[解説ニュース]

地価動向の曲がり角:住宅譲渡損をカバーする特例について再確認

 

〈解説〉

税理士法人タクトコンサルティング(遠藤 純一)

 

 

[関連解説]

自宅家屋を取壊して敷地を譲渡した場合の譲渡所得の3,000万円控除の取扱い②

■住宅取得等資金の贈与の非課税制度 コロナ禍の影響で入居等が遅れた場合

 

1.はじめに


不動産価格が下落局面になると、活用が期待される住宅税制があります。
その税制とは、「居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除(措法41の5)(以下、この特例という。)」です。

 

この特例は、バブル崩壊以降、不動産の値下がりによって含み損を抱えたマイホーム所有者の「損切り」を推し進めることで、住宅買い換えの後押しを狙いとして登場しました。

 

制度の仕組みは、マイホームを売却して出た損失額がある場合、給与所得などと損益通算でき、損失額が給与所得などを上回り、その年の所得が赤字になった場合、赤字を翌年以降3年間繰り越すというものです。

 

主な適用の要件は、次の通りです。

1.売却する年の1月1日時点で住宅の保有期間が5年超

2.売却する年の前年1月から売却した年の翌年末までに新たな住宅に買い換えて居住すること

3.買換え先の住宅の床面積は50㎡以上

4.買い換えにあたっても償還期間10年以上ローンがあり、特例を適用する年の末日に残高があること

 

2.最新の基準地価動向は下落に転じる


昨年公表された7月1日時点の都道府県地価調査によると、三大都市圏では住宅地は平成25年以来7年ぶりに下落に転じたほか、地方圏では住宅地の平均変動率は▲0.9%と下落を継続し、下落幅が拡大(ただし地方圏のうち、地方四市(札幌市、仙台市、広島市、福岡市)の平均変動率は3.6%と8年連続の上昇)とシテイます。地価Lookレポートなどによると、最近の地価動向でも新型コロナウイルス感染症の影響もあってか、年率20%以上の下げを記録しており大阪市中央区道頓堀など路線価の減額補正を必要とする地域も出てきています。このため住宅価格そのものの動向への悪影響も少なからずあるのではないかと懸念が出てきました。3月24日には今年1月1日時点の公示地価が公表され、地価下落傾向が強まりを見せています。

 

3.最近の特例の適用動向


住宅買い換えの場合の譲渡損失の損益通算・繰越控除の特例の適用動向は、地価動向や住宅の価格動向の影響を比較的よく反映します。平成18事務年度までは年間2万件もの件数がありましたが、その後、減少を続け、平成22事務年度には1万件の大台を割り込んでいます。直近の動向は以下のとおりです(事務年度とは7月1日〜翌年6月30日までの1年間のことです)。

 

平成26事務年度     9,467件
平成27事務年度     8,701件
平成28事務年度     7,401件
平成29事務年度     6,367件
平成30事務年度     5,522件

 

住宅の損切りを必要とするケースが増える事態となれば、今後、同特例の適用件数は増加することが予想されます。

 

4.繰越控除の適用上の注意点等


住宅買い換えの場合の譲渡損失の損益通算・繰越控除の特例が適用できない場合は、特例の性格上、「損益通算・繰越控除ができない場合」と「繰越控除ができない場合」との2段構えになっています。
特に注意したいのは繰越控除が適用できない場合です。

 

ア.売却した住宅の敷地の面積が500㎡を超える場合、500㎡を超える部分に対応する譲渡損失の繰越控除はできません(措法41の5⑦三)。ただし譲渡した年は、500㎡を超える部分に係る譲渡損失の金額についても損益通算と対象とすることができます。

 

イ.繰越控除を適用する年の12月31日で買換え先の住宅に償還期間10年以上の住宅ローンがない場合も、損失の繰越控除はできません。なお、資金は「住宅の用に供する家屋の新築若しくは取得又は当該家屋の敷地の用に供される土地若しくは当該土地の上に存する権利の取得に要するもの」とされているため(措法41の5⑦四)、家屋か敷地どちらか一方が10年以上の償還期間を持つなら適用があるとされます。
ウ.合計所得金額が3,000万円を超える年分は、その年分で損失の繰越控除はできません(措法41の5④)。

 

 

このほか、注意すべき場合として、買換え先の住宅にいったん居住後、転勤等により翌年居住しなくなった場合がありますが、この場合は、住まなくなっても繰越控除はできることとされています。

 

 

 

 

税理士法人タクトコンサルティング 「TACTニュース」(2021/03/29)より転載

[M&A事業承継の専門家によるコラム]

第3回:事業承継における後継者の選定方法について

~親族承継、従業員承継、第三者承継(M&A)のメリット・デメリットと事前対策~

◆参考になる成功事例!取引先の社長へ株式譲渡し、従業員が社長になった事例◆

 

中小零細企業経営者や経営者をサポートする専門家の方が抱えるM&Aや事業承継に関するお悩みを、中小零細企業のM&A支援・事業計画支援を専門で行っている株式会社N総合会計コンサルティングの平野栄二氏にアドバイスいただきます。

 

〈解説〉

株式会社N総合会計コンサルティング

平野栄二

 

 

 

 

「私(K氏)は現在75歳です。ここ数年、検討することを躊躇していましたが、そろそろ後継者を選んで、甲社の経営の引き継ぎをしたいと考えています。しかし、娘はサラリーマンの男性(A氏)と結婚し、現在は専業主婦で経営に参画をしておらず、事業を引き継ぐ意思がありません。可能性があるとしたら、娘婿(A氏)が脱サラをして、後を引き継いでもらうということです。

 

また、従業員に、引き継ぐ人材がいるかというと、以前に、番頭格の幹部(B氏)に、お酒の席の雑談の中で、確認を行いましたが、B氏は「承継は荷が重く、妻も反対している」というという感想でした。

 

以上のような状況で、M&Aという選択肢も視野に入れて、後継者の検討をしていますが、①親族が承継する場合、②従業員が承継する場合、③第三者に承継(M&A)を行う場合、それぞれの留意点などを、お教えいただきますでしょうか。」

 

 

 

 

 

平野:それでは、順番にご回答いたします。

 

1.親族への承継(娘婿への承継)について


一般的に親族への承継は、他の方法と比べて、①社内・社外の関係者から心情的に受け入れられやすい、②後継者の早期決定により長期の準備期間の確保が可能である、③相続等により財産や株式を後継者に移転できるため所有と経営の一体的な承継が期待できる、といったメリットがあります。

 

しかし、甲社のケースで、嫁婿(A氏)に承継させる場合、①まったく異業種で甲社の実務経験と経営者としての経験がない、②A氏本人のやりたいという意思を確認していない、③直系血族ではなく、実務経験もないA氏が、従業員から直ぐに受け入れられるか、などの懸念があります。

 

まずは、娘様とA氏にしっかりとお話をして、意思を確認するとともに、A氏が甲社の経営者としての資質・能力があるのかを、K氏ご自身がしっかりと判断することが重要です。また、実務経験や経営者としての経験がないため、5年から10年の準備期間を設ける必要があります。そのため、75歳のK氏のご年齢を考えると、少なくとも80歳までは経営の指揮をとり、A氏を後継者として育成していく覚悟をしておかなければなりません。

 

 

 

2.従業員・役員への承継について


現在、従業員・役員への承継は増加傾向であり、①経営者としての能力のある人材を見極めてから承継することができる、②社内で長期間働いてきた従業員であれば経営方針等の一貫性を保ちやすい、③社内の信頼の厚い適任者に承継させることで社内外の関係者より受け入れてもらいやすい、といったメリットがあります。

 

ご質問の甲社の場合、従業員B氏は、承継には消極的な姿勢であったということが懸念されます。しかし、雑談の中で、お話をしただけでは、B氏の本意が分かりませんので、しっかりとした席を設け、意思確認を行う必要があります。

 

B氏は番頭格で、社内の信頼も厚いので、適任者と考えられますが、経営者の補佐役としての才覚が発揮できても、経営者としての資質がないケースもあります。無理をして、経営者になった場合、リーダーシップが発揮できなかったり、重責に耐えられず心身に支障が生じるケースも見受けられます。また、B氏の家族にも受け入れられないと、株式の買い取りや、個人保証の引き継ぎを家族に反対されると、本人に意思があっても、頓挫するケースもあります。

 

引き継ぐ場合は、現経営者が、全面的にサポートを行い、後継者教育を計画的に行っていきます。

 

 

 

3.第三者へのM&Aによる承継


親族・従業員以外の第三者へ承継を行う方法は、広く候補者を外部に求めることができ、また、現経営者は会社の株式を譲渡した利益を得ることができる等のメリットがあります。第三者への引継ぎを成功させるためには、本業の強化や、内部の諸問題を解決し、企業価値を十分に高めておく必要があります。そのためには、現経営者にはできるだけ早期に専門家に相談を行い、企業価値(株価)の向上(磨き上げ)に着手することが望まれます。

 

M&Aを行う場合は、①相応しい譲受企業の発掘とその企業との交渉、②企業評価の算定・譲渡価額の提案、③譲受企業へ承継のメリットの提案、④法務・労務・税務上の問題点の抽出と解決策の提案など、さまざまな専門的な知見が必要になります。そのため、目先の利益を追うのではなく、最適な選択ができるように助言が受けられる、信頼のおけるアドバイザーを確保する必要があります。

 

ご質問の甲社の場合、親族、従業員への承継という選択肢も残されていますので、それぞれの長所・短所を検討し、優先順位を決めて、行動を起こす必要があると考えます。慎重に検討しつつも、行動することで、躊躇しがちな決断を促すことに繋がります。

 

M&Aの場合、行動を起こしてから成約まで早くても半年、場合によっては2~3年かかるケースもあります。そのため、秘密が取引先や従業員に漏洩しないように注意しつつ、早期に相手先の探索に取り掛かる必要があります。そして、譲受企業の選定が見込まれそうな段階を見て、親族やB氏に、意思確認を行うなど、M&Aと他の選択肢を併行して、検討を進めていかれることを推奨いたします。また、現経営者(K氏)は、バトンタッチがされるまで、甲社を更なる魅力ある企業へ、磨き上げを行うことも頑張っていただきたいです。

 

 

 

 

◆参考になる成功事例!取引先の社長へ株式譲渡し、従業員が社長になった事例

①事業承継の決意し、専門家に相談

従業員5人の、食に関連する卸売業で創業40年の企業(甲社)です。後継者がいないままで、社長(K氏)が70歳になり、事業承継の着手をはじめられました。最初は、サラリーマンの息子に事業を引き継ぐ予定でいましたが、息子の妻の強い反対にあい断念し、第三者承継を目指すべく、M&Aのアドバイザーと相談しながら、後継候補先の探索を始めることになりました。

 

②取引先へ話を持ち込む

業界は、昔ながらのネットワークが存在し、まずは、取引先に継承をしてもらうことを考え、創業当時から懇意にしている取引先の社長(D氏)に相談をいたしました。話し合いの中で、「株式は、私が譲り受けるが、経営は今いる従業員に任せたい」という意向を持たれました。対象となる従業員(A氏)は、実務には精通していましたが、経営の経験どころか、管理職の経験もありませんでした。

 

③意欲のある従業員を社長に

A氏に、その話を打診したところ、突然の打診に驚きながらも、「せっかくの、職業人生、社長という仕事をやってみたい」と意欲をもたれました。幸い甲社の借入金は少額であり、A氏は、家族の賛成も得ることができました。話し合いの末、晴れて話がまとまり、D氏は、役員にはならず、従業員A氏が代表取締役社長に就任されました。他の従業員も、納得し、新たな体制がスタートしました。旧経営者のK氏は1年ほど会長という呼称で、引継ぎを行った後、引退をされました。

 

④身の丈にあった経営に

その後、A社長より先輩の社員が退職したり、新しい社員を採用しても育たず退職したりと問題は発生しましたが、株主であるD社長は、じっと甲社とA氏を見守り続け、「身の丈のあった規模で経営をすればよい」と、採算の合わない分野は撤退をするなど、規模を縮小しながらも、利益がでる体質へと企業再構築を図っていきました。5年経った現在は、高い経常利益率を維持しています。将来は、D氏の持つ株式を社長へ段階的に譲渡する運びで話が進んでいます。

 

 

 

 

 

 

 

〈事業承継が成功した要因を考えてみましょう〉

1.小規模事業者であったこと  


①変化に対応しやすい組織であったこと 

事業承継に成功した理由の一つとして、従業員が5人という小規模であったため、組織をまとめやすかったことがあります。また、株式の譲受者(D氏)にとっても株式価額が少額で、投資がしやすく、外部の借入金も少額であったため、万一の場合でも、本業が受けるダメージも少ないことも後押ししたことになったと思われます。よく、「うちは小規模事業だから、M&Aはできない」と思っておられる経営者の声を聴きますが、小規模事業者だからこそ、M&Aが成立する場合もありますので、決して諦めないことが重要です。

 

②身の丈にあった組織に再構築したこと

会社の規模を拡大することだけが、成長戦略ではないと考えます。甲社の場合、不採算の事業から撤退することで、A氏が経営者として身の丈にあったマネジメントができる体制に再構築したことも、承継が成功した要因であると考えられます。

 

 

2.従業員が、勤勉で、後継する強い意欲があったこと   


①後継者がポジティブであったこと

A氏は、代表になることに前向きな姿勢を崩さなかったことも、大きな成功要因です。 高い実務能力があっても、引き継ぐ意欲が低いと、当事者意識の欠如により、組織内で紛争が起きることがあります。また、意欲があっても、責任感が強すぎると、重荷となって、意思決定が遅れて経営判断を誤ったり、精神的に疲弊してしまう後継者も多く見受けられます。そのため、前向きな姿勢で経営に邁進されたことは、経営者の資質があったといえます。従業員承継を検討する場合は、後継者の「意欲と覚悟」の有無は、仕事の能力以上に、重要な成功要因であると言えます。

 

②後継者が勤勉であったこと

A氏は勤勉で、実務能力に長けており、通常業務は滞りなく任せられたため、先代社長K氏が引退後も、強力なマネジメントの必要性がなかったことも成功要因だと考えられます。 承継後は、毎月の業績報告をD氏に行い、都度重要な意思決定は相談を行うなど、コミュニケーションを円滑にとることができたことも、株主との信頼関係を維持し、事業が継続できた要因です。

 

 

3.取引先社長(D氏)との長年の信頼関係があったこと  


①業界のことを良く知り、専門家と相談しながら戦略的に進めたこと

業界の結束が固く、他の異業種からM&Aによって参入されることは取引先(D氏)にとっても脅威であったため、D氏自らが株主になることで、サプライチェーン(商品の供給連鎖)の強化をはかり、参入障壁を高める戦略的な意図もありました。

 

譲渡者がM&Aを検討する場合、業界の慣習や動向、顧客の動向をよく分析を行うことで、最適な譲受先に、最適な提案が可能であるので、M&A専門家と相談するなどしてじっくり検討を行う事が重要です。このケースの場合、異業種の候補先に話を持ち込んでいたら、承継後、問題が生じていたかもしれません。

 

②利害関係者との良好な人間関係を構築していたこと

K氏とD氏は、創業当時から苦楽を共にした仲で、同志的な信頼関係が構築できていました。事業承継の成功要因で、「良好な人間関係」は大切な要素になります。得意先、仕入先、取引業者、従業員、同業者、家族、株主など、普段からなるべく良好な人間関係を構築していると、思わぬ協力をいただける可能性もあり、事業承継がスムーズに運ぶことができます。

 

現在、関係性が悪い場合があっても、会社の存続のために、今からでも遅くはありませんので、関係の修復をはかる努力することが重要だと考えます。

 

 

[事業再生・企業再生の基本ポイント]

第2回:法的整理と私的整理の比較

~法的整理のメリット、私的整理のメリット、法的整理と私的整理の選択視点~

 

〈解説〉

公認会計士・中小企業診断士  氏家洋輔

 

