[M&A事業承継の専門家によるコラム]

第8回:株主の所在が分からない株式の整理方法

 

中小零細企業経営者や経営者をサポートする専門家の方が抱えるM&Aや事業承継に関するお悩みを、中小零細企業のM&A支援・事業計画支援を専門で行っている株式会社N総合会計コンサルティングの平野栄二氏にアドバイスいただきます。

 

〈解説〉

株式会社N総合会計コンサルティング

平野栄二

 

 

 

 

「前回の解説でご説明いただいた「株主の所在が分からない株式の整理方法」について、詳しく教えていただけますでしょうか」

 

 


株主の所在が分からない株式の整理方法

個人が保有している株式を集約化するためには、通常は、適正な価格を提示し、株主の承諾を得て、買い取る方法で行うことになりますが、株主の所在が分からない場合、株主の個別の承諾を得ることなく、金銭を対価として取得(キャッシュアウトといわれます)する以下のような制度が活用できます。

 

 

 

 

そのため、できる限り所在不明株主を生じさせないように、「日ごろから株主間のコミュニケーションを充実させる」「株主間契約を締結しておき、連絡が取れなくなった場合の対応のルールを決めておく」ことは重要でしょう。

 

 

1、所在不明株主の株式売却制度(会社法197 198)


次のような要件を満たせば、株主の承諾を得ることなく、売却を行うことが認められています。

 

 

[問題点]

これまで株主総会招集通知を所在不明株主に送付していなかったり、あるいはそもそも株主総会をやっていなかった会社は要件を満たさず、すぐにこの制度を利用することができません。

 

株主総会は年1回以上の開催が義務付けられていますので、今後株主総会の招集通知を毎年所在不明株主に送付し、5年間継続して受け取りがないことを確認するまではこの制度を利用することはできません。

 

 

 

 

2、株式等売り渡し請求制度(会179)


株式等売り渡し請求制度とは、総株主の議決権の10分の9以上を有する株主(特別支配株主)が他の株主に対して、その保有する株式の全てを売り渡すことを請求できる制度のことをいいます。所在不明になっている株主の株式を強制的に取得する方法として、活用されています。

 

メリットとしては、対象会社の取締役会の承認があれば、株主総会の決議を経ることなく、少数株主が保有する株式を取得することがきることです。(会社179)

 

M&Aなどでは、全株譲受が条件になっている場合が多く、株式を迅速に取得したいときに、有効な方法だといえます。

 

 

[留意点]

特別支配株主は1人又は1社である必要があるという点です。そのため、株主で残しておきたい人の株式(右表でいうと専務の株式)も売渡の対象になってしまいます。そのため、買い戻すなどの処理が必要な場合があります。

 

[手順の概要]

①特別支配株主から対象会社への通知

特別支配株主が株式の取得日や株式の買取代金額等の取引条件を決めて株式売渡請求をすることを会社に通知する。

 

②対象会社の承認

株式売渡請求について、会社の承認を得る。対象会社が取締役会設置会社である場合は、承認するか否かの決定は取締役会の決議により、取締役会非設置会社である場合は、取締役の過半数をもって決定。

 

③売り渡し株主への通知

会社が少数株主に対して、株式の取得日の20日前までに、特別支配株主から売渡請求がされ、会社が承認したことを通知する。この通知は株主名簿に記載された少数株主の住所に宛てて通知すれば足り、通知が届かないときでも通常届くべき時期に届いたものとみなされます(会社法第126条)。

 

④事前開示手続き

対象会社は、売渡株主等に対する通知又は公告の日のいずれか早い日から取得日後1年を経過するまでの間、次の事項を記載・記録した書面又は電磁的記録をその本店に備え置く。

 

⑤取得日

会社に通知した「取得日」に、株式が特別支配株主から多数株主に移転する。 買取代金は本来、所在不明株主に支払うべきものですが、支払先がわからないため、法務局に供託(株式買取代金を預ける)が認められている。

 

⑥事後開示手続き

対象会社は、取得日後遅滞なく取得日から1年間(非公開会社の場合)、所定の事項を記載・記録した書面又は電磁的記録をその本店に備え置く。

 

 

[問題点]

不満のある売渡株主から以下のような訴え等をされるリスクがあります。会社法では、少数株主の利益が害されないように、少数株主を保護するための様々な制度があります。

 

(1)売渡株式の全部の取得の差止請求

(2)売買価格の決定の申立て

(3)無効の訴え

(4)取締役に対する損害賠償請求

 

特別支配株主の株式等売渡請求を行う場合には、紛争に発展し、問題が長期化するリスクがあります。そのため、他の方法を検討してから、最終手段として、この方法を考えることが望ましいと思います。

 

 

3、株式併合による株式集約化(会180)


株式の併合とは、数個の株式をあわせて、それよりも少数の株式にすることで、すべての株主の保有株式数を一律に減少させることになります。(会社法1801項)

 

株式併合によって、株式を集約する方法とは、①少数株主が保有する株式について、株式の併合により交付される株式が端株になるように、併合割合を決めて、株式の併合を行います。②併合によって生じた1株に満たない端株の株式は換金されて少数株主に交付されることにより、少数株主は株主でなくなり、株式の集約が完了します。

 

 

[手順の概要]

①対象企業による事前の情報開示手続き

株主総会に先立って、会社本店において、一定の書類を備え置いておき、株主から希望があった場合には閲覧させる。

 

②株主総会で株式併合の特別決議をする

株主総会を正しく招集して特別決議により株式併合を決定する。併合の割合、株式の併合の効力発生日などを決議し、株式併合の理由などを説明する。

※「特別決議」とは、議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した株主の議決権数の2/3以上の賛成で可決する決議方法

 

③株主に対する個別の通知発送

株式の併合の効力発生日の20日前までに、全株主に対して、個別に併合の割合等を通知する。連絡がとれない株主については株主名簿に記載された住所に宛てて通知すれば、通知が届かないときでも通常届くべき時期に届いたものとみなされる。

 

④効力発生

従来の株式数に併合割合を乗じた数の株主となる。

 

⑤対象企業による事後の情報開示

 

⑥裁判所に売却許可の申立てをする

株式併合により生じた端株(1株未満の株式)について、競売もしくは裁判所に売却許可の申し立てをすることができる。裁判所から売却を許可されれば、会社は端株を自ら買い取ることが可能となる。支払先がわからない場合は、法務局に代金を預けること(供託)が認められている。

 

[問題点]

●株式併合が法令または定款に違反する場合において、株式が不利益を受けるおそれがあるときは、併合の差し止めの請求が可能であります。

●反対株主には株式併合によって、生じる端数について、株式買取請求権がみとめられている。このときには、価格決定の申し立てがされた場合、想定外の高い価格で買い取らねばならないリスクがあります。

●会社または、他の株主が、反対株主や端数の買取りのための資金を準備しておく必要があります。

●自己株式を取得する場合、剰余金の分配可能額の範囲内でしか行うことができません(財源規制)(会461)ので、注意が必要です。

紛争に発展しないためにも、できるかぎり事前に株主の理解を得ることが重要です。

[税理士のための税務事例解説]

事業承継やM&Aに関する税務事例について、国税OB税理士が解説する事例研究シリーズです。

今回は、「事業譲渡があった場合に譲受法人が支払う引受従業員への退職金の課税関係」についてです。

 

[関連解説]

■【Q&A】事業譲渡に当たっての適正価額について

■【Q&A】「事業譲渡に係る収益計上時期

 

 

 


[質問]

事業譲渡法人A社の株主と事業譲受法人B社の株主は親族であるため、兄弟会社になります。A社は、債務超過の法人であったため、平成29年9月、事業譲渡法人A社、事業譲受法人B社とする事業譲渡が行われました。その際、A社が保有する債権債務、従業員もすべてB社が引き継ぎました。その後、A社は解散し、平成30年9月に清算結了しました。A社は、債務超過の状態であり、従業員に退職金を支給する原資がなかった為、事業譲渡の際には従業員に退職金を支給しておりませんでした。

 

この度、A社から引き継いだ従業員甲がB社を退職することになりました。従業員甲は、B社では勤続年数が4年ほどですが、A社では勤続期間は30年ほどあります。長い間の功労として退職金を支給する予定ですが、退職所得控除額を計算するうえで、勤続年数はB社で働いた勤続期間になるのでしょうか。それともA社での勤続期間を合わせた勤続年数となるのでしょうか。

 

[回答]

結論から申し上げますと、ご照会の従業員甲に係る勤続年数が、いずれの勤続期間になるかは、B社の退職金支給規程の定め方次第ということになります。

 

すなわち、所得税法施行令第69条第1項第1号ロの規定に「退職所得者(甲)が退職手当等の支払者(B社)の下において勤務しなかった期間に他の者(A社)の下において勤務したことがある場合において、その支払者(B社)がその退職手当等の支払金額の計算の基礎とする期間(4年+?年)のうちに当該他の者(A社)のもとにおいて勤務した期間(30年)を含めて計算するときは、当該他の者(A社)において勤務した期間(30年)を勤続期間に加算した期間(34年)により勤続年数を計算する。」旨の定めがあります。

 

従って、この規定が適用できれば、従業員甲の退職金に係る勤続年数は、34年ということになります。ただし、この規定を適用するには、一定の条件があります。

 

その条件とは、所得税基本通達30-10に定める条件をいいます。

 

具体的には、こうした他の者の下で勤務した期間を加算して勤続年数を計算できるのは、「法律若しくは条例の規定により、又は所得税法施行令第153条若しくは旧法人税法施行令第105条に規定する『退職給与規程において他の者の下において勤務した期間—を含めた期間により退職手当等の支払金額の計算をする旨が明らかに定められている場合に限り適用する』ものとする。」とされていますので、この条件を満たす規程を支給者であるB社が有するか、或いは制定し得るかということに懸かっていることになります。

 

このような取扱いになっているのは、引受者のうち特定の者だけを通算対象とし、他の者は自社の勤続期間だけで計算するという偏った取り扱いが行われるといった弊害を排除するためのものであり、事業譲渡法人元A社の従業員の全てを、普遍的、一律に取り扱うことを期待した条件といえます。

 

 

 

 

 

税理士懇話会事例データベースより

(2021年2月4日回答)

 

 

 

 

[ご注意]

掲載情報は、解説作成時点の情報です。また、例示された質問のみを前提とした解説となります。類似する全ての事案に当てはまるものではございません。個々の事案につきましては、ご自身の判断と責任のもとで適法性・有用性を考慮してご利用いただくようお願い申し上げます。

 

 

 

 


[会計事務所の事業承継・M&Aの実務]

第6回:会計ソフトの統合

~会計ソフトは統合した方がいいのでしょうか?~

 

[解説]

辻・本郷税理士法人 辻・本郷ビジネスコンサルティング株式会社

黒仁田健 土橋道章

 

 

 

 

▷関連記事:事業が健全かそうでないかの判別

▷関連記事:「会計事務所・税理士事務所のM&Aの特徴や留意点」とは?

 

 

Q、会計ソフトは統合した方がいいのでしょうか?

