【Q&A】住宅取得等資金の贈与のあった年に贈与者が死亡した場合の課税関係

[解説ニュース]

【Q&A】住宅取得等資金の贈与のあった年に贈与者が死亡した場合の課税関係

 

〈解説〉

税理士法人タクトコンサルティング(山崎 信義/税理士)

 

 

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【問】

Aさん(35歳)は、自宅の建築資金として令和6年2月に父(70歳)より現金500万円の贈与を受けました。この500万円は、ハウスメーカーとの間で同年3月に自宅の建築請負契約を締結した際に、手付金に充当しました。自宅建物は同年3月末に完成し、Aさんは同月より居住しています。Aさんは、この500万円について、住宅取得等資金の非課税の適用を受けるつもりでした。ところが、上記500万円を手付金として支払った後の同年10月に、父が急死しました。父の財産を相続したAさんは、父に係る相続税を納めることになる見込みです。Aさんは過去、父からこの500万円以外に財産の贈与を受けておらず、令和6年中は父以外の人からも、財産の贈与を受ける予定はありません。
上記の場合において、Aさんが住宅取得資金として贈与を受けた金額の税務上の取扱いを教えてください。

【回答】

1.結論


Aさんが父から受けた贈与が住宅取得等資金の非課税制度の要件を満たす場合、Aさんが取得した500万円に贈与税・相続税は課税されません。

2.解説


(1)相続開始の年に被相続人から相続人への贈与があった場合の相続税法上の原則的な取扱い

①相続税の取扱い

 

相続又は遺贈(以下「相続等」)により財産を取得した個人が、その相続等の開始前7年以内*に、その相続に係る被相続人から贈与により財産を取得したことがある場合は、その者については、その贈与により取得した財産の価額(贈与税の課税価格計算の基礎に算入されるものに限ります。)が相続税の課税価格に加算されます。なお、その加算された贈与財産の価額に対応する贈与税の価額は、加算された個人の相続税の計算上控除されることになります(相続税法(相法)19条第1項)。

 

*相続開始が令和6年の場合は、経過措置により「3年以内」となります(以下(2)において同じ)。

 

②贈与税の取扱い

①に対応する措置として、相続等により財産を取得した者が、相続開始の年において、その相続等に係る被相続人等から受けた贈与により取得した財産の価額で、前述の規定により相続税の課税価格に加算されるものは、贈与税の課税価格には算入されません(相法21条の2第4項)。

 

①と②により、被相続人から相続により財産を取得した個人が、その相続開始の年に被相続人から贈与により取得した財産があった場合、その贈与により取得した財産には相続税が課税され、贈与税は課税されないことになります。

 

(2) 相続等により財産を取得した個人が、相続等の開始前7年以内に住宅取得等資金の贈与を受けた場合の住宅取得等資金に係る相続税の取扱い

その年の1月1日に18歳以上である等の一定の要件を満たす個人が、父母等の直系尊属から贈与により取得した自己の居住用の家屋の新築、取得又は一定の増改築等の対価に充てるための金銭(「住宅取得等資金」)を取得し、贈与を受けた年の翌年3月15日までに住宅取得等資金の全額を自己の居住の用に供する一定の家屋の取得等の対価に充て、同日までに自己の居住用に供した等の場合は、贈与税の申告を要件に、住宅取得等資金のうち一定の上限額までは、贈与税が非課税とされます(租税特別措置法(措法)70条の2第1項等)。

 

相続等により財産を取得した個人が、その相続等の開始前7年以内(ただし相続開始が令和6年の場合、経過措置で3年以内)に、その相続等に係る被相続人等から住宅取得等資金の贈与を受け、かつ特定受贈者に該当する場合で、前述(2)①の適用を受けて贈与税の課税価格に算入されなかった金額(Aさんが贈与税の確定申告をして(2)①の制度の適用を受けた場合は、その500万円がこれに当たります。)は、前述の原則的な取扱いによらず、被相続人(贈与者)に係る相続税の計算上、課税価格に加算されないこと、つまり非課税となります(措法70条の2第3項及び措置法施行令40条の4の2第13項による相法19条第1項の読替え)。

(3)本問へのあてはめ


父から贈与を受けた現金500万円につきAさんが(2)①より贈与税の住宅取得資金等の非課税の適用を受けた場合、その500万円はAさんの贈与税の課税価格に算入されず、父に係る相続税の計算上、課税対象にもなりません。

 

 

税理士法人タクトコンサルティング 「TACTニュース」(2024/7/22)より転載