【Q&A】新築した住宅に転居後、転居時まで居住した住宅を譲渡した場合の3,000万円控除
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【Q&A】新築した住宅に転居後、転居時まで居住した住宅を譲渡した場合の3,000万円控除
〈解説〉
税理士法人タクトコンサルティング(山崎 信義/税理士)
[関連解説]
【問】
Aさんは、平成28年に亡父から相続により取得した東京都中野区の区分所有マンションに居住していましたが、令和2年4月に杉並区に戸建て住宅を新築し、令和3年3月に転居しました。Aさんは令和4年6月に中野区のマンションを譲渡し、譲渡益が生じることから、租税特別措置法(措法)35条第1項の居住用財産に係る譲渡所得の特別控除(以下「3,000万円控除」)の適用を検討しています。
Aさんは、中野区のマンションを譲渡した時には杉並区に所有する住宅に居住していることから、同マンションが3,000万円控除の適用要件とされる「(自分が)主としてその居住の用に供している家屋」に該当せず、適用を受けられないのではないかと心配しています。この場合において、Aさんは3,000万円控除の適用が認められますか。
【回答】
中野区のマンションは、居住の用に供されなくなった令和3年3月の時点で「主としてその居住の用に供している家屋」であり、これを居住の用に供されなくなった日以後3年を経過する日の属する年の年末までに譲渡しているので、他の要件を満たす限り3,000万円控除の適用が認められます。
【理由】
(1)3,000万円控除の概要
個人が自己の居住用の不動産を譲渡した場合は、譲渡所得の金額の計算上、最高3,000万円が控除できる特例が設けられています。これが3,000万円控除です。3,000万円控除の適用対象とされる不動産には、次のようなものがあります(租税特別措置法第35条第2項)。
①現に自己が居住している家屋
②居住用に供されなくなった日から同日以後3年を経過する日の属する年の12月31日までの間に譲渡した家屋
③①又は②の家屋とともに譲渡したその敷地
④①の家屋が災害により滅失した場合において、その家屋に住まなくなった日から3年目の年の12月31日までの間(原則)に譲渡したその敷地
(2)「主としてその居住の用に供している家屋」の判定時期
個人が居住の用に供している家屋を二以上所有する場合、3,000万円控除の適用対象となる上記(1)①または②の家屋は、その者が主として居住の用に供していると認められるーの家屋に限られます(措法施行令20条の3第2項)。
この場合、譲渡した家屋が「主として居住の用に供している家屋」に該当するかどうかの判定時点が問題になります。
Aさんの場合、中野区のマンションの譲渡時点で判定すると、譲渡時に主として居住の用に供している杉並区の住宅を有していることから、マンションはAさんが主として居住の用に供している家屋には該当せず、その譲渡について3,000万円控除は適用されません。一方、マンションを居住の用に供さなくなった時点で判定すると、マンションを居住の用に供さなくなった時にAさんは他に居住の用に供している家屋を有していないので、他の要件を満たす限り3,000万円控除の適用が認められることになります。
この「主としてその居住の用に供している家屋」の判定時点について、国税庁の通達では「居住の用に供されなくなった時」とされています(措法通達31の3−9(2)、35−6)。したがって、譲渡した家屋が「その者が主としてその居住の用に供していると認められるーの家屋」に該当すると判定された場合には、その譲渡の時において譲渡した者が他にその居住の用に供している家屋を有している場合であっても、その譲渡した家屋は、上記(1)①または②の家屋に該当します。
(3)本件へのあてはめ
上記(2)より中野区のマンションは「主としてその居住の用に供している家屋」に該当し、Aさんはこれを令和4年6月、すなわち居住の用に供されなくなった日(令和3年1月)から同日以後3年を経過する日の属する年の12月31日までの間に譲渡していることから、他の要件を満たす限り、3,000万円控除の適用が認められます。
税理士法人タクトコンサルティング 「TACTニュース」(2022/06/27)より転載