Q-13 M&Aが向いている業種・向いていない業種はありますか?

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Q-13 M&Aが向いている業種・向いていない業種はありますか?|3分でわかる!M&Aのこと【解説コラム】
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今後、ますます活用が進んでいくであろうM&Aについて、できるだけわかりやすくQ&A形式で解説するコラムを掲載することにしました。ぜひご一読ください!
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Q-13 M&Aが向いている業種・向いていない業種はありますか?
A
M&Aが向いている業種、ということですが、「向いている」ということが、M&Aがよく行われている、多くの人が対象の案件を探している、ひいては対象として人気がある、ということだとしても、「〇〇業が向いている」のように一概にいうことは難しいのが実情です。
流行り廃りもありますし、時流といいますが、その時の状況によってM&Aが行われる業種の傾向は変わってくるものだからです。
よって、「M&Aが向いている業種・向いていない業種はあるか?」という問に関する答えは「ない」もしくは「その時の状況によって変わる」ということになるかと思います。
しかし、それでは身も蓋もないので、業種にこだわらず、どんな要素があればということを起点として「M&Aに向いている」と言えるのかを考えてみたいと思います。
M&Aが向いていると言える状況とは、M&Aという商品が存在し、そこにお客様が買い求める価値があるということ、要は、商品(M&A対象会社)に価値がつくことが最低条件になります。そうなると、概念論になりますが、(1)成長市場がある、(2)固定的な顧客を有する、(3)特許等はじめしくみに競争力がある、(4)立地が良い、(5)取引先が複数に分散している等があげられます。逆に申し上げますと、下記の(1)~(5)の要素がない場合、ほとんど営業権の価値はありませんので、資産中に価値ある不動産等が存在しない限り、M&A価格は値が付かないこととなり、M&Aに向いていないこととなります。(「不動産M&A」については、別の機会にご案内させていただければと思いますので、本稿のM&Aは「不動産外M&A」とご理解ください。)
まずは(1)ですが、M&Aが成立する基本図式として、成長市場があり、その認識やそれに立ち向かうパッション・能力の差にギャップがあればあるほど、買い手が名乗りを上げてくれること自体が売り手にとって有り難いこととなります。M&Aで最も一般的な事業承継におけるケースも、当然、この原理が働きます。
(2)の固定的な顧客については、昨今では、その顧客からの売上・利益がどれだけ見込めるかということはもちろん、その顧客を持っていること自体が他のビジネスにどう相乗効果をもたらすかについて買い手は大いに興味を示すところです。
(3)については、技術的なこととなりますが、その特許の有効期間や範囲、技術・ノウハウ等の賞味期限や競争性が問われます。例えば、非破壊検査の技術などは、昨今、引っ張りだこです。
(4)については過去、「普通借家権」をベースにM&Aが行われていたころ、大変重要視されてきましたが、昨今のように「定期借家権」がベースとなっている事業については、あまり考慮されません(逆に、商業系・飲食系は、立地が価値を大きく決定づけます)。
最後に(5)の取引先の分散については、分散度合いが高ければ高いほど、買い手としての価値評価が大きく上がります。昨今では、アクティブ・ユーザー数(有効アドレス数)が重要なバリュードライバーとなるM&Aが多く散見されるところです。
(執筆:税理士 高井 寿)
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高井 寿(たかい ひさし)
高井国際税務会計事務所 代表税理士 東京税理士会世田谷支部副支部長
2002年税理士登録、経営品質協議会認定アセッサー、CFPファイナンシャルプランナー、経営計画策定、国内及び国際タックスマネジメント、事業・資産承継、組織再編・連結納税、MAが専門。財団法人日本民事信託協会代表理事。
(著書等)「連結納税マニュアル(税務研究会)」「営業権の実務」(税務通信(税務研究会))、「経理システムと税務」「寄付金課税の問題点」(ともに税務弘報(中央経済社))、「資産家・事業家税務コンサルティングマニュアル」(税務研究会)
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