[マッチングサイトを活用したスモールM&A]

~年商1,000万円から2億円までのM&Aの現場から~

第2回:「マッチングサイトを使ったスモールM&A」では、買い手候補が7社以上

 

〈解説〉

税理士 今村仁

 

 

 

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(1)誰にとってもモッタイナイ状況

本連載の第1回にも書きましたが、親族外の役員従業員承継という一時しのぎを除けば、後継者不在の会社の行く末は、2つしかありません。つまり、「廃業」か「第三者承継(M&A)」です。さらに、後継者不在の年商2億円以下のスモール企業(中小零細企業)に限っていうと、買い手候補を連れてきてくれるM&A仲介業者が費用対効果の関係でほぼ存在しないことから、実質、「第三者承継(M&A)」の選択肢はありませんでした(唯一あるとすれば、売り手社長ご自身が、知り合いの会社などお相手を見つけてくることができた稀なケースです)。ということは、スモール企業は、後継者を見つけられなかった場合は、基本的に「廃業しか選択肢がない」というのが、残念ながら今までの日本のスモール企業の現状でした。

 

何十年と商売を続けてくると、どんな会社でも、何某かの「経営資源」を築いていることが多いです。例えば、「自社オリジナル製品やサービス」、「技術力」、「得意先や仕入先、外注先の数と質」、「ビジネスの仕組みそのもの」、「育成コスト含めた従業員の数と質」等です。長く続けてきた会社の経営資源は、客観的に誰が見ても評価されるものもあれば、ある特定の企業や起業家から見たときに、それを一から築き上げることとの比較で評価されさることもあります。

 

このような経営資源のあるスモール企業が「後継者不在」というたった一つのトリガーで廃業しか選択できないというのは、売り手にとっても買い手にとっても、さらには日本経済にとっても勿体ないことだと思います。

 

しかし、この問題を打破できる可能性の秘めたものが一つあります。それは、「M&Aマッチングサイト」です。政府の資料では、「プラットフォーマー」などといわれています。

 

 

(2)実例「今まで廃業しか選択肢がなかった年商数千万円の会社が売れる!?」

では実際、M&Aマッチングサイトに後継者不在企業が登録(ほとんどのマッチングサイトでは無料で登録することが可能で、マッチングサイトによっては無料登録サポートが付いているところもあります)したケースで、その後どのようになったのかを弊社がサポートした事例でご紹介します。

 

最初、後継者不在企業がマッチングサイトに仮登録をされ、その後弊社とアドバイザリー契約をした上でトータルサポートをさせて頂きました。

 

 

(後継者不在企業の概要)

■業種:金属製品製造業

■売上高:6,000万円

■営業利益:△290万円

■総資産:1,900万円

■有利子負債:300万円

■純資産:900万円

■従業員数:3名、妻(経理、梱包発送)、従業員A(仕入担当)、従業員B(梱包発送、雑務)

 

 

マッチングサイトに正式登録をして2~3日のうちに、「4~5件」の買い手候補から「質問」や「実名開示依頼(買い手候補が自社の売上等の説明を記載した上での正式な手続き)」がサイト上で行われました。因みにこの反応数は、一般的な数字よりやや多いぐらいで、それほど特筆すべき数字ではありません。例えばマッチングサイトに登録して1週間たっても何も反応がなければ、マッチングサイトに掲載した紹介文などの表現が伝わりにくい、または、価格含めた条件面が相場とかけ離れている可能性が高いと思われますので、修正後に再アップされると良いでしょう。こういったトライアンドエラーを繰り返せるのが、ネットの良さですね。

 

さてその後、質問などの引き合い件数は「23件」、その中で本気度の高い実名開示依頼件数が「12件」、買い手の会社概要などから売り手が実際に実名開示を了承した件数が「7件」でした。売り手が実名開示を承諾すると、ネット上で秘密保持契約を締結した上で、買い手は売り手の決算書など詳細な資料を見ることができます。

 

そして、その7件のうち「6件」が弊社との買い手面談へと進みましたので、実名開示承諾で決算書などを見て実際の案件の中身が良かったのだと思います。

 

その中で買い手の意向と売り手の希望などを考えて、「2社」とトップ面談をして、そのうちの同業である「1社」と基本合意、最終契約となりました。

 

 

≪成約までの経緯≫

引き合い件数「23件」⇒実名開示依頼数「12件」⇒実名開示数「7件」⇒買い手面談数「6件」⇒トップ面談数「2件」⇒基本合意数「1件」

 

 

 

ちなみに、買い手企業の概要は下記となります。

 

≪買い手企業の概要≫

■業種:同業

■売上高:20,000万円

■従業員数:20人

■予算:2,000万円

 

 

 

売り手企業を振り返ると、年商6,000万円で赤字、従業員数は社長の奥様含めて3人というM&AマッチングサイトのスモールM&Aではよくある規模感等でした。気になる承継対価は1,600万円、マッチングサイト登録から引き渡しまでの期間は4ヶ月弱で、雇用の継続はもとより、得意先や仕入先、外注先すべて継続されることになっていました。

 

買い手は社長である父とその息子が交渉窓口だったのですが、父にとって今回のM&Aは、息子がいずれ本体を承継するための一つのステップとしての側面もあったようです。

 

 

 

(3)M&Aマッチングサイトを使えば、買い手候補が7社以上

いくつかのM&Aマッチングサイトがありますが、弊社が使っているバトンズというサイトでは、通常、売り手がサイトに登録すると、平均して7社の買い手候補が現れます。もちろん全く現れないことも稀にありますが、20社以上が候補企業として現れるようなこともあります。

 

M&Aマッチングサイトでアドバイザーとして買い手候補からのアプローチなどを見ていて、しばしばびっくりさせられることがあります。何にびっくりさせられるのかというと、「この売り案件にこの買い手がよくマッチングをしてきたな」という、そのマッチング自体にです。売り手及び買い手のマッチングの例をいくつかご紹介します。

 

 

●(売り手)東京の従業員0名の映画製作業×(買い手)大阪の従業員50名の広告業

●(売り手)関西の従業員6名の企業食堂×(買い手)関西の従業員20名の製造業

●(売り手)関東の従業員2名の製造業×(買い手)都内のサラリーマン

●(売り手)関東の従業員5名の塗装業×(買い手)関東の従業員10名の不動産業

●(売り手)関東の従業員1名の鋼管材卸業×(買い手)関西の従業員15名の塗装業

 

 

エリアも業種もバラバラで、買い手にサラリーマンが出てくるところも、M&Aマッチングサイトを使ったスモールM&Aの特徴です。

 

日本に事業者数は381万者あるといわれていますが、そこにサラリーマンまで買い手候補の可能性があるとなると、どんな優秀なM&A専門会社や専門家が頑張っても、上記のようなマッチングを成立させることは不可能でしょう。M&Aマッチングサイトだから実現できた第三者承継(M&A)といえるでしょう。もちろん、売り手も買い手も、引いては日本経済にとってもハッピーとなります。

 

「M&Aマッチングサイト」というのは、今まで廃業しか選択肢がなかったスモール企業に、第三者承継(M&A)という新たな希望のある選択肢を与えたという意味で、また、買い手にも事業拡大の新たな手法を与えたという意味で、控えめに言って「革命」を起こしたのではないかと感じています。

 

 

 

 

 

 

[解説ニュース]

令和3年度税制改正:住宅ローン控除の拡充

 

〈解説〉

税理士法人タクトコンサルティング(遠藤 純一)

 

 

[関連解説]

■ 速報!令和3年度税制改正案

■【Q&A】居住用財産の譲渡に係る3,000万円控除から住宅ローン特別控除への特例選択の変更の可否適用を受けることの可否

 

1.はじめに


令和3年度税制改正大綱では、住宅借入金等特別控除(以下、住宅ローン控除という)の拡充(2022年12月末までの入居分)が盛り込まれました。これはコロナ禍の影響による先行き不透明さなどを背景に内需の柱となる住宅投資を刺激するためです。改正の主な項目は、①13年控除の適用期限の延長、②床面積要件の40㎡への緩和です。以下、これらについて解説します。

 

2.13年控除の概要


ノーマルな住宅ローン控除は年末の住宅ローン残高の1%相当額を限度として、居住した年から10年にわたって所得税と住民税から税額控除する制度です(租法41①)。

 

拡充された住宅ローン控除(租法41⑬以下、13年控除という)は平成31年度税制改正で創設された制度で、家屋に係る消費税等の税率が10%であることを前提にノーマルな制度とは次の点で異なりました。

 

表1

 

 

なお、認定長期優良住宅・認定低炭素住宅の場合には控除限度額の計算上住宅ローン年末残高の上限は5,000万円となるほか、建物価額の上限も5,000万円となります。

3.コロナ対策による入居期限等の延長


令和2年4月30日に施行された 「新型コロナウイルス感染症緊急経済対策」の税制上の措置では、入居期限である令和2年12月31日までに入居できなかった場合でも、取得・新築または増改築の日から6か月以内に居住する等、所定の要件を充たしている場合、入居期限が1年延長されることとされました。所定の要件とは次の通りです。

 

⑴一定の期日までに契約が行われていること。
イ-1注文住宅を新築する場合=令和2年9月末
ロ-1分譲住宅・既存住宅を取得する場合、増改築等をする場合=令和2年11 月末

 

⑵新型コロナウイルス感染症の影響によって、注文住宅、分譲住宅、既存住宅又は増改築等を行った住宅への入居が遅れたこと。
確定申告では、契約日がわかる契約書等のほか、コロナ禍の影響により引き渡しが遅れたこと等を証する書類を用意する必要がありました。

 

4.①13年控除の適用期限の延長


大綱によれば、上記⑴の契約期間が延長され、次の期間中に契約した場合には、さらに入居期限が1年延長され令和4年12月31日とされる見通しです。

 

イ-2居住用家屋の新築 令和2年10月1日から令和3年9月30日までの期間
ロ-2居住用家屋で建築後使用されたことのないもの若しくは既存住宅の取得又はその者の居住の用に供する家屋の増改築等 令和2年 12 月1日から令和3年 11 月30日までの期間

 

これに伴い、国土交通省によると、この期間の契約で延長される改正後の13年控除では、確定申告でコロナ禍の影響を証する書類等の添付が不必要になります。
なお、延長前の契約期間に住宅購入契約等をして従前の期限までに入居する場合には、コロナ禍の影響により引渡し等が遅れたことを証する書面の添付が必要なことに変わりがありません。

 

5.②床面積要件の緩和


上記の①の13年控除の適用を前提に、取得する家屋の床面積については、50㎡以上から40㎡以上へと引下げられます。ただし、住宅ロ―ン控除を適用する個人のその年分の所得税に係る合計所得金額が 1,000 万円を超える年については、住宅ローン控除が適用されません。

 

床面積要件の緩和は、住宅取得等資金の贈与税の非課税特例(租法70条の2)、同相続時精算課税制度の特例(租法70条の3)でも行われる予定です(令和3年度税制改正大綱)。

 

なお、住宅税制のうち登録免許税の軽減税率(租法72条の2~75)、不動産取得税1200万円控除ほか(地法73条の14ほか)固定資産税の税額軽減(地法附則15条の6ほか)にも、50㎡を下限とする床面積要件がありますが、これらは、令和3年度税制改正大綱で改正項目に挙がっていませんので、適用にはご注意ください。

 

 

 

 

税理士法人タクトコンサルティング 「TACTニュース」(2020/12/23)より転載

[M&A案件情報(譲渡案件)](2020年12月22日)

-以下のM&A案件(1件)を掲載しております-

 

●大型製缶品を得意とする製缶板金業者

[業種:製缶板金業/所在地:関東地方]

 

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(お問い合せ・ご相談は「無料会員登録」が必要です)

 


案件No.SS006386
大型製缶品を得意とする製缶板金業者

 

(業種分類)製造業

(業種)製缶板金業

(所在地)関東地方

(直近売上高)1~5億

(従業員数)10名以下

(譲渡スキーム)株式譲渡

(事業概要)多種多様な製缶品を手掛け、大型製缶を得意とする。 受注生産型のビジネスモデルであり、製造設備の投資動向に左右されるが、業歴長く、近時収益力も相応の水準で推移している。

 

〔特徴・強み〕

◇高い技術・施工能力を有しており、大小サイズを問わず多種多様かつ短納期での対応が可能。

 

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情報提供会社:株式会社ストライク

 

 

 

 

【免責事項】

・掲載情報は、内容及び正確さに細心の注意をはらい、万全を期しておりますが、人為的なミスや機械的なミス、調査過程におけるミスなどで誤りがある可能性があります。税務研究会及び情報提供会社は、当該情報に基づいて被ったいかなる損害についても一切の責任を負うものではありません。

・掲載情報は公開日時点の情報になります。既に案件が特定の対象会社と交渉に入っている場合や成約している場合もございます。

 

 

 

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[経営企画部門、経理部門のためのPPA誌上セミナー]

【第12回】(最終回)PPAを実施しても無形資産が計上されないケースとは?

 

 

〈解説〉

株式会社Stand by C(角野 崇雄/公認会計士・税理士)

 

 

▷第9回:PPAで使用する事業計画とは?
▷第10回:PPAの特殊論点とは?ー節税効果と人的資産ー
▷第11回:PPAプロセスの具体例とは?-設例を交えて解説ー

 

1.はじめに

当連載では,PPAの基本的な考え方や概要について解説を行ってきました。

連載の最終回として,PPAを実施しても無形資産が計上されないケースについて解説します。

 

PPAにおいては,買収時点において存在する無形資産を評価することになるため,買収時点において赤字若しくは利益があまり出ていない会社を買収した場合,無形資産が認識されたとしても,評価した結果価値が出ず(マイナス値)に無形資産が計上されないことがあります。

 

 

2.買収の主たる目的である資産が無形資産として計上されないケース

企業がM&Aを実行する目的は様々ですが,その多くは,被買収企業が持つブランド,顧客基盤,流通販売網,特許,技術などを獲得することを目的とします。

 

PPAでは,その手続きを通じて,被買収企業が持つそれら無形資産を識別・評価することになりますが,必ずしも企業が買収時に意図していた無形資産が計上されないケースがあります。

 

これは,PPAが,買収した「その時点」において存在する無形資産を評価するプロセスであることから生じるもので,一般的なPPAのイメージと,実際のPPA実務との間でギャップが生じやすいところであります。

 

例えば,X00年3月31日にある企業の顧客関連資産を獲得したようなケースでは,無形資産として計上され得るものは,X00年3月31日時点において存在する顧客であり,買収時以降,すなわち,X00年4月1日以降に買収企業による施策等によって新たに増加すると予想される顧客ではありません。

 

また,買収時点において被買収企業が赤字のようなケースにおいては,当該顧客が生み出す価値は0と評価されてしまい,無形資産が計上されないようなケースもあります。更には,買収時点において赤字の企業を買収後のシナジー効果を見込んだプレミアム込みの価格で買収したようなケースでは,無形資産が全く計上されずに,買収価額と純資産の差額が全額のれんとなって,のれんの金額が多額となるケースも考えられます。

 

 

3.具体例を用いた説明

次に,上記で述べたことを,具体例を使って説明します。(説明の便宜上簡略するための前提を置いている点はご容赦ください。)

 

 

前提条件

【図表1】前提条件

 

 

(1)経済的耐用年数の設定

スポーツクラブWの既存会員の評価には,顧客資産の評価手法として一般的に用いられる超過収益法を用います。まず,既存会員の経済的耐用年数を検討します。

 

本例では,過去3期に亘る会員数の増減データが入手できたことから,図表2の通り,買収時点から過去3年間において,各期の期首に在籍していた会員の退会率の平均値33%を算出し,1÷33%=3年間を経済的耐用年数として設定します。

 

ただし,このような退会率(顧客減少率)のようなデータが入手できるケースはそう多くはなく,このようなデータを入手できた場合は,より合理的な経済的耐用年数の設定が可能となります。

 

 

 

【図表2】顧客関連資産の耐用年数の計算

 

 

(2)超過収益法による評価

図表3が超過収益法に基づく既存会員の評価額の計算例になります。Z社がW社の買収を検討した際に利用したスタンドアローン計画の事業計画を利用することとなりますが,同事業計画の営業利益には買収時点の既存会員と買収後に獲得予定の新規会員の両方から生み出される営業利益であるため,既存会員のみから生み出される営業利益を算出する必要があります。

 

実務上は両者を分けることは容易ではないケースが多いと思いますが,ここでは両者を分けることができるとし,図表4に示す既存会員に帰属する営業利益を用いています。

 

 

【図表3】顧客関連資産の評価

 

 

【図表4】 基準日時点の顧客関連資産に帰属する営業利益

 

 

キャピタルチャージは各資産の残高に期待される収益率を乗じることで計算されます。例えば,X04期の運転資本の場合,167×3%=5でキャピタルチャージを計算しており,X04期の運転資本残高167は,200×(1‐16.65%)で計算しています。

 

ここで,運転資本の残高が200ではなく167となっているのは,顧客関連資産の経済的耐用年数(3年)の期間内で運転資本が減少していくという前提を置いているからです。

 

