[M&Aニュース](2019年7月1日〜7月12日)

◇日本紙パルプ商事<8032>、英国の紙・包装資材卸売り会社PREMIER PAPER GROUPを子会社化、◇トスネット<4754>、北海道地盤の北日本警備を子会社化、◇モブキャストホールディングス<3664>、エンタメ関連IP管理のゲームゲートを子会社化、◇ソフィアホールディングス<6942>、調剤薬局の盛徳商事を子会社化、◇リコー<7752>、コンテンツ管理システムの独ドキュウェアを子会社化  ほか

 

ショーケース<3909>、スマホWebアプリ「Go!Store」事業をコンコースに譲渡

◆ショーケースは、スマートフォンWebアプリ「Go!Store」事業を、インターネット事業のコンコース(東京都渋谷区)に譲渡することを決めた。当該事業の直近売上高は875万円。譲渡価額は1850万円。譲渡予定日は2019年7月31日。

 

サン・ライフホールディング<7040>、伊豆箱根鉄道から介護事業を取得

◆サン・ライフホールディングは、伊豆箱根鉄道(静岡県三島市)から介護事業を取得することを決めた。ショートステイやデイサービスを提供する「エミーズ東間門」(静岡県沼津市)、「エミーズ原」(同)、「エミーズ鴨宮」(神奈川県小田原市)の3施設が対象。出生から葬儀・法要までのトータルライフサポートの実現の一環。取得価額は非公表。取得予定日は2019年10月1日。

Gunosy<6047>、ブロックチェーン関連子会社LayerXの株式をMBOで譲渡

◆Gunosyは、ブロックチェーン(分散型台帳)に関するコンサルティングやシステム開発を手がける子会社のLayerX(東京都港区。売上高1億400万円、営業利益100万円、純資産1億円)の株式45%を、LayerX社長の福島良典氏に譲渡することを決議した。福島氏から申し出のあったMBO(経営陣による買収)の一環。福島氏はGunosyの取締役ファウンダー(創立者)。譲渡価額は1億3500万円。譲渡予定日は2019年8月23日。

LayerXは2018年8月にGunosyとAnyPay(東京都港区)が折半出資で設立した。この1年間でブロックチェーンをめぐる市場環境が急激に変化したのに伴い、経営の先行きに不透明感が増している。こうした中、同社社長の福島氏からMBOの申し出があったという。

 

リクルートホールディングス<6098>、求人広告自動最適化プラットフォームを運営する英Blackstone Pointを子会社化

◆リクルートホールディングスは欧州子会社を通じて、求人広告自動最適化プラットフォーム「ClickIQ」を運営する英国Blackstone Point LTD(サリー州)の全株式を取得し子会社化することを決議した。Blackstone Pointは2015年に設立。同社が2017年に提供を始めた「ClickIQ」はAI(人工知能)技術を用い、顧客企業の求人広告費用をリアルタイムで管理し、最適な応募者とのマッチングを可能にする。取得価額は非公表。取得予定日は2019年7月中。

 

ナカシマ、水道工事の安藤建設を完全子会社化

◆上下水道資材や空調機器、住宅設備機器などの販売や工事などを手がけるナカシマ(兵庫県姫路市)は、神戸市を中心に水道工事事業を展開している安藤建設(神戸市、資本金2000万円)を完全子会社化した。神戸市で配水管の更新需要の増大が見込まれているため、工事や営業に関する情報を交換することで両社の事業を拡大するのが狙い。取得金額は非公表。取得日は2019年7月5日。

 

東京エネシス<1945>、発電プラント関係設備製造のタイ合弁「TES Practicum」を特定子会社化

◆東京エネシスは、発電プラント関係設備の製造・販売を目的とするタイの合弁会社TES Practicum(バンコク。売上高800万円、営業利益△900万円、純資産800万円)の増資に伴う株式の追加取得により、同社を特定子会社とする。合弁会社への出資額が東京エネシス本体の資本金額の10%以上に相当するため、従来の関連会社から特定子会社の扱いとなる。取得価額は約8億2300万円。取得予定日は2019年8月。

東京エネシスは2016年に現地企業と合弁でTESを設立した。TESはこのほど、タイ国内で工場(2020年4月に本格稼働を予定)を新規取得。これに伴い、資本金を従来の約3500万円(1000万バーツ)から約17億1500万円に増資することになったもので、東京エネシスは応分の株式を追加取得する。増資後の持ち株比率は49%(増資前48%)、現地企業51%(同52%)。

 

マネックスグループ<8698>、しあわせパートナーズ信託を子会社化

◆マネックスグループは、信託会社のしあわせパートナーズ信託(東京都港区。資本金1億円)の株式90%を取得し連結子会社化し、11日付で「マネックスSP信託」に社名変更した。同社は昨年4月、仮想通貨交換業のコインチェック(東京都渋谷区)を傘下に収めた。今回、新たに信託を取り込み、グループの金融サービス機能を強化する。取得価額は非公表。

 

アゴーラ・ホスピタリティー・グループ、大阪・千日前でホテル運営の難波・ホテル・オペレーションズを子会社化

◆アゴーラ・ホスピタリティー・グループは、宿泊業の難波・ホテル・オペレーションズ(東京都港区。売上高10億9000万円)の全株式を取得し子会社化することを決議した。宿泊事業の拡大が狙い。難波・ホテル・オペレーションズは大阪・千日前にある200室規模のホテルを賃貸借契約に基づき運営している。取得価額は非公表。取得予定日は2019年8月末。

 

クイック<4318>、システム開発のクロノスを子会社化

◆クイックは、システム開発事業などを手がけるクロノス(東京都品川区。売上高5億4500万円、営業利益458万円、純資産1億6000万円)の株式90.79%を追加取得し、完全子会社化することを決議した。

クロノスは2002年に設立し、システム開発事業と教育事業を経営の2本柱とする。近年はAI(人工知能)関連システムの開発、導入支援に積極的に取り組むと同時に、AI分野のエンジニア育成研修に力を入れている。

クイックは人材紹介や求人広告の取り扱いを主力とする。クロノスを傘下に取り込み、人材採用・労務管理などのシステム開発を推し進めるとともに、エンジニア教育事業の拡充を通じて顧客企業の人手不足の解消やIT化を支援する。

取得価額は非公表。取得予定日は2019年10月1日。

 

HIS、オフィス賃貸・ホテル運営のユニゾHDに426億円投じTOB 「敵対的」の可能性も

◆旅行大手のHIS(エイチ・アイ・エス)は10日、オフィスビル賃貸事業とビジネスホテル事業を手がけるユニゾホールディングス(HD)に対するTOB(株式公開買い付け)を11日から開始すると発表した。現在4.79%の所有割合を45%まで高める。HISは昨年12月から今年4月にかけてユニゾHDに出資を含む資本・業務提携についての協議を申し入れたものの、これに応じてもらえなかったことから、TOBを通じて提携実現に向けた強い意思を示す必要があると判断したという。

HISは今回のTOB実施について、事前にユニゾHD側と協議を行っていない。ユニゾHDは取締役会として10営業日以内に、TOBに賛成、反対、中立などの意見表明を行う。ユニゾHDの意見表明の内容次第では敵対的TOBに発展する可能性がある。同社の上場は維持する。

買付価格は1株3100円で、TOB公表前日のユニゾHD株式の終値1990円に55.78%のプレミアムを加えた。買付予定数の上限は所有割合で40.21%に相当する1375万9700株とし、買付金額は最大426億5500万円。買付期間は7月11日~8月23日。決済開始日は8月30日。公開買付代理人(証券会社)はエイチ・エス証券。

ユニゾHDはオフィスビル賃貸事業を主力とし、米国でも展開する。ビジネスホテル事業については、大都市圏や地方中核都市で「ホテルユニゾ」「ユニゾイン」「ユニゾインエクスプレス」の3ブランドで25ホテルを運営する。HISは自社の旅行事業とユニゾHDのホテルを含む不動産事業との連携を通じて双方の収益機会の拡大を目指す。

ユニゾHDは1959年に大商不動産(東京都中央区)として設立し、合併や再編を重ね、2015年に現社名となった。ホテル事業は1977年から手がけている。この間、2009年に東証2部に上場した(2011年に1部昇格)。

 

ジェイテクト<6473>、トヨタ自動車傘下「豊精密工業」の子会社化を検討

◆ジェイテクトは、トヨタ自動車が100%出資する豊精密工業(愛知県瀬戸市)の全株式を取得し、子会社化する方向で検討することを決議した。実施時期、株式取得方法などの詳細は今後両社で協議する。

豊精密は駆動製品であるデファレンシャルギヤの生産を主力とする。ジェイテクトは同じ駆動製品の電子制御カップリングをはじめとするトルクコントロールデバイスを開発・生産している。豊精密を子会社化することで駆動製品の事業基盤を強化する。

豊精密は1958年に設立し、従業員957人(4月1日時点)。

 

グランディハウス<8999>、不動産仲介・売買のプラザハウスなど2社を子会社化

◆グランディハウスは、不動産売買・仲介を手がけるプラザハウス(川崎市。売上高27億6000万円、営業利益8230万円、純資産10億1300万円)とウェルカムハウス(同。売上高8750万円、営業利益348万円、純資産3080万円)の2社の全株式を取得し子会社化することを決議した。

プラザハウス(1998年設立)とウェルカムハウス(2006年設立)は兄弟会社で、プラザハウス社長の柳英明氏が両社に全額を出資する。2社は川崎市を中心に田園都市線沿線を営業エリアとする。グランディハウスは本社を置く栃木県をはじめ北関東3県を地盤とし、住宅など不動産販売事業を展開する。今回の子会社化を機に、神奈川県に本格進出する。

取得価額は非公表。取得予定日は2019年7月19日。

 

ファイズ<9325>、貨物運送のドラゴン・ホールディングスを子会社化

2019-07-08

◆ファイズは、貨物運送のドラゴン・ホールディングス(愛知県大府市。売上高21億2000万円、営業利益1900万円、純資産9億6500万円)の株式51%を取得し子会社化することを決議した。

ファイズはサードパーティーロジスティクス(荷主が第三者であるロジスティクス業者に対し、物流業務全般を長期間一括して委託すること)業務をネット通販向けなどに展開している。中部地区を地盤に中・大型車両による貨物輸送を手がけるドラゴンを傘下に取り込み、物流サービス面での連携強化を目指す。

取得価額は6億2300万円(アドバイザリー費用などを含む)。取得予定日は2019年10月9日。

 

日本紙パルプ商事<8032>、英国の紙・包装資材卸売り会社PREMIER PAPER GROUPを子会社化

◆日本紙パルプ商事は、英国の紙・包装資材卸大手PREMIER PAPER GROUP LIMITEDを傘下に持つRADMS PAPER LIMITED(売上高318億円、営業利益14億2000万円、純資産19億8000万円)の株式60%を取得し子会社化することを決議した。1年後をめどにRADMS株式の追加取得を行い、100%子会社化するオプション権を保有する。日本紙パルプ商事は基幹事業の「国内卸売」に加え、「海外卸売」「製紙・加工」「資源・環境」「不動産賃貸」の各重点分野で事業の拡充に力を入れている。「海外卸売」では2010年に米Gould Paperを買収したのをはじめ、豪州、シンガポールの紙・包装資材会社を相次いで傘下に収めた。英国の紙・板紙の需要は年間約 850 万㌧。その多くを欧州大陸からの輸入に頼り、在庫・物流機能を持つ紙商が重要な役割を担っている。今回子会社化するPREMIERは英国第2位の売上規模を誇る大手紙商で、英国内18 拠点、約3000 の顧客を持つ。従業員は480人。日本紙パルプ商事は両社の国際的なネットワークを融合させることで 英国での卸売事業の拡大を目指す。取得価額は52億2000万円。取得日は2019年7月5日。

 

トスネット<4754>、北海道地盤の北日本警備を子会社化

◆トスネットは警備会社の北日本警備(札幌市。売上高3億1000万円、営業利益837万円、純資産1億4900万円)の全株式を取得し子会社化することを決議した。北日本警備は1970年に設立で、北海道内を地盤とする。工事現場の警備業務を主力に、駐車場での交通誘導警備、イベント会場の雑踏警備、各種施設の常駐警備、巡回警備、機械警備などを幅広く手がける。トスネットは交通誘導警備と施設警備を主力とする。同社は札幌市内にアーバン警備保障とI・C・Cインターナショナルの2警備子会社を持つ。北日本警備を傘下に取り込み、現地2社との連携でシナジー(相乗効果)創出を期待している。取得価額は2億50万円。取得日は2019年7月3日。

 

モブキャストホールディングス<3664>、エンタメ関連IP管理のゲームゲートを子会社化

◆モブキャストホールディングスは、アニメや漫画・ゲームを中心としたエンターテイメント関連の知的財産権(IP)管理を手がけるゲームゲート(東京都渋谷区。売上高6億400万円、営業利益4960万円、純資産1億600万円)の全株式を取得し子会社化することで基本合意した。ゲームゲートは2011年に設立。「ガールズ&パンツァー」「転生したらスライムだった件」などのゲーム化、「ご注文はうさぎですか?」「この素晴らしい世界に祝福を!」などのアプリ化をはじめ、その知的財産利用時のマネジメントで実績を積んできた。取得価額は未定。取得予定日は2019年12月末。

 

ソフィアホールディングス<6942>、調剤薬局の盛徳商事を子会社化

◆ソフィアホールディングスは、調剤薬局3店舗を都内で経営する盛徳商事(東京都世田谷区。売上高2億9100万円、営業利益1120万円、純資産3900万円)の全株式を取得し子会社化することを決議した。盛徳商事は1965年に設立。取得価額は9200万円。取得予定日は2019年8月1日。

 

ソフィアホールディングス<6942>、アールエムエスからSSL証明書事業を取得

◆ソフィアホールディングスは子会社を通じて、アールエムエス(東京都多摩市)からWebサイトの身元証明などに必要となる「SSL証明書」販売事業を取得することを決議した。インターネット関連事業を強化する一環。取得価額は非公表。取得予定日は2019年8月1日。

 

リコー<7752>、コンテンツ管理システムの独ドキュウェアを子会社化

◆リコーは、コンテンツ管理システムを提供するドイツDocuWare GmbH(ドキュウェア)の全株式を取得し子会社化することを決めた。ドイツ、オーストリアでの競争当局の審議を経て今夏に株式取得を目指す。取得価額は非公表。ドキュウェアは1988年に設立し、画像や動画、音声など様々な形式のコンテンツを統合的に管理するクラウド型・オンプレミス型システムを展開し、ワークフローの自動化や会計システムとの連携を実現している。リコーはこれまでドキュウェア製品の販売を手がけるなどパートナー関係にあった。