▷関連記事:民事再生と会社更生の比較

▷関連記事:事業再生の概要を教えてください

▷関連記事:事業再生業務の全体像を教えてください

 

 

法的整理とは、債権者または債務者が裁判所に対して、一定の法的手続きを申請し、裁判所の関与・監督の下、法律に則って債務者の再建、または清算手続きが進められます。

 

一方で私的整理とは、法的整理によらず、債権者と債務者との協議により倒産処理を図る手続きです。法的整理、私的整理ともに清算型と再建型がありますが、ここでは再建型について記述します。

 

法的整理のメリットは、以下の通りです。

①裁判所の関与の下で法的手順に従って進められるため、柔軟性に欠けるものの、債権者の利益を公平に調整でき、債務者の詐害行為を防止することができます。

 

②法的整理は、再生案や更生案が裁判所に認可されると、その内容が全債権者に及ぶため次の場合に適しています。

Ⓐ利害関係が複雑で債権者の協力を得られない場合

Ⓑ公的な融資等特殊な債権者が存在する場合

Ⓒ債権者が多く、個別の交渉を行うことが時間・コストの制約上困難である場合

 

③法的整理において、債権者が再建放棄を行う場合、「貸倒損失」として処理されます。

 

 

私的整理のメリットは以下の通りです

①法的整理と比較して、弁護士費用などの直接倒産費用および法的整理の長引きによる資産劣化などの間接倒産費用を回避できる可能性が高いです。

 

②私的整理では、法的整理のように広告により倒産状態であることが周知されません。よって、私的整理案に対して銀行債権者全員の合意が可能であれば、一般事業債権者からの信用低下を防ぐことが可能です。

 

③私的整理は債権者ごとに柔軟に弁済条件を設定でき、メイン銀行などの主要債権者のみに金融支援要請をすることができます。

 

 

法的整理と私的整理の選択視点

法的整理に比べ私的整理の方が迅速に進められることや債権者の回収額が多くなる場合が多いため、まずは私的整理の可能性を検討することが一般的です。法的整理と私的整理のどちらを選ぶかの検討ポイントとしては、債権者の数、大口債権者や特殊な債権者の状況、時間的猶予、経営陣の処遇などがあります。

 

一般的には、規模が大きく、多数の債権者を抱えている場合や、権利関係等複雑に絡み合っている場合には私的整理で決着させることが難しく法的整理を選ぶことが多くなります。

 

事業再生のスキームの選択は専門性が高いため、経験豊富な事業再生の専門家と協議する必要があります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

[税理士のための税務事例解説]

事業承継やM&Aに関する税務事例について、国税OB税理士が解説する事例研究シリーズです。

今回は、「法人が解散・残余財産が確定した場合の事業年度」についてです。

 

[関連解説]

■【Q&A】解散による残余財産の分配に係るみなし配当の計算

■【Q&A】解散に際して支払われる役員退職金の課税関係

 

 

 


[質問]

〇当社は、11月末日決算法人(事業年度令和元年12月1日~令和2年11月30日)です。今般諸事情により、下記の予定にて解散・清算の予定です。
・解散予定日 令和2年9月30日

 

〇下記内容にて申告を考えています。
・解散申告…令和元年12月1日~令和2年9月30日…申告期限 令和2年11月30日
・みなし清算事業年度…令和2年10月1日~令和3年9月30日…申告期限 令和3年11月30日

 

〇みなし事業年度ですが、財産の整理が令和3年1月31日までには完了する予定です。
・したがって、上記みなし事業年度にかかわらず…令和2年10月1日~令和3年1月31日の事業年度として法人税等の申告を考えています。

 

〇残余財産確定申告書についても、残余財産の整理が令和3年2月28日には完了の予定です。
・残余財産確定申告書は、令和3年2月1日~2月28日の期間で法人税等の申告を考えています。

 

上記の事業年度で法人税等の申告をした場合には、税法上何か問題は発生しますか。

 

 

[回答]

1 事業年度
 (1) 事業年度の意義
この法律において「事業年度」とは、法人の財産及び損益の計算の単位となる期間(会計期間)で、法令で定めるもの又は法人の定款、寄附行為、規則、規約その他これらに準ずるもの(定款等)に定めるものをいい、法令又は定款等に会計期間の定めがない場合には、次項の規定により納税地の所轄税務署長に届け出た会計期間又は第3項の規定により納税地の所轄税務署長が指定した会計期間若しくは第4項に規定する期間をいう。ただし、これらの期間が1年を超える場合は、当該期間をその開始の日以後1年ごとに区分した各期間(最後に1年未満の期間を生じたときは、その1年未満の期間)をいう(法人税法13①)。

 

 (2) みなし事業年度(抜粋)
次の各号に規定する法人(…(省略)…)が当該各号に掲げる場合に該当することとなったときは、前条第1項の規定にかかわらず、当該各号に定める期間をそれぞれ当該法人の事業年度とみなす(法人税法14)。
一 内国法人(連結子法人を除く。)が事業年度の中途において解散(合併による解散を除く。)をした場合
その事業年度開始の日から解散の日までの期間及び解散の日の翌日からその事業年度終了の日までの期間
ニ~二十 (省略)
二十一 清算中の法人の残余財産が事業年度の中途において確定した場合(第十号に掲げる場合を除く。)
その事業年度開始の日から残余財産の確定の日までの期間
二十二~二十五 (省略)

 

(3) 解散、継続又は合併の日
法人税法第14条第1項第1号及び第12号《みなし事業年度》の「解散の日」又は第22号の「継続の日」とは、株主総会その他これに準ずる総会等において解散又は継続の日を定めたときはその定めた日、解散又は継続の日を定めなかったときは解散又は継続の決議の日、解散事由の発生により解散した場合には当該事由発生の日をいう。また、同項第2号、第10号及び第13号の「合併の日」とは、合併の効力を生ずる日(新設合併の場合は、新設合併設立法人の設立登記の日)をいう(法人税基本通達1-2-4)。

 

 

2 会社法
 (1) 清算の開始原因
株式会社は、次に掲げる場合には、この章の定めるところにより、清算をしなければならない(会社法475)。
一 解散した場合(第471条第4号に掲げる事由によって解散した場合及び破産手続開始の決定により解散した場合であって当該破産手続が終了していない場合を除く。)
二 設立の無効の訴えに係る請求を認容する判決が確定した場合
三 株式移転の無効の訴えに係る請求を認容する判決が確定した場合

 

(2) 貸借対照表等の作成及び保存
清算株式会社は、法務省令で定めるところにより、各清算事務年度(第475条各号に掲げる場合に該当することとなった日の翌日又はその後毎年その日に応当する日(応当する日がない場合にあっては、その前日)から始まる各1年の期間をいう。)に係る貸借対照表及び事務報告並びにこれらの附属明細書を作成しなければならない(会社法475)。

 

 (3) 株式会社等が解散等をした場合における清算中の事業年度
株式会社…(中略)…が解散等(会社法第475条各号…(中略)…《清算の開始原因》に掲げる場合をいう。)をした場合における清算中の事業年度は、当該株式会社等が定款で定めた事業年度にかかわらず、会社法第494条第1項…(中略)…《貸借対照表等の作成及び保存》に規定する清算事務年度になるのであるから留意する(法人税基本通達1‐2‐9)。

 

 

3 お尋ねについて
会社法の施行日(平成18年5月1日)以後に解散等した株式会社については、清算中の事業年度は、当該株式会社が定款で定めた事業年度にかかわらず、会社法第494条第1項《貸借対照表等の作成及び保存》に規定する清算事務年度になるとされています。

 

すなわち、法人が事業年度の中途において解散(合併による解散を除く。)をした場合には、まず、法人が定款等で定めた事業年度開始の日から解散の日までの期間についてみなし事業年度が生じ、次に、解散の日の翌日から会社法上の清算事務年度終了の日までの期間についてみなし事業年度が生じることとなります。

 

また、清算中の法人は、最終的に残余財産を分配して清算事務を終了し、清算結了することになりますが、その法人の残余財産が事業年度の途中で確定した場合には、その事業年度開始の日から残余財産確定の日までの期間を清算最終事業年度としてみなし事業年度を設けることとなります。ここでいう「残余財産確定の日」とは、特段明文化されていませんが、残余財産は、全ての資産を換価し債務を弁済することによって確定するため、実務上は、これらの全てが完了した日を「残余財産確定の日」とすることとなり、清算人が状況に応じて判断して定めることになると考えられています。

 

お尋ねによれば「11月決算法人が、令和2年9月30日に解散し、…」とのことですが、お尋ねの文中の「財産の整理が令和3年1月31日までに完了」と「財産の整理が令和3年2月28日までに完了」の使い分けが分かりませんので、便宜、「お尋ねの法人が株式会社であり、残余財産確定の日が令和3年2月28日である」と仮定した場合には、事業年度は次のようになるものと思われます。

 

(1) 解散の日が令和2年9月30日
イ 平成元年12月1日から令和2年9月30日まで(通常の事業年度)
ロ 令和2年10月1日から令和3年9月30日まで(清算中の事業年度)
(2) 残余財産確定の日が令和3年2月28日
上記(1)ロの事業年度の途中で残余財産が確定しますので、令和2年10月1日から令和3年2月28日までのみなし事業年度(清算最終事業年度)が生ずることになります。

 

 

 

 

税理士懇話会事例データベースより

(2020年10月5日回答)

 

 

 

 

[ご注意]

掲載情報は、解説作成時点の情報です。また、例示された質問のみを前提とした解説となります。類似する全ての事案に当てはまるものではございません。個々の事案につきましては、ご自身の判断と責任のもとで適法性・有用性を考慮してご利用いただくようお願い申し上げます。

 

 

 

 


 

 

 

[解説ニュース]

自宅家屋を取壊して敷地を譲渡した場合の譲渡所得の3,000万円控除の取扱い②

 

〈解説〉

税理士法人タクトコンサルティング(山崎 信義/税理士)

 

 

[関連解説]

■自宅家屋を取壊して敷地を譲渡した場合の譲渡所得の3,000万円控除の取扱い①

■譲渡所得の計算上、概算取得費を適用すべき場合、取得費を推定できる場合

 

1.自宅の敷地のみを譲渡した場合に3,000万円控除の適用が受けられる場合


前回の解説では、個人が自宅の敷地のみを譲渡した場合であっても、譲渡所得の3,000万円控除の適用が認められる場合について解説をしました。

 

前回の解説内容は、以下のとおりです。

 

自宅敷地に対する3,000万円控除の適用は、災害により自宅家屋が滅失した場合を除き、原則として、自宅家屋とその敷地を一体で譲渡する場合に認められます。ただし、租税特別措置法通達(措通)35-2では、所有者が居住の用に供している家屋(または居住の用に供されなくなった家屋)を取壊し、その敷地の用に供されていた土地等を譲渡した場合において、その土地等の譲渡が以下に掲げる要件のすべてを満たしているときは、居住用財産の譲渡に該当するものとして3,000万円控除の適用を認めています。

 

(1)その土地等の譲渡契約が、その家屋を取壊した日から1年以内に締結され、かつ、その家屋を居住用に使用しなくなった日以後3年を経過する日の属する年の12月31日までに譲渡したものであること。
(2)その家屋の取壊し後、譲渡契約の締結日まで貸付けその他に使用していない土地等の譲渡であること。

 

2.敷地の譲渡契約を締結後に家屋を取壊した場合の3,000万円控除の適用(私見)


措通35-2の(1)の要件は、土地上の家屋を取壊し、その後に土地の譲渡契約を締結する前提で定められています。では、先に家屋の取壊しての引渡しを定める土地の譲渡契約を締結し、その後、その土地上の家屋を取壊して土地の譲渡をした場合、その土地の譲渡が居住用財産の譲渡に該当するものとして、3,000万円控除の適用が認められるのでしょうか。この疑問について、筆者の私見を以下のとおり述べます。

 

措通35-2の(1)は「その土地等の譲渡契約が、その家屋を取壊した日から1年以内に締結され」と規定されているので、家屋の取壊し日よりも前に土地の譲渡契約を締結した場合、形式的には要件を満たさないことになります。ただし、租税特別措置法通達逐条解説(譲渡所得関係)によれば、措通35-2が発遣された趣旨は、「買主から家屋を除去したうえで土地のみ売ってほしいという条件が付いたため、家屋を取壊して土地だけを譲渡した場合に、3000万円控除が受けられないことになると、不動産取引の実態にそわない結果となる」を認め、そのようなケースに適用を認めないことが法令の趣旨から外れた結果となると考え、そのような事態を回避することにあります。この趣旨からすれば、「不動産取引の実態」においてありうる土地の譲渡で、措通35-2(1)と(2)の要件と同レベルの内容を有するものについても、3,000万円控除の適用対象となる居住用財産の譲渡に該当すると思われます。

 

措通35-2の要件のうち(1)は、家屋の取壊しが先行し、その後に土地の譲渡契約が行われるという前提に基づいていますが、買主と売主の力関係等の個別事情により、先に土地の譲渡契約を締結し、その後に土地上の家屋を取壊すことも不動産取引ではありうることです。家屋の取壊しと譲渡契約の順序が通達の前提とは逆になった場合でも、それが「不動産取引の実態」の一つであり、譲渡時に居住用財産(であった)という属性が保たれていれば、措通35-2と同様の取扱いが認められるべきです。

 

したがって、先に土地の譲渡契約を締結し、その後、その土地上の家屋を取壊した場合でも、その取引が措通35-2(1)と(2)の要件と遜色ない内容となっているときは、その通達の要件を満たす土地の譲渡と同様に、3,000万円控除の適用が認められると考えます。

 

たとえば、土地の譲渡契約後にその譲渡契約の条件としてうたわれているべき合理的な期間内(措通35-2(1)とのバランスから最長1年が妥当でしょう。)に家屋が取壊され、かつ、措通35-2(1)の後半で規定する「その家屋をその居住用に使用しなくなった日以後3年を経過する日の属する年の 12月31日までに」土地の譲渡(引渡し)が行われた場合で、その譲渡した土地が譲渡契約の締結後、家屋の取壊しを経て引渡しまでの間に、貸付けその他の用に供していないものであるときは、その土地の譲渡について3,000万円控除の適用が認められるものと考えます。

 

 

 

税理士法人タクトコンサルティング 「TACTニュース」(2021/3/8)より転載

[マッチングサイトを活用したスモールM&A]

~年商1,000万円から2億円までのM&Aの現場から~

第3回:「マッチングサイトを使ったスモールM&A」で、選ばれる買い手になるために

 

〈解説〉

税理士 今村仁

 

 

 

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(1)ユーザーの9割は買い手という現実

前回の解説にてスモール企業(中小零細企業)の売り手目線の選択肢として、「廃業」ではなく「ネットを使った第三者承継、(M&A)」を、弊社がサポートした実例を踏まえて説明をしましたが、いかがだったでしょうか。

 

前回の末尾に、サラリーマンを含めて買い手が多数いることについても少し触れました。 M&Aマッチングサイトをスマホやパソコンで見てみると、トップページにユーザー数が表示さています。そのマッチングサイトを使っているユーザーの数のことですが、一般的には約9割が買い手といわれています。つまり、10人いれば、1人が売り手で9人が買い手という感じです。

 

多数の買い手がマッチングサイトには存在しているのですが、それら買い手の成り立ちや業種業態、規模感などは多種多様です。一般的によくあるのは、今までM&Aを検討したことはあるのだけれど、売買価格や専門家費用が高く、なかなか実現できなかったようないわゆる中小零細企業の方々です。売上規模でいうと、3億円未満でしょうか。

 

他にも、過去に数億円ほどのM&Aを実現したことがあるような売上規模でいうと30億円未満の中小企業も多数います。中には、上場企業が買いくるケースもあり、弊社でもM&Aの成約実績があります。

 

一方で、自身もスモール企業といえるような売上2億円未満の企業も、売上拡大や昨今のコロナ禍でのリスクヘッジを買収理由として、マッチングサイトでのM&Aに積極的です。

 

