【Q&A】非上場株式の譲渡所得における概算取得費[税理士のための税務事例解説]

[税理士のための税務事例解説]

事業承継やM&Aに関する税務事例について、国税OB税理士が解説する事例研究シリーズです。

今回は、「非上場株式の譲渡所得における概算取得費」についてです。

 

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[質問]

非上場の同族会社であるA社及びB社の株式を売却した場合、譲渡所得の金額上控除される取得費について、A社の取得費は概算取得費(5%)を適用し、B社の取得費は実際の取得価額を適用して差し支えないでしょうか。どちらかに統一する必要があるでしょうか。

 

[回答]

譲渡所得の金額の計算上控除する資産の取得費は、別段の定めがあるものを除き、その資産の取得に要した金額並びに設備費及び改良費の額の合計額とされています(所得税法第38条第1項)。
この規定により、取得費は、譲渡された資産ごとに計算されるのが相当と考えられます。

 

一方、個人が昭和27年12月31日以前から引き続き所有していた土地等又は建物等を譲渡した場合における長期譲渡所得の金額の計算上収入金額から控除する取得費は、所得税法第38条及び第61条の規定にかかわらず、当該収入金額の100分の5(5%)に相当する金額とすることとされています(概算取得費控除・租税特別措置法第31条の4第1項)。

 

なお、概算取得費控除の規定は、土地等又は建物等の譲渡に関する規定なので、土地等又は建物等以外の資産を譲渡した場合には適用されないことになりますが、実務上は、株式等を譲渡した場合であっても次のように土地等及び建物等を譲渡した場合と同様に取り扱われます。

 

租税特別措置法取扱通達37の10・37の11共-13《株式等の取得価額》
株式等を譲渡した場合における事業所得の金額、譲渡所得の金額又は雑所得の金額の計算上必要経費又は取得費に算入する金額は、所得税法第37条第1項《必要経費》、第38条第1項《譲渡所得の金額の計算上控除する取得費》、第48条《有価証券の譲渡原価等の計算及びその評価の方法》及び第61条《昭和27年12月31日以前に取得した資産の取得費等》の規定に基づいて計算した金額となるのであるが、譲渡をした同一銘柄の株式等について、当該株式等の譲渡による収入金額の100分の5に相当する金額を当該株式等の取得価額として事業所得の金額若しくは雑所得の金額を計算しているとき又は当該金額を譲渡所得の金額の計算上収入金額から控除する取得費として計算しているときは、これを認めて差し支えないものとする。

 

以上から、本件の株式の譲渡所得の計算における取得価額については、その株式の同一銘柄ごとに取得価額を計算するのが相当であることから、A社の株式に概算取得費控除を適用し、B社の株式に実額による取得価額を適用して、それぞれ申告することで差し支えないと考えられます。

 

 

 

 

税理士懇話会事例データベースより

(2022年3月14日回答)

 

 

 

 

[ご注意]

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