自力再建かM&A かの選択 ~自力再建とは、スポンサー支援型(M&A型)再建とは、自力再建を断念してスポンサー支援を求める場合~

[ゼロからわかる事業再生]

第6回:自力再建かM&A かの選択

~自力再建とは、スポンサー支援型(M&A型)再建とは、自力再建を断念してスポンサー支援を求める場合~

 

[解説]

髙井章光(弁護士)

 

 

[質問(Q)]

窮境状況に至り、このままでは破産となってしまうため、事業再生を行いたいと思いますが、自力再生とスポンサー支援を受けたM&A を行う場合の違いについて教えてください。

 

 

[回答(A)]

事業再生をめざす場合、その経営陣において経営をあきらめてしまっているような場合以外においては、まずは当該会社が自助努力によって経営改善、事業収益力の改善を図ることになります。

 

しかし、収益力が自力ではなかなか上がらず、債権者から了解を得ることができる状況まで再建策を講じることが難しい場合には、第三者の支援を得て、その資金力、経営力、事業シナジーなどによって、債権者への返済を実施し、事業収益力を改善することをめざすことになります。この第三者から支援を受けるに当たり経営権を第三者に譲渡する場合をM&A といいます。

 

 

 

1.自力再建とは


自力再建とは、窮境状況にある会社において、事業再生の手続の中で、一定期間の支払猶予を得ながら、経営改革や事業収益力の改善策を構築し実践することで、事業を立て直すことです。事業収益力が回復したとしても、支払猶予となっている過大な負債の処理が問題として残りますが、事業再生の手続内にて、債務免除を得ることができれば、再生が可能となります。

 

債務免除後の適正規模となった負債に対する返済は、基本的に改善した事業による収益をもって長期間の分割弁済を実施することになります。

 

2.スポンサー支援型(M&A型)再建とは


自力再建が困難である場合に、スポンサー支援を受けることでより安定した再建を図ることを目的として、第三者の支援を受ける方法です。

 

第三者からの支援としては、業務提携など資本参加がない形で行う場合もありますが、窮境状況にある会社の再建においては、資本参加を必要とする場合が多く、出資を受けて共同経営となる方法のほか、株式譲渡や合併、既存株式の減資後に出資する形にて、経営権を譲り渡す場合も多くみられます。

 

そのほか、事業の一部を譲り渡す方法として事業譲渡や会社分割の手法がとられることもあります。資金支援を受ける形の場合には、通常、その資金をもって債務免除後の債務に対して一括にて弁済が行われます。

 

3.自力再建を断念してスポンサー支援を求める場合


自力再建ではなく、スポンサー支援を最初から求める場合もありますが、自力再建をまず検討することの方が多いと思います。自力再建を最初に検討し、自力再建がうまく行かない結果になったときにスポンサー支援を求めることになります。

 

自力再建がうまく行かない場合としては、①事業再生を実施するだけの資金的余裕がない場合、②負債が過大であり、自力再建による収益力では再建計画を立てることができない場合、③経営者に適任者がいない場合、④債権者において従前の経営陣による自力再建を拒絶した場合が考えられます。

 

事業再生を実施する場合には、通常は半年以上の時間がかかることになるため、この期間に資金ショートが生ずるほど資金不足が甚だしい場合には、即時にスポンサーを探して資金的支援を得る必要があります。工場などにおいて近い将来に高額の設備投資が必要不可欠であるような場合にも、その資金負担ができず、自力再建では事業継続は困難であり、スポンサー支援が必要となります。

 

 

 

 

また、自力再建によって、一定の収益を上げて返済原資を作ることができたとしても、例えば、優先債権である公租公課の滞納額が大きく、この返済が精一杯であって、支払猶予を受けている金融機関等への返済がまったくできないのであれば、足りない弁済資金をスポンサー支援によって賄う必要が生じます。

 

さらに、現社長が高齢であったり、経営責任をとって退任するような場合に、後継者となる者が不在であれば、そもそも会社経営が成り立たないため、第三者に経営を委ねることになります。

 

債権者によってスポンサー支援型とするよう求められることもあります。すなわち、現経営陣は経営を継続する意思があるものの、それまでの経営内容から、経営責任を問われ、金融機関から経営者交代を求められ、又は第三者のスポンサー支援による経営でないと再建策を支援しない旨の意向が示されることがあり、このような場合にもスポンサー支援を必要とすることになります。

 

スポンサー支援を意図しても、適切なスポンサーを探すことには大変な苦労が伴い、うまく行かない場合もあるため、適切なスポンサーを見つけられず、やむを得ず自主再建を継続する場合もあり得ます。