[解説ニュース]

【Q&A】契約者の変更があった生命保険契約に係る死亡保険金等の課税関係

 

〈解説〉

税理士法人タクトコンサルティング(山崎 信義/税理士)

 

 

[関連解説]

■令和5年度税制改正:贈与税の相続時精算課税の見直し

■相続時精算課税に係る相続税の納付義務の承継があった場合の相続税額の計算

 

 

 


【問】

Aさんは、X保険会社と平成30年に被保険者を子B、死亡保険金受取人を孫C(Bの子)とする生命保険契約を締結し(解約返戻金あり)、保険料を一時払いしました。なお、同契約については令和6年1月に契約者がAさんから子Bに変更されています。
この生命保険契約に係る課税関係について、以下の通りお尋ねします。

【問1】

令和6年の契約者変更時においては、どのような課税関係が生じるのでしょうか。

【問2】

令和6年の契約者変更後、Aが存命中に子Bが死亡し、孫Cが死亡保険金を取得した場合、どのような課税関係が生じるのでしょうか。

【問3】

令和6年の契約者変更後、子Bが存命中にAが死亡した場合、どのような課税関係が生じるのでしょうか。

【問4】

【問3】のA死亡後に子Bが死亡し、孫Cが死亡保険金を取得した場合、どのような課税関係が生じるのでしょうか。

【回答】

1.結論


(1)【問1】の場合、契約者変更時には課税関係は生じません。

 

(2)【問2】の場合、Aから孫Cに贈与があったものとみなされ、Cに贈与税が課税されます。

 

(3)【問3】の場合、Bが旧契約者のAから生命保険契約に関する権利を相続により取得したものとみなされ、Bに相続税が課税されます。

 

(4)【問4】の場合、被相続人かつ契約者の子Bが、Aの支払った保険料を負担したものとされ、孫CはBから死亡保険金を相続により取得したものとみなされて、Cに相続税が課税されます。

 

 

2.解説


(1)【問1】の課税関係

 

相続税法では、被保険者の死亡により保険事故が発生した場合に、死亡保険金受取人が保険料を負担していないときは、保険料の負担者から保険金を相続、遺贈又は贈与により取得したものとみなして課税する旨を定めています(同3条、5条)。

 

一方、保険料を負担していない保険契約者の地位は、相続税・贈与税の課税上は財産的価値のあるものとは考えられておらず、契約者が保険料を負担している場合であっても、契約者が死亡しない限り課税関係は生じないものとしています。

 

したがって契約者の変更があった場合、その変更時に新契約者のBに贈与税等が課税されることはありません(参考:国税庁質疑応答事例「生命保険契約について契約者変更があった場合」)。

 

 

(2)【問2】の課税関係

 

【問2】の場合は、その保険契約に係る保険料の全部が保険金受取人C以外のAによって負担されているので、その保険事故(被保険者Bの死亡)が発生した時において、保険金受取人Cが、その取得した保険金の全額をAから贈与により取得したものとみなされ、Cに贈与税が課税されます(相続税法5条1項)。

 

 

(3)【問3】の課税関係

 

【問3】の場合は、まだ保険事故(被保険者Bの死亡)が発生していない中、その保険契約に係る保険料の全額を負担したAが死亡し、かつ死亡したA以外の者(B)がその生命保険契約の契約者であるため、Bがその生命保険契約に関する権利(解約返戻金請求権等)をAから相続により取得したものとみなされ、Bに相続税が課税されます(相続税法3条1項3号)。

 

この場合の生命保険契約に関する権利については、Aの相続開始の時に、その契約を解約するとした場合に支払われる解約返戻金の額により評価されます(財産評価基本通達214)。

 

 

(4)【問4】の課税関係

 

上記(3)のとおり、Bがその生命保険契約に関する権利をAから相続により取得したものとみなされた場合、そのみなされた時以後はAが支払った保険料はBが自ら負担したものとみなされます(相続税法基本通達3-35)。

 

したがって【問4】の場合は、Bの死亡によりBが保険料の全額を負担した死亡保険金を相続人のCが取得したことになるので、CがBからの相続により死亡保険金を取得したものとみなされ、Cに相続税が課税されます(相続税法3条1項1号)。また[500万円×法定相続人の数]を限度額とする、死亡保険金に係る相続税の非課税規定の適用対象とされます(同12条1項5号)。

 

 

 

 

税理士法人タクトコンサルティング 「TACTニュース」(2024/3/25)より転載

[税理士のための税務事例解説]

事業承継やM&Aに関する税務事例について、国税OB税理士が解説する事例研究シリーズです。

今回は、「M&A後の会社に従業員として勤務する元役員に係る給与」についてです。

 

[関連解説]

■【Q&A】特例経営承継期間中に事業が立ち行かなくなった場合の取扱い

■【Q&A】個人版事業承継税制について ~先代事業者が医師、後継者が歯科医師の場合~

 

 

 

 

 


[質問]

H社の株主兼代表取締役甲(所有株式65%)及び株主兼取締役乙(所有株式35%)は、M&Aにより第三者に所有株式の全てを売却し、同時に役員を辞任し、それぞれ役員退職金を受領する予定です。
乙は、役員辞任後も営業能力を買われ、H社に従業員として残る予定です。乙のH社役員時の報酬は32万円でしたが、H社従業員としての給与は20万円の予定です。
元役員乙に対し、引き続き従業員として上記金額を支給しても問題はないでしょうか。

 

 

 

[回答]

M&A等により企業資本主が変更になった後において、旧役員が、同一社において、経験を生かして従業員として勤務関係を継続することはままあることであって、その者が同社の経営に従事しないのであれば、税務上何ら問題はないものと存じます。

 

 

 

 

 

 

税理士懇話会事例データベースより

(2023年8月29日回答)

 

 

 

 

[ご注意]

掲載情報は、解説作成時点の情報です。また、例示された質問のみを前提とした解説となります。類似する全ての事案に当てはまるものではございません。個々の事案につきましては、ご自身の判断と責任のもとで適法性・有用性を考慮してご利用いただくようお願い申し上げます。

 

 

 

 


[解説ニュース]

売却する不動産にある遺品の片付け費用が譲渡費用と認められなかった事例

 

〈解説〉

税理士法人タクトコンサルティング(遠藤 純一)

 

 

[関連解説]

■入居者募集広告を出していても空室とされ小規模宅地等特例が否認された事例

■マイホーム買換特例の適用状況などについて

 

 


1.はじめに


売却する不動産に遺品が残っている場合があります。これら遺品の整理業務については、最近では専門の遺品整理業者が多数存在しており、それだけニーズが多い状況であることがわかります。

 

それもそのはず、遺品を残したままでの引渡しでは買主が通常、嫌がるからです。当然、売買契約書では、遺品の整理について売主側での処理を前提に引渡しを実行する契約を締結することが良く行われるようです。

 

この場合、売主側で気になるのが、遺品の片付け・整理費用が税務上、譲渡費用になるかどうかという点です。最近、この点を争点として、結論として遺品片付け費用が譲渡費用と認められなかった裁決事例が明かになっています(国税不服審判所、令和5年9月11日)。今回はこれを紹介します(本件はこれ以外の争点もありますが、割愛します)。

 

 

2.事案の概要


請求人Aさんは、父親と母親から賃貸不動産(土地・建物)と親と住んでいた住宅(土地・建物)などを相次いで相続し、平成30年7月に買主との間で、上記不動産を売却する旨の契約を締結し、平成31年1月25日、上記不動産を買主に引き渡しました。

 

その際、建物の中に残存していた遣品の片付け費用として300,000円を支払い、遺品は、Aさんが引き取り、自宅で保管していたといいます。

 

申告では、添付した「譲渡所得の内訳書」には、上記不動産を譲渡するために支払った譲渡費用として、仲介手数料及び収入印紙代のほか、遺品片付け費用300,000円等がそれぞれ記載されていました。

 

 

3.税務署の対応


所轄の税務署は、令和3年に調査し、「遺品片付け費用は譲渡所得の計算上、讓渡費用には該当しない」として所得税の更正処分・過少申告加算税の賦課決定をしたところ、これを不服としてAさんが国税不服審判所(以下、「審判所」という。)へ審査請求したものです。

 

 

4.審判所の判断


争点は、遺品片付け費用は、不動産の譲渡所得の金額の計算上控除される譲渡費用に当たるか否か。

 

審判所は、「資産の譲渡に当たって支出された費用が譲渡費用に当たるかどうかは、一般的、抽象的に当該資産を譲渡するために当該費用が必要であるかどうかによって判断するのではなく、現実に行われた資産の譲渡を前提として、客観的にみて、その譲渡を実現するために当該費用が必要であったかどうかによって判断すべきものであると解される」と譲渡費用についての基本的な考え方を示しました。

 

次に審判所は、所得税基本通達33−7について、「譲渡費用とは、資産の譲渡のために直接要した費用及び当該資産の譲渡価額を増加させるため当該譲渡に際して支出した費用をいうものと定めた上で、当該資産の修繕費、固定資産税その他その資産の維持又管理に要した費用は、譲渡費用に含まれないことに留意する旨定めている」と指摘し、譲渡費用の基本的な考え方に沿うものとしました。これを前提に審判所は、次のような事実関係を指摘しています。

 

「売買契約における特約事項(動産の撤去の特約)においては、不動産の建物内に構築物、動産がある場合は、不動産の引渡日までに売主(請求人)の責任と負担において処分・除去するものとし、また、不動産の引渡し時において残存する構築物、動産等一切について、売主(請求人)はその所有権を放棄するものとし、引渡し後、それらの買主(本件譲受人)による処分について何らの異議を申し立てないものとする旨が定められている」。

 