A、会計事務所に特有なのが、会計ソフトの問題です。M&Aした買主と売主の会計ソフトが違う場合に会計ソフトを統合するかどうかは、大きな課題となります。同じである場合には、業務を標準化しやすく、M&Aをスムーズに進めることもできます。

 

会計ソフトが違う場合、当初から統合することも選択肢の一つですが、税務申告・試算表作成等を提供するサービスの中心としていたとすると、会計ソフトがサービスの中心的な役割をしていますし、会計ソフトベンダーとの契約期間等もありますので、容易に統合はできません。

 

効率性を優先するのであれば会計ソフトなどは統合すべきですが、顧問先との長い年月の関係で現在のカタチができています。ありがたいことに最終的な成果物である申告書や決算書のひな形は同じです。それを作成するための道具(会計ソフト)は異なりますが、統合当初の段階から合わせていくべきものなのかは慎重に決めた方がいいでしょう。顧問先からのニーズを把握できない状態で、会計ソフトを統合することは控えるべきです。

 

会計事務所にとって、最大の商売道具(ツール)といえるのが「会計ソフト」です。道具を一気に変えてしまった場合、使う側としては戸惑いと同時に、慣れるまでに時間がかかります。特に、M&Aによる変化が多い状況でストレスがかかるので、M&A直後に会計ソフトを統合することは避けるべきと考えます。

 

当社の場合、M&A当初の時期は会計ソフトを基幹のソフトに一本化しようと考えていましたが、モチベーションの低下をもたらすとともに業務が非効率となったので、統合前のそのままの会計ソフトを使うようにしています。会計ソフトを変えずに継続して同じものを使うようになってからは業務上でのストレスがなくなり、経営統合はスムーズにいく機会が増えました。

 

 

 

また、結果的に、多数の会計ソフトを使用している多様性が強みになる可能性も感じています。

 

参考までに、当社がM&Aした際に承継先の事務所が使用していた会計ソフトは上記のグラフとなります。

 

統合した際の効果として、会計ソフトやITツールなどのシステムのシナジー効果があります。会計ソフトは、その事務所によってこだわりが出やすいものです。会計事務所によって、メインで使用する会計ソフトは全く異なります。

 

そのため、会計ソフトの範囲を限定してしまっていて、他に便利なソフトが出ても閉鎖的になり、新たなソフトを使用しようとしない傾向があります。まさに武士の魂である刀のように、こだわりが強いのです。

 

しかし、業務の内容によっては、メインで使用している会計ソフト以外のソフトの機能を駆使した方が効率が上がる場合があります。事務所が統合することにより、これまで使ったことのない会計ソフトに触れることで、臨機応変に使い分けることができるようになります。

 

また、業務の内容に応じて、それぞれの会計ソフトの利点を活かせるように、それぞれの事務所の使い方等を共有して融合できれば、業務の効率化をはかることができます。

 

当社のM&Aの事例でも、昔から使用していた会計ソフトしか使わないという文化に、クラウド型の会計ソフトなどの最新型のソフトを使う文化が融合した際、最初はなかなか浸透しませんでしたが、時間をかけてコミュニケーションをとり、それぞれの良さをわかり合うことができ、業務効率が格段に上昇した事例があります。

 

 

 

 

 

▷参考URL:M&A各種契約書等のひな形(書籍『会計事務所の事業承継・M&Aの実務』掲載資料データ)

 

[失敗しないM&Aのための「財務デューデリジェンス」]

第8回:財務デューデリジェンス「レポート(報告書)作成・報告」を理解する

~M&Aをサポートする専門家に向けたアドバイス~

 

〈解説〉

公認会計士・中小企業診断士  氏家洋輔

 

 

▷第5回:財務デューデリジェンス「貸借対照表項目の分析」を理解する【前編】

▷第6回:財務デューデリジェンス「貸借対照表項目の分析」を理解する【後編】

▷第7回:財務デューデリジェンス「事業計画の分析」を理解する

 

 

財務デューデリジェンス「レポート(報告書)作成・報告」を理解する


1、レポートの作成イメージ

財務デューデリジェンスにおいて、論点は一定程度どの会社も同様ですが、会社ごとに特に重要と考えられる論点やその重要度が異なることがあります。また、買手企業から依頼を受けて財務デューデリジェンスを実施している場合、買手企業のニーズに合わせた分析・レポートにする必要があります。そのため、財務デューデリジェンスのレポートは対象会社ごとに毎回異なった分析・レポートとなることが一般的です。

 

筆者は財務デューデリジェンスのセミナー等を行った時に、受講生から「財務デューデリジェンスのレポートひな形を頂けませんか」と言われることがあります。先に述べたように、対象会社ごとに異なる分析・レポートを作成するため、ある程度の「ひな形」がないわけではないですが、ひな形通りにレポートを作ればとりあえず大丈夫というようなものは持ち合わせていません。

 

私のイメージするひな形は一般的な分析例が載っているものと理解していますが、おそらくそのひな形通りに分析をしても8割から9割の論点は抑えられますが、1~2割の分析が抜けてしまう可能性があります。その1~2割の分析が対象会社・買手のニーズごとに異なる部分であり、実は、その部分がとても重要な分析・レポートとなることが筆者の経験上多いです。

 

筆者がひな形をあまり好ましくないと思っている理由のもう一つに、対象会社ごとに異なるのはレポート全体だけはありません。それぞれの分析において、対象会社の規模や業種等によっても分析の切り口が変わり、発見事項が異なることが一般的です。レポートは、会計監査の監査調書や、税務調査対応のための証憑とは異なり、常に読み手を意識しながら、どのように伝えるか、伝わるかを考え作成します。

 

例えば、発見事項の有無に関わらず、全ての実施した分析とその結果がレポートに記載されているとどうでしょうか。伝えたい部分をつかみにくく、読み手としては読みにくいと思います。「発見事項がなかったという事実」が重要な場合を除いて、発見事項がない場合はレポートに記載するかどうかを検討する必要があります。

 

そのため、同じ分析であっても、どのような事実があり、その事実が対象会社と買手企業のM&Aにおいてどのような影響をもたらすのか、そしてそれをどのように伝えるかを検討してレポートを作成するため、レポートに載せる表やグラフ、強調したい部分、キーメッセージが異なることになります。

 

分析項目については、市販の本やインターネット等である程度記載されていると思います。ただ、上述したように対象会社特有の論点が重要となりやすいため、それらの論点が漏れてないかは常に意識する必要があります。その上で、各スライドで伝えたいことを意識して、さらにはレポート全体として伝えたいことを意識してレポートを作成する必要があります。

 

 

2、適時の報告

財務デューデリジェンスでは、レポートを作成して報告することが必要ですが、分析途中で、想定以上の粉飾が発見された等重大な問題が生じた場合は、どのような対応をするのが良いでしょうか。それは、レポートが完成する前に、当該事実を買手企業に適時に報告することが望ましいです。対象企業に重大な問題があった場合、ディールブレイクの要因となり得ます。つまり、この重大な事実のみをもってM&Aを実行しないという意思決定になり得るため、その場合はそれ以外の分析に意味を成さないのです。ディールブレイク要因になり得る重大な事実を確認した場合は、買手企業に適時に報告し、以降のデューデリジェンスを続けるかどうかの指示を仰ぐ必要があります。

 

 

3、スライド構成の検討

必要な分析を進めていくと、スライドは50枚や100枚、子会社の有無等によっては100枚を超えるレポートになることがあります。それらのスライドを、例えばBS項目、PL項目程度の分類で並べたレポートとすると、読み手にとって何が重要な事なのかが伝わりにくいレポートになってしまいます。また、M&Aは買手企業にとって重要な意思決定であることが多いため、レポートを社長や取締役が見ることも少なくありません。社長や取締役がレポートの全てのページを見る時間はありませんので、重要な項目のみを記したサマリースライドを作成します。このサマリーページをエグゼクティブサマリーと呼ぶことが一般的です。

 

エグゼクティブサマリーのスライドにどの内容を記載するか、そしてその記載の順番は、発見事項の中でも特に重要な項目の有無や、買手企業のニーズの有無、読み手に取って理解しやすいかどうかを意識して検討します。そのため、レポートごとにエグゼクティブサマリーの内容、順番は異なります。

 

報告会でもエグゼクティブサマリーについて報告し、その他のスライドは捕捉で必要があれば説明し、聞き手にとっても短い時間で必要な内容を把握することが可能となります。

 

 

 

 

 

 

 

 

[中小企業経営者の悩みを解決!「M&A・事業承継 相談所」]

~M&Aで会社や事業を売却しようとご検討の中小企業経営者におすすめ~

 

第9回:会社を譲渡した後、取引先との関係はどうなりますか?

 

 

〈解説〉

株式会社ストライク

 


M&A(合併・買収)仲介大手のストライク(東証一部上場)が、中小企業の経営者の方々の事業承継やM&Aの疑問や不安にお答えします。

 

 

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Q.会社を譲渡した後、取引先との関係はどうなりますか?

 

近畿地方で食品卸売を営んでいます。戦前に父が開業した会社を引き継ぎはや40年。「いつか誰かに譲らないといけない」と思いながら事業を続け、この年齢になってしまいました。会社をM&Aで譲渡することに異存はありませんが、一つ懸念するのが、譲渡後の取引先との関係です。

 

数十年前に取引先が倒産して大変な危機に陥りまして、Bという会社だけが掛けの取引に応じてくれました。B社への恩義を忘れず、「人で取引をする」という理念をかかげ、信用を重視して会社を大きくすることができました。

 

ただ、私がM&Aで会社を譲渡したら、「買い手企業に仕入先を変えられてしまわないか」という不安を感じています。私は恩義のあるB社をはじめ既存取引先との取引を継続してほしいのですが、その点はどうなるのでしょうか?

 

 (食品商社 Hさん)

 

 

 

A.取引先も会社の重要な資産。取引継続だけでなく、相乗効果を目指すのが買い手企業です。

 

取引先との信頼関係や従業員と会社の関係など、企業の価値は財務諸表だけで測りづらい面があります。社長が「会社の顔」である場合も多く、M&Aで別の会社の傘下に入ると、その繋がりが断絶してしまうのではないかと心配される方は多くいらっしゃいます。

 

ただ、これまでの経験からいえば、買い手企業もそのあたりは理解していることが多いと思います。取引先や従業員に不安を感じさせないよう、買い手企業もあまり急激な事業環境の変化を起こさないようにすることが一般的です。取引先が離れると、せっかく買収した企業の価値が下がってしまい、買い手企業にとってはデメリットが大きいからです。

 

買い手企業にとっては、「買収した企業の価値をより高めるためにどうするか」「相乗効果をどう生み出すのか」が最も大事です。例えば、ある包装資材関連の企業は、買収した大手企業が自社の販売ネットワークを活用して取引メーカー(仕入先)の商品販路を拡大しました。譲渡したオーナーは、取引先だったメーカーの社長から感謝されたそうです。

 

買い手企業にとっても、重要な取引先がM&A後も確実に取引を継続してくれるのかどうか重要です。例えば、譲渡企業の有力な販路だった企業から、取引を停止されて困るのは、買い手企業です。継続取引の可否が企業価値に大きく影響を与える取引先がある場合には、事前に買い手から、取引が継続されることを先方に確認するよう求められることもあるほどです。

 

もちろん、買い手企業が従来の取引先とずっと取引を続けるかを確約することはできません。社会情勢、経済環境や、買い手企業の財務状況や戦略の変化があるかもしれないからです。どうしても気になる場合は事前に買い手企業と相談しておいてもよいかもしれません。不安なことがある場合は、是非、M&Aの実績とノウハウを蓄積しているM&Aアドバイザーにご相談されてみてはいかがでしょうか。

 

 

 

 

 

 

[解説ニュース]

持分の定めのない法人への預金移転で贈与税が問題になった事例

 

〈解説〉

税理士法人タクトコンサルティング(遠藤 純一)

 

 

[関連解説]

■譲渡所得の計算上、概算取得費を適用すべき場合、取得費を推定できる場合

■公益社団法人等へ財産を贈与した場合の譲渡所得の非課税の特例・・・株式を贈与する場合

 

