[税理士のための税務事例解説]

事業承継やM&Aに関する税務事例について、国税OB税理士が解説する事例研究シリーズです。

今回は、「個人事業者の事業承継  ~消費税の仕入税額控除の適用について~」についてです。

 

 


[質問]

個人事業者である肥育牛農家Aは、高齢のため2019年11月30日にその事業を廃止し、同日に生計を一にする子Bに譲ることを考えています。

 

現在、〇〇万円程度の棚卸資産に該当する肥育牛があり、これは同日にAからBに売却し、事業用の固定資産はAからBに無償で貸与する考えです。

 

Aの事業の廃業の日は2019年11月30日となり、この日にその肥育牛の棚卸資産を譲渡することとしています。

 

この場合、Bの開業の日をAの廃業の日の2019年11月30日として、Bは「消費税課税事業者選択届出書」を提出することにより、その肥育牛である棚卸資産に係る消費税について仕入税額控除をすることができるという認識で間違いはないでしょうか。

 

 

 

[回答]

消費税において、免税事業者が、その基準期間における課税売上高が1,000万円以下である課税期間につき、「消費税課税事業者選択届出書」を所轄税務署長に提出した場合には、その提出をした日の属する課税期間の翌課税期間(その提出をした日の属する課税期間が事業を開始した課税期間である場合等には、その課税期間)から課税事業者になるとされています(消法9④、消令20)。

 

事例の場合、Bにとって2019年が事業を開始した課税期間であることを前提とすれば、Aの廃業日、Bの開業日及び棚卸資産の譲渡日を2019年11月30日とし、2019年中にBが「消費税課税事業者選択届出書」を提出することにより、Bは2019年1月1日から課税事業者となるので、棚卸資産の譲受けに係る課税仕入れについては仕入税額控除の適用を受けることができると考えます。

 

 

 

 

 

税理士懇話会事例データベースより

(2019年9月3日回答)

 

 

 

 

[ご注意]

掲載情報は、解説作成時点の情報です。また、例示された質問のみを前提とした解説となります。類似する全ての事案に当てはまるものではございません。個々の事案につきましては、ご自身の判断と責任のもとで適法性・有用性を考慮してご利用いただくようお願い申し上げます。

 

 

 

[税理士のための税務事例解説]

事業承継やM&Aに関する税務事例について、国税OB税理士が解説する事例研究シリーズです。

今回は、「非上場株式の譲渡に当たり交渉支援、契約内容の検討等を依頼した弁護士費用等について」についてです。

 

 


[質問]

非上場会社M社のオーナー社長A(持株比率100%)は、この度上場企業P社より、M社株式の全株購入(買収)を持ち掛けられ、提案を前向きに検討し、弁護士B及び公認会計士Cにその交渉支援、契約内容の法的チェック等を依頼することになりました。この場合の弁護士費用等は、株式譲渡に係る譲渡費用と解して問題ないでしょうか。

 

 

 

[回答]

所得税基本通達33-7は、譲渡費用の範囲について仲介手数料、運搬費等を例示したうえで「・・・当該譲渡のために直接要した費用」とする旨明らかにしております。

 

おたずねの弁護士費用等をA氏のM株式の譲渡に係る譲渡費用とすることができるかどうかもこの取扱いに照らし、M株式譲渡のために直接要した費用であるかどうかを検討しその可否を判断することになります。したがって、A氏がM株式の譲渡に当たりB弁護士およびC公認会計士に対して支払った費用をM株式の譲渡に係る譲渡費用に算入できるかどうかは、支払った費用別にそれぞれその支払いがM株式を譲渡するために直接要するものであったかどうかを検討してその可否を判断する必要があります。

 

国税庁のホームページの質疑応答事例によると、譲渡代金の取立てに要した弁護士費用や譲渡資産に係る訴訟に際し支払った弁護士費用については、いずれも譲渡に直接要した費用であるとは認められないので譲渡費用に該当しないと回答しております。

 

ご照会の事例の支払費用についても交渉支援、法的チェック等の詳細について検討したうえで、それらがM株式を譲渡するために欠かせないものであったかどうかにより譲渡費用に該当するかどうか判断すべきものと考えます。

 

株式の譲渡に備えて一般的な事項について関与を求めてその報酬として支払ったものであるとすると、それをM株式の譲渡費用に該当するとの結論には賛否両論があるのではないかと思われ、賛否のいずれによるかは当事者A氏の考えによることになるのではないかと考えます。

 

 

 

 

税理士懇話会事例データベースより

(2019年10月7日回答)

 

 

 

 

