[税理士のための税務事例解説]

事業承継やM&Aに関する税務事例について、国税OB税理士が解説する事例研究シリーズです。

今回は、「従業員である相続人に退職金を支払った場合の債務控除の可否」についてです。

 

[関連解説]

■【Q&A】解散に際して支払われる役員退職金の課税関係

■【Q&A】個人事業者が事業を廃止した場合の事業用資産に係る課税関係

 


[質問]

被相続人甲は、2020年2月に死亡しました。

 

相続人は甲の事業を承継しないこととし、甲が雇用していた全ての従業員を解雇し、退職金を支払います。甲が雇用していた従業員の中には、甲の相続人である乙も含まれています。

 

被相続人の死亡によって事業を廃止し、従業員を解雇していることから、乙以外の従業員に対して支払う退職金については、甲の相続税申告に当たって債務控除の対象になると考えます。

 

しかし、乙に対して支払う退職金については、相続税法第13条の規定により債務控除の対象とならないとの認識でよいでしょうか。

 

 

[回答]

個人事業者が死亡し、その事業を相続人が承継せず廃業したときに、当該個人事業者が雇用していた従業員に対して退職金を支払った場合、その退職金は相続税の債務控除の対象になる旨の質疑応答事例が国税庁ホームページに掲載されていますが、これはご承知のことかと思います。

 

この質疑応答事例によると、「その支給された退職金は、被相続人の生前事業を営む期間中の労務の対価であり、被相続人の債務として確実なものであると認められる」との考え方の下、債務控除することが可能との取扱いを明らかにしています。

 

ところで、ご質問の事例の乙への退職金については、乙が被相続人甲の相続人であることから、相続税法第13条の規定により債務控除の対象とならない、とのご見解のようですが、債務控除の対象になるとする考え方は、上記のとおり、被相続人が事業を営んでいる間の労務の対価であるかどうかがポイントですから、乙が実際に従業員として勤務した事実があれば、相続人(家族従業員)であるか否かは関係しませんし、相続税法第13条の規定をみても、相続人に対する債務を債務控除の対象から除外する規定もありません。

 

確かに、家族・相続人に対する支払いや債務ということだと、例えば、所得税法第56条のように、生計を一にする親族に労務の対価等を支払った場合は必要経費に算入しないという規定がありますし、民法上、相続人が積極財産と債務を承継した場合、混同により債務が消滅するということもありますので、第三者の場合とは異なるところがあるのではないかという疑問も生じるかも知れませんが、こと相続税の債務控除については、相続人乙に勤務実績があって、他の従業員と同様の基準等により退職金が支払われる限り、債務控除の対象にして差し支えないものと考えます。

 

 

 

 

税理士懇話会事例データベースより

(2020年6月3日回答)

 

 

 

 

[ご注意]

掲載情報は、解説作成時点の情報です。また、例示された質問のみを前提とした解説となります。類似する全ての事案に当てはまるものではございません。個々の事案につきましては、ご自身の判断と責任のもとで適法性・有用性を考慮してご利用いただくようお願い申し上げます。

 

 

 

 


[税理士のための税務事例解説]

事業承継やM&Aに関する税務事例について、国税OB税理士が解説する事例研究シリーズです。

今回は、「海外子会社同士の合併を巡る課税関係」についてです。

 

[関連解説]

■【Q&A】無対価合併における適格要件について

■【Q&A】合併における税制適格要件について

 


[質問]

このたび、内国法人(A社)が、発行済株式の約5%を保有する中国現地法人(S社)を100%子会社化することとなりました。

 

A社はS社以外にも中国の現地法人N社株式を従前より100%保有しております。S社の100%子会社化直後に、同じ中国現地法人N社とS社とを合併させる予定です(結果としてA社は合併後の現地法人を100%所有し、その後の売却予定等はありません)

 

【質問①】
当該合併に係る税務上の課税関係については中国現地の税法の範疇ですが、内国法人A社がS社買収直後に既存の100%在外子会社N社と合併させた場合、A社において何等かの課税関係は発生しますか。

 

【質問②】
また直接的な課税関係は発生しなくとも、A社が税務上留意すべき点はありますか。

 

 

 

[回答]

1 我が国における組織再編(適格合併)の課税関係

(1) 適格合併について
合併前に被合併法人と合併法人との間に同一の者による完全支配関係があり、かつ、合併後に同一の者と合併法人との間に同一の者による完全支配関係が継続することが見込まれている場合の合併で、被合併法人の株主等に合併法人株式又は合併親法人株式のいずれか一方の株式又は出資以外の資産が交付されないものは適格合併に該当することとされています(法人税法2十二の八イ、法人税法施行令4の3②二)。

