「マッチングサイトを使ったスモールM&A」こそ専門家選びが重要!

[マッチングサイトを活用したスモールM&A]

~年商1,000万円から2億円までのM&Aの現場から~

第4回:「マッチングサイトを使ったスモールM&A」こそ専門家選びが重要!

 

〈解説〉

税理士 今村仁

 

 

 

▷売上1,000万円程度からの「スモールM&Aお任せサービス」受付開始!M&A仲介業者への依頼に至らない規模の小さい案件も依頼しやすい手数料で。まずはお気軽にご相談を。

 

(1)ネットM&Aの世界は文字でしかない

後継者不在などの理由で、「廃業」ではなく「第三者承継(M&A)」を売り手社長が選択したとします。年商2億円以下のスモール企業(中小零細企業)であれば、「対面(リアル)」でお相手を探す銀行やM&A仲介業者には高額な費用の面で頼むことができません。

 

そこで、前々回お伝えしましたように、バトンズやトランビのようなM&Aマッチングサイトに無料登録を試みようとします。当然ですが、会社が特定されないノンネーム状態の会社概要のような感じでの登録となりますが、そのノンネーム状態の会社概要に、買い手の興味を引くような、もっといえば条件に合った買い手が現れるような情報を書き込まないといけません。

 

買い手からしてみると、最初は対面の説明など一切なく、また写真や動画ももちろんなく、文字オンリーでの情報で、買いたいか買いたくないかを判断する必要があります。そこに単に、「関西、製造業、従業員3名、売上6,000万円、赤字、安定した売上が特長」とだけ書かれていて、買い手が買いたいと思うでしょうか。

 

逆に、下記のような会社概要であれば、買い手はどう感じ、どのように行動するでしょうか。

 

超極細ばねから太物まで!バネの総合メーカー

【事業内容】

金属製スプリングの製作並びに販売 お客様からご注文をいただいた際は原材料・部品の購入から完成品として出荷されるまでの工程の各段階での、管理特性や管理方法を記載した表を使いご提案。その上で15社ほどの生産協力会社の中から適合性の高い先を選定し、製品の生産を依頼しています。 出来上がった製品を検査データとともに受け取り、当社にて受入検査を行ったのち、梱包・出荷をいたします。

【譲渡希望額】

1,000万円〜2,000万円

【会社概要】

[事業形態]法人

[都道府県・地域]××県

[設立年月]10年以上

[従業員数(正社員数、パート・アルバイトの合計)]1人〜4人

【財務概要】 ※ 公開日、または更新日から起算した直近期の財務概要です。

[売上高]5,000万円〜1億円

[売上総利益]2,000万円〜5,000万円

[営業利益]-100万円〜0円

[役員報酬総額]1,000万円〜2,000万円

[減価償却費]0円〜100万円

[現預金等]300万円〜500万円

[売掛金等]500万円〜1,000万円

[金融借入金]1,000万円未満

[純資産]1,000万円〜2,000万円

【M&A譲渡概要】

[譲渡希望額]1,000万円〜2,000万円

[譲渡対象]会社譲渡

[M&A交渉対象]すべて(個人も含む)

[その他希望条件]連帯保証の解除, 従業員雇用継続, 車を引き取りたい
【補足】借入金500万円の連帯保証の解除をお願いします。

 

[譲渡に際して最も重視する点]想いを継いでくれること

[譲渡理由]後継者不在

[支援専門家の有無]あり

【事業概要】

●商流(仕入先、販売先やエンドユーザー、モノの流れ)

 

[顧客、エンドユーザーについて]

家電や航空業界に使われるバネを販売。またばねの総合メーカーともお取引がございます。

 

[仕入れ先の特徴や関係性について]

長年の付き合いがあり、安定したお付き合いを続けています。

 

 

●アピールポイント(商品・サービス、資産・立地、会社の歴史等の強み)

 

[商品・技術・サービスの特徴や魅力]

15社ほどの生産協力会社との独自ネットワークを築き上げております。そのため一般的なスプリングの生産は勿論のことながら、特殊製品にも対応し数多くの商品を取り扱っています。