[ご注意]

掲載情報は、解説作成時点の情報です。また、例示された質問のみを前提とした解説となります。類似する全ての事案に当てはまるものではございません。個々の事案につきましては、ご自身の判断と責任のもとで適法性・有用性を考慮してご利用いただくようお願い申し上げます。

 

 

 

[税理士のための税務事例解説]

事業承継やM&Aに関する税務事例について、国税OB税理士が解説する事例研究シリーズです。

今回は、「無対価合併における適格要件について」についてです。

 

 


[質問]

A社はB社の株式を取得後、A社の100%子会社であるC社を存続会社とした合併を予定しています。

 

100%子会社同士の合併であり、無対価合併とするつもりです。

 

ここで、B社は自己株式を所有しており、合併と同時に自己株式は消却されることとなると思いますが、このような場合であっても100%子会社同士の無対価合併として適格合併となるでしょうか。

 

A社・B社・C社ともに8月決算

 

8月  B社が自己株式取得
9月  A社がB社株式取得
10月   B社とC社が合併

 

 

[回答]

被合併法人と合併法人との間に同一の者による完全支配関係があり、合併後もその同一の者による完全支配関係が継続することが見込まれている場合の合併は適格合併に該当します。

 

ただし、当該合併が無対価合併である場合には、次に掲げる関係がある場合に限られています(令4の3②)。

 

① 合併法人が被合併法人の発行株式の全部を保有する関係
② 被合併法人及び合併法人の株主のすべてについてその者が保有する被合併法人株式の数の被合併法人の発行済株式の総数のうちに占める割合とその者が保有する合併法人の株式の数の合併法人の発行済総のうちに占める割合とが等しい場合における被合併法人と合併法人との関係

 

なお、この場合の発行済株式には自己株式を除くとされています(法2十二の七の五)。

 

ご照会事例については、被合併法人C社と合併法人B社との間にA社による完全支配関係にあることから、上記②の要件を満たすことになりますので、適格無対価合併に該当することになります。

 

ただし、株式の移動から無対価合併までの一連の取引に経済的合理性がなく、何らかの租税回避行為のみを目的としたものであるとの事実認定によっては、同族会社の行為計算否認規定(法132)及び組織再編成に係る行為計算否認規定(法132の2)に抵触する恐れがありますのでご留意ください。

 

 

(参考)

株式会社は、取締役会又は取締役の決議に基づき取得した自己株式を消却することができるとされています(会社法178)。そして、自己株式を消却した場合には、その消却する自己株式の帳簿価額を原則としてその他資本剰余金の額から減額することとされています(会社計算規則24)。

 

 

 

税理士懇話会事例データベースより

(2019年9月24日回答)

 

 

 

 

[ご注意]

掲載情報は、解説作成時点の情報です。また、例示された質問のみを前提とした解説となります。類似する全ての事案に当てはまるものではございません。個々の事案につきましては、ご自身の判断と責任のもとで適法性・有用性を考慮してご利用いただくようお願い申し上げます。

 

 

 

[解説ニュース]

美術品(重要文化財)を相続・売却した際の優遇措置について

 

〈解説〉

税理士法人タクトコンサルティング(青木 喬/税理士)

 

 

【問】

趣味で美術品の収集をしていますが、収集した日本絵画のうち1点が重要文化財に指定されています。

具体的な評価額は不明ですが、他にも財産があり多額の相続税が生じると考えています。相続税を金銭で納付することができない場合には物納になると思いますが、可能であればこの絵画は相続人に引き継いで貰いたいです。ただ、日常的な保存管理も必要であるため、相続人には負担を掛けると思います。もし相続人が将来的にこの絵画を相続することを了承しない場合には、適切に引き継いでくれる第三者に売却することも考えています。以上を踏まえ、相続の場合と譲渡の場合の税制についてそれぞれ教えてください。

 

 

【回答】

1. 相続の場合


(1)美術品の評価について

相続(遺贈)により取得した財産の価額は、相続が発生した時における時価になります。美術品についての時価の算定は、一般的に画廊やオークションハウスにて鑑定を行うこととなります。相続をした直後に相続人等が売却した場合には、その売却価額を時価とするケースもあります。

 

美術年鑑で記載されている価格は保存状態の良いものを画廊等で販売するときの価格になります。したがって、必ずしも所有されている絵画の時価を表しているものではありません。

 

なお美術品のなかでも「登録美術品」については、相続人からの申請により文化庁長官がその登録美術品の価格を評価し、その結果を通知します。

 