 

(2) 合併が行われた場合のみなし配当の金額について
法人の株主等である内国法人が合併により金銭その他の資産の交付を受けた場合において、その金銭の額及び金銭以外の資産の価額の合計額が当該法人の資本金等の額のうちその交付の基因となった当該法人の株式又は出資に対応する部分の金額を超えるときは、その超える部分の金額はみなし配当の金額とされます。ただし、適格合併の場合にはみなし配当の金額は生じないこととされています(法人税法24①一)。

 

(3) 被合併法人の株主等における被合併法人株式の譲渡損益について
被合併法人の株主等は、原則として、被合併法人株式について譲渡損益を認識しますが(法人税法61の2①)、被合併法人の株主等に合併法人の株式等以外の資産が交付されなかった合併(金銭等不交付合併)の場合には、被合併法人の株主等は、被合併法人株式の譲渡損益の認識を繰り延べることとされています(法人税法61の2②)。

 

 

 

2 法人税法における「合併」の意義
法人税法は合併の定義規定を設けていないため、外国法令を準拠法として行われる合併が、法人税法上の合併に該当するのか疑問が生じます。

この点、法人税法上の合併は、我が国の会社法を準拠法として行われる合併に限るとはされていませんので、外国法令を準拠法として行われる法律行為であっても、我が国の会社法上の合併に相当する法的効果を具備するものであれば、法人税法上の合併に該当すると考えられます。

我が国の会社法は合併そのものについての定義規定を設けていませんが、一般的に、その本質として、①消滅会社の権利義務の全部が存続会社に包括承継されること及び②消滅会社は清算手続を経ることなく自動的に解散して消滅することという要素を具備していることが挙げられます。

したがって、外国法令を準拠法として行われる法律行為であっても、これらの要素を具備し、我が国の会社法上の合併に相当するものと認められる場合には、法人税法上の合併に該当するものとして取り扱うのが相当であると考えられます。

すなわち、外国法令を準拠法として行われる法律行為が法人税法上の合併に該当するか否かは、その法律行為が我が国の会社法上の合併に相当するものと認められるか否かにより判断することになると考えられます。

 

 

 

3 お尋ねについて
お尋ねによれば、「内国法人Aは、中国法人S社を完全子会社化する予定」とのことで、「S社の完全子会社化直後に、既に完全子会社である中国法人N社とS社とを合併させる予定」とのことです。以下、一般論として検討します。

 

(1) 質問①について
お尋ねの合併は、中国に所在する法人間で行われるため、日本の法人税法上の合併に該当するのか疑問が生じますが、法人税法上の合併は日本の会社法を準拠法として行われる合併に限定されていないため、外国法令を準拠法として行われる法律行為であっても、日本の会社法上の合併に相当する法的効果を具備するものであれば、法人税法上の合併に該当すると思われます。

 

(2) 質問②について
上述(1)のように内国法人A社では、この合併が「適格合併」と「非適格合併」の何れかに該当するかを判断して行かなくてはなりません。
この検討の結果として仮に「適格合併」であるとすれば内国法人A社に課税関係は生じず、逆に「非適格」であるとするならば、内国法人A社に課税が発生する可能性があることになるのですが、ここで重要になる論点は、この検討が、あくまで日本国内の税法に基づいて行われるという点にあります。

 

 

 

 

《参 考》
◎ 中国における組織再編
海外で組織再編を行った場合の現地での課税関係はと言うと、国によって様々ではありますが、①組織再編取引は原則的に現地で課税されるものの、②一定の要件を満たした場合には非課税或いは課税の繰り延べとなるような取り扱いが多いのではないかと思われます。

 

例えば、中国における企業再編税制というのは、①の原則的な取り扱いとしての「一般税務処理」と、②の要件にある日本の適格組織再編に該当する「特殊税務処理」に分かれることになります。

 

① 一般税務処理となる場合には、被合併企業は資産・負債を時価譲渡し、その結果生じた所得に対して課税され、被合併企業の株主(日本親会社)に対しても株主課税が行われます。
② 「特殊税務処理」の要件を満たす場合には、基本的には課税の繰り延べが可能となります。

 

 

 

 

税理士懇話会事例データベースより

(2020年6月1日回答)

 

 

 

 

[ご注意]

掲載情報は、解説作成時点の情報です。また、例示された質問のみを前提とした解説となります。類似する全ての事案に当てはまるものではございません。個々の事案につきましては、ご自身の判断と責任のもとで適法性・有用性を考慮してご利用いただくようお願い申し上げます。

 

 

 

 


[解説ニュース]

持分の定めのある社団医療法人の解散と課税関係

 

