【Q&A】契約者の変更があった生命保険契約に係る死亡保険金等の課税関係

[解説ニュース]

【Q&A】契約者の変更があった生命保険契約に係る死亡保険金等の課税関係

 

〈解説〉

税理士法人タクトコンサルティング(山崎 信義/税理士)

 

 

[関連解説]

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【問】

Aさんは、X保険会社と平成30年に被保険者を子B、死亡保険金受取人を孫C(Bの子)とする生命保険契約を締結し(解約返戻金あり)、保険料を一時払いしました。なお、同契約については令和6年1月に契約者がAさんから子Bに変更されています。
この生命保険契約に係る課税関係について、以下の通りお尋ねします。

【問1】

令和6年の契約者変更時においては、どのような課税関係が生じるのでしょうか。

【問2】

令和6年の契約者変更後、Aが存命中に子Bが死亡し、孫Cが死亡保険金を取得した場合、どのような課税関係が生じるのでしょうか。

【問3】

令和6年の契約者変更後、子Bが存命中にAが死亡した場合、どのような課税関係が生じるのでしょうか。

【問4】

【問3】のA死亡後に子Bが死亡し、孫Cが死亡保険金を取得した場合、どのような課税関係が生じるのでしょうか。

【回答】

1.結論


(1)【問1】の場合、契約者変更時には課税関係は生じません。

 

(2)【問2】の場合、Aから孫Cに贈与があったものとみなされ、Cに贈与税が課税されます。

 

(3)【問3】の場合、Bが旧契約者のAから生命保険契約に関する権利を相続により取得したものとみなされ、Bに相続税が課税されます。

 

(4)【問4】の場合、被相続人かつ契約者の子Bが、Aの支払った保険料を負担したものとされ、孫CはBから死亡保険金を相続により取得したものとみなされて、Cに相続税が課税されます。

 

 

2.解説


(1)【問1】の課税関係

 

相続税法では、被保険者の死亡により保険事故が発生した場合に、死亡保険金受取人が保険料を負担していないときは、保険料の負担者から保険金を相続、遺贈又は贈与により取得したものとみなして課税する旨を定めています(同3条、5条)。

 

一方、保険料を負担していない保険契約者の地位は、相続税・贈与税の課税上は財産的価値のあるものとは考えられておらず、契約者が保険料を負担している場合であっても、契約者が死亡しない限り課税関係は生じないものとしています。

 

したがって契約者の変更があった場合、その変更時に新契約者のBに贈与税等が課税されることはありません(参考:国税庁質疑応答事例「生命保険契約について契約者変更があった場合」)。

 

 

(2)【問2】の課税関係

 

【問2】の場合は、その保険契約に係る保険料の全部が保険金受取人C以外のAによって負担されているので、その保険事故(被保険者Bの死亡)が発生した時において、保険金受取人Cが、その取得した保険金の全額をAから贈与により取得したものとみなされ、Cに贈与税が課税されます(相続税法5条1項)。

 

 

(3)【問3】の課税関係

 

【問3】の場合は、まだ保険事故(被保険者Bの死亡)が発生していない中、その保険契約に係る保険料の全額を負担したAが死亡し、かつ死亡したA以外の者(B)がその生命保険契約の契約者であるため、Bがその生命保険契約に関する権利(解約返戻金請求権等)をAから相続により取得したものとみなされ、Bに相続税が課税されます(相続税法3条1項3号)。

 

この場合の生命保険契約に関する権利については、Aの相続開始の時に、その契約を解約するとした場合に支払われる解約返戻金の額により評価されます(財産評価基本通達214)。

 

 

(4)【問4】の課税関係

 

上記(3)のとおり、Bがその生命保険契約に関する権利をAから相続により取得したものとみなされた場合、そのみなされた時以後はAが支払った保険料はBが自ら負担したものとみなされます(相続税法基本通達3-35)。

 

したがって【問4】の場合は、Bの死亡によりBが保険料の全額を負担した死亡保険金を相続人のCが取得したことになるので、CがBからの相続により死亡保険金を取得したものとみなされ、Cに相続税が課税されます(相続税法3条1項1号)。また[500万円×法定相続人の数]を限度額とする、死亡保険金に係る相続税の非課税規定の適用対象とされます(同12条1項5号)。

 

 

 

 

税理士法人タクトコンサルティング 「TACTニュース」(2024/3/25)より転載