また、買主の取締役が答えたところによると「上記特約は不動産を売買する場合に一般的に使用する条項」だといいます。
これを受けて審判所は、Aさんがした遺品片付けは「特約事項に基づいて、請求人の責任と負担においてされたもの」と認定しましたが、「売買契約における代金に対し請求人の主張する遺品片付け費用は300,000円にすぎない」こともあって、「不動産の引渡し時において残存する構築物や動産等一切について、売主はその所有権を放棄するものとし、引渡し後、それらの買主による処分について何らの異議を申し立てないものとする旨が定められていることからすると、仮に遺品の片付けがされていなかったとしても、特約事項を理由に、不動産の譲渡が実現しなかったとは認め難い」としました。

 

さらに審判所は「遺品は請求人が引き取り、自宅で保管している」ことも指摘し、最終的に「遺品を整理する目的で遺品片付け費用を支出したとみるのが相当であり、特約事項の内容に照らしても、客観的にみて、譲渡を実現するために遺品片付け費用が必要であったとは認められない」と判断しています。

 

 

 

 

税理士法人タクトコンサルティング 「TACTニュース」(2024/2/26)より転載

[解説ニュース]

【Q&A】個人が賃貸しているマンションの管理組合に支払う修繕積立金と所得税の取扱い

 

〈解説〉

税理士法人タクトコンサルティング(山崎 信義/税理士)

 

 

[関連解説]

■マンションの相続税評価が時価の6割水準めどに引上げへ

■リストラで借換えた賃貸不動産の借入金の利子が必要経費になる範囲

 

 

 


【問】

甲さんは、区分所有マンションを3戸所有し、賃貸の用に供しています。甲さんの所得税に係る不動産所得の金額の計算上、マンションの管理組合に支払う修繕積立金は必要経費に算入できますか。

【回答】

1.結論


甲さんが下記2(2)②で述べる事実関係の下で修繕積立金の支払いをしている場合は、その支払期日の属する年分の必要経費に算入することができます。

2.解説


(1)不動産所得の計算上控除する必要経費

 

①必要経費の範囲

 

所得税の不動産所得の金額の計算上、不動産賃貸の用に供している不動産について生じた費用の額は、必要経費に算入されます。ただし、減価償却費を除き、その年12 月31 日現在で債務の確定しているものに限られます(所得税法37条1項)。

 

②債務の確定要件

 

上記①の「債務が確定しているもの」は、原則、次のイ~ハの全ての要件を満たしているかどうかに基づいて判定されます(所得税法基本通達37-2)。

 

イ.その年12月31日までに、費用に係る債務が成立していること。

 

ロ.その年12月31日までに、その債務に基づいて具体的な給付をすべき原因となる事実が発生していること。

 

なお、「具体的な給付をすべき原因となる事実が発生していること」とは、役務提供や給付などの原因が現に生じていることをいいます。例えば、個人が支払った修繕積立金であれば、マンション管理規約上において、大規模修繕に充てるため毎月支払うべきものとされていますが、支払いの段階では現実にその修繕が行われていない以上、この要件は満たさないので、必要経費に算入できないことになります。

 

ハ.その年12月31日までに、その金額を合理的に算出することができるものであること。

 

(2)マンション管理組合に支払い修繕積立金の取扱い

 

①原則的な取扱い

 

マンションの修繕積立金とは、その共用部分につき、将来行うことが見込まれる大規模修繕等の費用の額に充てるため、その区分所有者から月々の管理費と併せて支払われ、管理組合において長期間にわたり計画的に積み立てられているものです。

 

マンションの区分所有者が修繕積立金として管理組合に支払った金額は、実際に修繕等が行われていない限り、前述(1)②ロの具体的な給付をすべき原因となる事実(現実に修繕等が行われていること)が発生していないことから、管理組合への支払期日の属する年分の必要経費には算入することができないことになります。管理組合への支払後、実際に修繕等が行われたときに、その費用の額に充てられた部分(規約に別段の定めがない場合、その共有部分に応じて算出)の金額について、その修繕等が完了した日の属する年分の必要経費に算入されます。

 

 

②支払年分の必要経費に算入できる場合

 

しかし、修繕積立金はマンションの区分所有者となった時点で管理組合へ義務的に納付しなければならないものであり、管理規約において納入した修繕積立金は、管理組合が解散しない限り、区分所有者へ返還しないこととしているのが一般的です(マンション標準管理規約(単棟型)(国土交通省)60条6項)。このため、通常は返還されない修繕積立金を支払ったにもかかわらず支払った年分の必要経費に算入できず、実際に修繕を行った年分まで必要経費への算入を待たないといけないというのは、実情に合わないともいえます。

 

そこで国税庁では、「質疑応答事例」において特例的な取扱いを示し、修繕積立金の支払がマンション標準管理規約に沿った適正な管理規約に従い、次の事実関係の下で行われている場合には、上記(2)①にかかわらず、その修繕積立金について、その支払期日の属する年分の必要経費に算入しても差し支えない、としています。

 

イ.区分所有者となった者は、管理組合に対して修繕積立金の支払義務を負うことになること。

 

ロ.管理組合は、支払を受けた修繕積立金について、区分所有者への返還義務を有しないこと。

 

ハ.修繕積立金は、将来の修繕等のためにのみ使用され、他へ流用されるものでないこと。

 

ニ.修繕積立金の額は、長期修繕計画に基づき各区分所有者の共有持分に応じて、合理的な方法により算出されていること。

 

 

 

 

税理士法人タクトコンサルティング 「TACTニュース」(2024/2/13)より転載

[解説ニュース]

親の駐車場を使用貸借で借りた子の賃料収益に贈与税の賦課決定

 

〈解説〉

税理士法人タクトコンサルティング(遠藤 純一)

 

 

[関連解説]

■親の駐車場を使用貸借で子が借りた場合の駐車場収入の帰属

■貸家建付地の相続税評価では、次の相続までの状況変化に注意

 

 

 

 


1.はじめに


土地を持つ資産家の親が始めた貸駐車場の土地を子へ無償で使用貸借して、貸駐車場の収益を子に移転し、家族全体で「所得分散」し節税しようと実行した事案がありました。

 

同事案は、大阪高裁で駐車場から上がる所得について結局、その帰属は親だと判断し申告を漏らした親への追徴を認める判決が確定しています。(令和4年7月20日、タクトニュース№899参照)。そこで、親の帰属となった駐車場の収益は、子への贈与となるのかどうかが、専門家の間で注目されることになりました。
こうしたなか、上記事案に関連する贈与税の賦課決定をめぐる裁決があったことがわかりました(令和 5年6月13日)

 

 

2.事案の概要


この事案は親から長男が3筆合計1,800㎡ほどの土地を平成26年2月、使用貸借契約を締結、親の行っていた貸駐車場事業を承継し、そのまま駐車場として第三者に賃貸したケースです。

 

背景には、専門家によるアドバイスで親から子への所得分散により節税する意図があったとされます。しかし土地を使用貸借し、その土地の又貸しで得た収益は、実務上土地の所有者に帰属するとされています。

 

そこで、この資産家は土地の償却資産となるアスファルトを敷き、その所有権を子に贈与するとともに土地を使用貸借することを考えました。
貸家を子に贈与するとともに、その敷地を使用貸借したケースでは、貸家の家賃は、子に帰属することになる扱いだからです。

 

 

3.税務署の対応


税務署は、土地に敷かれたアスファルトは土地と異なる独立した所有権が成立する余地はないとして、アスファルトの贈与を受けた子供がした贈与税の申告を税額0円で減額更正しました。

 

そのうえで税務署は長男に対し、駐車場収益は親(被相続人)に帰属していると認められるため、駐車場に係る賃貸料収入が長男の振込口座に振り込まれたことによって、長男の財産が増加していることは、相続税法第9条にいう対価を支払わないで利益を受けた場合に該当するとして、長男に対し贈与税や無申告加算税等の更正または決定(以下、賦課決定等)をしました。

 

これに長男が国税不服審判所(以下、審判所という。)に贈与税の賦課決定等の取消を求めて審査請求したのです。

 

 

4.審判所の判断


争点は、直接的には長男が駐車場に係る賃貸料収入を受領したことによる財産の増加は、相続税法第9条に規定する「利益を受けた」場合に該当するか否かです。この判断をするには駐車場収益が、長男(請求人)に帰属するか否かも問題になってきます。そこで審判所は、まず実質所得者課税の原則(所得税法12条)で駐車場収入の帰属がだれかを固め、それが長男ではないとした場合には、親から贈与されたものとみなして贈与税の課税が適法かどうかと2段階の判断が求められることになりました。

 

審判所は、実質所得者課税の原則について「担税力に応じた公平な税負担を実現するため、収益の法形式上の帰属者(名義人)と法律的実質的帰属者が相違する場合には、後者を収益の帰属者とするというものと解される」と上記の大阪高裁の考え方を踏襲しました。

 

すなわち駐車場収益について、長男は「単なる名義人」であって、その収益を享受せず、被相続人がその収益を享受する場合に当たるか否かを検討したのです。
具体的には審判所は、最終的に「使用貸借契約等の取引は、被相続人が本件各土地の所有権の帰属を変えないまま、何らの対価も得ることなく、そこから生じる法定果実の帰属を子である請求人に移転させたものと評価できる」とし、「使用貸借等の取引は、被相続人の相続に係る相続税対策を主たる目的として、被相続人の存命中は、各土地の所有権は飽くまでも被相続人が保有することを前提に、各土地による被相続人の所得を子である請求人に形式上分散する目的で、請求人に対して本件使用貸借契約に基づく法定果実収取権を付与したものにすぎないものと認められる。(中略)各駐車場収益を支配していたのは被相続人というべきであるから、当該収益について、請求人は単なる名義人であって、その収益を享受せず、本件被相続人がその収益を享受する場合に当たる」と判断しました。

 

この判断に基づき審判所は、「被相続人に帰属する各駐車場に係る賃貸料収入を長男が受領し、長男の財産が増加していることは、相続税法第9条に規定する「対価を支払わないで、又は著しく低い価額の対価で利益を受けた」場合に該当するというべきである」として、税務署の贈与税の賦課決定等を支持しました。これで、駐車場土地の使用貸借による所得分散・節税策は親の申告漏れの追徴と、子への贈与税の賦課決定でひとまず区切りがつくことになったのです。

