[解説ニュース]

共有物の分割で不動産取得税がかかるとき

 

〈解説〉

税理士法人タクトコンサルティング(遠藤 純一 )

 

 

[関連解説]

■不動産の財産分与があった場合の不動産取得税

■不動産取得税の「相続による取得」を巡る最近のトラブル

 

1.はじめに


不動産の共有状態を解消する場合に行われるのが不動産現物の「共有物の分割」です。この場合、持ち分に応じて分割がされる等の所定の要件を満たすと、不動産取得税では形式的な所有権の移転等に当たるとして非課税となります。ただし、当該不動産の取得者の分割前の当該共有物に係る持分の割合を超える部分の取得は除かれます(地法73条の7①2の3括弧書き、以下、持分超過部分規定という。)。今回は、分割前の当該共有物に係る持分の割合を超える部分の取得について整理します。

 

2.平成13年の改正


不動産取得税は、土地や家屋の「取得」に課税される都道府県税です(地法73条の2①)。ただし、形式的に不動産の所有権を移転したものとされる所定の「取得」は非課税とされます(地法73条の7)。共有物である不動産を分割した場合についても、もともと「不動産の取得」として不動産取得税の課税対象に含められるのですが、平成13年の改正前の実務では、共有であった不動産を分割した場合、その分割が持分に応じて単純に分割するケースについては、通達によって非課税として運用されていました。

 

ところが、東京高等裁判所平成10年8月5日判決で、法に基づかない非課税事由を通達で設定することは税法上問題であると判示したことに伴い、通達の非課税措置を地方税法上明らかに規定することが求められた結果、平成13年に上記の持分超過部分規定が新設された経緯があります。

 

 

3.分割前持分の割合を超える部分の取得とは?


そこで、実務上問題となるのは、不動産取得税が課税される「当該不動産の取得者の分割前の当該共有物に係る持分の割合を超える部分の取得」は、どのように認識されるか、ということです。

 

考え方は、①分割前の土地の評価額の持ち分の金額と②分割後に取得した土地の評価額を前提として、超過部分については、②の分割後の評価額が①の分割前の評価額の持ち分の金額より高い部分とするものです。ポイントは、①と②の金額をどのように算定するかという点です。この場合は通常、土地に固定資産税評価額がある場合にはその価格を、ない場合には改めて固定資産評価基準により評価した価格を用いることになります(地法73条の21①②)。

 

これについて、「地方税の施行に関する取扱いについて(道府県税関係)第5章・第1・5の2⑴」では、次のように注釈をつけています。

 

「持分の割合とは、原則として、不動産の価格の割合と解すべきものであるが、意図的に租税回避を図ろうとする意思が認められない場合については、不動産の面積の割合によっても差し支えないこと。」

 

 

4.最高裁の判決について


最高裁が原審を破棄して自判した令和2年3月19日判決は、兄弟で各々2分1の持ち分で遺贈を受けた1,200㎡弱の土地の分割が問題となったものでした。

 

具体的には、分割に際し相続税の財産評価基本通達に照らして差額が出ないように配慮し、620㎡弱と570㎡弱に分筆、兄が620㎡の方を取得したところ、分割後の土地の評価額に関し、地積比で約100万円分の持分超過部分があるとして不動産取得税が課税されたため、その取消しを求めて裁判に発展したものです。

 

一審は当初の課税処分を支持しましたが、二審では、分割前の一画地は、所有者が異なる土地をそれぞれ拠出している関係にあるため、分割後のそれぞれの土地の価格の割合で按分するのが公平、分割前の評価額を基に分割後の地積比で按分して兄の評価額を出すのは違法として、課税処分の取消を認容しました。

 

争点の重要なポイントは、分筆した土地が一体利用されていたことから、これを一画地として評価すべきか、それとも分筆後の土地ごとに評価すべきか、という点です。

 

これに対し最高裁は、問題の土地が一体として駐車場として利用されている事実関係があったことを前提に、分割後の土地の評価額は地積ベースですることと結論付けました。その理由の概要は次のとおりです。

 

「固定資産評価基準により、形状や利用状況からみて一体をなしていると認められる「隣接する2筆以上の宅地」は一画地として認定し評価することになるから、その単位面積当たりの評価額は、この土地全体に当てはまる。この場合の分割後の各筆の評価額は、単位面積当たりの評価額に分割後の各筆の地積を乗じることにより算出されるものというべき。」共有物分割のため分筆する際には、注意しておきたい判例でした。

 

 

 

 

 

税理士法人タクトコンサルティング 「TACTニュース」(2020/07/07)より転載

[解説ニュース]

生前贈与がある場合の相続税申告の留意点

 

〈解説〉

税理士法人タクトコンサルティング(林 陽子/税理士)

 

 

[関連解説]

■特別縁故者に対する相続財産の分与と相続税

■贈与税の個人版事業承継税制の適用対象となる贈与者の要件

 

 

1. 相続開始前3年以内の贈与


(1)概要

相続又は遺贈により財産を取得した者が、被相続人から相続開始前3年以内に贈与を受けた財産があるときは、被相続人の相続財産に贈与を受けた財産の額(贈与時の価額)を加算し、加算された者の相続税の計算上、その加算された贈与財産の価額に対応する贈与税の額を控除します。

 

但し、次の財産については加算する必要はありません。

 