さらには、冒頭申し上げたサラリーマンの方がいずれの起業や副業目的で、主婦の方やリタイヤメント世代が第二の人生に向かう1つの手段として、M&Aマッチングサイトに買い手候補として個人登録をしています。

 

また、買い手の業種業態や本社等のエリアは、マッチングサイトという性格も相まって、あまり偏りがなくあらゆる業種業態やエリアの方々がいます。

 

マッチングサイトを活用したM&Aの最前線でアドバイザーとして仕事をしていて、最近強く感じるのは、中国などのアジアを中心とした買い手企業が多数出てきていることです。マッチングサイトは日本語オンリーであることが多いので、日本語がある程度できるということ(また、形式上は日本企業ということでもあります)ですが、日本のスモール企業の魅力は日本人以上に外国の方々の方が強く感じているのかもしれません。

 

一方で、本連載の第1回で、「事業者数381万者のうち、3者に1者に当たる127万者が経営者70歳以上かつ後継者不在で廃業の危機にある」と説明しました。これら127万者の廃業が日本経済に与えるインパクトは、「650万人の雇用喪失、22兆円のGDP喪失」です。そのため、国は2019年12月20日に「第三者承継支援総合パッケージ」を、2020年3月31日に「中小M&Aガイドライン」をそれぞれ公表しました。これら政府資料では、127万者のうち黒字廃業率49.1%をかけた60万者を、今後10年間でM&Aを実現していく、との目標を掲げています。つまり、今後は圧倒的な売り案件がマッチングサイトに出てくるはずです。しかし、現状ではまだまだ、売り手の社長自身が自分の会社が第三者に売れるとは考えていないことなどもあり、圧倒的に買い手の方がマッチングサイトのユーザーとなっています。この部分については次回に説明したいと考えていますが、全国の会計事務所が立ち上がって、今まで救えなかった廃業間近の顧問先への情報提供や、M&Aマッチングサイトを利用するお手伝いをして欲しいと、強く思っています。

 

 

(2)ほとんどの買い手がハマる「落とし穴」

マッチングサイトに登録している買い手候補は、こういった買い手9割という実情をあまり知らないようです。場合によっては、「買い手がお金を出すのだから」と上から目線で交渉に臨んでいるケースもあります。

 

M&Aマッチングサイトに買い手が初めて登録して、この案件に少し興味あるなと思って、質問をしたり、前回、説明した実名開示依頼をしたりした時に、ほとんどの方がハマる「落とし穴」があります。

 

それは、メッセージを送ったのに、「何も返信がない」または「返信はあるが素っ気ない」ということです。このコラムをお読みの方でも、ご経験あるのではないでしょうか。

 

理由は明確です。現在のM&Aマッチングサイトでは、圧倒的な買い手過多なのです。また、人気案件は誰が見ても興味を引くものですから、1つの売り案件に、10件、20件買い手候補が現れることも珍しくありません。弊社も売り手アドバイザーをしていて、多数の買い手候補が現れているときに、「スマホからメール文言のチェックもせずに片手でよこしてきたな、しかもこの時間であれば飲み屋からか?」とわかるようなメールには、なかなか時間をかけて返信することはできません。

 

ネットの世界というのは、これはM&Aに限らずですが、リアルに会っているわけではありませんから相手の顔色など全く不明で、基本的にネット情報やメール文章のみで、判断をすることになります。過去にM&Aを多数実行してきた名の知れた大企業が買い手であっても、そこは同じです。実際に、弊社で過去成約した事例を振り返ると、規模も大きく知名度のある買い手候補が必ずしも、優良な売り案件の成約を実現できておらず、意外な伏兵ともいえるような小企業や時には個人が数多ある買い手候補をねじ落とし、売り手の心を射止めています。

 

 

(3)選ばれる買い手になるためには

先ほど「相手の顔色など全く不明で」と書きましたが、実は、文章というのは、思いっきり顔色が出ます。これを知っているかどうかは、M&Aマッチングサイトで選ばれる買い手になるためには重要です。

 

メールのやりとりを続けていくと、相手がどんな状況でこのメールを書いているのかまでわかりますし、もちろんどれくらいの熱意で書いているのかもわかります。残念なのは、本当はすごく熱意もあるし、もちろんそのための準備としての資金なども潤沢にあるにも関わらず、最初の売り手やそのアドバイザーとのやり取りを、疎かにされてしまうケースです(メール含めたネット音痴の方も含みます)。最初のメールで、「挨拶や買い手自身のことを何も書かずに、一方的な買手目線で、質問のみする」というのでは、十中八九上手くいかないでしょう。どんな交渉事でもそうだと思いますが、相手つまり売り手の立場に立って、常に発言をされることが大事です。この辺り、不得意と言うことであれば、少し費用は発生しますが、こういったM&Aマッチングサイトの交渉に長けたアドバイザーを、最初から付けられることをお勧めします。せっかくの貴重な売り案件を逃すことになりますから。

 

選ばれる買い手になるためには、「常に売り手の立場に立つ」ということは重要ですが、他にも、「売り手の条件を満たしている」ことをきちんと説明することも必要です。ケースによっては許認可や業種などが条件になっていることもありますが、多くの売り案件に共通する条件は、「価格」です。その価格を買い手はきちんと用意できるのかです。

 

つまり、選ばれる買い手になるためには、買収価格を例えば自己資金で用意しているとか、既に銀行に話をしていて内諾を得ているなどであれば、かなりのアピールになるでしょう。当然ですが、買収価格はその後に交渉していく前提で決して売り手が最初に提示した価格で購入するということではありませんが、とにかく最初は多数の買い手候補から売り手やそのアドバイザーに選んでもらわないと交渉のステージにすら進めないわけですから、資金手当ての話は重要なこととなります。

 

 

 

 

 

 

 

[業界別・業種別 M&Aのポイント]

第10回:「アパレル小売業のM&Aの特徴や留意点」とは?

~ブランド・店舗ごとの損益管理は?商品仕入れは?会計処理は?在庫状況・利益率は?~

 

〈解説〉

公認会計士・中小企業診断士  氏家洋輔

 

 

▷関連記事:「小売業のM&Aの特徴や留意点」とは?

▷関連記事:「製造業のM&Aの特徴や留意点」とは?

▷関連記事:「医療業界のM&Aの特徴や留意点」とは?

 

Q、アパレル小売業のM&Aを検討していますが、アパレル小売業M&A特徴や留意点はありますか?


 

アパレル小売業の多くは、店舗での販売とECでの販売を併用しています。また、1ブランドのみを運営している企業もありますが、ある程度の規模になると複数のブランドを運営している企業が多くなってきます。複数の店舗や複数のブランドを運営している場合に、重要となってくるのがブランドごとの損益、店舗ごとの損益管理ができているかです。ブランドごとや店舗ごとに損益管理をすることで、実状の正確な把握と今後の適切な打ち手の検討が可能となるからです。M&Aを検討する場合でも、ブランド別や店舗別の損益状況は非常に重要な損益指標となります。

 

ブランド別や店舗別の損益以外に、KPIとしてされる基本的な指標として、客数・客単価が挙げられます。売上高を購入客数、客単価に分解をして分析を行います。入店客数の把握が可能な場合には、購入率(購入客数/入店客数)もKPIとして設定しましょう。買上点数を把握して、客単価を買上点数×平均商品単価に分解することも可能となります。どのようにKPIを設定するかは企業ごとの判断になりますが、一般的にはこれらの指標は重要であるため、分析している企業も多いです。

 

また、アパレル業界の特徴として、小売価格を上代(じょうだい)、卸売価格を下代(げだい)と呼ぶので、覚えておきましょう。また、アパレル業界だけではないですが、商品仕入に関して、買取仕入、委託仕入、消化仕入の3つの取引方法があります。

 

 

①買取仕入は、仕入れ先から商品を買取る仕入れ方法です。買取るわけですから、売れなかったとしても返品することは出来ません。つまり在庫リスクがあるため、商品の仕入れ内容や数の精度が重要となります。

 

②委託仕入は、仕入先と販売委託契約を結び、店舗に商品を置き、商品が売れた場合に商品代金ではなく「販売手数料」をもらう方式の仕入方法です。在庫リスクがないことがメリットとなります。

 

③消化仕入は、商品が売れるまでは仕入先の資産となり、商品が売れた場合に、仕入と売上を計上します。委託仕入と同様に在庫リスクがないことがメリットとなります。

 

 

委託仕入や消化仕入は在庫リスクがないことがメリットですが、1商品あたりの利益率は買取仕入よりも低くなります。それぞれの仕入方法を理解した上で、在庫の状況や商品の利益率を正確に把握しましょう。

 

アパレル業界では一般的に夏と冬の売上・利益が大きくなり、中でも冬の売上・利益の金額が最も大きくなります。これは、夏と冬にバーゲン等が行われること、冬物はコート等を取り扱うことから商品単価が大きくなることためです。夏は暑く、冬は寒い方が売上は大きくなる傾向にあり、バーゲン期間中や売上が大きくなる土日の天気によっても売上は変動します。自社の努力以外の天候の要素等で売上高が変動してしまうというところもアパレル業界の特徴となります。

 

商品の売上の状況により在庫も増減しますが、アパレル企業の在庫は鮮度が重要であることが多く、1シーズン売れ残ってしまうと価値が一気に下落します。そのため、在庫の状況の把握は非常に重要です。滞留在庫の会計処理や、値引き販売時の会計処理、在庫処分時の会計処理は企業により様々であるため、M&Aを検討している場合は、対象の企業がどのような会計処理を選択しているのかを把握して、実態を掴む必要があります。

 

小売業の場合は、バイヤーは非常に重要な役割を持っており、アパレル企業におけるバイヤーも例外ではなく、むしろ一般的な小売業よりも重要度は高いかもしれません。ある程度の規模のブランドになるとカリスマ性のあるバイヤーが存在することが多く、M&Aを検討する場合にはキーマンとなります。

 

アパレル小売業では、ブランド別や店舗別、商品別等の売上・損益、KPI指標等基本的な項目を把握しましょう。さらに、アパレル小売業特有の季節性や仕入方式および会計処理を理解した上で実態を掴み、M&Aを成功に導きましょう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

[解説ニュース]

外国人が母国から送金を受けた場合の贈与税課税

 

〈解説〉

税理士法人タクトコンサルティング(中山 史子/税理士)

[関連解説]

■不動産取得税の「相続による取得」を巡る最近のトラブル

■相続人が米国の連邦所得税上の居住者である場合の手続、報告義務等

 

 

【質問】

技能実習生として日本に居住する外国人が、母国に住む親から贈与により、親の外国の預金口座から、自分の日本の預金口座へ1,000万円の送金を受けました。贈与者(親)と受贈者(技能実習生である子)は、ともに日本国籍を有さず、日本での居住期間は、受贈者は10年以内、贈与者はゼロ(居住歴なし)です。従って、この送金を受けた金銭が国内財産に該当しなければ、日本の贈与税は課税されないことになります。この場合、この送金を受けた金銭は国内財産と国外財産のどちらに該当するのでしょうか?

 

 

【回答】

この送金を受けた金銭は国外財産に当たり、日本の贈与税は課税されないと考えられます。

 

課税財産の範囲


贈与税の課税財産の範囲は、贈与者と受贈者を、日本国内における住所(=生活の本拠地)の有無や国籍により区分し、その区分の組み合わせにより受贈者ごとに決定されます(下表)(相続税法1条の4、2条の2)。「一時居住者」とは、贈与の時において在留資格(出入国管理及び難民認定法別表第1の在留資格)を有する人で、その贈与前15年以内に日本国内に住所を有していた期間の合計が10年以下である人をいいます。

 

質問の場合は、受贈者は別表第1「技能実習」の資格を有し、日本での居住期間は10年以内ですので「一時居住者」に該当します。一方、贈与者は日本の居住期間はゼロですから「10年以内に国内に住所なし」に該当し、受贈者の課税財産の範囲は国内財産に限定されます(下表)。よって、この送金が国外財産に該当する場合には、日本の贈与税は課税されません。

 

贈与財産は何か?財産の所在は?


質問のケースは、まず金銭(現金)の贈与契約があり、その後に送金手続きが取られたと考えることが自然です。

 

よって、贈与財産である金銭の所在が国内なのか国外なのかにより贈与税の課税の有無が決定されます。相続税法10条は、財産の所在する場所について規定しており、動産(金銭)については”その動産の所在する場所”とし、その判定は”財産を贈与により取得した時の現況”によるとしています。

 

財産を贈与により取得した時はいつか?

 

民法第549条では「贈与は当事者の一方がある財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾をすることによって、その効力を生ずる。」とし、第550条では、「書面によらない贈与は、各当事者が解除をすることができる。ただし、履行の終わった部分については、この限りでない。」としています。これら民法を受けて、相続税基本通達1の3・1の4共-8では、贈与による財産の取得の時期について「書面によるものについてはその契約の効力の発生した時、書面によらないものについてはその履行の時」としています。

 

履行の時とは


「履行の時」とは、「贈与者の送金の手続き完了時(=外国)」なのか、「受贈者の預金口座への入金された時(=日本)」なのかという疑問が生じます。本質問と逆のケースですが、高裁の事案(平成14年9月18日判決)では、日本に居住する親が日本の預金口座から、国外に居住する子の外国の預金口座への送金について、贈与財産が国内財産か国外財産なのかについて争われましたが、裁判所はその判断の中で、”履行の時とは贈与者が送金の手続きを完了した時”という見解を示しました。

 

質問への当てはめ


質問の場合では、書面による契約があれば贈与契約時(=送金の前)、書面がないときは履行時(=親の送金手続き完了時)となり、いずれの時も金銭の所在は国外となり、日本の贈与税は課税対象外となります。

 

 

 

 

 

税理士法人タクトコンサルティング 「TACTニュース」(2021/02/22)より転載

[税理士のための税務事例解説]

事業承継やM&Aに関する税務事例について、国税OB税理士が解説する事例研究シリーズです。

今回は、「事業譲渡に当たっての適正価額について」についてです。

 

[関連解説]

■【Q&A】事業を譲り受けた場合に営業権の計上について

■【Q&A】事業譲渡により移転を受けた資産等に係る調整勘定

 

 

 


[質問]

A社は事業縮小を図っており、物品販売の事業をB社に譲渡しようと考えています。譲渡にあたり、在庫を簿価でB社に売却する以外の金銭の授受は生じません。

 

1. 在庫の譲渡について利益を乗ぜず簿価で行いますが、損失が生じるわけではなく、両者の同意のもとで行われる取引であり問題がないと考えます。

2. 事業を引き継いでもらうことから、顧客データ等については無償で譲り渡すつもりです。金額の算定が難しく、有償では引き継いでもらえないことから無償譲渡で問題がないと考えます。

 

B社はA社の100%子会社ではありません。A社とB社の資本関係に影響されないと考えますがいかがでしょうか。

 

 

[回答]

法人税法上、資産の販売等に係る収益の額は、資産の販売等により受け取る対価ではなく、販売等をした資産の価額をもって認識すべきであるとされています(法22②④、22の2④)。そして、この「価額」、すなわち時価とは、一般的には第三者間で取引されたとした場合に通常付される価額のことをいいます。したがって、資産の低廉譲渡又は無償譲渡のように、時価と異なる価額を対価の額とする取引が行われた場合には「価額」に修正して益金の額を計算する必要があることとなります。具体的には、売手側には、寄附金課税等の問題が生じます。このことは、単体で商品等を販売することはもとより、事業譲渡のような形態であっても同様です。

 

ご質問についてですが、在庫を簿価で譲渡する場合や顧客データ等を無償で譲渡する場合でもそれが第三者で行われた事業譲渡であれば、利害が相反する当事者、すなわち売手(A社)と買手(B社)との交渉の結果合意された値段であると考えられますので、適正な価額で譲渡されたということについて特段問題は生じないと考えられます。

 

ご質問にある「B社はA社の100%子会社ではありません。A社とB社の資本関係に影響はされないと考えます」という趣旨が必ずしも判然としませんが、仮に、A社がB社の株式の70%を所有していたとすると、A社とB社とは親子関係となり価額決定に恣意性が入る余地が生じてしまいます。両社の同意のもと価額決定がされたとしても、そのことをもって恣意性が排除されているとは言い切れないと考えます。結果として時価譲渡に問題なしということになるかもしれませんが、適正な価額での取引であることを裏付けるためにも、例えば次のような点を検討しておく必要があるものと思われます。

 

① A社の事業縮小以外になぜ在庫品を簿価で譲渡しなければならなかったのか。在庫品を簿価で譲渡することで両社が合意するに至った経緯は何か。

② 一般的に、顧客データ等は、信用、ノウハウ、技術力等と同様に営業権(のれん)の構成要素となり得ると考えられますが、金額の算定の困難性以外になぜ有償では引き継いでもらえないのか。
など。

 

 

 

 

 

税理士懇話会事例データベースより

(2020年10月26日回答)

 

 

 

 

[ご注意]

掲載情報は、解説作成時点の情報です。また、例示された質問のみを前提とした解説となります。類似する全ての事案に当てはまるものではございません。個々の事案につきましては、ご自身の判断と責任のもとで適法性・有用性を考慮してご利用いただくようお願い申し上げます。

 

 

 

 


[中小企業経営者の悩みを解決!「M&A・事業承継 相談所」]

~M&Aで会社や事業を売却しようとご検討の中小企業経営者におすすめ~

 

第5回:会社の譲渡を検討していますが、譲渡してしまったら、共に働いてきた役員や従業員達から見放されたと思われないか不安です。

 

 

〈解説〉

株式会社ストライク

 


M&A(合併・買収)仲介大手のストライク(東証一部上場)が、中小企業の経営者の方々の事業承継やM&Aの疑問や不安にお答えします。

 

 

▷関連記事:なぜ「会社を買う」のか~買う側の理由、売る側の理由~

▷関連記事:取引先に知られずに会社を譲渡することはできる?