 

ログリー<6579>、PLAN-Bからユーザー分析DMPサービス「Juicer事業」を取得

◆ログリーは、デジタルマーケティング事業のPLAN―B(大阪市)からユーザー分析DMP(データ・マネジメント・プラットフォーム)サービス「Juicer事業」を取得することを決議した。当該事業の売上高は9900万円。取得価額は未定。取得予定日の2019年9月30日までに取得価額を確定させる(ただし着手金として4400万円を7月1日付で支払い)。ログリーはネイティブ広告プラットフォーム「LOGLY lift」を軸に、広告主(代理店を含む)の広告効果の最大化や媒体社(メディア)の満足度向上に向けたサービスを提供している。「Juicer事業」を取り込むことで、インターネット広告市場を牽引している運用型広告の市場領域拡大に生かせると判断した。

 

 

情報提供:株式会社ストライク

[税理士のための税務事例解説]

事業承継やM&Aに関する税務事例について、国税OB税理士が解説する事例研究シリーズです。

今回は、「子が事業を引き継いだ場合の引き継いだ資産に係る減価償却」についてです。

 

[関連解説]

■【Q&A】税理士事務所の事業承継と一時払金の処理

■【Q&A】事業譲渡により移転を受けた資産等に係る調整勘定

 

 

 


[質問]

個人事業主の父が廃業して息子が事業を引き継ぎました。父が事業で使用していた機械装置をそのまま息子が使用しているのですが、この場合、使用貸借の扱いで、息子がその機械を減価償却して経費にすることは可能でしょうか。
※息子の機械引継ぎの仕訳 機械装置(帳簿価額)/事業主借(帳簿価格)

 

[回答]

所得税法第56条は、「居住者と生計を一にする配偶者その他の親族が、居住者の営む・・・・・・事業から対価の支払を受ける場合には、・・・・・・その親族の対価に係る各種所得の金額の計算上必要経費に算入されるべき金額は、その居住者の当該事業に係る・・・・・・所得の金額の計算上、必要経費に算入する。」と規定していることから、その親族が対価の支払を受けていない場合には、形式的には、配偶者その他の親族の有する資産に係る必要経費に算入されるべき金額は、事業主の営む事業に係る所得の金額の計算上必要経費にされないことになります。

 

しかしながら、所得税法第56条の規定が事業に係る所得における世帯単位課税を考慮した規定であることに着目し、事業主と生計を一にする配偶者その他の親族の有する資産を事業主が無償で使用している場合であっても、その対価の授受があったものとしたならば所得税法第56条の規定により事業主の営む事業に係る所得の金額の計算上必要経費に算入される金額(その親族の各種所得の金額の計算上必要経費に算入されるべき金額)を事業主の営む事業に係る所得の金額の計算上必要経費に算入することができることとされています(所基通56-1)。

 

したがいまして、事業主と生計を一にする配偶者その他の親族が所有する資産を事業主が無償で事業の用に供している場合であっても、その資産に係る固定資産税、修繕費、減価償却費等については、事業主の事業に係る所得の金額の計算上必要経費に算入することができることになります。

 

ご照会の事例につきましては、父親と息子が生計を一にするか否かが明らかではありませんが、父親と息子が生計を一にしているのであれば、父親の所有する機械装置を息子が使用貸借(無償)で事業の用に供している場合には、その機械装置に係る減価償却費は息子の事業所得の金額の計算上必要経費に算入することができると考えられます。

 

一方、父親と息子が生計を一にしていないのであれば、所得税法第56条及び所得税基本通達56-1の適用がありませんので、その機械装置に係る減価償却費は息子の事業所得の金額の計算上必要経費に算入することはできないと考えられます。

なお、上記の検討は、息子が父親の事業を引き継いだが、父親の所有していた機械装置は息子に引き継がれず、息子は父親から使用貸借で事業の用に供している場合を想定しています。ご照会には、「息子の機械引継ぎの仕訳 機械装置/事業主借」と記載されていますので、事業の引継ぎに際して機械装置も引き継がれている(息子が購入している)のであれば、息子の所有する機械装置を息子が事業の用に供していることになりますので、その機械装置の減価償却費は息子の事業所得の金額の計算上必要経費に算入することができると考えられます。

 

 

 

税理士懇話会事例データベースより

(2019年4月9日回答)

 

 

 

 

[ご注意]

掲載情報は、解説作成時点の情報です。また、例示された質問のみを前提とした解説となります。類似する全ての事案に当てはまるものではございません。個々の事案につきましては、ご自身の判断と責任のもとで適法性・有用性を考慮してご利用いただくようお願い申し上げます。

 

 

 

 


[解説ニュース]

相続税の個人版事業承継税制の対象資産(「特定事業用資産」)

 

〈解説〉

税理士法人タクトコンサルティング(山崎信義/税理士)

 

 1.相続税の個人版事業承継税制の概要


相続税の個人版事業承継税制とは、下記2の特定事業用資産を所有し、事業(不動産貸付業等を除く。以下同じ。)を行っていた先代事業者として一定の者(被相続人)から、後継者として一定の者(特例事業相続人等)が、2019年1月1日から2018年12月31日までの相続又は遺贈(相続等)により、その事業にかかる特定事業用資産の全部を取得した場合に、その特定事業用資産にかかる相続税について、担保の提供その他一定の要件を満たすことにより納税が猶予され、後継者の死亡等により猶予されている相続税の納付が免除される税制をいいます(租税特別措置法(措法)70条の6の10第1項)。

 

2.特定事業用資産の意義


(1)特定事業用資産の範囲

「特定事業用資産」とは、先代事業者の事業の用に供されていた次の資産です。ただし、その贈与または相続等の日を含む年の前年分の事業所得にかかる青色申告書(措法25条の2第3項に規定する65万円の青色申告特別控除にかかるものに限る。)の貸借対照表に計上されていたもの限ります(措法70条の6の10第2項1号、同施行規則23条の8の8第2項等)。

 

①宅地等
事業の用に供されていた土地または土地の上に存する権利で、建物または構築物の敷地の用に供されているもののうち、棚卸資産に該当しないもので、面積が400㎡以下の部分。

 

②建物
事業の用に供されていた建物で、棚卸資産に該当しないもののうち床面積の合計が800㎡以下の部分。

 

③減価償却資産
②以外の減価償却資産のうち、構築物、機械装置、器具備品、船舶等、一定の自動車等、乳牛・果樹等の生物、特許権等の無形減価償却資産。

 

(2)先代事業者の生計一親族の所有する資産

上記(1)の「先代事業者」には、先代事業者と生計をーにする配偶者その他の親族が含まれます(措法70条の6の10第2項1号かっこ書)。したがって、先代事業者が配偶者の所有する土地の上に建物を建て、事業を行っていた場合におけるその土地など、先代事業者と生計をーにする親族が所有する資産のうち上記(1)①~③のいずれかに該当するものについても、特定事業用資産に該当します。

 

ただし、先代事業者と生計をーにする親族が所有する資産が特定事業用資産に該当するためには、(1)の下線部の通り、その資産が先代経営者の一定の青色申告書にかかる貸借対照表に計上されている必要があります(措法70条の6の10第2項1号)。所得税の青色申告にかかる貸借対照表に、同一生計親族名義の資産を計上する処理を通常は行わないので、今後の取扱いについては国税庁通達等を確認する必要があります。

 

3.小規模宅地等の特例の適用を受ける者がいる場合


2(1)①の宅地等につき、先代事業者および先代事業者と生計を一にする親族(以下「先代事業者等」)から相続等により取得した宅地等について、措法69条の4の小規模宅地等の特例の適用を受ける者がいる場合には、その適用を受ける小規模宅地等の区分に応じ相続税の個人版事業承継税制の適用が次のとおり制限されます(措法70条の6の10第2項1号イ、2号へ、同施行令40条の7の10第7項)。

 

 

上図①のとおり、特定事業用宅地等にかかる小規模宅地等の特例と相続税の個人版事業承継税制については併用できず、どちらかを選択することになります。

 

相続税の個人版事業承継税制は100%納税猶予・免除が可能ですが、後継者が納税猶予を継続し、免除に至るまでには、原則として終身の事業継続や資産保有が求められます(措法70条の6の10第3項、第15項等)。小規模宅地等の特例に比べて要件が厳しいため、後継者が相続等による取得する特定事業用資産の価額のうち宅地等がその大半を占める場合には、通常は小規模宅地等の特例を選択するケースが多いと思われます。

 

 

 

 

 

 

 

士法人タクトコンサルティング「TACTニュース」(2019/07/08)より転載

[解説ニュース]

最近の事例にみる「不動産所得で経費になるもの」

 

〈解説〉

税理士法人タクトコンサルティング(遠藤 純一)

 

 

 1.はじめに


個人でアパート経営をしている場合、不動産所得の計算上、必要経費になる支出の範囲で、税務調査で否認されるかどうか不安になるケースがあります。むろん、必要経費になることがはっきりしているものは、きちんと必要経費に算入して適切な課税所得の計算につなげたいものです。

 

不動産所得は、所得税の計算上、アパートの家賃や地代などの収入から必要経費を差し引いて計算します。不動産所得の必要経費となるもので、よく知られているものといえば、アパートなどの資産についての固定資産税・都市計画税、火災保険などの保険料、減価償却費や修繕費などです。これらについては、大きな争いの種になることはありません。

 

必要経費とは原則、「売上原価その他当該総収入金額を得るために直接した費用及びその年における販売費、一般管理費その他これらの所得を生ずべき業務について生じた費用」(所法37)です。このうち、家事上の経費と明確に区分でき「その年における販売費、一般管理費その他これらの所得を生ずべき業務について生じた費用」については、税務署と見解を異にするケースが少なくないところです。

2.最近の裁決から


最近の裁決で「その年における販売費、一般管理費その他これらの所得を生ずべき業務について生じた費用」で、税務署が否認した支出のうち、国税不服審判所が一部を必要経費と認めた事例が出ています(国税不服審判所平成30年9月12日)。

 

裁決書によると、勤め先を退職する前から不動産賃貸業を始めていたAさんは、退職時期をまたいで不動産賃貸業の業務に励んでいたといいます。

 

しかし、平成25年分から平成27年分の所得税の確定申告では、必要経費をめぐって税務署と争いになり、最終的に国税不服審判所に判断してもらうことになりました。

 

具体的に問題になった支出は①業務の参考図書等の費用「図書研修費」約34万円、②業務を円滑にする「接待交際費」約46万円、③福利厚生費などです。

3.考え方の基本


国税不服審判所は、まず「所得税法第37条第1項に規定する「販売費、一般管理費その他これらの所得を生ずべき業務について生じた費用」とは、当該業務の遂行上生じた費用、すなわち業務と関連のある費用をいうが、単に業務と関連があるというだけでなく、客観的にみてその費用が業務と直接の関係を持ち、かつ、業務の遂行上必要なものに限られると解するのが相当である」と述べ、考え方のポイントを示しました。一方、家事関連費については、「「必要経費」と「家事費」の両要素が混在しているため、原則として必要経費に算入できないが、所得税法第45条第1項第1号及びこれを受けた所得税法施行令第96条第 1号の規定により、その主たる部分が業務の遂行上必要であり、かつ、その必要である部分を明らかに区分することができる場合には、その部分に相当する経費に限り必要経費に算入され、また、同条第 2 号の規定により、青色申告者については、家事関連費のうち業務の遂行上必要である部分が主たる部分でなくても、取引の記録等に基づいて業務の遂行上直接必要であったことが明らかにされる部分がある場合には、その部分に相当する経費は必要経費に算入される」と整理しました。

4.必要経費と認められたもの


そのうえで国税不服審判所は、具体的に次のような支出については、必要経費になると判断しています。

 

ア、不動産賃貸経営及び住まいのリフォーム並びに会社経営及び住宅建築上のノウハウなどの建築工事に関して書かれた書籍を購入するための支出のうち、コンクリートのひび割れ補修等に活用された書籍等の購入費用。

 

Aさん自身においても、賃貸物件の維持管理に際し、コンクリートひび割れ用塗布剤等を購入し、賃貸物件の各室の機器や備品の交換、補修、修理等、各種の作業を行っていることが認められたからです。

 

イ、 事業に係る不動産の管理会社である管理会社Zを訪問した際の手土産代及び管理会社のスタッフに対する謝礼のためのギフト券の購入費。

 

Aさんは、不動産管理会社に対してお菓子を贈答している事実が複数回認められ、そして、平成26年において管理会社Z等が管理する物件に係る収入が前年に比して増加している事実が認められる。この支出は、不動産管理会社との円滑な取引関係を維持するために支出されたものと認めることができるから、当該支出は客観的にみて業務に直接関係し、かつ、業務の遂行上必要な費用であると認められたからです。

 

 

 

 

 

 

 

税理士法人タクトコンサルティング 「TACTニュース」(2019/07/01)より転載

[M&Aニュース](2019年6月17日〜6月28日)

◇テクノホライゾン・ホールディングス<6629>、メカトロ関連装置のエムディテクノスを子会社化、◇ハウスコム<3275>、営繕工事のエスケイビル建材を子会社化、◇フォーシーズホールディングス<3726>、総合衛生管理コンサルティングのHACCPジャパンを子会社化、◇エン・ジャパン<4849>、外国人向け求人事業のJapanWorkを子会社化、◇Fonfun<2323>、受託ソフト開発子会社のアドバンティブをAHDに譲渡  ほか

 

日本取引所グループ<8697>、東京商品取引所へのTOB延期

◆日本取引所グループ(JPX)は28日、経営統合で基本合意(3月末)している東京商品取引所(東商取)に対するTOB(株式公開買い付け)を延期すると発表した。6月末にTOB実施を予定していたが、現時点で買付価格について合意にいたっていないのが理由。

当初計画は6月末~9月までをTOB期間として株式を買い付け、10月に決済して東商取を完全子会社化する内容。TOB開始は延期するものの、TOBの終了日や決済日のスケジュールについては変更しないことを前提に今後協議を進めるとしている。

JPXは傘下の東京証券取引所が株式、大阪取引所が金融派生商品(デリバティブ)を扱っている。穀物や原油、金などの商品先物を扱う東商取を取り込むことで、様々な金融商品をワンストップで扱う「総合取引所」の実現を目指している。経営統合したうえで、2020年度の早い時期に商品移管や清算機関の統合を済ませる予定。

JPXは2013年に東京証券取引所グループと大阪証券取引所(現大阪取引所)が経営統合して発足した。一方、東商取も同年、東京工業品取引所が東京穀物品取引所の商品を引き継いで誕生した。JPXと東商取は昨年10月から総合取引所構想に向けて統合協議を進め、今年3月末に基本合意した。