〈解説〉

税理士法人タクトコンサルティング(飯田 美緒/税理士)

 

 

【問】

医療法人にてクリニックを経営しています。後継者もいないため、医療法人を解散しようかと考えています。当法人は出資持分の定めのある社団医療法人です。医療法人の解散手続きと、課税関係について教えてください。

 

 

【回答】

1.社団医療法人の類型


社団医療法人は、その定款に出資持分に関する定めがあるかないかで「出資持分のある社団医療法人(以下、「持分あり法人」といいます。)」と「出資持分のない社団医療法人(以下、「持分なし法人」といいます。)」に区分されます。「出資持分」とは社団医療法人に出資した者が、その医療法人の財産に対し、出資額に応じて有する財産権をいいます。

 

2.解散事由


医療法第55条おいて、医療法人の解散事由を次のように定めています。

 

①定款をもって定めた解散事由の発生
②目的たる業務の成功の不能
③社員総会の決議
④他の医療法人との合併(合併により当該医療法人が消滅する場合に限る。)
⑤社員の欠亡
⑥破産手続き開始の決定
⑦設立認可の取消し

 

恣意的な解散を防ぐ趣旨から、②③については都道府県知事の認可が必要とされています。①⑤については都道府県知事への届出を要します。

 

3.解散手続き


2.③の社員総会の決議により解散する場合には、定款に別段の定めがない限り、総社員の4分の3以上の賛成が必要です。解散の認可申請書(仮申請)には、解散理由書、社員総会議事録、財産目録、貸借対照表、残余財産処分方法、清算人就任予定者などを記載した書類を添付(医療法施行規則第34条)して、都道府県へ提出し、事前審査を受けます。書類の不備等を修正し、本申請となります。その後都道府県医療審議会の諮問を経て認可/不認可の処分となります。

 

医療審議会は年に2回程度しか開催されないため、場合によっては事前審査から認可/不認可の処分まで1年近くかかる場合もあります。株式会社と違い、認可がおりなければ解散の効力が発生しないので注意が必要です。認可がおりたら解散の登記を行い、清算手続きに入ります。残余財産の処分が完了したら、清算決了の登記、都道府県知事への届出を行い、法人格が消滅します(医療法第56条の2)。

 

4.課税関係


(1)医療法人に対する課税

解散の日の翌日以降も、その所得計算は通常の事業年度と変わらず、損益法により法人税の申告を行い、課税されます。残余財産確定の日に終了するいわゆる最後事業年度についても同様に損益法により申告を行います。申告期限は、残余財産確定の日から原則1ヶ月以内です。これらについては通常の株式会社と変わりありません(法人税法第74条2項)。

 

(2)出資者に対する課税

解散した医療法人に残余財産があれば、残余財産を定款の定めに基づき処分します。持分あり法人であれば、定款において、出資者にその出資額に応じて分配すると定めているものが一般的です。解散による残余財産の分配が個人である出資者にされた場合、その分配された金銭の額及び金銭以外の資産の価額の合計額が、持分あり法人の資本金等の額を超える部分の金額は、利益の配当又は剰余金の配当とみなすと規定されています(所得税法第25条1項)。よって、みなし配当課税となるため、総合課税の配当所得として、超過累進税率が適用され所得税が課税されます。

 

医療法改正により平成19年4月1日以後、持分あり法人の新規設立はできないことになりました。現在設立し得る持分なし法人の定款においては、残余財産の帰属先は国、地方公共団体、医療を提供する者であって厚生労働省令で定めるもののうちから選定されるよう定められています。これにより、解散時の残余財産が出資者に帰属しないよう整備されました。持分あり法人については、平成19年4月1日施行改正医療法附則第10条第2項に規定される医療法人(経過措置医療法人)に位置付けられ、当分の間、解散時の残余財産の帰属先について定款の変更は強制されず、出資者に対し、残余財産を出資額に応じて分配するとされています。

 

 

 

 

 

 

 

税理士法人タクトコンサルティング 「TACTニュース」(2020/07/20)より転載

[税理士のための税務事例解説]

事業承継やM&Aに関する税務事例について、国税OB税理士が解説する事例研究シリーズです。

今回は、「経営状況が悪化した場合の定期同額給与」についてです。

 

[関連解説]

■【Q&A】解散をした場合の役員退職金の支給について

■【Q&A】解散に際して支払われる役員退職金の課税関係

 


[質問]

「役員報酬の臨時改定事由」に該当するか否かご教示ください。

 

 <概要>
・5月決算の法人です。(飲食店を営んでいます)
・従業員は代表取締役である社長ほか多数です。
・銀行等第三者からの借入はありません。
・株主は社長のみです。