1.持ち分の定めのない法人への贈与と課税問題


持ち分の定めのない法人へ財産を贈与又は遺贈をして、その贈与等をした人の親族等の贈与税又は相続税の負担を不当に減少させる結果になると認められる場合、その法人を個人と見なして、贈与税又は相続税を課税する規定があります(相法66④)。これは平成20年度税制改正で、一般社団法人等を用いた租税回避に対する防止策として改めて整備されたものです。

 

ポイントは、一定の基準を全て満たし、その贈与等をした人の親族等の贈与税又は相続税の負担を不当に減少させる結果になると認められないとされるかどうかです(相令33③)。

 

今回は、この規定の適用を巡って争われた、つい最近の裁決事例を紹介します。

 

2.令和3年5月20日裁決


事案は、ある宗教法人を舞台としたものです。問題になった行為は、前住職(故人)が生前、平成27年に宗教法人の口座に3千万円を超える預金を移動させたこと。相続人に対する相続開始前3年内の贈与財産なら相続税の計算上加算されますが、国税当局は、上記行為につき住職の親族の相続税の負担を不当に減少させる結果になるとして、宗教法人を個人と見なして贈与税を課税しました。宗教法人はこれについて、「贈与」ではないとして審査請求に至り、最終的には国税不服審判所(以下、審判所という。)が贈与税の課税を全部取消したという事案です。争点は次の通りです。

 

⑴問題の資金移動は、前住職(故人)から請求人(宗教法人)への財産の贈与に該当するか否か(相法66④に規定する財産の贈与の有無(争点1))。
⑵問題の資金移動により相法66④に規定する相続税の負担が不当に減少する結果となると認められるか否か(争点2)。

 

3.審判所における贈与の認定・判断


争点1について、不服を申立てた宗教法人側では、前住職名義の口座にあったお金は、宗教法人の余剰金などを原資とするものが大半で、もともと宗教法人のものなどと主張していました。しかし審判所は、前住職の口座にあった金融資産の原資が宗教法人の収入であることをうかがわせる事情は見当たらないなどとして、その帰属は前住職にあるとしました。これを受けて、お金の宗教法人の口座への移動により、宗教法人に経済的利益が生じているから、移動したお金は「贈与により取得したものとみなされる」と判断しました。

 

4.審判所における不当減少の認定・判断


次に争点2についてです。審判所は、「贈与者の親族等の相続税又は贈与税の負担が不当に減少する結果となると認められるかどうかは、(中略)その時点において、その法人の社会的地位、寄附行為、定款等の定め、役員の構成、収入支出の経理及び財産管理の状況等からみて、財産の提供者等ないしはその特別関係者が、当該法人の業務、財産の運用及び解散した場合の財産の帰属等を実質上私的に支配している事実があるかによって判断すべき」と判断基準を示しました。

 

そして審判所は、具体的には相令33③を基に、①法人運営が適正であるかどうか(定款等に法人の役員等に占める親族関係者等の割合が3分の1以下にする旨の定めがあるかどうか)、②法人に贈与した者や役員等又はその親族などに特別の利益を与えないかどうか、③定款等に残余財産の帰属先について国等とする旨の定めがあるかどうか、④法令順守しているかどうか…をチェックしました。

 

まず①については、この宗教法人の寺院規則に役員等に占める親族関係者等の割合が3分の1以下にする旨の定めはないとしつつも、②については、前住職らが私的に業務運営や財産管理を行っていたり、私的に財産を費消・使用したと認められないこと、③残余財産について、国等その他の公益を目的とする事業を行う法人に帰属する旨の定めはないが、この宗教法人の寺院規則では「法人の解散には、責任役員の定数の全員及び総代並びに門徒の3分の2以上の同意を得た上、管長の承認及び県知事の認証を受付けなければならない旨定めており、前住職らの意思のみで恣意的に解散等を行うことは事実上、困難と認められる」ことを指摘しました。結論として審判所は「前住職らが、請求人の業務、財産の運用及び解散した場合の財産の帰属等を実質上私的に支配している事実は認められない。したがって、本件各資金移動により相続税法第66条第4項に規定する贈与者である前住職(故人)の親族等の相続税の負担が不当に減少する結果となるとは認められない」として贈与税の課税を取り消しています。弾力的な制度運用もありうるといっていいのでしょうか。

 

 

 

 

税理士法人タクトコンサルティング 「TACTニュース」(2021/09/24)より転載

[事業再生・企業再生の基本ポイント]

第5回:事業再生における財務DDとは何ですか?(M&Aにおける財務DDとの違いの観点から)

~財務DDの目的、対金融機関という側面、重要な分析指標~

 

 

〈解説〉

公認会計士・中小企業診断士  氏家洋輔

 

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【財務DDの目的】

財務DDと聞いてまず思い描くのは、M&Aを検討する際に買手企業が売手企業に対して行う財務調査のことと思います。M&Aの時だけではなく、事業再生を行う際にも財務DDは必要となります。

 

M&Aの時に行う財務DDの主な目的は、ディールブレイク要因の有無、買収価格に影響を与える事項の有無、表明保証とすべき事項の有無、買収後の参考情報となる事項が等が主な目的ですが、事業再生のおける財務DDの目的は、事業再生計画を策定するために必要な財務情報の獲得です。

 

【対金融機関という側面】

事業再生は対金融機関という側面が強くなります。なぜなら、会社が資金繰りに窮してしまい、債権者である金融機関への返済ができなくなった事が事業再生手続きの入り口となることが多く、金融機関に対する説明責任を全うする必要があるからです。さらに、金融機関には事業再生の施策の1つとして、返済の免除や返済猶予等の金融支援を依頼することが一般的であるからです。

 

つまり、事業再生における財務DDは、事業再生計画を策定するための実態把握という側面と、対金融機関に対する実態説明という2つの側面があります。そのため、M&Aにおける財務DDと同じ財務DDとはいえ、対金融機関という側面が強いため、分析内容や見せ方が異なり、全く違ったレポートとなることが一般的です。

 

【重要な分析指標】

事業再生における財務DDで、重要な分析として以下の内容があります。実質債務超過、正常収益力、フリー・キャッシュ・フロー(FCF)、過剰債務、債務償還年数、非保全額、税務上の繰越欠損金があげられます。正常収益力は、M&Aにおいても分析されることが多いですが、その他の分析は事業再生ならではの分析内容です。

 

このように、M&Aと事業再生の財務DDでは、目的や分析内容が大きく異なるため、専門家もM&Aと事業再生では異なります。専門家選びも適材適所となるよう、会社の状況が厳しい場合は事業再生の専門家に相談しましょう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

[業界別・業種別 M&Aのポイント]

第13回:「書店業界のM&Aの特徴や留意点」とは?

~~在庫の金額は?在庫の積み増しによる不正会計は?~

 

〈解説〉

公認会計士・中小企業診断士  氏家洋輔

 

 

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Q、書店業界のM&Aを検討していますが、書店業界M&Aの特徴や留意点はありますか?


書店業界の経営環境は下記のグラフのように、2002年以降販売額や事業所数が減少し、2016年では2002年の半分程度にまで落ち込んでいる状況です。さらに近年では、ECサイトでの購入や電子書籍の台頭により、経営環境は厳しい状態が続いています。

このような経営環境から、経営状態が苦しくなる書店が増加しており、書店の閉店や売却を行う事業者も増加しています。

 

書店のM&Aを検討する場合は、書店特有の商習慣を把握する必要があります。書店業界では、再販売価格維持制度があります。再販売価格維持制度とは、出版社が書籍・雑誌の定価を決定し、書店等で定価販売ができる制度です。つまり、書店での書籍・雑誌の販売価格は書店には裁量がなく、決まった価格で販売することとなります。

 

また、書店が書籍・雑誌を仕入れる際には、書店は出版取次企業から仕入を行います。出版取次企業は大手2社(日本出版販売株式会社と株式会社トーハン)であり、ほとんどの書店がそのどちらかから仕入を行っています。そして、この取次企業から仕入れた商品は、多くの場合、期限内なら返品が可能です。

 

このように、書店の小売りでは値決めができないため、同一の本であればどの書店、あるいはECで購入しても同じ金額です。このような業界特徴があるため、書店小売りの目線では商品の差別化や値引き、セールなどができないため営業戦略の幅が限定的となります。さらに、通常の小売業であれば廃棄ロスが発生するため、仕入については慎重に行いますが、書店の場合は基本的に返品ができるため仕入について、他の小売業程は慎重になっていないのが現状です。しかし、返品ができると言っても、特に雑誌等には厳格に期限が定められており、期限を過ぎると返品できなくなるため、返品期限の管理が重要になります。

 

書店の特徴としては、上記のほかに在庫の金額が多額になります。書店の仕入れ方針や取り扱い書籍にもよりますが、在庫の回転期間は4か月から長い店だと10か月程度となります。そのため、運転資本が必要な業種と言えます。

 

また、在庫が多額となることが一般的であるため、在庫の積み増しによる不正会計が行われるケースが少なくないため留意が必要です。

 

書店業界のM&Aを検討する場合は、業界の特色を理解した上で、対象会社の特徴や強み、不正会計については専門性が高いため財務の専門家をうまく活用して理解した上で、M&Aの検討することが望ましいです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

[税理士のための税務事例解説]

事業承継やM&Aに関する税務事例について、国税OB税理士が解説する事例研究シリーズです。

今回は、「事業譲渡に係る収益計上時期」についてです。

 

[関連解説]

■【Q&A】事業譲渡に当たっての適正価額について

■【Q&A】事業を譲り受けた場合に営業権の計上について

 

 

 


[質問]

6月決算の株式会社が事業譲渡を計画しています。譲渡側です。事業譲渡の中身は、土地、建物、金銭債権債務です。契約は6月中、実際の資産、負債の引き渡しは7月になる予定ですが、事業譲渡に係る損益の認識は6月でしょうか、7月でしょうか。

 

[回答]

ご照会の事例の場合、「実際の資産、負債の引渡し」が具体的にどのようなことを指しているのか、必ずしも明らかではありませんが、資産の販売若しくは譲渡又は役務の提供に係る収益の額は、原則として、その目的物の引渡し又は役務の提供の日の属する事業年度の益金の額に算入することとされています(法法22の2①)から、お尋ねの事業譲渡に係る収益及び譲渡原価を翌期7月の損益とすることに疑問はないように思われます。

 

なお、従来から、固定資産の譲渡に係る収益の額について、引渡しの日を原則としつつ、法人が契約の効力発生の日の属する事業年度の収益としているときはこれを認めるという取扱いがあり、平成30年度の税制改正(企業会計における「収益認識基準」に対応)に伴う法人税基本通達の改正(平30.5.30付課法2-8)後もその取扱いが継承されています(法法22の2②、法基通2-1-14)。

 

ご照会の事例の場合、この取扱いにより、事業譲渡に係る損益を6月の損益として計上することも考えられなくもありませんが、この取扱いは、「固定資産の譲渡」に係るものである上、法人自身がその意思に基づいて「契約効力発生日」に収益計上した場合のものですし、「公正妥当と認められる会計処理の基準に従って」契約の効力発生日その他の「(引渡しの日に)近接する日」に確定決算により(法法22の2②)収益に計上した場合の取扱いですから、「事業譲渡に係る損益の認識は契約の効力発生日の6月にすべきである」といえる性質のものではないと考えます。

 

 

 

 

 

 

税理士懇話会事例データベースより

(2021年6月4日回答)

 

 

 

 

[ご注意]

掲載情報は、解説作成時点の情報です。また、例示された質問のみを前提とした解説となります。類似する全ての事案に当てはまるものではございません。個々の事案につきましては、ご自身の判断と責任のもとで適法性・有用性を考慮してご利用いただくようお願い申し上げます。

 

 

 

 


[解説ニュース]

【Q&A】合同会社の社員が死亡した場合の取扱い

 

〈解説〉

税理士法人タクトコンサルティング(宮田 房枝/税理士)

 

 

[関連解説]

■法人が匿名組合契約により営業者に金銭出資している場合の出資金の相続税評価

■持分の定めのある社団医療法人の解散と課税関係

 

【Q】

合同会社の社員であった父が死亡しました。父に遺言はありません。相続人は、母と私の2人であり、母に相続放棄をする予定はありません。

 

〔問1〕父の社員としての地位を私だけが承継するには、母と私で遺産分割協議をすればよいですか?
〔問2〕相続税の計算上、合同会社の出資はどのように評価しますか?

