[解説ニュース]

法人が匿名組合契約により営業者に金銭出資している場合の出資金の相続税評価

 

〈解説〉

税理士法人タクトコンサルティング(山崎 信義/税理士)

 

 

 

1.匿名組合契約の概要


(1)匿名組合契約とは

匿名組合契約とは、当事者の一方(匿名組合員)が相手方(営業者)の営業に対して出資し、営業者はその営業から生ずる利益を匿名組合員に分配することを約する契約をいいます(商法535条)。

 

 

(2)匿名組合員の出資した財産の帰属

匿名組合員の出資は営業者の財産に属し(商法536条1項)、匿名組合員は営業者の行為につき第三者に対して権利義務を有しません(同4項)。
匿名組合員の出資した財産はすべて営業者に帰属し、匿名組合員は営業者が匿名組合員の出資により取得した財産に対して、何らの持分も有しません。

 

(3)契約期間中の利益と損失の分担

営業者はその各営業年度末において、匿名組合員に対し、匿名組合の営業により生じた利益を分配すべき義務を負い、匿名組合員は営業者に対し、匿名組合の営業から生ずる利益の分配を受ける権利を持ちます。匿名組合員による損失の分担は匿名組合契約に必要な要素ではありませんが、匿名組合契約に係る事業は匿名組合員と営業者による事実上の共同事業であることから、その契約に損失を分担しない旨の定めがない限り、匿名組合員は損失の分担をするものと解されています。

 

(4)匿名組合契約終了時の出資の返還

匿名組合契約が終了した場合には、営業者は匿名組合員にその出資の価額を返還しなければなりません。ただし、出資額が損失の分担により減少している場合には、その残額を返還すればよいとされています(同542条)。

 

 

 

2.【Q&A】法人が保有する匿名組合契約に係る出資の相続税法上の評価の解説


【問】

非上場会社の㈱Aは、B㈱との間で、自社を匿名組合員、B社を営業者とする匿名組合契約を締結し、B社の行う航空機リース事業に対して金銭出資をしています。A社の株主甲の死亡に伴い、甲に係る相続税の計算上、A社株式の1株当たりの純資産価額を評価する場合、A社の有する匿名組合契約に係る出資の評価はどのように行うべきでしょうか。なお匿名組合契約上、A社はその匿名組合の事業により生じた損失を分担しない旨の定めはありません。

 

【回答】

(1)匿名組合出資の評価の考え方

匿名組合契約に係る組合員の権利(以下「匿名組合出資」)の相続税法上の評価方法について、法令及び通達による特段の定めがありません。実務上は、平成20年7月25日東京国税不服審判所の裁決例等により、次のように取扱われています。

 

まず匿名組合出資の内容は、1(3)と(4)より、【営業者に対する利益配当請求権+匿名組合契約終了時における出資金返還請求権】と認められます。

 

匿名組合契約が終了した場合、上記1(4)より営業者は匿名組合員に匿名組合出資の価額を返還する必要があり、営業者はその財産状態を計算して、匿名組合員に対しその出資の価額を返還することになります。その出資の価額の返還における計算は、営業者と匿名組合員の間で実質上共同により事業を行っているといえるため、民法上の組合の規定(民法681条)を類推適用することが妥当であり、民法681条では組合員が脱退した場合の持分の払戻しにつき、脱退時における組合財産の状況に従って行うべきと定められているところです。

 

以上により匿名組合出資の価額は、出資金を含めた匿名組合契約に基づく営業者の全ての財産及び債務を対象とし、課税時期(本問では相続により財産を取得した日)において、その匿名組合契約が終了したものとした場合に、匿名組合員が分配を受けることができる清算金の額に相当する金額とするべきと解されます。また清算金の額は、財産評価基本通達(財基通)185(純資産価額)を準用し、課税時期における営業者のその匿名組合事業に係る全ての財産の相続税法上の評価額から、同事業に係る全ての負債の金額を差引いて計算すべきといえます。この場合、匿名組合自体には法人税が課税されないので、法人税等相当額の控除(37%控除)は行いません。

 

(2)匿名組合の事業に属する航空機の評価方法

(1)の匿名組合出資の相続税法上の評価においては、匿名組合の事業に属する航空機を評価する必要がありますが、財基通にその定めがありません。実務上は、財基通5より、航空機と同様に中古市場がある船舶の評価方法を定めた同136を準用し、原則、売買実例価額、精通者意見価格等を参酌して評価するものと考えられます。

 

 

 

 

 

 

税理士法人タクトコンサルティング 「TACTニュース」(2020/09/14)より転載

[解説ニュース]

借地人の建物を地主が取壊した際の費用をめぐる税金トラブル

 

〈解説〉

税理士法人タクトコンサルティング(遠藤 純一)

 

 

[関連解説]

■最近の事例にみる「不動産所得で経費になるもの」

■不動産取得税の「相続による取得」を巡る最近のトラブル

 

1.はじめに


最近、借地人側で相続が開始し、借地契約の解約、借地人の建物収去の問題が発生、それが地主の税金トラブルになるケースが散見されます。問題なのは、借地人の相続人に財力が期待できない場合です。というのも、地主側で建物を取壊す場合には、借地人名義の建物の収去費用について税金トラブルになることがあるからです。

 

借地人名義の建物の取壊しは本来、借地人が行うべきものです。建物を収去して更地にして返す契約となっているためです。この建物収去費用が地主の不動産所得の計算上必要経費と認められるかどうかをめぐって、昨年2つの裁決事例が出ています。1つは、必要経費と認められたもの(国税不服審判所、令和元年9月20日)、もう1つは必要経費として認められなかったもの(国税不服審判所、令和元年9月3日)です。その違いはどこにあったのか、見ていくことにします。

