[M&A担当者のための実務活用型誌上セミナー『価値評価(バリュエーション)』」

第3回:DCF法における価値評価(バリュエーション)のポイントとは?

 

 

〈解説〉

公認会計士・税理士  中田博文

 

〈目次〉

◆DCF法とは?

1、FCF(フリー・キャッシュ・フロー)の算定

2、WACC(割引率)の計算

(WACC、負債コスト、株主資本コスト、リスクフリーレート、株式リスクプレミアム(ERP)、ベータ、サイズプレミアム

3、継続価値の算定

(継続価値、FCFに基づく成長モデル(ゴードンモデル)、倍率法モデル)

4、事業価値の算定

5、株式価値の算定

 

 

▷第1回:M&Aにおける価値評価(バリュエーション)の手法とは?

▷第2回:倍率法における価値評価(バリュエーション)のポイントとは?

▷第4回:支配権プレミアム&流動性ディスカウントについて

 

▷関連記事:M&Aにおける税務デューデリジェンスの目的、手順、調査範囲など

▷関連記事:M&A取引の税務ストラクチャリング

▷関連記事:「バリュエーション手法」と「財務デューデリジェンス」の関係を理解する

 

DCF法とは?


DCF法は、対象事業の営業活動から生じる評価基準日以降の「FCF(フリー・キャッシュ・フロー)」を「WACC (当該キャッシュ・フローのリスクを反映した割引率)」を用いて現在価値に割り引き、事業価値を算定する方法です。

 

将来の事業価値を買うという買収実態に適合する評価方法ですが、将来キャッシュ・フロー(見積もり)への依存が大きいため、評価の客観性に欠ける面もあります。そのため、倍率法等の結果を用いたクロスチェックが必要です。

 

 

◇DCF法の株式価値は、以下の手順で計算します。

(1)FCF(フリー・キャッシュ・フロー)の算定

(2)WACC(割引率)の計算

(3)継続価値の算定

(4)事業価値の算定

(5)株式価値の算定

 

 

 

 

 

1、FCF(フリー・キャッシュ・フロー)の算定


FCFとは、営業活動によって獲得したキャッシュ・フローのことです。このキャッシュは、投資家(債権者と株主)に自由に分配することができるため、フリーという文字が付いています。

具体的には、以下の式によって計算されます。

 

FCF=A)営業利益+B)減価償却費-D)税金-E)設備投資±F)運転資本の増減

 

 

 

FCF算定の基礎となる事業計画は、対象会社から提供された事業計画をベースとします。売り手の事業計画の前提条件が買い手の想定と異なる場合は、売り手にする前提条件のヒアリング、両者の相違要因の検討、根拠資料の裏取り、外部コンサルタントからのアドバイスの入手等の作業を通じて、買い手の修正事業計画を作成します。

 

さらに、買い手のシナジー効果の金額効果を把握できるように、シナジー効果の有無を分けた事業計画を作成すると、価格交渉時にシナジー効果を売り手にどの程度与えるかという実践的な検討が可能となります。

 

 

 

2、WACC(割引率)の計算


【WACC】

WACCとはFCFのリスク(運用サイド)を反映した割引率のことです。投資家が要求する利回り(調達サイド)と説明されることもあります。割引率は、負債コストと株主資本コストの加重平均で算定されます。

割引率=(負債コスト/ 負債+資本)+(株主資本コスト/負債+資本)

 

負債は純有利子負債の残高、資本は株式時価総額(自己株式調整後)を用います。(厳密には、非支配持分等も考慮します)なお、以下で述べるβの観測期間中(2年~5年)に資本構成が大きく変動している場合、直近四半期末の負債及び時価総額ではなく、期間中の平均とすることを検討します。

 

 

 

【負債コスト】

負債コストとは、借入(借入金、社債等)による資金調達コストのことです。例えば、資金調達金利が3.0%の場合、税率30%と仮定すると、負債コストは2.1%(=3.0%×(1-30%)となります。支払利息は税務上損金算入できるので、負債コストは節税効果を考慮します。

 

実務では、対象会社が社債発行会社と社債未発行会社の場合に区分して、社債発行会社の場合は、当該社債の金利、社債未発行会社の場合は、対象会社と同等の格付けの社債金利を使用します。格付け別の社債金利情報は、日本証券業協会のHPに開示されています。

 

なお、借入金の金利を使用する場合、①借入時期が価値評価基準日の数年前の場合、その間に市場金利の水準や会社の信用リスクが変動している可能性があり、また、②対象会社が子会社である場合、親会社の信用補完が借入コストに反映されている可能性があります。そのため、価値評価基準日時点の社債市場等の公表利回りデータを参考にして、クロスチェックをすることをお勧めします。

 

 

 

【株主資本コスト】

株主資本コストは、対象会社の事業に対して、株主が要求する投資収益率のことをいいます。実務上は資本資産評価モデル(CAPM: Capital Asset Pricing Model)の公式を用いて、株主資本コストを推計します。

Ke = Rf +β×ERP

 

Ke:株主資本コスト

Rf:リスクフリーレート

β:株式市場全体に対する個別株式の感応度

ERP :株式リスクプレミアム(Equity Risk Premium)

 

投資家の合理的な行動を前提とする場合、リスクを最も低減しつつ、リターンを最も高めるポートフォリオは、株式市場全体の構成比率に分散させたポートフォリオであり、その場合の株主資本コストはRf+ERPとなります。

 

βは、株式市場全体の期待収益率の変化に対する個別株式の変化の度合いをいいます。βが1の場合は、株式市場全体が1変動すると、個別株式も1変動します。βが1.5の場合は、株式市場全体が1変動すると、個別銘柄は1.5変動します。このβをERPに乗じてRfを加算することによって、個別株式のリターンを算定しています。上場企業のβは、Bloomberg、日経会社情報等の市場データーベースから入手できます。

 

 

 

【リスクフリーレート】

取得の容易性、流動性を考慮して、直近日の日本国債(10年物)の流通利回りを用いるのが一般的です。Bloomberg、財務省HP等の市場データーベースから入手します。

 

 

 

【株式リスクプレミアム (ERP)】

株式リスクプレミアム(ERP)とは、株式市場全体(TOPIX等)に投資しようとする場合、投資家がリスクフリーレートに対して追加的に要求する期待リターンのことをいいます。

 

過去の東京証券取引所の上場株式に対する平均投資利回りと日本国債の投資利回りの差に関する実証分析から、実務では、5.5%~6.0%の範囲内で設定するケースが多いです。

 

 

 

【ベータ】

βとは、対象会社への株式投資が、株式式市場全体への投資と比較して、どれだけリスク(ボラティリティ)があるかを表す指標です。実務では、過去2年間の週次又は過去5年間の月次データを用いるのが一般的です。

 

 

 

 

対象会社が非上場会社の場合、類似会社数社のベータの中央値(異常値を除いた平均値)を使用します。なお、マーケットから入手した類似会社のベータ―は、財務リスク(資本構成の影響)を取り除く作業が必要なのですが、紙面の都合上、ここでは割愛します。

 

 

 

【サイズプレミアム】

サイズプレミアム(SCP)は、株式時価総額が小さな企業に対して適用するプレミアムのことをいいます。βが同じである場合、大企業よりも規模の小さな企業の方がリターンが高いという実証研究に基づくものであり、資本資産評価モデルでは捉えきれないリスクです。実務では、 ダフ・アンド・フェルプス株式会社が毎年公表している資料を参考にして、対象会社の株式時価総額の規模に応じたサイズプレミアム( 3.5%~5.3% )を決定します。

 

<計算例>

・社債金利: 3.0%

・税率: 30%

・リスクフリーレート:-0.05%

・β:18

・株式リスクプレミアム(ERP): 6.0%

・サイズプレミアム(SCP): 5.37%

・負債:資本=60:40

 

⇒負債コスト:2.1% = 3.0%×(1-30%)

⇒株主資本コスト:12.4%= -0.05% + 1.18 ×6.0% + 5.37%

⇒WACC:6.22% = 2.1%×60/(60+40)+12.4%×40/(60+40)

 

 

 

3、継続価値の算定


【継続価値】

DCF法による事業価値は、事業計画期間のFCFの現在価値と計画期間以降のFCFの現在価値(継続価値)から構成されます。継続価値は事業価値の過半以上を占めるケースが多く、慎重に算定する必要があります。実務では、案件の状況に応じて、以下の2つの方法がよく使用されます。

 

 

 

【FCFに基づく成長モデル(ゴードンモデル)】

 

 

計画期間以降の期間を通じて成長率が一定であること及び永久成長率がWACCを上回らないことを前提とします。実務上、永久成長率は、予想インフレ率・GDP成長率等を考慮して設定します。最近の国内案件では0%とすることが多いです。

 

 

 

【倍率法モデル】

 

EBITDA倍率は、事業計画期間終了時の会社の成長率・投資利回り・資本コスト等を総合的に考慮して設定します。なお、投資ファンド等の投資家は、将来の株式売却(EXIT)がほぼ確定しているため、現時点のEBITDA倍率を用いることがあります。

 

 

 

4、事業価値の算定


事業価値は、各期のFCF及び継続価値の現在割引価値の合計額となります。実務上、割引計算は、期央主義(各期のFCFは各期の中間時点で発生)を採用します。継続価値は、事業計画の最終年度と同じディスカウントファクターを用いて現在価値に割り引きます。

 

 

 

5、株式価値の算定


事業価値から非営業用資産の時価を加算し、純有利子負債を控除して株式価値を算定します。

 

 

 

 

 

 

□■本連載の今後の掲載予定□■

—連載(全5回)—

第1回:M&Aにおける価値評価(バリュエーション)の手法とは?

第2回:倍率法における価値評価(バリュエーション)のポイントとは?

第3回:DCF法における価値評価(バリュエーション)のポイントとは?

第4回:支配権プレミアム&流動性ディスカウントについて

第5回:財務デューデリジェンスの発見事項の取扱い

※掲載タイトル、内容は予定のものを含みます。

 

 

[解説ニュース]

借地人の建物を地主が取壊した際の費用をめぐる税金トラブル

 

〈解説〉

税理士法人タクトコンサルティング(遠藤 純一)

 

 

[関連解説]

■最近の事例にみる「不動産所得で経費になるもの」

■不動産取得税の「相続による取得」を巡る最近のトラブル

 

1.はじめに


最近、借地人側で相続が開始し、借地契約の解約、借地人の建物収去の問題が発生、それが地主の税金トラブルになるケースが散見されます。問題なのは、借地人の相続人に財力が期待できない場合です。というのも、地主側で建物を取壊す場合には、借地人名義の建物の収去費用について税金トラブルになることがあるからです。

 

借地人名義の建物の取壊しは本来、借地人が行うべきものです。建物を収去して更地にして返す契約となっているためです。この建物収去費用が地主の不動産所得の計算上必要経費と認められるかどうかをめぐって、昨年2つの裁決事例が出ています。1つは、必要経費と認められたもの(国税不服審判所、令和元年9月20日)、もう1つは必要経費として認められなかったもの(国税不服審判所、令和元年9月3日)です。その違いはどこにあったのか、見ていくことにします。

 

 

2.必要経費と認められた場合


事案の成り行きは次の通りです。

 

1、未払地代もあった借地人の相続(平成24年10月)に伴い、その相続人全員が相続放棄をした。

 

2、亡くなった借地人の財産は、相続財産法人に移行(民法951条)。

 

3、地主は平成25年8月、管轄の家庭裁判所に借地人の相続財産管理人の選任の申立てを行い(民法952条)、費用約100万円を予納した。同年9月管理人が選任。

 

4、地主は、平成25年10月、未払賃料の1週間以内の支払い催告とともに、支払いなきときは土地の賃貸借契約解除の意思表示の書面を相続財産管理人に送る。同月、土地の賃貸借契約は解除。

 

5、地主は相続財産法人を相手に、管轄の裁判所に対し賃貸住宅である建物の収去、損害金支払い等を求め提訴。

 

6、地主は、平成27年4月、建物の借家人の立退き、建物収去などにつき相続財産法人と和解が成立。

 

7、地主は和解条項通りに建物が収去されなかったので、同年12月までに裁判所の建物収去の代執行、土地明け渡しの強制執行を申立て、翌年3月までに執行を完了。収去費用は約650万円。

 

 

国税不服審判所は、前記事実関係などから「請求人らが本件土地を賃貸業務以外の用途に転用したことをうかがわせる事情も認められないことからすれば、請求人らの土地の貸付けに係る業務、すなわち、不動産所得を生ずべき業務は、土地賃貸借契約の解除後本件各建物の収去に至るまで継続していたものと認められる」と認定。

 

そのうえで「土地から収益を得る業務を遂行するためには、(借地人の)建物を収去する必要があり、その収去に係る費用については、当初から自らが負担することを想定して建物の収去までの手続を遂行し、建物収去費を支出したところ、実際にも、相続財産法人は無資力であり、支出の時点において、請求又は事後的に求償しても、およそ回収が見込めない状況にあったのであり、客観的にみても、建物収去費は、請求人らにおいて、自ら負担するほかなかったものと認められる」として「建物収取壊費用の支出は、客観的にみて、不動産所得を生ずべき業務と直接関係し、かつ、業務の遂行上必要なものであった」としています。

 

 

3.必要経費と認められなかった場合


次の事案も、借地人側で相続が開始し、借地人の相続人が地代滞納したため、平成25年に地主が賃料債務不履行を理由に契約解除の意思表示をし、契約解除、建物収去明け渡しに関し裁判沙汰になったものです。ただ、平成26年に裁判外で「借家人の退去や建物解体手続きに協力すること、それが実現したときはその費用等を免除する」といった和解をしていました。

 

建物の収去は平成26年6月あら8月末までの間に行い、地主は、取壊しに係る費用3,656,880円を支払ったというものです。

 