 

 

【A】

〔問1〕について


まずは、定款に、社員が死亡した場合の持分の承継に関する定めがないかどうか確認してください。

 

① 定款に定めがない場合
合同会社の社員は死亡によって退社し、その地位は、原則として、相続人へ承継されないため、遺産分割協議の対象とはなりません(会社法607①三)。あなたが社員になりたいのであれば、今回の相続とは関係なく、定款の定めに従って入社の手続をする必要があります。

 

② 定款に定めがある場合
定款に「死亡した社員の相続人がその社員の持分を承継する」旨の定め(以下「別段の定め」)がある場合には、相続人にその地位が承継されます(会社法608①)。しかし、この場合も遺言がないということですので、仮に定款に別段の定めがあったとしても、共同相続人であるお母様とあなたとが相続分に応じてその地位を承継することとなり、遺産分割協議によって、あなたのみを社員にするということはできないと考えられます(青山修『持分会社の登記実務〔補訂版〕』(民事法研究会)121・122頁)。いったんお母様も社員となった上で、お母様は任意退社又は持分譲渡をする必要があると考えられます。

 

 

 

〔問2〕について


社員が死亡した場合の地位の承継に関して定款に別段の定めがない場合には、その社員の出資持分は「払戻請求権」として評価します(会社法611①)。

 

また、定款に別段の定めがあり、相続人が持分を承継する場合には、「出資」として、取引相場のない株式の評価方法に準じて評価します(財基通178~193、194)。

 

 

【解説】

(1) 合同会社の社員とは

合同会社は、1又は2以上の個人又は法人の出資により設立されます(会社法578)。この出資者のことを「社員」と呼びます(ここでいう「社員」は、従業員という意味合いではありません)。そして、出資者である社員は、原則として、経営者でもあるというのが合同会社の特徴です(会社法590)。

 

(2) 死亡した社員の出資持分の取扱い

① 原則
社員が死亡した場合に、もしその相続人その他の一般承継人(以下「相続人等」)が当然にその死亡した社員の地位を承継できるとなると、他の社員にとって望まない者が新たに社員として加わる可能性がでてきます。そこで、会社法上、社員の死亡は法定退社事由とされており、その地位は、原則として相続人等に承継されることはありません。この場合、その相続人等は、出資持分の払戻しを受けることになります(会社法611①)。

 

この払戻請求権は、いったん被相続人に帰属した後に、相続財産として相続人に承継されると解釈されています(神戸地判平成4年12月25日税務訴訟資料193号1189頁)。すなわち、その払戻金額がその法人の資本金等の額のうちその死亡した社員の出資持分に対応する部分の金額を超えるときは、その超える部分の金額は被相続人に対する配当とみなされ、所得税が源泉徴収されて、被相続人の所得税の課税対象となった上で、払戻請求権は相続税の課税対象になると考えられます(所法25①四)。

 

このように出資持分の払戻しを受ける場合の払戻請求権の相続税評価額は、「退社した社員と持分会社との間の計算は、退社の時における持分会社の財産の状況に従ってしなければならない。」(会社法611②)とされていることから、評価すべき持分会社の課税時期における各資産を財産評価基本通達の定めにより評価した価額の合計額から課税時期における各負債の合計額を控除した金額に、持分を乗じて計算した金額となります(国税庁質疑応答事例)。

 

 

② 例外
一方、死亡した社員の地位を相続人等へ承継させたいという場合もあります。そのような場合には、定款に別段の定めをしておくことで、社員が死亡して退社したとしても、その地位を相続人等へ承継させることができます。この場合、その相続人等は、出資の払戻しは受けず、被相続人の出資持分を承継します(会社法611①)。
なお、相続人の中でも特定の相続人に社員の地位を承継させたい場合には、定款において別段の定めをするとともに、社員が遺言で特定の相続人に自己の持分の全部又は一部を承継する旨を定めておく必要があると考えられます。

 

 

 

 

税理士法人タクトコンサルティング 「TACTニュース」(2021/09/13)より転載

[ゼロからわかる事業再生]

第2回:事業の磨き上げ

~貸借対照表B/S はスリム化し、損益計算書P/Lは事業の見直しや固定費の削減を~

 

[解説]

植木康彦(公認会計士・税理士)

 

 

[質問(Q)]

当社の貸借対照表では過去に取得した遊休資産の金額などが大きく、総資産に対する利益率が低いので磨き上げが必要、と会計事務所の担当者に言われました。この場合の磨き上げ方法を教えてください。

 

 

[回答(A)]

会社の業績の良し悪しは、総合的には総資産に対する利益の割合(ROA(注1))によって評価されます。そこで、貸借対照表B/S はスリム化し、損益計算書P/Lは事業の見直しや固定費の削減によって磨き上げます。

 

 

 

 

磨き上げに定型的な方法はありませんが、決算書の磨き上げの観点から言うと、貸借対照表(以下、「B/S」といいます。)の磨き上げと損益計算書(以下、「P/L」といいます。)の磨き上げが必要です。B/S とP/L の磨き上げによって、会社の財務状況を健全な状態に誘導します。

 

1.貸借対照表= B/S の磨き上げ


御社の場合、過去に取得した遊休資産があるとのことですので、まずはその処分が課題となります。固定資産は、総資産に占めるウエイトが大きいので、遊休資産のように収益を生まない場合には総資産経常利益率(ROA(注1))の計算式の分母のみが大きくなって、ROA は著しく悪化します。資産処分によってROA は改善しますが、将来的な資産の利用計画がある場合は、「タイムズ」のような臨時駐車場にする方法でも改善できます。

 

また、やや裏技的になりますが、リース会計基準の適用によって、オフバランスが難しい場合を除き、中小企業ではリース取引を利用することで、総資産を増やさず利益を獲得する方法もあります。

 

売掛金の適正化としては、不良債権については回収促進と回収不能な場合は損失処理、正常債権であっても回収サイト(回収期間)が長期化している取引先について取引条件の見直しによる回収サイトの短縮化を検討します。

 

在庫については、取引ロットや流通経路を見直すことによって圧縮できないかを検討しますが、保管場所を圧縮(例えば、2箇所を1箇所に集約)するだけで在庫が減少することもままあります。

 

さらに、大規模な磨き上げの方法としては、不採算事業の整理・撤退があります。複数の事業を営み、一部事業が赤字で他の事業とのシナジーが期待できない場合などです。不採算事業の整理・撤退によって得た資金は、優良事業の拡大、事業ポートフォリオの見直し、有利子負債の削減に利用します。

 

また、純資産が債務超過であったり、自己資本比率(注2)が低い場合、増資により純資産を厚くする方法もあります。

 

上記のような総資産のスリム化や純資産の増強によって企業体質は強化されますが、通常は一連の対応により固定費も削減されるため、P/L 改善も伴うことが多いと思います。

 

 

 

 

(注1) 総資産経常利益率(ROA)
総資産経常利益率(ROA)は、総資産(投資)に対するリターン(利益)の割合を意味します。この数値が低いということは、投資額が大きすぎるか、売上の回転が悪いか、利益率が低いかによります。会社全体の総合的な状態を見る上で、最も重要な指標です。

 

(注2) 自己資本比率
総資産に対する自己資本(純資産)の占める割合をいいます。この割合が高いほど財務の安定性が高いと評価されます。

 

 

2.損益計算書= P/L の磨き上げ


B/S の磨き上げに比べてP/L の磨き上げは難しいと言われます。

 

通常、無駄な経費(主には変動費)の削減は恒常的に実施しているでしょうから、主たる磨き上げの対象となるのは固定費の削減です。固定費の代表格は人件費と家賃ですが、これらの固定費を削減する意味は、事業の見直しです。不採算の事業や収益率が低い事業について、廃業や売却、ビジネスモデルの見直しを行い、経営体質の強化を図ります。

 

 

 

 

しかしながら、得意先ごとの粗利益率分析(粗利益率ABC 分析)をするだけで、高い利益率になっている得意先(ランクA B の得意先)と低い利益率の得意先(ランクC の得意先)を明確にし、又は発見し、粗利益率改善のための対応(値上げや取引縮小など)をするだけで、利益率や利益額が改善できるケースもあります。まずは、利益率が上位50% より低いランクCの得意先について、見直し対象にしてみるのもよいと思います。なお、ABC格付けはあくまで一例ですので、対象会社の実情に応じて格付け(例えばA~ D など)してみてください。

 

 

 

 

磨き上げによって、事業をより良い健康状態に仕上げることが可能となります。他方、自力で磨き上げができない場合には、B/S 面であれば法的手続等による債務カット、P/L 面であればスポンサーによる経営支援や譲渡を検討することになります。

 

 

 

 

 

 

[M&Aに関するおすすめ情報]

経営資源集約化税制(中小企業事業再編投資損失準備金)、いわゆる「M&A促進税制」がスタートしました

 

〈解説〉

公認会計士  吉山尚人(かえでファイナンシャルアドバイザリー株式会社)

 

 

はじめに


令和3年度税制改正大綱で公表され、M&A業界で話題となっていた「中小企業の経営資源の集約化に資する税制」が令和3年8月2日から遂にスタートしました。

 

当該税制改正で以下の3つの措置が活用できるようになります。

①中小企業経営強化税制

②所得拡大促進税制

③中小企業事業再編投資損失準備金

 

今回のコラムでは③中小企業事業再編投資損失準備金について制度の大枠をわかりやすく解説していきます。

 

 

1.制度の概要と税務メリット


令和3年8月2日から令和6年3月31日の間に一定の記載事項を記載した経営力向上計画を主務大臣に申請し認定を受けた中小企業者が、株式取得によってM&Aを実施する場合、株式の取得価額(取得価額10億円以下に限る)のうち最大で70%をその事業年度において損金算入できる制度です。その後5年間の据置期間を経て6年目から10年目にかけて均等に取り崩しを行い益金算入を行います(青色申告であることが前提です)。

 

出典:中小企業の経営資源の集約化に資する税制リーフレット

 

 

実質的には単なる課税の繰延べ(10年通しでみると「いってこい」)ですが、M&A実施時は一時的に大きなキャッシュアウトが発生するため、この制度を活用することで相当の減税効果が得られ、M&Aによる資金繰りへの影響を軽減できます。

 

少し難しいですが、仕訳の例を以下に記載します(仕訳イメージ_準備金方式)。

 

①M&Aを実施した事業年度

有価証券 100百万円 / 現金 100百万円

事業再編投資損失 70百万円 / 中小企業事業再編投資損失準備金 70百万円

 

②M&A実施後6年目以降

中小企業事業投資損失準備金 14百万円 / 投資損失準備金取崩益 14百万円

②の仕訳をM&A実施後10年目まで毎事業年度計上します。

 

 

 

2.制度活用の流れ


出典:中小企業の経営資源の集約化に資する税制リーフレット

 

 

この制度を活用する場合は上記フローで行います。

 

注意が必要なのは基本合意を締結した後、最終契約を締結するまでの間に経営力向上計画を申請し、認定を受ける必要がある点です。

 

既に最終契約を締結し取得した株式についてはこの制度の活用はできません。

 

スケジュール管理が重要になるため、制度活用に際しては弊社のようなM&Aアドバイザーに相談されることをお勧めいたします。

 

また税務署に確定申告する際には、経営力向上計画の申請書、認定書、確認書(いずれも写し)を添付する必要があります。

 

 

出典:中小企業の経営資源の集約化に資する税制概要・手引き(P10)

 

 

3.要件


【買い手】

1.経営力向上計画の認定を受けた特定事業者等(常時使用する従業員数が2,000人以下の法人等)

2.租税特別措置法上の中小企業者等(資本金の額が1億円以下の法人等)であること

 

【売り手】

特定事業者等(常時使用する従業員数が2,000人以下の法人等)であること

 

【株式取得価額】

10億円以下

 

【M&Aの手法】

株式譲渡のみ(事業譲渡、合併、株式交換等は対象になりません)

 

 

また、売り手と買い手の関係についてですが、この制度の趣旨が「他社の経営資源を取得する際のリスクに備える」ことであるため、グループ内再編や親族内でのM&Aはこの制度を活用できません。

 

この他にも細かい制限や注意点があるため、詳細は中小企業庁のHPをご確認ください。

 

[わかりやすい!! はじめて学ぶM&A  誌上セミナー] 

第9回:財務デューデリジェンスにおいて事業計画をどのように分析するのか?