 

 

2.必要経費と認められた場合


事案の成り行きは次の通りです。

 

1、未払地代もあった借地人の相続(平成24年10月)に伴い、その相続人全員が相続放棄をした。

 

2、亡くなった借地人の財産は、相続財産法人に移行(民法951条)。

 

3、地主は平成25年8月、管轄の家庭裁判所に借地人の相続財産管理人の選任の申立てを行い(民法952条)、費用約100万円を予納した。同年9月管理人が選任。

 

4、地主は、平成25年10月、未払賃料の1週間以内の支払い催告とともに、支払いなきときは土地の賃貸借契約解除の意思表示の書面を相続財産管理人に送る。同月、土地の賃貸借契約は解除。

 

5、地主は相続財産法人を相手に、管轄の裁判所に対し賃貸住宅である建物の収去、損害金支払い等を求め提訴。

 

6、地主は、平成27年4月、建物の借家人の立退き、建物収去などにつき相続財産法人と和解が成立。

 

7、地主は和解条項通りに建物が収去されなかったので、同年12月までに裁判所の建物収去の代執行、土地明け渡しの強制執行を申立て、翌年3月までに執行を完了。収去費用は約650万円。

 

 

国税不服審判所は、前記事実関係などから「請求人らが本件土地を賃貸業務以外の用途に転用したことをうかがわせる事情も認められないことからすれば、請求人らの土地の貸付けに係る業務、すなわち、不動産所得を生ずべき業務は、土地賃貸借契約の解除後本件各建物の収去に至るまで継続していたものと認められる」と認定。

 

そのうえで「土地から収益を得る業務を遂行するためには、(借地人の)建物を収去する必要があり、その収去に係る費用については、当初から自らが負担することを想定して建物の収去までの手続を遂行し、建物収去費を支出したところ、実際にも、相続財産法人は無資力であり、支出の時点において、請求又は事後的に求償しても、およそ回収が見込めない状況にあったのであり、客観的にみても、建物収去費は、請求人らにおいて、自ら負担するほかなかったものと認められる」として「建物収取壊費用の支出は、客観的にみて、不動産所得を生ずべき業務と直接関係し、かつ、業務の遂行上必要なものであった」としています。

 

 

3.必要経費と認められなかった場合


次の事案も、借地人側で相続が開始し、借地人の相続人が地代滞納したため、平成25年に地主が賃料債務不履行を理由に契約解除の意思表示をし、契約解除、建物収去明け渡しに関し裁判沙汰になったものです。ただ、平成26年に裁判外で「借家人の退去や建物解体手続きに協力すること、それが実現したときはその費用等を免除する」といった和解をしていました。

 

建物の収去は平成26年6月あら8月末までの間に行い、地主は、取壊しに係る費用3,656,880円を支払ったというものです。

 

国税不服審判所は、地主が「借地人が経済的に困窮しているため、建物の収去義務を確実かつ迅速に履行する保証がない旨判断し、和解契約を締結した上で、自己の負担で本件建物を取り壊した」としているが「各借地人の資産状況及び支払資力などを裏付ける客観的な資料をいずれも確認しておらず、また、各借地人のうち少なくとも1名にはその当時一定の所得があったことが認められることからすれば、請求人が取壊費用を負担せざるを得ない事情があったとは認められない」として、収去費用を必要経費と認めませんでした。

 

 

 

 

税理士法人タクトコンサルティング 「TACTニュース」(2020/09/07)より転載

[解説ニュース]

円滑な事業承継のための種類株式の活用

 

〈解説〉

税理士法人タクトコンサルティング(吉濱 康倫/税理士)

 

 

[関連解説]

■事業承継税制を複数の後継者に適用する場合の留意点

■贈与税の納税猶予の適用を受ける贈与により非上場株式を取得した者のみなし配当課税の特例

 

 

 

1.種類株式とは


会社法では「株式会社は、株主を、その有する株式の内容及び数に応じて、平等に取り扱わなければならない。」(会社法109条1項)としており、株式一株の権利内容は、原則として同じです。しかし、株式会社は異なる定めをした内容の異なる二以上の種類の株式を発行するように、定款で定めることができます(会社法108)。これを「種類株式」といいます。

 

 

2.種類株式の活用例


(1)議決権制限株式

議決権制限株式とは、株主総会における議決権を行使することができる事項について、他の株式とは異なる定めを置く株式です(会社法108条1項3号)。事業承継における問題として、相続による株式の分散により議決権が分散するため、後継者が過半数の議決権を確保することが困難になるという点が考えられます。これを解消するため、オーナー経営者が保有する普通株式の一部を完全無議決権株式に転換しておき、後継者に普通株式を、後継者以外の相続人には完全無議決権株式を相続させることで、株式は分散しても議決権を分散させないことが可能です。

 

(2)取得条項付株式

取得条項付株式は、株式を発行する会社が一定の事由が生じたことを条件として、その株式を取得できるという株式です(会社法108条1項6号)。取得条項付株式の対価は金銭に限らず、社債や他の種類株式など幅広い設定ができます。これを利用して、議決権制限株式に取得条項をつけておき、いつでも普通株式に転換できるようにしておくことも可能です。例えば、複数の後継者候補に議決権制限付かつ取得条項付株式を贈与しておき、後継者が確定した時点で普通株式に転換することで、後継者のみが議決権を手にすることができます。また、後継者以外の者に相続させる株式を取得条項付株式にしておけば、分配可能額((3)参照)の範囲で会社は自由にその株式を買い取ることが可能であり、少数株主対策の心配が無くなります。

 

