【Q&A】法人が解散・残余財産が確定した場合の事業年度[税理士のための税務事例解説]

[税理士のための税務事例解説]

事業承継やM&Aに関する税務事例について、国税OB税理士が解説する事例研究シリーズです。

今回は、「法人が解散・残余財産が確定した場合の事業年度」についてです。

 

[関連解説]

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[質問]

〇当社は、11月末日決算法人(事業年度令和元年12月1日~令和2年11月30日)です。今般諸事情により、下記の予定にて解散・清算の予定です。
・解散予定日 令和2年9月30日

 

〇下記内容にて申告を考えています。
・解散申告…令和元年12月1日~令和2年9月30日…申告期限 令和2年11月30日
・みなし清算事業年度…令和2年10月1日~令和3年9月30日…申告期限 令和3年11月30日

 

〇みなし事業年度ですが、財産の整理が令和3年1月31日までには完了する予定です。
・したがって、上記みなし事業年度にかかわらず…令和2年10月1日~令和3年1月31日の事業年度として法人税等の申告を考えています。

 

〇残余財産確定申告書についても、残余財産の整理が令和3年2月28日には完了の予定です。
・残余財産確定申告書は、令和3年2月1日~2月28日の期間で法人税等の申告を考えています。

 

上記の事業年度で法人税等の申告をした場合には、税法上何か問題は発生しますか。

 

 

[回答]

1 事業年度
 (1) 事業年度の意義
この法律において「事業年度」とは、法人の財産及び損益の計算の単位となる期間(会計期間)で、法令で定めるもの又は法人の定款、寄附行為、規則、規約その他これらに準ずるもの(定款等)に定めるものをいい、法令又は定款等に会計期間の定めがない場合には、次項の規定により納税地の所轄税務署長に届け出た会計期間又は第3項の規定により納税地の所轄税務署長が指定した会計期間若しくは第4項に規定する期間をいう。ただし、これらの期間が1年を超える場合は、当該期間をその開始の日以後1年ごとに区分した各期間(最後に1年未満の期間を生じたときは、その1年未満の期間)をいう(法人税法13①)。

 

 (2) みなし事業年度(抜粋)
次の各号に規定する法人(…(省略)…)が当該各号に掲げる場合に該当することとなったときは、前条第1項の規定にかかわらず、当該各号に定める期間をそれぞれ当該法人の事業年度とみなす(法人税法14)。
一 内国法人(連結子法人を除く。)が事業年度の中途において解散(合併による解散を除く。)をした場合
その事業年度開始の日から解散の日までの期間及び解散の日の翌日からその事業年度終了の日までの期間
ニ~二十 (省略)
二十一 清算中の法人の残余財産が事業年度の中途において確定した場合(第十号に掲げる場合を除く。)
その事業年度開始の日から残余財産の確定の日までの期間
二十二~二十五 (省略)

 

(3) 解散、継続又は合併の日
法人税法第14条第1項第1号及び第12号《みなし事業年度》の「解散の日」又は第22号の「継続の日」とは、株主総会その他これに準ずる総会等において解散又は継続の日を定めたときはその定めた日、解散又は継続の日を定めなかったときは解散又は継続の決議の日、解散事由の発生により解散した場合には当該事由発生の日をいう。また、同項第2号、第10号及び第13号の「合併の日」とは、合併の効力を生ずる日(新設合併の場合は、新設合併設立法人の設立登記の日)をいう(法人税基本通達1-2-4)。

 

 

2 会社法
 (1) 清算の開始原因
株式会社は、次に掲げる場合には、この章の定めるところにより、清算をしなければならない(会社法475)。
一 解散した場合(第471条第4号に掲げる事由によって解散した場合及び破産手続開始の決定により解散した場合であって当該破産手続が終了していない場合を除く。)
二 設立の無効の訴えに係る請求を認容する判決が確定した場合
三 株式移転の無効の訴えに係る請求を認容する判決が確定した場合

 

(2) 貸借対照表等の作成及び保存
清算株式会社は、法務省令で定めるところにより、各清算事務年度(第475条各号に掲げる場合に該当することとなった日の翌日又はその後毎年その日に応当する日(応当する日がない場合にあっては、その前日)から始まる各1年の期間をいう。)に係る貸借対照表及び事務報告並びにこれらの附属明細書を作成しなければならない(会社法475)。

 

 (3) 株式会社等が解散等をした場合における清算中の事業年度
株式会社…(中略)…が解散等(会社法第475条各号…(中略)…《清算の開始原因》に掲げる場合をいう。)をした場合における清算中の事業年度は、当該株式会社等が定款で定めた事業年度にかかわらず、会社法第494条第1項…(中略)…《貸借対照表等の作成及び保存》に規定する清算事務年度になるのであるから留意する(法人税基本通達1‐2‐9)。

 

 

3 お尋ねについて
会社法の施行日(平成18年5月1日)以後に解散等した株式会社については、清算中の事業年度は、当該株式会社が定款で定めた事業年度にかかわらず、会社法第494条第1項《貸借対照表等の作成及び保存》に規定する清算事務年度になるとされています。

 

すなわち、法人が事業年度の中途において解散(合併による解散を除く。)をした場合には、まず、法人が定款等で定めた事業年度開始の日から解散の日までの期間についてみなし事業年度が生じ、次に、解散の日の翌日から会社法上の清算事務年度終了の日までの期間についてみなし事業年度が生じることとなります。

 

また、清算中の法人は、最終的に残余財産を分配して清算事務を終了し、清算結了することになりますが、その法人の残余財産が事業年度の途中で確定した場合には、その事業年度開始の日から残余財産確定の日までの期間を清算最終事業年度としてみなし事業年度を設けることとなります。ここでいう「残余財産確定の日」とは、特段明文化されていませんが、残余財産は、全ての資産を換価し債務を弁済することによって確定するため、実務上は、これらの全てが完了した日を「残余財産確定の日」とすることとなり、清算人が状況に応じて判断して定めることになると考えられています。

 

お尋ねによれば「11月決算法人が、令和2年9月30日に解散し、…」とのことですが、お尋ねの文中の「財産の整理が令和3年1月31日までに完了」と「財産の整理が令和3年2月28日までに完了」の使い分けが分かりませんので、便宜、「お尋ねの法人が株式会社であり、残余財産確定の日が令和3年2月28日である」と仮定した場合には、事業年度は次のようになるものと思われます。

 

(1) 解散の日が令和2年9月30日
イ 平成元年12月1日から令和2年9月30日まで(通常の事業年度)
ロ 令和2年10月1日から令和3年9月30日まで(清算中の事業年度)
(2) 残余財産確定の日が令和3年2月28日
上記(1)ロの事業年度の途中で残余財産が確定しますので、令和2年10月1日から令和3年2月28日までのみなし事業年度(清算最終事業年度)が生ずることになります。

 

 

 

 

税理士懇話会事例データベースより

(2020年10月5日回答)

 

 

 

 

[ご注意]

掲載情報は、解説作成時点の情報です。また、例示された質問のみを前提とした解説となります。類似する全ての事案に当てはまるものではございません。個々の事案につきましては、ご自身の判断と責任のもとで適法性・有用性を考慮してご利用いただくようお願い申し上げます。