 

ミクシィ<2121>、スマホフォトプリント事業のスフィダンテを子会社化

◆ミクシィはスマホフォトプリント事業を手がけるスフィダンテ(東京都渋谷区。売上高3億5500万円、営業利益4400万円、純資産6700万円)の全株式を取得し子会社化した。

スフィダンテは2009年に設立。スマホで撮影した写真で高品質な写真年賀状を作れる年賀状アプリサービスを複数展開する。ミクシィは2015年4月から写真・動画共有アプリ「家族アルバム みてね」を提供し、6月に利用者数が500万人を突破した。スフィダンテのサービスを組み合わせ、付加価値の向上につなげる。

取得価額は非公表。取得日は2019年6月28日。

 

総合メディカルホールディングス<9277>、病院内の売店・コンビニを運営する滋賀文教綜合サービスを子会社化

◆総合メディカルホールディングスは、病院内の売店やコンビニエンスストアなどを運営する滋賀文教綜合サービス(大津市)の全株式を取得し子会社化することを決議した。

総合メディカルは子会社の文教(東京都千代田区)を通じて滋賀文教綜合サービスを傘下に収める。文教は病院内の売店・コンビニ、レストランなどの事業を関東、中部、九州を中心に約100病院で展開している。今回、滋賀文教綜合サービスを傘下に取り込み、関西での営業基盤を強化する。

取得価額は非公表。取得日は2019年6月28日。

 

カヤック<3904>、木材流通加工の八女・流域資本を子会社化

◆カヤックは、木材流通加工の八女・流域資本(福岡県八女市)が実施する第三者割当増資を引き受け、同社を子会社化(所有割合98.1%)した。

八女・流域資本は2019年2月に、福岡県下で最大の森林を持つ八女市ならではの循環型林業モデルの構築を目的に設立。今後、木材加工・卸売り、建築業、地域プロモーション、賃貸住宅事業などを計画している。

カヤックはグループ会社を通じて、地域創生関連事業を手がける。八女市ではこれまで地元の八女里山賃貸(福岡県八女市)に出資し、定住・移住希望者の地方におけるライフスタイル構築を支援するなどしてきた。

取得価額は510万円。取得日は2019年6月28日。

 

五洋インテックス<7519>、前社長の資産管理会社と持分の帰属を争っていた子会社「キュアリサーチ」を譲渡

◆五洋インテックスは27日、遺伝子検査事業や訪日外国人観光客(インバウンド)向け医療観光事業を手がける全額出資子会社、キュアリサーチ(東京都中央区。売上高1億3900万円、営業利益△3740万円、純資産2250万円)の持分の帰属をめぐり、五洋前社長の大脇功嗣氏が経営する資産管理会社「大倉商事(現オオクラコーポレーション)」(東京都中央区)と争っていた問題から手を引くことを決めたと発表した。キュアリサーチの全株式が4月27日付で大倉商事の所有となり、キュアリサーチは連結子会社から外れた。譲渡価額は4100万円(質権行使価額)。

五洋は4月28日に臨時株主総会を開き、大脇前社長を解任している。

五洋は昨年12月末、カーテンなど室内装飾品事業の運転資金確保を目的に、大脇前社長の資産管理会社である大倉商事から9000万円を借り入れ、その際、子会社のキュアリサーチの全株式を担保に差し出した。その後、両社は2019 年4 月19日に、当初の一括返済から分割返済に返済スケジュールを変更した。ところが、4月26 日に第1回の支払期限が到来したものの、大脇前社長ら旧経営陣が支払いを行わなかったため、債権者の大倉商事が4月27日に質権を行使した。

これに対し、五洋は意図的に支払いを行わなかった大脇前社長の行為は特別背任罪に該当するなどとして、キュアリサーチ株式の帰属を争っていた。

五洋側の発表によると、2019年6月中旬頃、キュアリサーチが税金を期限内に支払えない状況で、しかもキュアリサーチの旧経営陣が別会社を設立し、従業員を移籍させ事実上、同社を抜け殻としたという情報が入ったため、 4月27日の時点でキュアリサーチの株式が大倉商事に移転したことを前提に持分の帰属を争わないことにしたという。

 

アジャイルメディア・ネットワーク<6573>、Webサービスのクリエ・ジャパンを子会社化

◆アジャイルメディア・ネットワークはWebサービスのクリエ・ジャパン(東京都渋谷区。売上高3000万円、営業利益△1600万円、純資産△2580万円)の全株式を取得し子会社化することを決議した。

クリエ・ジャパンは2010年に設立し、購買情報、属性情報、契約内容、口コミ情報など各種ユーザーデータに基づき、サーバー上で動画を組み合わせ画像素材を合成して、一人ひとりに合わせて行うone to oneマーケティングを実現する動画ソリューション「PRISM」を提供している。

アジャイルメディアは企業やブランドのファンの育成・活性化を支援するアンバサダー事業を主力とする。クリエ・ジャパンの動画ソリューションを取り込み、業容拡大につなげる。

取得価額は非公表。取得予定日は2019年7月1日。

 

ヒビノ<2469>、防音設備工事のサンオーを子会社化

◆ヒビノは、防音設備工事のサンオー(東京都台東区。売上高2億4600万円、営業利益2500万円、純資産1900万円)の全株式を取得し子会社化することを決議した。

サンオーは1989年に設立し、工場やオフィスビル、公共施設、商業施設の騒音対策工事を主力とするほか、防音パネルやサイレンサーなどの防音設備製品をつくっている。

ヒビノは子会社の日本音響エンジニアリング(東京都墨田区)を通じて、工場などの騒音対策のコンサルティングサービスを提供している。サンオーを傘下に取り込み、騒音対策事業の育成を加速する。

取得価額は7000万円。取得予定日は2019年8月1日。

 

日本エスコン<8892>、戸建分譲のワンズオウンハウスなど2社を子会社化

◆日本エスコンは、戸建分譲のワンズオウンハウス(さいたま市。売上高21億1000万円、営業利益1億6300万円、純資産4億8600万円)、戸建建築工事のライズホーム(さいたま市。売上高11億5000万円、営業利益1億700万円、純資産11億1000万円)の2社の全株式を取得し子会社化することを決議した。

子会社化する2社は兄弟会社。ワンズオウンハウスは年間40戸程度の戸建分譲事業を、ライズホームは年間60戸程度の戸建建築工事を手がけている。両社が地盤とする埼玉県は1年間の人口増加率が東京に次ぐ全国2位で、2018年度のマンション供給戸数は前年度比8.5%増と首都圏で千葉に次ぐ伸び率を示している。

日本エスコンは両社を傘下に取り込み、都心のベッドタウンとして安定的な成長が見込める埼玉エリアでの不動産事業の強化につなげる。

取得価額は非公表。取得予定日は2019年7月1日。

 

日本エスコン<8892>、戸建分譲のワンズオウンハウスなど2社を子会社化

◆日本エスコンは、戸建分譲のワンズオウンハウス(さいたま市。売上高21億1000万円、営業利益1億6300万円、純資産4億8600万円)、戸建建築工事のライズホーム(さいたま市。売上高11億5000万円、営業利益1億700万円、純資産11億1000万円)の2社の全株式を取得し子会社化することを決議した。

子会社化する2社は兄弟会社。ワンズオウンハウスは年間40戸程度の戸建分譲事業を、ライズホームは年間60戸程度の戸建建築工事を手がけている。両社が地盤とする埼玉県は1年間の人口増加率が東京に次ぐ全国2位で、2018年度のマンション供給戸数は前年度比8.5%増と首都圏で千葉に次ぐ伸び率を示している。

日本エスコンは両社を傘下に取り込み、都心のベッドタウンとして安定的な成長が見込める埼玉エリアでの不動産事業の強化につなげる。

取得価額は非公表。取得予定日は2019年7月1日。

 

クリエイト・レストランツHD<3387>、西洋フード・コンパスグループからゴルフ場内のレストラン運営事業を取得

◆クリエイト・レストランツ・ホールディングス(HD)は、社員食堂や学校給食などの運営受託を主力とする西洋フード・コンパスグループ(SFCG、東京都中央区)からレストラン運営事業の一部を取得することを決議した。ゴルフ場やテーマパーク、商業施設内でのレストランなど134店舗を対象とする。取得価額は58億8400万円。

クリエイト・レストランツは、SFCGが対象事業を会社分割する目的で5月に新設したエスエスエル(東京都中央区)の全株式を9月1日付で取得して連結子会社化する。株式取得後、社名を「クリエイト・スポーツ&レジャー」に変更する予定。対象事業の直近業績は売上高118億円、営業利益6億円、純資産13億円。ゴルフ場でのレストラン運営では業界トップのシェアを持つという。

クリエイト・レストランツはゴルフ場内のレストラン運営のアウトソーシング(外部委託)化の流れを踏まえ、今後も受託増加が見込め、安定的な収益確保につながると判断した。

 

三菱重工業<7011>、カナダ・ボンバルディアの小型旅客機事業を590億円で買収

◆三菱重工業は25日、カナダの航空機メーカー、ボンバルディアから小型ジェット旅客機事業を買収することで合意したと発表した。座席数50~100席の小型旅客機「CRJ」シリーズに関する保守・顧客サポート、改修、販売、型式証明などを5億5000万ドル(約590億円)で取得する。200億ドル(約210億円)の債務も引き受ける。ボンバルディアの顧客基盤や整備・補修拠点(カナダ、米に各2カ所)を引き継ぎ、子会社の三菱航空機が2020年半ばに納入を目指す国産ジェット「スペースジェット(旧MRJ)」の事業拡大につなげる。

買収するCRJ事業の業績は売上高約1880億円、支払金利前税引き前利益(EBIT)△約807億円。買収対象に製造機能は含まない。2019年末~2020年上期に買収完了を見込む。

CRJの製造拠点(カナダ・ケベック州)はボンバルディアに残り、ボンバルディアが部品や予備部品の供給を継続する。CRJの生産は受注残機体の納入後、2020年後半に終了する予定。

金融情報サービス大手のリフィニティブによると、今回の三菱重工によるボンバルディアのCRJ事業の買収は日本企業によるカナダ案件として2012年の三菱商事によるエンカナの天然ガス開発プロジェクトへの投資約1160億円に次ぐ2番目の規模。

 

アクセル<6730>、ソフト開発のbitcraftを子会社化

◆アクセルは、ソフト開発のbitcraft(東京都渋谷区。本社売上高1億400万円、営業利益2700万円、純資産4800万円)の全株式を取得し子会社化することを決議した。

アクセルは2014年設立で、メンバー全員が日本語を母国語としない人材で構成されるという。アクセルは傘下企業のax(東京都千代田区)を通じてミドルウエア、AI(人工知能)関連のソフト開発事業を手がけるが、成長加速のためにAI技術者やグローバル人材の積極的な採用を課題としていた。

取得価額は非公表。取得予定日は2019年7月1日。

 

東テク<9960>、太陽光発電子会社のケーピーエネルギーを日本再生可能エネルギーに譲渡

◆東テクは太陽光発電事業子会社のケーピーエネルギー合同会社(東京都千代田区。売上高―、営業利益△8700万円、純資産32億5000万円)の全持分(持分割合84.5%)を、太陽光発電事業の日本再生可能エネルギー(東京都港区)に譲渡することを決議した。

東テクは2017年3月に太陽光発電事業を手がけるケーピーエネルギーに出資し、連結子会社化した。ケーピーエネルギーは栃木県矢板市で太陽光発電所の建設を進めている。しかし、太陽光や風力でつくった電気を大手電力会社が買い取るFIT(固定価格買い取り制度。2012年創設)が終了の方向にあるのに加え、進行中の建設工事でゲリラ豪雨による土砂崩落が発生するなどしており、こうした事業遂行上のリスクを総合的に勘案した結果、譲渡を決めた。

譲渡価額は39億1600万円。譲渡予定日は2019年7月26日。

 

凸版印刷<7911>、建装用化粧シートメーカーの独インタープリントを子会社化

◆凸版印刷は24日、建装材用化粧シートの大手メーカー、ドイツのインタープリント(アルンスベルク市。売上高約438億円、純資産約205億円)の全株式を取得し子会社化すると発表した。取得価額は3億8400万ユーロ(約480億円)。12月中に買収を完了する。

インタープリントは1969年に設立し、従業員約1300人。ドイツ、米国、ポーランド、マレーシア、中国、ロシア、ブラジルに生産拠点を持ち、家具や建具、床などの表面化粧材として使われる建装材で世界有数の規模で事業を展開する。

凸版印刷は1956年に印刷技術を生かして建装材事業に進出し、1970年代から海外市場の開拓に乗り出した。現在、米国内2カ所に建装材印刷工場を持つ。2017年にはスペインのデコテックプリンティング(カタルーニャ州)を買収し、海外での生産体制を強化してきた。

 

テクノホライゾン・ホールディングス<6629>、メカトロ関連装置のエムディテクノスを子会社化

◆テクノホライゾン・ホールディングスは、メカトロニクス関連装置メーカーのエムディテクノス(愛媛県西条市。資本金1000万円)の全株式を取得し子会社化した。FA(ファクトリー・オートメーション)事業強化の一環。取得価額は非公表。取得日は2019年6月21日。

 

ハウスコム<3275>、営繕工事のエスケイビル建材を子会社化

◆ハウスコムは、営繕工事のエスケイビル建材(埼玉県富士見市。売上高6億6800万円、営業利益6020万円、純資産1億4500万円)の全株式を取得し子会社化することを決議した。

エスケイビル建材は2007年に設立。塗装工事、金属建具工事、リニューアル工事などの各種営繕工事を主力とし、関東地区で外注業者と緊密な関係を築いている。ハウスコムは経営多角化の一環として2016年3月にリフォーム事業に進出した。今回、エスケイビル建材を傘下に取り込み、同事業の拡大を促す。

取得価額は非公表。取得予定日は2019年7月1日。

 

フォーシーズホールディングス<3726>、総合衛生管理コンサルティングのHACCPジャパンを子会社化

◆フォーシーズホールディングスは、総合衛生管理コンサルティングのHACCPジャパン(福岡市)の株式98.9%を取得し、子会社化(非連結)することを決議した。

フォーシーズは現在、化粧品の通信販売事業を主力とする。しかし、化粧品をめぐっては異業種からの新規参入や商品の低価格化、販売チャンネルの多様化などで競争が激化し、同社を取り巻く経営環境は厳しさを増している。こうした中、総合衛生管理コンサルティングを展開するHACCPジャパンを傘下に収め、経営基盤の安定と業績の改善を目指す。HACCPジャパンは2018年10月に設立。