▷関連記事:自社の売却を検討していますが、家族や従業員には伝えづらいです。どのように伝えればよいのでしょうか?

 

Q.会社の譲渡を検討していますが、譲渡してしまったら、共に働いてきた役員や従業員達から見放されたと思われないか不安です。

 

私は約40年間、金属加工業を営んできました。会社が潰れかねない危機は何度もありましたが、全社員が一丸となって課題に取り組み、乗り越えてきました。お陰様で人員整理をする事無く経営ができ、長年の社員ともなれば社長と従業員という関係より戦友のように思っています。

 

ただ数カ月前に入院を伴う病気を患い、今の時代に即した経営者に後を託すべきだと考えるようになりました。仮に会社を譲渡すれば、これまで共に働いてきた役員や従業員達から、私が社員達を見放したと思われないでしょうか。

 

 

A.実際には杞憂である場合がほとんどです。

 

愛情を持って会社や社員を育ててきた経営者の方ほど、同様の不安を抱えておられることが多いようです。ただ、実際には杞憂である場合がほとんどです。

 

事業承継型のM&Aの場合、従業員の雇用条件も社名も当面変えずに、外から見ても社員や取引先からもあまり変化を感じないM&Aにしようと努めることが多いです。

 

同様の問題を抱えたある企業では、M&Aの最終契約後にオーナーが従業員に説明したところ、従業員からは意外な反応が返ってきたといいます。従業員はむしろ、高齢のオーナーが倒れてしまえば、会社を廃業せざるを得ないのではないかという不安を抱えていたというのです。このため、「M&Aで事業を存続することが決まって安心できた」「良い企業を売却先に選んでくれた社長に感謝したい」という反応すらあったそうです。

 

それを聞いた社長も「従業員も冷静に会社の行く末について考えていたことがよくわかった。良い売却先を選んで企業を存続させるという、最後の良い仕事ができた」と言っていたということです。

 

このようにM&Aを通じて事業上の相乗効果や安定的な経営を期待できれば、従業員のモチベーションがむしろ上がるケースも多いのです。経営者にとっては、これまで手塩にかけて育ててきた会社であり、大切にしてきた従業員です。M&Aに一歩踏み出すことに不安も多いと思いますが、良い相手先を選ぶことができれば、その心配は杞憂に終わる可能性が高いと思います。

 

 

 

 

 

[解説ニュース]

住宅取得等資金の贈与の非課税制度 コロナ禍の影響で入居等が遅れた場合

 

〈解説〉

税理士法人タクトコンサルティング(遠藤 純一)

 

 

[関連解説]

■生前贈与がある場合の相続税申告の留意点

■令和3年度税制改正:住宅ローン控除の拡充

 

1、はじめに


緊急事態宣言に基づく外出の自粛要請など新型コロナウイルス感染防止策の影響により、住宅の新築竣工時期等の遅れが生じ、住宅税制の入居に関する適用要件を充たせなくなることが懸念されています。

 

このため政府は、住宅借入金等特別控除(住宅ローン控除)について昨年4月、「新型コロナウイルス感染症等の影響に対応するための国税関係法律の臨時特例に関する法律」を施行し、入居期限までに入居できないケースへの対応を行ったところです。

 

ここでは、「住宅取得等資金の贈与税の非課税の特例(措法70の2)」では、どのように対応されているのかについて確認します。

 

2、住宅取得等資金の贈与税の非課税の特例


住宅取得等資金に関する贈与税の非課税制度とは、父母・祖父母など直系尊属から満20歳以上で贈与の年の合計所得金額が2,000万円以下の子や孫が住宅取得等資金をもらう場合に、申告を条件に一定の限度額までは非課税となる制度です。

 

住宅用家屋の新築・取得・増改築(以下、取得等という)に係る契約の締結日が平成31年4月1日から令和2年3月31日の場合、非課税枠は以下の表のとおりです。

 

 

 

ただし贈与の翌年の3月15日までに住宅を取得等し、その年末までに居住すること等の要件があります。ここで着目すべきは、その贈与を受けた年の翌年3月15日までに住宅の取得等をしなければならない点です。従来から、両制度とも住宅の取得等の期限については、厳格に贈与を受けた年の翌年3月15日とされてきており、これを徒過すると、同制度の適用は認められませんでした。

 

ただし、同制度には納税者自身の責めに帰さない「災害に基因するやむを得ない事情」で住宅の引渡しや新築の時期・入居の時期が適用要件の期日に遅れた場合には、1年延長が認められる法律上の定め(宥恕規定)があります(措法70の2⑩⑪)。

 

それによると、災害に基因するやむを得ない事情により贈与により金銭の取得をした日の属する年の翌年3月15日までに取得等ができなかったとき又は取得等の年の12月31日までに入居できなかった場合であっても、特例の規定の適用を受けることができるとされており、たとえば住宅の取得等の期限が「翌々年3月15日」とされる仕組みです。

 

3、最新の国税庁のFAQ


国税に関し新型コロナウイルス感染症への対応を明らかにした「国税における新型コロナウイルス感染症拡大防止への対応と申告や納税などの当面の税務上の取扱いに関するFAQ」に、令和3年2月2日付で、「住宅取得等資金の贈与税の非課税の特例における取得期限等の延長について」が追加されました。

 

それによると、国税庁は「今般の新型コロナウイルス感染症に関しては、例えば、緊急事態宣言などによる感染拡大防止の取組に伴う工期の見直し、資機材等の調達が困難なことや感染者の発生などにより工事が施行できず工期が延長される場合など、新型コロナウイルス感染症の影響により生じた自己の責めに帰さない事由については、「災害に基因するやむを得ない事情」に該当するものと認められます」として上記宥恕規定の適用があることを明らかにしました。

 

同FAQでは、次のような事例を示しています。

 

①令和元年に贈与を受け、令和2年中に住宅の取得等をして年末までに住む予定だったケースで、コロナ禍で工期が遅れ年末までに住めなかった場合
→令和3年の年末までに居住すればOK
②令和2年に贈与を受け令和3年3月15日までに住宅の取得等をする予定がコロナ禍で遅れた場合
→令和4年3月15日までに取得し、その年末までに居住すればOK

 

 

なお、工務店等に住宅の新築工事をお依頼している場合には、資金の贈与の翌年3月15日までに棟上げしていれば、特例の適用のある住宅の取得等に含まれます(措法規23条の5の2①)。この点、新築マンションや建売住宅のケースでは、あくまで引渡し時点がポイントですので、注意が必要です。
申告にあたってはコロナ禍により取得時期や居住時期が遅れたことに関し工期が延期されたなど「やむを得ない事情」を証明する書面を用意する必要があります。

 

 

 

 

税理士法人タクトコンサルティング 「TACTニュース」(2021/02/16)より転載

[事業再生・企業再生の基本ポイント]

第1回:民事再生と会社更生の比較

~経営者の交代は? 担保権行使の制限は? 手続きや費用負担は?~

 

〈解説〉

公認会計士・中小企業診断士  氏家洋輔

 

▷関連記事:法的整理と私的整理の比較

▷関連記事:事業再生の概要を教えてください

▷関連記事:事業再生業務の全体像を教えてください

 

 

民事再生は民事再生法に基づいた手続きで、会社更生は会社更生法に基づいた手続きです。

 

下記のように様々な相違点がありますが、特に重要であると考えるのは、民事再生は経営者が原則続投しますが、会社更生では経営者は原則交代する点、民事再生では原則担保権の行使が制約されないが、会社更生では担保権の行使が制限される点、会社更生では手続きが厳格で費用が高くなる点です。個別の事情で一概には言えませんが、法的整理をする場合は、上場企業のように規模の大きい会社は会社更生を利用し、中小企業は民事再生での事業再生を図ることが一般的です。

 

 

[M&Aニュース](2021年1月25日〜2021年2月5日)

◇LIXIL、希望退職プログラムに965人応募、◇投資会社ユニゾン・キャピタル、精神科領域の訪問看護事業を手がけるN・フィールド<6077>をTOBで子会社化、◇名古屋木材<7903>、MBOで株式を非公開化、◇エアトリ<6191>、選挙活動支援ツール提供のセンキョを前澤ファンドに譲渡、◇日本電産<6594>、EV戦略強化に向けて三菱重工工作機械を買収、◇前田工繊<7821>、電気牧柵・酪農用品製造のエスケー電気工業を子会社化、◇マネックスグループ<8698>、メタップス<6172>傘下で暗号資産関連サービスのメタップスアルファを子会社化、◇クスリのアオキホールディングス<3549>、能登地区で食品スーパー2店舗を経営するサン・フラワー・マリヤマを吸収合併、◇セーラー万年筆<7992>、フランス販売代理店SAS Univers & Marquesを子会社化、◇インターネットインフィニティー<6545>、福祉用具レンタル・販売などのフルケアを子会社化、◇ソニー<6758>、米音楽出版社コバルト・ミュージックから音楽配信サービス「AWAL」事業を取得  ほか

 

 

 

LIXIL、希望退職プログラムに965人応募

LIXILは5日、1200人を募った希望退職プログラム「ニューライフ」に965人の応募があったと発表した。昨年2月にも希望退職を募集(人数を定めず、応募497人)しており、この種の人員合理化は2年連続。40歳以上勤続10年以上の正社員(工場の人事総務・経理部門や物流センター、デジタル部門は除く)を対象とし、2021年1月12日~22日に募った。退職日は3月25日。国内の新築住宅市場が急速に縮小する中、実力主義の徹底、機動的な組織づくりを進め、事業構造転換を加速させる。

通常の退職金に特別退職金を加算して支給し、再就職支援サービスを提供する。2021年3月期決算に関連費用約136億円を計上する。2022年3月期以降の人件費の減少は年間で約82億円を見込む。

投資会社ユニゾン・キャピタル、精神科領域の訪問看護事業を手がけるN・フィールド<6077>をTOBで子会社化

投資会社のユニゾン・キャピタル(東京都千代田区)は5日、精神科領域の訪問看護事業を手がけるN・フィールド(東証1部)に対して完全子会社化を目的にTOB(株式公開買い付け)を実施すると発表した。買付代金は約155億円。成長事業へ経営資源を集中できる体制を構築するためには非公開化が適切だと判断した。N・フィールドはTOBに賛同している。

TOB主体はユニゾン・キャピタル傘下のCHCP-HN(東京都中央区)。N・フィールド株の買付価格は1株につき1200円で、前営業日の終値830円に44.58%のプレミアムを加えた。買付予定数は1292万5434株。買付予定数の下限は議決権ベースで3分の2以上となるように所有割合66.67%にあたる861万7000株に設定した。買付期間は2月8日~3月23日。公開買付代理人は野村証券。決済の開始日は3月30日。

N・フィールドは2003年に設立。2013年にマザーズに上場し、2015年東証1部に昇格した。

名古屋木材<7903>、MBOで株式を非公開化

名古屋木材は5日、MBO(経営陣による買収)で株式を非公開化すると発表した。同社社長の丹羽耕太郎氏が設立した新会社のNホールディングス(名古屋市)がTOB(株式公開買い付け)を実施し、全株式の取得を目指す。名古屋木材はTOBに賛同を表明している。TOBが成立すれば、名古屋木材の名古屋証券取引所2部への上場が廃止となる。

名古屋木材株の買付価格は1株につき4350円で、2月3日の終値3750円に16%のプレミアムを加えた。買付予定数は37万2219株で、買付代金は16億1900万円。買付予定数の下限は所有割合65.98%にあたる24万7300株とした。

名古屋木材は1945年12月に木材・建材の販売を目的に設立。1949年に名証2部に上場し、今日にいたる。木材・建材に続き、住宅設備機器、分譲住宅・マンション、不動産賃貸の各事業に進出し、業容を拡大した。

しかし、人口減少などで新設住宅着工が縮小に向かい、業績は停滞している。こうした中、商業施設や公共施設など非住宅の木質化需要の取り込みなど成長戦略を進めるためには、機動的な意思決定を可能とする経営体制の確立が必要だとして株式の非公開化に動くことにした。

買付期間は2月8日~3月23日。公開買付代理人は東海東京証券。決済の開始日は3月30日。

エアトリ<6191>、選挙活動支援ツール提供のセンキョを前澤ファンドに譲渡

エアトリは5日、クラウド選挙活動支援ツール「スマート選挙」を開発・提供するセンキョ(東京都港区)の全株式を、ファッション通販サイト最大手ZOZOの創業者である前澤友作氏が設立した前澤ファンド(東京都港区)に譲渡したと発表した。譲渡価額は非公表。

センキョが手がけるスマート選挙は選挙・政治活動を支援するツールで、クラウドによる名簿管理をはじめ一連の選挙活動の見える化を実現する。2019年の地方統一選挙では新人候補者を含む利用者の約9割が当選したという。

エアトリは2020年2月に投資事業の一環としてセンキョに出資したが、今回、同社が前澤ファンドから資金調達することが決まったのに伴い、保有する全株式を手放すことにした。

譲渡先の前澤ファンドは社会課題の解決や趣味の追求を事業テーマに掲げる起業家や団体に対して出資を行う会社で、前澤氏の個人資産をもとに総額100億円規模の投資を予定している。前澤ファンドには4300件余りの応募があり、13の事業に出資が決定し、その1つとしてセンキョが選ばれた。

日本電産<6594>、EV戦略強化に向けて三菱重工工作機械を買収

日本電産は5日、三菱重工業の子会社で工作機械や切削工具の製造を手がける三菱重工工作機械(滋賀県栗東市)を買収すると発表した。EV(電気自動車)用駆動モーターシステムの中核部品であるギア(歯車)の技術力を強化する。日本電産はEVモーターを成長の柱と位置づけており、工作機械事業をグループ内に取り込むことで、ギアをはじめ主要部品の内製化を進める。買収金額は非公表。買収完了は5月をめどとしている。

三菱重工工作機械は滋賀県栗東市のほか、米国、中国、インドに生産拠点を置く。従業員は1400人。売上高は2020年3月期が403億円、2021年3月期見込みが231億円。