(3)分配可能額

分配可能額とは、簡単に言うと、株式会社の最終の貸借対照表の純資産の部に計上されているその他資本剰余金の額とその他利益剰余金の合計額から、自己株式の帳簿価額等及び当期に既に分配した価額をマイナスした残額です(会社法461条2項)。また、株式会社が期中に臨時決算手続き(会社法441条)を行うことにより、前期末から配当基準日までの期間分の利益を分配可能額に反映させ、当該利益分だけ分配可能額を増加させることができます(会社法461条2項2号)。
株式会社が自己株式の買い取りを行う場合には、自己株式の取得の対価の総額が、分配可能額を超えることができないという規制(財源規制)があります(会社法461条1項)。この財源規制に違反して、株式会社が自己株式の買い取りをした場合であっても、原則としてその買い取り自体は無効にはなりません。しかし、取得条項付株式が自己株式として買い取られる場合(会社法155条1号)は、これらの財産の帳簿価額が分配可能額を超えているときには、取得条項付株式の取得が無効になります。(会社法170条5項)

 

 

3.種類株式を発行するための手続き


種類株式を発行するには、種類株式の内容及び発行する数を定款に定めて登記しなければなりません。(会社法108条2項、911条3項7号)。定款に種類株式に関する定めがない場合は定款を変更する必要があります。定款を変更するためには、株主総会の特別決議(議決権を行使できる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した株主の議決権の3分の2以上の多数)が必要です(会社法309条2項11号、466条)。

 

 

4.種類株式の相続税法上の評価


財産評価基本通達(以下「財基通」)には種類株式の類型ごとに評価方法を定めている規定はありません。平成30年版財基通逐条解説704頁~705頁の「[参考2]種類株式の評価方法」では、「多種多様な種類株式については、権利内容や転換条件など様々な要因によってその発行価格や時価が決まってくると考えられる。しかもこのような種類株式については、社会一般における評価方法も確立されていないうえに、権利内容の組み合わせによっては、相当数の種類の株式の発行が可能であるから、その一般的な評価方法をあらかじめ定めておくことは困難である。したがって、財基通に定める評価方法がなじめないような種類株式については、個別に権利内容等を判断して評価する」という趣旨の考え方が示されています。その中で、中小企業の事業承継目的で活用が想定される特定の種類株式の評価方法は、国税庁から公表されている「相続等により取得した種類株式の評価について」や質疑応答事例において紹介されています。

 

 

 

 

税理士法人タクトコンサルティング 「TACTニュース」(2020/08/31)より転載

[解説ニュース]

民法改正~遺産分割前における相続預貯金債権の払戻し制度~

 

〈解説〉

税理士法人タクトコンサルティング(髙橋 大貴/税理士)

 

 

[関連解説]

■【Q&A】2次相続の申告後に、1次相続に係る遺留分侵害額請求に基づく支払額が確定した場合

■民法改正 ~特別の寄与~

 

 

1.はじめに


平成30年7月13日に公布された「民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律」のうち、新民法第909条の2に規定する遺産分割前における相続預貯金債権の払戻し制度(以下、「民法の預貯金払戻し制度」)を中心に解説します。

 

2.預貯金払戻し制度の創設以前の問題点


預貯金払戻し制度の創設以前は預貯金債権も一般債権同様に、法律上当然に分割され、相続人が法定相続分に応じて承継されるとされてきましたが、平成28年12月19日の最高裁大法廷決定に基づき、相続された預貯金債権は遺産分割の対象財産に含まれることとなり、共同相続人による単独での払戻しができないこととなりました。このため、被相続人が有していた預貯金を生活費等の資金需要のため遺産分割前に払戻す必要がある場合であっても、被相続人の共同相続人全員からの同意を得ることができない場合には預貯金の払戻しができないという問題が生じていました。

 

3.「民法の預貯金払戻し制度」の概要


上記2の問題点を踏まえて、相続財産の遺産分割前であっても、各相続人が当面の生活費や葬儀費用の支払い等のために資金が必要となった場合に対応できるよう、下記4の払戻し限度額(までについては、家庭裁判所の判断を経なくても金融機関の窓口における払戻しが受けられるようになりました(民法909条の2)。

 

 

4.預貯金払戻し限度額


(1)限度額

各相続人は、遺産に属する預貯金のうち、相続開始時の預貯金債権額(金融機関の口座ごとに判断します。)の3分の1に払戻しを行う共同相続人の法定相続分を乗じた額(上限150万円)について、家庭裁判所の判断を経ず払戻しを受けることができます。
ただし、民法第909条の2に規定する法務省令で定める額を定める省令(平成30年法務省令第29号)で、一つの金融機関から払戻しが受けられる上限額は150万円と定めています。

 

(2)計算例

相続人が長男及び次男の2名(法定相続分各2分の1)で、相続開始時の預金額がA銀行の普通預金1,200万円、定期預金300万円、B銀行の普通預金600万円の場合において、次男が預貯金の払戻しをおこなうときの預貯金払戻し限度額は以下の様に計算します。

 

イ:A銀行普通預金1,200万円×1/3×1/2=200万円
ロ:A銀行定期預金 300万円×1/3×1/2=50万円
ハ:B銀行普通預金 600万円×1/3×1/2=100万円

 

上記より、A銀行は上限額の150万円(イ+ロ=250万円>150万円)でB銀行は100万円(ハ=100万円≦150万円)となり、次男は単独で合計250万円の預貯金払戻しを行うことが可能です(参考:堂薗幹一郎・神吉康二「概説 改正相続法」(きんざい)55頁)。

 

 