登録美術品制度とは、重要文化財や国宝、世界的に優れた美術品を所有者の申請により、国が審査のうえ登録し、登録した美術品を所有者から美術館に引渡して公開することにより、国民が優れた美術品を鑑賞する機会を拡大することを目的とした制度です。

 

(2)納税資金の手当てができない場合

相続税は金銭による納付が原則ですが、それが困難な場合、税務署長の許可を得て相続財産を物納することができます。物納可能な財産は以下の通りです。数字は物納に充てることができる財産の優先順位です。

 

 

①不動産、船舶、国債、地方債・上場株式等
②非上場株式等
③動産

 

 

美術品は③の動産に該当しますが、登録美術品については、上記の順序に関わらず物納の許可を受けることができます。ただ、相続が発生する前にこの美術品について国から登録を受けておく必要があります(相法41②、措法70の12①)。

 

(3)美術品についての相続税の納税猶予

物納により相続税の納付を行うことは可能ですが、所有権を失うため相続人に美術品を引き継ぐことができません。そこで、「特定の美術品についての相続税の納税猶予及び免除制度」を検討すべきでしょう。

 

この制度は、一定の条件を満たした美術館等に特定美術品(重要文化財として指定された絵画等の動産、登録有形文化財のうち一定のもの)を寄託(※)していた被相続人に相続が発生した場合において、相続人が寄託先美術館の設置者への寄託を継続するときは、納付すべき相続税額のうち、その特定美術品に係る課税価格(評価額)の80%に対応する相続税の納税が猶予される制度です(措法70の6の7)。
(※)被相続人において以下の手続が必要となります。

 

・寄託先美術館の設置者と契約期間、美術品を適切に公開する旨、基本的に所有者からの解約の申し入れができない旨を記載した寄託契約を結んでいること

・寄託契約の内容等を記載した保存活用計画について文化庁の認定を受けていること

 

2. 譲渡の場合


個人が絵画を譲渡した場合には、譲渡による所得について所得税が課税されます。事業所得・不動産所得・給与所得などと合算し、一般の累進税率を適用して税額を計算する総合課税により計算が行われます。

 

ところで、美術品のなかでも重要文化財について第三者に売却しようとするときは、事前に文化庁に「売却の相手方」や「予定対価の額」等を申し出る必要があります(文化財保護法46条)。これは文化財を適正に保護する観点から、国に優先買取権が認められているためです。ただ最近では、無届けの売買が多く、個人所有の重要文化財のほぼ半数の所在が確認できていないといわれています。

 

国が買い取る場合には、申出のあった予定対価の額で買い取りを行いますが、国に譲渡した場合の譲渡所得については、非課税とされています(措法40の2)。

 

 

 

 

税理士法人タクトコンサルティング 「TACTニュース」(2019/12/02)より転載

[税理士のための税務事例解説]

事業承継やM&Aに関する税務事例について、国税OB税理士が解説する事例研究シリーズです。

今回は、「のれんの税務上の取扱い」についてです。

 

 


[質問]

事業譲渡におけるグループ法人税制の適用についてお尋ねします。

 

A社はB社の株式を100%所有しています。この度、A社の事業をB社に売却するのですが、事業譲渡の価格算定においてA社の事業の純資産価値のみではなく、利益3年分も加算されることとなっております。

 

この場合、利益3年分は、いわばのれんとしての価値だと考えますが、こののれんの価値部分については、グループ法人税制の対象となるのでしょうか。

 

 

[回答]

1 「のれん」とは、取得原価が受け入れた資産及び引き受けた負債に配分された純額を上回る場合の、その超過額をいうものとされています(企業結合会計基準㉛)。したがって、企業を買収する場合の買収価額(取得原価)が識別可能な資産・負債の時価とイコールの場合には、基本的に「のれん」は生じないことになります。

 

しかし、買収時の価格決定には企業結合に当たって期待されるシナジー効果や、ノウハウ・ブランド等の超過収益力が含まれていることから、買収価額が識別可能な資産負債の時価を超過するケースが少なくありません。これらの時価を超えるシナジーや超過収益力等のプレミアムを総称して「のれん」ということになります。

 

 

 

2 現行の日本の会計基準上、原則として、「のれん」は資産に計上し、20年以内のその効果の及ぶ期間にわたって、定額法その他の合理的な方法により規則的に償却し、その償却額は販売費および一般管理費の区分に表示することとされており、「のれん」の金額に重要性が乏しい場合には、「のれん」が生じた事業年度の費用として処理することができることとされています(企業結合会計基準㉜、㊼)。

 