 

 

 

 

税理士法人タクトコンサルティング 「TACTニュース」(2024/1/29)より転載

[解説ニュース]

配偶者から贈与を受けた自宅を譲渡した場合の贈与税の配偶者控除の適用

 

〈解説〉

税理士法人タクトコンサルティング(山崎 信義/税理士)

 

 

[関連解説]

■相続時精算課税に係る相続税の納付義務の承継があった場合の相続税額の計算

■【Q&A】相続不動産に信託契約を締結し、信託受益権として譲渡した場合の取得費加算の特例

 

 

 


【問】

Aさんは、婚姻期間20年以上の夫から同居していた夫名義の住宅(自宅)の贈与を受けました。Aさんはその贈与を受けた時点ではその住宅に継続して居住するつもりでしたが、贈与後、夫が病気で入院し、その治療や介護の都合から贈与を受けてから短期間でその住宅を譲渡することになりました。Aさんは夫からの自宅の贈与について、贈与税の配偶者控除(相続税法21条の6)の適用を受けることを考えていますが、認められるでしょうか。

【回答】

1.結論


自宅の贈与を受けた時点までに、その自宅の譲渡が予め計画されておらず、贈与から譲渡までの間の後発的な状況の変化から、受贈者のAさんがやむを得ず自宅を譲渡することになったときは、適用を受けることができます。

2.解説


(1)制度の概要

 

贈与税の配偶者控除は、婚姻期間が20年以上の夫婦の間で、専ら居住の用に供する家屋やその敷地等(以下、「居住用不動産」)又は居住用不動産を取得するための金銭の贈与が行われた場合において、一定の要件を満たすときは、暦年課税の贈与税の計算上、基礎控除額110万円のほかに最高2,000万円まで課税価格から控除できる税制です。この適用を受けるためには、次の要件を満たすことが必要です。

①婚姻の届出をした日から贈与を受けた日までの期間(以下「婚姻期間」)が20年以上の夫婦間で贈与が行われたこと

 

②個人が配偶者から贈与された財産が、贈与を受けた個人が住むための国内の居住用不動産、又は居住用不動産を取得するための金銭であること

 

③贈与を受けた年の翌年3月15日までに、贈与により取得した国内の居住用不動産又は贈与を受けた金銭で取得した国内の居住用不動産に、贈与を受けた者が現実に住んでおり、その後も引き続き住む見込みであること(以下、この要件を「居住継続見込み要件」という。)

 

④同じ配偶者からの贈与について、過去に贈与税の配偶者控除の適用を受けたことがないこと

 

⑤贈与税申告書に必要書類を添えて提出すること。

 

 

(2)「居住継続見込み要件」による受贈後の居住用不動産の譲渡の制限

 

贈与税の配偶者控除の適用を受けるための要件に「居住継続見込み要件」があることから、婚姻期間が20年以上の夫婦間で居住用不動産の贈与があった場合でも、贈与による取得後にその居住用不動産を他へ譲渡することを予定していたときは、「引き続き居住の用に供する見込み」に該当しないため、贈与税の配偶者控除の適用が認められません。

 

 

(3)「居住継続見込み要件」の判定時期

 

(2)の居住継続見込み要件の判定時期については、贈与税の配偶者控除を規定する相続税法やその関係法令・通達では、明確に定められていません。しかし、贈与税の配偶者控除の文理や、贈与税が贈与の時点で納税義務が成立することや、前記1(1)①の婚姻期間が20年以上である配偶者に該当するか否かの判定が、財産の贈与の時の現況により判断することから、配偶者が居住用不動産又は居住用不動産の取得資金の贈与を受けた時点において、居住継続見込み要件が満たされているか否かを判定することになると考えられます。

 

なお、この判定時期の考え方については、配偶者から居住用不動産又は居住用不動産の取得資金を贈与により取得後、短期間で譲渡した場合の贈与税の配偶者控除の適用の可否について国税不服審判所で争われた事例があり、その裁決(大裁(諸)平24第68号平成25年5月8日)においても、居住用不動産の贈与を受けた時点において、その不動産を「引き続き居住の用に供する見込み」であったか否かの判定をすることが相当とされています。

 

 

(4)あてはめ

Aさんが贈与を受けた時点でその住宅に継続して居住するつもりであったことや、贈与を受けた後、夫の病気の治療・介護の都合という後発的な状況の変化からやむを得ずその住宅を譲渡するに至ったと考えられることから、Aさんの贈与税の配偶者控除の適用は認められるべきものと考えられます。

 

なお、Aさんが贈与を受けた時点でその住宅に継続して居住するつもりはなく、贈与を受けた後に短期間でその住宅を譲渡することが贈与時点までに予め計画されていたものであるときは、居住継続見込み要件は満たさないことになり、適用を受けることができません。

 

 

 

 

税理士法人タクトコンサルティング 「TACTニュース」(2024/1/15)より転載

[解説ニュース]

マンションの相続税評価が時価の6割水準めどに引上げへ

 

〈解説〉

税理士法人タクトコンサルティング(遠藤 純一)

 

 

[関連解説]

■親の土地を無権代理で売買、引渡し前に相続開始で税金紛争

■小規模宅地等特例:相続人の継続事業への関与度合いが問われた事例

 

 

 

 


1.はじめに


国税庁は令和5年10月6日、マンションの財産評価を見直した個別通達「居住用の区分所有財産の評価について」(法令解釈通達)を公表しました。適用は令和6年1月1日以後の相続等による取得分からです。

 

 

2. これまでのマンションの相続税評価


マンションの相続税評価は従来、「財産評価基本通達(以下、評価通達という。)」に基づき、原則として自用の場合、以下のとおりです。

 

(1)敷地の評価…宅地や宅地の上の存する借地権等の権利の評価額を共有持分で按分して求める

 

(2)家屋の評価…1棟の建物全体の固定資産税評価額を専有面積の割合によって按分して各戸の評価額を算定

 

 

3.改正後のマンション評価の対象


対象となるマンションとは、一棟の区分所有建物に存する居住の用に供する専有部分一室に係る区分所有権と敷地利用権です。一棟の区分所有建物であっても、階数が2階以下、または部屋数が3以下で、その全部を区分所有者やその親族の居住の用にしているものは除外されます。

 

また、一棟の区分所有建物ではない「事業用のテナント物件」や「一棟所有の賃貸マンションなど」は対象外です。

 

 

4.改正後のマンション評価方法


新たなマンション評価の方法は、[1]評価乖離率を求め、[2]評価乖離率に基づく評価水準の区分により、[3]のように補正する方法です。

 

[1]評価乖離率の求め方

 

評価乖離率=①×△0.033+②×0.239+③×0.018+④×△1.195+3.220

①評価対象マンションの築年数のことで、その一棟のマンションの建築の時から課税時期までの期間を指します。当該期間に1年未満の端数があるときは、その端数は1年。

 

②総階数指数=総階数÷33で求めます。小数点以下第4位を切り捨て、1を超える場合は1とする。なお、階数に地下は含みません。

 

③評価対象のマンションの一室の所在階のこと。2階にまたがるマンションの場合(メゾネットタイプの場合)には低い階数を所在階とします。評価対象の一室が地下の場合は、0階とします。

 

④「敷地持分狭小度」として、評価対象の一室の「敷地利用権の面積÷専有面積」で算出された値。小数点以下第4位を切り上げます。

 

 

[2]評価水準

評価水準は1÷評価乖離率で求めます。

 

 

[3]一室の区分所有権等に係る敷地利用権・区分所有権の価額

新たな自用地・自用家屋としての評価額=「自用地・自用家屋としての価額」×区分所有補正率

(1)評価水準が1を超える場合:区分所有補正率=評価乖離率(→評価額は引下げ)

 

(2)評価水準が0.6以上1以下の場合:補正なし

 

(3)評価水準が0.6未満の場合:区分所有補正率=評価乖離率×0.6(→時価の6割水準に引上げ)

 

(注)1 区分所有者が次のいずれも単独で所有している場合には、「補正率」は1を下限とします。

 

イ 一棟の区分所有建物に存する全ての専有部分

 

ロ 一棟の区分所有建物の敷地

 

ただし、貸家建付地や貸家などその他現行の評価通達で配慮すべき一定のファクターがある場合には原則として現行の評価通達を上記の自用地または自用家屋としての評価額に適用します。

また評価乖離率が0かマイナスの場合は評価しません。
改正後の評価額の傾向としては、築浅、一室の所在階が高階数、敷地に目いっぱいに建っており総戸数が多い…といったマンションほど、評価額が高く補正されそうです。

 

 

5.新評価と財産評価基本通達6項との関係


新評価のマンションでも、財産評価基本通達通りの評価では不適当となるような場合には、同通達の例外規定「総則6項」が適用され、不動産鑑定など別の評価方法で再評価されます。

 

国税庁が公表した情報によると、「本通達及び評価通達の定める評価方法によって評価することが著しく不適当と認められる場合には、評価通達6項が適用されることから、(中略)本通達を適用した価額よりも高い価額により評価することもある」とされていることから明らかです。

無論、新評価の対象でない不動産もこれまで通り上記6項の対象となるのは言うまでもありません。

 

 

 

税理士法人タクトコンサルティング 「TACTニュース」(2023/12/25)より転載

[解説ニュース]

速報!令和6年度税制改正案

 

〈解説〉

税理士法人タクトコンサルティング(山崎 信義/税理士)

 

 

[関連解説]

■速報!令和4年度税制改正案

■速報!令和5年度税制改正案

 

 

 


~大綱に盛り込まれた資産課税を中心とされる改正案の主な内容は以下のとおり~

 

■【住宅・土地税制(所得税・登録免許税・印紙税・不動産取得税】)《「大綱」)P36~37、39、50、51、58》

1.住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除【拡充】

 