取得価額は890万円。取得予定日は2019年6月24日。

 

エン・ジャパン<4849>、外国人向け求人事業のJapanWorkを子会社化

◆エン・ジャパンは、外国人向け求人事業のJapanWork(東京都港区。売上高1600万円、営業利益△1900万円、純資産100万円)の株式51%を取得し子会社化することを決議した。その後、残る株式について2022年に株式交換で追加取得し同社を完全子会社化する。

JapanWorkは16年2月に設立し、外国人向けに求人一括検索サイト「JapanWork」を運営している。18年12月からは企業と言葉の壁がある外国人とのやりとりを代行するチャットコンシェルジュサービスを始め、清掃や工場系派遣企業を中心に顧客を広げている。

改正出入国管理法が19年4月に施行され、外国人の受け入れ拡大を目的とした単純労働者に対する就労ビザの取得が認められた。ホテルや飲食業界などの現場では慢性的な人手不足で、外国人労働者市場の成長が見込まれている。

エン・ジャパンはJapanWorkを傘下に取り込み、外国人労働者事業を通じた人材サービス拡大を目指す。

第一段階の株式の取得価額は2億3400万円。取得予定日は7月12日。

 

Fonfun<2323>、受託ソフト開発子会社のアドバンティブをAHDに譲渡

◆Fonfunは、受託ソフトウエア開発子会社のアドバンティブ(熊本県益城町。売上高1億200万円、営業利益1000万円、純資産1900万円)の全株式を、ITコンサルティング会社のAHD(熊本市)に譲渡することを決議した。

Fonfunは携帯電話・スマートフォン向けのコンテンツ提供を事業の柱とする。2015年にアドバンティブを設立し、 ソフトウエアの受託開発に乗り出したが、思ったほどの利益水準に達成していなかった。今回、アドバンティブの取締役らが5月に設立したAHDからアドバンティブの株式取得の打診があり、譲渡を決めた。Fonfunは今後、リモートメール事業・SMS (ショートメッセージサービス)事業に経営資源を集中するという。

譲渡価額は2800万円。譲渡予定日は2019年7月1日。

 

UACJ<5741>、銅管子会社「UACJ銅管」を豊川ホールディングスに240億円で譲渡

◆UACJは、全額出資の銅管製造子会社のUACJ銅管(愛知県豊川市。売上高452億円、営業利益16億円1000万円、純資産90億5000万円)の全株式を、豊川ホールディングス(東京都港区)に約240億円で譲渡することを決議した。譲渡予定日は2019年9月30日。豊川ホールディングスは投資ファンドのアスパラントグループ(東京都港区)と大和証券グループの大和PIパートナーズ(東京都千代田区)が出資して5月末に設立した特別目的会社。

UACJ銅管は主に空調機向け銅管を製造する。今後もおう盛な需要が見込まれる東南アジア市場での成長機会が期待されるとしながらも、UACJグループの経営資源の有効活用の観点から銅管事業への追加投資や人的資源の投入が難しいと判断した。

 

PKSHA Technology<3993>、駐車場機器メーカーのアイドラを子会社化

◆PKSHA Technologyは、特別目的会社「桜坂1号」(東京都文京区)を通じて、駐車場機器メーカーのアイドラ(東京都新宿区。売上高44億5000万円、営業利益2億2500万円、純資産6億300万円)の全株式を取得し、7月1日付で子会社化することを決議した。取得価額は28億200万円。これとは別に、業績の達成割合に応じて条件付き対価(アーンアウト対価)を支払うことで合意している。

アイドラは駐車場機器の製造・販売と駐車場運営受託を通じて、全国に10万台以上のIoT(モノのインターネット)機器を配置し、各種データをクラウドで蓄積・管理する。PKSHAは同社を傘下に収め、将来性が期待されるMaas(サービスとしての移動手段)領域での取り組みを強化する。

 

平山ホールディングス<7781>、民事再生計画確定の大松自動車を子会社化

◆平山ホールディングス(HD)は、自動車整備業や介護事業を手がける大松自動車(三重県大台町。売上高4億6400万円、営業利益△2億2400万円、純資産△7億6300万円)の全株式を取得し子会社化することを決めた。6月18日付で大松自動車の民事再生計画が確定したのに伴い減資後、同社の増資を8000万円で引き受ける。大松自動車は新規事業のバイオマス事業で資金繰りに行き詰まり、平山HDに再生支援を要請していた。取得予定日は2019年7月1日。

 

EMシステムズ<4820>、電子カルテシステム販売のポップ・クリエイションを子会社化

◆EMシステムズは、電子カルテ・医療情報システムを販売するポップ・クリエイション(福岡県筑紫野市)の全株式を取得し子会社化することを決議した。ポップ・クリエイションは1999年に設立し、診療所、クリニック、保険薬局を主な顧客とする。EMは同社を傘下に取り込み、北部九州での事業拡大につなげる。取得価額は非公表。取得予定日は2019年7月1日。

 

昭和電線HD<5805>と古河電工<5801>、建設・電販市場向け汎用電線の販売事業を2020年4月に統合

◆昭和電線ホールディングス(HD)と古河電気工業は18日、子会社で手がける建設・電販市場向け汎用電線の販売事業を統合することで基本合意したと発表した。新販売会社「SFCC」(仮称、川崎市)を共同出資で設立し、2020年4月1日の営業開始を目指す。単独での収益改善が困難な見通しにあるとの認識で一致した。

新販売会社「SFCC」は昭和電線HDが60%、古河電工が40%を出資する計画。昭和電線HD100%子会社の昭和電線ケーブルシステム(川崎市)、SDS(同)、古河電工100%子会社の古河テレコム(東京都千代田区)の3社が取り扱う建設・電販市場向け汎用電線の販売事業を統合する。新販社では販売業務の効率化を進め、在庫の一括集中管理を実施し、収益改善につなげる。

建設・電販市場向け汎用電線を除いた商品の販売については従来通り、両社の子会社が継続する。

 

三城ホールディングス<7455>、眼鏡フレーム修理のオプトメイク福井を子会社化

◆三城ホールディングスは、眼鏡フレーム修理のオプトメイク福井(福井県鯖江市)の全株式を取得し子会社化した。三城HDはグループに眼鏡フレーム製造のクリエイトスリー(福井県鯖江市)を持つが、アフターサービスについてもグループ内で徹底して行うとしている。オプトメイク福井は1989年設立で、従業員は17人。取得価額は非公表。取得日は2019年6月17日。

 

東海カーボン<5301>、ドイツの炭素黒鉛電極メーカーCOBEXを1000億円で買収

◆東海カーボンは17日、ドイツの炭素黒鉛製品メーカー大手、COBEX HoldCo GmbH(ヴィースバーデン。売上高298億円、営業利益96億円、純資産120億円)を買収すると発表した。約1000億円を投じて全株式を7月下旬に取得する。

COBEXはポーランドに2工場を構え、アルミ精錬用カソード(電極)、高炉の内張りに使われるライニング(高炉用ブロック)、金属シリコンなどの精錬に使われる炭素電極の3分野で世界有数のシェアを持つ。

主力のアルミ精錬用カソードはアルミを溶かす際に使われる消耗品。アルミは自動車や航空機の軽量化ニーズ、建材分野での使用量増加、飲料容器のアルミ化、エレクトロニクス分野における銅の代替需要などを背景に安定的な成長が見込まれている。

東海カーボンは昨年、米のカーボンブラックメーカー大手、シド・リチャードソン・カーボン(テキサス州)を約300億円で買収した。ドイツでは2005年に黒鉛電極製造のエルフトカーボン(現東海エルフトカーボン)を傘下に収めている。

 

日産東京販売ホールディングス<8291>、自動車整備・中古車買い取りのGTNETを子会社化

◆日産東京販売ホールディングスは、自動車整備や中古車の買い取り・販売のGTNET(大阪府茨木市。売上高65億3000万円、営業利益8900万円、純資産38億3000万円)の株式51%を取得し子会社化することを決議した。

GTNETは1999年設立で、スポーツタイプの車両を中心に中古車販売や自動車整備を全国14事業所で展開している。日産東京販売は東京エリアで日産とルノーの新車の販売、中古車販売、自動車整備などを手がけ、2019年度スタートした中期経営計画で重点戦略の一つとしてM&Aによる規模拡大を打ち出している。

取得価額は非公表。取得予定日は2019年7月22日。

 

 

情報提供:株式会社ストライク

[解説ニュース]

離婚に伴い自宅を財産分与する場合の税務上の取扱い等-1/2 ~財産分与をする側~

 

〈解説〉

税理士法人タクトコンサルティング(宮田房枝/税理士)

 

 

[関連解説]

■離婚に伴い自宅を財産分与する場合の税務上の取扱い等-2/2 ~財産分与を受ける側~

■不動産の財産分与があった場合の不動産取得税

 

 

【問】

私(夫)はこの度、妻と協議離婚をすることとなりました。離婚に伴い、婚姻期間中の財産の清算として、婚姻期間中に私名義で取得した自宅の土地及び建物(以下「自宅」)を妻へ財産分与(*)する予定です。離婚に伴う税務上の留意点等を教えてください。
(*) 相手方の請求に基づき、離婚した者の一方から相手方に財産を渡すことを財産分与といいます(民法768)。

(妻における税務上の留意点等については、次回以降に解説予定です。)

 

【回答】

1.所得税


(1) 譲渡所得課税
① 離婚後に財産分与する場合

 

(a)譲渡所得
所得税法上、譲渡所得の基因となる財産(本問の場合は自宅)の財産分与があった場合には、財産分与時に、元夫は、その自宅を財産分与時の価額により元妻へ譲渡したものとして取り扱われます(所基通33-1の4)。
自宅を財産分与した場合の譲渡所得金額は、次の算式により計算します(所法33、措法35①②⑪)

 

〔算式〕
財産分与時の自宅の時価 -(取得費+譲渡費用)- 居住用財産の譲渡所得の特別控除3,000万円※

 

※「居住用財産の譲渡所得の特別控除」の適用については、自宅の所有期間や居住期間についての制限はありません。したがって、この特別控除を適用することにより、元夫の譲渡所得金額がゼロになることもあります。ただし、この特別控除の適用を受けるためには、元夫の財産分与年分の確定申告書にこの規定の適用を受ける旨等の記載をし、この財産分与に係る譲渡所得の明細書等の添付をする必要があるため、確定申告をし忘れないよう留意が必要です。なお、この3,000万円の特別控除の規定は、配偶者のような特別関係者等への譲渡においては適用できないため、この規定の適用を受けたい場合には、離婚後に財産分与する必要があります。

 

(b)税率
上記(a)の算式により計算した譲渡所得金額がある場合(上記(a)の算式により計算した結果がプラスとなる場合)には、その財産分与のあった年の1月1日現在における自宅の所有期間や譲渡所得金額に応じて、次の税率による所得税等が課されます(措法31、31の3、32①、地法附34、34の3、35、復興財源確保法9、13)。

 

② 離婚前に財産移転する場合

財産移転が離婚前に行われる場合には、基本的に、夫から妻への贈与として取り扱われ、夫において譲渡所得課税はありません。

(2) 離婚後の新たな住宅ローン控除の適用

離婚に伴う自宅の財産分与に際し、元夫が、居住用財産の譲渡所得の3,000万円の特別控除(上記1.(1)①(a)※印参照)又は所有期間10年超の場合の譲渡所得の軽減税率(上記1.(1)①(b)の14.21%)等の適用を受けた場合には、その後3年以内に元夫が新たに借入をして自宅を取得等したとしても、元夫は住宅ローン控除の適用を受けることができません(措法41⑮)。

2.印紙税(措法91②)


財産分与契約における自宅の価額に応じて、次の印紙税が課税されます。

3.固定資産税(地法343、350、359)


固定資産税は、1月1日現在の自宅の所有者に対して課税されます(固定資産税評価額×1.4%)。したがって、年の途中で財産分与をして所有者が元妻に変わったとしても、その年分については元夫が納税義務者となります(別途、元夫婦間の合意で固定資産税の精算を行うことはできます)。

4.最後に


離婚に伴って自宅の財産分与をする場合、実行のタイミング等により、課税関係が異なります。詳細は税理士にご相談ください。

 

 

 

 

 

 

 

税理士法人タクトコンサルティング 「TACTニュース」(2019/06/24)より転載

[税理士のための税務事例解説]

事業承継やM&Aに関する税務事例について、国税OB税理士が解説する事例研究シリーズです。今回は、事業承継税制(特例措置)の適用要件の一つである「先代経営者等である贈与者」の要件についてです。

 

[関連解説]

■【Q&A】個人版事業承継税制について ~先代事業者が医師、後継者が歯科医師の場合~

■【Q&A】相続税・贈与税の事業承継税制について~資産保有型会社の判定で採用する基準~

 

 

 


[質問]

事業承継税制におけるこのたびの特例措置を適用したく、作業を進めています。その適用要件のなかで、「先代経営者等である贈与者」の要件について以下の3つを定めています。

 

(1) 会社の代表権を有していたこと
(2) 贈与の直前において、贈与者及び贈与者と特別の関係が有る者で総議決権数の50%超の議決権を保有し、かつ、後継者を除いたこれらの者の中で最も多くの議決権数を保有していたこと。
(3) 贈与時において、会社の代表権を有していないこと。

 

当社は、「先代経営者等である贈与者」にあたる者が、取締役に就任しているものの、代表取締役に過去に一度も就任しておりません。
そのため、これから代表取締役になるべく定款変更(共同代表取締役)し、就任しようと思っています。このスキームで(1)の要件を満たすでしょうか。

 

[回答]

1 租税特別措置法第70条の7の5(非上場株式等についての贈与税の納税猶予及び免除の特例)に規定する「特定贈与者」について、同法施行令第40条の8の5第1項第1号は「・・・特例認定贈与承継会社(略)の代表権(制限が加えられた代表権を除く。イ及びロにおいて同じ。)を有していた個人で、・・・」と規定しています。

 

2 したがって、贈与の前に会社の定款を変更して贈与予定者を共同代表取締役に就任させ、その旨を登記した後に、特例承継計画を都道府県に提出して経営承継円滑化法の確認を受け、その後、株式等の贈与前に共同代表を辞任すれば適用要件の「会社の代表権を有していたこと」に該当します。この場合、定款等において贈与予定者の代表権に制限を加えないことが必要です。

 

 

税理士懇話会事例データベースより

(2018年6月15日回答)

 

 

 

 

[ご注意]

掲載情報は、解説作成時点の情報です。また、例示された質問のみを前提とした解説となります。類似する全ての事案に当てはまるものではございません。個々の事案につきましては、ご自身の判断と責任のもとで適法性・有用性を考慮してご利用いただくようお願い申し上げます。

