[税理士のための税務事例解説]

事業承継やM&Aに関する税務事例について、国税OB税理士が解説する事例研究シリーズです。

今回は、「無対価合併における適格要件について」についてです。

 

 


[質問]

A社はB社の株式を取得後、A社の100%子会社であるC社を存続会社とした合併を予定しています。

 

100%子会社同士の合併であり、無対価合併とするつもりです。

 

ここで、B社は自己株式を所有しており、合併と同時に自己株式は消却されることとなると思いますが、このような場合であっても100%子会社同士の無対価合併として適格合併となるでしょうか。

 

A社・B社・C社ともに8月決算

 

8月  B社が自己株式取得
9月  A社がB社株式取得
10月   B社とC社が合併

 

 

[回答]

被合併法人と合併法人との間に同一の者による完全支配関係があり、合併後もその同一の者による完全支配関係が継続することが見込まれている場合の合併は適格合併に該当します。

 

ただし、当該合併が無対価合併である場合には、次に掲げる関係がある場合に限られています(令4の3②)。

 

① 合併法人が被合併法人の発行株式の全部を保有する関係
② 被合併法人及び合併法人の株主のすべてについてその者が保有する被合併法人株式の数の被合併法人の発行済株式の総数のうちに占める割合とその者が保有する合併法人の株式の数の合併法人の発行済総のうちに占める割合とが等しい場合における被合併法人と合併法人との関係

 

なお、この場合の発行済株式には自己株式を除くとされています(法2十二の七の五)。

 

ご照会事例については、被合併法人C社と合併法人B社との間にA社による完全支配関係にあることから、上記②の要件を満たすことになりますので、適格無対価合併に該当することになります。

 

ただし、株式の移動から無対価合併までの一連の取引に経済的合理性がなく、何らかの租税回避行為のみを目的としたものであるとの事実認定によっては、同族会社の行為計算否認規定(法132)及び組織再編成に係る行為計算否認規定(法132の2)に抵触する恐れがありますのでご留意ください。

 

 

(参考)

株式会社は、取締役会又は取締役の決議に基づき取得した自己株式を消却することができるとされています(会社法178)。そして、自己株式を消却した場合には、その消却する自己株式の帳簿価額を原則としてその他資本剰余金の額から減額することとされています(会社計算規則24)。

 

 

 

税理士懇話会事例データベースより

(2019年9月24日回答)

 

 

 

 

[ご注意]

掲載情報は、解説作成時点の情報です。また、例示された質問のみを前提とした解説となります。類似する全ての事案に当てはまるものではございません。個々の事案につきましては、ご自身の判断と責任のもとで適法性・有用性を考慮してご利用いただくようお願い申し上げます。

 

 

 

[解説ニュース]

美術品(重要文化財)を相続・売却した際の優遇措置について

 

〈解説〉

税理士法人タクトコンサルティング(青木 喬/税理士)

 

 

【問】

趣味で美術品の収集をしていますが、収集した日本絵画のうち1点が重要文化財に指定されています。

具体的な評価額は不明ですが、他にも財産があり多額の相続税が生じると考えています。相続税を金銭で納付することができない場合には物納になると思いますが、可能であればこの絵画は相続人に引き継いで貰いたいです。ただ、日常的な保存管理も必要であるため、相続人には負担を掛けると思います。もし相続人が将来的にこの絵画を相続することを了承しない場合には、適切に引き継いでくれる第三者に売却することも考えています。以上を踏まえ、相続の場合と譲渡の場合の税制についてそれぞれ教えてください。

 

 

【回答】

1. 相続の場合


(1)美術品の評価について

相続(遺贈)により取得した財産の価額は、相続が発生した時における時価になります。美術品についての時価の算定は、一般的に画廊やオークションハウスにて鑑定を行うこととなります。相続をした直後に相続人等が売却した場合には、その売却価額を時価とするケースもあります。

 

美術年鑑で記載されている価格は保存状態の良いものを画廊等で販売するときの価格になります。したがって、必ずしも所有されている絵画の時価を表しているものではありません。

 

なお美術品のなかでも「登録美術品」については、相続人からの申請により文化庁長官がその登録美術品の価格を評価し、その結果を通知します。

 

登録美術品制度とは、重要文化財や国宝、世界的に優れた美術品を所有者の申請により、国が審査のうえ登録し、登録した美術品を所有者から美術館に引渡して公開することにより、国民が優れた美術品を鑑賞する機会を拡大することを目的とした制度です。

 

(2)納税資金の手当てができない場合

相続税は金銭による納付が原則ですが、それが困難な場合、税務署長の許可を得て相続財産を物納することができます。物納可能な財産は以下の通りです。数字は物納に充てることができる財産の優先順位です。