 

 

〈解説〉

公認会計士・税理士 清水寛司

 

〈目次〉

1.なぜ事業計画を分析するの?

①M&A後の展望を考える土台

② 企業価値評価の前提

2.まずは前提条件を確認しよう

3.過去の達成度を見よう

4.事業計画の根拠を検証しよう

①前提条件には根拠が必要

②事例で見る根拠分析

 

 

前回は財務デューデリジェンスの中でも損益計算書の分析を見ていきました。今回は企業価値評価(バリュエーション)にも影響を与える事業計画について、財務デューデリジェンスでどのように分析していくのかを見ていきましょう。

 

 

▷関連記事:デューデリジェンスとは何か?デューデリジェンスはなぜ必要なの? デューデリジェンスの種類とは?

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1.なぜ事業計画を分析するの?


事業計画分析はM&Aにおいて非常に重要なプロセスとなります。これは、大きく「M&A後の展望を考える土台となる」ことと、「企業価値評価の前提となる」ことによります。

 

①M&A後の展望を考える土台

第1回で、会社や事業を買うことは、会社が目指す理想を達成するための1つの手段であることに触れました。まず目指す理想があって、その手段としてM&Aがあるのです。そのため、会社を買収する際には将来どのような効果を自社にもたらしてくれるかが重要であり、将来の方向性を検討する一番の資料が事業計画になります。

 

もし事業計画が買収後に実現できない場合、企業は事業の見直しや人事改革等を行うことになってしまいます。将来における影響が大きい以上、着実な事業計画であるかどうかの分析は欠かせません。

 

②企業価値評価の前提

もう1つ重要な点として、事業計画は企業価値評価(バリュエーション)の前提となることが挙げられます。次回より企業価値評価をご説明しますが、その前提となるのが事業計画です。

 

企業価値評価はM&Aの買収価格の参考情報とするために行われますので、事業計画が買収価格に結びついていくことになります。

 

事業計画が実現できない場合、買収価格が「当初想定より高すぎた」ことになってしまいます。M&Aを実行する会社の投資家に対する説明責任もありますし、買収時ののれんを減損するリスクにつながりますので、買収価格設定の根拠となる将来事業計画を分析することとなります。

 

2. まずは前提条件を確認しよう


事業計画は将来の計画ですが、誰も分からない将来のことを分析するのは一苦労です。財務デューデリジェンスの実施者の多くは財務面・会計面の専門家ですが、M&A対象会社の事業に関する専門家ではありません。

 

そのため、事業計画作成する際の前提については、買い手若しくは調査依頼者との合意に基づくものとなることがほとんどです。

 

例えばIT業界に属する会社のM&Aにおいて、将来計画で今期より売上が増加する計画になっているとします。業界関係者の中では、市場規模も年々増加しており、その会社の特殊な特許が今後有用になるため売上が増加する見込が高いというのが判断できますが、財務デューデリジェンスの担当者はIT業界についてそこまで詳しくないため、そのような判断はできません。

 

この場合、売上高が増加するという前提は、合意に基づくものとなります。餅は餅屋というように、ビジネス上の考え方についてはM&Aの当事者の方がより専門家となりますので、当事者の検討結果を踏まえつつ、実効性の高い事業計画としていくこととなります。

 

別途ビジネスデューデリジェンスを行っている場合には、ビジネスDDチームと協力し、ビジネスDDの結果を事業計画にうまく反映させることも重要ですね。

 

このように事業計画作成の前提となる事項について、最初に確認していきます。

 

 

3. 過去の達成度を見よう


事業計画を分析する上で留意すべき点の1つに、過去の達成度があります。事業計画の土台はこれから買収しようとしている相手会社が作成しています。もし相手会社が3年に1回等継続的に事業計画や中期経営計画を作成している場合、その達成度を確認します。

 

 

例えば、以下2社の達成度を考えてみましょう。

A社

 

 

A社は明らかに実現可能性が低い計画を立てていることが分かりますね。計画時に想定していた大型案件が頓挫してしまった、もともと楽観的な計画の立て方だった等、理由は様々考えられます。その理由を確認し、しょうがないと思えるような内容であれば問題ありませんが、そうでない場合は将来計画においても達成可能性が低いと考えた上で今後の検討を進めるべきです。

 

B社

 

 

一方、B社は堅実な事業計画を立てていることが分かります。概ね想定通りの事業計画となっており、安定的な推移を見せていることから、この会社が作成する事業計画は信頼がおけそうですね。

 

この場合、むしろ注意すべきはこれまでの財務諸表に不正がないかどうかです。実態はA社と変わらないにもかかわらず、計画達成への過度なプレッシャーから不正会計を行って上記実績値となっているとしたら、A社よりよほどたちが悪い状況です。そのため貸借対照表や損益計算書における財務デューデリジェンスにおける発見事項が重要となってきます。

 

財務DDで何も発見されず、ありのままの状態で計画通りに進んでいる際は、今後の事業計画も非常に堅実なものであると想定されますね。

 

(もちろん、会計不正は証拠の改ざんを伴いますので、強制調査権限をもたないDDで見つけるのが難しいケースも多いですが、、その点のリスクは抱え込んだ上で、第2回でご説明した最終契約時の表明保証や契約書で可能な限りカバーすることとなります。)

 

 

 

≪Column:社内評価と事業計画≫


事業計画に応じて社内の業績評価が決まる場合は、事業計画は達成しやすいよう低めの数値に設定される傾向があります。逆に評価基準としては利用されておらず、目標値である場合は高めに設定される傾向があります。

 


 

 

 

4. 事業計画の根拠を検証しよう


①前提条件には根拠が必要

事業計画は全て合意した前提条件とその根拠で決まると言っても過言ではありません。現在の財務諸表を発射台に、根拠に基づく様々な前提条件を加味して事業計画は作成されています。

 

「今日は雨が降りそう」と何気なく思うことも、実は将来予想ですね。「雲がどんよりしてて空が暗いから」といった根拠があるから、「今日は雨が降りそう」と感じています。

 

同様に、「売上が伸びそう」と感じる根拠は「市場規模が伸びてきているから」「会社が独自の特許を持っているから」等、様々な根拠の基に「売上が伸びる」という前提条件が置かれます。

 

事業計画における主な前提条件は、上記のような市場成長率やマーケットシェアに基づく数値設定、得意先の獲得や喪失に伴う売上高増減、販売価格や原材料価格の変動、法規制の変更等が挙げられます。

 

事業計画の前提は多岐に渡りますので、計画に重要な影響を与える項目に焦点をあてて検討していくこととなります。置かれている前提が何かを確認し、その根拠に問題がないかを過去実績を踏まえながら見ていきます。

 

②事例で見る根拠分析

簡単な事例で事業計画を分析してみましょう。売上高について以下の事業計画になっていたとします。計画上の前提として、「売上高成長率を10%として算定」されています。

 

 

<事業計画>

 

この時、売上高成長率を10%と置いて良いかが最も重要な点です。ぱっと見の印象として、成長率10%は非常に高い水準に感じますね。(新興国であれば10%の成長率は軽く超えていきますが、今回は日本でのビジネスとしましょう。)

 

 

売上高成長率10%の根拠は以下の通り説明を受けました。

 

●過去5年間の市場成長率は+7%

●会社は重要な特許を持っており、製品の認知度が高まるにつれてマーケットシェアも増大する見込

●市場成長率7%にマーケットシェア増加分を加味して、10%と仮定

 

 

では、10%に問題ないと言えるでしょうか。これでは情報が不足していますね。そこで追加調査をした結果、以下事項が追加で分かりました。

 

●会社は2つの異なる製品AとBを有しており、売上高は半々

●製品Aの市場成長率は+8%であるが、製品Bの市場成長率は+1%

●過去の実績に照らし合わせると、上記製品別の市場成長率は妥当

●重要な特許は5年前から保有しているものの、この5年間でマーケットシェア実績値に大きな変動はない

 

 

ちょっとお粗末すぎると思われるかもしれませんが、この事例のようにカテゴリーの分け方で市場成長率は大きく変わります。カテゴリーを大きく取るか小さく取るかの影響は大きく、この事例においてもカテゴリーを広く取った場合が+7%、狭く取った場合は+8%と+1%です。なお例として、広いカテゴリーは電化製品、狭いカテゴリーはパソコン部品とクーラー等です。

 

今回であれば売上高が半々の状況で+7%の大カテゴリーを使用するのは不適切で、狭いカテゴリーの市場成長率を使用した方が正確と言えますね。

 

また、マーケットシェアが増加する点も過去実績を鑑みれば根拠としては薄いと言えます。もちろん今後マーケットシェアが増大する可能性も十分ありますし、そうなれば良いとは感じますが、現時点での買収価格を決定する情報としての根拠としては厳しいと言わざるを得ません。

 

 

その結果、現実的には以下の計画となるでしょう。

 

<事業計画(修正後)>

 

 

当初計画値より現実的な路線となっているのが分かります。このように、前提条件に基づく事業計画は、前提条件に対する根拠の精度が非常に重要になってきます。

未来は誰にも分りませんが、精度を高くしていくことが現時点で出来る最善の見積りに繋がっていき、ひいては最善の価格設定に繋がっていきます。

 

 

漠然とした財務デューデリジェンスにおける事業計画分析のイメージが、少しでも具体的になっていただけましたでしょうか。次回より、企業価値評価についてご説明させていただきます。

 

 

 

 

 

 

[新型コロナウイルスに関するM&A・事業再生の専門家の視点]

大手企業の下請けを主な生業としていますが、どのようなことに気を付けたらよいでしょうか。

 

〈解説〉

公認会計士・中小企業診断士  氏家洋輔

 

 

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大手企業と古くから関係を築いてきた一次受け企業の場合、他の中小企業と比較するとある程度安定した高い報酬を得ているケースが多いです。これは、大手企業と中小企業の関係の歴史的な背景であったり、中小企業の技術力や品質等の強みがあったりする場合などの要因によるかと思います。

 

大手企業からの受注の拡大に併せて、中小企業も規模を拡大し対応することで、中小企業にとっての大手企業への取引依存度(全ての売上に対する大手企業への売上の割合)が高くなっている企業が多いように感じます。

 

