむね全部が移転するものとされており(法人税法62の8①、法人税法施行令123の10①)、事業の移転が前提とされています。事業の意義については旧商法・会社法の概念と基本的に同じと考えられており、「一定の営業目的のために組織化され、有機的一体として機能する財産」を言うことになります。

 

この「資産調整勘定」・「差額負債調整勘定」は、個別資産負債に配分できない残余価値であり、それぞれ会計上の正の「のれん」・負の「のれん」に相当するものです。

 

なお、「資産調整勘定」・「差額負債調整勘定」はあくまで差額概念であるため、承継資産の中に独立した資産として取引される慣習のある営業権が含まれる場合は、営業権(無形固定資産)として認識する必要があります。

 

このようにして計算された「資産調整勘定」・「差額負債調整勘定」は、会社の会計処理にかかわらず、計上後5年間にわたって減額し、損金又は益金の額に算入することになりますが、非適格合併等が期中に行われた場合であっても、計上初年度は1年分の減額を行うこととされています(法人税法62の8④⑦⑪)。

 

 

 

4 お尋ねによれば、「A社はB社の株式を100%所有」しており、「A社の事業をB社に売却する」、この際、「A社の事業の純資産価額に、3年分の利益相当額を加算した譲渡価額とする」とのことです。

 

事業譲渡の規模等の詳細が明らかではありませんが、グループ法人税制に関するお尋ねですので、事業及び事業に係る主要な資産負債のおおむね全部が移転することを前提に、一般論として回答させていただきます。

 

事業及び事業に係る主要な資産負債のおおむね全部が移転する事業譲受については、買収対価と移転資産・負債の時価との差額を「資産調整勘定」として認識することになります。

 

仮に、①A社は100%子会社であるB社に事業を200で譲渡し、②事業に含まれる資産及び負債の時価は170であったとすると、

 

① 会計上、資産及び負債を帳簿価額で引き継いだ場合であっても、事業譲渡の場合は、税務上の時価によって認識し、

② 交付した対価の金額(200)が移転を受けた資産及び負債の時価純資産価額(170)を超えた部分は、資産調整勘定として申告調整される

 

 

ことになると思われます。

 

 

なお、上記のような処理によって生ずる、一般に「のれん」と呼ばれる資産調整勘定は、税務上、5年間の均等償却を行うことで各事業年度の損金の額に算入することになると思われます(法人税法62条の8④⑤)。

 

 

 

 

税理士懇話会事例データベースより

(2018年1月24日回答)

 

 

 

 

[ご注意]

掲載情報は、解説作成時点の情報です。また、例示された質問のみを前提とした解説となります。類似する全ての事案に当てはまるものではございません。個々の事案につきましては、ご自身の判断と責任のもとで適法性・有用性を考慮してご利用いただくようお願い申し上げます。