 

[当事業の歴史や創業の背景、想い]

社長は元々サラリーマンとして同業界の企業にお勤めでしたが、2002年、定年を機に当社を創業。長年の経験で得た知識・ネットワークを生かし、自ら営業活動を行ってまいりました。順調に仕事を増やしてきましたが、次を担う後継者がいらっしゃらないことからこちらへ掲載をすることになりました。社長は譲渡を急いでいるわけではなく働ける限りは現場にて業務に取り組みたいというお気持ちです(経理と荷造り担当の妻も同様)。 お客様のどんなニーズにもお応えすることがモットーです。

 

[事業の強み、発展性]

売上先が安定しております。 また、新規開拓をしていないため、売上向上の余地があります(見込先一覧表あり)。 品質には自信ありです。

 

 

以下、省略


(M&A総合支援プラットフォーム バトンズhttps://batonz.jp/より転載、一部修正)

 

 

 

 

M&Aという性格上、多数の優良な買い手にアピールしたいと思う反面、秘密保持にはそれ以上に注意を払わないといけません。そのため、売り手が特定されるような情報は載せられませんので、当然ながら写真等も基本的には掲載不可となります。

 

つまり、売り手は最初、「ほぼ文字だけの情報で、秘密を守りながら買い手へのアピール」を行わなければなりません。文章が得意な社長であればまだいいのですが、そうでなければ、文章力や表現力が豊富なマッチングサイトでのM&Aに特化したアドバイザーに頼まれた方がいいでしょう。文章作りは得意という方でも、「買い手目線で」会社概要を書かないといけないということと、買い手の数より質を高めることが重要でそのため「条件に合う良質な買い手を集める」という視点でも書かないといけませんので、やはり、売り手の方は、最初からこういったM&Aマッチングサイトの特性をよく知ったアドバイザーに頼んだ方がいいでしょう。

 

因みにですが、買い手が現れたらアドバイザーを入れようとするのはタイミングとして間違いです。不動産の売り案件と一緒で、一般的には最初に来る客が一番良い客であることが多いですので、最初のM&Aマッチングサイトに載せるところからアドバイザーに相談されることをお勧めします。

 

 

(2)買い手も最初からM&Aマッチングサイトに精通したアドバイザーを付けるとスムーズ

一方、買い手においては、サイト上で売り案件を見て、興味のあるものに対して、サイト上でメールを送るような感覚で、質問や実名開示依頼を行っていきます。

 

前回の解説で説明しましたが、M&Aマッチングサイト初心者の買い手がよくやる落とし穴は、「自己紹介や購入理由等の記載が何もなく、また売り手への配慮が無い言葉で質問のみ」を実行して、その後、売り手や売り手アドバイザーから「音沙汰なし」又は「返信はあるが素っ気ない」対応をされてしまうことです。

 

いずれは変化があると思いますが現在では、M&Aマッチングサイトは、買い手9割売り手1割の世界です。特に優良な売り案件には、20人以上の買い手が当然のように手を挙げます。M&Aマッチングサイトでは、買い手は、多数の買い手から売り手やそのアドバイザーにまずは選んでもらないといけないということを、常に念頭において交渉を進めないといけません、特に最初が肝心です。

 

弊社では過去に多数の売り手アドバイザーをしてきています。その結果、多数の買い手からのオファーをネット上で買い手同士の文章比較をしながら見ていますが、「よく売り手の立場を考えて練られた文章を送ってくる買い手や買い手アドバイザー」と「それ以外」は明白です。いくら、買い手に知名度や資金力があっても、M&Aマッチングサイトでは選ばれる買い手にならないと優良な売り案件にはその交渉の場にすらたどり着くことができません。過去にどれほど大きなディールに取り組まれていようが、「M&AマッチングサイトにはM&Aマッチングサイトなりの流儀やお作法」というものが存在します。そういった意味では、買い手も最初から、M&Aマッチングサイトに明るいM&Aアドバイザーを付けてその方に交渉をお任せした方が良いでしょう。

