【Q&A】個人が共有持分を分割した場合の所得税の取扱い
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[解説ニュース]
個人が共有持分を分割した場合の所得税の取扱い
〈解説〉
税理士法人タクトコンサルティング(山崎 信義/税理士)
[関連解説]
【問】甲と弟の乙は、昨年に父から相続した東京都内の土地(X土地)を持分2分の1で共有しています。甲と乙は、X土地を分割して共有を解消したいと考えていますが、この場合の税務上の取扱いについて次の通り質問します。
【問1】X土地を甲と乙が単独で所有する2筆の土地に分割した場合、甲が乙に、乙が甲に、それぞれのX土地の持分の譲渡があったものして、甲と乙に所得税が課税されるのでしょうか。なおX土地は遊休地であり、何ら使用されていません。
【問2】甲と乙は、X土地以外に、15年前に父から相続した神奈川県内の土地(Y土地)を持分2分の1で共有しています。X土地の価額とY土地の価額がほぼ同額であることから、甲のY土地の持分と乙のX土地の持分を交換し、X土地を甲の単独所有、Y土地を乙の単独所有にすることも検討していますが、この場合にはX土地の持分とY土地の持分の譲渡があったものとして、甲と乙に所得税が課税されるのでしょうか。
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【回答】
1.【問1】について
(1)共有物の分割に係る所得税の譲渡所得の課税
二以上の者が一の土地を共有している場合において、その土地をそれぞれの共有持分にて現物分割し、それぞれ単独所有の土地としたときは、判例上、共有者相互問において、共有各部分につき、その有する持分の交換又は売買が行われることであって、各共有者が取得部分について単独所有権を原始的に取得するものではないといわれています(最判、昭42.8.25民集21巻 7号1729頁、平成29年版所得税基本通達逐条解説194頁)。
したがって、共有の土地を、それぞれの持分に従って現物分割した場合、①その法律的性格に着目すれば、その共有持分の交換(交換も「譲渡」の一種です。)があったことになるので、その譲渡による利益について所得税が課税されるのではないかという疑問が生じます。
しかし、共有関係にある一の資産を現物で分割するということは、②その資産の全体に及んでいた共有持分権が、その資産の一部(現物分割で取得した部分)に集約されただけにすぎず、資産の譲渡による収益の実現があったといえるだけの経済的実態は備わっていないということもできます。
そこで、国税庁は所得税基本通達(所基通)33-1の7により、個人が他の者と共有している土地について、その持分に応ずる現物分割があったときには、税務上は①の考え方によらず、②の考え方に基づき、その分割による土地の共有持分の譲渡はなかったものとして、所得税の譲渡所得の課税関係を生じさせないこととして取扱うこととしています。
なお、現物分割された土地の面積の比と共有持分との比が異なる場合がありえますが、そのような場合であっても、その分割後のそれぞれの土地の価額の比が共有持分の割合におおむね等しいときは、その分割はその共有持分に応ずる現物分割に該当することとされます(所基通33-1の7(注)2)
(2)結論
甲と乙が共有しているX土地を、それぞれの持分に従って現物分割した場合、前述(1)より、その分割による土地の共有持分の譲渡はなかったものとされ、所得税の課税関係は生じません。
2.【問2】について
ご質問のように、東京都所在のX土地の乙の持分と、神奈川県所在のY土地の甲の持分を交換し、X土地を甲の単独所有、Y土地を乙の単独所有とした場合には、交換する持分が別の土地の持分であるため、前述1(1)②で述べたような「その資産の全体に及んでいた共有持分権が、その資産の一部(現物分割で取得した部分)に集約されただけにすぎず、資産の譲渡による収益の実現があったといえるだけの経済的実態は備わっていない」とはいえません。したがって私法上の関係通り、甲と乙において、それぞれX土地の持分とY土地の持分の交換(譲渡)があったものと認められることから、甲と乙にそれぞれ所得税が課税されます。
ただし、X土地とY土地の持分の交換において、一定の要件を満たす場合には、固定資産の交換に係る所得税の特例(所得税法58条)の適用により”譲渡がなかったもの”とみなすことができます。
税理士法人タクトコンサルティング 「TACTニュース」(2020/09/28)より転載