国税不服審判所は、地主が「借地人が経済的に困窮しているため、建物の収去義務を確実かつ迅速に履行する保証がない旨判断し、和解契約を締結した上で、自己の負担で本件建物を取り壊した」としているが「各借地人の資産状況及び支払資力などを裏付ける客観的な資料をいずれも確認しておらず、また、各借地人のうち少なくとも1名にはその当時一定の所得があったことが認められることからすれば、請求人が取壊費用を負担せざるを得ない事情があったとは認められない」として、収去費用を必要経費と認めませんでした。

 

 

 

 

税理士法人タクトコンサルティング 「TACTニュース」(2020/09/07)より転載

[M&A専門会社スペシャルインタビュー]

U&FAS 代表 氏家洋輔 氏

~赤字や債務超過もサポートするM&A・事業承継と事業再生専門の事務所~

 


 

大手会計ファーム出身の公認会計士で構成されたM&Aアドバイザリー。品質、スピード、誠実性に拘りを持つとともに「M&A・事業承継と事業再生」のプロフェッショナルとして赤字や債務超過の企業をも支援しているのが同事務所の最大の特徴。今回は、同事務所代表の氏家洋輔氏に、同事務所の特徴やクライアント先のニーズ、事業再生を絡めた赤字や債務超過のM&Aなどについてお話を伺いました。

 

 

U&FAS 代表 氏家洋輔 氏

 

 

赤字、債務超過に積極的に取り組んでいる!M&A・事業承継と事業再生専門の事務所


――:まずは、貴所(U&FAS)のご紹介をしていただけますでしょうか。

 

氏家:当事務所は、M&A・事業承継と事業再生の支援を行う会計・財務アドバイザリーの事務所です。2019年の設立以来、M&A・事業承継支援と事業再生支援の2軸でサービスを展開しております。

 

 

 

――:貴所の特徴や強みを教えていただけますでしょうか。

 

氏家:当事務所の特徴は、「赤字・債務超過」積極的に取り組んでいることです。また、M&Aを専門としている同業者は多いですが、事業再生を専門としている同業者はあまりいないと思います。さらに、M&Aと事業再生のどちらも専門としているとなるとかなり限られると思います。この「赤字・債務超過に積極的に取り組んでいる」「M&A・事業承継と事業再生を専門にしている」というのが当事務所の最大の特徴だと思います。

 

 

 

――:たしかに、「赤字・債務超過に積極的に取り組んでいる」「M&A・事業承継と事業再生を専門にしている」というのはあまり聞かないですね。

 

氏家:はい、そうだと思います。この分野を専門にするには数多くの経験が必要ですからね。私は、公認会計士として、大手の監査法人で東証一部上場企業、売上高数兆円規模の大企業や銀行の監査を経験し、その後M&Aや事業再生の部署で計10年の修行を積みました。1つの部署でM&Aと事業再生のどちらも提供しており、どちらの業務も経験できたのが良かったのだと思います。しかも、運よく有名な先生の下で修行させて頂いたのですが、それが自分の財産になっていると思います。その先生は品質とスピードに非常に拘りのある方で、今の私の基礎となり強みになっているのだと思います。また、数多くのM&Aや事業再生のサポートをしてきましたが、製造業、小売業、建設業、卸売業、IT、サービス業、医療福祉、運送業など多種多様の案件に携わったことも現在の業務に活かされているだと思います。

 

 

 

――:どのようなクライアント先からのご相談が多いのですか。

 

氏家:よく見聞きすることですが、事業承継やM&Aを検討したいと依頼があって、中身を見てみると、実は業績が厳しい状況であるということは少なくありません。赤字や債務超過であった場合に、買手を探すのが難しいとのことで専門家から断られる場合や、アドバイザー契約を結ぶものの、あまり進捗しないことも多いようです。我々の事務所には、そんな業績の厳しい会社と直面したM&Aの専門家から相談されるケースが多いですね。上場しているコンサル企業や、外資系の大手コンサル企業から相談を頂いた時はびっくりしました。

 

 

 

――:専門家からの依頼が多いということは、やはり、赤字や債務超過の企業のM&Aは専門性が高く、業務対象としている税理士や公認会計士は少ないということなのでしょうか。

 

氏家:はい、そうだと思います。しかし。このような専門家からお話を頂く一方で、U&FASは開業2年目で広告も出しておらず、まだまだ認知度が低いため直接企業様からご連絡を頂くことはあまり多くないのが現状です。当事者である企業様もどこに相談するのがよいのか悩まれていることもあるかと思いますので、ぜひ、「赤字、債務超過ならU&FAS」と覚えて頂けると有難いですね(笑)。

 

 

 

 

赤字や債務超過の会社でも事業再生の視点を加えることでM&Aできるケースも


――:事業承継やM&Aで事業再生が活用されるケースが少ないとのことですが、それはなぜでしょうか。

 

氏家:事業承継やM&Aの局面で、売りに出ている企業は様々あるものの、買手側のニーズとしては業績の良い企業が好まれているのが現状です。理由は大きく2つあると思っていて、1つ目は買手側にとって計算がしやすいことだと思います。例えば営業利益が安定して毎年5千万円出て、今後もそれが続くことが想定される。簡便化して考えると1億5千万円での譲渡であれば3年で投資が回収できるということが計算できます。一方、営業利益が△1千万円の会社を買収しようとした場合、現状のままでは赤字ですので、これを改善して利益が出るようになる、又はしなければいけない。どの程度の利益が出せるかという見積は、経験や専門性が必要となるので、赤字企業を立て直すことを前提としたM&Aはやはり買手側からは計算が難しく、敬遠されやすいように思います。

 

もう1つは、仲介企業や専門家の問題だと思います。売手と買手をマッチングさせる業者は、譲渡金額×数パーセントを成功報酬として得ることが一般的です。赤字企業よりも黒字企業の方が譲渡金額が大きくなるので、結果として報酬額も大きくなり好まれやすいですね。

 

他にも、赤字や債務超過企業のM&Aでは、銀行を巻き込んだり、スキームも特有のものになるため、専門能力が必要となりますが、それらの専門能力を持ち合わせた専門家が少ないことも要因だと思います。

 

 

 

――:そうすると、赤字や債務超過の会社はM&Aを選択肢に入れることはやはり難しいのでしょうか。

 

氏家:業績の良い企業と比較して、赤字や債務超過の企業の買手を探すのが難しいということは事実です。先ほど申し上げたように、買手企業からも、仲介企業からも黒字企業の方が好まれますので。では、赤字や債務超過の企業はM&Aをできないかと言われると、そんなことはなく、可能性は十分にあります。ただ、そこには事業再生という観点を加えることが必要になってきます。

 

 

 

――:事業再生の視点を加える必要があるとのことですが、赤字や債務超過の会社のM&Aについてもう少し詳しく教えて頂けますか。

 

氏家:赤字や債務超過の会社とのM&Aを成約させるために考えられるケースは3つあると思います。

 

1つ目は、赤字や債務超過のまま買収するケースです。これは、買手企業にとって、相当なシナジー効果を期待できる場合等が想定されます。赤字や債務超過のままM&Aを行うため、譲渡金額は比較的小さくなります。

 

2つ目は、時間的に余裕がある場合に限られますが、自力での事業再生を行い、企業価値を高めた上でM&Aを行うケースです。事業再生により黒字化や債務超過の解消が達成されていれば、業績の良い企業としてのM&Aが可能となります。債務超過が解消されていなかったとしても、見栄えはよくなりM&Aの可能性は上がることになります。

 

3つ目は、第二会社方式というスキームがあります。恐らく聞きなれない単語だと思いますが、簡単に申し上げると既存借入金の債権放棄と、身軽になった会社の売却を同時に行うスキームです。もう少し詳細に申し上げると、新たにB会社を設立し、そこへ残す事業を会社分割や事業譲渡で移転させ、既存のA会社を借入金を含めて特別清算する、そしてB会社はM&Aにて売却するということを同時に行います。これによって金融機関からの借入金を大幅に縮小して、優良な事業のみを第三者に売却することが可能になります。このスキームによって、残したい優良な事業と従業員等を残すことができるようになります。ただし、金融機関に債権放棄をお願いするため、必要な分析、債権放棄の合理性、買手企業の適切性等を金融機関に対して行う必要があります。

 

 

 

――:特に、3つ目のケースでは非常に複雑なスキームと、分析が必要になるのが想像できますね。

 

氏家:はい。ここまでくると高度な専門性が要求されてしまいますので、やはり事業再生に強い専門家へ依頼する必要がでてくると思います。

 

 

 

 

同業からも頼られる赤字や債務超過の要素が含まれる「財務デューデリジェンス」


――:貴所の具体的なサービスラインについて教えてください。

 

氏家:当事務所のサービスラインは「M&A支援と事業再生支援」、それにプラスして「CFO支援」があります。

 

 

 

――:M&A支援と事業再生支援のサービスについて詳しく教えていただけますか。また、クライアントからはどのような依頼が多いですか。

 

氏家:「M&A支援」では、スキーム検討、デューデリジェンス、バリュエーション等を売手側、買手側に対して支援します。M&A関連で依頼が多いのはやはりデューデリジェンスですね。買手側の依頼を受けて売手に対して財務DDをする場合も、売手側の依頼を受けてDD対応の支援を行う場合もあります。最近増えているのは、M&Aで入って蓋を開けると赤字や債務超過の要素が含まれている場合ですね。それらが絡むと一気に頼りにして頂ける感覚がありますね。クライアントからも、他の専門家や同業者からも。

 

「事業再生支援」では、金融機関からの支援であるリスケやDDS(※1)や債権放棄などを得るために、財務DD、事業DD、事業計画、アクションプランの策定がサービスラインとなっています。基本的には全部任せて頂ける依頼がほとんどですね。我々も期待に応えるために精一杯やらせて頂きます。財務面のみならずビジネス面でも社長と深くディスカッションを行って事業計画を策定していきますので、良い信頼関係が築けます。金融機関からの支援が決まった時は、良い事業は残せて、雇用も守れて、本当に感謝して頂けます。これが私の大きな原動力の1つですね。

 

※1 DDS(デット・デット・スワップ):既存の借入金を劣後ローンとして借り換える手法。会社の借入金額はDDSの前後で変更はないが、金融機関の中では劣後ローンは資本とみなすことができるため、金融機関の査定上有利に働く。

 

 

最近では新型コロナの影響で、特例リスケ(※2)の相談が増えています。特例リスケは、従来のリスケとは比べ物にならないぐらい簡単に金融機関からの支援が受けられる制度です。コロナの影響を受けて資金繰りが苦しい企業で、まだ特例リスケをされていない方は是非ご検討頂くのが良いと思います。

 

※2 特例リスケ:正式名称は「新型コロナウイルス感染症特例リスケジュール」。新型コロナウイルス感染症の影響を受けて一定以上の業況悪化を来たした会社に対して、中小企業再生支援協議会の支援の下、1年間のリスケを実施するもの。

 

 

 

▷参考URL:新型コロナ対策融資と特例リスケ

▷参考URL:新型コロナ特例リスケジュールの実務について

 

 

 

――:CFO支援とはどのようなサービスですか?

 

氏家:「CFO支援」は、お客様によって様々な支援を行っています。事業計画の策定や、月次の経営会議資料の作成、原価計算の導入や、部門別損益の精緻化などです。私が主動する場合もあれば、これらの助言や問題が発生した場合の支援など、顧問のような支援を行う場合もあります。品質にはもちろん満足して頂いているようですが、それにプラスアルファで事業再生の専門家がすぐ近くにいることで、安心されている経営者が多いように思います。

 

 

 

 

経営者の想いを大切に、大手同様の高い品質を中小の値段で提供


――:M&A業務をされる上で、大切にしていることはありますでしょうか。ご経験談を含めてお答えください。

 

氏家:M&Aで最も大切にしているのは株主や経営者の想いですね。事業や製品、雇用などに対する想いを実現するために業務に取り組むことが最も重要であり、成功の近道だと思います。高い品質、迅速性、誠実性について特に拘りをもって取り組んでいます。品質面では、大手の高い品質を中小の値段で提供することを心がけていますね。M&Aは買手にとっても売り手にとっても、企業経営の中でもかなり重要な意思決定が必要となる局面だと思います。個人で言えば、結婚する時や家を買う時のような大きな決断をする時と似ていると思います。そのような重要な局面での情報は、ポイントが明確でわかりやすく、正確である必要があると思います。品質を高めることがM&Aを成功させることにとって重要であると考えています。

 

また、偏見かもしれませんが、良い経営者はせっかちであることが多く、とにかく早く情報を提供することを望んでおられることが多いように思います。過去にDDレポートを2週間ほどで仕上げて報告した時には、こんなにしっかりしたレポートをこんなに早く仕上げてもらったのは初めてだと仰ってくださり、それ以降もことあるごとにご連絡を頂けるようになりました。

 

 

 

――:税理士の方々と一緒にM&A業務を進めることも多いかと思いますが、M&A業務における税理士の役割をどのように感じておられますか。

 

氏家:税理士の先生はM&A業務を進めていくうえで非常に重要なパートナーだと思っています。会社のことをとても理解されていますし、DDに必要な資料を税理士の先生がお持ちになっていることも多いですね。ヒアリングする時も社長に伺うよりも、税理士の先生に伺ったほうが正確に理解できるようなことがしばしばあり、円滑にDDを進めるためには、税理士の先生の協力は大変ありがたく、不可欠だと思います。

 

また、税理士の先生は、会社のことをよく理解されているため、M&Aや事業承継を検討している場合に会社の相談相手となることが多いようですね。ただ、顧問税理士の先生にとってM&Aや事業承継は専門外であることが多いため、我々のところにお話を頂けることがあります。その場合に、ご紹介或いは、協業という形で会社をサポートさせて頂いています。