一方で、負の「のれん」が発生した場合には、その発生した事業年度の利益として認識し、特別利益の区分に表示することになります(企業結合会計基準㉝、㊽)。

 

 

 

3 税務上、「のれん」という資産分類は存在しませんが、それに類似する概念として平成18年度税制改正で創設された「資産調整勘定」、「差額負債調整勘定」というものがあります。

 

これは、企業結合会計基準の導入により組織再編時の「のれん」の取扱いが明確化されたことから、企業会計との調和を図り、また実務上の不明確さを解消する目的で、会計上の「のれん」に類似する概念が税法においても導入されることとなったものです。

 

具体的には、法人が非適格合併等により交付した金銭等の価額が移転資産負債の時価純資産価額を超えるときは、その超える部分の金額を「資産調整勘定」として認識し(法人税法62の8①)、交付金銭等の額が移転資産負債の時価純資産価額に満たないときは、その満たない金額を「差額負債調整勘定」として認識するものとされています(法人税法62の8③)。

 

ここで非適格合併等とは、非適格合併のほか、非適格分割、非適格現物出資又は事業の譲受けで、事業及び事業に係る主要な資産負債のおおむね全部が移転するものとされており(法人税法62の8①、法人税法施行令123の10①)、事業の移転が前提とされています。事業の意義については旧商法・会社法の概念と基本的に同じと考えられており、「一定の営業目的のために組織化され、有機的一体として機能する財産」を言うことになります。

 

この「資産調整勘定」・「差額負債調整勘定」は、個別資産負債に配分できない残余価値であり、それぞれ会計上の正の「のれん」・負の「のれん」に相当するものです。

 

なお、「資産調整勘定」・「差額負債調整勘定」はあくまで差額概念であるため、承継資産の中に独立した資産として取引される慣習のある営業権が含まれる場合は、営業権(無形固定資産)として認識する必要があります。

 

このようにして計算された「資産調整勘定」・「差額負債調整勘定」は、会社の会計処理にかかわらず、計上後5年間にわたって減額し、損金又は益金の額に算入することになりますが、非適格合併等が期中に行われた場合であっても、計上初年度は1年分の減額を行うこととされています(法人税法62の8④⑦⑪)。

 

 

 

4 お尋ねによれば、「A社はB社の株式を100%所有」しており、「A社の事業をB社に売却する」、この際、「A社の事業の純資産価額に、3年分の利益相当額を加算した譲渡価額とする」とのことです。

 

事業譲渡の規模等の詳細が明らかではありませんが、グループ法人税制に関するお尋ねですので、事業及び事業に係る主要な資産負債のおおむね全部が移転することを前提に、一般論として回答させていただきます。

 

事業及び事業に係る主要な資産負債のおおむね全部が移転する事業譲受については、買収対価と移転資産・負債の時価との差額を「資産調整勘定」として認識することになります。

 

仮に、①A社は100%子会社であるB社に事業を200で譲渡し、②事業に含まれる資産及び負債の時価は170であったとすると、

 

① 会計上、資産及び負債を帳簿価額で引き継いだ場合であっても、事業譲渡の場合は、税務上の時価によって認識し、

② 交付した対価の金額(200)が移転を受けた資産及び負債の時価純資産価額(170)を超えた部分は、資産調整勘定として申告調整される

 

 

ことになると思われます。

 

 

なお、上記のような処理によって生ずる、一般に「のれん」と呼ばれる資産調整勘定は、税務上、5年間の均等償却を行うことで各事業年度の損金の額に算入することになると思われます(法人税法62条の8④⑤)。

 

 

 

 

税理士懇話会事例データベースより

(2018年1月24日回答)

 

 

 

 

[ご注意]

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[税理士のための税務事例解説]

事業承継やM&Aに関する税務事例について、国税OB税理士が解説する事例研究シリーズです。

今回は、「個人版事業承継税制について ~先代事業者が医師、後継者が歯科医師の場合~」についてです。

 

 


[質問]

先代事業者が医師であり、医業を行っていた場合、先代経営者死亡後に後継者が歯科医師としてその診療所建物及び土地を引き継ぎ歯科医師業として承継した場合は、事業を継続したとは言えないでしょうか。

 

 

 

[回答]

 

1 結論として、先代事業者が医師、後継者が歯科医師であった場合でも、個人版事業承継税制の適用があると考えます。

 

2 個人版事業承継税制(相続税)における後継者の要件は次のようになっています。

 

(後継者)
① 円滑化法の認定を受けていること

② 相続開始の直前において特定事業用資産に係る事業(同種・類似の事業等を含みます。)に従事していたこと(先代事業者等が60歳未満で死亡した場合を除きます。)