 

 

①不動産、船舶、国債、地方債・上場株式等
②非上場株式等
③動産

 

 

美術品は③の動産に該当しますが、登録美術品については、上記の順序に関わらず物納の許可を受けることができます。ただ、相続が発生する前にこの美術品について国から登録を受けておく必要があります(相法41②、措法70の12①)。

 

(3)美術品についての相続税の納税猶予

物納により相続税の納付を行うことは可能ですが、所有権を失うため相続人に美術品を引き継ぐことができません。そこで、「特定の美術品についての相続税の納税猶予及び免除制度」を検討すべきでしょう。

 

この制度は、一定の条件を満たした美術館等に特定美術品(重要文化財として指定された絵画等の動産、登録有形文化財のうち一定のもの)を寄託(※)していた被相続人に相続が発生した場合において、相続人が寄託先美術館の設置者への寄託を継続するときは、納付すべき相続税額のうち、その特定美術品に係る課税価格(評価額)の80%に対応する相続税の納税が猶予される制度です(措法70の6の7)。
(※)被相続人において以下の手続が必要となります。

 

・寄託先美術館の設置者と契約期間、美術品を適切に公開する旨、基本的に所有者からの解約の申し入れができない旨を記載した寄託契約を結んでいること

・寄託契約の内容等を記載した保存活用計画について文化庁の認定を受けていること

 

2. 譲渡の場合


個人が絵画を譲渡した場合には、譲渡による所得について所得税が課税されます。事業所得・不動産所得・給与所得などと合算し、一般の累進税率を適用して税額を計算する総合課税により計算が行われます。

 

ところで、美術品のなかでも重要文化財について第三者に売却しようとするときは、事前に文化庁に「売却の相手方」や「予定対価の額」等を申し出る必要があります(文化財保護法46条)。これは文化財を適正に保護する観点から、国に優先買取権が認められているためです。ただ最近では、無届けの売買が多く、個人所有の重要文化財のほぼ半数の所在が確認できていないといわれています。

 

国が買い取る場合には、申出のあった予定対価の額で買い取りを行いますが、国に譲渡した場合の譲渡所得については、非課税とされています(措法40の2)。

 

 

 

 

税理士法人タクトコンサルティング 「TACTニュース」(2019/12/02)より転載

[税理士のための税務事例解説]

事業承継やM&Aに関する税務事例について、国税OB税理士が解説する事例研究シリーズです。

今回は、「個人版事業承継税制について ~先代事業者が医師、後継者が歯科医師の場合~」についてです。

 

 


[質問]

先代事業者が医師であり、医業を行っていた場合、先代経営者死亡後に後継者が歯科医師としてその診療所建物及び土地を引き継ぎ歯科医師業として承継した場合は、事業を継続したとは言えないでしょうか。

 

 

 

[回答]

 

1 結論として、先代事業者が医師、後継者が歯科医師であった場合でも、個人版事業承継税制の適用があると考えます。

 

2 個人版事業承継税制(相続税)における後継者の要件は次のようになっています。

 

(後継者)
① 円滑化法の認定を受けていること

② 相続開始の直前において特定事業用資産に係る事業(同種・類似の事業等を含みます。)に従事していたこと(先代事業者等が60歳未満で死亡した場合を除きます。)

③ 相続開始の時から相続税の申告書の提出期限までの間に特定事業用資産に係る事業を引き継ぎ、相続税の申告書の提出期限までに引き続き特定事業用資産の全てを有し、かつ、自己の事業の用に供していること

④ 相続税の申告期限において開業届出書を提出し、青色申告の承認を受けていること(見込みを含みます。)

⑤ 特定事業用資産に係る事業が、資産管理事業及び性風俗関連特殊営業に該当しないこと

⑥ 先代事業者等から相続等により財産を取得した者が、特定事業用宅地等について小規模宅地等の特例の適用を受けていないこと

 

 

このうち、特定事業用資産に係る事業(同種・類似の事業等を含む)に従事していたこととは、日本標準産業分類の中分類に属するかどうかによります(措法通達70の6の8-20)が、医師と歯科医師はいずれも「83 医療業」に属しますので、これに該当します。

 

 

3 なお、「この特例は、先代事業者から後継者への事業の円滑な承継を政策目的としていることから、先代事業者と後継者の事業は同一(あるいは同種・類似)であることを前提としていますが、納税猶予期間が相当の長期間に及ぶことが見込まれるため、その後の経済社会の変化に柔軟に対応できるよう、承継後は後継者が先代事業者から承継した事業と別の事業に転業しても、承継した特例受贈事業用資産を自己の事業の用に供している限り、納税猶予は継続されることになります。」と説明されています(令和元年度税制改正の解説:財務省P522)ので、特例受贈事業用資産を自己の事業の用に供している限り、事業承継後に転業しても納税猶予は継続することとされていす。