 

 

 

――:最後に、事業会社の担当者の方や事業会社をサポートする税理士等の専門家の方々へメッセージをお願いします。

 

氏家:事業承継やM&Aというのは、専門でやっていなければそう何度も経験できるものではないと思います。これらは株主や経営者の想いが非常に重要ですので、その想いを汲み取り業務に当たられると良いのでないでしょうか。また、事業承継やM&Aを成功させるには、適切な専門家が不可欠ですので、良い専門家と連係をとって進めることが重要だと思います。事業承継やM&Aを成功させることで、事業会社のご担当者や税理士の先生の業務の幅が広がるのではないでしょうか。

 

 

 

――:ありがとうございました。

 

 

 

 

 

[事務所概要]

事務所名:U&FAS

所在地:東京都千代田区丸の内2-2-1 岸本ビルヂング6階

設立:2019年1月

代表者:氏家洋輔

主な事業内容:M&A・資金調達支援、事業再生・経営改善支援、株式価値算定、CFO支援

対応エリア:全国(日本国内)

URL:https://www.u-fas.com/

 

 

 

 

 

 


[掲載希望募集中]

ZEIKEN LINKSでは、本連載に掲載を希望するM&A専門会社(M&A仲介会社、M&Aアドバイサリー会社、M&Aマッチングサイト、税理士法人、弁護士法人、金融機関など)を募集しております。

ご希望の会社様は下記アドレスまで、お気軽にお問合せください。

お問合せ先:links@zeiken.co.jp

 


 

[M&A案件情報(譲渡案件)](2020年9月8日)

-以下のM&A案件(5件)を掲載しております-

 

●豊富な技術とノウハウを蓄積し官公庁や地元業者からの信頼が厚い土木工事会社

[業種:土木工事業/所在地:中国地方]

●安定した取引先を持つ、蓄電池の中間流通業

[業種:電気機械器具卸売業/所在地:関東地方]

●地場独立系の自動車ディーラー

[業種:自動車販売/所在地:関東地方]

●付加価値を付けた不動産売買に強みを持つ不動産会社(売買/仲介/賃貸/管理)

[業種:不動産業(売買/仲介/賃貸/管理)/所在地:関東地方]

●関東の食品宅配事業者。登録会員数約2万人。

[業種:飲食料品小売業/所在地:関東地方]

 

-案件に関するお問合せ・ご相談は、このページ文末の「お問合せ・ご相談」ボタンより-

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案件No.SS006445
豊富な技術とノウハウを蓄積し官公庁や地元業者からの信頼が厚い土木工事会社

 

(業種分類)建設・土木

(業種)土木工事業

(所在地)中国地方

(直近売上高)5~10億

(従業員数)10~50名

(譲渡スキーム)株式譲渡

(事業概要)県内エリアを中心に土木工事、舗装工事を手掛け、官公庁や地元業者に広く受注基盤を築いている。

 

〔特徴・強み〕

◇設立から60年超の実績があり、豊富な技術とノウハウを蓄積しており、特に橋梁補修工事を得意とする・財務内容良好、無借金経営・1級土木管理技士等の有資格者多数在籍

 

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案件No.SS006437
安定した取引先を持つ、蓄電池の中間流通業

 

(業種分類)商社・卸・代理店

(業種)電気機械器具卸売業

(所在地)関東地方

(直近売上高)50~100億

(従業員数)10名以下

(譲渡スキーム)株式譲渡

(事業概要)蓄電池の卸売業

 

〔特徴・強み〕

◇強固な販路を持ち業績を拡大させている。
◇昨今の自然災害の増加と、今後の需要の拡大を背景に、増収基調が続く。

 

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案件No.SS006422
地場独立系の自動車ディーラー

 

(業種分類)小売業

(業種)自動車販売

(所在地)関東地方

(直近売上高)1~5億

(従業員数)10~50名

(譲渡スキーム)株式譲渡

(事業概要)地元では高い知名度誇る自動車ディーラー及び自動車整備業者

 

〔特徴・強み〕

◇業歴永く、固定顧客を幅広く抱え安定した受注確保ができている
◇ディーラー権を保有
◇有資格者を抱え、指定工場を保有、安定的な整備実績あり

 

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案件No.SS006325
付加価値を付けた不動産売買に強みを持つ不動産会社(売買/仲介/賃貸/管理)

 

(業種分類)住宅・不動産

(業種)不動産業(売買/仲介/賃貸/管理)

(所在地)関東地方

(直近売上高)5~10億

(従業員数)10~50名

(譲渡スキーム)株式譲渡

(事業概要)不動産売買、仲介を主体に、不動産賃貸、管理等を手掛ける。

 

〔特徴・強み〕

◇不動産売買ではデベロッパーを中心に販路を構築。
◇不動産仲介では地域密着のネットワークで多彩な情報を提供。
◇不動産管理では約400戸(住居)の管理を行う。

 

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案件No.SS003463
関東の食品宅配事業者。登録会員数約2万人。

 

(業種分類)小売業

(業種)飲食料品小売業

(所在地)関東地方

(直近売上高)5~10億

(従業員数)10~50名

(譲渡スキーム)株式譲渡

(事業概要)食品宅配業

 

〔特徴・強み〕

◇個人宅向けが中心であり、魚介類に強みを持つ。
◇約2万件の会員を保有し、自社ホームページ・カタログ冊子(電話)にて注文受付。
◇加工・パッケージング・配送まで一貫対応。
◇顧客と信頼関係を築いた架電営業・配送スタッフが在籍。
◇会員の若年層拡大施策を進める。

 

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情報提供会社:株式会社ストライク

 

 

 

 

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[M&Aニュース](2020年8月24日〜9月4日)

◇ナガワ<9663>、倉庫・店舗工事の鳥海建工を子会社化、◇土木管理総合試験所<6171>、設計・測量業務の沖縄設計センターを子会社化、◇UUUM<3990>、実験からソーシャルアプリ「FOLLOW ME」事業を取得、◇カナモト<9678>、建機レンタルやガス施設工事などの豪Porter Plant Groupを子会社化、◇ココカラファイン<3098>、ファーマテックから愛知県内の調剤薬局1店舗を取得、◇ティーガイア<3738>、富士通パーソナルズの携帯電話販売事業を286億円で買収、◇サンエー化研<4234>、紙・紙加工品製造のシノムラ化学工業を子会社化、◇ヒノキヤグループ<1413>、有料老人ホーム事業をソラストに譲渡 ほか

 

 

 

ナガワ<9663>、倉庫・店舗工事の鳥海建工を子会社化

ナガワは、倉庫・店舗工事や戸建住宅工事を手がける鳥海建工(埼玉県川口市)の全株式を取得し子会社化することを決めた。ユニットハウス事業に次ぐ第2の柱と位置づけるモジュール・システム建築事業の体制強化が狙い。

取得価額は非公表。取得予定日は2020年10月8日。

土木管理総合試験所<6171>、設計・測量業務の沖縄設計センターを子会社化

土木管理総合試験所は、設計・測量業務の沖縄設計センター(那覇市)の全株式を取得し子会社化した。土質・地質調査試験、非破壊検査試験、環境調査試験など建設コンサルタント分野でシナジー(相乗効果)を見込む。取得価額は非公表。取得日は2020年8月31日。

UUUM<3990>、実験からソーシャルアプリ「FOLLOW ME」事業を取得

UUUMは、実験(東京都港区)が運営するソーシャルアプリ「FOLLOW ME」事業を取得することを決めた。「FOLLOW ME」は俳優、芸人、アイドル、トレーナー、ブロガーなど様々な業界で活躍する著名人が活用し、各自をフォローするファン向けに限定コンテンツを発信している。取得価格、取得日などは非公表。

カナモト<9678>、建機レンタルやガス施設工事などの豪Porter Plant Groupを子会社化

カナモトは豪州子会社を通じて、建設機械レンタルやガス施設工事などを手がける現地Porter Plant Group(ビクトリア州。売上高47億円、税引き前当期純利益9億2000万円、純資産30億円)を構成する持ち株会社と事業会社を合わせて5社の全株式を取得することを決めた。海外事業展開の強化が目的。取得金額は約57億円。取得予定日は2020年9月30日。

ココカラファイン<3098>、ファーマテックから愛知県内の調剤薬局1店舗を取得

ココカラファインは子会社を通じて、調剤薬局経営のファーマテック(東京都新宿区)から愛知県内にある1店舗を1日付で取得した。取得価額は非公表。

ココカラファイン<3098>、大阪府内で調剤薬局1店舗を経営する寿を子会社化

ココカラファインは大阪府内で調剤薬局1店舗を経営する寿(大阪市)の全株式を取得し、1日付で子会社化した。大阪府内での集中出店戦略の一環。寿は2001年に設立。取得価額は非公表。

ティーガイア<3738>、富士通パーソナルズの携帯電話販売事業を286億円で買収

ティーガイアは31日、富士通パーソナルズ(東京都港区)の携帯電話販売事業を買収すると発表した。親会社の富士通が対象事業を継承する新会社を全額出資で9月に設立する。ティーガイアはこの新会社の全株式を286億円で取得する。ティーガイアは携帯販売最大手としてのポジションをさらに強固にする。取得予定日は2020年11月2日。

富士通パーソナルズは1995年に富士通の100%子会社として設立。NTTドコモの一次代理店として全国に国内有数のドコモショップを持つ。富士通パーソナルズの2020年3月期業績は売上高412億円、営業利益10億8000万円、純資産30億3000万円。

サンエー化研<4234>、紙・紙加工品製造のシノムラ化学工業を子会社化

サンエー化研は、紙・紙加工製品を製造するシノムラ化学工業(静岡県袋井市。売上高42億4000万円、経常利益7200万円、純資産22億500万円)の株式51%を取得し子会社化することを決めた。収益性向上と競争力強化につなげる。取得価額は非公表。取得予定日は2020年10月1日。

シノムラ化学は1972年設立で、各種クラフト、クロス基材のポリエチレンラミネート加工、剥離紙の特殊加工などで実績を積んでいる。王子ホールディングス子会社の王子機能材事業推進センター(東京都中央区)が60%、東ソーが40%を出資する。今回、サンエー化研は王子機能材事業センターから株式を取得する。

ヒノキヤグループ<1413>、有料老人ホーム事業をソラストに譲渡

ヒノキヤグループは、介護施設・保育園運営子会社のライフサポート(東京都渋谷区)が手がける介護事業の一部を、ソラストに譲渡することを決めた。事業の選択と集中の一環で、今後は保育事業に経営資源を振り向ける。

ライフサポートが譲渡するのは介護付き有料老人ホーム「悠楽里えどがわ」(東京都江戸川区)、「悠楽里えどがわグリーンパーク」(同)、「悠楽里おおみや」(さいたま市)、「悠楽里さいたま中央」(同)の4施設と、「悠楽里さいたま中央」に併設するデイサービス事業。当該事業の直近売上高は10億5600万円。

介護サービス市場の事業環境は総量規制もあり、特定施設の新規開設による事業拡大が難しい状況にあり、今後も新規開設による事業拡大が見込める保育事業に経営資源を集中することにした。保育事業は都内に53カ所の認可・認証保育所、学童クラブなどを運営する。

譲渡価額は非公表。譲渡予定日は2020年12月1日。

ツカダ・グローバルホールディング<2418>、海外挙式事業のグロリアブライダルジャパンを子会社化

ツカダ・グローバルホールディングスは、海外挙式事業を展開するグロリアブライダルジャパン(東京都新宿区)の全株式を取得し、31日付で子会社化した。新型コロナウイルス感染拡大の影響で海外挙式事業は深刻な打撃を受けているものの、感染症の収束後を見据え、グロリアを傘下に取り込むことにした。グロリアは米ハワイで「セントカタリナサイドチャペル」を運営する。取得価額は非公表。

田中商事<7619>、弱電・防災設備工事のカワツウを子会社化

田中商事は、弱電、防災設備工事のカワツウ(川崎市。売上高6億6600万円、営業利益200万円、純資産1億9100万円)の株式89%を取得し、31日付で子会社化した。田中商事は電気工事材料と電気器具の総合卸売商社。自社の販売網を活用することで、カワツウの事業拡大につながると判断した。カワツウは1995年に設立。取得価額は非公表。

デクセリアルズ、50人~100人を募集する早期転身支援制度を実施へ

デクセリアルズは、50人~100人程度の希望退職者を募る特別早期転身支援制度を実施すると発表した。勤続5年以上で50歳以上の管理職従業員を対象とし、募集期間は9月14日~11月30日(退職日は10月14日~12月31日)。退職加算金を支給し、再就職支援サービスを提供する。

現行の中期経営計画に基づき、効率的で生産性の高い組織体制の構築を進める。同社は旧ソニーケミカルの流れをくみ、車載ディスプレー用やスマホディスプレー用の反射防止フィルム、光ディスク用の紫外線硬化型樹脂などの開発・製造を手がける。

2021年3月期予想は売上高0.5%減の580億円、営業利益13.4%減の40億円、最終利益74.4%減の7億円。

UACJ<5741>、傘下のUACJ物流をセンコーに譲渡

UACJは、傘下のUACJ物流(名古屋市。売上高140億円、営業利益8億5000万円、純資産13億9000万円)の株式66.7%を、物流事業のセンコー(大阪市)に譲渡することを決めた。昨年9月に発表した「構造改革の実行」施策の一つ。UACJ物流はUACJの非鉄金属製品の重量貨物運送や倉庫運営を担ってきた。