日本電産は三菱重工工作機械の買収に合わせ、親会社の三菱重工が海外で展開する工作機械事業も傘下に収める。

前田工繊<7821>、電気牧柵・酪農用品製造のエスケー電気工業を子会社化

前田工繊は、電気牧柵など獣害対策製品や酪農用品を製造するエスケー電気工業(北海道苫小牧市)の全株式を取得し、5日付で子会社化した。前田工繊は子会社の未来にアグリ(札幌市)で獣害対策製品や牧場施設の製造を手がけており、取り扱い商材の多様化や販売網の相互活用による事業拡大を見込む。エスケー電気は1948年設立で、電気牧柵のパイオニアとして実績を積んできた。取得価額は非公表。

マネックスグループ<8698>、メタップス<6172>傘下で暗号資産関連サービスのメタップスアルファを子会社化

マネックスグループは5日、暗号資産交換事業を手がける傘下のコインチェック(東京都渋谷区)がオンチェーンのNFT(代替不可能なトークン)マーケットプレイス「miime」を提供するメタップスアルファ(東京都港区)の全株式を取得し子会社化すると発表した。コインチェックはネットワーク送金手数料が発生しないオフチェーンのNFTマーケットプレイスの開発を進めているが、オンチェーンにも対応することで早期の事業展開につなげるという。

取得価額は非公表。取得予定日は2021年2月12日。

旧村上系の投資会社シティインデックスイレブンス、MBO中の日本アジアグループ<3751>にTOBを実施

投資会社のシティインデックスイレブンス(東京都渋谷区)は4日、日本アジアグループに対して全株式取得を目的に対抗TOB(株式公開買い付け)を行うと発表した。日本アジアを巡っては同社の山下哲生会長兼社長が米投資ファンドのカーライル・グループと組んでMBO(経営陣による買収)を2020年11月初めから実施中。シティはカーライルを10円上回る1210円の買付価格を提示し、2月5日から3月22日まで買い付ける。買付代金は最大約264億円。

シティは旧村上ファンド系の投資会社で現在、共同保有者分と合わせて日本アジア株式の20.47%を所有する。TOBを通じて残る80%近い株式(2183万3880株)の買い付けを目指す。買付予定数は上限も下限も設けていない。公開買付代理人は三田証券、マネックス証券。決済の開始日は3月29日。

日本アジアの非公開化を目指すMBOは昨年11月に買付価格600円で始まった。このMBOについて、シティは買付価格が不当に安く、株主の利益を犠牲にしていると指摘し、今年1月半ばに1株840円で対抗TOBを2月上旬から始める方針を発表。MBOを主導するカーライル側は1月下旬、買付価格を600円から1200円に引き上げた。

シティが提示した買付価格1210円はTOB公表前日の終値1217円とほぼ同水準。今後、対抗TOBに対する日本アジアの意見表明とカーライル側の対応が注目される。

日本アジアは航空測量事業を中心に、太陽光、バイオマス、風力、地熱、小水力発電などのグリーン・エネルギー事業、森林事業を3本柱とする。

クスリのアオキホールディングス<3549>、能登地区で食品スーパー2店舗を経営するサン・フラワー・マリヤマを吸収合併

クスリのアオキホールディングスは、ドラッグストアを展開する全額出資子会社のクスリのアオキ(石川県白山市)が地場食品スーパーのサン・フラワー・マリヤマ(石川県輪島市。売上高6億4700万円、営業利益△100万円、純資産3700万円)を吸収合併することを決めた。食品販売を強化する一環。合併対価としてサン・フラワー・マリヤマ株主に現金を割り当て交付するが、金額は非公表。合併予定日は2021年5月21日。

サン・フラワー・マリヤマは1995年設立で、能登地区に食品スーパー2店舗を経営する。クスリのアオキは北陸・信越、東海・近畿、関東・東北の21府県にドラッグストア666店舗(うち調剤薬局併設346店舗)、専門調剤薬局6店舗の合計672店舗を持つ。近年は食品の販売に力を入れ、大型店では生鮮3品(青果・鮮魚・精肉)を取り扱っている。

ひかりホールディングス<1445>、ビル・マンション修繕工事の本田組を子会社化

ひかりホールディングスは、ビル・マンションなどの修繕工事を手がける本田組(東京都品川区。売上高1億600万円、営業利益1160万円、純資産4410万円)の全株式を取得し子会社化することを決めた。タイル・石材建築工事のセラミックワン(横浜市)など既存子会社との相乗効果が期待できると判断した。取得価額は非公表。取得予定日は2021年2月16日。

ワールド、構造改革の追加実施で約100人の希望退職募集|2年連続

ワールドは3日、構造改革の追加実施に伴い約100人の希望退職を募集すると発表した。百貨店で展開するアパレルブランドを中心に不採算の7ブランドを廃止し、来期(2022年3月期)に約450店舗を閉店する。希望退職はこれら一連の構造改革に関わるフィールズインターナショナル(神戸市)、ワールドストアパートナーズ(東京都港区)のグループ2社の40歳以上の社員(定年再雇用者を含む。店舗従事者は除く)を対象とする。募集期間は3月9日~19日(退職日は4月20日)。

ワールドは昨年9月に200人規模の希望退職を募集(応募は294人)しており、2年連続となる。新型コロナウイルス感染拡大や緊急事態宣言の再発動で年明け1月の既存店売上高は前年比59.3%(見込み)と一段と厳しい状況となり、来期以降の収益回復の道筋を確実とするためには、今期(2021年3月期)中に事業構造の転換にもう一段のアクセルを踏み込む必要があると判断した。

資生堂<4911>、パーソナルケア事業を欧州投資ファンド大手のCVCキャピタル・パートナーズに1600億円で売却

資生堂は3日、アジアを中心に「TSUBAKI」「SENKA」などのブランドでヘアケア商品やスキンケア商品を展開するパーソナルケア事業を欧州系大手投資ファンド、CVCキャピタル・パートナーズ(英国)に1600億円で売却すると発表した。ドラッグストアや量販店を主要販路とするため、価格競争が激しく、収益力に課題があった。資生堂は売却先である事業運営会社の株式を35%取得し、合弁事業として運営に引き続き関与する。

パーソナルケア事業は1959年に始まり、60年を超える歴史を持つ。女性用で数多くの著名ブランドを持つほか、男性用は「uno」などで知られ、日本をはじめ中国、アジア各国で販売している。当該事業の2019年12月期の売上高は1055億円で、全社の約10%を占める。

国内外の事業は資生堂が2021年上期中に全額出資で設立する新会社に移管し、この新会社の株式をCVCキャピタル・パートナーズ傘下のOriental Beauty Holding(OBH、東京都千代田区)に7月1日付で譲渡する予定。そのうえで資生堂はOBHの親会社の株式35%を取得して合弁事業化する。

ルネサンス<2378>、アウトドアフィットネス事業のBEACH TOWNを子会社化

ルネサンスは、海、川などの自然や公園を利用して運動を楽しむアウトドアフィットネス事業を展開するBEACH TOWN(横浜市)の株式51.7%を取得し、子会社化することを決めた。アウトドアフィットネス分野への本格参入が狙い。ルネサンスは2009年にBEACH TOWNと業務委託契約を結び、「ルネサンス アウトドアフィットネス」として一部のスポーツクラブで周辺の公園や自然を使い、「ノルディックウオーキング」「ランニング」「パークヨガ」などのプログラムを実施してきた。

BEACH TOWNは2008年設立で、日本におけるアウトドアフィットネスの第一人者とされる黒野崇氏が社長を務める。現在、同社が運営・企画制作する施設は首都圏の1都3県を中心に北海道、滋賀、京都、大阪、岡山、宮崎、鹿児島に24カ所にある。

取得価額は非公表。取得予定日は2021年4月1日。

デクセリアルズ、特別早期転身支援制度に59人が応募

電子材料・部材メーカーのデクセリアルズは2日、昨年9月から11月にかけて実施した特別早期転身支援制度に59人の応募があったと発表した。50歳以上の管理職社員を対象に50~100人程度を募った(昨年12月末までに段階的に退職)。退職加算金などに伴う関連費用約10億円を特別損失として2021年3月期決算に計上する。

セーラー万年筆<7992>、フランス販売代理店SAS Univers & Marquesを子会社化

セーラー万年筆は、フランスの販売代理店SAS Univers & Marques(モントロイ市。売上高2090万円、営業利益0千円、純資産800万円)の株式70%を取得し、子会社化することを決めた。セーラー万年筆は2000年に英国に支店を開設し、欧州での筆記具販売の拡大に取り組んできたが、英国のEU(欧州連合)離脱を受け、EU域内での拠点確保を模索していた。取得価額は非公表。取得予定日は2021年2月8日。

サノヤスホールディングス<7022>、豪州メルボルンで観覧車を運営する現地子会社をスイスROBUグループに譲渡

サノヤスホールディングスは、豪州で観覧車を運営する現地子会社Sanoyasu Rides Australia Pty Ltd(メルボルン。売上高4億9600万円、営業利益△2810万円、純資産6億5200万円)の全株式を、リヒテンシュタインのVeyron Stiftungに譲渡した。Veyron Stiftungは世界各地で観覧車建設・運営事業を展開するスイスROBUグループを傘下に持つ。譲渡価額は約2400万円。譲渡日は2021年1月31日。

サノヤスHDは子会社を通じて2013年から豪メルボルンで大観覧車の運営を手がけてきたが、現地のレジャー産業を取り巻く事業環境が厳しさを増していたところに、コロナ禍による休業の影響などが重なり、業績が低迷していた。

インターネットインフィニティー<6545>、福祉用具レンタル・販売などのフルケアを子会社化

インターネットインフィニティーは、福祉用具や医療機器のレンタル・販売、住宅改修などを手がけるフルケア(広島市。売上高5億8000万円、営業利益0百万円、純資産1億3800万円)の全株式を取得し子会社化することを決めた。中国地方への営業エリア拡大を図る狙い。取得価額は3億3500万円。取得予定日は2021年4月1日。

インターネットインフィニティーはリハビリ型通所介護「レコードブック」やケアマネジャー向け介護専門サイト「ケアマネジメント・オンライン」などを展開している。

ジョイフル本田<3191>、傘下のジョイフルアスレティッククラブを「ゴールドジム」運営のTHINKフィットネスに譲渡

ジョイフル本田は、スポーツクラブ3店舗(茨城県2、千葉県1)を運営する全額出資子会社のジョイフルアスレティッククラブ(茨城県土浦市)の株式67%を、スポーツクラブ「ゴールドジム」を展開するTHINKフィットネス(東京都江東区)に譲渡することを決めた。ジョイフル本田は引き続き株式33%を保有し、共同経営の事業形態に移行する。譲渡価額は非公表。譲渡予定日は2021年3月1日。

ソニー<6758>、米音楽出版社コバルト・ミュージックから音楽配信サービス「AWAL」事業を取得

ソニーは2日、音楽事業統括子会社ソニー・ミュージックエンタテインメント(SME)を通じて、米音楽出版社コバルト・ミュージック・グループが展開する音楽配信サービス「AWAL」事業と音楽の著作隣接権管理事業を買収する契約を締結したと発表した。買収金額は約452億円(4億3000万ドル)。

「AWAL」はメジャー(大手)に属さないインディーズアーティストを主な対象とし、音楽配信サービスを提供している。アーティスト側は初期費用が発生せず、配信収益から一定の手数料を支払う仕組み。SMEは傘下にインディーズ(独立系)向け音楽配信会社の米オーチャードを持つが、新たに「AWAL」を取り込むことで、サービス領域がレコードレーベルにととまらずDIY(自作型)アーティストにまでより拡大する。

買収完了は関係当局の承認・許可を前提にしており、現時点で未確定。

飛島建設<1805>、ITシステム開発のアクシスウェアを子会社化

飛島建設は、ITシステム開発のアクシスウェア(東京都中央区。売上高9億5700万円)の全株式を取得し、1日付で子会社化した。DX(デジタルトランスフォーメーション)の加速による次世代事業運営体制の構築に備える。アクシスウェアは2006年設立。取得価額は非公表。

ユアサ商事<8074>、持ち分法適用関連会社で業務用システム開発のシーエーシーナレッジを子会社化

ユアサ商事は持ち分法適用関連会社で業務用システム開発のシーエーシーナレッジ(東京都中央区)の株式を追加取得し1日付で子会社化した。49%だった持ち株比率を51%に引き上げた。IT関連領域の事業強化が目的。取得価額は非公表。

シーエーシーナレッジは1989年にユアサ商事の情報子会社化として設立。2002年に独立系IT企業のシーエーシー(東京都中央区)の傘下となったが、ユアサ商事グループにおける基幹システムの開発・運用・保守の業務委託先として緊密な関係を維持していた。子会社化に伴い、シーエーシーナレッジの社名を「ユアサシステムソリューションズ」に4月1日付で変更する予定。

アウトソーシング<2427>、新潟県上越市で業務請負・派遣業を手がける新生産業を子会社化

アウトソーシングは、業務請負や派遣業を手がける新生産業(新潟県上越市)の全株式を取得し、1日付で子会社化した。取得価額は非公表。新生産業は2006年設立で、アウトソーシング傘下となることで地場以外の人材確保など一層の事業拡大を目指す。

JMホールディングス<3539>、群馬県太田市でショッピングセンター「ニコモール」運営の田園都市未来新田を子会社化

JMホールディングスは、群馬県太田市内でショッピングセンター「ニコモール」を運営・管理する田園都市未来新田(群馬県太田市。売上高4億3100万円、営業利益1億2200万円、純資産9億4100万円)を子会社化することを決めた。89%の株式を追加取得し、現在7.7%の持ち株比率を96.7%に高める。取得価額は非公表。取得予定日は2021年2月15日。

JMホールディングスは関東圏を中心に食品スーパー「ジャパンミート生鮮館」「ジャパンミート卸売市場」、業務用スーパー「肉のハナマサ」などを展開する。今回子会社化する田園都市未来新田が運営する「ニコモール」には「ジャパンミート生鮮館新田店」が出店している。

フマキラー<4998>、スイス農薬・種苗大手シンジェンタの日本法人からフラワー事業を取得

フマキラーは、スイスの農薬・種苗大手シンジェンタの日本法人であるシンジェンタジャパン(東京都中央区)からフラワー事業(種子、挿し穂など)を取得することを決めた。種苗代理店や花卉生産者、ホームセンター、公園事業者などに対し、フマキラーのガーデニング製品と同時提案することで事業拡大を目指す。取得価額は非公表。取得は数カ月以内に完了するとしている。

シンジェンタジャパンは1992年に設立し、フラワー事業のほか、アグリビジネス事業、野菜種子事業、プロフェッショナルソリューション事業(ゴルフ場用農薬など)を日本で展開している。

ウイルコホールディングス<7831>、情報誌制作子会社の関西ぱどを個人に譲渡

ウイルコホールディングスは、全額出資子会社で生活情報誌制作の関西ぱど(大阪市。売上高13億2000万円、営業利益△6800万円、純資産1億8400万円)の全株式を、富岡紀幸氏に譲渡することを決めた。グループ内の経営資源の最適配分の一環。譲渡価額は1億3100万円。2021年2月1日に全株式の61%、4月30日に残る39%を譲渡する予定。

ウイルコHDは2014年6月に関西ぱどを子会社化したが、近年は赤字体質が恒常化していた。

スタンレー電気、特別転進支援施策に155人応募|予定の半数にとどまる

スタンレー電気は29日、退職者を募る特別転進支援施策に155人の応募があったと発表した。49歳以上60歳未満で勤続10年以上の基幹社員を対象に300人程度を予定していたが、応募は半数にとどまった。募集期間は2021年1月7日~13日(退職日は2月28日。一部社員は3月31日)。2021年3月期決算に特別退職金など関連費用約15億円を特別損失として計上する。

