[ゼロからわかる事業再生]

第4回:事業再生手続に舵を切るタイミング

~事業再生とは、事業再生の手続の種類、事業再生手続実施のタイミング~

 

[解説]

髙井章光(弁護士)

 

 

[質問(Q)]

当社は創業40 年となり20 店舗を有する中堅小売り店ですが、近年の不況のため毎年赤字が続き、3 年前から債務超過となってしまっています。「事業再生」の手続はどの時点で行うのがよいのでしょうか。

 

 

[回答(A)]

赤字が続き、債務超過に至ってしまえば、破産の危機に陥ってしまいます。今後2 ~ 3 年での黒字転換が難しい状況であれば、早期に「事業再生」を実施すべきと考えられます。赤字から黒字転換できたとしても、資金不足が解消せず、資金ショートの危険が生じている場合には、早期に「事業再生」を実施する必要があります。

 

 

 

1.事業再生とは


事業を営む者や企業が、赤字が続き、債務超過に至ってしまった場合には、資金不足となり、事業活動を継続することができなくなる危険が生じます。このような窮境状況にある場合に、事業を廃止・清算するのではなく、事業をなんとか継続するための手法が「事業再生」手続です。

 

「事業再生」手続のポイントは、①資金繰りの建て直し、②事業収益力の見直し、③過大負債の削減を行うことにあります。窮境状態に至ってしまった場合、資金不足となり資金ショートのおそれが高まりますので、一定範囲の支払を一時期留保してもらって、資金繰りを建て直しながら、支払留保の期間中に事業収益力の見直しを実施し、それでも負債を適正に返済することが難しい状態の場合には、過大な負債の削減を実施することになります。

 

2.事業再生の手続の種類


「事業再生」手続には、大きく分けて法的再生手続と私的再生手続があります。

 

法的再生手続は、法律の規定によって裁判所が手続を監督しながら進める手続であり、手続開始時におけるすべての債権者に対して支払猶予してもらいながら手続を進めます。民事再生手続や会社更生手続がこれに当たります。

 

私的再生手続は、必ずしもすべての債権者に支払猶予を依頼するのではなく、主に大口債権者たる金融機関のみに支払猶予を依頼しながら、金融機関と協議の上で再建策を構築する手続になります。事業再生ADR、中小企業再生支援協議会、特定調停手続がこれに当たります。なお、これらの手続には一定の手続ルール(準則)があり、そのルールに則って私的再生手続を進めていきますが(準則型私的整理手続)、特にルールが決まっている訳ではなく、弁護士が前面に立って債権者との協議を進めて行く方法もあり、「純粋私的再生手続」と呼ばれています。純粋私的再生手続において、会社の事業を他の会社に事業譲渡し、従前の会社は特別清算手続にて過大負債とともに清算する手法(いわゆる第二会社方式)も多く行われています。

 

3.事業再生手続実施のタイミング


「事業再生」手続を経ずに再建できれば、債権者に迷惑をかけることも少なくて済みますので、これに越したことはありません。しかし、再建できると思って、「事業再生」手続実施のタイミングを見誤り遅れてしまった場合には、「事業再生」手続を実施しても解消できないほど負債は過大となり、また、事業収益力の毀損が著しくなってしまい、「事業再生」を実施する期間中に必要となる資金が枯渇してしまうことなどによって、破産しか選ぶ途がなくなってしまいます。

 

通常、「事業再生」手続の実施が早ければ早いほど、その効果は大きくなります。資金が多く残っていれば、時間をかけて再建策を講じることができますし、事業収益力の毀損が大きくなければ、大手術でなく軽い手術にて改善することができます。

 

 

「事業再生」手続を実施するタイミング、判断ポイントをまとめると以下のとおりです。

 

 

 

 

すなわち、資金がショートしてしまえば事業活動を継続できませんので、早期に「事業再生」手続を実施する必要があります。また、資金繰りが一定期間において継続できるとしても、経常赤字が継続して解消の目途が立たなければ、早晩に資金繰りにも影響が生じる危険があります。経常利益を出していてもその利益の額は大きくないため、大幅な債務超過を解消する目途が立たない場合には、同様に過大負債の返済負担に耐えられなくなってしまいます。

 

「事業再生」の必要性を感じた場合には、早期に事業再生を専門とする弁護士に相談し、「事業再生」を実施する必要があるか見極めてもらうのがよいと思います。

 

 

 

 

 

 

[M&Aニュース](2021年11月29日〜2021年12月10日)

◇日本パワーファスニング<5950>、建築用ファスナー製造の中国子会社「蘇州強力五金」を譲渡、◇アライドアーキテクツ<6081>、動画広告の企画・制作子会社のAiCON TOKYOを経営陣に譲渡、◇ブリヂストン<5108>、防振ゴム事業を中国投資会社「安徽中鼎控股」に譲渡、◇ブリヂストン<5108>、化成品ソリューション事業を国内投資ファンドのエンデバー・ユナイテッドに譲渡、◇トランスジェニック<2342>、検査・解析事業子会社のジェネティックラボをEurofinsの傘下企業に譲渡、◇鴨川グランドホテル<9695>、MBOで株式を非公開化、◇愛知銀行<8527>と中京銀行<8530>、2022年10月に経営統合で合意、◇博報堂DYホールディングス、博報堂など子会社2社で100人規模の早期退職を実施、◇INCLUSIVE<7078>、マンガの電子書籍配信サービスを手がけるナンバーナインを子会社化、◇ビジョナル<4194>、経費精算クラウドシステム提供のイージーソフトを子会社化、◇ラクスル<4384>、ダンボール・梱包材の受発注サイト運営のダンボールワンを子会社化 ほか

 

 

 

 

 

日本パワーファスニング<5950>、建築用ファスナー製造の中国子会社「蘇州強力五金」を譲渡
2021/12/10

日本パワーファスニングは、建築用ファスナーを製造する中国全額出資子会社の蘇州強力五金有限公司(江蘇省。売上高5億5300万円、営業利益△8080万円、純資産△2億5100万円)の全持ち分を10日付で譲渡した。為替変動や中国現地の人件費上昇、環境規制の強化などから採算性が低下し、10年にわたって営業赤字が続き、今後も黒字化は困難と判断した。譲渡先、譲渡価額は非公表。

蘇州強力五金は日本パワーファスニングの香港子会社Japan Power Fastening Hong Kong Limitedの傘下で、1994年に創業した。

アライドアーキテクツ<6081>、動画広告の企画・制作子会社のAiCON TOKYOを経営陣に譲渡
2021/12/10

アライドアーキテクツは、動画広告の企画・制作子会社のAiCON TOKYO(東京都渋谷区。売上高7800万円、営業利益100万円、純資産3100万円)の保有株式90%を、同社代表取締役の石渡晃一氏に譲渡することを決めた。2018年に石渡氏と共同出資でAiCON TOKYOを設立したが、今後の方針を検討する過程で資本関係を切り離すことが望ましいとの結論に達したとしている。譲渡価額は未確定。譲渡予定日は2022年1月1日。

ブリヂストン<5108>、防振ゴム事業を中国投資会社「安徽中鼎控股」に譲渡
2021/12/10
ブリヂストンは、防振ゴム事業を中国投資会社の安徽中鼎控股(集団)股份有限公司(AZ、安徽省)に譲渡することを決めた。多角化事業の見直しの一環。当該事業の直近売上高は276億円。譲渡価額は非公表。譲渡完了は2022年7月を見込む。

防振ゴム事業を会社分割して設立する新会社にグループ内の関連事業会社を集約する。そのうえで、新会社の全株式をAZに譲渡する。新会社にはグループのブリヂストンエラステック(静岡県掛川市)をはじめ、米国やタイ、インド、中国の子会社・事業が集約される予定。

ブリヂストン<5108>、化成品ソリューション事業を国内投資ファンドのエンデバー・ユナイテッドに譲渡
2021/12/10
ブリヂストンは、化成品ソリューション事業を国内投資ファンドのエンデバー・ユナイテッド(東京都千代田区)に譲渡することを決めた。具体的には、化成品事業を会社分割して設立する新会社にグループ内の子会社などを集約したうえで、新会社の全株式を譲渡する。多角化事業の再編の一環。譲渡価額は非公表。譲渡は2022年8月中に完了する見込み。

譲渡するのは自動車用シートパッド、ウレタンフォームなどの高機能製品、プリンター本体と消耗品(カートリッジ)向け部品にかかわる業務で、直近売上高は265億円。新設される分割会社の名称などは未定。この新会社にはグループ内のブリヂストンケミテック(三重県名張市)をはじめ、国内外の子会社・事業が集約される。

トランスジェニック<2342>、検査・解析事業子会社のジェネティックラボをEurofinsの傘下企業に譲渡
2021/12/10

トランスジェニックは、全額出資子会社で医療関連の検査・解析事業を手がけるジェネティックラボ(札幌市。売上高16億9000万円、営業利益7億6000万円、純資産7億5300万円)の全株式を、Eurofins Clinical Testing Japan Holding(東京都新宿区)に譲渡することを決めた。医薬品会社の創薬を支援するCRO(開発業務受託機関)事業に経営資源を集中するのが目的。譲渡価額は32億1200万円。譲渡予定日は2022年1月1日。

譲渡先のEurofins Clinical Testing Japan Holdingはルクセンブルクに本拠を置くEurofins(ユーロフィン)グループの傘下企業。ユーロフィンは医薬品、食品などの分析・検査サービスを主力とする。

ジェネティックラボの足元の業績は新型コロナウイルス感染の有無を調べるPCR検査の受託で好調に推移。しかし、検査・解析業界では価格競争や、差別化に向けた最新機器への投資が経営課題となっているほか、トランスジェニックの基幹事業である創薬支援との相乗効果も部分的なものにとどまっていたという。

鴨川グランドホテル<9695>、MBOで株式を非公開化
2021/12/10

鴨川グランドホテルは10日、MBO(経営陣による買収)で株式を非公開化すると発表した。国内投資ファンドの日本産業推進機構(東京都港区)の傘下企業がTOB(株式公開買い付け)を行い、議決権ベースで全株取得を目指す。鴨川グランドホテルは新型コロナウイルス感染拡大による稼働率の急低下などで業績が悪化し、2021年3月期は約5億円の債務超過に陥った。ファンドの支援を得て、鴨川グランドホテルは鈴木健史社長のもとで経営の立て直しを進める。TOBが成立すれば、同社のジャスダック上場が廃止となる。

TOB主体は日本産業推進機構が設立したNSSK-V(東京都港区)。TOBは2回に分けて行われ、第1回は鈴木社長の親族らの保有株式を対象とし、1株の買付価格はTOB公表前日の終値265円から54.72%を割り引いた120円。金融機関や一般株主を対象とする第2回TOBでの買付価格は290円で、9.43%のプレミアムを加えた。第1回と第2回を合わせた買付代金は17億129万円(普通株式)。

第1回の買付期間は12月13日~2022年1月14日。決済の開始日は2022年1月20日。公開買付代理人はSMBC日興証券。第2回の買付期間は2022年1月24日~2月21日。

TOB成立後、鈴木社長らは鴨川グランドホテルに2億円を出資する予定。

鴨川グランドホテルは1952年に吉田屋旅館として創業。1965年に千葉県鴨川市にホテルを開業した。1990年に店頭市場(現ジャスダック)に株式を上場。鴨川グランドホテルのほか、ホテル西長門リゾート(山口県下関市)を運営する。

愛知銀行<8527>と中京銀行<8530>、2022年10月に経営統合で合意
2021/12/10

愛知県を地盤とする第二地銀の愛知銀行と中京銀行は10日、経営統合することで基本合意したと発表した。2022年10月3日に共同持ち株会社を設立し、両行を傘下に置く。続いて約2年後をめどに傘下の両行を合併する。歴史的な低金利による預貸金利ザヤの縮小や人口減少などで経営環境が厳しさを増す中、持続的な収益基盤を確立し、高品質で安定的な金融サービスの提供を目指す。

持ち株会社の社長は愛知銀行の頭取、副社長には中京銀行の頭取が就任する予定。持ち株会社の社名は2022年5月の最終契約で決める運び。また基幹システムは愛知銀行のものに統一することで協議を進める。

総資産は愛知銀4兆874億円、中京銀2兆3521億円。貸出金残高は愛知銀2兆6541億円、中京銀1兆5206億円。店舗数は愛知銀106店、中京銀87店(いずれも2021年9月末)。

博報堂DYホールディングス、博報堂など子会社2社で100人規模の早期退職を実施
2021/12/09

博報堂DYホールディングスは9日、傘下の博報堂と博報堂DYメディアパートナーズで合計100人規模の早期退職を実施すると発表した。対象は50歳以上59歳以下、勤続5年以上の社員。想定人数は博報堂80人程度、博報堂DYメディアパートナーズ20人程度とし、募集期間は12月6日~2022年1月14日。中核子会社である両社で早期退職を募るのは2017年12月以来4年ぶり。ビジネス変革時における人事政策の一環としている。

退職日は2022年3月31日。応募者には通常の退職金に加え、特別一時金を支給し、再就職も支援する。

INCLUSIVE<7078>、マンガの電子書籍配信サービスを手がけるナンバーナインを子会社化
2021/12/09

INCLUSIVEは、マンガの電子書籍配信サービスを手がけるナンバーナイン(東京都品川区。売上高4億1900万円、営業利益△841万円、純資産4610万円)の株式76%を取得し、子会社化することを決めた。電子コミックへの事業展開を通じて、個人の発信者が持続的に収益を獲得し活動を継続できる「クリエイターエコノミー」領域を拡張する。取得価額は5億7600万円。取得予定は2022年1月中。

ナンバーナインは2016年に設立。5500冊以上の電子書籍化実績(10月時点)を持つほか、漫画家の確定申告代行、漫画家のマネジメント業務などのサービスを提供している。

ビジョナル<4194>、経費精算クラウドシステム提供のイージーソフトを子会社化
2021/12/09

ビジョナルは傘下の転職サイト運営会社であるビズリーチ(東京都渋谷区)を通じて、経費精算クラウドシステムを提供するイージーソフト(東京都町田市)の全株式を取得し、子会社化することを決めた。HCM(人的資本管理)ニーズの高まりを見据え、ビズリーチが展開する人財活用クラウド「HRMOS」シリーズとの連携などを進める。イージーソフトは2000年に設立。取得価額は非公表。取得予定日は2022年3月1日。

ラクスル<4384>、ダンボール・梱包材の受発注サイト運営のダンボールワンを子会社化
2021/12/09

ラクスルは、ダンボール・梱包材の受発注サイト「ダンボールワン」を運営する関連会社のダンボールワン(金沢市。売上高43億4000万円、営業利益△8億6600万円、純資産△6億5400万円=2021年7月期、決算期変更に伴う10カ月決算)を子会社化することを決めた。株式を追加取得し、現在49.9%の持ち株比率を100%に引き上げる。これまでの協業関係の成果を踏まえ、企業価値最大化に資すると判断したという。取得価額は20億600万円。取得予定日は2022年2月1日。

ダンボールワンはダンボール・梱包材専門通販EC(電子商取引)サイトとして4年連続国内売上シェアトップを獲得。業界最大規模のネットワークを活用し、低コストで小ロットの商品提供の仕組みを構築している。ラクスルは2020年12月に同社を関連会社化した。

飯田グループホールディングス<3291>、ロシア最大級の林業グループRussia Forest Productsを子会社化
2021/12/08

飯田グループホールディングスは8日、ロシア最大級の林産企業を傘下に置く持ち株会社のRussia Forest Products(BVI)Limited(RFP、英領バージン諸島。売上高231億円、営業利益9億6200万円、純資産△178億円)の株式75%を取得し、子会社化すると発表した。木材の安定的な調達体制を確立し、中核である戸建分譲事業の競争力向上につなげる。株式取得と第三者割当増資引き受けの対価と飯田グループからの融資予定額を合わせ、取得価額は約600億円(5億2500万ドル)。ロシア政府当局から必要な許認可を7日付で得た。取得予定は2022年1月中旬。

飯田グループは戸建分譲で約3割の国内販売シェアを持つ業界大手で、年間4万6000戸以上を供給する。RFPはロシア極東のハバロフスク地方に約400万ヘクタール(九州の約1.08倍)の林区を持つ。年間原木伐採量は170万立方メートルで、これは飯田グループが年間に供給する住宅の木材使用量(原木換算)に相当するという。

木材をめぐっては今年、世界的な需要の高まりを背景に「ウッドショック」と呼ばれる価格急騰が起こり、輸入材に頼る住宅業界は深刻な打撃を受けている。飯田グループはRFPを傘下に迎えることで、需給ひっ迫や市況変動に影響されることなく、安定的で永続的な木材の調達が可能になると判断した。また、木材加工ノウハウを移転し、建材事業の高付加価値化も期待している。

日立造船<7004>、日本製鉄<5401>傘下でごみ焼却発電施設関連のドイツSteinmüller Babcock Environmentを子会社化
2021/12/08

日立造船は、日本製鉄傘下で、ごみ焼却発電施設の設計・建設やメンテナンスを手がけるドイツSteinmüller Babcock Environment GmbH(SBE。売上高110億円、営業利益△99億1000万円、純資産△19億2000万円)の全株式を取得し、子会社化することを決めた。日立造船はスイス子会社を通じて、ごみ焼却発電関連事業を欧州で展開しているが、SBEとは得意とする市場や製品分野が異なり相互補完が見込めると判断した。取得価額は非公表。取得予定は2022年2月頃まで。

SBEを子会社化するのは日立造船のスイス現地法人Hitachi Zosen Inova AG(HZI)。ごみ焼却発電施設に関し、HZIは英国やスイス、中東、ロシアなどを主力市場とするが、SBEはドイツ、フィンランドなどの北欧で納入実績を積み重ねてきたほか、ボイラー関連のサービスにも強みを持つ。

スマレジ<4431>、大和ハウス工業<1925>傘下でマルチ決済サービス提供のロイヤルゲートを子会社化
2021/12/08

スマレジは、大和ハウス工業傘下でマルチ決済サービス「PAYGATE」を開発・提供するロイヤルゲート(東京都港区。売上高7億7500万円、営業利益△6億100万円、純資産7億2000万円)の株式99.9%を取得し子会社化することを決めた。従来の代理店業務に代えて、自前の決済システムを保有するのが狙い。スマレジが提供するクラウドPOS(販売時点情報管理)レジ「スマレジ」や関連サービスと「PAYGATE」を密接に連携させ、導入店舗と消費者の双方に便利なキャッシュレス決済の実現などを目指す。取得価額は非公表。取得予定日は2021年12月22日。

ヨシムラ・フード・ホールディングス<2884>、シンガポールの不動産会社SHARIKAT NATIONAL FOODを子会社化
2021/12/08

ヨシムラ・フード・ホールディングスはシンガポールの傘下企業を通じて、食品工場や食品用低温倉庫を持つ不動産業の現地SHARIKAT NATIONAL FOOD PTE. LTD.(売上高1億8700万円、純資産△6億6700万円)の株式70%を取得し、子会社化することを決めた。シンガポールにある子会社4社の拠点を集約するのが目的。取得価額は約2億7500万円。取得予定日は2021年12月17日。

ヨシムラはシンガポールに海外事業統括子会社のYOSHIMURA FOOD HOLDINGS ASIA PTE. LTD.をはじめ、寿司製造、水産品卸、水産品加工・販売を手がける各子会社を持つ。これら4社の拠点を一つにまとめることで、物流費用の削減などの相乗効果が期待できるとしている。