 

 

(3)全国の会計事務所に立ち上がって欲しい

私自身も会計事務所(税理士事務所)を経営していますが、顧客の8割は年商2億円以下のスモール企業です。もっと具体的にいえば、「年商8,000万円、従業員3名、トントンか赤字」といった感じの規模感等です。

 

会計事務所や税理士事務所の皆さん、このようなメイン顧客の社長が70歳を超えて後継者不在の場合、どんなアドバイスや支援をされてきましたか?高齢の社長より、「息子が継ぎたくないっていっているけど、この先どうしよう?」と言われて、どんな励ましの言葉をかけることができましたか、どんな対策を提案されてきましたか?

 

既存のM&A仲介業者や銀行等に頼むと、最低手数料1,000万円からと言われますので、ご紹介すらできませんし、先方も引き受けてくれません。

 

今までこのような顧問先にできることといえば、粛々と廃業に向けての「会社の終活支援」や「廃業支援」くらいではなかったでしょうか?さらにいえば、これらの支援すらしてあげられなかったのが、多くの会計事務所の実態ではないでしょうか。

 

同業者ですからご容赦願う前提でストレートに言わせていただければ、今までの会計事務所の後継者不在スモール企業への対応は、「ほったらかし」でした。もしその顧問先の年間顧問料が50万円で、20年のお付き合いがあれば50万円×20年=1,000万円、40年のお付き合いがあれば50万円×40年=2,000万円を、今まで頂戴してきたにも関わらず、最後にできることは、「ほったらかし」です。

 

これでいいのでしょうか?こんな無策で、本当に間違っていないのでしょうか?こんな仕事のやり方で、子供世代に会計業界について自信をもって説明できますか?

 

「M&Aマッチングサイトを使ったスモールM&A」では、このような後継者不在企業に、平均して7社の買い手候補を、無料で連れてきてくれます。「M&Aマッチングサイトを使ったスモールM&A」の仕組みを顧問先に伝えることは、会計事務所の使命ではないかと思います。

 

例えばですが、バトンズというM&Aマッチングサイトでは、無料登録が可能で更には登録サポートも無料になっています。社長やその親族等に、「バトンズとネット検索してみて」などとお伝えしてみてはいかがでしょうか。

 

できれば、会計事務所の方が登録の仕方やネットを使ったスモールM&Aの仕組みを理解して、登録代行等をしてあげるとなお良いでしょう。M&Aマッチングサイトを通じてマッチングをしてきた買い手の情報を顧問先にお持ちすると、それこそ飛び上がって喜ばれることもあります。「廃業しかないと思っていたのに、継いでくれる可能性のある人が現れるとは!」、と。

 

今まで廃業しか選択肢が無かった、特に地方のスモール企業に、第三者承継という手段を与えたという意味で、控えめにいって、プラットフォームとも呼ばれるM&Aマッチングサイトは、「革命」を起こしたと言えるでしょう。廃業であれば、650万人の雇用と22兆円のGDPが喪失する可能性がありますが、廃業ではなく第三者承継が実現すれば、取引先や雇用が継続されます。売り手社長自身にとっても、廃業より手残りが多くなるでしょう。

 

M&Aマッチングサイトを革命の第1章とすれば、革命の第2章は、全国の会計事務所や税理士事務所が立ち上がって、後継者不在の顧問先をマッチングサイトに多数登録していくような状況をいうのではないかと考えています。全国には、127万者の後継者不在企業等がありますが、まだまだM&Aマッチングサイトを見る限りそれらの一部しか登録がされていません。廃業予備軍ともいえる多数のスモール企業に、M&Aマッチングサイトを使ったM&Aの世界がまだまだ認知されていないからです。これら全国のスモール企業にリーチできるのは、全国の会計事務所しかありません。そう考えると、革命の第2章の主役は、全国の、特に地方の会計事務所や税理士事務所ではないでしょうか。全国の会計事務所や税理士事務所の皆さん、共に立ち上がり、革命第2章を共に歩みましょう。