 

 

 

税理士懇話会事例データベースより

(2019年9月12日回答)

 

 

 

 

[ご注意]

掲載情報は、解説作成時点の情報です。また、例示された質問のみを前提とした解説となります。類似する全ての事案に当てはまるものではございません。個々の事案につきましては、ご自身の判断と責任のもとで適法性・有用性を考慮してご利用いただくようお願い申し上げます。

 

 

 

[税理士のための税務事例解説]

事業承継やM&Aに関する税務事例について、国税OB税理士が解説する事例研究シリーズです。

今回は、「黄金株所有者による株式売買の価額について」についてです。

 

 


[質問]
(前提)

1 法人Aの株式譲渡による事業承継を検討しています。

 

 

2 法人Aの株主は甲(70%)、乙(20%)、丙(10%)の株主構成で3名の同族関係はありません。

よって、法人Aの同族株主は甲だけとなります。

 

甲(代表取締役)
乙(取締役)
丙(取締役)

 

 

3 今回、乙を将来の後継者と考えて、持株会社Bを設立し、甲の70%の所有株式を法人Bに法人税法上の時価で譲渡します。
新設する持株会社Bの株式は乙が100%所有します。

 

 

4 売買が完了した時点で法人Aの同族株主は、乙が直接20%と法人B(70%)を合計した90%を所有し、乙が同族株主となります。

 

 

5 株式の移譲は進めますが、一方で直ぐに乙を社長に変更するわけではないため、社長交代は5年後を目処とし、さらに黄金株を1株発行して、社長交代までは、重要な事項については甲の決議が必要な体制を考えています。

 

 

6 財産権としての株式移譲は進みますが、経営権の移譲は代表取締役の未変更及び黄金株の発行により乙にとって制限がある状況となります。

 

 

(質問)

〇 前提3の株式の譲渡が終了し、5の黄金株発行後に、丙の10%の株式を乙を後継者とする体制を整えるために、甲が原則的評価方法の5分の1ほどの価額(配当還元価額より高い)で買い取りをします。

 

〇 買い取り時点で、甲は同族株主以外の株主となっているため、基本的には配当還元価額以上であれば課税上の問題になることはないと考えますが、前提の6 の様な状況において、実質的に甲が同族株主と同視され、丙からの株式購入について、甲への低額譲渡として贈与税の指摘などは考えられるものでしょうか。

 

(私の考え)

黄金株は議案を否決する能力はあっても、議案を積極的に可決する能力はなく、黄金株を発行した場合に、黄金株を所有している株主が同族株主と同視されることはないと考えていますが、同族株主である甲が同族株主以外の株主になってから「直ぐに」、かつ黄金株を所有している状況で丙から株式を買い取ることに少し違和感があります。

 

ただ、資本政策、後継者対策として経済合理性はあると考えますし、黄金株は拒否権があるだけで、会社を支配するものでないため、同族株主以外の株主になってから、直ぐに少数株主間で売買をしてもみなし贈与の問題は指摘されにくい(されない)と考えています。

 

 

[回答]

 

1 結論として、ご意見のとおり、みなし贈与の問題は生じないと考えます。

 

 

2 甲が黄金株(拒否権付き種類株式)を所有する者であっても、同族株主の判定上、普通株式と同様にその者の議決権割合に基づいて行うのが原則ですので、甲は同族株主以外の株主に該当すると考えます。

 

種類株式については、平成19年3月9日付け国税庁資産評価企画官情報1号が発出されており、拒否権付株式は、拒否権を考慮せずに、普通株式と同様に評価するとされています。また、種類株式を発行している場合における議決権の数の判定に当たっては、株主総会の一部の事項について議決権を行使できない株式に係る議決権数を含めるとしています(評価通達188-5)。

 

 

3 本件は、個人間(第三者間)で原則的評価額の5分の1程度の価額(配当還元価額より高い価額)で購入した場合に、買主に対して相続税法7条によるみなし贈与が課税されるかという点です。

 

低額譲受に当たるかどうかは、実務上相続税評価額を下回るかどうかにより判定するところ、本件の取引の順序(①甲の譲渡、②黄金株の発行、③甲の購入)を前提とすれば、上記のとおり買主甲は同族株主以外の株主に該当し、その評価方法は配当還元方式によることとなりますので、その配当還元価額を上回る価額での購入について、みなし贈与の対象とはならないと考えます。

 

 

 

税理士懇話会事例データベースより

(2019年7月18日回答)

 

 

 

[ご注意]