ヨネックス<7906>、ブリヂストン<5108>傘下でテニスボール製造のタイBRIDGESTONE TECNIFIBREを子会社化
2021/12/06

ヨネックスは、ブリヂストン傘下でタイでテニスボールを製造するBRIDGESTONE TECNIFIBRE CO., LTD.(チョンブリー県。売上高18億6000万円)の株式86.8%を取得し子会社化することを決めた。主力のバドミントン用品に次ぐ事業と位置づけるテニス用品事業の強化が狙い。ラケット、ストリング(ガット)、ストリンギングマシン(ガット張り機)は自社工場で生産してきたが、ボールについてはこれまでBRIDGESTONE TECNIFIBREから供給を受けてきた。取得価額は非公表。取得予定日は2021年12月22日。

子会社化するBRIDGESTONE TECNIFIBREは2005年設立で、ブリヂストン子会社のブリヂストンスポーツ(東京都中央区)が86.8%、フランスのテニスブランドであるテクニファイバーが13.2%を出資する。ヨネックスはブリヂストンスポーツが保有する全株式を取得する。

テニスはコロナ禍の中でソーシャルディスタンスを保てるスポーツとして注目され、市場全体が活況を呈している。

月島機械<6332>、JFEエンジニアリングと水エンジニアリング事業を統合へ
2021/12/03

月島機械は3日、JFEホールディングス傘下のJFEエンジニアリング(東京都千代田区)と国内における水エンジニアリング事業の統合に向けた協議に入るとことで基本合意したと発表した。競争環境が厳しさを増す国内上下水道分野でリーディングカンパニーの地位を確立するのが狙い。2022年4月末に最終契約を交わし、2023年4月の事業統合を目指す。

事業統合新会社の出資比率などは今後詰めるが、月島機械が株式の過半数を取得して連結子会社とする予定。

サワイグループホールディングス<4887>、オリックス<8591>傘下で後発薬メーカーの小林化工から全工場を取得
2021/12/03

サワイグループホールディングスは3日、オリックス傘下で後発医薬品メーカーの小林化工(福井県あわら市)の全工場や関連する従業員を譲り受けると発表した。小林化工は昨年末に爪水虫などの治療薬に睡眠導入剤成分が混入する問題が起き、医薬品の製造・販売を停止する状態に追い込まれ、経営立て直しが急務になっている。2022年3月末に取得を完了し、2023年4月から出荷開始を予定する。取得価額は非公表。

サワイグループHDは受け皿となる新会社「トラストファーマテック」を3日付で設立。あわら市にある工場、研究所、物流センターなどを引き継ぐ。

後発医薬品市場では小林化工のほかにも品質問題に起因する製造停止で供給不安が生じている状況にある。サワイグループHDは後発医薬品の大手で、安定供給に向けて自社の生産能力増強を段階的に進めているが、需要の伸びに追いつかない懸念もあることから、小林化工の事業を取得することにした。

小林化工は1946年に創業。オリックスが2020年1月に同社株式の過半数を取得し、子会社化した。

東北新社<2329>、PR支援サービスのENJINを子会社化
2021/12/03

東北新社は、広報やブランディングなどのPR支援サービスを手がけるENJIN(東京都世田谷区。売上高42億7000万円、営業利益2億500万円、純資産13億4000万円)の全株式を取得し子会社化することを決めた。東北新社が強みとする制作力、クリエイティブ力とENJINの営業・企画力などを組み合わせ、顧客ニーズへの対応領域の拡大やサービス向上につなげる。取得価額は非公表。取得予定は2021年12月中。

ENJINは2012年に創業。東京五輪・パラリンピック招致プロジェクトへの参画や、食育プロジェクト、京都大学とのオンライン講座の企画・制作なども手がけている。

サンデンホールディングス、2年ぶりに早期退職を実施
2021/12/02

自動車用空調大手のサンデンホールディングスは2日、早期退職を実施すると発表した。対象者、想定人数は未定だが、退職予定日は2021年12月末。コロナ禍に半導体不足が重なり、世界的に自動車販売が低迷するなど厳しい環境が続く中、経営再建を確実に遂行するため、人員削減に踏み切る。応募者には通常の退職金に特別退職加算金を上乗せして支給し、再就職を支援する。早期退職者の募集は2019年10月以来2年ぶりで、前回は215人が応募した。

サンデンは私的整理の一種、事業再生ADR(裁判外紛争解決手続き)に基づく再生計画が2021年5月に成立。中国家電大手のハイセンス(海信集団)の傘下に入り、経営再建を進めている。

サンデンの2021年12月期業績予想(決算期変更に伴う9カ月決算)は売上高1200億円、営業赤字120億円、最終利益165億円。最終損益は取引金融機関からの債務免除益を計上するため大幅黒字となる。

同社は2019年10月、店舗用冷蔵・冷凍ショーケース、飲料用自動販売機などの流通システム事業を約500億円で投資ファンドに売却し、カーエアコン部品を中心とする自動車機器に集中する経営改革を断行。さらに200人規模の早期退職者を募った。しかし、翌2020年、新型コロナウイルス感染拡大の影響で業績が急速に悪化し、事業再生ADRの申請に踏み切った。

ネクスグループ<6634>、ワイン事業のイタリア子会社MECをやしまアートアンドリゾートに譲渡
2021/11/30

ネクスグループは、ワイン事業のイタリア子会社MEC S.R.L SOCIETA’AGRICOLA(レッチェ。売上高0百万円、営業利益△1300万円、純資産△3500万円)の全持ち分を、リゾート事業のやしまアートアンドリゾート(東京都港区)に30日付で譲渡した。MECはイタリアでワイン用ブドウを生産し、自社ブランドワインとして輸出を手がけてきたが、業績が低迷していたところに新型コロナウイルス感染拡大の影響が重なり、収益改善は困難と判断した。譲渡価額は約1円。

ネクスグループ<6634>、アパレル店舗運営の香港子会社のNCXX Internationalを現地社に譲渡
2021/11/30

ネクスグループは、アパレル店舗を運営する香港子会社のNCXX International Limited(売上高1億900万円、営業利益△1億1000万円、純資産△2億8500万円)の全株式を、ファッションアクセサリー小売りの現地SEQUEDGE INTERNATIONAL LIMITEDに譲渡することを決めた。業績不振に伴う措置。譲渡価額、譲渡予定日は未確定。

科研製薬<4521>、創薬バイオベンチャーのARTham Therapeuticsを子会社化
2021/11/30

科研製薬は、創薬バイオベンチャーのARTham Therapeutics(横浜市。純資産7億6000万円)の全株式を取得し子会社化することを決めた。開発パイプライン(新薬候補物質)の充実が狙い。ARThamは2018年7月設立で、形成外科領域の開発品ART-001(対象疾患:難治性脈管奇形)と皮膚科領域の開発品ART-648(同:水疱性類天疱瘡)を持ち、いずれも第2相臨床試験が進行中。取得価額は55億円。子会社化後の目標達成の状況に応じて追加対価として最大72億2200万円相当の科研製薬株式が交付される。取得予定日は2021年12月13日。

ジェイフロンティア<2934>、オーダーメイド美容液を提供するmy’sを子会社化
2021/11/30

ジェイフロンティアは、オーダーメイドによるパーソナライズ美容液を提供するmy’s(川崎市。売上高2億1000万円、営業利益600万円、純資産500万円)の全株式を取得し子会社化することを決めた。健康食品、医薬品分野に続き、化粧品分野に本格的に参入する。取得価額は未確定。2021年12月28日までに取得する予定。

my’sはオンライン診断で顧客のスキンレベルを把握し、診断結果に応じて個別注文できる美容液「my’s」をEC(電子商取引)で販売している。スキンレベルの診断結果は12万通りに上り、一人一人の肌質や肌悩みに応じた商品を提供している。

フランスベッドホールディングス<7840>、福祉用具販売・レンタルのホームケアサービス山口を子会社化
2021/11/30

フランスベッドホールディングスは傘下企業を通じて、福祉用具の販売・レンタルを手がけるホームケアサービス山口(山口県下関市。売上高20億2000万円、営業利益2億5200万円、純資産7億2800万円)の全株式を取得し子会社化することを決めた。福祉用具貸与を中心とするメディカルサービス事業の拡大につなげる。ホームケアサービス山口は1986年に設立。取得価額は非公表。取得予定日は2021年12月20日。

ネクスグループ<6634>、アパレル事業子会社のネクスプレミアムグループをアスコに譲渡
2021/11/30

ネクスグループは、アパレル事業のネクスプレミアムグループ(東京都港区。売上高9800万円、営業利益△5300万円、純資産△2億200万円)の全株式を、飲食業のアスコ(東京都港区)に譲渡することを決めた。ネクスプレミアムグループはイタリアのファッションブランド「CoSTUME NATIONAL(コスチューム・ナショナル)」を保有する。コロナ禍で事業の先行きが不透明で、早期の収益改善は難しいと判断した。譲渡価額、譲渡予定日は未確定。

ネクスグループ<6634>、旅行関連商品の通販サイト子会社「イー・旅ネット・ドット・コム」をシークエッジ・ジャパン・ホールディングスに譲渡
2021/11/30

ネクスグループは、旅行関連商品の通販サイトを運営する子会社のイー・旅ネット・ドット・コム(大阪府岸和田市。売上高1200万円、営業利益△2100万円、純資産3億9300万円)の全保有株式77.7%を、投資業のシークエッジ・ジャパン・ホールディングス(大阪府岸和田市)に譲渡することを決めた。業績低迷を受け、これ以上の事業継続はリスクが大きいと判断した。譲渡価額、譲渡予定日は未確定。

シーズメン<3083>、ネクスグループ<6634>傘下でエスニック衣料・雑貨輸入販売のチチカカを子会社化
2021/11/30

シーズメンは、ネクスグループ傘下でエスニック衣料・雑貨輸入販売のチチカカ(東京都中央区。売上高41億円、営業利益△1億円、純資産△1億2200万円)の全株式を取得し子会社化することを決めた。企業体質強化に向けた成長戦略の一環。今年10月には新機軸としてメタバースファッション専門アパレルブランド「ポリゴンテーラーファブリック」を立ち上げている。取得価額は未確定。取得予定日は2022年3月1日。

チチカカは1977年に創業し、中南米の民芸品の販売を始めた。現在、国内で約60店舗をチェーン展開する。2016年にネクスグループの傘下に入った。

マネーフォワード<3994>、人事労務関連のチャットボットを展開するHiTTOを子会社化
2021/11/30

マネーフォワードは、人事労務関連のチャットボット「HiTTO(ヒット)」を展開するHiTTO(東京都千代田区。売上高3億3200万円、営業利益11万4000円、純資産3400万円)の全株式を取得し子会社化することを決めた。顧客企業におけるバックオフィスの業務効率化を推進する。取得価額は19億9900万円(新株予約権を含む)。取得予定は2021年12月中。

「HiTTO」は勤怠管理、年末調整、経費精算、福利厚生など人事労務に関する社内からの問い合わせにチャット形式で対応し、AI(人工知能)が自動で即時に回答する。中規模以上の企業を中心に採用が進んでいるという。

SKIYAKI<3995>、エンターメディアからファンクラブ事業を取得
2021/11/30

SKIYAKIは、エンターテインメント関連事業のエンターメディア(東京都渋谷区)からファンクラブ事業を取得することを決めた。ファンクラブ事業の一層の拡大が狙い。手続きとしてはエンターメディアが当該事業を会社分割して設立する新会社エンターメディアFC(同)の全株式を取得し、子会社化する形。取得価額は非公表。取得予定日は2021年12月1日。

SKIYAKIは1000を超えるファンクラブ運営、EC(電子商取引)による物販、電子チケット、ライブ配信などのサービスを総合的に提供するプラットフォーム事業を展開している。エンターメディアのファンクラブ事業を取り込むことで、グループの有料会員数は100万人突破に向けて大きく前進するとしている。

エンターメディアは2007年設立で、音楽アーティストのファンクラブ運営をはじめ、アーティストのマネジメントサポート、グッズ・CD・DVDの販売、野外フェス運営などを手がけている。

TVE<6466>、放射線計測機器管理や電気・計装事業の太陽電業を子会社化
2021/11/29

TVEは、放射線計測機器管理や電気・計装事業を手がける太陽電業(東京都大田区。売上高12億1000万円、営業利益900万円、純資産21億円)の全株式を取得し子会社化することを決めた。原子力・火力発電所向けを中心とする高温高圧弁に関する事業領域の補完・拡張の一環。太陽電業は1978年に設立。取得価額は非公表。取得予定日は2022年1月4日。

岡谷鋼機<7485>、クレーン設計・製作の菱栄工機を子会社化
2021/11/29

岡谷鋼機は、クレーン設計・製作の菱栄工機(愛知県豊田市。売上高21億円)の株式を追加取得し、29日付で子会社化した。8.81%の持ち株比率を50.001%に引き上げた。クレーンの販売と保守・点検事業を強化する一環。取得価額は非公表。

グローリー<6457>、通貨処理機メーカーの米Revolution Retail Systemsを子会社化
2021/11/29

グローリーは米国子会社を通じて、通貨処理機メーカーの現地Revolution Retail Systems, LLC(テキサス州ダラス。売上高119億円、営業利益9億7500万円、純資産53億9000万円)の全株式を取得し、子会社化することを決めた。コア(中核)と位置付ける現金処理の自動化ビジネスに関し、北米での事業拡大を加速する狙い。取得価額は約210億円(1億8500万ドル)。取得予定時期は未確定。

Revolution Retail Systemsは2011年に設立し、大手小売業者やコンビニエンスストア、ホテルなど流通関連のバックオフィス向け通貨処理機で実績を積んできた。グローリーは同社の顧客基盤や販売・保守網を取り込み、北米の流通市場での販売増を目指す。

 

 

 

 

情報提供:株式会社ストライク

[M&A動向レポート](2021年11月)

■11月M&A77件、ENEOSは2カ月連続で金額首位

 

2021年11月のM&A件数(適時開示ベース)は前年同月比4件減の77件だった。前年同月を下回るのは3カ月ぶりだが、11月として過去10年で2019年(86件)、20年(81件)に続く高水準をキープしている。前月比では7件増えた。1~11月累計は12月を残して800件を突破しており、2021年の年間件数は2008年の870件を超え、リーマンショック後の最多となる可能性が出てきた。

 

全上場企業に義務づけられた適時開示情報から経営権の移転を伴うM&A(グループ内再編は除く)について、M&A仲介のストライク(M&A Online)が集計した。

 

 

11月の取引金額は5628億円。1000億円超の大型案件は2件あり、クボタがインドのトラクターメーカーを1406億円で買収する一方、ENEOSホールディングスは英国の資源開発子会社を1900億円規模で売却すると発表した。

 

このうち、ENEOSは10月に太陽光発電など再生可能エネルギー企業のジャパン・リニューアブル・エナジー(東京都港区)を2000億円で子会社化することを発表済みで、2カ月連続で金額トップに立つ。大型M&Aを買収・売却の両面から積極的に進める背景には脱炭素化の取り組みを加速する狙いがあるとみられる。

 

英国の北海油田での石油・天然ガス開発事業をめぐってはENEOSと同様に、丸紅も撤退を決め、11月初めに英国子会社Marubeni Oil&Gasの売却を発表した(売却金額は非公表)。

 

片倉工業がMBO(経営陣による買収)で非公開化する案件は買付代金が最大714億円に上り、投資ファンドが関与しないMBOとして過去最大級。同社は祖業の製糸事業の縮小に伴い、不動産や医薬品、機械関連などへの事業展開を進めてきた。非公開化を通じて一連の構造改革を促進する。

 

11月は中国事業を整理する動きが比較的目立った。日立金属は熱間圧延用ロール製造、東海カーボンはカーボンブラック製造、清鋼材は建機用などの鋼材部品製造、ASIAN STARはワンルームマンション賃貸事業を手がける現地子会社をそれぞれ売却することを決めた。

 

11月の金額上位案件は次のとおり。

 

 


① ENEOSホールディングス

英資源子会社JX Nippon Exploration and Productionを現地社に譲渡 (1900億円)

 

②クボタ

インドのトラクターメーカー

大手「エスコーツ」を子会社化 (1406億円)

 

③片倉工業

MBOで株式を非公開化(714億円)

 

④野村総合研究所

DXサービス大手の米Core BTSを子会社化(522億円)

 

⑤ポラリス・キャピタル・グループ

プレハブ建築・立体駐車場のスペースバリューホールディングスをTOBで子会社化 (386億円)

 

⑥グローリー

通貨処理機メーカーの米Revolution Retail Systemsを子会社化 (210億円)

 

⑦日本航空

双日と組んで空港店舗・免税店運営のJALUXをTOBで子会社化 (156億円)

 

⑧科研製薬

バイオ創薬ベンチャーのARTham Therapeutics(横浜市)を子会社化 (55億円)

 

⑨日本電産

工作機械メーカーのOKKを子会社化 (54.7億円)

 

⑩TCSホールディングス

露出計メーカー大手のセコニックをTOBで子会社化 (45.5億円)

 


情報提供元:株式会社ストライク

[M&A動向レポート](2021年11月)

■IT・ソフトウエア業界の2021年11月のM&A  件数3位も金額は過去最高に

 

 

IT・ソフトウエア業界の2021年11月のM&A発表件数は11件で、11月としては2012年以降の10年間では、2019年(14件)、2018年(12件)に次ぐ3番目(2017年は同数)となった。取引金額は575億円で、こちらは11月としては2012年以降の10年間では、2019年(68億円)を上回る過去最高となった。500億円を超える案件があったため一気にそれまでトップだった2019年の8倍強に膨らんだ。IT人材の不足に加えて、企業の選択と集中の動きが強まっており、IT関連業界のM&A市場が活発となっている。

 

全上場企業に義務づけられた東証適時開示情報のうち、経営権の移転を伴うM&A(グループ内再編は除く)について、M&A仲介のストライク(M&A Online)が集計した。

 

取引金額のトップは野村総合研究所の522億円

 

取引金額のトップは、野村総合研究所が米国統括会社を通じて、デジタル技術で企業の業務変革を支援するDX(デジタルトランスフォーメーション)サービス大手の米国Core BTS, Inc.(インディアナ州)を子会社化することを決めた案件で、取得価格は522億9200万円。

 

グローバル事業の拡大の一環で、Core BTSを傘下に置く、持ち株会社のConvergence Technologies, Inc.の全株式を取得する。

 

Core BTSはクラウド、デジタル開発、ネットワーク、セキュリティーの各事業領域でコンサルティングからシステム開発、導入、運用までのサービスをトータルに提供している。

 

金額の2番目は、ポートが新電力への切り替えに際して見積もりや取次業務を代行するマッチングメディア「エネチョイス」などを運営するINE(東京都豊島区)の株式50.91%を取得し子会社化することを決めた案件で、取得価格は約20億6800万円。

 

ポートが強みとする就職領域の会員基盤と組み合わせ、相互の販路活用による収益機会の最大化につなげる。

 

INEは政府の電力自由化が始まった2014年に設立。新電力への切り替え取次件数では業界トップ級で、2022年3月期は10万件を突破する見込みという。

 

金額の3番目は、マネーフォワードが人事労務関連のチャットボット「HiTTO(ヒット)」を展開するHiTTO(東京都千代田区)の全株式を取得し子会社化することを決めた案件で、取得価格は19億9900万円(新株予約権を含む)。顧客企業におけるバックオフィスの業務効率化を推進するのが狙い。

 

「HiTTO」は勤怠管理、年末調整、経費精算、福利厚生など人事労務に関する社内からの問い合わせにチャット形式で対応し、AI(人工知能)が自動で即時に回答する。中規模以上の企業を中心に採用が進んでいる。

 

このほかに10億円未満が4件、金額非公表などが4件あった。

 

 

 

 

 

情報提供元:株式会社ストライク

[氏家洋輔先生が解説する!M&Aの基本ポイント]

第9回:会社分割および事業譲渡のメリットとデメリット(比較)

 

〈解説〉

公認会計士・中小企業診断士  氏家洋輔

 

 