譲渡価額は31億100万円。譲渡予定日は2020年12月1日。

BuySell Technologies<7685>、ブランド品買取・オークション事業のダイヤコーポレーションを子会社化

BuySell Technologiesは、ブランド品買取・販売やオークション事業を手がけるダイヤコーポレーション(東京都渋谷区。売上高60億6400万円、営業利益4億400万円、純資産4億3500万円)を完全子会社化することを決めた。リユース品市場の伸びに対応し、事業基盤を拡充する。10月30日付で株式92%を16億6600万円(アドバイザリー費用1000万円を含む)で取得する。そのうえで11月6日付で、残る株式を株式交換で取得する。

ダイヤコーポレーションはブランドバックを中心に年間約20万点を取り扱う古物オークション、百貨店の常設店舗や催事での買い取り、ヴィンテージアイテムの販売を中心としてリユース事業を営む。ダイヤはBuySellへの傘下入りにあたり、もう一つのコスメ(化粧品)事業は会社分割で切り離し、リユース事業を残す形とする。

BuySellは出張訪問買取を中心とし、50歳以上のシニア富裕層を主要顧客とする。自宅整理、遺品整理、生前整理に強みを持つ。

都築電気<8157>、コンタクトセンター向けソリューション事業のコムデザインを子会社化

都築電気は、コンタクトセンター向けのソリューション事業を手がけるコムデザイン(東京都千代田区。売上高12億円、営業利益1億300万円、純資産2億3600万円)の株式を追加取得し、子会社化することを決めた。現在4.7%の持ち株比率を51.5%に引き上げる。コンタクトセンター市場でのプレゼンス(存在感)向上と、AI(人工知能)活用による新サービス創出につなげる。

取得価額は非公表。取得予定日は2020年9月30日。

両社は2017年に資本業務提携し、クラウドCTI(コンピューターと電話を統合する技術)サービス分野の事業拡大に取り組むとともに、コンタクトセンター以外の業務にも応用できる新サービスを視野に自然言語処理の共同開発を進めてきた。

タチエス、特別早期退職優遇制度に232人応募

タチエスは28日、250人を募った特別早期退職優遇制度に232人の応募があったと発表した。45歳以上の一般職・管理職社員を対象に7月20日から8月7日まで募集した。退職日は9月30日。

募集人数は単体ベースの社員の約17%にあたる。電動化、自動化などの「CASE」や次世代移動サービス「MaaS」に代表される自動車産業の変革が進展する中、競争力強化や国内生産体制の抜本的な見直しに向けた人員体制再構築の一環。

2021年3月期第2四半期(7~9月期)に特別損失22億9800万円を計上する。

キユーソー流通システム<9369>、インドネシア物流企業KIAT ANANDAグループ傘下の4社を子会社化

キユーソー流通システムは、インドネシアの低温物流会社KIAT ANANDAグループ傘下で倉庫業や運輸業を手がける4社を子会社化することを決めた。海外事業拡大を成長の牽引役と位置づけ、かねて東南アジアで市場規模が大きいインドネシアに進出機会をうかがっていた。4社が実施する第三者割当増資を引き受けて、それぞれ株式の51%を取得する。取得価額は4社合計で約70億円。取得予定日は2020年9月30日。

KIAT ANANDAグループはインドネシアに5カ所の冷凍・冷蔵庫と車両590台を持ち、とくに低温物流に強みがある。

今回子会社化するのは、倉庫業のKiat Ananda Cold Storage(売上高13億2000万円、営業利益1億1400万円、純資産3億4300万円)、同じく倉庫業のAnanda Solusindo(売上高5億8700万円、営業利益7900万円、純資産1億6800万円)、国内輸送のManggala Kiat Ananda(売上高17億2000万円、営業利益2億3400万円、純資産5億4200万円)、運送・船舶貨物のTrans Kontainer Solusindo(売上高6億5000万円、営業利益△900万円、純資産△5900万円)。

夢展望、15人程度の希望退職者を募集

夢展望は26日、15人程度の希望退職者を募ると発表した。正社員を対象とし、募集期間は9月14日~10月2日。退職日は10月31日付。募集人員は単体ベースの社員のおよそ4分の1にあたる。新型コロナウイルス感染拡大の影響で主力の女性向けアパレル販売が落ち込んでおり、業績立て直しに向けて人員構成の最適化を図る。特別退職金を支給し、再就職支援サービスを提供する。夢展望はRIZAPグループの上場子会社。

Sansan<4443>、デジタルメディア事業のログミーを子会社化

Sansanは、デジタルメディア事業のログミー(東京都渋谷区)の株式70.1%を取得し、子会社化することを決めた。ログミーは2013年設立で、スピーチや対談、記者会見、決算説明会などを全文書き起こし、情報提供するサービスを展開する。Sansanは主力の名刺管理サービス「Sansan」との連携や新サービス創出につなげる。

取得価額は非公表。取得予定日は2020年8月31日。

ユニマット リタイアメント・コミュニティ<9707>、三井住友建設傘下の有料老人ホーム運営のアメニティーライフを子会社化

ユニマット リタイアメント・コミュニティは、三井住友建設傘下で有料老人ホーム運営のアメニティーライフ(東京都八王子市。売上高6億1300万円、営業利益△1600万円、純資産6億8300万円)の全株式を取得し子会社化することを決めた。ユニマットはデイサービス、ショートステイ、グループホーム、有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅などを中心に全国309拠点、640事業所を展開し、アメニティーライフがある八王子市内にも各種施設を持ち、シナジー(相乗効果)を見込む。

アメニティーライフは1989年に設立。八王子市内に定員200人・150室の有料老人ホームを運営する。

取得価額は非公表。取得予定日は2021年2月1日。

テラ<2191>、新型コロナ治療薬開発のメキシコPrometheus. Biotechを子会社化

テラは、新型コロナウイルス感染症治療薬の開発に取り組むメキシコPrometheus. Biotech Corporation.の株式51%を取得し、26日付で子会社化した。Prometheus. Biotechは先端医療支援事業を手がける米系のセネジェニックス・ジャパン(東京都中央区)が7月に全額出資でメキシコに設立した子会社。取得価額は1億5300万円。

テラは今年4月、セネジェニックス・ジャパンと新型コロナウイルス感染症に対する間葉系幹細胞を用いた治療法の開発に関する共同研究契約を締結。これに基づき、メキシコで新型コロナ治療薬の臨床試験を進めている。現在、現地イダルゴ州での薬事申請を済ませたところという。

大戸屋TOB、コロワイドが期間延長と買付予定数の下限を引き下げ

定食「大戸屋ごはん処」を展開する大戸屋ホールディングスに対してTOB(株式公開買い付け)を実施中のコロワイドは25日、同日までとしていた買付期間を9月8日まで10営業日延長すると発表した。併せて買付予定数の下限を5%引き下げ、20.84%(現保有分19.16%と合わせた所有割合は40.0%)とした。TOB成立の確度を上げるのが狙いと見られる。買付予定数の上限32.16%(同51.32%)、1株当たり3081円とする買付価格は変更していない。

25日の大戸屋株価の終値は2700円で、買付価格と400円近い開きがある。本来なら、多くの株主にとってTOBに応募した方が有利だが、今回の一連の買付条件変更には思うように買い付けが進んでいない事情がありそうだ。

コロワイドによるTOBに対して大戸屋HDは反対を表明。これにより、敵対的TOBに発展したが、大戸屋において約6割を占めるとされる個人株主の動向がTOBの成否を左右するとして注視されている。

コロワイドは今回、買付予定数の下限を40%に引き下げたが、所有割合が議決権ベースで40%以上50%以下であっても取締役派遣などを通じて実質的に支配が進んでいると判断される場合には、大戸屋を連結子会社として取り扱うことができる。

芝浦機械、希望退職者募集に252人応募

芝浦機械は25日、希望退職者募集に252人の応募があったと発表した。子会社を含めて社員全員を対象に3月中旬から7月29日まで募った。200人~300人程度としていた募集人員は最大で全社(約3300人)の1割近くに相当。退職日は4月1日~9月30日。所定の退職金に特別加算金を上乗せして支給し、再就職支援サービスを提供する。

芝浦機械(4月1日に東芝機械から社名変更)は東芝グループからの離脱に伴い、今年2月に「新生『芝浦機械』に向けた経営改革プラン」を策定。この中で、旧村上ファンド系投資会社から敵対的TOB(株式公開買い付け)を受けたことも踏まえ、株主価値向上を重点施策に掲げ、人員規模の適正化をその一つに盛り込んだ。

ディー・ディー・エス<3782>、指紋センサー開発のシンガポール MICROMETRICS TECHNOLOGIESを子会社化

ディー・ディー・エスは、光学式指紋センサーを開発するシンガポールMICROMETRICS TECHNOLOGIES PTE. LTD. (MMT。売上高-、純資産△1億6700万円)の株式55%を取得し子会社化することを決めた。スマートフォン向けに成長が期待される指紋認証アルゴリズム搭載センサー事業の早期立ち上げを目指す。ディー・ディー・エスとMMTは2017年から技術開発に関して協業関係にあった。

ディー・ディー・エスは指紋など生体認証ソフト・装置の開発を主力とする。

取得価額は4億7848万円。取得予定日は2020年8月28日。

オークネット<3964>、アドベンチャー傘下で海外ブランド輸入販売のギャラリーレアを子会社化

オークネットは、アドベンチャー傘下で海外ブランド衣料雑貨、服飾雑貨の輸入販売などを手がけるギャラリーレア(大阪市。売上高55億円、営業利益7500万円、純資産2億8400万円)の全株式を取得し子会社化することを決めた。オークネットグループとして収益力向上や競争力強化に役立つと判断した。取得価額は5億9900万円。譲渡予定日は2020年9月15日。

ギャラリーレアは2004年に設立し、実店舗でのブランド品の買い取りや小売り、自社サイトや各種ショッピングサイトを通じた国内外へのブランド品販売、BtoBのオークション運営を手がける。

イード<6038>、プロトコーポレーションから趣味・資格の情報検索サイト「グ―スクール」を取得

イードは、プロトコーポレーションが運営する趣味・資格のスクール情報検索サイト「グ―スクール」事業を取得することを決めた。Webメディア運営などのコンテンツマーケティングプラットフォーム事業の規模・領域拡大の一環。当該事業の直近売上高は1億500万円。取得価額は500万円。取得予定日は2020年10月1日。

ユニバンス、特別転進制度に130人が応募

ユニバンスは24日、希望退職者を募る特別転進制度に130人の応募があったと発表した。3月から7月末まで200人程度(退職日は4月末~9月末)を募集した。応募は予定人数を下回ったが、有期契約社員約100人の契約期間満了により、合計230人となり、人員規模適正化は達成する見込みとしている。所定の退職金に特別加算金を上乗せして支給し、再就職支援サービスを提供する。

ユニバンスは自動車用トランスファー、トランスミッション、EV(電気自動車)・HEV(ハイブリッド車)用ギアボックス、農機・建機用減速機などを主力とする。

2020年3月期は売上高6.1%減の562億円、営業赤字5億1700万円(前期は16億4600万円の黒字)、最終赤字35億6200万円(同9億3500万円の黒字)だった。米中貿易摩擦に伴う景気減速で自動車向け需要が落ち込み、新型コロナウイルス感染拡大の影響も重なり、業績が悪化したのを受け、国内拠点の人員規模適正化を打ち出した。

バルテス<4442>、ソフト開発のアール・エス・アールを子会社化

バルテスは、ソフトウエア開発のアール・エス・アール(広島市。売上高2億6900万円、営業利益1080万円、純資産5540万円)の全株式を取得し子会社化することを決めた。バルテスはソフトウエアのテスト・品質保証サービスを主力とする。これまで未開拓だった広島エリアでの事業拡大につなげる。

アール・エス・アールは2001年設立で、Webアプリケーション開発、EC(電子商取引)サイト開発・運用保守などソフト開発全般で実績を積んできた。

バルテスはソフトウエアテスト領域を主力事業とし、年間1800件以上のプロジェクトを手がけている。ソフトウエアテストに関する国際的な資格認定機関である「ISTQB」の最高位ランクの「Global Partner」に日本で唯一認定されている。

取得価額は非公表。取得予定日は2020年8月31日。

武田薬品工業<4502>、一般医薬品の武田コンシューマーヘルスケアを米投資ファンドのブラックストーンに売却

武田薬品工業は24日、ビタミン剤「アリナミン」や総合感冒薬「ベンザ」などの一般医薬品を手がける子会社の武田コンシューマーヘルスケア(東京都千代田区。売上高608億円、営業利益128億円、純資産102億円)の全株式を、米投資ファンドのブラックストーンに譲渡すると発表した。譲渡価額は企業価値2420億円に純有利子負債などを加味し、最終的に確定させる。譲渡完了は2021年3月31日を見込む。

武田は収益性の高い医療用医薬品事業に経営資源を集中し、消化器系疾患、希少疾患、オンコロジー(がん)など5つの重点領域で革新的な医薬品の創出にアクセルを踏み込んでおり、非中核の一般薬(大衆薬)事業を切り離すことにした。

株式譲渡先はブラックストーンが設立したOscarA-Co(東京都千代田区)。

 

 

 

 

情報提供:株式会社ストライク

[Batonz research](Sep.2020 Vol.1 )

 

 

〈目次〉

●大型M&Aが激減する一方、中小M&Aは過去最高に

●第三者承継支援総合パッケージの発表と小規模M&A市場の拡大

●中小M&Aガイドラインで初めてM&Aプラットフォーマーの利用推進 を明記

●経営資源引継ぎ補助金制度の創設

●スモールM&A市場の出現と拡大

●M&Aニーズの変化に対応できるかが鍵に

 

 

 

大型M&Aが激減する一方、中小M&Aは過去最高に

世界的な新型コロナウイルス感染症の影響を受けて、クロスボーダーを中心とする大型M&Aが大幅に減少する一方、中小規模のM&Aは急激に増加している実態が各種調査会社の調査結果で明らかとなった。

 