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[税理士のための税務事例解説]

事業承継やM&Aに関する税務事例について、国税OB税理士が解説する事例研究シリーズです。

今回は、「子会社株式の譲渡に係る収益計上時期」についてです。

 

 


[質問]

子会社株式の譲渡契約書において、効力発生の時期を譲渡対価の2分の1を支払った時としていますが、先方の資金調達の都合から延期しており、効力発生が事業年度をまたぐ可能性があります。

 

有価証券の譲渡損益の計上時期は法61条の2第1項で契約日とされており、組織再編等の場合の譲渡損益の発生日については、規則27条の3又は通達2-1-22でそれぞれ計上日を定めていますが、子会社株式の譲渡については、特別な規定はないように思われます。

 

子会社株式の譲渡については、組織再編と同じく契約日から効力発生まで期間が長くなることが多いと思いますが、その場合でもやはり、契約日に譲渡損益を計上することになるのでしょうか。

 

 

[回答]

御指摘のとおり、法第61条の2第1項においては「その譲渡に係る契約をした日」の属する事業年度において損益に計上するものとされています。この規定は、企業会計における株式の譲渡時期に関する基準を勘案して創設されたといえますが、企業会計におけるこの基準は、上場株式においては、売買契約が成立すると即その効力が生じることを前提としたものと解されます。

 

したがって、売買契約の効力について、ご質問のような停止条件が付されている場合には、その停止条件が成就して初めて効力が発生しますから、停止条件が付されている場合の売買契約については、その契約に係る停止条件が成就した日をもって譲渡があったものと解すべきであると考えます。

 

したがって、ご質問の場合には、「効力発生の時期を譲渡代金の2分の1を支払った時」としているのであれば、そのことは停止条件と解されますから、その子会社株式の譲渡については、契約日ではなく、譲渡代金の2分の1を支払った時において譲渡があったものとして取り扱うことが相当であると解されます。

 

 

 

 

 

税理士懇話会事例データベースより

(2018年12月18日回答)

 

 

 

[ご注意]

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[事業承継の専門家によるコラム]

事業承継事例 「子供に株式、甥には議決権」~事業承継に活用したい手法~

 

〈解説〉

ビジネス・ブレイン税理士事務所(畑中孝介/税理士)

 


今回は 当社がスキーム作りを手掛けた事業承継事例をお送りします。

 

直系親族以外への承継・甥への承継事例です。

 

 

A社の創業者は80歳になり、子供さんたちも40歳を超えていますが、
みなさん会社以外に勤務されそれぞれの道を歩んでおられます。

 

会社も継ぐつもりはないと・・・ 唯一親族で甥っ子さんが子会社の社長として
頑張られ徐々に業績も伸長し経営手腕を発揮されつつあります。

 

その状態で当社に保険会社の方を通じて相談に来られました。

 

 

社長は、「子供たちはもう立派に生活しているのだから株はいらないだろう、
会社を継ぐはずの甥っ子に相続してもらいたい」とおっしゃっていました。

 

 

しかし、なんとなく寂しさや決断しきれない様子でした。

 

・親族に継がないのであれば事業承継税制は使えない。
・単に娘に株式を上げてしまうと議決権が確保できず甥っ子さんは経営しにくいだろう
・甥っ子さんも若く数億円での買取も難しそうだ・・・

 

 

そこで社長に、「財産としての株式をお嬢さんに残し、議決権だけを甥っ子さんに

与えることができたらどうします??」と聞いてみました。

 

社長は「そんなことができるなら是非やりたい!」ということでした。
当社が司法書士先生と一緒に組み立てたスキームは下記のとおりです。

 

 

「株主間契約で議決権を甥っ子さんに預ける」

 

 

しかしお子さんたちは、契約なんて破棄できてしまうので、OO君(甥っ子)が
困るよね?きちんとした形で公正証書でやりたいとうことでした。

 

最終的には社長・お子様たち・甥っ子さんと一緒に会議を数度重ね

 

 

(1)配当と譲渡した場合の財産価値としての株式はお子さんたちに順次贈与

 

(2)議決権は民事信託によりまずは社長に信託、社長に万が一のことが
ある場合には甥っ子さんがそれを引継行使する

 

(3)社長の思いや守ってもらいたい約束事は、社長・お子様たち・
甥っ子さんの株主間契約を締結し守ってもらう。

 

 

これにより、後継者へは議決権が渡り、お子さんたちには財産権としての
株式が渡り思いに沿った事業承継ができました。また信託することにより、
受託者・委託者・受益者の全員の合意がない限り信託契約は変更できないため、
かなり強固な権利関係の固定化ができたと思います。
(誰か1名の暴走では契約変更・撤回できない)