▷関連記事:株式譲渡と事業譲渡~株式譲渡、事業譲渡のメリットとデメリットとは?~

▷関連記事:M&Aの主なスキーム (株式譲渡、事業譲渡、会社分割)~メリットとデメリット?留意点は?~

▷関連記事:どのようにM&Aを行うのか~株式の売買(相対取引、TOB、第三者割当増資)、合併、事業譲渡、会社分割、株式交換・株式移転~

 

 

 

M&Aを検討する場合に、最も多く用いられるスキームは株式譲渡です。株式譲渡によりそのまま親子関係となり、他のスキームと比べとてもシンプルな方法です。一方で、M&Aのニーズとして、会社の一部の事業だけを売却したいというニーズがあり、その場合には株式譲渡は用いずに、会社分割又は事業譲渡を用います。下図のような、A社のY事業をB社に移転するという方法に会社分割又は事業譲渡が用いられます。会社の置かれた状況によりどちらを用いた方がよいかが異なるため、違いを理解しておく必要があります。

 

 

 

 

 

会社分割は組織再編行為であることに対して、事業譲渡は取引法上の行為であることから以下のような違いが生じます。

 

 

 

権利義務の承継には包括承継と特定承継があります。包括承継は、その権利義務の全部または一部を包括的に別の会社へ承継することをいいます。特定承継は事業に関する財産等を個別移転することをいいます。会社分割では権利義務は包括承継となり、事業譲渡では特定承継となります。

 

会社分割のような組織再編では、資産の変動や債務者の変更により債権者の利害に影響を及ぼす恐れがあります。債権者保護手続きは債権者の利益を守る目的で、会社法で定められた手続きです。官報公告や個別催告で組織再編の通知を受けた債権者は、最低1か月間は異議を述べる機会が与えられます。債権者が異議を申し立てた場合、当事会社は弁済もしくは相当の担保を提供するといった対応をとる必要があります。会社分割では一定の場合を除いて債権者保護手続きが必要であるのに対して、事業譲渡では債権者保護手続きは不要です。

 

また、雇用、許認可、消費税、登録免許税、不動産取得税等の違いがあるため、譲渡事業の特性等に応じてスキームを検討する必要があります。

 

 

留意事項

一般的に、特定承継である事業譲渡は引き継ぐ資産負債、従業員等と個別に特定したうえで契約を行うため実務的に煩雑になります。

 

また、事業を行うにあたり許認可が必要であり、かつ許認可の取得が容易ではない場合は、事業譲渡では許認可の引継ぎが行われないため、事業運営に支障をきたす可能性があります。

 

さらに、譲渡事業に多額の不動産が含まれる場合に事業譲渡を選択すると、登録免許税や不動産取得税の金額が高額となります。

 

上記のように、会社分割と事業譲渡は異なる点が多く、これらの内容を理解せずにスキームを決定すると、思わぬ落とし穴がある場合があるためスキームの選定は専門家を交えて慎重に行いましょう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

[税理士のための税務事例解説]

事業承継やM&Aに関する税務事例について、国税OB税理士が解説する事例研究シリーズです。

今回は、「法人の解散・清算に伴う役員退職金の損金算入時期」についてです。

 

[関連解説]

■【Q&A】会社解散後清算人に就任した代表取締役に対する退職給与

■【Q&A】解散に際して支払われる役員退職金の課税関係

 

 

 


[質問]

㈱Aは建設業を営む青色申告法人です(売上高7千万円、役員は代表取締役甲 のみ、従業員3名、課税所得800万円、税務上の繰越欠損金額なし、8月決算)。

 

㈱Aの代表取締役甲は急病により余命1年と宣告されました。よって、甲は令和3年8月31日に㈱Aの解散登記、同10月31日に清算結了登記を行い、廃業することを決定しました。

 

甲は清算人に就任して、清算結了までの解散事務を行う予定です。
また、㈱Aは甲に対して退職金として800万円を支払う予定です。
※役員報酬月額70万円×勤続年数6年×功績倍率2倍=840万円

 

 

 

(質問事項)
この場合、解散の決議・清算人の選任を行う臨時株主総会(8月31日)におい て、併せて役員退職金(800万円)の支給決議を行い、直ちに支給する場合には、不相当に高額な場合を除き、解散事業年度の損金の額に算入することになる考えますが貴職のご見解をおたずねします。
※甲の入院にともない500万円の保険金が当期に㈱Aに入金されたことに対する税務対策として解散事業年度に退職金を支払う目的があります。

 

 

(参考資料)
所得税基本通達 30-2(6)
(引き続き勤務する者に支払われる給与で退職手当等とするもの)
30-2 引き続き勤務する役員又は使用人に対し退職手当等として一時に支払われ る給与のうち、次に掲げるものでその給与が支払われた後に支払われる退職手当 等の計算上その給与の計算の基礎となった勤続期間を一切加味しない条件の下に 支払われるものは、30-1 にかかわらず、退職手当等とする。
(1)~(5) 省略
(6) 法人が解散した場合において引き続き役員又は使用人として清算事務に従 事する者に対し、その解散前の勤続期間に係る退職手当等として支払われる給与

 

 

 

[回答]

1 退職給与は、退職という事実に基因して支払われる一時の給与であり、清算人は、法人税法上の役員ですから、解散前の代表取締役が解散後も引き続き清算人に就任した場合、法人の役員としての地位は連続し、退職という事実がないことから、原則として、当該代表取締役に対する一時金の支給は、たとえ相当の金額であったとしても退職給与として損金の額に算入できないことになります。

 

2 しかしながら、次のような法人税及び所得税の取扱いがあります。
法人税基本通達9-2-32においては、分掌変更等の場合のように実質的に退職したと同様の事情があると認められる特別の場合に限り、その事情に基づき当該役員に対し役員退職金をいわゆる打切支給したときは、退職給与として損金算入することができる取扱いが認められています。また、所得税基本通達30-2の(6)においては、引き続き勤務する役員等に対し退職手当等として一時に支払われる給与のうち、その給与が支払われた後に支払われる退職手当等の計算上その給与の計算の基礎となった勤続期間を一切加味しない条件の下に支払われるもので、法人が解散した場合において引き続き役員又は使用人として清算事務に従事する者に対し、その解散前の勤務期間に係る退職手当等として支払われる給与は、退職所得として取り扱うことを認めています。

 

3 したがって、法人が解散した場合において、引き続き役員として清算事務に従事する者に対し、その解散前の勤続期間に係る退職手当等として支払われる、いわゆる打切支給の退職給与は、上記のように所得税法上退職手当等として取り扱われることから、法人税法上も分掌変更等の場合の取扱い(法基通9-2-32)と同様、退職給与として取り扱われ、その適正額については損金の額に算入することが認められるものと考えます。

 

4 そして、退職役員に対する退職給与の損金算入時期は、株主総会の決議等によりその額が具体的に確定した日の属する事業年度が原則とされています(法基通9-2-28)。ただし、打切支給の退職給与は、原則として、法人が未払金等に計上した場合の当該未払金等の額は含まれないこととされています(法基通9-2-32(注))。

 

5 ご質問の場合、㈱Aは、代表者甲の代表取締役から清算人への職務の変更に際し、解散事業年度末に役員退職金の支給決議を行い、直ちにその退職金を支給するとのことです。また、甲の職務内容は激変し、清算人の職務に対する報酬も、無報酬か又は代表取締役時代より激減すると推察されるなど、実質的に退職したと同様の事情があるものと認められますし、退職金の額も不相当に高額とも認められませんから、上記の取扱いに照らして考えれば、解散事業年度の損金の額に算入することで問題ないと考えます。
なお、代表者甲の入院に伴う保険金の入金時期については、上記の判断のうえで考慮の対象とはなりえません。

 

 

 

税理士懇話会事例データベースより

(2021年8月10日回答)

 

 

 

 

[ご注意]

掲載情報は、解説作成時点の情報です。また、例示された質問のみを前提とした解説となります。類似する全ての事案に当てはまるものではございません。個々の事案につきましては、ご自身の判断と責任のもとで適法性・有用性を考慮してご利用いただくようお願い申し上げます。

 

 

 

 


[スモールM&A マッチングサイト活用が成功のカギ]

第3回:「補助金」や「税金」で、国も小さな会社の事業承継を積極支援!

~スモールM&Aで活用できる国の支援策とは?~

 

〈解説〉

税理士 今村仁

 

 

 

 

 

 拡充される国の事業承継支援策


「マッチングサイトを活用した小さな会社の事業承継」が活況になりつつある大きな理由の1つとして「国の支援策の拡充」が挙げられる。ここでは特に「補助金」と「税金」を取り上げる。

 

 

「事業承継・引継ぎ補助金」とは


「事業承継・引継ぎ補助金」は、2020年のコロナ禍のさなかに創設された「経営資源引継ぎ補助金」と、以前からある「事業承継補助金」を統合し、補助額も増額して2021年に再スタートしたものである。

 

 

図1を見てほしい。改正前の「経営資源引継ぎ補助金」が図1の②事業引継ぎ時の士業専門家の活用費用の補助に当たる。この②の補助の対象者は、小さな会社を含む中小企業者等を前提として「第三者承継=M&Aを行う譲渡側及び譲受側」となっていて、補助対象経費は、「成功報酬、財務調査費用、着手金、マッチングサイトの利用料等」と幅広く、補助率「1/2」、補助上限額は「250万円」である。

 

また、オーナー経営者側では、一部事業譲渡や一部廃業ということも想定されており、その時の廃業費用に対する補助金200万円も別途手当されている。

 

 

改正前の「事業承継補助金」は図1の①事業承継・引継ぎを契機とする新たな取組や廃業に係る費用の補助に当たる。例えば、第三者承継を実施後、後継者が経営統合を兼ねて大型の機械装置を購入する場合に、その機械装置購入費用について、補助率「1/2」で補助上限額「250万円又は500万円(廃業部分がある場合は別途上乗せ措置あり)」となる。この補助金は、「第三者承継時の専門家報酬」ではなく、「第三者承継後の新たな取組への後継者向け支援」といったイメージであるが、後継者が得をするということは、その分承継対価の条件が良くなるため、オーナー経営者である皆さんにも良い影響があるということだ。

 

 

 

「経営資源集約化税制」とは


2021年度税制改正において、第三者承継で会社を株式譲渡で承継した場合に、その承継対価の7割を費用計上できるという「経営資源集約化税制」が創設された。この税制も後継者向けの支援策となる。

 

 

 

 

例えば、1,000万円で会社を承継した場合、通常はその1,000万円は後継者側の貸借対照表の「資産」に計上される。「費用」にはならない。

 

しかし、後継者には、承継後に思わぬ出費が発生するというリスクもある。例えば、きちんとした専門家を付けずに第三者承継を実行した場合、隠れ負債や未払残業代等の事後発覚もありうるのだ。こういった承継後リスクを税金面から軽減するため、承継対価700万円(1,000万円×70%)の一括費用計上を認めてくれるのが、この経営資源集約化税制である。

 

ただし、この税制では5年経過後から5年間で積立金額の均等取崩し(収益計上)が行われるので、この点にも注意が必要である。

 

 

 

国による第三者承継支援策の今後


最後にお伝えしたいのは、これら国の支援策が、これで終わり又は今がピークというものではなく、この先更に拡大していくであろうということである。小さな会社の後継者不足問題は待ったなしである。少なくともこの先10年は、国の生産性向上や創業促進施策と相まって、小さな会社の第三者承継支援策は続々と出てくるものと思われる。

 

 

 

 

書籍「小さな会社の事業承継・引継ぎ徹底ガイド ~マッチングサイト活用が成功のカギ」より

 

 

 

 

[わかりやすい!! はじめて学ぶM&A  誌上セミナー] 

第11回:類似会社比較法(マルチプル法)とは

 

 

〈解説〉

公認会計士・税理士 清水寛司

 

〈目次〉

1.類似会社比較法(マルチプル法)とは

①マルチプル法って何?

②マルチプル法の手順

2.マルチプル法の実務

①類似企業を選ぼう

②倍率を出そう:EV/EBITDA倍率

③倍率を出そう:PER・PBR

④計算事例

 

 

今回はバリュエーションの中でもよく使用される「マルチプル法」についてご説明します。マルチプル法は類似上場会社の数値を基礎として価値を評価する手法です。ざっくりとした企業価値を算出するのにもってこいの手法なので、事例を基に見ていきましょう。

 

 

▷関連記事:M&Aにおける価値評価(バリュエーション)の手法とは?

▷関連記事:売買価格の決め方は?-価値評価の考え方と評価方法の違い-

▷関連記事:企業価値、事業価値および株式価値について

 

 

1. 類似会社比較法(マルチプル法)とは


①マルチプル法って何?

東証や大証などの市場に株式が出回っている場合、価値の算定はそこまで難しくありません。普通株式であれば、単純に株価×発行済株式数を基礎として株主資本価値を算定することが可能です。

 

しかし、M&Aにおいて市場に株式が出回っている会社が登場することは非常に稀です。多くのM&A案件は非公開会社の売買案件ですので、上記のように単純に価値を評価することが出来ません。しかし、一定程度の客観性を持った評価金額が必要となります。

 

そこで、類似上場会社の数値を基礎として価値を評価する類似会社比較法(マルチプル法)を使用していくこととなります。

 

 

 

≪Column:企業価値評価の手法について≫


前回ご紹介した通り多くの企業価値評価手法がありますが、実際に使用される手法ランキングを作成した場合、1位:DCF法、2位:マルチプル法になると思われます。(筆者私見ですが、この2手法は群を抜いて使用されています。3位以下を大きく引き離してのワンツーフィニッシュですね。)

 

DCF法は将来情報を企業価値として織り込むことから非常によく用いられています。マルチプル法はそこまで難しくない計算過程の割に、一定の客観性を保った金額を得ることが出来るため重宝されています。

 


 

②マルチプル法の手順

まずはざっくりと、マルチプル法の手順についてご説明します。マルチプル法は、ある指標(倍率)が、評価対象会社と類似企業でほぼ同じである前提に基づいて価値を計算する手法です。実際には後述するEV/EBITDA倍率等が良く使用されますが、まずはイメージを掴みやすいよう、第10回で挙げた「経常利益」を指標とする例を再掲します。

 

 

 

 

 

❶上場している類似会社の決定

まず上場している類似企業を見つけます。バリュエーションにおける評価対象となる企業とビジネスが類似している上場企業を見つけます。今回は以下の会社が類似企業として選定されたとします。

 

 

 

 

❷倍率の算定

上記類似企業のデータを用いて倍率を算定します。時価総額を経常利益で割った倍率を求めてみましょう。

 

 

 

 

❸対象企業の価値評価

上記倍率(20倍)という数字が評価対象会社にも当てはまる前提に基づき、算定した倍率を評価対象会社に当てはめて、株主資本価値を求めます。

 

 

 

 

 

 

 

そこまで難しくなさそうですね。類似上場企業の倍率を算定し、その倍率をM&A対象となる非公開会社に当てはめて計算するだけです。類似企業であれば、ある程度倍率も同じ傾向を示すだろうという仮定に基づいている点がポイントです。

 

 

 

[Point]

マルチプル法は、評価対象会社と類似企業で使用する倍率が同じ傾向を示す前提での計算方法。

 

 

 

2.マルチプル法の実務


ざっくりとしたイメージは上記の通りですが、実務上はより細かく慎重に検討していくこととなります。

 

①類似企業を選ぼう

マルチプル法で最も重要なことは類似企業の選定と言っても過言ではないです。業種・業界の類似性はもちろん、製品や規模、地域、資本構成、利益率等様々な要素を加味して類似企業の選定を行うこととなります。

 

実務上は3社~10社程度の類似企業を選定することが多いです。上記の項目1つ1つを見た場合、当然対象会社とは異なると感じる項目も発生します。例えば業界や製品は似ているものの、資本構成が異なる(対象会社は負債が多い一方、類似企業は負債が少ない等)場合があります。類似企業の母集団が小さいと客観的な数値になりにくいため、そのように差異がある場合でも類似企業として含め、ある程度の類似企業数とすることが多いです。使用する倍率は類似企業の平均値や中央値を使います。

 

②倍率を出そう:EV/EBITDA倍率

使用する倍率はEV/EBITDA倍率、PERやPBRが使用されることが多いです。まずは最も使用されるEV/EBITDA倍率を見ていきましょう。

 

 

●EV/EBITDA倍率

EV/EBITDA倍率はEV÷EBITDAで求める倍率です。分子の「EV」はEnterprise Valueの略で企業価値と訳されますが、実際には事業価値がより近い概念となります。該当企業を買収する際、実際に必要な金額はいくらか?という観点からの指標です。

 

純有利子負債=有利子負債-余剰資金-非事業性資産等)

 

 

数式の通り、時価総額に純有利子負債を足した金額がEVです。時価総額は「株主資本価値」を示し、株主にとっての会社の価値部分です。これに純有利子負債を足すことで、その企業自体を保有した際に必要となる正味金額を示していることになります。

 

例えば100%株式買収により会社を買収したとします。その際、株式時価総額を支払うことで会社の買収は完了しますが、同時に会社が元々持っている負債の返済義務を負いますね。一方、余剰資金や非事業性資産の売却による現金流入によってカバーできる分もあります。そのため返済義務のある有利子負債から、余剰資金や非事業性資産を差し引いた正味の返済必要金額である「純有利子負債」が、実際購入金額に追加で必要となる金額です。株式時価総額に正味の返済義務である「純有利子負債」を足した金額が、「実際に必要な金額」であるEVとなります。

 

なお、非支配株主持分がある場合は上記に加算します。非支配株主持分は有利子負債と同様に他人資本であるため、正味金額に含めるべきという考え方です。

 

 

 

 

分母にくる「EBITDA」は第8回目でご説明した「金利支払前、税金支払前、減価償却費控除前の利益」(Earnings Before Interest, Taxes, Depreciation and Amortization)です。

 

借入金の支払利息・税金・減価償却費を除くことで、事業そのものの正常収益力を図ろうとしています。なお、EBITDAは簡便的に「営業利益+減価償却費」で表現されることが多いです。営業利益であれば支払利息や税金を除いた状態ですので、営業利益に減価償却費を加算することで簡便的にEBITDAを表現しています。

 

上記の通り個別にEV・EBITDAを求め、EV÷EBITDAの倍率を算定することになります。

 

 

③倍率を出そう:PER・PBR

その他指標として、PERやPBRが使われることもあります。PER・PBRは株式に関する指標としてよく出てきますので、ご存じの方も多いのではないでしょうか。

 

 

PER(Price Earnings Ratio:1株当たり当期純利益)=株式時価総額÷当期純利益

PBR(Price Book-value Ratio:1株当たり純資産)=株式時価総額÷純資産

 

 

1株当たりの当期純利益や純資産を用いています。EV/EBITDA倍率のように一捻りしておらず、株式時価総額を使用してさくっと求めることが可能ですので、M&Aの初期段階でざっくりした価値を求めるのに向いています。

 

 

 

 

≪Column:倍率の意味≫


マルチプル法はいずれも割り算を用いていますね。この割り算にも実は意味があり、EV/EBITDA倍率であれば「企業の買収に必要な株式時価総額と、買収後の純負債返済に必要な金額が、EBITDA何年分で充当できるか」、PERであれば「企業の買収に必要な株式時価総額が、当期純利益何年分で充当できるか」といった意味になります。

 

さて、マルチプル法を採用する場合、まずEV/EBITDA倍率の採用をまずは考えます。

 

EBITDAは借入金の支払利息・税金・減価償却費を除くことで、事業そのものの正常収益力を図る指標でしたね。そのため、「買収に必要となる正味金額」が、「正常収益力の何年分か」を示す指標がEV/EBITDA倍率です。

 

EV/EBITDAの特徴

通常の事業活動を行った結果正味金額を何年で回収できるのかを確認する目安となる

●EBITDAは償却費等を除いているため企業間の比較可能性が高い

 

M&Aにおける企業価値算定の場面でEV/EBITDAがその他指標と比べてよく登場するのは、上記の通り客観的であり有用な情報となるためです。

 


 

④計算事例

EV/EBITDA倍率を用いた事例を見ていきましょう。簡単化のために、類似企業は1社とし、ストックオプションや非支配株主持分等の複雑な条件はなしとしています。

 

類似企業データ

 

 

類似企業のEV/EBITDA倍率は以下の通りとなります。

 

 

EV=株式時価総額21,000+純有利子負債12,000=33,000百万円

EBITDA=営業利益1,000+償却費3,000=4,000百万円

 

→EV/ EBITDA倍率=33,000÷4,000=8.25

 

 

 

 

この類似企業は、「買収に必要となる正味金額」が、「正常収益力の8.25年分」に相当すると言うことができますね。

 

評価対象企業と似た企業を類似企業として選定していますので、評価対象企業のEV/ EBITDA倍率もだいたい8.25になるだろうという前提のもと、評価対象企業の価値を求めていきます。

 

評価対象企業データ

 

評価対象企業のEBITDAは営業利益200+償却費800=1,000です。EV/ EBITDA倍率が8.25倍ですので、評価対象企業のEVは以下の通りとなります。

 

EV=EBITDA1,000×8.25=8,250百万円

 

 

 

EVが8,250百万円と算定されました。純有利子負債が7,000百万円ですので、対象会社の株主資本価値は8,250-7,000=1,250百万円と、ざっくり計算することができます。

 

 

≪Column:EV/EBITDA倍率の目安≫


一般的にEV/EBITDA倍率が6倍~12倍程度の案件が適正な案件と言われています。すなわち、「買収に必要となる正味金額」が、「正常収益力の6年~12年分」であればM&Aを行いやすいとも言えますね。

 

倍率が高いほど正常収益力で回収できる年数が増加し、倍率が低いほど方が早めの回収が見込まれるイメージです。経営者として実際にM&Aを行う際には、低倍率の方が目途を立てやすいためM&Aを実行しやすいですね。

もちろん業種によっても倍率感は様々で、医薬業界では15倍といった高倍率も普通だったりします。

 


 

 

 

 

[Point]

EV/EBITDA倍率は、「買収に必要となる正味金額」が、「正常収益力の何年分か」を示す指標とも言える!