大手企業への販売依存度が高い企業の場合、大手企業からの受注が減少すれば、中小企業の経営に与えるインパクトは大きくなります。さらに、あろうことか取引の打ち切りとなれば、中小企業は一気に経営が立ち行かなくなってしまいます。

 

特定の企業に対する取引依存度が高いことは、経営上の重大なリスクとなることは経営学の基本的な考え方ですが、大手企業と良い関係を続けてきた中小企業にとっては、リスクを考えて事前に行動に移すことが難しいことも事実です。

 

大手企業からの取引の縮小の申し出や、取引の打ち切りの話は、昔からよくあることですが、近年では新型コロナウイルスの影響による大手企業の業績の変化や、方針転換等により、このような事態となった企業が増加しているように思います。

 

大手企業から中小企業への取引の見直しにかかる通知は、突然行われ、しかも条件の見直しや、取引の停止は、数か月程度の猶予しか与えられないケースが多いです。数か月の猶予では中小企業はできることは限られるため、このような事態に備えて事前に対応策を検討・実行することがリスクの低減のためには必要です。

 

事前の対応策としては、自社の強みを生かして新規の企業や取引の少ない企業からの受注を獲得し、大手企業の取引依存度を減少させる取り組みを実施することや、固定費の割合を減少させ変動費の割合を高くする等が考えられます。事後的な対応としては、当該大手企業との交渉や、他の取引先、経営が一気に苦しくなる場合には金融機関も巻き込んだ交渉が必要になる場合があります。

 

このような場合には、信頼できる専門家に相談をするなどし、経営の危機を一緒に乗り越えていくことが必要となります。

 

 

 

 

 

 

 

 

[会計事務所の事業承継・M&Aの実務]

第5回:従業員への説明

~従業員への説明はどのようにすればいいですか?~

 

[解説]

辻・本郷税理士法人 辻・本郷ビジネスコンサルティング株式会社

黒仁田健 土橋道章

 

 

 

 

▷関連記事:自社の売却を検討していますが、家族や従業員には伝えづらいです。どのように伝えればよいのでしょうか?

▷関連記事:M&Aのメリット・デメリット ~顧問先は?従業員は?~

 

 

Q、従業員への説明はどのようにすればいいですか

⑴所長税理士からの説明

 

従業員に相談しながらM&Aを検討しているケースであれば問題はありませんが、ほとんどのケースは、所長税理士が1 人で検討し、動いていますので、従業員にとっては寝耳に水の話です。

 

従業員が少人数の場合には、所長税理士のグリップが強く、また、顧問先も所長税理士を中心に関係が築かれているケースが多いので説明しやすいのですが、従業員の人数が10人を超えてくると、顧問先との関係が担当者中心で回っている場合が多く、担当者が退職するようなことがあれば、顧問先も不安を覚えて離れていくケースがあります。

 

そのため、従業員への説明について、全社員に一斉に話す場合もあれば、規模が大きい事務所の場合にはキーマンを中心に話をしてから全社員へ伝えるケースがあります。

 

M&Aに至った経緯、相手先の情報とその選定理由、スケジュール等を説明し、一番大切な所長税理士の想いを届ける機会となります。また、所長税理士の関与方法や事務所の存続などの内容を踏まえ、今後変わること、変わらないことを伝えて安心させることが重要です。

 

なお、説明するにあたり最も大切なのが、所長税理士がM&Aの契約内容やスケジュールに納得しているかということです。契約内容はもちろんですが、スケジュールの進め方にしても、早く進みすぎているのではないかなど、所長税理士が納得していない部分があると、従業員に説明をする前にM&Aに躊躇してしまうこともあります。

 

所長税理士自身が納得するまで、承継先とコミュニケーションをとり、認識を共有することが必要です。

 

契約上で合意をしたとしても、現場の細かい点まで、契約の中ですべて合意することは困難ですし、想定外のことも起きるので、契約からクロージングの日を迎えるまでの間、関係者が顔合わせをし、双方を理解しようとする機会を設けて、信頼関係を築くことが大切です。

 

実際には、実践してみないとわからないことも多く、そのタイミングで修正・共有をするコミュニケーションをとるため信頼関係が何より重要です。

 

 

⑵承継先からの従業員向け説明

 

承継先からあいさつと経営統合に関する説明をします。従業員は、どのような事務所と一緒になるのか、何が変わって、何が変わらないのかといったことが不安となりますので、その点を中心に説明をします。

 

なお、一度に経営統合に向けての情報を提供すると、混乱してしまうので、何度かに分けて、説明の場を設けていくケースも多いです。

 

説明会では、事務所の概要と最も心配している雇用条件について変更点を中心に説明を実施します。また、顧問先との契約についても、担当者から顧問先へ説明してもらう必要があるので、理解を深めてもらう必要があります。

 

 

①事務所の概要説明
・従業員数や支店について
・どのような業務を中心にしているか
・利用している会計ソフト

 

 

②雇用条件についての説明事項
・就業時間(始業時間、休憩時間、終業時間)
・給与締日、給与支払日
・残業代計算の仕方
・賞与支給について対象期間と支給日
・有給休暇付与と夏季休暇や試験休暇、慶弔休暇など
(夏季休暇や試験休暇などを有給消化としているか、特別休暇としているか。)
・通勤交通費の対象期間、支給日
・立替交通費の対象期間、精算方法、精算日
・退職金制度の有無
(特定退職金共済制度に加入している場合には、事業譲渡にあたって、一度精算することになるので注意が必要です。)
・社会保険組合の加入団体
・健康診断
・財形貯蓄、確定拠出年金等の福利厚生制度
・勤怠管理の方法

 

なお、給与の締め日が異なる場合には、統合前において一度精算する必要があります。賞与についても、賞与の対象計算期間が異なる場合には、統合前後での負担額を明確にしておくことが後々のためにも必要です。

 

例えば、賞与対象期間が、従前は4 月~ 9 月分を10月に支給、10月~ 3 月分を4 月に支給、統合後は1 月~ 6 月を7 月に支給、7 月~12月を1 月に支給の場合で、7 月に経営統合する場合に、4 月~ 6 月分の賞与負担は、従前の所長税理士が負担するのが一般的です。

 

 

③人事制度等の説明
人事制度、評価制度や研修制度、インセンティブ制度等についても共有をはかると、従業員はさらに安心して統合を迎えることができます。

 

 

 

 

 

 

▷参考URL:M&A各種契約書等のひな形(書籍『会計事務所の事業承継・M&Aの実務』掲載資料データ)

 

[M&A事業承継の専門家によるコラム]

第7回:M&A(株式譲渡)を行うにあたり、事前に留意する点

 

中小零細企業経営者や経営者をサポートする専門家の方が抱えるM&Aや事業承継に関するお悩みを、中小零細企業のM&A支援・事業計画支援を専門で行っている株式会社N総合会計コンサルティングの平野栄二氏にアドバイスいただきます。

 

〈解説〉

株式会社N総合会計コンサルティング

平野栄二

 

 

 

 

「私は現在75歳です。従業員5人の製造業を経営しています。第三者に株式譲渡による承継(M&A)を行うことを、検討しています。その場合、どういった準備や確認が必要でしょうか。今まで、M&Aを行うという前提ではなかったので何の準備もしておりません。また、下の表のように、昔、社員だった2名に、株式を保有してもらっていますが、所在が不明となっています。今後、どうやって株式を集約すればよろしいでしょうか?」

 

 


 

平野:ご質問いただきありがとうございます。以下のような手順でご説明をいたします。

 

1、まず、中小企業のありがちなM&Aを阻む問題について確認いただきます。
2、つぎに、M&Aで譲渡企業が準備する書類・資料について確認いただきます。
3、上記のなかで、特に株式の問題が発生しやすい事例についてご説明します。
①株主総会の議決権・株主の権利について
②株主名簿について
③株式の集約(名義株式の整理)
④株式の集約(所在不明株主の整理)

 

 

1、中小企業にありがちなM&Aを阻む問題


日常ではあまり意識しなくても支障が生じないことでもM&Aを行う場合、以下のような問題で、交渉がすすまない、中止になるケースがあります。大きく分けると、株主(株式)の問題、法的な問題、人間関係の問題、重要書類の欠如の問題があります。このような問題は、事前に、少しずつでも、解決しておく必要があります。

 

1.株主(株式)の問題

□名義株式(名前だけ借りているだけの株式)の処理
□株券の管理(株券発行会社)
□経営に参画していない株主の対策
□所在不明の株主への対策

 

2.法律上の問題

□裁判沙汰になっている事件
□登記の遅れ
□無許可営業
□未払残業賃金
□税金・社会保険の滞納
□脱税行為
□粉飾決算
□虚偽申請
□違法建築
□保証債務(保証人・担保の設定)
□遺産分割の対象となり紛争中の資産
□会社資産の私的利用
□第三者の名義の資産
□土壌汚染や騒音など環境汚染

 

3.人間関係の問題

□家族(親子・夫婦・兄弟姉妹)との確執
□敵対的な株主の存在
□近隣地域との確執
□従業員・役員との確執
□取引先・同業者との確執
□反社会的勢力のと交際

 

4.重要書類の欠如の問題

□定款(会社の憲法のようなもの)
□株主名簿
□議事録
□契約書
□決算申告書
□許認可等の証明書
□社内規程類(就業規則・退職金規定など)

 

 

 

これらの問題の解決には、専門的な知識やノウハウが必要であるため、専門家に相談して解決にあたることが良いでしょう。また、どうしても解決できない問題がある場合は、事前に、譲受者に隠すことなく、開示をしておくことが重要です。先送りにすればするほど、問題が大きくなる傾向があります。

 

中小企業の場合、大なり小なり何等かの問題を抱えているものですので、「正直路線」で、譲受者に交渉の最初の段階で説明を行い、理解を得ることで、話が進むケースもありますので、諦めないことが重要です。

 

 

 

2、M&Aで、譲渡企業が準備する資料集


M&Aの交渉が進んでいくと、下記のような資料を、譲受者に提出する必要があります。

 

▷「M&Aで売り手企業が準備する必要がある資料一覧」(ダウンロード)]

 

1.会社・法務

□会社の沿革、パンフレット等
□原始定款・変更後新定款
□履歴事項全部証明書
□会社の組織図
□株主名簿(過去の株主の移動があった場合の明細)
□株式譲渡承認通知書
□株主総会・取締役会議事録
□取締役・監査役一覧(氏名・経歴・会社との取引等)
□許認可関係資料(管轄官庁・許認可の種類の一覧とコピー)
□知的財産権一覧(特許権、商標権、意匠権、著作権等あれば)
□経営計画書(3~5年)
□係争事件の有無(過去3年間)、顧問弁護士との連絡事項の一覧
□現在契約期間中の契約書

 

2.営業

□商品別売上明細・得意先別売上明細
□仕入・外注先の取引明細・支払い条件・契約書・覚書
□得意先の回収条件の明細 (上位10社)
□貸倒実績の明細・回収可能性の低い債権の明細・根拠資料
□当期の直近までの営業実績(商品別等)・今後の営業戦略

 

3.設備

□所有不動産の一覧
□土地公図、建物取得原価の内訳書
□所有不動産の登記簿謄本
□賃貸借契約の明細表及び契約書
□リースの明細(物件、期間、総額、未経過リース料、支払リース料)及び契約書
□固定資産台帳または減価償却明細表
□所有不動産の鑑定評価書
□直近の固定資産税賦課通知書一式または評価証明
□使用しているコンピュータシステムおよびソフトウェア

 

4.財務・経理

□決算書及び法人税申告書(勘定明細を含む)
□部門別損益実績資料(管理上の区分で結構です)
□当期の各月の月次合計残高試算表・比較損益推移表
□各取引銀行の預金取引・融資取引の残高証明書
□総勘定元帳・補助元帳、売掛金元帳、棚卸資産台帳、仕入元帳
□保険契約に関する明細表(被保険者・保障内容・保険金額・契約期間など)・契約書
□関係会社・役員間との取引および債権債務の明細
□金融機関との金銭消費貸借契約書
□金融機関別借入、返済、利払明細
□担保設定に関する契約書
□保証債務等の明細及び保証書等
□投資有価証券・出資金等に係る直近の決算書

 

5.人事・労務

□給与台帳、一人別源泉徴収簿、扶養控除等申告書、年末調整関係資料
□従業員の退職金規定・退職金要支給額計算資料
□健康保険、厚生年金保険・雇用保険の届出書などの関係書類
□従業員のタイムカード・出勤簿
□就業規則、給与・賞与・退職金規程・役員退職金・その他諸規定
□労務管理上の問題点・過去の労災事故や労働問題の有無の明細
□社宅にかかる経済的利益の算定根拠資料

 

6.税務

□過去に提出した税務届出書一式(法人税・消費税)
□消費税計算根拠資料
□源泉所得税納付書、特別徴収地方税納付書
□納税証明書(国税、地方税、固定資産税等)滞納がないことを証明する資料
□税理士の関与状況
□税務上の問題点・ 過去の税務調査の概要および更正・修正内容(申告書など)

 

 

 

3、株式の問題が発生しやすい事例


①株主総会の議決権・株主の権利について

経営の安定のためにどれだけの議決権割合の株式を保有すべきか?