(1)個人で、年齢40歳未満で配偶者を有する者、年齢40歳以上で年齢40歳未満の配偶者を有する者又は年齢19歳未満の扶養親族を有する者(以下「子育て特例対象個人」)が、認定住宅等の新築若しくは認定住宅等で建築後使用されたことのないものの取得又は買取再販認定住宅等の取得(以下「認定住宅等の新築等」)をして、令和6年1月1日から同年12月31日までの間に居住の用に供した場合は、住宅借入金等の年末残高の限度額(借入限度額)を次のとおりとして、本特例の適用を受けることができる。

 

①認定住宅: 5,000万円(現行の令和6年中の入居に係る借入限度額4,500万円)

 

②ZEH水準省エネ住宅:4,500万円(現行の令和6年中の入居に係る借入限度額3,500万円)

 

③省エネ基準適合住宅:4,000万円(現行の令和6年中の入居に係る借入限度額3,000万円)

 

(2)認定住宅等の新築又は認定住宅等で建築後使用されたことのないものの取得に係る床面積要件の緩和措置について、令和6年12月31日以前に建築確認を受けた家屋も適用を受けることができる。

 

(注1)「認定住宅等」とは、認定住宅、ZEH水準省エネ住宅及び省エネ基準適合住宅をいい、「認定住宅」とは認定長期優良住宅及び認定低炭素住宅をいう。
(注2)「買取再販認定住宅等」とは、認定住宅等である既存住宅のうち宅地建物取引業者により一定の増改築等が行われたものをいう。
(注3)上記(1)及び(2)のその他の要件等は、現行の住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除と同様とされる。

 

 

2.居住用財産の譲渡に係る譲渡所得の特例【延長】

(1)特定の居住用財産の買換え及び交換の場合の長期譲渡所得の課税の特例が、令和7年12月31日まで2年延長される。

 

(2)居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の繰越控除等について、本特例の適用を受けようとする個人が買換資産の住宅借入金等に係る債権者に対して住宅取得資金に係る借入金等の年末残高等調書制度の適用申請書の提出をしている場合には、確定申告書等への住宅借入金等の残高証明書の添付を不要とする措置が講じられた上、適用期限が令和7年12月31日まで2年延長される。

 

(注)上記の改正は、令和6年1月1日以後に行う譲渡資産の譲渡について適用される。

 

(3)特定居住用財産の譲渡損失の繰越控除等の適用期限が、令和7年12月31日まで2年延長される。

 

 

3.登録免許税・印紙税の特例【延長】

(1)住宅用家屋の所有権の保存登記若しくは移転登記又は住宅取得資金の貸付け等に係る抵当権の設定登記に対する登録免許税の税率の軽減措置の適用期限が、令和9年3月31日まで3年延長される。

 

(2)不動産の譲渡に関する契約書等に係る印紙税の税率の特例措置の適用期限が、令和9年3月31日まで3年延長される

 

 

4.不動産取得税の特例【延長】

①宅地評価土地の取得に係る不動産取得税の課税標準を価格の2分の1とする特例措置及び②住宅及び土地の取得に係る不動産取得税の標準税率(本則4%)を3%とする特例措置の適用期限が、令和9年3月31日まで3年延長される。

 

【所得税・個人住民税の定額減税】《「大綱」P26~30》

1.所得税

(1)令和6年分の所得税について、一定の方法により、居住者の所得税額から特別控除の額が控除される。ただし、その者の令和6年分の所得税に係る合計所得金額が1,805万円(給与収入2,000万円)以下である場合に限る。

 

(2)特別控除の額は次の金額の合計額(合計額がその者の所得税額を超える場合は所得税額を限度)とされる。

 

①本人:3万円

 

②同一生計配偶者又は扶養親族(居住者に限る):1人につき3万円

 

 

2.個人住民税

(1)令和6年度分の個人住民税について、一定の方法により、納税義務者の所得割の額から特別控除の額が控除される。ただし、その者の令和6年度分の個人住民税に係る合計所得金額が1,805万円(給与収入2,000万円)以下である場合に限る。

 

(2)特別控除の額は、次の金額の合計額(合計額がその者の所得割の額を超える場合は所得割の額を限度)とされる。

 

①本人:1万円

 

②控除対象配偶者又は扶養親族(国外居住者を除く):1人につき1万円
(注)控除対象配偶者を除く同一生計配偶者(国外居住者を除く)は、令和7年度分の所得割の額から1万円が控除される。

 

 

【相続税・贈与税】《「大綱」P49~50》

1.非上場株式等に係る相続税・贈与税の納税猶予の特例制度【延長】

特例承継計画の提出期限が、令和8年3月31日まで2年延長される。

 

2.個人の事業用資産に係る相続税・贈与税の納税猶予制度【延長】

個人事業承継計画の提出期限が、令和8年3月31日まで2年延長される。

 

3.直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税措置【延長・見直し】

(1)適用期限が、令和8年12月31日まで3年延長される。

 

(2)非課税限度額の上乗せ措置の適用対象となる、エネルギーの使用の合理化に著しく資する住宅用の家屋の要件について、住宅用家屋の新築又は建築後使用されたことのない住宅用家屋の取得をする場合にあっては、その住宅用家屋の省エネ性能が断熱等性能等級5以上かつ一次エネルギー消費量等級6以上(現行:断熱等性能等級4以上又は一次エネルギー消費量等級4以上)であることとされる。

 

(注1)上記の改正は、令和6年1月1日以後に贈与により取得する住宅取得等資金に係る贈与税について適用される。
(注2)令和6年1月1日以後に住宅取得等資金の贈与を受けて住宅用家屋の新築又は建築後使用されたことのない住宅用家屋の取得をする場合、その住宅用家屋の省エネ性能が断熱等性能等級4以上又は一次エネルギー消費量等級4以上であり、かつ、その住宅用家屋が次のいずれかに該当するものであるときは、その住宅用家屋をエネルギーの使用の合理化に著しく資する住宅用の家屋とみなされる。

 

イ.令和5年12月31日以前に建築確認を受けているもの

 

ロ.令和6年6月30日以前に建築されたもの

 

 

4.特定の贈与者から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の相続時精算課税制度の特例【延長】

適用期限が、令和8年12月31日まで3年延長される。

 

【法人事業税・法人税】《「大綱」P76~77、74~75、87、75》

1.法人事業税(外形標準課税)【見直し】

(1)減資への対応

①外形標準課税の対象法人について、現行基準(資本金1億円超)を維持する。ただし当分の間、[その事業年度の 前事業年度に外形標準課税の対象であった法人]であって、[その事業年度に資本金1億円以下]で、[資本金と資本剰余金(これに類するものを含む)の合計額が10億円を超えるもの]は、外形標準課税の対象とされる。

 

②施行日以後最初に開始する事業年度については、①にかかわらず、[公布日を含む事業年度の前事業年度(公布日の前日に資本金が1億円以下となっていた場合は、公布日以後最初に終了する事業年度)に外形標準課税の対象であった法人]であって、[その施行日以後最初に開始する事業年度に資本金1億円以下]で、[資本金と資本剰余金の合計額が10億円を超えるもの]は、外形標準課税の対象とされる。

 

(注)上記の改正は、令和7年4月1日に施行され、同日以後に開始する事業年度から適用される。

 

(2)100%子法人等への対応
資本金と資本剰余金の合計額が50億円を超える一定の法人(以下「特定法人」)の100%子法人等のうち、[その事業年度末日の資本金が1億円以下]で、[資本金と資本剰余金の合計額(公布日以後にその 100%子法人等がその100%親法人等に対して資本剰余金から配当を行った場合は、その配当相当額を加算した金額)が2億円を超えるもの]は、外形標準課税の対象とされる。

 

(注1)上記の「100%子法人等」とは、特定法人との間にその特定法人による法人税法に規定する完全支配関係がある法人及び 100%グループ内の複数の特定法人に発行済株式等の全部を保有されている法人をいう。
(注2)上記の改正は、令和8年4月1日に施行され、同日以後に開始する事業年度から適用される。

 

 

2.法人税【延長・見直し】

(1)中小企業事業再編投資損失準備金制度 次の措置が講じられた上、その適用期限が令和9年3月31日まで3年延長される。

 

①産業競争力強化法の改正を前提に、同法の特別事業再編計画の認定を受けた認定特別事業再編事業者である法人が、一定の要件の下で株式等の購入による取得をした場合において、一定額を中小企業事業再編投資損失準備金として積み立てたときは、その積み立てた金額を、その事業年度において損金算入できる措置が追加される。

 

②事業承継等を対象とする一定の表明保証保険契約を締結している場合には、本制度を適用しないこととされる。

 

③準備金の取崩し事由に株式等の取得をした事業年度後にその事業承継等を対象とする一定の表明保証保険契約を締結した場合を加え、その事由に該当する場合には、その全額を取り崩して、益金算入することとされる。

 

④中小企業等経営強化法の経営力向上計画(事業承継等事前調査に関する事項の記載があるものに限る。)の認定手続について、その事業承継等に係る事業承継等事前調査が終了した後(最終合意前に限る。)においても、その経営力向上計画の認定ができることとされる。

 

(2)中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例について、一定の法人を対象から除外した上、その適用期限が令和8年3月31日まで2年延長される(適用期限の延長は所得税についても同様)。

 

(3)交際費等の損金不算入制度について、以下の措置が講じられた上で適用期限が令和9年3月31日まで3年延長される。

 

①損金不算入となる交際費等の範囲から除外される一定の飲食費に係る金額基準が、1人当たり1万円以下(現行5,000 円以下)に引き上げられる。

 

②接待飲食費に係る損金算入の特例及び中小法人に係る損金算入の特例の適用期限が3年延長される。

 

 

 

 

税理士法人タクトコンサルティング 「TACTニュース」(2023/12/19)より転載

[解説ニュース]

【Q&A】複数の土地を交換した場合の固定資産の交換に係る所得税の特例の適用

 

 

〈解説〉

税理士法人タクトコンサルティング(山崎 信義/税理士)

 

 