 

 

バリュエーションは難しいという印象を持っている方も多いと思います。たしかに細かい計算は難しい部分も多いですが、全体像はそこまで難しくはありません。この連載で、少しでもイメージが具体的になっていただけると嬉しいです。

 

次回から、バリュエーションで最も使用されるDCF法について見ていきましょう。

 

 

 

 

 

 

[解説ニュース]

区分所有建物の敷地への小規模宅地特例の適用巡り争いになった裁決事例

 

〈解説〉

税理士法人タクトコンサルティング(遠藤 純一)

 

 

[関連解説]

■小規模宅地等の評価減『特定事業用宅地等』

■介護施設で亡くなった場合の相続税の小規模宅地等の特例

 

1、はじめに


父親が建てた1棟の区分所有建物で、1階に子供夫婦が住み、2階にその親夫婦が住んでいたケースにおいて、父親が亡くなって開始した相続で、子が相続した建物1階部分の敷地権につき、「小規模宅地等の特例」の適用をめぐり争われた裁決事例が出てきました(国税不服審判所、令和3年6月21日、請求棄却)。

 

平成25年度税制改正で、1棟の建物なら、小規模宅地等の特例の適用対象となる被相続人の居住していた宅地には被相続人の親族の居住している宅地も含めるとされましたが、1棟の建物が区分所有建物である敷地については、被相続人の居住している宅地のみに限る、つまり被相続人の居住していた宅地以外の宅地は小規模宅地等の特例の適用対象にならないとする改正が行われています。その改正後、改めて区分所有建物の敷地について小規模宅地等の特例適用の是非が問われた事例といえます。

 

 

2、小規模宅地等の特例


この特例は、被相続人等(被相続人または被相続人と生計を一にする親族)が「事業の用」または「居住の用」に供していた宅地等のうち所定の要件を満たした宅地等について、相続税の課税対象額を最大80%減額する特例です。被相続人等の居住用宅地の場合は現行制度上、その面積の330㎡までに対し80%減額できます(措法69の4)。

 

 

3、事案の概要


裁決書によると、被相続人は、平成13年1月、2階建ての一棟の建物を新築し、区分所有建物である旨の登記をしました。建物はそれぞれ玄関、リビング、寝室、台所、洗面所、風呂場、トイレがあり、建物の内部では1階と2階で行き来することができず、外階段によって行き来する構造でした。相続開始後、母親と子は、それぞれ居住する敷地権について小規模宅地等の特例を適用して申告したところ、税務署から子の相続した敷地権部分について特例適用を否認し、子供ら相続人が最終的に国税不服審判所(以下、審判所という)に審査請求して争いとなったものです。

 

 

4、争点


争点は、①子の住む建物の敷地権は、被相続人の居住の用に供されていた宅地等に該当するか。②子は、被相続人と生計を一にしていた親族に該当するか否か。
ここでは争点①について見ていくことにします。

 

 

5、審判所の認定・判断


審判所は①の判断に当たり、特例の適用対象となる「被相続人又は当該被相続人と生計を一にしていた当該被相続人の親族の居住の用に供されていた宅地等」について、相続開始直前において、それらの者が現に居住の用に供していた宅地等に限られるものと解されると考え方を示し、その宅地に当たるかどうかの判断基準は、「基本的には、それらの者が、建物に生活の拠点を置いていたかどうかにより判断すべきものと考えられ、(中略)①それらの者の日常生活の状況、②その建物への入居目的、③その建物の構造及び設備の状況、④生活の拠点となるべき他の建物の有無その他の事実を総合勘案して、社会通念に照らして客観的に判断すべき」としました。また区分所有建物について、取扱い(措置法通達69の4-7の3)で区分所有建物である旨の登記がされている建物をいう旨定められていることは、合理的としています。

 

あてはめでは、被相続人が子の住む1階部分にも生活の拠点を置いていたか否かの問題と整理したうえで、次のように認定しています。

 

①日常生活の状況については、各々が現に独立した日常生活を送っていたと認められ、被相続人夫婦が、1階部分において、請求人らと共に生活していた等の事実は認められない。

②被相続人夫婦が2階部分に入居するに当たり、孫の足音を気にすることない生活が出来るなどの事情が認められ、子供らと生活を共にすることも目的としていなかったことがうかがえる。

③設備及び構造の状況については、それぞれの区分ごとに独立して日常生活を送ることのできる構造であったと認められる。

④被相続人の生活の拠点となる建物については、問題の建物以外にはなかった。

 

 

 

審判所は「これらの事実を総合勘案して、社会通念に照らして客観的に判断すると、被相続人夫婦は、1階部分に生活の拠点を置いていたと認めることはできず、敷地権は、被相続人の居住の用に供されていた宅地等に該当するとは認められない」と判断しています。

 

また問題の建物は「一棟の建物と認められるものの、「区分所有建物」に該当することから、問題の敷地権は、被相続人の居住の用に供されていた部分に含めることはできないと判断しています。

 

 

 

 

税理士法人タクトコンサルティング 「TACTニュース」(2021/11/22)より転載

[事業再生・企業再生の基本ポイント]

第6回:事業再生における財務DDとは何ですか?-フリーキャッシュフロー

 

〈解説〉

公認会計士・中小企業診断士  氏家洋輔

 

▷関連記事:事業再生における財務DDとは何ですか?

▷関連記事:財務デューデリジェンス「損益項目の分析」を理解する【前編】

▷関連記事:経営状態の把握と事業再生

 

 

事業再生における財務DDでのフリーキャッシュフロー(営業キャッシュフロー+投資キャッシュフロー、以下FCFという。)の分析は、再生企業の過年度の営業、投資、財務でのキャッシュフロー(以下CFという。)を把握することで、どのようにして資金繰りに窮してしまったのかを検討するうえで重要な分析となります。

 

損益の分析は直近から過年度の3年間の分析を行うことが一般的ですが、FCFの分析は3年間ではなく、10年間の分析をする場合があります。これは、多くの再生企業は、直近の業績不振のみならず、過年度からの慢性的な業績不振や、過剰な投資を行っているケースが多く、窮境となった原因の全体を把握するためには概ね10期程度の分析が必要となるからです。

 

 

 

 

上のグラフはFCFの分析結果です。ほとんどの期で、FCFの金額はマイナスとなっています。これは、本業で獲得したCFである営業CFの金額を、設備等の投資で使用した投資CFの金額が上回っているからです。上記の再生企業の場合は、x9期を除いて営業キャッシュフローはプラスで推移しているため、本業でCFを獲得はできていたのです。しかし、それを上回る投資を毎期行っていたことでFCFがマイナスとなり資金繰りに窮してしまったと考えられます。

 

FCFがマイナスとなっている場合は、通常不足した資金は財務CFで補います。そのため、下表のように借入残高が大きくなることが一般的です。借入残高が大きくなると、借入金の返済負担が重くなり、返済できるだけのFCFを獲得できていないと資金繰りに窮するという流れとなります。

 

 

 

このように、FCFの分析は、会社の資金の流れを掴むのにとても重要な分析ですので、必ず分析を実施し、可能な限り10期程度の長期間での分析とすることをお勧めします。

 

なお、FCFの算出方法は様々な方法がありますが、10期分の貸借対照表と損益計算書からキャッシュフロー計算書を作成した上で、営業CFと投資CFを把握する方法が正確で納得感のある分析となるでしょう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

[M&A動向レポート](2021年10月)

■10月のMA&は70件、1000億円超は月間4件で今年最多

 

2021年10月のM&A件数(適時開示ベース)は前年同月と同数の70件だった。10月として過去10年で2018年(81件)、2019年(74件)に続く高い水準。前月比では13件減。1~10月累計は前年同期を37件上回る727件に達している。年間件数が2008年の870件を超え、リーマン・ショック後の最多となる可能性も出てきた。

 

全上場企業に義務づけられた適時開示情報のうち、経営権の異動を伴うM&A(グループ内再編は除く)について、M&A仲介のストライク(M&A Online)が集計した。

 

 

10月の取引金額は8012億円。100億円を超えるM&Aは海外案件を中心に9件あった。なかでも1000億円超の大型M&Aは国内の再生可能エネルギー企業を約2000億円で買収するENEOSホールディングスの案件を筆頭に4件に上り、今年最高だった。

 

また100億円超の案件の1~10月累計は64件を数え、前年同期(46件)を4割上回るハイペースで推移。M&Aをテコに事業ポートフォリオの見直しを積極的に進めている様子が浮き彫りになっている。

 

 

ENEOSが買収するのは米ゴールドマン・サックス(GS)傘下のジャパン・リニューアブル・エナジー(JRE、東京都港区)。JREは2012年に設立し、全国40数カ所で太陽光を中心に陸上風力、バイオマスの再エネ事業を展開している。2022年1月末までに買収完了の見通し。

 

ENEOSは2022年度末までに国内外での再エネ事業の発電容量を現在の10万キロワット台から100万キロワット超に拡大する計画を進めており、脱炭素化の取り組みを加速する狙いだ。

 

ENEOSは9月初め、GSと組んで上場子会社で道路舗装最大手NIPPOをTOB(株式公開買い付け)で非公開化する計画を発表した。親子上場の解消で得られる約1900億円の資金をJREの買収に充当する。(金額上位は一覧表を参照)
10月は再エネ関連で他にも動きが目立った。Abalanceは太陽光発電事業を手がける2社の買収を発表。エンビプロ・ホールディングスはバイオマス燃料の製造・販売会社を傘下に収めることにした。

 

 

一方、ウインテストは太陽光発電の運転管理・保守点検(O&M)サービス子会社を売却した。とくに太陽光発電を巡ってはFIT(再生エネルギーの固定価格買取制度)売電単価の下落や発電所の新設件数の減少などで事業環境が不透明感を増しており、事業の「選択と集中」を急ぐ動きが強まっている。

 

 

 


①ENEOSホールディングス

再エネ新興企業のジャパン・リニューアブル・エナジーを子会社化(2000億円)

 

②日本ペイントホールディングス

フランスの建築用塗料メーカー、クロモロジーを子会社化(1509億円)

 

③住友金属鉱山

チリ「シエラゴルダ銅鉱山」の権益持ち分を豪資源大手South32に譲渡(1349億円)

 

④ソニーグループ

米ゲーム事業を米ゲーム会社のスコープリーに譲渡(1100億円)

 

⑤住友商事

チリ「シエラゴルダ銅鉱山」の権益持ち分を豪資源大手South32に譲渡(578億円)

 

⑥ルネサスエレクトロニクス

イスラエルのアナログ半導体企業セレノを子会社化(359億円)

 

⑦電通グループ

ネット広告大手のセプテーニ・ホールディングスを子会社化(326億円)

 

⑧日本ペイントホールディングス

スロベニアの塗料メーカー JUBを子会社化(254億円)

 

⑨イオン

100円ショップ大手のキャンドゥをTOBなどで子会社化(211億円)

 

⑩日本郵政

「かんぽの宿」32施設を米投資会社フォートレスなど4者に譲渡(88億円)

 


情報提供元:株式会社ストライク

[M&A案件情報(譲渡案件)](2021年11月16日)

-以下のM&A案件(1件)を掲載しております-

 

 

【財務良好、業績安定】商業施設の保守・メンテナンス業を行う会社

[業種:建設・土木/所在地:関東地方]

 

 

-案件に関するお問合せ・ご相談は、このページ文末の「お問合せ・ご相談」ボタンより-

(お問い合せ・ご相談は「無料会員登録」が必要です)

 


案件No.SS008032
【財務良好、業績安定】商業施設の保守・メンテナンス業を行う会社

 

(業種分類)建設・土木

(所在地)関東地方

(直近売上高)1~5億

(従業員数)10~50名

(譲渡スキーム)株式譲渡

(事業概要)店舗や商業施設の保守メンテナンス事業を行う

 

〔特徴・強み〕

◇エリアでは相応の知名度を誇り、安定した受注を確保。
◇財務も良好で業績も堅調推移。
◇従業員の中に職人も抱え、内装業界に詳しい営業人材も確保。

 

-案件に関するお問合せ・ご相談は、このページ文末の「お問合せ・ご相談」ボタンより-

 


情報提供会社:株式会社ストライク

 

 

 

 

【免責事項】

・掲載情報は、内容及び正確さに細心の注意をはらい、万全を期しておりますが、人為的なミスや機械的なミス、調査過程におけるミスなどで誤りがある可能性があります。税務研究会及び情報提供会社は、当該情報に基づいて被ったいかなる損害についても一切の責任を負うものではありません。

・掲載情報は公開日時点の情報になります。既に案件が特定の対象会社と交渉に入っている場合や成約している場合もございます。

 

 

 

お気軽にお問合せください

[M&Aニュース](2021年11月1日〜2021年11月12日)

◇グローバルキッズCOMPANY<6189>、企業向け保育サービス事業をtenに譲渡、◇リビングプラットフォーム<7091>、アートアシストから高齢者グループホーム事業を取得、◇共同紙販ホールディングス<9849>、日本製紙<3863>傘下で紙類・加工品販売のわかば紙商事を子会社化、◇CBグループマネジメント<9852>、家庭紙卸売子会社のカルタスをセンコーグループホールディングス<9069>に譲渡、◇リンクアンドモチベーション<2170>、子会社の人材派遣事業をiDAに譲渡、◇スパイダープラス<4192>、熱絶縁工事などのエンジニアリング事業をArmacell Japanに譲渡、◇TCSホールディングス、露出計メーカーのセコニック<7758>をTOBで子会社化 ほか

 

 

 

 

 

グローバルキッズCOMPANY<6189>、企業向け保育サービス事業をtenに譲渡
2021/11/12

グローバルキッズCOMPANYは子会社で手がける企業向け保育サービス事業を、保育事業のten(福岡市)に譲渡することを決めた。企業が従業員の子どもを預かるために社内に保育施設を設ける「企業主導型保育事業」に2018年に参入したが、事業の選択と集中の一環として、主力である認可保育所に経営資源を集中することにした。譲渡価額は非公表。譲渡予定日は2022年3月31日。

リビングプラットフォーム<7091>、アートアシストから高齢者グループホーム事業を取得
2021/11/12

リビングプラットフォームは子会社を通じて、介護事業のアートアシスト(千葉県松戸市)が千葉県船橋市で運営する高齢者グループホーム事業(1施設、18室)を取得することを決めた。千葉県でのドミナント(集中出店)戦略の一環。対象事業の直近業績は売上高8800万円、営業利益1200万円。取得価額は非公表。取得予定日は2022年2月1日。

共同紙販ホールディングス<9849>、日本製紙<3863>傘下で紙類・加工品販売のわかば紙商事を子会社化
2021/11/12

共同紙販ホールディングスは、紙類・加工品販売のわかば紙商事(東京都江東区。売上高24億3000万円、営業利益△168万円、純資産4億6900万円)の全株式を取得し子会社化することを決めた。急速なデジタル化の進展で印刷用紙需要が減少する中、印刷向け以外の取扱品目の多角化などを進める一環。取得価額は非公表。取得予定日は2022年1月1日。

わかば紙商事は2001年設立で、印刷用紙、情報用紙のほか、板紙を主力取扱品とする中堅の紙類卸業者。プライベートブランドの封筒用紙、コートボール、紙ナプキン、紙器なども扱っている。

CBグループマネジメント<9852>、家庭紙卸売子会社のカルタスをセンコーグループホールディングス<9069>に譲渡
2021/11/12

CBグループマネジメントは、家庭紙の卸売事業を手がける子会社のカルタス(東京都中央区。売上高162億円、経常利益△3億8800万円、純資産△1億4000万円)の全株式を、センコーグループホールディングスに譲渡することを決めた。家庭紙卸売業界では人員不足や運搬費高騰、小売価格の低迷などが続き、収益確保が厳しい状況となっている。譲渡価額は非公表。譲渡予定日は2022年1月31日。

譲渡先のセンコーグループホールディングスは子会社として家庭紙卸売業のアスト(大阪市)、アズフィット(東京都中央区)を持っている。

リンクアンドモチベーション<2170>、子会社の人材派遣事業をiDAに譲渡
2021/11/12

リンクアンドモチベーションは子会社のリンクスタッフィング(東京都中央区)が手がける国内人材派遣事業を、ファッション業界に特化した人材サービスを展開するiDA(東京都渋谷区)に会社分割により譲渡することを決めた。これに伴い、国内人材紹介事業に経営資源を集中する。対象事業の2021年1月~9月期業績は売上高30億9000万円、営業利益△3000万円。譲渡価額は非公表。譲渡予定日は2022年1月4日。

スパイダープラス<4192>、熱絶縁工事などのエンジニアリング事業をArmacell Japanに譲渡
2021/11/12

スパイダープラスは、熱絶縁工事を中心とするエンジニアリング事業を、断熱材・建築材料販売のArmacell Japan(東京都中央区)に譲渡することを決めた。事業の選択と集中の一環で、今後は建設業の現場業務をデジタルで支援するICT(情報通信技術)事業に経営資源を集中する。対象事業の直近業績は売上高4 億8900万円、営業利益7300万円。譲渡価額は2億円。譲渡予定日は2022年1月4日。

譲渡先のArmacell Japanはルクセンブルクに本拠を置くArmacell International S.A.グループの日本法人で、弾性発泡断熱材とエンジニア発泡材を主力製品としている。スパイダープラスは同社の日本認定工事店として約20年の実績を持ち、熱絶縁工事に使う断熱材「アーマフレックス」の供給を受けている。