主力の自動車ランプが売上高の約8割を占めるが、新型コロナウイルス感染拡大に伴い自動車業界で生産停止や減産が広がるなどの影響で業績が落ち込んでいる。

同社は特別転進支援施策の実施に合わせて、現在60歳の定年年齢を65歳に引き上げる定年延長制度の導入を決めた。

東京コスモス電機、30人程度の特別退職者を募集

東京コスモス電機は29日、30人程度の特別退職者を募集すると発表した。募集期間は3月1日~12日。退職日は4月30日とする。産業機器用可変抵抗器(ポテンショメーター)、車載用電装品を主力製品とするが、新型コロナウイルス感染拡大などの影響で業績が悪化しており、要員の適正化や人員効率向上を図る。特別退職加算金を上乗せ支給し、再就職を支援する。

佐鳥電機、30人程度の希望退職を実施|2年連続で募集

エレクトロニクス商社の佐鳥電機は29日、間接部門の正社員を対象に30人程度の希望退職を募集すると発表した。同社は昨年3月に特別転進支援施策としてグループを含めて60人程度の退職者(46人応募)を募っており、2年連続の人員合理化となる。新型コロナウイルス感染拡大の影響や主要取引先との特約店契約の解消などを受けた収益構造改革の一環で、人員構成の最適化を一層進めるとしている。

募集期間は3月15日~31日(退職日は5月30日)。所定の退職金に特別加算金を上乗せ支給し、再就職を支援する。

フォーサイド<2330>、子会社の映像制作事業を広告業のallfuzに譲渡

フォーサイドは子会社のフォーサイドメディア(東京都中央区)が手がける映像制作事業を、広告業のallfuz(東京都渋谷区)に譲渡することを決めた。アーティストのミュージックビデオやライブDVDの制作を主力としているが、新型コロナウイルス感染拡大の影響で受託していた制作案件の延期や中止が相次いでいた。譲渡価額は非公表。譲渡予定日は2021年1月31日。

帝人<3401>、富士フイルム傘下で再生医療製品開発のジャパン・ティッシュ・エンジニアリング<7774>をTOBで子会社化

帝人は29日、再生医療製品の開発に取り組むジャパン・ティッシュ・エンジニアリングの子会社化を目的にTOB(株式公開買い付け)を実施すると発表した。バイオ医療領域の事業拡大が狙い。買付代金は最大約216億円。ジャパン・ティッシュ株式の50.13%を持つ筆頭株主の富士フイルムは全株式をTOBに応募する。ジャパン・ティッシュのジャスダック上場は維持される。同社はTOBに賛同している。

ジャパン・ティッシュ株の買付価格は1株につき820円で、TOB公表前日の終値644円に27.33%のプレミアムを加えた。買付予定数の上限は所有割合64.98%にあたる2638万9900株。下限は富士フイルムの保有分の50.13%で、TOBの成立は事実上確定している。買付期間は2月1日~3月2日。公開買付代理人はSMBC日興証券。決済の開始日は3月9日。

ジャパン・ティッシュは眼科用医療機器メーカー大手のニデック(愛知県蒲郡市)を中心に再生医療ベンチャーとして1999年に設立。生物から採取した細胞を用いて組織や臓器を人工的に作り出すティッシュ・エンジニアリングと呼ばれる医療技術の確立を目指している。2007年にジャスダックに上場。2010年に富士フイルムホールディングス傘下の富士フイルムが同社の第三者割当増資を引き受け、筆頭株主となっていた。現在第2位株主のニデックは10.41%を引き続き保有する。

アウトソーシング<2427>、電気通信工事関連の技術者派遣を手がけるアイテックを子会社化

アウトソーシングは傘下企業を通じて、電気通信工事関連の技術者派遣を手がけるアイテック(千葉県野田市)の全株式を取得し子会社化することを決めた。アイテックは2011年設立で、移動体通信の基地局建設や建柱工事を強みとする。取得価額は非公表。取得予定日は2021年2月1日。

技術者派遣大手のビーネックスグループ<2154>と夢真ホールディングス<2362>、2021年4月に合併

技術者派遣大手のビーネックスグループ(東証1部)と夢真ホールディングス(ジャスダック)は29日、2021年4月に合併すると発表した。新社名は「夢真ビーネックスグループ」。ビーネックスは機械・電機・電子系、夢真は建設(施工管理)系の技術者派遣を主力とし、顧客の重複がほぼなく、統合効果が大きいと判断した。需要が拡大するIT領域での採用・人材育成力の強化などにつなげる。

ビーネックスを存続会社とし、夢真は3月30日付で上場廃止となる見通し。合併比率はビーネックス1:夢真0.63で、夢真1株にビーネックスの株式0.63株を割り当てる。合併後の新会社の会長にビーネックスの西田穣社長、社長に夢真の佐藤大央社長が就く予定。両社の直近売上高を合計すると約1400億円(ビーネックス817億円、夢真586億円)。

ビーネックスは1997年設立で、連結従業員1万8125人。夢真は1980年に設立し、同9848人。

SREホールディングス<2980>、システム受託開発の九州シー・アンド・シーシステムズを子会社化

SREホールディングスは、システム受託開発の九州シー・アンド・シーシステムズ(福岡市。売上高4億9300万円)の全株式を取得し子会社化することを決めた。AI(人工知能)を活用した不動産価格推定などのコンサルティングツールの改善や新商品開発につなげる。取得価額は非公表。取得予定日は2021年4月以降。

九州シー・アンド・シーシステムズは1987年に設立し、30年以上の業歴を持つ。流通・金融を中心に人事や営業支援に関するシステム開発で実績を積んできた。SREホールディングスは不動産仲介と取引テータに基づくAIクラウド・コンサルティング事業を展開する。

セキュアヴェイル<3042>、システム受託開発子会社のインサイトをアステックコンサルティングに譲渡

セキュアヴェイルは、システム受託開発子会社のインサイト(大阪府豊中市。売上高2億8300万円、営業利益1140万円、純資産3460万円)の全株式を、アステックコンサルティング(大阪市)に譲渡することを決めた。新型コロナ下におけるグループ内の業務見直しの一環。譲渡価額は非公表。譲渡予定日は2021年2月12日。

譲渡先のアステックコンサルティングは製造業に特化したコンサルティング業務を展開している。これにインサイトの受託システム開発を組み合わせることで相乗効果を引き出し、事業拡大につなげる。

アイカ工業<4206>、台湾DSMコーティング・レジンから工場と付随するUV硬化型コーティング事業を取得

アイカ工業は台湾子会社を通じて、化学工業用原料・塗料メーカーの現地DSMコーティング・レジン(桃園市)の大園工場(同)とこれに付随するオーバープリントワニス用UV(紫外線)硬化型コーティング剤事業を取得することを決めた。対象事業の直近売上高は約12億円。取得価額は約14億3000万円。取得は2021年6月中旬を予定する。

アイカ工業は2018年に、靴・繊維・日用品用途のウレタン樹脂やアクリル系モノマー・オリゴマーなどを製造販売する台湾Evermore Chemical Industry Co.,Ltd.(南投市)を子会社化した。DSMコーティング・レジンをグループに迎えることで、台湾、東南アジアでの事業拡大につなげる。

オーテック<1736>、アサヒホールディングス<5857>傘下で放射冷暖房システム設計・施工のインターセントラルを子会社化

オーテックは、アサヒホールディングス傘下で放射冷暖房システムの設計・施工を手がけるインターセントラル(東京都中央区。売上高23億2000万円、営業利益3億7200万円、純資産23億7000万円)の全株式を取得することを決めた。オーテックは空調自動制御システムの設計・施工の「環境システム事業」と管工機材と住宅設備機器を販売する「管工機材事業」を両輪とするが、いずれの部門でも相乗効果が見込めると判断した。取得価額は35億7600万円。取得予定日は2021年3月1日。

インターセントラルは1974年に設立。放射熱を利用した放射冷暖房システムや電気暖房機器はビルのエントランス、病院、空港、図書館などで採用実績を積んできた。

テックファームホールディングス<3625>、自動車業界向けソフト開発子会社のEBEをツリー・エイトに譲渡

テックファームホールディングスは、自動車業界向けソフト開発子会社のEBE(東京都中央区。売上高13億7000万円、営業利益△1億500万円、純資産1億7200万円)の株式57.5%を、ツリー・エイト(東京都目黒区)に譲渡することを決めた。譲渡価額は非公表。譲渡予定日は2021年2月1日。併せて、EBEに対する貸付金など約7億3000万円の債権を放棄する。

テックファームホールディングスは中古車や修理・解体、チューニングなど自動車アフターマーケットにかかわる事業拡大の一環として2015年3月にEBEを子会社化した。しかし、当初想定した事業計画と開きが生じていたうえ、新型コロナウイルス感染拡大の影響で顧客のシステム投資に慎重姿勢が急速に強まるなど、収益確保が一段と困難になっていた。

株式譲渡先のツリー・エイトは風力、太陽光、地熱、バイオマスなど再生可能エネルギー関連の事業を手がけている。

サンフロンティア不動産<8934>、都内でビル清掃を手がける日本システムサービスを子会社化

サンフロンティア不動産は傘下企業を通じて、オフィスビルの清掃事業を手がける日本システムサービス(東京都港区)の全株式を取得し、29日付で子会社化した。グループ内における都心の清掃事業の基盤拡充が狙い。日本システムサービスは1979年に創業し、都心5区(千代田、中央、港、新宿、渋谷)を中心に都内442棟のビル清掃を受託する。取得価額は非公表。

タイCPグループのシノバイオファーマシューティカル、医薬品開発のLTTバイオファーマにTOB

シノバイオファーマシューティカルリミテッド(ケイマン諸島。香港証券取引所に上場)は27日、医薬品開発のLTTバイオファーマ(東京都港区。2011年に東証マザース上場を廃止)に対してTOB(株式公開買い付け)を実施すると発表した。TOBを通じて株式を買い増し、グループ企業との共同保有分と合わせて現在24.13%の所有割合を49.37%に引き上げる。LTTバイオに関して戦略的パートナーとしての位置づけを明確にするのが狙い。

LTTバイオ株の買付価格は1株3万4000円。買付予定数は3万3280株(所有割合25.24%に相当)。買付代金は11億3152万円。買付期間は1月27日~3月11日。公開買付代理人は三田証券で、決済の開始日は3月25日。LTTバイオはTOBに「積極的に賛同する」としている。

買付者のシノバイオはタイの巨大企業集団であるチャロン・ポカパン(CP)グループに属し、グループ内で製薬・医療事業を担う。シノバイオは現在、中国を主軸に製薬事業を手がけているが、中国国内での競争激化などに伴い、グローバル展開が課題となっている。このため、かねて結び付きが深かったLTTバイオとの資本関係をさらに強化する。

シノバイオ傘下で中国における中核子会社の北京泰德制药股份有限公司は1995年、LTTバイオの前身企業と中日友好病院(北京の政府系病院)と合弁で設立された。

大阪油化工業<4124>、工場排水濾過装置メーカーのカイコーを子会社化

大阪油化工業は工場排水濾過装置メーカーのカイコー(さいたま市。売上高2億4800万円、営業利益3900万円、純資産2340万円)の全株式を取得し子会社化することを決めた。カイコーが持つ濾過精製技術、小型排水処理装置の設計ノウハウを取り込み、大阪油化の主力製品である蒸留装置の総合提案力を高め、中長期的な収益力強化につなげる。取得価額は非公表。取得予定日は2021年1月29日。

アウトソーシング<2427>、豪人材サービスのHorizonOne Recruitment を子会社化

アウトソーシングは豪州子会社を通じて、同国の人材サービス会社HorizonOne Recruitment Pty Ltd (キャンベラ)の全株式を取得し子会社化することを決めた。HorizonOneは政府や自治体など公共セクター向けホワイトカラー人材の紹介・派遣を手がける。アウトソーシングは事業安定化の一環として近年、主力である製造業系とはサイクルが異なる分野や景気変動などの影響を受けにくい公共系分野での人材サービス事業を国内外で拡大している。取得価額は非公表。取得予定日は2021年1月29日。

HorizonOneは2008年に設立。首都キャンベラを本拠とし、連邦政府との結び付きを強みの一つとする。アウトソーシングは豪州での展開に関し、これまでシドニーに比べて手薄だったキャンベラでのシェア拡大につなげる。

アウトソーシング<2427>、北九州で人材派遣を手がけるセレクトスタッフを子会社化

アウトソーシングは、人材派遣業のセレクトスタッフ(北九州市)の全株式を取得し子会社化することを決めた。セレクトスタッフは2001年設立で、九州で物流系や食品工場などコロナ禍の影響が少ない派遣先を主力とする。グループの事業安定化と業容拡大に向けた取り組みの一環。取得価額は非公表。取得予定日は2021年2月1日。

東京インキ<4635>、紙加工・建築用塗料メーカーの荒川塗料工業を子会社化

東京インキは、紙加工用塗料や建築用塗料の製造を手がける荒川塗料工業(さいたま市。売上高12億8000万円)の全株式を取得し子会社化することを決めた。両社の製品は事業領域が競合せず、インキ事業の拡大余地が大きいと判断した。取得価額は非公表。取得予定日は2021年1月29日。

荒川塗料工業は1949年に創業し、塗料・水性光沢インキで長年の実績とブランド力を持つ。近年は建材用コート剤など今後伸びが期待される製品も展開中。

日本コンクリート工業<5269>、東北電力<9506>傘下でコンクリートポール・パイル製造の東北ポールを子会社化

日本コンクリート工業は、東北電力傘下でコンクリートポール・パイプを製造する東北ポール(仙台市。売上高104億円、営業利益2億5800万円、純資産68億3000万円)を子会社化することを決めた。株式を追加取得し、現在6.4%の持ち株比率を64.3%に高める。5G(次世代通信規格)ネットワーク整備、国土強靭化対策などへの対応力を強化する。両社はポール・パイルの製造技術、パイルの施工技術の供与、営業協力などを通じて良好な関係を築いていた。

取得価額は非公表。取得予定日は2021年7月30日。

セイコーエプソン<6724>、ICテストハンドラー事業を兼松<8020>に譲渡

セイコーエプソンは、ICテストハンドラー事業を総合商社の兼松に譲渡することを決めた。商品構成の適正化の一環。ICテストハンドラーはパッケージング後の半導体の動作試験の際に用いられる搬送装置で、当該事業の部門売上高は30億~40億円という。譲渡価額は非公表。譲渡は2021年4月上旬に予定。

アマナ<2402>、撮影・CGなどビジュアル制作事業子会社のアンを経営陣に譲渡

アマナは、撮影・コンピューターグラフィックス(CG)を中心とするビジュアル制作事業を手がける全額出資子会社のアン(東京都品川区。売上高3億3300万円、営業利益1300万円、純資産9000万円)の株式61%を、同社社長の兼子弘政氏に譲渡することを決めた。固定費の一部変動費化を進め、効率的なグループ運営管理体制を実現する狙い。アンの設立は2001年。譲渡価額は80万円。譲渡予定日は2021年2月1日。

オリンパス<7733>、オランダ医療機器メーカーのクエスト・フォトニック・デバイセズを子会社化

オリンパスはドイツ子会社を通じて、医療用蛍光イメージング(視覚)システムの開発・製造を手がけるオランダのクエスト・フォトニック・デバイセズ(売上高3億9600万円、営業利益1億2000万円、純資産4億7400万円)を買収することを決めた。約46億円で全株式を取得する。ほかに買収後の企業業績に応じた条件付き対価(アーン・アウト)として最大約18億円。取得予定日は2021年2月8日。

蛍光イメージングは外科手術に際し、通常の白色光の下では観察が難しい組織や病変を可視化する技術で、クエストはこの分野の先進的企業。オリンパスの持つ外科手術用内視鏡システムと組み合わせ、開腹手術・腹腔鏡手術の両方をカバーする高品質なイメージングサービス提供につなげる。

NOK、基板製造子会社の日本メクトロンで実施した希望退職に246人応募

NOKは27日、フレキシブルプリント基板(FPC)製造子会社の日本メクトロン(東京都港区)で実施した希望退職に246人の応募があったと発表した。300人程度を予定人員として2020年11月1日~12月31日に募った。3月31日までに退職完了する予定。所定の退職金に特別加算金を上乗せ支給し、再就職を支援する。NOKは2021年3月期に特別加算金など関連費用約62億円を特別損失として計上する予定。

フリージア・マクロス<6343>、持分法適用会社化を目指して日邦産業<9913>にTOB

フリージア・マクロスは、日邦産業株のTOB(公開買い付け)を実施すると発表した。資本業務提携の強化により日邦産業の顧客提案力の向上と仕入れコストの低下というシナジー効果を実現し、持分法適用会社化を通じてフリージア・マクロスの業績向上につながると期待している。TOB後もフリージア・マクロスの株式保有割合は最大で27.57%にとどまり、日邦産業の上場は維持される見通し。

一方、日邦産業は「今回のTOBは一方的かつ突然に行われたものである」とし、「公開買付届出書の内容などを精査した上で、速やかに見解を公表する」としている.