[関連解説]

■交換差金等の支払いを受けた場合の所得税の固定資産の交換特例の取扱い

■譲渡所得の金額の計算上、総収入金額を契約効力発生日基準により確定させる場合の留意点

 

 

 


【問】

AさんとBさんの兄弟は、土地1~土地7の7か所の土地(以下「本件各土地」)を共有していました。このたび、兄弟それぞれが本件各土地を単独所有とするために、次の内容を盛り込んだ一の交換契約により、本件各土地の共有持分の一部を交換しました。

 

・Aは、Bに対し本件各土地のうち土地1~4の4か所の土地(以下「本件各譲渡土地」)に係る共有持分を、交換の譲渡資産として譲渡する。

 

・Aは、Bから本件各土地のうち本件各譲渡土地を除く土地5~7の3か所の土地(以下「本件各取得土地」)に係る共有持分を、交換の取得資産として取得する。

 

・本件各取得土地の価額の合計額と本件各譲渡土地の価額(時価)の合計額は等価であり、交換による差額は生じない。

 

 

この交換の場合、本件各譲渡土地及び取得土地の価額(時価)について個々の資産ごとに判定すると、組み合わせによっては交換による差額が20%を超える場合があります。このような場合でも、本件各譲渡土地の価額の合計額と本件各取得土地の価額の合計額が等価で、交換による差額が生じないときは、Aさんは固定資産の交換に係る所得税の特例(以下「交換特例」)の適用を受けることができるのでしょうか。

【回答】

1.結論


交換特例の適用を受けることができると考えます。

 

 

2.解説


(1)特例の概要

個人が固定資産の交換をした場合、交換も譲渡の一種であり、交換により譲渡する資産の含み益には原則、譲渡所得の金額として所得税が課税されます。

 

ただし、従前から所有している不動産等の固定資産を同種の固定資産と交換し、交換取得資産を交換譲渡資産と同様の用途に供しているような場合には、実質的には同一の資産を継続して保有し、譲渡がなかったものとみなして、譲渡益に対する課税を繰り延べ、その時点では課税を行わないこととしています。

 

具体的には、個人が①1年以上有していた固定資産を、②他の者が1年以上有していた同種の固定資産と交換し、③その交換により取得した固定資産(「交換取得資産」)をその交換により譲渡した固定資産(「交換譲渡資産」)の譲渡の直前の用途と同一の用途に供する場合において、④特例の適用を受ける旨等の一定事項を記載した確定申告書を提出したときは、交換譲渡資産の譲渡がなかったものとされます。これが「交換特例」です(所得税法58条1項)。

 

(2)交換取得資産と交換譲渡資産の時価の差額の要件

交換特例の適用を受けるためには、上記(1)①~④の他、⑤交換取得資産の時価と交換譲渡資産の時価の差額が、これらの時価のうちいずれか高い方の価額の20%以内であることが必要です(所得税法58条2項。以下この要件を「交換差額要件」という)。

 

 

(3)複数の土地を交換する場合の交換差額要件の判定

譲渡所得の金額は、その年中の譲渡所得に係る総収入金額から譲渡資産の取得費と譲渡費用等を控除して計算します(所得税法33条3項)。その譲渡所得の総収入金額について、金銭以外の物又は権利その他経済的な利益をもって収入される場合は、金銭以外の物又は権利その他経済的な利益の価額とされます(同36条1項)。

 

土地の交換による収入金額は、交換により取得した土地の価額となり、一の交換契約により取得した土地が複数である場合には、それらの土地の価額の合計額となります。複数の土地を一の交換契約で交換した場合、交換特例を適用しなければ交換取得資産の価額の合計額を収入金額として譲渡所得の課税関係が生じますが、交換特例は交換差額が一定の範囲内の場合に譲渡所得課税の繰延べを行うものですから、交換差額要件の判定は、一の交換契約により譲渡所得の課税関係が生じるとした場合の収入金額により判定すべきと考えられます。

 

 

ご質問の交換については、本件各土地の共有状態を解消し、本件各土地をそれぞれが単独所有とするために、一の交換契約により本件各譲渡土地と本件各取得土地とを交換するものであることから、その交換に係る交換差額要件の判定は、本件各取得土地の価額の合計額と本件各譲渡土地の価額の合計額との差額に基づき判定すべきと考えられます。以上により、Aさんは交換特例の適用を受けることができると考えます。(参考:東京国税局文書回答事例「複数の固定資産を交換した場合の所得税法第58条に規定する交換の特例の適用について」)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

税理士法人タクトコンサルティング 「TACTニュース」(2023/11/27)より転載

[解説ニュース]

令和6年1月から適用要件が緩和される空き家特例3,000万円控除の特約とは?

 

〈解説〉

税理士法人タクトコンサルティング(遠藤 純一)

 

 

[関連解説]

■勝手に(?)出された相続時精算課税の申告書が無効かどうかでトラブル

■マイホーム買換特例の適用状況などについて

 

 

 

 


1.はじめに


「空き家に係る譲渡所得の特別控除の特例」(以下、「空き家特例」といいます。)は、親が住んでいて、相続で空き家になった住宅を相続人が売却した場合、一定要件を満たしたときに譲渡所得から最大3,000万円(令和6年1月1日以後、相続人が3人以上の場合には、2,000万円)の控除が認められる譲渡所得課税の特例です。主な要件は次の表のとおりです。

 

 

 

 

これまで適用されてきた譲渡のパターンは次のとおりです。

 

1号譲渡=家屋を取得し新耐震基準に適合させ敷地とともに譲渡する場合
2号譲渡=家屋を除却し、敷地のみを譲渡する場合

 

これに令和6年1月1日からは空き家を現状有姿で譲渡した後、翌年2月15日までの間に次に掲げるパターン(3号譲渡)に該当したときにも適用が可能になります。

 

・譲渡後、買主側で行った家屋が改修等により耐震基準に適合することとなった場合

 

・譲渡後、買主側で家屋全部の取壊し・除却、滅失をした場合

 

これは相続人としては、売れるかどうかわからないのに空き家の取り壊し等をすると、場合によっては固定資産税等が高くなってしまうなど、リスクを感じる人が多いことから3号譲渡の導入が決まったものです。

 

ただし譲渡後、買主の方で取り壊し等をしてもらうことが要件となるので、契約では、耐震改修または取り壊し等を買主が行うことの特約を盛り込む必要があることや、特約が守られなかった場合の取り決め等をする必要があると、国土交通省は財務省主税局との間で議論していました。そして先ごろ、国土交通省は、3号譲渡のための売買契約の特約条項の例を公表したのです。

 

 

2.特約条項とは


売買契約上の特約は、買主側で①家屋を改修して耐震基準に適合させる場合、②家屋自体を取り壊す場合の2タイプです。同省では契約の当事者間で合意した内容に応じ、文例を適宜修正のうえ利用することを推奨しています。ここでは取壊しのタイプを示します。

 

1.売主及び買主は、売主が本契約について租税特別措置法(昭和 32 年法律第 26 号)第 35 条第3項に定める空き家の譲渡所得の特別控除(以下「特別控除」という。)の適用を受けることを前提として、本契約の売買価格等諸条件を決定したことを互いに確認します。

 

2.売主及び買主は、本件土地及び建物の所有権移転後に買主が本件建物の全部の取壊し又は除却工事(以下「本工事」という。)を行うことに合意し、本工事については買主の責任と負担において、令和〇年〇月〇日までに完了させることとします。

 

なお、買主は、売主が本契約について特別控除の適用を受けるために必要となる書類(以下「必要書類」という。)を取得のうえ、令和〇年〇月〇日までに売主へ交付するものとします。

 

3.前項のとおり買主が本工事を完了できない又は売主へ必要書類の交付をしないことにより、売主が特別控除を受けることができなかった場合売主は買主に対し、特別控除を受けることによって本来得られた税控除額相当額の損害賠償を買主に請求することができることとします。
ただし、買主の責めに帰することができない事由により買主が義務を履行できなかった場合は、買主は責任を負わないものとします。

 

 

3.確認書の手続き


空き家特例の適用に当たっては、市区町村長が、国土交通省の「通知」(国住政第101号、国住備第506号)に従い、要件具備の確認を行い、確認書を納税者等に交付することになっています。納税者はこの確認書を確定申告書に添付する仕組みです。令和6年1月1日からの空き家特例の3号譲渡の施行に伴い、国土交通省は上記通知に3号譲渡に関する事項を追加・公表しました。それによると、市区町村長から3号譲渡の確認書の交付を受ける場合には基本的に、上記の特約付き売買契約書の写しも提出することになりました。

 

 

 

税理士法人タクトコンサルティング 「TACTニュース」(2023/11/13)より転載

[解説ニュース]

相続時精算課税に係る相続税の納付義務の承継があった場合の相続税額の計算

 

〈解説〉

税理士法人タクトコンサルティング(山崎 信義/税理士)

 

 

[関連解説]

■【Q&A】遺留分侵害額の請求に基づき、金銭に代えて金銭以外の資産の移転があった場合の課税関係

■【Q&A】事業承継税制:相続税の特例措置における「中小企業者要件」の判定

 

 

 


【問】

個人甲は、平成21年に母Yから賃貸不動産(贈与時の相続税評価額1億円)の贈与を受け、相続時精算課税を選択して贈与税1,500万円を納付しました。甲は令和2年に債務返済のため賃貸不動産を売却後、令和3年に死亡しました。甲の相続人は子のAとBのみで、相続財産はAとBが相続しました(相続税額なし)。令和5年2月にYが死亡し、相続財産1億500万円は代襲相続人(孫)のAが6,300万円、Bは4,200万円を相続しました(AとB以外にYの相続人はなし)。またYに係る債務及び葬式費用500万円はAが300万円、Bが200万円を負担しました。上記の場合において、Yに係る相続税の計算上、AとBの納付すべき相続税額はいくらになりますか。

【回答】

1.結論


Aの相続税額は1087万円、Bの相続税が753万円となります。

 