 

 <質問>
昨今のコロナウイルスの影響で、大幅に売上高が落ち急激に業績が悪化しています。そのため役員報酬の大幅な減額を検討しています。その場合は法人税基本通達9-2-13《経営の状況の著しい悪化に類する理由》に該当しますか。

 

また業績が回復した後に通常改定以外で役員報酬を増額した場合は、増額分が損金不算入でよろしいでしょうか。

 

 

[回答]

1 法人税法上、役員給与のうち損金算入ができるものとして挙げられている定期同額給与は、次に掲げるものとされています(法34①一、令69①一)

 

(1) その支給時期が1月以下の一定の期間ごとである給与(定期給与)で、当該事業年度の各支給時期における支給額が同額であるもの

 

(2) 定期給与で次の改定がされた場合における当該事業年度開始の日又は給与改定前の最後の支給時期の翌日から給与改定後の最初の支給時期の前日又は当該事業年度終了の日までの支給額が同額であるもの

 

① その事業年度開始の日から3月を経過する日までにされた定期給与の額の改定(通常改定)
② 臨時改定事由によりされた定期給与の額の改定
③ 業績悪化改定事由によりされた定期給与の額の改定

 

 

2 上記の業績悪化改定事由とは、経営状況が著しく悪化したことなどやむを得ず役員給与を減額せざるを得ない事情があることをいい、一時的な資金繰りの都合や業績目標に達しなかったことなどは含まれないとされています(基通9-2-13)。

 

 

3 そこで、お尋ねの場合は、「昨今のコロナウイルスの影響で、大幅に売上高が落ち急激に業績が悪化」したということですが、単に業績目標が達成しなかったというわけではなさそうですし、その業績悪化の原因はコロナウイルスの影響であることが明らかなようですので、上記の業績悪化改定事由に該当するものと認められます。

 

 

4 また、上記の業績悪化事由による改定により減額した後に、業績が回復したからといって通常改定以外で増額改定した場合には、臨時改定事由にも該当しませんので、その増額改定分(回復部分)は定期同額給与として取り扱われない、すなわち損金不算入になると考えます。したがって、損金不算入を避けるのであれば、通常の給与改定時期で増額改定(回復)するのが望ましいと考えます。

 

 

 

税理士懇話会事例データベースより

(2020年3月6日回答)

 

 

 

 

[ご注意]

掲載情報は、解説作成時点の情報です。また、例示された質問のみを前提とした解説となります。類似する全ての事案に当てはまるものではございません。個々の事案につきましては、ご自身の判断と責任のもとで適法性・有用性を考慮してご利用いただくようお願い申し上げます。

 

 

 

 


[税理士のための税務事例解説]

事業承継やM&Aに関する税務事例について、国税OB税理士が解説する事例研究シリーズです。

今回は、「取得した株式の取得価額と時価純資産価額に乖離がある場合」についてです。

 

 

[関連解説]

■【Q&A】のれんの税務上の取扱い

■【Q&A】事業譲渡により移転を受けた資産等に係る調整勘定

 


[質問]

日本法人がM&Aで外国法人の株式を取得した場合における日本法人株式の財産評価基本通達に基づく純資産価額方式による評価上、当該外国法人の買収価額と時価純資産価額に乖離がある場合の差額(のれん)の相続税法上の評価について、どのように取り扱うべきでしょうか。

 

財産評価基本通達185のかっこ書きの評価会社が課税時期前3年以内に取得または新築した土地及び土地の上に存する権利(以下「土地等」という。)並びに家屋及びその附属設備又は構築物(以下「家屋等」という。)の価額は、課税時期における通常の取引価額に相当する金額によって評価するものとし、当該土地等又は当該家屋等に係る帳簿価額が課税時期における通常の取引価額に相当すると認められる場合には、当該帳簿価額に相当する金額によって評価することができるものとされることを準用し、買収後3年間は買収価額(=帳簿価額)による評価を実施し、3年経過後は当該外国法人の純資産価額方式による評価としても差し支えないでしょうか。

 

[回答]

ご照会の趣旨は、評価会社の株式の価額を評価する際、評価会社がM&Aにより取得した本件外国法人の株式の取得価額と同法人の株式の時価純資産価額に乖離があることから、その乖離している差額部分(のれん)をどのように取り扱えばよいのか、を問うものです。

 

以下の1又は2のいずれにより取扱っても差し支えないと考えます。

 

 

1 取得した株式の価額のままで取扱う場合
本件事例の評価会社がM&Aにより取得した本件外国法人の株式の取得価額と同法人の株式の時価純資産価額に乖離がある場合で、その時価純資産価額が取得価額を下回っている場合には、評価会社の株式を評価する純資産価額(相続税評価)が過大に評価されることがないと考えますので、その乖離している部分の金額(以下「本件乖離差額の金額」といいます。)を特に考慮しないでも差し支えないと考えます。