③ 相続開始の時から相続税の申告書の提出期限までの間に特定事業用資産に係る事業を引き継ぎ、相続税の申告書の提出期限までに引き続き特定事業用資産の全てを有し、かつ、自己の事業の用に供していること

④ 相続税の申告期限において開業届出書を提出し、青色申告の承認を受けていること(見込みを含みます。)

⑤ 特定事業用資産に係る事業が、資産管理事業及び性風俗関連特殊営業に該当しないこと

⑥ 先代事業者等から相続等により財産を取得した者が、特定事業用宅地等について小規模宅地等の特例の適用を受けていないこと

 

 

このうち、特定事業用資産に係る事業(同種・類似の事業等を含む)に従事していたこととは、日本標準産業分類の中分類に属するかどうかによります(措法通達70の6の8-20)が、医師と歯科医師はいずれも「83 医療業」に属しますので、これに該当します。

 

 

3 なお、「この特例は、先代事業者から後継者への事業の円滑な承継を政策目的としていることから、先代事業者と後継者の事業は同一(あるいは同種・類似)であることを前提としていますが、納税猶予期間が相当の長期間に及ぶことが見込まれるため、その後の経済社会の変化に柔軟に対応できるよう、承継後は後継者が先代事業者から承継した事業と別の事業に転業しても、承継した特例受贈事業用資産を自己の事業の用に供している限り、納税猶予は継続されることになります。」と説明されています(令和元年度税制改正の解説:財務省P522)ので、特例受贈事業用資産を自己の事業の用に供している限り、事業承継後に転業しても納税猶予は継続することとされていす。

 

 

 

税理士懇話会事例データベースより

(2019年9月12日回答)

 

 

 

 

[ご注意]

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[税理士のための税務事例解説]

事業承継やM&Aに関する税務事例について、国税OB税理士が解説する事例研究シリーズです。

今回は、「黄金株所有者による株式売買の価額について」についてです。

 

 


[質問]
(前提)

1 法人Aの株式譲渡による事業承継を検討しています。

 

 

2 法人Aの株主は甲(70%)、乙(20%)、丙(10%)の株主構成で3名の同族関係はありません。

よって、法人Aの同族株主は甲だけとなります。

 

甲(代表取締役)
乙(取締役)
丙(取締役)

 

 

3 今回、乙を将来の後継者と考えて、持株会社Bを設立し、甲の70%の所有株式を法人Bに法人税法上の時価で譲渡します。
新設する持株会社Bの株式は乙が100%所有します。

 

 

4 売買が完了した時点で法人Aの同族株主は、乙が直接20%と法人B(70%)を合計した90%を所有し、乙が同族株主となります。

 

 

5 株式の移譲は進めますが、一方で直ぐに乙を社長に変更するわけではないため、社長交代は5年後を目処とし、さらに黄金株を1株発行して、社長交代までは、重要な事項については甲の決議が必要な体制を考えています。

 

 

6 財産権としての株式移譲は進みますが、経営権の移譲は代表取締役の未変更及び黄金株の発行により乙にとって制限がある状況となります。

 

 

(質問)

〇 前提3の株式の譲渡が終了し、5の黄金株発行後に、丙の10%の株式を乙を後継者とする体制を整えるために、甲が原則的評価方法の5分の1ほどの価額(配当還元価額より高い)で買い取りをします。

 

〇 買い取り時点で、甲は同族株主以外の株主となっているため、基本的には配当還元価額以上であれば課税上の問題になることはないと考えますが、前提の6 の様な状況において、実質的に甲が同族株主と同視され、丙からの株式購入について、甲への低額譲渡として贈与税の指摘などは考えられるものでしょうか。

 

(私の考え)

黄金株は議案を否決する能力はあっても、議案を積極的に可決する能力はなく、黄金株を発行した場合に、黄金株を所有している株主が同族株主と同視されることはないと考えていますが、同族株主である甲が同族株主以外の株主になってから「直ぐに」、かつ黄金株を所有している状況で丙から株式を買い取ることに少し違和感があります。

 

ただ、資本政策、後継者対策として経済合理性はあると考えますし、黄金株は拒否権があるだけで、会社を支配するものでないため、同族株主以外の株主になってから、直ぐに少数株主間で売買をしてもみなし贈与の問題は指摘されにくい(されない)と考えています。

 

 

[回答]

 

1 結論として、ご意見のとおり、みなし贈与の問題は生じないと考えます。

 

 