 

 

 

「ビジネスブレイン月間メルマガ(2019/02/10号)」より一部修正のうえ掲載

[税理士のための税務事例解説]

事業承継やM&Aに関する税務事例について、国税OB税理士が解説する事例研究シリーズです。

今回は、「子会社等を整理する場合の損失負担等」についてです。

 


[質問]

業績不振の子会社の株式譲渡を考えており、その譲渡前に債権放棄の実行も計画しています。
その債権放棄が寄附金と認定された場合、グループ法人税制を踏まえた申告書の表し方にわからない点があります。

 

1. 持株関係

1826030①.jpg

 

 

2. 動き
①B社は、子会社であるC社が業績不良であるため、全くのグループ外部であるD社に株式譲渡を考えている。

②B社はC社に対し、多額の貸付金を有し、C社は債務超過であるため、譲渡前に債権放棄を計画している。

 

3. 質問
B社の債権放棄が寄附金となった場合

 

グループ法人税制により、B社は寄附金の損金不算入、別表五で子会社の簿価修正③増となり、C社は受贈益の益金不算入、B社は寄附金修正認容を立て、別表五減で子会社簿価修正を消し、改めて寄附金限度額計算を行うのか。

 

それとも期末申告時にはグループ法人ではないので、ごく普通の外部への寄附としてB社C社ともに申告書を作成すればよいのか。

 

 

1826030②.jpg

 

 

[回答]

 

1、 営業不振の子会社を解散させずに他の企業に経営権を譲渡する場合があります。例えば、経営不振で再建に自信のない子会社の経営権を他の企業に移譲するため株式を譲渡した場合でも、譲り受ける側の企業としては、その譲受け後における子会社経営上の責任を考えて、赤字をできるだけ圧縮した上でなければ株式の譲受けには応じられないとの要求が十分に考えられます。このため、やむを得ず子会社に対する貸付金等の一部(又は全部)を切捨てをしてある程度子会社の財政面を改善した上で株式の譲渡をするという事例があります。

 

このような債権の切捨てについても、親会社として今後発生するであろうより大きな損失を回避するためにやむを得ず行う損失の負担であると認められる場合が少なくないとの考え方から、法人がその子会社の解散、経営権の譲渡等に伴い、債務の引受、債権の放棄その他の損失の負担をした場合であっても、それが今後より大きな損失の生ずることを回避するためにやむを得ず行われたものであり、かつ、そのことが社会通念上も妥当なものとして是認されるような事情があるときは、税務上もこれを寄附金として取り扱わないこととされています(法基通9-4-2)。

 

ご照会事例については、C社の債務超過の状態、債権放棄の規模等が明らかでありませんので確答はできかねますが、一般論としては、法基通9-4-1の取扱いの適用の可能性は高いものと考えます。

 

(参考)

損失負担等をする相当な判断基準については、国税庁タックスアンサーホームページ「子会社等を整理・再建する場合の損失負担等に係る質疑応答事例(コード№5280)」を参考にしてください。

 

 

2、 法人税法37条2項において「内国法人が各事業年度において当該法人との間に完全支配関係がある他の内国法人に対して支出した寄附金の額は~」と規定していることから、寄附金を支出した時点で完全支配関係があるかどうかを判断することになると思われます。したがって、ご照会事例については、債権放棄した時点ではB社とC社との間に完全支配関係がありますのでグループ法人税制の適用があると考えます。

 

したがって、本件については、寄附金修正事由が生じているため、A社及びB社についてそれぞれ次のような処理を行うことになると思われます。

 

まず、A社はB社株式について寄附金の額に持分割合100%を乗じた金額を利益積立金から減算するとともに、同額を寄附金修正事由が生じた時の直前のB社株式から減算し、減算後の帳簿価額を株式の数で除した金額を1株当たりの帳簿価額とします(例9①七、令119の3⑥)。

 

また、B社は寄附金の額に持分割合100%を乗じた金額を利益積立金額に加算するとともに、同額を寄附金修正事由が生じた時の直前の帳簿価額に加算し、加算後の帳簿価額を株式の数で除した金額を1株当たり帳簿価額とします。

 

したがって、B社がC社株式を譲渡した場合の譲渡原価の額は、修正後の金額になると考えます。

 

なお、C社においては、完全支配関係の判定時点は、受贈時点と考えられますので、B社がC社株式を譲渡した場合であっても受贈益の修正処理(益金算入)はないものと考えます。

 

(参考)

寄附金修正事由が生じた場合の株主の処理については、平成22年8月10日付「平成22年度税制改正に係る法人税質疑応答事例(グループ法人税制関係)(情報)」の問7を参考としてください。

 

 

 