 

 

 

 


[解説ニュース]

贈与を受けた金銭を全て敷地の対価に充てた場合の住宅取得等資金に係る贈与税の非課税の適用

 

〈解説〉

税理士法人タクトコンサルティング(山崎信義/税理士)

 

【問】

Aさんと妻のBさんは、自宅を新築することにしました。自宅の建築に先立ち、Aさん夫婦は資金を出し合い、2019年5月に土地を対価3,000万円で取得(AさんとBさんが1,500万円ずつを負担し、持分1/2の共有)しました。Bさんはこの土地の取得に際し、実父から2019年1月に現金700万円の贈与を受けています。Aさんは2019年中にその土地の上に自宅を対価2,000万円で建築(建築費用は全額Aさんが負担し、Aさんの単独所有)、引渡しを受けて同年中に居住する予定です。

 

上記の計画通りに2019年中に自宅の建築が完了し、Aさんが同年中に引渡しを受けて夫婦で居住した場合、Bさんが実父から贈与を受けた現金700万円は、「住宅取得等資金に係る贈与税の非課税」(租税特別措置法(措法)70条の2。以下「本特例」)の適用を受けることができますか。

 

 

【回答】

1.結論


上記の場合、贈与を受けたBさんは、実父から贈与を受けた金銭の全額を充てて自宅の敷地を取得するものの、その自宅の新築をしない(贈与があった日を含む年の翌年の3月15日までにその土地上に自宅を新築するのはAさん)ことから、後述2(2)②の要件を満たすことができないので、本特例の適用を受けることができません。

 

2.解説


(1)本特例の概要と基本的な要件

その年の1月1日において20歳以上である等の一定の要件を満たす個人(「特定受贈者」)が、父母等の直系尊属から贈与により取得した①自己の居住用の家屋(以下「自宅」)の新築もしくは取得(以下「新築等」)、②これらの自宅の新築等とともにする、その敷地として使用される土地等*の取得(その自宅を新築する場合に、それに先行してする、その敷地として使用されることとなる土地等の取得を含む)又は③一定の増改築等の対価に充てるための金銭(以下「住宅取得等資金」)の全額を、贈与を受けた年の翌年3月15日までに、①、②又は③の対価に充て、同日までに自己の居住用に供した等の場合には、贈与税の申告を要件に、住宅取得等資金のうち一定の限度額(自宅の取得に係る契約の締結期間や、その自宅の性能、自宅の新築等の代金等に含まれる消費税の税率に応じて300万円~3,000万円)までは贈与税が非課税とされます(措法70条の2第1項等)。
*土地及び土地の上に存する権利をいいます。

(2)自宅を新築する前にその敷地となる土地を先行して取得した場合の留意すべき要件

表題の要件としては、次の①及び②があります。

 

①一定の土地等の取得であること
(1)の下線部の通り、本特例の適用対象となる自宅の新築もしくは取得には、自宅の新築もしくは取得とともにする、その敷地として使用されることとなる土地等の取得が含まれます(措法70条の2第1項1号)。そして「土地等の取得」には、自宅の新築に先行してする、その敷地として使用されることになる土地等の取得が含まれます(同かっこ書)。

 

この「自宅の新築に先行してする、その敷地として使用されることになる土地等」の具体例は、次の通りです(措法通達(措通)70の2-3、70の3-2)。

イ.自宅の新築請負契約の締結を条件とする売買契約によって取得した土地等
ロ.自宅を新築する前に取得した、その自宅の敷地として使用されることになる土地等

 

②金銭の贈与を受けた人により、自宅の新築が行われること。
個人が贈与を受けた金銭の全額が①ロの土地等の取得に充てられ、自宅の新築の対価に充てられなかった場合でも、その贈与を受けた金銭は本特例の適用対象となる「住宅取得等資金」には該当します(措通70の3-2(注)1)。

 

ただし、贈与があった日を含む年の翌年の3月15日までに、その贈与を受けた人が自宅の新築をしていない場合には、その贈与を受けた金銭は本特例の適用を受けることができません(同ただし書)。

(3)本問へのあてはめ

ご質問の場合、Bさんは実父から贈与を受けた金銭を全て自宅の敷地の購入代金に充てる一方、自宅の建築代金を全く負担しておらず、Bさんは自宅を新築していません(新築したのはAさんです)。よってBさんは上記(2)②のただし書により、本特例の適用を受けることができません。

 

Bさんが本特例の適用を受けるためには、実父より贈与を受けた金銭の一部又は自己資金により自宅の建築代金を負担し、自宅にも相応の持分を有することが必要です。

 

 

 

 

 

 

 

税理士法人タクトコンサルティング「TACTニュース」(2019/06/17)より転載

[M&Aニュース](2019年6月3日〜6月14日)

◇きちりホールディングス<3082>、外食フランチャイジーのインドネシアPT Kichiri Rizki Abadiを子会社化、◇青山商事<8219>、カジュアル衣料「アメリカンイーグル」事業を譲渡、◇INEST<3390>、休眠中の情報処理サービス会社のEPARKマネーライフをトリプルヘッドに譲渡、◇ヒューリック<3003>、日本ビューホテル<6097>を子会社化、◇沖電気工業<6703>、ブラジルATM子会社のサービス事業などを米NCRに譲渡 ほか

 

マネーパートナーズグループ<8732>、仮想通貨交換登録準備会社のコイネージを子会社化

◆マネーパートナーズグループは、仮想通貨交換業登録に向けて準備中のコイネージ(東京都渋谷区。売上高―、営業利益△2億8600万円、純資産5億4000万円)を子会社化することを決議した。コイネージの全株式を所有する特別目的会社・コイネージ投資(同)を100%子会社化(現在持ち株比率は50%)することにより、コイネージを傘下に取り込む。取得価額は非公表。取得予定日は2019年7月1日。

コイネージの子会社化に伴い、マネーパートナーズは仮想通貨交換業登録準備を進めるために計画していた子会社の設立を取りやめる。

 

エア・ウォーター<4088>、米プラクスエアのインド事業を取得

◆エア・ウォーターは14日、産業ガス大手の米プラクスエアからインド事業の一部を取得すると発表した。対象はプラクスエアのインド東部で手がける酸素、窒素、アルゴンの製造・貯蔵・運搬・販売に関する事業(直近売上高約79億円)。プラクスエアと同業大手の独リンデが2017年に合併した際、インド当局が独占禁止政策上の理由からプラクスエアにインド事業の一部を第三者に譲渡するよう求めていた。取得価額は約238億円(152億5000万インドルピー)。取得予定日は2019年7月12日。

 

トライアンフコーポレーション<3651>、沖縄や北海道でレンタカー事業を行うルフト・トラベルレンタカーを子会社化

◆トライアンフコーポレーションは、レンタカー会社のルフト・トラベルレンタカー(沖縄県豊見城市。売上高29億4000万円、営業利益5460万円、純資産1億5600万円)の全株式を取得し子会社化することを決議した。

ルフト・トラベルレンタカーは1995年設立で、沖縄県や北海道などの観光地を中心に営業展開し、約3000台の貸出用車両を保有する。2008年7月に現株主のLUFTホールディングス(東京都港区)傘下となり、インバウンド(訪日外国人観光客)需要に支えられて順調に業容を拡大してきた。

取得価額は8億円。取得予定日は2019年8月1日。

 

チエル<3933>、高校生向け進学説明会を手がける昭栄広報とエーアンドシーを子会社化

◆チエルは、高校生向け進学説明会を手がける昭栄広報(東京都千代田区。売上高13億円、営業利益100万円、純資産10億4000万円)、エーアンドシー(同。売上高4200万円、営業利益500万円、純資産3500万円)の2社を子会社化することを決議した。

昭栄広報は1967年、エーアンドシーは2007年に設立し、現在、瀬戸渡氏が両社の社長を務める。チエルは昭栄広報の株式60.4%、エーアンドシーの全株式をそれぞれ取得する。エーアンドシーが昭栄広報の株式39.6%を保有する資本構成になっているため、間接保有分を含めて、チエルが昭栄広報株式を100%保有する形となる。

取得価額は昭栄広報が4億5300万円、エーアンドシーが2億3000万円。取得予定日はいずれも2019年6月26日。

チエルは授業支援やデジタル教材など学校教育のICT(情報)化事業を専業とする。昭栄広報とエーアンドシーはいずれも高校生を対象とした進学説明会を主力事業とし、高校のほかに大学、専門学校と接点を持つ。チエルは両社を傘下に取り込むことで、ICT化による事業拡大が可能と判断した。

 

五洋インテックス<7519>、医療観光のMNCを子会社化

◆五洋インテックスは、旅行業のMNC(東京都港区。売上高3650万円、営業利益29万8000円、純資産579万円)の全株式を取得し子会社化することを決議した。多角化の一環として取り組むメディカル(医療)ツーリズム事業の早期収益化が狙い。

MNCは2017年に設立し、医療や美容に関する旅行の企画を主力とする。五洋インテックスは旅行業の登録業者である同社を傘下に取り込むことで、直接、メディカルツーリズムを目的とした観光ツアーの手配が行えるようになる。

取得価額は非公表。取得予定日は2019年7月上旬。

 

新東京グループ<6066>、手続き中の全建設共同事業組合から福島・熊本の災害復興支援事業を取得

◆新東京グループは、子会社の新東京開発(千葉県松戸市)が民事再生手続き中の全建設共同事業組合(東京都東村山市、大原彩希代表)から7月1日付で福島県と熊本県での災害復興支援事業を取得することを決めた。

全建設共同事業組合は1979年に建売住宅の建築工事を行う目的で設立。東日本大震災以降は、被災地復興支援関連工事に事業転換した。宮城県、福島県、熊本県など震災各地での受注が拡大する中、重機などの設備購入の資金負担問題から経営状況が悪化し、4月4日付で東京地方裁判所に民事再生手続きを申し立てていたが、新東京グループがスポンサー企業として名乗りを上げた。

 

ルックホールディングス<8029>、イタリア発の革製品ブランド「IL BISONTE」を買収

◆ルックホールディングス(HD)は12日、イタリアの革製品ブランド「IL BISONTE(イルビゾンテ)」を世界で展開するBisonte Italia Holding S.r.l.(本社ミラノ)を7月1日付で買収すると発表した。ルックHDは1999年から「IL BISONTE」の日本での独占輸入販売を始め、現在、全国に41店舗を展開する。「IL BISONTE」事業はルックHDにとって最大規模の収益事業に成長しているという。買収金額は約109億円(アドバイザリー費用を含む)。

 

UEX<9888>、特殊鋼専門商社の住商特殊鋼を子会社化

◆UEXは、ステンレス鋼など特殊鋼鋼材の販売を手がける住商特殊鋼(東京都千代田区)の全株式を取得し子会社化することを決議した。子会社化に先立ち、住商特殊鋼は会社分割により自動車向け構造用鋼の販売事業を同社親会社の住友商事グローバルメタルズ(東京都千代田)に移管する。そのうえでUEXは会社分割後の住商特殊鋼の全株式を29億1700万円(アドバイザー費用を含む)で取得する。取得予定日は8月1日。

会社分割の対象事業を差し引いた後の住商特殊鋼の売上高は102億円(2018年3月期)。住商特殊鋼は1956(昭和31)年に設立した。ステンレス専門の鉄鋼商社であるUEXは同社を傘下に取り込むことで、物流拠点や配送体制の相互活用などで事業の効率化や競争力向上を目指す。

 

キリン堂ホールディングス<3194>、滋賀県の調剤薬局1店舗を取得

◆キリン堂ホールディングスは10日、子会社のキリン堂(大阪市)を通じて、滋賀県にある調剤薬局1店舗を9月1日付で取得すると発表した。相手先と譲渡価額は非公表。キリン堂は関西を中心にドラッグストアと調剤薬局のチェーンを展開する。

 

きちりホールディングス<3082>、外食フランチャイジーのインドネシアPT Kichiri Rizki Abadiを子会社化

◆きちりホールディングスは、インドネシアで同社外食ブランド「いしがまやハンバーグ」「CHAVATY」をフランチャイズ展開するPT Kichiri Rizki Abadi(ジャカルタ)の株式51%を取得し子会社化することを決議した。インドネシアでの出店を進めたうえで、東南アジアでの展開を目指す。取得価額は約3900万円。取得予定日は2019年7月31日。

PT Kichiri Rizki AbadiはきちりHDが手がける外食事業のフランチャイジーとして今年2月に、現地で貿易業や不動産業を営むPT Mahanaim Sejahtera Mandiriが全額出資で設立した。今回の株式取得により合弁形式で経営にあたることになる。

 

青山商事<8219>、カジュアル衣料「アメリカンイーグル」事業を譲渡

◆青山商事は、衣料販売子会社のイーグルリテイリング(東京都渋谷区)を通じて展開している日本国内でのカジュアル衣料「アメリカンイーグル」事業を、米American Eagle Outfitters,Inc.(AEO)に12月31日を期限として譲渡することを決議した。

青山商事は2010年に住金物産(現日鉄物産)と共同出資(日鉄物産10%出資)でイーグルリテイリングを設立し、AEOのフランチャイジーとしてメンズ・レディースのアメリカンカジュアル衣料を販売してきた。今回、青山商事グループ内の事業戦略上の理由から、2022年2月の契約期限を待たずに当該事業をAEOに譲渡することにした。当該事業の直近売上高は122億9400万円。

 

INEST<3390>、休眠中の情報処理サービス会社のEPARKマネーライフをトリプルヘッドに譲渡

◆INESTは、情報処理サービス子会社で現在休眠中のEPARKマネーライフ(東京都豊島区。売上高―、営業利益△49万6000円、純資産1660万円)の株式90%を、システム開発事業を手がけるトリプルヘッド(東京都港区)に譲渡することを決議した。EPARKマネーライフは2011年設立。譲渡価額は非公表。譲渡日は2019年6月7日。

 

ヒューリック<3003>、日本ビューホテル<6097>を子会社化

◆ヒューリックは7日、日本ビューホテルを株式交換により9月1日付で完全子会社化すると発表した。日本ビューホテルはホテル事業、結婚式場事業、遊園地事業を手がけるが、人手不足に伴う人件費上昇、少子化による婚礼需要の減少、地方遊園地の集客力低下などを背景に事業環境が厳しさを増している。このため、ヒューリックは従来の資本・業務提携関係から子会社化に踏み込む。子会社化を機に、日本ビューホテルはホテル事業に経営資源を集中する。

株式交換比率はヒューリック1:日本ビューホテル1.57で、日本ビューホテル株式1株に対してヒューリック株式1.57株を割り当てる。

両社は2015年10月に資本・業務提携し、ヒューリックが日本ビューホテルを持分法適用関連会社(持株比率約26%)としていた。日本ビューホテルは8月29日付で上場(東証1部)廃止となる予定。