また,既存会員の年間減少率33.3%を前提とした各期の減少率の計算方法は,例えば,X04年の減少率は33.3%×1/2=16.65%と計算し,X06年の減少率は33.3%×2+33.3%×1/2=83.25%とします。そして,(1‐各期の減少率)を買収日時点の各資産に乗じることで,各期の資産残高を計算します。

例えば,X06期の運転資本は,200×(1‐83.25%)=34となります。

 

このようにして各期の資産残高を計算し,期待収益率を乗じることでキャピタルチャージが計算されます。そして,税引後営業利益からキャピタルチャージを控除した値が顧客関連資産に帰属する超過収益となり,その超過収益の現在価値合計は△77となります。

 

この結果として,顧客関連資産として計上されるものはないこととなります。

 

 

(3)のれんの計算

図表5が示す通り,PPAの結果として計上される無形資産はなく,すべてのれんとして計上されることとなりました。この理由としては,買収時点において,W社が赤字であったことが大きいと言えます。無形資産の評価は,あくまでも買収時点を基準とするため,買収時点で業績が赤字であると,その後業績が回復したとしても,買収時以降の新規会員からもたらされる収入はのれんに包含されるため,結果として無形資産は計上されないこととなります。

 

また,耐用年数が3年と比較的短いのも要因の一つと言えます。そのため,本例では計上される無形資産はなく,純資産額と株式の取得原価との差額1,500百万円は全額のれんとなりました。

 

 

【図表5】のれんの算定

 

 

4.最後に

買収時の業績が無形資産の計上にどのような影響を与えるかを解説しました。買収の主な目的と考えたものが,無形資産として計上されないことも有りうるので,特に買収時における適時開示の内容と,有価証券報告書等での開示内容の整合性などには,買収前から注意が必要です。

 

なお,PPAの結果,のれんの金額に比して無形資産の金額が少額となる場合は,その妥当性につき監査人から詳細を質問されるケースも多いです。多額に生じたのれんの源泉は何なのか。買収後のシナジー効果や将来の期待等々,無形資産としては認識されずにのれんに含まれることとなる収益稼得の源泉につき,予め検討・分析を行っておくことをお薦めします。

 

最後に,本稿での具体例では,経済的耐用年数の決定に必要なデータが入手可能であったという前提でありましたが,実務上はデータの入手が困難なケースも考えられます。そのため,なるべく財務や法務のデューデリジェンスの際に必要データや情報の入手をリクエストしておくことが望ましいでしょう。

 

本連載は今回で終了となりますが,12回の連載を通して,PPAの概要から,無形資産の認識・識別,評価アプローチ,経済的耐用年数の設定方法などについて解説してきました。まだまだ実務として定着しておらず,イメージがつきにくい面があったかと思いますが,少しでも読者の皆様の理解にお役に立てれば嬉しい限りです。

 

 

 

—本連載(全12回)—

第1回 PPA(Purchase Price Allocation)の基本的な考え方とは?

第2回 PPAのプロセスと関係者の役割とは?

第3回 PPAにおける無形資産として何を認識すべきか?
第4回 PPAにおける無形資産の認識プロセスとは?
第5回 PPAにおける無形資産の測定プロセスとは?
第6回 PPAにおける無形資産の評価手法とは?-超過収益法、ロイヤルティ免除法ー
第7回 WACC、IRR、WARAと各資産の割引率の設定とは?
第8回 PPAにおいて認識される無形資産の経済的対応年数とは?
第9回 PPAで使用する事業計画とは?
第10回 PPAの特殊論点とは?ー節税効果と人的資産ー
第11回 PPAプロセスの具体例とは?-設例を交えて解説ー
第12回 PPAを実施しても無形資産が計上されないケースとは?

 

 

 

 

 

 

 

[業界別・業種別 M&Aのポイント]

第8回:「グループホーム(障がい者向けの共同生活援助)のM&Aの特徴や留意点」とは?

~運転資金は?入居者の状況は?入居者の獲得ルートは?従業員の状況は?許認可等は?~

 

〈解説〉

公認会計士・中小企業診断士  氏家洋輔

 

 

▷関連記事:「産業廃棄物処理業のM&Aの特徴や留意点」とは?

▷関連記事:「医療業界のM&Aの特徴や留意点」とは?

▷関連記事:「建設業のM&Aの特徴や留意点」とは?

 

Q、グループホーム(障がい者向けの共同生活援助)のM&Aを検討していますが、グループホームM&Aの特徴や留意点はありますか?


グループホームとは障がいのある人が、日常生活上の介護や支援を受けながら共同生活を営む住居のことです。 グループホームで暮らす人に対し、入浴、食事などの介護や生活相談、その他の日常生活上の支援を提供するサービスは「共同生活援助」と呼ばれ、障がい者総合支援法が定める「障がい福祉サービス」のひとつです。この共同生活援助のことを通称としてグループホームと呼びます。

 

なお、介護保険制度にも高齢者を対象とする「グループホーム」がありますが、「認知症対応型共同生活介護」と呼ばれる別のサービスにおける住居を指します。

 

 

グループホーム利用者は、障害者総合支援法が定めるサービス利用料が必要となります。利用料はグループホームの入居者数などにより異なります。 入居者は原則として利用料の1割を負担しますが、負担額には前年の世帯収入に応じた上限が設定されており、上限額以上の自己負担は生じません。利用料の他グループホームの家賃、食費や水道光熱費、その他の経費(町内会費や新聞代など)の実費を自己負担します。これらの料金設定はグループホームにより異なりますが、家賃は一般の住宅に比べ低く設定されているケースが一般的です。また、グループホームには家賃補助制度があります。対象は「市町村民税非課税世帯」または「生活保護」の対象者です。入居者1人当たりの家賃月額1万円を上限とした助成があります。利用者は、これらの費用を一般企業やA型事業所で受ける給料、障がい者年金、家族等の補助によって賄います

 

 

グループホーム運営会社の収入は、利用者からの収入および、地方自治体からの収入がメインとなりますが、通常地方自治体からの収入の割合が大きくなります。

 

地方自治体からの収入は給付金という名目で、障がい支援区分や夜間支援等の体制加算等により決定・支給されます。このような制度により、グループホーム運営会社の主な債権の相手先は地方自治体となります。地方自治体への債権は基本的に貸し倒れることがなく安定した収入となります。ただし、請求から入金までの期間が2か月間となるため、運転資金が必要な点に留意しましょう。運転資金を賄うためにファクタリングを実施している企業もあるため、M&Aの対象企業がファクタリング利用の有無を含め、債権内容を確認しましょう。

 

 

ビジネスモデルとしては、定められた人員配置基準や資格等により給付金の金額が決まるため、入居者および従業員を雇用することができれば安定的でかつ見通しの立てやすい収入が得られまます。利益の獲得のためには入居者の獲得、従業員の雇用、効率的な運営が重要となります。

 

 

グループホームのM&Aを検討する場合は、ビジネスモデルを理解した上で、入居者の状況、入居者の獲得ルート、従業員の状況、施設の状況、運営体制、許認可等を正確に把握しましょう。収益は地方自治体が大半であることから、回収はほぼ確実となりますが、回収期間が長く、運転資金が必要となることからファクタリングの有無を含めた運転資金の状況を確認することが必要となります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

[中小企業経営者の悩みを解決!「M&A・事業承継 相談所」]

~M&Aで会社や事業を売却しようとご検討の中小企業経営者におすすめ~

 

第4回:M&Aの株式価値評価と自社株の相続税評価の違いは何でしょうか?

 

 

〈解説〉

株式会社ストライク

 


M&A(合併・買収)仲介大手のストライク(東証一部上場)が、中小企業の経営者の方々の事業承継やM&Aの疑問や不安にお答えします。

 

 

▷関連記事:売買価格の決め方は?-価値評価の考え方と評価方法の違い-

▷関連記事:M&A における株式評価方法と中小企業のM&A における株式評価方法

▷関連記事:譲渡・M&Aにおいて準備すべきこと~企業価値を向上させ売却金額を増大させるためには?~

 

 

Q.M&Aの株式価値評価と自社株の相続税評価の違いは何でしょうか

 

同族会社で30 年以上、食品卸業を営んできました。息子に会社を承継させるため、顧問税理士に相続税について相談していましたが、突然に息子が病気になってしまいました。回復に相当な時間がかかるため、外部の会社に譲渡することを考えています。顧問税理士に自社株式の相続税評価額を計算してもらっていますが、知人から「M&Aの場合はもっと高く売れる」とも言われています。両者はどう違うのでしょうか?

 

(福岡県 K・Nさん)

 

 

A.M&Aの株式価値評価は、相続税評価の数倍になることもあります

 

一般的に、M&Aで株式を譲渡する場合の価額は、相続税評価額より高くなります。例えば相続税評価額の数倍で会社株式を譲渡したオーナー経営者もおられます。「相続税評価」と「M&Aの株式価値評価」には、決定的な違いがあるためです。

 

親族内で事業を承継する場合、相続税を低く抑えるため、株式価値を低くすることがよくあります。一方で、M&Aによって株式を外部に売却する場合、オーナー経営者は、売却金額の目安となる株式価値を高くしたいと考える傾向があります。

 

M&Aでは時価純資産に「のれん(営業権)」が上乗せされます。「のれん」は会社の無形資産の一種で、会社の買収・合併時の「買収された会社の時価純資産」と「譲渡価額」との差額のことです。例えば将来収益の見込み、信用力やブランドイメージなど、目に見えない収益獲得能力です。市場拡大の見込まれる業種であった場合、他の業種に比べて、のれんは高くなります。他では得難い技術やノウハウ、権益や有力な販路なども、のれんが高くなる要因となります。

 

M&Aで買い手候補が複数になると、価格が高くなることもあります。M&Aの株式価値評価は、評価者の経験や知識によって差異が出ますが、高すぎても安すぎても、現実味のない評価はその後の条件交渉に悪影響を及ぼします。当社は在籍する公認会計士も多く、M&Aの価値評価のご相談も数多く承っております。M&Aの株式価値評価については、信頼のおけるM&A専門会社にご相談されることをお勧めします。

 

 

 

 

 

 

[M&A案件情報(譲渡案件)](2020年12月15日)

-以下のM&A案件(3件)を掲載しております-

 

●財務良好な総合建設業

[業種:総合建設業/所在地:関東地方]

●高品質のハンドメイドシューズを製造

[業種:婦人靴製造業/所在地:西日本]

●海外にも拠点を持つワイヤーハーネスの製造業者

[業種:電気音響機械器具製造業/所在地:東日本]

 

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案件No.SS006563
財務良好な総合建設業

 

(業種分類)建設・土木

(業種)総合建設業

(所在地)関東地方

(直近売上高)5~10億

(従業員数)10~50名

(譲渡スキーム)株式譲渡

(事業概要)一般土木工事(民間・公共)、住宅建築、リノベなど施工範囲広く対応可能

 

〔特徴・強み〕

◇従業員の定着率が良く、有資格者が多数在籍。
◇取引先が分散されており、営業基盤が確立されている。
◇財務堅調推移。

 

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案件No.SS006366
高品質のハンドメイドシューズを製造

 

(業種分類)製造業

(業種)婦人靴製造業

(所在地)西日本

(従業員数)50~100名

(譲渡スキーム)株式譲渡

(事業概要)高品質ハンドメイドシューズの製造販売を手掛ける。

 

〔特徴・強み〕

◇メイドインジャパンに拘り、自社で一貫生産している。
◇軽さと履きやすさにこだわったハンドメイドシューズを製造。
◇自社で職人を抱えており、30代が多く活躍。
◇オリジナルブランドを保有。
◇品質の高さからファンが多い。

 

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案件No.SS005999
海外にも拠点を持つワイヤーハーネスの製造業者

 

(業種分類)製造業

(業種)電気音響機械器具製造業

(所在地)東日本

(直近売上高)5~10億

(従業員数)10~50名

(譲渡スキーム)株式譲渡

(事業概要)ワイヤ―ハーネス、電子ケーブルの製造を行っている。主要取引先と長年の取引が継続出来ており、新規の取引先も拡大している。

 

〔特徴・強み〕

◇中国に関連会社の製造工場を持ち、社内システムにて取引先の需要を先読み船便により輸送コストを安く済ませることが出来る。
◇日本にも独立した生産拠点を有し小回りの利く生産を行っている。
◇英語が得意な人材がおり、海外取引先とは英語にて会議打ち合わせを行うことが出来る。

 

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情報提供会社:株式会社ストライク

 

 

 

 

【免責事項】

・掲載情報は、内容及び正確さに細心の注意をはらい、万全を期しておりますが、人為的なミスや機械的なミス、調査過程におけるミスなどで誤りがある可能性があります。税務研究会及び情報提供会社は、当該情報に基づいて被ったいかなる損害についても一切の責任を負うものではありません。

・掲載情報は公開日時点の情報になります。既に案件が特定の対象会社と交渉に入っている場合や成約している場合もございます。

 

 

 

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[税理士のための税務事例解説]

事業承継やM&Aに関する税務事例について、国税OB税理士が解説する事例研究シリーズです。

今回は、「持続化給付金・家賃支援給付金の収益計上時期」についてです。

 

[関連解説]

■【Q&A】持続化給付金と家賃支援給付金の未収計上について

■【Q&A】経営状況が悪化した場合の定期同額給与 ~コロナウイルスの影響で大幅に売上高が落ち急激に業績が悪化、役員報酬の大幅な減額を検討~

 

 

 


[質問]

持続化給付金、家賃支援給付金の収益計上時期についてご教授ください。

 

今期申請を行い、決算をまたいで翌期に給付決定がなされ、入金がなされる場合、どちらの期で益金算入すべきでしょうか。

 

法人税基本通達2-1-42を準用してよいと判断したのですが、①事実があった(月売上が50%以上下がった)期に概算計上するべきものなのか、②支給決定があった日の属する事業年度で益金算入すべきなのか読み切れず、教えていただけると助かります。

 

持続化給付金は実際の経費の支出を前提としていないため②に該当し、家賃支援給付金の場合は家賃の支払いを前提としているので①に該当するのか①でよいのかと、考えている次第です。

 

[回答]

御質問の場合の給付金に係る収益の計上時期については、御指摘のとおり法基通2—1—42の取扱いの考え方を踏まえて判断することになります。この点、費用と収益の対応関係からすると御指摘のとおりの考え方があり得ます。しかし、持続化給付金及び家賃支援給付金については、法人がこれらの給付金を受けるための特別な行為を行ったというものではなく、法人の意思に関係のない業績の悪化という事実が後発的に生じたため給付されるものであるといえます。

 

このことからすると、持続化給付金及び家賃支援給付金のいずれについても給付が決定した日を含む事業年度の収益に計上することになると考えます。

 

 

 

 

 

税理士懇話会事例データベースより

(2020年9月18日回答)

 

 

 

 

[ご注意]

掲載情報は、解説作成時点の情報です。また、例示された質問のみを前提とした解説となります。類似する全ての事案に当てはまるものではございません。個々の事案につきましては、ご自身の判断と責任のもとで適法性・有用性を考慮してご利用いただくようお願い申し上げます。

 

 

 

 


[解説ニュース]

速報!令和3年度税制改正案

 

〈解説〉

税理士法人タクトコンサルティング(山崎 信義/税理士)

 

 

 

 

~与党税制改正大綱に盛り込まれた資産課税を中心とする改正案の主な内容は以下のとおり~

 

 

■【相続税・贈与税】《「令和3年度税制改正大綱」P45、41~42、42~43、43~44》

1.事業承継税制(非上場株式等に係る相続税の納税猶予の特例措置)【拡充】

非上場株式等に係る相続税の納税猶予の特例措置につき、次に掲げる場合には、後継者が被相続人の相続開始の直前において特例認定承継会社の役員でないときであっても、本特例措置の適用を受けることができる(①は、一般制措置についても同様とされる)。

 

①被相続人が、70歳未満(現行:60歳未満)で死亡した場合
②後継者が、経営承継円滑化法施行規則の規定により都道府県知事の確認を受けた特例承継計画において、特例後継者として記載されている者である場合

 

 

2.直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税措置等【拡充】

(1)令和3年4月1日から同年12月31日までの間に、耐震、省エネ又はバリアフリーの住宅用家屋の新築等に係る契約を締結した場合における非課税限度額が、次のとおり、令和2年4月1日から令和3年3月31日までの間の非課税限度額と同額まで引き上げられる。

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(注)一般の住宅用家屋に係る非課税限度額は、上記の非課税限度額からそれぞれ500万円を減じた額とされる。

 

(2)受贈者が贈与を受けた年分の所得税に係る合計所得金額が 1,000万円以下である場合に限り、床面積要件の下限が40㎡以上(現行:50 ㎡以上)に引き下げられる。
(注)上記の改正は、令和3年1月1日以後に贈与により取得する住宅取得等資金に係る贈与税について適用される。

 

(3)特定の贈与者から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の相続時精算課税制度の特例につき、床面積要件の下限が40㎡以上(現行:50㎡以上)に引き下げられる。
(注)上記の改正は、令和3年1月1日以後に贈与により取得される住宅取得等資金に係る贈与税につき適用される。

 

(4)税務署長が、納税者から提供された既存住宅用家屋等に係る不動産識別事項等を使用して入手等をした当該既存住宅用家屋等の登記事項により床面積要件等を満たすことの確認ができた住宅が、本措置の対象となる既存住宅用家屋等に含めることとされる。
(注)上記の改正は、令和4年1月1日以後に贈与税の申告書を提出する場合について適用される。