税理士懇話会事例データベースより

(2018年11月28日回答)

 

 

 

 

[ご注意]

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[税理士のための税務事例解説]

事業承継やM&Aに関する税務事例について、国税OB税理士が解説する事例研究シリーズです。

今回は、「適格合併における従業員引継要件」についてです。

 


[質問]

「A社」は「B社」を吸収合併する予定です。株式保有は50%超(100%ではない)で、適格要因として「金銭不交付要件」「支配関係継続要件」「事業継続要件」は満たしています。しかし、「従業者引継要件」を満たすかどうかの判断で悩んでいます。「A社」と「B社」の雇用形態が異なるので「B社」の従業者は合併までに一度退職金を支払って退職してもらい「A社」で再雇用をしたいと思います。何か良い方法(適格要件を満たす)はあるのでしょうか。

 

[回答]
1 適格合併

(1) 適格合併の要件

法人税法上、次のいずれかに該当する合併で被合併法人の株主等に合併法人株式又は合併親法人株式のいずれか一方の株式又は出資以外の資産が交付されないものは適格合併に該当します(法人税法2十二の八)。

 

イ その合併に係る被合併法人と合併法人との間に完全支配関係がある場合の当該合併(法人税法2十二の八イ、法人税法施行令4の3②)。

ロ その合併に係る被合併法人と合併法人との間に支配関係がある場合の当該合併のうち、「所定の要件」を満たすもの(法人税法2十二の八ロ、法人税法施行令4の3③)。

ハ その合併に係る被合併法人と合併法人とが共同で事業を行うための合併として法人税法施行令第4条の3第4項に掲げる要件(共同事業要件)の全てに該当するもの(法人税法2十二の八ハ、法人税法施行令4の3④)。

 

(2) 従業者引継要件

上記(1)ロの「所定の要件」及びハの共同事業要件の一つに、いわゆる「従業者引継要件」があります。

 

具体的には、合併に係る被合併法人の当該合併の直前の「従業者」のうち、その総数の概ね80%以上に相当する数の者が当該合併後に当該合併に係る合併法人の業務に従事することが見込まれていることを、その要件としています(法人税法2十二の八ロ(1)、法人税法施行令4の3④三)。

 

ここで、「従業者」とは、役員、使用人その他の者で、合併の直前において被合併法人の合併前に行う事業に現に従事する者をいうものとされています(法人税基本通達1-4-4)。

 

2 合併契約

会社は、他の会社と合併をすることができる。この場合においては、合併をする会社は、合併契約を締結しなければならない(会社法748①)。

吸収合併存続株式会社は、効力発生日に、吸収合併消滅会社の権利義務を承継するものとされています(会社法750)。

 

3 お尋ねについて

お尋ねによれば「被合併法人であるB社と合併法人であるA社との間には支配関係があり」、「金銭不交付要件、支配関係継続要件及び事業継続要件を満たしている」とのことですので、お尋ねの合併が適格合併に該当するためには、従業者引継要件を満たす必要があります。以下、適格合併における「従業者引継要件」の考え方をお示しします。

 

(1) 会社法においては、吸収合併が行われた場合、その合併により消滅する法人(被合併法人)の権利義務の全部は、合併の効力発生日において、合併後存続する法人(合併法人)に承継されますので(会社法750)、当該合併に際し特段の合意がない限り、被合併法人の従業者の地位も合併法人に承継されることになります。

 

お尋ねの合併においては、合併の日の前日に被合併法人B社の全従業者は、B社を退職して雇用契約を終了し、雇用契約は合併法人A社に承継されないことから、形式的にはA社はB社の従業者を引き継いでいないことになります。

 

 

(2) 法人税法における従業者引継要件においては、「合併に係る被合併法人の当該合併の直前の従業者のうち、その総数のおおむね80%以上に相当する数の者が当該合併後に当該合併に係る合併法人の業務に従事することが見込まれていること」と規定している(法人税法施行令4の3④三)ことから、文理上、当該被合併法人の従業者の地位、具体的には被合併法人の従業者の権利義務や当該被合併法人の従業者と被合併法人との間の雇用契約等が必ずしも合併法人に承継されることまでをその要件とはしていないものと考えられます。

 

また、従業者引継要件における「従業者」とは、「役員、使用人その他の者で、合併の直前において被合併法人の合併前に行う事業に現に従事する者」とされている(法人税基本通達1-4-4)ことから、その従業者がその合併の直前の従業者に該当するか否かを判断するに当たって、雇用契約の有無といった契約形態は直接には関係がないものと考えられます。

 

 