TCSホールディングス、露出計メーカーのセコニック<7758>をTOBで子会社化
2021/11/12

TCSホールディングス(旧東京コンピュータサービス、東京都中央区)は12日、露出計の大手メーカー、セコニックの非公開化を目的にTOB(株式公開買い付け)を実施すると発表した。80%強の株式を取得し、子会社化する。買付代金は約45億5300万円。残る約20%の株式は現在筆頭株主のMUTOHホールディングスが継続保有する。TCSホールディングスはソフト開発や企業の情報システム構築にとどまらず、関連するメーカーや商社を傘下に取り込み、総合エンジニアリング集団として業容拡大している。セコニックはTOBに賛同している。

TOB主体はTCSホールディングスが全額出資で設立したTCSアライアンス(東京都中央区)。セコニック株式の買付価格は1株につき3400円で、TOB公表前日の終値1041円に226.61%のプレミアムを加えた。買付予定数は所有割合80.22%にあたる133万9234株。買付予定数の下限は46.9%にあたる78万2900株に設定。TCSホールディングスは現在、グループで22%近くの株式を保有している。

買付期間は11月15日~12月27日。決済の開始日は2022年1月5日。公開買付代理人はみずほ証券。

セコニックは1951年に成光電機工業として発足し、露出計の製造に乗り出した。1960年にセコニックに社名変更。1963年に東証2部に上場。自社開発事業として露出計をはじめ、光学式マーク読取装置、温湿度記録計、粘度計などを手がけるが、市場規模は伸び悩んでいる。また、複写機関連などの受託生産事業もここへきて停滞している。

ポラリス・キャピタル・グループ、プレハブ建築と立体駐車場のスペースバリューホールディングス<1448>をTOBで子会社化
2021/11/12

国内投資ファンドのポラリス・キャピタル・グループ(東京都千代田区)は12日、プレハブ建築や立体駐車場を主力とするスペースバリューホールディングスにTOB(株式公開買い付け)を行い、完全子会社化すると発表した。買付代金は386億円。筆頭株主として24%余りの株式を持つシンガポール投資ファンドのアスリード・キャピタルはTOBに賛同。スペースバリューもTOBに賛同しており、非公開化によって業績回復と再成長に向けた構造改革を加速する。

買付価格は1株につき1150円で、TOB公表前日の終値970円に18.56%のプレミアムを加えた。買付予定数は3359万9198株。買付予定数の下限は所有割合66.67%にあたる2373万1300株。アスリード・キャピタルは保有株についてTOBに応じる。

買付期間は11月15日~12月27日。決済の開始日は2022年1月6日。公開買付代理人は大和証券。

スペースバリューはプレハブ建築と立体駐車場を両輪とする日成ビルド工業(金沢市)を中核とする。

シリウスビジョン<6276>、特殊印刷機子会社のナビタスマシナリーをツジカワに譲渡
2021/11/12

シリウスビジョンは、特殊印刷機事業を手がける子会社のナビタスマシナリー(堺市。売上高11億3000万円、営業利益△9000万円、純資産4億3800万円)の全株式を、各種金属製版材・金型製作のツジカワ(大阪市)に譲渡することを決めた。特殊印刷機事業は2008年3月期をピークに売上高が低落傾向に転じ、利益確保が難しい状況にあった。今後はもう一方の柱である画像検査事業に経営資源を集中する。譲渡価額は非公表。譲渡予定日は2021年12月31日。

シリウスビジョン(旧社名ナビタス)はホットスタンピング(箔押し機)の専業メーカーだった大平工業(大阪市)を前身とする。

ETSホールディングス<1789>、空調工事・水処理工事のユウキ産業を子会社化
2021/11/12

ETSホールディングスは、空調工事や水処理工事を手がけるユウキ産業(大阪市。売上高5億800万円、営業利益1300万円、純資産5億1600万円)の全株式を取得し子会社化することを決めた。主力である電気工事と合わせ各種設備工事の一括受注体制を整備し、業容拡大につなげる。取得価額は非公表。取得予定日は2021年12月1日。

ユウキ産業は1970年設立で、栗田工業の特約店として、阪急阪神ビルマネジメント(大阪市)や南海ビルサービス(大阪市)などの有力顧客を抱える。

Abalance<3856>、日本ライフサポートから産業用太陽光発電事業を取得
2021/11/11

Abalanceは子会社を通じて、太陽光発電システム販売・施工の日本ライフサポート(北九州市)から産業用太陽光発電事業(連係済み低圧発電所、仕掛品など)を11日付で取得した。産業用太陽光発電事業の強化が狙い。当該事業の取得に伴う初年度売上高は約17億円を見込む。日本ライフサポートは住宅用太陽光発電システムの販売・施工に専念する。取得価額は1億6900万円。

日立金属<5486>、熱間圧延用ロール製造の中国子会社「宝鋼日立金属」を現地社に譲渡
2021/11/10

日立金属は、熱間圧延用ロールを製造する中国子会社の宝鋼日立金属軋輥(南通)有限公司 (江蘇省。売上高0万円、純資産19億4000万円)の全保有持ち分70%を、南通市経済技術開発区管理委員会傘下の南通能達城市更新建設有限公司(江蘇省)に譲渡することを決めた。宝鋼日立は2006年に宝鋼工程技術集団有限公司と合弁で設立したが、2016年9月に生産を停止して以降、会社解散や保有持ち分の譲渡を検討してきた。譲渡価額は非公表。譲渡予定は2021年年12月中。

エクシオグループ<1951>、ICT保守運用・ヘルプデスク業務のアイティ・イットを子会社化
2021/11/10

エクシオグループは、ICT(情報通信技術)保守運用・ヘルプデスク業務を主力とするアイティ・イット(東京都千代田区。売上高27億4000万円、営業利益1億2200万円、純資産7億4500万円)を株式交換で子会社化することを決めた。システムソリューション事業の競争力向上や規模拡大につなげる。株式交換予定日は2021年12月24日。

株式交換比率はエクシオ1:アイティ・イット32。アイティ・イットは1986年設立。

野村総合研究所<4307>、DXサービス大手の米Core BTSを子会社化
2021/11/09

野村総合研究所は米国統括会社を通じて、デジタル技術で企業の業務変革を支援するDX(デジタルトランスフォーメーション)サービス大手、米国Core BTS, Inc.(インディアナポリス)を子会社化することを決めた。同社を傘下に置く持ち株会社のConvergence Technologies, Inc.(同)の全株式を約522億9200万円で取得する。グローバル事業の拡大の一環。2021年12月末までの取得完了を予定する。

Core BTSは2005年設立で、クラウド、デジタル開発、ネットワーク、セキュリティーの各事業領域でコンサルティングからシステム開発・導入、運用までのサービスをトータルに提供している。

アルインコ<5933>、金型設計・製作のウエキンを子会社化
2021/11/09

アルインコは、金型設計・製作と金属プレス加工を手がけるウエキン(大阪府東大阪市)の全株式を取得し子会社化することを決めた。アルインコ子会社の双福鋼器(三重県伊賀市)がウエキンを重要協力会社としている。ウエキンは1955年創業で、物流機器や建築材料、家電製品などに使われる金属部品の深絞り成形技術に強みを持つ。取得価額は非公表。取得予定日は2021年11月24日。

東京貴宝<7597>、MBOで株式を非公開化
2021/11/09

宝飾品卸大手の東京貴宝は9日、MBO(経営陣による買収)で株式を非公開化すると発表した。同社の政木喜仁社長が設立した新会社「おがの」(東京都港区)がTOB(株式公開買い付け)を行い、約70%の株式を買い付ける。買付代金は最大7億5617万円。宝飾品の国内市場が縮小する中、非公開化で新規事業や海外展開などの構造改革を加速する。創業家の世代交代を見据え、資産管理の最適化や相続対策を図る狙いもある。東京貴宝はTOBに賛同している。TOBが成立すれば、ジャスダックへの上場が廃止となる見通し。

東京貴宝株の買付価格は1株につき2575円で、TOB公表前日の終値1950円に32.05%のプレミアムを加えた。買付予定数は所有割合69.89%にあたる29万3662株。買付予定数の下限は36.57%にあたる15万3651株で、これについては創業家やその関係者がTOBに応募することになっている。買付期間は11月10日~12月22日。決済の開始日は12月29日。公開買付代理人はSMBC日興証券。

東京貴宝は1960年に設立。1998年に株式を店頭登録(現ジャスダック)した。

CYBERDYNE<7779>、リハビリ医療機関の米RISEを子会社化
2021/11/08

CYBERDYNEは米国現地法人を通じて、同国のリハビリテーション医療機関RISE Physical Therapy, Inc.(カリフォルニア州。売上高3億2100万円、営業利益7520万円、純資産6910万円)の株式80%を取得し子会社化することを決めた。身体機能の維持・向上を支援する装着型サイボーグ「HAL」の全米展開の第一歩とする狙い。RISEはカリフォルニア州に16カ所の外来リハビリテーション拠点を持つ。取得価額は非公表。取得予定は2021年11月末。

CYBERDYNEは医療用HAL下肢タイプについて2020年10月に米食品医薬品局(FDA)から医療機器承認を取得。さらに2021年8月に単関節タイプについてもFDAのクラス1医療機器の登録が完了し、脳神経系疾患や整形疾患による幅広い患者への適用が可能になったのを受け、米国でHALを活用した治療サービスの準備を進めている。

ジャパンエレベーターサービスホールディングス<6544>、エレベーター設置・保守のベトナムUNIECOを子会社化
2021/11/08

ジャパンエレベーターサービスホールディングスは、エレベーターの設置・保守事業を展開するベトナムUNIECO VIETNAM COMPANY LIMITED(ハノイ。売上高8360万円、経常利益85万円、純資産3170万円)の株式51%を取得し、子会社化することを決めた。UNIECOは2016年設立で、首都ハノイを中心にエレベーターの販売、設置を手がけ、保守台数は200台以上という。ASEAN(東南アジア諸国連合)ではインドネシアに続く2番目の拠点を確保することになる。取得価額は非公表。取得予定は2021年11月下旬。

片倉工業<3001>、MBOで株式を非公開化|714億円を投じる
2021/11/08

片倉工業は8日、MBO(経営陣による買収)で株式を非公開化すると発表した。同社の上甲亮祐社長と佐野公哉会長が折半出資する「かたくら」(東京都中央区)がTOB(株式公開買い付け)を行い、全株式の取得を目指す。買付代金は最大714億円。筆頭株主で10%超の株式を持つ香港の投資ファンド、オアシス・マネジメントはTOBに賛同している。祖業の製糸事業の縮小に伴い、不動産や医薬品、機械関連などへの事業展開を進めてきたが、非公開化を通じて一連の構造改革を加速する。

買付価格は1株につき2150円で、TOB公表前営業日の終値1831円に17.42%のプレミアムを加えた。買付予定数は3321万8878株。買付予定数の下限は所有割合66.49%に当たる2214万6000株に設定した。オアシス・マネジメントをはじめ、三井物産、損害保険ジャパン(東京都新宿区)、農林中央金庫(東京都千代田区)、大成建設が保有する株式31%余りについてはTOBへの応募が決まっている。

買付期間は11月9日~12月21日。決済の開始日は12月28日。公開買付代理人はみずほ証券。

片倉工業は1873(明治6)年に創業し、絹糸の製造をスタート。「シルクのカタクラ」と呼ばれ、近代製糸業を牽引した。1939年には官営富岡製糸場を合併。1949年から東証1部に上場している。

オエノンホールディングス、希望退職に4割上回る71人が応募
2021/11/05

オエノンホールディングスは5日、希望退職に71人の応募があったと発表した。募集人数の50人程度を4割上回った。子会社で酒類・食品、医薬品製造の合同酒精(東京都墨田区)、加工用デンプン製造のサニーメイズ(静岡市)に在籍する2022年に満45歳以上となる正社員・シニア社員・嘱託社員を対象とし、10月1日~15日に募った(退職日は12月31日付)。

売上高の約9割を占める酒類事業は回復基調にあるものの、世界的な経済活動の再開に伴い原料の粗留アルコール・コーンが想定以上に高騰するなど利益を圧迫している。組織のスリム化と人員体制の適正化で安定的な収益構造をつくり上げる。退職者には所定の退職金に特別加算金を上乗せ支給し、再就職を支援する。

同日発表した2021年12月期業績予想の修正によると、売上高は780億円(前回予想を据え置き)、営業利益は7億円(同)、最終利益は5000万円(前回予想は3億5000万円)。今回は据え置いたが、営業利益については当初予想で18億円を見込んでいた。

レスターホールディングス<3156>、音響システム設計・構築のタックシステムを子会社化
2021/11/05

レスターホールディングスは傘下企業を通じて、音響システムの設計・構築を手がけるタックシステム(東京都渋谷区)を子会社化することを決めた。放送業界で映像・音声信号をデジタルデータ化しファイルでやりとりするファイルベース化が進展しているのに対応し、技術的な提案力の向上や商材拡充につなげる。株式の取得割合などは非公表。取得予定は2022年4月。

タックシステムは1995年設立。放送局・音楽スタジオ・MA(マルチオーディオ)スタジオなどのサポート業務を主力とし、メーカーとして自社製品も展開している。

ソフトフロントホールディングス<2321>、Web系製品・サービス開発のサイト・パブリスを子会社化
2021/11/05

ソフトフロントホールディングスは、Web系製品・サービスの企画、開発を手がけるサイト・パブリス(東京都千代田区。売上高4億4200万円、営業利益655万円、純資産2億700万円)を株式交付の手続きで約60%の株式を取得し、子会社化することを決めた。ボイスコンピューティングを中心としたコミュニケーション基盤事業に続く第2の事業の柱になり得るビジネスと判断した。株式交付予定日は2021年11月29日。

ソフトフロントはサイト・パブリスの1株に自社株式1万8303株を割り当て交付する。取得するサイト・パブリス株の下限は所有割合約60%に当たる170株とする。

クスリのアオキホールディングス<3549>、福島県いわき市で食品スーパー展開の一二三屋を子会社化
2021/11/04

クスリのアオキホールディングスは、地場食品スーパーの一二三屋(福島県いわき市。売上高24億7000万円、営業利益△200万円、純資産3億8700万円)の全株式を取得し、子会社化することを決めた。ドラッグストア・調剤薬局における食品販売の強化の一環。取得価額は非公表。取得予定日は2022年3月1日。さらに同日付で、中核子会社のクスリのアオキ(石川県白山市)を通じて一二三屋を吸収合併する。

一二三屋は1990年設立で、福島県いわき市のほか、郡山市で店舗展開する。

日本動物高度医療センター<6039>、動物用医療機器メーカーのテルコムを子会社化
2021/11/04

日本動物高度医療センターは、動物用医療機器メーカーのテルコム(横浜市。売上高6億9900万円、営業利益1億5800万円、純資産3億6200万円)の全株式を取得し子会社化することを決めた。高品質な動物医療サービス提供の一環。テルコムは2002年設立で、動物の在宅医療に必要な「酸素ハウス」(酸素濃縮器、ケージ、酸素濃度計などのセット)の製造、販売・貸与を手がける。取得価額は未確定。取得予定は2022年3月下旬。

テルコムを傘下に収める日本動物高度医療センターは犬・猫向けの二次診療専門の動物病院を川崎市、東京都足立区、名古屋市の3カ所で運営している。

丸紅<8002>、英領北海油ガス田群を保有する英国子会社Marubeni Oil & Gasを譲渡
2021/11/02

丸紅は、英領北海油ガス田群を保有する英国子会社のMarubeni Oil & Gas (U.K.) Limited(MOGUK、ロンドン。売上高205億円、営業利益△348億円、純資産335億円)の全株式を譲渡することを決めた。2050年までに丸紅グループの温室効果ガス排出ゼロを目指す「気候変動長期ビジョン」に基づき、資産の入れ替えと石油・ガス開発の事業構成見直しを進める。これに伴い、英領北海における石油・ガス開発事業から撤退する。譲渡先は株式譲渡契約締結後に速やかに公表するとしている。

譲渡価額は非公表。譲渡予定は2022年1月。

ユーグレナ<2931>、肥料メーカーの大協肥糧を子会社化
2021/11/02

ユーグレナは、農業・園芸用肥料メーカーの大協肥糧(大阪府藤井寺市。売上高13億9000万円、営業利益9000万円、純資産6億2400万円)を株式交換で子会社化することを決めた。食料、燃料に続く新たな事業領域として肥料に本格進出するのが狙い。大協肥糧は1959年創業で、有機配合肥料「うずしお」「バイトルペレ」などをオーダーメイドで展開する。株式交換予定日は2021年12月1日。

株式交換比率は2021年11月17日~24日までの5取引日におけるユーグレナ株式の平均株価をもとに決定する。

シモジマ<7482>、海外物流・越境EC事業のグローバルブランドを子会社化
2021/11/02

シモジマは、海外物流事業や越境EC(電子商取引)事業を手がけるグローバルブランド(名古屋市。売上高7億9000万円、営業利益2200万円、純資産7000万円)の全株式を取得し子会社化することを決めた。グループ全体の企業価値向上に寄与すると判断した。取得価額は非公表。取得予定日は2021年11月12日。

日本航空<9201>と双日<2768>、空港店舗・免税店運営のJALUX<2729>をTOBで非公開化
2021/11/02

日本航空と双日は2日、空港店舗や免税店などを運営するJALUX(東証1部)に対してTOB(株式公開買い付け)を行い、株式を非公開化すると発表した。第1位~3位株主の双日、日航、日本空港ビルディングの3者以外の一般株主が保有する48%余りの株式をTOBで買い付ける。買付代金は約156億円。TOB成立後、必要な措置を講じたうえで日航がJALUXを連結子会社化する。JALUXは新型コロナウイルスの感染拡大に伴う空港利用者の減少で厳しい経営環境に直面している。JALUXはTOBに賛同している。

上位3株主の所有割合は双日22.22%、日航21.56%、日本空港ビルディング8.08%で、JALUX株の51.86%を保有している。日航と双日が共同出資するSJフューチャーホールディングス(東京都千代田区)がTOB主体となり、残る48.14%(609万1166株)の取得を目指す。買付開始は2022年2月上旬を予定する。

買付価格は1株につき2560円で、TOB公表前日の終値1714円に49.36%のプレミアムを加えた。買付予定数の下限は所有割合14.81%にあたる187万4100株。

TOB主体であるSJフューチャーホールディングスへ出資比率は日航50.5%、双日49.5%。これにより、日航は議決権ベースでJALUXの過半数を持ち、同社を連結子会社にできる。

JALUXは1962年に日航の商事・流通系子会社として発足。2001年に現JALUXに社名変更し、2002年に東証2部に上場(2004年に東証1部)。空港店舗運営や通信販売などを主力とする。双日は2007年に日航に代わって筆頭株主となった。

きょくとう<2300>、都内でクリーニング取次所を展開する二葉から7店舗を取得
2021/11/01

きょくとうは、二葉(東京都杉並区)から東京都内で展開するクリーニング取次所を1日付で取得することを決めた。事業取得するのは杉並区、中野区、武蔵野市に持つ全13店舗のうち7店舗。当該7店舗で年間8000万円の売上高を見込む。取得価額は非公表。

綿半ホールディングス<3199>、インテリアショップ経営の藤越を子会社化
2021/11/01

綿半ホールディングスは傘下企業を通じて、家具、インテリア、雑貨、アパレルなど販売の藤越(静岡県藤枝市)の全株式を取得し1日付で子会社化した。藤越は1966年設立で、藤枝市内でインテリアショップ「藤越 FUGGICOSI」を経営する。綿半は仕入れ機能の共有化による取扱商品の拡充、インターネット通販・家具配送の連携などを推し進める。取得価額は非公表。