5.払戻しを受けた預貯金の取扱い


民法の預貯金払戻し制度により払戻された預貯金は、その後に遺産分割協議がまとまった際の相続人間の公平性を図るために、払戻しを受けた相続人が遺産の一部分割によりこれを取得したものとして取扱われることになります(民法909条の2後段)。なお、預貯金払戻しを受けた相続人の預貯金払戻し相当額が相続人の実際の相続分を超過している場合には、当該超過部分を清算すべき義務を負うことになります。

 

6.必要書類


民法の預貯金払戻し制度を利用するにあたっては、本人確認書類に加えて、被相続人・相続人の戸籍謄本等が必要となります。
ただし、法律上規定を設けていないため、取引金融機関により必要書類が異なる可能性がありますので、当該預貯金の払戻制度を利用する際には利用する取引金融機関に事前確認することが望ましいです。

 

7.施行日


民法の預貯金払戻し制度は、令和元年7月1日以後に開始した相続より適用されています。
なお、経過規定として上記施行日前に開始した相続であっても、施行日以後に預貯金債権の払戻しが行使されるときにも、預貯金払戻し制度が適用されます(平成30年法律第72号附則5条1項)。

 

8.家事事件手続法の預貯金払戻し制度


預貯金払戻し制度については、上記の民法の規定によるもののほか、各相続人が家庭裁判所へ申し立ててその審判を得ることにより、相続預金の全部または一部を仮に取得し、金融機関から単独で払戻しを受けることができます。ただし、家庭裁判所が上記の払戻しを認めるのは、各相続人に生活費の支弁等の事情により相続預金の仮払いの必要性が認められ、かつ他の共同相続人の利益を害しない場合に限られます(家事事件手続法第200条第3項)。

 

 

 

 

 

 

税理士法人タクトコンサルティング 「TACTニュース」(2020/08/17)より転載

[解説ニュース]

等価交換事業が行われた場合に適用を受けることが出来る譲渡所得の特例

 

〈解説〉

税理士法人タクトコンサルティング(薦田 彩子/税理士)

 

 

[関連解説]

■店舗兼住宅を譲渡した場合の居住用財産の3,000万円控除と事業用資産の買換え特例の併用

■居住用財産の譲渡に係る3,000万円控除から住宅ローン特別控除への特例選択の変更の可否適用を受けることの可否

 

【問】

京都千代田区に土地を保有するAと、不動産業者Xとで共同マンションを建築する、いわゆる等価交換事業を行うことになりました。マンション建築後、Aは土地譲渡の対価として土地と同価値の2室を取得し、下図の用途に供する予定です。

 

土地は30年前の取得時より価値が上昇しており、譲渡所得の金額として所得税等の課税対象となることから、下記いずれかの特例の適用を検討しています。それぞれの特例の適用を受けた場合のメリット・デメリットを教えて下さい。

 

①立体買換えの特例(措法37条の5第1項2号)
②居住用財産の譲渡にかかる3000万円の特別控除および軽減税率の特例(措法35条、31条の3)

 

なお、建物は耐用年数が経過しており価値はなく、不動産業者XはAと特別な関係はありません。

 

 

 

【回答】

1.各特例の概要


(1)立体買換えの特例(既成市街地等内における中高層耐火共同住宅建設のための買換え特例)

 

等価交換事業のための特例として、「立体買換えの特例」という制度が設けられています。一定要件を満たせばその不動産の譲渡益の全部又は一部に係る所得税等の課税を繰延べることができます。

 

Aは買換え資産を自己の居住用、および自己の貸付用に供していることから、他の一定要件を満たせば本特例の適用を受けることが出来ます。主な要件の概要は以下の通りです(措法37条の5第1項2号、措令25条の4、措通37の5-1~5-10)。

 

 

(2)居住用財産の譲渡にかかる3000万円の特別控除・軽減税率の特例

自己が居住していた家屋やその敷地を親族関係等特別の関係がない相手に売却した場合、一定要件を満たせば譲渡所得の金額から最大3,000万円の控除を受けることができます(措法35条第1項、2項)。また、保有期間が譲渡年の1月1日において10年超であることなどの一定要件を満たす場合には、軽減税率の特例の適用を重ねて受けることができます(措法31条の3)。なお、(1)の立体買換えの特例とは併用ができず、選択適用となります(措法37条の5第1項、31条の3第1項)。

 

 

2.各特例を受けた場合のメリット・デメリット


(1)立体買換えの特例

メリット:土地の譲渡益の全部にかかる所得税等の課税を繰り延べることができるため、今回の申告では納税が0になります。
デメリット:買換え資産の取得価額は、譲渡資産の取得価額を引き継ぐため、将来買換え資産を売却した際に課税を受けることになります。

 

(2)3,000万円の特別控除・軽減税率の特例

メリット:3,000万円までの譲渡益に対する課税が免除され、3,000万円を超える部分も軽減税率の特例の適用があります。取得価額は現在の時価となり将来への課税の繰り延べはありません。
デメリット:譲渡益が3,000万円を超える部分は課税を受けるため、現金が手許に残らない等価交換事業では、納税が困難であるケースも予想されます。

 

 

 

 

 

 

 

税理士法人タクトコンサルティング 「TACTニュース」(2020/07/27)より転載

[解説ニュース]

持分の定めのある社団医療法人の解散と課税関係

 

〈解説〉

税理士法人タクトコンサルティング(飯田 美緒/税理士)

 

 

【問】

医療法人にてクリニックを経営しています。後継者もいないため、医療法人を解散しようかと考えています。当法人は出資持分の定めのある社団医療法人です。医療法人の解散手続きと、課税関係について教えてください。

 

 