 

2.解説


(1)特定贈与者に係る相続税の計算

 

相続時精算課税の適用を受けた受贈者(相続時精算課税適用者)に係る相続税額は、その贈与をした者(特定贈与者)が死亡した時に、それまでに特定贈与者から贈与を受けた相続時精算課税の適用を受ける贈与財産の価額と相続又は遺贈により取得した財産の価額とを合計した金額を基に計算した相続税額から、既に納めた相続時精算課税に係る贈与税相当額を控除して算出します。(相続税法21条の15、21条の16)。この場合に相続財産と合算する贈与財産の価額は、贈与時の相続税評価額となります(同法21条の15第1項、21条の16第3項)。

 

 

(2)特定贈与者の死亡前に相続時精算課税適用者が死亡した場合の特定贈与者に係る相続税計算

 

特定贈与者の死亡以前に、その特定贈与者に係る受贈者(相続時精算課税適用者)が死亡した場合は、その相続時精算課税適用者(以下「死亡相続時精算課税適用者」)の相続人(以下「承継相続人等」)は、死亡相続時精算課税適用者が有していた相続時精算課税の適用を受けたことによる納税に係る権利又は義務を承継します(相続税法21条の17第1項)。

 

 

(3)承継相続人等の相続税額の計算

 

(2)において、承継相続人等(A・B)が特定贈与者(Y)から相続等により財産を取得している場合、承継相続人等は[1]特定贈与者から相続・遺贈により取得した財産に係る相続税額と、[2]相続時精算課税の贈与財産の価額を基に計算した死亡相続時精算課税適用者(甲)に係る相続税額の合計額を納付します。

 

 

(4)AとBの相続税額の計算

 

(2)と(3)の取扱いを踏まえて、AとBの納付すべき相続税額は次の通りに計算します。

 

①課税価格の計算

 

イ.Aの課税価格の計算 6,300万円(相続により取得した財産の価額)-300万円(債務・葬式費用の額)=6,000万円

 

ロ.Bの課税価格の計算 4,200万円(相続より取得した財産の価額)-200万円(債務・葬式費用の額)=4,000万円

 

ハ.相続時精算課税適用者甲の課税価格の計算 1億円(相続時精算課税に係る贈与財産の価額)

 

ニ.課税価格の合計額=イ+ロ+ハ=2億円

 

②基礎控除(相続人2人)4,200万円

 

③相続税の総額  (2億円-4,200万円)×1/2×30%-700万円=1,670万円。1,670万円×2=3,340万円

 

④按分割合

 

イ.A:6,000万円/2億円=0.3

 

ロ.B:4,000万円/2億円=0.2

 

ハ.死亡相続時精算課税適用者甲:1億円/2億円=0.5

 

⑤算出相続税額

 

イ.Aの税額:3,340万円×0.3=1,002万円

 

ロ.Bの税額:3,340万円×0.2= 668万円

 

ハ.死亡相続時精算課税適用者甲の税額:3,340万円×0.5=1,670万円

 

 

⑥死亡相続時精算課税適用者甲からAとBが承継する納付すべき相続税額 1,670万円-1,500万円(相続時精算課税分の贈与税額控除額)=170万円
Aが承継する相続税額:170万円×1/2(法定相続分)=85万円(Bも同じ)

 

⑦納付すべき相続税額

 

A:⑤イ+⑥=1,087万円

 

B:⑤ロ+⑥= 753万円

 

 

 

 

 

 

税理士法人タクトコンサルティング 「TACTニュース」(2023/10/30)より転載

[解説ニュース]

入居者募集広告を出していても空室とされ小規模宅地等特例が否認された事例

 

〈解説〉

税理士法人タクトコンサルティング(遠藤 純一)

 

 

[関連解説]

■不動産購入5か月後、子どもへの贈与で税金トラブル

■土地の地目等は、相続時の利用状況をもとに判断すべきとした裁決

 

 

 


1.はじめに


相続税の「小規模宅地等の特例」は、合法的な節税ができる制度として、よく知られた相続税の特例です。賃貸不動産等で節税する場合には、被相続人等の貸付事業用宅地等を相続して事業を継ぐなど所定の要件を満たした場合、それらの宅地のうち最大200㎡までについて50%の評価減ができます。

 

この特例に関し、最近、インターネット上に複数の入居者募集広告があったにもかかわらず、税務署から賃貸共同住宅の空室部分に見合う宅地について、上記特例の適用が除外され更正処分を受けた事例が出てきました。(国税不服審判所、令和 5年4月12日)。今回は、この事例を紹介します。

 

 

2.事案の概要及び相続人の主張


裁決書によると、Aさんは、被相続人から延床面積180㎡ほどの8室2階建ての賃貸共同住宅を敷地とともに相続しました。相続開始時点で入居者がいたのは3室で、残り5室(3室の空室期間は4年6か月以上、残り2室の空室期間は2か月から5か月)には入居者がいませんでした。Aさんは、被相続人からこの貸付事業を引き継ぎました。相続税の申告では、賃貸共同住宅の敷地全体を小規模宅地等の特例の「貸付事業用宅地等」に該当するとして申告した模様です。

 

これに対し、管轄税務署が上記特例適用を否認したことから、Aさんは国税不服審判所(以下、審判所という。)の判断を仰ぐことにしたものです。
Aさんは、おおよそ次のように考えました。
「相続の開始の時以降、請求人(Aさん)は各空室部分については、新たな入居者の募集を行っていないが、複数のインターネットサイトでは相続の開始の時以降も募集広告が出ているので、請求人が被相続人の貸付事業を引き継ぎ、申告期限まで引き続き当該貸付事業の用に供していた」

 

 

3.審判所の考え方


審判所は、この特例の取扱いである措置法通達69の4-24の2では、貸付事業の用に供されていた宅地等には、貸付事業に係る建物のうちに相続開始の時において一時的に賃貸されていなかったと認められる部分がある場合における当該部分に係る宅地等の部分が含まれるとされていることを指摘。

 

この「一時的に賃貸されていなかったと認められる場合」について審判所は「賃貸借契約が相続開始の時
に終了していたものの引き続き賃貸される具体的な見込みが客観的に存在し、現に賃貸借契約終了から近接した時期に新たな賃貸借契約が締結されたなど、相続開始の時の前後の賃貸状況等に照らし、実質的にみて相統開始の時に賃貸されていたのと同視し得るものでなければならない」として、問題の空室の敷地部分が一時的に賃貸されていなかったと認められるかどうか、次の事実関係等をもとに、以下の4のように検討しました。

 

①被相続人と不動産業者との契約=平成20年5月21日、共同住宅に関して一般媒介契約を締結した。
なお、共同住宅に関して、(中略)不動産業者は本件共同住宅に係る集金業務及び管理業務を行っていない。

 

②平成20年5月頃から申告書の提出期限に至るまで、複数の不動産業情報サイトに、問合せ先を同不動産業者として入居者の募集をする旨の広告が掲載されていた。なお、同不動産業者では、オーナーから広告の掲載を取りやめたい旨の申出がない限りその掲載を継続しており、また、広告の掲載のみでは手数料を取らず、新たに入居者があるときに仲介手数料を取っている。

 

③一般媒介契約を締結してから、申告期限に至るまでの間、同不動産業者は共同住宅に関して入居者を仲介した実績はなく、平成27年以降の共同住宅の空室の状況を把握していない。

 

 

4.一時的に賃貸されていなかったかどうか


審判所は、空室のうち3室は「相続の開始の時において少なくとも4年6か月以上の長期にわたって空室の状態が続いていた」こと。もう2室についても「空室であった期間は長期にわたるものではない」が「一時的に賃貸されていなかったものとは認められない」と認定しました。
その理由は次のとおりです。

 

●不動産業者の仲介実績・空室把握は②③のとおり。

 

●不動産業者ではオーナーから広告の掲載を取りやめたい旨の申出がない限りその掲載を継続する扱いだったため、平成27年以降においては、被相続人が一般媒介契約及び広告を放置していたにすぎず、積極的に共同住宅の新たな入居者を募集していたとはいえない。

 

●空室期間が短い2室についても賃貸される具体的な見込みがあったとはいえず、空室のままの状態にされていたというほかない。

 

 

 

税理士法人タクトコンサルティング 「TACTニュース」(2023/10/16)より転載

[税理士事務所の事業引継ぎ(M&A)や後継者不足に悩んだら]

 

会計事務所の事業引継ぎの一つの手段として、M&Aをご検討される税理士が増えてきました。税理士の皆さまより寄せられたよくある質問を、Q&A形式にてわかりやすく解説しました。

 


Q、どのような会計事務所が買手となるのでしょうか?