 

評価会社の株式の価額を1株当たりの純資産価額(相続税評価額によって計算した金額)を評価する際、その評価会社の保有資産に本件外国法人の株式が含まれていますので、本件外国法人の株式の価額は、財産評価基本通達(以下「評基通」といいます。)186-3《評価会社が有する株式等の純資産価額の計算》の定めにしたがって計算します。

 

その計算により算出された本件外国法人の株式の価額は、評価会社の株式を評価する際の「取引相場のない株式の評価明細書」の第5表の資産の部の有価証券(外国法人に係る株式)の科目の相続税評価額欄に記載され、その有価証券の帳簿価額欄の金額は本件外国法人に係る株式の帳簿価額(取得価額)を記載します。

結果的に、評価会社が有する有価証券(本件外国法人に係る株式)を含む各資産の価額の合計額が相続税評価額及び帳簿価額のそれぞれの純資産価額(第5表の⑤及び⑥)の計算の基に含まれているので、同表の⑤-⑥による⑦欄に評価差額に相当する金額(マイナスの場合は0)では本件乖離差額の金額が整理、吸収された後の金額が算出されます。

 

そうすると、評価会社が取得した本件外国法人の株式の取得価額と同株式の相続税評価額に乖離があったとしても、本件乖離差額の金額は評価会社の株式評価における純資産の評価差額の計算において整理、吸収されてしまうことになります。
評価差額に相当する金額は、株式の課税時期における純資産価額(相続税評価額)を計算する際に控除する法人税額等相当額(同表の⑨)の計算の基になる価額です。

 

したがって、本件乖離差額の金額は、評価会社の株式の純資産価額(相続税評価額)を算出する際の控除項目の中で整理、吸収されてしまいますので、評価会社の株価が過大に評価されることがないと考えます。

 

 

2 営業権として取扱う場合
評価会社の決算において、M&Aにより本件外国法人を買収した際の営業権を新たに貸借対照表に資産として計上がある場合には、評価会社の株式の評価における純資産価額(相続税評価額)の計算において営業権の科目を計上して評価することになります。

 

そのM&Aにより本件外国法人を買収した際、評価会社が本件外国法人の有する営業権(のれん)の価値を認め、その価値を評価してM&Aの買収価額を決定している場合は、その認定した営業権の価値に相当する金額を営業権の取得価額として取扱い、評価会社の資産に本件外国法人に係る営業権の価額を計上すべきと考えます。

 

なお、M&Aの契約書に本件外国法人に係る営業権が取引対象として掲記されていない場合には、簿外の営業権を含めて本件のM&Aが行われたと考えられます。

 

ところで、営業権とは、「企業が有する好評、愛顧、信認、顧客関係その他の諸要件によって期待される将来の超過収益力を資本化した価値」であると説明されています。

 

財産評価においては、営業権は、他からの有償取得のものであるか、自家創設のものであるかを問いませんが、本件においては他から取得した営業権になります。
相続税財産の評価上、営業権の価額は、企業の超過収益力を基に計算することで取扱われています(評基通165、166)。本件外国法人に係る営業権の価額は、評基通165、166の定めにより評価するのが相当です。

 

 

 

 

税理士懇話会事例データベースより

(2018年10月15日回答)

 

 

 

 

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[税理士のための税務事例解説]

事業承継やM&Aに関する税務事例について、国税OB税理士が解説する事例研究シリーズです。

今回は、「事業譲渡により移転を受けた資産等に係る調整勘定」についてです。

 

 

[関連解説]

■【Q&A】取得した株式の取得価額と時価純資産価額に乖離がある場合

■【Q&A】のれんの税務上の取扱い

 


[質問]

法人が他の法人から、太陽光発電設備、当該設備設置土地の前払賃料、電力会社に対するFIT(固定価格買取制度)の権利を含め、『太陽光発電事業の事業譲渡』として譲り受けることになりました。

 

他の法人側からは機器設置代金や前払賃料が示されていますが事業譲渡総額とはかなりの差異が生じており、当該差額は固定買取単価の高いFITの権利が譲渡に含まれているためと理解しています。

 

当該権利については営業権として5年償却とすべきか、繰延資産としてFITでの固定買取期間(20年)にわたって償却を行うべきか判断に迷っております。

 

 

[回答]