①贈与税の配偶者控除の特例を受けている又は受けようとする財産のうち、その配偶者控除額に相当する金額
②直系尊属から贈与を受けた住宅取得等資金のうち、非課税の適用を受けた金額
③直系尊属から一括贈与を受けた教育資金のうち、非課税の適用を受けた金額
④直系尊属から一括贈与を受けた結婚・子育て資金のうち、非課税の適用を受けた金額(相続開始時に残額がある場合は、残額を相続財産に加算)

(国税庁HP・タックスアンサー「贈与財産の加算と税額控除」より抜粋・加筆/相続税法第19条)

 

(2)留意点

この規定は、相続又は遺贈により財産を取得した者が対象です。相続人であるかどうか、遺産を取得したかどうかだけで判断しがちですが、死亡保険金など相続税法において相続財産とみなされる財産を取得した者についても、この規定の対象となります。

 

判断を誤りやすいのは、次のような事例です。

 

(加算もれ)
・相続人でない孫が、遺贈により財産を取得した場合
・相続放棄した相続人が、死亡保険金を受け取った場合

 

(誤って加算)
・相続人であるが、遺産を取得せず、死亡保険金などのみなし相続財産も取得しない場合(生前贈与のみ有)

 

 

2. 相続時精算課税制度を適用した贈与


(1)制度の概要

相続時精算課税制度とは、原則として60歳以上の父母又は祖父母から、20歳以上の子又は孫に対し、財産を贈与した場合において選択できる贈与税の制度です。この制度を選択すると、その選択に係る贈与者から贈与を受ける財産については、その選択をした年分以降全てこの制度が適用されます。

 

また、この制度の贈与者である父母又は祖父母が亡くなった時の相続税の計算上、相続財産の価額にこの制度を適用した贈与財産の価額を加算し、加算された者の相続税の計算上、その加算された贈与財産の価額に対応する贈与税の額を控除します。

(国税庁HP・タックスアンサー「相続時精算課税制度の選択」より抜粋・加筆/相続税法第21条の15)

 

(2)留意点

この制度を選択した年分以降は、その選択に係る贈与者からの贈与については、暦年課税の基礎控除(110万円)は使えません。また、この制度の特別控除額(2500万円)以下の贈与で贈与税を納めていない場合や、申告をし忘れている場合でも、相続財産に加算する必要があります。贈与税の申告をしたかどうか、贈与税が課されたかどうかにかかわらず加算しますので、注意が必要です。

 

 

3. 加算する贈与財産の価額と控除する贈与税額


相続財産に加算する贈与財産の価額は、相続開始時の財産の状況にかかわらず、贈与時の価額によることとされています。

 

相続開始前3年以内の贈与については、「贈与により取得した財産の価額」と、相続時精算課税制度による贈与については、「適用を受けるものの価額」と規定されています。「申告書に記載した価額」ではありません(相続税法第19条①,第21条の15①)。

 

では、申告をした贈与財産の価額に誤りがあった場合、贈与税や相続税の申告はどうなるのでしょうか?

 

評価額が過大だった場合、贈与税の更正の請求ができる期限内であれば、更正の請求により贈与税を減額することができます(国税通則法第23条)。

 

評価額が過少だった場合、贈与税の更正(税務署が税額等を更正する手続き)の期限内であれば、速やかに修正申告することが必要です。修正申告書の提出が無い場合は、更正処分を受ける(税務署が税額等を職権で更正する)ことになります(国税通則法第19条,第24条)。

 

 

このように期限内に誤りに気付いた場合は、贈与税について正しい評価額を申告等したうえで、相続税の申告を行います。

 

なお、期限後に誤りに気付いた場合は、実際の申告がどうであれ、贈与財産の正しい評価額を相続財産に加算しますが、相続税額から控除する贈与税額は、「課せられた贈与税」とされているため、誤った評価額に基づく贈与税額(実際の申告額)を相続税額から控除することになります(相続税法第19条①, 第21条の15③)。

 

最近、相続時精算課税制度と事業承継税制を併用して、生前に非上場株式を贈与する事例が増えてきました。

 

生前に贈与した財産を相続財産に加算して相続税の申告をする際は、加算する贈与財産の価額が正しい価額であるかの確認が必要です。

 

 

 

 

税理士法人タクトコンサルティング 「TACTニュース」(2020/06/22)より転載

[解説ニュース]

地積規模の大きな宅地の適用要件の留意点

 

〈解説〉

税理士法人タクトコンサルティング(小関 祐子/税理士)

 

 

[関連解説]

■相続税の家屋評価をめぐる最近の裁判例から

■底地の相続税法上の評価 VS 不動産鑑定士による評価

 

 

1. 地積規模の大きな宅地の評価方法


平成29年9月の財産評価基本通達(以下「評価通達」という)の一部改正により平成30年1月1日以後の土地の評価において、評価通達24-4「広大地の評価」が廃止され、評価通達20-2として「地積規模の大きな宅地の評価」が創設されました。

 

下記2の適用要件に当てはまる評価対象地を下記の算式に基づいて評価することにより、廃止された広大地の評価方法と比較して評価が簡便的になり、かつ、適用地の判断が評価者ごとに異なってしまうケースを減らすことが可能となったのではないかと思われます。

 

 

<評価算式>

評価額=路線価×奥行価格補正率×不整形地補正率などの各種画地補正率×規模格差補正率×地積(㎡)

 

2. 地積規模の大きな宅地の適用要件


(1)三大都市圏においては500㎡以上、三大都市圏以外の地域においては1000㎡以上の地積の宅地であること

 