調査会社によると日本の2020年上半期(1~6月期)のM&A総額は2兆9111億円にとどまり、これは半期ベースで実に16年半ぶりの低水準となった。また、金融データ・プロバイダーであるリフィニティブの調査でも同様に、日本関連M&A公表案件は5.1兆円と前年同期から42%もの減少となり、これは2013年以降最低の水準となっている。この記録的な減少はクロスボーダーや業界再編に絡む1,000億円超の大型M&A案件の大幅な減少がその主要因である。例えばリフィニティブの調査では大型M&A案件は件数ベースで前年比75%あまり減少し、僅か5件、取引金額ベースでも1.3兆円と実に72.7%の減少という記録的な減少となった。国際的な大型M&Aは新型コロナウイルス感染症の影響をもっとも大きく受けた分野であるといえ、ワクチンの開発等、劇的な状況改善が進まない限り、その回復には相当の時間を要するものと思われる。

 

しかし注目すべきは、大型案件が激減する一方、M&A全体の案件数は2,178件と過去最多を記録したことであろう。この背景としてここ十年来に渡って指摘されてきた日本の中小企業の深刻な事業承継問題が存在するが、中でも新型コロナウイルス感染症の拡大をきっかけに、中小企業経営者が一気に同族承継からM&Aに舵を切ったことが大きな要因であると推定される。バトンズでは新型コロナウイルス感染症の拡大がどのように中小企業経営者の意思決定に影響を及ぼしたのかについて、2020年6月に全国の中小企業経営者を対象とした調査を実施した。この調査は緊急事態宣言発令前の2020年2月以前と比べ経営者の買収意向と売却意向がどのように変化したのかを比較したもので、その結果買収意向については買収に前向きな経営者が64.8%に上り緊急事態宣言前より7.2ポイント増、売却意向については前向きに考えている経営者が60.3%の9ポイント増といずれも大幅に上昇したとの結果となった。

 

 

 

また、買い手のみの調査であるが、事業承継M&Aプラットフォームであるビズリーチ・サクシードが買い手とM&Aアドバイザー向けに行ったアンケートでも、今後M&Aが活性化するという回答が97%を占めるなど、新型コロナウイルス感染症の拡大が大型M&Aとは真逆に中小M&Aの急拡大を後押しする結果となっていることが窺える。

 

 

出典:「コロナ禍の影響下におけるM&Aに関するアンケート」(事業承継M&Aプラットフォーム「ビズリーチ・サクシード」調べ)https://br-succeed.jp/content/news/pr/post-1501

 

 

第三者承継支援総合パッケージの発表と小規模M&A市場の拡大

こうした中小M&A市場の急拡大を後押しした要因の一つに、国の事業承継政策の大転換があげられる。従来、国は数度にわたる事業承継税制の改定など主として親族内承継の推進に力を入れてきた。しかし近年親族外の第三者への承継(M&A)が急増し、中小企業におい ても事業承継の主流を占めつつあるのが実態だ。 例えば、全国の都道府県に設置された国の委託事業である事業引継ぎ支援センターに寄せられた事業承継に関する相談は過去最多の11,514 社となり始めて1万件を突破した。実際の成約件数は前年比27%増の1,176 件であったが、実にその3分の2以上を第三者承継 (M&A)が占める。また、成約件数の内訳を見ると譲渡側の61.1%が売上1億円以下の小規模企業となっており、我が国の企業の87%を占める小規模企業の存続を考えると、小規模事業者の第三者承継(スモールM&A)の推進が特に政策的に重要なテーマとなりつつあると考えられよう。

 

 

 

こうした状況を踏まえ2019年12月に経済産業省は10年間の集中実施政策として「第三者承継支援総合パッケージ」を発表した。これは年間6万者、10年で60万者の事業者に対し、第三者承継の実現を目指すというもので ある。全国の事業引継ぎ支援センターの成約数が親族承継も含めて年間1000件あまり、民間企業 のM&A成約数を併せても数千件と推定されている中、これは極めて野心的な計画であると言える。

 

 

 

 

中小M&Aガイドラインで初めてM&Aプラットフォーマーの利用推進を明記

こうした状況下、中小企業庁は2020年5月、2015年3月に策定された第三者承継推進の嚆矢とされるM&A「事業引継ぎガイドライン」を全面改訂し、新たに「中小M&Aガイドライ ン」を策定した。 同ガイドラインではM&Aのプロセスや手数料の考え方等を具体的に提示したのに加え、M&A専門業者に対しても行動指針を示すなど、中小M&Aマーケットの拡大という現状を反映した個別具体的な内容となっているが、その中で新たに付け加えられた大きな変更点の一つとして「M&Aプラットフォーマー」の利用が挙げられる。 M&Aプラットフォーマーとはバトンズに代表される売り手と買い手のマッチングサイトに、様々な専門家による仲介サービスを内包したインターネットを活用した新たな形態のM&Aサービスの総称である。 ここ数年で登場したこの新しいM&A支援機関の利用をガイドラインに織り込むため、事業引継ぎガイドライン改訂検討会委員には従来の学識者や民間大手M&A&仲介会社に加えて、バトンズCEOである大山 敬義をはじめとするM&Aプラットフォーマーも名を連ねて論 議が行われた。その結果特に小規模な事業者について、「M&Aプラットフォームの活用を積極的に検討す ることが望まれる」という文言が明記され、我が国の第三者承継推進政策の一翼を担うもの として大きく注目されるに至ったのである。

 

 

 

 

経営資源引継ぎ補助金制度の創設

2月より本格的に拡大を始めた新型コロナウイルス感染症が中小企業に与える影響を憂慮 し、迅速な第三者承継を後押しすべく、中小企業庁は2020年7月に「経営資源引継ぎ補助 金」の受付を開始した。これは新型コロナウイルス感染症の影響で廃業が懸念される中小企 業の事業再編・事業統合等に伴う経費の一部を補助する新設の補助金であるが、特筆すべき は新型コロナウイルス感染症等の影響により対面での交渉が難しいという判断から、新たなにM&Aプラットフォームのシステム利用料についても補助金の対象となったことが挙げられる。 従前、事業承継関係の補助金としては「事業承継補助金」が存在したが、その採択件数は1 18件、採択率は6割程度に過ぎなかった。 しかし経営資源引継ぎ補助金は36億円の予算から950件の採択を目指しているとされる。こうした政府による第三者承継推進政策は、コロナ禍での中小企業経営者のM&A検討意欲の高まりとともに、中小、小規模企業M&Aの拡大の大きな後押しとなると考えられる。

 

 

スモールM&A市場の出現と拡大

こうしたM&Aプラットフォームの利用拡大によって、もう一つ大きく注目されるのが、従来の起業の代替手段として、サラリーマンなどの個人がM&Aで会社を買って経営していく事例が数多く生まれたことである。 バトンズでも前身である「@net(アットネット)」において、早くも2013年3月に東京都 内の歯科医院を個人の勤務医が承継した事例が生まれているが、この数年は個人を買い手と したスモールM&Aが多数成約している。この全く新しい市場は従来の仲介会社のクローズドな市場では到底起こり得なかったものであり、まさにインターネットによるM&Aプラットフォームの普及によって新たに誕生した 市場であるといえよう。新たに生まれた膨大な買い手の出現は127万者とも言われる後継者難によって廃業が懸念される事業者の第三者承継に大きな光明をもたらすものと期待される所以である。もちろんM&Aプラットフォームの利用価値はこうしたスモールM&Aに留まらず、今後更に 拡大していくことが考えられる。他の産業分野で見られた人的なリソースに依存したローカ ルモデルがI T化されることで生産性が高まり、同時に飛躍的な量的拡大を果たしたことと 同様の出来事がM&A業界において繰り返されることは十分考えられることである。

 

米国などのI T先進国では既に小規模企業のM&Aの大半はネット取引となり、最大手のプラ ットフォームでは常時7万件以上の案件が閲覧可能なほどであるが、同様に我が国においても将来的には年商5億円以下の市場で行われるM&Aの大部分が、人の力のみで仲介を行うモ デルからインターネット上でのマッチングに切り替わる可能性がある。今後M&Aプラットフォームの普及により、米国と同様の量の経済が動く状況となれば、経 済産業省が目指す年間6万者の第三者承継の実現も現実的なものとなってくるだろう。

 

 

M&Aニーズの変化に対応できるかが鍵に

先に触れたバトンズの調査において、会社・事業の売却を実施、検討した理由のトップ3は 経営不振が53.7%、将来不安が46.3%、事業再編が46.3%であった。 それに次ぐ形で後継者不在が31.3%となっており、従来中小M&Aの主要因と考えられてきた事業承継問題より、現実的な経営不安が売却の主要素として挙げられるようになったことは 注目に値する出来事である。つまり既にM&Aは将来の関心事ではなく、直近に差し迫った経営課題である、ということ なのである。一方会社・事業の買収を実施、検討した理由として挙げられたのは市場変化への対応のためが70.8%、自社のウィークポイントの補強のためが62.5%で、従来不動のトップであった事業拡大のためが54.2%で第3位に後退するなど、まさにコロナという突然の状況の変化に対 する対応策としてM&Aが検討されているという状況がわかる。

 

このことはM&Aサービスを提供する専門家、事業者に対して重要視する点は何かという質問の結果にも現れている。これによれば、手数料が安いことが45.0%、専門家によるサポートが受けられることが43.2%とあり、ここまでは以前とそう大きく変わらないものの、新たに成約までのスピードが 早いことをあげたのが33.3%と3位につける結果となっている。

 

コロナ以前のM&A業界の主要テーマは俗に2025年問題と呼ばれる中小企業の事業承継問題の解決にあった。しかし現在では売り手買い手ともに、コロナによって激変したマーケットに、迅速に適応するための手段としてM&Aを検討しており、各種M&Aの専門家、仲介会社 は大きく変化した顧客のニーズに的確に対応することが望まれている。

 

M&Aプラットフォームの普及はこうしたニーズに合致するもので、今後更に幅広い層に活用されることになると考えられるが、一方で専門知識を持たない素人の相対交渉によるトラブルの多発や、ネットに精通した専門家、特に地方における担い手の少なさなど課題も多い。今後多種多様な選択肢の中から迅速にマッチングが可能であるというネットの特性を生かしつつも、M&A専門家の介在により、いかにトラブルなく安全なM&Aを可能にできるかが、 日本においてもIT先進国の米国などと同様にM&Aプラットフォームが本格的な普及に至るかどうかの試金石となるだろう。

 

 

 

 

情報提供元:株式会社バトンズ

[中小企業のM&A・事業承継 Q&A解説]

第4回:公的機関の活用(事業引継ぎ支援センター)

~事業引継ぎ支援センターとは?どのような相談ができる?~

 

[解説]

宇野俊英(M&Aコンサルタント)

 

 

 

 

 


[質問(Q)]

M&Aを検討するにあたり、相手先探しを支援してくれる公的機関として事業引継ぎ支援センター(以下、「センター」という)があると聞きましたが、よくわかりません。概要とどのような支援をしてくれるのか教えてください。また、センターに相談すると費用はいくらぐらいかかりますか。

 

 

[回答(A)]

センターは、後継者不在の中小企業・小規模事業承継をM&A等を活用して支援する目的である国の事業です。現在47 都道府県に設置されています。センターは、親族・従業員承継、再生、創業、廃業等事業承継に関連した相談やトラブルについても幅広く相談に乗り、対応しています。また、後継者不在の企業に対するマッチング支援を実施しています(相談料は無料です)。

 

 

 

1.センターの概要


センターは産業競争力強化法に基づき実施されている国の事業です。2011年から東京、大阪に開設されて以降、後継者問題に課題等を抱える中小企業経営者・小規模事業者に対して事業承継全般のご相談を受け、事業引継ぎ支援(M&A、役員・従業員承継)を実施しています。

 

また、地元の金融機関、士業と連携して、マッチングについて進捗支援を行うほか、登録機関等(※)にはノンネームデータベース(以下、「NNDB」という)を通じて案件情報を提供して相手先探しを促進しています。また、M&Aの経験が少ない士業の育成も実施しているセンターがあります。2018年度には全国で相談者数11,677 者、成約923 組の支援をしました。

 

 

(※) 登録機関は登録民間支援機関とマッチングコーディネーター(以下「MC」という)の総称。それぞれ各センターに登録した支援者を言います。

 

「登録民間支援機関」: 金融機関や民間仲介会社等がM&Aをフルサポートできる支援者
「MC」:士業法人等小規模マッチングに取り組む支援者

 

 

2.特徴


①立ち位置
公的機関ですので、公平、中立、秘密厳守で相談を受けています。

 

②受けられる相談
以下のようなご相談も幅広く受け付けています。
・ 事業承継について悩んでいる経営者が何から考えてよいのかわからない
・ 役員・従業員に事業承継したいがどのようにしたらよいかわからない
・ M&Aで相手先を探したい(譲渡、譲受両方)
・ 事業を成長させるために会社を引き継ぎたい(譲受)
・ 相手先と基本的な合意があるがどのように進めてよいかわからない
・ 後継者が不在なので廃業したい
等々です。

 

③ 主たる支援対象
・ 支援企業規模は小規模企業が中心

図1 にあるとおり、成約している譲渡側事業者の約60%が売上高1億円以下の事業者です。従業規模で見ても45%が従業員数1~5名以下の事業者となっています。

 

 

 

3.支援方法


支援方法は主に3 つの段階に分かれています。

 

①一次対応(相談)~方針決定まで
面談を通じて相談者の現状やご要望の相談を受け、方針決定まで助言をします。

 

②二次対応(登録機関に橋渡し)
M&A 方針の決定した候補先探索が必要な譲渡希望事業者、譲受希望事業者をセンターに登録している登録機関に橋渡しして支援する方法です(センターの相談は無料ですが、登録機関との契約は民間の契約となり、登録機関の費用は有料です)。