法人が非適格合併等(非適格合併又は非適格分割、非適格現物出資、事業の譲受け(その事業に係る主要な資産又は負債のおおむね全部が移転するもの)をいいます)により、その非適格合併等に係る被合併法人等からその資産又は負債の移転を受けた場合において、その法人が非適格合併等により交付した非適格合併等対価額がその移転を受けた資産及び負債の時価純資産価額を超えるときは、その超える部分の金額は資産調整勘定とされ、その資産調整勘定の金額は60か月で取り崩しをし、損金の額に算入することとされています(法62の8①④⑤)。なお、この資産調整勘定の金額は税制上の取扱いであることから損金経理要件が課されるものではありません。

 

ご照会事例における事業譲渡が、譲渡法人の事業譲渡直前において行う事業の譲渡であり、その事業譲渡により主要な資産・負債を一体として移転を受けた場合で、その事業譲渡対価額が経済的合理性のある価額である限りは、法人が交付した事業譲渡対価額が移転を受けた資産・負債の時価純資産価額を超える部分の金額は、資産調整勘定の金額(会計上の「のれん」)として税務処理をすることになります。

 

ところで、営業権とは、一般に超過収益力(その企業が同種他企業の平均収益力を超える場合のその超える収益力)を有する無形の財産価値といわれています。

 

本件の場合に、法人が承継した事業について超過収益力があり、かつ、営業権の対価としての計算に合理性があるときは、個別の無形固定資産(営業権)として計上することができますが、ご照会文面から推察する限りにおいては、営業権としての個別の資産の移転があったとは言い難いと考えられます。

 

したがって、本件については、事業譲渡対価額が移転を受けた資産・負債の時価純資産価額を超える部分の金額を資産調整勘定の金額として税務処理するのが相当と考えます。

 

 

 

 

 

税理士懇話会事例データベースより

(2020年2月18日回答)

 

 

 

 

[ご注意]

掲載情報は、解説作成時点の情報です。また、例示された質問のみを前提とした解説となります。類似する全ての事案に当てはまるものではございません。個々の事案につきましては、ご自身の判断と責任のもとで適法性・有用性を考慮してご利用いただくようお願い申し上げます。

 

 

 

 


[税理士のための税務事例解説]

事業承継やM&Aに関する税務事例について、国税OB税理士が解説する事例研究シリーズです。

今回は、「適格合併の適否及び被合併法人の未処理欠損金の引継ぎ制限」についてです。

 

[関連解説]

■【Q&A】合併における税制適格要件について

■【Q&A】無対価合併における適格要件について

 


[質問]

A社(平成28年設立)
主たる事業:有価証券の売買・保有及び運用
株主:甲100% 平成29年に保有株式を売却して休眠中

 

B社(平成31年設立)
主たる事業:有価証券の売買・保有及び運用の他コンサルティング
株主:甲50%、甲の長男乙:25%、甲の長女丙:25%
なお、議決権はすべて甲が保有している。

 

A社の株式のうち25%ずつを甲から乙と丙に譲渡し、A社の株主構成をB社と同じにしたうえで、B社がA社を吸収合併します。

 

この場合、適格合併に該当し被合併法人A社のもつ繰越欠損金は合併法人B社に引き継ぐことができるものと考えていますがよいでしょうか。この場合、A社が休眠中であることは適格合併の判定に影響を与えますか。

 

[回答]

1. 被合併法人と合併法人との間に同一の者(個人株主である場合には、親族を含むによる完全支配関係があり、かつ、合併後もその同一の者による完全支配関係が継続することが見込まれている場合の合併は、適格合併に該当することとされています(法2十二の八イ、令4の3②)。

 

ご照会事例については、親族間の株式の移動があったとしても、同一の者における完全支配関係に影響を及ぼすものではありません。したがって、A社及びB社のいずれも同一の者(甲一族)による完全支配関係がありますので、適格合併に該当することになります。

 

なお、被合併法人(A社)が休眠中であることのみをもって適格合併を否定するものではないと考えますが、その合併に経済的合理性がみいだせず、かつ、何らかの租税回避のみを目的としたものであるとの事実認定がなされた場合には、組織再編成に係る行為計算否認規定(法132の2)の適用を受ける可能性は否定できないと思われます。

 

 

2. 適格合併が行われた場合において、被合併法人に未処理欠損金があるときは、その未処理欠損金は、合併法人の合併事業年度前の各事業年度に生じた欠損金額とみなして合併事業年度以後の各事業年度において繰越控除することができることとされています(法57①②)。

 

ただし、被合併法人の未処理欠損金額には、被合併法人と合併法人との間に、その合併法人の適格合併の日属する事業年度開始の日の5年前又は被合併法人の設立の日若しくは合併法人の設立の日のうち最も遅い日から継続して支配関係がある場合のいずれにも該当しない場合には、引継ぎについての制限がなされています(法57③)。