TOB価格は1株当たり930円で、公表前営業日での終値528円に76.13%のプレミアムをつけた。買付予定数は71万4800株。応募総数が2万5000株を下回った場合は、買付を実施しない。買付代金は約6億6500万円。公開買付代理人は三田証券。決済開始日は3月19日。

東京エネシス<1945>、日立プラントコンストラクションから火力発電設備の設計・施工事業を取得

東京エネシスは、日立プラントコンストラクション(東京都豊島区)から火力発電設備の設計・施工に関する事業(売上高122億円)を取得することを決めた。中核と位置づける電力設備の建設・保守事業を拡充するのが狙い。日立プラントコンストラクションの技術力や人材を取り込み、生産性向上やグローバル展開、協力会社体制を活用した施工力強化などの相乗効果を見込む。取得価額は22億~28億円。取得予定日は2021年7月1日。

マネックス証券<8698>、新生銀行<8303>から投資信託保護預かり口座に関する事業を取得

マネックス証券は27日、新生銀行の投資信託保護預かり口座に関する事業を会社分割により取得すると発表した。同日、マネックス証券、新生銀行、同行傘下の新生証券の3社が基本合意した金融商品仲介業務にかかる包括提携の一環。取得する投資信託(預かり総資産)は2867億円(2020年3月期)。2021年3月中をめどに最終契約を結び、2022年から新体制で運営を始める予定。

エディオン<2730>、システム開発のHampsteadなどを傘下に持つPTNを子会社化

エディオンは、システム開発や印刷事業などをグループ企業を通じて手がけるPTN(東京都新宿区)の全株式を取得し、子会社化することを決めた。サービス基盤やマーケティング体制の強化につなげる狙い。

PTNは持ち株会社で、傘下に受注管理システム開発やデジタルマーケティング事業のHampstead(東京都品川区)、印刷事業のプライムステーション(東京都新宿区)、プログラミング教室運営のEdBank(東京都品川区)、英会話サッカースクール運営のBRIDGEs(東京都渋谷区)を子会社に持つ。

取得価額は非公表。取得予定日は2021年2月8日。

モブキャストホールディングス<3664>、ゲームタイトル「キングダム乱ー天下統一への道ー」をでらゲーに譲渡

モブキャストホールディングスは、傘下のモブキャストゲームス(東京都港区)が展開するゲームタイトル「キングダム乱-天下統一への道-」(売上高約8億円)を共同開発先の「でらゲー」(東京都渋谷区)に譲渡することを決めた。対象とするゲームタイトルの損失解消が目的。譲渡価額は0円。譲渡予定日は2021年1月28日。

モブキャストHDは2020年3月に、戦略外であるスポーツ系ゲームタイトルの一部を譲渡するなど、選択と集中を進めている。

ミナトホールディングス<6862>、システム開発のアイティ・クラフトを子会社化

ミナトホールディングスは、システム開発のアイティ・クラフト(東京都中央区)の全株式を取得し子会社化することを決めた。ミナトHD傘下でWeb構築などを手がける日本ジョイントソリューションズ(東京都中央区)がアイティ・クラフトとシステム開発案件に共同で取り組んだ実績があり、グループ化により一層の相互補完が期待できると判断した。取得価額は非公表。取得予定日は2021年2月1日。

アイティ・クラフトは2007年設立で、金融系の業務システム開発に強みを持つ。

サコス<9641>、電気設備工事の親和電気を子会社化

サコスは、電気設備工事業の親和電気(大阪府守口市。売上高5億1600万円、営業利益0百万円、純資産1億3600万円)の全株式を取得し子会社化することを決めた。サコスが手がける業務の一つである発電機レンタルで新たな需要開拓につながると判断した。親和電気は1964年設立。取得価額は非公表。取得予定日は2021年2月9日。

 

 

 

 

情報提供:株式会社ストライク

[中小企業のM&A・事業承継 Q&A解説]

第6回:M&Aの仲介契約とFA契約の違い

~仲介契約とアドバイザリー契約の違いとは?報酬体系は?~

 

[解説]

宇野俊英(M&Aコンサルタント)

 

 

 

 

 

 


 

[質問(Q)]

後継者を探しましたが、親族内、役員・従業員にも適任者が見当たりません。ついてはM&Aで事業継続を図りたいと思いますが、現在候補先にあてがない状態です。候補先を探索する場合、誰に相談したらよいですか。

 

 

[回答(A)]

一般的には決まった相手先がいない場合には仲介者若しくはアドバイザーからの支援を受けることが一般的です。仲介者・アドバイザー(以下、「仲介者等」といいます)の選択は、業務範囲や業務内容、活動提供期間、報酬体系、ディール実績、利用者の声等をホームページや担当者から、確認した上で複数の仲介者等に打診、比較検討して決定することが望ましいです。また、公的相談窓口として事業引継ぎ支援センターにご相談いただいても、信頼できる仲介者等を紹介してもらうことができます。

 

 

 

1.信頼できる仲介者等の選任


信頼できる仲介者等を選任することが重要です。仲介者等はM&Aを支援する機関で、候補先は民間のM&A事業者、金融機関、税理士を含む士業専門家等です。身近な相談先として顧問税理士や取引金融機関も挙げられます。主な契約は2 種類でそれぞれの機関ごとの指針や取引状況により契約体系が大きく異なる仲介契約とアドバイザリー契約があります。選定の際には仲介者等の担当者との相性や信頼関係の構築ができそうかという点も重要なポイントになります。

 

また、契約を締結する際は調印前に充分な説明を納得がいくまで受けることも重要です。特に契約内容や報酬等については後程問題になるケースもあることから確認が必須となります。もし、契約内容等に疑義がある場合には、必要に応じセカンドオピニオンを受けることが有効です。

 

 

 

2.仲介契約とアドバイザリー契約の違い


仲介契約仲介者と譲渡企業、譲受企業との間の契約です。双方の間になって中立・公平の立場から助言を行うため、交渉が円滑に進みやすいという特徴を持っています。

 

アドバイザリー契約アドバイザーが譲渡企業又は譲受企業の一方との間で締結する契約です。契約者の意向が交渉に全面的に反映されるという特徴があります。

 

中小企業のM&Aでは仲介契約が一般的であることが多いと推察されますが、契約者に対する利益相反の観点からアドバイザリー契約のみに限定している支援者もいます。また、弁護士は弁護士法で双方代理は認められていないため、自動的にアドバイザリー契約となります。

 

 

3.仲介者等の役割


一般的には以下のような支援をすることが多いです。

 

また、以下の一部のみサービスを提供している仲介者等もいます。

 

①事業評価
②候補先選定サポート
③交渉サポート
④基本合意締結サポート
⑤デューデリジェンスサポート
⑥最終契約締結・クロージングサポート

 

 

4.報酬体系


一般的な報酬は以下のとおりです。別途交通費等の実費やデューデリジェンスの費用が必要な場合があります。また、着手金やリテーナーフィー、基本合意時の報酬は不要として成功報酬のみとしている仲介者等もいます。

 

● 対応開始時:着手金
● 対応中:リテーナーフィー(月額報酬)
● 基本合意締結時:中間的な報酬で、成功報酬の一定割合としている仲介者等もいます。
● 成約時(決済時):成功報酬、レーマン方式といわれるM&Aで一般的に使用される方式を採用しています。一方、最低報酬額を別途定めている仲介者等も多く存在します。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

[氏家洋輔先生が解説する!M&Aの基本ポイント]

第7回:企業価値、事業価値および株式価値について

 

〈解説〉

公認会計士・中小企業診断士  氏家洋輔

 

 

▷関連記事:M&Aにおける価値評価(バリュエーション)の手法とは?

▷関連記事:売買価格の決め方は?-価値評価の考え方と評価方法の違い-

▷関連記事:M&A における株式評価方法と中小企業のM&A における株式評価方法 ~中小企業M&Aで最も用いられている仲介会社方式とは?~

 

 

 

M&Aを検討する場合に、中小企業でもDCF法などの理論的な価値算定を行う事例が増えてきました。しかし、正確な理解をした上でこれらの方法を用いないと、意思決定を誤った方向に導いてしまう可能性があります。営業利益の3年分などの非理論的な方法を用いず、せっかく理論的な方法を用いたのにその使い方が誤っていると元も子もありません。

 

私が財務デューデリジェンスで関与した案件で、買い手側のFAがDCF法を用いた価値算定を行ったのですが、企業価値は約5億円で負債が多かったため株式価値はほぼゼロだったのです。FAは株式価値(ゼロ)ではなく企業価値(5億円)をベースとして株式の譲渡価格の議論を行っていました。その結果、買手企業は株式の売買を行うにも関わらず、株式の価値ではなく企業の価値で買収価格の検討を進めていたという事例がありました。

 

FAが誤った理解をしていても買手企業としてその誤りに気づけるように、概念的な理解だけでもしておくことをお勧めいたします。

 

 

上図のように、計画期間のキャッシュフローを割引いて現在の事業価値を算定します。事業価値に余剰資金と非事業用資産を加えたものが企業価値、そこから有利子負債(ネットデット)を差し引いたものが株式価値となります。

 

「企業価値」 = 「事業価値」 + 「余剰資金」 + 「非事業用資産」

「株式価値」 = 「企業価値」 – 「有利子負債(ネットデット)」

 

理論的な計算方法にて株式譲渡価格を検討することは望ましいことですが、誤った理解を前提に株式譲渡価格を検討することで、M&Aという重要な意思決定を誤ってしまいます。理論的な計算方法は専門的で難しく、買手企業の社長やM&Aの経験が浅い担当者ではわからないことが一般的です。専門家に見えるFA等が誤った理解をしていても、買手企業側は誤っていることに気づけないこともあるため、公認会計士や価値算定の専門家に株式価値算定を依頼するなどすることをお勧めいたします。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

[解説ニュース]

譲渡所得の計算上、概算取得費を適用すべき場合、取得費を推定できる場合

 

〈解説〉

税理士法人タクトコンサルティング(遠藤 純一)

 

 

[関連解説]

■小規模宅地等の評価減『特定事業用宅地等』

■【Q&A】等価交換事業が行われた場合に適用を受けることが出来る譲渡所得の特例

 

1.土地等の概算取得費の特例の概要


土地等の分離課税の長期譲渡所得課税の対象となる資産を売却した時の譲渡所得の計算は、譲渡収入金額から取得費と譲渡費用を控除することで行います。しかし、取得当時の契約書などがなく、実際にいくらで取得したかわからない土地等を譲渡する場合もあります。この場合は、譲渡所得の計算上、売買時の収入金額の5%を取得費とすることが認められています。これを長期譲渡所得の概算取得費控除と言います(措法31の4)。

 

これは、原則として、昭和27年12月31日以前から引き続き所有していた土地等や建物等について適用されるものですが、昭和28年1月1日以降に取得した土地や建物等の取得費の計算でも収入金額の5%で概算しても差支えないとされています(措法通31の4 −1)。また、取扱いで短期譲渡所得の計算でも5%の概算取得費の控除が認められています。

 

ただ取得費が収入金額の5%では譲渡所得の金額が大きくなる傾向にあるため、納税者としては少しでも節税したい思いはあるでしょう。

 

そこで、概算取得費よりも高額な「資産取得時の時価」が推定できれば、その推定金額で申告や更正の請求をしたいところです。

 

2.市街地価格指数を基に取得費を推定する方法


平成12年11月16日の国税不服審判所裁決では、土地建物を一括して譲渡したケースで、取得費がわからなかったため、それほど償却の進んでいない築4年の建物について着工建築物構造単価から建物の取得費を割り出し、これを譲渡対価の総額から控除して土地の譲渡価額を求め、取得時の六大都市を除く市街地価格指数(住宅地)の割合を乗じて土地の取得費を算定する方法を合理的としたものでした。

 

市街地価格指数は日本不動産研究所が不動産鑑定士の価格調査によりまとめている資料で、土地の取得価額がわからないときにこれを活用する方法が有望とされています。

 

ただし市街地価格指数(住宅地)等にも限界はあります。平成26年3月4日の国税不服審判所の裁決では、六大都市には含まれていない所在地の土地の取得費について、六大都市市街地価格指数を用いて納税者が畑の取得費を再計算し更正の請求をした事案では、国税審判所は「所在地や地目の異なる六大都市市街地価格指数を用いた割合が、問題の土地の地価の推移を適切に反映した割合であるということはできない」として、納税者の再計算を認めませんでした。市街地価格指数を利用するには、上記のような注意点があります。

 

3.株式の取得費を推定する方法


株式を譲渡した場合にも、取引報告書を保存していないケースなどで、取得価額がわからないことがあります。この場合、譲渡した同一銘柄の株式等について譲渡収入金額の5%を概算取得費とする取扱いが認められています(措法通37の10・37の11共-13)。

 

しかし名義書換日を調べて取得時期とし、その時期の相場(終値)で取得価額を算定することも、合理性を有する取得価額の把握方法として知られています。
最近の国税不服審判所の事例でも、この方法が認められています(令和元年11月28日)。

 

大阪国税局の「誤りやすい事例 株式等譲渡所得関係」では、株式の取得価額がわからない場合の対応について次のように記載しています。

 

1 取引報告書を保存していない場合で、過去10 年間に証券業者で購入したものは、その証券業者で確認の上、取得価額を算定する。
2 取引報告書又は1 の方法により確認できない場合で、日記帳、預金通帳などの本人の手控えにより取得価額が分かればそれによる。
3 2によっても確認できない場合には、その上場株式等の名義書換時期を調べてその時の相場により取得価額を算定する。

 

 

なお、 譲渡価額の5 %の方が有利な場合は、これを取得費として計算して差し支えない。

 

 

 

 

税理士法人タクトコンサルティング 「TACTニュース」(2021/01/26)より転載

[税理士のための税務事例解説]

事業承継やM&Aに関する税務事例について、国税OB税理士が解説する事例研究シリーズです。

今回は、「解散による残余財産の分配に係るみなし配当の計算」についてです。

 

[関連解説]

■【Q&A】解散に際して支払われる役員退職金の課税関係

■【Q&A】解散をした場合の役員退職金の支給について

 

 

 

 


[質問]

A株式会社(資本金300万円・資本金等300万円 清算会社)は、今般、残余財産が確定し、全部分配を行うことにしています。

 

株主構成
甲・・・・50株(250万円)
乙・・・・10株(50万円)

 

・A社の前事業年度(解散事業年度)における、簿価純資産価額は、550万
・残余財産確定額は、400万円

 

上記の場合、残余財産を甲・乙に分配いたしますが、甲・乙のみなし配当所得はどのように計算されますか。ご教示ください。

 

[回答]

資本の払戻し又は解散による残余財産の分配に伴って、交付された金銭等の額がその払い戻し等を行った法人の払戻し等の直前の「払戻等対応資本金額等」のうち所有株式に対応する金額を超える場合には、その超過額がみなし配当になるとされています。この場合の「払戻等対応資本金額等」とは、次の算式により計算することとされています(法24①、令23①四)。

 

(払戻し等の直前の資本金等の額)×(資本の払戻しにより減少した資本剰余金の額又は解散による残余財産の分配により交付した金銭の額及び金銭以外の資産の合計額)/(払戻法人の前期期末時の簿価純資産価額)

 

この場合に、上記算式の分数については、その資本金等の額がプラスで、かつ、残余財産の全部の分配を行うときは、その割合は1として計算することとされています(令23①四本文かっこ書)。

 

ご照会事例については、残余財産の全部の分配を行うとのことですので、払戻等対応資本金額等は、3,000,000円(3,000,000円×1)となります。

 

みなし配当の額は、1,000,000円{(残余財産の分配額)4,000,000円-(払戻等対応資本金額等)3,000,000円}となります。したがって、甲及び乙のみなし配当の額は、それぞれの所有株式の割合によることになりますので、甲については1,000,000円×50/60に相当する金額、また、乙については1,000,000円×10/60に相当する金額になると考えます。

 

 

 

 

税理士懇話会事例データベースより

(2020年9月23日回答)

 

 

 

 

[ご注意]

掲載情報は、解説作成時点の情報です。また、例示された質問のみを前提とした解説となります。類似する全ての事案に当てはまるものではございません。個々の事案につきましては、ご自身の判断と責任のもとで適法性・有用性を考慮してご利用いただくようお願い申し上げます。

 

 

 

 


 

 

[業界別・業種別 M&Aのポイント]

第9回:「民泊運営事業者のM&Aの特徴や留意点」とは?

