マンションの相続税評価が時価の6割水準めどに引上げへ

[解説ニュース]

マンションの相続税評価が時価の6割水準めどに引上げへ

 

〈解説〉

税理士法人タクトコンサルティング(遠藤 純一)

 

 

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1.はじめに


国税庁は令和5年10月6日、マンションの財産評価を見直した個別通達「居住用の区分所有財産の評価について」(法令解釈通達)を公表しました。適用は令和6年1月1日以後の相続等による取得分からです。

 

 

2. これまでのマンションの相続税評価


マンションの相続税評価は従来、「財産評価基本通達(以下、評価通達という。)」に基づき、原則として自用の場合、以下のとおりです。

 

(1)敷地の評価…宅地や宅地の上の存する借地権等の権利の評価額を共有持分で按分して求める

 

(2)家屋の評価…1棟の建物全体の固定資産税評価額を専有面積の割合によって按分して各戸の評価額を算定

 

 

3.改正後のマンション評価の対象


対象となるマンションとは、一棟の区分所有建物に存する居住の用に供する専有部分一室に係る区分所有権と敷地利用権です。一棟の区分所有建物であっても、階数が2階以下、または部屋数が3以下で、その全部を区分所有者やその親族の居住の用にしているものは除外されます。

 

また、一棟の区分所有建物ではない「事業用のテナント物件」や「一棟所有の賃貸マンションなど」は対象外です。

 

 

4.改正後のマンション評価方法


新たなマンション評価の方法は、[1]評価乖離率を求め、[2]評価乖離率に基づく評価水準の区分により、[3]のように補正する方法です。

 

[1]評価乖離率の求め方

 

評価乖離率=①×△0.033+②×0.239+③×0.018+④×△1.195+3.220

①評価対象マンションの築年数のことで、その一棟のマンションの建築の時から課税時期までの期間を指します。当該期間に1年未満の端数があるときは、その端数は1年。

 

②総階数指数=総階数÷33で求めます。小数点以下第4位を切り捨て、1を超える場合は1とする。なお、階数に地下は含みません。

 

③評価対象のマンションの一室の所在階のこと。2階にまたがるマンションの場合(メゾネットタイプの場合)には低い階数を所在階とします。評価対象の一室が地下の場合は、0階とします。

 

④「敷地持分狭小度」として、評価対象の一室の「敷地利用権の面積÷専有面積」で算出された値。小数点以下第4位を切り上げます。

 

 

[2]評価水準

評価水準は1÷評価乖離率で求めます。

 

 

[3]一室の区分所有権等に係る敷地利用権・区分所有権の価額

新たな自用地・自用家屋としての評価額=「自用地・自用家屋としての価額」×区分所有補正率

(1)評価水準が1を超える場合:区分所有補正率=評価乖離率(→評価額は引下げ)

 

(2)評価水準が0.6以上1以下の場合:補正なし

 

(3)評価水準が0.6未満の場合:区分所有補正率=評価乖離率×0.6(→時価の6割水準に引上げ)

 

(注)1 区分所有者が次のいずれも単独で所有している場合には、「補正率」は1を下限とします。

 

イ 一棟の区分所有建物に存する全ての専有部分

 

ロ 一棟の区分所有建物の敷地

 

ただし、貸家建付地や貸家などその他現行の評価通達で配慮すべき一定のファクターがある場合には原則として現行の評価通達を上記の自用地または自用家屋としての評価額に適用します。

また評価乖離率が0かマイナスの場合は評価しません。
改正後の評価額の傾向としては、築浅、一室の所在階が高階数、敷地に目いっぱいに建っており総戸数が多い…といったマンションほど、評価額が高く補正されそうです。

 

 

5.新評価と財産評価基本通達6項との関係


新評価のマンションでも、財産評価基本通達通りの評価では不適当となるような場合には、同通達の例外規定「総則6項」が適用され、不動産鑑定など別の評価方法で再評価されます。

 

国税庁が公表した情報によると、「本通達及び評価通達の定める評価方法によって評価することが著しく不適当と認められる場合には、評価通達6項が適用されることから、(中略)本通達を適用した価額よりも高い価額により評価することもある」とされていることから明らかです。

無論、新評価の対象でない不動産もこれまで通り上記6項の対象となるのは言うまでもありません。

 

 

 

税理士法人タクトコンサルティング 「TACTニュース」(2023/12/25)より転載