 

ご照会事例については、合併法人(B社)の設立の日(H31)から継続して同一の者による完全支配関係がありますので、未処分欠損金の引継ぎ制限規定に該当しないことになりますので、本件合併が適格合併に該当する限りにおいて、貴見のとおり、A社の繰越欠損金の額の引継ぎは認められることになります。

 

 

 

 

税理士懇話会事例データベースより

(2020年2月12日回答)

 

 

 

 

[ご注意]

掲載情報は、解説作成時点の情報です。また、例示された質問のみを前提とした解説となります。類似する全ての事案に当てはまるものではございません。個々の事案につきましては、ご自身の判断と責任のもとで適法性・有用性を考慮してご利用いただくようお願い申し上げます。

 

 

 

 


[税理士のための税務事例解説]

事業承継やM&Aに関する税務事例について、国税OB税理士が解説する事例研究シリーズです。

今回は、「税理士事務所の事業承継と一時払金の処理」についてです。

 

[関連解説]

■【Q&A】M&Aに伴う手数料の処理

■【Q&A】非上場株式の譲渡に当たり交渉支援、契約内容の検討等を依頼した弁護士費用等について

 


[質問]

この度、先代の税理士より事務所の承継を行いましたが、顧問先をそのまま譲るための費用として、一定の金額を支払いました。

 

この費用は、いわゆる暖簾(営業権)となるのでしょうか。

また、暖簾となる場合は、下記の処理で宜しいのでしょうか。

 

① 無形固定資産  定額法  残存価額 ゼロ
② 償却年数5年 (税制改正により月割り計算を行うこととされた。)

 

 

[回答]

現行所得税法の判断を行う各審級(地裁・高裁・最高裁)における裁判例では、税理士事務所の事業主変更に伴い授受される金員の所得区分については雑所得に該当するとしています。

 

 

これらの裁判所の判断は、課税庁側の主張を全面的に採用したものとなっているわけですが、課税庁側の主張の源流は、昭和42年7月27日付直審(所)47「税務及び経理に関する業務の譲渡に伴う所得の種類の判定について(個別通達)」にあります。

 

 

すなわち、当該通達において、上申局である広島国税局長に対し、国税庁長官から「税理士が、その業務を他の税理士等に引き継いだ対価として受ける金銭等は(企業権とか営業権の譲渡とは考えられず)、あっせんの対価と認められる」ので、雑所得として取り扱うよう指示したところに拠っているものと認められます。

 

 

それでは、対価を支出した「他の税理士側の会計処理」はどうかというと、現時点まで具体的な取扱い例を示しているものはないものと考えていますが、東京高裁(平成25年10月10日判決)平成25年(行コ)第236号所得税更正処分等取消請求控訴事件の 判決の傍論部分で「承継法人(回答者(注)本件の税務・会計業務を引き継いだ者は、税理士法人です。)は、業務譲渡の対価を顧問先紹介に係る『市場開発費』として経理処理している」と判示している箇所があります。当該判決はその経理処理の是非を直接判断しているわけではありませんが、判決文の趨勢からすると、この会計処理を容認しているかのように窺知し得るものと考えられます。

 

 

だとすると、税務上は、当該金銭の支出は、営業権の譲受けによるその取得対価に該当するものとは解さず、顧問先の紹介という開発費(市場の開拓のために特別に支出する費用)に該当するものとして処理することが相当ではないかと考えられます(所得税法施行令第7条第1項第2号参照)。

 

 

従って、当該繰延資産の償却は、同令第137条第1項第1号に規定するところに従い計算した金額(=支出額÷60×各年の月数)を各年分(5年~6年間)の必要経費に算入することが相当であろうと考えられ、結果的にはご照会の算定額と同様の額になるものと考えます。

 

 

 

 

税理士懇話会事例データベースより

(2020年02月04日回答)

 

 

 

 

[ご注意]

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[税理士のための税務事例解説]

事業承継やM&Aに関する税務事例について、国税OB税理士が解説する事例研究シリーズです。

今回は、「遺言書に沿った遺産の分割が合意に至っていない場合の相続税の申告について」についてです。

 

[関連解説]

■【Q&A】個人版事業承継税制について ~先代事業者が医師、後継者が歯科医師の場合~

■【Q&A】分割協議により遺言と異なる者が財産を取得した場合の贈与課税の有無

 


[質問]

被相続人の自筆証書遺言があります。裁判所の検認も受けており、遺言書としての法的効力も認められております。

 

法定相続人に相続させる旨、及び、法定相続人以外(甥、姪など)に遺贈する旨が書かれておりますが、相続人間で遺産分割に関して揉めており、遺言書通りに執行できず遺産分割ができない状況です。