三大都市圏とは、次の地域をいいます。
①首都圏整備法第2条第3項に規定する既成市街地又は同条第4項に規定する近郊整備地帯
②近畿圏整備法第2条第3項に規定する既成都市区域又は同条第4項に規定する近郊整備区域
③中部圏開発整備法第2条第3項に規定する都市整備区域

 

 

(2)下記のいずれかに該当する宅地は、地積規模の大きな宅地から除かれます。

 

①市街化調整区域(都市計画法第34条第10号又は第11号の規定に基づき宅地分譲に係る同法第4条第12項に規定する開発行為を行うことができる区域を除く)に所在する宅地
②都市計画法の用途地域が工業専用地域に指定されている地域に所在する宅地
③指定容積率が400%(東京都の特別区においては300%)以上の地域に所在する宅地
④評価通達22-2に定める大規模工業用地

 

 

(3)路線価地域に所在するものについては、普通商業・併用住宅地区及び普通住宅地区に所在するものであること、倍率地域に所在するものについては、地積規模の大きな宅地に該当する宅地であれば対象となります。

 

※規模画地補正率の算出方法や倍率地域に所在する宅地の評価算式等については国税庁HPタックスアンサー№4609をご参照ください。

 

 

3. 地積規模の大きな宅地の適用要件の留意点


(1)非線引き区域の適用の有無

市街化区域でも市街化調整区域でもない場所に所在する宅地で地積や容積率等、地積規模の大きな宅地としての要件をすべて満たしている宅地は地積規模の大きな宅地の評価対象となります。都市計画区域に所在しないから適用なしと判断するのではなく、市街化調整区域ではないから適用ありの可能性について検討が必要です。

 

(2)三大都市圏に該当するか否かの判定

三大都市圏の範囲については2(1)の通り、首都圏整備法・近畿圏整備法・中部圏開発整備法の規定を用いています。また「地積規模の大きな宅地の評価」の適用チェックシートの(2面)に該当する市町村名が列挙されていますので照らし合わせれば容易に判定ができそうに思えます。しかし、首都圏で10市、近畿圏で58市町村、中部圏で3市について三大都市圏の該当範囲が「全域」ではなく「一部」となっており、欄外注釈には「評価対象となる宅地等が指定された区域に所在するか否かは、当該宅地等の所在する市町村又は府県にご確認ください」と記載されています。

 

例えば、神奈川県相模原市は政令指定都市でありながら「一部」に区分されています。理由は首都圏整備法に規定される既成市街地及び近郊整備地帯は昭和47年9月1日における行政区画その他の区域に基づいて作られており、平成18年から19年にかけて既成市街地又は近郊整備地帯として指定済の市町村と指定外の市町村が合併し新相模原市が誕生した結果、一部のみが三大都市圏の対象となる市に区分されることとなりました。このように一部となっている市町村については合併の有無などを確認することにより判定の手掛かりを得ることができるようです。

 

(3)その他

京都市が提供している都市計画情報では既成都市区域から外れているが、近畿圏整備法では既成都市区域に指定されている区域があります。この区域にある宅地は整備法において規制都市区域に規定されているわけですから、500㎡以上で地積規模が大きな宅地の評価対象地となります。京都市の都市計画情報のみを確認して1000㎡に満たないからと地積規模の大きな宅地の対象から除外したりしないように十分な調査が必要です。

 

 

 

 

 

税理士法人タクトコンサルティング 「TACTニュース」(2020/06/15)より転載

[解説ニュース]

土地区画整理事業の施行区域内にある宅地の相続税評価額

 

〈解説〉

税理士法人タクトコンサルティング(芦沢 亮介/公認会計士・税理士)

 

 

[関連解説]

■相続税の家屋評価をめぐる最近の裁判例から

■底地の相続税法上の評価 VS 不動産鑑定士による評価

 

 

1.土地区画整理事業とは


土地区画整理事業とは、都市計画区域内の土地について、公共施設(道路、公園等)を整備改善し、土地の区画を整え宅地の利用の増進を図るため、都道府県・市町村・土地区画整理組合などが、土地区画整理法に従って施行する事業をいいます。その事業では地権者からその権利に応じて少しずつ土地を提供してもらい、この土地を道路等の公共用地に充てる他、その一部を売却して事業資金の一部に充てることになります。地権者においては、その事業後の宅地地積は従前に比べて小さくなりますが、道路や公園等の公共施設が整備され、土地の区画が整うことにより、利用価値の高い宅地を得ることができます。そして、事業の施工期間は10数年~と長期間に渡ることが多く、進捗状況に応じて宅地の評価方法が異なります。

 

2.土地区画整理事業の大まかな流れ


 

3.土地区画整理事業の施行区域内にある宅地の評価


【2.①の段階の相続税評価の方法】

土地区画整理事業の計画を策定し、換地設計(当事業前の土地(従前の宅地)に対して、どのような換地を定めたらよいかの計算をして図面に割込み、換地の案(換地図)を作成すること)が行われる段階では、宅地は「従前の宅地」の価額により評価します。

 

【2.②の段階の相続税評価の方法】

施行区域内の地権者が新しく割り当てられる土地を「換地」と言います。工事完了後に地区内のすべての換地を、その位置形状に基づいて登記する行政処分を「換地処分」といいます(2.③④の段階)。しかし、施行区域の土地は広いため場所によって工事の完了時期は大きく異なります。よって、先に工事が終わった土地の使用を目的として、換地処分を行う前に「仮に」換地を指定することを「仮換地の指定」と言います。仮換地の指定により、換地設計に基づいて新しく使える仮換地の位置・形状・地積が指定されます。