株式会社の最高意思決定機関は株主総会とされ、会社法では、株主総会の決議が必要な事項が定められています。保有する議決権割合が多いほど、会社に対する支配権は強くなります。M&Aの場合、一般的には、譲受企業は、経営の安定化のため、株式を全株取得することを希望するケースが多いです。以下は、株主総会における決議の種類ごとの主な決議事項です。

 

 

 

 

少数の株主にも権利がある

株式が分散していたり、一部株主の所在が不明であったりする場合、M&Aを実行する際に重大な障害となるおそれがあります。会社法では、少数株主の権利の保護の観点から、以下のような権利が認められています。

 

そのため、敵対的な株主が存在する場合、権利行使を行うことで、嫌がらせをしたり、会社の運営に介入される可能性もあります。そのため、他の株主からの株式の買取り(及びそのための買取資金の調達)を進めていくなどの、事前の対策が必要となります。

 

自益権:会社から経済的な利益を受ける権利

共益権:株主が会社の経営に参加する権利
単独株主権:1株しか有していない株主でも行使できる権利

少数株主権:一定割合または一定数の株式数を有する株主だけが行使可能な権利

 

②株主名簿について

自社の株主が明確になっていますか? (株主名簿)

株式会社では、株主名簿を作成しなければならないと会社法(121)で定められています。

株主名簿の作成や更新をしていないと、誰が本当の株主かが分からないようになるケースもあり、トラブルが生じることもあります。そのため、以下のような書式の株主名簿を作成し、更新をしっかりと行っておく必要があります。M&Aの際にも必ず提出を求められる資料です。

 

 

③株式の集約(名義株式の整理)

名義株式がある場合、実質株主に変更しておく

名義株とは、実際に払い込みを行った人と名義人が異なっている株式のことをいいます。

平成2年(1990年)の商法改正前は、株式会社設立に当たり、7人以上の発起人が必要であり、かつ各発起人が1株以上の株式を引き受ける必要があったため、他人の承諾を得て、他人名義を用いて株式の引受け・取得がなされるケースが多く存在していました。

名義株主と実質的な株主の間で、株主たる地位や配当等の帰属を争う紛争が生じないよう、実質的な株主への株主名簿の名義書換等を進めておく必要があります。その際には、例えば事前に名義株主と実質的な株主の間で株主たる地位等について確認する合意を締結しておく等の方策が考えられます。

 

 

 

 

名義株を放置することによるリスク

①名義株主と真実の株主との聞で、株式の帰属についてトラブルを起こしやすい

②名義株主が死亡したり行方不明になったりするなどで、真実の株主が株主としての権利を行使できなくなることがある

③真実の株主に相続が発生したとき、権利関係が複雑となる。また、名義株主の相続人に相続税が課税されるリスクがある

④M&Aや事業承継の際に、後継者に株式を譲ろうと思っても、名義株は自分の名義になっていないため、譲ることができない

 

④株式の集約(所在不明株主の整理)

株主の所在が分からない株式の整理方法

個人が保有している株式を集約化するためには、通常は、適正な価格を提示し、株主の承諾を得て、買い取る方法で行うことになりますが、株主の所在が分からない場合、株主の個別の承諾を得ることなく、金銭を対価として取得(キャッシュアウトといわれます)する以下のような制度が活用できます。

 

 

 

 

そのため、できる限り所在不明株主を生じさせないように、「日ごろから株主間のコミュニケーションを充実させる」「株主間契約を締結しておき、連絡が取れなくなった場合の対応のルールを決めておく」ことは重要でしょう。

[氏家洋輔先生が解説する!M&Aの基本ポイント]

第8回:赤字企業で事業承継・M&Aは可能なのでしょうか。

 

〈解説〉

公認会計士・中小企業診断士  氏家洋輔

 

 

▷関連記事:赤字企業でも買い手は見つかる? ~中小零細企業のM&A事業承継~

▷関連記事:借金過多の状態とM&A ~破綻前の事業売却のリスクとは?再建型M&Aの前提とは?~

▷関連記事:事業が健全かそうでないかの判別 ~経営分析とは?非数値情報分析とは?健全性のチェック方法は?~

 

 

 

結論から申し上げると赤字企業でも事業承継・M&Aは可能です。

ただし、赤字企業の事業承継やM&Aは黒字企業と比べて割合が少ないことは事実です。

 

要因としては、まず、オーナーが自分の会社に価値がないと思っている場合があげられます。自社が赤字の場合に、こんな会社を誰がほしいのかと感じるオーナーも少なくないですが、価値は買手が判断するもので、シナジー効果を発揮して実はとても価値を感じている買手や、赤字を立て直す力を持っている買手や、事業の一部を切り出したら欲しいと感じる買手等様々です。そのため、赤字だからと言って売れないと判断するのは少し早いかもしれません。

 

次に、仲介企業の問題があげられます。これは、赤字の会社と黒字の会社を比較すると黒字の会社の方が企業価値が高くなることが一般的で、譲渡価格が高い方が仲介企業の報酬も高くなりますが、赤字の会社で企業価値が低いと仲介企業が取り合ってもらいにくいとうことも事実です。

 

さらに、買手企業側の問題もあります。赤字会社というだけで敬遠する買手企業も少なくありません。これは、事業会社のM&Aの目的とも関係しますが、例えば目的がM&Aによる売上や利益の増加である場合には利益が出ている企業が好まれる傾向があります。

 

また、赤字・債務超過・倒産・事業再生というテーマについて正確に理解できていないことからの苦手意識という部分もあろうかと思います。

 

一方で買手企業に能力がある場合は、赤字企業を安く購入し、事業を立て直すことで投資のリターンを大きくすることができますが、このような戦略をとる企業が多くないことも事実です。

 

上記のように赤字企業でのM&Aが進まない理由はあるのですが、赤字であるからと言って会社の価値がないとは限りません。会社の価値は複合的に決まるため、専門家に相談してみるのもよいでしょう。

 

経営が厳しい場合は、借入の大幅なカットなどの金融機関の支援を受けて事業承継・M&Aを実行するという選択肢や、自力再生、経営改善して企業価値を高めてから事業承継・M&Aを実行するという選択肢もあるため、専門家に相談する等して検討してみてください。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

[事業再生・企業再生の基本ポイント]

第4回:事業再生業務の全体像を教えてください

~事前簡易調査、現状の把握を行うためのDD実施、事業再生計画の策定、事業再生計画で策定した施策を実行~

 

〈解説〉

公認会計士・中小企業診断士  氏家洋輔

 

▷関連記事:民事再生と会社更生の比較

▷関連記事:事業再生の概要を教えてください

▷関連記事:法的整理と私的整理の比較

 

 

事業再生のProcessは四段階あります。まずは事前簡易調査を行います。会社の概要や財務の内容、事業の内容、資金繰りをレビューして、初期的な再生スキームや事業再生計画における事業戦略のイメージを把握します。特に。事業再生プロセスは3か月から6か月程度を要するため、その間の資金繰りが大丈夫かどうかは非常に重要です。

 

次に、Process2として現状の把握を行うためのDDを実施します。現状の把握プロセスでは、財務DDと事業DDが実施されることが一般的です。期間は、1か月から2か月程度かけて、会社の過去から現在までの実態を財務・事業の両面から把握します。その後、債権者である金融機関に対して、会社の実態を説明するバンクミーティングを開催し、調査内容が報告され、会社の事業再生計画の方向性が議論されることとなります。

 

そして、Process3として、事業再生計画の策定を行います。Process2は専門家による調査であったことに対して、Process3は会社と専門家が一体となって作り上げます。会社の事業再生計画の骨子を策定し、それに向けたアクションプランを策定し、それらを数字に落とし込んだ計数計画や返済計画を策定します。計画の策定についても1か月から2か月程度で実施します。そして、事業再生計画を策定すると、事業再生計画の説明をするバンクミーティングを開催します。事業再生計画の内容を説明し、金融機関からの質疑応答を経て、全金融機関からの同意を得ることで、当該事業再生計画が実行されることとなります。バンクミーティングからすべての銀行から同意を得るまで2週間から1か月程度の期間となることが一般的です。

 

Process3までが、専門家が強く関与をして進めていくプロセスで、Process4からは会社が主体となって進めていくことになります。Process4では、事業再生計画で策定した施策を実行していくことになります。また、金融機関としても、事業再生計画の進捗状況を把握する必要があるため、計画と実績を比較した説明資料を作成し金融機関に提出する必要があります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

[税理士のための税務事例解説]

事業承継やM&Aに関する税務事例について、国税OB税理士が解説する事例研究シリーズです。

今回は、「非上場株式の売買とみなし譲渡課税 ~社長が買い取る場合、会社が買い取る場合~」についてです。

 

[関連解説]

■【Q&A】事業譲渡に当たっての適正価額について

■【Q&A】事業を譲り受けた場合に営業権の計上について

 

 

 


[質問]

同族会社で親族に株が分散しています。

 

①社長が買い取る場合(中心的株主)→原則法
②会社が買い取る場合       →

②の場合、自己株式の取得となり、資本の払戻しとみなし配当が生ずると思いますが、そもそも買取価格は税務上どのように決めたらよいのでしょうか。

 

[回答]

ご照会の内容については、多くの課税上の要素を含んでおりますので、課税上問題のない取引価額とする際に留意すべき点についてご説明します。

 

 

〔説明〕
非上場株式をどのような価額で取引するかということは、本来、税法で決めるべきことではなく、利害関係の相反する当事者が適正な交渉によって決めた価額であれば、それが時価と考えられるため、通常、課税上特殊な問題は生じません。

 

しかし、非上場株式の取引の多くは親族間等、利害関係の相反さない者の間で行われるため、各税法・通達等の内容を参考にして適正な価額を算定し、課税上の問題が発生することを回避することが求められます。

 

 

1 個人間の取引について

個人間で非上場株式を取引する場合に多く発生する問題は、時価より低い価額で売買したため、買主に経済的な利益が生じ、贈与税が課税されることです(相法7条)。

 