~どの法律に基づいて運営しているか?物件は所有か賃貸か?物件オーナーとの契約内容は?~

 

〈解説〉

公認会計士・中小企業診断士  氏家洋輔

 

 

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Q、民泊運営事業者のM&Aを検討していますが、民泊運営事業者M&Aの特徴や留意点はありますか?


民泊運営事業者が民泊事業を行うには、旅館業法簡易宿泊営業、特区民泊、住宅宿泊事業法(いわゆる民泊新法)のいずれかに従う必要があります。2018年6月に住宅宿泊業法(民泊新法)が施行されたことにより、これまで民泊運営を行ってきた事業者の多くが事業を見直すきっかけとなりました。住宅宿泊業法(民泊新法)では、年間営業日数が180日以内という制限が課されたため、180日の営業では利益が出しづらく事業としては成り立たないケースがほとんどとなったためです。

 

事業として行うには、旅館業法簡易宿泊営業又は特区民泊のどちらかにて営業を行うことが考えられます。旅館業法簡易宿泊営業および特区民泊では住宅宿泊事業法(民泊新法)に比べ遵守事項が多く、特に通常の住宅設備では消防法の遵守事項を達成できないケースが多く民泊事業を続けることを断念した事業者も多くいました。

 

 

 

そのため、まずはM&Aを検討している会社がどの法律に基づいて運営しているのかを把握する必要があります。そして、物件を所有しているのか、賃借しているのか、或いはオーナーから民泊運営のみの委託を受けているのかについて把握しましょう。これにより固定資産の有無や、損益分岐点が大きく異なってきます。また、運営委託を受けている場合は、物件のオーナーとの契約関係が非常に重要な事項であるため、契約書は必ず確認しましょう。

 

民泊事業者の主な収入はインターネットの旅行サイト等からの収入であり、その収入に応じて支払手数料を支払っています。主な費用はこの支払手数料と、物件の清掃費、人件費、その他外注部分があればその外注費等です。

 

コロナ禍で、外国人観光客の減少によりインバウンドの産業が厳しい状況の中、民泊事業も厳しい状況となっており、今後M&A案件が増加する可能性もあるため、民泊事業の特徴や留意点を把握しておきましょう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

[解説ニュース]

自宅家屋を取壊して敷地を譲渡した場合の譲渡所得の3,000万円控除の取扱い①

 

〈解説〉

税理士法人タクトコンサルティング(山崎 信義/税理士)

 

 

[関連解説]

■自宅家屋を取壊して敷地を譲渡した場合の譲渡所得の3,000万円控除の取扱い①

■譲渡所得税の最近のトラブル事例集

 

1.3,000万円控除の概要


個人が自己の居住用の不動産を譲渡した場合は、譲渡所得の金額の計算上、最高3,000万円が控除できる特例が設けられています。これが「居住用財産の譲渡に係る3,000万円特別控除(以下「3,000万円控除」といいます。)」です。

 

3,000万円控除の対象不動産には、次のようなものがあります(租税特別措置法第35条第2項)。

 

①現に自己が居住している家屋
②居住用に供されなくなった日から同日以後3年を経過する日の属する年の12月31日までの間に譲渡した家屋
③①又は②の家屋とともに譲渡したその敷地
④①の家屋が災害により滅失した場合において、その家屋に住まなくなった日から3年目の年の12月31日までの間(原則)に譲渡したその敷地

 

2.自宅家屋を取壊し後に敷地の譲渡契約を締結した場合の3,000万円控除の取扱い


上記1より、3,000万円控除は災害により自宅家屋が滅失した場合を除き、個人が自宅使用の家屋を譲渡することを前提としている特例です。

 

しかし、この前提を厳しく当てはめようとすると、例えば自宅家屋とその敷地を一体で(同時に)譲渡しようとしたが、買主から家屋を除去したうえで土地のみを譲渡してほしいといわれたため、売主がその家屋を取壊して土地だけを譲渡したような場合には、自宅家屋の譲渡を伴わないので、その土地の譲渡については3,000万円控除に係る上記の適用要件を満たさないことになります。不動産取引においては、土地の譲渡を進めるために譲渡前にその土地上の家屋を取壊すことが珍しくなく、家屋の取壊しにより3,000万円控除の適用が受けられないとすると、不動産取引の実態に税制がマッチしていないことになります。

 

このため国税庁では、租税特別措置法通達35-2 により、所有者が居住の用に供している家屋(または居住の用に供されなくなった家屋)を取壊し、その敷地の用に供されていた土地等を譲渡した場合であっても、その譲渡が次の要件をすべて満たしているときは、3,000万円控除の適用を認めています。

 

 

①その土地等の譲渡契約が、その家屋を取壊した日から1年以内に締結され、かつ、その家屋を居住用に使用しなくなった日以後3年を経過する日の属する年の12月31日までに譲渡したものであること。
②その家屋の取壊し後、譲渡契約の締結日まで貸付けその他の用に使用していない土地等の譲渡であること。

 

 

上記①については、土地等の譲渡の期限について、譲渡契約を締結する日が「その家屋を取壊した日から1年以内」という要件を定めています。この要件を設けた理由について、「令和2年1月改訂版 租税特別措置法通達逐条解説(譲渡所得関係)」(大蔵財務協会)では、土地等を譲渡するためにその土地等上の家屋を取壊すという関係からして、このような期限を定めることは合理的であり、かつ、土地等を譲渡するために家屋を取壊す場合、その取壊し後1年間という猶予期間があれば、その間に土地等の譲渡契約をすることが十分可能である旨を説明しています(同逐条解説470頁)。

 

また②については、家屋の取壊し後、土地等の譲渡契約の締結日までの期間は跡地の利用を制限していますが、土地等の譲渡契約の締結後、土地等の所有権移転(引渡し)までの期間については、跡地の利用につき特に制限を設けていません。

 

例えば”等価交換方式”によるマンション建設のため、譲渡契約締結後に土地の譲受者がその土地上に建物を建設し、建物完成時にその建物と土地とを交換する場合には、他の要件を満たしているのであれば、3,000万円控除の適用が認められます。

 

 

 

税理士法人タクトコンサルティング 「TACTニュース」(2021/1/13)より転載

[M&A担当者のための実務活用型誌上セミナー『価値評価(バリュエーション)』」

第5回:財務デューデリジェンスの発見事項の取扱い

 

 

〈解説〉

公認会計士・税理士  中田博文

 

〈目次〉

1、財務DD

2、買収価格への反映

3、収益性分析

4、BS分析

5、事業計画分析

 

 

▷第1回:M&Aにおける価値評価(バリュエーション)の手法とは?

▷第2回:倍率法における価値評価(バリュエーション)のポイントとは?

▷第3回:DCF法における価値評価(バリュエーション)のポイントとは?

▷第4回:支配権プレミアム&流動性ディスカウントについて

 

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1、財務DD


中規模以上のM&Aでは、公認会計士が財務DDを行い、調査結果を報告するケースが多いと思います。財務DDの目的は、「買収をストップするような重要イシューの検出」です。さらに、調査結果を①買収価格に反映、②契約書に反映、③PMI計画に反映することによって、買い手のリスク低減を図ります。

 

 

①買収価格に反映

「過去に設備投資が十分に行われておらず、事業計画の売上高を達成するために、買収後に200百万円の設備投資が必要」という調査結果が報告された場合、事業計画の設備投資額の十分性(設備投資のタイミング及び金額)を確認し、金額等が適当でないと判断される場合は、事業計画を修正します。これによって、財務DDの検出事項が、買収価格に反映され、高値買いのリスクが低減されます。

 

②契約書に反映

「環境債務等の定量化できない偶発債務の存在」が報告された場合、①土地を譲渡対象から除外する等のスキーム変更、②土壌改善をM&Aの成立条件とする、③当事者が把握していない汚染事実が発覚した場合の補償方法等を検討し、契約書に織り込みます。これによって、財務DDの検出事項が、契約書に反映され、買い手のリスクが低減されます。

 

③PMI計画に反映

「多額の滞留債権」が報告された場合、買収後に内部統制の構築が必要になります。具体的には、与信管理、月次債権管理資料の作成・報告によって、滞留債権の適時検出、債権回収の早期実行ができる管理体制を構築します。そのための、経理規定の整備、経理メンバーの追加、本社サポート体制を検討します。このように内部統制の構築によって、買い手のビジネスリスクが低減されます。

 

 

2、買収価格への反映


財務DDの報告書は、調査結果を価値評価に反映する方法を明示的に記載したものばかりではないため、買い手は、財務DDの検出項目の価値評価(DCF法及び倍率法)への反映方法を理解しておく必要があります。倍率法では、すべての検出項目を価値評価に反映できるわけではない点に注意してください。

 

 

 

3、収益性分析


(1)一過性費用

●例えば、「創業50周年記念費用として100百万円を計上」のように一過性費用を前期に計上していた場合、DCF法及び倍率法では、どのように反映すればいいでしょうか。

 

●DCF法では、基準日以降のFCFの割引現在価値の合計が事業価値となるため、過去の一過性費用は、価値評価には影響しません。ただし、事業計画の販管費を見積もる際に、過去の販管費率を参考にする場合は、過去の販管費率の計算から一過性費用の影響を除外する必要があります。

 

●倍率法では、過去実績及び予算値に倍率を乗じて事業価値を計算します。そのため、過去実績及び予算値から一過性費用を除外することによって、一過性費用の影響のない事業価値が算定されます。

 

 

(2)撤退事業・取引先の喪失

●DCF法では、事業計画に撤退事業・取引先の喪失の影響が反映されているかを確認し、反映されていない場合は事業計画を修正します。なお、新規取引先の増加によって売上減少の補填を見込んでいる場合、当該取引の実現可能性を十分に検討します。

 

●倍率法では、過去実績又は当期予算から撤退事業・取引先の喪失にかかる影響を控除する必要があります。具体的には、過去実績又は当期予算から撤退事業にかかる損益及び喪失した取引にかかる損益を取り除きます。

 

 

4、BS分析


(1)滞留債権・滞留在庫(帳簿上、評価減を計上していない)

●滞留債権・滞留在庫は財務DDの最頻出の検出項目です。基準時点の運転資本に滞留債権・滞留在庫が含まれている場合、運転資本の水準が、適正な水準と比較して過大になっている可能性があります。そのため、基準時点の運転資本から滞留部分を控除して、運転資本の増減を計算します。なお、基準時点の債権・在庫の回転期間を用いて、将来の債権・在庫の残高推移を推計する場合、基準時点の債権・在庫から滞留部分を控除して回転期間を計算します。さらに、滞留在庫の処分に廃棄コストが見込まれる場合、廃棄コストを純有利子負債に含めます。

 

●倍率法では、運転資本の水準・増減を考慮しないため、滞留債権・滞留在庫の影響を価値評価に反映することが出来ません。そのため、DCF法との計算結果の相違要因となります。なお、滞留在庫の処分に廃棄コストが見込まれる場合、DCF法と同様に廃棄コストを純有利子負債に含めます

 

 

(2)引当金の不足

●財務DDで引当金不足が検出されるケースも非常に多いです。DCF法では、検出された引当金が毎期経常的に発生するキャッシュアウトに対応する場合(ex 製品保証引当金、賞与引当金等)、事業計画に適切な引当金の見込額を費用計上するとともに、引当金残高の増減を運転資本の増減としてFCFに反映させます。これによって、引当金のキャッシュアウトのタイミングとFCFが対応して、引当金の不足が事業価値に反映されます。検出された引当金が一時的に発生するキャッシュアウトに対応する場合(ex 資産除去債務)、キャッシュアウト見込み額を純有利子負債に含めます。

 

●倍率法では、検出された引当金が毎期経常的に発生するキャッシュアウトに対応する場合(ex 製品保証引当金、賞与引当金)、過去実績又は当期予算に適切な引当金の見込額を費用計上します。これによって、引当金の不足が事業価値に反映されます。検出された引当金が一時的に発生するキャッシュアウトに対応する場合(ex 資産除去債務)、DCF法と同様にキャッシュアウト見込み額を純有利子負債に含めます。

 

 

(3)偶発債務(訴訟、環境債務等)

●偶発債務は定量化しないと、価値評価に反映できないので、財務DD担当者は可能な限り、前提条件を置いて、偶発債務の定量化を図ります。DCF法及び倍率法ともに、定量化された偶発債務を純有利子負債として、事業価値の控除項目とします。

 

 

(4)過去の設備投資の不足

●過去の資金繰りの影響によって、設備投資が十分に行われていないケースがあります。DCF法では、事業計画の売上高を達成するために必要な設備投資見込額を将来のFCFに反映します。

 

●一方、倍率法では、将来の設備投資額を考慮しない(類似会社の設備投資の水準をベースとしており、個別企業の特殊事情を考慮しない)ので、過去の設備投資の不足の影響を価値評価に反映することが出来ません。そのため、DCF法との計算結果の相違要因となります。設備投資の不足額が金額的に重要である場合は、不足額を純有利子負債として、事業価値から控除することを検討します。

 

 

5、事業計画分析


(1)事業計画の前提条件

●「製品が成熟化しているにも関わらず、事業計画の販売価格が横置きのままである」、「新規取引先の増加によって販売数量の増加を達成する見込み」、「材料価格の変動を販売価格に転嫁するまでのタイムラグが長い」、「人件費のベースアップが考慮されていない」等、事業計画の前提条件が、過去の実績と比較してアグレッシブになっているケースが多くあります。DCF法では、市場データーや専門家のアドバイスを参照して、前提条件を見直し、見直し後の修正事業計画を基にした事業価値を算定します。

 

●倍率法では、過去実績又は予算をベースに事業価値を算定するため、前提条件の修正をダイレクトに事業価値に反映させることが出来ません。

 

 

(2)カーブアウト

●カーブアウト案件では、①コスト構造の変化( 売り手のグループ間取引から買い手のグループ間取引への変更等)と②一過性コストの発生(ex. ITデーターの移管コスト、オフィス移転コスト、従業員の引越費用等)が検出事項となります。

 

●DCF法では、カーブアウト後の前提条件に沿った事業計画を用いて価値評価をすることで、検出事項を価値評価に反映することができます。具体的には、①コスト構造の変化を事業計画に織り込み、②一過性コストを純有利子負債に含めて事業価値の控除項目とします。

 

●倍率法では、過去実績又は予算をカーブアウト後の数字に修正(プロフォーマ調整:過去にカーブアウトがあったと仮定して財務諸表を作成)をします。具体的には、①コスト構造の変化を過去実績又は予算に織り込み、これに倍率を乗じて事業価値を算定します。②一過性コストは、DCF法と同様に、純有利子負債に含めて事業価値の控除項目とします。