再生か廃業(破産、清算)かの選択 ~再生と廃業の違い、再生と廃業の選択のポイント、再生の手法、廃業の手法~

[ゼロからわかる事業再生]

第5回:再生か廃業(破産、清算)かの選択

~再生と廃業の違い、再生と廃業の選択のポイント、再生の手法、廃業の手法~

 

[解説]

髙井章光(弁護士)

 

 

[質問(Q)]

不況のため毎年赤字が続き、債務超過となってしまっていますが、再生が可能な状態でしょうか。それとも、早期に廃業手続を実施した方がよいのでしょうか。

 

 

[回答(A)]

再生が可能か否かを判断するポイントは、その事業に価値があるか否か、事業価値を維持し続けることができるか否かによって決まります。さらに、その事業を再生するための経営陣の意欲も必要です。

 

 

 

1.再生と廃業の違い


赤字が続き、債務超過に至ってしまった場合に、会社を建て直して事業活動を継続することが再生であり、会社の事業活動を終了させる場合が廃業です。負債を多く抱えてしまったままで廃業する場合には、その負債をきちんと処理しないと廃業手続を終了することができませんので、破産手続や特別清算手続などの清算手続(負債整理手続)を実施することになります。負債をすべて支払ってなくすことができれば、円満な廃業(通常清算)となります。

 

そうすると、過大な負債があって、解消できないほど大幅な債務超過の場合には、事業の再生は不可能であり、破産等の清算手続しか選択の余地がないように思われるかもしれません。しかしながら、その事業に価値があり、一定条件下において事業継続が可能な状態であれば、例えば、負債を適正な状態まで債権カットしてもらったり、又は第三者に事業を譲渡することで、事業を存続させる方法を取ることができます。

 

2.再生と廃業の選択のポイント


窮境状況の会社の事業を再生させるか、それとも再生をあきらめて廃業するかの判断のポイントはどこにあるかといいますと、対象となる「事業」に価値があるか否か、また、一定の環境において事業継続することができるか否かという点になります。

 

例えば、窮境状況になく、営業利益を出すことができる事業であったとしても、経営環境の変化によって、5 年もすれば売上高が激減することが予想できるのであれば、早期に廃業することを選択することになります。したがって、事業に価値があるか否か、また、現時点では営業利益が出ていなくても、一定の条件が整う環境においては営業利益を出して事業継続が可能であるか否かが、大きな判断ポイントになります。

 

そして、窮境状況にある場合には、様々な問題を解決しながら事業再生を図ることになるため、経営陣において事業をなんとかして再生させるという強い意欲が必要となります。

 

3.再生の手法


窮境状況によって再生の手法が異なります。再生の手法としては以下のような手法があり、さらにこれらの手法を実施するために、法的再生手続や私的再生手続を利用することになります。

 

 

4.廃業の手法


窮境状況によって再生をあきらめ廃業とする場合や、窮境状況に至る前に廃業を行う場合として、以下の手法があります。