 

3.直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税措置【適用期限の延長・見直し】

次の措置を講じた上、その適用期限が令和5年3月31日まで2年延長される。

 

(1)信託等があった日から教育資金管理契約の終了の日までの間に贈与者が死亡した場合(その死亡の日において受贈者が①23歳未満である場合、②学校等に在学している場合、③教育訓練給付金の支給対象となる教育訓練を受講している場合の、いずれかに該当する場合を除く。)には、その死亡の日までの年数にかかわらず、同日における管理残額(=非課税拠出額-教育資金支出額)を、受贈者が当該贈与者から相続等により取得したものとみなされる。

 

(2)上記(1)により相続等により取得したものとみなされる管理残額につき、贈与者の子以外の直系卑属に相続税が課される場合には、当該管理残額に対応する相続税額が、相続税額の2割加算の対象とされる。
(注)上記(1)と(2)の改正は、令和3年4月1日以後の信託等により取得する信託受益権等について適用される。

 

4.直系尊属から結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税措置【適用期限の延長・見直し】

次の措置を講じた上、その適用期限が令和5年3月31日まで2年延長される。

 

(1)贈与者から相続等により取得したものとみなされる管理残額(=非課税拠出額-結婚・子育て資金支出額)につき、当該贈与者の子以外の直系卑属に相続税が課される場合には、当該管理残額に対応する相続税額が、相続税額の2割加算の対象とされる。
(注)上記の改正は、令和3年4月1日以後の信託等により取得する信託受益権等について適用される。

 

(2)民法の成年年齢の引き下げに伴い、受贈者の年齢要件の下限を18歳以上(現行:20 歳以上)に引き下げる。
(注)上記の改正は、令和4年4月1日以後の信託等により取得する信託受益権等について適用される。

 

 

 

 

■【住宅・土地税制】《令和3年度税制改正大綱」P23~24、44、45、52》

1.住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除【拡充】

(1)住宅の取得等で特別特例取得に該当するものをした個人が、その特別特例取得をした家屋を令和3年1月1日から令和4年12月31日までの間にその者の居住の用に供した場合には、住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除及び当該控除の控除期間の3年間延長の特例を適用することができる。
(注)上記の「特別特例取得」とは、その対価の額又は費用の額に含まれる消費税等の税率が10%である場合の住宅の取得等で、次に掲げる区分に応じ、それぞれ次に定める期間内にその契約が締結されているものをいう。
①居住用家屋の新築 …令和2年10月1日から令和3年9月30日までの期間
②居住用家屋で建築後使用されたことのないもの若しくは既存住宅の取得又はその者の居住の用に供する家屋の増改築等…令和2年12月1日から令和3年11月30日までの期間

 

(2) 上記(1)の住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除の特例は、個人が取得等をした床面積が40㎡以上50㎡未満である住宅の用に供する家屋についても適用される。ただし、床面積が40㎡以上50㎡未満である住宅の用に供する家屋に係る上記(1)の住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除の特例は、その者の13年間の控除期間のうち、その年分の所得税に係る合計所得金額が1,000万円を超える年については適用されない。
(注)上記(1)と(2)について、その他の要件等は、現行の住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除と同様とされる。

 

(3)税務署長が納税者から提供された既存住宅等に係る不動産識別事項等を使用して、入手等をした当該既存住宅等の登記事項により床面積要件等を満たすことの確認ができた住宅を、住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除の対象となる既存住宅等に含めることとされる。
(注)上記の改正は、令和4年1月1日以後に確定申告書を提出する場合について適用される。

 

2.宅地等に係る固定資産税等の負担調整措置【拡充】

(1)宅地等に係る固定資産税の負担調整措置は、令和3年度から令和5年度までの間、据置年度に価格の下落修正を行う措置並びに商業地等に係る条例減額制度及び税負担急増土地に係る条例減額制度を含め、現行の仕組みが継続される。

 

(2)(1)に加えて、令和3年度限りの措置として、次の措置が講じられる。
①宅地等(商業地等は負担水準が 60%未満の土地に限り、商業地等以外の宅地等は負担水準が100%未満の土地に限る。)について、令和3年度の課税標準額は令和2年度の課税標準額と同額とされる。
②令和2年度において条例減額制度の適用を受けた土地については、所要の措置が講じられる。

 

(3)宅地等に係る都市計画税の負担調整措置についても、 (1)と(2)の固定資産税の改正に伴う所要の改正が行われる。

 

3.その他【適用期限の延長】

(1)土地の売買による所有権の移転登記等に対する登録免許税の税率の軽減措置の適用期限が、令和5年3月31日まで2年延長される。

 

(2)①宅地評価土地の取得に係る不動産取得税の課税標準を価格の2分の1とする特例措置並びに、②住宅及び土地の取得に係る不動産取得税の標準税率(本則4%)を3%とする特例措置の適用期限が、令和6年3月31日まで3年延長される。

 

 

 

 

■【中小企業税制(法人税)】《「令和3年度税制改正大綱」P68、72~73》

1.中小企業者等の法人税の軽減税率の特例(税率を15%とする特例)【適用期限の延長】

適用期限が2年延長され、令和5年3月31日までに開始する事業年度について適用される。

 

2.中小企業(法人)の経営資源の集約化に資する税制【創設】

(1)青色申告書を提出する中小企業者(適用除外事業者に該当するものを除く。)のうち、令和6年3月31日までの間に、中小企業等経営強化法の経営力向上計画(経営資源集約化措置(仮称)が記載されたものに限る。)の認定を受けたものが、その認定に係る経営力向上計画に従って他の法人の株式等の取得(購入による取得に限る。)をし、かつ、これをその取得の日を含む事業年度終了の日まで引き続き有している場合(その株式等の取得価額が10億円を超える場合を除く。)において、その株式等の価格の低落による損失に備えるため、その株式等の取得価額の70%以下の金額を中小企業事業再編投資損失準備金として積み立てたときは、その積み立てた金額は、その事業年度の法人税の計算上、損金に算入することができる。

 

(2)(1)の準備金は、[1]①その株式等の全部又は一部を有しなくなった場合、②その株式等の帳簿価額を減額した場合等においては取り崩して、その事業年度の法人税の計算上、益金に算入する。さらに、[2]その積み立てた事業年度終了の日の翌日から5年を経過した日を含む事業年度から5年間で、その経過した準備金残高の均等額を取り崩し、各事業年度の法人税の計算上、益金に算入する。
(注)上記の「中小企業者」とは、中小企業等経営強化法の中小企業者等であって、租税特別措置法の中小企業者に該当するものをいう。

 

 

 

税理士法人タクトコンサルティング 「TACTニュース」(2020/12/14)より転載

[M&Aニュース](2020年11月30日〜12月11日)

◇タナベ経営<9644>、経営コンサルティングのグローウィン・パートナーズを子会社化、ソフトバンクグループ<9984>、傘下の米ロボット企業ボストン・ダイナミクスを韓国の現代自動車に売却、◇オンワードホールディングス<8016>、高級ブランド衣料品・シューズのイタリア子会社を譲渡、◇サイバーセキュリティクラウド<4493>、ソフト開発のソフテックを子会社化、◇オプテックスグループ<6914>、産業用コンピューターシステム開発のサンリツオートメイションを子会社化、◇ソニー<6758>、AT&T傘下で米アニメ配信大手「クランチロール」の運営会社イレーションを1222億円で買収、◇こころネット<6060>、サ高住運営などの介護事業子会社「こころガーデン」の全事業を譲渡、◇小津産業<7487>、家庭紙・日用雑貨卸売子会社のアズフィットをセンコーグループホールディングス<9069>に譲渡 ほか

 

 

 

ソフトバンクグループ<9984>、傘下の米ロボット企業ボストン・ダイナミクスを韓国の現代自動車に売却

2020-12-11

ソフトバンクグループ(SBG)は11日、傘下の米国ロボットメーカー、ボストン・ダイナミクス(売上高2億800万円、純資産283億円)を韓国の現代自動車に売却することで合意したと発表した。現代自動車が約80%の株式を取得し、SBGは子会社を通じて約20%を継続保有することでボストン・ダイナミクスの経営に一定に関与する。売却価額は非公表だが、同社の株式価値は総額11億円(約1144億円)としている。2021年6月までに売却完了を見込む。

ボストンは1992年、米マサチューセッツ工科大学(MIT)発の大学ベンチャーとして設立。2013年に米グーグルが買収した。その後、SBGは2018年にグーグルの親会社アルファベットから同社を買収し、全株式を保有する。

オンワードホールディングス<8016>、高級ブランド衣料品・シューズのイタリア子会社を譲渡

2020-12-11

オンワードホールディングスは、高級ブランドの衣料品・シューズを製造販売するイタリア子会社のオンワードラグジュアリーグループ(OLG、フィレンツェ。売上高157億円、営業利益△18億6000万円)の全株式を、同社経営陣を中心とする現地投資会社に譲渡した。11日付。新型コロナの感染拡大で欧州を中心とした海外事業の経営環境が悪化する中、グローバル事業構造改革の一環として不採算事業を切り離した。譲渡価額は非公表。

サイバーセキュリティクラウド<4493>、ソフト開発のソフテックを子会社化

2020-12-11

サイバーセキュリティクラウドは、ソフト開発のソフテック(東京都足立区。売上高2億8900万円、営業利益8600万円、純資産3億4700万円)の全株式を取得し子会社化することを決めた。Webサイト・サーバーの脆弱性管理に強みを持つソフテックを傘下に取り込み、Webセキュリティー分野の技術・サービス向上につなげる。取得価額は4億3200万円。取得予定日は2020年12月18日。

ソフテックは1991年に設立。脆弱性情報サービス「SIDfm」事業とWebセキュリティー診断事業を手がけている。

オプテックスグループ<6914>、産業用コンピューターシステム開発のサンリツオートメイションを子会社化

2020-12-11

オプテックスグループは、産業用コンピューターシステムの開発・製造を手がけるサンリツオートメイション(東京都町田市。売上高37億9000万円、営業利益3億5100万円、純資産24億6000万円)の全株式を取得し子会社化することを決めた。両社の技術力や顧客基盤を融合し、交通制御・駐車場管理、空港・鉄道などの安全管理や、IoT(モノのインターネット)関連分野で事業開拓を推し進める。取得価額は非公表。取得予定日は2020年12月18日。

サンリツは1971年に設立で、現在、筆頭株主のトヨタ自動車が40.1%を出資する。産業分野用に組み込みボード製品をはじめ、CPUボード、I/Oボード、コントローラーなど組込用コンピューターに必要な製品を提供している。

ソニー<6758>、AT&T傘下で米アニメ配信大手「クランチロール」の運営会社イレーションを1222億円で買収

2020-12-10

ソニーは10日、米通信大手AT&Tの子会社でアニメ配信事業「クランチロール」を運営する米イレーション・ホールディングスを買収することで合意したと発表した。全株式を約1222億円(11億7500万ドル)で取得する。クランチロールは200以上の国・地域で300万人の有料会員と9000万人の無料会員を持ち、アニメ、ドラマ、マンガなどの映像コンテンツやモバイルゲームを配信している。ソニーは同社を傘下に取り込み、エンターテイメント事業の成長を加速させる。買収完了は関係当局の承認などを条件としており、現時点で未確定。

こころネット<6060>、サ高住運営などの介護事業子会社「こころガーデン」の全事業を譲渡

2020-12-10

こころネットは介護事業を手がける全額出資子会社、こころガーデン(福島市)の全事業を譲渡することを決めた。譲渡先と譲渡価額は最終契約後に開示する予定。こころガーデンは2013年設立で、福島市内でサービス付き高齢者向け住宅「こころガーデン八島田」を運営するほか、訪問介護、通所介護、居宅介護支援などを展開する。譲渡対象事業の直近業績は売上高8300万円、営業赤字800万円。譲渡予定日は2021年1月31日。

北日本紡績<3409>、ヘルスケア製品販売の中部薬品工業を子会社化

2020-12-10

北日本紡績は、ヘルスケア製品販売の中部薬品工業(愛知県北名古屋市。売上高1億3000万円、営業利益0円、純資産1200万円)を株式交換で子会社化することを決めた。マスク製造を第一弾として新規参入したヘルスケア事業の成長を促進するのが狙い。

傘下に収める中部薬品工業は歯磨きパウダー、健康茶、のど飴、肝油ドロップなどのヘルスケア商材を国内の大手ドラックストア、国内外のEC(電子商取引)サイトなどに販売している。北日本紡績は高齢化や平均寿命の延伸などで今後成長が期待されるとして、ヘルスケア事業に今年参入したばかり。

株式交換比率は北日本紡績1:中部薬品工業50.77で、中部薬品1株に対し北日本紡績株の50.77株を割り当てる。株式交換予定日は2021年1月12日。

小津産業<7487>、家庭紙・日用雑貨卸売子会社のアズフィットをセンコーグループホールディングス<9069>に譲渡

2020-12-10

小津産業は、全額出資子会社で家庭紙・日用雑貨卸売のアズフィット(東京都中央区。売上高273億円、営業利益4900万円、純資産31億円)の株式80%を、センコーグループホールディングスに譲渡することを決めた。譲渡価額は非公表。譲渡予定日は2021年1月。

アズフィットは首都圏を中心にドラックストア、スーパーマーケット、ホームセンターなどに家庭紙や日用雑貨を販売している。譲渡先のセンコーも同じく家庭紙卸売業の子会社を持つ。家庭紙卸売をめぐっては物流環境や小売市場の変化などで、卸売業に求められる要求レベルが高まっており、総合物流企業のセンコーの傘下で強固な事業基盤を目指すことにした。小津産業はアズフィット株の20%を引き続き保有し、同社を持ち分法関連会社とする。

日本精工<6471>、英スペクトリスから設備・製造ラインの状態監視システム事業を211億円で取得

2020-12-10

日本精工は英国の精密機器メーカー、スペクトリスから各種設備・製造ラインの状態を監視するコンディショニング・モニタリング・システム(CMS)事業を取得することを決めた。CMS事業は事後保全・予防保全に続く次世代の保全手法とされる予知保全の分野で成長が期待されている。取得価額は約211億円(約1億6900万ユーロ)。2021年3月末に取得する予定。

スペクトリスが手がけるCMS事業は北海油田リグ(掘削機)の常時監視を祖業とし、1942年にデンマークで始まった。現在では、石油化学コンビナートや発電プラント、風力発電などで使われるポンプ、タービン、コンプレッサー、発電機といった回転機械向けの設備保全や状態監視の世界的大手に数えられる。スペクトリスはロンドン証券取引所の上場企業。

日本精工は軸受(ベアリング)の国内最大手。同社が今後の重点分野の一つに掲げる予知保全は設備や製造ラインの異常や故障の兆候を早期に発見してトラブルを未然に防ぐ手法で、保全にとどまらず、生産性向上や品質改善への貢献が期待されている。

ジェクシード<3719>、教育事業のXYEEDを子会社化

2020-12-09

ジェクシードは、教育事業のXYEED(東京都千代田区)を第三者割当増資の引き受けなどを通じて全株式を取得し、子会社化することを決めた。ジェクシードはITシステム構築を主力事業とする。XYEEDを傘下に取り込み、教育関連のプラットフォーム事業を推進する。XYEEDの設立は2020年10月。取得価額は1000万円(うち株式譲渡50万円)。取得予定日は2020年12月23日。

ドリームインキュベータ<4310>、アウトドア・スポーツ・料理関連など中堅出版社「枻出版社」の一部事業など取得

2020-12-09

ドリームインキュベータは新設子会社を通じて、アウトドア・スポーツ・料理などに関する中堅出版社の枻出版社(東京都世田谷区)の一部事業と同社子会社で映像・Webコンテンツ企画制作のピークス(同)の全事業を取得することを決めた。取得価額は非公表。取得予定日は2021年2月1日。

ドリームインキュベータは今回の事業取得に合わせて受け皿会社として、対象企業と同名の新会社「ピークス」(東京都千代田区)を設立した。

タナベ経営<9644>、経営コンサルティングのグローウィン・パートナーズを子会社化

2020-12-09

タナベ経営は、経営コンサルティング会社のグローウィン・パートナーズ(東京都千代田区。売上高10億7000万円、営業利益9900万円、純資産2億4100万円)を子会社化することを決めた。株式譲受と第三者割当増資引き受けにより、50.1%の株式を取得する。取得価額は総額8億200万円。取得予定日は2021年1月29日。

グローウィン・パートナーズは2004年に設立。M&A全般の支援や生産性向上に向けたDX(デジタルトランスフォーメーション)戦略立案などで実績を積んできた。タナベはグローウィンと連携し、事業承継や業態転換などに伴うM&Aニーズや、経理・財務部門などバックオフィス業務のデジタル化支援への対応力向上を目指す。

三洋貿易<3176>、研究機器向け試験片・部品を製造販売するテストマテリアルズを子会社化

2020-12-09

三洋貿易は傘下企業を通じて、研究機器向け試験片・部品の製造販売を手がけるテストマテリアルズ(東京都千代田区。売上高8100万円、純資産1600万円)の全株式を取得し子会社化することを決めた。三洋貿易グループの理化学研究機器事業との相乗効果を期待している。テストマテリアルズは1987年に設立。取得価額は非公表。取得予定日は2020年12月18日。