【回答】

1.社団医療法人の類型


社団医療法人は、その定款に出資持分に関する定めがあるかないかで「出資持分のある社団医療法人(以下、「持分あり法人」といいます。)」と「出資持分のない社団医療法人(以下、「持分なし法人」といいます。)」に区分されます。「出資持分」とは社団医療法人に出資した者が、その医療法人の財産に対し、出資額に応じて有する財産権をいいます。

 

2.解散事由


医療法第55条おいて、医療法人の解散事由を次のように定めています。

 

①定款をもって定めた解散事由の発生
②目的たる業務の成功の不能
③社員総会の決議
④他の医療法人との合併(合併により当該医療法人が消滅する場合に限る。)
⑤社員の欠亡
⑥破産手続き開始の決定
⑦設立認可の取消し

 

恣意的な解散を防ぐ趣旨から、②③については都道府県知事の認可が必要とされています。①⑤については都道府県知事への届出を要します。

 

3.解散手続き


2.③の社員総会の決議により解散する場合には、定款に別段の定めがない限り、総社員の4分の3以上の賛成が必要です。解散の認可申請書(仮申請)には、解散理由書、社員総会議事録、財産目録、貸借対照表、残余財産処分方法、清算人就任予定者などを記載した書類を添付(医療法施行規則第34条)して、都道府県へ提出し、事前審査を受けます。書類の不備等を修正し、本申請となります。その後都道府県医療審議会の諮問を経て認可/不認可の処分となります。

 

医療審議会は年に2回程度しか開催されないため、場合によっては事前審査から認可/不認可の処分まで1年近くかかる場合もあります。株式会社と違い、認可がおりなければ解散の効力が発生しないので注意が必要です。認可がおりたら解散の登記を行い、清算手続きに入ります。残余財産の処分が完了したら、清算決了の登記、都道府県知事への届出を行い、法人格が消滅します(医療法第56条の2)。

 

4.課税関係


(1)医療法人に対する課税

解散の日の翌日以降も、その所得計算は通常の事業年度と変わらず、損益法により法人税の申告を行い、課税されます。残余財産確定の日に終了するいわゆる最後事業年度についても同様に損益法により申告を行います。申告期限は、残余財産確定の日から原則1ヶ月以内です。これらについては通常の株式会社と変わりありません(法人税法第74条2項)。

 

(2)出資者に対する課税

解散した医療法人に残余財産があれば、残余財産を定款の定めに基づき処分します。持分あり法人であれば、定款において、出資者にその出資額に応じて分配すると定めているものが一般的です。解散による残余財産の分配が個人である出資者にされた場合、その分配された金銭の額及び金銭以外の資産の価額の合計額が、持分あり法人の資本金等の額を超える部分の金額は、利益の配当又は剰余金の配当とみなすと規定されています(所得税法第25条1項)。よって、みなし配当課税となるため、総合課税の配当所得として、超過累進税率が適用され所得税が課税されます。

 

医療法改正により平成19年4月1日以後、持分あり法人の新規設立はできないことになりました。現在設立し得る持分なし法人の定款においては、残余財産の帰属先は国、地方公共団体、医療を提供する者であって厚生労働省令で定めるもののうちから選定されるよう定められています。これにより、解散時の残余財産が出資者に帰属しないよう整備されました。持分あり法人については、平成19年4月1日施行改正医療法附則第10条第2項に規定される医療法人(経過措置医療法人)に位置付けられ、当分の間、解散時の残余財産の帰属先について定款の変更は強制されず、出資者に対し、残余財産を出資額に応じて分配するとされています。

 

 

 

 

 

 

 

税理士法人タクトコンサルティング 「TACTニュース」(2020/07/20)より転載

[解説ニュース]

居住用財産の譲渡に係る3,000万円控除から住宅ローン特別控除への特例選択の変更の可否適用を受けることの可否

 

〈解説〉

税理士法人タクトコンサルティング(山崎 信義/税理士)

 

 

[関連解説]

■店舗兼住宅を譲渡した場合の居住用財産の3,000万円控除と事業用資産の買換え特例の併用

■住宅の譲渡所得の特例では、本当に居住していたか見られています

 

【問】

乙さんは、2019年12月末にそれまで居住していた東京都杉並区内の戸建て住宅とその敷地を譲渡し、同月末に購入した港区内の分譲マンション(購入資金は銀行借入金により調達)に2020年1月に引越し、居住を開始しました。

 

乙さんは、譲渡した戸建て住宅とその敷地について譲渡益が生じ、かつ適用要件を満たしていることから、2019年分の所得税の確定申告書を提出し、租税特別措置法(措法)35条1項の居住用財産を譲渡した場合の譲渡所得の3,000万円控除(「3,000万円控除」)の適用を受けました(確定申告書は適法に提出され、そこに記載された税額に不足はありません)。ところが、乙さんが確定申告書の提出後に検討したところ、2019年の戸建て住宅の譲渡につき3,000万円控除の適用を受けず、2020年以後の各年分について港区のマンションに係る住宅ローン特別控除(措法41条)の適用を受けた方が、所得税の総額の負担が少なくなることが分かりました。

 

乙さんは、2019年分の所得税について3,000万円控除の適用を受けたため、2020年分の所得税においては住宅ローン控除の適用が受けられないと知り、2019年分の所得税の修正申告をすることで3,000万円控除の適用を撤回し、2020年以後の年分について港区のマンションに係る住宅ローン特別控除の適用を受けたいと考えていますが、可能でしょうか。

 

 

 

【回答】

1.結論


乙さんは2019年分の所得税につき適法に3,000万円控除の適用を受け、確定申告書に記載の税額に不足がないことから、修正申告書の提出ができず、その適用を撤回することができません。よって乙さんは、2020年以後の年分につき住宅ローン特別控除の適用を受けることができません。