2 甲が黄金株(拒否権付き種類株式)を所有する者であっても、同族株主の判定上、普通株式と同様にその者の議決権割合に基づいて行うのが原則ですので、甲は同族株主以外の株主に該当すると考えます。

 

種類株式については、平成19年3月9日付け国税庁資産評価企画官情報1号が発出されており、拒否権付株式は、拒否権を考慮せずに、普通株式と同様に評価するとされています。また、種類株式を発行している場合における議決権の数の判定に当たっては、株主総会の一部の事項について議決権を行使できない株式に係る議決権数を含めるとしています(評価通達188-5)。

 

 

3 本件は、個人間(第三者間)で原則的評価額の5分の1程度の価額(配当還元価額より高い価額)で購入した場合に、買主に対して相続税法7条によるみなし贈与が課税されるかという点です。

 

低額譲受に当たるかどうかは、実務上相続税評価額を下回るかどうかにより判定するところ、本件の取引の順序(①甲の譲渡、②黄金株の発行、③甲の購入)を前提とすれば、上記のとおり買主甲は同族株主以外の株主に該当し、その評価方法は配当還元方式によることとなりますので、その配当還元価額を上回る価額での購入について、みなし贈与の対象とはならないと考えます。

 

 

 

税理士懇話会事例データベースより

(2019年7月18日回答)

 

 

 

[ご注意]

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[税理士のための税務事例解説]

事業承継やM&Aに関する税務事例について、国税OB税理士が解説する事例研究シリーズです。

今回は、「子会社株式の譲渡に係る収益計上時期」についてです。

 

 


[質問]

子会社株式の譲渡契約書において、効力発生の時期を譲渡対価の2分の1を支払った時としていますが、先方の資金調達の都合から延期しており、効力発生が事業年度をまたぐ可能性があります。

 

有価証券の譲渡損益の計上時期は法61条の2第1項で契約日とされており、組織再編等の場合の譲渡損益の発生日については、規則27条の3又は通達2-1-22でそれぞれ計上日を定めていますが、子会社株式の譲渡については、特別な規定はないように思われます。

 

子会社株式の譲渡については、組織再編と同じく契約日から効力発生まで期間が長くなることが多いと思いますが、その場合でもやはり、契約日に譲渡損益を計上することになるのでしょうか。

 

 

[回答]

御指摘のとおり、法第61条の2第1項においては「その譲渡に係る契約をした日」の属する事業年度において損益に計上するものとされています。この規定は、企業会計における株式の譲渡時期に関する基準を勘案して創設されたといえますが、企業会計におけるこの基準は、上場株式においては、売買契約が成立すると即その効力が生じることを前提としたものと解されます。

 

したがって、売買契約の効力について、ご質問のような停止条件が付されている場合には、その停止条件が成就して初めて効力が発生しますから、停止条件が付されている場合の売買契約については、その契約に係る停止条件が成就した日をもって譲渡があったものと解すべきであると考えます。

 

したがって、ご質問の場合には、「効力発生の時期を譲渡代金の2分の1を支払った時」としているのであれば、そのことは停止条件と解されますから、その子会社株式の譲渡については、契約日ではなく、譲渡代金の2分の1を支払った時において譲渡があったものとして取り扱うことが相当であると解されます。

 

 

 

 

 

税理士懇話会事例データベースより

(2018年12月18日回答)

 

 

 

[ご注意]

掲載情報は、解説作成時点の情報です。また、例示された質問のみを前提とした解説となります。類似する全ての事案に当てはまるものではございません。個々の事案につきましては、ご自身の判断と責任のもとで適法性・有用性を考慮してご利用いただくようお願い申し上げます。

 

 

 

[税理士のための税務事例解説]

事業承継やM&Aに関する税務事例について、国税OB税理士が解説する事例研究シリーズです。

今回は、「分割協議により遺言と異なる者が財産を取得した場合の贈与課税の有無」についてです。

 

 


[質問]

次の事実が認められる場合、相続人乙から相続人丙へ贈与があったものと考えられるでしょうか。

 

①被相続人甲は平成30年1月に死亡し、公正証書遺言を残していました。

 

②遺言に従い、平成30年4月頃から各種財産の処分や登記、名義変更が開始されました。

 

③平成30年7月頃、遺言書に記載のない財産Aの存在が発覚しました。

 

④遺言書に記載のない財産について、遺言書には下記の通り記載されていました。

『遺言者は上記以外の一切の財産を、相続人乙に相続させる』

 

⑤しかし、相続人間の話し合いにより、財産Aは相続人丙が取得する旨の分割協議書を締結し、丙が取得しました。

 