 

沖電気工業<6703>、ブラジルATM子会社のサービス事業などを米NCRに譲渡

◆沖電気工業は、ATM(現金自動預け払い機)を製造するブラジル子会社の金融・リテール・サービス事業を、米NCR(ジョージア州)に譲渡することを決めた。生産機能などは譲渡範囲に含まれていない。当該事業を会社分割して新会社に移管し、この新会社の全株式を譲渡する。

沖電気は2014年にブラジルのItautec社のATM事業を取得し、現地子会社「OKIブラジル」(サンパウロ州)を設立。これまで収益改善に向けて抜本的な構造改革を進めてきたが、赤字が続いており、単独での事業継続は困難と判断し、金融機関に対するサービスやサポート業務などに関する事業を譲渡する。事業譲渡後は、NCRのブラジル子会社に対してATMモジュールを供給する。

譲渡価額は非公表。譲渡予定は2019年12月。

 

サーラコーポレーション<2734>、地場住宅会社の宮下工務店を子会社化

◆サーラコーポレーションは、地場住宅会社の宮下工務店(浜松市。売上高10億8000万円、営業利益7950万円、純資産8億3100万円)の全株式を取得し子会社化することを決議した。

サーラコーポレーションは傘下のサーラ住宅(愛知県豊橋市)を通じて、愛知県、静岡県西部、三重県北部を中心に木造軸組工法による注文住宅の請負・施工、分譲住宅・土地の販売を手がけている。宮下工務店は1988年に設立し、浜松市内の北部を営業エリアとする。

取得価額は非公表。取得日は2019年6月6日。

 

エー・ディー・ワークス<3250>、内装工事の澄川工務店を子会社化

◆エー・ディー・ワークスは、内装工事の澄川工務店(東京都多摩市)の全株式を取得し子会社化した。澄川工務店は1987年に設立した。取得価額は非公表。取得日は2019年4月25日。同日付でエー・ディー・ワークスの米津正五副社長が澄川工務店社長に就いた。

 

ツルハホールディングス<3391>、秋田県大潟村のおおがたむら調剤薬局を子会社化

◆ツルハホールディングスは、おおがたむら調剤薬局(秋田県大潟村。売上高1億7200万円)の全株式を取得し子会社化することを決めた。おおがたむら調剤薬局は調剤薬局1店舗を運営する。取得価額は非公表。取得予定日は2019年7月4日。

 

日本ライトン<2703>、コンタクトイメージセンサー組み立てのフィリピン子会社を台湾社に譲渡

◆日本ライトンはフィリピンでコンタクトイメージセンサー組み立てや半導体部品の加工・検査を手がける子会社のL&K INDUSTRIES PHILIPPINES, INC(売上高8億5700万円、営業利益△8120万円、純資産2億5400万円)の株式65%を、台湾の傑田企業股份有限公司(南投市)に譲渡することを決議した。

L&Kは2年前からフィリピンで、多機能センサー、スキャナーなどの読み取り部分に使われるコンタクトイメージセンサーの組み立て業務を行っている。傑田企業股份有限公司はコンタクトイメージセンサー事業で20年以上の実績を持ち、フィリピンに生産拠点の確保を計画していた。

譲渡価額は45万ドル(約4870万円)。取得予定日は2019年8月中旬。

 

長瀬産業<8012>、食品素材販売・加工の米Prinova Groupを子会社化

◆長瀬産業は食品素材の販売・加工を手がけるPrinova Group,LLC(イリノイ州。売上高841億円、営業利益45億3000万円、純資産96億1000万円)の株式93.6%を取得し子会社化することを決議した。取得価額は6億2100万ドル(約680億円)。取得予定日は2019年7月上旬。

Prinovaは1978年設立で、北米、欧州を中心に食品素材販売から配合品製造、最終製品の受託製造までをトータルに手がける。長瀬産業は2011年に買収した有力バイオ企業、林原(岡山市)の食品素材事業と合わせ、日本、アジア、米州、欧州における事業拡大を目指す。

 

日機装<6376>、粒子計測機器製造子会社のマイクロトラック・ベルなど内外2社を蘭社に譲渡

◆日機装は、粒子計測機器を製造するマイクロトラック・ベル(大阪市。売上高46億9000万円、営業利益5億1200万円)など内外子会社2社の全株式を、オランダの科学機器メーカーのVerder International B.V.に譲渡することを決議した。

譲渡するのはマイクロトラック・ベルのほか、米国でマイクロトラック粒子径分布測定などの製造を手がけるMicrotrac,INC.。日機装は両社を通じて、各種粉体計測機器を中心に事業展開しているが、今回、事業ポートフォリオ見直しの一環として、グループから切り離すことにした。

譲渡価額は非公表。譲渡予定日は2019年6月中。

 

 

情報提供:株式会社ストライク

[初級者のための入門解説]

会社を半年で売却できる?-M&Aのスケジュール- ~ゼロから学ぶ「M&A超入門」③~

 

M&A実務の基本ポイントを、わかりやすく解説する「ゼロから学ぶ『M&A超入門』」シリーズ。

今回は、「全体スケジュール」「従業員や関係者への伝え方」について考えてみたいと思います。「M&Aで相談先は?」「M&Aではどれくらいの期間で売却できる?」「従業員にはいつ伝える?」など、皆さまの疑問にお答えます。

 

〈解説〉

公認会計士・税理士  植木康彦(Ginza会計事務所)

 

 

 

M&Aをすると決めたら


①M&Aの動機

M&Aによる事業売却の動機としては、従前は選択と集中によるノンコア事業の売却、事業再編、資金調達、リタイヤによる事業の売却ケースなどがありましたが、最近は事業承継がらみのケースが多いように感じます。事業承継でM&Aを選択するのは後継者がいないケースが多数です。つまり、親族や役員・従業員の中に後継者がいない場合、事業自体をM&Aで売却する方法が選択されております。

 

 

②M&Aの相談先

M&Aをしようとする場合、先ずはどこに相談したらよいか悩むところです。M&Aの相談先としてまず思い浮かぶのは、顧問の「公認会計士や税理士」です。日本税理士会連合会は、「担い手探しナビ」を運営していて、税理士経由で「担い手探しナビ」に登録することで、売り手であれば買い手を、買い手であれば売り手を探すことができます。しかし、一般的な会計事務所はM&Aの知見が乏しい場合が多いので、この「ZEIKEN LINKS(ゼイケンリンクス)」を使ってM&Aに詳しい会計事務所を探すのも一法です。

 

③M&A仲介会社の利用

また、「M&A仲介会社」を利用するのは一般的な方法です。M&A仲介会社は、M&Aマーケットに広いネットワークを有しているので、売り手、買い手共に短期間のうちに「相手先を探し」てもらうことができ、「売買交渉」「デューデリジェンス」「バリエーション(価値評価)」「売買契約書の作成」までフルパッケージでしっかりと支援してもらえます。他方で、専門家をフルに活用するので最低でも数百万円の費用がかかります。

 

④M&Aマッチングサイトの利用

「マッチングサイト」を使って、基本的なことは自分で対応する方法も、最近は流行っております。マッチングサイトとは、主にインターネット上で、売り手と買い手がそれぞれ「M&A情報」を掲載し、手軽に、かつ安価なコストで、自分自身で「相手先を探せる場所(サイト)」です。

 

端的に言うと、売り手は、まず「ノンネーム」といわれる情報(対象会社が特定できないように、業種、地域、おおよその年商のみ)を掲載して買い手からの応募を待ち、買い手は、業種や地域を絞った上で希望する「M&A候補を探す」ことができます。売り手と買い手がうまく出会えた場合は、次のステップとして、さらに「詳細な情報を交換」して、お互いの希望がマッチすれば「売買条件」を詰め、最終的に「売買契約(M&A)」に至ります。

 

専門家の関与が少なければ少ないほどコストは安価ですむので、中小企業のM&Aに適していると言えます。そうはいっても、多くの中小企業者はM&Aの経験と知見が不足している場合が多いので、マッチングサイトを提供する会社や組織は、公認会計士・税理士やM&Aアドバイザリー等、各種専門家と提携していて、マッチングの場の提供だけでなく、売買交渉やデューデリジェンス、バリエーション業務を支援するケースもあります。

 

⑤M&Aアドバイザリーの特徴と費用感

「M&Aアドバイザリー(仲介会社やマッチングサイト)」のそれぞれの特徴と費用のイメージは以下のとおりです。

 

 

M&Aの全体スケジュール


M&Aの一般的な流れは、以下のとおりです。まずは「相手先探し」から始まり、相手先の候補が見つかると「秘密保持契約」を交わして相手先を調査します。興味があって双方が先に進みたいと思う場合は「トップ面談」し条件面を調整し「基本合意書」を締結します。その後、「買手によるデュ―デリジェンス」と交渉を経て最終的に合意した場合、「売買契約書」を締結します。

 

M&Aに要する時間は、売却理由や売却条件等にも左右されますが、順調に進むケースでは「2、3ケ月」で完結することもありますが、長いケースだと「年単位」でかかることもあります。

 

 

従業員や関係者への伝え方


①従業員への説明のタイミング

M&Aは極めてセンシティブな事柄ですから、M&Aに関与する者は経営者・経営企画担当等に限定し、秘密裏に進めるのが基本です。なぜなら売り情報が漏れた場合の信用不安の拡大、うまくいかなかった時のダメージが大きいためです。そこで、幹部従業員への説明は、「基本合意書の締結」のタイミングが、一般の従業員への説明は売買契約を締結する直前あるいは契約締結日」に説明するのが一般的です。

 

②従業員説明の方法

説明の仕方としては、幹部従業員はキーマンとなる人が多いので経営者が個別に面談し退職されないように留意します。その他の従業員一同を集めた説明会を開催する方法が一般的かと思います。

従業員はM&Aによって、引き続き働けるのか給与条件等の待遇はどうなるのかなど不安を持つのが普通なので、買手側と十分に協議した上で、従業員への説明を行うべきです。

 

③関係者への説明

金融機関や主要な取引先には、経営者が直接訪問して説明した方がよいですし、特に重要な取引先には売買契約締結前に説明をしておいた方がよいと思います。それ以外の取引先や関係者にはクロージング後に送付する挨拶書面で連絡するのが一般的です。

 

 

 

 

 

[中小企業経営者のためのワンポイント解説]

「親族内承継の物的対策・人的対策」~コンサルティングという観点からの『事業承継』とは?④~

 

コンサルティングという観点からみた「事業承継」と題した4回目として、田中信宏先生(公認会計士/税理士法人髙野総合会計事務所)に、事業承継対策における具体的な検討事項について、親族内承継を前提に、お金の対策及び人の対策に分けて解説していただきます。なお、次回は親族外承継のケースをご紹介いたします。

 

〈解説〉

税理士法人髙野総合会計事務所 田中信宏/公認会計士

 

 


【親族内承継 物的対策(モノ・カネ)】

親族内承継を考える時に、承継する会社の財務的健全性の高低により、自社株式及び納税資金に関する承継対策に相違が生じてきます。

 

<健全性が高い場合>
親族間取引の場合、通常相続税評価額を基に会社の株価算定が行われます。とりわけ、健全性が高い会社については、承継する会社の株式の相続税評価額が高く、移転に伴う贈与税・相続税負担が高額になることから、当該税負担に関する対策を準備する必要があります。例えば生前贈与、自社株評価単価引き下げ、事業承継税制(納税猶予)の適用等の対策があります。

 

<健全性が低い場合>
健全性が低い場合、例えば、承継会社が債務超過のケースでは、株式の相続税評価額が低額又はゼロとなり、相続税負担が発生しない可能性が高いため、自社株式の移転に伴う納税対策は不要となります。一方で、承継会社の業績及び資金繰りの問題が発生するため、後継者にスムーズに引き継ぐために、現経営者が後継者への完全な移行までに、経営及び財務基盤の改善(いわゆる事業再生)を果たすことが望ましいです。
【親族内承継 人的対策(ヒト)】
親族内承継の場合、後継者を選定し、後継者の人材育成を実施していくことになります。
この点、事業承継は経営の根幹に関わるため、親族内であるからといってすぐに経営権を全権移譲することは不可能であり、ある程度時間をかけて現経営者が後継者に経営理念の伝承、教育指導、権限移譲を実行していくことが必要となります。また、従業員や取引先への後継者の紹介など、人脈の後継者に対する承継も重要な引継事項となります。

 

 

 

 

 

税理士法人髙野総合会計事務所 「TSKニュース&トピックス」(2019年1月21日)より再編集のうえ掲載

[初級者のための入門解説]

個人版事業承継税制 超入門ガイド(その2)~適用後の手続と注意点~

 

〈解説〉

税理士 村本政彦(税理士事務所クオリス)

 

 

 

前回に引き続き、個人版事業承継税制を、ざっくり、やさしく、わかりやすく解説します。今回のテーマは、「適用後の手続きと留意点」です。「適用後の手続きは?」「取消事由とは?」「どのような方におススメなの?」など、皆さまの素朴な疑問にお答えします。

 

適用後の手続きは?


相続税・贈与税の申告が終わった後は、「3年おき」に、「税務署に届け出」が必要です。

これは取消事由に引っかかっていないかどうかを確認するための届け出です。

 

取消事由??


この制度は、あくまで納税の”猶予”なので、相続や贈与のタイミングで要件を満たしていればよいだけでなく、その後も「要件を満たし続けること」が必要です。

 

次のようなときには、猶予は取消しになります。

・事業をやめたとき

・届け出を忘れたとき

・対象となった事業用資産を売ったり、廃棄したとき(詳しくは後程)

 

取り消しになったらどうなるの?


取り消しになったら、猶予されていた相続税・贈与税を一括で支払わなければなりません。それに加えて、猶予されていた期間の利息も支払う必要がありますが、これも結構な金額となります。

 

えっ!!それは怖いですね。やめたほうがよいのでしょうか?


ケースバイケースですね。

 

猶予税額が少額であれば、他の方法を考えたほうがよいと思います。

 

猶予税額が高額であれば、取消事由に該当するリスクや届け出の事務負担、猶予される税額などを吟味して、熟考です。高額の相続税・贈与税が支払わなくてよくなるのは、大きなメリットだからです。

 

注意点は?