新都ホールディングス<2776>、再生プラスチックリサイクル事業の大都商会を子会社化

2020-12-08

新都ホールディングスは、再生プラスチックリサイクル事業を手がける大都商会(東京都豊島区。売上高3億4300万円、営業利益△660万円、純資産2億600万円)を株式交換により完全子会社化することを決めた。主力である貿易事業の拡大が狙いで、プラスチック再生製品の中国向け輸出を推し進める。新都HDの鄧明輝社長は現在、大都商会の代表取締役を兼務している。

株式交換比率は新都HD1:大都商会3409.10。株式交換予定日は2020年12月30日。

三菱自動車、希望退職に予定を約2割上回る654人が応募

2020-12-07

三菱自動車は7日、間接部門を対象に実施した希望退職に654人の応募があったと発表した。募集期間は11月16日~30日。550人を予定していた募集人員を応募が約2割上回った。退職日は2021年1月31日付。三菱自動車は今年7月に2021年3月期の最終損益が2年連続で赤字となる見通しを受けて構造改革を発表し、この中で間接部門について人件費圧縮のため、新規採用抑制や希望退職制度の実施などを盛り込んでいた。

希望退職の対象は45歳以上60歳未満で勤続1年以上の管理職社員と一般社員(純間接員に限る。医務系列社員は除く)、60歳以上65歳未満の定年後再雇用者(同)。過去の拡大路線により人員と労務費が大幅に増加し、年齢構成の高齢化や管理職比率の高さが課題となっていたとしている。

割増退職金を支給し、再就職支援サービスを提供する。割増退職金など関連費用約72億円を2021年3月期に特別損失として計上する。

デンソー<6902>、持ち分法適用関連会社で自動車時計製造のジェコー<7768>を株式交換で完全子会社化

2020-12-07

デンソーは、持ち分法適用関連会社で自動車時計の製造を主力とするジェコーを株式交換で完全子会社化することを決めた。デンソーは株式41.89%を持つ筆頭株主で、ジェコーの売上高の約77%はデンソー向けという関係にある。需要家の自動車業界で電動化、自動運転など「CASE」と呼ばれる変革の動きが加速する中、経営を一体化させることでデンソーグループとしての競争力強化につなげる。

株式交換比率はデンソー1:ジェコー0.55で、ジェコー1株にデンソー株の0.55株を割り当てる。株式交換予定日は2021年4月1日。ジェコーの東証2部上場は廃止となる。

ジェコーは1952年にラジオコントロール付き真空時計の生産を目的に、日本真空時計として設立。現在は自動車時計、エアコンパネル、コンビネーションメーターなど表示装置を中心に、電流センサー、安全運転支援部品などを手がける。トヨタ自動車系の自動車部品メーカーで、2002年からデンソーが筆頭株主。

藤田観光、早期希望退職者を募集 創業来最大の危機に対処へ

2020-12-04

藤田観光は4日、早期希望退職者を募集すると発表した。新型コロナの影響拡大による経営危機の克服に向けた事業構造改革の一環。本体の正社員・契約社員とグループ会社社員のうち、40歳以上で勤続年数が社員は10年以上、契約社員は5年以上を対象とし、募集期間は2021年2月5日~15日(退職日は3月31日)。募集人数は未定としている。所定の退職金に加え、転進援助金を上乗せ支給し、再就職を支援する。

藤田観光は椿山荘(東京)、太閤園(大阪)に代表される宴会施設や、ワシントンホテルの展開を主力とする。しかし、コロナ禍で需要が急減し、厳しい業績を余儀なくされている。同社は創業以来最大の危機だとして、7月に緊急対策本部を設置。不採算事業所の撤退・縮小、新規出店計画の中止、賃料減額、賞与ゼロと給与・諸手当の減額を通じた賃金カット、退職不補充などのコスト縮減策を推し進めている。

11月に発表した2020年1~9月期業績は売上高が前年同期比64%減の176億円、営業赤字167億円(前年同期は7億2000万円の赤字)、最終赤字171億円(同4億2100万円の赤字)だった。

投資会社のライジング・ジャパン・エクイティ、尾張精機<7249>をTOBで子会社化

2020-12-04

尾張精機は4日、投資会社のライジング・ジャパン・エクイティ(RJE、東京都千代田区)が同社に対してTOB(株式公開買い付け)を実施すると発表した。RJEは尾張精機の完全子会社化を目指しており、尾張精機の筆頭株主の日立金属、2位株主のトヨタ自動車などはTOBに応募を決めている。買付代金は最大約39億2900万円。尾張精機はTOBに賛同している。尾張精機の名証2部上場は廃止となる見通し。

TOB主体はRJEが組成したファンドが設立した会社のプレサイス・プロダクツ・ホールディングス。尾張精機株の買付価格は1株3370円。買付予定数は116万5914株。買付予定数の下限は所有割合66.67%にあたる77万7300株とした。

買付期間は12月7日~2021年1月22日。決済の開始日は2021年1月29日。公開買付代理人はSMBC日興証券。

尾張精機は鍛造品やネジ類の製造を主力とし、売上高の約98%を自動車業界向けで占める。自動車業界は100年に1度の変革期とされ、生き残りに向けて部品メーカーは環境変化への的確な対応が求められている。ファンドの支援を得て成長戦略を実行する。

RJEは三井住友銀行、住友商事、三井住友信託銀行を主要スポンサーとする。

LIXIL<5938>、地盤・建物調査子会社のジャパンホームシールドをみずほキャピタルパートナーズに譲渡

2020-12-04

LIXIL(12月1日にLIXILグループから社名変更)は、地盤調査・建物調査を手がける100%子会社のジャパンホームシールド(東京都墨田区。売上高120億円、営業利益8億円、純資産40億4000万円)の全株式を、投資会社のみずほキャピタルパートナーズ(東京都千代田区)に譲渡することを決めた。譲渡価額は非公表。2021年2月に譲渡予定。

ジャパンホームシールドは1990年に設立し、累計で地盤調査180万棟、建物検査20万戸を超える実績を持つ。LIXILは経営効率を高めるため、基幹事業の建材・住設機器分野に経営資源を集中させており、今回のジャパンホームシールド切り離しもその一環。

オリンパス<7733>、呼吸器関連医療機器メーカーの米Veran Medicalを子会社化

2020-12-04

オリンパスは4日、呼吸器関連医療機器メーカーの米Veran Medical Technologies(VMT、ミズーリ州セントルイス。売上高30億2000万円、営業利益△12億1000万円)の全株式を取得し、子会社化すると発表した。取得金額は約3億ドル(約312億円)。取得予定日は2020年12月31日。

Veranは2003年に設立。気管支内視鏡を用いた治療・診断を専門分野とし、気管支の末梢部分へのスムーズな到達をサポートする電磁ナビゲーションシステムなどに強みを持つ。オリンパスは同社を傘下に取り込み、呼吸器科分野の製品構成を拡充し、事業拡大につなげる。

オリンパスは治療機器事業に関し、消化器科、泌尿器科を並ぶ重点分野に呼吸器科を位置づけ、業界トップクラスのポジション確保を目指している。今回の買収は、オリンパスの米子会社が設立した特定目的会社(SPC)とVMTとの合併契約に基づき、VMTの全株式を取得する。

ホッカンホールディングス<5902>、スープ・タレ製造の真喜食品を子会社化

2020-12-03

ホッカンホールディングスは、スープ・タレ製造の真喜食品(新潟市。売上高9億1700万円、純資産6億8300万円)の全株式を取得し子会社化することを決めた。ホッカン子会社で清涼飲料受託充填事業を手がける日本キャンパック(東京都千代田区)が計画している食品分野進出の一環。取得価額は非公表。取得予定日は2021年2月1日。

真喜食品は1977年設立で、鍋やおでんなどのスープ・タレのほか、近年は健康食品分野への展開に力を入れている。

三井E&Sホールディングス<7003>、傘下の三井E&S環境エンジニアリングをJFEエンジニアリングに譲渡

2020-12-03

三井E&Sホールディングスは傘下の三井E&S環境エンジニアリング(MKE、千葉市。売上高181億円、営業利益9億8800万円、純資産31億円)の全株式を、JFEエンジニアリング(東京都千代田区)に譲渡することを決めた。この前提として、子会社を通じて保有する別海バイオガス発電(北海道別海町)、西胆振環境(北海道室蘭市)の全保有株をMKEが承継する。

三井E&Sは経営再建の一環として、環境リサイクル・バイオガス関連の事業をMKEに集約したうえで、グループ外企業への譲渡を含めて検討を進めていた。MKE株式の譲渡価額は非公表。譲渡予定日は2021年4月1日。

曙ブレーキ工業、国内生産拠点で180人程度の早期退職を実施

2020-12-01

経営再建中の曙ブレーキ工業は1日、国内生産拠点で180人程度の早期退職措置を実施すると発表した。募集期間は12月21日~2021年2月12日(退職日は2021年3月31日付)。国内生産再編に伴う人員適正化が目的。同社は今年2~3月に本社間接系社員を対象に200人規模の早期退職を実施(154人応募)しており、これに続く第二弾となる。

今回の早期退職措置は曙ブレーキ山形製造(山形県寒河江市)、曙ブレーキ福島製造(福島県桑折町)、曙ブレーキ岩槻製造(さいたま市)、曙ブレーキ山陽製造(岡山県総社市)のグループ4工場のほか、運送・梱包のアロックス(さいたま市)、曙ブレーキ工業本体(生産部門、工場再編推進室、生産技術部など)。このうち、岩槻製造、福島製造については生産状況により一部は9月30日退職とする。

所定の退職金に加えて特別加算金を支給し、再就職支援サービスを提供する。

曙ブレーキは業績悪化に伴い私的整理の一種である事業再生ADR(裁判外紛争解決手続き)を申請し、昨年9月に再生計画が承認された。再生計画では国内4工場の縮小などが盛り込まれている。

ツルハホールディングス<3391>、鳥取県で調剤薬局経営の「たかきファーマシー」から1店舗を取得

2020-12-01

ツルハホールディングスは傘下企業を通じて、調剤薬局経営のたかきファーマシー(鳥取県米子市)から1店舗を取得することを決めた。ツルハは中国・九州地区でドラッグストアを中心に285店舗(うち調剤併設79店舗、調剤専門薬局20店舗)を展開する。取得価額は非公表。取得予定日は2021年2月1日。

ココカラファイン<3098>、ルーカスから兵庫県内の調剤薬局2店舗を取得

2020-12-01

ココカラファインは傘下企業を通じて、調剤薬局経営のルーカス(神戸市)から2店舗を1日付で取得した。兵庫県内でのドミナント戦略の一環。取得価額は非公表。

ココカラファイン<3098>、日本メディケアから調剤薬局1店舗を取得

2020-12-01

ココカラファインは傘下企業を通じて、調剤薬局経営の日本メディケア(東京都港区)から1店舗を1日付で取得した。ドミナント(地域集中出店)の一助。取得価額は非公表。

トナミホールディングス<9070>、倉庫・運輸業の御幸倉庫を子会社化

2020-12-01

トナミホールディングスは、倉庫・運輸業の御幸倉庫(愛知県春日井市。売上高8億5000万円)の全株式を取得し子会社化することを決めた。御幸倉庫は中部地区を地盤とし、メーカー物流に強みを持つ。取得価額は非公表。取得予定日は2020年12月21日。

ユアサ商事<8074>、切削工具商社の中川金属を子会社化

2020-12-01

ユアサ商事は、切削工具商社の中川金属(東京都千代田区。売上高47億円)の全株式を取得し、1日付で子会社化した。ユアサは産業機器部門の中核事業である切削工具販売事業の強化につなげる。中川金属は創業84年で、全国に11営業拠点を持つ。取得価額は非公表。

エルテス<3967>、警備業のアサヒ安全業務社を子会社化

2020-11-30

エルテスは傘下企業を通じて、警備業のアサヒ安全業務社(横浜市。売上高8億1000万円、営業利益7510万円、純資産4億6000万円)の全株式を取得し子会社化することを決めた。エルテスはソーシャルリスク、情報漏洩、内部不正といった内部脅威リスクの予兆検知や鎮静化対応サービスを主力とする。デジタル新時代の新たな警備業を創出するためには自社で警備業を手がけ、各種検証などを行う必要があると判断した。

取得価額は6億5000万円。取得予定日は2020年12月25日。

エルテスは2017年に、伝統的な警備業とデジタル技術の融合を目的とする子会社のエルテスセキュリティインテリジェンス(東京都千代田区)を設立。セキュリティー事業のDX(デジタルトランスフォーメーション)をめぐる取り組みに着手した。

今回子会社化するアサヒ安全業務社は1973年に設立。鉄道関連工事での列車監視業務を中心に雑踏、交通誘導、常駐保安警備などを提供している。

THEグローバル社<3271>、宿泊施設経営・運営受託子会社のグローバル・ホテルマネジメントをRマネジメントに譲渡

2020-11-30

THEグローバル社は、宿泊施設の経営・運営受託子会社のグローバル・ホテルマネジメント(東京都新宿区。売上高8億9800万円、営業利益△18億8000万円、純資産△13億2000万円)の全株式を、Rマネジメント合同会社(東京都新宿区)に譲渡した。30日付。新型コロナウイルス感染症拡大の影響で先行き不透明な状態が続く中、グループの経営再建を促進するのが狙い。譲渡価額は非公表。

極東貿易<8093>、ミツトヨから地震計関連事業を取得

2020-11-30

極東貿易は子会社を通じて、計測器大手メーカーのミツトヨ(川崎市)から地震計関連事業を取得することを決めた。電力設備など重要インフラに対する機器の販売や保守・サービス業務の充実につなげる。地震計関連の事業開始は2022年4月を予定する。取得価額、取得日は非公表。

台湾Walsin傘下の釜屋電機、電子部品メーカーの双信電機<6938>をTOBで子会社化

2020-11-30

釜屋電機(神奈川県大和市)は30日、電子部品メーカー中堅の双信電機に対して子会社化を目的にTOB(株式公開買い付け)を実施すると発表した。過半の株式取得を目指しており、買付代金は最大35億9500万円。双信電機はTOBに賛同している。公開買付者の釜屋電機は台湾の電子部品メーカー、華新科技股份有限公司(Walsin)の傘下企業。双信電機の東証1部上場は維持される見通し。

双信電機株の約40%を保有する筆頭株主の日本ガイシは35%程度についてTOBに応じ、約5%を継続所有する。釜屋電機による買付価格は1株460円で、TOB公表前営業日の終値と同額。買付予定数は781万5600株。予定通りに買い付けができれば、所有割合は50.1%となる。買付予定数の下限は所有割合35.64%にあたる556万株に設定した。

買付期間は12月1日~2021年1月4日までの21営業日。決済の開始日は2021年1月12日。公開買付代理人は野村証券。

双信電機は1938年に天然鉱物の雲母を原料とした無線機に使われるマイカコンデンサーの専業メーカーとして発足した。

SHIFT<3697>、ITインフラ設計・構築のサーベイジシステムを子会社化

2020-11-30

SHIFTは傘下企業を通じて、ITインフラ設計・構築のサーベイジシステム(東京都千代田区。売上高1億9200万円、営業利益△380万円、純資産2830万円)の全株式を取得し子会社化することを決めた。通信ネットワーク・インテグレーション領域でのサービス強化が狙い。取得価額は非公表。取得日は2020年11月30日。

 

 

 

 

情報提供:株式会社ストライク

[M&A案件情報(譲渡案件)](2020年12月8日)

-以下のM&A案件(2件)を掲載しております-

 

●【高収益・財務内容良好案件】ダクト製造及びダクト工事業者

[業種:管工事業/所在地:関東地方]

●シューズ・アパレル・雑貨等の販売会社

[業種:繊維・衣服等卸売業/所在地:関東地方]

 

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案件No.SS006643
【高収益・財務内容良好案件】ダクト製造及びダクト工事業者

 

(業種分類)建設・土木

(業種)管工事業

(所在地)関東地方

(直近売上高)10~50億

(従業員数)10~50名

(譲渡スキーム)株式譲渡

(事業概要)関東地方にてダクト製造及びダクト工事業を営む企業

 

〔特徴・強み〕

◇ダクト製造業及びダクト工事業を営む企業
◇サブコンからの信頼が厚く、施工件数も非常に多い
◇確かな技術力と施工能力を背景に、盤石な営業基盤を構築
◇財務内容良好、業績右肩上がり

 

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案件No.SS006549
シューズ・アパレル・雑貨等の販売会社

 

(業種分類)商社・卸・代理店

(業種)繊維・衣服等卸売業

(所在地)関東地方

(直近売上高)10~50億

(従業員数)10~50名

(譲渡スキーム)株式譲渡

(事業概要)シューズ・アパレル・雑貨等の販売会社

 

〔特徴・強み〕

◇自社ブランドを複数有し、多数の販売チャネルにて展開中
◇卸売事業、小売事業(EC事業含む)のバランスのとれた両軸経営と高収益構造

 

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情報提供会社:株式会社ストライク

 