(3) (1)及び(2)のことから、被合併法人の従業者の雇用契約等が合併法人に承継されるか否かということとは関係なく、被合併法人の合併の直前の従業者の総数のおおむね80%以上に相当する者が合併後に合併法人の業務に従事することが見込まれているのであれば、従業者引継要件を満たすと考えられます。

 

したがって、お尋ねの場合、「B社の従業者は合併までに一度退職金を支払って退職してもらい、A社で再雇用する予定」とのことですので、合併の前日までに被合併法人であるB社とその従業者との間の雇用契約等は終了(退職)するものの、合併後において、被合併法人の合併の直前の従業者が引き続き合併法人であるA社の業務に従事することが見込まれていますので、従業者引継要件を満たすものと考えて差し支えないものと思われます。

 

 

税理士懇話会事例データベースより

(2019年6月12日回答)

 

 

 

 

[ご注意]

掲載情報は、解説作成時点の情報です。また、例示された質問のみを前提とした解説となります。類似する全ての事案に当てはまるものではございません。個々の事案につきましては、ご自身の判断と責任のもとで適法性・有用性を考慮してご利用いただくようお願い申し上げます。

 

 

[税理士のための税務事例解説]

事業承継やM&Aに関する税務事例について、国税OB税理士が解説する事例研究シリーズです。

今回は、「M&Aに伴う手数料の処理」についてです。

 


[質問]

甲社は、コンサルタント会社A社から話を持ちかけられ、B社の株式取得を検討することとなりました。甲社は、A社と情報収集・仲介・株式取得に向けた諸手続・B社従業員等へのフォロー・新たな体制づくりのフォローを含め、総合的なコンサルタント契約を結びました。株式取得が行われなかった場合は、その時点で契約終了となり、A社へ手数料を支払い、費用処理を行いますが、株式取得を行う場合、前述の各種業務を引続きお願いすることとなり、契約で定めた期間満了時に手数料を支払う予定です。

 

この場合の手数料の処理は、期間満了時に属する事業年度の損金として差し支えないでしょうか。或いは、株式の取得価額に含めるべきものとして資産計上すべきでしょうか。

 

[回答]

ご高尚のことかとは存じますが、企業が、いわゆるM&A取引を行った場合、その仲介者等に支払う手数料等の、いわゆる助言費用等に関し、その取扱いに関しては、企業会計上は、従来の暖簾勘定等への計上処理から、IFRS基準による一時損金の費用化が図られつつあるものと承知いたしております。

 

具体的には、平成25年9月13日公表の「企業結合に関する会計基準」等の改正(原則:平成27年4月1日以後開始事業年度から適用)により、企業買収の際に外部のアドバイザー等に支払う取得関連費用の会計処理が変更され、投資銀行、証券会社等のファイナンシャルアドバイザー(FA)に関する報酬、ビジネス、会計・税務、法務等のデューデリジェンス(DD)費用といったアドバイザリーフィーは、連結財務諸表上では、原則として発生した事業年度の費用となり、買収対象会社の株式の取得費用として取得原価に含めることができなくなりました。

 

一方、税務上の取扱いは、これら会計上の処理に即応する形での改正は行われていないものと存じます。
原則的には、取得する株式等に関する法令の規定は法人税法施行令第119条第1項各号に定める取得態様に応じた取得価額の算定が予定され、これらによって課税関係が律せられるものと考えていますが、そこでは、例えば、購入した有価証券等の額は、その購入代価に購入手数料その他購入のために要した費用の額を加えた額であるとされているため、原則的には『購入のために要した費用は全て取得価額を構成する』という理解があり、単に通信費や名義書換料等についてはその金額が少額であるところから、これを取得価額に算入しないことができる旨を定めているに過ぎないとされています(㈱税務研究会版「法人税基本通達解説」法人税基本通達2-3-5の項の記載事項参照) 。

 

他方、法人税法第62条の8(非適格合併等により移転を受ける資産等に係る調整勘定の損金算入等)の規定がこのような非適格事業譲受けの形態に対応する規定として存在することも理解しておく必要があるように思います。

 

すなわち、同条の規定では、引継受入資産と引継受入負債との差額が生ずる場合には、当該差額を超える金額が支出されるときには当該超過額は資産調整勘定の額として、不足額が生ずるときには当該不足額は負債調整勘定の額として(一時に課税関係を律するのではなく)、将来にわたって損益調整を行うこととされているところから、いわゆる正の暖簾と負の暖簾によって課税の平準化が図られているといえるものと考えています。

 

会計の場合のように、直截に助言費用の資産計上を否定するという方法を採り上げるのではなく、総額的に時間(5年間)をかけて時価との調整を図ることが税制の考え方であるともいえると考えられます。

 

 

 

税理士懇話会事例データベースより

(2019年4月9日回答)

 

 

 

 