 

③三次対応(センター自ら引継ぎ支援)
相手が既に決定している相談者や、二次対応で相手先が見つからなかった相談者、後継者人材バンク(廃業予定の事業者と創業希望者をマッチングする支援手法)でセンターがお手伝いする方法です。主に、マッチングコーディネーターとして士業の皆様と連携支援しています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

新型コロナウイルス感染症に対する企業の意識調査(2020年8月公開分)

 

 

 

◇近畿地区「新型コロナウイルス感染症に対する企業の意識調査」(2020年7月)

企業の85.4%が「業績にマイナス」も、3カ月連続で減少
~ 2020年7月の売り上げ見込みは、前年同月比で平均85.3% ~

※詳細はこちら

 

◇神奈川県「新型コロナウイルス感染症に対する企業の意識調査」(2020年7月)

約7割の企業で、既に業績にマイナスの影響
~ 外出自粛の影響が色濃い業種で、売り上げ確保が厳しい状態続く ~

※詳細はこちら

 

◇四国地区「新型コロナウイルス感染症に対する企業の意識調査」(2020年7月)

業績への影響、四国企業の6割強で既にマイナスの影響
~7月の売り上げ、四国企業の約6割が前年同月比減収を見込む~

※詳細はこちら

 

◇熊本県「新型コロナウイルス感染症に対する企業の意識調査」(2020年7月)

企業の83.8%が「業績にマイナス」、4カ月連続で8割を超える
~ 外出自粛の影響が色濃い業種で売り上げ確保が厳しい状態続く ~

※詳細はこちら

 

◇沖縄県「新型コロナウイルス感染症に対する企業の意識調査」(2020年7月)

企業の70.2%が「減収」、先行き不透明感ぬぐえず
~従業員の健康や感染症予防対策を優先しながら企業活動の再開を目指す~

※詳細はこちら

 

 

 

 

 

 

情報提供元(出所):株式会社帝国データバンク

[解説ニュース]

円滑な事業承継のための種類株式の活用

 

〈解説〉

税理士法人タクトコンサルティング(吉濱 康倫/税理士)

 

 

[関連解説]

■事業承継税制を複数の後継者に適用する場合の留意点

■贈与税の納税猶予の適用を受ける贈与により非上場株式を取得した者のみなし配当課税の特例

 

 

 

1.種類株式とは


会社法では「株式会社は、株主を、その有する株式の内容及び数に応じて、平等に取り扱わなければならない。」(会社法109条1項)としており、株式一株の権利内容は、原則として同じです。しかし、株式会社は異なる定めをした内容の異なる二以上の種類の株式を発行するように、定款で定めることができます(会社法108)。これを「種類株式」といいます。

 

 

2.種類株式の活用例


(1)議決権制限株式

議決権制限株式とは、株主総会における議決権を行使することができる事項について、他の株式とは異なる定めを置く株式です(会社法108条1項3号)。事業承継における問題として、相続による株式の分散により議決権が分散するため、後継者が過半数の議決権を確保することが困難になるという点が考えられます。これを解消するため、オーナー経営者が保有する普通株式の一部を完全無議決権株式に転換しておき、後継者に普通株式を、後継者以外の相続人には完全無議決権株式を相続させることで、株式は分散しても議決権を分散させないことが可能です。

 

(2)取得条項付株式

取得条項付株式は、株式を発行する会社が一定の事由が生じたことを条件として、その株式を取得できるという株式です(会社法108条1項6号)。取得条項付株式の対価は金銭に限らず、社債や他の種類株式など幅広い設定ができます。これを利用して、議決権制限株式に取得条項をつけておき、いつでも普通株式に転換できるようにしておくことも可能です。例えば、複数の後継者候補に議決権制限付かつ取得条項付株式を贈与しておき、後継者が確定した時点で普通株式に転換することで、後継者のみが議決権を手にすることができます。また、後継者以外の者に相続させる株式を取得条項付株式にしておけば、分配可能額((3)参照)の範囲で会社は自由にその株式を買い取ることが可能であり、少数株主対策の心配が無くなります。

 

(3)分配可能額

分配可能額とは、簡単に言うと、株式会社の最終の貸借対照表の純資産の部に計上されているその他資本剰余金の額とその他利益剰余金の合計額から、自己株式の帳簿価額等及び当期に既に分配した価額をマイナスした残額です(会社法461条2項)。また、株式会社が期中に臨時決算手続き(会社法441条)を行うことにより、前期末から配当基準日までの期間分の利益を分配可能額に反映させ、当該利益分だけ分配可能額を増加させることができます(会社法461条2項2号)。
株式会社が自己株式の買い取りを行う場合には、自己株式の取得の対価の総額が、分配可能額を超えることができないという規制(財源規制)があります(会社法461条1項)。この財源規制に違反して、株式会社が自己株式の買い取りをした場合であっても、原則としてその買い取り自体は無効にはなりません。しかし、取得条項付株式が自己株式として買い取られる場合(会社法155条1号)は、これらの財産の帳簿価額が分配可能額を超えているときには、取得条項付株式の取得が無効になります。(会社法170条5項)

 

 

3.種類株式を発行するための手続き


種類株式を発行するには、種類株式の内容及び発行する数を定款に定めて登記しなければなりません。(会社法108条2項、911条3項7号)。定款に種類株式に関する定めがない場合は定款を変更する必要があります。定款を変更するためには、株主総会の特別決議(議決権を行使できる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した株主の議決権の3分の2以上の多数)が必要です(会社法309条2項11号、466条)。

 

 

4.種類株式の相続税法上の評価


財産評価基本通達(以下「財基通」)には種類株式の類型ごとに評価方法を定めている規定はありません。平成30年版財基通逐条解説704頁~705頁の「[参考2]種類株式の評価方法」では、「多種多様な種類株式については、権利内容や転換条件など様々な要因によってその発行価格や時価が決まってくると考えられる。しかもこのような種類株式については、社会一般における評価方法も確立されていないうえに、権利内容の組み合わせによっては、相当数の種類の株式の発行が可能であるから、その一般的な評価方法をあらかじめ定めておくことは困難である。したがって、財基通に定める評価方法がなじめないような種類株式については、個別に権利内容等を判断して評価する」という趣旨の考え方が示されています。その中で、中小企業の事業承継目的で活用が想定される特定の種類株式の評価方法は、国税庁から公表されている「相続等により取得した種類株式の評価について」や質疑応答事例において紹介されています。

 

 

 

 

税理士法人タクトコンサルティング 「TACTニュース」(2020/08/31)より転載

[税理士のための税務事例解説]

事業承継やM&Aに関する税務事例について、国税OB税理士が解説する事例研究シリーズです。

今回は、「従業員である相続人に退職金を支払った場合の債務控除の可否」についてです。

 

[関連解説]

■【Q&A】解散に際して支払われる役員退職金の課税関係

■【Q&A】個人事業者が事業を廃止した場合の事業用資産に係る課税関係

 

 

 


[質問]

被相続人甲は、2020年2月に死亡しました。

 

相続人は甲の事業を承継しないこととし、甲が雇用していた全ての従業員を解雇し、退職金を支払います。甲が雇用していた従業員の中には、甲の相続人である乙も含まれています。

 

被相続人の死亡によって事業を廃止し、従業員を解雇していることから、乙以外の従業員に対して支払う退職金については、甲の相続税申告に当たって債務控除の対象になると考えます。

 

しかし、乙に対して支払う退職金については、相続税法第13条の規定により債務控除の対象とならないとの認識でよいでしょうか。

 

 

[回答]

個人事業者が死亡し、その事業を相続人が承継せず廃業したときに、当該個人事業者が雇用していた従業員に対して退職金を支払った場合、その退職金は相続税の債務控除の対象になる旨の質疑応答事例が国税庁ホームページに掲載されていますが、これはご承知のことかと思います。

 

この質疑応答事例によると、「その支給された退職金は、被相続人の生前事業を営む期間中の労務の対価であり、被相続人の債務として確実なものであると認められる」との考え方の下、債務控除することが可能との取扱いを明らかにしています。

 

ところで、ご質問の事例の乙への退職金については、乙が被相続人甲の相続人であることから、相続税法第13条の規定により債務控除の対象とならない、とのご見解のようですが、債務控除の対象になるとする考え方は、上記のとおり、被相続人が事業を営んでいる間の労務の対価であるかどうかがポイントですから、乙が実際に従業員として勤務した事実があれば、相続人(家族従業員)であるか否かは関係しませんし、相続税法第13条の規定をみても、相続人に対する債務を債務控除の対象から除外する規定もありません。

 

確かに、家族・相続人に対する支払いや債務ということだと、例えば、所得税法第56条のように、生計を一にする親族に労務の対価等を支払った場合は必要経費に算入しないという規定がありますし、民法上、相続人が積極財産と債務を承継した場合、混同により債務が消滅するということもありますので、第三者の場合とは異なるところがあるのではないかという疑問も生じるかも知れませんが、こと相続税の債務控除については、相続人乙に勤務実績があって、他の従業員と同様の基準等により退職金が支払われる限り、債務控除の対象にして差し支えないものと考えます。

 

 

 

 

税理士懇話会事例データベースより

(2020年6月3日回答)

 

 

 

 

[ご注意]

掲載情報は、解説作成時点の情報です。また、例示された質問のみを前提とした解説となります。類似する全ての事案に当てはまるものではございません。個々の事案につきましては、ご自身の判断と責任のもとで適法性・有用性を考慮してご利用いただくようお願い申し上げます。

 

 

 

 


[わかりやすい‼ はじめて学ぶM&A  誌上セミナー]  

第3回:M&A手法の選び方

~必要資金、事務手続の煩雑さ、買収リスクを伴うか~

 

〈解説〉

公認会計士・税理士 清水寛司

 

〈目次〉

1.必要資金

2.事務手続の煩雑さ

3.買収リスクを伴うか

 

 

▷第1回:なぜ「会社を買う」のか~買う側の理由、売る側の理由~

▷第2回:どのようにM&Aを行うのか~株式の売買(相対取引、TOB、第三者割当増資)、合併、事業譲渡、会社分割、株式交換・株式移転~

▷第4回:M&Aの流れ①(計画段階)~M&Aの流れ(全体像、戦略は明確に、ターゲット会社を見つけよう)~

 

 

M&A手法の選び方

前回の解説にて多くのM&A手法を見てきました。では、実際にどの手法を選べばよいのでしょうか。まず「必要資金」「事務手続の煩雑さ」「買収リスク」の観点を考慮して自社の戦略を決定し、交渉事の世界に入っていく形となります。

 

 

1. 必要資金

M&Aを行う際、必要となる資金の観点は非常に重要ですね、まず大きい点として、対価を現金ではなく自社株式とすれば現金を用意する必要はありません。これは交渉事の世界ですが、事業を売る側が現金を必要としていない場合は、自社株による売買が可能となります。合併、会社分割、株式交換・株式移転が株式対価とすることが可能な手続です。

 

また、実際にかかるコストを見逃すことはできません。紹介会社や調査会社、アドバイザーへの事務手数料等、M&Aでは多くのコストがかかってきます。必要となる税金資金も異なります。課税の繰延によりその時点では税金がかからないケースもありますし、コスト負担は案件ごと・手法ごとにばらばらのため、M&Aの状況に照らし合わせてコストを考える必要があります。

 

 

2. 事務手続の煩雑さ

手法によって事務手続の煩雑さは異なりますが、株式売買であれば売買契約のみで済むため、比較的楽に終わります。

 

合併や会社分割、株式交換・株式移転は原則として株主総会特別決議が必要となります。合併や会社分割では債権者に対する異議申立の機会も必要です。

 

事業譲渡ですと資産負債を個別に売買するため、各契約・登記・許認可関係を一から行う必要があります。事業規模が膨らむほど手続は煩雑になります。また、重要な譲渡等一定の場合には株主総会の特別決議が必要です。

 

 

3. 買収リスクを伴うか

個々の資産にはリスクを伴わないものの、会社や事業全体を譲り受ける場合は一定のリスクを伴うことになります。思わぬ訴訟を抱えていたり、思わぬ簿外負債を抱えていたり、事業単位をまるっと買った場合には思わぬリスクがついてくるのです。

 

当然リスクを減らすよう表明保証やデューデリジェンス等様々な方策がM&Aの過程で取られますが、最終的にリスクを引き受けるのは買い手となります。

 

事業譲渡であれば個々の資産の承継となるので、事務手続は非常に煩雑であるものの、思わぬリスクを取らずに済むことができます。

 

 

あとは交渉事の世界となります。相手がどのような形を望むのか、自社として望ましい展開はどれかを考慮に入れ、最終的な着地を目指していきます。

 

 

 

 

[Point]

M&Aには多くの手法があり、自社と相手会社の思惑に合わせた手法を選択することが可能!