東宝<9602>、商業施設向け内装工事のシコーを子会社化
2021/11/01

東宝は傘下企業を通じて、商業施設の内装工事を手がけるシコー(東京都世田谷区。売上高5億5500万円、営業利益1780万円、純資産2億8200万円)の全株式を取得し、1日付で子会社化した。建設事業の業容拡大や技術力・営業力の強化などが狙い。取得価額は非公表。

IMAGICA GROUP<6879>、システム支援サービスのISLWAREを子会社化
2021/11/01

IMAGICA GROUPは傘下企業を通じて、システム支援サービスやシステム開発を手がけるISLWARE(東京都港区)の全株式を取得し子会社化することを決めた。優秀なソフトウエアエンジニアの確保・育成により、グループ全体の技術開発力の向上につなげる。ISLWAREは2006年設立。取得価額、取得予定日は非公表。

主力の映像システム事業を巡っては近年、単体としての商品販売からシステムインテグレーション(構築・運用)型の案件が増加するなど、市場環境やニーズが変化している。

 

 

 

情報提供:株式会社ストライク

[解説ニュース]

相続税の債務控除の対象とされる債務の範囲

 

〈解説〉

税理士法人タクトコンサルティング(山崎 信義/税理士)

 

 

[関連解説]

■同族株主が相続等により取得した非上場株式の相続税評価

■相続税の家屋評価をめぐる最近の裁判例から

 

 

1.控除対象とされる「確実と認められる債務」とは


(1)相続税の債務控除

相続税は相続財産の課税価格を基に計算されますが、この課税価格の計算上、「被相続人の債務で相続開始の際現に存するもの」等が控除されます(相続税法13条第1項1号外)。この場合、相続税の課税価格の計算上控除されるべき債務は、「確実と認められるものに限る。」(同法14条1項)とされています。

 

(2)法令通達上の「確実と認められる債務」の基準

相続税法14条の「確実と認められる債務」については、法令通達上、その「確実」性をどのようにして判断するかの基準が明確ではありません。相続税法基本通達14−1は、「債務が確実であるかどうかについては、必ずしも書面の証拠があることを必要としないものとする。なお、債務の金額が確定していなくても当該債務の存在が確実と認められるものについては、相続開始当時の現況によって確実と認められる範囲の金額だけを控除するものとする。」としていますが、具体的な判断基準が示されているわけではありません。そこで次の2と3では、過去の裁判例等から債務の確実性についての具体的な判断基準のありかたについて考えてみます。

 

 

2.債務の確実性についての具体的な判断基準


(1)基本的な考え方

債務控除の対象とされる債務であるためには、まず相続開始時点で、被相続人にその【債務が存在していること】が必要です。債務が存在しているとは、支払い等の財産的な給付をする法的な義務(債務)を生じる契約等が成立・発生している、ということです。次に、債務が【存在】するとしても、次は、【それが「確実」なもの】といえなくてはなりません。その「確実」性の判断の時点は、相続財産の評価が財産の取得の時=相続の時点(の現況)で行われること(相続税法22条)から、同様に相続開始の時の状況で判断されるべきと考えられます。そして、「確実」性の判断に当たっては、債務控除制度の趣旨を確認しておくことが必要です。なぜなら、その趣旨に照らし、「確実」というために求められる確かさのレベルが導き出されると考えられるからです。

 

(2)平成4年2月6日の東京高裁判決における債務控除制度の趣旨

表題の判決では、「確実」性を求める相続税法14条第1項の趣旨を、「相続人ないし相続財産の負担となる債務(消極財産)は、積極財産の価額から控除して正味(純)財産により相続税の課税価格を計算しようとするものだからである。したがって、その存在が確実であっても、保証債務のように、債務の性質上、相続人が履行するとは限らず、必ずしも相続人ないし相続財産の負担とならないものは、原則として、それから除かれるものと解さなければならない。…その債務の存在すること及びその債務の履行されることが証拠上確実と認められるならば、これを『確実と認められるもの』ではないとはいえない…」(二重否定に注意)としています。
上記の判決では、被相続人の正味(純)財産を相続税の課税対象として捉え、それを求めるための控除が債務控除制度(の趣旨)であり、債務が存在していることに加え、その履行が証拠上確実か、により判断されるべきとしていることがわかります。

 

また上記判決では、「相続開始後の状況、特に相続人によって現実に当該債務の履行がされたか否かの点は、相続開始時点において債務の履行が確実と認められるか否かの認定においても斟酌されて然るべき」(太字下線部は筆者)としており、この点についても留意すべきと思います。

 

 

3.事例による債務の確実性についての考え方


例えば、被相続人が生前に自宅の改修工事をリフォーム業者に発注し、契約上、工事完了後に代金を一括して支払う取決めをしたとします。実務上、相続税法14条1項の「確実」は、文字の表す通り、”確定”まで至っていなくてもよいと解されています。したがって、工事完了前に被相続人の相続が開始したときであっても、工事の大半が終了していて契約の取消されることが通常見込まれず、工事完了後に相続人による代金の支払い(債務の履行)が見込まれるのであれば、相続開始時点で被相続人の債務(工事代金の支払債務)は、”確定”には至っていないものの、「確実」であるとは言えると思われます。

 

さらに上記2の下線部の内容を踏まえると、工事代金の支払債務につき、相続税の申告期限までに相続人により債務が引き継がれ、その履行(工事代金の支払い)がされた事実があれば、それはその債務が相続の開始時点において「確実」なものであったことの強い証拠となると思われます。

 

 

 

 

 

 

 

税理士法人タクトコンサルティング 「TACTニュース」(2021/11/09)より転載

[スモールM&A マッチングサイト活用が成功のカギ]

第2回:事業引継ぎ(スモールM&A)のスケジュール「事業の引継ぎって どうやって進めるの?」

 

〈解説〉

税理士 今村仁

 

 

 

 

早期の準備が成功の秘訣


マッチングサイトを使えば今までになかった新しい方法で「後継ぎ」が見つかるかもしれない。

 

では、実際に第三者への事業引継ぎはどのように進めていくことになるのだろうか。

 

過去の例によると、その多くにおいて成功要因といえるのが「早いうちに事業引継ぎのための準備」を行っていたことだ。これはとても大事な視点で、経営者が高齢になるにつれ売上げが減少していくことも多く、結果として承継対価などが下がることになる。そのため、廃業が脳裏にちらついたら、すぐにでも事業引継ぎの準備を始めてほしい。事業引継ぎは「早期の準備が成功の秘訣」なのである。

 

 

さて、親族内承継であれば、阿吽の呼吸である程度のおおまかな承継でも、新経営者と伴走しながら伝言不足の軌道修正などができるかもしれない。また、書類不足なども事後に補完して上手くいく可能性もある。

 

しかし、「第三者への承継」となると、そうはいかない。会社にとって大事な「契約書」や「規定」があれば、当然に承継前にきちんと開示し、最終的には現物を後継者候補に渡さないといけない。資産の中に承継後も社長が必要となる「車」や「生命保険」があれば、個人のものとして名義変更するなど事前に対策しなければならない。「借金」はなるべくなら減らしておいた方が、承継がスムーズなのは自明の理である。会社承継前に後継者候補にきちんと情報開示できていれば問題となることはほぼないが、退職金規程の有無や契約書の一部を紛失しているなどの情報を開示できていないと後日問題となる。これは誤解のないようにしておきたいのだが、書類が不備であるかどうかも大事だが、たとえ不備であったとしても、その不備であるということを事前にきちんと伝えておくことの方がより重要だということだ。

 

こういった整理をきちんと行い、決算書などの資料を準備した上で、マッチングサイトに登録し、後継者候補と交渉する場合と、後継者候補からの質問で慌てて整理を急いだり、資料を準備したりするのでは、当然にその最終結果は大きく異なるものとなる。実は、第三者承継の場合でも、不動産と似ていて、「最初に来た客=後継者候補」が一番良い客ということはよくある。そのためにも、マッチングサイト活用前に、まずは事前準備をしっかり行っておこう。

 

 

 

第三者への事業引継ぎスケジュール(スモールM&Aの手順)


事前準備を十分に行った上でマッチングサイトに登録することになるが、その登録は秘密保持の観点から、「会社名などを伏せた形のノンネームバリューシート(業種やエリア、概算売上金額や利益金額、特徴などの文章、売買価格を含めた売却条件などを記したもの)」で行うことになる。

 

その後、ノンネームバリューシートを見た後継者候補が、承継を考える社長やそのアドバイザーにアプローチをしてくるのが一般的な流れとなる。

 

次には、それら複数の後継者候補との「質疑応答」や「トップ面談」を経て、仮契約となる「基本合意書の締結」となる。この基本合意書の締結で、特定の後継者候補1社による承継を考える社長との独占交渉権が発生することになるが、それぞれの納得のもと、行うことになる。

 

更には、後継者候補による財務や労務を中心とした「会社調査(デューデリジェンス=DD)」を経て、「最終契約書の締結」がなされ、無事に「会社の引渡し」となる。

 

 

 

 

[用語解説]

■ノンネームシート
会社名などを伏せた状態で会社の概要を記したもの。

 

■ノンネームバリューシート
マッチングサイト用に、ノンネームシートに文章などを更に追加したもの。マッチングサイトを使った第三者承継で、特に最初の段階では、リアルで交渉を行う場合と比較して、文章情報のみで交渉相手を探さないといけないので、ノンネームバリューシートの上手な作成は第三者承継の成功のカギとなる。

 

■デューデリジェンス(DD)

M&Aを行うに当たって、リスクや課題を洗い出すために対象会社を詳しく調査すること。ビジネス、財務、税務、法務などの種類がある。

 

 

 

書籍「小さな会社の事業承継・引継ぎ徹底ガイド ~マッチングサイト活用が成功のカギ」より

 

 

 

 

[わかりやすい!! はじめて学ぶM&A  誌上セミナー] 

第10回:企業価値評価(Valuation)の全体像

 

 

〈解説〉

公認会計士・税理士 清水寛司

 

〈目次〉

1.なぜ企業価値評価(Valuation)が必要なの?

①買収価格決定の参考情報

②利害関係者への説明責任

2.バリュエーションで求める価値とは?

3.バリュエーションの方法

4.コストアプローチ(ネットアセットアプローチ)

①簿価純資産法

②時価純資産法(修正純資産法)

5.マーケットアプローチ

①市場株価法

②類似会社比較法(マルチプル法)

6.インカムアプローチ.

①DCF(Discounted Cash Flow)法

②配当還元法

 

 

今回からはM&Aにおける企業価値評価(Valuation)についてです。バリュエーションの全体像について、具体的なイメージに結びつくよう1つずつ見ていきましょう。

 

 

▷関連記事:M&Aにおける価値評価(バリュエーション)の手法とは?

▷関連記事:売買価格の決め方は?-価値評価の考え方と評価方法の違い-

▷関連記事:企業価値、事業価値および株式価値について

 

 

1.なぜ企業価値評価(Valuation)が必要なの?


①買収価格決定の参考情報

企業価値評価(Valuation:バリュエーション)は、会社・事業の価値を評価することです。

 

例えば、にんじん1袋を買おうと思ったとき、いくらで買えば良いでしょうか。スーパーに行くと150円で買うことができるのであれば、にんじん1袋の価値は「150円」と確認することが出来ます。そのため、150円で買えば良いとすぐ分かります。では、会社を1社買おうと思ったとき、いくらで買えば良いでしょうか。スーパーに行って確認できるものではないですし、金額はすぐには分かりません。

 

そこでバリュエーションを行うことで、会社を買う時に値段をつけることができるようになります。バリュエーションによって「100億円」の価値がある会社であると分かれば、100億円が取引の参考価格になります。

 

このように、買収に際する価額の検討を行う参考資料としてバリュエーションが行われます。

 

②利害関係者への説明責任

株主や債権者等、会社は多くの利害関係者からの出資の基で成り立っています。

 

M&Aともなれば会社の命運を左右しかねない重大案件ですので、当然利害関係者からの注目を集めますし、その買収価格は最大の関心事となります。このとき、バリュエーションに基づく買収価格であれば、利害関係者への説明もしやすくなりますね。もちろん、証券取引所、監査法人、税務署等への説明にも役立ちます。

 

M&Aで最も重要になるのは買収に際する価額の検討ですが、あまりに価格が高すぎると本当に良かったのかといった話になってしまいます。そのため関係各所への説明責任を果たすことも企業価値評価の目的となります。

 

グループ内でのM&Aや事業譲渡もよくあります。新聞でも○○企業再編!と記事になっていますね。グループ内といえども各企業は独立した企業ですし、税金を支払う単位も各企業になりますので、ある程度適切な金額で譲渡金額を算出する必要があるのです。

 

 

2. バリュエーションで求める価値とは?


バリュエーションでは「事業価値」「企業価値」「株主資本価値」という価値を求めます。紛らわしい単語が3つもありますが、これらの関係についてまずは図で見てみましょう。

 

 

 

事業遂行のために使用される純粋な事業用資産・負債から生じる価値は「事業価値」と言われます。そこに事業に使用されていない資産の価値を加えたものが、企業全体の価値を示す「企業価値」となります。

 

 

 

企業価値から有利子負債や非支配株主持分等を減額することで、株主にとっての価値である「株主資本価値」となります。

 

 

 

用語だけ見ると紛らわしいですが、1つ1つの意味は分かりやすいです。買い手の立場に立つと、「本業から生じる価値はいくらか」、「会社全体の価値はいくらか」、「株主に帰属する価値はいくらか」という点が気になりますね。そのため事業価値、企業価値、株主資本価値を求めることになるのです。

 

 

3. バリュエーションの方法


バリュエーションは大きく3つの方法に分かれます。実務では3つの方法の中から、1つもしくは複数の方法を選びます。案件の特性に応じて合う方法、合わない方法がありますので、バリュエーションを行う際はM&A対象となる会社が置かれている状況を見極め、適切な方法を選択することになります。

 

●コストアプローチ(ネットアセットアプローチ)

●マーケットアプローチ

●インカムアプローチ

 

 

4. コストアプローチ(ネットアセットアプローチ)


コストアプローチは、企業の純資産価値に基準にする方法です。

 

ざっくりお伝えすると、資産-負債で計算される「純資産」が株主資本価値になるという考え方です。直感的に分かりやすいアプローチですね。コストアプローチには「簿価純資産法」や「時価純資産法(修正純資産法)」といった計算方法があります。

 

①簿価純資産法

単純に企業の純資産を株主資本価値とする手法です。とても分かりやすい手法ですが、欠点として企業の時価を反映していないことが挙げられます。

 

例えば30年前に10億円で購入した土地があるとします。現在の値段が5倍の50億円になっていた場合、相当な含み益(40億円)が会社にあることになります。しかし、土地は購入時の値段である原価で持ち続けているため、含み益(40億円)は純資産には反映されていません。

 

今「土地だけ」を購入すると50億円かかる一方、今「土地を持っている会社」を購入した際の土地部分代金は10億円ですむというのはおかしいですね。

 

現時点での会社の価値を厳密に計算できる訳ではないことから、コストアプローチを用いる場合は、実務上、次の「時価純資産法」が通常使われます。

 

②時価純資産法(修正純資産法)

時価と簿価に大きな差が出ている項目について時価で評価した上で「純資産」を求める手法です。上記欠点を克服した形となりますが、どこまで時価評価するかは案件によって異なります。

 

先程の例では、純資産価額に土地の時価評価に伴う含み益40億円を加算した金額が株主資本価値となります。なお、継続して使用する資産負債は「再調達する際の時価」、廃止する資産負債は「処分する際の時価」を使います。

 

 

5. マーケットアプローチ


株式市場(マーケット)で成立する相場価格を基礎として企業価値を算定する手法です。「市場株価法」、「類似会社比較法(マルチプル法)」といった計算方法があります。

 

①市場株価法

上場企業の場合、既にマーケットに出回っている株式があるため、その金額も容易に確認することができます。この時に、株式市場で取引された株価の一定期間における平均値等を使用して、株主資本価値を評価します。

 

市場の評価に基づくことから非常に客観的で有用である反面、非上場企業には用いることができません。

 

②類似会社比較法(マルチプル法)

対象となる企業の類似会社を上場会社の中から見つけ、売上高・経常利益・EBIT・EBITDA・純資産等の項目から算出された倍率(マルチプル)を基礎として株主資本価値を算定する方法です。

 

非上場会社の場合は当然ながら市場株価が存在しないため、市場株価法に代替する手段として利用されます。

 

文章だけでは分かりにくいと思いますので、具体例を用いて見ていきましょう。指標には事業価値/EBITDAや事業価値/EBIT等が使用されることが多いですが、やや専門的となってしまいますので、ここでは分かりやすく「経常利益」を指標として用いることにします。

 

 

❶上場している類似会社の決定

まず上場している類似企業を見つけます。バリュエーションにおける評価対象となる企業とビジネスが類似している上場企業を見つけます。

 

 

 

 

❷倍率の算定

上記類似企業のデータを用いて倍率を算定します。

 

 

 

 

❸対象企業の価値評価

算定した倍率を評価対象会社に当てはめて、株主資本価値を求めます。

 

 

 

 

計算を見ると分かりやすいですね。類似会社であれば株主資本価値と指標(経常利益)の倍率は大きく変わらないという前提のもと、株主資本価値を求める手法です。

 

 

 

 

 

なお、非上場会社の株式は市場がないため、売買は必ず相対取引となります。譲渡制限がついている場合もあり、上場会社株式と比べて非上場会社株式は売却が困難です。そのため、売主は売却先が見つかった際に割引してでも売りたいと思うでしょう。

 

この発想を「非流動性ディスカウント」と言い、非上場企業の企業価値評価はやや割り引いて小さい金額で求めることが実務上よく行われます。

 

 

 

 

≪Column:類似会社の選定≫


類似会社は業界・業種・顧客属性・事業構造・ビジネスモデル・地域制・許認可等の観点から選びます。類似会社によって評価額が変わることも多いから、類似会社の選定が最も肝となる部分となります。

 


 

 

 

6. インカムアプローチ


将来期待されるキャッシュフローや損益(インカム)を基礎として企業価値を算定する方法です。主に「DCF(Discounted Cash Flow:割引キャッシュフロー)法」、「配当還元法」といった計算方法があります。

 

①DCF(Discounted Cash Flow)法

DCF法は将来のフリーキャッシュフローを算定し、現在価値に割り引いた上で企業価値を評価する方法です。企業価値評価の中心どころとなる評価方法で、次回以降詳細に取り上げることとします。

 

②配当還元法

株主が受け取る配当に着目して企業価値を評価します。実績ベース・業種平均ベースでの配当を使用するほか、国税庁が公表している財産基本通達に規定する評価方法もあります。

 

配当のみを重視することとなるため、配当を重視する非支配株主間における企業評価に適していますが、その企業のビジネスモデル等は勘案されないことから、配当以外を考慮に入れる必要がある合併には適していません。

 

 

バリュエーションは難しいという印象を持っている方も多いと思います。たしかに細かい計算は難しい部分も多いですが、全体像はそこまで難しくはありません。この連載で、少しでもイメージが具体的になっていただけると嬉しいです。

 

次回から、バリュエーションで最も使用されるマルチプル法とDCF法について見ていきましょう。

 

 

 

 

 

[税理士のための税務事例解説]

事業承継やM&Aに関する税務事例について、国税OB税理士が解説する事例研究シリーズです。

今回は、「会社解散後清算人に就任した代表取締役に対する退職給与」についてです。

 

[関連解説]

■【Q&A】法人が解散した場合の欠損金の控除

■【Q&A】解散に際して支払われる役員退職金の課税関係

 

 

 


[質問]

1. 支給した役員退職金が、法人税法上も「退職金」として是認されるか。

 

2. 経緯
①A㈱の代表取締役甲は諸般の事情により、法人を解散することを決断しました。
②A㈱の営業権を譲渡して、1億円の資金を得ることができる予定です。
*営業権の取得価格はありません。
③A㈱を解散し、役員退職金として「6千万円」を受給することとしました。
解散を決議した株主総会で、同時に上記の役員退職金支給を決議します。
④甲は、A㈱の清算人に就任します。