 

2.解説


(1)3,000万円控除の概要

個人が自己の自宅とその敷地(居住用財産)を譲渡した場合には、一定の要件を満たすことにより譲渡所得の金額の計算上、最高3,000万円を控除することができます。(措法35条1項、2項)。

 

(2)住宅ローン特別控除の概要

①概要

個人が2021年12月31日までに国内で住宅の用に供する家屋で床面積が50㎡以上等の要件を満たすものの新築等をし、その家屋をその個人の居住の用に供した場合において、その個人がその家屋の新築等に係る借入金(住宅借入金)の額を有するときは、一定の要件を満たすことにより、その居住の用に供した日の属する年以後10年間(原則)の各年分のその個人の所得税額から、住宅借入金の年末残高に基づく一定額が控除されます(措法41条)。

 

②居住用財産譲渡に係る特例の適用を受けた場合の住宅ローン特別控除の不適用

個人が、新築等をした家屋を居住の用に供した日の属する年の前年又は前々年分の所得税につき、3,000万円控除等の居住用財産の譲渡に係る特例の適用を受けている場合、その個人の①に規定する10年間(原則)の各年分の所得税については、住宅ローン特別控除の適用を受けることができません(同20項)。

 

(3)修正申告

納税申告書を提出した者は、先の納税申告書の提出により納付すべきものとしてこれに記載した税額に不足額がある場合は、その申告につき更正があるまでは、その申告に係る課税標準等又は税額等を修正する納税申告書を税務署長に提出できます(国税通則法19条1項1号)。

 

(4)本問へのあてはめ

乙さんは2019年分の所得税について3,000万円控除の適用を受けていることから、(2)②より、2020年分以降の所得税につき住宅ローン特別控除の適用を受けることができません。

 

乙さんが住宅ローン特別控除の適用を受けるため、2019年分の所得税について修正申告書の提出により3,000万円控除の適用を撤回できるかどうかについては、乙さんがいったん3,000万円控除の適用を受けることを選択して2019年分の確定申告書を提出した以上、その適用を撤回することはできません(参考:国税庁HP質疑応答事例「居住用財産の譲渡所得の特別控除の特例の適用の撤回の可否」)。また撤回できない以上、2019年分の確定申告書に記載された税額に不足がないため、乙さんは上記(3)の事由による修正申告書を提出することもできません。

 

以上により、乙さんは2020年分以後の年分の所得税について、住宅ローン特別控除の適用を受けることができません。

 

 

 

 

 

 

 

税理士法人タクトコンサルティング 「TACTニュース」(2020/07/13)より転載

[解説ニュース]

共有物の分割で不動産取得税がかかるとき

 

〈解説〉

税理士法人タクトコンサルティング(遠藤 純一 )

 

 

[関連解説]

■不動産の財産分与があった場合の不動産取得税

■不動産取得税の「相続による取得」を巡る最近のトラブル

 

1.はじめに


不動産の共有状態を解消する場合に行われるのが不動産現物の「共有物の分割」です。この場合、持ち分に応じて分割がされる等の所定の要件を満たすと、不動産取得税では形式的な所有権の移転等に当たるとして非課税となります。ただし、当該不動産の取得者の分割前の当該共有物に係る持分の割合を超える部分の取得は除かれます(地法73条の7①2の3括弧書き、以下、持分超過部分規定という。)。今回は、分割前の当該共有物に係る持分の割合を超える部分の取得について整理します。

 

2.平成13年の改正


不動産取得税は、土地や家屋の「取得」に課税される都道府県税です(地法73条の2①)。ただし、形式的に不動産の所有権を移転したものとされる所定の「取得」は非課税とされます(地法73条の7)。共有物である不動産を分割した場合についても、もともと「不動産の取得」として不動産取得税の課税対象に含められるのですが、平成13年の改正前の実務では、共有であった不動産を分割した場合、その分割が持分に応じて単純に分割するケースについては、通達によって非課税として運用されていました。

 

ところが、東京高等裁判所平成10年8月5日判決で、法に基づかない非課税事由を通達で設定することは税法上問題であると判示したことに伴い、通達の非課税措置を地方税法上明らかに規定することが求められた結果、平成13年に上記の持分超過部分規定が新設された経緯があります。

 

 

3.分割前持分の割合を超える部分の取得とは?


そこで、実務上問題となるのは、不動産取得税が課税される「当該不動産の取得者の分割前の当該共有物に係る持分の割合を超える部分の取得」は、どのように認識されるか、ということです。

 

考え方は、①分割前の土地の評価額の持ち分の金額と②分割後に取得した土地の評価額を前提として、超過部分については、②の分割後の評価額が①の分割前の評価額の持ち分の金額より高い部分とするものです。ポイントは、①と②の金額をどのように算定するかという点です。この場合は通常、土地に固定資産税評価額がある場合にはその価格を、ない場合には改めて固定資産評価基準により評価した価格を用いることになります(地法73条の21①②)。

 

これについて、「地方税の施行に関する取扱いについて(道府県税関係)第5章・第1・5の2⑴」では、次のように注釈をつけています。

 

「持分の割合とは、原則として、不動産の価格の割合と解すべきものであるが、意図的に租税回避を図ろうとする意思が認められない場合については、不動産の面積の割合によっても差し支えないこと。」

 

 

4.最高裁の判決について


最高裁が原審を破棄して自判した令和2年3月19日判決は、兄弟で各々2分1の持ち分で遺贈を受けた1,200㎡弱の土地の分割が問題となったものでした。

 

