【Q&A】自宅と敷地の所有者が異なる場合の居住用財産の譲渡に係る譲渡所得の特例の適用
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[解説ニュース]
【Q&A】自宅と敷地の所有者が異なる場合の居住用財産の譲渡に係る譲渡所得の特例の適用
〈解説〉
税理士法人タクトコンサルティング(山崎 信義/税理士)
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【問】
Aさん夫婦は、平成10年に購入し、譲渡直前まで継続して居住していた練馬区の自宅(夫所有)とその敷地(Aさん持分1/4、夫の持分3/4の共有)を、令和6年3月に某上場会社に譲渡し、譲渡益4,800万円(全て敷地の譲渡益)が生じました。Aさんの夫は、この譲渡に係る所得税の計算上、租税特別措置法(措法)35条の居住用財産の譲渡に係る特別控除(以下「3,000万円控除」)と、31条の3の長期譲渡所得の課税の特例(以下「軽減税率」)の適用を受けるつもりです。以上の場合において、Aさんは自宅の譲渡に係る所得税の計算上、3,000万円控除と、軽減税率の適用を受けることができますか。 |
【回答】
1.結論
Aさんについては3,000万円控除の適用はありませんが、軽減税率の適用があります。
2.解説
(1)自宅と敷地の所有者が異なる場合の3,000万円控除の適用
①概要
3,000万円控除は、個人が自己の居住用家屋と敷地を併せて譲渡した場合、一定の要件を満たすことにより譲渡所得の計算上、最高3,000万円が控除される特例です(措法35条第1項)。
3,000万円控除は、譲渡者が居住の用に供している家屋(自宅家屋)を核として設けられた特例であり(同第2項)、譲渡した家屋の所有者とその敷地の用に供されている土地等の所有者が異なる場合には、その土地等の譲渡については適用されないのが原則です。
しかし、譲渡した家屋の所有者とその敷地の所有者とが夫婦等の親族関係にあり、かつ、その家屋に同居し生計をーにしているときは、その家屋と敷地はーつの生活共同体の居住用財産とみて特例を運用するのが実情に即しているともいえます。そこで国税庁は、次のイ~ハの要件の全てを満たす土地等の所有者の譲渡所得の計算上、3,000万円控除の適用を認めています(措法通達35-4)。
イその家屋とともにその敷地の用に供されている土地等の譲渡があったこと。
ロその家屋の所有者とその土地等の所有者とが親族関係を有し、かつ、生計を一にしていること。
ハその土地等の所有者は、その家屋の所有者とともにその家屋を居住用として使用していること。
②控除額の計算
①の適用を受ける場合、控除額は居住用家屋の所有者と敷地の所有者と合わせて3,000万円が限度となります。この場合、控除額を差し引く順序は、まず家屋の所有者、続いて敷地の所有者とされます。
(2)自宅と敷地の所有者が異なる場合の軽減税率の適用
軽減税率は、個人が自己の居住用家屋と敷地を併せて譲渡した場合、一定の要件を満たすことにより長期譲渡所得に係る所得税の計算上、通常より低い税率を適用する特例です(措法31条の3第1項)。
軽減税率は、3,000万円控除と同じく讓渡者の自宅家屋を核として設けられた特例であり(同第2項)、譲渡した自宅家屋の所有者とその敷地の用に供されている土地等の所有者が異なる場合は、その土地等の譲渡には適用されないのが原則です。
しかし国税庁は、前述(1)①の下線部と同じ趣旨から、次のイ~ハの要件の全てを満たしている土地等の所有者が、譲渡した自宅家屋の所有者とともにその適用を受ける旨の申告をした場合に限り、軽減税率の適用を認めています(措法通達31の3-19)。
イ譲渡した自宅家屋(以下「譲渡家屋」)の敷地の用に供されている土地等(以下「譲渡敷地」)は、譲渡家屋とともに譲渡されていること。
口譲渡家屋の所有者と譲渡敷地の所有者とが親族関係を有し、かつ生計を一にしていること。
ハ譲渡家屋は、その家屋の所有者が譲渡敷地の所有者とともに、その居住の用に供している家屋であること。
(3)本件へのあてはめ
Aさんは(1)①イ~ハの要件を満たすものの、②より控除額は居住用家屋の所有者(夫)の控除額と合わせて最高3,000万円で、夫の譲渡所得から先に控除されます。夫の譲渡所得の控除前の金額(譲渡益)は4,800万円×3/4(持分)=3,600万円であり、その金額の計算上3,000万円全額が控除されるため、Aさんには3,000万円控除の適用はありません。
一方、自宅敷地の長期譲渡所得に係る所得税の軽減税率については、譲渡した自宅家屋の所有者の夫がその適用を受け、Aさんが(2)イ~ハの要件を満たすことから、適用があります。
税理士法人タクトコンサルティング 「TACTニュース」(2024/4/22)より転載