【Q&A】黄金株所有者による株式売買の価額について ~みなし贈与の対象となるのか?~[税理士のための税務事例解説]
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[税理士のための税務事例解説]
事業承継やM&Aに関する税務事例について、国税OB税理士が解説する事例研究シリーズです。
今回は、「黄金株所有者による株式売買の価額について」についてです。
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[質問]
(前提)
1 法人Aの株式譲渡による事業承継を検討しています。
2 法人Aの株主は甲(70%)、乙(20%)、丙(10%)の株主構成で3名の同族関係はありません。
よって、法人Aの同族株主は甲だけとなります。
甲(代表取締役)
乙(取締役)
丙(取締役)
3 今回、乙を将来の後継者と考えて、持株会社Bを設立し、甲の70%の所有株式を法人Bに法人税法上の時価で譲渡します。
新設する持株会社Bの株式は乙が100%所有します。
4 売買が完了した時点で法人Aの同族株主は、乙が直接20%と法人B(70%)を合計した90%を所有し、乙が同族株主となります。
5 株式の移譲は進めますが、一方で直ぐに乙を社長に変更するわけではないため、社長交代は5年後を目処とし、さらに黄金株を1株発行して、社長交代までは、重要な事項については甲の決議が必要な体制を考えています。
6 財産権としての株式移譲は進みますが、経営権の移譲は代表取締役の未変更及び黄金株の発行により乙にとって制限がある状況となります。
(質問)
〇 前提3の株式の譲渡が終了し、5の黄金株発行後に、丙の10%の株式を乙を後継者とする体制を整えるために、甲が原則的評価方法の5分の1ほどの価額(配当還元価額より高い)で買い取りをします。
〇 買い取り時点で、甲は同族株主以外の株主となっているため、基本的には配当還元価額以上であれば課税上の問題になることはないと考えますが、前提の6 の様な状況において、実質的に甲が同族株主と同視され、丙からの株式購入について、甲への低額譲渡として贈与税の指摘などは考えられるものでしょうか。
(私の考え)
黄金株は議案を否決する能力はあっても、議案を積極的に可決する能力はなく、黄金株を発行した場合に、黄金株を所有している株主が同族株主と同視されることはないと考えていますが、同族株主である甲が同族株主以外の株主になってから「直ぐに」、かつ黄金株を所有している状況で丙から株式を買い取ることに少し違和感があります。
ただ、資本政策、後継者対策として経済合理性はあると考えますし、黄金株は拒否権があるだけで、会社を支配するものでないため、同族株主以外の株主になってから、直ぐに少数株主間で売買をしてもみなし贈与の問題は指摘されにくい(されない)と考えています。
[回答]
1 結論として、ご意見のとおり、みなし贈与の問題は生じないと考えます。
2 甲が黄金株(拒否権付き種類株式)を所有する者であっても、同族株主の判定上、普通株式と同様にその者の議決権割合に基づいて行うのが原則ですので、甲は同族株主以外の株主に該当すると考えます。
種類株式については、平成19年3月9日付け国税庁資産評価企画官情報1号が発出されており、拒否権付株式は、拒否権を考慮せずに、普通株式と同様に評価するとされています。また、種類株式を発行している場合における議決権の数の判定に当たっては、株主総会の一部の事項について議決権を行使できない株式に係る議決権数を含めるとしています(評価通達188-5)。
3 本件は、個人間(第三者間)で原則的評価額の5分の1程度の価額(配当還元価額より高い価額)で購入した場合に、買主に対して相続税法7条によるみなし贈与が課税されるかという点です。
低額譲受に当たるかどうかは、実務上相続税評価額を下回るかどうかにより判定するところ、本件の取引の順序(①甲の譲渡、②黄金株の発行、③甲の購入)を前提とすれば、上記のとおり買主甲は同族株主以外の株主に該当し、その評価方法は配当還元方式によることとなりますので、その配当還元価額を上回る価額での購入について、みなし贈与の対象とはならないと考えます。
税理士懇話会事例データベースより
(2019年7月18日回答)
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