具体的には、分割に際し相続税の財産評価基本通達に照らして差額が出ないように配慮し、620㎡弱と570㎡弱に分筆、兄が620㎡の方を取得したところ、分割後の土地の評価額に関し、地積比で約100万円分の持分超過部分があるとして不動産取得税が課税されたため、その取消しを求めて裁判に発展したものです。

 

一審は当初の課税処分を支持しましたが、二審では、分割前の一画地は、所有者が異なる土地をそれぞれ拠出している関係にあるため、分割後のそれぞれの土地の価格の割合で按分するのが公平、分割前の評価額を基に分割後の地積比で按分して兄の評価額を出すのは違法として、課税処分の取消を認容しました。

 

争点の重要なポイントは、分筆した土地が一体利用されていたことから、これを一画地として評価すべきか、それとも分筆後の土地ごとに評価すべきか、という点です。

 

これに対し最高裁は、問題の土地が一体として駐車場として利用されている事実関係があったことを前提に、分割後の土地の評価額は地積ベースですることと結論付けました。その理由の概要は次のとおりです。

 

「固定資産評価基準により、形状や利用状況からみて一体をなしていると認められる「隣接する2筆以上の宅地」は一画地として認定し評価することになるから、その単位面積当たりの評価額は、この土地全体に当てはまる。この場合の分割後の各筆の評価額は、単位面積当たりの評価額に分割後の各筆の地積を乗じることにより算出されるものというべき。」共有物分割のため分筆する際には、注意しておきたい判例でした。

 

 

 

 

 

 

 

税理士法人タクトコンサルティング 「TACTニュース」(2020/07/07)より転載

[解説ニュース]

生前贈与がある場合の相続税申告の留意点

 

〈解説〉

税理士法人タクトコンサルティング(林 陽子/税理士)

 

 

[関連解説]

■特別縁故者に対する相続財産の分与と相続税

■贈与税の個人版事業承継税制の適用対象となる贈与者の要件

 

 

1. 相続開始前3年以内の贈与


(1)概要

相続又は遺贈により財産を取得した者が、被相続人から相続開始前3年以内に贈与を受けた財産があるときは、被相続人の相続財産に贈与を受けた財産の額(贈与時の価額)を加算し、加算された者の相続税の計算上、その加算された贈与財産の価額に対応する贈与税の額を控除します。

 

但し、次の財産については加算する必要はありません。

 

①贈与税の配偶者控除の特例を受けている又は受けようとする財産のうち、その配偶者控除額に相当する金額
②直系尊属から贈与を受けた住宅取得等資金のうち、非課税の適用を受けた金額
③直系尊属から一括贈与を受けた教育資金のうち、非課税の適用を受けた金額
④直系尊属から一括贈与を受けた結婚・子育て資金のうち、非課税の適用を受けた金額(相続開始時に残額がある場合は、残額を相続財産に加算)

(国税庁HP・タックスアンサー「贈与財産の加算と税額控除」より抜粋・加筆/相続税法第19条)

 

(2)留意点

この規定は、相続又は遺贈により財産を取得した者が対象です。相続人であるかどうか、遺産を取得したかどうかだけで判断しがちですが、死亡保険金など相続税法において相続財産とみなされる財産を取得した者についても、この規定の対象となります。

 

判断を誤りやすいのは、次のような事例です。

 

(加算もれ)
・相続人でない孫が、遺贈により財産を取得した場合
・相続放棄した相続人が、死亡保険金を受け取った場合

 

(誤って加算)
・相続人であるが、遺産を取得せず、死亡保険金などのみなし相続財産も取得しない場合(生前贈与のみ有)

 

 

2. 相続時精算課税制度を適用した贈与


(1)制度の概要

相続時精算課税制度とは、原則として60歳以上の父母又は祖父母から、20歳以上の子又は孫に対し、財産を贈与した場合において選択できる贈与税の制度です。この制度を選択すると、その選択に係る贈与者から贈与を受ける財産については、その選択をした年分以降全てこの制度が適用されます。

 

また、この制度の贈与者である父母又は祖父母が亡くなった時の相続税の計算上、相続財産の価額にこの制度を適用した贈与財産の価額を加算し、加算された者の相続税の計算上、その加算された贈与財産の価額に対応する贈与税の額を控除します。

(国税庁HP・タックスアンサー「相続時精算課税制度の選択」より抜粋・加筆/相続税法第21条の15)

 

(2)留意点

この制度を選択した年分以降は、その選択に係る贈与者からの贈与については、暦年課税の基礎控除(110万円)は使えません。また、この制度の特別控除額(2500万円)以下の贈与で贈与税を納めていない場合や、申告をし忘れている場合でも、相続財産に加算する必要があります。贈与税の申告をしたかどうか、贈与税が課されたかどうかにかかわらず加算しますので、注意が必要です。

 

 

3. 加算する贈与財産の価額と控除する贈与税額


相続財産に加算する贈与財産の価額は、相続開始時の財産の状況にかかわらず、贈与時の価額によることとされています。

 

相続開始前3年以内の贈与については、「贈与により取得した財産の価額」と、相続時精算課税制度による贈与については、「適用を受けるものの価額」と規定されています。「申告書に記載した価額」ではありません(相続税法第19条①,第21条の15①)。

 

では、申告をした贈与財産の価額に誤りがあった場合、贈与税や相続税の申告はどうなるのでしょうか?