 

 

 

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・掲載情報は、内容及び正確さに細心の注意をはらい、万全を期しておりますが、人為的なミスや機械的なミス、調査過程におけるミスなどで誤りがある可能性があります。税務研究会及び情報提供会社は、当該情報に基づいて被ったいかなる損害についても一切の責任を負うものではありません。

・掲載情報は公開日時点の情報になります。既に案件が特定の対象会社と交渉に入っている場合や成約している場合もございます。

 

 

 

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[会計事務所の事業承継・M&Aの実務]

第3回:M&Aの譲渡対価とその後の処遇

 

[解説]

辻・本郷税理士法人 辻・本郷ビジネスコンサルティング株式会社

黒仁田健 土橋道章

 

〈目次〉

⑴譲渡対価の計算方法

⑵譲渡対価の支払方法と事後的な価格調整条項

⑶承継後にかかる負担の確認も

⑷経営統合後の待遇等について

⑸役員退職慰労金

⑹従業員退職金

 

 

 

 

▷関連記事:いくらで売却できる?-譲渡金額の算出方法-  ~ゼロから学ぶ「M&A超入門」

▷関連記事:株式譲渡スキームにおける役員慰労退職金支給~現金支給・現物支給の有利不利判定~

 

⑴譲渡対価の計算方法

譲渡対価について、ディスカウント・キャッシュ・フロー等の収益還元的な考えに基づく評価方法や、時価純資産等の静的な評価方法などが考えられます。

 

一方で、一身専属に基づく士業という事業の特殊性から、その収益獲得の源泉が、代表者の個人的な実力によるところもあれば、数十人規模での組織的な実力によるところもあり、その評価はケースによりまちまちなのが実態です。

 

そのような中で実務的な慣習として、年間報酬総額に一定率を乗じて算出されるケースが多いのも事実です。顧問報酬、税務申告報酬などの継続的に収入が見込める報酬をベースに検討されますが、よほどスポット業務(相続税や保険手数料など)の売上割合が多くない限り、別途計算はせず、年間報酬総額として算出します。

 

例えば、法人の顧問報酬で毎年3,000万円、個人の確定申告報酬で毎年1,000万円、相続税の申告報酬で1,000万円が年間の報酬であった場合、毎年継続的に見込まれる4,000万円が年間報酬総額となります。

 

また、譲渡対価の検討時には、譲渡資産の特定をしておかないと、どこまでが対象かわからないので、対象範囲を契約内容に盛り込んでおく必要があります。

 

 

⑵譲渡対価の支払方法と事後的な価格調整条項

譲渡対価の支払方法については、

①クロージング時に一括で支払う方法

②クロージング時に一部を支払い、分割又は一定期間経過後に残金を支払う方法

があります。

 

売主にとっては、①の方法が望ましい反面、買主にとっては資金調達の問題や譲渡後の顧問契約や雇用契約の継続が未確定であることから、②の方法が望ましいこととなります。

 

また、顧問契約等の継続状況に応じて、譲渡後一定期間を経過した後、譲渡対価を見直す方式をとることも可能ですが、継続をしなかった理由が買主側に起因することも想定されるため、支払方法や事後的な譲渡対価の見直しは慎重に協議したうえで、契約書に明記する必要があります。

 

 

さらに、譲渡対価の分割又は一定期間経過後に残金を支払う方法を選んでいて、売主が死亡したときは、その相続人が債権者となります。売主及び買主はその点も留意して、支払方法や事後的な譲渡対価の価格調整条項を設定します。

 

 

⑶承継後にかかる負担の確認も

譲渡対価の決定に際して、承継後にかかる費用も確認する必要があります。

 

継続的に発生する経費もありますが、比較的大きな支出は会計ソフトにかかるものとなり、使用しているソフトのバージョンや更新時期等を確認し、その負担も考慮して譲渡対価を決める必要もありますので、注意してください。

 

また、事務所を借りている場合には、更新時期に手数料が発生しますので、確認が必要となります。これらの後発的に発生が見込まれる費用について、譲渡対価の算定上、織り込んでおく必要があります。

 

 

⑷経営統合後の待遇等について

一般的に承継元の代表者は、顧問先や従業員の引継ぎの関係から、事業承継後も一定期間は社員税理士や顧問として関与することになります。社用車や交際費の利用など、事前に細かく取り決めをしておくと後々のトラブルを回避できます。

 

また、競合避止義務との関係がありますが、顧問先の監査役に就任しているケースも見受けられます。このような場合の取扱いについて、どのようにするかの取り決めを統合前に行っていくことと、それを踏まえて譲渡対価の算定を行う必要があります。

 

 

⑸役員退職慰労金

税理士法人を取得する場合に、承継元の代表が退任する際に退職慰労金の支給があるときは、当然、出資持分の譲渡対価の金額は減少します。退職金は実際に退職するまで支給ができない点で、承継元にとっては、受領できるまで時間を要する一方、承継先にとっては退職までの期間、きちんと承継業務に従事できる点と、支給時には法人にとって損金となるため、税務メリットを得ることができます。

 

なお、個人事業で行っている場合には、退職金という考え方は発生しません。

 

 

⑹従業員退職金

従業員の退職金制度として、特定退職金共済制度に加入しているケースが見受けられます。また、独自の退職金制度を導入している事務所もありますので、これらの退職金制度を継続するのか、継続する場合には譲渡対価に反映するべきか検討が必要です。

 

 

 

 

 

▷参考URL:M&A各種契約書等のひな形(書籍『会計事務所の事業承継・M&Aの実務』掲載資料データ)

 

[M&A案件情報(譲渡案件)](2020年12月1日)

-以下のM&A案件(6件)を掲載しております-

 

●【高収益・財務良好】業務用食品卸売業

[業種:その他の食料・飲料卸売業/所在地:関東地方]

●【自社工場保有】 関東地方にて複数店舗展開するクリーニング店

[業種:クリーニング業/所在地:関東地方]

●創業50年を超える熱絶縁工事業者

[業種:熱絶縁工事業/所在地:関西地方]

●建築リフォーム工事を得意とする建築会社

[業種:建築リフォーム工事業/所在地:関東地方]

●業歴長く、関西で地盤を形成する電材商社

[業種:電気機械器具卸売業/所在地:関西地方]

●特定の層に極めて高い人気を誇る木造アパートの設計・施工業者

[業種:建築工事業/所在地:中部地方]

 

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案件No.SS006605
【高収益・財務良好】業務用食品卸売業

 

(業種分類)商社・卸・代理店

(業種)その他の食料・飲料卸売業

(所在地)関東地方

(直近売上高)10~50億

(従業員数)10~50名

(譲渡スキーム)株式譲渡

(事業概要)業務用食品卸

 

〔特徴・強み〕

◇特定の業界に特化した業務用食品卸売業者
◇同業比高い利益率を確保
◇財務内容も良好
◇自社の成長に資する相乗効果のある企業との提携を希望

 

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案件No.SS006511
【自社工場保有】 関東地方にて複数店舗展開するクリーニング店

 

(業種分類)その他

(業種)クリーニング業

(所在地)関東地方

(直近売上高)1~5億

(従業員数50~100名

(譲渡スキーム株式譲渡

(事業概要関東地方にて複数店舗展開するクリーニング店

 

〔特徴・強み〕

◇自社工場を保有。
◇業歴が長く、質の高いサービスを提供。
◇後継者不在により譲渡を予定。

 

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案件No.SS006470
創業50年を超える熱絶縁工事業者

 

(業種分類)建設・土木

(業種)熱絶縁工事業

(所在地)関西地方

(直近売上高)1~5億

(従業員数)10名以下

(譲渡スキーム)株式譲渡

(事業概要)熱絶縁工事業

 

〔特徴・強み〕

◇ビル、マンション、商業施設テナント、プラント(廃棄物処理、水処理)等を得意とする。
◇機械用ボイラー、熱交換器、各種機器の熱絶縁工事についても年間相応の実績あり。
◇無借金であり、財務内容良好。

 

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案件No.SS006330
建築リフォーム工事を得意とする建築会社

 

(業種分類)建設・土木

(業種)建築リフォーム工事業

(所在地)関東地方

(直近売上高)1~5億

(従業員数)10名以下

(譲渡スキーム)株式譲渡

(事業概要)建築リフォーム工事を得意とする建築工事会社

 

〔特徴・強み〕

◇建築リフォーム工事、注文住宅の施工、耐震工事等を行う
◇民間工事から官公庁工事まで幅広く元請工事を受注
◇長年の業歴を有する

 

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 案件No.SS006285
業歴長く、関西で地盤を形成する電材商社

 

(業種分類)商社・卸・代理店

(業種)電気機械器具卸売業

(所在地)関西地方

(直近売上高)5~10億

(従業員数)10~50名

(譲渡スキーム)株式譲渡

(事業概要)電設資材の卸売

 

〔特徴・強み〕

◇業歴長く関西圏で実績を積み重ねる。
◇大手との直接取引あり。取引先との強固な関係性が強み。
◇自社で配送用の車両を保有。現場に寄り添った丁寧な配送も強み。

 

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 案件No.SS005492
特定の層に極めて高い人気を誇る木造アパートの設計・施工業者

 

(業種分類)建設・土木

(業種)建築工事業

(所在地)中部地方

(直近売上高)5~10億

(従業員数)10~50名

(譲渡スキーム)株式譲渡

(事業概要)中部地方の中核都市周辺で事業を展開 土地オーナー(富裕層)からの受注がメイン

 

〔特徴・強み〕

◇全国展開が狙える特徴を持つ物件を提供
◇入居者となる層のデータを多数保有しているため空室リスクが低く、オーナーの満足度は高水準
◇狭小地に高利回り物件を提供可能なノウハウを保有

 

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情報提供会社:株式会社ストライク

 

 

 

 

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[M&Aニュース](2020年11月16日〜11月27日)

◇DCMホールディングス、島忠へのTOB期間を8営業日延長、◇住友商事<8053>、豪穀物子会社のEmerald Grainを私募ファンドに譲渡、◇三井不動産<8801>、東京ドーム<9681>をTOBで子会社化へ、◇レオパレス21<8848>、リロケーション事業子会社のエンプラスをリコーリース<8566>に譲渡、◇カヤック<3904>、広告事業などのSANKOを子会社化、◇ピー・シー・エー<9629>、ITサービス子会社のKeepdataをビーエスピーアセットに譲渡、◇スタンレー電気、300人程度の早期退職を募る特別転進支援制度を実施、定年延長も、◇双日<2768>、子会社を通じてプラマテルズ<2714>をTOBで完全子会社化、◇エン・ジャパン<4849>、M&Aマッチングサイト「MAfolova」事業をピナクルに譲渡 ほか

 

 

 

 

DCMホールディングス、島忠へのTOB期間を8営業日延長

DCMホールディングスは27日、ホームセンターの島忠に対して10月5日から実施中のTOB(株式公開買い付け)について、12月1日までとしていた買付期間を同11日まで8営業日延長すると発表した。2度目の延長で、買付期間は48営業日となる。1株4200円の買付価格は変更していない。

島忠を巡ってはニトリホールディングスがDCMを上回る買付価格5500円を提示して12月28日を期間として対抗TOBを行っている。

住友商事<8053>、豪穀物子会社のEmerald Grainを私募ファンドに譲渡

住友商事は、穀物買い付けや集荷を手がける豪子会社Emerald Grain Pty Ltd(売上高336億円、営業利益△17億円、純資産34億6000万円)の全株式を、私募ファンドの豪Longriver Farms Pty Limitedに譲渡することを決めた。譲渡価額は非公表。譲渡予定日は2020年12月2日。

三井不動産<8801>、東京ドーム<9681>をTOBで子会社化へ

三井不動産は27日、東京ドームの完全子会社化を目的にTOB(株式公開買い付け)を実施すると発表した。買付代金は最大1205億円。東京ドームは東京都心でプロ野球読売巨人軍が本拠地とする球場、遊園地、ホテルなどを運営する。三井不動産はスポーツ・エンターテイメントを軸とする街づくりや、新規領域のスタジアム・アリーナ事業への本格展開につなげる。

東京ドームはTOBに賛同している。三井不動産による東京ドームの完全子会社化後、巨人を傘下に持つ読売新聞グループ本社が三井不動産から東京ドーム株の20%を取得することで合意した。

買付価格は1株につき1300円で、TOB公表前日の終値897円に44.93%のプレミアムを加えた。買付予定数は9270万7684株。買付予定数の下限は所有割合66.67%にあたる6180万5100株。

買付期間は11月30日~2021年1月18日。決済の開始日は2021年1月25日。公開買付代理人は野村証券。

東京ドームは1936年に設立。翌年9月にプロ野球専用球場として「後楽園スタヂジアム」を東京・水道橋に完成した。1949年に東証1部に上場。1955年に「後楽園ゆうえんち」を開業した。また、1988年には国内初の全天候型多目的スタジアム「東京ドーム」をオープンし、野球場にとどまらず、国内外のアーチストによるコンサート会場などとして人気を集めている。

レオパレス21<8848>、リロケーション事業子会社のエンプラスをリコーリース<8566>に譲渡

レオパレス21は、リロケーション(転勤者の留守宅賃貸)管理事業などを手がける子会社のエンプラス(東京都千代田区)の全保有株式(所有割合98.3%)を、リコーリースに譲渡することを決めた。レオパレスは経営再建に向けた事業構造改革の一環。譲渡価額は非公表。譲渡予定日は2020年11月30日。

エンプラスは2004年に設立し、海外赴任者向けに留守宅の賃貸サービスや赴任先での住居仲介、外国人向け賃貸・売買仲介などを展開。レオパレスは国際事業から撤退に伴い、関連事業の見直しに動いている。

カヤック<3904>、広告事業などのSANKOを子会社化

カヤックは、広告事業などのSANKO(東京都千代田区。売上高7億4300万円、営業利益2710万円、純資産4億6100万円)の株式75%を取得し子会社化することを決めた。取得価額は4億945万円。取得予定日は2020年11月30日。

SANKOは1965年に設立。広告事業を主力とし、傘下にeスポーツ事業のRIZeST(東京都千代田区)、漫画デザインのマンガデザイナーズラボ(東京都渋谷区)の2子会社を持つ。カヤックは急拡大を続けるeスポーツ市場での事業拡大などを期待している。

ピー・シー・エー<9629>、ITサービス子会社のKeepdataをビーエスピーアセットに譲渡

ピー・シー・エーは、IT関連サービス子会社のKeepdata(東京都中央区。売上高8570万円、営業利益△2590万円、純資産△2億3100万円)の全株式を、投資会社のビーエスピーアセット(東京都中央区)に譲渡することを決めた。昨年3月にKeepdataを子会社化したが、当初想定していたシステム連携や営業面でのシナジー(相乗効果)が得ることが難しいと判断した。譲渡価額は非公表。譲渡予定日は2020年12月7日。

ピー・シー・エーは中堅・中小企業向け基幹業務パッケージソフト「PCA会計シリーズ」「給与シリーズ」「商魂・商管シリーズ」などを展開する。Keepdataを傘下に取り込み、基幹業務ソフトの周辺サービスの拡充を期待していた。

スタンレー電気、300人程度の早期退職を募る特別転進支援制度を実施、定年延長も

スタンレー電気は26日、300人程度の早期退職者を募る特別転進支援制度を実施すると発表した。49歳以上60歳未満で勤続10年以上の基幹社員を対象とし、募集期間は2021年1月7日~13日(退職日は2月28日付)。特別退職金を支給し、再就職支援サービスを提供する。併せて同社は、現在60歳の定年年齢を65歳に引き上げる定年延長制度の導入を決めた。

スタンレー電気は主力の自動車ランプが売上高の約8割を占める。足元では新型コロナウイルス感染症の影響で得意先の自動車業界で生産停止や減産が広がったことなどから、業績が落ち込んでいる。2020年4~9月の半期業績は前年同期に比べ売上高が24%減の1558億円、営業利益が60%減の86億円、最終利益が76%減の37億円。

定年延長制度の内容は60歳到達後も昇格・職位就任を可能するスキルアップ型、生活スタイルを重視し育児や介護以外の理由でも時間短縮勤務が可能なライフバランス型の2コースを用意した。

双日<2768>、子会社を通じてプラマテルズ<2714>をTOBで完全子会社化

双日<2768>は26日、子会社の双日プラネットを通じてプラマテルズ<2714>に対してTOB(株式公開買い付け)を実施し、完全子会社化すると発表した。

買付期間は2020年11月27日から 2021年1月14日までの30営業日。買付価格は1株につき770円で、TOB公表前日の終値(555円)に38.74%のプレミアムを加えた。買付予定数は約456万株。買付代金は約35億1700万円。

予定通りに買い付けられれば、現在46.56%の持株比率が100%となる。プラマテルズの上場は廃止する。

買付代理人は三菱UFJモルガン・スタンレー証券とauカブコム証券。

エン・ジャパン<4849>、M&Aマッチングサイト「MAfolova」事業をピナクルに譲渡

エン・ジャパンは、「MAfolova」の名称で展開するM&Aマッチングサイト事業を、経営コンサルティング業のピナクル(東京都港区)に譲渡することを決めた。新型コロナウイルスの感染拡大でM&A案件の中止や先送りの影響を受けていた。事業切り離しにあたっては、MAfolova事業を分割して設立する新会社「マフォロバ」(東京都新宿区)の全株式を譲り渡す。譲渡価額は非公表。譲渡予定日は2020年12月10日。