結果、遺言に従うと乙が取得すべきである財産を、分割協議書の締結により丙が取得することになりましたが、この場合、相続人乙から相続人丙へ贈与があったものと考えられるのでしょうか。

 

 

[回答]

1 最高裁平成3年4月19日判決(民集45巻4号477頁)は、「「相続させる」趣旨の遺言、すなわち、特定の遺産を特定の相続人に単独で相続により承継させようとする遺言は、遺産の分割の方法を定めた遺言であり、特段の事情のない限り、何らの行為を要せずして、被相続人の死亡の時に直ちに当該遺産が当該相続人に相続により承継されるものと解すべきである」と判示しています。

 

そこで、ご質問の場合も、その「相続させる」趣旨の遺言に従って、遺言書に記載の各種財産を各相続人が承継(取得)していたところ、遺言書に記載のない財産Aの存在が発覚したことから、遺言書に『遺言者は上記以外の一切の財産を相続人乙に相続させる』と記載されてはいるものの、相続人間で遺産分割協議をして、この財産Aを相続人丙が取得することにしたというものです。

 

 

2 ご質問は、上記の場合、乙から丙に財産Aの贈与があったものと考えられるかどうかと問われるものですが、① 「相続させる」趣旨の遺言の内容と異なる遺産分割(の効力)が認められていること、② そもそもご質問の遺言書には財産Aについての帰属が定められていないと解する余地があることから、相続人全員の合意による遺産分割により、財産Aについては丙が相続により取得したものであるとして相続税の申告をする場合には、乙から丙に対し贈与があったものとして贈与税が課税されることはないものと考えます。

 

すなわち、上記判例によれば、特定の遺産を特定の相続人に相続させる趣旨の遺言は、特段の事情がない限り、被相続人の死亡時に当該遺産が当該相続人に直ちに相続されるので、遺産分割の協議や審判が介在する余地はないことになりますが、さいたま地裁平成14年2月7日判決(下級裁判所裁判例速報)は、「判例は、その迅速で妥当な紛争解決を図るという趣旨から、これを不要としたのであって、相続人間において、遺言と異なる遺産分割をすることが一切できず、その遺産分割を無効とする趣旨まで包含していると解することはできないというべきである」として、遺言の内容と異なる遺産分割の効力を認めています。なお、同判決に「このような遺産分割は、相続人間における当該遺産の贈与や交換を含む混合契約と解することが可能である」との判示があることから、贈与税の課税関係が生じるという考え方もありますが、(ご質問の場合は別として)課税庁が贈与部分や交換部分を特定することは極めて困難であると思われますし、遺産分割の効力が認められる以上、相続税の課税関係で足りるものと考えます。

 

また、平成27年10月2日裁決は、相続税調査により新たに発見された財産が、当初の遺産分割協議書に妻が取得する財産として「現金、家庭用財産など上記相続人が取得する以外の全財産」と記載されている条項に含まれるか否かについて、「一般に、個別的財産の遺産分割を定める条項により各人が取得する財産以外の財産を一部の者に取得させる旨の本件条項のようなものは、個別的財産の遺産分割による取得を定めた条項を設けた上での補充的なものであって、失念していた財産や家財道具を被相続人と同居していた家族等の適当な者に取得させるために用いられるものと考えられ、個別的な記載のない相当高額な財産については、当該補充的条項にその高額な財産をも含める旨合意されているなどの特別の事情がない限り、含まれないと解するのが自然である」と判断しています。ご質問の場合、(財産Aの内容は明らかではありませんが)遺言書の『遺言者は上記以外の一切の財産を相続人乙に相続させる』との記載についても、裁決にいう「補充的条項」と解し、『上記以外の一切の財産』に財産Aは含まれないと解したことから、相続人全員で財産Aを丙に取得させる遺産分割を行ったという説明ができるのではないでしょうか。

 

 

○ さいたま地裁平成14年2月7日判決
(1) 特定の不動産を特定の相続人に「相続させる」旨の遺言がなされた場合には、当該遺言において相続による承継を当該相続人の受諾の意思表示にかからせたなどの特段の事情のない限り、何らの行為を要せずして、被相続人の死亡の時(遺言の効力の生じた時)に直ちに当該不動産は当該相続人に相続により承継される。そのような遺言がなされた場合の遺産分割の協議又は審判においては、当該遺産の承継を参酌して残余の遺産の分割がされることはいうまでもないとしても、当該遺産については、上記の協議又は審判を経る余地はない。以上が判例の趣旨である(最判平成3年4月19日第2小法廷判決・民集45巻4号477頁参照)。

 