 

 

 

 

 

前回と今回でM&Aの第一歩として、「なぜM&Aが行われるか」「M&Aにはどのような方法があるか」を見ていきました。漠然としたM&Aに対するイメージが、少しでも具体的になっていただけると嬉しいです。

 

 

 

 

 

 

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「基本合意書」ひな形

 

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「事業譲渡契約書」ひな形

 

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「挨拶状(顧問先への周知・挨拶)」ひな形

 

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≪顧問先への周知・挨拶≫

顧問先への周知は、その顧問先と毎月顔を合わせているのか、年に一度程度の接触なのかといった関与状況にもよりますが、口頭で説明してから挨拶状等の案内を出した方が顧問先に安心してもらえます。挨拶状の発送のタイミングとしては、契約書の締結等もあるので統合前の1か月~ 2か月前に出すケースが多いです。

 

 

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「請求のご案内(契約書の締結及び集金方法の確認)」ひな形

 

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≪契約書の締結及び集金方法の確認≫
事業譲渡の場合には、新たに顧問先と顧問契約書を締結することとなりますので、従前の契約内容と新たに締結する契約内容の違いを説明する必要があります。契約書を締結せず、口頭だけの契約をしている場合もありますが、業務範囲や報酬等の確認を契約書として残すことは重要です。

 

集金方法についても、口座振替(代行会社の利用を含む。)、振込、現金や小切手、カードなどを確認し、口座振替の場合には、振込先の変更手続きが必要となります。なお、今後のことを考えると口座振替にし、集金方法をできるだけ統一しておく方が事務効率化がはかれます。

 

また、個人の場合には、報酬について源泉徴収が必要となりますが、法人となった場合には源泉徴収が不要となりますので、振替金額が個人の場合と異なることにご注意ください。統合前の未収金については、従前分として引き継がないケースがほとんどですが、契約時に整理しておくことが重要です。

 

 

 

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[M&Aニュース](2020年8月11日〜8月21日)

◇ASIAN STAR<8946>、筆頭株主企業傘下の中国不動産3社を子会社化、◇不二製油グループ本社<2607>、インドのクリーム製品製造子会社3F FUJI FOODSをシンガポール社に譲渡、◇ズーム<6694>、音楽用電子機器輸入販売のフックアップを子会社化、◇アツギ<3529>、レナウン傘下で肌着・ソックス製造のレナウンインクスを子会社化、◇バリュエンスホールディングス<9270>、中古品買取54店舗展開のNEO-STANDARDを子会社化、◇丸和運輸機関<9090>、運輸・倉庫の日本物流開発を子会社化、◇プラップジャパン<2449>、運用型広告支援のプレシジョンマーケティングを子会社化 ほか

 

 

 

ASIAN STAR<8946>、筆頭株主企業傘下の中国不動産3社を子会社化

ASIAN STARは100%子会社の柏雅資本集団控股有限公司(香港、柏雅香港)を通じて、上海徳威企業発展股份有限公司(徳威企業)の子会社である上海徳威房地産経紀有限公司(徳威不動産)と、上海優宏資産管理有限公司(U-HOME)、U-HOMEの子会社である上海特庫伊投資管理有限公司(特庫伊投資)の3社を完全子会社化すると発表した。

ASIAN STARは今回買収する3社からの斡旋による顧客獲得や日系企業・日系駐在員の嗜好に合った物件開発の助言などで、両社の事業上のシナジー効果に期待。併せて中国事業の拡充や、日中間の相乗効果による事業規模拡大と収益向上も期待できることから買収を決めた。徳威企業は2011年12月にASIAN STARへ27.34%出資し、筆頭株主となっている。

取得価額は非公表。取得予定日は2020年9月30日まで。

不二製油グループ本社<2607>、インドのクリーム製品製造子会社3F FUJI FOODSをシンガポール社に譲渡

不二製油グループ本社は、クリーム製品を製造するインド子会社3F FUJI FOODS PRIVATE LIMITED の全株式を、シンガポールIFFCO SINGAPORE PTE. LTD.とその傘下企業に譲渡することを決めた。事業の選択と集中の一環。3F FUJI FOODSは2014年に設立。譲渡価額は非公表。譲渡予定日は2020年8月27日。

譲渡先のIFFCO SINGAPOREは食用油を中心とした製品・販売を手がけている。

ズーム<6694>、音楽用電子機器輸入販売のフックアップを子会社化

ズームは、音楽用電子機器を輸入販売するフックアップ(東京都台東区。売上高10億2000万円、営業利益9000万円、純資産1億6200万円)の全株式を取得し子会社化することを決めた。自社ブランドによる音楽用電子機器の開発・販売に続く第2の柱として輸入販売代理店事業を育成しており、この一環。

取得価額は非公表。取得予定日は2021年3月1日。

フックアップは1991年に設立。プロオーディオ、音楽制作用PC・デスク、アンプ、スピーカー、シンセサイザー、ギター・ベースなどの外国ブランドを取り扱っている。ズームは自社ブランド以外の音楽用電子機器を日本市場でも取り扱うことで、国内での販売活動を広げる。

アツギ<3529>、レナウン傘下で肌着・ソックス製造のレナウンインクスを子会社化

アツギは、民事再生手続き中のレナウン傘下で肌着、ソックスなどを製造・販売するレナウンインクス(東京都江東区。売上高72億8000万円、営業利益3億6200万円、純資産△3億2500万円)の全株式を取得し子会社化することを決めた。アツギはストッキング・タイツを主力とするが、新型コロナウイルス感染拡大の影響で足元の販売環境が厳しさを増す中、ソックス・インナーウエア商品を強化し、事業構造のバランスの改革を推し進める。

レナウンインクスは肌着などインナーウエアの販売構成比が高く、紳士・婦人ともに品ぞろえをしている。販路も百貨店からチェーンストアまで広い。アツギもレッグウエア・インナーウエアを取り扱っているが、商品構成や企画・デザイン・調達面などで重複が少なく、補完関係が期待できると判断。縮小する国内市場での競争力向上とシェア拡大を目指す。

取得価額は非公表。取得予定日は2020年10月1日。

バリュエンスホールディングス<9270>、中古品買取54店舗展開のNEO-STANDARDを子会社化

バリュエンスホールディングスは子会社を通じて、ブランド品や貴金属など中古品買取のNEO-STANDARD(東京都墨田区。売上高36億円、営業利益△2億600万円、純資産2億6500万円)の全株式を取得し子会社化することを決めた。NEO-STANDARDは1都5県で中古品買取店54店舗を展開している。バリュエンスは同業を傘下に取り込み、グループの買取体制の強化につなげる。

取得価額は非公表。取得予定日は2020年9月30日。

バリュエンスは買取専門店「なんぼや」を中心に全国83店舗(5月末)を展開している。

丸和運輸機関<9090>、運輸・倉庫の日本物流開発を子会社化

丸和運輸機関は、運輸・倉庫業の日本物流開発(東京都板橋区。売上高35億円、営業利益5100万円、純資産2億4700万円)の株式51.3%を取得し、8月31日付で子会社化することを決めた。取得価額は非公表。残る株式については株式交換を行い、9月30日付で完全子会社化する。EC(電子商取引)物流事業における機能強化が狙い。

株式交換比率は丸和運輸機関1:日本物流開発1060。日本物流1株に対し、丸和運輸の1060株を割り当てる。日本物流は1990年に設立し、EC物流で強みを持つ。

プラップジャパン<2449>、運用型広告支援のプレシジョンマーケティングを子会社化

プラップジャパンは、運用型広告の各種支援などを手がけるプレシジョンマーケティング(東京都新宿区。売上高32億9000万円、営業利益3700万円、純資産9100万円)の株式92%を取得し子会社化することを決めた。総合PR代理店としての事業基盤強化に向け、デジタル領域のサービスを拡充する狙い。

取得価額は非公表。取得予定日は2020年9月1日。

プレシジョンマーケティングは2007年に設立。広告の制作から配信、効果分析・レポートまでの一連のサービスを提供する。自社で広告運用する企業や内製化を目指す企業に対するインハウス化支援などのコンサルティングにも力を注いでいる。

プラップジャパンはプレシジョンマーケティングが培ってきたデジタル領域の広告に関する知見や実績を取り込み、顧客サービスの幅を広げる。

大阪有機化学工業<4187>、三菱ケミカルから頭髪化粧品用アクリル樹脂事業を取得

大阪有機化学工業は、三菱ケミカル(東京都千代田区)から頭髪化粧品用アクリル樹脂の製造・販売事業を取得することを決めた。品ぞろえの充実と海外販路の獲得が狙い。化粧用アクリル樹脂はヘアスプレー、ヘアムース、ヘアジェル、ヘアワックスなどの主要成分となるもので、三菱ケミカルはこの分野の世界的大手。

大阪有機化学は1980年代から化粧品用アクリル樹脂を取り扱い、国内を中心に100社以上の化粧品会社に採用実績を持つ。三菱ケミカルから今回取得するのは「ユカフォーマー」「ダイヤフォーマー」「ダイヤスリーク」(いずれも商品名)。製造については三菱ケミカルに委託する。

取得価額は非公表。取得予定日は2021年2月1日。

ブシロード<7803>、コロプラ傘下でWebメディア事業運営のソーシャルインフォを子会社化

ブシロードは、コロプラ傘下でWebメディア事業を手がけるソーシャルインフォ(東京都渋谷区)の全株式を取得し子会社化することを決めた。ウィズコロナ・アフターコロナ時代を見据え、デジタル領域の事業強化につなげる。ソーシャルインフォは2011年設立で、「ソーシャルゲームインフォ」「アニメレコーダー」を運営し、ゲーム業界で高い評価を得ている。

取得価額は6183万円。取得予定日は2020年9月1日。

プロレド・パートナーズ<7034>、官公庁向けコンサルティング業の知識経営研究所を子会社化

プロレド・パートナーズは、官公庁・地方自治体向けにコンサルティングサービスを手がける知識経営研究所(東京都港区。売上高4億1300万円、営業利益2100万円、純資産7900万円)の全株式を取得し子会社化することを決めた。今後の成長分野である環境・リスク管理方面の事業拡充につなげる。知識経営研究所は2000年に設立。

取得価額は4億5000万円(アドバイザリー費用を含む)。取得予定日は2020年8月26日。

揚工舎<6576>、東京・青梅で有料老人ホーム経営のケアクリエイトを子会社化

揚工舎は、有料老人ホーム経営のケアクリエイト(東京都青梅市。売上高4億600万円、営業利益1030万円、純資産713万円)の全株式を取得し子会社化することを決めた。ケアクリエイトは2003年設立で、青梅市内で「ホームケアレジデンス河辺」を運営する。

取得価額は非公表。取得予定日は2020年8月19日。

ERIホールディングス<6083>、戸建住宅の確認検査業務を手がけるサッコウケンを子会社化

ERIホールディングスは、戸建住宅の確認検査を手がけるサッコウケン(札幌市。売上高5億4700万円、純資産1億1700万円)の全株式を取得し子会社化することを決めた。サッコウケンは1974年設立で、道内トップシェアの指定確認検査期間。北海道でのシェア拡大につなげる。

取得価額は非公表。取得予定日は2020年9月中。

エイジア<2352>、CMS製品提供のCONNECTY HOLDINGを子会社化

エイジアは、Webサイト制作用コンテンツマネジメントシステム(CMS)製品を提供するCONNECTY HOLDING(東京都港区)の株式の3分の2超を取得し子会社化することを決めた。CONNECTY HOLDINGは持ち株会社で、傘下に事業子会社のコネクティ(東京都港区。売上高6億1600万円、営業利益7800万円、純資産1億9800万円)を持つ。DX(デジタルトランスフォーメーション)プラットフォームの構築につなげる狙い。取得価額は5億5000万円。取得予定日は2020年9月下旬~10月中。

コネクティは「Connecty CMS on Demand」の名称でCMSをクラウドサービスで提供し、数千・数万ページに及ぶWebサイトを持つ国内大手企業を顧客に抱える。

エイジアはメール配信を中心とするマーケティングコミュニケーションシステム「WEBCAS」を主力とし、6000社以上の累計導入実績を持つ。コネクティが提供するWebサイトから見込み客の獲得を支援する機能と、エイジアの見込み客に対してメッセージ配信するCRM(顧客関係管理)機能を組み合わせ、より包括的なDXプラットフォームの構築を目指す。

JMDC<4483>、学会情報データベース事業の医薬情報ネットを子会社化

JMDCは、製薬・医療機器関連の学界情報データベース事業を展開する医薬情報ネット(東京都港区)の全株式を取得し、子会社化することを決めた。薬剤の変化や技術の進化、規制の厳格化、さらに新型コロナウイルス感染症の広がりなどを背景に、製薬・医療機器企業のマーケティング活動に対して一層きめ細かな情報支援が求められているのに対応する。取得価額、取得予定日は非公表。

医薬情報ネットは1995年に設立。国内約1400学会、海外約400学会をカバーする「学会情報データベース事業」を主力とし、顧客企業におけるKOL(キーオピニオンリーダー)選定やMR(医薬情報担当者)の活動支援などに利用されている。

JMDCは5億4000万件以上のレセプト(診療報酬明細書)データと、2600万件を超える健診データの分析に基づく保険者向け保健事業支援などのサービス事業を展開している。

日鉄物産<9810>、NST日本鉄板を通じて月星商事を子会社化

日鉄物産は18日、傘下のNST日本鉄板(東京都中央区)が表面処理鋼板やステンレス鋼板を取り扱う月星商事(東京都中央区)の株式を日本製鉄から追加取得し、子会社化すると発表した。日本製鉄グループにおける建材薄板分野でのサプライチェーン(供給網)強化の一環。NST日本鉄板は日本製鉄が持つ月星商事株式(所有割合41.2%)のうちの26%あまりを取得し、持ち株比率を現在の27.8%から54.1%に引き上げる。

取得価額は非公表。取得予定日は2020年9月30日。

ピアズ<7066>、携帯販売代理店向けコンサル業務のOne go One wayを子会社化

ピアズは、携帯販売代理店向け店舗運営コンサルティング業務などを手がけるOne go One way(さいたま市。売上高6300万円、営業利益100万円、純資産100万円)の全株式を取得し子会社化することを決めた。ピアズは同じく携帯販売代理店を対象とするコンサルティング業務を主力としており、これまで協力関係にあった。今回、傘下に取り込むことで、連結ベースでコスト削減にも寄与すると期待している。

取得価額は2100万円。取得予定日は2020年8月21日。

粧美堂<7819>、化粧品・医薬部外品受託製造のビューティードアを傘下に

粧美堂は、化粧品・医薬部外品を受託製造するビューティードア・ホールディングス(BDHD、大阪府富田林市)を子会社化することを決めた。BDHDは持ち株会社で、傘下に事業子会社のビューティードア(大阪府富田林市。売上高5億3900万円、営業利益5780万円、純資産3億2200万円)を持つ。化粧品分野の事業拡大につなげる。