MAfolovaは2018年にマッチングサービスを開始し、登録企業数は4700社、案件紹介数は1万3000件を超えるという。直近売上高は900万円。

ノジマ<7419>、フジ・メディア・HD傘下の通販大手ディノス・セシールから「セシール」事業を取得

ノジマは、Web事業子会社のニフティ(東京都新宿区)を通じて、フジ・メディア・ホールディングス傘下のディノス・セシール(東京都中野区)が展開する「セシール」ブランドの通販事業を取得することを決めた。セシールはシニア女性層を中心にインナー(下着、肌着などの内衣)などの生活用品で知られる老舗通販ブランド。ニフティとの連携によってEC(電子商取引)領域の事業拡大につなげる。

ノジマは、ディノス・セシールが当該事業を分割して設立される新会社の全株式を取得する。取得価額は非公表。取得予定日は2021年3月1日。

ディノス・セシールは2013年、セシール、ディノス、フジ・ダイレクト・マーケティングの通販3社が合併して誕生した。

守谷商会<1798>、子会社のゴルフ事業をノザワワールドに譲渡

守谷商会は、菅平峰の原グリーン開発(長野県須坂市。売上高1億3700万円、営業利益△7830万円、純資産△2億6600万円)が手がけるゴルフ事業を、ノザワワールド(茨城県ひたちなか市)に譲渡することを決めた。非中核事業を切り離し、経営の効率化を進める狙い。

ゴルフ事業を分社して設立する新会社(菅平グリーンゴルフ)の全株式を譲渡する形。譲渡価額は非公表。譲渡予定日は2021年4月2日。

菅平峰の原グリーン開発は1973年設立で、菅平グリーンゴルフを運営する。しかし、ゴルフ人口の減少や高齢化、競争激化などで業績が低迷していた。同社は今後、特別清算手続きに入る予定。

譲渡先のノザワワールドはゴルフ場・ゴルフ練習場、ホテル、倉庫などを中心に不動産事業を展開する。

キリンホールディングス<2503>、豪州の飲料事業を乳製品大手の現地ベガ・チーズに譲渡

キリンホールディングスは、豪州での飲料事業を現地の乳製品大手ベガ・チーズに譲渡すると発表した。譲渡金額は約409億円(約5億6000万豪ドル)。豪州の飲料事業をめぐっては当初、中国の中国蒙牛乳業に譲渡する予定だったが、豪中関係悪化などを背景に豪当局が認めなかったことから契約を解除し、新たな譲渡先を探していた。譲渡は2021年1~3月に完了する見通し。

譲渡するのは豪子会社ライオン・デアリー・アンド・ドリンクスの全株式。ライオンの飲料事業はキリンが2007年に約2900億円で買収した豪ナショナルフーズを母体とする。近年は業績低迷が続き、昨年10月にチーズ事業をカナダ企業に約224億円で譲渡。残る牛乳、乳飲料、ヨーグルト、果汁飲料などの事業については中国蒙牛乳業に約450億円で譲渡することがいったん決まったものの、豪外国投資審査委員会が承認せず、振り出しに戻っていた。

キリンは今後、オセアニア地域において酒類を主軸に事業展開し、海外クラフトビールや大人向けプレミアム飲料といった成長分野での取り組みを強化する。

デサント、約110人の希望退職を実施へ

デサントは25日、約110人の希望退職者を募集すると発表した。国内事業の構造改革の一環で、正社員・契約社員(ただし、正社員は40歳以上、販売職正社員は含まない)を対象とする。募集期間は2021年1月18日~2月1日。退職日は2021年3月31日。所定の退職金に特別加算金を上乗せ支給し、再就職支援サービスを提供する。

同社は欧米での事業を休止し、日本・韓国・中国の3市場での集中展開を重点戦略とする。売上構成は日本45%、韓国50%で、中国が5%程度。しかし、新型コロナウイルスの影響で各種スポーツイベント、競技会の中止や規模縮小などでスポーツ用品の消費が低迷。巣ごもり需要でネット販売が伸びたものの、実店舗の販売が大きく落ち込んでいる。

2020年4~9月期の半期業績は売上高が前年同期比35%減の428億円、営業赤字24億円(前年同期は26億円の黒字)、最終赤字12億円(同22億円の黒字)。

VTホールディングス<7593>、ホンダ車ディーラーのホンダ四輪販売丸順を子会社化

VTホールディングスは、ホンダ車販売ディーラーのホンダ四輪販売丸順(岐阜県大垣市。売上高36億円、営業利益1億1400万円、純資産5億4400万円)の株式を追加取得し、子会社化することを決めた。現在34%の持ち株比率を66%に引き上げる。岐阜県内での事業強化が狙い。取得価額は非公表。取得予定日は2021年1月4日。

ホンダ四輪販売丸順は大垣市内で新車3店舗、中古車1店舗を運営する。VTホールディングスは2018年3月、子会社のホンダカーズ東海(名古屋市)を通じて、同社株式の34%を取得し、持ち分法適用関連会社とした。岐阜県内ではPDIセンター(新車納整工場)を共同運営するなどホンダ車販売の強化に向けて協力関係を築いてきた。

アルコニックス<3036>、空調機器向け配管部品メーカーの富士根産業を子会社化

アルコニックスは、空調機器向け配管部品メーカーの富士根産業(静岡県沼津市。売上高27億7000万円、経常利益△2700万円、純資産6億9900万円)を子会社化することを決めた。現在保有する3%を含めて同社株の95%を取得する。残る同社株5%については富士根産業と同業の千代田区空調機器(堺市)に資本参加を求める予定。アルコ二ックスはグループ内で金属加工に関する製販一体の事業体制を整え、グルーバル展開も視野に入れる。

取得価額は3億8600万円。取得予定日は2020年12月3日。

レカム<3323>、回線取次事業などのG・Sコミュニケーションズをライト通信グループに譲渡

レカムは、全額出資子会社のG・Sコミュニケーションズ(東京都渋谷区。売上高5億500万円、営業利益2000万円、純資産8000万円)のNTT回線取次事業を、通信サービス事業を手がけるライト通信(大阪市)に譲渡することを決めた。また事業譲渡後、G・Sコミュニケーションズの全株式をライト通信傘下のアクセスオンライン(東京都豊島区)に売却する。事業の選択と集中の一環。

G・SコミュニケーションはNTT回線取次のほか、プロバイダー事業などを行う。NTT回線取次事業および同社株式の譲渡価額は非公表。株式の譲渡予定日は2020年11月30日。

ゼット<8135>、デサント<8114>傘下のベンゼネラルからスポーツ用品卸販売事業を取得

ゼットは、デサント傘下のベンゼネラル(大阪市)からスポーツ用品卸販売事業を取得することを決めた。仕入れの共通化や営業基盤の強化を通じた事業シナジー(相乗効果)を見込む。対象事業の直近業績は売上高68億1000万円、経常利益100万円。取得価額は未確定。取得予定日は2021年4月1日。

ベンゼネラルは1950年に設立。デサントは同社のスポーツ用品卸売販売事業を切り離し、直営店とEC(電子商取引)ビジネスに経営資源を集中する。

C Channel<7691>、アパレル販売子会社マキシムのベルーナ<9997>への売却を中止

C Channelは24日、アパレル販売子会社(神戸市。売上高56億7000万円、営業利益1億2000万円、純資産3億6100万円)のベルーナへの売却を中止すると発表した。同日付で全株式を16億5000万円で譲渡する予定だったが、最終的なクロージング(取引実行)条件が整わず、契約を解除したという。

KLab<3656>、VCファンド運営子会社のKVPを経営陣に譲渡

KLabは、ベンチャーキャピタル(VC)ファンド運営の100%子会社であるKVP(東京都渋谷区。売上高1億400万円、営業利益3700万円、純資産6100万円)の株式70%を、KVP社長の長野泰和氏に譲渡することを決めた。ゲーム事業とゲーム周辺事業に経営資源を集中する一環。譲渡価額は非公表。譲渡予定日は2020年12月1日。

KVPは2015年に設立し、インターネット領域でのベンチャー企業を資金面から支援してきた。現在、「KVPシード・イノベーション1号投資事業有限責任組合」など2つの運用ファンドを持つ。

LIXILグループ<5938>、川島織物セルコンを自己株式買い付けに応じて譲渡

LIXILグループは、100%子会社でインテリア・室内装飾織物大手の川島織物セルコン(京都市。売上高296億円、営業利益4億100万円、純資産159億円)の全株式について、川島織物セルコンの自己株式買い取りに応じて譲渡することを決めた。LIXILグループは建材・住設機器の基幹事業への経営資源の集中を進めている。一連の事業構成見直しの一環として、現経営陣によるMBO(経営陣による買収)の申し出を受け入れることにした。譲渡価額は非公表。譲渡予定日は2021年1月6日。

LIXILグループは2010年に川島織物セルコンの株式34%を第三者割当増資の引き受けで、残る66%を2011年に株式交換で取得し、完全子会社化した。川島織物セルコンは京都銀行による貸し付けと京都企業成長支援ファンドによる社債の引き受けにより調達した資金を原資として自己株式を買い付ける。

三井住友ファイナンス&リース、不動産投資信託運営のケネディクス<4321>をTOBで子会社化

三井住友ファイナンス&リース(SMFL)は20日、不動産投資信託(J-REIT)運営のケネディクスに対して子会社化を目的にTOB(株式公開買い付け)を実施すると発表した。ケネディクス株式は筆頭株主のシンガポール投資会社が20%強を保有する。SMFLは残る80%の株式をTOBで取得する。買付代金は1319億円。ケネディクスはTOBに賛同している。東証1部は廃止となる見通し。

TOB主体はSMFLが設立したSMFLみらいパートナーズインベストメント2号(東京都千代田区)。ケネディクス株の買付価格は 1株750円で、TOB公表前日の終値593円に26.48%のプレミアムを加えた。買付予定数の下限は所有割合46.4%で、筆頭株主のシンガポール投資会社の保有分と合わせて所有割合が3分の2超となる。

この投資会社はARA REAL ESTATE INVESTORS XVIII(エーアールエー・リアル・エステート・インベスターズ・エイティーン)。SMFLはARAとの間で、ケネディクス株式の約80%を取得したうえで、最終的に両社の所有割合がSMFLが70%、ARA30%となるよう調整することで合意している。

買付期間は11月24日~2021年1月8日(30営業日)。決済の開始日は2021年1月15日。公開買付代理人はSMBC日興証券。

Jトラスト<8508>、グローム・ホールディングス<8938>傘下クラウドファンディング事業のLCレンディングを子会社化

Jトラストは、グローム・ホールディングス傘下でクラウドファンディング事業を手がけるLCレンディング(東京都港区。売上高4億600万円、営業利益2億3400万円、純資産△18億6000万円)の全株式を取得し、子会社化することを決めた。取得価額は1万円。取得予定日2020年12月1日。

Jトラストは投資子会社のプロスペクト・エナジー・マネジメント(東京都渋谷区)を通じて、LCレンディングを買収する。LCレンディングは現在、クラウドファンディング事業を停止し、匿名組合出資預かり金はゼロの状況にあるが、投資家への償還を無事に完了しているという。

LCレンディングの子会社化に伴いプロスペクト・エナジー・マネジメントは12月1日に日本ファンディングに社名変更を予定している。

日清食品ホールディングス<2897>、スナック菓子の湖池屋<2226>を子会社化

日清食品ホールディングスは、スナック菓子中堅メーカーで持ち分法適用関連会社の湖池屋(ジャスダック上場)について、株式を追加取得して連結子会社化することを決めた。現在34.54%の持ち株比率を45.12%に引き上げる。菓子事業の強化が狙い。取得価額は22億5500万円。取得予定日は2020年11月27日。

日清食品は2011年5月に湖池屋と業務・資本提携し、商品開発・マーケティング、営業・物流などの分野で協業を進め、社長も派遣する関係にある。連結子会社化によって協業の取り組みをさらに強化する。

じげん<3679>、ベーシックから比較サイト事業を取得

じげんは、メディア事業のベーシック(東京都千代田区)から比較サイト事業を取得することを決めた。じげんは求人・住まい・車などを中心にメディア事業を展開するが、新たに比較サイト領域を取り込む。取得価額は12億5000万円。取得予定日は2020年12月15日。

取得するのは「フランチャイズ比較.net」の名称で展開するフランチャイズ比較サイトのほか、結婚相談所、家庭教師、留学エージェントに関する各比較サイト。対象事業の直近売上高は約10億円。

京阪神ビルディング、ストラテジックのTOBに「反対」表明 

京阪神ビルディングは19日、投資ファンドのストラテジックキャピタル(東京都渋谷区)が同社に対して実施中のTOB(株式公開買い付け)について、反対意見を表明した。これにより、敵対的TOBに発展した。ストラテジックは現在約9%の持ち株比率を約29%に引き上げて発言力を高めることを目的しているが、京阪神ビルは「短期的な利益のみ追求し、中長期的な企業価値向上に資するかどうかは疑問だ」として、株主にTOBに応じないよう要請した。

ストラテジックは1株1900円を提示し、11月5日にTOBを開始した(買付期間は12月17日まで)。これまで京阪神ビルは意見を留保していたが、今回のTOBについて事前通知や連絡がなく一方的なものだとのコメントを発表していた。京阪神ビルは住友系の不動産会社で、関西を中心に事務所ビルや場外馬券場「ウインズ」(5カ所)、データセンター、商業施設などの賃貸事業を展開している。

ストラテジックは今年6月に開かれた京阪神ビルの株主総会に取締役1名の選任や賃貸用不動産の売却などを求める株主提案を行ったが、否決された。ストラテジックは旧村上ファンド出身者が代表を務める。

イワキ、20人の早期退職を募る「セカンドキャリア・セカンドライフ支援制度」実施

イワキは19日、20人の早期退職者を募る「セカンドキャリア・セカンドライフ支援制度」を実施すると発表した。2021年6月に予定する持ち株会社制への移行に向け、人的資源の適正配置を進める一環。募集期間は11月19日~2021年1月31日。退職日は2021年5月31日。特別加算金を支給するほか、必要に応じて再就職支援サービスを提供する。

シチズン時計、子会社で実施した希望退職で予定超える632人応募

シチズン時計は19日、連結子会社のシチズン時計マニュファクチャリング(埼玉県所沢市)で実施した希望退職募集に632人の応募があったと発表した。募集人員は全従業員の約2割にあたる550人としていたが、予定数を大きく上回った。アナログクオーツウオッチ市場の縮小に伴う業績悪化に対応し、人員体制の再構築を目的に10月14日~11月18日に募った。退職日は12月31日付。通常の退職金に加え、転進支援金を上乗せ支給する。

シチズン時計マニュファクチャリングは時計事業の中核子会社。2013年に国内時計生産の事業再編に伴いグループ内の5子会社と関連部門を統合して発足した。近年は手首に装着するウエラブル端末(スマートウオッチ)市場の拡大などを受け、普及価格帯のアナログクオーツウオッチ市場が縮小し、外販用のムーブメント(動作機構)需要も減少が続いている。

クレアホールディングス<1757>、飲食・美容機器事業子会社のアルトルイズムを経営陣に譲渡

クレアホールディングスは、飲食や美容機器事業を手がける100%子会社のアルトルイズム(福島県郡山市。売上高10億6000万円、営業利益1億4900万円、純資産1億3900万円)の全株式を、同社社長の橋本弘氏に譲渡した。19日付。譲渡価額は1億4700万円。

クレアHDは事業多角化の一環として2017年にアルトルイズムを傘下に収めた。しかし、美容機器販売・保守事業は主力取引先との契約解除で業績が伸び悩んだほか、東北地区を中心にラーメン店を展開する飲食事業も新型コロナウイルス感染症の影響で苦戦を強いられていた。

イワキ<8095>、マジェスティゴルフ傘下で健康食品事業のマルマンH&Bを子会社化

イワキは、健康食品事業のマルマンH&B(東京都千代田区。売上高20億4000万円、営業利益8340万円、純資産5億5500万円)の全株式を取得し子会社化することを決めた。健康・美容、食品関連分野におけるダイレクトマーケティング事業拡大などにつなげる。取得価額は10億円。取得予定日は2020年12月中。

マルマンH&Bはゴルフ用品販売大手のマジェスティゴルフ(東京都千代田区)の全額出資子会社。各種サプリメントなど健康食品のほか、禁煙関連商品で知られ、ドラッグストアやコンビニ、ディスカウントストアなどに幅広い販路を持つ。

朝日放送グループホールディングス<9405>、ベストセラーズから月刊誌「歴史人」事業を取得

朝日放送グループホールディングスは、中堅出版社のベストセラーズ(東京都文京区)から月刊誌「歴史人」と付帯事業を取得することを決めた。歴史分野でのブランド力や専門家との強固なネットワークを持つ「歴史人」を、地域活性化に向けた新規事業展開の中核として位置づける。取得価額は非公表。取得予定日は2020年12月1日。