しかしながら、このような遺言をする被相続人(遺言者)の通常の意思は、相続をめぐって相続人間に無用な紛争が生ずることを避けることにあるから、これと異なる内容の遺産分割が全相続人によって協議されたとしても、直ちに被相続人の意思に反するとはいえない。

 

被相続人が遺言でこれと異なる遺産分割を禁じている等の事情があれば格別、そうでなければ、被相続人による拘束を全相続人にまで及ぼす必要はなく、むしろ全相続人の意思が一致するなら、遺産を承継する当事者たる相続人間の意思を尊重することが妥当である。

 

法的には、一旦は遺言内容に沿った遺産の帰属が決まるものではあるが、このような遺産分割は、相続人間における当該遺産の贈与や交換を含む混合契約と解することが可能であるし、その効果についても通常の遺産分割と同様の取り扱いを認めることが実態に即して簡明である。また従前から遺言があっても、全相続人によってこれと異なる遺産分割協議は実際に多く行われていたのであり、ただ事案によって遺産分割協議が難航している実状もあることから、前記判例は、その迅速で妥当な紛争解決を図るという趣旨から、これを不要としたのであって、相続人間において、遺言と異なる遺産分割をすることが一切できず、その遺産分割を無効とする趣旨まで包含していると解することはできないというべきである。

 

 

(2) 本件においては、本件土地を含むDの遺産につき、原告ら全ての相続人間において、本件遺言と異なる分割協議がなされたものであるところ、Dが遺言に反する遺産分割を禁じている等の特段の事情を認めうる証拠はなく、原告らの中に本件遺産分割に異議を述べる者はいない上、被告は本件遺産分割については、第3者の地位にあり、その効力が直ちに被告の法的地位を決定するものでもないことを考慮すると、本件遺産分割の効力を否定することはできず、本件土地は原告らの共有に属すると認められる。

 

 

 

税理士懇話会事例データベースより

(2019年6月14日回答)

 

 

 

 

[ご注意]

掲載情報は、解説作成時点の情報です。また、例示された質問のみを前提とした解説となります。類似する全ての事案に当てはまるものではございません。個々の事案につきましては、ご自身の判断と責任のもとで適法性・有用性を考慮してご利用いただくようお願い申し上げます。

 

 

 

[税理士のための税務事例解説]

事業承継やM&Aに関する税務事例について、国税OB税理士が解説する事例研究シリーズです。

今回は、「相続税・贈与税の事業承継税制について~資産保有型会社の判定で採用する基準~」についてです。

 

 


[質問]

資産保有型会社の判定において、貸借対照表に計上されている帳簿価額で判定することとされています。

中小企業においては、株式交換等の組織再編を行った場合などには税務基準で会計処理を行うことが一般的だと思われます。しかし、結合会計等の会計基準との金額のかい離が大きいため、どの基準によるかにより結果が大きく異なります。組織再編以外にも中小企業においては税効果会計、減損会計等の会計処理は、通常行われていないように思います。

 

意図的に税務基準、会計基準を使い分けし、要件をクリアにすることも可能な素地があるかと思いますが、あくまでも法人が採用している会計基準で判定するとの理解で良いですか。

 

 

[回答]

1 非上場株式等についての相続税・贈与税の納税猶予及び免除(の特例)の適用を受けることができない「資産保有型会社」を次のように定義しています(措法70の7②八、70の7の5②三)。

 

資産保有型会社とは、贈与の日又は相続開始の日の属する事業年度の直前の事業年度開始の日から贈与税額又は相続税額の全部につき納税猶予に係る期限が確定する日までの期間(措令40の8⑲)において、次の算式による割合が100分の70以上となる会社をいう、とされています。

 

 

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Aは、その日におけるその会社の総資産の貸借対照表に計上されている帳簿価額の総額

 

Bは、その日におけるその会社の特定資産(現金、預貯金、有価証券、書画骨董、その会社が自ら使用していない不動産、ゴルフ会員権、親族等に対する貸付金等をいいます。)の貸借対照表に計上されている帳簿価額の合計額

 

Cは、その日以前5年以内において、後継者及びその後継者と特別の関係がある者がその会社から受けた剰余金の配当等の額及び損金不算入となる役員給与の額の合計額

 

 

 

2 法令により資産保有型会社の定義を上記のとおりその法人が採用している経理方法による貸借対照表上の計上金額により判定することとされていますので、仮装経理など実体のない計上金額でない限りお尋ねの理解でよいと考えます。

 

 

 

 

税理士懇話会事例データベースより

(2019年4月25日回答)

 

 

 

 

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