 

評価額が過大だった場合、贈与税の更正の請求ができる期限内であれば、更正の請求により贈与税を減額することができます(国税通則法第23条)。

 

評価額が過少だった場合、贈与税の更正(税務署が税額等を更正する手続き)の期限内であれば、速やかに修正申告することが必要です。修正申告書の提出が無い場合は、更正処分を受ける(税務署が税額等を職権で更正する)ことになります(国税通則法第19条,第24条)。

 

 

このように期限内に誤りに気付いた場合は、贈与税について正しい評価額を申告等したうえで、相続税の申告を行います。

 

なお、期限後に誤りに気付いた場合は、実際の申告がどうであれ、贈与財産の正しい評価額を相続財産に加算しますが、相続税額から控除する贈与税額は、「課せられた贈与税」とされているため、誤った評価額に基づく贈与税額(実際の申告額)を相続税額から控除することになります(相続税法第19条①, 第21条の15③)。

 

最近、相続時精算課税制度と事業承継税制を併用して、生前に非上場株式を贈与する事例が増えてきました。

 

生前に贈与した財産を相続財産に加算して相続税の申告をする際は、加算する贈与財産の価額が正しい価額であるかの確認が必要です。

 

 

 

 

 

 

 

税理士法人タクトコンサルティング 「TACTニュース」(2020/06/22)より転載

[解説ニュース]

地積規模の大きな宅地の適用要件の留意点

 

〈解説〉

税理士法人タクトコンサルティング(小関 祐子/税理士)

 

 

[関連解説]

■相続税の家屋評価をめぐる最近の裁判例から

■底地の相続税法上の評価 VS 不動産鑑定士による評価

 

 

1. 地積規模の大きな宅地の評価方法


平成29年9月の財産評価基本通達(以下「評価通達」という)の一部改正により平成30年1月1日以後の土地の評価において、評価通達24-4「広大地の評価」が廃止され、評価通達20-2として「地積規模の大きな宅地の評価」が創設されました。

 

下記2の適用要件に当てはまる評価対象地を下記の算式に基づいて評価することにより、廃止された広大地の評価方法と比較して評価が簡便的になり、かつ、適用地の判断が評価者ごとに異なってしまうケースを減らすことが可能となったのではないかと思われます。

 

 

<評価算式>

評価額=路線価×奥行価格補正率×不整形地補正率などの各種画地補正率×規模格差補正率×地積(㎡)

 

2. 地積規模の大きな宅地の適用要件


(1)三大都市圏においては500㎡以上、三大都市圏以外の地域においては1000㎡以上の地積の宅地であること

 

三大都市圏とは、次の地域をいいます。
①首都圏整備法第2条第3項に規定する既成市街地又は同条第4項に規定する近郊整備地帯
②近畿圏整備法第2条第3項に規定する既成都市区域又は同条第4項に規定する近郊整備区域
③中部圏開発整備法第2条第3項に規定する都市整備区域

 

 

(2)下記のいずれかに該当する宅地は、地積規模の大きな宅地から除かれます。

 

①市街化調整区域(都市計画法第34条第10号又は第11号の規定に基づき宅地分譲に係る同法第4条第12項に規定する開発行為を行うことができる区域を除く)に所在する宅地
②都市計画法の用途地域が工業専用地域に指定されている地域に所在する宅地
③指定容積率が400%(東京都の特別区においては300%)以上の地域に所在する宅地
④評価通達22-2に定める大規模工業用地

 

 

(3)路線価地域に所在するものについては、普通商業・併用住宅地区及び普通住宅地区に所在するものであること、倍率地域に所在するものについては、地積規模の大きな宅地に該当する宅地であれば対象となります。

 

※規模画地補正率の算出方法や倍率地域に所在する宅地の評価算式等については国税庁HPタックスアンサー№4609をご参照ください。

 

 

3. 地積規模の大きな宅地の適用要件の留意点


(1)非線引き区域の適用の有無

市街化区域でも市街化調整区域でもない場所に所在する宅地で地積や容積率等、地積規模の大きな宅地としての要件をすべて満たしている宅地は地積規模の大きな宅地の評価対象となります。都市計画区域に所在しないから適用なしと判断するのではなく、市街化調整区域ではないから適用ありの可能性について検討が必要です。

 

(2)三大都市圏に該当するか否かの判定

三大都市圏の範囲については2(1)の通り、首都圏整備法・近畿圏整備法・中部圏開発整備法の規定を用いています。また「地積規模の大きな宅地の評価」の適用チェックシートの(2面)に該当する市町村名が列挙されていますので照らし合わせれば容易に判定ができそうに思えます。しかし、首都圏で10市、近畿圏で58市町村、中部圏で3市について三大都市圏の該当範囲が「全域」ではなく「一部」となっており、欄外注釈には「評価対象となる宅地等が指定された区域に所在するか否かは、当該宅地等の所在する市町村又は府県にご確認ください」と記載されています。

 

例えば、神奈川県相模原市は政令指定都市でありながら「一部」に区分されています。理由は首都圏整備法に規定される既成市街地及び近郊整備地帯は昭和47年9月1日における行政区画その他の区域に基づいて作られており、平成18年から19年にかけて既成市街地又は近郊整備地帯として指定済の市町村と指定外の市町村が合併し新相模原市が誕生した結果、一部のみが三大都市圏の対象となる市に区分されることとなりました。このように一部となっている市町村については合併の有無などを確認することにより判定の手掛かりを得ることができるようです。

 

(3)その他

京都市が提供している都市計画情報では既成都市区域から外れているが、近畿圏整備法では既成都市区域に指定されている区域があります。この区域にある宅地は整備法において規制都市区域に規定されているわけですから、500㎡以上で地積規模が大きな宅地の評価対象地となります。京都市の都市計画情報のみを確認して1000㎡に満たないからと地積規模の大きな宅地の対象から除外したりしないように十分な調査が必要です。

 

 

 

 

 

 

 

税理士法人タクトコンサルティング 「TACTニュース」(2020/06/15)より転載