今回、「歴史人」事業を取得するのは朝日放送グループHDが10月末に設立した新会社のABCアーク(東京都港区)。同社は「地域の魅力」をコンテンツ化し、出版やメディア運営、コンサルティングなどを通じて発信することを目的としている。

東京センチュリー<8439>、オートリース事業のフィリピン合弁BPICTを子会社化

東京センチュリーは、フィリピンの合弁リース・ファイナンス会社BPI Century Tokyo Lease & Finance Corporation(BPICT、マニラ)の株式を合弁相手のフィリピン・アイランズ銀行(BPI)から追加取得し、子会社化することを決めた。現在49%の持ち株比率を51%に高める。東京センチュリーは2014年末にBPICTに出資したが、オートリース事業を中心とする協業が着実に進んでおり、経営権の掌握により、事業拡大を加速させる。取得価額、取得日は非公表。

丸文、100人程度の希望退職を実施へ

丸文は17日、100人程度の希望退職者を募ると発表した。単体従業員の約13%にあたる。募集期間は12月23日~2021年1月29日。主要取引先の半導体メーカーによる世界規模の業界再編とともに、エレクトロニクス専門商社に求められる機能・役割が大きく変化する中、人員体制の再構築を通じて早期の業績回復と持続的な成長の実現を期す。

退職日は2021年2月28日付とする。所定の退職金に特別加算金を上乗せ支給し、再就職支援サービスを提供する。

2021年3月期業績予想は売上高6.1%減の2700億円、営業利益45.7%減の12億5000万円、最終利益9億円(前年度は7500万円の赤字)で、売上高は3年連続減少を見込む。営業・最終損益は4~9月期(中間)段階で2年連続の赤字となっているが、通期で黒字浮上を目指している。

アークス<9948>、栃木県を中心に31店舗を展開する地域スーパーのオータニと経営統合へ

アークスは17日、栃木県を中心にスーパーマーケット31店舗を展開するオータニ(宇都宮市)と2021年3月1日に経営統合することで基本合意したと発表した。アークスはグループで北海道・東北を地盤に343店舗を運営する。新型コロナウイルス感染症の拡大で先行きの経営環境が不透明感を増す中、地域スーパーが連携して北海道から北関東地方に続く東日本エリアにおける食品流通企業グループを形成し、大手勢に対応する。

アークスを親会社、オータニを子会社とする予定。ただ、その経営統合の具体的な方法(株式取得、株式交換など)は今後両社で協議する。

アークスは1961年に設立。2020年2月期の業績は売上高5190億円、営業利益121億円、純資産1440億円。一方のオータニは1982年設立で、売上高294億円、営業利益3億2400万円、純資産49億4000万円。

DCMホールディングス、島忠へのTOB期間を10営業日延長

DCMホールディングスは16日、ホームセンター中堅の島忠に対して完全子会社化を目的に10月5日から実施中のTOB(株式公開買い付け)について、同日までとしていた買付期間(30営業日)を12月1日まで10営業日延長すると発表した。島忠がDCMのTOBへの賛成を撤回し、代わってニトリホールディングスの買収提案を受け入れる意向を表明したのを受け、島忠株主にTOB応募への是非を判断する時間を提供する。1株4200円とする買付価格は変更していない。

島忠をめぐっては家具・日用品最大手のニトリホールディングスがDCMを約3割上回る1株5500円の買付価格で16日からTOBを開始した。

プラザクリエイト本社<7502>、子会社で手がける自動証明写真機事業を日本オート・フォートに譲渡

プラザクリエイト本社は、傘下のプラザクリエイト(東京都中央区)が手がける自動証明写真機事業を、同業の日本オート・フォート(東京都港区)に譲渡することを決めた。対象事業(直近売上高6億4300万円)を会社分割して設立する新会社、フォトプラザ(東京都中央区)の全株式を譲渡する形。譲渡価額は9億5000万円。譲渡予定日は2021年2月1日。

譲渡先の日本オート・フォートは英フォトインターナショナルの100%出資子会社で、1963年に設立。日本における自動証明写真機のパイオニアとされる。

セントラルフォレストグループ<7675>、国分フードクリエイトから中部地区の低温食品卸売事業を取得

セントラルフォレストグループは子会社の国分中部(名古屋市)を通じて、酒類・食品卸売りの国分フードクリエイト(東京都中央区)から中部地区における低温食品卸売事業を取得することを決めた。常温・チルド・冷凍一体の体制を整え、3温度帯フルライン機能が備わることで、取引先へのサービスレベル向上を見込む。対象事業の売上高規模は84億円。取得価額は非公表。取得予定日は2021年7月1日。

セントラルフォレストグループは2019年4月、国分中部とトーカンが経営統合して発足した。現在、傘下に事業子会社として国分中部とトーカンを置く。

IMAGICA GROUP<6879>、東北大発ベンチャーのフォトニックラティスを子会社化

IMAGICA GROUPは、東北大学発のベンチャー企業であるフォトニックラティス(仙台市)の全株式を取得し、子会社化することを決めた。10年以上の共同開発関係にあり、偏光高速カメラ、複屈折マッピング計測装置の製品化を進めてきたが、センシング領域での今後の事業拡大に向けて傘下に取り込むことにした。取得価額、取得日は非公表。

フォトニックラティスは2002年に設立。フォトニック結晶の微細な積層パターンを自在に設計・成膜する技術を持つ。フォトニック結晶は光回路、非可視領域への利用拡大や、計測素子などへの応用が期待されている。

 

 

 

情報提供:株式会社ストライク

[マッチングサイトを活用したスモールM&A]

~年商1,000万円から2億円までのM&Aの現場から~

第1回:「マッチングサイトを使ったスモールM&A」が活況なワケ~コロナも追い風~

 

〈解説〉

税理士 今村仁

 

 

 

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(1)4つの数字「381」「127」「650」「22」からみる中小M&Aの今

日本の高齢化率は世界一ですが、同様に中小企業経営者も高齢化しています。具体的な数字を挙げると、全国における事業者数は、会社も個人事業主も含めて約「381」万者。そのうち、経営者の年齢が70歳以上の数は245万者で、そのうち後継者未定の数は「127」万者となっています(2025年予測値)。

 

つまり、日本にある製造業や建設業、飲食店や町のお豆腐屋さんなどすべての事業主のうち、3分の1は、「経営者年齢70歳以上かつ後継者未定」なのです。

 

 

ではこの127万者は、将来どうなるのでしょうか?

 

 

実は、最終的な選択肢は2つしかありません。1つは、「M&Aで第三者承継先に譲渡する」、もう1つは、残念なことではありますが、「廃業」です(親族外の従業員や役員に承継するというのも稀にありますが、単に代表者が変わるだけが大半で、きちんと株主が変わり銀行保証も精算されるケースは極めて少ないです)。

 

さらには、127万者のうち8割である約100万者は、いわゆる中小企業ではなく小規模企業です。小規模企業の場合、M&Aで第三者承継先を探そうとしても、売買対価が低額で十分な手数料が支払えないことから、M&A仲介業者や銀行等に依頼する案件としては相応しくありません。つまり、これまでは、小規模企業の場合は第三者承継先を探そうにも相談者がおらず、結果的に「廃業」しか選択肢がなかったといえます。

 

 

 

この廃業しか選択肢がなかった小規模企業に、「第三者承継」という選択肢を与えてくれるのが、このシリーズの主題である「マッチングサイトを使ったスモールM&A」なのです。

 

 

 

(2)第三者承継支援総合パッケージで「M&Aマッチングサイト」に言及

このまま放置しておくと日本経済に与えるマイナス要素が大き過ぎるため、中小企業庁は、2019年12月20日に、中小企業支援策として、「第三者承継支援総合パッケージ」を発表しました。「第三者承継=M&A」ですから、この資料には親から子へといった従来政府が推し進めてきた「親族内承継」の言葉はありません。親族内承継だけでは、日本経済は救えないと国がはっきりと方針を打ち出したようにも思います。

 

 

では国は、経済的に日本が沈没してしまうのを回避するために、先ほど見た127万者すべてに支援の手を差し伸べてくれるのでしょうか?

 

 

答えは、「ノー」です。昨今政治も新政権に変わり、「自助・公助・共助」を掲げられ、また、政権ブレーンであるイギリス出身日本在住の経営者デービッド・アトキンソン氏の影響も大きく、「廃業止む無し、生産性向上のためM&Aを推進」の方向性のようです。

 

第三者承継支援総合パッケージによると、2025年までに、70歳以上となる後継者未定の中小企業約127万者のうち、黒字廃業の可能性のある約60万者の第三者承継を促すことを目標としています。60万者のM&Aを10年間かけて実現するということですから、1年間で6万者のM&Aを実現させるということです。

 

 

ではこの国の目標に対して、現在、どれくらいのM&Aが行われているのでしょうか?

 

 

実は、公表ベースですが、年間たったの「4,000件」です。毎年増加しているとはいえ、この数字です。年間6万件と比較すると、15倍の開きがあります。これは対面(リアル)で人がいくら頑張っても実現できる数字ではありません。特に、お相手を探してくるというとても時間と費用の掛かる作業を対面(リアル)で行うことを想定すると、どのようなやり方をしようが実現は不可能でしょう。そこで国は、民間プラットフォーマーとの連携など、ネットを使ったM&Aに大きくシフトしていこうとしているのです。

 

国は年間6万件のM&A実現へ向けて、2015年に作成された「事業引継ぎガイドライン」を、マッチングサイトを使ったM&Aや専門家向けへの記述を加え全面改訂し、コロナ禍の最中である2020年3月31日に「中小M&Aガイドライン」を作成公表しました。

 

また、2020年7月には、マッチングサイトを使ったスモールM&A向けといっても過言ではない、「経営資源引継ぎ補助金」が創設され、M&Aにおける着手金や成功報酬に対して最大200万円が支給されることになりました。ちなみにこの補助金は、売り手も買い手も中小企業であれば対象となっています。

 

 

このように、マッチングサイトを使ったスモールM&Aを、あの手この手で国が支援してくれているのが現状なのです。

 

 

(3)意識の変化や金融緩和で案件増加!(コロナも追い風)

スモールM&Aが活況な理由は、他にもあります。現場に出ていて最近特に顕著に感じるのは、売り手や買い手における「意識の変化」です。

 

今どきの売り手では、例えば父親経営者は、たとえ承継候補となる息子や娘がいても、自ら継がそうとしないケースが増えてきました。それこそ一昔前の特に地方では、父親の会社を承継するというのはある種、運命みたいな部分があったかもしれませんが、それを父親自身がストップをかけるのです。

 

しかし自分事としてこの父親経営者のことを想像してみると、納得がいきます。今までそれこそ四六時中仕事のことを考え、時に従業員との確執なども乗り越えてきて、この先この会社を息子に承継させるとなれば、それこそ死ぬまで会社の心配や不安をぬぐうことはできないでしょう。もしこれを第三者に売却(M&A)できれば、老後はゆっくりと趣味や奥様との時間に何の心配もなく過ごすことができます。老後を不安なく自由に暮らしたいと考える父親経営者は、思いのほか増えています。さらにこのコロナで、立ち止まり考える時間も増えたため、コロナがトリガーとなり、M&Aを決心する経営者が増加しているように思われます。

 

 

息子のほうも、田舎にある父親の会社を引き継げといわれても、都会暮らしを手放したくない、妻の反対や子供の学区のこともある、などでM&Aを父親に自ら提案することも多いようです。

 

 

また、買い手においては、特にこのコロナ禍で、従来のような同業種や類似業種へのM&Aだけではなく、全く異なる分野へのM&Aを検討されるケースが増えています。背景にあるのは、事業におけるリスク分散だと考えられます。リスク分散としてのM&Aを考えるとき、いきなり大きな買い物はしにくいですから、「スモールM&A」が向いているのです。他にも、金融緩和で資金が余っていることもM&Aの追い風となっています。

 

 

このような理由により、現在、スモールM&A、特に手軽に始められる「マッチングサイトを使ったスモールM&A」がかつてない活況を見せているのです。

 

 

 

[参考資料]

第三者承継支援総合パッケージ(中小企業庁、2019年12月20日)

https://www.meti.go.jp/press/2019/12/20191220012/20191220012-1.pdf

 

 

 

 

 

 

[解説ニュース]

事業承継税制:三代にわたって贈与税の特例措置の適用を受けた場合

 

〈解説〉

税理士法人タクトコンサルティング(山崎 信義/税理士)

 

 

[関連解説]

■事業承継税制:「みなし相続の特例措置」の概要と留意点

■事業承継税制を複数の後継者に適用する場合の留意点

 

 

1.贈与税の特例措置の概要


中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律に規定する「中小企業者」に該当し、かつ、都道府県知事の認定を受けた会社の株式を、令和9年12月31日までに、その会社の代表権を有していた贈与者(先代経営者)から贈与により取得した個人が、その先代経営者の後継者として一定の要件を満たす者(以下「特例経営承継受贈者」)である場合、その者が納付すべき当該株式(一定の部分に限る。以下「特例対象受贈非上場株式等」)に対応する贈与税額の納税が、贈与者の死亡の日まで猶予されます(措法70条の7の5第1項)。これを「贈与税の特例措置」といいます。
贈与税の特例措置の適用を受けることにより納税が猶予された贈与税額は、贈与者の死亡や、特例経営承継受贈者による下記2の「免除対象贈与」等の事由が生じた場合、特例経営承継受贈者が一定の手続をすることにより、その全部又は一部が免除されます(措法70条の7の5同第11項、70条の7第15項)。

 

 

2.特例経営承継受贈者(2代目経営者)が免除対象贈与をした場合の、納税猶予分の贈与税額の免除


上記1の特例経営承継受贈者が、特例経営贈与承継期間*の末日の翌日(原則)以後に、その特例受贈非上場株式等の全部又は一部をその後継者に贈与し、その後継者が贈与を受けたその特例受贈非上場株式等について、贈与税の特例措置の適用を受ける場合は、その特例経営承継受贈者が一定の届出をすることにより、特例経営承継受贈者の納税猶予分の贈与税額(納税猶予期限が一部確定した税額を除く。)のうち、後継者に係る贈与税の納税猶予の適用に係るものに対応する部分の金額に相当する額が免除されます(措法70条の7の5第11項、70条の7第15項3号)。この場合の特例経営承継受贈者による特例対象受贈非上場株式等の贈与を、「免除対象贈与」といいます。

 

*原則、非上場株式の贈与に係る贈与税の申告書の提出期限の翌日から同日以後5年を経過する日までの期間をいいます(措法70条の7の5第2項7号)。

 

 

例えば、1代目経営者から株式を贈与により取得して贈与税の特例措置の適用を受けた2代目経営者(=特例経営承継受贈者)が、特例経営贈与承継期間経過後に、その株式の全部を3代目経営者に贈与し、3代目経営者がその贈与により取得した株式に係る贈与税について贈与税の特例措置の適用を受ける場合、2代目経営者から3代目経営者への株式の贈与は「免除対象贈与」に該当し、2代目経営者が一定の届出をすることにより、納税猶予分の贈与税額が免除されます。

 

 

3.免除対象贈与の後、その贈与者に係る”前の贈与者”が死亡した場合


贈与税の特例措置の適用を受ける特例経営承継受贈者に係る贈与者の贈与が、「免除対象贈与」である場合に、特例経営承継受贈者の死亡の日以前にその贈与者の”前の贈与者”が死亡したときは、特例経営承継受贈者は前の贈与者から特例対象受贈非上場株式等を相続又は遺贈により取得したものとみなされ、贈与者が前の贈与者から贈与を受けた時の価額を基に、相続税が課税されます(措法70条の7の7第2項)。

 

この場合において、贈与税の特例措置の適用を受けた特例対象受贈非上場株式等を、相続又は遺贈により取得をしたものとみなされた特例経営承継受贈者は、一定の要件を満たすことにより、その贈与者の死亡に係る相続税額のうち、その株式等に係る納税猶予分の相続税額について、その特例経営承継受贈者の死亡の日まで納税が猶予されます(措法70条の7の8第1項)。これを「みなし相続の特例措置」といいます。

 

例えば、1代目経営者から贈与により株式を取得して贈与税の特例措置の適用を受けた2代目経営者が、特例経営贈与承継期間経過後に、その株式の全部を後継者である3代目経営者に贈与し、3代目経営者が特例経営承継受贈者としてその贈与により取得した株式に係る贈与税につき贈与税の特例措置の適用を受けた場合、2代目経営者から3代目経営者への株式の贈与は「免除対象贈与」に該当します。この場合の「前の贈与者」とは、特例対象受贈非上場株式等の免除対象贈与をした者(2代目経営者)に対し、その贈与の前にその株式の贈与をした者、すなわち1代目経営者が該当します(措法70条の7の7第2項、第1項、同政令40条の8の5第4項、40条の8第5項2号)。

 

したがって、1代目経営者(=前の贈与者)の死亡により、3代目経営者(=特例経営承継受贈者)は、特例対象受贈非上場株式等を、1代目経営者から相続又は遺贈により取得したものとみなされ(措法70条の7の7第2項)、3代目経営者に対し1代目経営者に係る相続税が課税されます。この場合、1代目経営者から3代目経営者が取得したものとみなされた特例対象受贈非上場株式等に係る相続税の額について、一定の要件を満たすことにより、「みなし相続の特例措置」の適用を受けることができます。

 

 

税理士法人タクトコンサルティング 「TACTニュース」(2020/11/25)より転載

[M&A案件情報(譲渡案件)](2020年11月25日)

-以下のM&A案件(1件)を掲載しております-

 

●クリエイティブなDX支援のシステム開発に定評のある企業

[業種:システム(Web、スマホアプリ等)開発/所在地:関東地方]

 

 

-案件に関するお問合せ・ご相談は、このページ文末の「お問合せ・ご相談」ボタンより-

(お問い合せ・ご相談は「無料会員登録」が必要です)

 


案件No.SS006033
クリエイティブなDX支援のシステム開発に定評のある企業

 

(業種分類)IT・ソフトウェア

(業種)システム(Web、スマホアプリ等)開発

(所在地)関東地方

(直近売上高)5~10億

(従業員数)10~50名

(譲渡スキーム)株式譲渡

(事業概要)自社システム開発事業とSES事業をメインに行っている。

 

 

〔特徴・強み〕

◇システム・アプリ開発、UX/UIデザイン、マーケティングまでDX推進に関するビジネスをすべて当社のみで包括的に対応可能。
◇社長がエンジニア出身のためこれまでの常識にとらわれることなく、新たな方法がないか常に検討する社風があり、チャレンジ精神も旺盛。
◇昨今の「新しい日常」に対応すべく、新たなビジネスを展開予定。

 

-案件に関するお問合せ・ご相談は、このページ文末の「お問合せ・ご相談」ボタンより-


情報提供会社:株式会社ストライク

 

 

 

 

【免責事項】

・掲載情報は、内容及び正確さに細心の注意をはらい、万全を期しておりますが、人為的なミスや機械的なミス、調査過程におけるミスなどで誤りがある可能性があります。税務研究会及び情報提供会社は、当該情報に基づいて被ったいかなる損害についても一切の責任を負うものではありません。

・掲載情報は公開日時点の情報になります。既に案件が特定の対象会社と交渉に入っている場合や成約している場合もございます。

 

 

 

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[経営企画部門、経理部門のためのPPA誌上セミナー]

【第11回】PPAプロセスの具体例とは?-設例を交えて解説ー

 

 

〈解説〉

株式会社Stand by C(大和田 寛行/公認会計士・税理士)

 

 

▷第8回:PPAにおいて認識される無形資産の経済的対応年数とは?