 

仮換地の指定が行われた宅地は、状況によって相続税評価の方法が異なります。❶仮換地の使用収益が開始されている場合は、「仮換地」の価額で評価します。❷仮換地の造成工事が施行中であり使用収益が開始されていない場合は、課税時期から工事が完了するまでの期間が1年以内であれば上記の「仮換地」の価額で評価しますが、その期間が1年を超えると見込まれる場合には、仮換地の評価額の100分の95相当額により評価します。❸造成工事が未着手であり、かつ、土地区画整理法第99条第2項の規定により仮換地について使用又は収益を開始する日を別に定めるとされているため、その仮換地について使用又は収益を開始することができない場合には、「従前の宅地」の価額で評価することになります(財基通24-2)。

 

【2.③の段階の相続税評価の方法】

全体の工事が終わったら確定測量を行い、換地計画(事業の施行者が換地処分を行う場合に、従前の宅地が整理後どのような換地になるのかを定める計画をいう。)を定めて換地の権利関係を確定し、従前の宅地と換地の価格差を調整するための清算金の額を定めます。換地処分により徴収又は交付されることとなる清算金のうち、課税時期において確実と見込まれるものがあるときには、その金額を評価上考慮して、徴収されるものは「仮換地の価額」から減算し、交付されるものは加算して評価します(国税庁質疑応答事例「土地区画整理事業施行中の宅地の評価」)。

 

【2.④の段階の相続税評価の方法】

知事が換地処分の公告を行うことで土地区画整理事業に係る債権債務関係が確定し、仮換地に対する権利関係は換地へ移ります。この段階では宅地は「換地」の価額で評価することになります。

 

【その他の評価方法】

上記の評価方法を一律に適用することが適当ではない状況がある場合には、税務署に対して個別評価申請を行って評価するものとされており、評価対象地の財産評価基準書(路線価図等)に、個別評価である旨が記載されています。但し、個別評価の申請先は個別評価を行う評定担当税務署であり、納税地を所轄する税務署ではない場合もあります。

 

 

 

 

税理士法人タクトコンサルティング 「TACTニュース」(2020/06/11)より転載

[解説ニュース]

【Q&A】株式移転により個人株主が保有株式を新設法人に譲渡した場合の譲渡所得の特例

 

〈解説〉

税理士法人タクトコンサルティング(中坂 克司/税理士)

 

【問】

当社グループは、個人株主Xが各社の株式を100%保有する同族会社グループです。主要事業を営むA社、B社とも業績は順調で今後も拡大が見込まれ、新興事業として研究開発を続けてきたC社についても、ようやく大量生産・市場投下できる見込みが立ちました。

 

そこで当社としては、効率的なグループ経営及び更なるグループ事業の拡大を目指し、下記の事項を検討しています。株主Xの課税関係はどのようになるでしょうか。

 

①株式移転の方法により持株会社P社を組成し、現在各社で行っている総務・経理機能を持株会社P社に集約(株式移転に際してXはP社株式のみの交付を受ける)
②①の後、スピーディーなシェア確保が求められるC社については、ファンドから出資を受け入れることにより生産規模を大幅に拡大

 

【回答】

1.結論


株主Xについて、P社に対するA社、B社、C社(以下「子法人」)株式の譲渡がなかったものとみなされ、譲渡所得に係る所得税は課税されません(所法57の4②)。

 

2.解説


(1)株式移転

株式移転とは、1社又は複数の会社が発行済株式の全部を新たに設立する株式会社(「株式移転完全親法人」)に取得させる会社法の手法をいいます(会社2三十二)。通常、既存会社の株主は取得させた既存会社の株式の代わりに、新設会社の株式の交付を受けるため、資金負担を掛けずに持株会社体制に移行する方法として利用されています。

 

(2)株式移転により個人株主が保有株式を株式移転完全親法人に譲渡した場合の譲渡所得の特例

 

①原則
個人株主が保有株式を株式移転完全親法人に譲渡した場合は、その譲渡益は譲渡所得等とされ、個人株主に所得税が課税されます(所法33①)。

 

②特例
個人株主が、保有する株式の発行法人の行う株式移転により株式移転完全親法人(株式移転により他の法人の発行済株式の全部を取得し設立された法人。 法法2十二の六の六)に株式を譲渡した場合で、株式移転完全親法人の株式以外の資産が交付されない株式移転であるときは、その株式の譲渡はなかったものとみなされます(所法57の4②)。この場合において、個人株主が新たに取得した株式移転完全親法人の株式の取得価額は、旧株の取得価額とされます(所令167の7)。

 

(3)本件への当てはめ

質問の場合には、株主Xは子法人の行った株式移転により子法人株式を譲渡していますが、P社(株式移転完全親法人)株式のみの交付がされる株式移転のため、それぞれの子法人株式の譲渡はなかったものとみなされ、譲渡所得に係る所得税は課税されません。なお、株主Xが新たに取得したP社株式の取得価額は子法人株式の取得価額の合計となります。

 

3.法人税法上の適格株式移転との関係


(1)適格株式移転

法人税法上、一定の要件を満たす株式移転は「適格株式移転」として、基本的に課税関係を発生させない取り扱いになっています。本件の場合、子法人間には、株主Xによる完全支配関係(100%保有)があるため、以下の要件を満たせば、適格株式移転に該当します(法法2十二の十八、法令4の3)。