[ご注意]

掲載情報は、解説作成時点の情報です。また、例示された質問のみを前提とした解説となります。類似する全ての事案に当てはまるものではございません。個々の事案につきましては、ご自身の判断と責任のもとで適法性・有用性を考慮してご利用いただくようお願い申し上げます。

 

 

[解説ニュース]

離婚に伴い自宅を財産分与する場合の税務上の取扱い等-2/2 ~財産分与を受ける側~

 

〈解説〉

税理士法人タクトコンサルティング(宮田房枝/税理士)

 

【問】

私(妻)はこの度、夫と協議離婚をすることとなりました。離婚に伴い、婚姻期間中の財産の清算として、婚姻期間中に夫名義で取得した自宅の土地及び建物(以下「自宅」)を夫から財産分与により取得する予定です。離婚に伴う税務上の留意点等を教えてください。
(夫における税務上の留意点等については、前回の解説を参照してください。)

 

【回答】

1.贈与税


(1) 離婚後に財産分与する場合

①原則
離婚に伴う財産分与によって取得した財産については、贈与により取得した財産とはならず、元妻に贈与税は課税されません(相基通9-8)。
②例外
次の場合におけるそれぞれに掲げる財産額は、贈与によって取得した財産となり、元妻に贈与税が課税されます(贈与税の基礎控除は、年110万円)。
(a)分与財産額が婚姻中の夫婦の協力で得た財産額その他一切の事情を考慮してもなお過当であると認められる場合・・・その過当である部分の財産額
(b)離婚を手段として贈与税のほ脱を図ると認められる場合・・・離婚により取得した財産額

(2) 離婚前に財産移転する場合

基本的に、夫から妻への贈与として取り扱われ、妻に贈与税が課税されます(贈与税の基礎控除は、年110万円)。なお、財産移転時における婚姻期間が20年以上であり、妻が自宅に住み続けるときは、妻において贈与税の配偶者控除(上記基礎控除のほか2,000万円まで非課税)の適用を受けられます(相法21の6)。

 

2.所得税


(1)自宅の取得時期及び取得費

①離婚後の財産分与によって取得した場合

財産分与により取得した自宅については、元妻がその財産分与を受けた時に、その時の価額により取得したこととなり、後に元妻がその自宅を譲渡した場合の譲渡所得は、これらをもとに計算します(所基通38-6)。

②贈与によって取得した場合

贈与により取得した自宅については、贈与者(元夫)の取得時期及び取得費がそのまま受贈者(元妻)に引き継がれ、後に元妻がその自宅を譲渡した場合の譲渡所得は、これらをもとに計算します(所法60①)。

(2)住宅ローン控除

自宅について金融機関からの借入残高があり、その借入を元妻が負担承継する場合には、元妻が住宅ローン控除の適用要件を満たしていれば、元妻は住宅ローン控除の適用を受けることができます(措法41)。

 

3.不動産取得税


不動産取得税は、財産分与の性質により、その取扱いが異なります。婚姻中の財産関係の清算の場合(実質的共有財産を対象とした清算的財産分与の場合)は基本的に課税されませんが、離婚の原因が元夫にあり元妻への慰謝料として行われる場合(慰謝料的財産分与)や、離婚後の元妻への扶養のために行われる場合(扶養的財産分与)等は課税されます。詳細は、タクトニュース782号を参照してください。

 

4.登録免許税(登法9、別表第1)


財産分与により取得した自宅の登記に際しては、「固定資産税評価額×2 %」の登録免許税が課税されます。

 

5.印紙税


前回の解説の2.参照。

 

6.固定資産税(地法343、350、359)


財産分与の翌年以降、元妻は「固定資産税評価額×1.4%」の固定資産税を負担する必要があります。

 

7.最後に


離婚に伴う財産分与により自宅を取得する場合、基本的に元妻に贈与税は課税されませんが、その後その自宅を譲渡する際には、その自宅の取得時期及び取得費は、元夫のものを引き継がず、財産分与時のものとなります。例えば、財産分与により取得した自宅を5年以内に譲渡する場合には、譲渡所得税等の適用税率は39.63%(所得税、復興特別所得税及び住民税の合計)と高率で課税されます(自宅を譲渡する場合の適用税率はタクトニュース№790の1. (1)①(b)参照)。
また、不動産取得税や登録免許税等の課税もあるため、もし元妻が自宅に居住し続ける予定がないのであれば、将来の税負担も考慮して、どのタイミングでどのような財産で分与を受けるか等、事前に検討し交渉する必要があると思われます。税負担の詳細については、税理士にご相談ください。

 

 

 

税理士法人タクトコンサルティング 「TACTニュース」(2019/07/22)より転載