 

この場合、相続税の申告は、申告期限までに、遺言書に基づいて申告を行うのか、もしくは未分割財産として申告を行うのか、どちらが正しいのでしょうか。

 

 

[回答]

ご照会の事例は、遺産の分割が行われておりませんので相続税法55条の定めるところにより未分割遺産に対する課税の手続きによることになります。

 

被相続人の遺産は不動産、動産、無形資産など多様な構成となっており、その個々の遺産を承継する地位を有する相続人等がどのように取得するかを定めるのが遺産分割です。例えば、被相続人甲の遺産にA町に所在する地積100㎡、価額500万円のa土地とB町に所在する地積100㎡、価額500万円のb土地があるという場合において、それぞれ法定相続分2分の1を有する相続人乙および丙がいずれもa土地の取得を望んだとする法定相続分が等しくa土地とb土地の地積および価額も等しいところから、その所在地の別を如何にするかだけが問題として残されます。この点について協議してそれぞれの相続する土地を決めるのが遺産分割協議であり、個々の遺産について個別にその取得者を定めるために遺産分割の協議は行われます。

 

ご照会の事例では、この遺産分割の協議が行われない状態にあり、相続税の申告は上記のとおり相続税法55条の定めに従い申告手続きを進めることになります。

 

 

 

 

 

税理士懇話会事例データベースより

(2019年12月09日回答)

 

 

 

 

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[税理士のための税務事例解説]

事業承継やM&Aに関する税務事例について、国税OB税理士が解説する事例研究シリーズです。

今回は、「合併における税制適格要件について」についてです。

 

[関連解説]

■【Q&A】適格合併における従業員引継要件

■【Q&A】適格合併の適否及び被合併法人の未処理欠損金の引継ぎ制限

 


[質問]

【事実関係】
1. A法人は個人aを筆頭株主とし、その他の株主も個人aの親族であるaグループが株式を全部保有する同族会社に該当。

 

2. B法人(昭和59年設立)は設立以来、個人bが株式を全部保有する同族会社に該当。また個人bは個人aの父親である。

 

3. A法人は黒字会社であり、主たる事業は卸売業を継続して営み、従たる事業として不動産賃貸業を昭和59年から継続して営んでいる。

 

4. B法人は欠損会社であり、主たる事業として不動産賃貸業を設立時から営んでいる。

 

5. A法人は直前5年間でaグループ間での株主構成の異動はあるが、aグループが継続して株式を全部保有。

 

 

【質問】
B法人は欠損会社であり合併比率の算出が不可能ですが、B法人の発行済株式180株式に対し、A法人の株式1株を合併対価として個人bに交付する予定です。

 

上記のような状況でA法人を合併法人、B法人を被合併法人とする吸収合併を行う場合、本件合併は適格合併に該当するのでしょうか。

 

 

[回答]

合併により被合併法人の株式は消滅し、被合併法人の株主はこれに代わるものとして、通常の場合は、合併契約に定める合併比率等に基づいて、合併法人の合併により発行する合併法人株式の交付を受けることになります。

 

 

ところで、合併が税制上の適格合併に該当するかどうかの判定要件として、次に掲げるものがあります。

 

① 被合併法人の株主に合併法人の株式以外の資産が交付されないものであること。
② 被合併法人と合併法人との間に同一の者による完全支配関係があり、かつ、合併後もその同一の者による完全支配関係が継続することが見込まれていること。

 

 

このように、完全支配関係がある法人間の合併については、完全支配関係が継続するかどうかの観点によるものと考えられます。したがって、上記①及び②の要件を満たしている限りは、例え合併比率が適正でない場合であっても、適格合併を否定するものではないと考えます。

 

 

ご照会事例については、被合併法人Bと合併法人Aとの間に同一の者(個人a一族)による完全支配関係がありますので、その合併は適格合併に該当するものと考えます。

 

 

 

(参考)合併比率は、本来的には経済合理性の前提とされています。つまり被合併法人の株主は被合併法人の株式を譲渡し、その対価として合併法人から株式を取得することになりますので、妥当な対価とすることが必要となります。そのためには合併比率が適正でなければならないと考えます。しかしながら、合併法人と被合併法人の株主が同一である場合又は株式の出資割合が同一である場合には、株主の利害関係に変動が生じませんので合併比率が税務上問題になることはないと考えますが、それ以外の場合には、事実認定によってはみなし贈与(相法9、相基通9-2)の問題が生ずることがありますのでご留意ください。

 

 

 

税理士懇話会事例データベースより

(2019年11月26日回答)

 

 

 

 

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