 

①株主Xに親会社となるP社株式以外の資産が交付されないこと
②株式移転後に株主XとP社の間で完全支配関係が継続することが見込まれること
③株式移転後に株主Xと子法人の間で完全支配関係が継続することが見込まれること

 

(2)本件の判断と株主Xの課税関係

本件については、株式移転後にファンドからの出資を受け入れた場合、上記(1)③株主XとC社間の完全支配関係が継続しないこととなります。従って、株式移転時に完全支配関係が継続することが見込まれるかどうかにより、「適格株式移転」に該当するか判断が異なります。ただし、株主Xの課税関係については、2.(2)②の通り、適格かどうかにより課税関係が異なるところではありません。

 

 

税理士法人タクトコンサルティング 「TACTニュース」(2020/05/22)より転載

[解説ニュース]

店舗兼住宅を譲渡した場合の居住用財産の3,000万円控除と事業用資産の買換え特例の併用

 

〈解説〉

税理士法人タクトコンサルティング(山崎 信義/税理士)

 

【問】

甲さんは、令和2年1月に東京都大田区内に所有する店舗兼自宅の建物とその敷地(それぞれの所有期間は10年超)を、一括して上場会社の㈱乙に譲渡しました。甲さんは譲渡の直前までその建物と敷地を店舗及び自宅として使用していました。甲さんは、その譲渡代金により令和2年中に品川区に所有する土地上の上に貸家と自宅を建築する予定です。

 

甲さんは、譲渡した資産についてそれぞれの特例の適用要件を満たしていることから、自宅とその敷地部分の譲渡については居住用財産を譲渡した場合の譲渡所得の3,000万円控除の特例(租税特別措置法(措法)35条。以下「3,000万円控除」)の適用を受け,店舗とその敷地部分の譲渡については,事業用資産の買換え特例(措法37条)の適用を受けようと考えています。甲さんのように、一つの不動産の譲渡について事業用資産の買換え特例の適用を受ける場合に、3,000万円控除の適用を受けることが認められるのでしょうか。

 

 

【回答】

1.結論


一つの資産の譲渡について3,000万円控除と他の特例との重複適用はできませんが、甲さんの場合は店舗兼自宅と敷地の譲渡であり、店舗(事業用)部分の譲渡についてのみ事業用資産の買換え特例の適用を受けることから、買換え特例の適用を受ける場合であっても、自宅(居住用)部分の譲渡については、その適用要件を満たす限り、3,000万円控除の適用が認められます(措法通達35-1)。

 

2.解説


(1)3,000万円控除と他の特例との適用関係

個人が3,000万円控除の適用対象となる資産を譲渡した場合において、その譲渡が固定資産の交換の特例(所得税法58条)や事業用資産の買換え特例など特例(以下「他の特例」という。)の適用対象となり得るときがあります。その場合の特例の適用について、措法通達35-1の解説では次の通りの考え方が示されています。

 

①3,000万円控除の適用要件を満たしている資産の譲渡については、3,000万円控除と他の特例とを重複して適用することはできない。

 

②店舗兼自宅のように、3,000万円控除の適用対象となる部分(居住用部分)と適用対象とならない部分(非居住用部分)がある資産を譲渡する場合には、その資産を居住用部分と非居住用部分に区分し、非居住用部分の譲渡についてのみ「他の特例」の適用を受け、居住用部分の譲渡については3,000万円控除の適用を受けることができる。

 

③②の場合において、譲渡者が現に(つまり譲渡の直前まで)居住の用に供している資産を譲渡するときは、その譲渡時の現況により3,000万円控除の適用対象となる居住用部分と適用対象とならない非居住用部分とに区分する。

 

(2)3,000万円控除と事業用資産の買換え特例の適用

事業用資産の買換え特例は事業の用に供される資産の譲渡についてのみ適用され、3,000万円控除は、譲渡者が居住の用に供される資産についてのみ適用されることから、事業の用に供されている資産の譲渡について3,000万円控除は適用されません。このため、事業用資産の買換え特例と3,000万円控除とは競合せず、(1)①のような特例の重複適用が問題となることはありません。

 

また、店舗兼自宅である家屋とその敷地の譲渡において、事業用部分の譲渡につき事業用資産の買換え特例の適用を受け、居住用部分の譲渡につき3,000万円控除の適用を受ける場合は、(1)②の通り適用対象部分が異なる2つの資産([店舗とその敷地]と[自宅とその敷地])を、(1)③の通りに譲渡時の現況で事業用と居住用に区分の上、それぞれ譲渡して特例の適用を受けたとみることから、特例の重複適用には該当しません。

 

(3)本件へのあてはめ

ご質問の場合、譲渡者の甲さんは、店舗兼自宅として譲渡の直前まで事業の用及び居住の用に供されていた建物とその敷地を譲渡しています。この場合、①事業用資産の買換え特例は、店舗兼自宅のうち事業の用に供されていた部分とその敷地の譲渡についてのみ適用される一方、②3,000万円控除は、店舗兼自宅のうち譲渡者の甲さんが居住の用に供していた部分とその敷地の譲渡についてのみ適用されます(上記(2)参照)。よって3,000万円控除と事業用資産の買換え特例との間で競合関係が生じることがないので、甲さんが店舗併用住宅のうち事業用の部分について事業用資産の買換え特例の適用を受ける場合であっても、その居住用の部分については3,000万円控除の適用が認められます。