 

 

これまでもいくつか事務所を買収した経験のある「 大規模事務所や中規模事務所 」、これから、事務所を拡大したいと考えている「 小規模事務所 」など、買手事務所の規模は様々です。また、首都圏から地方都市まで、全国各地の会計事務所が買手として希望しています。

 

買手の目的は、事務所の基盤強化のために、買手事務所近くの事務所を希望する場合もありますし、エリア拡大のため、他の地域の事務所を希望することもあります。

 

 ケース① 東北の事務所が、東京都内の事務所の譲受を希望 [首都圏へのエリア拡大(進出)のため]

 ケース② 名古屋の事務所が、愛知県内の事務所の譲受を希望 [同一エリアでの基盤強化のため]

 

 

売手の要望も様々です。多くは、「 従業員の雇用 」「 適正な譲渡対価 」を、譲渡条件に挙げるケースが多いように思えます。また、従業員や関与先のために、「 引継ぎ先の所長の人柄 」を挙げる方もいます。

 

 

直接、買手に要望を伝えるのは難しいものです。また、ミスマッチを防ぐためにも、買手を選定する前に、売手の考えや要望をしっかりとアドバイザーに伝えておくことが大切です。

 

 

 

 

 

[スモールM&A案件情報(譲渡案件)](2023年10月4日)

-以下のM&A案件(1件)を掲載しております-

 

 

 

●筑豊北端で開業予定の柔道整復師の方必見!即開業・利益1,800万・広告費ほぼ0

[業種:整骨院/所在地:九州地方]

 

 

 

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案件No.zs23100401

筑豊北端で開業予定の柔道整復師の方必見!即開業・利益1,800万・広告費ほぼ0

 

(案件紹介)

◇福岡県筑豊地方の北端部にて整骨院を経営しています。

◇店舗を交通量の多い路面に構えアクセス性の良さと広々とした駐車場にも定評があります。

◇創業10年目ですが、地方都市においては先駆者として交通事故の施術という分野で特に売上をアップさせてきました。

◇自費のメニューを構築すれば更なる売り上げのポテンシャルは十分にあります。

◇集客は広告費はほぼ0円で、googleマップの構築やホームページ、ポータプルサイト、紹介等で行っています。

 

(譲渡希望額)1,100万円

(事業形態)個人事業

(所在地)福岡県

(設立年)10年未満

(従業員数)1人〜4人

 

 

(その他補足)

◇設備(マッサージ機2台、干渉波1台、ベット3台),在庫,ノウハウ,ウェブサイト・アプリ,SNS/ECアカウント(譲渡可能な旨を運営会社に確認済み)

◇会社(株式譲渡、事業譲渡でも可能)と個人事業(事業譲渡)を一体でお譲りします。

◇買収後利益を約1,800万円想定していますが、新しく承継される先生の年間報酬というイメージです。

 


【財務概要】

(事業の売上高)1,000万円〜3,000万円

(事業の利益)1,000万円〜2,000万円

(譲渡対象資産の概算金額)0円〜100万円

 

【商品・サービスの特徴】

交通事故の自賠責保険、健康保険での施術、自費の施術、生活保護(会社にて健康保険請求及び自費の売上を計上していますが、一体でお譲りします。)

 

【顧客・取引先の特徴】

主に30代~60代の男女と幅広い年齢層にご来院いただいています。

 

【従業員・組織の特徴】

30代から40代の女性アルバイトスタッフが3名在籍していて、内2名は3年以上勤務となっています。仕事内容は、院長のサポートや受付接客などとなっています。

 

【強み・アピールポイント】

広告費ほぼ0円での安定した集客、交通事故専門(約7割の売上)、マッサージ機や干渉波など必要資産一式が揃っていること、創業約10年の実績です。

 

 

 

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情報提供元:ZEIKEN LINKS(スモールM&Aお任せサービス)/ビジネスサクセション株式会社

 

 

 

 

 

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・掲載情報は公開日時点の情報になります。既に案件が特定の対象会社と交渉に入っている場合や成約している場合もございます。

 

 

 

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[税理士事務所の事業引継ぎ(M&A)や後継者不足に悩んだら]

 

会計事務所の事業引継ぎの一つの手段として、M&Aをご検討される税理士が増えてきました。税理士の皆さまより寄せられたよくある質問を、Q&A形式にてわかりやすく解説しました。

 


Q、会計事務所を譲渡した後に、 税理士として働き続けることはできますか?

 

 

税理士として働き続けることは 可能 です。

 

一般的には、事務所の譲渡後、少なくとも「 数か月~1年程度 」は、買手事務所にて、業務や顧問先の「 引継ぎ業務 」をすることになります。 また、希望であれば、引継ぎが完了した後も、買手事務所にて、税理士業務を続けることもできます。

 

譲渡後の買手事務所での働き方は、先生の要望をもとに買手事務所と交渉のうえ、決定します。多くの場合、少なくとも「 一定期間は税理士として働くこと 」を求められます。

 

これは、先生が継続的に顔を出した方が、顧問先にも職員にも安心感を与え、顧問先の継続や、従業員の離脱防止につながると考えるからです。

 

勤務はするが、業務量や勤務日数を減らして、「 ゆとりのある勤務 」で継続する場合もあります。なかには、引継ぎが完了したら、買手事務所と距離を置きたいと考える税理士もいます。その場合は、開業登録をすることになりますが、譲渡契約の競合避止義務により、譲渡した顧客に対して営業するなど、買手事務所とバッティングするような行為は禁止されますので、注意が必要です。

 

 

 

 

 

[税理士事務所の事業引継ぎ(M&A)や後継者不足に悩んだら]

 

会計事務所の事業引継ぎの一つの手段として、M&Aをご検討される税理士が増えてきました。税理士の皆さまより寄せられたよくある質問を、Q&A形式にてわかりやすく解説しました。

 


Q、事務所の売却後、職員は継続雇用されるのでしょうか? 職員の待遇が悪くなることはありますか?

 

 

ほとんどのケースで、職員は 継続雇用 されます。

 

買手事務所も採用に苦労しているため、「 職員には継続して勤務してもらいたい 」と、多くの買手が考えています。

 

買手より、職員の継続勤務が、条件に挙げられることもよくあります。これは、職員が退職してしまうと、業務が回らないだけではなく、職員が退職すると、その職員が担当していた顧問先も離れてしまう可能性があるからです。

 

また、「 職員の待遇が悪くなるのでは? 」と懸念される先生もいますが、職員の待遇を悪くすると、退職してしまう可能性が高まるため、会計事務所M&Aでは、職員の待遇が悪くなる、ということはほとんどありません。

 

もちろん、明らかに給与額が高い職員(例えば代表の親族)については、ある程度、適正な金額に調整される可能性があります。また、「職員は継続雇用されます」と書きましたが、未来永劫雇用が保障されるわけではありませんので、その点はご留意ください。

 

 

 

[解説ニュース]

住宅取得等資金贈与に係る贈与税の非課税制度における取得要件と居住要件

 

〈解説〉

税理士法人タクトコンサルティング(山崎 信義/税理士)

 

 

[関連解説]

■【Q&A】事業承継税制:相続税の特例措置における「中小企業者要件」の判定

■【Q&A】相続時精算課税の住宅取得等資金贈与の特例に係る贈与者が死亡した場合の相続税の取扱い

 

 

 


1.住宅取得等資金の非課税制度の概要


その年の1月1日において一定の要件を満たす個人が、令和5年12月31日までの間に父母や祖父母など直系尊属からの贈与により、自己の居住の用に供する住宅用家屋の新築、取得又は増改築等の対価に充てるための金銭(以下「住宅取得等資金」)を取得した場合において、一定の要件を満たすときは、受贈者ごとに、非課税限度額(新築等をした住宅用家屋が省エネ等住宅(注)の場合は 1,000万円、それ以外の住宅の場合は 500万円)までの金額について、贈与税が非課税となります(租税特別措置法(措法)70条の2第1項。以下、本税制を「非課税制度」という)。
(注)省エネ等住宅とは、省エネ等基準に適合する住宅用家屋であることにつき、一定の書類により証明されたものをいいます(措法70条の2第2項6号イ、措法施行令40条の4の2第8項)。

 

 

2.非課税制度における居住要件


非課税制度の適用を受けるためには、原則として贈与を受けた年の翌年3月15日までにその家屋に居住することが要件とされます。贈与を受けた年の翌年の3月15日までに居住しない場合であっても、取得した住宅用家屋を同日後遅滞なく受贈者の居住の用に供することが確実であると見込まれる場合には、一定の書類の添付により特例の適用ができます(措法70条の2第1項)。ただし、贈与を受けた年の翌年の12月31日(以下「居住期限」)までに受贈者の居住の用に供されていない場合は、特例の適用ができないため、修正申告書の提出が必要となります(同法第4項)。

 

 

3.非課税制度における取得要件


(1)概要

非課税制度の適用を受けるためには、贈与を受けた日の属する年の翌年3月15日(以下「取得期限」)までに住宅取得等資金の全額を充てて住宅用家屋の新築(新築に準ずる状態として一定のものを含む)もしくは取得をすることが要件とされます。

 

(2)請負契約により住宅用家屋を新築する場合

(1)の場合において、請負契約により住宅用家屋を新築するときは、取得期限において屋根を有し、土地に定着した建造物と認められる時以降の状態であれば、上記(1)の「新築に準ずる状態」とされ、完成した住宅用家屋を同日後遅滞なく受贈者の居住の用に供することが確実であると見込まれるときには、一定の書類の添付により非課税制度の適用を受けることができます(措法70条の2第1項1号、措法施行規則23条の5の2第1項)。

 

(3)住宅用家屋を取得するときの取得要件

前記(1)の住宅用家屋の取得とは、売主から住宅用家屋の引渡しを受けたことをいいます。したがって、建売住宅や分譲マンションについては、売買契約が締結されている場合や、これらの建物が前記(2)に規定する新築に準ずる状態にある場合であっても、その引渡しを受けていない限り、住宅用家屋の取得には該当せず、非課税制度の適用を受けることができません(措法通達70の 2−8、70の3−8)。

 

4.災害等を受けた場合の居住・取得期限の延長等


(1)居住期限の1年延長

贈与により金銭の取得をした人が、その金銭を住宅用家屋の新築等の対価に充てて新築等をする場合に、その贈与を受けた年の翌年3月15日後遅滞なくその住宅用家屋を居住の用に供することが確実であると見込まれることにより、非課税制度の適用を受けたものの、災害に基因するやむを得ない事情により贈与を受けた年の翌年12月31日までに居住することができなかったときには、居住期限が1年延長【贈与を受けた年の翌々年12月31日】されます(措法70条の2第10項)。

 

(2) 取得期限の延長

贈与により金銭の取得をした人が、その金銭を住宅用家屋の新築等の対価に充てて新築等をする場合に、災害に基因するやむを得ない事情により贈与を受けた年の翌年3月15日までにその住宅用家屋の新築等ができなかったときには、取得期限と居住期限が1年延長されます(措法70条の2第11項)。

 