なかなか癖のある制度なので、注意点は結構多いです。

 

~注意点①~

猶予されている間、「担保」が必要です。

 

~注意点➁~

対象の事業資産「買い替える」ときには、あらかじめ手続きが必要です。

 

この制度は、事業を続けていること、対象の資産を使い続けることが猶予を受け続けられる要件ですので、対象資産を売ってしまうと、適用を受けられなくなってしまいます。

なので、買い替えるときは、ちゃんと代わりの資産を買いますよ、という手続きが必要です。

 

また、対象資産が陳腐化して「廃棄」するときにも手続きがあります。

 

~注意点➂~

一番の注意点は、先ほどもありましたが、この制度は、あくまで納税の”猶予”なので、相続や贈与のタイミングで要件を満たしていればよいだけでなく、その後も「要件を満たし続けること」が必要です。

 

細かく言うと、取消要件はとてもたくさんの項目があるのですが、普通の事業者が該当するかもしれない項目はそれほど多くはありません。

 

とはいえ、猶予期間が極めて長期間に及びますし、取消しになってしまうと猶予されている税額の全額を、利息も付けて支払わなければならないことになってしまいますので、適用を受けた後も、この制度に精通した税理士のサポートを継続して受けることは必須です。

 

なんだかいろいろ難しそうですが、この制度は、どんな人におススメ?


まずは、適用マップを見てみましょう。

 

マップを見ると、中小企業の事業承継税制は基本的に会社全体が対象になるのに対して、個人版の事業承継税制は、対象となる「資産が限定」されていることがわかります。そのため、法人成りした上で中小企業の事業承継税制の適用を受けたほうが、一般的には有利です。

 

ただ、中小企業の事業承継税制の適用を受けられない病院・診療所士業の方の利用は考えられます。特に、CTやMRIなどの高額な医療機器がある場合や、比較的新しい建物がありその評価が高い場合などは、有効な場合が多いでしょう。

 

また、何らかの事情で法人成りが難しい場合にも、活用を検討されるとよいと思います。

 

 

 

【個人版事業承継税制 適用マップ】

 

 

 

 

うちは個人病院なんだけど、適用は受けた方がいいの?


これまで見てきた通り、この制度は、手間もかかり、いろいろ注意点も多くある制度です。

それに対し、この制度の唯一のメリットは、相続税・贈与税の納税が猶予されることです。

なので、適用を受けるかどうかを考えるときには、まずは、メリットである猶予税額がいくらなのかを計算することがとても大事です。

その上で、メリットとデメリットを天秤にかけて、慎重に判断していくことになります。

専門家の助言も必ず参考にしましょう。

[初級者のための入門解説]

事業承継の進め方いろいろ ~ゼロから学ぶ「事業承継 超入門」①~

 

事業承継の基本ポイントを、植木康彦先生(Ginza会計事務所/公認会計士・税理士)に分かりやすく解説していただきます。第1回目は、事業承継を検討するうえで、最初に考えなければいけない「事業承継の進め方」について承継方法ごとにメリットやデメリットを踏まえて確認していきます。

 

〈解説〉

公認会計士・税理士 植木康彦(Ginza会計事務所)

 

 

事業承継の進め方はひとつではない

従前、事業承継というと「親から子」のイメージが強かったと思いますが、最近は「M&Aによって外部者に承継するケース」「役員や従業員に承継するケース」、伝統的な「親族に承継するケース」など、承継の方法が多様化しております。

 

 

以下、ケースごとの特徴やメリット・デメリットについて見ていきたいと思います。

 

①M&Aによって外部者に承継するケース

これまで、M&Aで事業を取得する方は、ファンドや事業会社主役でした。しかし、最近は、起業家M&Aの担い手となるケースが増えております。ゼロから事業を始めるのに比べて、顧客や資産を承継できるため、事業を軌道に乗せやすいこと、マッチングサイトの普及で安価に売り先を探すことが可能になったことなどが背景事情としてあるものと思われます。M&Aマーケットの広がりにより、従来は事業承継をあきらめて廃業していたケースでも、事業意欲旺盛な起業家などに事業を承継することが可能となっており、我が国経済全体への影響から見ても好ましいことです。

 

M&Aによる事業承継のメリットは、従業者の引継ぎができるケースが多いこと、売主は株式(事業)売却の対価が得られることでしょう。反面、売却後に契約内容などを巡って争いが起こることもあるので、売買に際しては多少のコストを負担しても専門家に関与してもらう用心が必要といえます。

 

②役員・従業員承継のケース

役員・従業員承継は、親族承継の次に検討されるのが一般的です。事業内容を知り尽くした役員や従業員は、事業承継の適任者といえます。また、取引先や金融機関の理解が得やすいのもメリットです。

 

しかし、ネックは金融機関の個人保証です。本人にヤル気はあっても、後継予定者家族の反対で後継者になれなかったという話は枚挙にいとまがありません。また、従業員は資金力が乏しいケースがあるので株式(事業)買取り資金で苦労するケースも多いといえます。それから、使用人の立場が体に染み付いていると、使用人としては優秀でも経営者としてはそうでないケースも少なくありません。

 

③親族承継のケース

親族承継は従前から事業承継の王道です。従業員や取引先・金融機関の理解が得やすく先代からの帝王学教育も期待できます。また、基本的に無償での承継となるので、特例事業承継税制を利用すれば、一定の要件を満たす必要がありますが相続税や贈与税無税での承継も可能です。反面、血のつながりを優先した場合、不適格な後継者が誕生する恐れがあります。

 

 

3つの事業承継方法の主なメリット・デメリットを比較すると、以下のとおりです。

 

 

進める際のポイントは?

事業承継の課題の一丁目一番地は、早く着手することです。

そして2番目は、先代経営者がしっかり責任を持って承継を全うすることです。

 

以下、それぞれについて説明します。

 

①事業承継は早めに

事業承継の手続には、それなりに時間がかかります。

上記の“進め方の選定”に際しても、親族内に後継者がいるかいないか、いたとして適任者かどうか、役員・従業員はどうかなどの見極めには時間を要します。進め方が決まったとしても、次号以下で説明するそれぞれの阻害要因の拾い出しや環境づくりなど、事業のバトンタッチには年単位の時間がかかるのが普通です。

 

先代経営者も加齢によって段々と気力・体力に支障が生ずるでしょうから、年齢で言えば60~65歳になったら着手するのがよいと思います。先代経営者はそこで引退するというよりも、後継者教育や指導・監督にシフトしてゆくのが理想的かと思います。

 

②しっかり責任を持って全うする

面倒なことは先送りにしたいのは理解できます。俺が死んだら後は好きなようにしてくれという人は意外に多くいらっしゃいます。遺言の場合もそうですが、それでは残された方はたまりません。個人財産の相続の場合でも相続人は大変になることが多いのですが、事業承継は企業規模が大きくなればなるほど影響を受ける従業員や取引先も多くなるので、先送りはあまりにも不誠実な対応です。

 

自分が創業した事業、あるいは、承継した事業は、きちんと自分の手で事業承継をやり遂げてこそ、立派な経営者といえるのではないかと思います。

 

事業承継において大切なことは何か?

事業承継において何が一番大切かと聞かれたら、“創業の精神”と“変革を恐れないマインド”を承継することではないか、と私は思います。

 

①創業の精神

創業の精神は、経営理念にほかなりません。

 

朝礼で毎日復唱したり、会議室や目に入る場所に掲示したり、経営理念の浸透には様々な方法があり、歴史ある企業ほど経営理念の浸透にあたっている感があります。

なぜ自社が存在するのか、その答えは創業の精神にあり、社会に必要とされる存在意義があるはずですから、その精神を承継せずに事業承継は成り立たないと思います。

 

②変革を恐れないマインドを承継すること

どんな事業にもライフサイクルがあります。

その期間は30年とか50年とか言われますが、起業時には新しいタイプの事業であっても、そのままではやがて終焉を迎えます。長く続いている企業は、変革し、時代の環境変化にうまく適合している企業です。花札からゲーム会社に変革した任天堂、パソコンから通信事業に変革したアップルなど代表例でしょう。しかし、多くは変革できずに消滅してしまう事業が多いのも事実で、それくらい変革は難しいということなのでしょう。

 

過去の成功体験を棚に上げて、新しい事柄に如何にチャレンジしてゆけるか、創業の精神と共に変革を恐れないマインドを承継することが大切です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

[ワンポイント解説]

事業承継税制の特例 ~『後継者要件』について解説~

 

〈解説〉

税理士法人髙野総合会計事務所 深川雄/税理士

 

 

平成30年度税制改正により「事業承継税制の特例措置」において、後継者の要件が緩和されました。これまでの「一般措置」では、納税猶予の対象となる後継者は1名しか認められておりませんでしたが、「特例措置」では、最大3人の後継者への承継が可能になりました。その結果、会社の実情に合わせた多様な承継方法が選べるようになりました。

 

1.後継者の要件

具体的な後継者の要件は下記になります。

 

2.注意点

贈与より特例措置の適用を受ける場合、贈与の日まで継続して3年以上にわたり役員である必要があるため、計画的に後継者を役員に選任する必要がございます。株式は贈与又相続により取得することが要件となっておりますので、売買による承継は納税猶予の対象とならない点ご注意ください。複数人の後継者を会社の代表者にすることで、後々の運営に問題が生ずることもあります。将来の会社運営について十分な検討を行ったうえで、後継者を選ぶ必要がございます。

 

 

税理士法人髙野総合会計事務所 「TSKニュース&トピックス」(2019年1月11日 )より再編集

 [解説ニュース]

 介護施設等に入所後、相続が発生した場合の居住用財産の譲渡所得と相続税の取扱い

 

〈解説〉

税理士法人タクトコンサルティング(関口正二/税理士)

 

1.概要


新しい元号となり「人生100年時代」を見据えた生き方に対する対応が必要となっています。
配偶者の死別等により単身の高齢者が増加しています。一人暮らしを続けてきたものの、体調面から介護が必要となり、家族に迷惑をかけたくはない等との理由から自宅から介護施設等に入所するケースが今後も増加していくことが予想されます。
今回は、自宅から介護施設等の入所後に相続が発生した事例での税務上の取扱いを解説します。

 

2.介護施設等入所後、自宅の売買契約中に相続が発生した場合の譲渡所得と相続税の取扱い


【事例】

母は、亡父から相続した自宅の土地建物で一人暮らしをしてきましたが、介護施設の入所(入所時に入所一時金及び敷金支払済)を機に空き家となった自宅土地建物を譲渡するため不動産売買契約を締結しました。

 

不動産売買代金       総額  9千万円
売買契約日(2019年1月) 手付金   2千万円
残金決済日(2019年4月末) 残金  7千万円

 

しかし、残金決済日直前の2019年4月中旬に母に相続が発生しました。居住用財産の譲渡特例及び相続税の取扱いはどうなりますか。

 

【回答】
(1)譲渡所得の取扱い

 

土地建物の譲渡所得の金額の計算上「総収入金額に計上すべき時期」は、納税者の選択により「資産の引き渡しがあった日」または「譲渡契約の効力発生の日」のいずれかとすることができます。

 

「譲渡契約の効力発生の日」を選択して亡母の準確定申告で譲渡所得の申告をした場合には、亡母の居住用財産(住まなくなってから3年を経過する日の属する年の12月31日までの譲渡)として居住用財産の譲渡特例(措法35)の適用が可能となり税務上有利となります。また、譲渡所得に係る個人住民税の納税義務者は譲渡した翌年の1月1日時点で住所地がある方となります。よって、亡母の譲渡所得の住民税は発生しないことになります。

 

また、「資産の引き渡しがあった日(残金決済日)」を選択し相続人の確定申告で所得税に係る譲渡所得の申告をすることも可能です。この場合には、相続人は居住していなかったため居住用財産の譲渡特例(措法35)は適用不可です。しかし、相続財産の譲渡として相続税の取得費加算特例(措法39)の適用は可能です。

 

 

(2)相続財産、相続債務の取扱い

 

売買契約中の土地等及び建物について、売主に相続が開始した場合には、相続等により取得した財産は、当該売買契約に基づく相続開始時における残代金請求権となります。本事例では残金の7千万円が未収入金として相続財産となります。

 

相続財産が土地等ではないため小規模宅地等の相続税の課税価格計算の特例(措法69の4)の適用の検討は不要です。

 

相続発生により介護施設は退去と同様となり、入所時に支払った入所一時金(前払金)の一部及び敷金が相続人に返還されることとなります。この返還された金額は、亡母の金銭債権として相続財産に該当しますのでご注意ください。

 

また、上記(1)において「譲渡契約の効力発生の日」を選択することで亡母の準確定申告において発生した所得税等は、亡母の債務として相続税の債務控除の対象となります。

 

3.老人ホーム入所後の自宅敷地の小規模宅地等の特例


【事例】

母は、7年前に一人暮らしの自宅から介護付の老人ホームに入所しましたが2019年2月に相続が発生しました。自宅は、3年前からマイホームを持っていなかった次男家族が居住しています。
この自宅敷地について特定居住用の小規模宅地等の特例(措法69の4)の適用は可能でしょうか。

 

【回答】

老人ホームに入所したとしても、下記の要件を満たすことにより、従前の自宅敷地は特定居住用の小規模宅地等の特例が適用できます。

 

(1)被相続人が介護保険法等の要介護認定、要支援認定を受けていたこと(措令40の2②一)。
(2)入所施設が老人福祉法、介護保険法等に規定する一定の施設であること(措令40の2②一)。
(3)介護施設等入所後に、従前居住していた家屋を事業の用又は被相続人等以外の居住の用に供していた事実がないこと(措令40の2③)。

 

本事例では、母の施設入所後に自宅が新たに他の者(次男家族)の居住の用に供されているため、上記(3)の適用要件を満たしておらず、小規模宅地等の特例の適用はできません。介護施設等入所後の自宅の用途は、相続税申告において注意を要します。

 

 

 

 

 

 

 

税理士法人タクトコンサルティング「TACTニュース」(2019/05/27)より転載

[事業承継・M&A専門家によるコラム]

事業承継税制の注意点~事業承継に活用したい手法~

 

〈解説〉

ビジネス・ブレイン税理士事務所(畑中孝介/税理士)

 

 


シリーズ事業承継の活用手法として、中小企業の事業承継や財産の分散防止に効果的な信託などを解説していますが、今回は「事業承継税制の注意点」をお送りします。

 

一般の事業承継税制と特例事業承継税制の違いは以下の通りです。

 

・対象株式:2/3 → 全株
・相続猶予対象:80% → 100%(従来は実質53%→100%へ)
・雇用確保要件:5年平均80%維持 → 実質撤廃
・贈与者:先代経営者のみ → 複数株主(一般も同時に改正)
・受贈者:後継経営者1人 → 後継経営者3名まで(代表権&株10%以上)
・相続時精算課税:推定相続人等 → 推定相続人等以外も適用可
・株価減免要件:民事再生等のみ → 譲渡・合併・解散時を加える

 

など大幅に拡充されています。

 

 

いままでは、50%減免だったものが”100%減免”になり、先代経営者→後継者への1対1にしか使えなかったものが “先代経営者+配偶者+その他”後継者へと贈与者も大幅に拡充されていますのでかなり使い勝手のいい制度となったと言えます。

 

 

 

しかし、いくつかの注意点がありますので下記に記します。

 

 

(1)事業承継税制はあくまでも“納税猶予”です。取消要件に当てはまった場合には課税されます。特に資産保有型会社や資産運用型会社に該当した場合には猶予が取り消され課税されます!