 

 

 

税理士法人タクトコンサルティング 「TACTニュース」(2020/05/08)より転載

[解説ニュース]

相続税法における養子の取扱い

 

〈解説〉

税理士法人タクトコンサルティング(宮田 房枝/税理士)

 

 

[関連解説]

■民法における養子の取扱い

■特別縁故者に対する相続財産の分与と相続税

 

1. はじめに


3月23日の記事では、「民法における養子の取扱い」をご紹介しました。民法上、養親が死亡した場合には、その養子縁組が普通養子縁組であったとしても特別養子縁組であったとしても、養子はその養親の相続人(子)として取り扱われ、その相続分は実子と変わりません。

 

一方、税務上は、むやみに養子の数を増やすことで公平性が損なわれること等があるため、普通養子縁組の場合には一定の制限規定が設けられています(下記2.参照)。また、被相続人の直系卑属(孫やひ孫)が養子である場合には、その者の相続税額については、原則として、相続税額が2割加算されます(下記3.参照)。本稿では、これらの取扱いをご紹介します。

 

 

2. 法定相続人の数


(1) 法定相続人の数が影響する計算項目

相続税の計算上、次の項目については、法定相続人の数を基に行います。

 

(2) 普通養子縁組による養子がいる場合の数の制限

 

上記(1)の法定相続人の数を民法どおりにカウントすると、むやみに養子の数を増やすことで、相続税回避が可能となってしまいます。
そこで、普通養子縁組の場合には、上記(1)の計算をするときの法定相続人の数に含める被相続人の養子の数は、次のとおり、一定数に制限されています。

 

・ 実子あり→1人まで
・ 実子なし→2人まで 
ただし、養子の数を法定相続人の数に含めることで相続税の負担を不当に減少させる結果となると認められる場合、その原因となる養子の数は、上記の養子の数に含めることはできません。

(3) 実子として扱われる者

次のいずれかの者は、実子として取り扱われます(すなわち、上記(2)の数の制限は受けず、すべて法定相続人の数に含まれます)。

 

①特別養子縁組により被相続人の養子となった者
②被相続人の配偶者の実子で被相続人の養子となった者
③被相続人と配偶者との婚姻前に特別養子縁組によりその配偶者の養子となった者で、その婚姻後にその被相続人の養子となったもの
④被相続人の実子、養子又はその直系卑属が相続開始以前に死亡し、又は相続権を失ったため相続人となったその者の直系卑属

 

3. 相続税額の2割加算


(1) 相続税額の2割加算とは

相続、遺贈又は相続時精算課税贈与により財産を取得した者がその被相続人の一親等の血族(代襲相続人となったその被相続人の直系卑属を含む)及び配偶者以外の者である場合には、その者の相続税額にその相続税額の2割に相当する金額が加算されます(これを相続税額の2割加算といいます)。

(2) 養子の取扱い

被相続人の養子は、一親等の法定血族であることから、相続税額の2割加算の対象とはなりません。ただし、被相続人の養子となっている被相続人の直系卑属(孫やひ孫)は、その者が代襲相続人となっている場合を除き、相続税額の2割加算の対象になります。

(3) まとめ

相続税額の2割加算の適用対象者をまとめると、次表のとおりです。

 

 

税理士法人タクトコンサルティング 「TACTニュース」(2020/04/27)より転載

[解説ニュース]

不動産の売買契約中に買主に相続があった場合の評価

 

〈解説〉

税理士法人タクトコンサルティング(髙木 駿/公認会計士・税理士)

 

 

[関連解説]

■介護施設等に入所後、相続が発生した場合の居住用財産の譲渡所得と相続税の取扱い

■介護施設で亡くなった場合の相続税の小規模宅地等の特例

 

1.相続税計算における評価上の問題点


土地や建物の売買契約締結後、その契約に係る引渡しが未了の状態で買主に相続が開始した場合、相続税の計算上、相続人が取得することとなる相続財産の種類が何であるのか(不動産か債権(不動産の引渡請求権)か)、さらにはその評価額はどのように算定するのかが問題になります。

 

相続税法あるいは財産評価基本通達では、土地や建物の売買契約締結後引渡前に買主に相続が発生した場合の取扱いについて特段の明文規定等はありません。

 

 

2.現行の実務の取扱い


現行の実務は、平成3年1月11日付国税庁資産税課情報第1号(以下「情報」という。)の取扱いに基づき、被相続人である買主に係る相続税の計算上、被相続人から取得した財産及び承継した債務の種類の判定、そしてその財産及び債務の評価を行っています。今回は「情報」の取扱いについて、設例を用いて解説します。

 

(1)原則的な取扱い

買主に相続が開始した場合に相続人が取得した財産は、売買契約に係る土地や建物の引渡請求権とし、その評価額は売買契約に基づく土地や建物の取得価額(売買代金)の金額となります。また、その一方で相続人が承継した債務は、相続開始時における残代金支払債務とし、その額は売買契約に基づき、被相続人たる買主が負担することとなっている売買代金や仲介手数料その他経費で、相続開始の時における未払相当額となります。

 

設例の場合のように、買主である被相続人が6,000万円で土地を購入する売買契約を締結し、手付金600万円を支払った後、引渡前に相続が発生した場合は、6,000万円の土地の引渡請求権を課税財産として計上する一方で、未払となっている残代金5,400万円を債務控除の対象とします。