贈与税における非上場株式の時価は、財産評価基本通達により評価した価額であり(相法22条、評基通1(1))、具体的には評基通178~189-7により評価した価額となります。ご照会のケースでは「社長が買取る」とされていますので、買取り後の社長の議決権数を基に評価方式を判定する必要があり、原則的評価方式により評価することになると思われます。したがって、原則的評価方式による評価額で売買すれば、贈与税の問題は発生しませんが、当該評価額を下回る価額で売買した場合には、その差額は買主が贈与により取得したものとみなされます。

 

 

2 法人・個人間の取引

法人が絡む取引の場合も、適正な時価で取引すれば通常、課税上の特殊な問題は生じませんが、時価の算定に当たっては、評価の安全性等を考慮した相続税評価額をそのまま適用することは適当ではありません。

 

(1) 所得税法上の考え方
所得税の法令・通達のうち非上場株式の価額の算定の参考となるものとしては、所基通23~35共-9が挙げられます。同項では、「最近の売買実例で適正と認められる価額」や「比準すべき類似法人の株価」などがない場合の価額の算定は、「その株式の発行法人の1株又は1口当たりの純資産価額等を参酌して通常取引されると認められる価額」によることとされています(所基通23~35共-9(4)ニ)。

 

また、所得税法59条≪贈与等の場合の譲渡所得等の特例≫(いわゆる「みなし譲渡課税」)の適用に当たっての通達として、所基通59-6があります。同項では、「その時における価額」について、所基通23~35共-9に準じて算定した価額によるとし、更に、所基通23~35共-9(4)ニについて、一定の条件を加えた上で、評基通178~189-7までの例により算定した価額とすることとされています。

 

一定の条件については、所基通59-6の内容を十分ご確認いただきたいと思いますが、特に、譲渡者の議決権数については、「株式の譲渡又は贈与直前」の議決権数により財産評価基本通達における評価方式の判定を行うことにご留意ください。

 

(2) 法人税法上の考え方
法人税の法令・通達のうち非上場株式の価額の算定の参考となるものとしては、法基通9-1-13及び9-1-14が挙げられます。ここでは、「当該事業年度終了の日前6月間の売買実例のうち適正と認められる価額」や「比準すべき類似法人の株価」などがない場合の価額の算定は、一定の条件を加えた上で、評基通178~189-7までの例により算定した価額によることを認めています(法基通9-1-14)。

 

法基通9-1-14は非上場株式の譲渡価額について規定したものはありませんが、法人税基本通達逐条解説(税務研究会出版局)において、「なお、本通達は、気配相場のない株式について評価損を計上する場合の期末時価の算定という形で定められているが、関係会社間等において気配相場のない株式の売買を行う場合の適正取引価額の判定に当たっても、準用されることになろう。」と述べられており、非上場株式の売買においても指針となる通達であると考えられます。

 

 

3 法人による自己株式の取得について

法人が個人株主から自己株式を買い取る場合について、個人株主側から見れば、上記2(1)でお示ししたところにより算定した価額で売買すれば、所得税法上の問題は生じないと思われます。自己株式の取得に係る所法59条の適用に関しては、措通37の10・37の11共-22の注書きにおいて「当該自己株式等の時価」は、「所基通59-6により算定するものとする。」とされており、所基通59-6により算定した価額の1/2を下回る価額で売買した場合には、時価で譲渡したものとみなされることとなります(所法59、所令169)。この場合の時価は、個人株主の譲渡直前の議決権数により判定した評価方式が原則的評価方式となるのか、特例的評価方式(配当還元方式)となるのかにより異なることとなります。

 

なお、付言すれば、譲渡後に譲渡株主以外の株主の株価(相続税評価額)が大きく上昇するような取引とならないよう、相続税法9条(みなし贈与)の適用について考慮しておくことも必要と思われます。

 

法人側から見た場合には、上記2(2)でお示ししたところにより算定した価額が、適正な価額ということになりますが、仮にそれを下回る価額で売買されたとしても、自己株式の取得は資本等取引であるため、法人に課税上の特殊な問題は通常発生しないと思われます。

 

 

4 まとめ

ご照会の自己株式の取得については、上記2(1)でお示しした算定方法をベースとして取引価額を設定することが、課税上の問題を発生させない現実的な方法と思われます。

 

なお、算定に当たっては、通達の示す条件(相続税評価額と異なる点)に十分ご留意ください。

 

 

 

 

 

 

 

税理士懇話会事例データベースより

(2021年5月27日回答)

 

 

 

 

[ご注意]

掲載情報は、解説作成時点の情報です。また、例示された質問のみを前提とした解説となります。類似する全ての事案に当てはまるものではございません。個々の事案につきましては、ご自身の判断と責任のもとで適法性・有用性を考慮してご利用いただくようお願い申し上げます。

 

 

 

 


[わかりやすい!! はじめて学ぶM&A  誌上セミナー] 

第8回:財務デューデリジェンス ~損益計算書分析はなぜ必要か?~

 

 

〈解説〉

公認会計士・税理士 清水寛司

 

〈目次〉

1.損益計算書分析はなぜ必要か

2.正常収益力とは何?

① 正常収益力

②EBITDA

3.事例で確認してみよう

①事例の概要

②事例における収益力分析

4.その他の損益計算書分析

 

 

財務諸表といえば「貸借対照表」と「損益計算書」が中心ですが、第8回目となる今回は財務デューデリジェンスの中でも「損益計算書」に照準を絞って見ていきましょう。

 

 

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1. 損益計算書分析はなぜ必要か


損益計算書分析で最も重要なことは、会社の「収益力」がどれほどかを確認することです。読者の皆様が概要だけ知っている会社をM&Aで購入する立場になったとき、買い手として気になるのは会社がどれほどの収益・利益を稼得することができるのかではないでしょうか。

 

将来の収益力を示す「事業計画」も大事ですが、過去の成績に基づかない事業計画は絵に描いた餅となってしまいます。事業計画は当年度の財務諸表を発射台として作成されますので、発射台の正確さを確認することは将来計画の検証にもつながりますね。そのため過去の成績を示す「損益計算書」を分析し、正常な状況における収益力を把握していくこととなります。

 

 

2. 正常収益力とは何?


①正常収益力

正常収益力は、会社が正常な営業活動を行った際に稼得する経常的な収益力です。

例えば、希望退職に伴う特別退職金の支払がある期があったとします。特別退職金の支払はその期だけの一時的な支払で、その期だけ利益が大きく落ち込んでいる原因となります。(特別退職金は人件費として販管費に含まれていたものとします。)

 

 

 

極端なケースですが、×2期だけ営業利益が大きく赤字となっています。この状態は正常とは言えないですね。状況に応じて特別退職金を除く、退職給付引当金繰入として各期に配分する等様々な考え方がありますが、会社にとって正常な状態とはどのような状態か?を考え、計算していくこととなります。

会社の非経常的な損益を除外して、正常な収益力を計算します。

 

②EBITDA

収益力把握の際によく使われる指標として「EBITDA」があります。EBITDAはEarnings Before Interest, Taxes, Depreciation and Amortizationの頭文字を取った語で、直訳すると「金利支払前、税金支払前、減価償却費控除前の利益」です。すなわち当期純利益から税金・支払利息・減価償却費を加算した指標で、利益から税金や利息、減価償却の影響を排除した指標と言えますね。借入金の支払利息・税金・減価償却費を除くことで、事業そのものの正常収益力を図ろうとしています

 

このEBITDAは、簡便的に「営業利益+減価償却費」で表現されることが多いです。営業利益であれば支払利息や税金を除いた状態ですので、営業利益に減価償却費を加算することで簡便的にEBITDAを表現しています。

 

 

ポイントは、減価償却費が「非現金支出費用」だという点です。減価償却費は費用計上時にキャッシュアウト(現金の流出)が生じない費用です。固定資産の減価償却であれば、最初に固定資産を購入する際に現金流出が生じていて、その後の償却はあくまで計算の結果発生している費用ですね。

営業利益に非金支出費用である減価償却費を足し戻すことから、簡便的な営業キャッシュフローとも言える、純粋な収益力を図る指標です。

 

 

ここで例として、2つの異なる会社の収益力を考えてみましょう。

 

 

 

両社とも売上高・営業利益が同じ会社ですが、当期純利益はB社の方がやや高い会社です。当期純利益で比較するとそこまで差はないものの、ややB社の方の収益力が高そうです。この考え方も決して間違ってはいないのですが、EBITDAで比較すると全く異なる発想が出てくることとなります。

 

 

 

 

EBITDAで見ると、A社の方が圧倒的に高い収益力を誇っています。この差はひとえに減価償却費の差です。例えば、A社は固定資産を購入したばかりで、定率法を選択しているため初年度の減価償却費負担が重い状態かもしれません。B社は10年前に固定資産を購入しており、ほぼ償却費がない状態とも考えられます。

 

利益での比較は上記のように会社の状況によって差が生じる原因となりますので、設備投資に影響されないEBITDAが活躍することとなります。

 

非現金支出費用である減価償却費を除いているので、A社とB社で比較するとA社の方が1年間に多くのキャッシュを手に入れています。固定資産投資をするために借入を積極的に行っているために支払利息が多くなっていると想定もできますね。

 

EBITDAを用いるとキャッシュベースの収益力を比較することが出来るため、利益や売上高と並んでEBITDAもよく使用される指標となっています。

 

3. 事例で確認してみよう


①事例の概要

最初の会社の事例を用いて、正常収益力を3期分算出してみます。その際、正常収益力に影響を与える項目が3つ発見されているとします。

 

 

 

 

 

最初に記載した点ですね。臨時的な支出であり、事業構造改革費用の性質であることが判明しました。先程の通り考え方は様々ですが、ここでは簡便的に特別損失と考え除外する方針とします。

 

 

 

 

続いて、経常的に発生する性質ではない売上が×1年にありました。継続した取引先ではなく、この期だけ発生した臨時の売上だったようです。このような項目は毎期経常的に発生する正常収益とは言えませんので除外します。

 

 

 

 

事業に関係ない販管費を含めてしまうと正常収益力を歪めますので、こちらも除外します。その他の例としては、役員が明らかに事業上必要でない高級車を社用車として使用している場合に社用車分の減価償却費を調整する等があります。

 

 

②事例における収益力分析

上記3項目を反映すると以下の通りです。各期の減価償却費は6,000→5,000→4,000とします。

 

 

利益のみを見ると×2期が赤字でしたが、会社の正常収益力を示す指標の1つであるEBITDAは毎期安定水準を保っていることが確認できます。

買い手である読者の皆様はこれを見ると安心できますね。長期的な視点に立って会社を買収する際には、結局本業でどれだけ稼いでいるかが一番の関心事となりますので、正常収益力を確認していくことになります。

 

逆に利益が安定的に出ていても正常収益力にばらつきがある場合もありますので、M&Aの意思決定に際して1つの重要な視点を提供することになります。

 

4. その他の損益計算書分析


正常収益力以外にも、各費目を事業部別、地域や拠点別、製品別、顧客別に分解して分析することが出来ますし、原価を変動費と固定費に分解して分析することもできます。

 

また、これまでの予算と実績を比較してその精度を確かめることで、将来の事業計画の精度を確認します。予算と実績が大きく乖離している場合は、原因を確認して将来の事業計画に与える影響を考えることとなります。

 

 

 

[Point]

損益計算書分析では、主に正常収益力(会社が正常な営業活動を行った際に稼得する経常的な収益力)がどれほどなのかを確認します。EBITDAを用いるとキャッシュベースの収益力を比較することが出来るため、売上高や営業利益と並んでよく使われます。

 

 

漠然とした財務デューデリジェンスに対するイメージが、少しでも具体的になっていただけたでしょうか。次回は損益計算書分析から派生して、事業計画分析について見ていきましょう。