▷第9回:PPAで使用する事業計画とは?

▷第10回:PPAの特殊論点とは?ー節税効果と人的資産ー

 

 

 

当連載では,前回まで10回に渡ってPPAにおいて基礎となる考え方や認識プロセス及び測定プロセスにおける前提条件や算定方法等について解説を行ってきました。第11回は,それらの論点について具体的な設例を用いて解説を行います。

 

 

【設例】

X0年12月31日にX社がY社の全株式を3,000百万円で購入した。X社はもともと消費財のメーカーであるが,OEMでの受託生産のみを行っており,自社で商品を販売するブランドも流通網も有していなかった。そこで,X社は高い知名度を持つブランド「Z」(日本において商標登録されている)を保有し,それを販売する小売店への流通網を持った国内のY社を買収することとなった。なお,X社の会計基準は日本基準である。また,クロージング日はX0年12月31日であるため,評価基準日をX0年12月31日とする。事業計画は図表1の通りである。

 

 

【図表1】事業計画と株式価値

 

 

1.算定手順の解説

(1)無形資産の認識

 

まず,認識すべき無形資産の検討を行います。本設例の場合,買収対象のブランドは高い知名度を持ち,かつ商標登録もされていることから分離して譲渡可能という無形資産認識の要件を満たすと考えられます。さらに,流通網についても対象会社にとっての顧客である小売業者との取引関係が顧客資産として無形資産の認識要件を満たすと考えられます。以上から,認識される無形資産は商標権(ブランド)と顧客資産の2点となります。

 

 

(2)クロージングB/Sの確認(図表2)

 

次に,クロージング日時点のB/Sにおける運転資本,固定資産,投資等の残高を確認します。

本設例では下記のとおりとなります。

 

運転資本=現預金50+売上債権700‐仕入債務550=200

固定資産=1,200

投資等=300

 

 

【図表2】クロージングB/S(単位:百万円)

 

 

ここで確認した運転資本及び固定資産の金額は,無形資産測定の際,超過収益法におけるキャピタルチャージの計算にも使用されます。

 

また,この段階で無形資産認識前の広義ののれんが2,346百万円となることを確認します。

 

 

(3)採用する事業計画及びWACCの決定

 

無形資産を測定するために採用する事業計画の検討を行います。事業計画が複数ある場合は,一般的な市場参加者からみて最も合理的と考えられる事業計画を採用することに留意します。

本設例においては,株式の取得価額3,000百万円をサポートする事業計画(図表1)を採用します。

 

通常,WACCは買収検討段階の株式価値算定時に用いられた割引率や,投資案件の想定IRR(内部収益率)を勘案して設定されます。本設例では,株式取得価額3,000百万円のベースとなる事業計画上のWACCである10%を採用します。

 

 

(4)各資産の期待収益率の仮設定

 

採用する事業計画とWACCが決まったら,WARAがWACCと整合するように各資産の期待収益率を設定します。通常の実務では,B/Sの資産・負債残高や無形資産の測定値等が変わる度にWARAが変動し,その都度資産の期待収益率を調整していく作業が必要となります。

本設例では,運転資本,固定資産,商標権,顧客資産,のれんの期待収益率を下記のとおりとします。

 

 

 

(5)無形資産の測定

①商標権(図表3)

ここから,無形資産の測定プロセスに移ります。本設例の商標権は,インカム・アプローチの代表的手法であるロイヤリティ免除法により測定を行います。

 

【前提条件】

・ロイヤリティレート:3%

・商標は日本で登録されており,クロージング時点の残存保護期間は5年,今後1回の更新が見込まれている。日本における商標権の法的保護期間は10年である。

・商標権の税務上償却期間は10年である。

・事業計画期間経過後売上高は毎期1%増加するものとする。

 

 

以上を織り込んだ計算過程が図表3です。経済的耐用年数は残存保護期間に更新後の保護期間10年を加えた15年としています。

 

 

【図表3】商標権の評価

 

 

②人的資産の算定(図表4-1及び4-2)

顧客資産の測定の前に人的資産の算定を行います。現在と同規模の100名の人員を再雇用し教育訓練を行うと仮定した場合のコストに基づいています。

 

実務上,人的資産の期待収益率はのれんの期待収益率もしくはWACCとされることが多いです。

本設例では,のれんの期待収益率である13%としています。

 

 

【図表4-1】人的資産の見積り(節税効果考慮前)

 

 

【図表4-2】償却による節税効果の計算

 

 

③顧客資産の測定(図表5)

最後に超過収益法により顧客資産の測定を行います。経済的耐用年数については,取引実績等に基づき8年で顧客が入れ替わる想定を置き,減少率12.5%(1/8年)を用いています。

 

なお,複数の無形資産を認識する場合には,無形資産相互の関係性や事業への貢献度合について検討し,測定に反映することが必要となります。

本設例では,商標権(ブランド)の貢献が基礎にあり,その上で顧客資産の構築・維持が行われてきたものとの考えに立ち,顧客資産の測定上,商標権へのキャピタルチャージを行っている点にご留意ください。

 

④測定結果の確認(図表6及び7)

以上の測定結果をまとめたものが図表6及び7です。図表6において,各資産の期待収益率,WARA及びWACCの関係性について再度ご確認ください。また,図表7において,無形資産が計上される場合,会計上の一時差異に該当し,繰延税金負債が計上され,同額ののれんが増加する点についてご留意ください。

 

 

【図表5】顧客資産の評価

 

 

【図表6】WARAとWACC

 

 

【図表7】PPAの結果

 

 

2.まとめ

今回解説した設例では,実務でも非常に多くみられる商標権及び顧客資産が計上される例を取り上げました。数値や前提条件については可能な限り簡素化に努めましたが,無形資産の算定手順についてご理解頂けたでしょうか。

 

次回(最終回)は,PPAにおける実務上のポイントについて解説します。

 

 

—本連載(全12回)—

第1回 PPA(Purchase Price Allocation)の基本的な考え方とは?

第2回 PPAのプロセスと関係者の役割とは?

第3回 PPAにおける無形資産として何を認識すべきか?
第4回 PPAにおける無形資産の認識プロセスとは?
第5回 PPAにおける無形資産の測定プロセスとは?
第6回 PPAにおける無形資産の評価手法とは?-超過収益法、ロイヤルティ免除法ー
第7回 WACC、IRR、WARAと各資産の割引率の設定とは?
第8回 PPAにおいて認識される無形資産の経済的対応年数とは?
第9回 PPAで使用する事業計画とは?
第10回 PPAの特殊論点とは?ー節税効果と人的資産ー
第11回 PPAプロセスの具体例とは?-設例を交えて解説ー
第12回 PPAを実施しても無形資産が計上されないケースとは?

 

 

 

 

 

 

 

[税理士のための税務事例解説]

事業承継やM&Aに関する税務事例について、国税OB税理士が解説する事例研究シリーズです。

今回は、「父から相続した建物を父の事業に従事していた者に低額譲渡した事例に対するみなし贈与課税の適用について」についてです。

 

[関連解説]

■【Q&A】事業を譲り受けた場合に営業権の計上について

■【Q&A】事業譲渡により移転を受けた資産等に係る調整勘定

 

 

 


[質問]

個人で診療所を経営している甲医師(以下「甲」という)は、甲の叔父が所有している土地を賃貸借契約して賃借し、その土地に建物を建て、診療所を経営していました。土地の賃貸料は安く相当の地代に満たないそうです。

 

甲は2月に病気になり入院したため休診にしていましたが、病気が完全に治るという可能性がないこと、また甲の子も医師ですが、甲の診療所を利用して開業する意思がないため、甲は廃業して建物を解体する予定でした。しかし4月に病状が急変し死亡しました。

 

相続人になる甲の子(以下「乙」という)も、建物を解体しようと考えていましたが、甲の診療所に勤務している従業員の子で、他の病院に勤務している勤務医がおり、従業員と勤務医をしている子が乙に診療所を承継したい旨を話すと、乙も快諾しました。乙としても建物を解体しても費用がかかること、また廃業するためにはいろいろな面倒な手続きがあること、また承継を望んでいる従業員の子の開業の助けになればと考えたそうです。

 

診療所の建物は、診療所専用で鉄筋造りの2階建てで、総床面積は600㎡です。入院設備はありません。

 

建物の固定資産償却額は6,000万円ですが、乙は診療所を承継してもらえるならと500万円で譲る考えです。

 

乙に対しては建物の相続税評価額6,000万円に対して、また借地権に対して相続税が課税されますがその課税については了解しています。

 

500万円という値段については、甲が生前に入院中、他人からもし診療所を廃業して建物を売却する考えがあれば500万円で売ってほしいという話がもとになっているようです。

 

この建物を有効に活かせる人から見れば3,000万円あるいは4,000万円の値段がつくかもしれません。

 

乙と従業員は親族関係にはなく他人のため、固定資産税評価額6,000万円の建物と借地権を500万円で売却しても従業員に対してみなし贈与は発生しないと考えますが、いかがでしょうか。

 

また、みなし贈与以外に何か課税上問題が発生するでしょうか。

 

なお、建物の帳簿価額は6,400万円です。

 

[回答]

ご照会の事案は、相続人乙が被相続人甲から相続により取得する建物を低額譲渡した場合において譲受人に対してみなし贈与課税の適用があるかどうかを問題としております。

 

ご照会では、乙と譲受人との間に親族関係はなく他人であるところからみなし贈与課税の適用はないと結論しております。

 

事実関係について建物の価額など詳細に示されていますが、ご照会の事案の検討に当たっては次に挙げる事項について事実関係を明らかにする必要があるのではないかと思われます。

 

① 甲は診療所の建物(以下、「A建物」といいます。)の敷地として甲の叔父の土地(以下、「B土地」といいます。)を賃借しておりましたが、A建物に係るB土地の借地権はどのように取り扱われていたか。

 

② A建物を譲り受けるのは甲の診療事業に従事していた従業員(以下、「丙」といいます。)または丙の子(以下「戊」といいます。)の何れか。

 

ご意見では、A建物の価額について固定資産税評価額、相続税評価額などを取り上げたうえで500万円という価額に至った経緯などを基に、乙と丙との身分関係などに照らしてみなし贈与課税の要件を欠くのではないかと結論しておられます。

 

しかしながら、上記の「①」で取り上げたところにより譲渡資産として取引される資産がA建物に加えてB土地の借地権も含まれるとすると、取引される資産の価額と対価の開差は大きく異なる見解も考えられるのでにわかにご意見に頷けないものがあります。

 

上記の「②」はA建物が診療所専用であるということからすると、医師である戊が譲り受けることには理解できますが、医師の資格を有しない丙が譲り受けることには素直に理解できないものがあります。

 

ご照会のおたずねでは、乙と丙との間に親族関係が存しないことを大きな要素としておりますが、固定資産税評価額との比較において取引価額に大差が存する事実からするとご意見によることは難しいのではないかと考えます。

 

 

 

 

税理士懇話会事例データベースより

(2020年6月15日回答)

 

 

 

 

[ご注意]

掲載情報は、解説作成時点の情報です。また、例示された質問のみを前提とした解説となります。類似する全ての事案に当てはまるものではございません。個々の事案につきましては、ご自身の判断と責任のもとで適法性・有用性を考慮してご利用いただくようお願い申し上げます。

 

 

 

 


[業界別・業種別 M&Aのポイント]

第7回:「産業廃棄物処理業のM&Aの特徴や留意点」とは?

~収集運搬業者か処分業者か?許認可、設備、人材は?社内管理体制は?法改正は?~

 

〈解説〉

公認会計士・中小企業診断士  氏家洋輔

 

 

▷関連記事:「製造業のM&Aの特徴や留意点」とは?

▷関連記事:「小売業のM&Aの特徴や留意点」とは?

▷関連記事:「建設業のM&Aの特徴や留意点」とは?

 

Q、産業廃棄物処理業のM&Aを検討していますが、産業廃棄物処理業M&Aの特徴や留意点はありますか?


廃棄物は、産業廃棄物と一般廃棄物に分けられ、産業廃棄物は特別管理産業廃棄物等、一般廃棄物は事業系一般廃棄物、家庭廃棄物等それぞれ細分化されます。

 

 

 

 

 

 

産業廃棄物処理業は、大きく「収集運搬業」「中間処理業」「最終処分業」に分けられ、各業態でも例えば収集運搬業は、運搬する廃棄物の種類によって細かく細分化されます。一般家庭ゴミの収集運搬にしても、生ゴミ(可燃ゴミ)・プラスチック包装容器・缶瓶ペットボトル・紙・布・粗大ゴミと収集運搬業者はそれぞれ違います。

 

 

 

 

収集運搬業は排出元と処分場の両方の区域の許可を取得する必要があります。積替保管とは、排出元と処分場の間に廃棄物を一時的に保管する施設を設置し、そこを経由して処分場へ運ぶことを言います。積替保管なしの場合、排出元から処分場に直行する必要がありますが、積替保管ありの場合は一定量蓄積してから運搬するなど輸送効率の向上が可能となります。対象となる廃棄物の保管基準を満たす必要があり、許可取得難易度は積替保管なしと比較し高くなります。

 

中間処理では、埋立処分等の最終処分前に、生活環境保全上支障を生じないように、破砕、焼却、脱水、中和による減量・減容化、安定化、無害化を行います。

 

最終処分では、原則最終処分場への埋立処分により行われます。最終処分場は対象となる産業廃棄物により3タイプに分かれます。

 

●安定型最終処分場……処分対象:安定型産業廃棄物(廃プラスチック類、ゴムくず、がれき類、金属くず、ガラス・陶磁器くず、環境大臣が指定する産業廃棄物)

●遮断型最終処分場……処分対象:有害物質を含む特別管理廃棄物

●管理型最終処分場……処分対象:①、②以外の産業廃棄物

 

 

M&Aを検討している場合に、対象企業の産業廃棄物処理業が「収集運搬業」なのか、「中間処理業」なのか、「最終処分業」なのかを把握しましょう。一般的に「収集運搬業」よりも「中間処理」や「最終処分」業者の方が設備や埋め立てのための土地等を保有することから規模が大きく、参入障壁が高いことから利益率は高くなる傾向にあります。

 

また、産業廃棄物処理業特有の論点として、不法投棄の問題があります。不法投棄防止のために産業廃棄物管理表(マニフェスト制度)が導入されており、マニフェスト制度に沿った対応が必要となります。

 

 

産業廃棄物処理業のM&Aを検討する場合、収集運搬業者か処分業者か、また所有する許認可、設備、人材等について確認をする必要があります。どの業界向けの産業廃棄物を処理できるのか等の能力を確認しましょう。

 

また、社内管理体制の整備、マニフェスト(産業廃棄物管理表)の適切な処理ができているか、不法投棄を行ったり、近隣住民とトラブルを起こしたりしていないかを把握する必要があります。また、法改正の影響を受けやすい業界であるため、法改正の動向も確認しておく必要があります。