 

(2)特例的な取扱い-その1

売買契約日から相続開始日までの期間が通常の売買の例に比較して長期間であるなど、上記(1)の取得価額の金額が相続開始日における土地や建物の引渡請求権の価額として適当でない場合には、別途個別に評価した価額によります。

 

(3)特例的な取扱い-その2

買主に相続が開始した場合において、上記(1)にかかわらず、売買契約により取得する土地や建物を相続財産とする申告をすることも認められます。なお、この場合における土地や建物の価額は、財産評価基本通達により評価した金額となります。

 

この特例的な取扱いにより、設例の場合には、取得する財産を「土地」として、その評価額を4,000万円として申告することも認められます。一般的には、土地については売買代金よりも路線価等で評価した相続税評価額の方が低くなるケースの方が多いため、特例的な取扱いの場合の方が相続税上は有利になることが多いと思われます。

 

ただし、「情報」の(注)4では、「当該特例的な取扱いによる課税処分が訴訟事件となり、その審理の段階で引渡し前の相続財産が「土地等」であるとして争われる場合には、相続財産が「土地等」であるとしてもその価額が当該売買価額で評価すべきである旨を主張する事例もあることに留意する。」との記載がありますので注意が必要です。

 

 

3.小規模宅地等の特例の適用の可否


「情報」においては、上記2.(3)のとおり、土地の売買契約締結中に買主の相続が発生した場合における買主の相続財産を「土地」として申告することも認められています。この場合にその土地につき、小規模宅地等の特例の適用が受けられるかどうかについて「情報」では特に言及していません。私見では、被相続人である買主は相続開始直前において土地を所有しているものとして取り扱われることになるため、その土地が小規模宅地等の特例の適用要件を充足した場合は特例を適用することが可能であると考えますが、相続開始直前における被相続人等の居住の用及び事業の用に供していたのかという判定等には慎重な判断が必要となります。

 

 

 

 

税理士法人タクトコンサルティング 「TACTニュース」(2020/04/20)より転載

[解説ニュース]

所得税の不動産所得に損失が生じた場合の損益通算の特例

 

〈解説〉

税理士法人タクトコンサルティング(山崎 信義/税理士)

 

 

[関連解説]

■最近の事例にみる「不動産所得で経費になるもの」

■不動産取得税の「相続による取得」を巡る最近のトラブル

 

1.不動産所得に係る損益通算の特例の概要


(1)損益通算とは

所得税の計算上、不動産所得、事業所得、譲渡所得又は山林所得の金額の計算上生じた損失の額のうち一定のものについて、一定の順序により総所得金額、退職所得金額または山林所得金額等を計算する際に給与所得など他の各種所得の金額から控除されます (所得税法69条)。

 

(2)不動産所得に係る損益通算の特例

不動産所得の金額の計算上生じた損失の金額がある場合に、その不動産所得の金額の計算上必要経費に算入した金額のうちに不動産所得を生ずべき業務の用に供する土地又は土地の上に存する権利(以下「土地等」)を取得するために要した負債の利子の額があるときは、(1)にかかわらず、その負債の利子に相当する部分の金額が生じなかったものとみなされ、他の各種所得の金額と損益通算できません(租税特別措置法(措法)41条の4)。

 

 

2.土地等を取得するために要した負債の利子の計算


(1)計算のあらまし

1(2)の対象となる「土地等を取得するために要した負債の利子の額に相当する部分の金額」は、次に掲げる区分に応じ、それぞれに掲げる金額とされます(措法施行令(措令)26条の6第1項)。

 

①その年分の不動産所得の金額の計算上必要経費に算入した、土地等を取得するために要した負債の利子の額が、その不動産所得の金額の計算上生じた損失の金額を超える場合
⇒その不動産所得の金額の計算上生じた損失の金額の全額

 

②その年分の不動産所得の金額の計算上必要経費に算入した、土地等を取得するために要した負債の利子の額が、その不動産所得の金額の計算上生じた損失の金額以下である場合
⇒その不動産所得の金額の計算上生じた損失の金額のうち、その不動産所得の金額の計算上必要経費に算入した、土地等を取得するために要した負債の利子の額に相当する部分の金額

 

(2)土地と建物を一括して借入金で取得した場合の借入金の利子の額の区分計算

一の契約により同一の者から土地等と建物を一括して借入金で取得した場合において、その借入金の額がこれらの資産ごとに区分されていないこと等により、土地等と建物の借入金の額を区分することが困難であるときは、これらの資産を取得するために要した借入金の額が、まず建物の取得の対価の額に充てられ、次に土地等の取得の対価の額に充てられたものとして、前述(1)の計算をすることができます(措令26条の6第2項)。

 

この場合における「土地等を取得するために要した借入金の利子の額に相当する部分の金額」は、次の算式により計算されます(措法通達41の4-3)。

 

(算式)
その年分の土地等を取得するために要した借入金の利子の額=その年分の建物と土地等を取得するために要した借入金の利子の額×土地等を取得するために要した借入金の額÷建物と土地等を取得するために要した借入金の額

 

 

3.土地等を取得するために要した負債利子の計算例


土地と建物の別に借入金の額を区分することが困難な場合における、土地等を取得するために要した負債利子の額の計算例を示すと、次の通りとなります。

 

(設例)
・土地の取得価額 :4,000万円(a)
・建物の取得価額 :2,000万円(b)
・借入金の額   :4,800万円(c)
・借入金の利子の額: 192万円(d)