(3)居住要件の免除

住宅取得等資金の贈与を受けて住宅用家屋の新築等をした人が、その贈与を受けた年の翌年3月15日後、遅滞なくその住宅用家屋を居住の用に供することが確実であると見込まれることにより、非課税制度の適用を受けた場合において、その住宅用家屋が災害により滅失(通常の修繕では原状回復が困難な損壊を含む。)をしたため、居住することができなくなったときには、居住要件が免除され、非課税制度の適用を受けることができます(措法70条の2第9項)。

 

 

 

税理士法人タクトコンサルティング 「TACTニュース」(2023/9/25)より転載

[解説ニュース]

勝手に(?)出された相続時精算課税の申告書が無効かどうかでトラブル

 

〈解説〉

税理士法人タクトコンサルティング(遠藤 純一)

 

 

[関連解説]

■小規模宅地等特例:相続人の継続事業への関与度合いが問われた事例

■貸家建付地の相続税評価では、次の相続までの状況変化に注意

 

 

 


1.はじめに


相続時精算課税制度は、令和6年1月1日以後の贈与から110万円の基礎控除が使えるようになることから、現在注目されている制度です。今回はこの制度を利用した親子間での財産贈与で、起こりがちな事例を取り上げます。

2.相続時精算課税制度とは


相続時精算課税制度とは現行制度上、その年の1月1日現在で60歳以上の父母・祖父母である直系尊属から、18歳以上の推定相続人である子や孫へ贈与がある場合に、贈与した人と財産をもらった人の組み合わせごとに選択できる制度です。税負担は贈与額2,500万円までは特別控除により事実上贈与税が課税されず、それを超える金額の贈与には20%の税率で課税されます。

 

その見返りとして、この組み合わせで直系尊属である父母等の相続が開始した場合には、相続税の計算上相続時精算課税制度でもらっていた財産を相続財産に加算し、相続税が算出される場合にはこの相続税から支払い済みの贈与税を引いて精算する仕組みです。この選択は、いったん行われると後で解消することができないのが特徴です。

 

ただ、この制度をめぐっては、税務上のトラブルが散見されるようです。裁決事例になっている事案でも、たとえば、財産をあげた被相続人が財産を受け取った子供らのために被相続人自ら勝手に(?)相続時精算課税制度の届出・申告をして、あとで相続人が相続税申告する際、相続財産に加算する贈与財産の計算で誤りが税務署から指摘されたケースがみられます(審判所、令和元年6月17日裁決、令和5年2月3日裁決)。ここでは、令和元年6月17日裁決を見てみることにします。

 

 

3.事案の概要


裁決書によると、この事案は平成27年に開始した相続の相続税申告に際し、相続人が平成18年から21年にかけて被相続人からもらっていた財産について、相続財産に加算すべきかどうかが問題になった事案です。税務署は、平成18年から21年にかけて被相続人から贈与された財産(現金・建物)につき、被相続人自身の手で相続時精算課税制度により申告していたため、相続時精算課税制度の適用で相続財産に加算すべきものとして更正しています。しかし、相続人は相続時精算制度の申告書は、被相続人が勝手に作成し税務署に提出したので、無効だと反発したものです。

 

 

4.審判所の判断


審判所は、まず、申告手続きについて「納税義務者本人が申告書を提出して行うこととされているから(国税通則法第17条《期限内申告》等)、納税義務者以外の者が、本人の承諾なく勝手に納税義務者の申告書を作成し提出した場合には、その納税申告は無効であると解される」と考え方の原則を提示。次に、審判所は納税義務者以外の者が申告書を作成し提出した場合であっても、有効になる場合として、「その者が、納税義務者から明示又は黙示に当該申告行為をする権限を与えられている場合」と指摘しました。

 

事案のケースでは、被相続人が申告手続きしたことが明らかであることから、相続人が、被相続人に対し、「明示又は黙示に本件精算課税申告書による申告行為をする権限を与えていたといえるか否かについて」検討、次のような事実関係を指摘しています。

 

①相続人は、建物贈与に係る登記手続を被相続人に一任していたこと

 

②あとで被相続人が相続時精算課税申告を出し直すことになる暦年課税申告書を作成する際、農協などでの相談において、必要な書類の提示などの対応は被相続人が行っていたこと

 

③その暦年課税申告に係る納税資金は被相続人が負担していたこと

 

④相続人の印鑑は被相続人も使用することが可能な状況であったこと

 

⑤相続人が主体的に自己に係る申告手続等の必要な手続を行っていたということはうかがわれないこと

 

⑥後の相続時精算課税制度申告で相続人は贈与税に係る還付金等の振込を認識できたといえること

 

⑦被相続人が相続人口座から還付金等を出金したことにつき異議を述べたといった事実は認められないこと

こうしたことから審判所は一連の手続きに関し、相続人が「被相続人に対して包括的に委任していたとみるのが相当であるから、精算課税申告についても、明示又は黙示に当該申告行為をする権限を被相続人に与えていたといえる」と判断しています。

 

 

5.まとめ


上記のようなトラブルの原因は、被相続人と相続人の間での行き違いなのか、それとも別の理由があるのかは、本当のところはわかりません。

 

生前贈与による財産の承継は安全が第一だとすれば、将来発生する相続税でも不利にならないよう、被相続人と相続人が納得の上、税理士ら専門家を交えて手続きを行うことがトラブルを未然に防ぐことにもつながるのではないでしょうか?

 

 

 

税理士法人タクトコンサルティング 「TACTニュース」(2023/9/11)より転載

[税理士事務所の事業引継ぎ(M&A)や後継者不足に悩んだら]

 

会計事務所の事業引継ぎの一つの手段として、M&Aをご検討される税理士が増えてきました。税理士の皆さまより寄せられたよくある質問を、Q&A形式にてわかりやすく解説しました。

 


Q、職員数名の小規模の会計事務所ですが、買手の会計事務所は見つかりますか?

 

 

小規模の事務所であっても、譲渡できる可能性はあります。

 

 

「 5名以下の小規模事務所 」を希望する買手事務所からの問い合わせは多いです。これから事業を拡大したいと考えている税理士事務所からのニーズがあります。もちろん、「 10名~20名規模の中規模事務所 」の譲受を希望している事務所も多いです。

 

 

「必ず買手が見つかります」とは断言はできませんが、「小規模の事務所だから買手は見つからない」と決め切らずに、譲渡先を探してみてはいかがでしょうか。

 

 

税務研究会では、全国の会計事務所より、譲渡を希望する税理士事務所を譲り受けたいという希望の連絡を多数受け付けています。譲渡をご検討の場合は、お気軽にご相談ください。

 

 

 

 

[税理士のための税務事例解説]

事業承継やM&Aに関する税務事例について、国税OB税理士が解説する事例研究シリーズです。

今回は、「事業承継税制の適用要件について」についてです。

 

[関連解説]

■【Q&A】特例経営承継期間中に事業が立ち行かなくなった場合の取扱い

■【Q&A】個人版事業承継税制について ~先代事業者が医師、後継者が歯科医師の場合~

 

 

 

 

 


[質問]

A社は甲が代表取締役を務めていましたが、後継者として予定している乙を共同代表取締役に就任させるつもりです。その後、特例承認計画を県に提出し経営承継円滑化法の確認を受け、期間を経て甲は代表取締役を辞任し、いわゆる平取締役となり、その後乙に株式を贈与する計画です。

 

このような経緯を経る予定なのですが、その他の要件を満たしていた場合、上記贈与について事業承継税制の適用は可能でしょうか。

 

 

 

[回答]

1 事業承継税制の贈与者の要件

事業承継税制(贈与税)の適用対象となる贈与者とは、以下のいずれにも該当する者をいいます(租税特別措置法施行令第40条の8第1項第一号、同施行令第40条の8の5第1項第一号)。

 

(1) 贈与の前に会社の代表権を有していたこと

(2) 贈与の直前において、贈与者及び贈与者の同族関係者等で総議決権数の50%超の議決権を保有し、かつ、受贈者を除いたこれらの者の中で最も多くの議決権数を保有していたこと

(3) 贈与の時において、会社の代表権を有していないこと

 

 

2 事業承継税制の受贈者の要件

事業承継税制(贈与税)の適用対象となる受贈者とは、以下のいずれにも該当する者をいいます(租税特別措置法第70条の7第2項三号、同法第70条の7の5第2項六号)。

 

(1) 贈与の日において、18歳以上であること

(2) 贈与の時において、会社の代表権を有していること

(3) 贈与の時において、受贈者及び受贈者の同族関係者等で総議決権数の50%超の議決権を保有し、かつ、受贈者の同族関係者等の中で最も多くの議決権を保有することになること(受贈者が1人の場合)

(4) 贈与の日まで引き続き3年以上にわたり会社の役員の地位を有していること

 

 

3 照会事例について

ご照会の事例における代表権に関しては、贈与者(現経営者)甲は株式を贈与する前に代表権を有しており、株式の贈与時には代表権を有していませんので、贈与者の要件を満たすことになります。また、受贈者(後継者)乙は株式の贈与時には代表権を有していますので、受贈者の要件を満たすことになります。

 

また、役員の就任期間等に関しては、受贈者の要件の役員から代表取締役は除かれていませんので、贈与の日まで引き続き3年以上にわたり代表取締役も含めて役員の地位を有していれば、受贈者の要件を満たすことになります。

 

したがって、ご照会の事例のような経緯を経るとする場合で、その他の事業承継税制の要件を満たしているときには、事業承継税制の適用は可能と考えられます。

 

なお、事業承継税制の代表権の判定は、法律上の名前で行うことから、代表権が移動した場合には、法務局の商業登記を変更する必要があります。また、共同代表に就任させる場合には、定款等において後継者の代表権に制限を加えないことに留意してください。

 

 

 

 

 

 

 

税理士懇話会事例データベースより

(2023年1月30日回答)

 

 

 

 

[ご注意]

掲載情報は、解説作成時点の情報です。また、例示された質問のみを前提とした解説となります。類似する全ての事案に当てはまるものではございません。個々の事案につきましては、ご自身の判断と責任のもとで適法性・有用性を考慮してご利用いただくようお願い申し上げます。