 

3. 確認したいこと
①甲は、A㈱の取締役は退任しますが、直ちに清算人に就任します。
甲に支給した退職金は「役員退職金」として認識されるのでしょうか。
引き続き「清算人(役員)」に就任することで、退職したとはみなされないのでしょうか。
②資金繰りの関係で、当該退職金の半分は清算中の事業年度において支給します。
支給の時期も、税務上の判断に影響を与えますか。

 

 

[回答]

ご承知のように、株式会社が解散した場合、合併による解散の場合及び破産手続開始の決定による解散の場合でその破産手続が終了していないときを除き、清算をしなければならず、清算株式会社は清算の目的の範囲内において清算結了まで存続することとされています(会社法475一、476)。
そして、清算株式会社の清算人は、清算株式会社の業務を執行する機関であり(会社法482①)、現務の結了、債権の取立て及び債務の弁済並びに残余財産の分配を行うことをその職務とされています(会社法481)。
また、清算人は、清算株式会社を代表し(会社法483①)、法人税法上、役員に該当します(法法2十五)。

 

ところで、法人税基本通達9-2-32《役員の分掌変更等の場合の退職給与》の取扱いがあり、これは、「分掌変更等」の前も後も役員である場合に、その分掌変更等が実質的に退職したと同様の事情にあると認められるときは、その時点での退職給与の打切り支給について損金算入を認めるというものです。
この取扱いは、地位の低下を前提としているので、監査役が取締役になるようなケースは考えられていないとされています(税務研究会「九訂版法人税基本通達逐条通達」P.864)から、ご照会の事例の場合に直接当てはめることは困難ではないかと考えられます。

 

しかしながら、所得税の取扱いでは、法人が解散した場合において、引き続き役員又は使用人として清算事務に従事する者に対し、その解散前の勤続期間に係る退職手当等として支払われる給与で、その後に支払われる退職手当等の計算上その給与の計算の基礎となった勤続期間を一切加味しない条件の下に支払われるものは、所得税法上退職手当等として取り扱われています(所基通30-2(6))。
このことからすれば、これを法人税法上も退職給与として取り扱うことが相当であると考えます(国税庁HP 質疑応答事例参照)。
したがって、ご照会の事例の場合も、過大退職金(法法34②)に該当しない限り、退職給与として、支給時の損金とする(法基通9-2-28)ことができるものと考えます。

 

 

 

 

税理士懇話会事例データベースより

(2021年7月26日回答)

 

 

 

 

[ご注意]

掲載情報は、解説作成時点の情報です。また、例示された質問のみを前提とした解説となります。類似する全ての事案に当てはまるものではございません。個々の事案につきましては、ご自身の判断と責任のもとで適法性・有用性を考慮してご利用いただくようお願い申し上げます。

 

 

 

 


[M&Aニュース](2021年10月18日〜2021年10月29日)

◇澤田ホールディングス、「HSホールディングス」に社名変更へ、◇日本ペイントホールディングス<4612>、スロベニアの塗料メーカー JUBを子会社化、◇ベステラ<1433>、アスベスト・ダイオキシン対策工事の矢澤を子会社化、◇ロコンド<3558>、通信販売業のデファクトスタンダードが運営するファッション通販サイト「waja」を取得、◇FHTホールディングス<3777>、機械式駐車場据え付け工事のアイレスを子会社化、◇早稲田アカデミー<4718>、明光ネットワークジャパン<4668>の新設子会社「個別進学館」を取得、◇ヨシックスホールディングス<3221>、店舗内装の芝産業を子会社化、◇ルネサスエレクトロニクス<6723>、イスラエルのアナログ半導体企業「セレノ」を子会社化、◇ダスキン<4665>、氷菓子・アイスクリーム製造子会社の蜂屋乳業をバンリューに譲渡、◇中越パルプ工業<3877>、巴川製紙所<3878>から超軽量印刷用紙事業を取得、◇システムリサーチ<3771>、ソフト開発のゼネラルソフトウェアを子会社化 ほか

 

 

 

 

 

 

澤田ホールディングス、「HSホールディングス」に社名変更へ
2021/10/29

澤田ホールディングスは28日、2022年1月1日付で「HSホールディングス」に社名を変更すると発表した。主要株主である筆頭株主及び関係会社の異動を理由としている。同社では今年4月末に、筆頭株主で約27%の株式を持つ投資会社のタワー投資顧問(東京都港区)に代わって、第2位株主だった会長の澤田秀雄氏(エイチ・アイ・エス会長)が筆頭株主となった。新社名の「HS」は澤田秀雄会長のイニシャルにちなんだものとみられる。社名変更は12月14日に開く臨時株主総会に諮る。

澤田ホールディングスは国内外で金融事業を展開し、エイチ・エス証券やハーン銀行(モンゴル)などを傘下に持つ。澤田ホールディングスを巡っては昨年2月、投資ファンドのMETA Capital(東京都港区)がTOB(株式公開買い付け)を始め、株式50%超を取得して子会社化を目指した。しかし、TOBは今年7月に不成立となるまで343日に及ぶ異例の展開となった。

澤田会長は保有株をTOBに応募することにしていたが、最終的に会社側はTOBに反対を表明した経緯がある。

日本ペイントホールディングス<4612>、スロベニアの塗料メーカー JUBを子会社化
2021/10/29

日本ペイントホールディングスはスロベニアの塗料メーカー、JUB(売上高150億円、税引き前利益17億円)を買収すると発表した。1億9450万ユーロ(約254億円)を投じて、株式99.8%を取得する。JUBは建築用塗料や断熱材の製造・販売を手がけ、スロベニア、セルビア、クロアチア、ボスニア・ヘルツェゴビナを中心に流通網を持つ。買収完了は2022年1~6月中を見込む。日本ペイントは同社を足掛かりに、成長が期待される中・東欧市場での地盤構築を目指す。

日本ペイントは2019年に傘下に収めたオーストラリア最大手の塗料メーカー、デュラックスグループが英国に設立した新会社を通じてJUB株を取得する。

ベステラ<1433>、アスベスト・ダイオキシン対策工事の矢澤を子会社化

2021/10/29

ベステラは、アスベスト・ダイオキシン対策工事の矢澤(東京都渋谷区。売上高5億2000万円、営業利益1800万円、純資産8700万円)の全株式を取得し子会社化することを決めた。ベステラが主力とするプラント設備の解体工事においても、アスベスト対策、ダイオキシン対策など特殊工事の需要増加が見込まれているのに対応する。取得価額は非公表。取得予定日は2021年12月20日。

矢澤は2007年設立で、大手ゼネコン(総合建設会社)向けに豊富な工事実績を持つ。

ロコンド<3558>、通信販売業のデファクトスタンダードが運営するファッション通販サイト「waja」を取得
2021/10/29

ロコンドは、通信販売業のデファクトスタンダード(東京都大田区)からファッション通販サイト「waja」を取得することを決めた。ロコンドが運営する靴・ファッションのEC(電子商取引)サイト「LOCONDO.jp」との相乗効果が大きいと判断した。取得価額は155万円。取得予定日は2022年1月1日。

FHTホールディングス<3777>、機械式駐車場据え付け工事のアイレスを子会社化
2021/10/29

FHTホールディングスは、関東近郊を中心に機械式駐車場の据え付けや保守・修繕工事を手がけるアイレス(東京都港区。売上高1億9200万円、営業利益313万円、純資産952万円)の全株式を取得し、29日付で子会社化した。FHTはマンション管理・清掃業務を行う子会社の東環(東京都港区)との連携で新たな顧客や物件の獲得につなげる。取得価額は6220万円。

早稲田アカデミー<4718>、明光ネットワークジャパン<4668>の新設子会社「個別進学館」を取得
2021/10/29

早稲田アカデミーは、明光ネットワークジャパンが「早稲田アカデミー個別進学館」事業を会社分割して新設する個別進学館(東京都豊島区)の全株式を取得し、子会社化することを決めた。「早稲田アカデミー個別進学館」は高学力向け個別指導塾で、早稲田アカデミーと明光ネットワークの両社が資本業務提携に基づき2010年から相互展開してきたが、今後、早稲田アカデミー単独での展開に切り替えるのに伴う措置。取得価額は非公表。取得予定日は2021年11月30日。

明光ネットワークは早稲田アカデミー個別進学館を直営で7校、フランチャイズで15校を展開しており、これらが譲渡対象となる。早稲田アカデミーと明光ネットワークは資本業務提携を解消する。

ヨシックスホールディングス<3221>、店舗内装の芝産業を子会社化
2021/10/29

ヨシックスホールディングスは、店舗内装の設計・施工・管理を手がける芝産業(神奈川県小田原市。売上高10億8000万円、営業利益5200万円、純資産2億1600万円)の全株式を取得し、29日付で子会社化した。店舗内装など建装事業の強化・拡大が狙い。ヨシックスは寿司居酒屋「や台ずし」を中核ブランドに飲食チェーンを運営する一方、子会社を通じて建装事業を展開する。芝産業を傘下に取り込み、グループ外顧客との取引拡大につなげる。取得価額は非公表。

芝産業は1978年設立で、首都圏の建装業界における老舗企業。

ルネサスエレクトロニクス<6723>、イスラエルのアナログ半導体企業「セレノ」を子会社化
2021/10/28

ルネサスエレクトロニクスはイスラエルのアナログ半導体企業、セレノ・コミュニケーションズ(ラーナナ市)を買収すると発表した。米国にあるセレノの持ち株会社(デラウェア州。売上高42億2000万円、営業利益△9億8100万円、純資産△1億9700万円)の全株式を約359億円で取得し、子会社化する。買収完了は2021年12月までに見込む。

セレノはWi-Fi向けの半導体に強みを持ち、高解像度画像技術を組み合わせ、家庭での高齢者の見守りやホームセキュリティー、自動車の安全運転、ネットワーク化した工場の稼働などに用途を広げている。ルネサスは同社を取り込み、IoT(モノのインターネット)、社会インフラ、産業、自動車分野などのアプリケーションとして需要が高まる低電力のコネクティビリィティー(相互接続性)技術をグローバルに提供する。

ルネサスは米国に設立する買収子会社とセレノの持ち株会社の合併(逆三角合併)を実施する。合併対価としてセレノの株主に現金が交付される一方、買収子会社の株式がセレノの発行済み株式に転換されることにより、セレノを完全子会社化する。

セレノはイスラエルに設計拠点を持ち、同国のほか、ウクライナ、インド、中国、台湾などにも展開している。

ダスキン<4665>、氷菓子・アイスクリーム製造子会社の蜂屋乳業をバンリューに譲渡
2021/10/28

ダスキンは氷菓子やアイスクリーム、菓子類の製造・販売子会社の蜂屋乳業(大阪市。売上高16億7000万円、営業利益4400万円、純資産1億9200万円)の全株式を、バンリュー(兵庫県姫路市)に譲渡することを決めた。事業の選択と集中による事業構成の適正化の一環としている。譲渡価額は非公表。譲渡予定日は2021年11月30日。

ダスキンは2012年に蜂屋乳業を子会社化し、全国展開する「ミスタードーナツ」店舗でのアイスクリーム販売などの事業展開を検証してきた。

譲渡先のバンリューは傘下に食肉の加工・販売、外食を手がける子会社を抱える持ち株会社。

中越パルプ工業<3877>、巴川製紙所<3878>から超軽量印刷用紙事業を取得
2021/10/28

中越パルプ工業は傘下の三善製紙(金沢市)を通じて、巴川製紙所(東京都中央区)から洋紙事業の一部を取得することを決めた。対象となるのは超軽量印刷用紙(トモエリバー薄葉印刷用紙、手帳洋紙)の営業権や商標権、棚卸資産。取得価額は約3億円。三善製紙の営業基盤の強化につなげる狙い。取得予定日は2021年11月28日。

システムリサーチ<3771>、ソフト開発のゼネラルソフトウェアを子会社化
2021/10/28

システムリサーチは、ソフトウエア開発のゼネラルソフトウェア(東京都千代田区。売上高8億9200万円、営業利益8900万円、純資産10億7000万円)の全株式を取得し子会社化することを決めた。関東圏と関西圏での取引拡大などが狙い。取得価額は11億9800万円。取得予定日は2021年11月30日。

ゼネラルソフトウェアは1980年設立で、関東圏と関西圏を中心にソフトウエアの設計・開発、サーバーネットワークのシステム環境構築、システム運用・保守、ヘルプデスクといったソフトウエアにかかわる業務全般を手がけてきた。同社を傘下に収めるシステムリサーチは名古屋市に本社を置き、東海圏を地盤している。

Abalance<3856>、太陽光発電のジャパン・ソーラー・パワーを子会社化
2021/10/28

Abalanceは傘下企業を通じて、太陽光発電事業のジャパン・ソーラー・パワー(高知市。売上高10億円、営業利益4900万円、純資産1億4600万円)の全株式を取得し、28日付で子会社化した。ストック型ビジネスを推し進める一環で、安定収益、キャッシュフロー(現金収支)の確保につなげる。取得価額は非公表。

ジャパン・ソーラー・パワーは石川県鳳珠郡と島根県邑智郡に太陽光発電所を保有する。年間発電量は3330メガワットアワーで、一般家庭の約720世帯分の消費電力に相当するという。

電通グループ<4324>、ネット広告大手のセプテーニ・ホールディングス<4293>を子会社化
2021/10/28

電通グループは28日、ネット広告大手のセプテーニ・ホールディングスが実施する第三者割当増資を引き受け、子会社化すると発表した。現在19.36%の持ち株比率を52.01%に引き上げる。これまでの両社の資本業務提携を深化させ、電通グループが重点分野と位置付けるデジタルマーケティング分野の事業拡大を推し進める。総額約326億円に上る第三者割当増資の実行予定日は2022年1月4日。セプテーニのジャスダック上場は維持される。

セプテーニは電通グループへの傘下入りに伴い、電通グループの子会社でダイレクトマーケティング事業の電通ダイレクト(東京都港区。売上高159億円、営業利益4億1100万円、純資産10億8000万円)を2022年1月4日付で子会社化する予定。

インフォコム<4348>、システム開発のメディカルクリエイトを子会社化
2021/10/27

インフォコムは、医療機関の放射線部門向けシステム開発を手がけるメディカルクリエイト(広島市。売上高4億9500万円、営業利益9900万円、純資産1億3500万円)の全株式を取得し子会社化することを決めた。ヘルスケア事業の規模拡大や顧客サポートの品質向上などにつなげる。メディカルクリエイトは2004年に設立。取得価額は非公表。取得予定日は2021年10月29日。

INPEX<1605>、ノルウェーで石油・天然ガス開発の出光スノーレ石油開発を子会社化
2021/10/27

INPEXは、ノルウェーで石油と天然ガスの探鉱・開発・生産を手がける出光スノーレ石油開発(東京都千代田区)の株式50.5%を取得し、子会社化することを決めた。引き続き49.5%の株式を保有する出光興産と共同で事業を進める。安定した収益基盤と成長機会を兼ね備えた優良な資産であると判断した。取得価額は非公表。取得完了はノルウェー政府による承認などを踏まえ2022年初めを見込む。

出光スノーレ石油開発の株主構成は現在、出光興産が50.5%、大阪ガスと住友商事が共同出資する大阪ガスサミットリソーシズ(大阪市)が49.5%。INPEXは今回、出光興産が保有する50.5%のうち1%、大阪ガスサミットリソーシズが保有する全株式49.5%をそれぞれ取得(合計50.5%)する。これに伴い、大阪ガスは事業から撤退する。一方、出光興産にとっては出光スノーレ石油開発が持ち分法適用関連会社となることにより、連結バランスシートの圧縮につなげる狙いがある。

出光スノーレ石油開発はノルウェー子会社を通じて、スノーレプロジェクトをはじめ11の生産・開発中の油ガス田権益のほか、複数の有望な既発見未開発油・ガス田と探鉱鉱区を持つ。

三社電機製作所<6882>、産業用乾式変圧器メーカーの大阪電装工業を子会社化
2021/10/27

三社電機製作所は、産業用乾式変圧器メーカーの大阪電装工業(大阪市)の全株式を取得し子会社化することを決めた。大阪電装は三社電機の電源機器事業における中核部材の仕入先だが、後継者不在の状態に直面。このため、部材の安定調達を確保する観点から傘下に収めることにした。大阪電装は1949年創業で、従業員は43人(2021年8月末)。取得価額は非公表。取得予定日は2021年11月1日。

セレス<3696>、成功報酬型アルバイト求人サイト「モッピーバイト」事業をアドヴァンテージに譲渡
2021/10/26

セレスは、成功報酬型アルバイト求人サイト「モッピーバイト」事業を会社分割により、採用サイト制作・運用のアドヴァンテージ(横浜市)に譲渡することを決めた。コロナ禍による事業環境の変化を踏まえ、事業構成を見直すことにした。「モッピーバイト」のサービス開始は2010年で、直近売上高は7200万円。譲渡価額は2000万円。譲渡予定日は2021年12月1日。

GameWith<6552>、プロeスポーツ運営のDetonatioNを子会社化
2021/10/26

GameWithは、プロeスポーツチーム「DetonatioN Gaming」を運営するDetonatioN(東京都豊島区。売上高3億1100万円、営業利益△1650万円、純資産2140万円)の株式59.82%を取得し子会社化することを決めた。拡大が期待されるeスポーツ市場で事業成長を加速するのが狙い。取得価額は2億5300万円。取得予定日は2021年10月31日。

DetonatioNは日本でのプロeスポーツチームの先駆者の一つ。世界で最もプレーヤー数が多いパソコンゲームとされる「League of Legends」部門の日本チャンピオンチーム「DetonatioN FocusMe」の運営をはじめ、日本国内だけでなく世界的な大会で実績を残している。

エンビプロ・ホールディングス<5698>、子会社を通じてバイオマス燃料の製造・販売を手がける富士見BMSを子会社化
2021/10/25

エンビプロ・ホールディングスは完全子会社のエコネコル(静岡県富士宮市)を通じてバイオマス燃料の製造・販売を手がける富士見BMS(静岡県富士市。売上高・営業利益・純資産非公表)の全株式を富士見工業(静岡市)から取得し、完全子会社化すると発表した。

エコネコルは産業廃棄物のリサイクルを手がけており、従来の金属・プラスチックに加え、これまで取り扱いが少なかった木くずの処理能力を拡大することで顧客の利便性を向上するのが狙い。バイオマス原燃料の需要拡大にも対応する。

取得価額は非公表。取得予定日は2021年11月1日。

イオンディライト<9787>、現地子会社を通じて中国医療機関向けサービス会社を子会社化
2021/10/25

イオンディライトは、現地子会社の永旺永楽(中国)物業服務有限公司を通じて医療施設での清掃や院内運送、警備、設備管理、患者付添などのサービスを手がける浙江美特来物業管理有限公司(杭州経済技術開発区。売上高7億1600万円、営業利益△3500万円、純資産400万円)の株式51%を同社の許增偉総経理から取得して子会社化すると発表した。

中国での医療施設関連の業容拡⼤を図り、成⻑を加速するため、医療施設でのファシリティマネジメントの豊富な事業経験と実績、⾼い専⾨性を有する浙江美特来を子会社化した。

取得価額は増資引き受け1000万人民元(約1億7200万円)を含めて総額2805万⼈⺠元(約4億8400万円)。取得予定日は2021年12月から2022年2月。

ダイキアクシス<4245>、住宅サッシ・エクステリア建材施工のアルミ工房萩尾を完全子会社化
2021/10/22

ダイキアクシスは、住宅サッシ・エクステリア建材の施工・販売を手がけるアルミ工房萩尾(愛媛県新居浜市。売上高2億8186万円、経常利益2331万円、純資産1億2042万円)の全株式を取得、完全子会社化すると発表した。