 

①土地の取得に要した借入金の額 4,800万円c-2,000万円b=2,800万円e
②土地の取得に要した借入金の利子の額 192万円d×2,800万円e÷4,800万円c=112万円
③損益通算の対象とならない借入金の利子の額
イ.不動産所得の金額の計算上生じた損失の金額が70万円の場合 ⇒70万円<112万円  ∴70万円
ロ.不動産所得の金額の計算上生じた損失の金額が200万円の場合 ⇒200万円>112万円 ∴112万円

 

 

 

税理士法人タクトコンサルティング 「TACTニュース」(2020/04/13)より転載

[解説ニュース]

不動産取得税の「相続による取得」を巡る最近のトラブル

 

〈解説〉

税理士法人タクトコンサルティング(遠藤 純一)

 

 

[関連解説]

■共有物の分割で不動産取得税がかかるとき

■最近の事例にみる「不動産所得で経費になるもの」

 

1. はじめに


不動産取得税は、土地や家屋の「取得」に課税される都道府県税です(地法73の2①)。ただし、形式的に不動産の所有権を移転したものとされる所定の「取得」は非課税とされます(地法73の7)。このうち、相続(包括遺贈及び被相続人から相続人に対してなされた遺贈を含む。)により不動産を取得した場合も、形式的な所有権の移転等として非課税とされます(同法1号)。この相続により不動産を取得したとされる場合については、実務上、含みがあるようで、時々トラブルになることがあります。

 

今回は、遺言により複数の相続人のうちの一人が不動産を全部取得したことに対し、別の相続人が民法改正前の遺留分減殺請求をして不動産の持ち分を取得後、共有物の分割で相続財産である不動産を取得したことが、「相続による取得」に該当するかどうかが争点となった裁判例(東京地裁令和2年1月23日)を見ていくことにします。なお、同裁判のもう1つの争点である非課税となる「共有物の分割」に該当するかどうかについては紙面の都合上、割愛します。

 

2. 事案の概要


被相続人Aさんは長女に不動産を相続させる旨の自筆証書遺言を残して平成18年に死去しました。このため残る相続人Bさんら4人は、長女に対する遺留分減殺請求をしました。その結果、Bさんら4人は不動産につき10分の1ずつ取得することを得ました。その後平成27年になって、長女は、共有物となった不動産につき、共有物分割を求める裁判を起こしました。裁判所は、相続人Bさんが遺留分減殺請求で得た不動産(10分の1)について残りの持ち分である不動産持分10分の9を取得して単独所有とする代わりに、代償金を支払うとする内容の共有物分割の判決を下し、同年9月に確定しました。

 

これを受け、課税庁である東京都は平成30年に、相続人Bさんが不動産の持分10分の9を取得したものとして、200万円弱の不動産取得税を賦課したところ、Bさんが「この不動産の持ち分の取得は相続によるもので、共有物分割による取得は再度の遺産分割と考えるのが自然」と主張し、課税の取消しを求めて争いとなったものです。

 

3. 背景にある取扱い


民法改正前の遺留分減殺請求に基づき不動産を取得した場合の不動産取得税の取扱いは、東京都の場合、「遺留分権利者が一部の相続人に限定されていること及び遺産分割のやり直しによる取得を非課税と認めていること等の事情から、実質的には相続を原因とした取得と同様であるものと解し、非課税と認定して差し支えない」としています(「不動産取得税質疑応答集」の改正について(通知)平成28年4月1日)。

 

ここでいう遺産分割のやり直しによる取得については、相続人全員で遺産分割協議を合意解除し「改めて遺産分割協議を行った場合についても「相続による不動産の取得」に該当するものであり(最高裁昭和62年1月22日判決)、再度非課税の取扱いをして差し支えない」(同上)としています。この場合の登記は大方、錯誤により登記を抹消し、新たな相続登記が行われる形式になるとされます。Bさんの主張は、こうした取扱いを背景にしたものといえそうです。

 

4.裁判所の判断


裁判所は、特定の相続人に遺産全部を相続させる旨の遺言に基づく財産の相続について、単独で相続させる遺産分割の方法が指定されたものと解すべきで、「遺留分減殺請求権の行使により、承継の効力は遺留分を侵害する限度で失効し、相続人に承継された権利は遺留分を侵害する限度で当然に減殺請求をした遺留分権利者に帰属するが、遺産全部を特定の相続人に相続させる旨の遺言があった場合には、遺産は遺産分割の対象となることはない」と説示し、この場合に「遺留分権利者に帰属する権利は、遺産分割の対象となる遺産としての性質を有しないものと解すべき」としました。

 

あてはめでは、上記の事実関係に基づきBさんらの「遺留分減殺請求後の不動産は、いずれも遺産としての性質を有するものではなく、遺産分割の対象となるものではないから」、相続による取得には該当するということはできないと判断しています。

 

5.補足


なお、遺言に基づき不動産の登記が適法に行われた場合、あとで錯誤により抹消することはできないようです。となると、遺言により登記された場合には、遺産分割をやり直しするといった形式を整えることはできません。このケースで、民法改正後の遺留分侵害額請求により、相続不動産の一部を代物弁済という形で不動産を請求した相続人に渡すと、遺産分割のやり直しといった形はとれず、登記原因は代物弁済となって、不動産取得税の課税が及ぶということになりそうです。

 

 

 

税理士法人タクトコンサルティング 「TACTニュース」(2020/04/06)より転載