ビューティードアは1977年にプラスチック成形加工を目的に設立。2001年に化粧品・医薬部外品の製造許可を取得し、受託製造を手がける。

粧美堂は化粧雑貨、化粧品、服飾雑貨、キャラクター雑貨などを自社ブランドとOEM(相手先ブランド生産)で取り扱っている。ビューティードアをグループに迎え、新たに製造設備と製造ノウハウを取り込むことで、化粧品事業を加速する。

取得価額は非公表。取得予定日は2020年10月1日。

武田薬品工業、国内部門で早期退職制度を実施へ、募集人数は非公表

武田薬品工業は17日、国内部門で「フューチャー・キャリア・プログラム」と名づけた早期退職制度を実施すると発表した。勤続3年以上(定年後再雇用者を含む)で30歳以上の社員を対象とするが、募集人数は非公表。募集期間は9月28日~10月16日で、退職日は11月30日とする。医薬品開発をめぐる国際的な競争が激しさを増す中、組織力の向上に向け、終身雇用を柱とする日本型の雇用システムからの脱却を進めており、こうした取り組みの一環。所定の退職金に特別加算退職金を上乗せして支給し、再就職支援サービスを提供する。

武田は国内部門について、消化器系疾患、希少疾患、血漿分画製剤、オンコロジー(がん)、ニューロサイエンス(神経精神疾患)の5つを重点領域とし、ターゲットを絞った医療用医薬品ビジネスを推進中。これに合わせ、国内の人事制度も新たな変革を取り入れ、次のステージに移行を目指している。

ビットワングループ<2338>、香港とシンガポールの仮想通貨交換所をキーストーンマネジメントに譲渡

ビットワングループは、子会社で手がける2つの仮想通貨交換所「BitOne Trade HK」(香港で運営)、「BitOne Trade SG」(シンガポールで運営)を、不動産・経営コンサルタント業のキーストーンマネジメント(東京都中央区)に譲渡することを決めた。これによりフィンテック事業の廃止がほぼ完了する。譲渡価額は合計2円。譲渡予定日は2020年8月31日。

特別損失として事業譲渡損1100万円が発生する見込み。

ミナトホールディングス<6862>、テレビ会議システムなど販売のプリンストンを子会社化

ミナトホールディングスは、テレビ会議システムやパソコン記憶装置を販売するプリンストン(東京都千代田区。売上高73億9000万円、営業利益9800万円、純資産5億4800万円)の全株式を取得し子会社化することを決めた。テレワーク(在宅勤務)需要に伴い拡大が期待されるビデオ・音声会議システムをはじめ、eスポーツ、デジタルトランスフォーメーション(DX)関連、5G(次世代通信規格)、IoT(モノのインターネット)など成長分野の事業拡大を目指す。

取得価額は非公表。取得予定日は2020年8月28日。

子会社化後、現経営陣3氏を割当先とする第三者割当増資を実施し、引き続き、経営を委ねる。

ラオックス、追加の希望退職者募集に114人が応募|予定の半数下回る

ラオックスは14日、希望退職者の追加募集に114人の応募があったと発表した。契約社員を含む全社員を対象に7月1日~31日に250人程度を募集したが、応募は半数以下にとどまった。希望退職者の募集は2月(160人程度募集、111人応募)に次ぐ今年2度目。退職日は8月31日付で、規定の退職金に特別加算金を上乗せして支給する。

新型コロナウイルスの感染拡大でメーンとする中国や韓国からの訪日観光客の回復が見込めない中、追加募集にあたっては人数を2月の1.5倍に拡大した。しかし、前回に続き、応募は募集人数を大きく下回り、経営再建に向けて前提が崩れた格好。同社は7月末に、全国24店舗の半数にあたる12店舗を閉鎖する方針を発表した。

投資会社アント・キャピタル・パートナーズ、スカラ<4845>傘下のソフトブレーン<4779>をTOBなどで子会社化

投資会社のアント・キャピタル・パートナーズ(東京都千代田区)は14日、スカラ傘下で営業支援サービスを提供するソフトブレーン(東証1部)をTOB(株式公開買い付け)などで完全子会社化すると発表した。TOBで株式の49.77%を取得したうえで、親会社のスカラが保有する残る50.23%についてソフトブレーンが自己株取得する形をとる。2021年3月に買収完了を見込む。ソフトブレーンはTOBに賛同している。

TOBの実施主体はアント・キャピタル・パートナーズが設立したシー・ファイブ・エイト・ホールディングス。ソフトブレーン株の買付価格は1株871円。TOB公表前日の終値408円に113.48%のプレミアムを加えた。買付予定数は1463万5000株で、下限は所有割合16.44%にあたる483万3400株に設定。スカラ所有のTOB不応募株式50.23%と合わせ所有割合が3分の2超となる。買付代金は127億4708万円。

買付期間は9月29日~11月10日。公開買付代理人は三菱UFJモルガンスタンレー証券、auカブコム証券。決済の開始日は11月17日。

TOB成立を受け、ソフトブレーンの減資手続きなどを行う。併せて同社に資金提供し、2021年3月をめどにスカラ所有の全株式50.23%を1株714円で取得する。自己株取得額は105億4578万円。

一連の完全子会社化にTOBと自己株取得を合わせて総額232億9200万円を投じる。アント・キャピタル・パートナーズは2000年に設立し、プライベートエクイティ投資(バイアウト)を主軸とする。主要株主として現在、農林中央金庫、三井物産企業投資が名を連ねる。

ソフトブレーンは1992年に創業し、2000年にマザーズに上場。2005年に東証1部に昇格した。スカラは2016年前後からソフトブレーン株の取得を本格化し、2017年には50%超まで買い増して子会社としていた。スカラは今回の株式売却で得た資金を新たな投資に振り向ける考え。

さいか屋、希望退職者募集に108人が応募

さいか屋は13日、希望退職者募集に108人の応募があったと発表した。6月22日から7月14日まで、120人程度(35歳以上、非正規社員を含む)を募集した。百貨店の横須賀店(神奈川県横須賀市、約130人)を2021年2月に閉店するのに伴う措置。退職日は8月31日および2021年2月28日。正社員に所定の退職金に加えて割増退職金を、非正規社員に退職慰労金をそれぞれ支給し、再就職支援サービスを提供する。

チムニー、100人程度の希望退職者を募集へ

チムニーは13日、100人程度の希望退職者を募ると発表した。正社員(7月末時点971人)を対象とし、募集期間は8月13日~26日。同社は居酒屋「はなの舞」を中心に外食事業を展開するが、新型コロナウイルス感染拡大に伴う業績悪化などを受け、72店舗の閉鎖を決定。企業体質強化と事業規模に見合った人員体制を構築する。

退職日は9月30日付。通常の退職金に特別退職加算金を上乗せして支給し、再就職支援サービスを提供する。

同社の2020年4~6月期業績は売上高80.7%減の21億円、営業赤字19億2900万円(前年同期は4億9600万円の黒字)、最終赤字17億8100万円(同2億4800万円の黒字)。

第一商品、早期退職者募集に予定を4割上回る140人が応募

第一商品は13日、早期退職者募集に140人の応募があったと発表した。募集期間は6月23日~7月10日。全従業員(約240人)の4割に当たる100人の募集人員を大幅に上回った。7月に東京商品取引所から大阪取引所に貴金属、ゴム、農産物の各市場が移管されたが、同社は不適切会計問題を抱え、取引に必要な参加資格を取得できず、人員体制を含む収益構造の再構築に迫られていた。

退職日は7月31日(本社管理部門は8月31日)。会社都合扱いとし、特別加算金を支給する。2021年3月期決算に事業整理損失引当金繰入額3億1300万円を特別損失として計上する。

ソラスト<6197>、介護サービスの日本エルダリーケアサービスを子会社化

ソラストは、介護サービス事業の日本エルダリーケアサービス(東京都港区。売上高46億3000万円、営業利益2億7100万円、純資産9億8400万円)の全株式を取得し子会社化することを決めた。日本エルダリーは首都圏を中心に訪問介護、居室介護支援、通所介護を122事業所で展開している。取得価額は23億7500万円。取得予定日は2020年10月1日。

ソラストは2030年に向け、介護サービスエリアを現在の3倍の300エリアに拡大するとともに、すべてのエリアで訪問介護、通所介護、居室介護支援、グループホーム、有料老人ホームなどの施設を各1事業所以上運営することを目指している。日本エルダリーを傘下に取り込むことで、事業展開エリアの拡大とエリア内の提供サービス拡充を進める。

三菱製紙<3864>、白河事業所の電気絶縁紙事業を王子エフテックスに譲渡

三菱製紙は、白河事業所(福島県西郷村)で生産している電気絶縁紙事業を、王子ホールディングス傘下の王子エフテックス(東京都中央区)に譲渡することを決めた。王子との資本業務提携の一環。2021年4月から王子エフテックスの中津工場(岐阜県中津川市)への生産統合に着手し、同年10月1日付で譲渡を完了する予定。

三菱製紙は1971年から白河事業所で変圧器向けに、未晒クラフトパルプを原料とする絶縁材料のプレスボードを生産している。しかし、2011年の東日本大震災による原発事故を契機とした国内の電力設備投資の抑制に伴い、変圧器需要が縮小傾向にあるほか、海外では欧州や中国メーカーとの競争が激しさを増しており、生産能力に勝る王子の傘下企業に生産を移管することにした。

白河事業所は全芳香族ポリアミドを原料とする「Aボード」について生産を継続する。

ペッパーフードサービス、「いきなり!ステーキ」事業で希望退職者募集に183人応募

ペッパーフードサービスは12日、「いきなり!ステーキ」事業部門を対象に200人程度を予定していた希望退職者募集に183人の応募があったと発表した。募集期間は7月6日~31日で、「いきなり!ステーキ」のうち閉鎖を決めた114店舗で95人(募集150人程度)、その以外の店舗で88人(募集50人程度)が応募した。会社都合退職とし、特別退職金を支給するほか、再就職支援サービスを提供する。

ペッパーフードサービスは経営再建の一環として、もう一つの主力である「ペッパーランチ」事業を投資ファンドのJ-STAR(東京都千代田区)に85億円で譲渡し、「いきなり!ステーキ」事業に経営資源を集中させることとし、店舗閉鎖に合わせて希望退職者を募った。

日本ハウズイング<4781>、給排水設備工事のメイセイを子会社化

日本ハウズイングは、給排水設備工事のメイセイ(埼玉県草加市。売上高8億800万円、純資産2億1700万円)の全株式を取得し子会社化することを決めた。日本ハウズイングは分譲マンションを中心にオフィスビル・賃貸マンションの建物管理を主力とする。近年、建物の高経年化を背景に給排水設備の工事・保守点検ニーズが高まっており、対応力を強化する狙い。

取得価額は非公表。取得予定日は2020年8月27日。

インフォネット<4444>、Webシステム企画・開発のスプレッドシステムズを子会社化

インフォネットは12日、Webサイトの企画・開発などを手がけるスプレッドシステムズ(東京都港区。売上高5410万円、営業利益117万円、純資産583万円)の全株式を取得し子会社化したと発表した。取得日は2020年4月15日。取得価額は非公表。スプレッドシステムズは2013年に設立。

プロスペクト<3528>、KeyHolder傘下の不動産子会社キーノートを子会社化

プロスペクトは、KeyHolder傘下で不動産・商業施設建築事業を手がけるキーノート(東京都港区。売上高54億5000万円、営業利益4億8700万円、純資産19億4000万円)を株式交換で完全子会社化することを決めた。首都圏や近畿圏での戸建住宅の販売、不動産関連のコンサルティング業務の拡充につなげる。

株式交換比率はプロスペクト1:キーノート2万6860。キーノート1株に対してプロスペクトの2万6860株を割り当てる。株式交換予定日は2020年9月3日。

プロスペクトは首都圏で自社開発マンション「グローベルマンション」の建設分譲を主力とし、累計分譲戸数は8100戸を超える。一方、キーノートの親会社のKeyHolderはエンターテイメント事業に経営資源を集中する方針を打ち出したのに伴い、不動産関連のキーノートの売却を検討していた。キーノートは1996年に設立。

クルーズ<2138>、女性向けキュレーションメディア運営のCandleをKACK JAPANに譲渡

クルーズは、女性向けキュレーションメディアを運営する子会社のCandle(東京都渋谷区。売上高2億4700万円、営業利益△1400万円、純資産1億700万円)の全株式を、不動産賃貸業のHACK JAPANホールディングス(甲府市)に譲渡することを決めた。譲渡価額は2億円。譲渡予定日は2020年9月30日。

クルーズは2016年に、キュレーションメディアと呼ばれる情報整理サイトを手がけるCandleを買収。Candleのメディア運営の経験やノウハウを生かし、2019年9月にはEC(電子商取引)関連メディアを運営するランク王(東京都渋谷区)を設立した。今回、事業の選択と集中の観点から、設立後1年に満たない事業ながらも急成長中のランク王に経営資源を集中させることにした。

SHIFT<3697>、クラッチからWebマーケティング事業を取得

SHIFTは、クラッチ(東京都港区)からWebマーケティング事業を買収することを決めた。同事業を会社分割より承継する新会社CLUTCH(同)の全株式を9月30日付で取得する。ネット広告代理店事業に参入を目指す。取得価額は8億5400万円。対象事業の売上高は19億6900万円。

SHIFTは今回の事業取得を通じて、ネット広告枠の買い取りから、Webサイト制作関連業務全般までワンストップのサービス提供が可能になるとしている。

 

 

 

 

情報提供:株式会社ストライク