 

(2)その為、いつ猶予が取り消されてもいいように株価対策はしっかりし、株価を引き下げてから実施すべきでしょう!

 

(3)資産保有型会社資産運用型会社にならないためには5名以上の従業員がいるなどいくつかの要がありますので確認しておきましょう

 

(4)後継者が複数も可能ですが、後年で主導権争い起きないようもう一度考えることをお勧めします。

 

(5)推定相続人以外にも事業承継可能ですが、相続人に税負担のしわ寄せが行きますので注意しましょう

 

(6)種類株等を承継後に後継者以外が保有している場合には納税猶予は使えません。

 

(7)後継者にはいい制度ですが、後継者以外にも目を配る必要があります。特に遺留分を侵害していないかなど確認しましょう。

 

 

 

 

「ビジネスブレイン月間メルマガ(2018/08/20号)」より一部修正のうえ掲載

 

[解説ニュース]

相続時精算課税を選択した非上場株式に係る贈与税の納税猶予:贈与者よりも先に受贈者が死亡した場合

 

〈解説〉

税理士法人タクトコンサルティング(山崎信義/税理士)

 

 

1.相続時精算課税の贈与者が死亡した場合の相続税


(1)概要

相続時精算課税は、その年の1月1日時点で20歳以上である個人が、同日時点で60歳以上である父母 又は祖父母(原則)から財産の贈与を受けた場合、贈与税の申告期限までに「相続時精算課税選択届出書」その他一定の書類を贈与税の申告書に添付して納税地の所轄税務署長に提出したときに選択できる税制です(相続税法21条の9等)。

 

相続時精算課税の適用を受ける贈与の贈与者(「特定贈与者」)が死亡した場合、その適用を受けた受贈者(「相続時精算課税適用者」)の相続税額は、その死亡時までに特定贈与者から贈与を受けた相続時精算課税の適用を受ける贈与財産の贈与時の価額と、特定贈与者から相続又は遺贈(「相続等」)により取得した財産の評価額と合わせて相続税額を計算し、既に課された相続時精算課税による贈与税を控除して算出します(同21条の14、21条の15)。

(2)相続時精算課税適用者の有していた相続税の納税に係る権利義務の承継

特定贈与者の死亡以前に、その特定贈与者に係る相続 時精算課税適用者が死亡した場合、同適用者の相続人は、同適用者が有していた[相続時精算課税の適用を受けたことによる納税に係る権利又は義務]を承継します(同21条の17第1項)。

 

例えば、特定贈与者のAの死亡前に相続時精算課税適用者の長男Bが死亡した場合、Bの相続人は、Aが死亡した時に長男の代襲相続人としてAから相続で取得した財産の価額に、Bが相続時精算課税の適用を受けたAからの贈与財産の価額(Bが贈与を受けた時の価額)を加えて、Aに係る相続税額を計算します。

 

2.非上場株式等に係る贈与税の納税猶予(一般措置)


(1)概要

中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律に規定する「中小企業者」に該当する会社で、同法による都道府県知事の認定を受けたものの株式について、その会社の代表権を有していた先代経営者(「贈与者」)から贈与を受けた受贈者が、一定の要件を満たすその会社の後継者(「経営承継受贈者」)である場合は、経営承継受贈者が納付すべき贈与税のうち、その非上場株式 (一定の部分に限る。以下「特例受贈非上場株式」)に対応する額の納税が、その贈与者の死亡の日まで猶予されます(租税特別措置法(措法)70条の7第1項)。

(2)特例受贈非上場株式に係る猶予税額の免除

(1)の猶予税額は、①その贈与者の死亡より先に経営承継受贈者が死亡した場合、②経営承継受贈者より先にその贈与者が死亡した場合のいずれのときにも、その全部又は一部が免除されます(同第15項1号、2号)。

(3)(2)②の場合の特例

(2)②の納税猶予の適用を受けていた場合において、経営承継受贈者より先に贈与者が死亡するなど一定の要件を満たすときは、経営承継受贈者は、(2)②のとおり猶予税額が免除されるものの、贈与税の納税猶予の適用を受けた非上場株式を贈与者から相続等により取得したものとみなされ(措法70条の7の3第1項前段)、相続税の課税対象とされます。
なお、この規定は、(2)①の場合には適用はありません(同かっこ書)。

 

3.贈与者よりも先に経営承継受贈者が死亡した場合(=2(2)①)の相続時精算課税に係る相続税額の計算


相続時精算課税を選択して贈与税の納税猶予の適用を受けた受贈者が贈与者よりも先に死亡した場合には、同適用者(=経営承継受贈者)の相続人は1(2)の適用を受け、贈与者が死亡したときに、同適用者が負う相続時精算課税の義務(特に1(2)の下線部の計算)を負うのではないかという疑問が生じます。

 

この点については、平成31年度税制改正により贈与者よりも先に経営承継受贈者が死亡した場合、2(2)より免除を受けた猶予税額に対応する特例受贈非上場株式については、1(1)の計算規定が適用されず、贈与者に係る相続税額の計算には含まれないこととされました(措法70の7第13項9号)。ただし相続時精算課税の適用を受けた同株式以外の財産には、原則通り1(1)の規定が適用されます。

 

なお「非上場株式等に係る贈与税の納税猶予の特例措置」(措法70の7の5)においても、上記と同様の取扱いがなされます(同第10項)。

 

 

 

 

 

 

 

税理士法人タクトコンサルティング「TACTニュース」(2019/05/20)より転載

[ワンポイント解説]

事業承継税制の特例 ~『特例承継計画』について解説~

 

〈解説〉

税理士法人髙野総合会計事務所 高中恵美/税理士

 

 

平成30年度税制改正により「事業承継税制の特例措置」が創設されました。「特例措置」はこれまでの事業承継税制を抜本的に見直した10年間限定の時限立法で、株式の贈与や相続に係る税負担が100%猶予されます。特例措置の適用を受けるためには、「特例承継計画」を都道府県庁に提出し、確認を受ける必要があります。特例承継計画を提出することができる期間は平成30年4月1日~令和5年3月31日までの5年間に限られますので注意が必要です。

1.特例承継計画の作成

特例承継計画には、次の事項を記載します。記載内容について認定経営革新等支援機関による指導及び助言を受ける必要があります。

 

1220.bmp

2.実務上のポイント
特例承継計画を提出しても、その後、必ずしも事業承継税制の適用を受けなければならない訳ではありません。適用の可能性がある場合には、令和5年までに特例承継計画を提出することをお勧めします。特例後継者が事業承継税制の適用を受けた後は、その後継者を変更することはできませんが、特例後継者を二人又は三人記載した場合で、まだ株の贈与・相続を受けていない後継者については変更をすることができます。

 

 

税理士法人髙野総合会計事務所 「TSKニュース&トピックス」(2018年12月11日)より再編集のうえ掲載

[解説ニュース]

底地の相続税法上の評価 VS 不動産鑑定士による評価

 

〈解説〉

税理士法人タクトコンサルティング(亀山 孝之/税理士)

 

 

1 はじめに


相続財産の中に土地(宅地)があり、それが貸地、すなわち、借地権(普通借地権とします。)がある土地である場合、その土地のいわゆる底地としての相続税法上の評価額は、「通常の自用地(=借地権がない土地)としての価額からその借地権の価額を控除した金額」(借地権価額控除方式)であると規定されています(財産評価基本通達25(1))。上記「借地権の価額」については同27が「借地権の価額は、自用地としての価額に、借地権の売買実例価額、精通者意見価格などをもとに地域ごとに国税局長の定める割合を乗じて計算した金額によって評価する」と定めていて、地価の高い地域ほどその割合も高くなり、東京の中心的商業地では80%~90%(よって底地は20%~10%)、住宅地では60%~70%(同40%~30%)の割合の場合が多いようです。なお、借地権の割合は10%刻みで30%~90%(国税庁のホームページで公表)です。

 

2 底地の相続税法上の評価(借地権価額控除方式)VS不動産鑑定士による評価


借地権価額控除方式により算定される相続税法上の底地の評価額に対し、納税者が主張する不動産鑑定士による底地の評価額はケースバイケースですが、国土交通省が定める不動産鑑定評価基準に従いながらも、低廉な地代を基準とした収益還元価格を軸に主張されることが多く、借地権価額控除方式による評価額のせいぜい半分程度になる場合が少なくないようです。後者の評価額の方が低いので、それを相続税の評価額として採用すれば、相続税額は当然低くなります。

 

しかし、一般的に、後者の評価額による相続税の計算はほぼ認められません。評価通達に従う税務署が認めないのはもちろん、たとえ裁判で争っても、特別な事情がない限り認められない場合がほとんどです。

 

3 底地の相続税法上の評価で不動産鑑定士による評価が認められない理由


まず、納税者側の不動産鑑定士による底地の評価が、その顧客である納税者の希望に沿って評価の引き下げを追求するあまり(?)、その底地に係る鑑定評価上の要素につき、不合理なことを無理に採用して、そこを課税当局から突かれ、主張する鑑定価額の合理性に疑問を生じさせてしまう傾向があります。そのような恣意的な評価をしていないとしても、根本的には次の理由(不動産鑑定士による評価の当否が争われた平成29年3月3日東京地裁判決などの判示を整理したもの) から、収益還元法を軸とする底地の評価自体が相続税法の評価では認められ難い状況にあります。

 

すなわち、底地の市場性は、借地権のそれとは全く異なる状況にあり、底地のみが売買されることがあるとしても、それは、借地契約の当事者間=借地人と地主間での売買が通常です。第三者への底地のみの売買については市場が相当限定され、その土地の近隣において純粋な第三者による取引事例は把握できないことが通常です。そして、以上の状況から、底地については、第三者と売買を行うような一般的な市場、そこにおける相場を想定することは困難であり、売買があるとすれば将来的に借地契約の当事者間において行われることが通常であるという特性を持つ財産である、という基本的な認識が覆し難いものとしてあります。

 

このような特性をもつ財産としての底地の客観的交換価値(これが時価の一般的意義で、相続税法上の時価の意味もこれです。)の把握では、①底地の状態が当分継続することを前提に、その状態で地代収入が生じることにより得られる経済的利益と②将来、底地の取引形態として通常である借地契約の当事者間での売買(借地権者による底地の買取等)が行われるであろうことを前提に、その売買により制限のない完全所有権に復帰することになるという経済的利益の二つ(の現在価値)を考慮すべき、ということになります。この考え方は、実は、鑑定評価基準における底地の価格の考え方とも基本的に一致しています。

 

以上により、将来的にも完全所有権への復帰がおよそ考え難いような特別な事情がある場合はともかく、借地契約終了後に完全所有権に復帰することが予定される通常の借地契約に係る底地の時価は、同契約存続中の地代等の純収益に基づく収益還元法による価値のみで捉えるべきではなく、同契約の終了後の借地権の負担のない所有権に対応する価値をも含むものとして捉えるべきということになります。上記の地代等による収益還元法による価値のみでは、底地の客観的交換価値=時価の全てを適切に表すとはいえない一方、その時点の自用地としての価額から借地権の価額を控除した価額とする方法は、その時価に接近する方法として相応の合理性があるといえます。

 

 

 

 

 

 

 

税理士法人タクトコンサルティング「TACTニュース」(2019/05/13)より転載

[初級者のための入門講座]

個人版事業承継税制 超入門ガイド(その1)~簡単な仕組みと適用を受けるまで~

 

〈解説〉

税理士  村本政彦(税理士事務所クオリス)

 

 

 

「個人版事業承継税制」という制度ができました。

平成31年度税制改正の目玉の一つです。

個人事業主の方の中には、事業承継を考えられていて、どんな制度なのか?使った方がいいのか?興味関心がある方がいるのではないでしょうか。

そんな方のために、この制度をざっくり、やさしく、わかりやすく解説します。

どんな制度なんですか?

個人事業主が事業承継、例えば、息子さんや娘さんに継がせたいとき、事業で使っている土地や建物、機械などを、どこかの時点で渡さないといけません。

 

普通は、継がせるときにあげるか、自分が死んだときに相続させるか、ですよね。そのときに問題になるのが、贈与税や相続税です。

 

事業で使っている土地や建物や機械などが高額だと、多額の税金がかかってくることがあります。その負担が重いと事業に支障が出てくることもあるかもしれません。

 

この制度を使うと、後継者が事業を続けている限り、必要な手続きをしている限り、その納税が猶予されます。

最終的に、後継者が亡くなったときや、この制度を使って次の後継者に継がせたときに、免除になります。

 

 

 

 

相続税がかからないってこと?

まずは納税が猶予されます。事業をちゃんと続けられたら、最終的に後継者が亡くなったときや、この制度を使って次の後継者に継がせたときに、免除になります。

 

誰でも受けられるの?

青色申告をしている個人事業主(事業所得者)であれば、対象になります。

後継者の方は、すでにその事業に従事している必要があります(例外あり)。

それに加えて、贈与の場合には、3年以上従事していて、20歳以上であることも必要です。

 

どんな業種でもOK?

不動産賃貸業など一部の業種は受けられません。

 

 

事業に使っている資産なら、なんでもOK?

なんでもではないです。受けられる資産は決められています。

 

・土地(400㎡まで)

・建物(800㎡まで)

・構築物、機械装置、工具、器具備品、船舶など

・営業車(青ナンバーや黒ナンバー)、貨物運送用の一定の自動車

・乳牛、果樹、特許権など

 

適用までの手続きは?

まずは「個人事業承継計画」という計画書を作って、都道府県に提出します。

(令和6年3月31日まで)

 

実際に、贈与を受けたり、相続で受けたりしたときに、申告期限までの間に、都道府県にこの制度の適用を受けたい旨の認定申請書を提出します。

 

別途、税務署に、開業届や青色申告の承認申請も、それぞれの期限までにしておく必要があります。

 

都道府県から認定を受けたら、申告期限までに、その認定書などを申告書と一緒に税務署に提出します。別途、税務署へ担保の提供も必要です。

 

 

 

 

この制度は注意点が多い制度なので、必ず専門家の指導やサポートを受けてください。