ダイキアクシスは水回り関係を中心とした住設機器を元請けのゼネコン・地場建築業者・ハウスメーカーに販売する住宅機器関連事業を手がけている。アルミ工房萩尾の子会社化により、水回り関係に加えて住宅サッシやエクステリア建材についても提案することで、より質の高い商材・サービスの提供とシナジー効果を見込めると判断した。

アルミ工房萩尾は2009年1月設立。取得価額は非公開。取得予定日は2021年10月26日。

デザインワン・ジャパン<6048>、岡山県のITサービス企業イー・ネットワークスを完全子会社化
2021/10/22

デザインワン・ジャパンは、岡山県でITサービスを展開するイー・ネットワークス(岡山市。売上高1億6074万円、営業利益703万円、純資産9296万円)の全株式を取得し、完全子会社化したと発表した。

デザインワンは国内最大級のオールジャンル口コミ店舗検索サイト「エキテン」を運営し、国内20万社以上の中小事業者に集客支援サービスを提供している。同社はイー・ネットワークスが持つ中小企業向けのウェブ制作や受託開発、ホスティング・サーバ関連サービスなどを利用して、自社事業の中長期的な開発リソースを確保する。

ベトナムのシステム開発子会社である Nitro Tech Asia Incとの一体運用で、DXソリューションの拡大も目指す。取得価額は非公表。取得日は2021年10月22日。

santec<6777>、光測定装置を手がけるカナダのJGR Optics Inc.を完全子会社化
2021/10/22

santec<6777>は、光測定装置の開発・製造・販売を手がけるカナダのJGR Optics Inc.(オンタリオ州オタワ市。売上高1127万カナダドル=9億1100万円、営業利益280万カナダドル=2億2700万円、純資産245万カナダドル=1億9800万円)を完全子会社化すると発表した。santecの光測定器関連事業でのシェア拡大が狙い。取得価額は非公表。取得予定日は2021年10月29日。

ニューラルポケット<4056>、サイネージ広告のフォーカスチャネルを完全子会社化
2021/10/22

ニューラルポケットは、サイネージ(屋外)広告のフォーカスチャネル(東京都豊島区。売上高5300万円、営業利益600万円、純資産3400万円)の全株式を同社親会社のWiz(東京都豊島区)から譲受し、完全子会社化すると発表した。

ニューラルポケットはAI(人工知能)カメラを搭載したデジタルサイネージ広告表示装置を設置。通行人や広告を視聴した人のデータを収集し、広告の付加価値を上げるサービスを展開している。

都心部の大型高級マンションのエントランスを中心に設置しているフォーカスチャネルのサイネージ広告表示装置にAIカメラを搭載することで、高所得者層へ訴求する広告展開を目指す。事業者向けITサービスを展開する売り主のWizとも事業連携する。

取得価額は2億6700万円(アドバイザリー費用などを含む)。取得予定日は2021年11月1日。

ガンホー<3765>、ゲーム開発のグラスホッパーを5月に譲渡していたと発表
2021/10/22

ガンホー・オンライン・エンターテイメントは、2021年5月31日にゲームソフトやデジタルコンテンツの企画・制作などを手がけるグラスホッパー・マニファクチュア(東京都千代田区。売上高・営業利益・純資産はいずれ非公表)の全株式を、スマートフォン向けゲーム開発のNetEase Interactivate Entertainment Pte. Ltd(シンガポール)へ譲渡していたことを明らかにした。取引先への影響などから、これまで開示を控えていたという。

ガンホーはゲーム開発力強化のため、2013年2月にグラスホッパー・マニファクチュアを完全子会社化し、「LET IT DIE」などの共同開発に当たってきた。2018年3月には同社を知的財産の強化・拡充を図るスーパートリック・ゲームズと独自のゲーム開発を手がけるグラスホッパー・マニファクチュアの二つの会社に分けた。

このうちグラスホッパー・マニファクチュアが、今後の事業展開を踏まえてNetEaseの傘下に入りたいとの申し出があり、NetEaseと株式譲渡で合意したことから全株式を譲渡した。スーパートリック・ゲームズはガンホーグループに残る。譲渡価額は非公表。

シャノン<3976>、 Webソリューション事業のヴィビットインタラクティヴを子会社化
2021/10/21

シャノンはWebソリューション事業を手がけるヴィビットインタラクティヴ(東京都渋谷区。売上高7322万円、営業利益△291万1000円 、純資産2014万円)の全株式を取得し、子会社化すると発表した。

Webサイトのコンテンツを構成するテキストや画像、デザイン・レイアウト情報(テンプレート)などを一元的に保存・管理するCMS(Contents managementSystem)技術の強化が狙い。

シャノンは統合型マーケティング支援システム「SHANON MARKETING PLATFORM」で顧客企業のマーケティング支援サービスを手がけている。その中でウェブサイトのリニューアルや改修が実施されることも多く、 CMSツールが利用されるケースも増えている。

そこで「vibit CMS」を提供し、同ツールを得意とするヴィビットインタラクティヴを子会社化することで、顧客企業のデジタルマーケティング活動の支援強化を狙う。

取得価額は1億3200万円。取得予定日は2021年11月1日。

ウインテスト<6721>、太陽光発電サービスのオランジュをエネプライムに売却
2021/10/21

ウインテストは、100%子会社で太陽光発電O&M(運転管理・保守点検)サービスを手がけるオランジュ(横浜市。売上高8301万円、営業利益△363万4000円、純資産△5363万9000円)をエネプライム(東京都新宿区)に売却すると発表した。

同サービスは近年のFIT(再生可能エネルギーの固定価格買取制度)売電単価の下落と太陽光発電所の新設件数が減少しているのに伴い、成長が鈍化している。オランジュの2021年9月中間期の売上高は3583万3000円にとどまり、806万3000円の営業損失を計上した。当初想定していたシナジー効果も限定的だったため、売却を決めた。

譲渡価額は非公開。譲渡予定日は2021年10月21日。

Abalance<3856>、太陽光発電事業のカンパニオソーラーを子会社化
2021/10/20

Abalanceは、太陽光発電所の設計や運営などを手がける子会社のバローズ(大阪府吹田市)を通じて、太陽光発電事業を営むカンパニオソーラー(大阪府吹田市。売上高3300万円、営業利益△600万円、純資産△4100万円)の全株式を取得し、子会社化することを決めた。カンパニオソーラーが保有する太陽光発電所(年間発電量4000メガワット)を取得することで、太陽光発電事業を拡大するのが狙い。

カンパニオソーラーは2015年設立。取得価額は7億3200万円。取得予定日は2021年10月29日。

日本ペイントホールディングス<4612>、フランスの建築用塗料メーカー「クロモロジー」を子会社化
2021/10/20

日本ペイントホールディングスは、豪州子会社のDuluxGroup Limitedが英国に新たに設立した孫会社を通じて、欧州で建築用塗料などの製造、販売を手がけるフランスCromology Holding SAS(クロモロジー、クリシー。売上高822億円、当期利益10億4000万円)の全株式を取得し、子会社化することを決めた。

クロモロジーを傘下に収めることで、フランス、スペイン、イタリア、ポルトガル、東欧諸国の一部などへの市場拡大が可能になるほか、新たな企業買収を行うための基盤を得ることができるとしている。

クロモロジーは2006年設立で、欧州で第4位の建築用塗料メーカー。取得価額は約1509億7000万円。取得は2022年上期中を予定している。

ケーズホールディングス<8282>、運送や電気工事などのサワハタキャリーサービスを株式交換で子会社化
2021/10/20

ケーズホールディングスは、運送や電気工事などを手がけるサワハタキャリーサービス(茨城県ひたちなか市。売上高17億3000万円、営業利益5500万円、純資産2億3900万円)を株式交換で子会社化することを決めた。

ケーズホールディングスグループの配送や工事を安定的に行える体制を構築するのが狙い。サワハタキャリーサービスは1995年設立で、25年にわたりケーズホールディングスグループの配送や工事を手がけてきた。株式交換比率や実施予定日などの詳細は今後協議して決める。

クレアシオン・キャピタル、Web会議システム開発・販売のジャパンメディアシステムにTOB
2021/10/19

クレアシオン・キャピタル(東京都港区)は19日、買収目的会社のJXホールディングス(同、石油元売りの旧JXホールディングス=現ENEOSホールディングスとは別会社)を通じてWeb会議システム開発・販売のジャパンメディアシステム(東京都千代田区)に対してTOB(株式公開買い付け)を始めると発表した。

クレアシオン・キャピタルは国内独立系プライベートエクイティ(PE)ファンド。ジャパンメディアシステムが手がけるWeb会議システムの成長を見込み、同社の新規上場(IPO)を狙う。買付価格は18万2000円。買付予定数は全株に当たる4万3630株、下限は2万6147株。

買付代金は約71億9100万円。買付期間は10月19日から12月15日までの40営業日。公開買付代理人はSMBC日興証券。決済開始日は12月30日。

ソニーグループ<6758>、米国子会社のゲーム部門「GSN Games」を米スコープリーに売却
2021/10/19

ソニーグループは、米国子会社のソニー・ピクチャーズ エンタテインメント(カリフォルニア州)の子会社であるGame Show Network, LLC(同)のゲーム部門「GSN Games」を、モバイルゲームを手がける米Scopely, Inc.(スコープリー、同)に売却する。譲渡価額は約1100億円で、今後運転資金やその他の調整を経て正式に決める。ソニー・ピクチャーズ エンタテインメントは、半分を現金で、残り半分をスコープリーの優先株で受け取る。譲渡予定日は未確定。

ソニー・ピクチャーズ エンタテインメントは、スコープリーの株主になることで、成長が期待されるモバイルゲーム業界からの収益が見込めるとしている。「GSN Games」は全世界で約400人社員がおり、ゲームは世界中で数百万人が利用している。一方、スコープリーは急成長しているモバイルゲーム企業で、2018年から2020年の3年間で、売上高が3倍になったという。

インバウンドテック<7031>、光通信<9435>傘下で電話予約サポートのOmniGridを子会社化
2021/10/18

インバウンドテックは、光通信傘下で予約サービス事業を展開するEPARK(東京都港区)から音声予約システム事業(売上高2億6640万円、営業利益△231万円)とレンタルサーバー事業(売上高1億5744万円、営業利益1億2410万円)を譲り受けるOmniGrid(東京都豊島区)の株式65.0%を取得し、子会社化することを決めた。

コロナ後に発生するインバウンド需要を取り込むとともに、インバウンドテックが運営するコンタクトセンターや新規サービスとの相乗効果を創出するのが狙い。取得価額は約9億4450万円。取得予定日は2021年11月1日。

ビジョン<9416> 、月額定額制の会議室などを運営する「あどばる」を子会社化
2021/10/18

ビジョンは、月額定額制の会議室「Office Ticket(オフィスチケット)」などを運営する「あどばる」(東京都渋谷区。売上高11億8000万円、営業利益3億5400万円、純資産△3億4200万円)を株式交付により子会社化することを決めた。50%超の株式取得を目指す。

あどばるは2008年創業で、空き部屋を会議室として活用するスペースマネジメント事業を展開している。通信インフラやオフィス機器の提供などを手がけているビジョンは、あどばるの顧客基盤やノウハウなどを利用することで、売り上げの拡大やコスト削減などが可能と判断した。

あどばるの1株に対し、ビジョンの4.7株を割り当て交付する。取得価額は約6億5663万円。取得予定日は2021年12月1日。

 

 

 

 

 

 

情報提供:株式会社ストライク

[解説ニュース]

【事例】中小企業オーナーの遺産分割対策としての会社分割の活用法

 

〈解説〉

税理士法人タクトコンサルティング(山崎 信義/税理士)

 

 

[関連解説]

■株式交付制度の概要と活用時の留意点

■遺産分割による配偶者居住権の設定と相続税の小規模宅地等の特例の適用

 

 

【問】

A氏はB株式会社(B社)の代表取締役として、発行済株式を全部保有しています。B社は甲事業と乙事業を営んでおり、A氏の長男と次男がそれぞれ甲事業、乙事業の責任者として経営に参加しています。A氏の死亡後、長男と次男が揉めないように、B社をどのように承継させたらよいでしょうか。

 

 

【回答】

1.会社分割を活用した対策の概要


現状のまま遺言もなくA氏の相続が開始した場合、B社株式を兄弟でどう分けるかでトラブルになるおそれがあります。また遺産分割協議により、兄弟がそれぞれB社の株式を半分ずつ相続したような場合には、会社の意思決定に支障が出る問題があります。

 

上記の問題点を踏まえれば、A氏が生前にB社を甲事業、乙事業と事業別に二つに分割しておくことが有効な対策となります。具体的には、B社は甲事業を営む会社として存続させる一方で、乙事業を営む会社としてC社を下記2の会社分割により設立(会社法762条以下。以下「新設分割」。)します。生前にそのような対策を実行することにより、A氏の相続開始時には相続財産がB社株式と新設のC社の株式になります。

 

B社株式とC社株式を長男と次男兄弟がそれぞれ相続することで、遺産分割とその後の会社経営にかかるトラブルを未然に防ぐことができます。税務上は、A氏が生前に上記の会社分割を行い、①分割後のB社株式とC社株式を相続開始時まですべて保有する予定で、②他にB社からは何も給付を受けなければ、その他の要件を満たすことにより適格分割となり、課税の問題も生じません(下記2参照)。A氏の相続開始後に、B社を甲事業、乙事業と事業別に分割することは可能ですが、すでに兄弟間でトラブルが顕在化している場合には、会社分割を行うことが手続面も含めて煩雑になります。会社分割による遺産分割対策は、A氏がB社のオーナー経営者であるうちに実行すべきでしょう。

 

2.会社分割を実行した場合の税務上の取扱い


会社分割とは、株式会社または合同会社がその事業に関して有する権利義務の全部又は一部を分割により他の会社に承継させることをいいます(会社法2条29号、30号)。この場合の「他の会社」には、既存の会社のときと新設会社のときとがありますが、本稿では新たに会社を設立する「新設分割」を想定します。新設分割にかかる税務上の取扱いをまとめると、次のとおりになります。

(1)分割した場合の株主A氏の課税(所得税)

分割により新設されるC社が、A氏に対してC社株式以外の資産を交付しなければ、法人税法上の「適格分割型分割」に該当します。適格分割型分割に該当する場合のA氏の課税関係は次の通りです。

 

①C社株式に関してみなし配当は生じません(所得税法25条第1項2号)。
②A氏の側から見ると、実態として会社分割の前後でB社株式の価値の一部がC社株式に変わった(移転した)だけであると考えられます。したがって、この分割によりB社株式からC社株式へ移転した株式の価値については、B社株式の取得価額の一部をC社株式の取得価額に付替える計算のみを行い、譲渡所得課税は行いません(所得税法施行令113条・租税特別措置法37条の10第3項2号かっこ書)。

(2)B社とC社の課税(法人税)

適格分割型分割を行った場合には、B社の乙事業に係る資産および負債を適格分割直前の簿価でC社に引き継ぎます(法人税法62条の2)。よって、B社において乙事業の分割に伴う資産負債の譲渡損益は認識せず、B社とC社に課税関係は生じません。

 

3.会社分割の実行による相続税への影響


会社分割を行うことにより、A氏に係る相続税の計算上、会社分割前のB社株式の相続税評価額に比べ、分割後のB社株式とC社株式の相続税評価額の合計額が大きくなる場合があるので注意が必要です。

 

例えば、会社分割後3年以内にオーナー経営者に相続が発生した場合、C社株式の純資産価額の計算上、C社がその土地や家屋の取得(=会社分割)後3年以内にA氏の相続が発生したことになるので、その土地や家屋は相続税評価額ではなく通常の取引価額で評価されることになります(財産評価基本通達185)。路線価や固定資産税評価額に基づく相続税評価に比べて、通常の取引価額に基づく評価の方が、相続税評価額は通常高くなります。また、この場合のC社株式は、開業後3年未満の会社の株式となるので、純資産価額方式のみによる評価となり、一般的に相続税評価額の低くなる類似業種比準価額による評価はできません(同189-4)。

 

 

 

 

税理士法人タクトコンサルティング 「TACTニュース」(2021/10/25)より転載

[スモールM&A マッチングサイト活用が成功のカギ]

第1回:『廃業と承継の 比較』~「廃業」するとこんなに大変! 「承継」できるとこんなに幸せ!~

 

〈解説〉

税理士 今村仁

 

 

 

廃業するとこんなに大変


「もし自分が明日倒れたり病気になったら、従業員やお客さん、取引先はどうなるのだろう?」と、食事の後や寝る前に、又は夢の中で、不安に駆られたことはないだろうか。

 

後継者不在の多くの社長と話をしていると、大体60歳を超えたあたりでまず「漠然と今後の会社の行く末」に不安を感じ始め、65歳を超えると「廃業」が頭をよぎり始めるようである。

 

 

では、皆さんの会社が「もし」廃業した場合、ご自身や周囲に実際どのような影響があるのだろうか。

 

まずは従業員であるが、廃業する場合には基本的には「解雇」となる。小さな会社であれば、その多くが地元採用であろうから、現実的には、解雇でハイサヨウナラと杓子定規にドライに対応することなどできない。例えば、社長が謝罪すると共に再就職先を斡旋することまで行うケースもある。従業員の配偶者と社長の配偶者が同じ社交ダンスサークルのメンバーだったり、廃業した次の日にスーパーで出会うなんてことも想定されるのが、小さな会社の廃業の現実だからである。

 

 

社長が廃業を選択した場合に、得意先や仕入先、外注先などの取引先にはどのような影響があり、何をしないといけないのだろうか。

 

今まで長くお付き合いがあったところが大半だろうから、取引の頻度や金額にもよるが、できるだけ早く廃業予定の案内をすることになる。御社が取引終了することにより、連鎖的に廃業や倒産とならないようにするべきなのは当然であるから、得意先に限らず広く取引先全般に、なるべく早めに案内を行うべきだ。

 

 

法律論はさておき現実的には、小さな会社で廃業を選択した社長は、広く取引先への謝罪行脚をしないといけない。時には、こちらで自社に代わる会社を紹介する必要も出てくる。

 

また、ご自身にとっての影響も事前に知っておくべきである。事業で使っている機械や車両、備品などは、事業継続して使い続ける限り高い価値があるが、それを廃業と共に売却するとなると二束三文に、時には逆に廃棄コストがかかることもある。更には、工場や店舗、事務所には、撤去費用が莫大にかかることもある。

 

 

承継できればこんなに幸せ


では、マッチングサイトを使ってお相手が現れ、廃業ではなく「第三者承継(M&A)」ができた場合は、どうであろうか。

 

まずは従業員であるが、ほとんどの第三者承継では、雇用の継続が図られる。理由は単純で、昨今の人手不足の影響もあるが、小さな会社では従業員個々の役割が重要なことが多く、承継者である買い手には貴重な存在だからである。

 

次に取引先であるが、こちらも基本的には継続となる。廃業前の謝罪行脚ほど、辛く恥ずかしいものはないと思うので、これは廃業予定だった社長にとって有り難いことではないかと思う。

 

 

小さな会社の場合、雇用や取引先の継続が図られるということは、その多くが地元採用や地元企業であることも含めて考えると、地域社会に好影響となることも付け加えておく。

 

 

最後にお金の話であるが、社長の手残りは、廃業よりも第三者承継を選択できた方が多くなることが大半だ。廃業コストがかからず、承継対価も貰えるので、一般的には手残りが多くなるのである。税金も株式譲渡の2割課税であると、一般的には得することが多い。

 

 

 

 

書籍「小さな会社の事業承継・引継ぎ徹底ガイド ~マッチングサイト活用が成功のカギ」より